記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラム
【課題】磁気インク文字の認識に際し、認識率を向上する。
【解決手段】小切手搬送機構30と磁気ヘッド54と制御部71とを備えた小切手読取装置1は、搬送される小切手4に記録された磁気インク文字を磁気ヘッド54により磁気的に読み取って得られる信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、信号波形データにおいて、積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、信号波形データから1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、切り出された文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行する。
【解決手段】小切手搬送機構30と磁気ヘッド54と制御部71とを備えた小切手読取装置1は、搬送される小切手4に記録された磁気インク文字を磁気ヘッド54により磁気的に読み取って得られる信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、信号波形データにおいて、積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、信号波形データから1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、切り出された文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
小切手等の記録媒体に記録された磁気インク文字を読み取る磁気ヘッドを備え、搬送路を搬送される記録媒体の磁気インク文字を読み取って、磁気インク文字を認識する記録媒体処理装置(小切手類読取装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような記録媒体処理装置では、磁気インク文字を読み取って得られる信号波形データにおいて文字の最初のピークを検出し、検出された最初のピークの位置に基づいて信号波形データから1つの磁気インク文字に対応する文字波形データの切り出しを行う。そして、切り出した文字波形データの波形と規格で定められた文字種類の基準波形とを比較して磁気インク文字認識(MICR:Magnetic Ink Character Recognition)を行い、磁気インク文字の文字種類を判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−206362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、磁気インク文字から取得した信号波形データの出力が小さいことや磁気インク文字の幅が狭いこと等により、文字の最初のピークを正しく検出できない場合がある。そのような場合、信号波形データから文字波形データを切り出す際に、文字切り出し開始位置を誤って決定してしまい、切り出した文字波形データから磁気インク文字認識ができないことや認識率が低下することがあるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る記録媒体処理装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、前記搬送部と前記読取部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記搬送部を制御して前記記録媒体を搬送させ、搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、磁気インク文字を読み取って得られた信号波形データの積算値が減少した後増加に転じる変化点の位置に基づいて、1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定する。
磁気的に取得した検出信号波形データの値を順次積算すると、理想的には、積算値は、一つの磁気インク文字の始端においてゼロから増加した後、終端においてゼロに戻る。すなわち、検出信号波形データの値の積算値は、一つ前の磁気インク文字の終端で減少した後、次の磁気インク文字の始端で増加に転じる。そのため、積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出することで、各磁気インク文字の始端を検出することができる。したがって、変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定することにより、取得した信号波形データの出力が小さい場合や磁気インク文字の幅が狭い場合でも、精度良く文字波形データの切り出しを行うことができる。この結果、磁気インク文字認識の認識率を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記信号波形データの値が負の値から正の値に転じる点を前記変化点とすることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、積算値が減少から増加に転じる変化点を、信号波形データの値が負の値から正の値に転じる点として検出するので、データの正負の符号が負から正に変わることで検出できる。これにより、積算値の値の大小を比較して変化点を検出する場合に比べて、容易に変化点を検出することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、1つの前記変化点の位置における前記積算値がその前後に隣り合う前記変化点の位置における前記積算値よりも小さい場合に、前記1つの変化点の位置に基づいて前記文字切り出し開始位置を決定することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、互いに隣り合う3つの変化点のうち、真中の変化点の積算値がその前後の変化点の積算値よりも小さい場合に、真中の変化点の位置に基づいて文字切り出し開始位置を決定する。
文字種類によって、一つの磁気インク文字の波形データに変化点が複数存在する場合がある。すなわち、変化点の中に文字の始端である変化点と文字の始端ではない変化点とがある。文字の始端である変化点の積算値は、文字の始端ではない変化点の積算値よりも小さくなるので、真中の変化点の積算値がその前後の変化点の積算値よりも小さい場合に、真中の変化点が文字の始端であると判断できる。これにより、文字の始端ではない変化点の位置に基づいて、誤って文字切り出し開始位置を決定することが抑えられる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、決定された互いに隣り合う前記文字切り出し開始位置同士の間隔が所定の範囲以上である場合に、前記文字切り出し開始位置同士の間で前記変化点の検出を行うことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、決定された互いに隣り合う文字切り出し開始位置同士の間隔が所定の範囲以上である場合、両者の間に2文字分の文字波形が存在する可能性が高い。そこで、両者の間に変化点が存在すれば、2文字分の文字波形を切り出す新たな文字切り出し開始位置を決定することが可能となる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記文字切り出し開始位置同士の間に前記変化点が複数存在する場合に、前記文字切り出し開始位置との間隔が前記1つの磁気インク文字に対応する範囲に最も近い前記変化点に基づいて、あらたに前記文字切り出し開始位置を決定することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、文字切り出し開始位置同士の間に2文字分の文字波形が存在する可能性があって、かつ、両者の間に変化点が複数存在する場合、文字切り出し開始位置との間隔が1つの磁気インク文字に対応する範囲に最も近い変化点に基づいてあらたに文字切り出し開始位置を決定する。これにより、最も確からしい文字切り出し開始位置で文字を切り出すことができる。
【0017】
[適用例6]本適用例に係る記録媒体処理装置の制御方法は、記録媒体を搬送する搬送部と、前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、前記搬送部により前記記録媒体を搬送させ、搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、磁気インク文字を読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、積算値が減少した後増加に転じる変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定する。
磁気的に取得した検出信号波形データの値を順次積算すると、理想的には、積算値は、一つの磁気インク文字の始端においてゼロから増加した後、終端においてゼロに戻る。すなわち、検出信号波形データの値の積算値は、一つ前の磁気インク文字の終端で減少した後、次の磁気インク文字の始端で増加に転じる。そのため、積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出することで、各磁気インク文字の始端を検出することができる。したがって、変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定することにより、取得した信号波形データの出力が小さい場合や磁気インク文字の幅が狭い場合でも、精度良く文字波形データの切り出しを行うことができる。この結果、磁気インク文字認識の認識率を向上させることができる。
【0019】
[適用例7]本適用例に係るプログラムは、記録媒体を搬送する搬送部と、前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記搬送部により前記記録媒体を搬送させ、搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行する手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、磁気インク文字を読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、積算値が減少した後増加に転じる変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定する。
磁気的に取得した検出信号波形データの値を順次積算すると、理想的には、積算値は、一つの磁気インク文字の始端においてゼロから増加した後、終端においてゼロに戻る。すなわち、検出信号波形データの値の積算値は、一つ前の磁気インク文字の終端で減少した後、次の磁気インク文字の始端で増加に転じる。そのため、積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出することで、各磁気インク文字の始端を検出することができる。したがって、変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定することにより、取得した信号波形データの出力が小さい場合や磁気インク文字の幅が狭い場合でも、精度良く文字波形データの切り出しを行うことができる。この結果、磁気インク文字認識の認識率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る小切手読取装置の外観斜視図である。
【図2】小切手読取装置の内部構造を示す図である。
【図3】小切手読取装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図5】検出信号波形データの一例を示す図である。
【図6】文字波形データの一例を示す図である。
【図7】文字波形データの一例を示す図である。
【図8】出力が小さい場合の検出信号波形データの一例を示す図である。
【図9】文字幅が狭い場合の検出信号波形データの一例を示す図である。
【図10】文字切り出し開始位置決定処理の実行時における文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図11】文字切り出し開始位置決定処理の実行時における文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図12】文字切り出し開始位置決定処理の実行時における文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図13】出力が小さい場合の検出信号波形データの積算値の波形を示す図である。
【図14】文字幅が狭い場合の検出信号波形データの積算値の波形を示す図である。
【図15】差異量を説明するための図である。
【図16】光学認識処理の実行時における文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の一実施形態である記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムについて図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の寸法の比率、角度等が異なる場合がある。
【0023】
<記録媒体処理装置>
本実施形態に係る記録媒体処理装置を説明する。本実施形態に係る記録媒体処理装置は、小切手読取装置1とホストコンピューター70とで構成される。
【0024】
まず、本実施形態に係る小切手読取装置1の概略構成を説明する。図1は、本実施形態に係る小切手読取装置1の外観斜視図である。
小切手読取装置1は、シート状の記録媒体である小切手4に対し、小切手4に記録された磁気インク文字(MICR文字)の読み取りや、小切手4の両面の画像の読み取り、小切手4に対する裏書きに係る所定の画像の記録等の処理を行う装置である。
【0025】
小切手読取装置1は、本体ケース2と、本体ケース2の上側に被せた蓋ケース3とを備えており、この内部に各部品が組み込まれた構成となっている。
蓋ケース3には、上から見た場合にU形状をした細幅の垂直溝からなる小切手4の搬送路5が形成されており、搬送路5の一方の端は広幅の垂直溝からなる小切手供給部6に連通しており、搬送路5の他方の端は左右に分岐して、それぞれ広幅の垂直溝からなる第1小切手排出部7及び第2小切手排出部8に繋がっている。
【0026】
小切手4の表面4aには、所定の模様が形成された背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、その下端部分には、図1に示すように、長辺方向に延びる磁気インク文字列4Aが記録されている。磁気インク文字列4Aは、複数の磁気インク文字が横方向に並んで形成されている。
また、小切手4の裏面4bには、裏書き欄が形成されている。この裏書き欄には、後述する記録装置56によって、裏書きに係る所定の画像が記録される。
【0027】
小切手4は、上端4eが上方に位置し下端4fが下方に位置するように上下方向が揃えられ、かつ、表面4aがU形状の搬送路5の外側を向くように表裏が揃えられた状態(図1に示す状態)で、小切手供給部6に挿入される。小切手供給部6に挿入された小切手4は、後端4dを最初として搬送路5に送り出される。
【0028】
小切手供給部6から送り出された小切手4は、搬送路5に沿って搬送されながら、表面4aの画像である表面画像、及び、裏面4bの画像である裏面画像が読み取られ、さらに、表面4aに記録されている磁気インク文字列4Aが磁気的に読み取られる。そして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した小切手4については、裏書きに係る所定の画像の記録が行われた後に、第1小切手排出部7に排出される。
【0029】
一方、読み取りが失敗した小切手4については、裏書きに係る所定の画像が記録されることなく、第2小切手排出部8に排出される。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0030】
図2は小切手読取装置1の内部構造を示す説明図である。
小切手供給部6には、小切手4を搬送路5に送り出すための小切手送り出し機構10が配置されている。小切手送り出し機構10は、繰り出しローラー11、送り出しローラー12、送り出しローラー12に押し付けられているリタードローラー13、送り出し用モーター14、及び小切手押し付け用のホッパー15を備えている。
【0031】
送り出し用モーター14が駆動すると、小切手供給部6に入れた小切手4がホッパー15によって繰り出しローラー11の側に押し付けられ、この状態で、繰り出しローラー11及び送り出しローラー12が同期回転する。
【0032】
繰り出しローラー11によって小切手4は送り出しローラー12とリタードローラー13の間に送り込まれる。リタードローラー13には所定の回転負荷が与えられており、送り出しローラー12に直接に接触している一枚の小切手4のみが他の小切手4から分離されて搬送路5に送り出される。
【0033】
搬送路5は上述したようにU形状をしており、小切手供給部6に繋がっている直線状の上流側搬送路部分21と、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に繋がっており、僅かに折れ曲がった状態で延びている下流側搬送路部分23と、これらの間を繋ぐ湾曲搬送路部分22とを備えている。
【0034】
小切手供給部6から搬送路5に送り出された小切手4を当該搬送路5に沿って搬送する小切手搬送機構30は、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36と、これらに押し付けられて連れ回りする第1押圧ローラー41〜第6押圧ローラー46と、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36を回転駆動するための搬送用モーター37とを備えている。第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36は同期して回転するようになっている。搬送用モーター37として、例えばステッピングモーターが用いられている。このため、ステッピングモーターを駆動するステップ数により、小切手4の搬送量を知ることができる。
【0035】
第1搬送ローラー31〜第3搬送ローラー33は、上流側搬送路部分21における上流端、その中程の位置、及び湾曲搬送路部分22との境界位置にそれぞれ配置されている。第4搬送ローラー34は湾曲搬送路部分22における下流側の位置に配置されている。第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36は、下流側搬送路部分23における中程の位置及び下流端にそれぞれ配置されている。
【0036】
上流側搬送路部分21における第1搬送ローラー31及び第2搬送ローラー32の間には、その上流側から磁気インク文字着磁用の磁石51、表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53が配置されている。表面側コンタクトイメージセンサー52は、搬送路5を搬送される小切手4の表面4aに対向し、表面4aの画像である表面画像を読み取る。裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bに対向し、裏面4bの画像である裏面画像を読み取る。
【0037】
また、第2搬送ローラー32及び第3搬送ローラー33の間には、磁気インク文字を読み取る読取部としての磁気ヘッド54が配置されており、磁気ヘッド54には、当該ヘッドに小切手4を押し付けるための押圧ローラー55が対峙している。
下流側搬送路部分23における第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36の間には、裏書きに係る所定の画像の記録用の記録装置56が配置されている。記録装置56は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bの適切な位置に、適切な方向で所定の画像を記録可能な、印刷ヘッドやスタンプなどを備えている。
【0038】
搬送路5には、小切手搬送制御のための各種センサーが配置されている。磁石51の手前側の位置には、送り出される小切手4の長さを検出するための用紙長検出器61が配置されている。裏面側コンタクトイメージセンサー53と第2搬送ローラー32との間には、小切手4が重なった状態で搬送されていることを検出するための重送検出器62が配置されている。第4搬送ローラー34の手前側の位置にはジャム検出器63が配置されており、ジャム検出器63によって所定時間以上に亘って継続して小切手4が検出されている場合には、搬送路5に小切手4が詰まった紙詰まり状態になったことが分かる。
【0039】
第5搬送ローラー35の手前側の位置には、記録装置56によって裏書きされる小切手4の有無を検出するための印刷検出器64が配置されている。さらに、第6搬送ローラー36の下流側の位置、すなわち、搬送路5から第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に分岐している分岐路9の位置には、これらに排出される小切手4を検出するための排出検出器65が配置されている。
【0040】
分岐路9には、駆動モーター67(図3参照)によって切り替え操作される切り替え板66が配置されている。切り替え板66は、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に対して、搬送路5の下流端を選択的に切り替え、小切手4を選択された排出部に導くための部材である。
【0041】
図3は小切手読取装置1の機能的構成を示すブロック図である。
制御部71は、後述するホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の各部を中枢的に制御するものであり、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えている。
【0042】
制御部71は、ホスト側制御部73の制御の下、送り出し用モーター14、搬送用モーター37を駆動して小切手4(図1参照)を一枚ずつ搬送路5に送り出させ、送り出された小切手4を搬送路5に沿って搬送させる。制御部71による小切手4の搬送制御は、搬送路5に配置されている用紙長検出器61、重送検出器62、ジャム検出器63、印刷検出器64及び排出検出器65からの検出信号に基づいて行われる。
【0043】
小切手4の搬送に伴って、表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の表面の画像、裏面の画像をそれぞれ読み取り、読み取った画像を示す画像データを制御部71に出力する。制御部71は、これら画像データを、ホスト側制御部73に出力する。
また、磁気ヘッド54は、制御部71の制御の下、通過する磁気インク文字列4A(図1参照)によって形成される磁界の変化によって発生する起電力を検出し、検出信号として信号処理回路74に出力する。
【0044】
信号処理回路74は、増幅器や、ノイズ除去用のフィルター回路、A/D変換器等を備え、磁気ヘッド54から入力された検出信号を、増幅し、波形整形し、データとして制御部71に出力する。制御部71は、信号処理回路74から入力された検出信号を示すデータを、ホスト側制御部73に送信する。
操作部75は、本体ケース2(図1参照)に形成された電源スイッチや、操作スイッチ等の各種スイッチを備え、これらスイッチに対するユーザーの操作を検出し、制御部71に出力する。
【0045】
小切手読取装置1には、通信ケーブル72を介してホストコンピューター70が接続されている。
ホストコンピューター70は、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えて構成されたホスト側制御部73を備えている。ホスト側制御部73は、後述する文字認識部80を備えている。
【0046】
ホスト側制御部73には、各種情報を表示可能な表示器76と、キーボード、マウス等の入力デバイスが接続された操作部77と、EEPROMやハードディスク等の書き換え可能に各種データを記憶する記憶部78と、が接続されている。
記憶部78は、小切手読取装置1から入力された小切手4の表面画像や、裏面画像を示すデータや、検出信号を示すデータを記憶する。
【0047】
本実施形態では、ホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の制御部71が小切手読取装置1の各部を制御する。具体的には、ホスト側制御部73は、そのCPUがROMに記憶されたプログラムを実行して、制御部71を制御するための制御データを生成し、生成した制御データを小切手読取装置1の制御部71に対して出力することにより、小切手読取装置1の各部を制御する。すなわち、本実施形態では、ホストコンピューター70と、小切手読取装置1とが協働して、記録媒体たる小切手4に対して各種処理を実行する記録媒体処理装置として機能する。
【0048】
<文字認識部>
次いで、ホスト側制御部73が備える文字認識部80について説明する。
文字認識部80は、磁気インク文字列4Aを構成する磁気インク文字のそれぞれについて、文字の認識を行う。磁気インク文字とは、所定のフォント(例えば、E−13Bフォント)に準拠して、小切手4に磁気印刷された文字のことであり、1つの磁気インク文字は、予め定められた複数の文字種類のうちのいずれか1つの文字種類に対応している。そして、磁気インク文字の認識とは、読み取った磁気インク文字のそれぞれについて、各磁気インク文字の文字種類を確定し、又は、当該磁気インク文字の文字種類を確定できないことを検出することである。
【0049】
なお、E−13Bフォントでは、磁気インク文字の形状として、「0」〜「9」、トランジット記号(TRANSIT SYMBOL)、アマウント記号(AMOUNT SYMBOL)、オン−アス記号(ON−US SYMBOL)、及び、ダッシュ記号(DASH SYMBOL)の14個の文字種類に対応する形状が用意されている。規格で定められたこれらの複数の文字種類の基準波形は、記憶部78に記憶されている。
【0050】
また、磁気インク文字列4Aの各磁気インク文字は、小切手4にオフセット印刷により印刷される場合と、レーザー印刷により印刷される場合とがある。そして、オフセット印刷によって印刷される磁気インク文字と、レーザー印刷によって印刷される磁気インク文字とは、その形状が相違しているが、本実施形態では、後述するように、そのことに対応した上で磁気インク文字の認識を実行している。
【0051】
本実施形態では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について、磁気インク文字の文字種類を確定できれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものと判別され、一方、磁気インク文字の中に、1つでも磁気インク文字の文字種類が確定できないものがあれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗したものと判別される。
上述したように、制御部71は、ホスト側制御部73の制御の下、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した小切手4については、当該小切手4を第1小切手排出部7に搬送し、一方、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した小切手4については、所定の処理を実行した上で、当該小切手4を第2小切手排出部8に搬送する。
【0052】
図4は、文字認識部80の動作を示すフローチャートである。図4のフローチャートは、ある1つの小切手4について、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aの認識を実行する際の文字認識部80の動作を示しているものとする。そして、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aについて、磁気ヘッド54による読み取りが行われており、信号処理回路74によって、増幅処理や、フィルター処理、波形整形処理等の各種処理が実行されて検出信号を示すデータ(以下、「検出信号波形データ」という)が生成され、制御部71により、検出信号波形データが、ホスト側制御部73に出力されているものとする。
さらに、表面側コンタクトイメージセンサー52により、当該小切手4の表面の画像が読み取られ、画像データとして制御部71からホスト側制御部73に出力されているものとする。文字認識部80の機能は、ホスト側制御部73のCPUがROMに記憶されたプログラムを実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
【0053】
<磁気インク文字の切り出し>
図4に示すように、まず、ホスト側制御部73は、制御部71から入力された検出信号波形データを解析し、磁気インク文字列4Aに含まれる各磁気インク文字について、文字切り出し開始位置を決定する(ステップSA21)。ステップSA21では、磁気的に取得した検出信号波形データの値を順次積算すると磁気インク文字毎に波形データの積算値がゼロ(0)に戻る特性を利用して、各磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定している。ステップSA21の文字切り出し開始位置決定方法の詳細については後述する。
【0054】
次に、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、ステップSA21で決定した文字切り出し開始位置に基づいて、検出信号波形データから文字の切り出しを行う(ステップSA1)。文字の切り出しとは、検出信号波形データに基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、当該磁気インク文字の波形を示す文字波形データを生成することである。
【0055】
図5は、検出信号波形データ(一部)の内容の一例を模式的に示す図であり、図6及び図7は、ステップSA21及びステップSA1における処理により生成された文字波形データの内容の一例を模式的に示す図である。詳しくは、図6(A),図7(A)は検出信号波形データから切り出した文字波形データを示し、図6(B),図7(B)は図6(A),図7(A)の文字波形データの値を順次積算した積算値の波形を示す。また、図6(A),(B)は文字種類が「4」の場合の波形を示し、図7(A),(B)は文字種類が「1」の場合の波形を示している。なお、図6(A)と図6(B)、及び、図7(A)と図7(B)は、波形の形状を比較して示すものであり、Y軸方向の尺度は同一ではない。
【0056】
上述したように、本実施形態では、搬送路5内で小切手4を搬送しつつ、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aを磁気ヘッド54により読み取るが、その際、磁気ヘッド54では、搬送される小切手4の磁気インク文字列4Aを、後端4d側から前端4g側へ向かって所定のサンプリング周期で磁束を測定することにより、磁気インク文字列4Aの読み取りを実行する。以下の説明では、サンプリング周期の最小単位の間隔を、1サンプリング単位というものとする。
【0057】
図5では、X軸(横軸)は、時間の経過(サンプリング周期の経過)が規定され(原点からX軸右方に向かうに従って、1サンプリング単位が順次経過したことを示す)、Y軸(縦軸)は、時間の経過に伴う磁荷の変化量の相対値が規定されている。そして、図5では、磁気インク文字列4Aにおいて、小切手4の後端4d側から前端4g側に向かって、所定のサンプリング周期毎に磁荷の変化量の相対値がどのように変化したかが示されており、磁気インク文字列4Aに含まれる各磁気インク文字の磁荷の変化量に対応してY軸方向の値が上下すると共に、磁荷の変化量がプラスであるのかマイナスであるのかに応じてY軸方向の値の正負が変化する。
【0058】
図6(A)の例に示すように、検出信号波形データのX軸方向において1つの磁気インク文字に対応する波形が切り出される範囲は、所定のサンプリング単位S0(例えば、70サンプリング単位)と規定されており、この規定に準じるように、各種搬送制御が実行されると共に、1サンプリング単位の長さが規定されている。また、1つの磁気インク文字に対応する波形においては、文字切り出し開始位置から所定のサンプリング単位S1目(例えば、11サンプリング単位目)に、最初のピークPが位置するように規定されている。
【0059】
ところで、磁気的に取得した検出信号波形データにおいて1つの磁気インク文字に対応する波形のY軸方向における値は、理想的な波形では、波形が立ち上がる始端においてゼロ(0)から立ち上り、終端側に向かってプラス側及びマイナス側に変化した後、終端側においてゼロ(0)に戻る。また、前の磁気インク文字の終端と次の磁気インク文字の始端との間の空白部の値はゼロ(0)である。
【0060】
また、図6(B),図7(B)の例に示すように、1つの磁気インク文字に対応する波形のY軸方向における値を始端側からサンプリング単位毎に順次積算した積算値は、理想的な波形では、始端側においてゼロ(0)から立ち上り、終端側に向かってプラス側で増減した後、終端側においてゼロ(0)に戻る。すなわち、検出信号波形データの積算値は、1つの磁気インク文字の前後において最小値(0)となり、前の磁気インク文字の終端から次の磁気インク文字の始端まで最小値(0)が連続する。
【0061】
したがって、検出信号波形データの積算値が最も小さくなった後増加に転じる点(以下では、変化点という)を探すことにより、1つの磁気インク文字の始端を検出することが可能である。また、検出信号波形データにおいては、前の磁気インク文字の終端で負の値からゼロ(0)に戻った後、正の値に変わる点(変化点)を探すことにより、1つの磁気インク文字の始端を検出することが可能である。この磁気インク文字の始端を検出すれば、これに基づいて、文字切り出し開始位置を決定することができる。
【0062】
例えば、文字種類が「4」の波形では、図6(A)に○印で示すように、負の値からゼロ(0)を通過して正の値になる変化点が2つあるが、X軸左方側の変化点Eが文字の始端であり、X軸右方側の変化点Fはマイナス側ピークからプラス側ピークに向かう途中の点である。図6(B)に○印で示すように、積算値においては、文字の始端である変化点Eの値は変化点Fの値よりも小さい。
【0063】
文字種類が「1」の波形では、図7(A),(B)に○印で示すように、変化点は文字の始端である変化点Eのみである。また、図示を省略するが、文字種類によっては、1つの磁気インク文字の中に、文字の始端を含め変化点が3つあるものもある。なお、トランジット記号等の記号のように、1つの磁気インク文字の中に空白部がある文字種類では、始端と終端との間の空白部で積算値が一旦ゼロ(0)に戻る場合もある。
【0064】
本実施形態では、波形データの積算値が各磁気インク文字の前後で最も小さくなる(理想的にはゼロになる)特性を利用して、各磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定している。以下に、ステップSA21における文字切り出し開始位置を決定する方法を、従来の方法と比較して説明する。
【0065】
まず、本実施形態の文字切り出し開始位置決定方法を説明する前に、従来の文字切り出し開始位置決定方法を説明する。従来の方法では、文字認識部は、検出信号波形データを解析し、図6(A)に示す所定のレベルL1の値を超える当該波形の各ピークのうち後端側(X軸右方)に向かって1番目に現出する最初のピークPを検出する。
【0066】
ここで、ピークとは、検出信号波形データにおける極大値、極小値に対応する部分のことであり、これらピークはX軸方向において所定の周期で現出するよう規定されている。各ピークに対応するX軸の値をピークの位置という。また、所定のレベルL1は、Y軸方向における検出信号の所定の高さを示す値であり、通常発生する程度の外部ノイズによる波形の飛び出しよりも高くなるように適宜設定されている。所定のレベルL1は、例えば、検出信号波形データの振幅をY軸方向において256段階に分割し、その128段階をY軸のゼロとして、プラス側の10段階に相当する値で設定されている。
【0067】
次いで、ステップSA1で1つの磁気インク文字に対応する所定のサンプリング単位S0の範囲で切り出す際に、検出した最初のピークPの位置が、波形のX軸方向における所定のサンプリング単位S1目となるように文字切り出し開始位置を決定する。すなわち、検出した最初のピークPの位置から波形のX軸左方に所定のサンプリング単位S1目の位置を、文字切り出し開始位置と決定する。
【0068】
ところで、磁気ヘッド54による磁気的な読み取りにおいては、磁気インク文字から取得した検出信号波形データの出力が小さいことや、印刷された磁気インク文字の幅が狭いこと等により、文字切り出し開始位置を決定する基準となる最初のピークPを精度良く検出できない場合がある。このような事例について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、出力が小さい場合の検出信号波形データの一例を示す図である。図9は、文字幅が狭い場合の検出信号波形データの一例を示す図である。なお、図8と図9とでは、X軸及びY軸の尺度は同一ではない。
【0069】
図8に示す検出信号波形データの例には、C1からC13までの13の磁気インク文字に対応する波形が含まれている。C1からC13までの各磁気インク文字は、1つのカッコの幅が1つの文字に対応しており、それぞれP1からP13までの最初のピークを有している。しかしながら、出力が小さいことに起因して、C1,C2,C3,C5,C8,C9,C10,C11,C13の磁気インク文字に対応する波形における最初のピークP1,P2,P3,P5,P8,P9,P10,P11,P13の値は、所定のレベルL1よりも小さいため、これらのピークを最初のピークPとして検出することは困難である。
【0070】
このうち、C1,C2,C3,C5,C8,C11,C13の磁気インク文字に対応する波形では、最初のピーク以外のピークQ1,Q2,Q3,Q5,Q8,Q11,Q13が所定のレベルL1を超えているので、これらのピークを誤って最初のピークPとして検出してしまう。一方、C9,C10の磁気インク文字に対応する波形では、ピークが1つも検出されないため、文字切り出し開始位置を正しく決定できないこととなる。
【0071】
図9に示す検出信号波形データの例には、検出信号波形データにC1からC10までの10の磁気インク文字に対応する波形が含まれている。図9では、図8と同様に1つのカッコの幅が1つの文字に対応しているが、各磁気インク文字の文字幅が様々に異なっており、例えば、C3,C5の文字幅はC2,C4の文字幅に比べて小さくなっている。
【0072】
ここで、従来の文字切り出し開始位置決定方法では、1つの磁気インク文字の始端から次の磁気インク文字の始端までを所定の間隔S2(例えば、80サンプリング単位)として、先に切り出した磁気インク文字の文字切り出し開始位置から所定の間隔S2空けた位置から波形のX軸方向に向かって、次の磁気インク文字の最初のピークPの検出を開始する。
【0073】
このとき、C2の磁気インク文字に対応する波形の文字切り出し開始位置から所定の間隔S2空けた位置が、次のC3の磁気インク文字に対応する波形における最初のピークP3よりも前側(X軸左方)であれば、最初のピークP3を検出することは可能である。ところが、C3の磁気インク文字に対応する波形の文字切り出し開始位置から所定の間隔S2空けた位置が、次のC4の磁気インク文字に対応する波形における最初のピークP4よりも後側(X軸右方)であると、最初のピークP4を検出することは不可能となってしまう。同様に、C6の磁気インク文字に対応する波形における最初のピークP6も検出不可能となり、その結果、文字切り出し開始位置を正しく決定できないこととなる。
【0074】
このように、従来の文字切り出し開始位置決定方法では、最初のピークPの位置に基づいて文字切り出し開始位置を決定するため、最初のピークPを正しく検出できない場合、文字切り出し開始位置を精度良く決定できず、文字波形データの切り出しが精度良く行えないこととなる。
【0075】
次に、本実施形態に係る文字切り出し開始位置決定処理の方法を説明する。図10〜図12は、文字切り出し開始位置決定処理の実行時における文字認識部の動作を示すフローチャートである。詳しくは、図10は文字切り出し開始位置決定処理における動作の概略を示すフローチャートであり、図11は変化点検出処理における動作を示すフローチャートであり、図12は始端検出処理における動作を示すフローチャートである。
【0076】
また、図13及び図14は検出信号波形データの値を順次積算した波形の一例を示す図である。詳しくは、図13は図8の出力が小さい場合の検出信号波形データを積算した積算値の波形を示す図であり、図14は図9の文字幅が狭い場合の検出信号波形データを積算した積算値の波形を示す図である。
【0077】
図10に示すように、ステップSA21の文字切り出し開始位置決定処理として、文字認識部80は、ステップSA22の入力データ積算処理と、ステップSA23の変化点検出処理(図11参照)と、ステップSA24の文字の始端検出処理(図12参照)とを順に実行する。
【0078】
ステップSA22の入力データ積算処理では、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aを磁気的に読み取り得られた検出信号波形データ(図5参照)において、先頭位置(図5のX軸とY軸との交点)からサンプリング単位(経過時間)毎の値を入力データとして順次積算することにより、検出信号波形データの各サンプリング単位の位置(図5のX軸の値)における積算値を取得する。
【0079】
この入力データ積算処理により、例えば、図8の出力が小さい場合の検出信号波形データから図13のような積算値の波形が得られ、図9の文字幅が狭い場合の検出信号波形データから図14のような積算値の波形が得られる。なお、図13及び図14では、磁気ヘッド54の特性や読み取り時のノイズ等の影響によって理想的な波形とはならないため、1つの磁気インク文字の始端側と終端側とで積算値が同じにならず、また、磁気インク文字同士の間で始端側及び終端側の積算値が互いに同じになっていない。
【0080】
次に、図11を参照して、変化点検出処理(図10のステップSA23)について説明する。ステップSA23の変化点検出処理では、磁気インク文字列4Aから取得した検出信号波形データの先頭位置からサンプリング単位(経過時間)毎の値を入力データとして、ステップSB1〜ステップSB7までの各処理を実行する。ステップSA23の変化点検出処理は、検出信号波形データを積算した波形において、積算値が減少した後増加に転じる点(変化点)を見つけることを目的とする。
【0081】
図11に示すように、文字認識部80は、まず、入力データの値がゼロ(0)以外の値であるか否かを判別する(ステップSB1)。入力データの値がゼロ(0)以外の値である場合(ステップSB1:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSB2へ移行する。一方、入力データの値がゼロ(0)である場合(ステップSB1:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSB7へ移行する。
【0082】
次いで、文字認識部80は、入力データの値が正の値であるか否かを判別する(ステップSB2)。入力データの値が正の値である場合(ステップSB2:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSB3へ移行する。一方、入力データの値が負の値である場合(ステップSB2:NO)、文字認識部80は、フラグの値を負の値(例えば、−1)とした後(ステップSB6)、処理手順をステップSB7へ移行する。
【0083】
次いで、文字認識部80は、フラグの値が負の値であるか否かを判別する(ステップSB3)。フラグの値が負の値である場合(ステップSB3:YES)、文字認識部80は、変化点を検出したと判断して、処理手順をステップSB4へ移行する。一方、フラグの値が正の値である場合(ステップSB3:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSB7へ移行する。なお、フラグの値の初期値は負の値(例えば、−1)である。
【0084】
次いで、文字認識部80は、ステップSB3で変化点を検出したと判断した場合、変化点であるとされた入力データの位置(X軸の値)と、その位置におけるステップSA22の入力データ積算処理で得られた積算値とを記憶部78に保存する(ステップSB4)。そして、文字認識部80は、フラグの値を正の値(例えば、+1)とした後(ステップSB5)、処理手順をステップSB7へ移行する。
【0085】
ステップSB7では、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aから取得した検出信号波形データに含まれる全てのデータについて処理が終了したか否かを判別する。検出信号波形データに含まれる全てのデータについて処理が終了していない場合(ステップSB7:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSB1へ戻して、次の入力データについて各処理を実行し、一方、検出信号波形データに含まれる全てのデータについて処理が終了した場合(ステップSB7:YES)、ステップSA24の文字の始端検出処理に移行する。
【0086】
上述のように、ステップSA23の変化点検出処理では、検出信号波形データを積算した波形において積算値が減少した後増加に転じる変化点を、積算値からではなく、検出信号波形データの値の正負を表すフラグが負の値から正の値に変わる点、すなわち、検出信号波形データの波形がY軸方向においてマイナス側からゼロ(0)を通過してプラス側に変化する点として検出している。フラグの値は、検出信号波形データの値が負の値から正の値に変わるときに正の値に書き替えられ、検出信号波形データの値が正の値から負の値に変わるときに負の値に書き替えられる。このため、積算値の値の大小を比較して変化点を検出する場合に比べて、容易に変化点を検出することができる。
【0087】
ステップSA23の変化点検出処理により検出信号波形データから検出された変化点を、図8、図9、図13、及び図14に○印で示す。図8及び図9では、変化点は、検出信号波形データにおいて負の値が連続した後、ゼロ(0)を通過して正の値に変わる点である。図13及び図14では、変化点は、積算値が減少した後、増加に転じる点である。
【0088】
上述したように、文字種類によって、1つの磁気インク文字に対応する波形の中に変化点が1つある場合と、複数ある場合とがある。1つの磁気インク文字に変化点が複数ある場合は、磁気インク文字の始端である変化点の他に、マイナス側のピークからプラス側のピークに向かってゼロ(0)を通過する変化点が含まれている。そのため、ステップSA23の変化点検出処理により検出された変化点の中から、磁気インク文字の始端である変化点を抽出する必要がある。
【0089】
次に、図12を参照して、文字の始端検出処理(図10のステップSA24)について説明する。ステップSA24の文字の始端検出処理は、ステップSA23の変化点検出処理で検出された各変化点に対して、ステップSC1〜ステップSC10までの処理を実行することにより、各磁気インク文字の始端を検出して抽出することを目的とする。
【0090】
図12に示すように、文字認識部80は、まず、対象とする変化点の位置における積算値からその前(X軸左方側)の変化点の位置における積算値を差し引いた差分が負であるか否か、すなわち、対象とする変化点の位置における積算値がその前の変化点の位置における積算値よりも小さいか否かを判別する(ステップSC1)。積算値の差分が負である場合(ステップSC1:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSC2へ移行する。一方、積算値の差分が負でない場合(ステップSC1:NO)、文字認識部80は、対象とする変化点が文字の始端ではないと判断して(ステップSC9)、処理手順をステップSC10へ移行する。
【0091】
次いで、文字認識部80は、対象とする変化点の位置における積算値からその次(X軸右方側)の変化点の位置における積算値を差し引いた差分が負であるか否か、すなわち、対象とする変化点の位置における積算値がその次の変化点の位置における積算値よりも小さいか否かを判別する(ステップSC2)。積算値の差分が負である場合(ステップSC2:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSC3へ移行する。一方、積算値の差分が負でない場合(ステップSC2:NO)、文字認識部80は、対象とする変化点が文字の始端ではないと判断して(ステップSC9)、処理手順をステップSC10へ移行する。
【0092】
ここまでのステップSC1及びステップSC2の処理は、前後に隣り合う変化点よりも積算値が小さい変化点を探すことを目的とする処理である。1つの磁気インク文字において、理想的な検出信号波形データの積算値は、始端側のゼロ(0)から増加して、プラス側で増減した後(文字種類によって増減の仕方は異なる)、終端側でゼロ(0)に戻る。したがって、文字の始端である変化点における積算値は、始端と終端との間に位置する変化点における積算値よりも小さい。そこで、まず、ステップSC1及びステップSC2の処理を実行して、前後に位置する変化点よりも積算値が小さい変化点を検出する。
【0093】
次いで、文字認識部80は、対象とする変化点の位置と前の磁気インク文字の始端であるとして検出された変化点(以下では、前文字の始端という)の位置との間隔が、所定の範囲以上あるか否かを判別する(ステップSC3)。所定の範囲とは、例えば、1.5文字分(120サンプリング単位)の幅である。対象とする変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が所定の範囲以上ある場合(ステップSC3:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSC4へ移行する。
【0094】
一方、対象とする変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が1.5文字分の幅未満である場合(ステップSC3:NO)、文字認識部80は、対象とする変化点が文字の始端であると判断して、対象とする変化点の位置(X軸の値)と、その位置におけるステップSA22の入力データ積算処理で得られた積算値とを記憶部78に保存する(ステップSC8)。これにより、以降の処理ではこの変化点が前文字の始端となる。そして、処理手順をステップSC10へ移行する。
【0095】
ステップSC4では、文字認識部80は、対象とする変化点と前文字の始端との間に他の変化点が存在する場合、前文字の始端の次の変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が1.5文字分の幅以上あるか否かを判別する。前文字の始端の次の変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が所定の範囲(例えば、1.5文字分の幅)以上ある場合(ステップSC4:YES)、文字認識部80は、その変化点が文字の始端であると判断して、その位置(X軸の値)とその位置における積算値とを記憶部78に保存する(ステップSC6)。これにより、以降の処理ではこの変化点が前文字の始端となる。そして、処理手順をステップSC7へ移行する。
【0096】
なお、ステップSC4で、対象とする変化点と前文字の始端との間に他の変化点が存在せず、対象とする変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が1.5文字分の幅以上ある場合(ステップSC4:YES)、文字認識部80は、対象とする変化点が文字の始端であると判断して、ステップSC6の処理を行う。隣り合う磁気インク文字同士の間隔が広い場合、このように対象とする変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が1.5文字分の幅以上となることがあり得る。
【0097】
一方、前文字の始端の次(後)の変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が1.5文字分の幅未満である場合(ステップSC4:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSC5へ移行する。ステップSC5では、文字認識部80は、対象とする変化点の位置と前文字の始端の位置との間に存在する変化点の中で、前文字の始端の位置からの間隔が1文字分の幅に最も近い変化点を検出する。そして、ステップSC5で検出された変化点を文字の始端として、処理手順をステップSC6へ移行し、対象とする変化点の位置(X軸の値)と、その位置におけるステップSA22の入力データ積算処理で得られた積算値とを記憶部78に保存する。これにより、以降の処理ではこの変化点が前文字の始端となる。そして、処理手順をステップSC7へ移行する。
【0098】
次いで、文字認識部80は、対象とする変化点がステップSC6で前文字の始端として記憶された変化点と一致するかを判別する(ステップSC7)。対象とする変化点がステップSC6で前文字の始端として記憶された変化点と一致する場合(ステップSC7:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSC10へ移行する。一方、対象とする変化点がステップSC6で前文字の始端として記憶された変化点と一致しない場合(ステップSC7:NO)、文字認識部80は、対象とする変化点はそのままとして、処理手順をステップSC3へ戻す。
【0099】
ステップSC10では、ステップSA23の変化点検出処理で検出された全ての変化点について、ステップSC1〜ステップSC9までの処理が終了したか否かを判別する。全ての変化点について処理が終了していない場合(ステップSC10:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSC1へ戻して、次の変化点について各処理を実行する。
一方、全ての変化点について処理が終了した場合(ステップSC10:YES)、文字認識部80は、ステップSA24の文字の始端検出処理を終了する。
【0100】
ここで、上述した通り、文字種類によっては、1つの磁気インク文字における変化点が始端の1つのみである場合がある。このような文字種類が隣り合っていると、ステップSC1及びステップSC2において文字の始端である変化点同士を比較することとなり、文字の始端であるにもかかわらず、始端ではないと判断される変化点が生じてしまう。そこで、ステップSC1及びステップSC2で差分が負の場合、対象とする変化点は文字の始端であると考えられるが、ステップSC3で対象とする変化点の位置が前文字の始端の位置から1.5文字分の幅以上離れている場合は、対象とする変化点よりも前にもう一つの文字の始端が存在する可能性があるとして、ステップSC4及びステップSC5において、前文字の始端の位置から1文字分の幅程度離れている変化点を文字の始端として検出するようにしている。
【0101】
次に、図13を参照して、ステップSA24の文字の始端検出処理の例を説明する。図13において、変化点E1を1番目の文字の始端として、変化点F1から積算値の波形の右方向に向かって各処理を行う。ステップSC1で変化点F1の位置における積算値から変化点E1の位置における積算値を差し引いた差分が正となるので(ステップSC1:NO)、ステップSC9で変化点F1は文字の始端ではないと判断される。そして、ステップSC10で、全ての変化点について処理が終了していないので、処理手順をステップSC1へ戻し次の変化点F2を対象として各処理を実行する。
【0102】
変化点F2の処理では、ステップSC1で変化点F2の位置における積算値から変化点F1の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC1:YES)、ステップSC2に進む。変化点F2の位置における積算値から次の変化点E2の位置における積算値を差し引いた差分は正となるので(ステップSC2:NO)、ステップSC9で変化点F2は文字の始端ではないと判断され、処理対象が次の変化点E2に移行する。
【0103】
変化点E2の処理では、ステップSC1で変化点E2の位置における積算値から変化点F2の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC1:YES)、ステップSC2に進む。変化点E2の位置における積算値から次の変化点F3の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC2:YES)、ステップSC3に進む。図13中には明示していないが、変化点E2の位置と前文字の始端である変化点E1の位置との間隔が1.5文字分の幅未満であるので(ステップSC3:NO)、変化点E2は文字の始端であると判断され、処理手順がステップSC8へ移行する。これにより、変化点E2が以降の処理における前文字の始端とされ、処理対象が次の変化点F3に移行する。
【0104】
変化点F3の処理では、ステップSC1で変化点F3の位置における積算値から変化点E2の位置における積算値を差し引いた差分が正となるので(ステップSC1:NO)、ステップSC9で変化点F3は文字の始端ではないと判断され、処理対象が次の変化点E3に移行する。
【0105】
変化点E3の処理では、ステップSC1で変化点E3の位置における積算値から変化点F3の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC1:YES)、ステップSC2に進む。変化点E3の位置における積算値から次の変化点E4の位置における積算値を差し引いた差分は正となるので(ステップSC2:NO)、ステップSC9で変化点E3は文字の始端ではないと判断され、処理対象が次の変化点E4に移行する。
【0106】
変化点E4の処理では、ステップSC1で変化点E4の位置における積算値から変化点E3の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC1:YES)、ステップSC2に進む。変化点E4の位置における積算値から次の変化点F4の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC2:YES)、ステップSC3に進む。変化点E4の位置と前文字の始端である変化点E2の位置との間隔が1.5文字分の幅以上であるので(ステップSC3:YES)、ステップSC4に進む。
【0107】
ここで、変化点E2の次に位置する変化点F3に戻って、変化点F3と変化点E2との間隔は1文字分の幅に比べて小さく(ステップSC4:NO)、次の変化点E3と変化点E2との間隔が1文字分の幅に近いので、次のステップSC5で変化点E3が文字の始端であると判断され、処理手順がステップSC6へ移行する。これにより、変化点E3が以降の処理における前文字の始端となる。そして、ステップSC7で、処理対象の変化点E4は前文字の始端である変化点E3と一致しないので、変化点E4について処理をステップSC3に戻す。
【0108】
ステップSC3において変化点E4の位置と前文字の始端である変化点E3の位置との間隔が1.5文字分の幅未満であるので(ステップSC3:NO)、変化点E4は文字の始端であると判断され、処理手順がステップSC8へ移行する。これにより、変化点E4が以降の処理における前文字の始端とされ、処理対象が次の変化点F4に移行する。
【0109】
このようにして、ステップSA23の変化点検出処理で検出された全ての変化点について、ステップSA24の文字の始端検出処理を行う。これにより、図13に示す出力が小さい検出信号波形データにおけるC1,C2,C3,C5,C8,C9,C10,C11,C13の各磁気インク文字について、変化点E1,E2,E3,E4,E5,E6,E7,E8,E9,E10,E11,E12,E13が文字の始端、すなわち文字切り出し開始位置として検出される。
【0110】
同様に、図14に示す文字幅が狭い検出信号波形データに対してステップSA24の文字の始端検出処理を実行することにより、図14におけるC1,C2,C3,C5,C8,C9,C10の各磁気インク文字についても、変化点E1,E2,E3,E4,E5,E6,E7,E8,E9,E10が文字の始端、すなわち文字切り出し開始位置として検出される。
【0111】
なお、上述したトランジット記号等の記号のように、1つの磁気インク文字の中に空白部がある文字種類では、始端と終端との中間で積算値が一旦ゼロ(0)に戻る変化点を有するものがある。このような場合でも、ステップSC5で前文字の始端の位置からの間隔が1文字分に最も近い変化点を次の文字の始端として検出することにより、1つの磁気インク文字の始端と終端との中間に位置する変化点を文字の始端と誤って検出することが抑えられる。
【0112】
以上により、文字認識部80は、ステップSA21の文字切り出し開始位置決定処理を終了し、決定した文字切り出し開始位置に基づいて、ステップSA1で検出信号波形データから1つの磁気インク文字の幅に対応する範囲で文字の切り出しを行う。これにより、磁気インク文字列4Aに含まれる1つの磁気インク文字について、図6(A),図7(A)に示すような文字波形データが生成される。
【0113】
なお、ステップSA1の文字の切り出しは、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、小切手4の後端4d側に配置された磁気インク文字から前端4g側に配置された磁気インク文字へ向かって、順番に行われ、切り出された磁気インク文字ごとにステップSA2以下の文字の認識に係る処理が実行される。
以下、ステップSA1において、切り出された1つの磁気インク文字のことを「処理対象文字」という。
【0114】
文字の切り出しの実行後、文字認識部80は、生成した処理対象文字の文字波形データについて、各データが示す波形のY軸方向における振幅レベルが、パターンマッチング用の基準波形データのY軸方向における振幅レベルと同等となるよう、データの正規化を行う(ステップSA2)。
パターンマッチング用の基準波形データとは、上述した14の文字種類のうち1つの文字種類に対応する磁気インク文字を磁気ヘッド54によって読み取ったときの検出信号の理想的な波形を示すデータであり、いわゆる磁気インク文字認識におけるパターンマッチング処理で供されるテンプレートデータに該当するデータである。
【0115】
<磁気インク文字認識処理>
ステップSA3以下の所定の処理は、いわゆる磁気インク文字認識に係る処理であり、ステップSA1において切り出された磁気インク文字(処理対象文字)に対して、順次実行され、これにより、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれに対して1回ずつ実行される。
【0116】
図4に示すように、ステップSA3以下には、第1認識フェーズ(ステップSA3)〜第4認識フェーズ(ステップSA11)の4つの認識フェーズが含まれている。これら4つの認識フェーズは、それぞれ異なる方法により処理対象文字の磁気インク文字認識を行い、当該処理対象文字の文字種類を確定し、又は、確定できないことを検出するフェーズである。
【0117】
第1認識フェーズ〜第3認識フェーズのいずれかのフェーズにおいて、処理対象文字の文字種類を確定できた場合は、次のフェーズを実行することなく、当該処理対象文字の次の磁気インク文字を処理対象文字とした上で、新たな処理対象文字に対して磁気インク文字認識を実行する。
【0118】
第1認識フェーズ(ステップSA3)では、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データのそれぞれと、14の文字種類に対応する基準波形データのそれぞれとの間の差異量を検出する。
【0119】
処理対象文字の文字波形データと基準波形データとの間の差異量の検出について説明する。図15は、ステップSA3で検出される差異量を説明する図である。図15において、文字波形データが示す波形は細線で示され、基準波形データが示す波形は太線で示されている。
差異量とは、図15中、斜線で示す領域の大きさのことであり、より具体的には、X軸上に規定された各サンプリング単位における、文字波形データが示す波形のY軸方向の値と、基準波形データが示す波形のY軸方向の値との差の絶対値の総和のことである。1つの文字波形データが示す波形と、1つの基準波形データが示す波形との間の差異量が小さければ小さいほど、当該1つの文字波形データが示す波形と、当該1つの基準波形データが示す波形とが近似しているということであり、当該1つの文字波形データに対応する磁気インク文字の文字種別が、当該1つの基準波形データに対応する文字種類である蓋然性が高いということである。
【0120】
第1認識フェーズにおける波形データの差異量の検出は、例えば、処理対象文字の文字波形データが示す波形と比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形とを単純に比較した場合と、処理対象文字の文字波形データが示す波形と比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形とを所定の範囲内で所定の距離だけスライドさせて比較した場合とで行う。
【0121】
差異量の検出結果に基づいて、文字認識部80は、差異量が最も小さかった基準波形データに対応する文字種類を第1候補とし、次に差異量が小さかった基準波形データに対応する文字種類を第2候補とする。
そして、文字認識部80は、第1候補および第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量を所定の閾値と比較する。その結果、第1候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下となり、かつ、第2候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値を上回る場合に、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。なお、第1候補との差異量が閾値を上回る場合は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第1認識フェーズを終了する。
【0122】
一方、第1候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であり、かつ、第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下である場合は、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定しない。
【0123】
ここで、上述の閾値は、処理対象文字の文字波形データと当該処理対象文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量のみが閾値以下となり、かつ、当該文字波形データと他の文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量が閾値を上回るように適宜設定される。このように閾値を設定することで、正常に小切手4が搬送され磁気ヘッド54により正常に磁気インク文字列4Aが読み取られれば閾値以下となる差異量に係る文字種類は1つに限定される。
【0124】
一方、閾値以下となる差異量に係る文字種類が複数存在している状況のときは、磁気ヘッド54による読み取りエラーや、小切手4の搬送エラー、その他の何らかの原因により、当該状況が現出している可能性がある。したがって、このような状況のときに処理対象文字の文字種類を確定すると、誤認識を招くおそれがある。
【0125】
なお、上述したように、オフセット印刷によって印刷される磁気インク文字の形状と、レーザー印刷によって印刷される磁気インク文字の形状とは、その形状が相違していることを踏まえ、本実施形態では、1つの文字種類に対応して、オフセット印刷用の基準波形データと、レーザー印刷用の基準波形データとの2種類のデータが用意されている。そして、第1認識フェーズでは、2種類の基準波形データのうち、オフセット印刷用の基準波形データが利用されて各種処理が実行される。また、第3認識フェーズ(ステップSA9)では、レーザー印刷用の基準波形データが利用されて各種処理が実行される。
【0126】
第1認識フェーズ(ステップSA3)の実行後、文字認識部80は、第1認識フェーズにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できたか否かを判別する(ステップSA4)。
処理対象文字の文字種類が確定できた場合(ステップSA4:YES)、文字認識部80は、第2認識フェーズを行うことなく、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0127】
ステップSA5では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となったか否か、換言すれば、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の全てについて、ステップSA1において文字の切り出しが行われ、かつ、文字認識に係る処理が実行されたか否かが判別される。
【0128】
磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となっていない場合(ステップSA5:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSA1へ戻して、次の磁気インク文字について文字の切り出しを実行する。一方、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となった場合(ステップSA5:YES)、処理手順をステップSA6へ移行する。
【0129】
また、ステップSA4において、第1認識フェーズで処理対象文字の文字種類が確定できなかったと判別した場合(ステップSA4:NO)、文字認識部80は、第2認識フェーズを実行する(ステップSA7)。
【0130】
第2認識フェーズ(ステップSA7)では、検出信号波形データにおける処理対象文字の文字間隔に基づいて磁気インク文字の伸びや縮みを検出し、検出された伸びや縮みを反映して、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を、例えば、文字間隔の両側又は片側に伸縮させて補正する。そして、補正された基準波形データ(補正波形データ)のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を検出する。
【0131】
ここで、磁気インク文字が印刷規格の中心値からずれて印刷されることに起因して、磁気インク文字が横方向(X軸に対応する方向)に縮んだ状態で、又は、伸びた状態で印刷されることがある。この場合、検出信号波形データに基づいて生成される文字波形データの波形がX軸方向に伸び、又は、縮む場合がある。また、小切手4の搬送の状況によっては、文字波形データの波形がX軸方向に伸び、又は、縮む場合がある。これを踏まえ、基準波形データの波形を所定の位置から所定の範囲でスライドさせた上で、処理対象文字の文字波形データの波形との間で差異量を検出することにより、上述した伸びや縮みを反映して、適切に差異量を算出することができる。
【0132】
文字認識部80は、第2認識フェーズにおいて、検出された差異量が最も小さかった補正波形データに対応する文字種類を第1候補とし、次に差異量が小さかった補正波形データに対応する文字種類を第2候補とする。そして、第1候補及び第2候補とされた文字種類に対応する補正波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量を所定の閾値と比較し、第1候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下となり、かつ、第2候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値を上回る場合に、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。
【0133】
また、第1候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であり、かつ、第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であっても、その差異量が上述の第1候補との差異量に所定の係数を乗じたもの以上である場合は、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。これら以外の場合は、処理対象文字の文字種類を確定しない。
【0134】
この第2認識フェーズでは、上述のように、文字波形データの波形の伸びや縮みを反映した上で、第1候補、及び、第2候補となる文字種類を選別する。そのため、第2認識フェーズで選別された第1候補及び第2候補は、本実施形態における他の認識フェーズにおいて選別された第1候補や第2候補と比較し、最も信頼性が高いといえる。
【0135】
第2認識フェーズ(ステップSA7)の実行後、文字認識部80は、第2認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA8)、確定できた場合は(ステップSA8:YES)、処理手順をステップSA5へ移行し、確定できなかった場合は(ステップSA8:NO)、第3認識フェーズを実行する(ステップSA9)。
第3認識フェーズ(ステップSA9)では、レーザー印刷用の基準波形データが利用されて、第1認識フェーズと同様の各種処理が実行されるので、説明を省略する。
【0136】
第3認識フェーズの実行後、文字認識部80は、第3認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA10)、確定できた場合は(ステップSA10:YES)、処理手順をステップSA5へ移行し、確定できなかった場合は(ステップSA10:NO)、第4認識フェーズを実行する(ステップSA11)。
【0137】
第4認識フェーズ(ステップSA11)では、全てのサンプリング単位ではなく、基準波形データのピークの位置やその前後のサンプリング単位目における基準波形データの波形と処理対象文字の文字波形データの波形とを比較する。これにより、処理対象文字の文字波形データの波形において、乱れがあった場合にその影響を排し、部分的な伸びや、縮み、ずれ、が生じた場合にこれらを反映して、適切に処理対象文字の文字認識を実行する。
【0138】
第4認識フェーズでは、処理対象文字の文字種類の最終的な確定を行わず、後述する所定の条件が成立した場合にのみ、処理対象文字の文字種類が確定される。これを踏まえ、第4認識フェーズにおける処理対象文字の文字種類の確定については、「仮確定」と表現し、他の認識フェーズにおける文字種類の確定と区別するものとする。
【0139】
第4認識フェーズの終了後、文字認識部80は、第4認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できたか否かを判別する(ステップSA12)。
第4認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できなかった場合(ステップSA12:NO)、換言すれば、第1認識フェーズ〜第4認識フェーズのいずれにおいても処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合、文字認識部80は、磁気インク文字認識では処理対象文字の文字種類を確定できないものと判別し(ステップSA13)、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0140】
第4認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できた場合(ステップSA12:YES)、文字認識部80は、第4認識フェーズにおいて仮確定した文字種類と、第2認識フェーズにおいて第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと、が一致するか否かを判別する(ステップSA14)。
【0141】
一致しない場合(ステップSA14:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字認識では処理対象文字の文字種類を確定できないものと判別し(ステップSA13)、処理手順をステップSA5へ移行する。
一方、一致する場合(ステップSA14:YES)、文字認識部80は、第4認識フェーズにおいて仮確定した文字を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSA15)、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0142】
このように、本実施形態では、第4認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類として仮確定した文字種類が、第2認識フェーズで第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、当該仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これは、以下の理由による。
すなわち、第2認識フェーズでは、全てのサンプリング単位における処理対象文字の文字波形データの波形と基準波形データの波形との間の差異量を用いて、磁気インク文字の認識を行う。一方、第4認識フェーズでは、特定のサンプリング単位目における基準波形データの波形と文字波形データの波形とを比較した比較値を用いて、磁気インク文字の認識を行う。
【0143】
そのため、この比較値を用いる第4認識フェーズでの基準波形データの波形と文字波形データの波形との間の近似度における相関の強さは、波形間の差異量を用いる第2認識フェーズよりも劣り、第4認識フェーズの認識の結果だけに基づいて文字種類を確定した場合、誤認識を招く可能性がある。
そこで、第4認識フェーズにおいて仮確定された文字種類が、他の認識フェーズに比べて信頼性が高い第2認識フェーズで選別された第1候補及び第2候補に係る文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し、これにより、誤認識を抑制している。
【0144】
上述のように、本実施形態では、第1認識フェーズ〜第4認識フェーズのいずれの認識フェーズにおいても、処理対象文字の文字波形データの波形と基準波形データの波形とを比較し、双方の波形データの間の差異量や比較値に基づいて磁気インク文字の認識を行っている。したがって、磁気インク文字から取得した信号波形データの出力が小さい場合や磁気インク文字の幅が狭い場合等で、信号波形データから文字波形データを切り出す際に、誤った文字切り出し開始位置で文字波形データを切り出してしまうと、切り出した文字波形データから磁気インク文字認識ができないことや認識率が著しく低下することがある。そこで、本実施形態では、波形データの積算値が各磁気インク文字の始端及び終端において最も小さくなる特性を利用して、出力が小さい場合や文字幅が狭い場合等でも精度良く各磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定できるようにしている。
【0145】
次に、ステップSA5において、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となったと判別された場合(ステップSA5:YES)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の文字数を検出する(ステップSA6)。
【0146】
次いで、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別する(ステップSA16)。
【0147】
全ての磁気インク文字について文字種類が確定した場合(ステップSA16:YES)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものとして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理には、例えば、磁気インク文字列4Aが示す情報を記憶部78に記憶し、また、制御部71に記録装置56を制御させて、小切手4の裏面に裏書きに係る所定の画像を記録し、また、第1小切手排出部7に小切手4を排出する等の処理が含まれる。
【0148】
一方、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字について、1つでも文字種類が確定しなかったものが存在した場合(ステップSA16:NO)、文字認識部80は、文字種類が確定しなかった磁気インク文字に対して光学的な文字の認識を行う光学認識処理(ステップSA18)を実行する。
【0149】
次いで、文字認識部80は、光学認識処理により、文字種類が確定していなかった全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA19)、全ての磁気インク文字について、文字種類が確定した場合は(ステップSA19:YES)、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。
【0150】
一方、1つでも文字種類が確定しなかった磁気インク文字が存在する場合(ステップSA19:NO)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理を行う(ステップSA20)。
磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理として、ホスト側制御部73は、制御部71を制御して、裏書きに係る画像の印刷等を行うことなく、第2小切手排出部8に小切手4を搬送する処理を行う。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0151】
<光学認識処理>
次に、文字認識部80の光学認識処理の動作について説明する。図16は、ステップSA18の光学認識処理の実行時における文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
光学認識処理において、まず、文字認識部80は、表面側コンタクトイメージセンサー52の読み取り結果に基づいて生成された、小切手4の表面の画像を示すデータに基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の光学文字認識を実行する(ステップSK1)。
【0152】
ステップSK1では、例えば、文字認識部80は、小切手4の表面を示す画像データにおいて、磁気インク文字列4Aの画像に対応するデータの範囲を特定すると共に、特定した範囲のデータについて、磁気インク文字ごとに画像データを切り出す。
【0153】
次いで、文字認識部80は、14種類の文字種類のそれぞれに対応するビットマップパターンと、切り出した磁気インク文字の画像データとを比較することにより、磁気インク文字のそれぞれの文字種類を仮確定する。なお、ステップSK1で確定された文字種類は、最終的な文字種類の確定ではないため、「仮確定」と表現する。
【0154】
次いで、文字認識部80は、ステップSK1の光学文字認識の結果に基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の文字数を検出する(ステップSK2)。
【0155】
次いで、文字認識部80は、図4のステップSA6で検出した文字数、すなわち、磁気ヘッド54により読み取られた検出信号波形データに基づいて検出された文字数と、ステップSK2で検出された文字数とが一致するか否かを判別する(ステップSK3)。
【0156】
文字数が一致しない場合(ステップSK3:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに失敗したと判別し(ステップSK4)、光学認識処理を終了する。これは、以下の理由による。
すなわち、ステップSK5以下の処理は、ステップSK1における光学文字認識処理の結果を利用して、文字種類が確定していない磁気インク文字について、文字種類の確定を試みる処理であり、上記文字数が異なっている場合は、磁気的な読み取り及び光学的な読み取りのうち少なくとも一方が失敗していることが考えられる。そのため、磁気インク文字認識により検出信号波形データに基づいて切り出した磁気インク文字のそれぞれと、光学文字認識により切り出した磁気インク文字のそれぞれとの対応関係について確実性が担保できず、ステップSK1における光学文字認識処理の結果を利用した文字種類の確定を実行できないからである。
【0157】
文字数が一致する場合(ステップSK3:YES)、文字認識部80は、図4のステップSA13において文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字の中から1つの磁気インク文字をステップSK6以下の処理を行う対象として特定する(ステップSK5)。
【0158】
ステップSK5以下の処理は、磁気インク文字認識では文字種類が確定できなかった磁気インク文字のそれぞれについて、順番に、行われる。以下、ステップSK5で特定された磁気インク文字を「処理対象文字」というものとする。
次いで、文字認識部80は、処理対象文字について、ステップSK1で仮確定された文字種類を取得する(ステップSK6)。
【0159】
次いで、文字認識部80は、処理対象文字について、ステップSK1で仮確定された文字種類と、上述した第2認識フェーズにおいて第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと、が一致するか否かを判別する(ステップSK7)。
一致する場合(ステップSK7:YES)、文字認識部80は、仮確定した文字を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSK8)、処理手順をステップSK9へ移行する。
一方、一致しない場合(ステップSK7:NO)、文字認識部80は、処理対象文字について、光学文字認識を利用した文字認識によっても文字種類を確定できないと判別し(ステップSK10)、処理手順をステップSK9へ移行する。
【0160】
ステップSK9において、文字認識部80は、図4のステップSA13において文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字の全てが、処理対象文字となったか否かを判別する。全ての磁気インク文字が処理対象文字となっていない場合(ステップSK9:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSK5へ戻す。
【0161】
一方、全ての磁気インク文字が処理対象文字となった場合(ステップSK9:YES)、文字認識部80は、文字種類を確定できない磁気インク文字が1つでもあるか否か、すなわち、ステップSK10において、文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字が1つでも存在するか否かを判別する(ステップSK11)。
【0162】
文字種類を確定できなかったものが1つも存在しない場合(ステップSK11:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに成功したと判別し(ステップSK12)、光学認識処理を終了する。
一方、文字種類を確定できなかったものが1つでも存在する場合(ステップSK11:YES)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに失敗したと判別し(ステップSK4)、光学認識処理を終了する。
【0163】
このように、本実施形態では、ステップSK1の光学文字認識処理において処理対象文字の文字種類を仮確定し、当該仮確定した文字種類が、第2認識フェーズで第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、当該仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これは、以下の理由による。
すなわち、ステップSK1の光学文字認識処理は、小切手4の表面を示す画像データに基づいて、光学文字認識により、磁気インク文字の文字種類を仮確定する。ここで、上述のように、小切手4の表面にペン等で記入されたサインや汚れ等が、磁気インク文字列4Aの誤認識の原因となる場合があり得る。これを踏まえ、磁気的な処理による文字種類の確定ができなかった磁気インク文字について、単純に光学文字認識によって文字種類を確定することとしない。本実施形態では、光学文字認識により仮確定した文字種類が、第2認識フェーズにおいて正しい文字種類である蓋然性が最も高いとされた第1候補に係る文字種類、及び、正しい文字種類である蓋然性が2番目に高いとされた第2候補に係る文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これにより、誤認識を効果的に抑制している。
【0164】
以上説明したように、本実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムによれば、以下の効果が得られる。
【0165】
本実施形態では、磁気インク文字を読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、積算値が減少した後増加に転じる変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定する。
磁気的に取得した検出信号波形データの値を順次積算すると、積算値は、一つ前の磁気インク文字の終端で減少した後、次の磁気インク文字の始端で増加に転じる。そのため、積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出することで、各磁気インク文字の始端を検出することができる。このような変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定することにより、取得した信号波形データの出力が小さい場合や磁気インク文字の幅が狭い場合でも、精度良く文字波形データの切り出しを行うことができる。この結果、磁気インク文字認識の認識率を向上させることができる。
【0166】
また、本実施形態では、信号波形データの値が負の値から正の値に転じる点を変化点として検出するため、データの正負の符号が負から正に変わることで検出できるので、積算値の値の大小を比較して変化点を検出する場合に比べて、容易に変化点を検出することができる。
【0167】
また、本実施形態では、互いに隣り合う3つの変化点のうち、真中の変化点の積算値がその前後の変化点の積算値よりも小さい場合に、真中の変化点の位置に基づいて文字切り出し開始位置を決定するので、文字の始端ではない変化点の位置に基づいて、誤って文字切り出し開始位置を決定することが抑えられる。
【0168】
また、本実施形態では、決定された互いに隣り合う文字切り出し開始位置同士の間隔が所定の範囲以上である場合、両者の間でさらに変化点の検出を行うことにより、2文字分の文字波形を切り出す新たな文字切り出し開始位置を決定することが可能となる。
【0169】
また、本実施形態では、文字切り出し開始位置同士の間に2文字分の文字波形が存在する可能性があって、かつ、変化点が複数存在する場合、文字切り出し開始位置との間隔が1つの磁気インク文字に対応する範囲に最も近い変化点に基づいてあらたに文字切り出し開始位置を決定することで、最も確からしい位置で文字を切り出すことができる。
【0170】
また、本実施形態では、異なる方法によって磁気インク文字認識する複数の認識フェーズにおける磁気インク文字認識の結果に基づいて、多面的に磁気インク文字が示す文字種類の認識を行うことができ、磁気インク文字の誤認識を抑制することが可能となる。さらに、磁気インク文字認識による認識ができなかった場合であっても、光学文字認識による認識が試みられるため、磁気インク文字の認識率が向上するとともに、磁気インク文字認識、及び、光学文字認識の双方の結果を利用できるため、効果的に誤認識を抑制できる。
【0171】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。変形例を以下に述べる。なお、上述した実施形態と同一の構成については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
【0172】
(変形例)
例えば、上述した実施形態では、検出された文字の始端を文字の切り出し開始位置としているが、このような構成に限定されない。検出された文字の始端から前方へ所定の間隔(サンプリング単位)戻した位置を文字の切り出し開始位置としてもよい。
【0173】
また、上述した実施形態では、検出信号波形データの値が負の値から正の値に転じる際の最初の正の値となる点を変化点として検出しているが、このような構成に限定されない。負の値と正の値の値との間にある1つまたは複数のゼロ(0)点のうち、最初の正の値の1つ手前のゼロ(0)点を変化点としてもよい。
【0174】
また、上述した実施形態では、磁気インク文字認識により磁気インク文字の文字種類を認識できない場合に、磁気インク文字認識により検出された文字数と光学文字認識により検出された文字数とが一致すれば光学文字認識を実行する構成であったが、このような構成に限定されない。
磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、磁気インク文字認識による文字種類の確定、及び、光学文字認識による文字種類の確定を行い、磁気インク文字認識及び光学文字認識によって確定した文字種類が一致する場合に、磁気インク文字の文字種類の最終的な確定を行う構成としてもよい。このようにすれば、磁気インク文字の認識の確実性をより高めることができる。
【0175】
また、上述した実施形態では、ホストコンピューター70が文字認識部80を備え、磁気インク文字の認識を実行する構成であったが、この文字認識部80の機能を、小切手読取装置1に持たせるようにし、小切手読取装置1が単独で、磁気インク文字の認識に係る各種処理を実行する構成としてもよい。この場合、小切手読取装置1が、記録媒体処理装置として機能する。
【符号の説明】
【0176】
1…小切手読取装置(記録媒体処理装置)、4…小切手(記録媒体)、4A…磁気インク文字列、30…小切手搬送機構(搬送部)、54…磁気ヘッド(読取部)、70…ホストコンピューター(記録媒体処理装置)、71…制御部、73…ホスト側制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
小切手等の記録媒体に記録された磁気インク文字を読み取る磁気ヘッドを備え、搬送路を搬送される記録媒体の磁気インク文字を読み取って、磁気インク文字を認識する記録媒体処理装置(小切手類読取装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような記録媒体処理装置では、磁気インク文字を読み取って得られる信号波形データにおいて文字の最初のピークを検出し、検出された最初のピークの位置に基づいて信号波形データから1つの磁気インク文字に対応する文字波形データの切り出しを行う。そして、切り出した文字波形データの波形と規格で定められた文字種類の基準波形とを比較して磁気インク文字認識(MICR:Magnetic Ink Character Recognition)を行い、磁気インク文字の文字種類を判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−206362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、磁気インク文字から取得した信号波形データの出力が小さいことや磁気インク文字の幅が狭いこと等により、文字の最初のピークを正しく検出できない場合がある。そのような場合、信号波形データから文字波形データを切り出す際に、文字切り出し開始位置を誤って決定してしまい、切り出した文字波形データから磁気インク文字認識ができないことや認識率が低下することがあるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る記録媒体処理装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、前記搬送部と前記読取部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記搬送部を制御して前記記録媒体を搬送させ、搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、磁気インク文字を読み取って得られた信号波形データの積算値が減少した後増加に転じる変化点の位置に基づいて、1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定する。
磁気的に取得した検出信号波形データの値を順次積算すると、理想的には、積算値は、一つの磁気インク文字の始端においてゼロから増加した後、終端においてゼロに戻る。すなわち、検出信号波形データの値の積算値は、一つ前の磁気インク文字の終端で減少した後、次の磁気インク文字の始端で増加に転じる。そのため、積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出することで、各磁気インク文字の始端を検出することができる。したがって、変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定することにより、取得した信号波形データの出力が小さい場合や磁気インク文字の幅が狭い場合でも、精度良く文字波形データの切り出しを行うことができる。この結果、磁気インク文字認識の認識率を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記信号波形データの値が負の値から正の値に転じる点を前記変化点とすることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、積算値が減少から増加に転じる変化点を、信号波形データの値が負の値から正の値に転じる点として検出するので、データの正負の符号が負から正に変わることで検出できる。これにより、積算値の値の大小を比較して変化点を検出する場合に比べて、容易に変化点を検出することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、1つの前記変化点の位置における前記積算値がその前後に隣り合う前記変化点の位置における前記積算値よりも小さい場合に、前記1つの変化点の位置に基づいて前記文字切り出し開始位置を決定することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、互いに隣り合う3つの変化点のうち、真中の変化点の積算値がその前後の変化点の積算値よりも小さい場合に、真中の変化点の位置に基づいて文字切り出し開始位置を決定する。
文字種類によって、一つの磁気インク文字の波形データに変化点が複数存在する場合がある。すなわち、変化点の中に文字の始端である変化点と文字の始端ではない変化点とがある。文字の始端である変化点の積算値は、文字の始端ではない変化点の積算値よりも小さくなるので、真中の変化点の積算値がその前後の変化点の積算値よりも小さい場合に、真中の変化点が文字の始端であると判断できる。これにより、文字の始端ではない変化点の位置に基づいて、誤って文字切り出し開始位置を決定することが抑えられる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、決定された互いに隣り合う前記文字切り出し開始位置同士の間隔が所定の範囲以上である場合に、前記文字切り出し開始位置同士の間で前記変化点の検出を行うことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、決定された互いに隣り合う文字切り出し開始位置同士の間隔が所定の範囲以上である場合、両者の間に2文字分の文字波形が存在する可能性が高い。そこで、両者の間に変化点が存在すれば、2文字分の文字波形を切り出す新たな文字切り出し開始位置を決定することが可能となる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記文字切り出し開始位置同士の間に前記変化点が複数存在する場合に、前記文字切り出し開始位置との間隔が前記1つの磁気インク文字に対応する範囲に最も近い前記変化点に基づいて、あらたに前記文字切り出し開始位置を決定することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、文字切り出し開始位置同士の間に2文字分の文字波形が存在する可能性があって、かつ、両者の間に変化点が複数存在する場合、文字切り出し開始位置との間隔が1つの磁気インク文字に対応する範囲に最も近い変化点に基づいてあらたに文字切り出し開始位置を決定する。これにより、最も確からしい文字切り出し開始位置で文字を切り出すことができる。
【0017】
[適用例6]本適用例に係る記録媒体処理装置の制御方法は、記録媒体を搬送する搬送部と、前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、前記搬送部により前記記録媒体を搬送させ、搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、磁気インク文字を読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、積算値が減少した後増加に転じる変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定する。
磁気的に取得した検出信号波形データの値を順次積算すると、理想的には、積算値は、一つの磁気インク文字の始端においてゼロから増加した後、終端においてゼロに戻る。すなわち、検出信号波形データの値の積算値は、一つ前の磁気インク文字の終端で減少した後、次の磁気インク文字の始端で増加に転じる。そのため、積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出することで、各磁気インク文字の始端を検出することができる。したがって、変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定することにより、取得した信号波形データの出力が小さい場合や磁気インク文字の幅が狭い場合でも、精度良く文字波形データの切り出しを行うことができる。この結果、磁気インク文字認識の認識率を向上させることができる。
【0019】
[適用例7]本適用例に係るプログラムは、記録媒体を搬送する搬送部と、前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記搬送部により前記記録媒体を搬送させ、搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行する手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、磁気インク文字を読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、積算値が減少した後増加に転じる変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定する。
磁気的に取得した検出信号波形データの値を順次積算すると、理想的には、積算値は、一つの磁気インク文字の始端においてゼロから増加した後、終端においてゼロに戻る。すなわち、検出信号波形データの値の積算値は、一つ前の磁気インク文字の終端で減少した後、次の磁気インク文字の始端で増加に転じる。そのため、積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出することで、各磁気インク文字の始端を検出することができる。したがって、変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定することにより、取得した信号波形データの出力が小さい場合や磁気インク文字の幅が狭い場合でも、精度良く文字波形データの切り出しを行うことができる。この結果、磁気インク文字認識の認識率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る小切手読取装置の外観斜視図である。
【図2】小切手読取装置の内部構造を示す図である。
【図3】小切手読取装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図5】検出信号波形データの一例を示す図である。
【図6】文字波形データの一例を示す図である。
【図7】文字波形データの一例を示す図である。
【図8】出力が小さい場合の検出信号波形データの一例を示す図である。
【図9】文字幅が狭い場合の検出信号波形データの一例を示す図である。
【図10】文字切り出し開始位置決定処理の実行時における文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図11】文字切り出し開始位置決定処理の実行時における文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図12】文字切り出し開始位置決定処理の実行時における文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図13】出力が小さい場合の検出信号波形データの積算値の波形を示す図である。
【図14】文字幅が狭い場合の検出信号波形データの積算値の波形を示す図である。
【図15】差異量を説明するための図である。
【図16】光学認識処理の実行時における文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の一実施形態である記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムについて図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の寸法の比率、角度等が異なる場合がある。
【0023】
<記録媒体処理装置>
本実施形態に係る記録媒体処理装置を説明する。本実施形態に係る記録媒体処理装置は、小切手読取装置1とホストコンピューター70とで構成される。
【0024】
まず、本実施形態に係る小切手読取装置1の概略構成を説明する。図1は、本実施形態に係る小切手読取装置1の外観斜視図である。
小切手読取装置1は、シート状の記録媒体である小切手4に対し、小切手4に記録された磁気インク文字(MICR文字)の読み取りや、小切手4の両面の画像の読み取り、小切手4に対する裏書きに係る所定の画像の記録等の処理を行う装置である。
【0025】
小切手読取装置1は、本体ケース2と、本体ケース2の上側に被せた蓋ケース3とを備えており、この内部に各部品が組み込まれた構成となっている。
蓋ケース3には、上から見た場合にU形状をした細幅の垂直溝からなる小切手4の搬送路5が形成されており、搬送路5の一方の端は広幅の垂直溝からなる小切手供給部6に連通しており、搬送路5の他方の端は左右に分岐して、それぞれ広幅の垂直溝からなる第1小切手排出部7及び第2小切手排出部8に繋がっている。
【0026】
小切手4の表面4aには、所定の模様が形成された背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、その下端部分には、図1に示すように、長辺方向に延びる磁気インク文字列4Aが記録されている。磁気インク文字列4Aは、複数の磁気インク文字が横方向に並んで形成されている。
また、小切手4の裏面4bには、裏書き欄が形成されている。この裏書き欄には、後述する記録装置56によって、裏書きに係る所定の画像が記録される。
【0027】
小切手4は、上端4eが上方に位置し下端4fが下方に位置するように上下方向が揃えられ、かつ、表面4aがU形状の搬送路5の外側を向くように表裏が揃えられた状態(図1に示す状態)で、小切手供給部6に挿入される。小切手供給部6に挿入された小切手4は、後端4dを最初として搬送路5に送り出される。
【0028】
小切手供給部6から送り出された小切手4は、搬送路5に沿って搬送されながら、表面4aの画像である表面画像、及び、裏面4bの画像である裏面画像が読み取られ、さらに、表面4aに記録されている磁気インク文字列4Aが磁気的に読み取られる。そして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した小切手4については、裏書きに係る所定の画像の記録が行われた後に、第1小切手排出部7に排出される。
【0029】
一方、読み取りが失敗した小切手4については、裏書きに係る所定の画像が記録されることなく、第2小切手排出部8に排出される。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0030】
図2は小切手読取装置1の内部構造を示す説明図である。
小切手供給部6には、小切手4を搬送路5に送り出すための小切手送り出し機構10が配置されている。小切手送り出し機構10は、繰り出しローラー11、送り出しローラー12、送り出しローラー12に押し付けられているリタードローラー13、送り出し用モーター14、及び小切手押し付け用のホッパー15を備えている。
【0031】
送り出し用モーター14が駆動すると、小切手供給部6に入れた小切手4がホッパー15によって繰り出しローラー11の側に押し付けられ、この状態で、繰り出しローラー11及び送り出しローラー12が同期回転する。
【0032】
繰り出しローラー11によって小切手4は送り出しローラー12とリタードローラー13の間に送り込まれる。リタードローラー13には所定の回転負荷が与えられており、送り出しローラー12に直接に接触している一枚の小切手4のみが他の小切手4から分離されて搬送路5に送り出される。
【0033】
搬送路5は上述したようにU形状をしており、小切手供給部6に繋がっている直線状の上流側搬送路部分21と、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に繋がっており、僅かに折れ曲がった状態で延びている下流側搬送路部分23と、これらの間を繋ぐ湾曲搬送路部分22とを備えている。
【0034】
小切手供給部6から搬送路5に送り出された小切手4を当該搬送路5に沿って搬送する小切手搬送機構30は、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36と、これらに押し付けられて連れ回りする第1押圧ローラー41〜第6押圧ローラー46と、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36を回転駆動するための搬送用モーター37とを備えている。第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36は同期して回転するようになっている。搬送用モーター37として、例えばステッピングモーターが用いられている。このため、ステッピングモーターを駆動するステップ数により、小切手4の搬送量を知ることができる。
【0035】
第1搬送ローラー31〜第3搬送ローラー33は、上流側搬送路部分21における上流端、その中程の位置、及び湾曲搬送路部分22との境界位置にそれぞれ配置されている。第4搬送ローラー34は湾曲搬送路部分22における下流側の位置に配置されている。第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36は、下流側搬送路部分23における中程の位置及び下流端にそれぞれ配置されている。
【0036】
上流側搬送路部分21における第1搬送ローラー31及び第2搬送ローラー32の間には、その上流側から磁気インク文字着磁用の磁石51、表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53が配置されている。表面側コンタクトイメージセンサー52は、搬送路5を搬送される小切手4の表面4aに対向し、表面4aの画像である表面画像を読み取る。裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bに対向し、裏面4bの画像である裏面画像を読み取る。
【0037】
また、第2搬送ローラー32及び第3搬送ローラー33の間には、磁気インク文字を読み取る読取部としての磁気ヘッド54が配置されており、磁気ヘッド54には、当該ヘッドに小切手4を押し付けるための押圧ローラー55が対峙している。
下流側搬送路部分23における第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36の間には、裏書きに係る所定の画像の記録用の記録装置56が配置されている。記録装置56は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bの適切な位置に、適切な方向で所定の画像を記録可能な、印刷ヘッドやスタンプなどを備えている。
【0038】
搬送路5には、小切手搬送制御のための各種センサーが配置されている。磁石51の手前側の位置には、送り出される小切手4の長さを検出するための用紙長検出器61が配置されている。裏面側コンタクトイメージセンサー53と第2搬送ローラー32との間には、小切手4が重なった状態で搬送されていることを検出するための重送検出器62が配置されている。第4搬送ローラー34の手前側の位置にはジャム検出器63が配置されており、ジャム検出器63によって所定時間以上に亘って継続して小切手4が検出されている場合には、搬送路5に小切手4が詰まった紙詰まり状態になったことが分かる。
【0039】
第5搬送ローラー35の手前側の位置には、記録装置56によって裏書きされる小切手4の有無を検出するための印刷検出器64が配置されている。さらに、第6搬送ローラー36の下流側の位置、すなわち、搬送路5から第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に分岐している分岐路9の位置には、これらに排出される小切手4を検出するための排出検出器65が配置されている。
【0040】
分岐路9には、駆動モーター67(図3参照)によって切り替え操作される切り替え板66が配置されている。切り替え板66は、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に対して、搬送路5の下流端を選択的に切り替え、小切手4を選択された排出部に導くための部材である。
【0041】
図3は小切手読取装置1の機能的構成を示すブロック図である。
制御部71は、後述するホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の各部を中枢的に制御するものであり、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えている。
【0042】
制御部71は、ホスト側制御部73の制御の下、送り出し用モーター14、搬送用モーター37を駆動して小切手4(図1参照)を一枚ずつ搬送路5に送り出させ、送り出された小切手4を搬送路5に沿って搬送させる。制御部71による小切手4の搬送制御は、搬送路5に配置されている用紙長検出器61、重送検出器62、ジャム検出器63、印刷検出器64及び排出検出器65からの検出信号に基づいて行われる。
【0043】
小切手4の搬送に伴って、表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の表面の画像、裏面の画像をそれぞれ読み取り、読み取った画像を示す画像データを制御部71に出力する。制御部71は、これら画像データを、ホスト側制御部73に出力する。
また、磁気ヘッド54は、制御部71の制御の下、通過する磁気インク文字列4A(図1参照)によって形成される磁界の変化によって発生する起電力を検出し、検出信号として信号処理回路74に出力する。
【0044】
信号処理回路74は、増幅器や、ノイズ除去用のフィルター回路、A/D変換器等を備え、磁気ヘッド54から入力された検出信号を、増幅し、波形整形し、データとして制御部71に出力する。制御部71は、信号処理回路74から入力された検出信号を示すデータを、ホスト側制御部73に送信する。
操作部75は、本体ケース2(図1参照)に形成された電源スイッチや、操作スイッチ等の各種スイッチを備え、これらスイッチに対するユーザーの操作を検出し、制御部71に出力する。
【0045】
小切手読取装置1には、通信ケーブル72を介してホストコンピューター70が接続されている。
ホストコンピューター70は、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えて構成されたホスト側制御部73を備えている。ホスト側制御部73は、後述する文字認識部80を備えている。
【0046】
ホスト側制御部73には、各種情報を表示可能な表示器76と、キーボード、マウス等の入力デバイスが接続された操作部77と、EEPROMやハードディスク等の書き換え可能に各種データを記憶する記憶部78と、が接続されている。
記憶部78は、小切手読取装置1から入力された小切手4の表面画像や、裏面画像を示すデータや、検出信号を示すデータを記憶する。
【0047】
本実施形態では、ホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の制御部71が小切手読取装置1の各部を制御する。具体的には、ホスト側制御部73は、そのCPUがROMに記憶されたプログラムを実行して、制御部71を制御するための制御データを生成し、生成した制御データを小切手読取装置1の制御部71に対して出力することにより、小切手読取装置1の各部を制御する。すなわち、本実施形態では、ホストコンピューター70と、小切手読取装置1とが協働して、記録媒体たる小切手4に対して各種処理を実行する記録媒体処理装置として機能する。
【0048】
<文字認識部>
次いで、ホスト側制御部73が備える文字認識部80について説明する。
文字認識部80は、磁気インク文字列4Aを構成する磁気インク文字のそれぞれについて、文字の認識を行う。磁気インク文字とは、所定のフォント(例えば、E−13Bフォント)に準拠して、小切手4に磁気印刷された文字のことであり、1つの磁気インク文字は、予め定められた複数の文字種類のうちのいずれか1つの文字種類に対応している。そして、磁気インク文字の認識とは、読み取った磁気インク文字のそれぞれについて、各磁気インク文字の文字種類を確定し、又は、当該磁気インク文字の文字種類を確定できないことを検出することである。
【0049】
なお、E−13Bフォントでは、磁気インク文字の形状として、「0」〜「9」、トランジット記号(TRANSIT SYMBOL)、アマウント記号(AMOUNT SYMBOL)、オン−アス記号(ON−US SYMBOL)、及び、ダッシュ記号(DASH SYMBOL)の14個の文字種類に対応する形状が用意されている。規格で定められたこれらの複数の文字種類の基準波形は、記憶部78に記憶されている。
【0050】
また、磁気インク文字列4Aの各磁気インク文字は、小切手4にオフセット印刷により印刷される場合と、レーザー印刷により印刷される場合とがある。そして、オフセット印刷によって印刷される磁気インク文字と、レーザー印刷によって印刷される磁気インク文字とは、その形状が相違しているが、本実施形態では、後述するように、そのことに対応した上で磁気インク文字の認識を実行している。
【0051】
本実施形態では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について、磁気インク文字の文字種類を確定できれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものと判別され、一方、磁気インク文字の中に、1つでも磁気インク文字の文字種類が確定できないものがあれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗したものと判別される。
上述したように、制御部71は、ホスト側制御部73の制御の下、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した小切手4については、当該小切手4を第1小切手排出部7に搬送し、一方、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した小切手4については、所定の処理を実行した上で、当該小切手4を第2小切手排出部8に搬送する。
【0052】
図4は、文字認識部80の動作を示すフローチャートである。図4のフローチャートは、ある1つの小切手4について、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aの認識を実行する際の文字認識部80の動作を示しているものとする。そして、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aについて、磁気ヘッド54による読み取りが行われており、信号処理回路74によって、増幅処理や、フィルター処理、波形整形処理等の各種処理が実行されて検出信号を示すデータ(以下、「検出信号波形データ」という)が生成され、制御部71により、検出信号波形データが、ホスト側制御部73に出力されているものとする。
さらに、表面側コンタクトイメージセンサー52により、当該小切手4の表面の画像が読み取られ、画像データとして制御部71からホスト側制御部73に出力されているものとする。文字認識部80の機能は、ホスト側制御部73のCPUがROMに記憶されたプログラムを実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
【0053】
<磁気インク文字の切り出し>
図4に示すように、まず、ホスト側制御部73は、制御部71から入力された検出信号波形データを解析し、磁気インク文字列4Aに含まれる各磁気インク文字について、文字切り出し開始位置を決定する(ステップSA21)。ステップSA21では、磁気的に取得した検出信号波形データの値を順次積算すると磁気インク文字毎に波形データの積算値がゼロ(0)に戻る特性を利用して、各磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定している。ステップSA21の文字切り出し開始位置決定方法の詳細については後述する。
【0054】
次に、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、ステップSA21で決定した文字切り出し開始位置に基づいて、検出信号波形データから文字の切り出しを行う(ステップSA1)。文字の切り出しとは、検出信号波形データに基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、当該磁気インク文字の波形を示す文字波形データを生成することである。
【0055】
図5は、検出信号波形データ(一部)の内容の一例を模式的に示す図であり、図6及び図7は、ステップSA21及びステップSA1における処理により生成された文字波形データの内容の一例を模式的に示す図である。詳しくは、図6(A),図7(A)は検出信号波形データから切り出した文字波形データを示し、図6(B),図7(B)は図6(A),図7(A)の文字波形データの値を順次積算した積算値の波形を示す。また、図6(A),(B)は文字種類が「4」の場合の波形を示し、図7(A),(B)は文字種類が「1」の場合の波形を示している。なお、図6(A)と図6(B)、及び、図7(A)と図7(B)は、波形の形状を比較して示すものであり、Y軸方向の尺度は同一ではない。
【0056】
上述したように、本実施形態では、搬送路5内で小切手4を搬送しつつ、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aを磁気ヘッド54により読み取るが、その際、磁気ヘッド54では、搬送される小切手4の磁気インク文字列4Aを、後端4d側から前端4g側へ向かって所定のサンプリング周期で磁束を測定することにより、磁気インク文字列4Aの読み取りを実行する。以下の説明では、サンプリング周期の最小単位の間隔を、1サンプリング単位というものとする。
【0057】
図5では、X軸(横軸)は、時間の経過(サンプリング周期の経過)が規定され(原点からX軸右方に向かうに従って、1サンプリング単位が順次経過したことを示す)、Y軸(縦軸)は、時間の経過に伴う磁荷の変化量の相対値が規定されている。そして、図5では、磁気インク文字列4Aにおいて、小切手4の後端4d側から前端4g側に向かって、所定のサンプリング周期毎に磁荷の変化量の相対値がどのように変化したかが示されており、磁気インク文字列4Aに含まれる各磁気インク文字の磁荷の変化量に対応してY軸方向の値が上下すると共に、磁荷の変化量がプラスであるのかマイナスであるのかに応じてY軸方向の値の正負が変化する。
【0058】
図6(A)の例に示すように、検出信号波形データのX軸方向において1つの磁気インク文字に対応する波形が切り出される範囲は、所定のサンプリング単位S0(例えば、70サンプリング単位)と規定されており、この規定に準じるように、各種搬送制御が実行されると共に、1サンプリング単位の長さが規定されている。また、1つの磁気インク文字に対応する波形においては、文字切り出し開始位置から所定のサンプリング単位S1目(例えば、11サンプリング単位目)に、最初のピークPが位置するように規定されている。
【0059】
ところで、磁気的に取得した検出信号波形データにおいて1つの磁気インク文字に対応する波形のY軸方向における値は、理想的な波形では、波形が立ち上がる始端においてゼロ(0)から立ち上り、終端側に向かってプラス側及びマイナス側に変化した後、終端側においてゼロ(0)に戻る。また、前の磁気インク文字の終端と次の磁気インク文字の始端との間の空白部の値はゼロ(0)である。
【0060】
また、図6(B),図7(B)の例に示すように、1つの磁気インク文字に対応する波形のY軸方向における値を始端側からサンプリング単位毎に順次積算した積算値は、理想的な波形では、始端側においてゼロ(0)から立ち上り、終端側に向かってプラス側で増減した後、終端側においてゼロ(0)に戻る。すなわち、検出信号波形データの積算値は、1つの磁気インク文字の前後において最小値(0)となり、前の磁気インク文字の終端から次の磁気インク文字の始端まで最小値(0)が連続する。
【0061】
したがって、検出信号波形データの積算値が最も小さくなった後増加に転じる点(以下では、変化点という)を探すことにより、1つの磁気インク文字の始端を検出することが可能である。また、検出信号波形データにおいては、前の磁気インク文字の終端で負の値からゼロ(0)に戻った後、正の値に変わる点(変化点)を探すことにより、1つの磁気インク文字の始端を検出することが可能である。この磁気インク文字の始端を検出すれば、これに基づいて、文字切り出し開始位置を決定することができる。
【0062】
例えば、文字種類が「4」の波形では、図6(A)に○印で示すように、負の値からゼロ(0)を通過して正の値になる変化点が2つあるが、X軸左方側の変化点Eが文字の始端であり、X軸右方側の変化点Fはマイナス側ピークからプラス側ピークに向かう途中の点である。図6(B)に○印で示すように、積算値においては、文字の始端である変化点Eの値は変化点Fの値よりも小さい。
【0063】
文字種類が「1」の波形では、図7(A),(B)に○印で示すように、変化点は文字の始端である変化点Eのみである。また、図示を省略するが、文字種類によっては、1つの磁気インク文字の中に、文字の始端を含め変化点が3つあるものもある。なお、トランジット記号等の記号のように、1つの磁気インク文字の中に空白部がある文字種類では、始端と終端との間の空白部で積算値が一旦ゼロ(0)に戻る場合もある。
【0064】
本実施形態では、波形データの積算値が各磁気インク文字の前後で最も小さくなる(理想的にはゼロになる)特性を利用して、各磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定している。以下に、ステップSA21における文字切り出し開始位置を決定する方法を、従来の方法と比較して説明する。
【0065】
まず、本実施形態の文字切り出し開始位置決定方法を説明する前に、従来の文字切り出し開始位置決定方法を説明する。従来の方法では、文字認識部は、検出信号波形データを解析し、図6(A)に示す所定のレベルL1の値を超える当該波形の各ピークのうち後端側(X軸右方)に向かって1番目に現出する最初のピークPを検出する。
【0066】
ここで、ピークとは、検出信号波形データにおける極大値、極小値に対応する部分のことであり、これらピークはX軸方向において所定の周期で現出するよう規定されている。各ピークに対応するX軸の値をピークの位置という。また、所定のレベルL1は、Y軸方向における検出信号の所定の高さを示す値であり、通常発生する程度の外部ノイズによる波形の飛び出しよりも高くなるように適宜設定されている。所定のレベルL1は、例えば、検出信号波形データの振幅をY軸方向において256段階に分割し、その128段階をY軸のゼロとして、プラス側の10段階に相当する値で設定されている。
【0067】
次いで、ステップSA1で1つの磁気インク文字に対応する所定のサンプリング単位S0の範囲で切り出す際に、検出した最初のピークPの位置が、波形のX軸方向における所定のサンプリング単位S1目となるように文字切り出し開始位置を決定する。すなわち、検出した最初のピークPの位置から波形のX軸左方に所定のサンプリング単位S1目の位置を、文字切り出し開始位置と決定する。
【0068】
ところで、磁気ヘッド54による磁気的な読み取りにおいては、磁気インク文字から取得した検出信号波形データの出力が小さいことや、印刷された磁気インク文字の幅が狭いこと等により、文字切り出し開始位置を決定する基準となる最初のピークPを精度良く検出できない場合がある。このような事例について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、出力が小さい場合の検出信号波形データの一例を示す図である。図9は、文字幅が狭い場合の検出信号波形データの一例を示す図である。なお、図8と図9とでは、X軸及びY軸の尺度は同一ではない。
【0069】
図8に示す検出信号波形データの例には、C1からC13までの13の磁気インク文字に対応する波形が含まれている。C1からC13までの各磁気インク文字は、1つのカッコの幅が1つの文字に対応しており、それぞれP1からP13までの最初のピークを有している。しかしながら、出力が小さいことに起因して、C1,C2,C3,C5,C8,C9,C10,C11,C13の磁気インク文字に対応する波形における最初のピークP1,P2,P3,P5,P8,P9,P10,P11,P13の値は、所定のレベルL1よりも小さいため、これらのピークを最初のピークPとして検出することは困難である。
【0070】
このうち、C1,C2,C3,C5,C8,C11,C13の磁気インク文字に対応する波形では、最初のピーク以外のピークQ1,Q2,Q3,Q5,Q8,Q11,Q13が所定のレベルL1を超えているので、これらのピークを誤って最初のピークPとして検出してしまう。一方、C9,C10の磁気インク文字に対応する波形では、ピークが1つも検出されないため、文字切り出し開始位置を正しく決定できないこととなる。
【0071】
図9に示す検出信号波形データの例には、検出信号波形データにC1からC10までの10の磁気インク文字に対応する波形が含まれている。図9では、図8と同様に1つのカッコの幅が1つの文字に対応しているが、各磁気インク文字の文字幅が様々に異なっており、例えば、C3,C5の文字幅はC2,C4の文字幅に比べて小さくなっている。
【0072】
ここで、従来の文字切り出し開始位置決定方法では、1つの磁気インク文字の始端から次の磁気インク文字の始端までを所定の間隔S2(例えば、80サンプリング単位)として、先に切り出した磁気インク文字の文字切り出し開始位置から所定の間隔S2空けた位置から波形のX軸方向に向かって、次の磁気インク文字の最初のピークPの検出を開始する。
【0073】
このとき、C2の磁気インク文字に対応する波形の文字切り出し開始位置から所定の間隔S2空けた位置が、次のC3の磁気インク文字に対応する波形における最初のピークP3よりも前側(X軸左方)であれば、最初のピークP3を検出することは可能である。ところが、C3の磁気インク文字に対応する波形の文字切り出し開始位置から所定の間隔S2空けた位置が、次のC4の磁気インク文字に対応する波形における最初のピークP4よりも後側(X軸右方)であると、最初のピークP4を検出することは不可能となってしまう。同様に、C6の磁気インク文字に対応する波形における最初のピークP6も検出不可能となり、その結果、文字切り出し開始位置を正しく決定できないこととなる。
【0074】
このように、従来の文字切り出し開始位置決定方法では、最初のピークPの位置に基づいて文字切り出し開始位置を決定するため、最初のピークPを正しく検出できない場合、文字切り出し開始位置を精度良く決定できず、文字波形データの切り出しが精度良く行えないこととなる。
【0075】
次に、本実施形態に係る文字切り出し開始位置決定処理の方法を説明する。図10〜図12は、文字切り出し開始位置決定処理の実行時における文字認識部の動作を示すフローチャートである。詳しくは、図10は文字切り出し開始位置決定処理における動作の概略を示すフローチャートであり、図11は変化点検出処理における動作を示すフローチャートであり、図12は始端検出処理における動作を示すフローチャートである。
【0076】
また、図13及び図14は検出信号波形データの値を順次積算した波形の一例を示す図である。詳しくは、図13は図8の出力が小さい場合の検出信号波形データを積算した積算値の波形を示す図であり、図14は図9の文字幅が狭い場合の検出信号波形データを積算した積算値の波形を示す図である。
【0077】
図10に示すように、ステップSA21の文字切り出し開始位置決定処理として、文字認識部80は、ステップSA22の入力データ積算処理と、ステップSA23の変化点検出処理(図11参照)と、ステップSA24の文字の始端検出処理(図12参照)とを順に実行する。
【0078】
ステップSA22の入力データ積算処理では、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aを磁気的に読み取り得られた検出信号波形データ(図5参照)において、先頭位置(図5のX軸とY軸との交点)からサンプリング単位(経過時間)毎の値を入力データとして順次積算することにより、検出信号波形データの各サンプリング単位の位置(図5のX軸の値)における積算値を取得する。
【0079】
この入力データ積算処理により、例えば、図8の出力が小さい場合の検出信号波形データから図13のような積算値の波形が得られ、図9の文字幅が狭い場合の検出信号波形データから図14のような積算値の波形が得られる。なお、図13及び図14では、磁気ヘッド54の特性や読み取り時のノイズ等の影響によって理想的な波形とはならないため、1つの磁気インク文字の始端側と終端側とで積算値が同じにならず、また、磁気インク文字同士の間で始端側及び終端側の積算値が互いに同じになっていない。
【0080】
次に、図11を参照して、変化点検出処理(図10のステップSA23)について説明する。ステップSA23の変化点検出処理では、磁気インク文字列4Aから取得した検出信号波形データの先頭位置からサンプリング単位(経過時間)毎の値を入力データとして、ステップSB1〜ステップSB7までの各処理を実行する。ステップSA23の変化点検出処理は、検出信号波形データを積算した波形において、積算値が減少した後増加に転じる点(変化点)を見つけることを目的とする。
【0081】
図11に示すように、文字認識部80は、まず、入力データの値がゼロ(0)以外の値であるか否かを判別する(ステップSB1)。入力データの値がゼロ(0)以外の値である場合(ステップSB1:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSB2へ移行する。一方、入力データの値がゼロ(0)である場合(ステップSB1:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSB7へ移行する。
【0082】
次いで、文字認識部80は、入力データの値が正の値であるか否かを判別する(ステップSB2)。入力データの値が正の値である場合(ステップSB2:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSB3へ移行する。一方、入力データの値が負の値である場合(ステップSB2:NO)、文字認識部80は、フラグの値を負の値(例えば、−1)とした後(ステップSB6)、処理手順をステップSB7へ移行する。
【0083】
次いで、文字認識部80は、フラグの値が負の値であるか否かを判別する(ステップSB3)。フラグの値が負の値である場合(ステップSB3:YES)、文字認識部80は、変化点を検出したと判断して、処理手順をステップSB4へ移行する。一方、フラグの値が正の値である場合(ステップSB3:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSB7へ移行する。なお、フラグの値の初期値は負の値(例えば、−1)である。
【0084】
次いで、文字認識部80は、ステップSB3で変化点を検出したと判断した場合、変化点であるとされた入力データの位置(X軸の値)と、その位置におけるステップSA22の入力データ積算処理で得られた積算値とを記憶部78に保存する(ステップSB4)。そして、文字認識部80は、フラグの値を正の値(例えば、+1)とした後(ステップSB5)、処理手順をステップSB7へ移行する。
【0085】
ステップSB7では、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aから取得した検出信号波形データに含まれる全てのデータについて処理が終了したか否かを判別する。検出信号波形データに含まれる全てのデータについて処理が終了していない場合(ステップSB7:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSB1へ戻して、次の入力データについて各処理を実行し、一方、検出信号波形データに含まれる全てのデータについて処理が終了した場合(ステップSB7:YES)、ステップSA24の文字の始端検出処理に移行する。
【0086】
上述のように、ステップSA23の変化点検出処理では、検出信号波形データを積算した波形において積算値が減少した後増加に転じる変化点を、積算値からではなく、検出信号波形データの値の正負を表すフラグが負の値から正の値に変わる点、すなわち、検出信号波形データの波形がY軸方向においてマイナス側からゼロ(0)を通過してプラス側に変化する点として検出している。フラグの値は、検出信号波形データの値が負の値から正の値に変わるときに正の値に書き替えられ、検出信号波形データの値が正の値から負の値に変わるときに負の値に書き替えられる。このため、積算値の値の大小を比較して変化点を検出する場合に比べて、容易に変化点を検出することができる。
【0087】
ステップSA23の変化点検出処理により検出信号波形データから検出された変化点を、図8、図9、図13、及び図14に○印で示す。図8及び図9では、変化点は、検出信号波形データにおいて負の値が連続した後、ゼロ(0)を通過して正の値に変わる点である。図13及び図14では、変化点は、積算値が減少した後、増加に転じる点である。
【0088】
上述したように、文字種類によって、1つの磁気インク文字に対応する波形の中に変化点が1つある場合と、複数ある場合とがある。1つの磁気インク文字に変化点が複数ある場合は、磁気インク文字の始端である変化点の他に、マイナス側のピークからプラス側のピークに向かってゼロ(0)を通過する変化点が含まれている。そのため、ステップSA23の変化点検出処理により検出された変化点の中から、磁気インク文字の始端である変化点を抽出する必要がある。
【0089】
次に、図12を参照して、文字の始端検出処理(図10のステップSA24)について説明する。ステップSA24の文字の始端検出処理は、ステップSA23の変化点検出処理で検出された各変化点に対して、ステップSC1〜ステップSC10までの処理を実行することにより、各磁気インク文字の始端を検出して抽出することを目的とする。
【0090】
図12に示すように、文字認識部80は、まず、対象とする変化点の位置における積算値からその前(X軸左方側)の変化点の位置における積算値を差し引いた差分が負であるか否か、すなわち、対象とする変化点の位置における積算値がその前の変化点の位置における積算値よりも小さいか否かを判別する(ステップSC1)。積算値の差分が負である場合(ステップSC1:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSC2へ移行する。一方、積算値の差分が負でない場合(ステップSC1:NO)、文字認識部80は、対象とする変化点が文字の始端ではないと判断して(ステップSC9)、処理手順をステップSC10へ移行する。
【0091】
次いで、文字認識部80は、対象とする変化点の位置における積算値からその次(X軸右方側)の変化点の位置における積算値を差し引いた差分が負であるか否か、すなわち、対象とする変化点の位置における積算値がその次の変化点の位置における積算値よりも小さいか否かを判別する(ステップSC2)。積算値の差分が負である場合(ステップSC2:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSC3へ移行する。一方、積算値の差分が負でない場合(ステップSC2:NO)、文字認識部80は、対象とする変化点が文字の始端ではないと判断して(ステップSC9)、処理手順をステップSC10へ移行する。
【0092】
ここまでのステップSC1及びステップSC2の処理は、前後に隣り合う変化点よりも積算値が小さい変化点を探すことを目的とする処理である。1つの磁気インク文字において、理想的な検出信号波形データの積算値は、始端側のゼロ(0)から増加して、プラス側で増減した後(文字種類によって増減の仕方は異なる)、終端側でゼロ(0)に戻る。したがって、文字の始端である変化点における積算値は、始端と終端との間に位置する変化点における積算値よりも小さい。そこで、まず、ステップSC1及びステップSC2の処理を実行して、前後に位置する変化点よりも積算値が小さい変化点を検出する。
【0093】
次いで、文字認識部80は、対象とする変化点の位置と前の磁気インク文字の始端であるとして検出された変化点(以下では、前文字の始端という)の位置との間隔が、所定の範囲以上あるか否かを判別する(ステップSC3)。所定の範囲とは、例えば、1.5文字分(120サンプリング単位)の幅である。対象とする変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が所定の範囲以上ある場合(ステップSC3:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSC4へ移行する。
【0094】
一方、対象とする変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が1.5文字分の幅未満である場合(ステップSC3:NO)、文字認識部80は、対象とする変化点が文字の始端であると判断して、対象とする変化点の位置(X軸の値)と、その位置におけるステップSA22の入力データ積算処理で得られた積算値とを記憶部78に保存する(ステップSC8)。これにより、以降の処理ではこの変化点が前文字の始端となる。そして、処理手順をステップSC10へ移行する。
【0095】
ステップSC4では、文字認識部80は、対象とする変化点と前文字の始端との間に他の変化点が存在する場合、前文字の始端の次の変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が1.5文字分の幅以上あるか否かを判別する。前文字の始端の次の変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が所定の範囲(例えば、1.5文字分の幅)以上ある場合(ステップSC4:YES)、文字認識部80は、その変化点が文字の始端であると判断して、その位置(X軸の値)とその位置における積算値とを記憶部78に保存する(ステップSC6)。これにより、以降の処理ではこの変化点が前文字の始端となる。そして、処理手順をステップSC7へ移行する。
【0096】
なお、ステップSC4で、対象とする変化点と前文字の始端との間に他の変化点が存在せず、対象とする変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が1.5文字分の幅以上ある場合(ステップSC4:YES)、文字認識部80は、対象とする変化点が文字の始端であると判断して、ステップSC6の処理を行う。隣り合う磁気インク文字同士の間隔が広い場合、このように対象とする変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が1.5文字分の幅以上となることがあり得る。
【0097】
一方、前文字の始端の次(後)の変化点の位置と前文字の始端の位置との間隔が1.5文字分の幅未満である場合(ステップSC4:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSC5へ移行する。ステップSC5では、文字認識部80は、対象とする変化点の位置と前文字の始端の位置との間に存在する変化点の中で、前文字の始端の位置からの間隔が1文字分の幅に最も近い変化点を検出する。そして、ステップSC5で検出された変化点を文字の始端として、処理手順をステップSC6へ移行し、対象とする変化点の位置(X軸の値)と、その位置におけるステップSA22の入力データ積算処理で得られた積算値とを記憶部78に保存する。これにより、以降の処理ではこの変化点が前文字の始端となる。そして、処理手順をステップSC7へ移行する。
【0098】
次いで、文字認識部80は、対象とする変化点がステップSC6で前文字の始端として記憶された変化点と一致するかを判別する(ステップSC7)。対象とする変化点がステップSC6で前文字の始端として記憶された変化点と一致する場合(ステップSC7:YES)、文字認識部80は、処理手順をステップSC10へ移行する。一方、対象とする変化点がステップSC6で前文字の始端として記憶された変化点と一致しない場合(ステップSC7:NO)、文字認識部80は、対象とする変化点はそのままとして、処理手順をステップSC3へ戻す。
【0099】
ステップSC10では、ステップSA23の変化点検出処理で検出された全ての変化点について、ステップSC1〜ステップSC9までの処理が終了したか否かを判別する。全ての変化点について処理が終了していない場合(ステップSC10:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSC1へ戻して、次の変化点について各処理を実行する。
一方、全ての変化点について処理が終了した場合(ステップSC10:YES)、文字認識部80は、ステップSA24の文字の始端検出処理を終了する。
【0100】
ここで、上述した通り、文字種類によっては、1つの磁気インク文字における変化点が始端の1つのみである場合がある。このような文字種類が隣り合っていると、ステップSC1及びステップSC2において文字の始端である変化点同士を比較することとなり、文字の始端であるにもかかわらず、始端ではないと判断される変化点が生じてしまう。そこで、ステップSC1及びステップSC2で差分が負の場合、対象とする変化点は文字の始端であると考えられるが、ステップSC3で対象とする変化点の位置が前文字の始端の位置から1.5文字分の幅以上離れている場合は、対象とする変化点よりも前にもう一つの文字の始端が存在する可能性があるとして、ステップSC4及びステップSC5において、前文字の始端の位置から1文字分の幅程度離れている変化点を文字の始端として検出するようにしている。
【0101】
次に、図13を参照して、ステップSA24の文字の始端検出処理の例を説明する。図13において、変化点E1を1番目の文字の始端として、変化点F1から積算値の波形の右方向に向かって各処理を行う。ステップSC1で変化点F1の位置における積算値から変化点E1の位置における積算値を差し引いた差分が正となるので(ステップSC1:NO)、ステップSC9で変化点F1は文字の始端ではないと判断される。そして、ステップSC10で、全ての変化点について処理が終了していないので、処理手順をステップSC1へ戻し次の変化点F2を対象として各処理を実行する。
【0102】
変化点F2の処理では、ステップSC1で変化点F2の位置における積算値から変化点F1の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC1:YES)、ステップSC2に進む。変化点F2の位置における積算値から次の変化点E2の位置における積算値を差し引いた差分は正となるので(ステップSC2:NO)、ステップSC9で変化点F2は文字の始端ではないと判断され、処理対象が次の変化点E2に移行する。
【0103】
変化点E2の処理では、ステップSC1で変化点E2の位置における積算値から変化点F2の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC1:YES)、ステップSC2に進む。変化点E2の位置における積算値から次の変化点F3の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC2:YES)、ステップSC3に進む。図13中には明示していないが、変化点E2の位置と前文字の始端である変化点E1の位置との間隔が1.5文字分の幅未満であるので(ステップSC3:NO)、変化点E2は文字の始端であると判断され、処理手順がステップSC8へ移行する。これにより、変化点E2が以降の処理における前文字の始端とされ、処理対象が次の変化点F3に移行する。
【0104】
変化点F3の処理では、ステップSC1で変化点F3の位置における積算値から変化点E2の位置における積算値を差し引いた差分が正となるので(ステップSC1:NO)、ステップSC9で変化点F3は文字の始端ではないと判断され、処理対象が次の変化点E3に移行する。
【0105】
変化点E3の処理では、ステップSC1で変化点E3の位置における積算値から変化点F3の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC1:YES)、ステップSC2に進む。変化点E3の位置における積算値から次の変化点E4の位置における積算値を差し引いた差分は正となるので(ステップSC2:NO)、ステップSC9で変化点E3は文字の始端ではないと判断され、処理対象が次の変化点E4に移行する。
【0106】
変化点E4の処理では、ステップSC1で変化点E4の位置における積算値から変化点E3の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC1:YES)、ステップSC2に進む。変化点E4の位置における積算値から次の変化点F4の位置における積算値を差し引いた差分が負となるので(ステップSC2:YES)、ステップSC3に進む。変化点E4の位置と前文字の始端である変化点E2の位置との間隔が1.5文字分の幅以上であるので(ステップSC3:YES)、ステップSC4に進む。
【0107】
ここで、変化点E2の次に位置する変化点F3に戻って、変化点F3と変化点E2との間隔は1文字分の幅に比べて小さく(ステップSC4:NO)、次の変化点E3と変化点E2との間隔が1文字分の幅に近いので、次のステップSC5で変化点E3が文字の始端であると判断され、処理手順がステップSC6へ移行する。これにより、変化点E3が以降の処理における前文字の始端となる。そして、ステップSC7で、処理対象の変化点E4は前文字の始端である変化点E3と一致しないので、変化点E4について処理をステップSC3に戻す。
【0108】
ステップSC3において変化点E4の位置と前文字の始端である変化点E3の位置との間隔が1.5文字分の幅未満であるので(ステップSC3:NO)、変化点E4は文字の始端であると判断され、処理手順がステップSC8へ移行する。これにより、変化点E4が以降の処理における前文字の始端とされ、処理対象が次の変化点F4に移行する。
【0109】
このようにして、ステップSA23の変化点検出処理で検出された全ての変化点について、ステップSA24の文字の始端検出処理を行う。これにより、図13に示す出力が小さい検出信号波形データにおけるC1,C2,C3,C5,C8,C9,C10,C11,C13の各磁気インク文字について、変化点E1,E2,E3,E4,E5,E6,E7,E8,E9,E10,E11,E12,E13が文字の始端、すなわち文字切り出し開始位置として検出される。
【0110】
同様に、図14に示す文字幅が狭い検出信号波形データに対してステップSA24の文字の始端検出処理を実行することにより、図14におけるC1,C2,C3,C5,C8,C9,C10の各磁気インク文字についても、変化点E1,E2,E3,E4,E5,E6,E7,E8,E9,E10が文字の始端、すなわち文字切り出し開始位置として検出される。
【0111】
なお、上述したトランジット記号等の記号のように、1つの磁気インク文字の中に空白部がある文字種類では、始端と終端との中間で積算値が一旦ゼロ(0)に戻る変化点を有するものがある。このような場合でも、ステップSC5で前文字の始端の位置からの間隔が1文字分に最も近い変化点を次の文字の始端として検出することにより、1つの磁気インク文字の始端と終端との中間に位置する変化点を文字の始端と誤って検出することが抑えられる。
【0112】
以上により、文字認識部80は、ステップSA21の文字切り出し開始位置決定処理を終了し、決定した文字切り出し開始位置に基づいて、ステップSA1で検出信号波形データから1つの磁気インク文字の幅に対応する範囲で文字の切り出しを行う。これにより、磁気インク文字列4Aに含まれる1つの磁気インク文字について、図6(A),図7(A)に示すような文字波形データが生成される。
【0113】
なお、ステップSA1の文字の切り出しは、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、小切手4の後端4d側に配置された磁気インク文字から前端4g側に配置された磁気インク文字へ向かって、順番に行われ、切り出された磁気インク文字ごとにステップSA2以下の文字の認識に係る処理が実行される。
以下、ステップSA1において、切り出された1つの磁気インク文字のことを「処理対象文字」という。
【0114】
文字の切り出しの実行後、文字認識部80は、生成した処理対象文字の文字波形データについて、各データが示す波形のY軸方向における振幅レベルが、パターンマッチング用の基準波形データのY軸方向における振幅レベルと同等となるよう、データの正規化を行う(ステップSA2)。
パターンマッチング用の基準波形データとは、上述した14の文字種類のうち1つの文字種類に対応する磁気インク文字を磁気ヘッド54によって読み取ったときの検出信号の理想的な波形を示すデータであり、いわゆる磁気インク文字認識におけるパターンマッチング処理で供されるテンプレートデータに該当するデータである。
【0115】
<磁気インク文字認識処理>
ステップSA3以下の所定の処理は、いわゆる磁気インク文字認識に係る処理であり、ステップSA1において切り出された磁気インク文字(処理対象文字)に対して、順次実行され、これにより、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれに対して1回ずつ実行される。
【0116】
図4に示すように、ステップSA3以下には、第1認識フェーズ(ステップSA3)〜第4認識フェーズ(ステップSA11)の4つの認識フェーズが含まれている。これら4つの認識フェーズは、それぞれ異なる方法により処理対象文字の磁気インク文字認識を行い、当該処理対象文字の文字種類を確定し、又は、確定できないことを検出するフェーズである。
【0117】
第1認識フェーズ〜第3認識フェーズのいずれかのフェーズにおいて、処理対象文字の文字種類を確定できた場合は、次のフェーズを実行することなく、当該処理対象文字の次の磁気インク文字を処理対象文字とした上で、新たな処理対象文字に対して磁気インク文字認識を実行する。
【0118】
第1認識フェーズ(ステップSA3)では、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データのそれぞれと、14の文字種類に対応する基準波形データのそれぞれとの間の差異量を検出する。
【0119】
処理対象文字の文字波形データと基準波形データとの間の差異量の検出について説明する。図15は、ステップSA3で検出される差異量を説明する図である。図15において、文字波形データが示す波形は細線で示され、基準波形データが示す波形は太線で示されている。
差異量とは、図15中、斜線で示す領域の大きさのことであり、より具体的には、X軸上に規定された各サンプリング単位における、文字波形データが示す波形のY軸方向の値と、基準波形データが示す波形のY軸方向の値との差の絶対値の総和のことである。1つの文字波形データが示す波形と、1つの基準波形データが示す波形との間の差異量が小さければ小さいほど、当該1つの文字波形データが示す波形と、当該1つの基準波形データが示す波形とが近似しているということであり、当該1つの文字波形データに対応する磁気インク文字の文字種別が、当該1つの基準波形データに対応する文字種類である蓋然性が高いということである。
【0120】
第1認識フェーズにおける波形データの差異量の検出は、例えば、処理対象文字の文字波形データが示す波形と比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形とを単純に比較した場合と、処理対象文字の文字波形データが示す波形と比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形とを所定の範囲内で所定の距離だけスライドさせて比較した場合とで行う。
【0121】
差異量の検出結果に基づいて、文字認識部80は、差異量が最も小さかった基準波形データに対応する文字種類を第1候補とし、次に差異量が小さかった基準波形データに対応する文字種類を第2候補とする。
そして、文字認識部80は、第1候補および第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量を所定の閾値と比較する。その結果、第1候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下となり、かつ、第2候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値を上回る場合に、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。なお、第1候補との差異量が閾値を上回る場合は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第1認識フェーズを終了する。
【0122】
一方、第1候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であり、かつ、第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下である場合は、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定しない。
【0123】
ここで、上述の閾値は、処理対象文字の文字波形データと当該処理対象文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量のみが閾値以下となり、かつ、当該文字波形データと他の文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量が閾値を上回るように適宜設定される。このように閾値を設定することで、正常に小切手4が搬送され磁気ヘッド54により正常に磁気インク文字列4Aが読み取られれば閾値以下となる差異量に係る文字種類は1つに限定される。
【0124】
一方、閾値以下となる差異量に係る文字種類が複数存在している状況のときは、磁気ヘッド54による読み取りエラーや、小切手4の搬送エラー、その他の何らかの原因により、当該状況が現出している可能性がある。したがって、このような状況のときに処理対象文字の文字種類を確定すると、誤認識を招くおそれがある。
【0125】
なお、上述したように、オフセット印刷によって印刷される磁気インク文字の形状と、レーザー印刷によって印刷される磁気インク文字の形状とは、その形状が相違していることを踏まえ、本実施形態では、1つの文字種類に対応して、オフセット印刷用の基準波形データと、レーザー印刷用の基準波形データとの2種類のデータが用意されている。そして、第1認識フェーズでは、2種類の基準波形データのうち、オフセット印刷用の基準波形データが利用されて各種処理が実行される。また、第3認識フェーズ(ステップSA9)では、レーザー印刷用の基準波形データが利用されて各種処理が実行される。
【0126】
第1認識フェーズ(ステップSA3)の実行後、文字認識部80は、第1認識フェーズにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できたか否かを判別する(ステップSA4)。
処理対象文字の文字種類が確定できた場合(ステップSA4:YES)、文字認識部80は、第2認識フェーズを行うことなく、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0127】
ステップSA5では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となったか否か、換言すれば、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の全てについて、ステップSA1において文字の切り出しが行われ、かつ、文字認識に係る処理が実行されたか否かが判別される。
【0128】
磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となっていない場合(ステップSA5:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSA1へ戻して、次の磁気インク文字について文字の切り出しを実行する。一方、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となった場合(ステップSA5:YES)、処理手順をステップSA6へ移行する。
【0129】
また、ステップSA4において、第1認識フェーズで処理対象文字の文字種類が確定できなかったと判別した場合(ステップSA4:NO)、文字認識部80は、第2認識フェーズを実行する(ステップSA7)。
【0130】
第2認識フェーズ(ステップSA7)では、検出信号波形データにおける処理対象文字の文字間隔に基づいて磁気インク文字の伸びや縮みを検出し、検出された伸びや縮みを反映して、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を、例えば、文字間隔の両側又は片側に伸縮させて補正する。そして、補正された基準波形データ(補正波形データ)のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を検出する。
【0131】
ここで、磁気インク文字が印刷規格の中心値からずれて印刷されることに起因して、磁気インク文字が横方向(X軸に対応する方向)に縮んだ状態で、又は、伸びた状態で印刷されることがある。この場合、検出信号波形データに基づいて生成される文字波形データの波形がX軸方向に伸び、又は、縮む場合がある。また、小切手4の搬送の状況によっては、文字波形データの波形がX軸方向に伸び、又は、縮む場合がある。これを踏まえ、基準波形データの波形を所定の位置から所定の範囲でスライドさせた上で、処理対象文字の文字波形データの波形との間で差異量を検出することにより、上述した伸びや縮みを反映して、適切に差異量を算出することができる。
【0132】
文字認識部80は、第2認識フェーズにおいて、検出された差異量が最も小さかった補正波形データに対応する文字種類を第1候補とし、次に差異量が小さかった補正波形データに対応する文字種類を第2候補とする。そして、第1候補及び第2候補とされた文字種類に対応する補正波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量を所定の閾値と比較し、第1候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下となり、かつ、第2候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値を上回る場合に、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。
【0133】
また、第1候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であり、かつ、第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であっても、その差異量が上述の第1候補との差異量に所定の係数を乗じたもの以上である場合は、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。これら以外の場合は、処理対象文字の文字種類を確定しない。
【0134】
この第2認識フェーズでは、上述のように、文字波形データの波形の伸びや縮みを反映した上で、第1候補、及び、第2候補となる文字種類を選別する。そのため、第2認識フェーズで選別された第1候補及び第2候補は、本実施形態における他の認識フェーズにおいて選別された第1候補や第2候補と比較し、最も信頼性が高いといえる。
【0135】
第2認識フェーズ(ステップSA7)の実行後、文字認識部80は、第2認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA8)、確定できた場合は(ステップSA8:YES)、処理手順をステップSA5へ移行し、確定できなかった場合は(ステップSA8:NO)、第3認識フェーズを実行する(ステップSA9)。
第3認識フェーズ(ステップSA9)では、レーザー印刷用の基準波形データが利用されて、第1認識フェーズと同様の各種処理が実行されるので、説明を省略する。
【0136】
第3認識フェーズの実行後、文字認識部80は、第3認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA10)、確定できた場合は(ステップSA10:YES)、処理手順をステップSA5へ移行し、確定できなかった場合は(ステップSA10:NO)、第4認識フェーズを実行する(ステップSA11)。
【0137】
第4認識フェーズ(ステップSA11)では、全てのサンプリング単位ではなく、基準波形データのピークの位置やその前後のサンプリング単位目における基準波形データの波形と処理対象文字の文字波形データの波形とを比較する。これにより、処理対象文字の文字波形データの波形において、乱れがあった場合にその影響を排し、部分的な伸びや、縮み、ずれ、が生じた場合にこれらを反映して、適切に処理対象文字の文字認識を実行する。
【0138】
第4認識フェーズでは、処理対象文字の文字種類の最終的な確定を行わず、後述する所定の条件が成立した場合にのみ、処理対象文字の文字種類が確定される。これを踏まえ、第4認識フェーズにおける処理対象文字の文字種類の確定については、「仮確定」と表現し、他の認識フェーズにおける文字種類の確定と区別するものとする。
【0139】
第4認識フェーズの終了後、文字認識部80は、第4認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できたか否かを判別する(ステップSA12)。
第4認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できなかった場合(ステップSA12:NO)、換言すれば、第1認識フェーズ〜第4認識フェーズのいずれにおいても処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合、文字認識部80は、磁気インク文字認識では処理対象文字の文字種類を確定できないものと判別し(ステップSA13)、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0140】
第4認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できた場合(ステップSA12:YES)、文字認識部80は、第4認識フェーズにおいて仮確定した文字種類と、第2認識フェーズにおいて第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと、が一致するか否かを判別する(ステップSA14)。
【0141】
一致しない場合(ステップSA14:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字認識では処理対象文字の文字種類を確定できないものと判別し(ステップSA13)、処理手順をステップSA5へ移行する。
一方、一致する場合(ステップSA14:YES)、文字認識部80は、第4認識フェーズにおいて仮確定した文字を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSA15)、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0142】
このように、本実施形態では、第4認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類として仮確定した文字種類が、第2認識フェーズで第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、当該仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これは、以下の理由による。
すなわち、第2認識フェーズでは、全てのサンプリング単位における処理対象文字の文字波形データの波形と基準波形データの波形との間の差異量を用いて、磁気インク文字の認識を行う。一方、第4認識フェーズでは、特定のサンプリング単位目における基準波形データの波形と文字波形データの波形とを比較した比較値を用いて、磁気インク文字の認識を行う。
【0143】
そのため、この比較値を用いる第4認識フェーズでの基準波形データの波形と文字波形データの波形との間の近似度における相関の強さは、波形間の差異量を用いる第2認識フェーズよりも劣り、第4認識フェーズの認識の結果だけに基づいて文字種類を確定した場合、誤認識を招く可能性がある。
そこで、第4認識フェーズにおいて仮確定された文字種類が、他の認識フェーズに比べて信頼性が高い第2認識フェーズで選別された第1候補及び第2候補に係る文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し、これにより、誤認識を抑制している。
【0144】
上述のように、本実施形態では、第1認識フェーズ〜第4認識フェーズのいずれの認識フェーズにおいても、処理対象文字の文字波形データの波形と基準波形データの波形とを比較し、双方の波形データの間の差異量や比較値に基づいて磁気インク文字の認識を行っている。したがって、磁気インク文字から取得した信号波形データの出力が小さい場合や磁気インク文字の幅が狭い場合等で、信号波形データから文字波形データを切り出す際に、誤った文字切り出し開始位置で文字波形データを切り出してしまうと、切り出した文字波形データから磁気インク文字認識ができないことや認識率が著しく低下することがある。そこで、本実施形態では、波形データの積算値が各磁気インク文字の始端及び終端において最も小さくなる特性を利用して、出力が小さい場合や文字幅が狭い場合等でも精度良く各磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定できるようにしている。
【0145】
次に、ステップSA5において、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となったと判別された場合(ステップSA5:YES)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の文字数を検出する(ステップSA6)。
【0146】
次いで、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別する(ステップSA16)。
【0147】
全ての磁気インク文字について文字種類が確定した場合(ステップSA16:YES)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものとして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理には、例えば、磁気インク文字列4Aが示す情報を記憶部78に記憶し、また、制御部71に記録装置56を制御させて、小切手4の裏面に裏書きに係る所定の画像を記録し、また、第1小切手排出部7に小切手4を排出する等の処理が含まれる。
【0148】
一方、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字について、1つでも文字種類が確定しなかったものが存在した場合(ステップSA16:NO)、文字認識部80は、文字種類が確定しなかった磁気インク文字に対して光学的な文字の認識を行う光学認識処理(ステップSA18)を実行する。
【0149】
次いで、文字認識部80は、光学認識処理により、文字種類が確定していなかった全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA19)、全ての磁気インク文字について、文字種類が確定した場合は(ステップSA19:YES)、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。
【0150】
一方、1つでも文字種類が確定しなかった磁気インク文字が存在する場合(ステップSA19:NO)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理を行う(ステップSA20)。
磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理として、ホスト側制御部73は、制御部71を制御して、裏書きに係る画像の印刷等を行うことなく、第2小切手排出部8に小切手4を搬送する処理を行う。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0151】
<光学認識処理>
次に、文字認識部80の光学認識処理の動作について説明する。図16は、ステップSA18の光学認識処理の実行時における文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
光学認識処理において、まず、文字認識部80は、表面側コンタクトイメージセンサー52の読み取り結果に基づいて生成された、小切手4の表面の画像を示すデータに基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の光学文字認識を実行する(ステップSK1)。
【0152】
ステップSK1では、例えば、文字認識部80は、小切手4の表面を示す画像データにおいて、磁気インク文字列4Aの画像に対応するデータの範囲を特定すると共に、特定した範囲のデータについて、磁気インク文字ごとに画像データを切り出す。
【0153】
次いで、文字認識部80は、14種類の文字種類のそれぞれに対応するビットマップパターンと、切り出した磁気インク文字の画像データとを比較することにより、磁気インク文字のそれぞれの文字種類を仮確定する。なお、ステップSK1で確定された文字種類は、最終的な文字種類の確定ではないため、「仮確定」と表現する。
【0154】
次いで、文字認識部80は、ステップSK1の光学文字認識の結果に基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の文字数を検出する(ステップSK2)。
【0155】
次いで、文字認識部80は、図4のステップSA6で検出した文字数、すなわち、磁気ヘッド54により読み取られた検出信号波形データに基づいて検出された文字数と、ステップSK2で検出された文字数とが一致するか否かを判別する(ステップSK3)。
【0156】
文字数が一致しない場合(ステップSK3:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに失敗したと判別し(ステップSK4)、光学認識処理を終了する。これは、以下の理由による。
すなわち、ステップSK5以下の処理は、ステップSK1における光学文字認識処理の結果を利用して、文字種類が確定していない磁気インク文字について、文字種類の確定を試みる処理であり、上記文字数が異なっている場合は、磁気的な読み取り及び光学的な読み取りのうち少なくとも一方が失敗していることが考えられる。そのため、磁気インク文字認識により検出信号波形データに基づいて切り出した磁気インク文字のそれぞれと、光学文字認識により切り出した磁気インク文字のそれぞれとの対応関係について確実性が担保できず、ステップSK1における光学文字認識処理の結果を利用した文字種類の確定を実行できないからである。
【0157】
文字数が一致する場合(ステップSK3:YES)、文字認識部80は、図4のステップSA13において文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字の中から1つの磁気インク文字をステップSK6以下の処理を行う対象として特定する(ステップSK5)。
【0158】
ステップSK5以下の処理は、磁気インク文字認識では文字種類が確定できなかった磁気インク文字のそれぞれについて、順番に、行われる。以下、ステップSK5で特定された磁気インク文字を「処理対象文字」というものとする。
次いで、文字認識部80は、処理対象文字について、ステップSK1で仮確定された文字種類を取得する(ステップSK6)。
【0159】
次いで、文字認識部80は、処理対象文字について、ステップSK1で仮確定された文字種類と、上述した第2認識フェーズにおいて第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと、が一致するか否かを判別する(ステップSK7)。
一致する場合(ステップSK7:YES)、文字認識部80は、仮確定した文字を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSK8)、処理手順をステップSK9へ移行する。
一方、一致しない場合(ステップSK7:NO)、文字認識部80は、処理対象文字について、光学文字認識を利用した文字認識によっても文字種類を確定できないと判別し(ステップSK10)、処理手順をステップSK9へ移行する。
【0160】
ステップSK9において、文字認識部80は、図4のステップSA13において文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字の全てが、処理対象文字となったか否かを判別する。全ての磁気インク文字が処理対象文字となっていない場合(ステップSK9:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSK5へ戻す。
【0161】
一方、全ての磁気インク文字が処理対象文字となった場合(ステップSK9:YES)、文字認識部80は、文字種類を確定できない磁気インク文字が1つでもあるか否か、すなわち、ステップSK10において、文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字が1つでも存在するか否かを判別する(ステップSK11)。
【0162】
文字種類を確定できなかったものが1つも存在しない場合(ステップSK11:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに成功したと判別し(ステップSK12)、光学認識処理を終了する。
一方、文字種類を確定できなかったものが1つでも存在する場合(ステップSK11:YES)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに失敗したと判別し(ステップSK4)、光学認識処理を終了する。
【0163】
このように、本実施形態では、ステップSK1の光学文字認識処理において処理対象文字の文字種類を仮確定し、当該仮確定した文字種類が、第2認識フェーズで第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、当該仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これは、以下の理由による。
すなわち、ステップSK1の光学文字認識処理は、小切手4の表面を示す画像データに基づいて、光学文字認識により、磁気インク文字の文字種類を仮確定する。ここで、上述のように、小切手4の表面にペン等で記入されたサインや汚れ等が、磁気インク文字列4Aの誤認識の原因となる場合があり得る。これを踏まえ、磁気的な処理による文字種類の確定ができなかった磁気インク文字について、単純に光学文字認識によって文字種類を確定することとしない。本実施形態では、光学文字認識により仮確定した文字種類が、第2認識フェーズにおいて正しい文字種類である蓋然性が最も高いとされた第1候補に係る文字種類、及び、正しい文字種類である蓋然性が2番目に高いとされた第2候補に係る文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これにより、誤認識を効果的に抑制している。
【0164】
以上説明したように、本実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムによれば、以下の効果が得られる。
【0165】
本実施形態では、磁気インク文字を読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、積算値が減少した後増加に転じる変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定する。
磁気的に取得した検出信号波形データの値を順次積算すると、積算値は、一つ前の磁気インク文字の終端で減少した後、次の磁気インク文字の始端で増加に転じる。そのため、積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出することで、各磁気インク文字の始端を検出することができる。このような変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定することにより、取得した信号波形データの出力が小さい場合や磁気インク文字の幅が狭い場合でも、精度良く文字波形データの切り出しを行うことができる。この結果、磁気インク文字認識の認識率を向上させることができる。
【0166】
また、本実施形態では、信号波形データの値が負の値から正の値に転じる点を変化点として検出するため、データの正負の符号が負から正に変わることで検出できるので、積算値の値の大小を比較して変化点を検出する場合に比べて、容易に変化点を検出することができる。
【0167】
また、本実施形態では、互いに隣り合う3つの変化点のうち、真中の変化点の積算値がその前後の変化点の積算値よりも小さい場合に、真中の変化点の位置に基づいて文字切り出し開始位置を決定するので、文字の始端ではない変化点の位置に基づいて、誤って文字切り出し開始位置を決定することが抑えられる。
【0168】
また、本実施形態では、決定された互いに隣り合う文字切り出し開始位置同士の間隔が所定の範囲以上である場合、両者の間でさらに変化点の検出を行うことにより、2文字分の文字波形を切り出す新たな文字切り出し開始位置を決定することが可能となる。
【0169】
また、本実施形態では、文字切り出し開始位置同士の間に2文字分の文字波形が存在する可能性があって、かつ、変化点が複数存在する場合、文字切り出し開始位置との間隔が1つの磁気インク文字に対応する範囲に最も近い変化点に基づいてあらたに文字切り出し開始位置を決定することで、最も確からしい位置で文字を切り出すことができる。
【0170】
また、本実施形態では、異なる方法によって磁気インク文字認識する複数の認識フェーズにおける磁気インク文字認識の結果に基づいて、多面的に磁気インク文字が示す文字種類の認識を行うことができ、磁気インク文字の誤認識を抑制することが可能となる。さらに、磁気インク文字認識による認識ができなかった場合であっても、光学文字認識による認識が試みられるため、磁気インク文字の認識率が向上するとともに、磁気インク文字認識、及び、光学文字認識の双方の結果を利用できるため、効果的に誤認識を抑制できる。
【0171】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。変形例を以下に述べる。なお、上述した実施形態と同一の構成については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
【0172】
(変形例)
例えば、上述した実施形態では、検出された文字の始端を文字の切り出し開始位置としているが、このような構成に限定されない。検出された文字の始端から前方へ所定の間隔(サンプリング単位)戻した位置を文字の切り出し開始位置としてもよい。
【0173】
また、上述した実施形態では、検出信号波形データの値が負の値から正の値に転じる際の最初の正の値となる点を変化点として検出しているが、このような構成に限定されない。負の値と正の値の値との間にある1つまたは複数のゼロ(0)点のうち、最初の正の値の1つ手前のゼロ(0)点を変化点としてもよい。
【0174】
また、上述した実施形態では、磁気インク文字認識により磁気インク文字の文字種類を認識できない場合に、磁気インク文字認識により検出された文字数と光学文字認識により検出された文字数とが一致すれば光学文字認識を実行する構成であったが、このような構成に限定されない。
磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、磁気インク文字認識による文字種類の確定、及び、光学文字認識による文字種類の確定を行い、磁気インク文字認識及び光学文字認識によって確定した文字種類が一致する場合に、磁気インク文字の文字種類の最終的な確定を行う構成としてもよい。このようにすれば、磁気インク文字の認識の確実性をより高めることができる。
【0175】
また、上述した実施形態では、ホストコンピューター70が文字認識部80を備え、磁気インク文字の認識を実行する構成であったが、この文字認識部80の機能を、小切手読取装置1に持たせるようにし、小切手読取装置1が単独で、磁気インク文字の認識に係る各種処理を実行する構成としてもよい。この場合、小切手読取装置1が、記録媒体処理装置として機能する。
【符号の説明】
【0176】
1…小切手読取装置(記録媒体処理装置)、4…小切手(記録媒体)、4A…磁気インク文字列、30…小切手搬送機構(搬送部)、54…磁気ヘッド(読取部)、70…ホストコンピューター(記録媒体処理装置)、71…制御部、73…ホスト側制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送部と、
前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
前記搬送部と前記読取部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記搬送部を制御して前記記録媒体を搬送させ、
搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、
前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、
切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする記録媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記信号波形データの値が負の値から正の値に転じる点を前記変化点とすることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
1つの前記変化点の位置における前記積算値がその前後に隣り合う前記変化点の位置における前記積算値よりも小さい場合に、前記1つの変化点の位置に基づいて前記文字切り出し開始位置を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の記録媒体処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
決定された互いに隣り合う前記文字切り出し開始位置同士の間隔が所定の範囲以上である場合に、前記文字切り出し開始位置同士の間で前記変化点の検出を行うことを特徴とする請求項3に記載の記録媒体処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記文字切り出し開始位置同士の間に前記変化点が複数存在する場合に、前記文字切り出し開始位置との間隔が前記1つの磁気インク文字に対応する範囲に最も近い前記変化点に基づいて、あらたに前記文字切り出し開始位置を決定することを特徴とする請求項4に記載の記録媒体処理装置。
【請求項6】
記録媒体を搬送する搬送部と、前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、
前記搬送部により前記記録媒体を搬送させ、
搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、
前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、
切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする記録媒体処理装置の制御方法。
【請求項7】
記録媒体を搬送する搬送部と、前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記搬送部により前記記録媒体を搬送させ、
搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、
前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、
切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行する手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送部と、
前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
前記搬送部と前記読取部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記搬送部を制御して前記記録媒体を搬送させ、
搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、
前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、
切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする記録媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記信号波形データの値が負の値から正の値に転じる点を前記変化点とすることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
1つの前記変化点の位置における前記積算値がその前後に隣り合う前記変化点の位置における前記積算値よりも小さい場合に、前記1つの変化点の位置に基づいて前記文字切り出し開始位置を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の記録媒体処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
決定された互いに隣り合う前記文字切り出し開始位置同士の間隔が所定の範囲以上である場合に、前記文字切り出し開始位置同士の間で前記変化点の検出を行うことを特徴とする請求項3に記載の記録媒体処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記文字切り出し開始位置同士の間に前記変化点が複数存在する場合に、前記文字切り出し開始位置との間隔が前記1つの磁気インク文字に対応する範囲に最も近い前記変化点に基づいて、あらたに前記文字切り出し開始位置を決定することを特徴とする請求項4に記載の記録媒体処理装置。
【請求項6】
記録媒体を搬送する搬送部と、前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、
前記搬送部により前記記録媒体を搬送させ、
搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、
前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、
切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする記録媒体処理装置の制御方法。
【請求項7】
記録媒体を搬送する搬送部と、前記記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記搬送部により前記記録媒体を搬送させ、
搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られた信号波形データの値をサンプリング単位毎に順次積算して積算値を取得し、
前記信号波形データにおいて、前記積算値が減少した後増加に転じる変化点を検出し、前記変化点の位置に基づいて1つの磁気インク文字の文字切り出し開始位置を決定して、前記信号波形データから前記1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データの切り出しを行い、
切り出された前記文字波形データに対して磁気インク文字認識を実行する手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−243063(P2012−243063A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112115(P2011−112115)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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