説明

記録情報読取装置、及び、記録情報の読取方法

【課題】パターンの自由度を向上させることができる記録情報読取装置及び記録情報の読取方法を提供する。
【解決手段】記録情報読取装置1は、情報記録カード2に記録された、導電性材料を有するパターン14の情報を読み取るためのものである。記録情報読取装置1は、パターン14と対向するように、且つ、互いに間隔を開けて配置された少なくとも一対の電極46間の静電容量Cxを検出する静電容量検出手段(33、34、35、36、37、38、39)と、静電容量検出手段を制御するとともに、静電容量Cxまたは静電容量に対応した情報をパターン14の情報として記憶する制御部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体に記憶された導電性材料のパターンの情報を読み取る記録情報読取装置、及び、記録情報の読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、円柱状の一対の電極と、平面状の一対のガード電極と、発振器とを備えた情報記録媒体を読み取るための読取装置が開示されている。一対の電極は、互いに対向するように所定間隔を開けて配置されている。一対のガード電極は、情報記録媒体に塗布された導電性材料のパターンをアース電位にするためにアースされている。一対のガード電極は、所定間隔を開けて、一対の電極間に配置されている。発振器は、パルスを印加するために一対の電極に接続されている。
【0003】
特許文献1の技術では、発振器が一対の電極間にパルスを印加した状態で、情報記録媒体が一対のガード電極間に通される。これにより、ガード電極によって情報記録媒体の導電性パターンはアース電位になる。そして、一対の電極間に導電性材料のパターンが存在すると、静電遮蔽によって電極間の結合が阻害される。これにより、一方の電極は非検出状態となり、導電性材料のパターンの存在が検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−185394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、複数の導電性材料のパターンを互いに接続させることによって、それらの電位をアース電位に一致させる必要がある。このため、パターンの自由度が低いといった課題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、情報記録媒体上の導電性材料のパターンの自由度を向上させることができる記録情報読取装置及び記録情報の読取方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る記録情報読取装置の第1の特徴は、情報記録カードに記録された導電性材料のパターンの情報を読み取るための記録情報読取装置において、前記パターンと対向するように、且つ、互いに間隔を開けて配置された少なくとも一対の電極と、前記少なくとも一対の電極間の静電容量を検出する静電容量検出手段と、前記静電容量検出手段を制御するとともに、前記静電容量または前記静電容量に対応した情報をパターンの情報として記憶する制御部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る記録情報読取装置の第2の特徴は、前記電極の数は、4個以上の複数であって、前記複数の電極は、第1の方向と第2の方向とに周期的に配置されている。
【0009】
また、本発明に係る記録情報読取装置の第3の特徴は、前記制御部は、前記第1の方向と前記第2の方向とに隣接する一対の電極の全ての組み合わせに順次交流電圧を印加して、交流電圧が印加された一対の電極間の静電容量を順次検出する。
【0010】
また、本発明に係る記録情報の読取方法の第1の特徴は、情報記録媒体に記録されたパターンの情報を読み取るための記録情報の読取方法において、前記パターンと対向するように、且つ、互いに間隔を開けて配置された一対の電極の間に交流電圧を印加するステップと、前記パターンの情報として前記電極間の静電容量を検出するステップとを備える。
【0011】
また、本発明に係る記録情報の読取方法の第2の特徴は、前記電極の数は、4個以上の複数であって、前記複数の電極は、第1の方向と第2の方向とに周期的に配置されており、前記交流電圧を印加するステップと、前記静電容量を検出するステップは、前記複数の電極における第1の方向と第2の方向に隣接する一対の電極のすべての組み合わせにおいて、順次おこなわれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る記録情報読取装置の第1の特徴によれば、一対の電極によって、パターンの静電容量を検出するので、パターンが有する導電性材料の各部分が、互いに電気的に接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。これにより、記録情報読取装置の第1の特徴は、情報記録媒体のパターンの自由度を向上させることができる。
【0013】
本発明に係る記録情報読取装置の第2の特徴によれば、複数の電極を第1の方向及び第2の方向に配置することによって、情報記録媒体を移動させることなく、多数のパターンの情報を読み取ることができる。
【0014】
本発明に係る記録情報読取装置の第3の特徴によれば、制御部が複数の電極に順次交流電圧を印加して、パターンの静電容量を順次検出する。これにより、記録情報読取装置の第3の特徴は、装置を複雑化させることなく広範囲のパターンの情報を迅速且つ容易に読み取ることができる。
【0015】
本発明に係る記録情報の読取方法の第1の特徴によれば、一対の電極によって、パターンの情報として、静電容量を検出するので、パターンが有する導電性材料の各部分が、互いに電気的に接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。これにより、記録情報の読取方法の第1の特徴は、パターンの自由度を向上させることができる。
【0016】
本発明に係る記録情報の読取方法の第2の特徴によれば、複数の電極に順次交流電圧を印加して、パターンの静電容量を順次検出する。これにより、記録情報の読取方法の第2の特徴は、装置を複雑化させることなく広範囲のパターンの情報を迅速且つ容易に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態による記録情報システムの全体斜視図である。
【図2】第1実施形態による情報記録カードの平面図である。
【図3】第1実施形態による記録情報読取装置の全体構成図である。
【図4】電極近傍の平面図である。
【図5】第1実施形態による読取部に形成されるホイートストーンブリッジ回路を説明する図である。
【図6】導電性材料の密度がd1であるパターンの小部分と電極との概略の縦断面図である。
【図7】図6の状態の回路図である。
【図8】導電性材料が集合している場合の図6相当図である。
【図9】導電性材料の密度がd2であるパターンの小部分と電極との概略の縦断面図である。
【図10】図9の状態の回路図である。
【図11】パターンを連続して読み取った際の、パターンと静電容量の関係を説明するための図である。
【図12】制御部によって処理される記録情報読取プログラムを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の記録情報読取装置を備えた第1実施形態による記録情報システムについて説明する。図1は、第1実施形態による記録情報システムの全体斜視図である。図2は、第1実施形態による情報記録カードの平面図である。図3は、第1実施形態による記録情報読取装置の全体構成図である。図4は、第1実施形態による読取部に形成されるホイートストーンブリッジ回路を説明する図である。以下の説明において、図1に矢印で示すXYをXY方向とする。
【0019】
図1に示すように、記録情報読取システム1は、身分証明用の情報記録カード(請求項の情報記録媒体)2と、記録情報読取装置3とを備えている。
【0020】
情報記録カード2は、種々の情報を記録して保持するものである。図2に示すように、情報記録カード2は、基材11と、情報記録部12とを備えている。
【0021】
基材11は、紙または合成樹脂等の絶縁性の薄い部材からなる。基材11には、所有者の会社名、所属、氏名等の文字及び写真等の画像13が印刷されている。
【0022】
情報記録部12は、導電性材料が分散された透明の導電性インクによって種々のパターンが印刷されているが、透明なので人間の目には見えない。これにより、情報記録部12には、印刷されたパターンに対応した導電性材料の密度パターン14(以下、パターン14)が形成されている。一方、情報記録部12内で、導電性インクが印刷されなかった部分には、導電性材料の密度パターン14に対するネガティブパターン14(以下、パターン14)が形成されている。パターン14の導電性材料の密度d1は、正の値「d1>0」をとり、パターン14の導電性材料の密度d2は、「d2=0」である。ここで、導電性材料の密度d1は、厳密な確定値に限らず、導電性材料の物性や塗布量や塗布方法に依存する制御可能な統計値としてもよい。また、導電性材料の密度d2は、厳密なゼロに限らず、基材11の物性や測定方法に依存する実質的に導電性材料が検出されない範囲の値としてもよい。尚、以下の説明において、導電性材料の密度の区別が必要ない場合には、情報記録部12内の任意の部分を「パターン14」とする。尚、情報記録部12は、本実施形態では、基材11の一部に形成されているが、基材11の全面に形成してもよい。また、各パターン14は、正方形状に形成しているが、長方形状、複数の長方形状が連続した形状(例えば、2次元バーコード)、丸形状、または、これらを組み合わせた形状に形成してもよい。
【0023】
画像13及び情報記録部12は、インクジェットプリンタ(図示略)によって印刷されている。インクジェットプリンタは、黒、シアン、マゼンタ、イエロー、導電性インクを吐出するための5個のインクジェットヘッドを有する。各インクジェットヘッドは、300dpiの解像度と、約2インチの幅を有する。インクジェットプリンタは、画像13と情報記録部12とを同時に印刷できる。
【0024】
記録情報読取装置3は、情報記録カード2に記録されたパターン14の情報を読み取るための装置である。図1及び図3に示すように、記録情報読取装置3は、筐体21と、筐体21に収納された読取部22とを備えている。
【0025】
読取部22は、情報記録カード2のパターン14の小部分48’(図6参照)を電気的経路とする隣接する1対の電極46間の静電容量を検出するものである。図3に示すように、読取部22は、カード検出部31と、電圧印加部32と、第1走査部33と、第2走査部34と、第1静電容量部35と、第2静電容量部36と、可変静電容量部37と、交流電源38と、交流検流計39と、制御部40とを備えている。ここで、第1走査部33と、第2走査部34と、第1静電容量部35と、第2静電容量部36と、可変静電容量部37と、交流電源38と、交流検流計39とが、請求項に記載の静電容量検出手段に相当する。
【0026】
カード検出部31は、電圧印加部32の上方に情報記録カード2が載置されことを検出するものである。カード検出部31は、光センサからなる。カード検出部31は、電圧印加部32の近傍に配置されている。
【0027】
電圧印加部32は、パターン14の小部分48’に交流電圧を印加するためのものである。電圧印加部32は、基板45と、複数の電極46と、絶縁膜47とを備えている。
【0028】
基板45は、絶縁性の合成樹脂または紙等の平面板部材からなる。基板45は、筐体21の内部に略水平に固定されている。
【0029】
電極46n、m(n=1、2・・N;m=1、2・・M)は、基板45上に形成された金属または金属組成物からなる。電極46n、mは、略水平面上に配置され、情報記録カード2の同じ側(下方)に全て位置する。以下の説明において、電極46n、mの位置を特定する必要がない場合、電極の符号を「46」とする。各電極46は、正方形状に形成されている。図4に示すように、電極46と隣接する電極46は、情報記録カード2のパターン14の細部を表現するに十分なほど小さなピッチp1で、互いに絶縁された状態で配置されている。したがって、隣接するふたつの電極46間の間隙48は、ピッチp2=p1/√2で仮想的に配置されている。これにより、隣接する一対の電極46によって間隙48に対応するパターン14の小部分48’に電圧が印加される。複数の電極46は、N×Mのマトリックス状に配置されている。換言すると、複数の電極46は、X方向及びY方向に周期的に配置されている。尚、「n」、「m」は、電極46n、mの位置を示す位置番号である。図3に示すように、マトリックス状に配置された電極46n、mのうち、左下の電極の符号を「461、1」とする。そして、+X方向に沿って「n」を1ずつ増加させるとともに、Y方向に沿って「m」を1ずつ増加させる。
【0030】
絶縁膜47は、導電性材料が複数の電極46に接触して電極46同士が短絡し静電容量の検出が不能になることを避けるために、全ての電極46を覆うように形成されている。絶縁膜47は、樹脂等の絶縁性の材料からなる。
【0031】
第1走査部33は、何れかの電極46と第1静電容量部35の一端とを接続するものである。第1走査部33は、基板45上に形成された配線(図示略)によって全ての電極46と接続されている。尚、第1走査部33と電極46との接続は、アクティブマトリックス方式等を適用できる。
【0032】
第2走査部34は、何れかの電極46と第2静電容量部36の一端とを接続するものである。ここで、第2走査部34によって接続される電極は、第1走査部33によって接続される電極46n、mと隣接する電極46n+1、mである。第2走査部34は、基板45上に形成された配線(図示略)によって全ての電極46と接続されている。尚、第2走査部34と電極46との接続は、アクティブマトリックス方式等を適用できる。
【0033】
第1静電容量部35は、後述するホイートストーンブリッジ回路55を形成するためのものである。第1静電容量部35は、第1静電容量C1を有する。第1静電容量部35の一端は、第1走査部33を介して何れかの電極46に接続される。第1静電容量部35の他端は、可変静電容量部37の一端に接続されている。
【0034】
第2静電容量部36は、ホイートストーンブリッジ回路55を形成するためのものである。第2静電容量部36は、第2静電容量C2を有する。第2静電容量C2は、第1静電容量C1と等しい。第2静電容量部36の一端は、第2走査部を介して何れかの電極46に接続されている。第2静電容量部36の他端は、可変静電容量部37の他端に接続されている。
【0035】
可変静電容量部37は、ホイートストーンブリッジ回路55を形成するためのものである。可変静電容量部37の静電容量C3は、少なくとも2つの静電容量C3、C3に切り替え可能に構成されている。ここで、静電容量C3の2つの静電容量C3、C3は、後述するようにパターン14の2つの導電性材料の密度d1、d2に対応している。
【0036】
交流電源38は、ホイートストーンブリッジ回路55に交流電力を供給するものである。交流電源38は、第1静電容量部35の他端部と第2静電容量部36の一端部と接続されている。
【0037】
交流検流計39は、ホイートストーンブリッジ回路55の電流を検出する。交流検流計39は、第1静電容量部35の一端部と第2静電容量部36の他端部と接続されている。
【0038】
図3に示すように、3個の静電容量部35〜37と、隣接する何れか一対の電極46、46とによって、図5に示すホイートストーンブリッジ回路55が形成される。これにより、第1静電容量部35の静電容量C1と第2静電容量部36の静電容量C2との積が、可変静電容量部37の静電容量C3と電極46と電極46との間の静電容量Cxとの積と一致すると、交流電源38がオン状態でも、交流検流計39によって電流は検出されない。したがって、交流検流計39を流れる電流が「0」のとき、静電容量Cxは他の3つの静電容量C1、C2、C3によって以下の式1のようにあらわされる。
Cx=(C1×C2)/C3 (式1)
後述するように静電容量Cxは導電性材料の密度d1、d2に対応して変化する。したがって導電性材料の密度がd1、d2どちらである場合も、その際の静電容量Cxが対応して定まる。そのとき、C1、C2の値が適当な固定値であれば、交流検流計39を流れる電流を「0」にするような静電容量C3の値が一意に存在する。すなわちこのような静電容量C3を見出せれば、式1によって静電容量Cxがかんたんに計算できる。同時に、導電性材料の密度がd1であるかd2であるかを識別できることになる。
ここで、パターン14の小部分48’が、一対の電極46間の間隙48と対向するように配置される。そして、交流検流計39によって電流が「0」または実質的に「0」になるように可変静電容量部37の静電容量C3の静電容量C3、C3を選択する。これにより、パターン14の小部分48’の静電容量Cxに一意対応する静電容量C3またはC3が記録された情報として得られる。
【0039】
制御部40は、読取部22の制御全般を司るものである。制御部40は、演算部51と、記憶部52と、演算部51及び記憶部52が接続された接続部53とを備える。
【0040】
演算部51は、CPU(central processing unit)からなる。
【0041】
記憶部52は、RAM(random access memory)、ROM(read only memory)及びHDD(hard disk drive)等からなる。記憶部52には、記録情報読取プログラム等のプログラムや種々の数値情報が記憶されている。また、記憶部52には、読み取られた記録情報が一時的に記憶される。
【0042】
接続部53は、検出信号を受信可能にカード検出部31と接続されている。これにより、制御部40は、電圧印加部32の上方に情報記録カード2が載置されていることを検出信号によって判定する。
【0043】
接続部53は、指示信号を送信可能に各走査部33、34と接続されている。これにより、制御部40は、指示信号を各走査部33、34へと送信して、何れかの電極46と静電容量部35、36との接続を制御する。
【0044】
接続部53は、指示信号を送信可能に可変静電容量部37と接続されている。これにより、制御部40は、指示信号を送信して、可変静電容量部37の静電容量C3を少なくとも2段階の静電容量C3、C3の何れかに切り替える。接続部53は、指示信号を送信可能に交流電源38と接続されている。これにより、制御部40は、指示信号を送信して、交流電源38のオン・オフを切り替える。接続部53は、電流値信号を受信可能に交流検流計39と接続されている。これにより、制御部40は、交流検流計39に流れる電流に対応する電流値信号を受信する。更に、制御部40は、交流検流計39に流れる電流が「0」または実質的に「0」の場合、その時の静電容量C3またはC3をパターン14の小部分48’の導電性材料の密度に対応する情報として、記憶部52に記憶する。
【0045】
(小部分48’の導電性材料の密度と可変静電容量部の静電容量との関係の説明)
ここで、パターン14の導電性材料の密度d1、d2と、可変静電容量部37の静電容量C3、C3との関係について、図面を参照して説明する。図6は、導電性材料の密度がd1であるパターン14の小部分48’と電極46との概略の縦断面図である。図7(a)及び図7(b)は、図6の状態の回路図である。図9は、導電性材料の密度がd2であるパターン14の小部分48’と電極46との概略の縦断面図である。図10は、図9の状態の回路図である。図11は、パターンを連続して読み取った際の、パターンと静電容量の関係を説明する図である。
【0046】
図6、図7(a)、図7(b)を参照して、パターン14(小部分48’の導電性材料の密度がd1)の場合について説明する。情報記録カード2が記録情報読取装置3の上に載置されると、図6に示すように、パターン14が、絶縁膜47を介して、電極46n、mと電極46n+1、mとの間に配置されることになる。ここで、パターン14の小部分48’は、導電性インクが塗布されている状態であるから、その電気的状態は、図7(a)に示すように、多数の導電性粒子49が2つの極板間に分布したキャパシタ、即ち、図7(b)に示す誘電体を挟んだキャパシタとなる。ここで、多数の導電性粒子49は、一般に電気的に互いに接続していないので、それぞれは分極能率の非常に大きな誘電体として扱ってよい。従って、電極46n、mと電極46n+1、mとの間の静電容量Cxは、極板間の導電性粒子が存在しない状態よりも非常に大きくなる。静電容量Cxは、第1静電容量部35の静電容量C1と第2静電容量部36の静電容量C2との積を可変静電容量部37の静電容量C3で割った値と等しい。これにより、可変静電容量部37を静電容量C3とすることにより、交流検流計39を流れる電流が「0」または実質的に「0」となる。
【0047】
このとき、一般的ではないが、仮に多数の導電性粒子49が電気的に互いに接続している場合を考えると、その電気的状態は 図8(a)に示すように、導電性粒子49が集合した連続導体49’をはさんだキャパシタ、すなわち図8(b) に示すような2つのキャパシタが直列に接続された状態となる。この分割された2つのキャパシタの極板間隔の和は、極板間に導電性粒子が存在しない状態のキャパシタの極板間隔よりも非常に小さくなる。これによって分割された2つのキャパシタの合成静電容量は、分割される前のキャパシタの静電容量にくらべ、非常に小さくなる。この合成静電容量に対応する可変静電容量部37の静電容量をC31’とすると、この状態での電極46n、mと電極46n+1、mとの間の静電容量は、第1静電容量部35の静電容量C1と第2静電容量部36の静電容量C2との積を可変静電容量部37の静電容量C31’で割ったものと等しい。これにより、可変静電容量部37を静電容量C31’とすることにより、交流検流計39を流れる電流が「0」または実質的に「0」となる。
【0048】
次に、図9及び図10を参照して、パターン14(小部分48’の導電性材料の密度がd2)の場合について説明する。情報記録カード2が記録情報読取装置3の上に載置されると、図9に示すように、パターン14が、絶縁膜47を介して、電極46n、mと電極46n+1、mとの間に配置されることになる。ここでパターン14の小部分48’は、導電性インクが塗布されていない状態であるから、その電気的状態は、図10に示すように、2つの極板が絶縁体で隔てられた1つのキャパシタとなる。従って、電極46n、mと電極46n+1、mとの間の静電容量は、極板間に導電性粒子が存在するよりも非常に小さくなる。この状態での電極46n、mと電極46n+1、mとの間の静電容量は、第1静電容量部35の静電容量C1と第2静電容量部36の静電容量C2との積を可変静電容量部37の静電容量C3で割った値と等しい。これにより、可変静電容量部37を静電容量C3とすることにより、交流検流計39を流れる電流が「0」または実質的に「0」となる。
【0049】
図6〜図10いずれの場合でも、そのときの交流検流計39を流れる電流を「0」または実質的に「0」にするような可変静電容量部37の静電容量C3をあらかじめ調べてデータベース化しておき、静電容量Cxの検出時には静電容量C3の選択肢C3、C3、…をそのデータベースの中から選べばよい。
【0050】
次に、図11を参照して、パターン14の連続する小部分48’を読み取った場合について説明する。図11に示すように、パターン14を連続して読み取ると、各小部分48’に対応した何れかの静電容量C3、C3が、連続して検出される。これらの静電容量C3、C3が、パターン14に記憶された情報として、制御部40の記憶部52に記憶される。
【0051】
(記録情報システムの動作説明)
次に、上述した記録情報読取システム1の動作について説明する。図12は、制御部によって処理される記録情報読取プログラムを説明するフローチャートである。尚、図12において「S」の後の数字は、ステップ番号を示す。
【0052】
まず、制御部40は、カード検出部31からの検出信号に基づいて、情報記録カード2が検出されたか否かを判定する(S1)。制御部40は、情報記録カード2が検出されるまでステップS1を繰り返す(S1:No)。
【0053】
ここで、所有者が、情報記録カード2を記録情報読取装置3の読取部22の上面に載置する。これにより、カード検出部31は、情報記録カード2を検出して、検出信号を制御部40へと送信する。この結果、制御部40は、情報記録カード2を検出したと判定して(S1:Yes)、初期設定を実行する。(S2)。具体的には、制御部40は、電極46の位置番号となる「n」、「m」をそれぞれ「1」に設定する。
【0054】
次に、制御部40は、交流電源38をオンに切り替える(S3)。
【0055】
次に、制御部40は、第1走査部33を介して、電極46n、mと第1静電容量部35の一端部とを接続する(S4)。この後、制御部40は、第2走査部34を介して、電極46n+1、mと第2静電容量部36の一端部とを接続する(S5)。これにより、交流電源38の交流電圧が、パターン14と対向するように配置された電極46n、mと電極46n+1、mとの間に印加される。
【0056】
次に、制御部40は、可変静電容量部37の静電容量に対応する「r」を「1」に設定する(S6)。
【0057】
次に、制御部40は、可変静電容量部37の静電容量C3を静電容量C3に設定する(S7)。
【0058】
次に、制御部40は、交流検流計39から送信された電流値が「0」か否かを判定する(S8)。
【0059】
次に、制御部40は、交流検流計39から送信された電流値が「0」でないと判定すると(S8:No)、静電容量に対応する「r」を「+1」インクリメントする(S9)。尚、読取エラーに備えて、ステップS8とステップS9との間に、「r」が最大値「2」か否かを判定させてもよい。
【0060】
次に、制御部40は、電流値が「0」となるまで、ステップS6、S7を繰り返す。この後、制御部40は、電流値が「0」と判定すると(S8:Yes)、その時の可変静電容量部37の静電容量C3をパターン14の情報として検出する。そして、制御部40は、パターン14の座標情報と、パターン14の情報である可変静電容量部37の静電容量C3を関連付けて、記憶部52に記憶させる(S10)。
【0061】
次に、制御部40は、電極46のX方向の位置を示す「n」が「N−1」か否かを判定する(S10)。
【0062】
制御部40は、「n」が「N−1」でないと判定すると(S11:No)、「n」を「+1」インクリメントする(S12)。この後、他のX方向の電極46についても順次ステップS4〜S11の処理を実行する。
【0063】
次に、制御部40は、「n」が「N−1」であると判定すると(S11:Yes)、「n」を「1」に設定する(S12)。尚、「n」が「N−1」であるとは、第2走査部34と接続される電極46n+1、mが、+X方向の端の電極となったことを意味する。
【0064】
次に、制御部40は、「m」が「M−1」であるか否かを判定する(S14)。
【0065】
制御部40は、「m」が「M−1」でないと判定すると(S14:No)、「m」を「+1」インクリメントする(S16)。この後、他のY方向の電極46についても、順次ステップS4〜S15の処理を実行する。
【0066】
次に、制御部40は、「m」が「M−1」であると判定すると(S14:Yes)、ステップS16の処理を実行する。尚、「m」が「M」であるとは、走査部33、34と接続される電極46が、+Y方向の端の電極となったことを意味する。以上により、隣接する一対の電極46n、mと電極46n+1、m、または電極46n、mと電極46n、m+1の全ての組み合わせに交流電圧が順次印加され、一対の電極46n、mと電極46n+1、m、または電極46n、mと電極46n、m+1の全ての組み合わせにおける一対の電極間の静電容量が検出されたことになる。
【0067】
次に、制御部40は、記録された情報記録部12の情報に基づいて種々の処理を実行する(S16)。例えば、既に記憶部52に記録されている照合用の情報と今回読み取った情報記録カード2の情報とを照合する。この結果、正規の情報記録カード2であると判定すると、ドアのロックを外す等の処理が実行される。
【0068】
これにより、記録情報読取プログラムが終了する。
【0069】
(記録情報読取システムの効果)
次に、上述した第1実施形態による記録情報読取システム1の効果について説明する。
【0070】
上述した第1実施形態の記録情報読取装置3では、パターン14を形成する際の自由度が高く、パターン14内の導電性材料が電気的に互いに接続されていても、接続されていなくてもよいので、紙等にパターン14を印刷することによって容易に形成できる。一方、パターンを互いに電気的に接続しなければならない場合、紙等の吸湿性の高い基材にパターンを印刷すると、導電性インク等に含まれる導電性粒子がばらばらになる。このため、パターンを接続するためには、プラスチック等の基材を用いたり、非吸収性の紙にフレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等の厚膜塗工が可能な印刷方法を適用しなければならない。しかし、デジタル印刷で一般に用いられるインクジェット印刷では、インクジェットヘッドで吐出させるための低粘度化させる必要がある。更に、この場合、多数回の重ね印刷をした後に、高温で一定時間加熱焼成して導電性粒子を結合させなければならず、現実的ではなく、第1実施形態のように容易にパターン14を印刷によって形成できない。
【0071】
また、記録情報読取装置3では、パターン14の小部分48’の静電容量を情報として読み取る。ここで、パターン14の小部分48’の静電容量は、渦電流等に比べて、比較的大きい状態で読み取ることができる。これにより、パターン14の小部分48’の静電容量を少なくとも2つの静電容量C3によって構成することができる。静電容量を多値で検知するようにすれば、1個の小部分48’の情報量を増加させることができる。
【0072】
また、記録情報読取装置3では、電極46がマトリックス状に配置されている。そして、制御部40は、隣接する一対の電極46n、mと電極46n+1、m、または電極46n、mと電極46n、m+1の全ての組み合わせに交流電圧を順次印加して、一対の電極46n、mと電極46n+1、m、または電極46n、mと電極46n、m+1の全ての組み合わせにおける一対の電極間の静電容量を順次検出する。これにより、記録情報読取装置3は、情報記録カード2を移動させることなく、また、装置を複雑化させることなく、マトリックス状に配置された情報記録カード2のパターン14の多数の小部分48’を迅速且つ容易に読み取ることができる。また、情報記録カード2に記憶できる情報を増加させることができる。
【0073】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。以下、上記実施形態を一部変更した変更形態について説明する。
【0074】
上述した実施形態での電極の個数は、適宜変更可能である。尚、マトリックス状に配置する場合は、例えば、電極の数は4個以上である。
【0075】
上述した実施形態では、電極をマトリックス状に配置したが、線状の電極を一列に配置してもよい。また、上述の実施形態では、パターンをマトリックス状に配置したが、線状のパターンを一列に配置してもよい。
【0076】
また、上述した実施形態では、電極をマトリックス状に固定したが、一対の電極をモータ等によって移動可能に構成してもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、交流電圧を印加する2つの電極を、カード面の同じ側に配置したが、カード面の対向する位置に配置し、2つの電極でカードを挟むようにしてもよい。交流電圧を印加する電極対をマトリックス状に配置する場合は、それぞれの電極は、カードを隔てて対となる逆電位の電極と対称となる位置に配置することができる。
【0078】
上述した実施形態では、情報記録カードとして、身分証明用のカードを例示したが、他の種々の情報記録カード(媒体)を採用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 記録情報読取システム
2 情報記録カード
3 記録情報読取装置
11 基材
12 情報記録部
13 画像
14、14〜14 パターン
21 筐体
22 読取部
31 カード検出部
32 電圧印加部
33 各走査部
33 第1走査部
34 第2走査部
35 第1静電容量部
36 第2静電容量部
37 可変静電容量部
38 交流電源
39 交流検流計
40 制御部
45 基板
46n、m 電極
47 絶縁膜
48 間隙
48’ 小部分
51 演算部
52 記憶部
53 接続部
55 ホイートストーンブリッジ回路
C1〜C3 静電容量
C3、C3 静電容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録カードに記録された導電性材料のパターンの情報を読み取るための記録情報読取装置において、
前記パターンと対向するように、且つ、互いに間隔を開けて配置された少なくとも一対の電極と、
前記少なくとも一対の電極間の静電容量を検出する静電容量検出手段と、
前記静電容量検出手段を制御するとともに、前記静電容量または前記静電容量に対応した情報をパターンの情報として記憶する制御部とを備えることを特徴とする記録情報読取装置。
【請求項2】
前記電極の数は、4個以上の複数であって、
前記複数の電極は、第1の方向と第2の方向とに周期的に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の記録情報読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の方向と前記第2の方向とに隣接する一対の電極の全ての組み合わせに順次交流電圧を印加して、交流電圧が印加された一対の電極間の静電容量を順次検出することを特徴とする請求項2に記載の記録情報読取装置。
【請求項4】
情報記録媒体に記録されたパターンの情報を読み取るための記録情報の読取方法において、
前記パターンと対向するように、且つ、互いに間隔を開けて配置された一対の電極の間に交流電圧を印加するステップと、
前記パターンの情報として前記電極間の静電容量を検出するステップとを備えることを特徴とする記録情報の読取方法。
【請求項5】
前記電極の数は、4個以上の複数であって、
前記複数の電極は、第1の方向と第2の方向とに周期的に配置されており、
前記交流電圧を印加するステップと、前記静電容量を検出するステップは、前記複数の電極における第1の方向と第2の方向に隣接する一対の電極のすべての組み合わせにおいて、順次おこなわれることを特徴とする請求項4に記載の記録情報の読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−154453(P2011−154453A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14302(P2010−14302)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】