説明

記録方法

【課題】従来の記録方法では、画像の品位を向上させることが困難である。
【解決手段】記録媒体に描かれた画像を構成する塗料である画像塗料に、光透過性を有する塗料である透光塗料を重ねて塗布する塗布工程S22と、塗布工程S22の後に、前記透光塗料を加熱及び加湿する加熱加湿工程S24と、を含む、ことを特徴とする記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
液状体を液滴として吐出することができる液滴吐出装置の1つとして、インクジェット装置が知られている。インクジェット装置では、インクなどの液状体を吐出ヘッドから液滴として吐出することができる。このようなインクジェット装置を利用することによって、種々の画像を記録することができる。
従来、インクジェット装置などの液滴吐出装置を用いて記録した画像にクリアインクを重畳させる記録方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−263049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された記録方法によれば、画像の光沢感が高められる。
ところで、液滴吐出装置では、記録を行う対象である記録媒体は、紙に限られない。記録媒体としては、液滴として吐出された液状体が付着することによって画像を形成することができれば、布や不織布などの繊維シート、プラスチックや樹脂、ガラスなどの基板等の種々の材質及び形態が適用され得る。
【0005】
液状体の組成と記録媒体の材質や形態との組み合わせにより、液状体が記録媒体に浸透しにくい場合がある。このような場合、記録媒体に付着した液状体は、記録媒体の表面から突出した状態で固化する。階調や色を表現する場合には、複数の液状体を重畳させることがある。これらのことに起因して、液状体が記録媒体に浸透しにくい場合において、画像に凹凸が発生することがある。画像に発生する凹凸は、意図しないスジ状の模様として視認されることがある。このため、画像に発生する凹凸は、画像の品位を低下させやすい。
【0006】
画像に凹凸が発生している状態において、画像にクリアインクを重畳させると、クリアインクに画像の凹凸が反映しやすい。このため、画像にクリアインクを重畳させても、スジ状の模様が視認されることがある。
つまり、従来の記録方法では、画像の品位を向上させることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0008】
[適用例1]記録媒体に描かれた画像を構成する塗料である画像塗料に、光透過性を有する塗料である透光塗料を重ねて塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に、前記透光塗料を加熱及び加湿する加熱加湿工程と、を含む、ことを特徴とする記録方法。
【0009】
この適用例の記録方法は、塗布工程と、加熱加湿工程と、を含む。
塗布工程では、画像塗料に透光塗料を重ねて塗布する。画像塗料は、記録媒体に描かれた画像を構成する塗料である。透光塗料は、光透過性を有する塗料である。
塗布工程の後に、加熱加湿工程では、透光塗料を加熱及び加湿する。
上記により、例えば、画像塗料の表面に凹凸が発生していても、透光塗料によって画像塗料の凹凸を緩和しやすくすることができる。これにより、画像塗料の凹凸による画像品位の低下を抑えやすくすることができる。この結果、画像品位を向上させやすくすることができる。
【0010】
[適用例2]上記の記録方法であって、前記加熱加湿工程では、前記透光塗料のガラス転移温度以上であり、前記画像塗料のガラス転移温度よりも低い温度に加熱する、ことを特徴とする記録方法。
【0011】
この適用例では、加熱加湿工程において、透光塗料のガラス転移温度以上で、画像塗料のガラス転移温度よりも低い温度に加熱するので、画像塗料の状態を保ちやすくすることができる。これにより、画像品位を一層向上させやすくすることができる。
【0012】
[適用例3]上記の記録方法であって、前記透光塗料は、光の照射を受けて硬化が促進する光硬化性を有しており、前記加熱加湿工程の前に、前記透光塗料に前記光を照射する光照射工程を有する、ことを特徴とする記録方法。
【0013】
この適用例では、透光塗料は、光の照射を受けて硬化が促進する光硬化性を有している。そして、この記録方法は、加熱加湿工程の前に、光照射工程を有している。このため、この記録方法では、塗布された透光塗料の硬化を促進させてから、加熱することができる。これにより、塗布された透光塗料が流れ出ることを抑えやすくすることができる。この結果、画像品位の低下を一層抑えやすくすることができる。
【0014】
[適用例4]上記の記録方法であって、前記加熱加湿工程において、加熱されたスチームを前記透光塗料にかけることによって、加熱及び加湿する、ことを特徴とする記録方法。
【0015】
この適用例では、加熱加湿工程において、加熱されたスチームを透光塗料にかけることによって、加熱及び加湿するので、加熱及び加湿をまとめて実施しやすくすることができる。
【0016】
[適用例5]上記の記録方法であって、前記塗布工程では、インクジェット法で前記透光塗料を塗布する、ことを特徴とする記録方法。
【0017】
この適用例では、インクジェット法で透光塗料を塗布するので、記録媒体の任意の箇所に任意の量の透光塗料を塗布しやすくすることができる。これにより、透光塗料の量を軽減しやすくすることができる。
【0018】
[適用例6]上記の記録方法であって、前記塗布工程の前に、前記記録媒体に前記画像塗料で前記画像をインクジェット法で形成する画像形成工程を有する、ことを特徴とする記録方法。
【0019】
この適用例では、塗布工程の前に、記録媒体に画像塗料で画像をインクジェット法で形成する画像形成工程を有するので、画像形成工程で用いた描画データを塗布工程でも利用しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態におけるキャリッジを図1中のA視方向に見たときの正面図。
【図3】本実施形態におけるヘッドユニットの底面図。
【図4】図2中のB−B線における断面図。
【図5】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示すブロック図。
【図6】本実施形態における描画処理の流れを示す図。
【図7】本実施形態における記録方法の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照しながら、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
【0022】
実施形態における液滴吐出装置1は、概略の構成を示す斜視図である図1に示すように、ワーク搬送装置3と、キャリッジ7と、キャリッジ搬送装置9と、メンテナンス装置11と、とを有している。
キャリッジ7には、ヘッドユニット13と、2個の照射装置15と、が設けられている。
液滴吐出装置1では、ヘッドユニット13と基板などのワークWとの平面視での相対位置を変化させつつ、ヘッドユニット13から液状体を液滴として吐出させることによって、ワークWに液状体で所望のパターンを描画することができる。なお、図中のY方向はワークWの移動方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0023】
このような液滴吐出装置1は、例えば、液晶表示パネル等に用いられるカラーフィルターの製造や、有機EL装置の製造などに適用され得る。
赤、緑及び青の3色のフィルターエレメントを有するカラーフィルターの場合、液滴吐出装置1は、例えば、基板に赤、緑及び青の各着色層を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各着色層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれのフィルターエレメントのパターンが描画される。
また、有機EL装置の製造では、例えば、赤、緑及び青の画素ごとに、各色に対応する機能層(有機層)を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各色の機能層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれの機能層のパターンが描画される。
【0024】
ここで、液滴吐出装置1の各構成について、詳細を説明する。
ワーク搬送装置3は、図1に示すように、定盤21と、ガイドレール23aと、ガイドレール23bと、ワークテーブル25と、テーブル位置検出装置27と、を有している。
定盤21は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、Y方向に沿って延びるように据えられている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、定盤21の上面21a上に配設されている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール23aとガイドレール23bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
【0025】
ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bを挟んで定盤21の上面21aに対向した状態で設けられている。ワークテーブル25は、定盤21から浮いた状態でガイドレール23a及びガイドレール23b上に載置されている。ワークテーブル25は、ワークWが載置される面である載置面25aを有している。載置面25aは、定盤21側とは反対側(上側)に向けられている。ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bによってY方向に沿って案内され、定盤21上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
テーブル位置検出装置27は、定盤21の上面21aに設けられており、Y方向に延在している。テーブル位置検出装置27は、ガイドレール23aとガイドレール23bとの間に設けられている。テーブル位置検出装置27は、ワークテーブル25のY方向における位置を検出する。
【0026】
ワークテーブル25は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、ワークテーブル25をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するワーク搬送モーターが採用されている。ワーク搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
ワーク搬送モーターからの動力は、移動機構を介してワークテーブル25に伝達される。これにより、ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、ワーク搬送装置3は、ワークテーブル25の載置面25aに載置されたワークWを、Y方向に沿って往復移動させることができる。
【0027】
ヘッドユニット13は、キャリッジ7を図1中のA視方向に見たときの正面図である図2に示すように、ヘッドプレート31と、2個の吐出ヘッド33と、を有している。2個の吐出ヘッド33は、X方向に並んでいる。なお、吐出ヘッド33の個数は、2個に限定されず、1個以上の任意の個数が採用され得る。また、以下においては、2つの吐出ヘッド33のそれぞれを識別する場合に、吐出ヘッド33a及び吐出ヘッド33bという表記が用いられる。
吐出ヘッド33は、底面図である図3に示すように、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図3では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
【0028】
各吐出ヘッド33において、複数のノズル37は、Y方向に沿って配列する2本のノズル列39を構成している。2本のノズル列39は、X方向に互いに隙間をあけた状態で並んでいる。各ノズル列39において、複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のノズル間隔Pで形成されている。各吐出ヘッド33において、2本のノズル列39は、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。
ヘッドユニット13では、2個の吐出ヘッド33のうちの一方におけるノズル列39と、他方の吐出ヘッド33におけるノズル列39とが、互いにY方向にP/4の距離だけずれている。これにより、本実施形態では、Y方向におけるノズル37の密度が高められている。
【0029】
2個の照射装置15は、図2に示すように、それぞれ、X方向にヘッドユニット13を挟んで互いに対峙する位置に設けられている。以下において、2個の照射装置15のそれぞれを識別する場合に、照射装置15a及び照射装置15bという表記が用いられる。
照射装置15aは、X方向において、吐出ヘッド33aの吐出ヘッド33b側とは反対側に位置している。また、照射装置15bは、X方向において、吐出ヘッド33bの吐出ヘッド33a側とは反対側に位置している。
照射装置15a及び照射装置15bは、それぞれ、紫外光41を発する光源43を有している。光源43からの紫外光41は、吐出ヘッド33から吐出された液状体45の硬化を促進させる。液状体45は、紫外光41の照射を受けると、硬化が促進する。
光源43としては、例えば、LED、LD、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の光源43が採用され得る。
【0030】
吐出ヘッド33は、図2中のB−B線における断面図である図4に示すように、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。
ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。
キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから機能液53が供給される。
【0031】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。
複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸張する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小する。このとき、キャビティー51内の機能液53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、機能液53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。インクジェット法は、塗布法の1つである。
【0032】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図2に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。
キャリッジ7は、図2に示すように、ヘッドユニット13を支持している。ここで、ヘッドユニット13は、ノズル面35がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ7に支持されている。
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、機能液53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0033】
本実施形態では、機能液53として、光の照射を受けることによって硬化が促進する液状体45が採用されている。本実施形態では、液状体45の硬化を促進させる光として紫外光41(図2)が採用されている。
液状体45は、樹脂材料、光重合開始剤及び溶媒を、成分として含んでいる。これらの成分に、顔料や染料等の色素や、親液性や撥液性等の表面改質材料などの機能性材料を添加することによって固有の機能を有する液状体45を生成することができる。顔料や染料等の色素を含有する液状体45は、例えば、ワークWに描画する画像を形成するための機能液53として採用され得る。以下において、ワークWに描画する画像を形成するための機能液53としての液状体45は、画像塗料と呼ばれる。
【0034】
また、液状体45の成分としての樹脂材料に、例えば、アクリル系の樹脂材料などの光透過性を有する樹脂材料を採用することによって、光透過性を有する機能液53を構成することができる。このような光透過性を有する機能液53は、例えば、クリアインクとしての用途が考えられる。以下において、光透過性を有する機能液53は、透光塗料と呼ばれる。
液状体45における樹脂材料は、樹脂膜を形成する材料である。このような樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによってポリマーとなる材料であれば特に限定されない。樹脂材料としては、粘性が小さいものが好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。さらに、樹脂材料としては、モノマーの形態であることが一層好ましい。
光重合開始剤は、ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤である。光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが採用され得る。
溶媒は、樹脂材料の粘度を調整するためのものである。
【0035】
キャリッジ搬送装置9は、図1に示すように、架台61と、ガイドレール63と、キャリッジ位置検出装置65と、を有している。
架台61は、X方向に延在しており、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11をX方向にまたいでいる。架台61は、ワークテーブル25の定盤21側とは反対側で、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11のそれぞれに対向している。架台61は、支柱67aと支柱67bとによって支持されている。支柱67a及び支柱67bは、定盤21を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。支柱67a及び支柱67bは、それぞれ、ワークテーブル25よりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台61とワークテーブル25との間、及び架台61とメンテナンス装置11との間には、それぞれ隙間が保たれている。
【0036】
ガイドレール63は、架台61の定盤21側に設けられている。ガイドレール63は、X方向に沿って延在しており、架台61のX方向における幅にわたって設けられている。
前述したキャリッジ7は、ガイドレール63に支持されている。キャリッジ7がガイドレール63に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35は、Z方向においてワークテーブル25側に向いている。キャリッジ7は、ガイドレール63によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール63に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ7がワークテーブル25に重なっている状態において、ノズル面35とワークテーブル25の載置面25aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。
キャリッジ位置検出装置65は、架台61とキャリッジ7との間に設けられており、X方向に延在している。キャリッジ位置検出装置65は、キャリッジ7のX方向における位置を検出する。
【0037】
キャリッジ7は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、キャリッジ7をX方向に沿って移動させるための動力源として、後述するキャリッジ搬送モーターが採用されている。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ7に伝達される。これにより、キャリッジ7は、ガイドレール63に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置9は、キャリッジ7に支持されたヘッドユニット13を、X方向に沿って往復移動させることができる。
【0038】
メンテナンス装置11は、図1に示すように、定盤71と、ガイドレール73aと、ガイドレール73bと、保守テーブル75と、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を有している。
定盤71は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、X方向に支柱67aを挟んで定盤21と対峙する位置に設けられている。
ガイドレール73a及びガイドレール73bは、定盤71の上面71a上に配設されている。ガイドレール73a及びガイドレール73bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール73aとガイドレール73bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bを挟んで定盤71の上面71aに対向した状態で設けられている。保守テーブル75は、定盤71から浮いた状態でガイドレール73a及びガイドレール73b上に載置されている。
【0039】
保守テーブル75には、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットが載置される。本実施形態では、保守ユニットは、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を含んでいる。
保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bによってY方向に沿って案内され、定盤71上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
フラッシングユニット77は、保守テーブル75の定盤71側とは反対側に設けられている。
ここで、ワークWへのパターンの描画とは無関係に、吐出ヘッド33から液状体を吐出させる動作は、フラッシング動作と呼ばれる。フラッシング動作には、例えば、ノズル37内に滞留する液状体がノズル37内で固化してしまうことを予防する効果がある。フラッシングユニット77は、フラッシング動作のときに、吐出ヘッド33から吐出される液状体を受ける装置である。
【0040】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をする装置である。吐出ヘッド33から吐出される液状体では、液体成分が蒸発することがある。一般的に、液状体における液体成分が蒸発すると、液状体の粘度が高くなる。吐出ヘッド33内の液状体の粘度が高くなると、ノズル37における液滴55を吐出する性能(以下、吐出性能と呼ぶ)が低下することがある。吐出性能の低下としては、例えば、ノズル37から吐出された液滴55の進行方向が曲がってしまったり(飛行曲がり)、ノズル37から液滴55が吐出されなかったり(不吐出)することなどが挙げられる。なお、キャッピングユニット76で吐出ヘッド33に蓋をする動作は、キャッピング動作と呼ばれる。
【0041】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をすることで、液状体における液体成分がノズルから蒸発することを低く抑える。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。
ワイピングユニット79は、吐出ヘッド33のノズル面35を拭く装置である。液滴吐出装置1では、ノズル面35に液状体が付着することがある。ノズル面35に液状体が付着すると、吐出ヘッド33における吐出性能が低下することがある。ワイピングユニット79は、ノズル面35を拭くことによって、ノズル面35に付着している液状体を払拭する。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。なお、ワイピングユニット79でノズル面35を拭く動作は、ワイピング動作と呼ばれる。
【0042】
保守テーブル75は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、保守テーブル75をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するテーブル搬送モーターが採用されている。テーブル搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
テーブル搬送モーターからの動力は、移動機構を介して保守テーブル75に伝達される。これにより、保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。
つまり、メンテナンス装置11は、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットを、Y方向に沿って往復移動させることができる。これにより、平面視で吐出ヘッド33がメンテナンス装置11に重なっている状態において、吐出ヘッド33をキャッピングユニット76、フラッシングユニット77及びワイピングユニット79のそれぞれに対向させることができる。
【0043】
液滴吐出装置1は、図5に示すように、上記の各構成の動作を制御する制御部111を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)113と、駆動制御部115と、メモリー部117と、を有している。駆動制御部115及びメモリー部117は、バス119を介してCPU113に接続されている。
また、液滴吐出装置1は、キャリッジ搬送モーター121と、ワーク搬送モーター123と、テーブル搬送モーター125と、入力装置129と、表示装置131と、を有している。
キャリッジ搬送モーター121、ワーク搬送モーター123、及びテーブル搬送モーター125は、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、入力装置129及び表示装置131も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0044】
キャリッジ搬送モーター121は、キャリッジ7を駆動するための動力を発生させる。ワーク搬送モーター123は、ワークテーブル25を駆動するための動力を発生させる。テーブル搬送モーター125は、保守テーブル75を駆動するための動力を発生させる。入力装置129は、各種の加工条件を入力する装置である。表示装置131は、加工条件や、作業状況を表示する装置である。液滴吐出装置1を操作するオペレーターは、表示装置131に表示される情報を確認しながら、入力装置129を介して種々の情報を入力することができる。
なお、キャリッジ位置検出装置65、テーブル位置検出装置27及び2個の吐出ヘッド33も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、2個の照射装置15、及びメンテナンス装置11も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0045】
CPU113は、プロセッサーとして各種の演算処理を行う。駆動制御部115は、各構成の駆動を制御する。メモリー部117は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read-Only Memory)などを含んでいる。メモリー部117には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト135を記憶する領域や、各種のデータを一時的に展開する領域であるデータ展開部137などが設定されている。データ展開部137に展開されるデータとしては、例えば、描画すべきパターンが示される描画データや、描画処理等のプログラムデータなどが挙げられる。
駆動制御部115は、モーター制御部141と、位置検出制御部143と、吐出制御部145と、照射制御部147と、保守制御部149と、表示制御部151と、を有している。
【0046】
モーター制御部141は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ搬送モーター121の駆動と、ワーク搬送モーター123の駆動と、テーブル搬送モーター125の駆動とを、個別に制御する。
位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置65と、テーブル位置検出装置27とを、個別に制御する。
位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置65にキャリッジ7のX方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
また、位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、テーブル位置検出装置27にワークテーブル25のY方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
【0047】
吐出制御部145は、CPU113からの指令に基づいて、2個の吐出ヘッド33の駆動を個別に制御する。
照射制御部147は、CPU113からの指令に基づいて、照射装置15a及び照射装置15bのそれぞれにおける光源43の発光状態を個別に制御する。
保守制御部149は、CPU113からの指令に基づいて、メンテナンス装置11におけるキャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットの駆動を個別に制御する。
表示制御部151は、CPU113からの指令に基づいて、表示装置131の駆動を制御する。
【0048】
ここで、液滴吐出装置1における描画処理について説明する。
液滴吐出装置1では、制御部111が入力装置129から入出力インターフェース133及びバス119を介して描画データを受け取ると、CPU113によって図6に示す描画処理が開始される。
ここで、描画データは、機能液53(液状体)でワークWに描画すべきパターンを指示するものであり、描画すべきパターンがビットマップ状に表現されている。ワークWへのパターンの描画は、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に往復移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を所定周期で吐出させることによって行われる。
【0049】
描画処理では、CPU113は、まず、ステップS1において、キャリッジ搬送指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7を描画エリアの往路開始位置に移動させる。ここで、描画エリアは、図1に示すワークテーブル25によってY方向に沿って描かれる軌跡と、2個の吐出ヘッド33によってX方向に沿って描かれる軌跡とが重なり合う領域である。往路開始位置は、キャリッジ7を往復移動させるときの往路が開始する位置である。本実施形態では、往路開始位置は、X方向において、メンテナンス装置11とワークテーブル25との間に位置している。往路開始位置は、平面視で、ワークテーブル25の外側に位置している。
次いで、ステップS2において、CPU113は、ワーク搬送指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWを描画エリアに移動させる。
【0050】
次いで、ステップS3において、CPU113は、キャリッジ走査指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の往復移動を開始させる。
ここで、キャリッジ7の往復移動では、キャリッジ7は、上述した往路開始位置と復路開始位置との間を往復移動する。つまり、往路開始位置から復路開始位置で折り返して往路開始位置に戻る経路がキャリッジ7の1往復である。このため、本実施形態では、往路開始位置から復路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の往路である。他方で、復路開始位置から往路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の復路である。
なお、復路開始位置は、X方向にワークテーブル25(図1)を挟んで往路開始位置に対峙する位置である。復路開始位置は、平面視で、ワークテーブル25の外側に位置している。このため、往路開始位置と復路開始位置とは、平面視で、ワークテーブル25をX方向に挟んで互いに対峙している。
次いで、ステップS4において、CPU113は、照射装置15aに対する照射指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15aの光源43の駆動を制御して、照射装置15aの光源43を点灯させる。
【0051】
次いで、ステップS5において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、往路での描画が行われる。
次いで、ステップS6において、CPU113は、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS7に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0052】
ステップS7において、CPU113は、照射装置15aに対する停止指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15aの光源43の駆動を制御して、照射装置15aの光源43を消灯させる。
次いで、ステップS8において、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY方向に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
次いで、ステップS9において、CPU113は、照射装置15bに対する照射指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15bの光源43の駆動を制御して、照射装置15bの光源43を点灯させる。
【0053】
次いで、ステップS10において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、復路での描画が行われる。
次いで、ステップS11において、CPU113は、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS12に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0054】
ステップS12において、CPU113は、照射装置15bに対する停止指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15bの光源43の駆動を制御して、照射装置15bの光源43を消灯させる。
次いで、ステップS13において、CPU113は、描画データが終了したか否かを判定する。このとき、描画データが終了した(Yes)と判定されると、処理が終了する。他方で、描画データが終了していない(No)と判定されると、処理がステップS14に移行する。
ステップS14において、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図5)に出力してから、処理をステップS4に移行させる。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY方向に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
【0055】
上述した液滴吐出装置1を用いて、画像塗料及び透光塗料で画像を作成した結果について説明する。
まず、10個のワークWのそれぞれに、画像塗料を用いて、同一の描画データに基づく画像を描画した。なお、画像における濃淡(階調)を表現するために、濃い場所(階調の高い場所)には、淡い場所(階調の低い場所)に比較して、画像塗料を複数層に重ねて描画した。このため、それぞれのワークWに描画した画像には、画像の濃淡に応じて画像塗料の凹凸が発生している。各ワークWにおいて、画像塗料には、紫外光41が照射されている。つまり、各ワークWにおいて、画像塗料は、硬化が促進されている。
【0056】
10個のワークWのうちの7個のワークWには、液滴吐出装置1を用いて、透光塗料で画像をコーティングした。これらの7個のワークWのそれぞれにおいて、透光塗料には、紫外光41が照射されている。つまり、これらの7個のワークWのそれぞれにおいて、透光塗料は、硬化が促進されている。
以下においては、透光塗料で画像をコーティングした7個のワークWのそれぞれに、サンプル1〜サンプル7までの番号が付されている。これにより、これらの7個のワークWのそれぞれが、識別される。
【0057】
10個のワークWのうちの残りの3個のワークWには、それぞれ、画像に湿度を付与してから、液滴吐出装置1を用いて、透光塗料で画像をコーティングした。これらの3個のワークWのそれぞれにおいて、透光塗料には、紫外光41が照射されている。つまり、これらの3個のワークWのそれぞれにおいて、透光塗料は、硬化が促進されている。これらの3個のワークWにおいて、画像への湿度の付与方法は、室温(23℃)の環境下で、水を染み込ませた不織布で画像をこすることによって湿度を付与する方法を採用した。
以下においては、画像に湿度を付与してから、透光塗料で画像をコーティングした3個のワークWのそれぞれに、サンプル8〜サンプル10までの番号が付されている。これにより、これらの3個のワークWのそれぞれが、識別される。
【0058】
ここで、使用した画像塗料のガラス転移温度は、80℃〜100℃であった。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(DSC法)で測定を行った。ガラス転移温度の測定は、画像塗料に紫外光41を照射して、画像塗料が硬化した後に行った。
また、同様に、透光塗料のガラス転移温度を測定した結果、透光塗料のガラス転移温度は、45℃であった。
【0059】
(実施例1)
サンプル1を、相対湿度が85%の湿度環境下で、加熱した。加熱温度を45℃に保った。そして、加熱してから5秒が経過したとき、10秒が経過したとき、60秒が経過したとき、及び300秒が経過したときのそれぞれにおいて、画像の光沢感を評価した。
【0060】
(実施例2)
サンプル2を、相対湿度が85%の湿度環境下で、加熱した。加熱温度を50℃に保った。そして、加熱してから5秒が経過したとき、10秒が経過したとき、60秒が経過したとき、及び300秒が経過したときのそれぞれにおいて、画像の光沢感を評価した。
【0061】
(実施例3)
サンプル3を、相対湿度が85%の湿度環境下で、加熱した。加熱温度を55℃に保った。そして、加熱してから5秒が経過したとき、10秒が経過したとき、60秒が経過したとき、及び300秒が経過したときのそれぞれにおいて、画像の光沢感を評価した。
【0062】
(比較例1)
サンプル4を、相対湿度が85%、且つ温度が25℃の環境下に放置した。そして、放置してから5秒が経過したとき、10秒が経過したとき、60秒が経過したとき、300秒が経過したとき、及び600秒が経過したときのそれぞれにおいて、画像の光沢感を評価した。
【0063】
(比較例2)
サンプル5を、相対湿度が30%の湿度環境下で、加熱した。加熱温度を45℃に保った。そして、加熱してから5秒が経過したとき、10秒が経過したとき、60秒が経過したとき、300秒が経過したとき、及び600秒が経過したときのそれぞれにおいて、画像の光沢感を評価した。
【0064】
(比較例3)
サンプル6を、相対湿度が30%の湿度環境下で、加熱した。加熱温度を50℃に保った。そして、加熱してから5秒が経過したとき、10秒が経過したとき、60秒が経過したとき、300秒が経過したとき、及び600秒が経過したときのそれぞれにおいて、画像の光沢感を評価した。
【0065】
(比較例4)
サンプル7を、相対湿度が30%の湿度環境下で、加熱した。加熱温度を55℃に保った。そして、加熱してから5秒が経過したとき、10秒が経過したとき、60秒が経過したとき、300秒が経過したとき、及び600秒が経過したときのそれぞれにおいて、画像の光沢感を評価した。
【0066】
(比較例5)
サンプル8を、相対湿度が30%の湿度環境下で、加熱した。加熱温度を45℃に保った。そして、加熱してから5秒が経過したとき、10秒が経過したとき、60秒が経過したとき、300秒が経過したとき、及び600秒が経過したときのそれぞれにおいて、画像の光沢感を評価した。
【0067】
(比較例6)
サンプル9を、相対湿度が30%の湿度環境下で、加熱した。加熱温度を50℃に保った。そして、加熱してから5秒が経過したとき、10秒が経過したとき、60秒が経過したとき、300秒が経過したとき、及び600秒が経過したときのそれぞれにおいて、画像の光沢感を評価した。
【0068】
(比較例7)
サンプル10を、相対湿度が30%の湿度環境下で、加熱した。加熱温度を55℃に保った。そして、加熱してから5秒が経過したとき、10秒が経過したとき、60秒が経過したとき、300秒が経過したとき、及び600秒が経過したときのそれぞれにおいて、画像の光沢感を評価した。
【0069】
実施例1〜実施例3、及び、比較例1〜比較例7の結果を下記表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
なお、表1の評価結果において、「○」は、均一で高い光沢感が得られたことを示している。
「△」は、画像の一部分において、光沢感が低いことを示している。
「×」は、画像の大部分において、光沢感が低いことを示している。
表1に示す結果から、透光塗料を、相対湿度が85%の環境下で、透光塗料のガラス転移温度以上の温度に加熱することによって、高い光沢感が得られることが理解される。これは、画像塗料の表面に凹凸が発生していても、透光塗料によって画像塗料の凹凸が緩和されるためであると考えられる。つまり、画像の形成方法(記録方法)において、画像塗料に透光塗料を重ねて塗布(塗布工程)した後に、透光塗料を加熱及び加湿する(加熱加湿工程)ことによって、画像品位を向上させやすくすることができる。
【0072】
画像品位を向上させやすくすることができる記録方法は、図7に示すように、画像形成工程S21と、塗布工程S22と、光照射工程S23と、加熱加湿工程S24と、を有している。
画像形成工程S21では、画像塗料でワークWなどの記録媒体に画像を形成する。
塗布工程S22では、画像塗料に透光塗料を重ねて塗布する。
光照射工程S23では、透光塗料に紫外光41を照射することによって、透光塗料の硬化を促進させる。
加熱加湿工程S24では、透光塗料を加熱及び加湿する。
この記録方法によって、記録媒体における画像品位を向上させやすくすることができる。
【0073】
この記録方法において、加熱加湿工程S24では、画像塗料のガラス転移温度よりも低い温度に加熱することが好ましい。これは、画像塗料の状態を保ちやすくすることができるためである。これにより、画像品位を一層向上させやすくすることができる。
また、透光塗料が光硬化性を有していることが好ましい。これは、加熱加湿工程S24の前に、透光塗料に紫外光41を照射する(光照射工程S23)ことによって、透光塗料の硬化を促進させることができるためである。この結果、画像塗料に重ねて塗布された透光塗料が流れ出ることを抑えやすくすることができる。この結果、画像品位の低下を抑えやすくすることができる。
また、この記録方法において、加熱加湿工程S24では、加熱されたスチームを透光塗料にかけることによって、加熱及び加湿することが好ましい。これは、加熱と加湿とをまとめて実施しやすくすることができるためである。これにより、加熱加湿工程S24にかかる時間を短縮しやすくすることができる。
【0074】
本実施形態では、塗布工程において、透光塗料を塗布する方法として、塗布法の1つであるインクジェット法が採用されている。しかしながら、塗布法は、インクジェット法に限定されず、スピンコート法や、印刷法なども採用され得る。しかしながら、インクジェット法を採用することは、記録媒体の任意の箇所に任意の量の透光塗料を塗布しやすい点で好ましい。
インクジェット法を採用すれば、例えば、画像塗料の表面における凹凸に応じて透光塗料を塗布しやすい。本実施形態では、透光塗料で画像をコーティングする記録方法が採用されている。これに対し、画像塗料の表面における凹凸に応じて透光塗料を塗布する方法を採用すれば、透光塗料の量を軽減しやすくすることができる。
【0075】
画像塗料の表面における凹凸に応じて透光塗料を塗布する方法としては、画像塗料の表面における凹凸のうち凹部に透光塗料を塗布する方法が採用され得る。つまり、画像塗料の表面における凹凸のうちの凹部を透光塗料で埋める方法である。これにより、画像塗料の凹凸を透光塗料で緩和することができる。この方法においても、上述した本実施形態と同様の効果が得られる。
本実施形態では、画像の形成も液滴吐出装置1で行われる。このときの画像形成に用いた描画データを、塗布工程で利用することができる。画像形成に用いた描画データには、画像における濃淡(階調)、すなわち画像の濃淡に応じた画像塗料の凹凸が示されている。つまり、画像形成に用いた描画データから、画像塗料における凹凸のうちの凹部を把握することができる。これにより、画像塗料の表面における凹凸のうちの凹部を透光塗料で埋めることが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1…液滴吐出装置、3…ワーク搬送装置、7…キャリッジ、9…キャリッジ搬送装置、13…ヘッドユニット、15…照射装置、15a,15b…照射装置、25…ワークテーブル、33…吐出ヘッド、33a,33b…吐出ヘッド、35…ノズル面、37…ノズル、39…ノズル列、41…紫外光、43…光源、45…液状体、53…機能液、55…液滴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に描かれた画像を構成する塗料である画像塗料に、光透過性を有する塗料である透光塗料を重ねて塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に、前記透光塗料を加熱及び加湿する加熱加湿工程と、を含む、
ことを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記加熱加湿工程では、前記透光塗料のガラス転移温度以上であり、前記画像塗料のガラス転移温度よりも低い温度に加熱する、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記透光塗料は、光の照射を受けて硬化が促進する光硬化性を有しており、
前記加熱加湿工程の前に、前記透光塗料に前記光を照射する光照射工程を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記加熱加湿工程において、加熱されたスチームを前記透光塗料にかけることによって、加熱及び加湿する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項5】
前記塗布工程では、インクジェット法で前記透光塗料を塗布する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項6】
前記塗布工程の前に、前記記録媒体に前記画像塗料で前記画像をインクジェット法で形成する画像形成工程を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−136270(P2011−136270A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297045(P2009−297045)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】