説明

記録媒体搬送装置及び記録装置

【課題】ロール体を一回転させてメジャーメントを実行する際に、大きな垂れ下がりは抑制しつつ記録面の損傷の虞も低減でき、更にロール体を一回転させる必要のない場合にも無駄なく対処できるようにすること。
【解決手段】ロール体1から記録媒体Pを供給するべくロール体1を回転させる第1モーター2と、ロール体1よりも下流側に位置する搬送駆動ローラー3を駆動させる第2モーター4と、搬送される記録媒体が所定のテンションが与えられた状態で搬送されるように第1モーター2と第2モーター4の駆動状態を制御するモーター制御部5とを備え、第1モーター2が第2モーター4停止の状態で記録媒体を供給する際の負荷と駆動速度との関係を測定するメジャーメントとして、ロール体の一回転を複数に分割して実行する第1メジャーメントモードと、1回転させないで実行する第2メジャーメントモードとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の記録媒体が巻かれたロール体(所謂「ロール紙」のこと)を、所定のテンションが与えられた状態で搬送されるように駆動源となる複数のモーターを制御する構成の記録媒体搬送装置及びそれを備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1に記載された装置が挙げられる。この文献には、帯状の記録媒体が巻かれたロール体から記録媒体を供給するべく前記ロール体を回転させる動力源となるロールモーターと、前記記録媒体の供給方向における前記ロール体の位置よりも下流側に位置する搬送駆動ローラーを前記記録媒体を搬送するべく駆動させる動力源となるPFモーターと、前記搬送される記録媒体が所定のテンションが与えられた状態で搬送されるように前記ロールモーターとPFモーターの駆動状態を制御するモーター制御部とを備えた構造が記載されている。
【0003】
ロール体は、その重量が重いのでロール体から記録媒体を引き出すときの負荷は大きい。PFモーターの駆動力だけで記録媒体を引き出して搬送しようとすると、該記録媒体が破断する虞がある。そこで、ロール体を回転駆動するための前記ロールモーターが設けられ、PFモーターとロールモーターの両方を駆動させて記録媒体を引き出すようにしている。これにより、前記破断の虞は軽減できる。
【0004】
更に、ロール体は使用が進んで記録媒体が繰り出されると次第にその直径が小さくなる。これによりロールモーターの負荷が変動する。この変動に対して、ロールモーターが前記PFモーター停止の状態で記録媒体を供給する際の負荷(ロールモーターに作用する負荷)と該ロールモーターの駆動速度との関係を測定するメジャーメントを実行し、その測定で得られるメジャーメント値を用いて当該ロールモーターの駆動制御を行って前記負荷変動の影響を低減するようにしている。
【0005】
更に、PFモーターによる記録媒体の送り量の高精度化を意図して、前記ロールモーターとPFモーターの両駆動によって搬送される記録媒体が所定のテンションが与えられた状態で搬送されるように前記ロールモーターとPFモーターの駆動状態を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−242048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、使われるロール体が次第に大型化(例えば、長さ約160cm、重さが約80kgのもの等)してきたことによる新たな問題については考慮されていない。その新たな問題として次のことが言われている。ロール体は記録装置の給紙部に両端を回転可能に支持する状態でセットされるが、そのセットした状態で放置されると、上記の如く大型化によって登場してきた重くて長いロール体の場合、長手方向における中央部が数ミリメートル下がる撓み変形を起す問題がある。この撓み変形が起きるとそのロール体の重心位置が軸心線上からずれるので、該ロール体を一回転したときの回転負荷が大きく変化するようになる。
【0008】
従来(ロール体の上記大型化が始まる前)においては、前記撓み変形の問題が顕在化していなかったので、図7(A)に示したように、前記メジャーメントの実行は、ロール体を一回転(360度)しないで、通常は1/4回転(符号26で示した範囲で90度)で行っていた。同図において、横軸はロール体の回転量(角度)、縦軸はある速度でモーターを回転駆動したときに前記メジャーメントの実行の結果得られるモーターの負荷(PWM制御されたモーターではデューティー比、或いは電流値)である。同図において、符号24はロール体を一回転させたときのモーターの負荷変動曲線である。符号25はその負荷変動曲線24の平均値である。
このように負荷変動曲線24の変動幅は小さいので、前記1/4回転のメジャーメント実行で問題なく、精度良く測定できていた。
【0009】
ところが、上記ロール体の大型化で前記撓み変形の問題が顕在化すると、図7(B)に示したように、モーターの負荷変動曲線27の変動幅が大きくなり、1/4回転のメジャーメントでは本来求める値である平均値28から大きくずれてしまう。
そのため、ロール体を一回転させてメジャーメントを実行する必要が生じる。
【0010】
しかし、単純にロール体を一回転させてメジャーメントを実行すると、大型化によってロール径も大きくなっているので、一回転分を繰り出すと相当の長さになる。例えば直径が30cmのロール体では、記録媒体が約1mも繰り出されることになる。この繰り出された1mの記録媒体は、メジャーメント実行時はPFモーターが停止しているので、下流に進むことができず、ロール体回りに大きく垂れ下がる状態となる。
ユーザーが印刷開始前に、上記の状態を目にすると記録装置にトラブルが発生したと勘違いし易いと共に、大きく垂れ下がった部分が周囲の部材に接触して記録面を損傷する虞がある。
【0011】
本発明の目的は、ロール体を一回転させてメジャーメントを実行する際に、大きな垂れ下がりは抑制しつつ記録面の損傷の虞も低減でき、更にロール体を一回転させる必要のない場合にも無駄なく対処できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明の第1の態様に係る記録媒体搬送装置は、記録媒体が巻かれたロール体を回転させる第1駆動部と、前記記録媒体の搬送方向において前記ロール体よりも下流側に位置し、前記記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部を駆動させる第2駆動部と、前記第1駆動部と第2駆動部との駆動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記第2駆動部を停止させた状態で前記第1駆動部を駆動させ、前記記録媒体を搬送する際の負荷と駆動速度との関係を測定するメジャーメントとして、前記メジャーメントを前記ロール体の一回転について実行し、且つ前記一回転を複数に分割して実行する第1メジャーメントモードと、前記メジャーメントを、前記ロール体を1回転させない範囲で実行する第2メジャーメントモードと、を備えている。
第1の態様は、少し限定を加えて、帯状の記録媒体が巻かれたロール体1から記録媒体を供給するべく前記ロール体を回転させる動力源となる第1モーターと、前記記録媒体の供給方向における前記ロール体の位置よりも下流側に位置する搬送駆動ローラーを前記記録媒体を搬送するべく駆動させる動力源となる第2モーターと、前記搬送される記録媒体が所定のテンションが与えられた状態で搬送されるように前記第1モーターと第2モーターの駆動状態を制御するモーター制御部とを備え、前記モーター制御部は、前記第1モーターが前記第2モーター停止の状態で記録媒体を供給する際の負荷と駆動速度との関係を測定するメジャーメントとして、前記ロール体の一回転について実行し、且つ前記一回転を複数に分割して実行する第1メジャーメントモードと、前記ロール体を1回転させない範囲で実行する第2メジャーメントモードと、を備えていることを特徴とするものであってもよい。
ここで「ロール体」とは、用紙を記録媒体とする所謂ロール紙の他に、こしがない、伸びやすい、或いは柔らかい素材のシート、例えばビニルシート等の素材的に前記撓み変形が起きやすいものが含まれる。
【0013】
本態様によれば、前記モーター制御部は、前記第1モーターが前記第2モーター停止の状態で記録媒体を供給する際の負荷と駆動速度との関係を測定するメジャーメントの実行として、前記ロール体の一回転について実行し、且つ前記一回転を複数に分割して実行する第1メジャーメントモードを備えている。従って、分割された1回分の繰り出し長さは短くなるので、ロール体周りに大きな垂れ下がりはできず、ユーザーに目立たなくすることができる。
1回のメジャーメントが済むと第1モーターは停止する。その停止状態のときにそれまで停止していた第2モーターを駆動させることで前記繰り出された部分が第2モーターの下流側に送られてロール体回りから無くなる、これにより、次のメジャーメントの実行による繰り出し分の受入スペースが確保できる。そして、前回のすなわち1回目の繰り出し分と2回目の繰り出し分がロール体周りで累積されないので、ユーザーに目立ちにくい。
【0014】
更に、本態様によれば、前記ロール体を1回転させない範囲で実行する第2メジャーメントモードを備えているので、ロール体を一回転させなくても精度良くメジャーメントを行える場合は、第2メジャーメントモードを実行することでメジャーメントの時間短縮を図ることができる。
以上説明したように、本態様によれば、ロール体を一回転させてメジャーメントを実行する際に、大きな垂れ下がりは抑制しつつ記録面の損傷の虞を低減することができ、更にロール体を一回転させる必要のない場合にも無駄なく対処することができる。
【0015】
本発明の第2の態様に係る記録媒体搬送装置は、前記第1の態様において、前記制御部は、前記ロール体が交換された後の最初の前記メジャーメントは前記第1メジャーメントモードで行うことを特徴とするものである。
【0016】
ロール体が交換された場合は、記録媒体搬送装置及びそれを備える記録装置は、その新たなロール体についての前記撓み変形の情報は通常持っていない。
本態様によれば、ロール体が交換された後の最初のメジャーメントは前記第1メジャーメントモードで行うように構成されているので、適切なメジャーメントの実行を実現することができる。
【0017】
本発明の第3の態様に係る記録媒体搬送装置は、前記第1の態様又は第2の態様において、前記制御部は、前記第1メジャーメントモードの実行で得られた前記負荷の変動幅が設定値以下であるときは、次の前記メジャーメントは前記第2メジャーメントモードで行うことを特徴とするものである。
【0018】
本態様によれば、第1メジャーメントモードの実行で得られた前記負荷の変動幅が設定値以下であるときは、次のメジャーメントは第2メジャーメントモードで行うように構成されている。従って、無駄なく適切なメジャーメントモードを選択してメジャーメントを実行することができる。
【0019】
本発明の第4の態様に係る記録媒体搬送装置は、前記第1の態様から第3の態様のいずれか一つにおいて、前記制御部は、前記第1メジャーメントモードを前記ロール体の一回転を偶数回に分割し、且つ前記ロール体の1/2回転は一方向に回転させて行い、残りの1/2回転は他方向に回転させて行うことを特徴とするものである。
【0020】
ロール体の一回転における第1モーターの負荷変動は、残りの1/2回転については、逆転(他方向に回転)させても対称の関係をもって測定されるので、当該逆転が可能である。
本態様によれば、残りの1/2回転は逆転させてメジャーメントを行う構成であるので、ロール体の一回転によるトータルの繰り出し量を半分に減らすことができ、その点からも大きな垂れ下がりを抑制しつつ記録面の損傷の虞を一層効果的に低減することができる。
【0021】
本発明の第5の態様に係る記録媒体搬送装置は、前記第1の態様から第4の態様のいずれか一つにおいて、前記第1駆動部はPWM制御で制御されており、前記制御部は、前記第1メジャーメントモードを、前記ロール体の一回転を偶数回に分割し、且つ分割された回転の奇数回目と偶数回目に分けて、一方では前記第1駆動部を第1の速度で駆動させて行い、他方では前記第1駆動部を前記第1の速度よりも速い第2の速度で駆動させて行うことを特徴とするものである。
すなわち、前記第1モーターはPWM制御で速度制御されており、前記ロール体の一回転を偶数回に分割し、前記第1メジャーメントモードの実行は、分割された回転の奇数回目と偶数回目に分けて、一方では第1モーターを低速駆動させて行い、他方では前記一方よりも高速駆動させて行う構成であることを特徴とするものである。
【0022】
第1モーターがPWM制御で速度制御されているものでは、モーターの回転に伴う逆起電力の影響を受けるが、本態様によれば、前記第1メジャーメントモードの実行は、分割された回転の奇数回目と偶数回目に分けて、一方では第1モーターを低速駆動(第1の速度)させて行い、他方では前記一方よりも高速駆動(第2の速度)させて行う構成である。従って、前記逆起電力の影響を低減することができる。
ここで、PWM制御とは「Pulse Width Modulation」の頭文字をとって称される制御である。PWMは日本語に訳すと「パルス幅変調」という。この制御は、パルス波のデューティー比を変化させて変調する変調方法を利用している。
【0023】
本発明の第6の態様に係る記録装置は、記録媒体に対しインクを吐出するインク吐出部と、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送装置とを備える記録装置であって、前記記録媒体搬送装置は前記第1の態様から第5の態様のいずれか一つに記載されている記録媒体搬送装置であることを特徴とするものである。
本態様によれば、記録装置として前記第1の態様から第5の態様の対応する作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係る記録媒体搬送装置の概略の構成を示す図。
【図2】同実施例に係る記録媒体搬送装置のメジャーメントの実行動作の前半を説明する要部概略側面図(A)(B)(C)。
【図3】同実施例に係る記録媒体搬送装置のメジャーメントの実行動作の後半を説明する要部概略側面図(E)(F)(G)。
【図4】同実施例に係る記録媒体搬送装置のメジャーメントの実行動作の二つの態様を説明する要部概略側面図(A)(B)。
【図5】同実施例に係る記録媒体搬送装置のメジャーメントの結果を説明するグラフを示す図。
【図6】同実施例に係る記録媒体搬送装置を備える記録装置の動作を説明するフローチャートを示す図。
【図7】従来のメジャーメントを説明する図(A)と、本発明の課題を説明する図(B)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
最初に、図1に基づいて本発明の記録媒体搬送装置の一実施例とそれを備える記録装置の一例であるインクジェット記録装置の全体構成の概略を説明する。
【0026】
本実施例の記録媒体搬送装置は、記録媒体Pが巻かれたロール体1を回転させる第1駆動部に対応する第1モーター2と、前記記録媒体Pの搬送方向において前記ロール体1よりも下流側に位置し、前記記録媒体Pを搬送する搬送部に対応する搬送駆動ローラー3と、前記搬送部を駆動させる第2駆動部に対応する第2モーター4と、前記第1駆動部と第2駆動部との駆動を制御する制御部に対応するモーター制御部5とを備え、前記制御部は、前記第2駆動部を停止させた状態で前記第1駆動部を駆動させ、前記記録媒体を搬送する際の負荷と駆動速度との関係を測定するメジャーメントとして、前記メジャーメントを前記ロール体の一回転について実行し、且つ前記一回転を複数に分割して実行する第1メジャーメントモードと、前記メジャーメントを、前記ロール体を1回転させない範囲で実行する第2メジャーメントモードと、を備えている。
【0027】
一部繰り返しになるが具体的に説明すると、本実施例の記録媒体搬送装置は、帯状の記録媒体Pが巻かれたロール体1から記録媒体Pを供給するべく前記ロール体1を回転させる動力源となる第1モーター2と、前記記録媒体Pの供給方向における前記ロール体1の位置よりも下流側に位置する搬送駆動ローラー3を前記記録媒体Pを搬送するべく駆動させる動力源となる第2モーター4と、前記搬送される記録媒体Pが所定のテンションTが与えられた状態で搬送されるように前記第1モーター2と第2モーター4の駆動状態を制御するモーター制御部5とを備えている。
そして、前記モーター制御部5は、第1モーター2が第2モーター4の停止の状態で記録媒体Pを供給する際の負荷Dと駆動速度Vとの関係を測定するメジャーメントの実行を、前記ロール体の一回転について実行し、且つ前記一回転を複数に分割して実行する第1メジャーメントモードと、前記ロール体を1回転させない範囲で実行する第2メジャーメントモードと、を備えている。
【0028】
また、本実施例では、前記モーター制御部5は、ロール体1が交換された後の最初のメジャーメントは前記第1メジャーメントモードで行うように構成されている。
更に、前記モーター制御部5は、前記第1メジャーメントモードの実行で得られた前記負荷の変動幅が設定値以下であるときは、次のメジャーメントは第2メジャーメントモードで行うように構成されている。
【0029】
第1モーター2(以下「ロール体用モーター」とも言う)には、回転検出部6としてロータリーエンコーダーが用いられており、円盤状スケール7とロータリーセンサー8が設けられている。第1のモーター2の回転動力はギア輪列9を介してロール体1に伝達される。図において符号14はロール体1の両端に挿入された回転ホルダーである。
【0030】
第2モーター4(以下「PFモーター」とも言う)にも、回転検出部10としてロータリーエンコーダーが用いられており、円盤状スケール11とロータリーセンサー12が設けられている。第2モーター4の回転動力はギア輪列13を介して搬送駆動ローラー3に伝達される。
【0031】
図において、符号19は制御部を示し、該制御部19は当該記録装置の全動作を制御する。該制御部19は、モーター制御部5を含んでいる。またパソコン20から印刷データの情報が送られる。
【0032】
図2、図3及び図4(B)に基づいて、本実施例の第1メジャーメントモードのメジャーメント動作を説明する。
本実施例では、前記ロール体の一回転を8回に分割し、前記メジャーメントの実行は、前記ロール体1の1/2回転は一方向に回転させて行い、残りの1/2回転は逆転させて行う構成である。
そして前記第1モーター2はPWM制御で速度制御されており、前記メジャーメントの実行は、分割された回転の奇数回目となる1回目、3回目、5回目、7回目と偶数回目となる2回目、4回目、6回目、8回目に分けて、奇数回目の方では第1モーター2を低速VL駆動(図4のL1、L2、L3、L4)させて行い、偶数回目の方では前記奇数回目の方よりも高速VH駆動(図4のH2、H4、H6、H8)させて行う構成である。
【0033】
図2(A)は、第1モーター2及び第2モーター4が停止した状態で、メジャーメント実行の直前を示している。即ち、搬送駆動ローラー3は停止し、ロール体1も回転を停止している。
第2モーター4が停止した状態で、第1モーター2が1/8回転だけ低速VL駆動した状態が図2(B)である。ロール体1周りに1/8回転の繰り出し分の垂れ下がり22が発生している。しかし、一回転ではなく、1/8回転の繰り出し分であるので、その量は少なくユーザーには目立たない。そして、この動作により、ロール体1の1/8回転分についての第1モーター2のメジャーメントが実行される。具体的には、その低速VL駆動に対応したデューティー比DL1が得られる。
次に、第1モーター2が停止した状態のまま、第2モーター4を回転駆動させて前記垂れ下がり22を下流側に送った状態が図2(C)である。
【0034】
次に、2回目の1/8回転分のメジャーメントが高速VH駆動(1回目)で、図2(A)〜(C)と同様の動作で行われる。これにより、その高速VH駆動に対応したデューティー比DH1が得られる。
次に、3回目の1/8回転分のメジャーメントが低速VL駆動(2回目)で行われ、その低速VL駆動に対応したデューティー比DL2が得られる。
次に、4回目の1/8回転分のメジャーメントが高速VH駆動(2回目)で行われ、その高速VH駆動に対応したデューティー比DH2が得られる。
【0035】
続いて、図3(E)は、第1モーター2及び第2モーター4が停止した状態で、逆転方向への後半のメジャーメント実行の直前を示している。即ち、搬送駆動ローラー3は停止し、ロール体1も回転を停止している。
第1モーター2が停止した状態で、第2モーター4が1/8回転相当分だけ駆動した状態が図3(F)である。ロール体1周りに1/8回転の繰り出し分の垂れ下がり22が発生している。
次に、第2モーター4が停止した状態のまま、第1モーター2を低速VL駆動(3回目)させて前記垂れ下がり22をロール体内に巻き取った状態が図3(G)である。その低速VL駆動に対応したデューティー比DL3が得られる。
【0036】
次に、逆転の2回目の1/8回転分のメジャーメントが高速VH駆動(3回目)で、図3(E)〜(G)と同様の動作で行われる。これにより、その高速VH駆動に対応したデューティー比DH3が得られる。
次に、逆転の3回目の1/8回転分のメジャーメントが低速VL駆動(4回目)で行われ、その低速VL駆動に対応したデューティー比DL4が得られる。
次に、逆転の4回目の1/8回転分のメジャーメントが高速VH駆動(4回目)で行われ、その高速VH駆動に対応したデューティー比DH4が得られる。
【0037】
以上で第1メジャーメントモードのメジャーメント動作が終了し、得られた四つのデューティー比DL1からDL4を平均することで、求める低速駆動での第1モーター2が受ける負荷であるデューティー比DLが得られる。また、得られた四つのデューティー比DH1からDH4を平均することで、求める高速駆動での第1モーター2が受ける負荷であるデューティー比DHが得られる。これをプロットしたのが図5である。図5の直線23が第2モーター4停止の状態で記録媒体Pを供給する際の負荷Dと第1モーターの駆動速度Vとの関係が求められたことになる。
【0038】
以上説明したように、本実施例によれば、前記モーター制御部5は、第1モーター2が第2モーター4停止の状態で記録媒体Pを供給する際の負荷Dと駆動速度Vとの関係を測定するメジャーメントとして、前記ロール体の一回転について実行し、且つ前記一回転を複数に分割して実行する第1メジャーメントモードと、前記ロール体を1回転させない範囲で実行する第2メジャーメントモードと、を備えている。
従って第1メジャーメントモードによれば、分割された1回分の繰り出し長さは短くなるので、ロール体周りに大きな垂れ下がり22はできず、ユーザーに目立たなくすることができる。
【0039】
1回のメジャーメントが済むと第1モーター2は停止する。その停止状態のときにそれまで停止していた第2モーター4を駆動させることで前記繰り出された部分22が第2モーター4の下流側に送られてロール体周りから無くなる、これにより、次のメジャーメントの実行による繰り出し分の受入スペースが確保できる。そして、前回のすなわち1回目の繰り出し分と2回目の繰り出し分がロール体1周りで累積されないので、ユーザーに目立ちにくい。
【0040】
更に、本実施例によれば、前記ロール体を1回転させない範囲で実行する第2メジャーメントモードを備えているので、ロール体を一回転させなくても精度良くメジャーメントを行える場合は、第2メジャーメントモードを実行することでメジャーメントの時間短縮を図ることができる。
【0041】
更に、ロール体1が交換された場合は、記録媒体搬送装置及びそれを備える記録装置は、その新たなロール体1についての前記撓み変形の情報は通常持っていない。しかし、本実施例によれば、ロール体1が交換された後の最初のメジャーメントは前記第1メジャーメントモードで行うように構成されているので、適切なメジャーメントの実行を実現することができる。
【0042】
更に、本実施例によれば、第1メジャーメントモードの実行で得られた前記負荷の変動幅が設定値以下であるときは、次のメジャーメントは第2メジャーメントモードで行うように構成されているので、無駄なく適切なメジャーメントモードを選択してメジャーメントを実行することができる。
【0043】
また本実施例によれば、残りの1/2回転は逆転させてメジャーメントを行う構成であるので、ロール体1の一回転によるトータルの繰り出し量を半分に減らすことができ、その点からも大きな垂れ下がりを抑制しつつ記録面の損傷の虞を一層効果的に低減することができる。
【0044】
更に、第1モーター2がPWM制御で速度制御されているものでは、モーターの回転に伴う逆起電力の影響を受けるが、本実施例によれば、前記メジャーメントの実行は、分割された回転の奇数回目(図4のL1、L2、L3、L4)と偶数回目(図4のH2、H4、H6、H8)に分けて、一方では第1モーターを低速VL駆動させて行い、他方では前記一方よりも高速VH駆動させて行う構成である。従って、前記が逆起電力の影響を低減することができる。
【0045】
尚、上記実施例では、8回の分割メジャーメントを図4の(B)で行った場合を説明したが、図4(A)に従って、ロール体1の一回転を一方向のみにして8回の分割メジャーメントを行ってもよい。
【0046】
次に、前記記録媒体搬送装置を備える記録装置の動作を図6のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS1で、ロール体1の一回転について分割メジャーメント(本実施例では8分割)を上記したように実行する。これにより、図5に示した第2モーター4停止の状態で記録媒体Pを供給する際の負荷Dと第1モーターの駆動速度Vとの関係を示す直線23が得られる。
【0047】
次に、ステップS2で、搬送される記録媒体Pが所定のテンションTが与えられた状態で搬送されるように前記第1モーター(ロール体用モーター)2と第2モーター(PFモーター)4の駆動状態を制御する。この制御は、第2モーター4の駆動力で搬送される記録媒体Pの送り速度Vnであるとき、第1モーター2を回転駆動させるためのデューティー比として、図5で求まる負荷Dnで第1モーター2を駆動すると、第2モーター4と第1モーター2の送り速度が同じになるので上記テンションTが無くなってしまう。そこで、第1モーター2に与えるデューティー比として前記負荷Dnに相当する値よりも小さくて第2モーター4の送り速度の方が第1モーター2の送り速度よりも大きくなるように設定される。これは、第1モーター2が有する回転検出部6と第2モーター4が有する回転検出器10の実測値に基づいて実行することができる。これにより、記録媒体Pは所定のテンションTが与えられた状態で搬送されるようになる。
【0048】
ステップS3で、一パス分の記録媒体送り(紙送り)が終了するまで両モーター2、4を駆動し、一パスの送りが終了したら両モーター2、4を停止する。この判断も第2モーター4が有する回転検出器10の実測値に基づいて制御部5が行う。
【0049】
続いてインク吐出部17によってインクを吐出して印刷を実行する(ステップS5)。そして、全てのパスの紙送りが終了したら(ステップS6)、即ち、一つのジョブが終了したら、そのジョブの印刷終了となる(ステップS7)。
【0050】
続いて、ステップS8で、次のジョブがあるか判断される。次のジョブがある場合、前記第1メジャーメントモードの実行で得られた各メジャーメント値の大小の差、すなわち前記負荷の変動幅が設定値以下であるか否かが判断される(ステップS9)。
【0051】
設定値以下であるときは、次のメジャーメントは第2メジャーメントモードで行われる(ステップS10)。この例では、ロール体1の1/4回転でメジャーメントが行われる。そして、ステップS2に戻って、ロール体1の1/4回転メジャーメントで得られたメジャーメント値によって前述の動作が行われる。
【0052】
ステップS9で、前記負荷の変動幅が設定値以下でないときは、ステップS1に戻って、前記動作が繰り返される。
【0053】
[他の実施例]
本発明の係る記録媒体搬送装置及び記録装置は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
例えば第1モーター2の制御はPWM制御ではなく、負荷変動に対して電圧制御で対応してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ロール体、2 第1モーター、3 搬送駆動ローラー、4 第2モーター、
5 モーター制御部、6 回転検出器、9 ギア輪列、11 回転検出器、
13 ギア輪列、16 キャリッジ、17 インク吐出部、
18 キャリッジガイド軸、19 制御部、20 パソコン、
21 搬送従動ローラー、22 垂れ下がり、23 直線、24 負荷変動曲線、
25 平均値、26 1/4回転の範囲、27 負荷変動曲線、28 平均値、
29 1回転の範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が巻かれたロール体を回転させる第1駆動部と、
前記記録媒体の搬送方向において前記ロール体よりも下流側に位置し、前記記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部を駆動させる第2駆動部と、
前記第1駆動部と第2駆動部との駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2駆動部を停止させた状態で前記第1駆動部を駆動させ、前記記録媒体を搬送する際の負荷と駆動速度との関係を測定するメジャーメントとして、
前記メジャーメントを前記ロール体の一回転について実行し、且つ前記一回転を複数に分割して実行する第1メジャーメントモードと、
前記メジャーメントを、前記ロール体を1回転させない範囲で実行する第2メジャーメントモードと、を備えている記録媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載された記録媒体搬送装置において、
前記制御部は、前記ロール体が交換された後の最初の前記メジャーメントは前記第1メジャーメントモードで行うことを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された記録媒体搬送装置において、
前記制御部は、前記第1メジャーメントモードの実行で得られた前記負荷の変動幅が設定値以下であるときは、次の前記メジャーメントは前記第2メジャーメントモードで行うことを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載された記録媒体搬送装置において、
前記制御部は、前記第1メジャーメントモードを前記ロール体の一回転を偶数回に分割し、且つ前記ロール体の1/2回転は一方向に回転させて行い、残りの1/2回転は他方向に回転させて行うことを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載された記録媒体搬送装置において、
前記第1駆動部はPWM制御で制御されており、
前記制御部は、前記第1メジャーメントモードを、前記ロール体の一回転を偶数回に分割し、且つ分割された回転の奇数回目と偶数回目に分けて、一方では前記第1駆動部を第1の速度で駆動させて行い、他方では前記第1駆動部を前記第1の速度よりも速い第2の速度で駆動させて行うことを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項6】
記録媒体に対しインクを吐出するインク吐出部と、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送装置とを備える記録装置であって、
前記記録媒体搬送装置は請求項1から5のいずれか一項に記載されている記録媒体搬送装置であることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107710(P2013−107710A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251347(P2011−251347)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】