説明

記録媒体供給装置および画像形成装置

【課題】記録媒体収容トレイに積層状態で収容された各記録媒体に対して所定位置で安定して接触することができる繰り出しローラを備える記録媒体供給装置、および、この記録媒体供給装置を備える画像形成装置を提供すること。
【解決手段】給紙ユニット39では、繰り出しローラ4は、上下方向に延びる基準直線J上、上下方向に延びる長軸Eを有する楕円軌跡A上、または、基準直線Jが交点Hにおける楕円軌跡Aに対する接線である場合において基準直線Jと楕円軌跡Aとに挟まれる領域K内、にて移動自在であり、真円軌跡Iに比べて曲率が小さい軌跡上にて、上下方向において略直線的に移動する。そのため、繰り出しローラ4は、給紙トレイ3における最上層の用紙Sに対して所定位置Pで接触してこの用紙Sを繰り出した後、次に最上層となる用紙Sに対しても、所定位置P(または所定位置Pに限りなく近い位置)で接触できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体供給装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体供給装置として、積層された記録紙を最上層の記録紙から順に繰り出す給紙装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1の給紙装置は、ファクシミリ装置の装置本体に装備されており、装置本体において、記録紙を積層状態で収容するカセットの上側に設けられている。
特許文献1の給紙装置は、記録紙の繰り出し方向に対して直交する方向に沿って延びる支点軸と、支点軸に支持されたレバーと、レバーの先端に回転自在に取り付けられた繰り出しローラとを含んでいる。
【0003】
給紙装置が給紙を行う前の待機状態では、レバーの先端が上向きとなっており、繰り出しローラは、カセットに積層された記録紙から上方ヘ離れている。
給紙を行う場合には、レバーが、支点軸を中心として下方へ揺動する。このとき、繰り出しローラは、レバーと同様に、支点軸を中心として下方へ揺動し、カセットにおける最上層の記録紙に接触する。その後、繰り出しローラは、回転することによって、最上層の記録紙を繰り出す。
【特許文献1】特開平10−218396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の給紙装置において、支点軸を中心として揺動する繰り出しローラは、支点軸を円中心とする真円軌跡上にて移動する。
この場合、記録紙における、繰り出しローラが記録紙に接触する位置が、カセットに収容された記録紙の積層枚数が変わるのに伴って、大きくずれてしまうおそれがある。
詳しくは、たとえば、カセットに記録紙が最大限まで積層された状態では、繰り出しローラは、最上層の記録紙に対して、記録紙の先端から所定距離だけ離れた所定位置で接触するとする。これに対し、カセットの記録紙が少なくなるのに伴って、繰り出しローラは、真円軌跡に沿って位置を変えることによって、たとえば記録紙の先端側へ移動し、最上層の記録紙に対して、上述した所定位置から大きくずれた位置(所定位置に比べて記録紙の先端に近い位置)で接触するようになる。
【0005】
このように、記録紙における、繰り出しローラが記録紙に接触する位置が、カセットに収容された記録紙の積層枚数が変わるのに伴って、大きくずれるのであれば、繰り出しローラに接触された後の記録紙の姿勢や挙動が、記録紙の積層枚数が変わるのに伴って変化するおそれがある。
これにより、たとえば、カセットに記録紙が最大限まで積層された状態で繰り出しローラに繰り出された記録紙は円滑に搬送されるものの、カセットの記録紙が少なくなるのに伴って、繰り出しローラに繰り出された記録紙が搬送途中で詰まりやすくなるといった不具合が発生するおそれがある。特に、最近の画像形成装置では、記録紙の搬送速度が高速化する傾向にあるが、搬送速度の高速化に伴って、搬送途中における記録紙の詰まりが発生しやすくなるので、繰り出しローラが記録紙を繰り出すといった搬送開始当初から記録紙の詰まりの原因が生じることをなるべく抑制しておく必要がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、記録媒体収容トレイに積層状態で収容された各記録媒体に対して所定位置で安定して接触することができる繰り出しローラを備える記録媒体供給装置、および、この記録媒体供給装置を備える画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、記録媒体供給装置であって、記録媒体を積層状態で収容する記録媒体収容トレイと、前記記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に接触し、この記録媒体を繰り出す繰り出しローラとを備え、前記繰り出しローラは、所定方向に延びる基準直線上、前記所定方向に延びる長軸を有する楕円軌跡上、または、前記基準直線が、前記楕円軌跡と前記楕円軌跡の短軸との交点における前記楕円軌跡に対する接線である場合において、前記基準直線と前記楕円軌跡とに挟まれる領域内、にて移動自在であることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、位置が固定された第1ローラおよび第2ローラと、前記繰り出しローラと前記第1ローラと前記第2ローラとの間に張架された無端状のベルトと、前記ベルトに囲まれた内部領域から前記内部領域外へ向けて前記繰り出しローラを付勢する付勢部材とを備え、前記第1ローラは、その軸線が前記楕円軌跡における一方の焦点上に配置された状態で、前記繰り出しローラと平行に延び、前記第2ローラは、その軸線が前記楕円軌跡における他方の焦点上に配置された状態で、前記繰り出しローラと平行に延びていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記繰り出しローラ、前記第1ローラおよび前記第2ローラは、それぞれの軸線周りに回転自在であり、前記第1ローラには、回転するための駆動力が伝達され、前記第1ローラが第1方向へ回転することによって、前記繰り出しローラは、前記記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に接近し、前記第1ローラが前記第1方向と反対の第2方向へ回転することによって、前記繰り出しローラは、前記記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体から離間し、前記第1ローラが前記第2方向へ回転するときに前記繰り出しローラの前記第2方向への回転を防止する回転防止機構を備えることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、前記繰り出しローラは、記録媒体の積層方向から見て、記録媒体に一致する位置に配置される第1部分と、前記第1部分に連結され、前記記録媒体収容トレイの外側に配置される第2部分とを備えており、前記第1ローラおよび前記第2ローラは、前記記録媒体収容トレイの外側に配置され、前記ベルトは、前記第2部分と前記第1ローラと前記第2ローラとの間に張架されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記交点は、前記積層方向において、前記記録媒体収容トレイにおける記録媒体の最大積層範囲内に配置されることを特徴としている。
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記交点は、前記積層方向において、前記最大積層範囲の中心位置に配置されることを特徴としている。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の発明において、前記記録媒体収容トレイには、その底から、前記繰り出しローラによる記録媒体の繰り出し方向へ向けて傾斜する傾斜面が設けられ、前記所定方向は、前記傾斜面側へ傾斜していることを特徴としている。
また、請求項8に記載の発明は、請求項2ないし7のいずれかに記載の発明において、前記記録媒体収容トレイに収容された記録媒体の数に応じて、前記楕円軌跡が前記基準直線に一致するように、前記ベルトにおける前記第1ローラと前記第2ローラとの間に張架された部分に接離する接離部材を備えることを特徴としている。
【0013】
また、請求項9に記載の発明は、画像形成装置であって、請求項1ないし8のいずれかに記載の記録媒体供給装置を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および9に記載の発明によれば、記録媒体供給装置では、繰り出しローラが、記録媒体収容トレイにおいて積層状態で収容された記録媒体のうち、最外層の記録媒体に接触して、この記録媒体を繰り出す。
ここで、繰り出しローラは、所定方向に延びる基準直線上、前記所定方向に延びる長軸を有する楕円軌跡上、または、基準直線が楕円軌跡と楕円軌跡の短軸との交点における楕円軌跡に対する接線である場合において基準直線と楕円軌跡とに挟まれる領域内、にて移動自在である。
【0015】
つまり、繰り出しローラは、真円軌跡に比べて曲率が小さい軌跡上にて、略直線的に移動する。そのため、繰り出しローラは、記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に対して所定位置で接触してこの記録媒体を繰り出した後、略直線的に移動することで、次に最外層となる記録媒体に対しても、所定位置(または所定位置に限りなく近い位置)で接触することができる。
【0016】
その結果、記録媒体供給装置では、繰り出しローラが、記録媒体収容トレイに積層状態で収容された各記録媒体に対して所定位置で安定して接触することができる。
請求項2に記載の発明によれば、位置が固定された第1ローラおよび第2ローラにおいて、第1ローラは、その軸線が楕円軌跡における一方の焦点上に配置された状態で、繰り出しローラと平行に延び、第2ローラは、その軸線が楕円軌跡における他方の焦点上に配置された状態で、繰り出しローラと平行に延びている。
【0017】
そして、繰り出しローラと第1ローラと第2ローラとの間には、無端状のベルトが張架され、付勢部材が、ベルトに囲まれた内部領域から内部領域外へ向けて繰り出しローラを付勢している。
これにより、繰り出しローラと第1ローラと第2ローラとの間にベルトが張架された状態が維持され、繰り出しローラは、確実に楕円軌跡上にて移動することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、記録媒体供給装置において、繰り出しローラ、第1ローラおよび第2ローラは、それぞれの軸線周りに回転自在であり、これらのローラのうち、第1ローラに、回転するための駆動力が伝達される。
第1ローラが第1方向へ回転することによって、繰り出しローラは、楕円軌跡上を移動して記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に接近し、この記録媒体を繰り出すことができる。
【0019】
一方、第1ローラが第1方向と反対の第2方向へ回転することによって、繰り出しローラは、楕円軌跡上を移動して記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体から離間する。これにより、繰り出しローラが記録媒体収容トレイからも離間するので、記録媒体収容トレイを繰り出しローラに干渉しないように移動させて、記録媒体収容トレイに記録媒体を補充することができる。
【0020】
このように、繰り出しローラと第1ローラと第2ローラとの間にベルトを張架する構成では、第1ローラを第1方向または第2方向へ回転させるだけで、繰り出しローラを、楕円軌跡上で移動させ、記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に対して接離させることができる。
ここで、第1ローラが第2方向へ回転するときに、繰り出しローラが、ベルトを介して第1ローラの駆動力が伝達されることにより第2方向へ回転すると、伝達された駆動力のほとんどが、繰り出しローラの移動でなく、繰り出しローラの第2方向への回転に用いられることになる。そのため、繰り出しローラの位置(詳しくは、最外層の記録媒体に対する繰り出しローラの相対位置)が変わりにくくなるので、繰り出しローラは、最外層の記録媒体から円滑に離間することができない。
【0021】
そこで、回転防止機構が、第1ローラが第2方向へ回転するときに繰り出しローラの第2方向への回転を防止するので、繰り出しローラは、第1ローラが第2方向へ回転するときに、最外層の記録媒体から円滑に離間することができる。
請求項4に記載の発明によれば、繰り出しローラでは、記録媒体の積層方向(以下では、単に「積層方向」という。)から見て記録媒体に一致する位置に配置される第1部分が、記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に接触し、この記録媒体を繰り出す。
【0022】
一方で、繰り出しローラでは、第1部分に連結された第2部分が、記録媒体収容トレイの外側に配置されている。
ここで、第2部分と同様に、第1ローラおよび第2ローラも、記録媒体収容トレイの外側に配置されており、ベルトは、第2部分と第1ローラと第2ローラとの間に張架されている。
【0023】
これにより、記録媒体収容トレイおよび記録媒体収容トレイに収容された記録媒体に制限されることなく、ベルト、第2部分(繰り出しローラにおいて記録媒体に接触しない部分)、第1ローラおよび第2ローラを自由に配置することができる。
そのため、繰り出しローラの第1部分が、楕円軌跡において特に曲率が小さい領域(たとえば楕円軌跡と楕円軌跡の短軸との交点付近)にて一層直線的に移動して記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に接触するように、ベルト、第2部分(繰り出しローラ)、第1ローラおよび第2ローラを配置することができる。
【0024】
その結果、繰り出しローラは、記録媒体収容トレイの各記録媒体に対して所定位置で一層安定して接触することができる。
請求項5に記載の発明によれば、楕円軌跡と楕円軌跡の短軸との交点は、積層方向において、記録媒体収容トレイにおける記録媒体の最大積層範囲内に配置される。
そのため、繰り出しローラの第1部分は、確実に、楕円軌跡において最も曲率が小さい領域(楕円軌跡と楕円軌跡の短軸との交点付近)にて、一層直線的に移動して記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に接触することができる。
【0025】
その結果、繰り出しローラは、記録媒体収容トレイの各記録媒体に対して所定位置で一層安定して接触することができる。
請求項6に記載の発明によれば、楕円軌跡と楕円軌跡の短軸との交点は、積層方向において、記録媒体収容トレイにおける記録媒体の最大積層範囲の中心位置に配置される。
そのため、繰り出しローラの第1部分は、記録媒体収容トレイにおける記録媒体の積層枚数にかかわらず、常に、楕円軌跡において最も曲率が小さい領域(楕円軌跡と楕円軌跡の短軸との交点付近)にて、一層直線的に移動して記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に接触することができる。
【0026】
その結果、繰り出しローラは、記録媒体収容トレイの各記録媒体に対して所定位置で一層安定して接触することができる。
請求項7に記載の発明によれば、記録媒体収容トレイには、その底から、繰り出しローラによる記録媒体の繰り出し方向へ向けて傾斜する傾斜面が設けられている。これにより、記録媒体収容トレイに積層状態で収容された記録媒体のそれぞれの先端は、傾斜面に沿って傾斜して並ぶように揃えられている。つまり、記録媒体収容トレイにおいて、記録媒体は、記録媒体収容トレイの底の記録媒体から最外層の記録媒体へ向けて、1つずつ、繰り出し方向へずれた状態で積層されている。
【0027】
ここで、楕円軌跡の長軸が延びる方向である所定方向が、傾斜面側へ傾斜している。これにより、楕円軌跡において最も曲率が小さい領域(楕円軌跡と楕円軌跡の短軸との交点付近)を傾斜面(換言すれば、1つずつ繰り出し方向へずれた状態で積層された記録媒体の先端の並び方向)にほぼ沿わせることができる。
そのため、繰り出しローラの第1部分は、楕円軌跡において最も曲率が小さい領域にて、傾斜面にほぼ沿うように略直線的に移動し、1つずつ繰り出し方向へずれた状態で積層された記録媒体のそれぞれに対して所定位置で安定して接触することができる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、記録媒体収容トレイに収容された記録媒体の数に応じて、楕円軌跡が基準直線に一致するように、接離部材が、ベルトにおける第1ローラと第2ローラとの間に張架された部分に接離する。
これにより、繰り出しローラは、一層直線的に移動して記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に接触することができる。
【0029】
その結果、繰り出しローラは、記録媒体収容トレイの各記録媒体に対して所定位置で一層安定して接触することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
1.プリンタ
図1は、本発明の画像形成装置の一例としてのプリンタの一実施形態を示す側断面図である。なお、方向について言及する場合には、図示した方向矢印を参照する(他の図についても同様)。ここで、左右方向と幅方向とは同じであり、水平方向は、幅方向および前後方向を含んでいる。
【0031】
プリンタ1は、たとえばボックス形状の本体ケーシング2を有している。
本体ケーシング2内部の下端部には、記録媒体の一例としての用紙Sを上下に積載した状態で収容する記録媒体収容トレイの一例としての給紙トレイ3が備えられている。給紙トレイ3は、上面が開放されて底を有するボックス形状であり、本体ケーシング2に対して前側から着脱自在である。給紙トレイ3の前端部の上方には、繰り出しローラ4が、その軸線周りに回転自在に配置されている。
【0032】
繰り出しローラ4が、給紙トレイ3に収容されている最外層(最上層)の用紙Sに接触し、その状態で繰り出しローラ4が回転すると、最上層の用紙Sが前側の給紙側搬送路5へ繰り出される。繰り出された用紙Sは、給紙側搬送路5を通過することで向きを前側から後側へ変えながら上昇する。給紙側搬送路5を通過した用紙Sは、レジストローラ6によりレジストされた後、プロセスカートリッジ7内へ搬送される。
【0033】
プロセスカートリッジ7内には、前から順に、トナーホッパ8、供給ローラ9、現像ローラ10、感光ドラム11が配置されている。
トナーホッパ8にはトナーが収容されている。供給ローラ9、現像ローラ10および感光ドラム11のそれぞれは、回転自在である。供給ローラ9は、後側からトナーホッパ8に臨みつつ、前側から現像ローラ10に接触している。現像ローラ10は、前側から感光ドラム11に接触している。現像ローラ10に対して層厚規制ブレード12の先端部が前上側から接触している。感光ドラム11には、現像ローラ10以外に、スコロトロン型の帯電器13、クリーニングブラシ14および転写ローラ15が対向配置されている。
【0034】
画像形成時には、トナーホッパ8に収容されているトナーが、供給ローラ9に供給され、供給ローラ9から現像ローラ10に供給される。そして、現像ローラ10の回転に伴って、層厚規制ブレード12によって現像ローラ10上から余分なトナーが掻き落とされ、これにより現像ローラ10上に一定厚さのトナーの薄層が担持される。
一方、帯電器13のコロナ放電により、感光ドラム11の表面が一様に帯電される。そして、その帯電した感光ドラム11の表面に、本体ケーシング2内においてプロセスカートリッジ7の上方に設けられたスキャナユニット16からのレーザビーム(図示破線参照)が照射されることにより、用紙Sに形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。
【0035】
そして、感光ドラム11の回転により、感光ドラム11の表面に形成されている静電潜像が現像ローラ10と対向すると、現像ローラ10の表面に担持されているトナーが、その静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光ドラム11の表面にトナー像が担持される。
トナー像は、転写ローラ15に印加される転写バイアスによって、給紙側搬送路5からプロセスカートリッジ7内における感光ドラム11と転写ローラ15との間に搬送されてくる用紙Sに転写される。トナー像が転写された用紙Sは、定着ユニット17に向けて後方へ搬送される。感光ドラム11上に付着する用紙Sからの紙粉は、転写後にクリーニングブラシ14によって回収される。
【0036】
定着ユニット17に用紙Sが搬送されると、用紙Sに転写されたトナー像が、定着ユニット17において、用紙Sに熱定着される。その後、用紙Sは、排紙側搬送路18を通過することで向きを後側から前側へ変えながら上昇し、本体ケーシング2の上面に形成されている排紙トレイ19上に排紙される。
2.繰り出しローラ
次に、繰り出しローラ4およびその周辺について詳説する。
【0037】
図2は、繰り出しローラ、給紙トレイおよびアクチュエータを左前から見た斜視図である。
図2に示すように、繰り出しローラ4の軸線は、幅方向に沿って延びている。繰り出しローラ4は、右側に位置する円筒状の第1部分4Aと、左側に位置する円筒状の第2部分4Bと、第1部分4Aおよび第2部分4Bのそれぞれの円中心を通って第1部分4Aと第2部分4Bとを連結する軸4Cとを備えている。第1部分4Aおよび第2部分4Bのそれぞれの円中心ならびに軸4Cは、繰り出しローラ4の軸線と一致している。
【0038】
繰り出しローラ4は、給紙トレイ3の左側に配置されている。詳しくは、繰り出しローラ4は、給紙トレイ3の前壁3Aと左壁3Bとの接続部分近傍に配置されている。ここで、前壁3Aおよび左壁3Bは、ともに、上下方向に沿って垂直に延びている。前壁3Aでは、内側面(後側面)も上下方向に沿って延びているので、給紙トレイ3に積層状態で収容された全ての用紙Sの前端が、前壁3Aの後側面に接触することによって、上下方向に沿って並ぶように揃えられている(後述する図4も参照)。つまり、給紙トレイ3に収容された全ての用紙Sにおいて、各用紙Sの位置が前後にずれていない。なお、給紙トレイの底壁には、符号3Cを付している。
【0039】
左壁3Bには、その上端縁を下方へ切欠いて左壁3Bを幅方向に貫通する切欠き3Dが形成されており、繰り出しローラ4は、遊びを持って切欠き3Dに挿通されている。この状態において、繰り出しローラ4では、第1部分4Aが、左壁3Bより右側、つまり上下方向(用紙Sの積層方向)から見て給紙トレイ3内の用紙Sに一致する位置に配置されており、第2部分4Bが、左壁3Bより左側、つまり給紙トレイ3の外側に配置されている。なお、繰り出しローラ4は、待機位置にあるとき、切欠き3Dから上方ヘ外れ、給紙トレイ3の最上層の用紙Sよりも上方に位置している(図示せず)。
【0040】
そして、プリンタ1には、繰り出しローラ4を上下に移動させて給紙トレイ3内の最上層の用紙Sに接離させるアクチュエータ30が備えられている。
アクチュエータ30は、第1ローラ31と、第2ローラ32と、ベルト33と、付勢部材34とを備えている。
第1ローラ31および第2ローラ32は、それぞれの軸線周りに回転自在であり、それぞれの軸線は、幅方向に沿って延びている。上述したように繰り出しローラ4の回転軸(軸線)も幅方向に沿って延びているので、第1ローラ31および第2ローラ32は、繰り出しローラ4と平行に延びている。第1ローラ31および第2ローラ32は、上下方向に沿って、間隔を隔てて並んで配置されており、それぞれの位置は固定されている。本実施形態では、第1ローラ31を第2ローラ32の上方に配置しているが、第1ローラ31を第2ローラ32の下方に配置しても構わない。そして、第1ローラ31および第2ローラ32は、繰り出しローラ4の第2部分4Bと同様、左壁3Bより左側、つまり給紙トレイ3の外側に配置されている。繰り出しローラ4の第2部分4B、第1ローラ31および第2ローラ32のそれぞれの幅方向における位置は、ほぼ一致している。また、第1ローラ31および第2ローラ32は、前後方向において、給紙トレイ3の前壁3Aより前側(つまり繰り出しローラ4の第2部分4Bより前側)に位置している。なお、第1ローラ31および第2ローラ32は、前壁3Aより後側にあっても構わない。
【0041】
ベルト33は、無端状であり、繰り出しローラ4の第2部分4Bと第1ローラ31と第2ローラ32との間に張架されている。この状態で、ベルト33に囲まれた領域を内部領域33Aという。
付勢部材34は、内部領域33Aに配置されており、第1ローラ31と繰り出しローラ4の第2部分4Bとの間に伸縮自在に架設されている。
【0042】
図3は、付勢部材の斜視図である。
図3を参照して、付勢部材34は、第1部材35(ドットで塗り潰した部分を参照)と、第2部材36と、コイルばね37とを含んでいる。第1部材35、第2部材36およびコイルばね37は、ともに、第1ローラ31と繰り出しローラ4の第2部分4Bとを結ぶ方向に沿って長手である(図2参照)。
【0043】
第1部材35および第2部材36は、互いに平行に延びる棒状である。第1部材35は、後側(繰り出しローラ4に近い側)に配置され、第2部材36は、前側(第1ローラ31に近い側)に配置されている(図2も参照)。
第1部材35の左側面には、第1部材35の長手方向に沿って延びつつ右側へ窪む凹部35Aが形成されている。凹部35Aは、第1部材35の左側面の前端縁(つまり前端面の左端縁)を切欠いており、凹部35Aは、第1部材35の左側面だけでなく前端面からも露出されている。第1部材35では、凹部35Aの前端部の上下方向略中央に、左側へ突出する凸部35Bが設けられている。そのため、第1部材35の前端面は、前側から見て、左側が開放された略逆E字形状をなしている。
【0044】
第2部材36では、その前端部より後側の部分が、第1部材35の凹部35Aに対して遊嵌される大きさを有しており、遊嵌部36Aとされる。遊嵌部36Aには、第2部材36の長手方向に沿って延びつつ遊嵌部36Aを幅方向において貫通するスリット36Bが形成されている。
図3に示すように、第1部材35と第2部材36とを組み合わせる。このとき、第1部材35の凹部35Aに対して第2部材36の遊嵌部36Aが左側から遊嵌され、さらに、遊嵌部36Aのスリット36Bに対して第1部材35の凸部35Bが右側から遊嵌される。この状態で、スリット36Bの前端部に凸部35Bが位置している。そして、凸部35Bが遊嵌されたスリット36B(詳しくはスリット36Bにおいて凸部35Bより後側の空間)に、コイルばね37が嵌め込まれる。これにより、付勢部材34が完成する。
【0045】
コイルばね37は、引っ張りばねであり、付勢部材34が完成した状態で、ある程度引っ張られて伸びている。そのため、コイルばね37が縮もうとすることで生じる付勢力が、第1部材35の凸部35Bおよび第2部材36の遊嵌部36A(詳しくは遊嵌部36Aにおいてスリット36Bの後端を区画する部分)のそれぞれに対して、これらが互いに近付くように作用し、これに伴って第1部材35全体と第2部材36全体とが互いに離れようとする。これにより、付勢部材34全体が、その長手方向において伸びようとする。
【0046】
このような付勢部材34において、第1部材35の後端部が、繰り出しローラ4の第2部分4B(詳しくは第2部分4Bにおける軸4C)に連結され、第2部分4Bを回転自在に支持している(図2も参照)。また、第2部材36の前端部が、第1ローラ31に連結され、第1ローラ31を回転自在に支持している(図2も参照)。
上述したように、付勢部材34では、コイルばね37の付勢力により、第1部材35と第2部材36とが互いに離れようとしており、また、第1ローラ31(図2参照)の位置が固定されていることから、繰り出しローラ4の第2部分4B(図2参照)にコイルばね37の付勢力が集中する。
【0047】
これにより、図2を参照して、繰り出しローラ4全体が第1ローラ31から離れようとする。つまり、繰り出しローラ4が、付勢部材34によって、ベルト33の内部領域33Aから内部領域33Aの外へ向けて付勢されるので、ベルト33が繰り出しローラ4の第2部分4Bと第1ローラ31と第2ローラ32との間に張架された状態が常に維持される。
【0048】
図4は、繰り出しローラおよびアクチュエータの動きを説明するために繰り出しローラ、アクチュエータおよび給紙トレイの左側面を模式的に示した図である。
以下では、図4を参照して、繰り出しローラ4、アクチュエータ30および給紙トレイ3を幅方向から同一垂直面に投影し、この同一垂直面上における繰り出しローラ4およびアクチュエータ30の動きを説明する(後述する図5ないし図7においても同様)。
【0049】
以上のようにベルト33が繰り出しローラ4(第2部分4B)と第1ローラ31と第2ローラ32との間に張架された状態では、図4に示すように幅方向から見て、繰り出しローラ4は、位置が固定された第1ローラ31および第2ローラ32のそれぞれの軸線を2つの焦点として上下方向に長い楕円軌跡A(太い破線を参照)上にて移動自在となる。
ここで、第1ローラ31の軸線を、第1焦点Bとし、第2ローラ32の軸線を、第2焦点Cとする。換言すれば、第1ローラ31の軸線が楕円軌跡Aにおける一方の焦点(第1焦点B)上に配置され、第2ローラ32の軸線が楕円軌跡Aにおける他方の焦点(第2焦点C)上に配置されている。
【0050】
また、厳密には、繰り出しローラ4では、その軸線Dが、楕円軌跡A上で移動する。
上述したように、第1ローラ31および第2ローラ32は、上下方向に沿って、間隔を隔てて並んで配置されていることから、第1焦点Bと第2焦点Cとが配置される同一直線(つまり、楕円軌跡Aの長軸Eであり、上下方向に延びる点線を参照)は、上下方向に沿って延びている。一方、楕円軌跡Aの短軸Fは、長軸Eの中点G(長軸E上において第1焦点Bおよび第2焦点Cのそれぞれから等しい距離にある点)を通って長軸Eに直交し、前後方向に沿って延びている(前後に延びる点線を参照)。ここで、楕円軌跡Aとその短軸Fとの後側の交点には、符号Hを付している。図4では、交点Hと繰り出しローラ4の軸線Dとが重なっている。
【0051】
比較のために、中点Gを中心とする真円軌跡Iを、1点鎖線で示しており、交点Hを通って、長軸Eと平行に上下方向に延びる基準直線Jを、2点鎖線で示している(後述する図6では、基準直線Jを太い破線で示している。)。基準直線Jは、交点Hにおける楕円軌跡Aに対する接線となっている。また、基準直線Jと楕円軌跡Aとに挟まれる領域には、符号Kが付されている。ここで、楕円軌跡Aの曲率は、真円軌跡Iの曲率より小さいこと(換言すれば楕円軌跡Aの曲率半径が真円軌跡Iの曲率半径より大きいこと)がわかる(特に交点H周辺において)。
【0052】
ここで、図4では、給紙トレイ3における用紙Sの上下方向の最大積層範囲Xが図示されているが、交点Hが上下方向において最大積層範囲X内に配置されるように、楕円軌跡Aが定められている。つまり、交点Hと同様に、楕円軌跡Aの長軸Eの中点Gも、上下方向において最大積層範囲X内に配置される。さらに詳しくは、交点Hは、上下方向において最大積層範囲Xの中心位置Yに配置されている。
【0053】
そのため、最大積層範囲X内において、繰り出しローラ4は、楕円軌跡A上における交点H周辺(楕円軌跡A上で最も曲率が小さい領域)にて移動する。この際、繰り出しローラ4は、上述したように、遊びを持って切欠き3Dに挿通されている(図2参照)。
ここで、アクチュエータ30では、第1ローラ31に対して、外部(本体ケーシング2側)から、回転するための駆動力が伝達される。左側から見て、第1ローラ31は、正転時には反時計回り(第1方向Qを参照)へ回転し、逆転時には時計回り(第1方向Qとは反対の第2方向Rを参照)へ回転する。
【0054】
ベルト33が繰り出しローラ4(第2部分4B)と第1ローラ31と第2ローラ32との間に張架された状態において、第1ローラ31が左側面視で反時計回り(第1方向Q)へ回転することによって、ベルト33も、左側面視で反時計回りへ周回移動する。ここで、上述したように、繰り出しローラ4が付勢部材34(図2参照)に付勢されることでベルト33が張架された状態が維持されており、さらに、繰り出しローラ4に自重が作用することから、ベルト33の左側面視で反時計回りへの周回移動に伴って、繰り出しローラ4は、第1ローラ31と同じ方向(第1方向Q)へ回転しながら楕円軌跡A上を下降する。そのため、繰り出しローラ4が上述した待機位置にあった状態で第1ローラ31が第1方向Qへ回転すると、繰り出しローラ4は、楕円軌跡A上を下降することよって給紙トレイ3における最上層の用紙Sに接近し、その後接触する。このとき、第1ローラ31が引き続き第1方向Qへ回転していることから、繰り出しローラ4も引き続き第1方向Qへ回転し、上述したように、最上層の用紙Sを前側へ繰り出す。
【0055】
逆に、第1ローラ31が左側面視で時計回り(第2方向R)へ回転することによって、ベルト33も、左側面視で時計回りへ周回移動する。ここで、繰り出しローラ4には、第1ローラ31が第2方向Rへ回転するときに繰り出しローラ4の第2方向Rへの回転を防止する(換言すれば繰り出しローラ4の第1方向Qへの回転のみを許容する)回転防止機構の一例としてのワンウェイクラッチ38が設けられている。そのため、ベルト33の左側面視で時計回りへの周回移動に伴って、繰り出しローラ4は、その自重によって上下位置が変わらないまま第2方向Rへ回転し続けることなく、周回移動するベルト33との間の摩擦によってベルト33に引き上げられて楕円軌跡A上を上昇する。そのため、繰り出しローラ4が給紙トレイ3における最上層の用紙Sに接触した状態で第1ローラ31が第2方向Rへ回転すると、繰り出しローラ4は、楕円軌跡A上を上昇することよって給紙トレイ3における最上層の用紙Sから離間し、上述した待機位置へ戻る。なお、このとき、ワンウェイクラッチ38によって繰り出しローラ4の回転が停止しているので、繰り出しローラ4は、給紙トレイ3における用紙Sに接触しても、この用紙Sを不用意に繰り出す(動かす)ことはない。
【0056】
以上で説明した給紙トレイ3、繰り出しローラ4およびアクチュエータ30のまとまりを給紙ユニット39と定義することができる(以降の変形例においても同様)。給紙ユニット39は、記録媒体供給装置の一例として機能し、プリンタ1(図1参照)に備えられている。
3.作用効果
(1)以上のように、このプリンタ1において、給紙ユニット39では、繰り出しローラ4が、給紙トレイ3において積層状態で収容された用紙Sのうち、最外層(最上層)の用紙Sに接触して、この用紙Sを繰り出す。
【0057】
ここで、繰り出しローラ4は、所定方向(ここでは上下方向)に延びる長軸Eを有する楕円軌跡A上にて移動自在である
つまり、繰り出しローラ4は、長軸Eの中点Gを中心とする真円軌跡Iに比べて曲率が小さい軌跡上にて、上下方向に略直線的に移動する。そのため、繰り出しローラ4は、給紙トレイ3における最上層の用紙Sに対して前後方向における所定位置P(用紙Sの前端から所定距離だけ後側に離れた所定位置P)で接触してこの用紙Sを繰り出した後、上下方向において略直線的に移動(下降)することで、次に最上層となる用紙Sに対しても、所定位置P(または所定位置Pに限りなく近い位置)で接触することができる。
【0058】
その結果、給紙ユニット39では、繰り出しローラ4が、給紙トレイ3に積層状態で収容された各用紙Sに対して所定位置Pで安定して接触することができる。
ここで、楕円軌跡Aでは、長軸Eと短軸Fとの長さの比に関し、長軸Eを1とした場合に、短軸Fが、0.8以下となっていることが好ましい。そうすれば、楕円軌跡Aの曲率が真円軌跡Iの曲率に比べて大幅に小さくなり、楕円軌跡A上を移動する繰り出しローラ4は、略直線的に移動することができる。また、上述した給紙トレイ3における用紙Sの最大積層範囲Xと楕円軌跡Aの2つの焦点間距離(第1焦点Bと第2焦点Cとの間の距離)との大きさの比に関し、最大積層範囲Xを1とした場合に、楕円軌跡Aの2つの焦点間距離が、2.5以上となっていることが好ましい。
【0059】
また、上記実施形態では、繰り出しローラ4は、楕円軌跡A上にて移動自在であるが、基準直線J(交点Hにおける楕円軌跡Aに対する接線)と楕円軌跡Aとに挟まれる領域K内にて移動自在であれば、より直線的に移動でき、さらに基準直線J上にて移動自在であれば、完全に直線移動することができる。
なお、真円軌跡Iの半径(曲率半径)をできる限り大きくすれば、真円軌跡I上で繰り出しローラ4を移動させる場合であっても、繰り出しローラ4を略直線的に移動させることができるが、真円軌跡Iの半径を大きく分、給紙ユニット39(換言すればプリンタ1)の大型化が不可避となる。これに対し、本発明のように、繰り出しローラ4を楕円軌跡A上で移動させれば、給紙ユニット39の大型化を抑制しつつ(つまり省スペースで)、繰り出しローラ4を略直線的に移動させることができる。
(2)位置が固定された第1ローラ31および第2ローラ32において、第1ローラ31は、その軸線が楕円軌跡Aにおける一方の焦点(第1焦点B)上に配置された状態で、繰り出しローラ4と平行に延び、第2ローラ32は、その軸線が楕円軌跡Aにおける他方の焦点(第2焦点C)上に配置された状態で、繰り出しローラ4と平行に延びている。
【0060】
そして、繰り出しローラ4と第1ローラ31と第2ローラ32との間には、無端状のベルト33が張架され、付勢部材34(図2および図3参照)が、ベルト33に囲まれた内部領域33Aから内部領域33A外へ向けて繰り出しローラ4を付勢している。
これにより、繰り出しローラ4と第1ローラ31と第2ローラ32との間にベルト33が張架された状態が維持され、繰り出しローラ4は、確実に楕円軌跡A上にて移動することができる。
(3)給紙ユニット39において、繰り出しローラ4、第1ローラ31および第2ローラ32は、それぞれの軸線周りに回転自在であり、これらのローラのうち、第1ローラ31に、回転するための駆動力が伝達される。
【0061】
第1ローラ31が第1方向Qへ回転することによって、繰り出しローラ4は、楕円軌跡A上を移動(下降)して給紙トレイ3における最上層の用紙Sに接近し、この用紙Sを繰り出すことができる。
一方、第1ローラ31が第1方向Qと反対の第2方向Rへ回転することによって、繰り出しローラ4は、楕円軌跡A上を移動(上昇)して給紙トレイ3における最上層の用紙Sから離間する。これにより、繰り出しローラ4が左壁3Bの切欠き3D(図2参照)から上方へ外れて給紙トレイ3からも離間する(図示せず)。この場合、給紙トレイ3を繰り出しローラ4に干渉しないように前後に移動させて(詳しくは本体ケーシング2から前方へ引き出して)、給紙トレイ3に用紙Sを補充することができる(図1も参照)。
【0062】
このように、繰り出しローラ4と第1ローラ31と第2ローラ32との間にベルト33を張架する構成では、第1ローラ31を第1方向Qまたは第2方向Rへ回転させるだけで、繰り出しローラ4を、楕円軌跡A上で移動させ、給紙トレイ3における最上層の用紙Sに対して接離させることができる。
ここで、第1ローラ31が第2方向Rへ回転するときに、繰り出しローラ4が、ベルト33を介して第1ローラ31の駆動力が伝達されることにより第2方向Rへ回転すると、伝達された駆動力のほとんどが、繰り出しローラ4の移動でなく、繰り出しローラ4の第2方向Rへの回転に用いられることになる。そのため、最上層の用紙Sに対する繰り出しローラ4の相対位置が変わりにくくなるので、繰り出しローラ4は、最上層の用紙Sから円滑に離間することができない。
【0063】
そこで、ワンウェイクラッチ38が、第1ローラ31が第2方向Rへ回転するときに繰り出しローラ4の第2方向Rへの回転を防止するので、繰り出しローラ4は、第1ローラ31が第2方向Rへ回転するときに、最上層の用紙Sから円滑に離間することができる。
(4)図2に示すように、繰り出しローラ4では、用紙Sの積層方向(上下方向)から見て用紙Sに一致する位置に配置される第1部分4Aが、給紙トレイ3における最上層の用紙Sに接触し、この用紙Sを繰り出す。
【0064】
一方で、繰り出しローラ4では、第1部分4Aに連結された第2部分4Bが、給紙トレイ3の外側(左側)に配置されている。
ここで、第2部分4Bと同様に、第1ローラ31および第2ローラ32も、給紙トレイ3の外側に配置されており、ベルト33は、第2部分4Bと第1ローラ31と第2ローラ32との間に張架されている。
【0065】
これにより、給紙トレイ3および給紙トレイ3に収容された用紙Sに制限されることなく、ベルト33、第2部分4B(繰り出しローラ4において用紙Sに接触しない部分)、第1ローラ31および第2ローラ32を自由に配置することができる。
そのため、図4に示すように、繰り出しローラ4の第1部分4Aが、楕円軌跡Aにおいて特に曲率が小さい領域(たとえば楕円軌跡Aと楕円軌跡Aの短軸Fとの交点H付近)にて上下方向において一層直線的に移動して給紙トレイ3における最上層の用紙Sに接触するように、ベルト33、第2部分4B(繰り出しローラ4)、第1ローラ31および第2ローラ32を配置することができる。
【0066】
その結果、繰り出しローラ4は、給紙トレイ3の各用紙Sに対して前後方向における所定位置Pで一層安定して接触することができる。
(5)楕円軌跡Aと楕円軌跡Aの短軸Fとの交点Hは、積層方向(上下方向)において、給紙トレイ3における用紙Sの最大積層範囲X内に配置される。
そのため、繰り出しローラ4の第1部分4Aは、確実に、楕円軌跡Aにおいて最も曲率が小さい領域(楕円軌跡Aと楕円軌跡Aの短軸Fとの交点H付近)にて、上下方向において一層直線的に移動して給紙トレイ3における最上層の用紙Sに接触することができる。
【0067】
その結果、繰り出しローラ4は、給紙トレイ3の各用紙Sに対して前後方向における所定位置Pで一層安定して接触することができる。
(6)楕円軌跡Aと楕円軌跡Aの短軸Fとの交点Hは、積層方向において、給紙トレイ3における用紙Sの最大積層範囲Xの中心位置Yに配置される。
そのため、繰り出しローラ4の第1部分4Aは、給紙トレイ3における用紙Sの積層枚数にかかわらず、常に、楕円軌跡Aにおいて最も曲率が小さい領域(楕円軌跡Aと楕円軌跡Aの短軸Fとの交点H付近)にて、上下方向において一層直線的に移動して給紙トレイ3における最上層の用紙Sに接触することができる。
【0068】
その結果、繰り出しローラ4は、給紙トレイ3の各用紙Sに対して前後方向における所定位置Pで一層安定して接触することができる。
4.変形例
(1)第1の変形例
図5は、図4に第1の変形例を適用した図である。
【0069】
図5に示す第1の変形例では、給紙トレイ3の前壁3Aの内側面(後側面)が、前上側へ傾斜しており、傾斜面29とされる。ここで、上述したように、繰り出しローラ4は、給紙トレイ3に収容されている最上層の用紙Sを前側へ繰り出すので(図1も参照)、前上側へ傾斜している傾斜面29は、給紙トレイ3に設けられ、給紙トレイ3の底から、繰り出しローラ4による用紙Sの繰り出し方向へ向けて傾斜していることがわかる。
【0070】
これにより、給紙トレイ3に積層状態で収容された用紙Sのそれぞれの先端(前端)は、傾斜面29に沿って前上側へ傾斜して並ぶように揃えられている。つまり、給紙トレイ3において、用紙Sは、給紙トレイ3の底の用紙Sから最上層の用紙Sへ向けて、1枚ずつ、繰り出し方向(前側)へずれた状態で積層されている。そのため、給紙トレイ3において上下に隣り合う用紙Sのうち、上側の用紙Sの前端は、下側の用紙Sの前端より前にずれている。
【0071】
ここで、アクチュエータ30では、楕円軌跡Aの長軸Eが延びる方向である所定方向が、傾斜面29側へ傾斜するように、第1焦点Bおよび第2焦点Cの位置(つまり第1ローラ31および第2ローラ32の位置)が変更されている。詳しくは、長軸E(または交点Hにおける楕円軌跡Aに対する接線M)が、傾斜面29と平行になっている。
これにより、楕円軌跡Aにおいて最も曲率が小さい領域(楕円軌跡Aと楕円軌跡Aの短軸Fとの交点H付近)を傾斜面29(換言すれば、1枚ずつ前側へずれた状態で積層された用紙Sの前端の並び方向)にほぼ沿わせることができる。
【0072】
そのため、繰り出しローラ4の第1部分4Aは、楕円軌跡Aにおいて最も曲率が小さい領域にて、傾斜面29に沿って略直線的に移動し、1枚ずつ前側へずれた状態で積層された用紙Sのそれぞれに対して所定位置P(各用紙Sの前端から所定距離だけ後側に離れた所定位置P)で安定して接触することができる。
(2)第2の変形例
図6は、図4に第2の変形例を適用した図である。
【0073】
図6に示す第2の変形例では、給紙ユニット39に、接離部材40とセンサ41とが備えられている。
接離部材40は、本体ケーシング2等によって回転自在に支持されたローラであり、前後にスライド自在である(太線矢印参照)。接離部材40は、ベルト33における第1ローラ31と第2ローラ32との間に張架された部分(張架部分33Bという。)に対して前から臨んでいる。
【0074】
センサ41は、給紙トレイ3の上方に配置されて、給紙トレイ3に収容された最上層の用紙Sを上方から臨んでいる。センサ41は、検知光を最上層の用紙Sへ向けて発光し、この用紙Sから反射した光を受光する(点線矢印参照)。センサ41は、用紙Sからの反射光の受光タイミングなどによって、給紙トレイ3に用紙Sが何枚収容されているかを検知する。
【0075】
そして、接離部材40は、センサ41の検知結果に基づき、給紙トレイ3に収容された用紙Sの枚数に応じて、前後へスライドし、上述した繰り出しローラ4の楕円軌跡A(図4参照)が、上述した基準直線Jに一致するように、ベルト33の張架部分33Bに接離する。たとえば、給紙トレイ3の用紙Sの枚数の変化に伴って繰り出しローラ4が後側へずれようとした場合には、接離部材40が張架部分33Bを後側へ押すことにより、繰り出しローラ4は、ベルト33を介して前側へ引っ張られることから後側へずれず、繰り出しローラ4の前後方向位置が一定に保たれる。
【0076】
これにより、繰り出しローラ4は、楕円軌跡A(図4参照)上を移動する場合に比べて、上下方向において一層直線的に移動して給紙トレイ3における最上層の用紙Sに接触することができる。
その結果、繰り出しローラ4は、給紙トレイ3の各用紙Sに対して前後方向における所定位置Pで一層安定して接触することができる。
【0077】
同様の作用を得るために(繰り出しローラ4の楕円軌跡Aを基準直線Jに一致させるために)、図4を参照して、給紙トレイ3に収容された用紙Sの枚数に応じて、たとえば、第1ローラ31と第2ローラ32との上下の間隔を変更したり、第2ローラ32および第1ローラ31の少なくとも一方の外径を変更したりしてもよい。
たとえば、給紙トレイ3の用紙Sの枚数の変化に伴って繰り出しローラ4が後側へずれようとした場合には、第1ローラ31と第2ローラ32との上下の間隔を広げる(または第2ローラ32および第1ローラ31の少なくとも一方の外径を大きくする)ことにより、繰り出しローラ4は、ベルト33を介して前側へ引っ張られることから後側へずれず、繰り出しローラ4の前後方向位置が一定に保たれる。これにより、結果として、楕円軌跡Aを基準直線Jに一致させることができる。
(3)第3の変形例
図7は、図4に第3の変形例を適用した図である。
【0078】
上記実施形態では、ベルト33を繰り出しローラ4と第1ローラ31と第2ローラ32との間に張架することで繰り出しローラ4を楕円軌跡A(図4参照)上で移動させている。
しかし、図7に示す第3の変形例のように、ベルト33、第1ローラ31および第2ローラ32の代わりに、繰り出しローラ4を支持しつつ支点Lを中心として回動するばね45と、上述した楕円軌跡A(図4)に沿って延び、繰り出しローラ4の軸4Cを案内するガイド46とを設けてもよい。これによっても、繰り出しローラ4を楕円軌跡A(図4参照)上で移動させることができる。もちろん、ガイド46が、上述した基準直線J(図4参照)に沿って延びていれば、繰り出しローラ4を完全に直線移動させることができる。
(4)その他
図1に示すように、上記の実施形態では、感光ドラム11をレーザによって露光させて静電潜像を形成するいわゆるレーザプリンタを例示したが、本発明は、繰り出しローラ4で給紙トレイ3の用紙Sを繰り出す全てのタイプの画像形成装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の画像形成装置の一例としてのプリンタの一実施形態を示す側断面図である。
【図2】繰り出しローラ、給紙トレイおよびアクチュエータを左前から見た斜視図である。
【図3】付勢部材の斜視図である。
【図4】繰り出しローラおよびアクチュエータの動きを説明するために繰り出しローラ、アクチュエータおよび給紙トレイの左側面を模式的に示した図である。
【図5】図4に第1の変形例を適用した図である。
【図6】図4に第2の変形例を適用した図である。
【図7】図4に第3の変形例を適用した図である。
【符号の説明】
【0080】
1 プリンタ
3 給紙トレイ
4 繰り出しローラ
4A 第1部分
4B 第2部分
29 傾斜面
31 第1ローラ
32 第2ローラ
33 ベルト
33A 内部領域
33B 張架部分
34 付勢部材
38 ワンウェイクラッチ
39 給紙ユニット
40 接離部材
A 楕円軌跡
B 第1焦点
C 第2焦点
E 長軸
F 短軸
H 交点
J 基準直線
K 領域
Q 第1方向
R 第2方向
S 用紙
X 最大積層範囲
Y 中心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を積層状態で収容する記録媒体収容トレイと、前記記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に接触し、この記録媒体を繰り出す繰り出しローラとを備え、
前記繰り出しローラは、
所定方向に延びる基準直線上、
前記所定方向に延びる長軸を有する楕円軌跡上、または、
前記基準直線が、前記楕円軌跡と前記楕円軌跡の短軸との交点における前記楕円軌跡に対する接線である場合において、前記基準直線と前記楕円軌跡とに挟まれる領域内、
にて移動自在であることを特徴とする、記録媒体供給装置。
【請求項2】
位置が固定された第1ローラおよび第2ローラと、前記繰り出しローラと前記第1ローラと前記第2ローラとの間に張架された無端状のベルトと、前記ベルトに囲まれた内部領域から前記内部領域外へ向けて前記繰り出しローラを付勢する付勢部材とを備え、
前記第1ローラは、その軸線が前記楕円軌跡における一方の焦点上に配置された状態で、前記繰り出しローラと平行に延び、
前記第2ローラは、その軸線が前記楕円軌跡における他方の焦点上に配置された状態で、前記繰り出しローラと平行に延びていることを特徴とする、請求項1に記載の記録媒体供給装置。
【請求項3】
前記繰り出しローラ、前記第1ローラおよび前記第2ローラは、それぞれの軸線周りに回転自在であり、
前記第1ローラには、回転するための駆動力が伝達され、
前記第1ローラが第1方向へ回転することによって、前記繰り出しローラは、前記記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体に接近し、
前記第1ローラが前記第1方向と反対の第2方向へ回転することによって、前記繰り出しローラは、前記記録媒体収容トレイにおける最外層の記録媒体から離間し、
前記第1ローラが前記第2方向へ回転するときに前記繰り出しローラの前記第2方向への回転を防止する回転防止機構を備えることを特徴とする、請求項2に記載の記録媒体供給装置。
【請求項4】
前記繰り出しローラは、記録媒体の積層方向から見て、記録媒体に一致する位置に配置される第1部分と、前記第1部分に連結され、前記記録媒体収容トレイの外側に配置される第2部分とを備えており、
前記第1ローラおよび前記第2ローラは、前記記録媒体収容トレイの外側に配置され、
前記ベルトは、前記第2部分と前記第1ローラと前記第2ローラとの間に張架されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の記録媒体供給装置。
【請求項5】
前記交点は、前記積層方向において、前記記録媒体収容トレイにおける記録媒体の最大積層範囲内に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の記録媒体供給装置。
【請求項6】
前記交点は、前記積層方向において、前記最大積層範囲の中心位置に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の記録媒体供給装置。
【請求項7】
前記記録媒体収容トレイには、その底から、前記繰り出しローラによる記録媒体の繰り出し方向へ向けて傾斜する傾斜面が設けられ、
前記所定方向は、前記傾斜面側へ傾斜していることを特徴とする、請求項5または6に記載の記録媒体供給装置。
【請求項8】
前記記録媒体収容トレイに収容された記録媒体の数に応じて、前記楕円軌跡が前記基準直線に一致するように、前記ベルトにおける前記第1ローラと前記第2ローラとの間に張架された部分に接離する接離部材を備えることを特徴とする、請求項2ないし7のいずれかに記載の記録媒体供給装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の記録媒体供給装置を備えることを特徴とする、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−105786(P2010−105786A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280109(P2008−280109)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】