説明

記録媒体搬送装置及び画像形成装置

【課題】吸引搬送時における記録媒体の皺発生抑制と、送風時における記録媒体のバタツキ抑制を両立する。
【解決手段】記録媒体を搬送面へ吸引しながら搬送する搬送手段と、前記搬送手段よりも前記記録媒体の搬送方向上流側に設けられ、前記記録媒体の中央部から側部上流側に向かって斜め方向に送風し、且つ、前記送風が前記記録媒体に当る前までに、前記搬送手段へ搬送される前記記録媒体の幅に応じて、前記送風の送風領域幅が前記記録媒体の幅よりも狭くなるように前記送風の方向を調整する送風手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録媒体搬送装置を備えた画像形成装置として、多数のノズルを配列させた液滴吐出ヘッドを有し、この液滴吐出ヘッドに対して記録媒体(以下、用紙と称す)を搬送し、ノズルから用紙に向けてインク等の液滴を吐出することにより、用紙上に画像(文字を含む)を形成する液体吐出記録方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
このような液体吐出記録方式の画像形成装置において、画像形成後のプロセスでは、液滴が吐出された用紙を吸引しつつ搬送することによって、液滴中の水分が原因で発生する用紙変形歪(カールやカックル)を低減している。また、吸引搬送しつつ、同時に乾燥を実施して、用紙変形歪を効果的に低減している。
【0004】
しかしながら、画像形成後、既に用紙変形歪が進行している状態の用紙を吸引しようとすると、用紙を吸引搬送する場合と比較し、吸引時に皺となり易い。従って、画像形成後のある程度用紙変形歪が進行した状態の用紙であっても、皺なく吸引搬送できる技術の工夫が求められている。
同様に、画像形成前で、既に用紙変形歪が進行している状態の用紙を画像形成し、且つ吸引しようとすると、用紙変形歪のない用紙を画像形成して吸引搬送する場合と比較し、吸引時により皺となり易い。従って、画像形成前のある程度用紙変形歪が進行した状態の用紙であっても、皺なく吸引搬送できる技術の工夫も求められている。
【0005】
そこで、特許文献1には、画像形成後であって吸引搬送前に、温風噴射ノズルの温風により用紙に形成された皺を除去する技術が開示されている。また、この特許文献1には、用紙幅方向中央部から側端部に向かうに従って、温風の方向と用紙搬送方向との成す角度が増加するように温風噴射ノズルを構成することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−159127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、用紙幅方向中央部から側端部に向かうに従って、温風の方向と用紙搬送方向との成す角度が増加するように温風噴射ノズルを構成すると、温風の方向と用紙搬送方向との角度や温風噴射ノズルの配置によっては、温風が用紙の裏面に回り込み、揚力を発生させ、用紙が搬送時にバタツキ易くなる場合がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、吸引搬送時における記録媒体の皺発生抑制と、送風時における記録媒体のバタツキ抑制を両立する記録媒体搬送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様に係る記録媒体搬送装置は、記録媒体を搬送面へ吸引しながら搬送する搬送手段と、前記搬送手段よりも前記記録媒体の搬送方向上流側に設けられ、前記記録媒体の中央部から側部上流側に向かって斜め方向に送風し、且つ、前記送風が前記記録媒体に当る前までに、前記搬送手段へ搬送される前記記録媒体の幅に応じて、前記送風の送風領域幅が前記記録媒体の幅よりも狭くなるように前記送風の方向を調整する送風手段と、を備える。
【0010】
この構成によれば、搬送手段よりも記録媒体の搬送方向上流側に送風手段が設けられるので、記録媒体が搬送手段へ搬送される前までに、送風手段は、記録媒体の中央部から側部上流側にかけて斜め方向に向かって送風することになる。これにより、記録媒体が搬送手段での吸引により拘束される前に、搬送進行に伴って記録媒体の中央部から側後端部にかけて斜め方向に記録媒体を伸張させる力を加えることができ、記録媒体の中央部に発生している用紙変形歪を側後端部に散らす又は除去することができる。したがって、記録媒体が搬送手段に搬送され、吸引が開始される際に、記録媒体の用紙変形歪が分散された状態又は無い状態とすることができ、吸引搬送時における記録媒体の皺発生を抑制できる。
また、この皺発生を抑制する送風手段は、送風が記録媒体に当る前までに、搬送手段へ搬送される記録媒体の幅に応じて、送風の送風領域幅が記録媒体の幅よりも狭くなるように送風の方向を調整するので、送風が記録媒体の外側に直接はみ出て、当該記録媒体の裏面に回り込んでしまうことを防止できる。これにより、記録媒体の揚力の発生を抑え、送風時における記録媒体のバタツキを抑制することができる。
以上より、本発明の第1態様に係る記録媒体搬送装置によれば、吸引搬送時における記録媒体の皺発生抑制と、送風時における記録媒体のバタツキ抑制を両立した。
【0011】
本発明の第2態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様において、前記搬送手段は、前記記録媒体の先端を把持して搬送する把持手段と、前記把持手段で搬送される前記記録媒体を、前記搬送面へ吸引する吸引体と、を備える。
【0012】
この構成によれば、記録媒体は、吸引体により搬送面へ吸引されながら、把持手段により先端が把持されて搬送されるため、搬送面に吸着(密着)されて吸着(密着)されて記録媒体が搬送面と一体となって搬送される場合と比較して、記録媒体の拘束力が弱く、吸引搬送時における記録媒体の皺発生を抑制できる。
【0013】
本発明の第3態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様又は第2態様において、前記送風手段は、前記送風領域幅内で中央部の風量を強くする。
【0014】
この構成によれば、記録媒体の中央部は用紙変形歪が集中し易いので、送風領域幅内で中央部の風量を強くすると、用紙変形歪をより多く記録媒体の側後端部に分散又は除去することができる。
【0015】
本発明の第4態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様〜第3態様の何れか1つの態様において、前記送風手段は、前記記録媒体の剛性に応じて、前記送風の方向又は前記送風の風量を調整する。
【0016】
この構成によれば、バタツキ易い記録媒体(例えば薄紙)であるほど、厚紙の場合に比べ、記録媒体の幅に対して送風領域幅をさらに狭くするように調整することで、送風時における記録媒体のバタツキをより一層抑制できる。また、用紙変形量の大きい剛性の低い記録媒体であるほど、厚紙の場合に比べ、風量を強くなるように調整することで、送風時における記録媒体の用紙変形歪をより一層側後端部に散らす又は除去することができる。
【0017】
本発明の第5態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様〜第4態様の何れか1つにおいて、前記送風手段は、前記送風領域幅が、前記搬送手段へ搬送される前記記録媒体の幅の50%以上95%以下になるように前記送風の方向を調整する。
【0018】
このように、送風領域幅が搬送手段へ搬送される記録媒体の幅の50%以上だと記録媒体の側端部を押圧する効果を高めることができる。また、送風領域幅が搬送手段へ搬送される記録媒体の幅の95%以下だと、記録媒体のバタツキをより抑制できる。
【0019】
本発明の第6態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様において、前記搬送手段は、前記搬送面へ吸引して前記記録媒体を密着保持した状態で回転し、搬送する圧胴、を備える。
【0020】
この構成によれば、記録媒体は圧胴に吸引され密着保持された状態で回転搬送されるため、搬送中の記録媒体の姿勢を保持することができる。
【0021】
本発明の第7態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様〜第6態様の何れか1つにおいて、前記搬送面には、吸引用の開口部が設けられ、前記開口部の開口率は、前記記録媒体の搬送方向の上流側から下流側に向かって段階的に大きくされている。
【0022】
この構成によれば、搬送面での搬送に伴って段階的に記録媒体の吸引量が大きくなり、吸引搬送時に記録媒体の急激な吸引量変化を抑制できる。これにより、吸引搬送時における記録媒体の皺発生を抑制できる。
【0023】
本発明の第8態様に係る記録媒体搬送装置では、第7態様において、前記開口部の開口率は、前記搬送面の中央部から側端部の方向に向かって段階的に大きくされている。
【0024】
この構成によれば、開口部の開口率は、搬送方向の上流側から下流側に向かって段階的に大きくされ、且つ、搬送面の中央部から側端部の方向に向かって段階的に大きくされているので、搬送面での記録媒体の搬送進行に伴って、当該記録媒体の中央部から側後端部にかけて斜め方向に記録媒体を伸張させる力を加えることができ、記録媒体の中央部に発生し易い用紙変形歪を側後端部に散らす又は除去することができる。
【0025】
本発明の第9態様に係る記録媒体搬送装置では、第6態様において、前記圧胴の前記搬送面の吸引領域は、前記記録媒体の先端部を吸引する箇所から、前記記録媒体の後端部を吸引する箇所に向かって、細分化されている。
【0026】
この構成によれば、記録媒体の先端部から段階的に吸引を開始することができる。
【0027】
本発明の第10態様に係る記録媒体搬送装置では、第7態様又は第8態様において、前記開口部は、前記記録媒体の搬送方向下流側がV字の頂部となるV字型とされている。
【0028】
この構成によれば、搬送面での搬送進行に伴って記録媒体の中央部から側後端部にかけて斜め方向に記録媒体を伸張させる力を加えることができ、記録媒体の中央部に発生し易い用紙変形歪を側後端部に散らす又は除去することができる。
【0029】
本発明の第11態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様〜第6態様の何れか1つにおいて、前記搬送面には、吸引用の開口部が設けられ、前記開口部は、前記記録媒体の搬送方向下流側がV字の底部となる逆V字型とされている。
【0030】
この構成によれば、記録媒体の側端部を中央部よりも先に吸引するので、仮に吸引搬送中にも送風がされていた場合、送風の記録媒体裏面からの回り込みによる記録媒体の吸引搬送時のバタツキを効果的に抑止することができる。
【0031】
本発明の第12態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様〜第11態様の何れか1つにおいて、前記送風手段は、搬送される前記記録媒体の幅方向に沿って配置された複数の送風機を備える、
【0032】
この構成によれば、送風機の送風方向や風量を個別に変更できるようになるため、より詳細な送風領域幅の調整や風量の調整ができる。
【0033】
本発明の第13態様に係る記録媒体搬送装置では、第12態様において、前記送風手段は、各送風機の送風方向を、前記記録媒体の中央部から側部方向かけて、前記記録媒体の中心線に対して徐々に傾きが小さくなるように調整する。
【0034】
この構成によれば、記録媒体の中央部に発生した用紙変形歪を側後端部に長く散らす又はより除去することができ、且つ、側端部側の送風機の送風が記録媒体の外側にはみ出ることを防止することができる。
【0035】
本発明の第14態様に係る記録媒体搬送装置では、第12態様において、前記送風手段は、各送風機の送風方向を、前記記録媒体の中央部から側部方向かけて、前記記録媒体の中心線に対して徐々に傾きが大きくなるように調整する。
【0036】
この構成によれば、記録媒体の中央部に発生した用紙変形歪を徐々に側後端部に散らす又は除去することができる。
【0037】
本発明の第15態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様〜第14態様の何れか1つにおいて、前記送風手段は、前記記録媒体の搬送方向に沿って配置された複数の送風機を備える。
【0038】
この構成によれば、吸引搬送時における記録媒体の皺発生をより抑制できる。
【0039】
本発明の第16態様に係る記録媒体搬送装置では、第15態様において、前記送風手段は、前記搬送方向の上流側に設けられた前記送風機の送風領域幅よりも、前記搬送方向の下流側に設けられた前記送風機の送風領域幅が広くなるように、前記送風の方向を調整する。
【0040】
この構成によれば、搬送方向の上流側に設けられた送風機(全体)の送風領域幅が下流側に設けられた送風機(全体)の送風領域幅よりも狭いので、搬送の際、まず記録媒体の中央部に対して送風することになる。この結果、搬送進行に伴って、記録媒体の中央部の用紙変形歪を側端に散らした上で、より広い送風領域幅で送風することになり、側端に散った用紙変形歪をさらに散らして記録媒体の幅方向に均一化でき、吸引搬送時における記録媒体の皺発生をより抑制できる。
【0041】
本発明の第17態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様〜第16態様の何れか1つにおいて、前記送風手段は、前記送風を熱風にするヒータを備える。
【0042】
この構成によれば、送風手段の熱風により、例えば液滴が吐出された記録媒体を乾燥することができ、もって用紙変形歪量を低減できる。
【0043】
本発明の第18態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様〜第17態様の何れか1つにおいて、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を乾燥する、乾燥手段を備える。
【0044】
この構成によれば、用紙変形歪Tを抑制した状態で乾燥手段によって乾燥を促進することができ、排紙後の用紙変形歪量をより一層低減できる。
【0045】
本発明の第19態様に係る記録媒体搬送装置では、第18態様において、前記乾燥手段は、前記搬送面を加熱して前記記録媒体を乾燥する。
【0046】
この構成によれば、例えば液滴が吐出された記録媒体の裏面から乾燥することができるので、乾燥を行っても液滴が滲み難い。
【0047】
本発明の第20態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様〜第19態様の何れか1つの記録媒体搬送装置と、前記記録媒体に液滴を吐出して描画する液滴吐出ヘッドと、を備え、前記送風手段は、前記液滴吐出ヘッドと前記搬送手段との間に設けられている。
【0048】
この構成によれば、液滴吐出ヘッドによる描画後、記録媒体にある用紙変形歪を、送風手段により中央部から側後端部に散らす又は除去することができる。そして、時間をおかずに、搬送手段で吸引搬送されるので、搬送手段で搬送される前に再度用紙変形歪が発生することを抑制できる。
【0049】
本発明の第21態様に係る画像形成装置では、第20態様において、前記送風手段は、前記記録媒体の前記液滴が吐出された描画部分に対する送風の風量を、非描画部分に対する送風の風量よりも強くする。
【0050】
この構成によれば、液滴によって浮き易くなっている描画部分に対する風量を、非描画部分に対する風量よりも強くするので、描画部分の浮きを抑えることができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、吸引搬送時における記録媒体の皺発生抑制と、送風時における記録媒体のバタツキ抑制を両立する記録媒体搬送装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態に係る記録媒体搬送装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【図3】図3(A)は、送風ユニットの一部分解正面図である。図3(B)は、送風ユニットの側面図である。
【図4】図4(A)は、ガイドプレートの側面図である。図4(B)は、ガイドプレートの平面図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図6(A)は、送風制御部による制御前の、送風ユニットの各ノズルの傾斜状態を示す平面図である。図6(B)は、送風制御部による制御後の、送風ユニットの各ノズルの傾斜状態を示す平面図である。
【図7】図7(A)は、送風制御部による制御前の、送風ユニットの各ノズルの傾斜状態を示す平面図である。図7(B)は、送風制御部による制御後の、送風ユニットの各ノズルの傾斜状態を示す平面図である。
【図8】図8(A)〜(D)は、送風部を通過する用紙の状態を搬送順に示す図である。
【図9】図9(A)〜(C)は、搬送機構による吸引搬送時の用紙の状態を搬送順に示す図である。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【図11】図11(A)及び(B)は、送風制御部による制御後の、送風ユニットの各ノズルの傾斜状態の変形例を示す平面図である。
【図12】図12は、送風制御部による制御後の、送風ユニットの各ノズルの配置状態の変形例を示す平面図である。
【図13】図13は、第1実施形態に係る送風ユニットの変形例を示す図である。
【図14】図14は、送風部の配置の変形例を示す図である。
【図15】図15は、送風部の配置の他の変形例を示す図である。
【図16】図16(A)及び(B)は、第1実施形態に係るガイドプレートの摺接面に設けられる開口の変形例を示す図である。
【図17】図17は、第2実施形態に係る画像形成記録装置の変形例を示す図である。
【図18】図18は、第2実施形態に係る乾燥ドラムの摺接面に設けられる開口の一例を示す図である。
【図19】図19(A)〜(C)は、乾燥ドラムで用紙の吸引が開始される様子を順に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
<第1実施形態>
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る記録媒体搬送装置及び画像形成装置について具体的に説明する。なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0054】
−画像形成装置の装置構成−
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【0055】
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体搬送装置11を搭載し、枚葉の用紙(記録媒体)Pに水性UVインク(水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型のインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録し、記録媒体搬送装置11へ搬送するインクジェット記録装置10である。
このインクジェット記録装置10は、主として、用紙Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する処理液付与部14と、処理液付与部14で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pの表面に水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像を記録し、記録媒体搬送装置11へ搬送する画像記録部18と、記録媒体搬送装置11で搬送された用紙Pを排紙する排紙部24と、で構成される。
また、インクジェット記録装置10に搭載される記録媒体搬送装置11は、主として、画像記録部18で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部20と、インク乾燥処理部20で乾燥処理された用紙PにUV照射処理(定着処理)を行って画像を定着させるUV照射処理部22とで構成される。そして、本第1実施形態ではさらに、記録媒体搬送装置11は、画像記録部18とインク乾燥処理部20との間に設けられ、用紙Pに対して送風する送風部26を含んで構成される。
【0056】
−給紙部−
給紙部12は、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部14に給紙する。給紙部12は、主として、給紙台30と、サッカー装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40とで構成される。
【0057】
用紙Pは、多数枚が積層された束の状態で給紙台30に載置される。給紙台30は、図示しない給紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。この給紙台昇降装置は、給紙台30に積載された用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、束の最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、給紙台30を昇降させる。
【0058】
記録媒体としての用紙Pは、特に限定されないが、一般のオフセット印刷などで使用される汎用の印刷用紙(いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)を用いることができる。本例では塗工紙が用いられる。塗工紙は、一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが好適に用いられる。
【0059】
サッカー装置32は、給紙台30に積載されている用紙Pを上から順に1枚ずつ取り上げて、給紙ローラ対34に給紙する。サッカー装置32は、昇降自在かつ揺動自在に設けられたサクションフット32Aを備え、このサクションフット32Aによって用紙Pの上面を吸着保持して、用紙Pを給紙台30から給紙ローラ対34に移送する。この際、サクションフット32Aは、束の最上位に位置する用紙Pの先端側の上面を吸着保持して、用紙Pを引き上げ、引き上げた用紙Pの先端を給紙ローラ対34を構成する一対のローラ34A、34Bの間に挿入する。
【0060】
給紙ローラ対34は、互いに押圧当接された上下一対のローラ34A、34Bで構成される。上下一対のローラ34A、34Bは、一方が駆動ローラ(ローラ34A)、他方が従動ローラ(ローラ34B)とされ、駆動ローラ(ローラ34A)は、図示しないモータに駆動されて回転する。モータは、用紙Pの給紙に連動して駆動され、サッカー装置32から用紙Pが給紙されると、そのタイミングに合わせて駆動ローラ(ローラ34A)を回転させる。上下一対のローラ34A、34Bの間に挿入された用紙Pは、このローラ34A、34Bにニップされて、ローラ34A、34Bの回転方向(フィーダボード36の設置方向)に送り出される。
【0061】
フィーダボード36は、用紙幅に対応して形成され、給紙ローラ対34から送り出された用紙Pを受けて、前当て38までガイドする。このフィーダボード36は、下方に向けて傾斜して設置され、その搬送面の上に載置された用紙Pを搬送面に沿って滑らせて前当て38までガイドする。
【0062】
フィーダボード36には、用紙Pを搬送するためのテープフィーダ36Aが幅方向に間隔をおいて複数設置される。テープフィーダ36Aは、無端状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。フィーダボード36の搬送面に載置された用紙Pは、このテープフィーダ36Aによって送りが与えられて、フィーダボード36の上を搬送される。
【0063】
また、フィーダボード36の上には、リテーナ36Bとコロ36Cとが設置される。
【0064】
リテーナ36Bは、用紙Pの搬送面に沿って前後に縦列して複数配置される(本例では2つ)。このリテーナ36Bは、用紙幅に対応した幅を有する板バネで構成され、搬送面に押圧当接されて設置される。テープフィーダ36Aによってフィーダボード36の上を搬送される用紙Pは、このリテーナ36Bを通過することにより、凹凸が矯正される。なお、リテーナ36Bは、フィーダボード36との間に用紙Pを導入しやすくするため、後端部がカールして形成される。
【0065】
コロ36Cは、前後のリテーナ36Bの間に配設される。このコロ36Cは、用紙Pの搬送面に押圧当接されて設置される。前後のリテーナ36Bの間を搬送される用紙Pは、このコロ36Cによって上面が抑えられながら搬送される。
【0066】
前当て38は、用紙Pの姿勢を矯正する。この前当て38は、板状に形成され、用紙Pの搬送方向と直交して配置される。また、図示しないモータに駆動されて、揺動可能に設けられる。フィーダボード36の上を搬送された用紙Pは、その先端が前当て38に当接されて、姿勢が矯正される(いわゆる、スキュー防止)。前当て38は、給紙ドラム40への用紙の給紙に連動して揺動し、姿勢を矯正した用紙Pを給紙ドラム40に受け渡す。
【0067】
給紙ドラム40は、前当て38を介してフィーダボード36から給紙される用紙Pを受け取り、処理液付与部14へと搬送する。給紙ドラム40は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。給紙ドラム40の外周面上には、グリッパ40Aが備えられ、このグリッパ40Aによって用紙Pの先端が把持される。給紙ドラム40は、グリッパ40Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液付与部14へと用紙Pを搬送する。
【0068】
−処理液付与部−
処理液付与部14は、用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する。この処理液付与部14は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの印刷面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット44とで構成される。
【0069】
処理液付与ドラム42は、給紙部12の給紙ドラム40から用紙Pを受け取り、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する。処理液付与ドラム42は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液付与ドラム42の外周面上には、グリッパ42Aが備えられ、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液付与ドラム42は、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する(1回転で1枚の用紙Pを搬送する。)。処理液付与ドラム42と給紙ドラム40は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0070】
処理液付与ユニット44は、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液をローラ塗布する。この処理液付与ユニット44は、主として、用紙Pに処理液を塗布する塗布ローラ44Aと、処理液が貯留される処理液槽44Bと、処理液槽44Bに貯留された処理液を汲み上げて、塗布ローラ44Aに供給する汲み上げローラ44Cとで構成される。汲み上げローラ44Cは、塗布ローラ44Aに押圧当接して設置されるとともに、一部を処理液槽44Bに貯留された処理液に浸漬させて設置される。この汲み上げローラ44Cは、処理液を計量して汲み上げ、塗布ローラ44Aの周面に一定の厚さで処理液を付与する。塗布ローラ44Aは、用紙幅に対応して設けられ、用紙Pに押圧当接されて、その周面に付与された処理液を用紙Pに塗布する。塗布ローラ44Aは、図示しない当接離間機構に駆動されて、処理液付与ドラム42の周面に当接する当接位置と、処理液付与ドラム42の周面から離間する離間位置との間を移動する。当接離間機構は、用紙Pの通過タイミングに合わせて、塗布ローラ44Aを移動させ、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液を塗布する。
【0071】
ここで、この用紙Pの表面に塗布する処理液は、後段の画像記録部18で用紙Pに打滴する水性UVインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液である。このような処理液を用紙Pの表面に塗布して水性UVインクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いた場合であっても、着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
【0072】
−処理液乾燥処理部−
処理液乾燥処理部16は、表面に処理液が付与された用紙Pを乾燥処理する。この処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの印刷面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50とで構成される。
【0073】
処理液乾燥処理ドラム46は、処理液付与部14の処理液付与ドラム42から用紙Pを受け取り、画像記録部18へと用紙Pを搬送する。処理液乾燥処理ドラム46は、円筒状に組んだ枠体で構成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液乾燥処理ドラム46の外周面上には、グリッパ46Aが備えられ、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液乾燥処理ドラム46は、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、画像記録部18と用紙Pを搬送する。なお、本例の処理液乾燥処理ドラム46は、外周面上の2カ所にグリッパ42Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。処理液乾燥処理ドラム46と処理液付与ドラム42は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0074】
用紙搬送ガイド48は、処理液乾燥処理ドラム46による用紙Pの搬送経路に沿って配設され、用紙Pの搬送をガイドする。
【0075】
処理液乾燥処理ユニット50は、処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てて乾燥処理する。本例では、2台の処理液乾燥処理ユニット50が、処理液乾燥処理ドラム内に配設され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てる構成とされている。
【0076】
−画像記録部−
画像記録部18は、用紙Pの印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク(水性UVインク)の液滴を打滴して、用紙Pの印刷面にカラー画像を描画する。この画像記録部18は、主として、用紙Pを搬送する画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像記録ドラム52の外周面53に密着させる用紙押さえローラ54と、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kと、用紙Pに記録された画像を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、ドラム冷却ユニット62とで構成される。
【0077】
画像記録ドラム52は、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取り、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。画像記録ドラム52の外周面上には、グリッパ52Aが備えられ、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端が把持される。画像記録ドラム52は、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを外周面53に巻き掛けながら、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。また、画像記録ドラム52は、その外周面53に多数の吸引穴(図示せず)が所定のパターンで形成される。画像記録ドラム52の外周面53に巻き掛けられた用紙Pは、この吸引穴から吸引されることにより、画像記録ドラム52の外周面53に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平滑性をもって用紙Pを搬送することができる。
【0078】
なお、この吸引穴からの吸引は一定の範囲でのみ作用し、所定の吸引開始位置から所定の吸引終了位置との間で作用する。吸引開始位置は、用紙押さえローラ54の設置位置に設定され、吸引終了位置は、インラインセンサ58の設置位置と送風部26との間に設定される。すなわち、少なくともインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの設置位置(画像記録位置)とインラインセンサ58の設置位置(画像読取位置)では、用紙Pが画像記録ドラム52の外周面53に吸着保持されるように設定される。また、送風部26による送風が用紙Pに当る前までには、グリッパ52Aによる用紙Pの先端の把持(拘束)を除いて、用紙Pがフリーな状態(非拘束状態)となるように設定される。
【0079】
また、本実施形態の画像記録ドラム52は、外周面上の2カ所にグリッパ52Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。画像記録ドラム52と処理液乾燥処理ドラム46は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0080】
用紙押さえローラ54は、画像記録ドラム52の用紙受取位置(処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取る位置)の近傍に配設される。この用紙押さえローラ54は、ゴムローラで構成され、画像記録ドラム52の外周面53に押圧当接させて設置される。処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52受け渡された用紙Pは、この用紙押さえローラ54を通過することによりニップされ、画像記録ドラム52の外周面53に密着させられる。
【0081】
4台のインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。このインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成され、ノズル面が画像記録ドラム52の外周面53に対向するように配置される。各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、ノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム52に向けてインクの液滴を吐出することにより、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに画像を記録する。
【0082】
なお、上記のように、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kから吐出させるインクは、水性UVインクが用いられる。水性UVインクは、打滴後に紫外線(UV)を照射することにより、硬化させることができる。
【0083】
インラインセンサ58は、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送方向D1に対して、最後尾のインクジェットヘッド56Kの下流側に設置され、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kで記録された画像を読み取る。このインラインセンサ58は、たとえば、ラインスキャナで構成され、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pからインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって記録された画像を読み取る。
【0084】
なお、インラインセンサ58の下流側には、インラインセンサ58に近接して接触防止板59が設置される。この接触防止板59は、搬送の不具合等によって用紙Pに浮きが生じた場合に、用紙Pがインラインセンサ58に接触するのを防止する。
【0085】
ミストフィルタ60は、最後尾のインクジェットヘッド56Kとインラインセンサ58との間に配設され、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉する。このように、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉することにより、インラインセンサ58へのインクミストの進入を防止でき、読み取り不良等の発生を防止できる。
【0086】
ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52に冷風を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。このドラム冷却ユニット62は、主として、エアコン(図示せず)と、そのエアコンから供給される冷気を画像記録ドラム52の外周面53に吹き当てるダクト62Aとで構成される。ダクト62Aは、画像記録ドラム52に対して、用紙Pの搬送領域以外の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。本例では、画像記録ドラム52のほぼ上側半分の円弧面に沿って用紙Pが搬送されるので、ダクト62Aは、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する構成とされている。具体的には、ダクト62Aの吹出口が、画像記録ドラム52のほぼ下側半分を覆うように円弧状に形成され、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気が吹き当てられる構成とされている。
【0087】
ここで、画像記録ドラム52を冷却する温度は、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度(特にノズル面の温度)との関係で定まり、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度よりも低い温度となるように冷却される。これにより、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに結露が生じるのを防止することができる。すなわち、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kよりも画像記録ドラム52の温度を低くすることにより、画像記録ドラム側に結露を誘発することができ、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに生じる結露(特にノズル面に生じる結露)を防止することができる。
【0088】
用紙Pは、画像が記録されて吸着状態が解除された後、記録媒体搬送装置11へと受け渡される。記録媒体搬送装置11へ受け渡された後、用紙Pは、後述のように送風処理や乾燥処理、UV処理等が行われながら搬送され、排紙部24へと受け渡される。
【0089】
−排紙部−
排紙部24は、一連の画像記録処理が行われた用紙Pを回収する。この排紙部24は、主として、記録媒体搬送装置11のUV照射処理部22でUV照射された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台76とで構成される。
【0090】
チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20及びUV照射処理部22と共に共通して使用される。チェーングリッパ64は、排紙台76の上で用紙Pを開放し、排紙台76の上に用紙Pをスタックさせる。なお、チェーングリッパ64の詳細構成については後述する。
【0091】
排紙台76は、チェーングリッパ64から開放された用紙Pを積み重ねて回収する。この排紙台76には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる(図示せず)。
【0092】
また、排紙台76は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台76にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台76を昇降させる。
【0093】
−記録媒体搬送装置の装置構成−
次に、画像記録部18から用紙Pが記録媒体搬送装置11へと受け渡されて、排紙部24へと受け渡されるまでの、記録媒体搬送装置11の構成について説明する。
【0094】
図2は、本発明の第1実施形態に係る記録媒体搬送装置11の一実施形態を示す全体構成図である。
【0095】
本発明の第1実施形態に係る記録媒体搬送装置11は、上述したように、主として、送風部26と、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22とで構成される。
【0096】
−送風部−
送風部26は、後述する記録媒体搬送装置11の搬送機構90よりも搬送方向D1の上流側に設けられており、その搬送方向D1において、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kとチェーングリッパ64との間に設けられた送風ユニット70と、上述した画像記録ドラム52と、で構成される。
【0097】
送風ユニット70は、用紙Pの先端が接触防止板59を通過した後チェーングリッパ64で搬送される前までに、画像記録ドラム52で搬送中の用紙Pの中央部から側部上流(側後端部)側に向かって斜め方向に送風して、用紙Pを画像記録ドラム52の外周面53に押圧する。
また、送風ユニット70は、その送風が接触防止板59に直接当たらない程度に、接触防止板59と近接している。具体的には、インクジェット記録装置10及び記録媒体搬送装置11で搬送可能な全種類の用紙Pの搬送方向D1の長さを平均した平均長さよりも、送風ユニット70の搬送方向D1上流側端部と接触防止板59の搬送方向D1下流側端部との間の搬送方向D1に沿った距離L1が短く設定されている。これにより、送風される用紙Pの搬送方向D1の長さが上記平均長さよりも長い場合は、送風の際に用紙Pが浮き上がっても、用紙Pの表面一部が接触防止板59に当接するので、用紙Pの浮き上がり量が抑制される。
【0098】
図3(A)は、送風ユニット70の一部分解正面図である。
【0099】
送風ユニット70は、搬送される用紙Pの幅方向(画像記録ドラム52の外周面53の幅方向D2)に沿って配置された複数の送風機72を備えている。第1実施形態では、画像記録ドラム52の外周面53の中心O1を通る送風ユニット70の中心線N1を境として、幅方向D2の両側に4つずつ送風機72を備えている。
【0100】
各送風機72は、各送風機72で共通に使用する図示しない送風発生源(例えばファン)と、中心線N1を境として片側にある4つの送風機72で共通に使用する2つの流入口74A,74B及び2つの風量調整部76A,76Bと、個別のノズル78と、を備えている。
【0101】
流入口74Aは、送風発生源から送られてくる送風を風量調整部76Aに流入させる流入口であり、流入口74Bは、送風発生源から送られてくる送風を風量調整部76Bに流入させる流入口である。
風量調整部76Aは、流入口74Aと、4つのノズル78とに連通され、風量調整部76Bは、流入口74Bと、4つのノズル78とに連通している。これらの風量調整部76A,76Bはそれぞれ、図示しないレギュレーターを送風機72毎に備えており、当該レギュレーターにより、流入口74A,74Bから流入した送風の風量を送風機72(ノズル78)毎に調整できるようになっている。そして、この風量調整部76A,76Bで風量が調整された送風は、各送風機72のノズル78へと流入する。
【0102】
各ノズル78は、風量調整部76A,76Bで風量が調整された送風B1をそのままノズル口80から真っ直ぐ噴出するものであり、このノズル口80には送風方向を調整する羽根等は設けられていない。その代わり、各ノズル78は、中心線N1(用紙Pの中心線でもよい)に対して外周面53の幅方向D2への傾斜角度θ1(θ1は紙面時計回りの角度を+とする)が調整可能となっており、この角度調整により各ノズル78の送風B1の方向を調整できるようになっている。ただし、第1実施形態では、風量調整部76Aと連通した4つのノズル78は、傾斜角度を調整する際、全て同じ傾斜角度θ1に揃うように設計されている。同様に、風量調整部76Bと連通した4つのノズル78も、傾斜角度を調整する際、全て同じ傾斜角度−θ1に揃うように設計されている。
【0103】
図3(B)は、送風ユニット70の側面図である。
【0104】
図3(B)に示すように、送風ユニット70の各送風機72のノズル口80は、画像記録ドラム52の外周面53の法線N2に対して、搬送方向D1の上流側に角度θ2だけ傾斜している。また、この角度θ2は、0度超90度未満の間で設定されており、好ましくは用紙Pの押圧効果を高めるという観点から60度未満に設定されている。なお、第1実施形態では、上記角度θ2は、傾斜角度θ1と異なり、調整不能で固定とされている。
【0105】
図2の参照に戻って、送風ユニット70による送風が終わった後は、用紙Pは、送風部26からチェーングリッパ64によってインク乾燥処理部20へと受け渡される。
【0106】
−チェーングリッパ等の搬送手段の構成−
次に、インク乾燥処理部20について説明をする前に、記録媒体搬送装置11の搬送機構90の構成について説明する。
【0107】
本発明の第1実施形態に係る記録媒体搬送装置11の搬送機構90は、主として、画像が記録された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構92とで構成される。
【0108】
チェーングリッパ64は、上述したように、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22、排紙部24において共通して使用される用紙搬送機構であり、送風部26から受け渡された用紙Pを受け取って、排紙部24まで搬送する。
【0109】
このチェーングリッパ64は、主として、画像記録ドラム52に近接して設置される第1スプロケット64Aと、排紙部24に設置される第2スプロケット64B(図1参照)と、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる無端状のチェーン64Cと、チェーン64Cの走行をガイドする複数のチェーンガイド(図示せず)と、チェーン64Cに一定の間隔をもって取り付けられる複数のグリッパ64Dとで構成される。第1スプロケット64Aと、第2スプロケット64Bと、チェーン64Cと、チェーンガイドとは、それぞれ一対で構成され、用紙Pの幅方向の両側に配設される。グリッパ64Dは、一対で設けられるチェーン64Cに掛け渡されて設置される。
【0110】
第1スプロケット64Aは、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pをグリッパ64Dで受け取ることができるように、画像記録ドラム52に近接して設置される。この第1スプロケット64Aは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられるとともに、図示しないモータが連結される。第1スプロケット64A及び第2スプロケット64Bに巻き掛けられるチェーン64Cは、このモータを駆動することにより走行する。
【0111】
第2スプロケット64Bは、画像記録ドラム52から受け取った用紙Pを排紙部24で回収できるように、排紙部24に設置される(図1参照)。すなわち、この第2スプロケット64Bの設置位置が、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路の終端とされる。この第2スプロケット64Bは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられる。
【0112】
チェーン64Cは、無端状に形成され、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる。
【0113】
チェーンガイドは、所定位置に配置されて、チェーン64Cが所定の経路を走行するようにガイドする(=用紙Pが所定の搬送経路を走行して搬送されるようにガイドする。)。第1実施形態のインクジェット記録装置10では、第2スプロケット64Bが第1スプロケット64Aよりも高い位置に配設される。このため、チェーン64Cが、途中で傾斜するような走行経路が形成される。具体的には、第1水平搬送経路94Aと、傾斜搬送経路94Bと、第2水平搬送経路94Cとで構成される。
【0114】
第1水平搬送経路94Aは、第1スプロケット64Aと同じ高さに設定され、第1スプロケット64Aに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
【0115】
第2水平搬送経路94Cは、第2スプロケット64Bと同じ高さに設定され、第2スプロケット64Bに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
【0116】
傾斜搬送経路94Bは、第1水平搬送経路94Aと第2水平搬送経路94Cとの間に設定され、第1水平搬送経路94Aと第2水平搬送経路94Cとの間を結ぶように設定される。
【0117】
チェーンガイドは、この第1水平搬送経路94Aと、傾斜搬送経路94Bと、第2水平搬送経路94Cとを形成するように配設される。具体的には、少なくとも第1水平搬送経路94Aと傾斜搬送経路94Bとの接合ポイント、及び、傾斜搬送経路94Bと第2水平搬送経路94Cとの接合ポイントに配設される。
【0118】
グリッパ64Dは、チェーン64Cに一定の間隔をもって複数取り付けられる。このグリッパ64Dの取り付け間隔は、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。すなわち、画像記録ドラム52から順次受け渡される用紙Pをタイミングを合わせて画像記録ドラム52から受け取ることができるように、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。
【0119】
チェーングリッパ64は、以上のように構成される。上記のように、第1スプロケット64Aに接続されたモータ(図示せず)を駆動すると、チェーン64Cが走行する。チェーン64Cは、画像記録ドラム52の周速度と同じ速度で走行する。また、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pが、各グリッパ64Dで受け取れるようにタイミングが合わせられる。
【0120】
バックテンション付与機構92は、チェーングリッパ64によって先端を把持されながら搬送される用紙Pにバックテンションを付与する。このバックテンション付与機構92は、主として、ガイドプレート96と、そのガイドプレート96に形成される吸引穴98から空気を吸引する吸引ファン100とで構成される。
【0121】
ガイドプレート96は、用紙幅に対応した幅を有する中空状のボックスプレートで構成される。このガイドプレート96は、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路(=チェーンの走行経路)に沿って配設される。具体的には、第1水平搬送経路94Aと傾斜搬送経路94Bとを走行するチェーン64Cに沿って配設され、チェーン64Cから所定距離離間して配設される。
【0122】
図4(A)は、ガイドプレート96の側面図である。図4(B)は、ガイドプレート96の平面図である。
【0123】
チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pは、図4(A)に示すように、その裏面(画像が記録されていない側の面)が、ガイドプレート96の上面(チェーン64Cと対向する面:摺接面)96Aの上を摺接しながら搬送される。
【0124】
このガイドプレート96の摺接面96Aには、図4(B)に示すように、多数の吸引穴98が所定のパターンで多数形成される。この所定のパターンは、第1実施形態では、吸引穴98の開口率が、搬送方向D1の上流側から下流側に向かって段階的に大きくなるように設定されている。さらに、吸引穴98の開口率が、摺接面96Aの中央部から側端部の方向に向かって段階的に大きくなるように設定されている。
なお、吸引穴98の開口率を大きくする手段としては、穴密度を高くしたり、穴面積を大きくしたりすることが挙げられる。
【0125】
吸引ファン100は、このガイドプレート96の中空部(内部)を吸引する。これにより、摺接面96Aに形成された吸引穴98から空気が吸引されて、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pの裏面が吸引穴98に吸引され、当該用紙Pにバックテンションが付与される(以下、この搬送しながら吸引(バックテンションが付与)されることを、「吸引搬送」と称す場合がある)。なお、このバックテンションは、ガイドプレート96が第1水平搬送経路94Aと傾斜搬送経路94Bとを走行するチェーン64Cに沿って配設されるので、第1水平搬送経路94Aと傾斜搬送経路94Bとを搬送されている間付与される。
なお、この吸引ファン100及び吸引穴98による吸引開始位置は、第1実施形態では、チェーングリッパ64によって用紙Pの把持を開始したときに設定されている。
【0126】
図2の参照に戻って、画像が記録された用紙Pは、以上のようなチェーングリッパ64によって送風部26からインク乾燥処理部20へと受け渡される。
【0127】
−インク乾燥処理部−
インク乾燥処理部20は、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。インク乾燥処理部20は、上述した搬送機構90(チェーングリッパ64及びバックテンション付与機構92)と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pを乾燥処理するインク乾燥処理ユニット102とで構成される。
【0128】
インク乾燥処理ユニット102は、チェーングリッパ64の内部(特に第1水平搬送経路94Aを構成する部位)に設置され、第1水平搬送経路94Aを搬送される用紙Pに対して乾燥処理を施す。このインク乾燥処理ユニット102は、第1水平搬送経路94Aを搬送される用紙Pの表面に熱風を吹き当てて乾燥処理する。インク乾燥処理ユニット102は、第1水平搬送経路94Aに沿って複数台配置される。この設置数は、インク乾燥処理ユニット102の処理能力や用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、送風部26から受け取った用紙Pが第1水平搬送経路94Aを搬送されている間に乾燥させることができるように設定される。したがって、第1水平搬送経路94Aの長さも、このインク乾燥処理ユニット102の能力を考慮して設定される。
【0129】
なお、乾燥処理を行うことにより、インク乾燥処理部20の湿度が上がる。湿度が上がると、効率よく乾燥処理することができなくなるので、インク乾燥処理部20には、インク乾燥処理ユニット102と共に排気手段を設置し、乾燥処理によって発生する湿り空気を強制的に排気することが好ましい。排気手段は、たとえば、排気ダクトをインク乾燥処理部20に設置し、この排気ダクトによってインク乾燥処理部20の空気を排気する構成とすることができる。
【0130】
−UV照射処理部−
UV照射処理部22は、水性UVインクを用いて記録された画像に紫外線(UV)を照射して、画像を定着させる。このUV照射処理部22は、主として、上述した搬送機構90(チェーングリッパ64及びバックテンション付与機構92)と、チェーングリッパ64によって搬送される乾燥処理された用紙Pに紫外線を照射するUV照射ユニット104とで構成される。
【0131】
UV照射ユニット104は、チェーングリッパ64の内部(特に傾斜搬送経路94Bを構成する部位)に設置され、傾斜搬送経路94Bを搬送される用紙Pの表面に紫外線を照射する。このUV照射ユニット104は、紫外線ランプ(UVランプ)を備え、傾斜搬送経路94Bに沿って複数配設される。そして、傾斜搬送経路94Bを搬送される用紙Pの表面に向けて紫外線を照射する。このUV照射ユニット104の設置数は、用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、用紙Pが傾斜搬送経路94Bを搬送されている間に照射した紫外線によって画像を定着させることができるように設定される。したがって、傾斜搬送経路94Bの長さも、この用紙Pの搬送速度等を考慮して設定される。
【0132】
−制御系−
図5は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0133】
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ200、通信部202、画像メモリ204、搬送制御部210、給紙制御部212、処理液付与制御部214、処理液乾燥制御部216、画像記録制御部218、インク乾燥制御部220、UV照射制御部222、排紙制御部224、送風制御部226、操作部230、表示部232等が備えられる。
【0134】
システムコントローラ200は、インクジェット記録装置10の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ200は、CPU、ROM、RAM等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ200が、実行する制御プログラム、及び、制御に必要な各種データが格納される。
【0135】
通信部202は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0136】
画像メモリ204は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ200を通じてデータの読み書きが行われる。通信部202を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、この画像メモリ204に格納される。
【0137】
搬送制御部210は、記録媒体搬送装置11における用紙Pの搬送機構90を含む搬送系を制御する。すなわち、給紙部12におけるテープフィーダ36A、前当て38、給紙ドラム40の駆動を制御するとともに、処理液付与部14における処理液付与ドラム42、処理液乾燥処理部16における処理液乾燥処理ドラム46、画像記録部18における画像記録ドラム52の駆動を制御する。また、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22及び排紙部24で共通して用いられるチェーングリッパ64及びバックテンション付与機構92の駆動を制御する。
【0138】
搬送制御部210は、システムコントローラ200からの指令に応じて、搬送系を制御し、給紙部12から排紙部24まで滞りなく用紙Pが搬送されるように制御する。
【0139】
給紙制御部212は、システムコントローラ200からの指令に応じて給紙部12を制御する。具体的には、サッカー装置32及び給紙台昇降機構等の駆動を制御して、給紙台30に積載された用紙Pが、重なることなく1枚ずつ順に給紙されるように制御する。
【0140】
処理液付与制御部214は、システムコントローラ200からの指令に応じて処理液付与部14を制御する。具体的には、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pに処理液が塗布されるように、処理液付与ユニット44の駆動を制御する。
【0141】
処理液乾燥制御部216は、システムコントローラ200からの指令に応じて処理液乾燥処理部16を制御する。具体的には、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pが乾燥処理されるように、処理液乾燥処理ユニット50の駆動を制御する。
【0142】
画像記録制御部218は、システムコントローラ200からの指令に応じて画像記録部18を制御する。具体的には、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに所定の画像が記録されるように、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの駆動を制御する。また、記録された画像が読み取られるように、インラインセンサ58の動作を制御する。
【0143】
インク乾燥制御部220は、システムコントローラ200からの指令に応じてインク乾燥処理部20を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに熱風が送風されるようにインク乾燥処理ユニット102の駆動を制御する。
【0144】
UV照射制御部222は、システムコントローラ200からの指令に応じてUV照射処理部22を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線が照射されるようにUV照射ユニット104の駆動を制御する。
【0145】
排紙制御部224は、システムコントローラ200からの指令に応じて排紙部24を制御する。具体的には、排紙台昇降機構等の駆動を制御して、排紙台76に用紙Pがスタックされるように制御する。
【0146】
送風制御部226は、システムコントローラ200からの指令に応じて送風部26を制御する。具体的には、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pの中央部から側部上流(側後端部)側に向かって斜め方向に送風するように送風ユニット70の駆動を制御する。なお、より詳細な制御については、後述する。
【0147】
操作部230は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備え、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ200に出力する。システムコントローラ200は、この操作部230から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
【0148】
表示部232は、所要の表示装置(たとえば、LCDパネル等)を備え、システムコントローラ200からの指令に応じて所要の情報を表示装置に表示させる。
【0149】
上記のように、用紙に記録する画像データは、ホストコンピュータから通信部202を介してインクジェット記録装置10に取り込まれる。取り込まれた画像データは、画像メモリ204に格納される。
【0150】
システムコントローラ200は、この画像メモリ204に格納された画像データに所要の信号処理を施してドットデータを生成する。そして、生成したドットデータに従って画像記録部18の各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの駆動を制御し、その画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0151】
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である(本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換する。)。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して誤差拡散等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。
【0152】
システムコントローラ200は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って各色のドットデータを生成する。そして、生成した各色のドットデータに従って、対応するインクジェットヘッドの駆動を制御することにより、画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0153】
−作用−
以上のように構成される本実施の形態のインクジェット記録装置10の作用は、次のとおりである。
【0154】
操作部230を介してシステムコントローラ200に印刷ジョブの開始が指示されると、サイクルアップの処理が行われる。すなわち、安定した動作を行うことができるように、各部で準備動作が行われる。
【0155】
サイクルアップが完了すると、印刷処理が開始される。すなわち、給紙部12から用紙Pが順次給紙される。
【0156】
給紙部12では、給紙台30に積載された用紙Pを上から順に1枚ずつサッカー装置32で給紙する。サッカー装置32から給紙された用紙Pは、給紙ローラ対34を介して1枚ずつフィーダボード36の上に載置される。
【0157】
フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36に備えられたテープフィーダ36Aによって送りが与えられて、フィーダボード36の上を滑りながら給紙ドラム40へと搬送される。この際、順次給紙される用紙Pは、互いに重なることなく1枚ずつフィーダボード36の上を滑りながら給紙ドラム40へと搬送される。また、その搬送過程でリテーナ36Bによって上面がフィーダボード36に向けて押し付けられる。これにより、凹凸が矯正される。
【0158】
フィーダボード36の終端まで搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接された後、給紙ドラム40に受け渡される。これにより、傾きを発生させることなく、一定の姿勢で用紙Pを給紙ドラム40に給紙することができる。
【0159】
給紙ドラム40は、回転しながら用紙Pの先端をグリッパ40Aで把持することにより用紙Pを受け取り、用紙Pを処理液付与部14に向けて搬送する。
【0160】
処理液付与部14に搬送された用紙Pは、給紙ドラム40から処理液付与ドラム42へと受け渡される。
【0161】
処理液付与ドラム42は、回転しながら用紙Pの先端をグリッパ40Aで把持して受け取り、用紙Pを処理液乾燥処理部16に向けて搬送する。用紙Pは、この処理液付与ドラム42によって搬送される過程で表面に塗布ローラ44Aが押圧当接され、表面に処理液が付与(塗布)される。
【0162】
表面に処理液が付与された用紙Pは、処理液付与ドラム42から処理液乾燥処理ドラム46に受け渡される。
【0163】
処理液乾燥処理ドラム46は、回転しながら用紙Pの先端を把持して受け取り、用紙Pを画像記録部18に向けて搬送する。用紙Pは、この処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ユニット50から送風される熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。これにより、処理液中の溶媒成分が除去され、用紙Pの表面(画像記録面)にインク凝集層が形成される。
【0164】
処理液の乾燥処理が施された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52に受け渡される。
【0165】
画像記録ドラム52は、回転しながら用紙Pの先端を把持して受け取り、用紙Pをインク乾燥処理部20に向けて搬送する。用紙Pは、この画像記録ドラム52によって搬送される過程でインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって表面にC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が打滴され、画像が記録される。また、その搬送過程で記録された画像が、インラインセンサ58によって読み取られる。この際、用紙Pは、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。そして、この吸着保持された状態で画像の記録、及び、記録された画像の読み取りが行われる。これにより、高精度に画像を記録することができるとともに、高精度に画像の読み取りを行うことができる。
【0166】
この吸着保持は、インラインセンサ58の設置位置と送風部26との間に設定された吸引終了位置にて解除される。吸着保持が解除された用紙Pは、画像記録ドラム52の回転によりその先端が接触防止板59を通過した後、送風部26に向けて搬送される。
【0167】
送風部26の送風ユニット70では、画像記録ドラム52で搬送中の用紙Pの中央部から側部上流(側後端部)側に向かって斜め方向に送風して、用紙Pを画像記録ドラム52の外周面53に押圧する。
【0168】
送風処理が施された用紙Pは、画像記録ドラム52からチェーングリッパ64に受け渡される。
【0169】
チェーングリッパ64は、走行するチェーン64Cに備えられたグリッパ64Dで用紙Pの先端を把持して、用紙Pを受け取り、排紙部24に向けて搬送する。
【0170】
用紙Pは、このチェーングリッパ64による搬送過程で、まず、インクの乾燥処理が施される。すなわち、第1水平搬送経路94Aに設置されたインク乾燥処理ユニット102から表面に向けて熱風が吹き当てられる。これにより、乾燥処理が施される。この際、用紙Pは、ガイドプレート96によって裏面が吸引されながら搬送され、バックテンションが付与される(以下、この処理を吸引搬送処理という)。これにより、用紙Pの変形を抑えながら、乾燥処理することができる。
【0171】
乾燥処理が終了した用紙P(インク乾燥処理部20を通過した用紙P)は、次いで、UV照射処理が施される。すなわち、傾斜搬送経路94Bに設置されたUV照射ユニット104から表面に向けて紫外線が照射される。これにより、画像を構成するインクが硬化し、画像が用紙Pに定着する。この際、用紙Pは、ガイドプレート96によって裏面が吸引されながら搬送され、バックテンションが付与される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら、定着処理することができる。
【0172】
UV照射処理が終了した用紙P(UV照射処理部22を通過した用紙P)は、排紙部24に向けて搬送され、排紙部24においてグリッパ64Dから開放されて、排紙台76の上にスタックされる。
【0173】
以上一連の動作により画像の記録処理が完了する。上記のように、給紙部12から用紙Pが連続的に給紙されるので、各部では、この連続的に給紙される用紙Pを連続的に処理して、画像の記録処理が行われる。
【0174】
ここで、本発明の第1実施形態では、送風ユニット70による送風の前後で、送風制御部226が以下のように送風ユニット70を制御する。
【0175】
図6(A)は、送風制御部226による制御前の、送風ユニット70の各ノズル78の傾斜状態を示す平面図である。図6(B)は、送風制御部226による制御後の、送風ユニット70の各ノズル78の傾斜状態を示す平面図である。
【0176】
送風制御部226による制御前の、送風ユニット70の各ノズル78の傾斜状態は、特に限定されないが、図6(A)に示すように、送風ユニット70の各ノズル78を平面視したときに、搬送方向D1に沿った用紙Pの中心線N3(搬送方向D1に沿った外周面53の中心線と同一)に対して外周面53の幅方向D2への傾斜角度θ1(θ1は送風ユニット70の中心線N1からの角度でもある)が0度になっている。
【0177】
そして、送風制御部226は、送風ユニット70による送風が用紙Pに当る前、例えば、画像記録ドラム52が処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取ったときに、図6(B)に示すように、送風部26にて、その用紙Pの中央部から側部上流側(搬送方向D1の上流側)に向かって斜め方向に送風B1できるように、送風ユニット70を制御して各ノズル78の傾斜角度θ1を調整する。すなわち、平面視したときに、各ノズル78からの送風B1の方向が、中心線N3に対して側部上流側に角度θ1(又は−θ1)傾くように調整する。第1実施形態では、各ノズル78の傾斜角度を調整すると、風量調整部76Aと連通した4つのノズル78は、全て同じ傾斜角度θ1に揃い、風量調整部76Bと連通した4つのノズル78は、全て同じ傾斜角度−θ1に揃うようになっている。
【0178】
図7(A)は、送風制御部226による制御前の、送風ユニット70の各ノズル78の傾斜状態を示す平面図である。図7(B)は、送風制御部226による制御後の、送風ユニット70の各ノズル78の傾斜状態を示す平面図である。
【0179】
送風制御部226は、傾斜角度θ1を調整する際、図7(A)に示すように、画像記録ドラム52から搬送機構90へ搬送される用紙Pの幅W1に応じて、送風ユニット70全ての送風B1の送風領域幅W2が用紙Pの幅W1よりも狭くなるように送風ユニット70を制御して傾斜角度θ1、すなわち送風B1の方向を調整する。
【0180】
なお、送風領域幅W2とは、各ノズル78から用紙Pに直接当る送風B1の幅を意味し、当った後に用紙Pに沿って流れる送風B2や、当該送風B2が外部の部材(外周面53等)に当たって跳ね返ってくる送風B3等の幅は含まない。
また、図7(B)に示すように、送風B1の送風領域A1は、搬送方向D1にも広がるため、外周面53の幅方向D2における送風領域A1の幅は様々な幅を取り得るが、当該様々な幅の中で最も長い幅Wmaxが送風領域幅W2となる。
【0181】
次に、送風制御部226は、用紙Pがインラインセンサ58を通過した直後から、送風ユニット70を制御して各ノズル78からの送風B1を開始させ、用紙Pが少なくとも送風部26を通過するまで送風を続けさせ、画像記録ドラム52が処理液乾燥処理ドラム46から次の用紙Pを受け取るまでに終了させる。その後、送風ユニット70を制御して、送風ユニット70の各ノズル78の傾斜状態を図6(B)に示す状態から送風制御部226による制御前の初期状態である図6(A)に示す状態に戻す。
【0182】
図8(A)〜(D)は、送風部26を通過する用紙Pの状態を搬送順に示す図である。
【0183】
図8(A)〜(D)に示すように、送風制御部226は、用紙Pの中央部から側部上流側(搬送方向D1の上流側)に向かって斜め方向に送風B1できるように、送風ユニット70を制御して各ノズル78の傾斜角度θ1を予め調整しているので、用紙Pが送風部26を通過する際、送風ユニット70は、用紙Pの中央部から側部上流側に向かって斜め方向D3に送風する。これにより、搬送機構90による吸引搬送により用紙Pが拘束される前に、搬送進行に伴って用紙Pの中央部から側後端部にかけて斜め方向D3に用紙Pを伸張させる力を加えることができ、用紙Pの中央部に発生している用紙変形歪T(皺やカール、カックル等)を側後端部に散らす又は除去することができる。したがって、用紙Pがチェーングリッパ64で搬送され、吸引ファン100による吸引が開始される際に、用紙Pの用紙変形歪Tが分散された状態又は無い状態とすることができ、吸引搬送時における用紙Pの皺発生を抑制できる。
【0184】
また、この皺発生を抑制する送風ユニット70は、送風制御部226の制御により、上記送風B1が用紙Pに当る前までに、画像記録ドラム52から搬送機構90へ搬送される用紙Pの幅W1に応じて、送風B1の送風領域幅W2が用紙Pの幅W1よりも狭くなるように送風B1の方向を調整するので、送風B1が用紙Pの外側に直接はみ出て、画像記録ドラム52の外周面53等に当り、その跳ね返りの風が、当該用紙Pの裏面に回り込んでしまうことを防止できる。これにより、用紙Pの揚力の発生を抑え、送風時における用紙Pのバタツキを抑制することができる。
以上より、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置10及び記録媒体搬送装置11によれば、吸引搬送時における用紙Pの皺発生抑制と、送風時における用紙Pのバタツキ抑制を両立した。
【0185】
ここで、送風制御部226は、送風の際、各ノズル78からの風量を同じとなるように送風ユニット70の風量調整部76A,76Bを制御してもよいが、送風領域幅W2内で中央部の風量を強くすることが好ましい。送風領域幅W2内で中央部、すなわち用紙Pの中央部は用紙変形歪Tが集中し易いので、送風領域幅W2内で中央部の風量を強くすると、用紙変形歪Tをより多く用紙Pの側後端部に分散又は除去することができるからである。
また、用紙Pの液滴が吐出された描画部分に対する送風の風量を、非描画部分に対する送風の風量よりも強くするようにしてもよい。液滴によって浮き易くなっている描画部分に対する風量を、非描画部分に対する風量よりも強くするので、描画部分の浮きを抑えることができる。この場合、描画部分と非描画部分を厳密に区分けすると、風量調整し難くなるので、用紙Pを10個以内の単純なエリアに分けておき、各エリアに描画部分があるか否かを判断し、各エリアのうち描画部分があるエリアに送風し、描画部分がないエリアには送風しないなど工夫する。
送風する風量は、用紙Pの幅W1や剛性によっても異なるが、例えば、菊判サイズの用紙Pに対して送風する場合は、0.1[m/min]以上2.0[m/min]以下が好ましい。
また、送風制御部226は、送風領域幅W2が、用紙Pの幅W1の50%以上95%以下になるように送風B1の方向を調整することが好ましい。このように、送風領域幅W2が用紙Pの幅W1の50%以上だと用紙Pの側端部を押圧する効果を高めることができるからである。また、送風領域幅W2が用紙Pの幅W1の95%以下だと、用紙Pのバタツキをより抑制できるからである。また、送風制御部226は、用紙変形しやすく、かつ、バタつき易い薄紙での確実なバタツキ防止という観点から、送風領域幅W2が、用紙Pの幅W1の60%以上87.5%以下になるように送風B1の方向を調整することがより好ましい。また、送風制御部226は、薄紙に対して多量のインクを打滴する場合、用紙変形がより大きくなり、バタつき易くなるので、その抑止という観点から、送風領域幅W2が、用紙Pの幅W1の70%以上80%以下になるように送風B1の方向を調整することがさらにより好ましい。
さらに、送風制御部226は、送風B1の方向が、用紙Pの中心線N3に対して側部上流側に5度以上45度以下傾くように調整することが好ましい。このように、送風B1の方向が、用紙Pの中心線N3に対して側部上流側に5度以上傾くように調整すると、用紙変形歪Tを用紙Pの側後端部側に散らし易くすることができる。また、送風B1の方向が、用紙Pの中心線N3に対して側部上流側に45度以下傾くように調整すると、用紙Pの幅W1や各ノズル78の外周面53からの高さにもよるが、用紙Pに当たった送風B1の跳ね返りの風が用紙Pの外側に直接逃げることを抑制することができ、もって用紙Pがバタツキ難くなる。
【0186】
図9(A)〜(C)は、搬送機構90による吸引搬送時の用紙Pの状態を搬送順に示す図である。
【0187】
図9(A)〜(C)に示すように、搬送機構90は、用紙Pの先端を把持して搬送するチェーングリッパ64と、当該チェーングリッパ64で搬送される用紙Pを、摺接面96Aへ吸引するバックテンション付与機構92とを備えるので、用紙Pは、バックテンション付与機構92の吸引ファン100によりガイドプレート96の摺接面96Aへ吸引されながら、チェーングリッパ64により先端が把持されて搬送される。このため、ガイドプレート96の摺接面96Aに吸着(密着)されて用紙Pが摺接面96Aと一体となって搬送される場合と比較して、用紙Pの拘束力が弱く、吸引搬送時、特に吸引開始時における用紙Pの皺発生を抑制できる。
【0188】
また、第1実施形態では、摺接面96Aには、吸引用の吸引穴98が設けられ、吸引穴98の開口率は、用紙Pの搬送方向D1の上流側から下流側に向かって段階的に大きくされているため、搬送に伴って段階的に用紙Pの吸引量が大きくなり(各吸引ファン100による吸引量自体は全て同じと仮定)、吸引搬送時に用紙Pの急激な吸引量変化を抑制できる。これにより、吸引搬送時における用紙Pの皺発生を抑制できる。
さらに、吸引穴98の開口率は、摺接面96Aの中央部から側端部の方向に向かって段階的に大きくされている。このように、開口率が搬送方向D1の上流側から下流側に向かって段階的に大きくされ、且つ中央部から側端部の方向に向かって段階的に大きくされていると、図9(C)に示すように、摺接面96Aでの用紙Pの搬送進行に伴って、当該用紙Pの中央部から側後端部にかけて斜め方向D4に用紙Pを伸張させる力を加えることができ、用紙Pの中央部に発生し易い用紙変形歪Tを側後端部に散らす又は除去することができる。
特に、摺接面96Aの全吸引領域のオン・オフ制御が一括でしかできない場合、吸引開始タイミングが遅れると、用紙Pのサイズが大きいことで用紙Pの先端部においては、送風後吸引開始まである程度時間が経ってしまう虞があるが、このような場合であっても、吸引穴98の開口率は、用紙Pの搬送方向D1の上流側から下流側に向かって段階的に大きくされているため、段階的な吸引を開始できる。
【0189】
また、この搬送機構90で吸引搬送される用紙Pの表面は、その吸引搬送途中で、インク乾燥処理ユニット102により熱風が吹き当てられて乾燥処理が施される。したがって、用紙変形歪Tを抑制した状態で乾燥を促進することができ、排紙後の用紙変形歪量をより一層低減できる。さらに、搬送機構90で吸引搬送される用紙Pの表面(水性UVインクを用いて記録された画像)には、乾燥処理後の吸引搬送途中で、UV照射処理部22により紫外線(UV)が照射されて、画像が定着される。したがって、用紙変形歪Tを抑制した状態で定着を促進することができ、排紙後の用紙変形歪量をより一層低減できる。
【0190】
また、第1実施形態に係るインクジェット記録装置10では、送風部26は、搬送方向D1に沿ってインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kと搬送機構90との間に設けられているので、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによる画像の描画後、用紙Pにある用紙変形歪Tを、送風部26により中央部から側後端部に散らす又は除去することができる。そして、時間をおかずに、搬送機構90で吸引搬送されるので、搬送機構90で搬送される前に再度用紙変形歪Tが発生することを抑制できる。
【0191】
<第2実施形態>
次に、添付の図面を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る記録媒体搬送装置及び画像形成装置について具体的に説明する。
【0192】
−画像形成装置の装置構成−
図10は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【0193】
本発明の第2実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体搬送装置400を搭載し、その記録媒体搬送装置の送風部の場所及び搬送機構の構成が第1実施形態と異なるインクジェット記録装置300である。
【0194】
このインクジェット記録装置300は、主として、給紙部312、処理液付与部314、描画部316、第1実施形態の送風部26の機能を兼ねる乾燥部318、定着部320、及び排紙部322を備えて構成されている。
【0195】
給紙部312は、用紙Pを処理液付与部314に供給する機構であり、当該給紙部312には、枚葉紙である用紙Pが積層されている。給紙部312には、給紙トレイ350が設けられ、この給紙トレイ350から用紙Pが一枚ずつ処理液付与部314に給紙されるようになっている。
【0196】
処理液付与部314は、用紙Pの記録面に処理液を付与する機構である。
【0197】
このような処理液付与部314は、給紙胴352、処理液ドラム354、及び処理液塗布装置356を備えている。処理液ドラム354は、用紙Pを保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム354は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)355を備え、この保持手段355の爪と処理液ドラム354の周面の間に用紙Pを挟み込むことによって用紙Pの先端を保持できるようになっている。処理液ドラム354は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより用紙Pを処理液ドラム354の周面に密着保持することができる。
【0198】
処理液ドラム354の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置356が設けられる。用紙Pは、処理液塗布装置356によって記録面に処理液が塗布される。
【0199】
処理液付与部314で処理液が付与された用紙Pは、処理液ドラム354から中間搬送部326(第1渡し胴)を介して描画部316の描画ドラム370へ受け渡される。
【0200】
描画部316は、描画ドラム370、及びインクジェットヘッド372M、372K、372C、372Yを備えている。
【0201】
描画ドラム370は、処理液ドラム354と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)371を備え、記録媒体の先端部を保持固定するようになっている。また、描画ドラム370は、外周面に複数の吸引孔を有し、負圧によって用紙Pを描画ドラム370の外周面に吸着させる。
【0202】
このように描画ドラム370に固定された用紙Pは、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド372M、372K、372C、372Yからインクが打滴される。
【0203】
描画ドラム370上に密着保持された用紙Pの記録面に向かって各インクジェットヘッド372M、372K、372C、372Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部314で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、用紙P上での色材流れなどが防止され、用紙Pの記録面に画像が形成されるようになっている。
【0204】
以上のように構成された描画部316により、用紙Pに対してシングルパスで描画を行うことができる。これにより、高速記録及び高速出力が可能であり、生産性を高めることができる。
【0205】
描画部316で画像が形成された用紙Pは、描画ドラム370から中間搬送部328(第2渡し胴)を介して、乾燥部318の乾燥ドラム376へ受け渡される。
【0206】
乾燥部318は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図1に示すように、乾燥ドラム376と溶媒乾燥装置378とを備えている。
【0207】
乾燥ドラム376は、処理液ドラム354と同様に、その外周面375に爪形状の保持手段(グリッパー)377を備え、この保持手段377によって用紙Pの先端を保持するとともに、ドラム外周面375に吸引孔(図示省略)を有し、負圧により用紙Pを乾燥ドラム376に吸着できるようになっている。
溶媒乾燥装置378は、この乾燥ドラム376の外周面375に対向する位置に配置され、IRヒータ380と温風ノズル382の組み合わせを複数配置した構成である。温風ノズル382から用紙Pに向けて吹き付けられる熱風の温度と風量を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。用紙Pは記録面が外側を向くように、乾燥ドラム376の外周面375に搬送され、この記録面に対して上記IRヒータ380及び温風ノズル382による乾燥処理が行われる。
【0208】
また、乾燥ドラム376は、その外周面375に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を有している。これにより用紙Pを乾燥ドラム376の外周面375に密着保持することができる。また、負圧吸引を行うことにより、用紙Pを乾燥ドラム376に拘束することができるので、用紙Pのカックルを防止することができる。
【0209】
乾燥部318で乾燥処理が行われた用紙Pは、乾燥ドラム376から中間搬送部330(第3渡し胴)を介して定着部320の定着ドラム384に受け渡される。
【0210】
定着部320は、定着ドラム384、押圧ローラ388(平滑化手段)、及びインラインセンサ390で構成される。定着ドラム384は、処理液ドラム354と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)385を備え、この保持手段385によって用紙Pの先端を保持できるようになっている。
【0211】
定着ドラム384の回転により、用紙Pは記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、押圧ローラ388による平滑化処理が行われてインクの定着が行われる。
【0212】
押圧ローラ388は、インクが乾燥された用紙Pを加圧することによって用紙Pを平滑化するものである。また、インラインセンサ390は、用紙P上のチェックパターンや水分量、表面温度、光沢度等を計測するものであり、例えばCCDラインセンサを好適に用いることができる。
【0213】
定着部320に続いて排紙部322が設けられている。排紙部322には、排紙ユニット392が設置される。定着部320の定着ドラム384から排紙ユニット392までの間に、第4渡し胴394、搬送チェーン396が設けられている。搬送チェーン396は、張架ローラ398に巻き掛けられている。定着ドラム384を通過した用紙Pは、第4渡し胴394を介して、搬送チェーン396に送られ、搬送チェーン396から排紙ユニット392へと受け渡される。
【0214】
なお、以上説明した、インクジェット記録装置300の構成のうち、乾燥ドラム376と、定着ドラム384と、これらの間の各中間搬送部330等が、本発明の第2実施形態に係る記録媒体搬送装置400を構成する。
【0215】
−乾燥部318について−
以上のようなインクジェット記録装置300及び記録媒体搬送装置400において、乾燥部318の機能について説明する。
【0216】
第2実施形態では、乾燥部318は、第1実施形態の送風部26の機能を兼ねている。具体的に、乾燥部318の搬送方向D1において最も上流側にある温風ノズル382が、第1実施形態の送風ユニット70の機能及び構成と同様となる。
すなわち、温風ノズル382は、図示しない制御部によって、用紙Pの先端が乾燥ドラム376の保持手段377によって保持された後であって、乾燥ドラム376で吸引搬送される前に、用紙Pの中央部から側部上流側に向かって斜め方向に送風するように制御される。また、この送風B1が用紙Pに当る前までに、乾燥ドラム376へ搬送される用紙Pの幅に応じて、上記送風の送風領域幅W2が用紙Pの幅W1よりも狭くなるように送風B1の方向が調整される。
なお、乾燥ドラム376での吸引開始位置は、第2実施形態では、乾燥部318の搬送方向D1において最も上流側にある温風ノズル382の下流側に隣接したIRヒータ380の配置位置に設定されている。
【0217】
−作用−
以上、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置300及び記録媒体搬送装置400では、図8(A)〜(D)に示す用紙Pの状態と同様に、用紙Pの中央部から側部上流側(搬送方向D1の上流側)に向かって斜め方向に送風B1できるように、温風ノズル382を制御して傾斜角度θ1を予め調整しているので、用紙Pが温風ノズル382を通過する際、温風ノズル382は、用紙Pの中央部から側部上流側に向かって斜め方向D3に送風する。これにより、搬送進行に伴って用紙Pの中央部から側後端部にかけて斜め方向D3に用紙Pを伸張させる力を加えることができ、用紙Pの中央部に発生している用紙変形歪T(皺やカール、カックル等)を側後端部に散らす又は除去することができる。したがって、用紙Pが乾燥ドラム376で搬送され、吸引が開始される際に、用紙Pの用紙変形歪Tが分散された状態又は無い状態とすることができ、吸着搬送時における用紙Pの皺発生を抑制できる。
【0218】
また、本発明の第2実施形態に係る記録媒体搬送装置400では、用紙Pは乾燥ドラム376に吸引され密着保持された状態で回転搬送されるため、搬送中の用紙Pの姿勢を保持することができる。
【0219】
<変形例>
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わせて実施可能である。また、以下の変形例同士を、適宜、組み合わせてもよい。
【0220】
例えば、送風制御部226は、画像記録ドラム52から搬送機構90へ搬送される用紙Pの幅W1に応じて、送風ユニット70を制御し、傾斜角度θ1、すなわち送風B1の方向を調整する場合を説明したが、用紙Pの剛性に応じて、送風B1の方向若しくは送風B1の風量、又は、送風B1の方向及び送風B1の風量を調整するようにしてもよい。なお、送風B1の方向の調整により、送風領域幅W2を調整することができる。
具体的には、インクジェット記録装置10が、以下表1に示すような用紙の種類、剛性、送風領域幅W2の設定、風量の設定が関係付けられたテーブルをシステムコントローラ200のRAM又はROMに予め記録しておき、送風する用紙P毎に、このテーブルを参照する。
【0221】
【表1】

【0222】
そして、送風する用紙Pが薄紙である場合は、剛性が普通紙よりも低くバタツキ易いので、表1に示すように、用紙Pの幅W1に対して送風領域幅W2を普通紙の場合よりもさらに狭くするように調整することで、送風時における用紙Pのバタツキをより一層抑制できる。また、送風する用紙Pが薄紙である場合は、剛性が普通紙よりも低く用紙変形歪量も大きいので、普通紙の場合に比べ、風量を強く、特に中央部の風量が強くなるように調整することで、送風時における用紙Pの用紙変形歪Tをより一層側後端部に散らす又は除去することができる。
一方で、送風する用紙Pが厚紙やOHPフィルムである場合は、剛性が普通紙よりも高いので、バタツキ難く用紙変形歪量も小さいため、送風領域幅W2が普通紙の場合よりも広くなるように調整し、また風量もフラット又は少量となるように調整する。
【0223】
また、第1実施形態の送風ユニット70の各送風機72は、ノズル78を有する場合を説明したが、ブロアを有するようにしてもよい。また、ブロアであれば、風量の大きい高静圧ブロアが好ましい。なお、ブロアの風量は、ブロア入力電流値の制御により調整することができる。
さらに、各送風機72は、送風を熱風にするヒータを備えるようにしてもよい。各送風機72の熱風により、液滴が吐出された用紙Pを乾燥することができ、もって用紙変形歪Tをより一層低減できるからである。また、このヒータを備える場合、又はインク乾燥処理部20等の乾燥手段が近傍に設けられる場合は、各送風機72の素材は、耐熱素材であることが好ましい。
【0224】
また、各ノズル78の傾斜角度θ1を調整することで、送風B1の方向を調整する場合を説明したが、ノズル78のノズル口80に羽根パネル(所謂エアコンの羽根パネルと同一の構成及び機能)を設け、羽根パネルのアーム部が180度前後可動することでノズル78からの送風B1の方向を調整できるようにしてもよい。
【0225】
また、風量調整部76Aと連通した4つのノズル78は、傾斜角度を調整する際、全て同じ傾斜角度θ1に揃うように設計されている。同様に、風量調整部76Bと連通した4つのノズル78も、傾斜角度を調整する際、全て同じ傾斜角度−θ1に揃うように設計されている場合を説明したが、各ノズル78は、個別に傾斜角度θ1を調整できるようにしてもよい。
同様に、第1実施形態では、角度θ2は、傾斜角度θ1と異なり、調整不能で固定とされていたが、角度θ2も調整可能な構成にしてもよい。また、個々のノズル78でθ2が調整可能な構成にしてもよい。用紙Pの側端部に位置するノズル78の角度θ2を中央部より小さくし、側端部にいくにつれて送風B1が搬送方向D1の下流側で吹き付けられるようにすると、用紙Pの中央部に発生しやすい用紙変形歪Tを側後端部に散らす効果が増強される。
【0226】
また、送風制御部226は、各ノズル78の風量を用紙Pの先端部から後端部にいくに従って大きくするなど、用紙領域毎に風量を制御してもよく、強風の送風領域を最小限にすることで、用紙Pのバタツキをより一層低減することができる。
また、送風制御部226は、用紙の後端部通過時のみ送風を実施するなど、用紙Pが送風部26を通過中に、送風が実施されない領域が存在するように、所謂「間欠送風」する制御を行ってもよい。
【0227】
また、送風制御部226は、図11(A)に示すように、各送風機72の送風B1の方向を、用紙Pの中央部から側部方向かけて、用紙Pの中心線N3に対して徐々に傾きが大きくなるように調整するようにしてもよい。これにより、用紙Pの中央部に発生した用紙変形歪Tを徐々に側後端部に散らす又は除去することができるからである。
逆に、図11(B)に示すように、各送風機72の送風B1の方向を、用紙Pの中央部から側部方向かけて、用紙Pの中心線N3に対して徐々に傾きが小さくなるように調整するようにしてもよい。これにより、用紙Pの中央部に発生した用紙変形歪Tを側後端部に長く散らす又はより除去することができ、且つ、側端部側の送風機72の送風B1が用紙Pの外側にはみ出ることを防止することができるからである。
【0228】
また、図12に示すように、送風部26は、搬送方向D1に沿って配置された複数の送風機500を備えるようにしてもよい。これにより、吸引搬送時における用紙Pの皺発生をより抑制できるからである。
この場合において、さらに送風部26の送風制御部226は、搬送方向D1の上流側に設けられた送風機500の送風領域幅よりも、搬送方向の下流側に設けられた送風機500の送風領域幅が広くなるように、送風B1の方向を調整するようにしてもよい。このように、搬送方向D1の上流側に設けられた送風機500(全体)の送風領域幅が下流側に設けられた送風機500(全体)の送風領域幅よりも狭いと、搬送の際、まず用紙Pの中央部に対して送風することになる。この結果、搬送進行に伴って、用紙Pの中央部の用紙変形歪Tを側端に散らした上で、より広い送風領域幅で送風することになり、側端に散った用紙変形歪Tをさらに散らして用紙Pの幅方向に均一化でき、吸引搬送時における用紙Pの皺発生をより抑制できる。
【0229】
また、送風部26は、搬送される用紙Pの幅方向(幅方向D2)に沿って配置された複数の送風機72を備える場合を説明したが、図13に示すように、搬送される用紙Pの中央部から用紙Pの側先端部に向かって長く延びる1つの送風口510を有した送風機512を備えるようにしてもよい。これにより、送風B1を用紙Pの中央部から側先端部にかけて均一に当てることができ、例えば、皺が局所的に集中することを防止できる。
【0230】
また、送風部26は、搬送方向D1において、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kとチェーングリッパ64との間に設けられた送風ユニット70と、画像記録ドラム52と、で構成される場合を説明したが、送風部26の場所や構成については、特に限定されない。
例えば、送風部26は、インク滴を吐出するインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kよりも搬送方向D1の上流側に設けられてもよい。例えば、搬送方向D1に沿った用紙押さえローラ54とインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kとの間に設けてもよい。
また、図14に示すように、搬送機構90の一部と、搬送方向D1において第1スプロケット64Aとインク乾燥処理ユニット102との間に設けられた送風ユニット70と、で構成された送風部600を、送風部26とは別個に又は単独でインクジェット記録装置10に設けるようにしてもよい。この場合、吸引と送風との関係が問題となるが、搬送機構90での吸引開始位置を送風部600よりも搬送方向D1の下流側に設ければ問題とならない。また、仮に送風のときに吸引が開始されていても、用紙Pの拘束領域が送風部600よりも搬送方向D1の下流側の拘束領域よりも狭ければ、送風の効果が得られやすいと考えられる。
また、図15に示すように、搬送機構90の一部と、第1スプロケット64Aの中心軸周辺の空間に設けられた送風ユニット70と、で構成された送風部610を、送風部26とは別個に又は単独でインクジェット記録装置10に設けるようにしてもよい。
ここで、第1実施形態において、送風部26での送風時における用紙Pの拘束領域と、搬送機構90での吸引搬送時における用紙Pの拘束領域との関係について言及する。
送風部26による送風時での用紙Pの搬送手段(画像記録ドラム52)を第2搬送手段とし、吸引搬送時での搬送手段(搬送機構90)を第1搬送手段とすると、第2搬送手段での送風時における用紙Pの拘束領域は、第1搬送手段での吸引搬送時における用紙Pの拘束領域よりも狭くなっている関係であれば、送風の効果が得られ易い。
すなわち、
記録媒体を搬送面へ吸引し拘束しながら搬送する第1搬送手段と、
前記第1搬送手段よりも前記記録媒体の搬送方向上流側に設けられ、前記第1搬送手段での前記記録媒体の拘束領域よりも狭い拘束領域で前記記録媒体を拘束しながら、前記記録媒体を前記第1搬送手段へ搬送する第2搬送手段と、
前記第2搬送手段の上部に設けられ、前記第2搬送手段で搬送される前記記録媒体の中央部から側部上流側に向かって斜め方向に送風し、且つ、前記送風が前記記録媒体に当る前までに、前記第2搬送手段で搬送される前記記録媒体の幅に応じて、前記送風の送風領域幅が前記記録媒体の幅よりも狭くなるように前記送風の方向を調整する送風手段と、
を備える記録媒体搬送装置であれば、送風の効果が得られ易い。
【0231】
また、摺接面96Aに設ける開口は、吸引穴98である場合を説明したが、図16(A)に示すような吸引溝700であってもよい。
【0232】
図16(A)に示す吸引溝700は、単に開口を溝とするだけでなく、その溝を用紙Pの搬送方向D1の下流側がV字の頂部となるV字型とされており、このV字が搬送方向D1に沿って複数配置されている。これにより、摺接面96Aでの搬送進行に伴って用紙Pの中央部から側後端部にかけて斜め方向に用紙Pを伸張させる力を加えることができ、用紙Pの中央部に発生し易い用紙変形歪Tを側後端部に散らす又は除去することができる。
同様に、摺接面96Aに設ける開口は、図16(B)に示すような吸引溝702であってもよい。図16(B)に示す吸引溝702は、図16(A)と同様に、その溝を用紙Pの搬送方向D1の下流側がV字の頂部となるV字型とされているが、そのV字が摺接面96Aにも複数配置されている。
また上記とは逆に、摺接面96Aに設ける吸引溝は、用紙Pの搬送方向D1の下流側がV字の底部となる逆V字型とされていてもよい。この構成によれば、仮に吸引搬送中にも送風がされていた場合、送風の記録媒体裏面からの回り込みによる記録媒体の吸引搬送時のバタツキを効果的に抑止することができる。
【0233】
また、上記のような摺接面96Aを直接加熱して用紙Pを乾燥する乾燥手段(例えばヒータ)を備えるようにしてもよい。このようにすれば、例えば液滴が吐出された用紙Pの裏面から乾燥することができるので、乾燥を行っても液滴が滲み難い。
【0234】
また、摺接面96Aの吸引穴98から吸引する吸引ファン100は、摺接面96Aの幅方向にも複数設けられており、印刷する画像データに応じて、摺接面96Aの幅方向の各吸引ファン100の吸引力をそれぞれ制御するようにしてもよい。このような構成にすると、例えば、画像データに基づいて、用紙Pの幅方向のある箇所が他の箇所よりも液滴の吐出量が多いと判断した場合は、その箇所の吸引量を幅方向における他の箇所に比べて強くしたりすることができる。
【0235】
また、ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52に冷風を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する場合を説明したが、ドラム冷却ユニット62を省略して送風部26が画像記録ドラム52を冷却するようにしてもよい。この場合、送風部26の送風B1の温度は、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度(特にノズル面の温度)との関係で定まり、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度よりも低い温度となるようにする。
【0236】
また、第2実施形態では、乾燥部318の搬送方向D1において最も上流側にある温風ノズル382が、第1実施形態の送風ユニット70の機能及び構成と同様となる場合を説明したが、第1実施形態の送風ユニット70の機能及び構成と同様のものは、温風ノズル382とは別個に設けてもよく、例えば、図17に示すように、中間搬送部328である第2渡し胴の搬送方向D1下流側に、第1実施形態の送風ユニット70の機能及び構成と同様の温風ノズル800を設けるようにしてもよい。温風ノズル800を設ける際、第2渡し胴の下方にある搬送ガイド329が邪魔であれば、搬送方向D1の搬送ガイド329の長さを短くすればよい。
【0237】
温風ノズル800を設ける場合、図18に示すように、乾燥ドラム376の外周面375の吸引領域A2は、用紙Pの先端部を吸引する箇所(領域A3)から、用紙Pの後端部を吸引する箇所(領域A6)に向かって、細分化されるようしてもよい。
すなわち、吸引領域A2が、用紙Pの先端部を吸引する搬送方向D1の下流側から用紙Pの後端部を吸引する搬送方向D1の上流側に向かって、吸引領域A2が分割され、用紙Pの後端部を吸引する搬送方向D1の上流側に向かって、吸引領域間の間隔が短くされている。
また、外周面375の吸引領域A2にある吸引穴379の開口率は、用紙Pの先端部を吸引する搬送方向D1の上流側から用紙Pの後端部を吸引する搬送方向D1の下流側に向かって、段階的に大きくなるように設定されている。
以上、図18に示すような構成の場合、温風ノズル800によって用紙変形歪Tが側後端部に散らされた又は除去された用紙Pは、その先端が、乾燥ドラム376の保持手段377によって保持された時点で、吸引(吸着)が開始される。
【0238】
図19(A)〜(C)は、乾燥ドラム376で用紙Pの吸引が開始される様子を順に示した図である。
【0239】
図19(A)〜(C)に示すように、用紙Pが乾燥ドラム376に渡されると、保持手段377によって先端が保持され、乾燥ドラム376が搬送方向D1に向かって回転すると、まず外周面375の吸引領域A3から吸引が実施されて用紙Pの先端部が吸着され、さらに乾燥ドラム376が搬送方向D1に向かって回転すると、外周面375の吸引領域A3及びA4から吸引が実施されて用紙Pの先端部及び中央部が吸着され、さらにまた乾燥ドラム376が搬送方向D1に向かって回転すると、外周面375の吸引領域A3〜A6から吸引が実施されて用紙Pの先端部から後端部にかけて用紙全体が吸着される。したがって、用紙Pの先端部から後端部にかけて段階的に吸引を開始することができる。
【0240】
また、第1実施形態では、処理液付与部14において、処理液をローラ塗布する構成としているが、処理液を付与する方法は、これに限定されるものではない。この他、インクジェットヘッドを用いて付与する構成やスプレーにより付与する構成を採用することもできる。
【0241】
また、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に吸着保持させる機構は、第1実施形態のような負圧による吸着方法に限らず、静電吸着による方法を採用することもできる。
【0242】
また、上記実施形態では画像形成装置としてインクを用いたインクジェット方式のインクジェット記録装置を一例に挙げたが、吐出される液は画像記録・文字印刷用などのインクに限定されず、記録媒体に染み込む溶媒あるいは分散媒を使用している液体であれば種々の吐出液(液滴)に応用することができる。
【実施例】
【0243】
以下に実施例を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0244】
実施例では、送風ユニット70の送風領域幅W2と送風する用紙Pの幅W1との関係を調査した。
具体的に、幅W1が636mmの菊半サイズの用紙Pを用い、この場合に、送風領域幅W2を用紙Pの幅W1に対して変化させたとき、用紙Pの押圧効果と用紙Pのバタツキがどのように変化するか調査した。なお、この調査は、第1実施形態のインクジェット記録装置の構成で行った。
【0245】
表2は、送風領域幅W2を用紙Pの幅W1に対して変化させたとき、押圧効果と用紙Pのバタツキがどのように変化するか調べた結果をまとめたものである。なお、表中の押圧効果に関する「○」は押圧効果が高いことを意味し、「△」は押圧効果が低いことを意味する。また、表中のバタツキに関する「○」はバタツキが実質的に無いことを意味し、「△」はバタツキが10回のテストで、3回以下バタツキがあったことを意味し、「×」はバタツキが10回のテストで、9回以上バタツキがあったことを意味する。
【0246】
【表2】

【0247】
表2から、送風領域幅W2が用紙Pの幅W1の50%以上だと用紙Pの側端部を押圧する効果を高めることができることを見出した。また、送風領域幅W2が用紙Pの幅W1の95%以下だと、用紙Pのバタツキをより抑制できることを見出した。したがって、用紙Pの幅W1の50%以上95%以下になるように送風B1の方向を調整することが好ましいことを結論付けた。
【符号の説明】
【0248】
10,300 インクジェット記録装置(画像形成装置)
11,400 記録媒体搬送装置
20 インク乾燥処理部
22 照射処理部
26,600,610 送風部(送風手段の一部)
56C,56M,56Y,56K,372C,372M,372Y,372K, インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)
64 チェーングリッパ(把持手段)
72,500,512 送風機
90 搬送機構(搬送手段の一部)
92 バックテンション付与機構(吸引体)
96A 摺接面(搬送面)
98 吸引穴(開口部)
102 インク乾燥処理ユニット(乾燥手段)
210 搬送制御部(搬送手段の一部)
226 送風制御部(送風手段の一部)
318 乾燥部(乾燥手段)
370 描画ドラム(搬送手段の一部、圧胴)
376 乾燥ドラム(搬送手段の一部、圧胴)
379 吸引穴(開口部)
382,800 温風ノズル(送風手段の一部)
700,702 吸引溝(開口部)
A2 吸引領域
B1 送風
D1 搬送方向
N3 中心線
P 用紙(記録媒体)
W2 送風領域幅
θ2 傾斜角度(角度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送面へ吸引しながら搬送する搬送手段と、
前記搬送手段よりも前記記録媒体の搬送方向上流側に設けられ、前記記録媒体の中央部から側部上流側に向かって斜め方向に送風し、且つ、前記送風が前記記録媒体に当る前までに、前記搬送手段へ搬送される前記記録媒体の幅に応じて、前記送風の送風領域幅が前記記録媒体の幅よりも狭くなるように前記送風の方向を調整する送風手段と、
を備える記録媒体搬送装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、
前記記録媒体の先端を把持して搬送する把持手段と、
前記把持手段で搬送される前記記録媒体を、前記搬送面へ吸引する吸引体と、
を備える請求項1に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項3】
前記送風手段は、前記送風領域幅内で中央部の風量を強くする、
請求項1又は請求項2に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項4】
前記送風手段は、前記記録媒体の剛性に応じて、前記送風の方向又は前記送風の風量を調整する、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項5】
前記送風手段は、前記送風領域幅が、前記搬送手段へ搬送される前記記録媒体の幅の50%以上95%以下になるように前記送風の方向を調整する、
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項6】
前記搬送手段は、
前記搬送面へ吸引して前記記録媒体を密着保持した状態で回転し、搬送する圧胴、
を備える請求項1に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項7】
前記搬送面には、吸引用の開口部が設けられ、
前記開口部の開口率は、前記記録媒体の搬送方向の上流側から下流側に向かって段階的に大きくされている、
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項8】
前記開口部の開口率は、前記搬送面の中央部から側端部の方向に向かって段階的に大きくされている、
請求項7に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項9】
前記圧胴の前記搬送面の吸引領域は、前記記録媒体の先端部を吸引する箇所から、前記記録媒体の後端部を吸引する箇所に向かって、細分化されている、
請求項6に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項10】
前記開口部は、前記記録媒体の搬送方向下流側がV字の頂部となるV字型とされている、
請求項7又は請求項8の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項11】
前記搬送面には、吸引用の開口部が設けられ、
前記開口部は、前記記録媒体の搬送方向下流側がV字の底部となる逆V字型とされている、
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項12】
前記送風手段は、搬送される前記記録媒体の幅方向に沿って配置された複数の送風機を備える、
請求項1〜請求項11の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項13】
前記送風手段は、各送風機の送風方向を、前記記録媒体の中央部から側部方向かけて、前記記録媒体の中心線に対して徐々に傾きが小さくなるように調整する、
請求項12に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項14】
前記送風手段は、各送風機の送風方向を、前記記録媒体の中央部から側部方向かけて、前記記録媒体の中心線に対して徐々に傾きが大きくなるように調整する、
請求項12に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項15】
前記送風手段は、前記記録媒体の搬送方向に沿って配置された複数の送風機を備える、
請求項1〜請求項14の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項16】
前記送風手段は、前記搬送方向の上流側に設けられた前記送風機の送風領域幅よりも、前記搬送方向の下流側に設けられた前記送風機の送風領域幅が広くなるように、前記送風の方向を調整する、
請求項15に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項17】
前記送風手段は、前記送風を熱風にするヒータを備える、
請求項1〜請求項16の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項18】
前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を乾燥する、乾燥手段を備える、
請求項1〜請求項17の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項19】
前記乾燥手段は、前記搬送面を加熱して前記記録媒体を乾燥する、
請求項18に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項20】
請求項1〜請求項19の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置と、
前記記録媒体に液滴を吐出して描画する液滴吐出ヘッドと、
を備え、
前記送風手段は、前記液滴吐出ヘッドと前記搬送手段との間に設けられている、
画像形成装置。
【請求項21】
前記送風手段は、前記記録媒体の前記液滴が吐出された描画部分に対する送風の風量を、非描画部分に対する送風の風量よりも強くする、
請求項20に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−47136(P2013−47136A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186283(P2011−186283)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】