説明

記録装置、切断装置の情報提示装置および切断装置の情報提示方法

【課題】画像形成装置において、様々な記録媒体の特徴、属性に応じてカッタ刃の消耗を考慮した切断可能な記録媒体の情報を提示することが可能な画像形成装置、情報提示装置および情報提示方法の提供を目的とする。
【解決手段】現在のカッタ刃の摩耗量を推定し、その推定摩耗量に基づいて複数種の記録媒体それぞれに対し、現在のカッタ刃で切断可能であるか否かを判定し、その判定した結果を情報提示手段によって提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換可能なカッタ刃を用いて記録媒体の切断を可能とする切断手段を備えた記録装置、記録装置に設けられる切断装置の情報提示装置、および切断装置の情報提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状に巻き取られた記録媒体を装填するインクジェット記録装置では、記録媒体に画像を記録した後、切断機構により切断し、排紙する。現在知られている切断機構は、主に、カッタ部と駆動部とから構成されており、カッタ部としてはナイフ状の固定刃を用いて記録媒体を押し切るタイプのものと、回転刃を用いて記録媒体を挟み切るタイプのものなどがある。
【0003】
このようなカッタ機構を備えたインクジェット記録装置において、記録媒体の切断は記録物の生産における最終工程として行われる。従って、この最終工程で記録媒体が適正に切断されなかった場合には、いかに高品質な画像が形成されていたとしても、得られる記録物の価値は大幅に低下してしまう可能性がある。また、再度記録動作が必要になれば、生産性の低下、ランニングコストの増大などの問題が生じることにもなる。さらに切断不良は切り屑を発生させることも多く、これが装置の信頼性を低下させる虞もある。
【0004】
そこで、切断不良を防止する技術として、カッタの刃の摩耗による切断不良を未然に防ぐことが提案されている。例えば、特許文献1には、切断時間、切断回数、累積切断時間、負荷電流、温度などのうちいずれか一つを計測し、その計測結果と閾値とを比較して交換の有無や交換の必要性の度合いを判断することが開示されている。さらに、同文献には、判断結果によってカッタの交換が必要であると判断されたときに、表示や警告音など告知を行うことでユーザにカッタの交換を促すと共に、最終段階で記録装置の動作を停止させることが開示されている。
【0005】
また特許文献2は、カッタホルダを駆動するモータの負荷をカッタの切断に伴う切れ味の変化とカッタホルダの摺動負荷とを、モータの負荷が変化することを利用して検出し、カッタホルダが駆動できなくなる前にカッタの交換をユーザに促す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−088384号公報
【特許文献2】特開2009−234176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インクジェット記録装置では、素材、厚さ、坪量などの異なる様々な種類の記録媒体が使用されている。例えば、一般的に使用される紙媒体以外にもフィルムなどからなる記録媒体も使用されている。使用する記録媒体が切断抵抗の大きいもの、あるいは硬いものであった場合には、カッタ刃は紙媒体を使用した場合よりも早く摩耗し、カッタ刃の寿命がより短縮されることがある。切断抵抗の大きい記録媒体の使用においてカッタ刃が摩耗していると切断が適正に行なわれない、あるいは切断不能に陥るといった切断不良が生じる。但し、カッタ刃が多少摩耗していても、使用する記録媒体が軟らかく切断抵抗が小さいものであった場合には適正に切断することができる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示の技術は、記録媒体の種類に拘わりなく、記録動作中に計測された計測値が予め定めた閾値を超えた場合には交換の警告を促すと共に、記録装置の動作を停止する構成となっている。このため、他の記録媒体であれば切断可能な摩耗状態にあるカッタ刃であっても、現在装着されている記録媒体が切断できなければ、ユーザは寿命に達したと判断してしまい新たカッタ刃と交換しているのが通例である。つまり、従来の記録装置ではカッタ刃の寿命が有効に使われておらず、これがランニングコストの増大を招く要因の一つとなっている。
【0009】
本発明は、記録可能な複数種の記録媒体の中で切断可能あるいは切断不可となる記録媒体の情報をカッタ刃の摩耗量に応じて提示することにより、カッタ刃の寿命を有効に使うことが可能な記録装置、情報提示装置および情報提示方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は以下に示す構成を備える。
本発明の第1の形態は、複数種の記録媒体の各々に対して記録を可能とする記録手段と、交換可能なカッタ刃を用いて前記記録媒体を切断する切断手段と、を備えた記録装置であって、前記カッタ刃によって記録媒体を切断することが可能な摩耗量の限界値が前記複数の記録媒体それぞれに対応して記憶された記憶手段と、前記切断手段に設けられている現在のカッタ刃の摩耗量を推定する推定手段と、前記複数の記録媒体それぞれに対し、前記推定手段によって推定された摩耗量と前記記憶手段に記憶された各記録媒体に対応する摩耗量の限界値とを比較し、現在のカッタ刃により前記各記録媒体を切断可能であるか否かの判定を行う判定手段と、前記判定手段によって切断可能と判断された記録媒体または切断不可と判断された記録媒体の少なくとも一方を提示する情報提示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の形態は、交換可能なカッタ刃を用いて、記録装置に用いられる複数種の記録媒体の切断を行う切断手段を備えた切断装置の情報提示装置であって、前記カッタ刃により切断可能な摩耗量の限界値が前記複数の記録媒体それぞれに対応して記憶された記憶手段と、前記切断手段に設けられている現在のカッタ刃の摩耗量を推定する推定手段と、前記複数の記録媒体それぞれに対し、前記推定手段によって推定された摩耗量と前記記憶手段に記憶された各記録媒体に対応する摩耗量の限界値とを比較し、現在のカッタ刃により前記各記録媒体を切断可能であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって切断可能と判定された記録媒体または切断不可と判定された記録媒体の少なくとも一方を提示する情報提示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の形態は、交換可能なカッタ刃を用いて、記録装置に用いられる複数種の記録媒体の切断を行う切断手段を備えた切断装置の情報提示方法であって、前記切断手段に設けられている現在のカッタ刃の摩耗量を推定する推定工程と、前記複数の記録媒体それぞれに対し、前記推定手段により推定された摩耗量のカッタ刃で切断可能であるか切断不可であるかを判定する判定工程と、前記判定手段によって切断可能と判定された記録媒体または切断不可と判断された記録媒体の少なくとも一方を情報提示手段によって提示させる情報提示工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数種の記録媒体の中で、現在のカッタ刃により切断可能あるいは切断不可となる記録媒体を確認できるため、一部の記録媒体が切断不能となった場合にも切断可能な記録媒体を用いることが可能となる。このため、カッタ刃の寿命を有効に使うことができるようになり、ランニングコストの低減および不適切な切断の発生を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態における記録装置の制御系を示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるカッタ装置周辺の概略構成を示す図である。
【図3】本実施形態に用いられる複数種の記録媒体の各々に対応して設定されたカッタ刃の摩耗量の閾値およびカッタ部の移動速度を示す図である。
【図4】本実施形態における記録装置に設けられている操作パネルの構成を示す図である。
【図5】記録装置の処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態における記録装置は、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置(以下、単に記録装置と称す)を例に採り説明する。
【0016】
図1は、本実施形態における記録装置のコントローラ(制御手段)113と記録装置内部構成を説明するブロック図である。コントローラ113は、内部バス101、ホストインタフェース(ホストI/F)102、CPU(中央処理装置)104、記憶手段105、エンジンインタフェース(エンジンI/F)106、パネルインタフェース(パネルI/F)107などを備える。またコントローラ113は、外部ネットワーク103と接続された外部機器としてのパーソナルコンピュータ(PC)112から画像を記録するための記録データが送信される。
【0017】
CPU104は、記憶手段105に予め記憶されたプログラムに従い、パネル装置111により設定された記録モード及び外部機器112からのコマンド(命令)に応じて、種々の演算、制御、判定などの処理を行い、記録装置および切断装置の各部の制御を行う。また、CPU104は、記憶手段105に記憶された記録データを解析し、記録ジョブデータ及び記録装置制御コマンドの解析を行う。なお、本実施形態においてCPU104は、後述のカッタ刃の摩耗量を推定する推定手段としての機能を果たす。
【0018】
記憶手段105は、パネル装置111からの記録モードの設定内容や、記録ジョブデータなどを記憶することを可能とする記憶装置により構成される。なお、ここで言う記録モードとは、自動で記録媒体の切断を行うか否かといった切断方式あるいは記録ヘッドのメンテナンスの方式など、記録装置動作に関する形態を意味する。記憶手段105は、HDDのような大容量記憶装置である場合もある。エンジンI/F106は、記録ヘッド110との間でコマンド及びステータスや記録データの通信を行うと共に、カッタ装置(切断手段)109との間でコマンドの通信や負荷計測装置108による計測データの通信を行う制御インタフェイスモジュールである。
【0019】
記録ヘッド110は、インクを吐出する複数のノズルを備えたインクジェット記録ヘッドとなっている。本実施形態では、記録媒体の搬送方向(B方向)と直交する方向(A方向)に延在している。この記録ヘッド110において記録媒体の搬送経路に対向する面には、複数のノズルが記録媒体の幅(記録媒体の搬送方向と直交する方向の長さ)以上の長さの範囲に亘って配列されている。各ノズル内には図外のインクタンクから供給されたインクを記録媒体の搬送経路に向けて吐出させるための吐出エネルギ発生素子が配置されている。吐出エネルギ発生素子は外部装置112からの記録データに基づいて駆動され、連続的に搬送される記録媒体に対してインクを吐出することによって画像を記録する。
【0020】
このように、本実施形態における記録装置は記録ヘッドを固定し、記録媒体のみを移動させるいわゆるフルライン型の記録装置となっている。但し、本発明はフルライン型の記録装置に限定されるものではない。すなわち、記録媒体を間欠的に搬送すると共に、記録ヘッドを記録媒体の搬送方向と交差する方向へと走査させながらインクを吐出させることによって記録を行う、いわゆるシリアル型の記録装置にも本発明は適用可能である。
【0021】
また、本実施形態ではロール状に捲装された記録媒体供給源から連続的に繰り出される記録媒体に記録を行う。カッタ装置(切断装置)109は、ロール状の記録媒体供給源から図2のB方向へと繰り出された帯状の記録媒体に記録ヘッドによって画像を記録した後、所定の位置で切断を行う。カッタ装置109に取り付けてあるカッタ刃には固定刃や回転刃などがある。負荷計測装置108はカッタ装置109が記録媒体を切断する際にカッタ刃にかかる負荷を計測する。
【0022】
パネルI/F107は、パネル装置111とコマンドおよびステータスの通信を行うインタフェースである。パネル装置111は、オペレータによる記録モードの設定および現在の記録装置の状態を表示する表示機能を有する。ホストI/F102は、外部機器112との間で通信を行うインタフェースであり、一般にはネットワーク、USB、1394、セントロニクス仕様のインタフェースなどが用いられる。
【0023】
コントローラ113は、外部機器112から文字情報や画像情報などを受信すると、受信した情報を解析して、記録媒体1ページ分ずつの記録データを記憶手段105に記憶させる。その後、CPU104は記憶手段105から読み出した記録データを記録ヘッド110へと送り、記録ヘッド110は記録データに基づいて記録媒体にインクを吐出する。これにより、記録媒体に画像が記録される。画像が記録されると記録媒体は所定の位置まで搬送され、カッタ装置109によって所定の切断予定位置で切断された後、排出される。
【0024】
図2は前記負荷計測装置108と前記カッタ装置109の概略構成を示す図である。カッタ装置109は、カッタ部200と、駆動モータ210と、駆動モータ210と、伝達機構230とからなる。カッタ部200は交換可能にカッタ刃を保持している。伝達機構230は駆動モータ210の回転軸210aの回転力によって回転する一対のプーリ230a,230bおよびこれらに張架されているベルト230cなどによって構成され、駆動モータ210の回転力によってベルト230cが移動する。このベルト230cにはカッタ部200が固定されており、ベルト230cの移動に伴ってカッタ部200が記録媒体Pの幅方向Aに沿って移動する。カッタ部200の移動によってカッタ刃200aが記録媒体220を切断する。なお、カッタ部200に設けられているカッタ刃200aは固定刃であってもよいし回転刃であってもよい。
【0025】
また、上記負荷計測装置108は、駆動モータ210の回転軸210aに接続されるロータリエンコーダ240で構成される。ロータリエンコーダ240は、回転軸210aの回転数に応じた数のパルスを発する。従って、このパルス数と駆動モータ210の駆動時間とに基づいて回転軸210aの回転速度を計測することができ、この回転軸210aの回転速度によって、カッタ部200の移動速度を計測することができる。負荷計測装置108は、ロータリエンコーダ240からのパルスに基づいて計測された切断速度を、記録媒体Pの切断時にカッタ刃200aが記録媒体Pから受ける負荷に対応した負荷相当量として計測することができる。つまり計測されたカッタ部200の切断速度が低いほど記録媒体切断時の負荷がより大きいと判断することができ、逆にカッタ部200の切断速度が高いほど記録媒体切断時の負荷がより小さいと判断することができる。なお、負荷計測装置はカッタ駆動モータ210の駆動電流を計測し、その駆動電流値に基づいて負荷を計測するものであってもよい。
【0026】
図3は、記録装置で使用可能な複数種の記録媒体の各々に対して予め定められた、カッタ刃200aの摩耗量閾値と負荷パラメータとしての最大切断速度と最小切断速度とを示す図である。図3において、摩耗量閾値は、対応する記録媒体に対して適正な切断が可能となるカッタ刃200aの摩耗量の限界値(限界摩耗量)を指す。また、適正な切断とは、切断箇所の乱れによる記録媒体の価値の低下、切り屑の発生、切断不能などの問題を生じることなく実施される切断を意味する。また、最小切断速度は、カッタ刃200aが摩耗量閾値にある状態で、対応する記録媒体を切断した場合の切断速度を指す。最大切断速度は、カッタ刃200aに摩耗がない状態(未使用のカッタ刃に交換された状態)で対応する記録媒体を切断した場合の切断速度を指す。記憶手段105には、最大切断速度と最小切断速度とが切断負荷パラメータとして記憶されると共に、摩耗量閾値が各記録媒体に対応させて記憶されている。
【0027】
図4は前述のパネル装置に設けられる操作パネル301の一例を示す図である。図示の操作パネル301は、各種の指示およびデータなどの入力操作を行うための入力手段としての機能、記録媒体やカッタ刃に関する情報などを提示する情報提示手段としての機能を有する。情報提示手段としては液晶表示器302が設けられている。また、入力手段としては、ユーザによる所望の命令を選択するための選択ボタン304と、選択した命令の実行を決定する命令決定ボタン303とが設けられている。液晶表示器302は、カッタ装置109によって切断不可となる記録媒体に関する情報、記録媒体が切断不可である旨を知らせるメッセージなどを提示することが可能になっている。図4には、切断不可となる記録媒体としてPOPボードと画材(キャンバス)を表示した例が示されている。ユーザは設定した記録媒体を切断できない場合、選択ボタン304を用いて手動カットモードにするかどうかを選択し、選択したモードを決定ボタン303により決定する。
【0028】
図5は、記録装置のCPU104が記憶手段105に記憶されているプログラムに従って実行する処理の一例を示したフローチャートである。
画像の記録に先立ち、オペレータは、液晶表示器に表示された各種操作の中から記録媒体設定操作を選択ボタン304にて選択し、決定ボタン303を押す。このボタン操作により、CPU104は、予め定められている記録可能な複数種類の記録媒体を液晶表示器302に表示させる。次に、オペレータが選択ボタン304を操作して、表示された記録媒体の中から画像を記録すべき記録媒体を選択し、命令決定ボタン303を押す。これにより、画像を記録すべき記録媒体がCPU104に認識される(ステップS101)。
【0029】
次に、CPU102は、予め定められている複数種類の記録媒体(図3参照)の中から、現在のカッタ刃200aでは切断できない記録媒体(切断不可媒体)を検索する。この切断不可媒体の検索は、記憶手段105に保持されている現在のカッタ刃200aの推定摩耗量と、図3に示す複数の記録媒体それぞれに対応する摩耗量閾値と、を比較することにより行う。すなわち、カッタ刃200aの推定摩耗量より小さい摩耗量閾値に対応する記録媒体を検索し、該当する記録媒体をリストアップする。例えば、記憶手段105に保持されている現在のカッタ刃の摩耗量推定値が0.1mmだった場合、この摩耗量推定値と図3に示す摩耗量閾値とを比較すると、閾値を超えている記録媒体はPOPボードと画材(キャンバス)となる。よって、この2つの記録媒体をリストアップする。なお、現在のカッタ刃200aの推定量は、これから実施しようとしている記録動作の前に実施された切断動作に基づき、CPU104が後述の演算処理によって算出した値であり、切断動作毎に記憶手段105に更新された状態で保持される。
【0030】
次にCPU104はユーザがセットした記録媒体が切断不可媒体に該当するか否かを判定する(ステップS103)。ここで切断不可媒体に該当すると判定された場合にはステップS104に進み、切断可能な記録媒体(切断可能媒体)であると判定された場合にはステップS107に進む。ステップS104においてCPU104は液晶表示器302により切断不可媒体または切断可能媒体の少なくとも一方を表示させると共に、ステップS105において記録媒体を手動で切断する手動切断モードを選択するか否かの確認メッセージを表示する。図3にこの確認メッセージの一例を示す。次いでCPU104は、オペレータが手動切断モードを選択したかどうかを判断し(ステップS105)、手動切断モードが選択された場合にはステップS108に進んで記録動作を実行させる(ステップS108)。また、手動切断モードが選択されなかった場合にはカッタ刃200aの交換を促すメッセージを表示させ(ステップS106)、処理を終了する。
【0031】
前述のステップS103で画像を記録すべき記録媒体が切断可能媒体であると判断された場合、CPU104は、現在切断できない記録媒体があることを通知するメッセージを液晶表示器302に表示させた後、記録動作を実行させる(ステップS108)。この後、CPU104は、画像が記録された記録媒体が切断不可媒体であるかどうかを判定し、切断不可媒体である場合には処理を終了する。なお、ステップS109で記録媒体が切断不可媒体であると判断されたとき、手動で記録媒体を切断するための切断補助線を記録するようにしても良い。これによれば、手動による切断を容易かつ適正に実施することが可能になる。
【0032】
また、ステップS109で記録媒体が切断可能媒体であると判断された場合、CPU104はモータ210を駆動し、カッタ部200を移動させて記録媒体の切断を実行させる。また、これと同時にロータリエンコーダ210からのパルス数に基づいて負荷計測装置108が記録媒体の切断速度を負荷相当量として計測する。さらに、ステップS111では、負荷計測装置108が計測した速度に基づき、CPU104がカッタ刃の摩耗量を推定する。この摩耗量の推定は、例えば次のような演算により算出することができる。
w_i=Wmax_i×(S_i−Smax_i)/(Smin_i−Smax_i)のように算出してもよい。
【0033】
ここで、w_iは推定摩耗量、S_iは記録媒体iを切断する時の切断速度[inch/s]、Smax_iは記録媒体iの最大切断速度[inch/s]である。また、Smin_iは記録媒体iの最小切断速度[inch/s]、Wmax_iは記録媒体iを切断するときのカッタ刃の摩耗量閾値[mm]を示す。
【0034】
この後、CPU104はステップS111において、ステップS110で求めたカッタ刃の推定摩耗量を更新し、記憶手段105に保持して記録動作を終了する。
【0035】
以上のように本実施形態では、記録すべき記録媒体が、現在のカッタ刃の摩耗状態で切断可能かどうかを判定するだけでなく、複数種の記録媒体の中で現在のカッタ刃で切断可能な記録媒体の存否を判定し、その情報をも提示するようになっている。従って、記録すべき記録媒体が仮に切断不能であると判定された場合にも、他の記録媒体の中に切断可能なものが存在すれば、カッタ刃200aを交換せずに、他の記録媒体を用いて記録、切断を行うことが可能になる。このため、カッタ刃200aの切断能力を有効に活用することが可能になり、カッタ刃200aの寿命を有効に使うことができる。このように本実施形態によれば、不適切な切断の発生を抑えつつ、カッタ刃200aに要するコストの低減を図ることができる。
【0036】
(他の実施形態)
上記実施形態では、記録媒体を切断する際の負荷に対応する負荷相当量をカッタ部の切断速度に基づいて算出するようにしたが、記録媒体の切断負荷に対応する負荷相当量は、切断速度以外の値に基づいて算出することも可能である。例えば、カッタ部の切断回数の累積値に基づいてカッタ部の推定摩耗量を算出することも可能である。この場合、カッタ部の切断回数に記録媒体の切断の種類に応じて設定した重み付け係数を掛けるようにすればより高精度に摩耗量を推定することが可能になる。
【0037】
さらに、上記実施形態では、画像を記録すべき記録媒体を現在のカッタ刃によって切断できないと判定した際に、カッタ刃の交換を促すメッセージを表示するようになっている。しかし、カッタ刃の交換を促すメッセージと共に、あるいはカッタ刃の交換を促すメッセージに代えて、記録媒体の交換を促すメッセージを表示させるようにしてもよい。
【0038】
また、過去に使用されたカッタ刃の推定摩耗量を記憶手段に格納しておき、使用する記録媒体に適用し得る推定摩耗量のカッタ刃を検索可能にすれば、過去に使用されたカッタ刃を、再度、使用することが可能になる。例えば使用するカッタ刃にIDコードを付与し、そのIDコードに対応してカッタ刃の推定摩耗量を記憶手段に記憶させておく。そして、現在使用されているカッタ刃で記録媒体を切断できないと判定されたとき、過去に使用されたカッタ刃の推定摩耗量の中で、記録媒体の摩耗量閾値より小さい推定摩耗量のカッタ刃を検索し、該当するカッタ刃が存在すればそのIDを表示させる。このようにすれば、一旦取り外したカッタ刃であっても、これを保存しておけば他の記録媒体の切断において再度使用することが可能となり、カッタ刃の寿命をより有効に使うことが可能になる。
【符号の説明】
【0039】
104 CPU
105 記憶手段
108 負荷計測装置
109 カッタ装置
110 記録ヘッド
111 パネル装置
112 外部機器
113 コントローラ
200 カッタ部
200a カッタ刃
210 駆動モータ
210 ロータリエンコーダ
301 操作パネル
302 液晶表示器
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の記録媒体の各々に対して記録を可能とする記録手段と、交換可能なカッタ刃を用いて前記記録媒体を切断する切断手段と、を備えた記録装置であって、
前記カッタ刃によって記録媒体を切断することが可能な摩耗量の限界値が前記複数の記録媒体それぞれに対応して記憶された記憶手段と、
前記切断手段に設けられている現在のカッタ刃の摩耗量を推定する推定手段と、
前記複数の記録媒体それぞれに対し、前記推定手段によって推定された摩耗量と前記記憶手段に記憶された各記録媒体に対応する摩耗量の限界値とを比較し、現在のカッタ刃により前記各記録媒体を切断可能であるか否かの判定を行う判定手段と、
前記判定手段によって切断可能と判断された記録媒体または切断不可と判断された記録媒体の少なくとも一方を提示する情報提示手段と、
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記切断手段によって記録媒体を切断する際の負荷相当量を計測する計測手段を更に備え、
前記記憶手段には、前記切断可能な摩耗量の限界値と、前記複数種の記録媒体の各々に対応した切断負荷パラメータとが記憶され、
前記推定手段は、前記計測手段によって計測された負荷相当量と、前記切断手段によって切断される記録媒体に対応した前記切断負荷パラメータと、前記限界摩耗量とに基づいて前記カッタ刃の摩耗量を推定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記切断負荷パラメータは、前記摩耗量が最小であるときのカッタ刃によって前記記録媒体を切断する際の切断速度および前記摩耗量が最大であるときのカッタ刃によって前記記録媒体を切断する際の切断速度であり、
前記負荷相当量は、前記カッタ刃による前記記録媒体の切断速度であることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記カッタ刃の交換を促す情報を提示する情報提示手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記記録手段によって記録すべき記録媒体が前記判定手段により切断不可と判定された場合、記録データに応じた画像と当該画像とは異なる切断補助線とが前記記録媒体に記録されるよう前記記録手段を制御することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
交換可能なカッタ刃を用いて、記録装置に用いられる複数種の記録媒体の切断を行う切断手段を備えた切断装置の情報提示装置であって、
前記カッタ刃により切断可能な摩耗量の限界値が前記複数の記録媒体それぞれに対応して記憶された記憶手段と、
前記切断手段に設けられている現在のカッタ刃の摩耗量を推定する推定手段と、
前記複数の記録媒体それぞれに対し、前記推定手段によって推定された摩耗量と前記記憶手段に記憶された各記録媒体に対応する摩耗量の限界値とを比較し、現在のカッタ刃により前記各記録媒体を切断可能であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって切断可能と判定された記録媒体または切断不可と判定された記録媒体の少なくとも一方を提示する情報提示手段と、
を備えたことを特徴とする切断装置の情報提示装置。
【請求項7】
交換可能なカッタ刃を用いて、記録装置に用いられる複数種の記録媒体の切断を行う切断手段を備えた切断装置の情報提示方法であって、
前記切断手段に設けられている現在のカッタ刃の摩耗量を推定する推定工程と、
前記複数の記録媒体それぞれに対し、前記推定手段により推定された摩耗量のカッタ刃で切断可能であるか切断不可であるかを判定する判定工程と、
前記判定手段によって切断可能と判定された記録媒体または切断不可と判断された記録媒体の少なくとも一方を情報提示手段によって提示させる情報提示工程と、
を備えたことを特徴とする切断装置の情報提示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−236384(P2012−236384A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108319(P2011−108319)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】