記録媒体及び記録再生装置
【課題】高密度記録媒体において、データ記録容量を低下させることなく、記録再生装置に対して高精度トラッキングを可能とする記録媒体を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体4は、情報を記録する磁気記録部2と、情報が記録されない非磁気記録部3とを有するトラック間に、該トラック間を磁気的に分離するための非磁性ガイド部1が配置されている。非磁気記録部3は非磁性ガイド部1と連続して形成されている。磁気記録媒体4は、第1のトラックTr1,第2のトラックTr2の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr3の磁気記録部2の一部とが等しいトラック方向位置にある第1の領域、及び、第1のトラックTr1,第3のトラックTr3の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr2の磁気記録部の一部とが等しいトラック方向位置にある第2の領域を少なくとも1組有する。
【解決手段】磁気記録媒体4は、情報を記録する磁気記録部2と、情報が記録されない非磁気記録部3とを有するトラック間に、該トラック間を磁気的に分離するための非磁性ガイド部1が配置されている。非磁気記録部3は非磁性ガイド部1と連続して形成されている。磁気記録媒体4は、第1のトラックTr1,第2のトラックTr2の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr3の磁気記録部2の一部とが等しいトラック方向位置にある第1の領域、及び、第1のトラックTr1,第3のトラックTr3の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr2の磁気記録部の一部とが等しいトラック方向位置にある第2の領域を少なくとも1組有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にディスクリートトラック媒体のような高密度に情報を記録可能な磁気記録媒体に関する。また、本発明は、上記磁気記録媒体に対して情報の記録再生を行うことが可能な磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像又は映像の高画質化が進み、ユーザが扱う情報量は益々増加している。このため、HDD(Hard Disk Drive)と呼ばれる磁気記録装置の大容量化に向けて、面記録密度の高密度化検討が広く行われている。高密度磁気記録における有望な技術の一つとして、非磁性ガイド部によって磁気的に分離された磁気記録トラックを備えた磁気記録媒体であるディスクリートトラック媒体が挙げられる。このディスクリートトラック媒体の構成によれば、トラックエッジ部における粒子間の磁気的な相互作用はほぼなくなるため、媒体雑音が低減し、記録密度の大幅な向上を図ることが可能である。この点に関して説明する。
【0003】
従来の磁気記録媒体のように、媒体面内方向に一様に(連続的に)形成された磁性層においては、隣接トラックとの記録マークとの境界部分に磁化遷移領域が形成される。このため、隣接トラックとの記録マークの境界部分は、不明瞭となり、ノイズ源となってしまう。トラックピッチが小さくなっても、隣接トラックとの記録マークの境界部分の磁化遷移領域は小さくならないため、信号(Signal)に対し、相対的にノイズ(Noise)が大きくなる。この結果、トラックピッチが小さくなるに従い、得られるS/N比(Signal to Noise Ratio)が小さくなってしまう。一方、ディスクリートトラック媒体では、互いに磁気的に分離された磁気記録トラックに磁気情報が記録されており、記録マークのトラックエッジが磁気記録トラックのエッジとなる。従って、上述した従来の磁気記録媒体とは異なり、トラックピッチが小さい場合でも、比較的高いS/N比を確保することが可能となる。このため、ディスクリートトラック媒体では、従来の磁気記録媒体よりも高い記録密度を実現できる。
【0004】
このようなディスクリートトラック媒体の技術として、例えば特許文献1、2が挙げられる。特許文献1では、非磁性部分と磁気記録領域とを横断するように磁気再生素子を配置してトラッキングを行うタイプのディスクリートトラック媒体が開示されている。また、特許文献2では、データ信号記録領域と、従来のトラッキングサーボパターンを応用したトラッキングサーボ信号記録領域とを含む、ディスクリートトラック媒体が開示されている。
【0005】
特に、特許文献1では、非磁性部分と磁気記録領域とを横断する磁気再生素子を2つ並べて設け、この2つの磁気再生素子の信号の差分をとることでトラッキングを行う。このため磁気情報の再生を行う素子以外に、トラッキングを行うための非磁性部分と磁気記録領域とを横断する磁気再生素子が2つ必要となる。
【特許文献1】特開2006−244550公報(2006年9月14日公開)
【特許文献2】特開2006−252660公報(2006年9月21日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように記録再生ヘッドに磁気再生素子を複数設けることは、記録再生ヘッドのコスト増加につながる。また、磁気再生素子からは、電気的に信号検出を行うため、消費電力も大きくなってしまう。このため、1つの磁気再生素子で、磁気情報の再生及びトラッキング制御可能な技術であることが好ましい。
【0007】
また、ディスクリートトラック媒体のような高密度磁気記録媒体に形成された各トラック間のトラックピッチは、例えば50nm程度と非常に狭い。このため、ディスクリートトラック媒体に記録再生を行う磁気記録再生装置に備えられた記録再生ヘッド(磁気記録素子又は磁気再生素子)が、所望のトラックに対してわずかなズレを生じただけで、記録エラー又は再生エラーが発生しやすくなってしまうという虞がある。
【0008】
一般に、磁気記録再生装置が磁気記録媒体に対してトラッキング制御を行うときの、磁気記録媒体の半径方向における記録再生ヘッドの位置決め要求精度は、トラックピッチの10%以下とされている。このため、ディスクリートトラック媒体のように面記録密度が1Tb/in2程度のとき、上記位置決め要求精度として、数nm程度の精度が要求されると考えられる。
【0009】
この要求を実現するために、磁気記録再生装置においてより正確なトラッキング制御を行う方法として、トラッキング用サーボパターンでの信号検出頻度を高くすることが考えられる。しかしながら、上記信号検出頻度を高くするために、磁気記録媒体に単純にサーボパターンを形成する領域を増加させることは、データ記録領域の容量(磁気記録媒体に記録される情報量)を低下させてしまう虞がある。
【0010】
特許文献2の技術では、トラッキングサーボ信号記録領域がデータ信号記憶領域とは別途設けられている。すなわち、特許文献2の技術では、上述のように、データ記録領域の容量を低下させてしまう虞がある。
【0011】
また、従来のバーストパターンや特許文献2のように従来のバーストパターンを応用したトラッキングエラー信号検出用のパターンを設ける場合、該パターンエッジの位置ずれ(半径方向)が生じると、トラッキング精度が低下してしまう虞がある。これは、トラッキングエラー信号検出用のパターンのエッジ部(半径位置)が、再生または記録を行うトラックの半径方向における中心となるためであり、上記エッジ部の位置ずれの分だけ、磁気再生素子がオフトラックしてしまうためである。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ディスクリートトラック媒体のような高密度記録媒体において、データ記録領域の容量を低下させることなく、当該記録媒体の記録再生を行う記録再生装置に対してトラッキング制御用の信号を高精度に検出させることが可能な記録媒体を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、上記記録媒体に記録再生を行うことにより、記録再生ヘッドの位置決め精度を向上させることが可能な(すなわち、記録エラー及び再生エラーの少ない)記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る記録媒体は、上記課題を解決するために、情報を記録する記録部と、情報が記録されない非記録部とを有するトラックが等しい間隔で複数配置されるとともに、該トラック間に該トラック間を分離するための分離部が配置されている記録媒体であって、上記非記録部は、上記トラックに隣接する2つの上記分離部と連続して形成されており、上記複数のトラックのうちの1つのトラックを第1のトラックとし、該第1のトラックの両側に設けられた2つのトラックをそれぞれ第2のトラック及び第3のトラックとするとき、上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックに形成された記録部の一部とが、等しい、上記記録媒体の周方向であるトラック方向位置にある第1の領域、及び、上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックに形成された記録部の一部とが等しいトラック方向位置にある第2の領域、を少なくとも1組有することを特徴としている。
【0015】
このように構成することで、後述する本発明に係る記録再生装置は、非記録部が備えられたトラック方向位置において、記録再生ヘッドがオフトラックになることにより隣接するトラックから検出される信号の波形をもとに、トラッキング制御を行うことができる。つまり、上記構成によれば、例えば、第1の領域及び第2の領域における検出信号がゼロレベルになるように記録再生ヘッドのクロストラック方向における位置についてフィードバック制御を行うことで、トラッキングを行わせることが可能となる。よって、上記記録媒体は、トラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がないため、データ領域(記録部)をほとんど減少させることなく、記録再生装置に記録再生ヘッドの位置合わせを行わせることができる。また、記録媒体は、各々のトラックにおいて、非記録部を任意の頻度で設けることができ、非記録部の出現頻度を高くすることで、記録再生装置に対して、高い頻度でトラッキング制御用の信号を検出させることができる。
【0016】
以上により、上記記録媒体は、ディスクリートトラック媒体のような高密度記録媒体において、データ記録領域の容量を低下させることなく、当該記録媒体の記録再生を行う記録再生装置に対してトラッキング制御用の信号を高精度に検出させることが可能な記録媒体を提供することができるという効果を奏する。
【0017】
また、上記構成によれば、隣接する両側のトラックから検出される信号に基づきトラッキングエラー信号が検出される構成となっており、分離部の線幅(クロストラック方向への幅)の均一性が高いほど高精度のトラッキングが可能となる。EB(電子線)リソグラフィー等で直線的又は曲線的な均一幅のパターンを連続的に形成する場合、該線幅の均一性は、異なる位置にある複数のパターンにおけるエッジ部分の相対的な位置精度よりも高くなる。よって、上記構成によれば、より高精度のトラッキング制御が可能となる。
【0018】
なお、上記オントラックとは、記録媒体のクロストラック方向における記録再生ヘッドのクロストラック位置がトラックのクロストラック位置の中心とほぼ一致して、記録再生装置が所定の記録部から記録された情報を読み出すことが可能な状態を指す。また、上記オフトラックとは、上記オントラックとは逆の状態であって、記録媒体のクロストラック方向における記録再生ヘッドのクロストラック位置がトラックのクロストラック位置の中心からずれて、記録再生装置が所定の記録部から記録された情報を正しく読み出すことが難しい状態を指す。
【0019】
本発明による記録媒体は、上記トラックにおける上記非記録部と上記記録部との2つの境界のうち、媒体の移動方向に対して前方の境界を第1の境界、後方の境界を第2の境界とするとき、上記第2のトラックの第1の境界、上記第1のトラックの第1の境界、上記第1のトラックの第2の境界、及び上記第3のトラックの第2の境界のトラック方向位置が、この順に備えられており、かつ、上記第1のトラックの上記第1の境界と上記第2の境界とに挟まれたトラック方向位置に、上記第2のトラックの上記第2の境界及び上記第3のトラックの上記第1の境界が備えられていることが好ましい。
【0020】
このように構成することで、隣接する一方のトラックのみから信号が検出される領域と該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみから信号が検出される領域との相対的な位置関係が、各トラックにおいて等しくなり、記録再生ヘッドのオフトラック方向が特定されやすくなる。
【0021】
本発明による記録媒体は、上記トラックにおける上記非記録部と上記記録部との2つの境界のうち、媒体の移動方向に対して前方の境界を第1の境界、後方の境界を第2の境界とするとき、上記第2のトラックの上記第1の境界、上記第1のトラックの上記第1の境界、上記第3のトラックの上記第1の境界、上記第2のトラックの上記第2の境界、上記第1のトラックの上記第2の境界、上記第3のトラックの上記第2の境界のトラック方向位置が、この順に備えられていることが好ましい。
【0022】
このように構成することで、信号が検出されない領域が必ず存在するため、隣接する一方のトラックのみから信号が検出される領域と該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみから信号が検出される領域が、信号が検出されない領域を挟んで検出されるため、トラッキング用信号をより特定しやすくなり、トラッキングエラーが発生し難くなる。
【0023】
さらに、媒体作成における微細加工のばらつきによって、上記境界のトラック方向位置にばらつきが生じても、隣接する一方のトラックのみから信号が検出される領域と該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみから信号が検出される領域が、ゼロレベルの信号を挟んで分離して検出されるため、トラッキング用信号をより特定しやすくなり、トラッキングエラーが発生し難くなる。
【0024】
本発明に係る記録再生装置は、上記課題を解決するために、記録媒体におけるトラックに追従して情報の記録を行う記録素子、及び情報の再生を行う再生素子を有する記録再生ヘッドを備えている記録再生装置において、上記記録媒体が、上記本発明に係る記録媒体であり、当該記録媒体における第1のトラックについて記録または再生を行うとき、第1の領域における第3のトラックに形成された記録部、及び第2の領域における第2のトラックに形成された記録部から検出した信号の振幅に基づきトラッキングエラー信号を生成し、当該トラッキングエラー信号が所望の値となるように上記記録再生ヘッドの位置を制御することで、上記記録再生ヘッドがオントラックとなるように制御するトラッキング制御を行うことを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、本発明に係る記録再生装置は、再生素子が、隣接する一方のトラックのみから検出する信号及び、該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみか検出する信号をもとに、記録再生ヘッドが追従する第1のトラックに対するトラッキング制御を行うことができる。
【0026】
これにより、上記記録再生装置は、上記記録媒体がトラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設けていなくても、該記録媒体に対して、高精度に記録再生ヘッドの位置合わせを行うことができる。従って、上記記録再生装置は、上記記録媒体に記録再生を行うことにより、記録再生ヘッドの位置決め精度を向上させることが可能な(すなわち、記録エラー及び再生エラーの少ない)記録再生装置を提供することができるという効果を奏する。
【0027】
また、上述の記録媒体は、隣接する一方のトラックのみから信号を検出する領域及び、該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみから信号を検出する領域を、複数有する構成でもある。この場合には、上記記録再生装置は、トラッキング制御用の信号を高頻度で検出することが可能になるため、記録再生ヘッドに生じるオフトラックの検出頻度を高めることができる。すなわち、上記記録再生装置は、上記記録媒体に対して高頻度にトラッキング制御を行うことができる。
【0028】
本発明に係る記録再生装置は、上記再生素子の上記媒体の半径方向であるトラッククロス方向の検出幅をSw、上記記録媒体におけるトラック及び分離部のトラッククロス方向への幅をそれぞれMw及びGwとしたとき、Mw<Sw<Mw+2×Gwの関係を有していることが好ましい。
【0029】
再生素子の磁化検出幅Swを上記式となるように設定することで、再生素子は、記録再生ヘッドが追従する第1のトラックからの信号を最も大きい信号として検出できるため、クロストークが生じる場合でも、再生エラーが生じにくくなる。また、再生素子は、オフトラック時において、トラッキング制御用信号を高感度で検出することができるため、上記記録再生装置は、上記記録媒体に対して高精度なトラッキング制御を行うことができる。
【0030】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記記録素子と上記再生素子とのトラッククロス方向における距離を検出する距離検出動作を行うことが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、上記記録再生装置は、記録素子と再生素子とのトラッククロス方向における距離が、所定の値(例えば、記録素子と再生素子との距離が0)とは異なる場合であっても、記録時に記録素子がオフトラックになること防ぐことができる。すなわち、上記記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0032】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記距離検出動作は、上記記録素子による記録動作、上記再生素子による再生動作、及び該再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記記録媒体のトラッククロス方向における位置毎に繰り返し行う動作と、再生時において、オントラックであるときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるクロストラック位置をr1とし、上記記憶したエラーレートのうち、所望のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるクロストラック位置をr2とするとき、該記録素子と該再生素子とのトラッククロス方向における距離を(r1−r2)と決定する動作と、を含むことが好ましい。
【0033】
上記構成によれば、上記記録再生装置は、決定した上記距離r1−r2を記憶しておくことにより、再生素子がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。これにより、上記記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0034】
本発明に係る記録再生装置は、上記距離検出動作は、上記記録素子と上記再生素子とのトラッククロス方向における距離をトラッキングエラー信号の差として検出する動作であって、上記記録素子による記録動作、上記再生素子による再生動作、及び該再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記記録媒体のトラッククロス方向におけるトラッククロス位置毎に繰り返し行う動作と、再生時において、オントラックであるときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるトラッキングエラー信号をTES1とし、上記記憶したエラーレートのうち、所望のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドが検出したトラッキングエラー信号をTES2とするとき、該記録素子と該再生素子とのトラッククロス方向における距離をトラッキングエラー信号の差(TES2−TES1)として決定する動作と、を含むことが好ましい。
【0035】
上記構成によれば、上記記録再生装置は、トラッキングエラー信号の差(TES2−TES1)を記憶しておくことにより、再生素子がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。これにより、記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る記録媒体は、情報を記録する記録部と、情報が記録されない非記録部とを有するトラックが等しい間隔で複数配置されるとともに、該トラック間に該トラック間を分離するための分離部が配置されている記録媒体であって、上記非記録部は、上記トラックに隣接する2つの上記分離部と連続して形成されており、上記複数のトラックのうちの1つのトラックを第1のトラックとし、該第1のトラックの両側に設けられた2つのトラックをそれぞれ第2のトラック及び第3のトラックとするとき、上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックに形成された記録部の一部とが、等しい、上記記録媒体の周方向であるトラック方向位置にある第1の領域、及び、上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックに形成された記録部の一部とが等しいトラック方向位置にある第2の領域、を少なくとも1組有することを特徴としている。
【0037】
このように構成することで、後述する本発明に係る記録再生装置は、非記録部が備えられたトラック方向位置において、記録再生ヘッドがオフトラックになることにより隣接するトラックから検出される信号の波形をもとに、トラッキング制御を行うことができる。つまり、上記構成によれば、例えば、第1の領域及び第2の領域における検出信号がゼロレベルになるように記録再生ヘッドのクロストラック方向における位置についてフィードバック制御を行うことで、トラッキングを行わせることが可能となる。よって、上記記録媒体は、トラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がないため、データ領域(記録部)をほとんど減少させることなく、記録再生装置に記録再生ヘッドの位置合わせを行わせることができる。また、記録媒体は、各々のトラックにおいて、非記録部を任意の頻度で設けることができ、非記録部の出現頻度を高くすることで、記録再生装置に対して、高い頻度でトラッキング制御用の信号を検出させることができる。
【0038】
以上により、上記記録媒体は、ディスクリートトラック媒体のような高密度記録媒体において、データ記録領域の容量を低下させることなく、当該記録媒体の記録再生を行う記録再生装置に対してトラッキング制御用の信号を高精度に検出させることが可能な記録媒体を提供することができるという効果を奏する。
【0039】
また、本発明に係る記録再生装置は、記録媒体におけるトラックに追従して情報の記録を行う記録素子、及び情報の再生を行う再生素子を有する記録再生ヘッドを備えている記録再生装置において、上記記録媒体が、上記本発明に係る記録媒体であり、当該記録媒体における第1のトラックについて記録または再生を行うとき、第1の領域における第3のトラックに形成された記録部、及び第2の領域における第2のトラックに形成された記録部から検出した信号の振幅に基づきトラッキングエラー信号を生成し、当該トラッキングエラー信号が所望の値となるように上記記録再生ヘッドの位置を制御することで、上記記録再生ヘッドがオントラックとなるように制御するトラッキング制御を行うことを特徴としている。
【0040】
上記構成によれば、本発明に係る記録再生装置は、再生素子が、隣接する一方のトラックのみから検出する信号及び、該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみか検出する信号をもとに、記録再生ヘッドが追従する第1のトラックに対するトラッキング制御を行うことができる。
【0041】
これにより、上記記録再生装置は、上記記録媒体がトラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設けていなくても、該記録媒体に対して、高精度に記録再生ヘッドの位置合わせを行うことができる。従って、上記記録再生装置は、上記記録媒体に記録再生を行うことにより、記録再生ヘッドの位置決め精度を向上させることが可能な(すなわち、記録エラー及び再生エラーの少ない)記録再生装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図5に基づいて説明すると以下の通りである。
【0043】
(磁気記録再生装置の概略構成)
図2は、本実施形態に係る磁気記録媒体(情報記録媒体)4に対して情報の記録再生を行う磁気記録再生装置5の概略構成を示す図である。磁気記録再生装置5は、図2に示すように、サスペンション6と、スピンドル7と、ボイスコイルモータ8と、ランプ機構9と、記録再生ヘッド10とを備えている。また、図2では、磁気記録再生装置5は、磁気記録媒体4を備えた構成となっている。なお、磁気記録媒体4の構造、及び磁気記録再生装置5による磁気記録媒体4の記録再生方法については、後に詳述する。
【0044】
サスペンション6は、ボイスコイルモータ8に固定されており、ボイスコイルモータ8と反対側の先端に、磁気記録媒体4に対して磁界を印加する記録再生ヘッド10を備えている。
【0045】
スピンドル7は、磁気記録再生装置5が磁気記録媒体4に情報の記録再生を行うときに、磁気記録媒体4を反時計周り(図2の矢印方向)に回転させるものである。なお、磁気記録媒体4の中心部にはスピンドル7と嵌合可能なように穴部が形成されている。
【0046】
ボイスコイルモータ8は、サスペンション6に備えられた記録再生ヘッド10が磁気記録媒体4の半径方向(クロストラック方向)に磁気記録媒体4上を移動できるように、サスペンション6を移動させるものである。すなわち、記録再生ヘッド10は、ボイスコイルモータ8の作動に応じて、磁気記録媒体4に対する半径方向における半径位置を変更させることができる。
【0047】
ランプ機構9は、磁気記録媒体4に情報の記録再生を行わないときに、記録再生ヘッド10が退避するためのもの(すなわち、ランプ機構9において記録再生ヘッド10が固定される)である。
【0048】
記録再生ヘッド10は、磁気記録媒体4に情報の記録再生を行うときに、磁気記録媒体4に対して磁界を印加するものである。これにより、例えば、磁気記録媒体4の磁気記録トラックにおける磁気記録部(記録部)2(後述)の磁化方向を決定することができる。具体的には、記録再生ヘッド10は、図3に示すように、磁気記録媒体4に近い面に、垂直磁気記録媒体用の磁気記録素子11と磁気再生素子12とを備えている。図3は、磁気記録再生装置5の記録再生ヘッド10の概略構成を示す図である。
【0049】
磁気記録素子11は、磁気記録媒体4に情報を記録するときに記録可能な強度の磁界を、該磁気記録媒体4に印加するものである。同様に、磁気再生素子12は、磁気記録媒体4の磁気記録部2から磁化情報を読み出すものである。
【0050】
なお、磁気記録素子11と磁気再生素子12との磁気記録媒体4から見た円周方向(トラック方向)における位置関係は、記録再生ヘッド10が回転する磁気記録媒体4の任意の位置を通過するとき、この任意の位置上を磁気再生素子12が先に通過し、磁気記録素子11がその後に通過するような位置関係となっている。
【0051】
以上のように、磁気記録再生装置5は、スピンドル7及びサスペンション6の動作と、記録再生ヘッド10による磁界の印加とを制御することにより、磁気記録媒体4の所定の位置に記録再生を行うことができる。
【0052】
すなわち、磁気記録再生装置5は、サスペンション6、スピンドル7等の各種機能を制御するための所定の演算処理を行う制御部41を備えており、制御部41は例えばCPU(Central Processing Unit)等によって実現されている。さらに、制御部41は、本実施形態に係る磁気記録媒体4に対して記録再生を行うときの記録再生ヘッド10の制御を行うために、例えば信号特定部411と、差分算出部412と、ヘッド位置制御部413とを備えている。
【0053】
信号特定部411は、磁気再生素子12が磁気記録媒体4から読み出した磁化情報、すなわち磁気記録媒体4から検出した磁化情報を示す信号の振幅を、後述の予め設定された信号振幅と比較する。そして、信号特定部411は、比較した結果に基づいて、磁気記録媒体4からの検出信号が、記録再生ヘッド10が追従するトラックにおける磁気記録部2からの信号であるか、該トラックに隣接するトラックにおける磁気記録部2からの信号であるかを特定する。
【0054】
また、信号特定部411は、後述の予め記憶された領域判別用の信号振幅を参照することによって、磁気再生素子12が検出した信号が第1の領域31又は第2の領域32からの検出信号であると判定すると、両検出信号の振幅を差分算出部412に供給する。
【0055】
差分算出部412は、第1の領域31及び第2の領域32からの検出信号の振幅の差分を求め、該差分をヘッド位置制御部413に供給する。
【0056】
ヘッド位置制御部413は、ボイスコイルモータ8を制御することによって記録再生ヘッド10の位置制御を行うものであり、所定のトラック(追従して記録再生を行うトラック)へのトラッキングを実現するものである。ヘッド位置制御部413は、例えば磁気記録再生装置5の初期動作時に、後述の距離検出動作を行うことによって記録再生ヘッド10の位置制御を行う。
【0057】
また、ヘッド位置制御部413は、差分算出部412から供給される差分に基づいて、記録再生ヘッド10の半径方向への移動量を決定する。ヘッド位置制御部413は、上記差分が0である場合には、現在の記録再生ヘッド10の位置を変更しない(記録再生ヘッド10に対する移動制御を行わない)。一方、ヘッド位置制御部413は、上記差分が0でない場合には、例えば上記差分と上記移動量とが対応付けられたテーブルを参照することによって、記録再生ヘッド10を移動させるための移動量を決定する(記録再生ヘッド10に対する移動制御を行う)。すなわち、ヘッド位置制御部413は、記録再生ヘッド10に対するフィードバック制御(トラッキング制御)を行う。なお、ヘッド位置制御部413は、フィードバック制御を行うとき、例えば配置情報、識別情報を参照することによってオフトラック方向を判定している。
【0058】
さらに磁気記録再生装置5は、制御部41で利用される各種データ、プログラムの実行によって得られたデータ等を記憶する記憶部42を備えている。記憶部42は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、および、ROM(Read-Only Memory)やフラッシュメモリなどの不揮発性メモリで実現される。
【0059】
記憶部42は、各種データ又はプログラムとして、磁気再生素子12が追従するトラックであることを判別可能な信号振幅、領域判別用の信号振幅、配置情報、上記差分と記録再生ヘッド10の半径方向への移動量とを対応付けたテーブル等が記憶している。
【0060】
なお、磁気記録媒体4に対する磁気記録再生装置5の具体的な制御については、以下の磁気記録媒体4の記録再生方法において説明する。この記録再生方法での説明において、磁気記録再生装置5が行う制御は、制御部41が記憶部42に記憶された情報を参照することによって実現されている。
【0061】
(磁気記録媒体の概略構成及び製造方法)
次に、図2に示す磁気記録再生装置5に備えられた磁気記録媒体4について図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体4の概略構成を示す図である。
【0062】
磁気記録媒体4は、非磁性ガイド部(分離部)1によって磁気的に分断された磁気記録部2を備えたディスクリートトラック媒体である。磁気記録部2は、同心円状の磁気記録層であり、磁気記録再生装置5によって磁気情報が記録再生されるものであり、所定のトラックピッチ(例えば、50nm)で形成されている。本実施形態に係る磁気記録媒体4の磁気記録層の膜厚は30nmであるが、これに限らず、10nm〜60nmとなっていればよい。本磁気記録媒体4は円周上にトラックが形成されているため、周方向がトラック方向であり、半径方向がクロストラック方向となる。
【0063】
さらに、図1に示すように、非磁性ガイド部1によって磁気的に分離された磁気記録トラックは磁気記録部2と非磁気記録部(非記録部)3(非磁性ガイド部同様に非磁性体からなり、磁気記録を行わない領域)とを備えている。なお、非磁気記録部3は、上記磁気記録トラックの両側に設けられた2つの非磁性ガイド部1と連続して形成されている。
【0064】
各トラックにおいて、非磁気記録部3と、磁気記録部2との2つの境界のうち、媒体の回転方向(移動方向)に対して前方(紙面左側)の境界を第1の境界、媒体の回転方向に対して後方(紙面右側)の境界を第2の境界とすると、各境界は以下の順に並んでいる。
【0065】
第2のトラックTr2の第1の境界(周方向位置a)、第1のトラックTr1の第1の境界(周方向位置はb)、第1のトラックTr1の第2の境界(周方向位置d)及び第3のトラックの第2の境界(周方向位置e)の周方向位置が、この順に備えられており、第1のトラックTr1の第1の境界及び第2の境界に挟まれた周方向位置に、第2のトラックTr2の第2の境界(周方向位置c)及び第3のトラックの第1の境界(周方向位置c)が備えられている。このように、本実施形態では、第2のトラックTr2の第2の境界と第3のトラックの第1の境界とは等しい周方向位置にある。
【0066】
このような構造になっているため、第1のトラックTr1の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr2の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr3に形成された磁気記録部2の一部が等しい周方向位置にある第1の領域(bとcとに挟まれた領域)、及び、第1のトラックTr1の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr3の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックに形成された磁気記録部2の一部が等しい周方向位置にある第2の領域(cとdとに挟まれた領域)、を少なくとも1組有することになる。つまり、本実施形態においては、トラックTr1に限らず、各々のトラックにおいて上記同様の第1の領域及び第2の領域を少なくとも1組有することになる。
【0067】
また、磁気記録媒体4の回転方向は、図1及び図2に示すように、紙面右から左(矢印方向)となっているため、磁気記録再生装置5は、磁気記録媒体4において、紙面左側の磁気記録部2から順に信号検出していく。また、磁気記録媒体4は、例えば媒体面内方向に対して垂直方向に磁化されることで、情報が記録されるタイプの媒体である。
【0068】
以下、磁気記録媒体4の製造方法の一例を示す。まず、ガラス基板上に磁性層を形成した後、この磁性層上にレジストを塗布する。次に、電子線リソグラフィ法によって、レジストに微細パターンを形成した後、磁気記録部2を形成する材料を、この微細パターンが形成されたレジスト上に成膜する。その後、有機溶剤を用いて、レジストとレジスト上に堆積した磁気記録部2を形成する材料とを除去した後、この基板上に非磁性層を成膜する。本磁気記録媒体4の製造工程では、非磁性ガイド部1と非磁気記録部2の部分に堆積した磁性層が除去される。そして、この基板の非磁性層側から研磨を行うことで、磁気記録部2を表面に露出させると共に、基板表面を平滑にする。最後に、磁気記録部が形成された基板に対して潤滑剤を塗布する。
【0069】
上記磁気記録媒体4の製造方法では、磁気記録部2を形成する材料(磁性層)としては、例えば、Co、Pt、Fe、Ni、Cr、Mn又はこれらの金属からなる合金が挙げられる。また、上記合金としては、例えば、CoPt、SmCo、CoCr又はTbFeCo合金を用いることができる。さらに、レジストへの微細パターンの形成方法としては、例えば、陽極酸化法、フォトリソグラフィー法、ナノインプリント法等を用いることが可能である。また、磁性層の除去方法は、上記に限らず、ドライエッチング法やイオンミリング法などを用いることができる。
【0070】
また、上記磁気記録媒体4の製造方法では、磁気記録媒体4の片面にのみ磁気記録面(すなわち、磁気記録部2を有する面)を形成しているが、これに限らず、磁気記録媒体4の両面に磁気記録面を形成してもよい。この場合には、上記製造方法に示す工程が、磁気記録媒体4の両面に対して実施されればよい。なお、磁気記録媒体4の両面に形成される磁気記録面への潤滑剤の塗布については、同時に行うことも可能である。
【0071】
(磁気記録媒体の記録再生方法)
以下、磁気記録再生装置5が磁気記録媒体4に対して磁気情報を記録再生する方法について、図1〜図5を用いて説明する。
【0072】
本実施形態の磁気再生素子12は、磁化を検出しない場合、検出信号が0となるように設定してあり、図1において紙面手前から奥に向かう磁化を検出する場合、プラスの信号を検出し、紙面奥から手前に向かう磁化を検出する場合、マイナスの信号を検出する。また、磁化の向きが反対であり磁化の大きさが等しい場合、信号の符号は異なるが、大きさは等しくなるようになっている。さらに、磁気再生素子12の磁化検出幅Swは、磁気記録部2及び非磁性ガイド部1の幅をそれぞれMw及びGwとすると、以下の式(A)で表される幅となっている。
【0073】
Sw=Mw+Gw×2………(A)
つまり、磁気再生素子12の磁化検出幅Swは、第1のトラックTr1と、第1のトラックTr1を分離する両側の非磁性ガイド部との2つ分の幅になる。
【0074】
この磁気記録媒体4は、変調方式1−7RLL(Run Length Limited)で記録されており、2T,3T,・・・,8Tの長さの記録マーク長に対応した記録マークが、ランダムな信号に対応して記録されている。本実施形態においては、隣接する内周側のトラックの周方向位置b〜cまでは、6T,2T,3T,6T,4T,3T,2T,2T,6T,4T,2T,7Tの順で記録されており、磁化方向は最初の6Tが上向き、次の2Tが下向きとなっており、以降、上向きと下向きとが交互に記録されている。隣接する内周側のトラックの周方向位置c〜dまでは、3T,2T,6T,3T,2T,2T,4T,7T,6T,6T,2T,4Tの順で記録されており、磁化方向は最初の6Tが上向き、次の2Tが下向きとなっており、以降、上向きと下向きとが交互に記録されている。この波形の中心であるスライスレベル13から上に凸及び下に凸の波形はそれぞれ、上向き及び下向きの磁化を検出したときの波形となる。なお、上記信号の並びは上記のとおりである必要はなく、任意の信号に対応した任意の並びであればよい。
【0075】
ここで、再生時おける磁気再生素子の検出信号及びトラッキング方法について説明する。磁気再生素子12が、図1の第1のトラックTr1に沿い、オントラックの状態で、紙面左から右方向に向かって、信号を検出していく場合に得られる信号の模式図を、図5(a)に示す。また、図4(a)及び図4(b)に示すように磁気再生素子12が、内周及び外周方向にわずかにオフトラックした場合に得られる信号の模式図をそれぞれ、図5(b)及び図5(c)に示す。直線13はスライスレベルを示している。また、図5(a)〜図5(c)では、b〜c及びc〜dにおいて検出される信号をそれぞれ、S(b−c)及びS(c−d)として明示しており、その前後の信号を省略している。
【0076】
まず、図1で示すように、磁気再生ヘッド10が、図1に示す磁気記録媒体4の第1のトラックTr1に対してオントラックである場合、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが、ほぼ第1のトラックTr1の中心に沿って検出する信号S(b−c)及びS(c−d)は、図5(a)の通り、ゼロレベル(ノイズレベル)となり、スライスレベルの信号が検出される。なお、オントラックとは、記録再生ヘッド10の半径位置がトラックの半径位置の中心とほぼ一致して、磁気記録再生装置5が所定の磁気記録部2から記録された情報を読み出すことが可能な状態を指す。一方、オフトラックとは、記録再生ヘッド10の半径位置がトラックの半径位置の中心からずれて、磁気記録再生装置5が所定の磁気記録部2から記録された情報を正しく読み出すことが難しい状態を指す。
【0077】
次に、記録再生ヘッド10が磁気記録媒体4のトラックTr1に対してオフトラックである場合を考える。検出信号は、図5(a)に示す場合と異なり、オフトラックの方向に応じて、第1のトラックTr1に対して内側の磁気記録トラックから検出される信号S(b−c)または外周側にある磁気記録トラックから検出される信号のS(c−d)を検出する。
【0078】
記録再生ヘッド10が、図1の第1のトラックTr1の中心から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合(図4(a))、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが第1のトラックTr1の中心から内周側に位置ずれを起こしている場合、図5(b)に示されるように、b〜cの間に、隣接する内周側のトラックの信号S(b−c)を検出する(このときの最大振幅h1)。この場合、S(b−c)がゼロレベル(ノイズレベル)となるように、記録再生ヘッド10の半径位置を外周側にずらして第1のトラックTr1に戻るようにフィードバック制御を行う。また、記録再生ヘッド10が、図1の第1のトラックTr1の中心から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合(図4(b))、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが第1のトラックTr1の中心から外周側に位置ずれを起こしている場合、図5(c)に示されるように、c〜dの間に、隣接する外周側のトラックの信号S(c−d)を検出する(このときの最大振幅h2)。この場合、S(c−d)がゼロレベル(ノイズレベル)となるように、記録再生ヘッド10の半径位置を内周側にずらして第1のトラックTr1に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0079】
つまり、上記で示した検出信号S(b−c)の最大振幅h1及び検出信号S(c−d)の最大振幅h2を用いて、これらの差(h1−h2)をトラッキングエラー信号とすれば、トラッキングエラー信号(h1−h2)=0となるように、フィードバック制御(トラッキング制御)を行うことで、記録再生ヘッド10をオントラックの状態にすることができる。このように、最大信号振幅の差をトラッキングエラー信号とすることで、ノイズレベルの信号振幅をキャンセルすることも可能である。トラッキングエラー信号は、上記に限らず、ある一定の値に近づくことで、記録再生ヘッド10がオントラックとなるように制御することが可能となればよく、例えば、(h12−h22)としてもよく、また、ノイズレベルの信号振幅により、最大振幅h1及びh2がともにゼロにならない場合は、(h1−h2)/(h1+h2)としてもよい。
【0080】
以上により、磁気記録再生装置5は、第1のトラックTr1に対して僅かにオフトラックである場合であっても、最大振幅h1及びh2ともにゼロレベル(ノイズレベル)となるようにフィードバック制御を行うことで、トラッキング制御を行うことができる。なお、最大振幅h1及びh2は、再生を行っている第1のトラックTr1の最大信号振幅よりも小さい値となっているため、わずかなオフトラック等によりトラック間クロストークが発生する場合であっても、再生エラー等は生じ難い構成となっている。
【0081】
また、本実施形態では、第1のトラックTr1の隣接トラックTr2及びTr3の磁気記録部2に、変調方式1−7RLLに準じたランダムパターンが記録されている状態であったが、本発明によれば、その他の変調方式に準じたランダムパターンが記録された状態や、ランダムパターンが記録される前の状態であっても、トラッキング制御を行うことが可能である。例えば、磁気記録媒体4が一様に一方向に磁化された状態(DCイレース)であっても、磁気再生素子12は、オフトラック時に隣接トラックから信号を検出することが可能であり、トラッキング制御を行うことができる。このように、再生または記録を行っているトラックに隣接した2つのトラックからの磁気信号を検出することができる状態であれば、上記同様に、トラッキング制御を行うことが可能である。
【0082】
(オフトラック方向の特定方法)
ここで、上述したオフトラック方向について、その特定方法を説明する。本実施形態においては、図1に示すように、内周側(紙面下方)のトラックほど、非磁気記録部3の周方向位置が紙面右側に備えられている。このように、一定方向の隣接するトラックに移動するに従い、非磁気記録部3の周方向位置が一定の方向に移動するような構成とすることによって、信号検出において規則性をもたせることが可能となる。
【0083】
つまり、図1の各トラックにおいて、(1)隣接する外周側のみの磁気記録部2の信号(S(b−c))、(2)隣接する内周側のみの磁気記録部2の信号(S(c−d))の順で検出されることになる。本実施形態では、第2のトラックTr2の第2の境界と第3のトラックの第1の境界とは等しい周方向位置にあるため、(1)及び(2)は連続的に検出される。しかしながら、第2のトラックTr2の第2の境界と第3のトラックの第1の境界との位置関係によっては、信号(1)及び(2)の間に、その他の信号が検出される場合もある(例えば、後述する磁気記録媒体の変形例1など)。この結果、(1)及び(2)の信号を検出した段階で、オフトラックの方向が内周側であるか外周側であるかを特定することが可能となる。
【0084】
一方、従来の磁気記録媒体に用いられるトラッキングサーボ用パターン(バーストパターン)では、少なくとも4つの領域が必要とされる。このうち2つは、オフトラックを検出するための領域であり、残り2つはオフトラック方向を特定するための領域である。これに比べ、本発明では、上述したように、オフトラックを検出するための2つの領域によって、オフトラック方向も認識することが可能である。よって、従来のトラッキングサーボ用パターンにおけるオフトラックを検出するための領域と同程度の長さで、本発明によるオフトラックを検出するための領域を設けた場合であっても、データ領域の容量低下をより小さくすることが可能となる。
【0085】
また、上記構成によれば、内外周において隣接するトラックから検出される信号に基づき、トラッキングエラー信号を検出する構成となっており、非磁性ガイド部1の線幅(半径方向への幅)の均一性が高いほど高精度のトラッキングが可能となる。EB(電子線)リソグラフィ等で直線的又は曲線的な均一幅のパターンを連続的に形成する場合、該線幅の均一性は、異なる位置にある複数のパターンにおけるエッジ部分の相対的な位置精度よりも高くなる。よって、上記構成によれば、より高精度のトラッキング制御が可能となる。
【0086】
なお、磁気記録を行わない領域である非磁気記録部3は、非磁性ガイド部1と同様の非磁性体のみに限られるのもではなく、例えば、非磁性ガイド部1とは異なる非磁性体であってもよく、常磁性体であってもよい。また、非磁気記録部3は、磁気記録部2とは異なる強磁性体であってもよい。この場合、トラッキングエラー信号を検出する領域のゼロレベル(ノイズレベル)にオフセット値が加えられた値で検出されるが、上記同様にトラッキングエラー信号に基づいてトラッキング制御を行うことが可能である。
【0087】
また、本実施形態において、磁気再生素子12の磁化検出幅Swは、磁気記録部2及び非磁性ガイド部1の幅をそれぞれMw及びGwとすると、
Sw=Mw+Gw×2………(A)
であったが、磁化検出幅Swは、これに限るものではない。
【0088】
しかしながら、Sw<Mwである場合、再生すべきトラックにおける磁化の検出信号が小さくなる。また、磁気再生素子がオフトラックした場合に、隣接トラックから検出される信号が小さくなる(トラッキング制御用信号の検出感度が低下しまう)。このため、Sw>Mwであることが望ましい。
【0089】
一方、Sw>Mw+Gw×2となると、常に、隣接トラックから磁化情報を検出してしまうことになり、ノイズ成分が大きくなってしまう。よって、Sw<Mw+Gw×2を満たすことが望ましい。上述した2点を鑑み、磁気再生素子12の磁化検出幅Swは、Mw<Sw<Mw+Gw×2のとおりであることが望ましい。このようにすることで、オフトラックである場合に、トラッキング用の信号を検出することが可能であるともに、再生すべきトラックからは大きな信号が検出される。このため、再生エラーが生じにくい磁気記録再生装置を提供できる。
【0090】
(記録時のトラッキング)
記録を行う場合も同様の制御を行うことが可能である。記録時においては、磁気再生素子12によって、信号を検出してトラッキングを行いながら、磁気記録素子11によって、記録(磁界を発生させて、磁気記録部の磁化方向を変更する)を行う。
【0091】
本実施形態においては、各トラックにおける非磁性部の出現頻度は任意に設定することが可能であるため、非磁性部の出現頻度を高くすることで、オフトラック検出用信号を高頻度で検出することが可能となる。加えて、非磁気記録部3は、磁気記録部2(データ記録領域)に形成することができ、従来のように、トラッキングサーボ用パターンのみの領域を設ける必要がないため、容量の低下もほとんどない。よって、高精度トラッキングが実現可能であり、また、磁気記録媒体4のデータ記録領域の容量をほとんど低下させることなく、再生エラー及び記録エラーのより少ない磁気記録再生装置5を提供することが可能となる。
【0092】
(距離検出動作)
また、磁気記録再生装置5は、その初期動作(例えば、磁気記録再生装置5の起動)において、記録再生ヘッド10の磁気記録素子11と磁気再生素子12との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行うことが好ましい。磁気記録再生装置5の記録再生ヘッド10には個体差があるため、該記録再生ヘッド10の磁気記録素子11と磁気再生素子12との半径方向における距離についても、記録再生ヘッド10毎に異なる可能性が高い。
【0093】
従って、磁気記録再生装置5の初期動作において上記距離を検出することにより、磁気記録再生装置5は、この距離が所定の値(磁気記録素子11と磁気再生素子12との距離が例えば0)とは異なる場合であっても、記録時に磁気記録素子11がオフトラックになること防ぐことができる。すなわち、磁気記録再生装置5は、記録再生ヘッド10の個体差に起因した磁気記録素子11のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。ここで、上記距離を検出する場合の磁気記録再生装置5の初期動作としては、例えば、以下の動作が考えられる。
【0094】
まず、磁気記録再生装置5は、再生時にオントラックとなる記録再生ヘッド10の位置における半径位置(磁気記録媒体4の半径位置)をr1として磁気記録再生装置5に記憶する。次に、磁気記録素子11による記録動作と磁気再生素子12による再生動作とを行い、磁気再生素子12が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する。そして、磁気記録再生装置5は、上記記録動作、上記再生動作及び上記エラーレートの記憶動作を、記録再生ヘッド10の半径位置毎に繰り返し行う。なお、磁気記録再生装置5は、再生信号のエラーレートを記憶すると共に、このエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド10の半径位置を記憶する。ただし、再生動作を行う際の記録再生ヘッドの半径位置は、r1である。
【0095】
次に、磁気記録再生装置5は、記憶したエラーレートから最小のエラーレートを検出することにより、該最小のエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド10の半径位置r2を決定する。すなわち、磁気記録再生装置5は、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの記録再生ヘッド10の半径位置r2とし、決定した半径位置r1、r2から、磁気記録素子11と磁気再生素子12との半径方向における距離を(r1−r2)と決定する。
【0096】
そして、磁気記録再生装置5は、決定した上記距離(r1−r2)を記憶しておくことにより、磁気再生素子12がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。
【0097】
上記距離を検出する場合の磁気記録再生装置5の初期動作は、上記に限られるものではなく、磁気記録素子11と磁気再生素子12との半径方向における距離をトラッキングエラー信号の差として検出する、以下のような動作であってもよい。
【0098】
まず、磁気記録再生装置5は、再生時にオントラックとなる記録再生ヘッド10の位置において検出したトラッキングエラー信号をTES1として磁気記録再生装置5に記憶する。次に、磁気記録素子11による記録動作と磁気再生素子12による再生動作とを行い、磁気再生素子12が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する。そして、磁気記録再生装置5は、上記記録動作、再生動作及びエラーレートの記憶動作を、記録再生ヘッド10の半径位置毎に繰り返し行う。なお、磁気記録再生装置5は、再生信号のエラーレートを記憶すると共に、このエラーレートに対応する、記録動作時の磁気再生素子12が検出したトラッキングエラー信号を記憶する。ただし、再生動作を行う際の記録再生ヘッドの半径位置は、トラッキングエラー信号がTES1となる位置である。
【0099】
次に、磁気記録再生装置5は、記憶したエラーレートから最小のエラーレートを検出することにより、該最小のエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド10の半径位置において検出されるトラッキングエラー信号TES2を決定する。すなわち、磁気記録再生装置5は、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの記録再生ヘッド10の半径位置におけるトラッキングエラー信号TES2とし、TES1、TES2から、磁気記録素子11と磁気再生素子12との半径方向における距離を(TES1−TES2)として決定する。
【0100】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、トラッキングエラー信号の差(TES2−TES1)を記憶しておくことにより、磁気再生素子が検出するトラッキングエラー信号のが(TES2−TES1)となるように、オフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。これにより、磁気記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した磁気記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0101】
以上のように、上記磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置は、上記非磁性部が備えられた周方向位置において、隣接する磁気記録トラックから検出される信号の波形をもとに、トラッキング制御を行うことができる。つまり、上記構成によれば、上記第1の領域(bとcとに挟まれた領域)及び第2の領域(cとdとに挟まれた領域)における検出信号がゼロレベル(ノイズレベル)になるように記録再生ヘッドの半径方向における位置について、フィードバック制御を行うことで、トラッキングを行わせることが可能となる。よって、上記磁気記録媒体は、トラッキング制御用の信号検出のみのための磁気パターンを設ける必要がないため、データ領域をほとんど減少させることなく、磁気記録再生装置に記録再生ヘッドの位置合わせを行わせることができる。また、磁気記録媒体は、各々の磁気記録トラックにおいて、非磁気記録部を任意の頻度で設けることができ、非磁気記録部の出現頻度を高くすることで、磁気記録再生装置に対して、高い頻度でトラッキング制御用の信号を検出させることができる。なお、磁気記録部2は、情報を記録可能な領域であって、トラッキングサーボ用としてだけ機能するものではない。
【0102】
〔磁気記録媒体の第1の変形例〕
次に、磁気記録媒体4の第1の変形例について、図6を用いて説明する。図6は、当該変形例に係る磁気記録媒体4aの概略構成を示す図である。なお、磁気記録再生装置5の動作や磁気記録媒体4aの製造方法は、上記実施の形態1に準じている。
【0103】
磁気記録媒体4aも、上記と同様に、非磁性ガイド部1によって磁気的に分断された磁気記録部2を備えたディスクリートトラック媒体である。磁気記録部2は、同心円状の磁気記録層であり、磁気記録再生装置5によって磁気情報が記録再生されるものであり、所定のトラックピッチ(例えば、40nm)で形成されている。本変形例に係る磁気記録媒体4aの磁気記録層の膜厚は20nmであるが、これに限らず、10nm〜60nmとなっていればよい。さらに、図6に示すように、非磁性ガイド部1によって磁気的に分離された磁気記録トラックは磁気記録部2と非磁気記録部3(非磁性ガイド部1同様に非磁性体からなり、磁気記録を行わない領域)とを備えている。
【0104】
各トラックにおいて、非磁気記録部3と、磁気記録部2との2つの境界のうち、媒体の回転方向に対して前方(紙面左側)の境界を第1の境界、媒体の回転方向に対して後方(紙面右側)の境界を第2の境界とすると、各境界は以下の順に並んでいる。第1のトラックTr4に隣接する内周側(紙面下方)の第2のトラックTr4Aの第1の境界(周方向位置a)、第1のトラックTr4の第1の境界(周方向位置はb)、第1のトラックTr4の第2の境界(周方向位置d)及び第1のトラックTr4に隣接する外周側(紙面上方)の第3のトラックTr4Bの第2の境界(周方向位置e)の周方向位置が、この順に備えられており、第1のトラックTr4の第1の境界及び第2の境界に挟まれた周方向位置に、第2のトラックTr4Aの第2の境界(周方向位置c1)及び第3のトラックTr4Bの第1の境界(周方向位置c2)が、この順に回転方向において前方(紙面左)から備えられている。
【0105】
このように、本実施形態では、上記実施の形態1とは異なり、注目するトラックに対して隣接する内周側及び外周側のトラックをそれぞれ、第2のトラックTr4A及び第3のトラックTr4Bとしている。また、第2のトラックTr4Aの第2の境界(周方向位置c1)及び第3のトラックTr4Bの第1の境界(周方向位置c2)の周方向位置が異なる。
【0106】
このような構造になっているため、第1のトラックTr4の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr4Aの非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr4Bに形成された磁気記録部2の一部とが等しい周方向位置にある第1の領域(bとc1とに挟まれた領域)、及び、第1のトラックTr4の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr4Bの非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr4Aに形成された磁気記録部2の一部とが等しい周方向位置にある第2の領域(c2とdとに挟まれた領域)、を少なくとも1組有することになる。つまり、本実施形態においては、トラックTr4に限らず、各々のトラックにおいて上記同様の第1の領域及び第2の領域を少なくとも1組有することになる。
【0107】
上記実施形態1と同様に、bとc1とに挟まれた領域で信号を検出する場合は、外周側にオフトラックしており、c2とdとに挟まれた領域で信号を検出する場合は、内周側にオフトラックしていると認識でき、トラックTr4に戻るようにフィードバック制御を行うことができる。つまり、磁気記録再生装置5は、トラックTr4に対して僅かにオフトラックである場合であっても、トラックTr4に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。
【0108】
つまり、(bとc1とに挟まれた領域で検出される信号の最大振幅)と(c2とdとに挟まれた領域で検出される信号の最大振幅)との差をトラッキングエラー信号とすると、トラッキングエラー信号がゼロとなるように、フィードバック制御(トラッキング制御)を行うことで、記録再生ヘッド10をオントラックの状態にすることができる。
【0109】
ここで、上述したオフトラック方向についても、上記同様に特定することができる。本形態では、図6に示すように、内周側(紙面下方)のトラックほど、非磁気記録部3の周方向位置が紙面左側に備えられている。結果、図6の各トラックにおいて、(1)隣接する外周側のみの磁気記録部2の信号(b〜c1で検出される信号)、(2)隣接する内周側のみの磁気記録部2の信号(c2〜dで検出される信号)の順で検出されることになる。この結果、(1)及び(2)の信号を検出した段階で、オフトラックの方向が内周側であるか外周側であるかを特定することが可能となる。ただし、第2のトラックTr4Aの第2の境界と第3のトラックTr4Bの第1の境界との位置関係によっては、信号(1)及び(2)の間に、その他の信号が検出される場合もあり、本実施形態では、c1〜c2における信号が検出される。
【0110】
本変形例においても、上記実施形態1と同様に、磁気記録媒体4aは、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、磁気記録再生装置5に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、磁気記録媒体4aは、再生エラー及び記録エラーの少ない磁気記録再生装置5を提供することが可能となる。
【0111】
〔磁気記録媒体4の第2の変形例〕
磁気記録媒体4の第2の変形例について、図7を用いて説明する。図7は、当該変形例に係る磁気記録媒体4bの概略構成を示す図である。なお、磁気記録再生装置5の動作や磁気記録媒体4bの製造方法は、上記実施形態1に準じている。
【0112】
磁気記録媒体4bも、上記と同様に、非磁性ガイド部1によって磁気的に分断された磁気記録部2を備えたディスクリートトラック媒体である。磁気記録部2は、同心円状の磁気記録層であり、磁気記録再生装置5によって磁気情報が記録再生されるものであり、所定のトラックピッチ(例えば、45nm)で形成されている。当該変形例に係る磁気記録媒体4の磁気記録層の膜厚は25nm程度であるが、これに限らず、10nm〜60nmとなっていればよい。
【0113】
さらに、図7に示すように、非磁性ガイド部1によって磁気的に分離された磁気記録トラックは磁気記録部2と非磁気記録部3(非磁性ガイド部同様に非磁性体からなり、磁気記録を行わない領域)とを備えている。本変形例では、上記実施形態1および上記第1の変形例と異なり、後述する第1の領域および第2の領域を形成するために必要不可欠な部分のみ非磁気記録部3を設けた構成である。
【0114】
注目する第1のトラックに対して、隣接する2つのトラックを第2のトラック及び第3のトラックとすると、上記第1のトラックの非磁気記録部3の少なくとも一部と、上記第2のトラックの非磁気記録部3の少なくとも一部と、上記第3のトラックに形成された磁気記録部2の一部が等しい周方向位置にある第1の領域、及び、上記第1のトラックの非磁気記録部3の少なくとも一部と、上記第3のトラックの非磁気記録部3の少なくとも一部と、上記第2のトラックに形成された磁気記録部2の一部が等しい周方向位置にある第2の領域、を少なくとも1組有する構成となっている。図7に示すトラックTr5を第1のトラックとして具体的に説明すると以下の通りである。
【0115】
第1のトラックTr5に対して、隣接する外周側(紙面上方)及び内周側(紙面下方)のトラックをそれぞれ第2のトラックTr5A及び第3のトラックTr5Bとすると、第1のトラックTr5及び第2のトラックTr5Aが非磁気記録部3である領域と、第3のトラックTr5Bに形成された磁気記録部2とを含む第1の領域31、及び、上記第1のトラック及び上記第3のトラックが非磁気記録部3である領域と、上記第2のトラックに形成された磁気記録部2とを含む第2の領域32、を少なくとも1組有する構成となっている。また、トラックTr5に限らず、各々のトラックにおいて上記同様の第1の領域及び第2の領域を少なくとも1組有している。
【0116】
上記実施の形態1と同様に、第1の領域31で信号を検出する場合は、内周側にオフトラックしており、第2の領域32で信号を検出する場合は、外周側にオフトラックしていると認識でき、第1のトラックTr5に戻るようにフィードバック制御を行うことができる。つまり、磁気記録再生装置5は、第1のトラックTr5に対して僅かにオフトラックである場合であっても、第1のトラックTr5に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。
【0117】
オフトラック方向については、予め、磁気記録再生装置5が、第1の領域31のように隣接する内周側のトラックの信号を検出する領域と、第2の領域32のように隣接する外周側のトラックの信号を検出する領域とを検出する順番とを、トラックごとに記憶しておくことで、特定することが可能となる。この場合、例えば、各トラックにアドレス領域を設けておけばよい。このようにすることで、磁気記録再生装置5がアドレスによって各トラックを識別し、第1の領域31のような内周側へのオフトラックを検出することが可能な領域と、第2の領域32のような外周側へのオフトラックを検出することが可能な領域とが出現する順番を認識することが可能となる。結果、オフトラック方向が内周側であるか外周側であるかを認識することができる。
【0118】
本変形例においても、上記実施形態1と同様に、磁気記録媒体4bは、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、磁気記録再生装置5に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、磁気記録媒体4bは、再生エラー及び記録エラーの少ない磁気記録再生装置5を提供することが可能となる。
【0119】
〔磁気記録媒体4の第3の変形例〕
磁気記録媒体4の第3の変形例について、図8を用いて説明する。図8は、当該変形例に係る磁気記録媒体4cの概略構成を示す図である。なお、磁気記録再生装置5の動作や磁気記録媒体4cの製造方法は、上記実施形態1に準じている。
【0120】
磁気記録媒体4cは、非磁性ガイド部1によって磁気的に分断された磁気記録部2を備えたディスクリートトラック媒体である。磁気記録部2は、同心円状の磁気記録層であり、磁気記録再生装置5によって磁気情報が記録再生されるものであり、所定のトラックピッチ(例えば、50nm)で形成されている。本変形例に係る磁気記録媒体4cの磁気記録層の膜厚は30nmであるが、これに限らず、10nm〜60nmとなっていればよい。
【0121】
各トラックにおいて、あるトラック(第1のトラック)に隣接する内周側(紙面下方)及び外周側(紙面上方)のトラックをそれぞれ、第2のトラック及び第3のトラックとし、また、各トラックにおいて、非磁気記録部3と磁気記録部2との2つの境界のうち、媒体の回転方向に対して前方(紙面左側)の境界を第1の境界、媒体の回転方向に対して後方(紙面右側)の境界を第2の境界とすると、各境界は以下の順に並んでいる。
【0122】
第2のトラックTr6Aの第1の境界(周方向位置f)、第1のトラックTr6の第1の境界(周方向位置はg)、第3のトラックTr6Bの第1の境界(周方向位置h)、第2のトラックTr6Aの第2の境界(周方向位置i)、第1のトラックTr6の第2の境界(周方向位置j)及び第3のトラックTr6Bの第2の境界(周方向位置k)の周方向位置が、回転方向の前方(紙面左)から、この順に備えられている。
【0123】
このような構造になっているため、第1のトラックTr6の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr6Aの非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr6Bに形成された磁気記録部2の一部とが等しい周方向位置にある第1の領域(gとhとに挟まれた領域)、及び、第1のトラックTr6の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr6Bの非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr6Aに形成された磁気記録部2の一部とが等しい周方向位置にある第2の領域(iとjとに挟まれた領域)を、少なくとも1組有することになる。さらに、上記第1の領域(gとhとに挟まれた領域)と第2の領域(iとjとに挟まれた領域)との間に、第1〜第3のトラックすべてが、非磁気記録部3である領域(hとiとに挟まれた領域)が存在している。つまり、本実施形態においては、トラックTr6に限らず、各々のトラックにおいて上記同様の第1の領域及び第2の領域を少なくとも1組有することになる。
【0124】
トラッキングは、以下の方法で行う。磁気再生素子12が、図8のトラックTr6に沿い、オントラックの状態で、紙面左から右方向に向かって、信号を検出していく場合に得られる信号の模式図を、図10(a)に示す。また、図9(a)及び図9(b)に示すように磁気再生素子12が、内周及び外周方向にわずかにオフトラックした場合に得られる信号の模式図をそれぞれ、図10(b)及び図10(c)に示す。直線13はスライスレベルを示している。
【0125】
まず、図8で示すように、磁気再生ヘッド10が、磁気記録媒体4cの第1のトラックTr6に対してオントラックである場合、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが、ほぼ第1のトラックTr6の中心に沿って検出する信号は図10(a)の通りg〜jの間、スライスレベルの信号が検出される。
【0126】
また、記録再生ヘッド10が、図9(a)のように第1のトラックTr6の中心から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが第1のトラックTr6の中心から内周側に位置ずれを起こしている場合、図10(b)に示されるように、i〜jの間に、隣接する内周側のトラックの磁化を検出する。また、図9(c)のように、記録再生ヘッド10が、第1のトラックTr6から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが第1のトラックTr6の中心から外周側に位置ずれを起こしている場合、図10(c)に示されるように、g〜hの間に、隣接する外周側のトラックの磁化を検出する。図10(a)〜図10(c)では、g〜h、h〜i及びi〜jにおいて検出される信号をそれぞれ、S(g−h)、S(h−i)及びS(i−j)として明示しており、その前後の信号を省略している。
【0127】
記録再生ヘッド10が磁気記録媒体4cの第1のトラックTr6に対してオントラックであるとき、図10(a)に示されるように、g〜jの間でゼロレベル(ノイズレベル)となる。この場合、磁気記録再生装置5では、磁気記録媒体4cに対する記録再生ヘッド10の半径位置を調整することなく、第1のトラックTr6に記録された情報の再生を行うことが可能である。
【0128】
次に、記録再生ヘッド10が磁気記録媒体4cの第1のトラックTr6に対してオフトラックである場合、検出信号は、図10(a)に示す場合と異なり、g〜hまたはi〜j間で信号が検出される。
【0129】
すなわち、記録再生ヘッド10が、第1のトラックTr6から内周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、図10(b)に示すように、第1のトラックTr6の内周側にある磁気記録トラックの信号に対応する検出信号S(i−j)が検出される。従って、磁気記録再生装置5は、この検出信号がゼロレベル(ノイズレベル)になるように、記録再生ヘッド10の半径位置を外周側にずらして第1のトラックTr6に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0130】
一方、記録再生ヘッド10が、第1のトラックTr6から外周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、図10(c)に示すように、第1のトラックTr6の外周側にある磁気記録トラックの信号に対応する検出信号S(g−h)が検出される。従って、磁気記録再生装置5は、この検出信号がゼロレベル(ノイズレベル)になるように、記録再生ヘッド10の半径位置を内周側にずらして第1のトラックTr6に戻るようにフィードバック制御を行う。つまり、磁気記録再生装置5は、第1のトラックTr6に対して僅かにオフトラックである場合であっても、第1のトラックTr6に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。
【0131】
つまり、(iとjとに挟まれた領域で検出される信号の最大振幅)と(gとhとに挟まれた領域で検出される信号の最大振幅)との差をトラッキングエラー信号とすると、トラッキングエラー信号がゼロとなるように、フィードバック制御(トラッキング制御)を行うことで、記録再生ヘッド10をオントラックの状態にすることができる。
【0132】
ここで、上述したオフトラック方向について、その特定方法を説明する。本実施形態においては、図1に示すように、内周側(紙面下方)のトラックほど、非磁気記録部3の周方向位置が回転方向の前方(紙面左側)に備えられている。このように、一定方向の隣接するトラックに移動するに従い、非磁気記録部3の周方向位置が一定の方向に移動するような構成とすることによって、信号検出において規則性をもたせることが可能となる。つまり、図1の各トラックにおいて、(1)隣接する外周側のみの磁気記録部2の信号(S(g−h))、(2)非磁気記録部3のみからの信号である、ゼロレベル(ノイズレベル)の信号(S(h−i))、(3)隣接する内周側のみの磁気記録部2の信号(S(i−j))の順で、連続的に検出されることになる。この結果、(1)及び(3)の信号を検出した段階で、オフトラックの方向が内周側であるか外周側であるかを特定することが可能となる。
【0133】
また、g〜hとh〜iとの間に、信号が検出されない領域(h〜iの領域)を設けることで、オフトラック時であっても、S(g−h)とS(h−i)とが、ゼロレベル(ノイズレベル)の信号を挟んで分離して検出されるため、トラッキング用信号をより特定しやすくなり、トラッキングエラーが発生し難くなる。さらに、微細加工のばらつきによって、境界hやiの周方向位置にばらつきが生じても、S(g−h)とS(h−i)とが、ゼロレベル(ノイズレベル)の信号を挟んで、分離して検出されるため、トラッキング用信号をより特定しやすくなり、トラッキングエラーが発生し難くなる。
【0134】
本変形例においても、上記実施形態1と同様に、磁気記録媒体4cは、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、磁気記録再生装置5に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、磁気記録媒体4cは、再生エラー及び記録エラーの少ない磁気記録再生装置5を提供することが可能となる。
【0135】
〔磁気記録媒体4の第4の変形例〕
次に、磁気記録媒体4の第4の変形例について、図11を用いて説明する。図11は、当該変形例に係る磁気記録媒体4dの概略構成を示す図である。なお、磁気記録再生装置5の動作や磁気記録媒体4dの製造方法は、上記実施形態1に準じている。
【0136】
磁気記録媒体4dも、上記同様に、非磁性ガイド部1によって磁気的に分断された磁気記録部2を備えたディスクリートトラック媒体である。磁気記録部2は、同心円状の磁気記録層、磁気記録再生装置5によって磁気情報が記録再生されるものであり、所定のトラックピッチ(例えば、40nm)で形成されている。本変形例に係る磁気記録媒体4の磁気記録層の膜厚は20nmであるが、これに限らず、10nm〜60nmとなっていればよい。
【0137】
さらに、図11に示すように、非磁性ガイド部1によって磁気的に分離された磁気記録トラックは磁気記録部2と非磁気記録部3とを備えている。本変形例においては、非磁気記録部3が、比較的短い磁気記録部2を挟んで、2か所に形成されている。
【0138】
このような構造になっているため、第1のトラックTr7の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr7A(第1のトラックTr7に隣接する外周側のトラック)の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr7B(第1のトラックTr7に隣接する内周側のトラック)に形成された磁気記録部2とが等しい周方向位置にある2つの第1の領域(lとmとに挟まれた領域及び、oとpとに挟まれた領域)、及び、第1のトラックTr7の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr7Bの非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr7Aに形成された磁気記録部2とが等しい周方向位置にある2つの第2の領域(mとnとに挟まれた領域及び、pとqとに挟まれた領域)、を2組有することになる。つまり、本実施形態においては、トラックTr7に限らず、各々のトラックにおいて上記同様の第1の領域及び第2の領域を2組有することになる。
【0139】
lとmとに挟まれた領域及び、oとpに挟まれた領域で信号を検出する場合は、内周側にオフトラックしており、mとnとに挟まれた領域及び、pとqとに挟まれた領域で信号を検出する場合は、外周側にオフトラックしていると認識でき、トラックTr7に戻るようにフィードバック制御を行うことができる。つまり、磁気記録再生装置5は、トラックTr7に対して僅かにオフトラックである場合であっても、トラックTr7に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。
【0140】
各トラックにおける非磁気記録部3は、図12(a)のように、複数設けることが可能であり、その出現頻度を任意に設定することができるため、オフトラック量検出用信号を高頻度で検出することが可能となる。加えて、非磁気記録部3は、データ記録領域に形成することができ、従来のように、トラッキングサーボ用パターンのみの領域を設ける必要がないため、容量の低下もほとんどない。よって、高精度トラッキングを実現可能であり、また、磁気記録媒体4dのデータ記録領域の記憶容量をほとんど低下させることなく、再生エラー及び記録エラーのより少ない磁気記録再生装置5を提供することが可能となる。
【0141】
また、図12(b)のように、セクタ分離パターン14を形成することも可能であり、アドレス情報領域を設けることも可能である。
【0142】
〔磁気記録媒体4の第5の変形例〕
磁気記録媒体4の第5の変形例について、図13を用いて説明する。図13は、当該変形例に係る磁気記録媒体4eの概略構成を示す図である。なお、磁気記録再生装置5の動作や磁気記録媒体4eの製造方法は、上記実施形態1に準じている。
【0143】
非磁気記録部3の周方向への長さは、トラックごとに異なっていてもよく、例えば、図13に示すように、外周側(紙面上方)のトラックほど、非磁気記録部3が短くなっていてもよい。また、例えば、外周側のトラックほど、非磁気記録部3が長くなっていてもよい。このようにすることで、非磁気記録部3の長さによって、トラックを識別することが可能となる。
【0144】
〔誘電体記録再生装置への応用〕
また、本発明は、誘電体記録媒体及び誘電体記録再生装置についても同様に提供することができる。この場合、記録媒体としては誘電体記録部を備えた誘電体記録媒体を用いればよく、記録再生装置は、分極方向を検出する素子(再生素子)及び分極方向を変化させる素子(記録素子)を備えた記録再生ヘッドを具備していればよい。
【0145】
〔近接場光記録再生装置への応用〕
また、本発明は、近接場光記録媒体及び近接場光記録再生装置についても同様に提供することができる。この場合、記録媒体としては近接場光記録トラックを備えた近接場光記録媒体を用いればよく、記録再生装置は、近接場光の散乱強度を検出する光受素子(再生素子)及び近接場光の散乱強度を変化させる素子(記録素子)を備えた記録再生ヘッドを具備していればよい。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明に係る磁気記録媒体は、例えばディスクリート媒体のような高密度磁気記録媒体に好適に利用できる。また、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記磁気記録媒体に対して情報の記録再生を行う場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す磁気記録媒体に対して記録再生を行う磁気記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2に示す磁気記録再生装置の記録再生ヘッドの概略構成を示す図である。
【図4】図1に示す磁気記録媒体の再生時において、記録再生ヘッドがトラックTr1に対してオフトラックである状態を示す図である。同図(a)及び同図(b)はそれぞれ、記録再生ヘッドが内周側及び外周側にわずかにオフトラックしている状態を示す図である。
【図5】図1に示す磁気記録媒体から磁気再生素子が検出した信号を示す模式図である。同図(a)は、記録再生ヘッドが、トラックTr1に対してオントラックであるときの検出信号であり、同図(b)及び同図(c)はそれぞれ、内周側及び外周側にわずかにオフトラックしているときの検出信号を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図9】図8に示す磁気記録媒体の再生時において、記録再生ヘッドがトラックTr6に対してオフトラックである状態を示す図である。同図(a)及び同図(b)はそれぞれ、記録再生ヘッドが内周側及び外周側にわずかにオフトラックしている状態を示す図である。
【図10】図8に示す磁気記録媒体から磁気再生素子が検出した信号を示す模式図である。同図(a)は、記録再生ヘッドが、トラックTr6に対してオントラックであるときの検出信号であり、同図(b)及び同図(c)はそれぞれ、内周側及び外周側にわずかにオフトラックしているときの検出信号を示す模式図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0148】
1 非磁性ガイド部(非磁性分離部)
2 磁気記録部
3 非磁性部
4 磁気記録媒体
5 磁気記録再生装置
6 サスペンション
7 スピンドル
8 ボイスコイルモーター
9 ランプ機構
10 記録再生ヘッド
11 磁気記録素子
12 磁気再生素子
13 検出された信号のゼロレベル
14 セクタ分離パターン
a〜q 磁気記録媒体の周方向位置(トラック方向位置)
Tr1〜Tr7、Tr4A〜Tr7A、Tr4B〜Tr7B
トラックの番号(一点鎖線はトラックの中心を示す)
Sw 磁気再生素子の検出幅
Cmr 磁気再生素子の中心
S(b−c)、S(c−d)、S(g−h)〜S(i−j)
磁気記録部から検出された信号
h1、h2 磁気再生素子によって検出される信号の振幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にディスクリートトラック媒体のような高密度に情報を記録可能な磁気記録媒体に関する。また、本発明は、上記磁気記録媒体に対して情報の記録再生を行うことが可能な磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像又は映像の高画質化が進み、ユーザが扱う情報量は益々増加している。このため、HDD(Hard Disk Drive)と呼ばれる磁気記録装置の大容量化に向けて、面記録密度の高密度化検討が広く行われている。高密度磁気記録における有望な技術の一つとして、非磁性ガイド部によって磁気的に分離された磁気記録トラックを備えた磁気記録媒体であるディスクリートトラック媒体が挙げられる。このディスクリートトラック媒体の構成によれば、トラックエッジ部における粒子間の磁気的な相互作用はほぼなくなるため、媒体雑音が低減し、記録密度の大幅な向上を図ることが可能である。この点に関して説明する。
【0003】
従来の磁気記録媒体のように、媒体面内方向に一様に(連続的に)形成された磁性層においては、隣接トラックとの記録マークとの境界部分に磁化遷移領域が形成される。このため、隣接トラックとの記録マークの境界部分は、不明瞭となり、ノイズ源となってしまう。トラックピッチが小さくなっても、隣接トラックとの記録マークの境界部分の磁化遷移領域は小さくならないため、信号(Signal)に対し、相対的にノイズ(Noise)が大きくなる。この結果、トラックピッチが小さくなるに従い、得られるS/N比(Signal to Noise Ratio)が小さくなってしまう。一方、ディスクリートトラック媒体では、互いに磁気的に分離された磁気記録トラックに磁気情報が記録されており、記録マークのトラックエッジが磁気記録トラックのエッジとなる。従って、上述した従来の磁気記録媒体とは異なり、トラックピッチが小さい場合でも、比較的高いS/N比を確保することが可能となる。このため、ディスクリートトラック媒体では、従来の磁気記録媒体よりも高い記録密度を実現できる。
【0004】
このようなディスクリートトラック媒体の技術として、例えば特許文献1、2が挙げられる。特許文献1では、非磁性部分と磁気記録領域とを横断するように磁気再生素子を配置してトラッキングを行うタイプのディスクリートトラック媒体が開示されている。また、特許文献2では、データ信号記録領域と、従来のトラッキングサーボパターンを応用したトラッキングサーボ信号記録領域とを含む、ディスクリートトラック媒体が開示されている。
【0005】
特に、特許文献1では、非磁性部分と磁気記録領域とを横断する磁気再生素子を2つ並べて設け、この2つの磁気再生素子の信号の差分をとることでトラッキングを行う。このため磁気情報の再生を行う素子以外に、トラッキングを行うための非磁性部分と磁気記録領域とを横断する磁気再生素子が2つ必要となる。
【特許文献1】特開2006−244550公報(2006年9月14日公開)
【特許文献2】特開2006−252660公報(2006年9月21日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように記録再生ヘッドに磁気再生素子を複数設けることは、記録再生ヘッドのコスト増加につながる。また、磁気再生素子からは、電気的に信号検出を行うため、消費電力も大きくなってしまう。このため、1つの磁気再生素子で、磁気情報の再生及びトラッキング制御可能な技術であることが好ましい。
【0007】
また、ディスクリートトラック媒体のような高密度磁気記録媒体に形成された各トラック間のトラックピッチは、例えば50nm程度と非常に狭い。このため、ディスクリートトラック媒体に記録再生を行う磁気記録再生装置に備えられた記録再生ヘッド(磁気記録素子又は磁気再生素子)が、所望のトラックに対してわずかなズレを生じただけで、記録エラー又は再生エラーが発生しやすくなってしまうという虞がある。
【0008】
一般に、磁気記録再生装置が磁気記録媒体に対してトラッキング制御を行うときの、磁気記録媒体の半径方向における記録再生ヘッドの位置決め要求精度は、トラックピッチの10%以下とされている。このため、ディスクリートトラック媒体のように面記録密度が1Tb/in2程度のとき、上記位置決め要求精度として、数nm程度の精度が要求されると考えられる。
【0009】
この要求を実現するために、磁気記録再生装置においてより正確なトラッキング制御を行う方法として、トラッキング用サーボパターンでの信号検出頻度を高くすることが考えられる。しかしながら、上記信号検出頻度を高くするために、磁気記録媒体に単純にサーボパターンを形成する領域を増加させることは、データ記録領域の容量(磁気記録媒体に記録される情報量)を低下させてしまう虞がある。
【0010】
特許文献2の技術では、トラッキングサーボ信号記録領域がデータ信号記憶領域とは別途設けられている。すなわち、特許文献2の技術では、上述のように、データ記録領域の容量を低下させてしまう虞がある。
【0011】
また、従来のバーストパターンや特許文献2のように従来のバーストパターンを応用したトラッキングエラー信号検出用のパターンを設ける場合、該パターンエッジの位置ずれ(半径方向)が生じると、トラッキング精度が低下してしまう虞がある。これは、トラッキングエラー信号検出用のパターンのエッジ部(半径位置)が、再生または記録を行うトラックの半径方向における中心となるためであり、上記エッジ部の位置ずれの分だけ、磁気再生素子がオフトラックしてしまうためである。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ディスクリートトラック媒体のような高密度記録媒体において、データ記録領域の容量を低下させることなく、当該記録媒体の記録再生を行う記録再生装置に対してトラッキング制御用の信号を高精度に検出させることが可能な記録媒体を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、上記記録媒体に記録再生を行うことにより、記録再生ヘッドの位置決め精度を向上させることが可能な(すなわち、記録エラー及び再生エラーの少ない)記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る記録媒体は、上記課題を解決するために、情報を記録する記録部と、情報が記録されない非記録部とを有するトラックが等しい間隔で複数配置されるとともに、該トラック間に該トラック間を分離するための分離部が配置されている記録媒体であって、上記非記録部は、上記トラックに隣接する2つの上記分離部と連続して形成されており、上記複数のトラックのうちの1つのトラックを第1のトラックとし、該第1のトラックの両側に設けられた2つのトラックをそれぞれ第2のトラック及び第3のトラックとするとき、上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックに形成された記録部の一部とが、等しい、上記記録媒体の周方向であるトラック方向位置にある第1の領域、及び、上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックに形成された記録部の一部とが等しいトラック方向位置にある第2の領域、を少なくとも1組有することを特徴としている。
【0015】
このように構成することで、後述する本発明に係る記録再生装置は、非記録部が備えられたトラック方向位置において、記録再生ヘッドがオフトラックになることにより隣接するトラックから検出される信号の波形をもとに、トラッキング制御を行うことができる。つまり、上記構成によれば、例えば、第1の領域及び第2の領域における検出信号がゼロレベルになるように記録再生ヘッドのクロストラック方向における位置についてフィードバック制御を行うことで、トラッキングを行わせることが可能となる。よって、上記記録媒体は、トラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がないため、データ領域(記録部)をほとんど減少させることなく、記録再生装置に記録再生ヘッドの位置合わせを行わせることができる。また、記録媒体は、各々のトラックにおいて、非記録部を任意の頻度で設けることができ、非記録部の出現頻度を高くすることで、記録再生装置に対して、高い頻度でトラッキング制御用の信号を検出させることができる。
【0016】
以上により、上記記録媒体は、ディスクリートトラック媒体のような高密度記録媒体において、データ記録領域の容量を低下させることなく、当該記録媒体の記録再生を行う記録再生装置に対してトラッキング制御用の信号を高精度に検出させることが可能な記録媒体を提供することができるという効果を奏する。
【0017】
また、上記構成によれば、隣接する両側のトラックから検出される信号に基づきトラッキングエラー信号が検出される構成となっており、分離部の線幅(クロストラック方向への幅)の均一性が高いほど高精度のトラッキングが可能となる。EB(電子線)リソグラフィー等で直線的又は曲線的な均一幅のパターンを連続的に形成する場合、該線幅の均一性は、異なる位置にある複数のパターンにおけるエッジ部分の相対的な位置精度よりも高くなる。よって、上記構成によれば、より高精度のトラッキング制御が可能となる。
【0018】
なお、上記オントラックとは、記録媒体のクロストラック方向における記録再生ヘッドのクロストラック位置がトラックのクロストラック位置の中心とほぼ一致して、記録再生装置が所定の記録部から記録された情報を読み出すことが可能な状態を指す。また、上記オフトラックとは、上記オントラックとは逆の状態であって、記録媒体のクロストラック方向における記録再生ヘッドのクロストラック位置がトラックのクロストラック位置の中心からずれて、記録再生装置が所定の記録部から記録された情報を正しく読み出すことが難しい状態を指す。
【0019】
本発明による記録媒体は、上記トラックにおける上記非記録部と上記記録部との2つの境界のうち、媒体の移動方向に対して前方の境界を第1の境界、後方の境界を第2の境界とするとき、上記第2のトラックの第1の境界、上記第1のトラックの第1の境界、上記第1のトラックの第2の境界、及び上記第3のトラックの第2の境界のトラック方向位置が、この順に備えられており、かつ、上記第1のトラックの上記第1の境界と上記第2の境界とに挟まれたトラック方向位置に、上記第2のトラックの上記第2の境界及び上記第3のトラックの上記第1の境界が備えられていることが好ましい。
【0020】
このように構成することで、隣接する一方のトラックのみから信号が検出される領域と該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみから信号が検出される領域との相対的な位置関係が、各トラックにおいて等しくなり、記録再生ヘッドのオフトラック方向が特定されやすくなる。
【0021】
本発明による記録媒体は、上記トラックにおける上記非記録部と上記記録部との2つの境界のうち、媒体の移動方向に対して前方の境界を第1の境界、後方の境界を第2の境界とするとき、上記第2のトラックの上記第1の境界、上記第1のトラックの上記第1の境界、上記第3のトラックの上記第1の境界、上記第2のトラックの上記第2の境界、上記第1のトラックの上記第2の境界、上記第3のトラックの上記第2の境界のトラック方向位置が、この順に備えられていることが好ましい。
【0022】
このように構成することで、信号が検出されない領域が必ず存在するため、隣接する一方のトラックのみから信号が検出される領域と該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみから信号が検出される領域が、信号が検出されない領域を挟んで検出されるため、トラッキング用信号をより特定しやすくなり、トラッキングエラーが発生し難くなる。
【0023】
さらに、媒体作成における微細加工のばらつきによって、上記境界のトラック方向位置にばらつきが生じても、隣接する一方のトラックのみから信号が検出される領域と該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみから信号が検出される領域が、ゼロレベルの信号を挟んで分離して検出されるため、トラッキング用信号をより特定しやすくなり、トラッキングエラーが発生し難くなる。
【0024】
本発明に係る記録再生装置は、上記課題を解決するために、記録媒体におけるトラックに追従して情報の記録を行う記録素子、及び情報の再生を行う再生素子を有する記録再生ヘッドを備えている記録再生装置において、上記記録媒体が、上記本発明に係る記録媒体であり、当該記録媒体における第1のトラックについて記録または再生を行うとき、第1の領域における第3のトラックに形成された記録部、及び第2の領域における第2のトラックに形成された記録部から検出した信号の振幅に基づきトラッキングエラー信号を生成し、当該トラッキングエラー信号が所望の値となるように上記記録再生ヘッドの位置を制御することで、上記記録再生ヘッドがオントラックとなるように制御するトラッキング制御を行うことを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、本発明に係る記録再生装置は、再生素子が、隣接する一方のトラックのみから検出する信号及び、該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみか検出する信号をもとに、記録再生ヘッドが追従する第1のトラックに対するトラッキング制御を行うことができる。
【0026】
これにより、上記記録再生装置は、上記記録媒体がトラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設けていなくても、該記録媒体に対して、高精度に記録再生ヘッドの位置合わせを行うことができる。従って、上記記録再生装置は、上記記録媒体に記録再生を行うことにより、記録再生ヘッドの位置決め精度を向上させることが可能な(すなわち、記録エラー及び再生エラーの少ない)記録再生装置を提供することができるという効果を奏する。
【0027】
また、上述の記録媒体は、隣接する一方のトラックのみから信号を検出する領域及び、該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみから信号を検出する領域を、複数有する構成でもある。この場合には、上記記録再生装置は、トラッキング制御用の信号を高頻度で検出することが可能になるため、記録再生ヘッドに生じるオフトラックの検出頻度を高めることができる。すなわち、上記記録再生装置は、上記記録媒体に対して高頻度にトラッキング制御を行うことができる。
【0028】
本発明に係る記録再生装置は、上記再生素子の上記媒体の半径方向であるトラッククロス方向の検出幅をSw、上記記録媒体におけるトラック及び分離部のトラッククロス方向への幅をそれぞれMw及びGwとしたとき、Mw<Sw<Mw+2×Gwの関係を有していることが好ましい。
【0029】
再生素子の磁化検出幅Swを上記式となるように設定することで、再生素子は、記録再生ヘッドが追従する第1のトラックからの信号を最も大きい信号として検出できるため、クロストークが生じる場合でも、再生エラーが生じにくくなる。また、再生素子は、オフトラック時において、トラッキング制御用信号を高感度で検出することができるため、上記記録再生装置は、上記記録媒体に対して高精度なトラッキング制御を行うことができる。
【0030】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記記録素子と上記再生素子とのトラッククロス方向における距離を検出する距離検出動作を行うことが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、上記記録再生装置は、記録素子と再生素子とのトラッククロス方向における距離が、所定の値(例えば、記録素子と再生素子との距離が0)とは異なる場合であっても、記録時に記録素子がオフトラックになること防ぐことができる。すなわち、上記記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0032】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記距離検出動作は、上記記録素子による記録動作、上記再生素子による再生動作、及び該再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記記録媒体のトラッククロス方向における位置毎に繰り返し行う動作と、再生時において、オントラックであるときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるクロストラック位置をr1とし、上記記憶したエラーレートのうち、所望のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるクロストラック位置をr2とするとき、該記録素子と該再生素子とのトラッククロス方向における距離を(r1−r2)と決定する動作と、を含むことが好ましい。
【0033】
上記構成によれば、上記記録再生装置は、決定した上記距離r1−r2を記憶しておくことにより、再生素子がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。これにより、上記記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0034】
本発明に係る記録再生装置は、上記距離検出動作は、上記記録素子と上記再生素子とのトラッククロス方向における距離をトラッキングエラー信号の差として検出する動作であって、上記記録素子による記録動作、上記再生素子による再生動作、及び該再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記記録媒体のトラッククロス方向におけるトラッククロス位置毎に繰り返し行う動作と、再生時において、オントラックであるときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるトラッキングエラー信号をTES1とし、上記記憶したエラーレートのうち、所望のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドが検出したトラッキングエラー信号をTES2とするとき、該記録素子と該再生素子とのトラッククロス方向における距離をトラッキングエラー信号の差(TES2−TES1)として決定する動作と、を含むことが好ましい。
【0035】
上記構成によれば、上記記録再生装置は、トラッキングエラー信号の差(TES2−TES1)を記憶しておくことにより、再生素子がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。これにより、記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る記録媒体は、情報を記録する記録部と、情報が記録されない非記録部とを有するトラックが等しい間隔で複数配置されるとともに、該トラック間に該トラック間を分離するための分離部が配置されている記録媒体であって、上記非記録部は、上記トラックに隣接する2つの上記分離部と連続して形成されており、上記複数のトラックのうちの1つのトラックを第1のトラックとし、該第1のトラックの両側に設けられた2つのトラックをそれぞれ第2のトラック及び第3のトラックとするとき、上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックに形成された記録部の一部とが、等しい、上記記録媒体の周方向であるトラック方向位置にある第1の領域、及び、上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックに形成された記録部の一部とが等しいトラック方向位置にある第2の領域、を少なくとも1組有することを特徴としている。
【0037】
このように構成することで、後述する本発明に係る記録再生装置は、非記録部が備えられたトラック方向位置において、記録再生ヘッドがオフトラックになることにより隣接するトラックから検出される信号の波形をもとに、トラッキング制御を行うことができる。つまり、上記構成によれば、例えば、第1の領域及び第2の領域における検出信号がゼロレベルになるように記録再生ヘッドのクロストラック方向における位置についてフィードバック制御を行うことで、トラッキングを行わせることが可能となる。よって、上記記録媒体は、トラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がないため、データ領域(記録部)をほとんど減少させることなく、記録再生装置に記録再生ヘッドの位置合わせを行わせることができる。また、記録媒体は、各々のトラックにおいて、非記録部を任意の頻度で設けることができ、非記録部の出現頻度を高くすることで、記録再生装置に対して、高い頻度でトラッキング制御用の信号を検出させることができる。
【0038】
以上により、上記記録媒体は、ディスクリートトラック媒体のような高密度記録媒体において、データ記録領域の容量を低下させることなく、当該記録媒体の記録再生を行う記録再生装置に対してトラッキング制御用の信号を高精度に検出させることが可能な記録媒体を提供することができるという効果を奏する。
【0039】
また、本発明に係る記録再生装置は、記録媒体におけるトラックに追従して情報の記録を行う記録素子、及び情報の再生を行う再生素子を有する記録再生ヘッドを備えている記録再生装置において、上記記録媒体が、上記本発明に係る記録媒体であり、当該記録媒体における第1のトラックについて記録または再生を行うとき、第1の領域における第3のトラックに形成された記録部、及び第2の領域における第2のトラックに形成された記録部から検出した信号の振幅に基づきトラッキングエラー信号を生成し、当該トラッキングエラー信号が所望の値となるように上記記録再生ヘッドの位置を制御することで、上記記録再生ヘッドがオントラックとなるように制御するトラッキング制御を行うことを特徴としている。
【0040】
上記構成によれば、本発明に係る記録再生装置は、再生素子が、隣接する一方のトラックのみから検出する信号及び、該トラックとは異なる隣接する他方のトラックのみか検出する信号をもとに、記録再生ヘッドが追従する第1のトラックに対するトラッキング制御を行うことができる。
【0041】
これにより、上記記録再生装置は、上記記録媒体がトラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設けていなくても、該記録媒体に対して、高精度に記録再生ヘッドの位置合わせを行うことができる。従って、上記記録再生装置は、上記記録媒体に記録再生を行うことにより、記録再生ヘッドの位置決め精度を向上させることが可能な(すなわち、記録エラー及び再生エラーの少ない)記録再生装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図5に基づいて説明すると以下の通りである。
【0043】
(磁気記録再生装置の概略構成)
図2は、本実施形態に係る磁気記録媒体(情報記録媒体)4に対して情報の記録再生を行う磁気記録再生装置5の概略構成を示す図である。磁気記録再生装置5は、図2に示すように、サスペンション6と、スピンドル7と、ボイスコイルモータ8と、ランプ機構9と、記録再生ヘッド10とを備えている。また、図2では、磁気記録再生装置5は、磁気記録媒体4を備えた構成となっている。なお、磁気記録媒体4の構造、及び磁気記録再生装置5による磁気記録媒体4の記録再生方法については、後に詳述する。
【0044】
サスペンション6は、ボイスコイルモータ8に固定されており、ボイスコイルモータ8と反対側の先端に、磁気記録媒体4に対して磁界を印加する記録再生ヘッド10を備えている。
【0045】
スピンドル7は、磁気記録再生装置5が磁気記録媒体4に情報の記録再生を行うときに、磁気記録媒体4を反時計周り(図2の矢印方向)に回転させるものである。なお、磁気記録媒体4の中心部にはスピンドル7と嵌合可能なように穴部が形成されている。
【0046】
ボイスコイルモータ8は、サスペンション6に備えられた記録再生ヘッド10が磁気記録媒体4の半径方向(クロストラック方向)に磁気記録媒体4上を移動できるように、サスペンション6を移動させるものである。すなわち、記録再生ヘッド10は、ボイスコイルモータ8の作動に応じて、磁気記録媒体4に対する半径方向における半径位置を変更させることができる。
【0047】
ランプ機構9は、磁気記録媒体4に情報の記録再生を行わないときに、記録再生ヘッド10が退避するためのもの(すなわち、ランプ機構9において記録再生ヘッド10が固定される)である。
【0048】
記録再生ヘッド10は、磁気記録媒体4に情報の記録再生を行うときに、磁気記録媒体4に対して磁界を印加するものである。これにより、例えば、磁気記録媒体4の磁気記録トラックにおける磁気記録部(記録部)2(後述)の磁化方向を決定することができる。具体的には、記録再生ヘッド10は、図3に示すように、磁気記録媒体4に近い面に、垂直磁気記録媒体用の磁気記録素子11と磁気再生素子12とを備えている。図3は、磁気記録再生装置5の記録再生ヘッド10の概略構成を示す図である。
【0049】
磁気記録素子11は、磁気記録媒体4に情報を記録するときに記録可能な強度の磁界を、該磁気記録媒体4に印加するものである。同様に、磁気再生素子12は、磁気記録媒体4の磁気記録部2から磁化情報を読み出すものである。
【0050】
なお、磁気記録素子11と磁気再生素子12との磁気記録媒体4から見た円周方向(トラック方向)における位置関係は、記録再生ヘッド10が回転する磁気記録媒体4の任意の位置を通過するとき、この任意の位置上を磁気再生素子12が先に通過し、磁気記録素子11がその後に通過するような位置関係となっている。
【0051】
以上のように、磁気記録再生装置5は、スピンドル7及びサスペンション6の動作と、記録再生ヘッド10による磁界の印加とを制御することにより、磁気記録媒体4の所定の位置に記録再生を行うことができる。
【0052】
すなわち、磁気記録再生装置5は、サスペンション6、スピンドル7等の各種機能を制御するための所定の演算処理を行う制御部41を備えており、制御部41は例えばCPU(Central Processing Unit)等によって実現されている。さらに、制御部41は、本実施形態に係る磁気記録媒体4に対して記録再生を行うときの記録再生ヘッド10の制御を行うために、例えば信号特定部411と、差分算出部412と、ヘッド位置制御部413とを備えている。
【0053】
信号特定部411は、磁気再生素子12が磁気記録媒体4から読み出した磁化情報、すなわち磁気記録媒体4から検出した磁化情報を示す信号の振幅を、後述の予め設定された信号振幅と比較する。そして、信号特定部411は、比較した結果に基づいて、磁気記録媒体4からの検出信号が、記録再生ヘッド10が追従するトラックにおける磁気記録部2からの信号であるか、該トラックに隣接するトラックにおける磁気記録部2からの信号であるかを特定する。
【0054】
また、信号特定部411は、後述の予め記憶された領域判別用の信号振幅を参照することによって、磁気再生素子12が検出した信号が第1の領域31又は第2の領域32からの検出信号であると判定すると、両検出信号の振幅を差分算出部412に供給する。
【0055】
差分算出部412は、第1の領域31及び第2の領域32からの検出信号の振幅の差分を求め、該差分をヘッド位置制御部413に供給する。
【0056】
ヘッド位置制御部413は、ボイスコイルモータ8を制御することによって記録再生ヘッド10の位置制御を行うものであり、所定のトラック(追従して記録再生を行うトラック)へのトラッキングを実現するものである。ヘッド位置制御部413は、例えば磁気記録再生装置5の初期動作時に、後述の距離検出動作を行うことによって記録再生ヘッド10の位置制御を行う。
【0057】
また、ヘッド位置制御部413は、差分算出部412から供給される差分に基づいて、記録再生ヘッド10の半径方向への移動量を決定する。ヘッド位置制御部413は、上記差分が0である場合には、現在の記録再生ヘッド10の位置を変更しない(記録再生ヘッド10に対する移動制御を行わない)。一方、ヘッド位置制御部413は、上記差分が0でない場合には、例えば上記差分と上記移動量とが対応付けられたテーブルを参照することによって、記録再生ヘッド10を移動させるための移動量を決定する(記録再生ヘッド10に対する移動制御を行う)。すなわち、ヘッド位置制御部413は、記録再生ヘッド10に対するフィードバック制御(トラッキング制御)を行う。なお、ヘッド位置制御部413は、フィードバック制御を行うとき、例えば配置情報、識別情報を参照することによってオフトラック方向を判定している。
【0058】
さらに磁気記録再生装置5は、制御部41で利用される各種データ、プログラムの実行によって得られたデータ等を記憶する記憶部42を備えている。記憶部42は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、および、ROM(Read-Only Memory)やフラッシュメモリなどの不揮発性メモリで実現される。
【0059】
記憶部42は、各種データ又はプログラムとして、磁気再生素子12が追従するトラックであることを判別可能な信号振幅、領域判別用の信号振幅、配置情報、上記差分と記録再生ヘッド10の半径方向への移動量とを対応付けたテーブル等が記憶している。
【0060】
なお、磁気記録媒体4に対する磁気記録再生装置5の具体的な制御については、以下の磁気記録媒体4の記録再生方法において説明する。この記録再生方法での説明において、磁気記録再生装置5が行う制御は、制御部41が記憶部42に記憶された情報を参照することによって実現されている。
【0061】
(磁気記録媒体の概略構成及び製造方法)
次に、図2に示す磁気記録再生装置5に備えられた磁気記録媒体4について図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体4の概略構成を示す図である。
【0062】
磁気記録媒体4は、非磁性ガイド部(分離部)1によって磁気的に分断された磁気記録部2を備えたディスクリートトラック媒体である。磁気記録部2は、同心円状の磁気記録層であり、磁気記録再生装置5によって磁気情報が記録再生されるものであり、所定のトラックピッチ(例えば、50nm)で形成されている。本実施形態に係る磁気記録媒体4の磁気記録層の膜厚は30nmであるが、これに限らず、10nm〜60nmとなっていればよい。本磁気記録媒体4は円周上にトラックが形成されているため、周方向がトラック方向であり、半径方向がクロストラック方向となる。
【0063】
さらに、図1に示すように、非磁性ガイド部1によって磁気的に分離された磁気記録トラックは磁気記録部2と非磁気記録部(非記録部)3(非磁性ガイド部同様に非磁性体からなり、磁気記録を行わない領域)とを備えている。なお、非磁気記録部3は、上記磁気記録トラックの両側に設けられた2つの非磁性ガイド部1と連続して形成されている。
【0064】
各トラックにおいて、非磁気記録部3と、磁気記録部2との2つの境界のうち、媒体の回転方向(移動方向)に対して前方(紙面左側)の境界を第1の境界、媒体の回転方向に対して後方(紙面右側)の境界を第2の境界とすると、各境界は以下の順に並んでいる。
【0065】
第2のトラックTr2の第1の境界(周方向位置a)、第1のトラックTr1の第1の境界(周方向位置はb)、第1のトラックTr1の第2の境界(周方向位置d)及び第3のトラックの第2の境界(周方向位置e)の周方向位置が、この順に備えられており、第1のトラックTr1の第1の境界及び第2の境界に挟まれた周方向位置に、第2のトラックTr2の第2の境界(周方向位置c)及び第3のトラックの第1の境界(周方向位置c)が備えられている。このように、本実施形態では、第2のトラックTr2の第2の境界と第3のトラックの第1の境界とは等しい周方向位置にある。
【0066】
このような構造になっているため、第1のトラックTr1の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr2の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr3に形成された磁気記録部2の一部が等しい周方向位置にある第1の領域(bとcとに挟まれた領域)、及び、第1のトラックTr1の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr3の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックに形成された磁気記録部2の一部が等しい周方向位置にある第2の領域(cとdとに挟まれた領域)、を少なくとも1組有することになる。つまり、本実施形態においては、トラックTr1に限らず、各々のトラックにおいて上記同様の第1の領域及び第2の領域を少なくとも1組有することになる。
【0067】
また、磁気記録媒体4の回転方向は、図1及び図2に示すように、紙面右から左(矢印方向)となっているため、磁気記録再生装置5は、磁気記録媒体4において、紙面左側の磁気記録部2から順に信号検出していく。また、磁気記録媒体4は、例えば媒体面内方向に対して垂直方向に磁化されることで、情報が記録されるタイプの媒体である。
【0068】
以下、磁気記録媒体4の製造方法の一例を示す。まず、ガラス基板上に磁性層を形成した後、この磁性層上にレジストを塗布する。次に、電子線リソグラフィ法によって、レジストに微細パターンを形成した後、磁気記録部2を形成する材料を、この微細パターンが形成されたレジスト上に成膜する。その後、有機溶剤を用いて、レジストとレジスト上に堆積した磁気記録部2を形成する材料とを除去した後、この基板上に非磁性層を成膜する。本磁気記録媒体4の製造工程では、非磁性ガイド部1と非磁気記録部2の部分に堆積した磁性層が除去される。そして、この基板の非磁性層側から研磨を行うことで、磁気記録部2を表面に露出させると共に、基板表面を平滑にする。最後に、磁気記録部が形成された基板に対して潤滑剤を塗布する。
【0069】
上記磁気記録媒体4の製造方法では、磁気記録部2を形成する材料(磁性層)としては、例えば、Co、Pt、Fe、Ni、Cr、Mn又はこれらの金属からなる合金が挙げられる。また、上記合金としては、例えば、CoPt、SmCo、CoCr又はTbFeCo合金を用いることができる。さらに、レジストへの微細パターンの形成方法としては、例えば、陽極酸化法、フォトリソグラフィー法、ナノインプリント法等を用いることが可能である。また、磁性層の除去方法は、上記に限らず、ドライエッチング法やイオンミリング法などを用いることができる。
【0070】
また、上記磁気記録媒体4の製造方法では、磁気記録媒体4の片面にのみ磁気記録面(すなわち、磁気記録部2を有する面)を形成しているが、これに限らず、磁気記録媒体4の両面に磁気記録面を形成してもよい。この場合には、上記製造方法に示す工程が、磁気記録媒体4の両面に対して実施されればよい。なお、磁気記録媒体4の両面に形成される磁気記録面への潤滑剤の塗布については、同時に行うことも可能である。
【0071】
(磁気記録媒体の記録再生方法)
以下、磁気記録再生装置5が磁気記録媒体4に対して磁気情報を記録再生する方法について、図1〜図5を用いて説明する。
【0072】
本実施形態の磁気再生素子12は、磁化を検出しない場合、検出信号が0となるように設定してあり、図1において紙面手前から奥に向かう磁化を検出する場合、プラスの信号を検出し、紙面奥から手前に向かう磁化を検出する場合、マイナスの信号を検出する。また、磁化の向きが反対であり磁化の大きさが等しい場合、信号の符号は異なるが、大きさは等しくなるようになっている。さらに、磁気再生素子12の磁化検出幅Swは、磁気記録部2及び非磁性ガイド部1の幅をそれぞれMw及びGwとすると、以下の式(A)で表される幅となっている。
【0073】
Sw=Mw+Gw×2………(A)
つまり、磁気再生素子12の磁化検出幅Swは、第1のトラックTr1と、第1のトラックTr1を分離する両側の非磁性ガイド部との2つ分の幅になる。
【0074】
この磁気記録媒体4は、変調方式1−7RLL(Run Length Limited)で記録されており、2T,3T,・・・,8Tの長さの記録マーク長に対応した記録マークが、ランダムな信号に対応して記録されている。本実施形態においては、隣接する内周側のトラックの周方向位置b〜cまでは、6T,2T,3T,6T,4T,3T,2T,2T,6T,4T,2T,7Tの順で記録されており、磁化方向は最初の6Tが上向き、次の2Tが下向きとなっており、以降、上向きと下向きとが交互に記録されている。隣接する内周側のトラックの周方向位置c〜dまでは、3T,2T,6T,3T,2T,2T,4T,7T,6T,6T,2T,4Tの順で記録されており、磁化方向は最初の6Tが上向き、次の2Tが下向きとなっており、以降、上向きと下向きとが交互に記録されている。この波形の中心であるスライスレベル13から上に凸及び下に凸の波形はそれぞれ、上向き及び下向きの磁化を検出したときの波形となる。なお、上記信号の並びは上記のとおりである必要はなく、任意の信号に対応した任意の並びであればよい。
【0075】
ここで、再生時おける磁気再生素子の検出信号及びトラッキング方法について説明する。磁気再生素子12が、図1の第1のトラックTr1に沿い、オントラックの状態で、紙面左から右方向に向かって、信号を検出していく場合に得られる信号の模式図を、図5(a)に示す。また、図4(a)及び図4(b)に示すように磁気再生素子12が、内周及び外周方向にわずかにオフトラックした場合に得られる信号の模式図をそれぞれ、図5(b)及び図5(c)に示す。直線13はスライスレベルを示している。また、図5(a)〜図5(c)では、b〜c及びc〜dにおいて検出される信号をそれぞれ、S(b−c)及びS(c−d)として明示しており、その前後の信号を省略している。
【0076】
まず、図1で示すように、磁気再生ヘッド10が、図1に示す磁気記録媒体4の第1のトラックTr1に対してオントラックである場合、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが、ほぼ第1のトラックTr1の中心に沿って検出する信号S(b−c)及びS(c−d)は、図5(a)の通り、ゼロレベル(ノイズレベル)となり、スライスレベルの信号が検出される。なお、オントラックとは、記録再生ヘッド10の半径位置がトラックの半径位置の中心とほぼ一致して、磁気記録再生装置5が所定の磁気記録部2から記録された情報を読み出すことが可能な状態を指す。一方、オフトラックとは、記録再生ヘッド10の半径位置がトラックの半径位置の中心からずれて、磁気記録再生装置5が所定の磁気記録部2から記録された情報を正しく読み出すことが難しい状態を指す。
【0077】
次に、記録再生ヘッド10が磁気記録媒体4のトラックTr1に対してオフトラックである場合を考える。検出信号は、図5(a)に示す場合と異なり、オフトラックの方向に応じて、第1のトラックTr1に対して内側の磁気記録トラックから検出される信号S(b−c)または外周側にある磁気記録トラックから検出される信号のS(c−d)を検出する。
【0078】
記録再生ヘッド10が、図1の第1のトラックTr1の中心から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合(図4(a))、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが第1のトラックTr1の中心から内周側に位置ずれを起こしている場合、図5(b)に示されるように、b〜cの間に、隣接する内周側のトラックの信号S(b−c)を検出する(このときの最大振幅h1)。この場合、S(b−c)がゼロレベル(ノイズレベル)となるように、記録再生ヘッド10の半径位置を外周側にずらして第1のトラックTr1に戻るようにフィードバック制御を行う。また、記録再生ヘッド10が、図1の第1のトラックTr1の中心から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合(図4(b))、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが第1のトラックTr1の中心から外周側に位置ずれを起こしている場合、図5(c)に示されるように、c〜dの間に、隣接する外周側のトラックの信号S(c−d)を検出する(このときの最大振幅h2)。この場合、S(c−d)がゼロレベル(ノイズレベル)となるように、記録再生ヘッド10の半径位置を内周側にずらして第1のトラックTr1に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0079】
つまり、上記で示した検出信号S(b−c)の最大振幅h1及び検出信号S(c−d)の最大振幅h2を用いて、これらの差(h1−h2)をトラッキングエラー信号とすれば、トラッキングエラー信号(h1−h2)=0となるように、フィードバック制御(トラッキング制御)を行うことで、記録再生ヘッド10をオントラックの状態にすることができる。このように、最大信号振幅の差をトラッキングエラー信号とすることで、ノイズレベルの信号振幅をキャンセルすることも可能である。トラッキングエラー信号は、上記に限らず、ある一定の値に近づくことで、記録再生ヘッド10がオントラックとなるように制御することが可能となればよく、例えば、(h12−h22)としてもよく、また、ノイズレベルの信号振幅により、最大振幅h1及びh2がともにゼロにならない場合は、(h1−h2)/(h1+h2)としてもよい。
【0080】
以上により、磁気記録再生装置5は、第1のトラックTr1に対して僅かにオフトラックである場合であっても、最大振幅h1及びh2ともにゼロレベル(ノイズレベル)となるようにフィードバック制御を行うことで、トラッキング制御を行うことができる。なお、最大振幅h1及びh2は、再生を行っている第1のトラックTr1の最大信号振幅よりも小さい値となっているため、わずかなオフトラック等によりトラック間クロストークが発生する場合であっても、再生エラー等は生じ難い構成となっている。
【0081】
また、本実施形態では、第1のトラックTr1の隣接トラックTr2及びTr3の磁気記録部2に、変調方式1−7RLLに準じたランダムパターンが記録されている状態であったが、本発明によれば、その他の変調方式に準じたランダムパターンが記録された状態や、ランダムパターンが記録される前の状態であっても、トラッキング制御を行うことが可能である。例えば、磁気記録媒体4が一様に一方向に磁化された状態(DCイレース)であっても、磁気再生素子12は、オフトラック時に隣接トラックから信号を検出することが可能であり、トラッキング制御を行うことができる。このように、再生または記録を行っているトラックに隣接した2つのトラックからの磁気信号を検出することができる状態であれば、上記同様に、トラッキング制御を行うことが可能である。
【0082】
(オフトラック方向の特定方法)
ここで、上述したオフトラック方向について、その特定方法を説明する。本実施形態においては、図1に示すように、内周側(紙面下方)のトラックほど、非磁気記録部3の周方向位置が紙面右側に備えられている。このように、一定方向の隣接するトラックに移動するに従い、非磁気記録部3の周方向位置が一定の方向に移動するような構成とすることによって、信号検出において規則性をもたせることが可能となる。
【0083】
つまり、図1の各トラックにおいて、(1)隣接する外周側のみの磁気記録部2の信号(S(b−c))、(2)隣接する内周側のみの磁気記録部2の信号(S(c−d))の順で検出されることになる。本実施形態では、第2のトラックTr2の第2の境界と第3のトラックの第1の境界とは等しい周方向位置にあるため、(1)及び(2)は連続的に検出される。しかしながら、第2のトラックTr2の第2の境界と第3のトラックの第1の境界との位置関係によっては、信号(1)及び(2)の間に、その他の信号が検出される場合もある(例えば、後述する磁気記録媒体の変形例1など)。この結果、(1)及び(2)の信号を検出した段階で、オフトラックの方向が内周側であるか外周側であるかを特定することが可能となる。
【0084】
一方、従来の磁気記録媒体に用いられるトラッキングサーボ用パターン(バーストパターン)では、少なくとも4つの領域が必要とされる。このうち2つは、オフトラックを検出するための領域であり、残り2つはオフトラック方向を特定するための領域である。これに比べ、本発明では、上述したように、オフトラックを検出するための2つの領域によって、オフトラック方向も認識することが可能である。よって、従来のトラッキングサーボ用パターンにおけるオフトラックを検出するための領域と同程度の長さで、本発明によるオフトラックを検出するための領域を設けた場合であっても、データ領域の容量低下をより小さくすることが可能となる。
【0085】
また、上記構成によれば、内外周において隣接するトラックから検出される信号に基づき、トラッキングエラー信号を検出する構成となっており、非磁性ガイド部1の線幅(半径方向への幅)の均一性が高いほど高精度のトラッキングが可能となる。EB(電子線)リソグラフィ等で直線的又は曲線的な均一幅のパターンを連続的に形成する場合、該線幅の均一性は、異なる位置にある複数のパターンにおけるエッジ部分の相対的な位置精度よりも高くなる。よって、上記構成によれば、より高精度のトラッキング制御が可能となる。
【0086】
なお、磁気記録を行わない領域である非磁気記録部3は、非磁性ガイド部1と同様の非磁性体のみに限られるのもではなく、例えば、非磁性ガイド部1とは異なる非磁性体であってもよく、常磁性体であってもよい。また、非磁気記録部3は、磁気記録部2とは異なる強磁性体であってもよい。この場合、トラッキングエラー信号を検出する領域のゼロレベル(ノイズレベル)にオフセット値が加えられた値で検出されるが、上記同様にトラッキングエラー信号に基づいてトラッキング制御を行うことが可能である。
【0087】
また、本実施形態において、磁気再生素子12の磁化検出幅Swは、磁気記録部2及び非磁性ガイド部1の幅をそれぞれMw及びGwとすると、
Sw=Mw+Gw×2………(A)
であったが、磁化検出幅Swは、これに限るものではない。
【0088】
しかしながら、Sw<Mwである場合、再生すべきトラックにおける磁化の検出信号が小さくなる。また、磁気再生素子がオフトラックした場合に、隣接トラックから検出される信号が小さくなる(トラッキング制御用信号の検出感度が低下しまう)。このため、Sw>Mwであることが望ましい。
【0089】
一方、Sw>Mw+Gw×2となると、常に、隣接トラックから磁化情報を検出してしまうことになり、ノイズ成分が大きくなってしまう。よって、Sw<Mw+Gw×2を満たすことが望ましい。上述した2点を鑑み、磁気再生素子12の磁化検出幅Swは、Mw<Sw<Mw+Gw×2のとおりであることが望ましい。このようにすることで、オフトラックである場合に、トラッキング用の信号を検出することが可能であるともに、再生すべきトラックからは大きな信号が検出される。このため、再生エラーが生じにくい磁気記録再生装置を提供できる。
【0090】
(記録時のトラッキング)
記録を行う場合も同様の制御を行うことが可能である。記録時においては、磁気再生素子12によって、信号を検出してトラッキングを行いながら、磁気記録素子11によって、記録(磁界を発生させて、磁気記録部の磁化方向を変更する)を行う。
【0091】
本実施形態においては、各トラックにおける非磁性部の出現頻度は任意に設定することが可能であるため、非磁性部の出現頻度を高くすることで、オフトラック検出用信号を高頻度で検出することが可能となる。加えて、非磁気記録部3は、磁気記録部2(データ記録領域)に形成することができ、従来のように、トラッキングサーボ用パターンのみの領域を設ける必要がないため、容量の低下もほとんどない。よって、高精度トラッキングが実現可能であり、また、磁気記録媒体4のデータ記録領域の容量をほとんど低下させることなく、再生エラー及び記録エラーのより少ない磁気記録再生装置5を提供することが可能となる。
【0092】
(距離検出動作)
また、磁気記録再生装置5は、その初期動作(例えば、磁気記録再生装置5の起動)において、記録再生ヘッド10の磁気記録素子11と磁気再生素子12との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行うことが好ましい。磁気記録再生装置5の記録再生ヘッド10には個体差があるため、該記録再生ヘッド10の磁気記録素子11と磁気再生素子12との半径方向における距離についても、記録再生ヘッド10毎に異なる可能性が高い。
【0093】
従って、磁気記録再生装置5の初期動作において上記距離を検出することにより、磁気記録再生装置5は、この距離が所定の値(磁気記録素子11と磁気再生素子12との距離が例えば0)とは異なる場合であっても、記録時に磁気記録素子11がオフトラックになること防ぐことができる。すなわち、磁気記録再生装置5は、記録再生ヘッド10の個体差に起因した磁気記録素子11のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。ここで、上記距離を検出する場合の磁気記録再生装置5の初期動作としては、例えば、以下の動作が考えられる。
【0094】
まず、磁気記録再生装置5は、再生時にオントラックとなる記録再生ヘッド10の位置における半径位置(磁気記録媒体4の半径位置)をr1として磁気記録再生装置5に記憶する。次に、磁気記録素子11による記録動作と磁気再生素子12による再生動作とを行い、磁気再生素子12が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する。そして、磁気記録再生装置5は、上記記録動作、上記再生動作及び上記エラーレートの記憶動作を、記録再生ヘッド10の半径位置毎に繰り返し行う。なお、磁気記録再生装置5は、再生信号のエラーレートを記憶すると共に、このエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド10の半径位置を記憶する。ただし、再生動作を行う際の記録再生ヘッドの半径位置は、r1である。
【0095】
次に、磁気記録再生装置5は、記憶したエラーレートから最小のエラーレートを検出することにより、該最小のエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド10の半径位置r2を決定する。すなわち、磁気記録再生装置5は、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの記録再生ヘッド10の半径位置r2とし、決定した半径位置r1、r2から、磁気記録素子11と磁気再生素子12との半径方向における距離を(r1−r2)と決定する。
【0096】
そして、磁気記録再生装置5は、決定した上記距離(r1−r2)を記憶しておくことにより、磁気再生素子12がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。
【0097】
上記距離を検出する場合の磁気記録再生装置5の初期動作は、上記に限られるものではなく、磁気記録素子11と磁気再生素子12との半径方向における距離をトラッキングエラー信号の差として検出する、以下のような動作であってもよい。
【0098】
まず、磁気記録再生装置5は、再生時にオントラックとなる記録再生ヘッド10の位置において検出したトラッキングエラー信号をTES1として磁気記録再生装置5に記憶する。次に、磁気記録素子11による記録動作と磁気再生素子12による再生動作とを行い、磁気再生素子12が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する。そして、磁気記録再生装置5は、上記記録動作、再生動作及びエラーレートの記憶動作を、記録再生ヘッド10の半径位置毎に繰り返し行う。なお、磁気記録再生装置5は、再生信号のエラーレートを記憶すると共に、このエラーレートに対応する、記録動作時の磁気再生素子12が検出したトラッキングエラー信号を記憶する。ただし、再生動作を行う際の記録再生ヘッドの半径位置は、トラッキングエラー信号がTES1となる位置である。
【0099】
次に、磁気記録再生装置5は、記憶したエラーレートから最小のエラーレートを検出することにより、該最小のエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド10の半径位置において検出されるトラッキングエラー信号TES2を決定する。すなわち、磁気記録再生装置5は、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの記録再生ヘッド10の半径位置におけるトラッキングエラー信号TES2とし、TES1、TES2から、磁気記録素子11と磁気再生素子12との半径方向における距離を(TES1−TES2)として決定する。
【0100】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、トラッキングエラー信号の差(TES2−TES1)を記憶しておくことにより、磁気再生素子が検出するトラッキングエラー信号のが(TES2−TES1)となるように、オフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。これにより、磁気記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した磁気記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0101】
以上のように、上記磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置は、上記非磁性部が備えられた周方向位置において、隣接する磁気記録トラックから検出される信号の波形をもとに、トラッキング制御を行うことができる。つまり、上記構成によれば、上記第1の領域(bとcとに挟まれた領域)及び第2の領域(cとdとに挟まれた領域)における検出信号がゼロレベル(ノイズレベル)になるように記録再生ヘッドの半径方向における位置について、フィードバック制御を行うことで、トラッキングを行わせることが可能となる。よって、上記磁気記録媒体は、トラッキング制御用の信号検出のみのための磁気パターンを設ける必要がないため、データ領域をほとんど減少させることなく、磁気記録再生装置に記録再生ヘッドの位置合わせを行わせることができる。また、磁気記録媒体は、各々の磁気記録トラックにおいて、非磁気記録部を任意の頻度で設けることができ、非磁気記録部の出現頻度を高くすることで、磁気記録再生装置に対して、高い頻度でトラッキング制御用の信号を検出させることができる。なお、磁気記録部2は、情報を記録可能な領域であって、トラッキングサーボ用としてだけ機能するものではない。
【0102】
〔磁気記録媒体の第1の変形例〕
次に、磁気記録媒体4の第1の変形例について、図6を用いて説明する。図6は、当該変形例に係る磁気記録媒体4aの概略構成を示す図である。なお、磁気記録再生装置5の動作や磁気記録媒体4aの製造方法は、上記実施の形態1に準じている。
【0103】
磁気記録媒体4aも、上記と同様に、非磁性ガイド部1によって磁気的に分断された磁気記録部2を備えたディスクリートトラック媒体である。磁気記録部2は、同心円状の磁気記録層であり、磁気記録再生装置5によって磁気情報が記録再生されるものであり、所定のトラックピッチ(例えば、40nm)で形成されている。本変形例に係る磁気記録媒体4aの磁気記録層の膜厚は20nmであるが、これに限らず、10nm〜60nmとなっていればよい。さらに、図6に示すように、非磁性ガイド部1によって磁気的に分離された磁気記録トラックは磁気記録部2と非磁気記録部3(非磁性ガイド部1同様に非磁性体からなり、磁気記録を行わない領域)とを備えている。
【0104】
各トラックにおいて、非磁気記録部3と、磁気記録部2との2つの境界のうち、媒体の回転方向に対して前方(紙面左側)の境界を第1の境界、媒体の回転方向に対して後方(紙面右側)の境界を第2の境界とすると、各境界は以下の順に並んでいる。第1のトラックTr4に隣接する内周側(紙面下方)の第2のトラックTr4Aの第1の境界(周方向位置a)、第1のトラックTr4の第1の境界(周方向位置はb)、第1のトラックTr4の第2の境界(周方向位置d)及び第1のトラックTr4に隣接する外周側(紙面上方)の第3のトラックTr4Bの第2の境界(周方向位置e)の周方向位置が、この順に備えられており、第1のトラックTr4の第1の境界及び第2の境界に挟まれた周方向位置に、第2のトラックTr4Aの第2の境界(周方向位置c1)及び第3のトラックTr4Bの第1の境界(周方向位置c2)が、この順に回転方向において前方(紙面左)から備えられている。
【0105】
このように、本実施形態では、上記実施の形態1とは異なり、注目するトラックに対して隣接する内周側及び外周側のトラックをそれぞれ、第2のトラックTr4A及び第3のトラックTr4Bとしている。また、第2のトラックTr4Aの第2の境界(周方向位置c1)及び第3のトラックTr4Bの第1の境界(周方向位置c2)の周方向位置が異なる。
【0106】
このような構造になっているため、第1のトラックTr4の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr4Aの非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr4Bに形成された磁気記録部2の一部とが等しい周方向位置にある第1の領域(bとc1とに挟まれた領域)、及び、第1のトラックTr4の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr4Bの非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr4Aに形成された磁気記録部2の一部とが等しい周方向位置にある第2の領域(c2とdとに挟まれた領域)、を少なくとも1組有することになる。つまり、本実施形態においては、トラックTr4に限らず、各々のトラックにおいて上記同様の第1の領域及び第2の領域を少なくとも1組有することになる。
【0107】
上記実施形態1と同様に、bとc1とに挟まれた領域で信号を検出する場合は、外周側にオフトラックしており、c2とdとに挟まれた領域で信号を検出する場合は、内周側にオフトラックしていると認識でき、トラックTr4に戻るようにフィードバック制御を行うことができる。つまり、磁気記録再生装置5は、トラックTr4に対して僅かにオフトラックである場合であっても、トラックTr4に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。
【0108】
つまり、(bとc1とに挟まれた領域で検出される信号の最大振幅)と(c2とdとに挟まれた領域で検出される信号の最大振幅)との差をトラッキングエラー信号とすると、トラッキングエラー信号がゼロとなるように、フィードバック制御(トラッキング制御)を行うことで、記録再生ヘッド10をオントラックの状態にすることができる。
【0109】
ここで、上述したオフトラック方向についても、上記同様に特定することができる。本形態では、図6に示すように、内周側(紙面下方)のトラックほど、非磁気記録部3の周方向位置が紙面左側に備えられている。結果、図6の各トラックにおいて、(1)隣接する外周側のみの磁気記録部2の信号(b〜c1で検出される信号)、(2)隣接する内周側のみの磁気記録部2の信号(c2〜dで検出される信号)の順で検出されることになる。この結果、(1)及び(2)の信号を検出した段階で、オフトラックの方向が内周側であるか外周側であるかを特定することが可能となる。ただし、第2のトラックTr4Aの第2の境界と第3のトラックTr4Bの第1の境界との位置関係によっては、信号(1)及び(2)の間に、その他の信号が検出される場合もあり、本実施形態では、c1〜c2における信号が検出される。
【0110】
本変形例においても、上記実施形態1と同様に、磁気記録媒体4aは、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、磁気記録再生装置5に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、磁気記録媒体4aは、再生エラー及び記録エラーの少ない磁気記録再生装置5を提供することが可能となる。
【0111】
〔磁気記録媒体4の第2の変形例〕
磁気記録媒体4の第2の変形例について、図7を用いて説明する。図7は、当該変形例に係る磁気記録媒体4bの概略構成を示す図である。なお、磁気記録再生装置5の動作や磁気記録媒体4bの製造方法は、上記実施形態1に準じている。
【0112】
磁気記録媒体4bも、上記と同様に、非磁性ガイド部1によって磁気的に分断された磁気記録部2を備えたディスクリートトラック媒体である。磁気記録部2は、同心円状の磁気記録層であり、磁気記録再生装置5によって磁気情報が記録再生されるものであり、所定のトラックピッチ(例えば、45nm)で形成されている。当該変形例に係る磁気記録媒体4の磁気記録層の膜厚は25nm程度であるが、これに限らず、10nm〜60nmとなっていればよい。
【0113】
さらに、図7に示すように、非磁性ガイド部1によって磁気的に分離された磁気記録トラックは磁気記録部2と非磁気記録部3(非磁性ガイド部同様に非磁性体からなり、磁気記録を行わない領域)とを備えている。本変形例では、上記実施形態1および上記第1の変形例と異なり、後述する第1の領域および第2の領域を形成するために必要不可欠な部分のみ非磁気記録部3を設けた構成である。
【0114】
注目する第1のトラックに対して、隣接する2つのトラックを第2のトラック及び第3のトラックとすると、上記第1のトラックの非磁気記録部3の少なくとも一部と、上記第2のトラックの非磁気記録部3の少なくとも一部と、上記第3のトラックに形成された磁気記録部2の一部が等しい周方向位置にある第1の領域、及び、上記第1のトラックの非磁気記録部3の少なくとも一部と、上記第3のトラックの非磁気記録部3の少なくとも一部と、上記第2のトラックに形成された磁気記録部2の一部が等しい周方向位置にある第2の領域、を少なくとも1組有する構成となっている。図7に示すトラックTr5を第1のトラックとして具体的に説明すると以下の通りである。
【0115】
第1のトラックTr5に対して、隣接する外周側(紙面上方)及び内周側(紙面下方)のトラックをそれぞれ第2のトラックTr5A及び第3のトラックTr5Bとすると、第1のトラックTr5及び第2のトラックTr5Aが非磁気記録部3である領域と、第3のトラックTr5Bに形成された磁気記録部2とを含む第1の領域31、及び、上記第1のトラック及び上記第3のトラックが非磁気記録部3である領域と、上記第2のトラックに形成された磁気記録部2とを含む第2の領域32、を少なくとも1組有する構成となっている。また、トラックTr5に限らず、各々のトラックにおいて上記同様の第1の領域及び第2の領域を少なくとも1組有している。
【0116】
上記実施の形態1と同様に、第1の領域31で信号を検出する場合は、内周側にオフトラックしており、第2の領域32で信号を検出する場合は、外周側にオフトラックしていると認識でき、第1のトラックTr5に戻るようにフィードバック制御を行うことができる。つまり、磁気記録再生装置5は、第1のトラックTr5に対して僅かにオフトラックである場合であっても、第1のトラックTr5に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。
【0117】
オフトラック方向については、予め、磁気記録再生装置5が、第1の領域31のように隣接する内周側のトラックの信号を検出する領域と、第2の領域32のように隣接する外周側のトラックの信号を検出する領域とを検出する順番とを、トラックごとに記憶しておくことで、特定することが可能となる。この場合、例えば、各トラックにアドレス領域を設けておけばよい。このようにすることで、磁気記録再生装置5がアドレスによって各トラックを識別し、第1の領域31のような内周側へのオフトラックを検出することが可能な領域と、第2の領域32のような外周側へのオフトラックを検出することが可能な領域とが出現する順番を認識することが可能となる。結果、オフトラック方向が内周側であるか外周側であるかを認識することができる。
【0118】
本変形例においても、上記実施形態1と同様に、磁気記録媒体4bは、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、磁気記録再生装置5に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、磁気記録媒体4bは、再生エラー及び記録エラーの少ない磁気記録再生装置5を提供することが可能となる。
【0119】
〔磁気記録媒体4の第3の変形例〕
磁気記録媒体4の第3の変形例について、図8を用いて説明する。図8は、当該変形例に係る磁気記録媒体4cの概略構成を示す図である。なお、磁気記録再生装置5の動作や磁気記録媒体4cの製造方法は、上記実施形態1に準じている。
【0120】
磁気記録媒体4cは、非磁性ガイド部1によって磁気的に分断された磁気記録部2を備えたディスクリートトラック媒体である。磁気記録部2は、同心円状の磁気記録層であり、磁気記録再生装置5によって磁気情報が記録再生されるものであり、所定のトラックピッチ(例えば、50nm)で形成されている。本変形例に係る磁気記録媒体4cの磁気記録層の膜厚は30nmであるが、これに限らず、10nm〜60nmとなっていればよい。
【0121】
各トラックにおいて、あるトラック(第1のトラック)に隣接する内周側(紙面下方)及び外周側(紙面上方)のトラックをそれぞれ、第2のトラック及び第3のトラックとし、また、各トラックにおいて、非磁気記録部3と磁気記録部2との2つの境界のうち、媒体の回転方向に対して前方(紙面左側)の境界を第1の境界、媒体の回転方向に対して後方(紙面右側)の境界を第2の境界とすると、各境界は以下の順に並んでいる。
【0122】
第2のトラックTr6Aの第1の境界(周方向位置f)、第1のトラックTr6の第1の境界(周方向位置はg)、第3のトラックTr6Bの第1の境界(周方向位置h)、第2のトラックTr6Aの第2の境界(周方向位置i)、第1のトラックTr6の第2の境界(周方向位置j)及び第3のトラックTr6Bの第2の境界(周方向位置k)の周方向位置が、回転方向の前方(紙面左)から、この順に備えられている。
【0123】
このような構造になっているため、第1のトラックTr6の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr6Aの非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr6Bに形成された磁気記録部2の一部とが等しい周方向位置にある第1の領域(gとhとに挟まれた領域)、及び、第1のトラックTr6の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr6Bの非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr6Aに形成された磁気記録部2の一部とが等しい周方向位置にある第2の領域(iとjとに挟まれた領域)を、少なくとも1組有することになる。さらに、上記第1の領域(gとhとに挟まれた領域)と第2の領域(iとjとに挟まれた領域)との間に、第1〜第3のトラックすべてが、非磁気記録部3である領域(hとiとに挟まれた領域)が存在している。つまり、本実施形態においては、トラックTr6に限らず、各々のトラックにおいて上記同様の第1の領域及び第2の領域を少なくとも1組有することになる。
【0124】
トラッキングは、以下の方法で行う。磁気再生素子12が、図8のトラックTr6に沿い、オントラックの状態で、紙面左から右方向に向かって、信号を検出していく場合に得られる信号の模式図を、図10(a)に示す。また、図9(a)及び図9(b)に示すように磁気再生素子12が、内周及び外周方向にわずかにオフトラックした場合に得られる信号の模式図をそれぞれ、図10(b)及び図10(c)に示す。直線13はスライスレベルを示している。
【0125】
まず、図8で示すように、磁気再生ヘッド10が、磁気記録媒体4cの第1のトラックTr6に対してオントラックである場合、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが、ほぼ第1のトラックTr6の中心に沿って検出する信号は図10(a)の通りg〜jの間、スライスレベルの信号が検出される。
【0126】
また、記録再生ヘッド10が、図9(a)のように第1のトラックTr6の中心から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが第1のトラックTr6の中心から内周側に位置ずれを起こしている場合、図10(b)に示されるように、i〜jの間に、隣接する内周側のトラックの磁化を検出する。また、図9(c)のように、記録再生ヘッド10が、第1のトラックTr6から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合、つまり、磁気再生素子12の中心Cmrが第1のトラックTr6の中心から外周側に位置ずれを起こしている場合、図10(c)に示されるように、g〜hの間に、隣接する外周側のトラックの磁化を検出する。図10(a)〜図10(c)では、g〜h、h〜i及びi〜jにおいて検出される信号をそれぞれ、S(g−h)、S(h−i)及びS(i−j)として明示しており、その前後の信号を省略している。
【0127】
記録再生ヘッド10が磁気記録媒体4cの第1のトラックTr6に対してオントラックであるとき、図10(a)に示されるように、g〜jの間でゼロレベル(ノイズレベル)となる。この場合、磁気記録再生装置5では、磁気記録媒体4cに対する記録再生ヘッド10の半径位置を調整することなく、第1のトラックTr6に記録された情報の再生を行うことが可能である。
【0128】
次に、記録再生ヘッド10が磁気記録媒体4cの第1のトラックTr6に対してオフトラックである場合、検出信号は、図10(a)に示す場合と異なり、g〜hまたはi〜j間で信号が検出される。
【0129】
すなわち、記録再生ヘッド10が、第1のトラックTr6から内周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、図10(b)に示すように、第1のトラックTr6の内周側にある磁気記録トラックの信号に対応する検出信号S(i−j)が検出される。従って、磁気記録再生装置5は、この検出信号がゼロレベル(ノイズレベル)になるように、記録再生ヘッド10の半径位置を外周側にずらして第1のトラックTr6に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0130】
一方、記録再生ヘッド10が、第1のトラックTr6から外周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、図10(c)に示すように、第1のトラックTr6の外周側にある磁気記録トラックの信号に対応する検出信号S(g−h)が検出される。従って、磁気記録再生装置5は、この検出信号がゼロレベル(ノイズレベル)になるように、記録再生ヘッド10の半径位置を内周側にずらして第1のトラックTr6に戻るようにフィードバック制御を行う。つまり、磁気記録再生装置5は、第1のトラックTr6に対して僅かにオフトラックである場合であっても、第1のトラックTr6に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。
【0131】
つまり、(iとjとに挟まれた領域で検出される信号の最大振幅)と(gとhとに挟まれた領域で検出される信号の最大振幅)との差をトラッキングエラー信号とすると、トラッキングエラー信号がゼロとなるように、フィードバック制御(トラッキング制御)を行うことで、記録再生ヘッド10をオントラックの状態にすることができる。
【0132】
ここで、上述したオフトラック方向について、その特定方法を説明する。本実施形態においては、図1に示すように、内周側(紙面下方)のトラックほど、非磁気記録部3の周方向位置が回転方向の前方(紙面左側)に備えられている。このように、一定方向の隣接するトラックに移動するに従い、非磁気記録部3の周方向位置が一定の方向に移動するような構成とすることによって、信号検出において規則性をもたせることが可能となる。つまり、図1の各トラックにおいて、(1)隣接する外周側のみの磁気記録部2の信号(S(g−h))、(2)非磁気記録部3のみからの信号である、ゼロレベル(ノイズレベル)の信号(S(h−i))、(3)隣接する内周側のみの磁気記録部2の信号(S(i−j))の順で、連続的に検出されることになる。この結果、(1)及び(3)の信号を検出した段階で、オフトラックの方向が内周側であるか外周側であるかを特定することが可能となる。
【0133】
また、g〜hとh〜iとの間に、信号が検出されない領域(h〜iの領域)を設けることで、オフトラック時であっても、S(g−h)とS(h−i)とが、ゼロレベル(ノイズレベル)の信号を挟んで分離して検出されるため、トラッキング用信号をより特定しやすくなり、トラッキングエラーが発生し難くなる。さらに、微細加工のばらつきによって、境界hやiの周方向位置にばらつきが生じても、S(g−h)とS(h−i)とが、ゼロレベル(ノイズレベル)の信号を挟んで、分離して検出されるため、トラッキング用信号をより特定しやすくなり、トラッキングエラーが発生し難くなる。
【0134】
本変形例においても、上記実施形態1と同様に、磁気記録媒体4cは、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、磁気記録再生装置5に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、磁気記録媒体4cは、再生エラー及び記録エラーの少ない磁気記録再生装置5を提供することが可能となる。
【0135】
〔磁気記録媒体4の第4の変形例〕
次に、磁気記録媒体4の第4の変形例について、図11を用いて説明する。図11は、当該変形例に係る磁気記録媒体4dの概略構成を示す図である。なお、磁気記録再生装置5の動作や磁気記録媒体4dの製造方法は、上記実施形態1に準じている。
【0136】
磁気記録媒体4dも、上記同様に、非磁性ガイド部1によって磁気的に分断された磁気記録部2を備えたディスクリートトラック媒体である。磁気記録部2は、同心円状の磁気記録層、磁気記録再生装置5によって磁気情報が記録再生されるものであり、所定のトラックピッチ(例えば、40nm)で形成されている。本変形例に係る磁気記録媒体4の磁気記録層の膜厚は20nmであるが、これに限らず、10nm〜60nmとなっていればよい。
【0137】
さらに、図11に示すように、非磁性ガイド部1によって磁気的に分離された磁気記録トラックは磁気記録部2と非磁気記録部3とを備えている。本変形例においては、非磁気記録部3が、比較的短い磁気記録部2を挟んで、2か所に形成されている。
【0138】
このような構造になっているため、第1のトラックTr7の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr7A(第1のトラックTr7に隣接する外周側のトラック)の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr7B(第1のトラックTr7に隣接する内周側のトラック)に形成された磁気記録部2とが等しい周方向位置にある2つの第1の領域(lとmとに挟まれた領域及び、oとpとに挟まれた領域)、及び、第1のトラックTr7の非磁気記録部3の少なくとも一部と、第3のトラックTr7Bの非磁気記録部3の少なくとも一部と、第2のトラックTr7Aに形成された磁気記録部2とが等しい周方向位置にある2つの第2の領域(mとnとに挟まれた領域及び、pとqとに挟まれた領域)、を2組有することになる。つまり、本実施形態においては、トラックTr7に限らず、各々のトラックにおいて上記同様の第1の領域及び第2の領域を2組有することになる。
【0139】
lとmとに挟まれた領域及び、oとpに挟まれた領域で信号を検出する場合は、内周側にオフトラックしており、mとnとに挟まれた領域及び、pとqとに挟まれた領域で信号を検出する場合は、外周側にオフトラックしていると認識でき、トラックTr7に戻るようにフィードバック制御を行うことができる。つまり、磁気記録再生装置5は、トラックTr7に対して僅かにオフトラックである場合であっても、トラックTr7に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。
【0140】
各トラックにおける非磁気記録部3は、図12(a)のように、複数設けることが可能であり、その出現頻度を任意に設定することができるため、オフトラック量検出用信号を高頻度で検出することが可能となる。加えて、非磁気記録部3は、データ記録領域に形成することができ、従来のように、トラッキングサーボ用パターンのみの領域を設ける必要がないため、容量の低下もほとんどない。よって、高精度トラッキングを実現可能であり、また、磁気記録媒体4dのデータ記録領域の記憶容量をほとんど低下させることなく、再生エラー及び記録エラーのより少ない磁気記録再生装置5を提供することが可能となる。
【0141】
また、図12(b)のように、セクタ分離パターン14を形成することも可能であり、アドレス情報領域を設けることも可能である。
【0142】
〔磁気記録媒体4の第5の変形例〕
磁気記録媒体4の第5の変形例について、図13を用いて説明する。図13は、当該変形例に係る磁気記録媒体4eの概略構成を示す図である。なお、磁気記録再生装置5の動作や磁気記録媒体4eの製造方法は、上記実施形態1に準じている。
【0143】
非磁気記録部3の周方向への長さは、トラックごとに異なっていてもよく、例えば、図13に示すように、外周側(紙面上方)のトラックほど、非磁気記録部3が短くなっていてもよい。また、例えば、外周側のトラックほど、非磁気記録部3が長くなっていてもよい。このようにすることで、非磁気記録部3の長さによって、トラックを識別することが可能となる。
【0144】
〔誘電体記録再生装置への応用〕
また、本発明は、誘電体記録媒体及び誘電体記録再生装置についても同様に提供することができる。この場合、記録媒体としては誘電体記録部を備えた誘電体記録媒体を用いればよく、記録再生装置は、分極方向を検出する素子(再生素子)及び分極方向を変化させる素子(記録素子)を備えた記録再生ヘッドを具備していればよい。
【0145】
〔近接場光記録再生装置への応用〕
また、本発明は、近接場光記録媒体及び近接場光記録再生装置についても同様に提供することができる。この場合、記録媒体としては近接場光記録トラックを備えた近接場光記録媒体を用いればよく、記録再生装置は、近接場光の散乱強度を検出する光受素子(再生素子)及び近接場光の散乱強度を変化させる素子(記録素子)を備えた記録再生ヘッドを具備していればよい。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明に係る磁気記録媒体は、例えばディスクリート媒体のような高密度磁気記録媒体に好適に利用できる。また、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記磁気記録媒体に対して情報の記録再生を行う場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す磁気記録媒体に対して記録再生を行う磁気記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2に示す磁気記録再生装置の記録再生ヘッドの概略構成を示す図である。
【図4】図1に示す磁気記録媒体の再生時において、記録再生ヘッドがトラックTr1に対してオフトラックである状態を示す図である。同図(a)及び同図(b)はそれぞれ、記録再生ヘッドが内周側及び外周側にわずかにオフトラックしている状態を示す図である。
【図5】図1に示す磁気記録媒体から磁気再生素子が検出した信号を示す模式図である。同図(a)は、記録再生ヘッドが、トラックTr1に対してオントラックであるときの検出信号であり、同図(b)及び同図(c)はそれぞれ、内周側及び外周側にわずかにオフトラックしているときの検出信号を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図9】図8に示す磁気記録媒体の再生時において、記録再生ヘッドがトラックTr6に対してオフトラックである状態を示す図である。同図(a)及び同図(b)はそれぞれ、記録再生ヘッドが内周側及び外周側にわずかにオフトラックしている状態を示す図である。
【図10】図8に示す磁気記録媒体から磁気再生素子が検出した信号を示す模式図である。同図(a)は、記録再生ヘッドが、トラックTr6に対してオントラックであるときの検出信号であり、同図(b)及び同図(c)はそれぞれ、内周側及び外周側にわずかにオフトラックしているときの検出信号を示す模式図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0148】
1 非磁性ガイド部(非磁性分離部)
2 磁気記録部
3 非磁性部
4 磁気記録媒体
5 磁気記録再生装置
6 サスペンション
7 スピンドル
8 ボイスコイルモーター
9 ランプ機構
10 記録再生ヘッド
11 磁気記録素子
12 磁気再生素子
13 検出された信号のゼロレベル
14 セクタ分離パターン
a〜q 磁気記録媒体の周方向位置(トラック方向位置)
Tr1〜Tr7、Tr4A〜Tr7A、Tr4B〜Tr7B
トラックの番号(一点鎖線はトラックの中心を示す)
Sw 磁気再生素子の検出幅
Cmr 磁気再生素子の中心
S(b−c)、S(c−d)、S(g−h)〜S(i−j)
磁気記録部から検出された信号
h1、h2 磁気再生素子によって検出される信号の振幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記録する記録部と、情報が記録されない非記録部とを有するトラックが等しい間隔で複数配置されるとともに、該トラック間に該トラック間を分離するための分離部が配置されている記録媒体であって、
上記非記録部は、上記トラックに隣接する2つの上記分離部と連続して形成されており、
上記複数のトラックのうちの1つのトラックを第1のトラックとし、該第1のトラックの両側に設けられた2つのトラックをそれぞれ第2のトラック及び第3のトラックとするとき、
上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックに形成された記録部の一部とが、等しい、上記記録媒体の周方向であるトラック方向位置にある第1の領域、及び、
上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックに形成された記録部の一部とが等しいトラック方向位置にある第2の領域、を少なくとも1組有することを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
上記トラックにおける上記非記録部と上記記録部との2つの境界のうち、媒体の移動方向に対して前方の境界を第1の境界、後方の境界を第2の境界とするとき、
上記第2のトラックの第1の境界、上記第1のトラックの第1の境界、上記第1のトラックの第2の境界、及び上記第3のトラックの第2の境界のトラック方向位置が、この順に備えられており、かつ、
上記第1のトラックの上記第1の境界と上記第2の境界とに挟まれたトラック方向位置に、上記第2のトラックの上記第2の境界及び上記第3のトラックの上記第1の境界が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
上記トラックにおける上記非記録部と上記記録部との2つの境界のうち、媒体の移動方向に対して前方の境界を第1の境界、後方の境界を第2の境界とするとき、
上記第2のトラックの上記第1の境界、上記第1のトラックの上記第1の境界、上記第3のトラックの上記第1の境界、上記第2のトラックの上記第2の境界、上記第1のトラックの上記第2の境界、上記第3のトラックの上記第2の境界のトラック方向位置が、この順に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項4】
記録媒体におけるトラックに追従して情報の記録を行う記録素子、及び情報の再生を行う再生素子を有する記録再生ヘッドを備えている記録再生装置において、
上記記録媒体が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の記録媒体であり、当該記録媒体における第1のトラックについて記録または再生を行うとき、第1の領域における第3のトラックに形成された記録部、及び第2の領域における第2のトラックに形成された記録部から検出した信号の振幅に基づきトラッキングエラー信号を生成し、当該トラッキングエラー信号が所望の値となるように上記記録再生ヘッドの位置を制御することで、上記記録再生ヘッドがオントラックとなるように制御するトラッキング制御を行うことを特徴とする記録再生装置。
【請求項5】
上記再生素子の上記媒体の半径方向であるトラッククロス方向の検出幅をSw、上記記録媒体におけるトラック及び分離部のトラッククロス方向への幅をそれぞれMw及びGwとしたとき、Mw<Sw<Mw+2×Gwの関係を有していることを特徴とする請求項4に記載の記録再生装置。
【請求項6】
上記記録素子と上記再生素子とのトラッククロス方向における距離を検出する距離検出動作を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の記録再生装置。
【請求項7】
上記距離検出動作は、
上記記録素子による記録動作、上記再生素子による再生動作、及び該再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記記録媒体のトラッククロス方向における位置毎に繰り返し行う動作と、
再生時において、オントラックであるときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるクロストラック位置をr1とし、上記記憶したエラーレートのうち、所望のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるクロストラック位置をr2とするとき、該記録素子と該再生素子とのトラッククロス方向における距離を(r1−r2)と決定する動作と、を含むことを特徴とする請求項6に記載の記録再生装置。
【請求項8】
上記距離検出動作は、
上記記録素子と上記再生素子とのトラッククロス方向における距離をトラッキングエラー信号の差として検出する動作であって、
上記記録素子による記録動作、上記再生素子による再生動作、及び該再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記記録媒体のトラッククロス方向におけるトラッククロス位置毎に繰り返し行う動作と、
再生時において、オントラックであるときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるトラッキングエラー信号をTES1とし、上記記憶したエラーレートのうち、所望のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドが検出したトラッキングエラー信号をTES2とするとき、該記録素子と該再生素子とのトラッククロス方向における距離をトラッキングエラー信号の差(TES2−TES1)として決定する動作と、を含むことを特徴とする請求項6に記載の記録再生装置。
【請求項1】
情報を記録する記録部と、情報が記録されない非記録部とを有するトラックが等しい間隔で複数配置されるとともに、該トラック間に該トラック間を分離するための分離部が配置されている記録媒体であって、
上記非記録部は、上記トラックに隣接する2つの上記分離部と連続して形成されており、
上記複数のトラックのうちの1つのトラックを第1のトラックとし、該第1のトラックの両側に設けられた2つのトラックをそれぞれ第2のトラック及び第3のトラックとするとき、
上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックに形成された記録部の一部とが、等しい、上記記録媒体の周方向であるトラック方向位置にある第1の領域、及び、
上記第1のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第3のトラックの非記録部の少なくとも一部と、上記第2のトラックに形成された記録部の一部とが等しいトラック方向位置にある第2の領域、を少なくとも1組有することを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
上記トラックにおける上記非記録部と上記記録部との2つの境界のうち、媒体の移動方向に対して前方の境界を第1の境界、後方の境界を第2の境界とするとき、
上記第2のトラックの第1の境界、上記第1のトラックの第1の境界、上記第1のトラックの第2の境界、及び上記第3のトラックの第2の境界のトラック方向位置が、この順に備えられており、かつ、
上記第1のトラックの上記第1の境界と上記第2の境界とに挟まれたトラック方向位置に、上記第2のトラックの上記第2の境界及び上記第3のトラックの上記第1の境界が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
上記トラックにおける上記非記録部と上記記録部との2つの境界のうち、媒体の移動方向に対して前方の境界を第1の境界、後方の境界を第2の境界とするとき、
上記第2のトラックの上記第1の境界、上記第1のトラックの上記第1の境界、上記第3のトラックの上記第1の境界、上記第2のトラックの上記第2の境界、上記第1のトラックの上記第2の境界、上記第3のトラックの上記第2の境界のトラック方向位置が、この順に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項4】
記録媒体におけるトラックに追従して情報の記録を行う記録素子、及び情報の再生を行う再生素子を有する記録再生ヘッドを備えている記録再生装置において、
上記記録媒体が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の記録媒体であり、当該記録媒体における第1のトラックについて記録または再生を行うとき、第1の領域における第3のトラックに形成された記録部、及び第2の領域における第2のトラックに形成された記録部から検出した信号の振幅に基づきトラッキングエラー信号を生成し、当該トラッキングエラー信号が所望の値となるように上記記録再生ヘッドの位置を制御することで、上記記録再生ヘッドがオントラックとなるように制御するトラッキング制御を行うことを特徴とする記録再生装置。
【請求項5】
上記再生素子の上記媒体の半径方向であるトラッククロス方向の検出幅をSw、上記記録媒体におけるトラック及び分離部のトラッククロス方向への幅をそれぞれMw及びGwとしたとき、Mw<Sw<Mw+2×Gwの関係を有していることを特徴とする請求項4に記載の記録再生装置。
【請求項6】
上記記録素子と上記再生素子とのトラッククロス方向における距離を検出する距離検出動作を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の記録再生装置。
【請求項7】
上記距離検出動作は、
上記記録素子による記録動作、上記再生素子による再生動作、及び該再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記記録媒体のトラッククロス方向における位置毎に繰り返し行う動作と、
再生時において、オントラックであるときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるクロストラック位置をr1とし、上記記憶したエラーレートのうち、所望のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるクロストラック位置をr2とするとき、該記録素子と該再生素子とのトラッククロス方向における距離を(r1−r2)と決定する動作と、を含むことを特徴とする請求項6に記載の記録再生装置。
【請求項8】
上記距離検出動作は、
上記記録素子と上記再生素子とのトラッククロス方向における距離をトラッキングエラー信号の差として検出する動作であって、
上記記録素子による記録動作、上記再生素子による再生動作、及び該再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記記録媒体のトラッククロス方向におけるトラッククロス位置毎に繰り返し行う動作と、
再生時において、オントラックであるときの上記記録再生ヘッドの上記記録媒体におけるトラッキングエラー信号をTES1とし、上記記憶したエラーレートのうち、所望のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドが検出したトラッキングエラー信号をTES2とするとき、該記録素子と該再生素子とのトラッククロス方向における距離をトラッキングエラー信号の差(TES2−TES1)として決定する動作と、を含むことを特徴とする請求項6に記載の記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−108555(P2010−108555A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280345(P2008−280345)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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