説明

記録装置、記録装置の制御方法、及び、プログラム

【課題】記録媒体に記録を行うとともにカット等の処理を行う記録装置において、記録媒体が処理される処理対象位置に関する制約を緩和できるようにする。
【解決手段】プリンター2は、ロール紙22が搬送される搬送路の所定位置に設けられ、当該位置においてロール紙22に対するカット処理を行うカッターユニット25と、搬送路の所定位置に設けられ、ロール紙22上に搬送方向に所定間隔で設けられているBMを検出するBMセンサー64とを備え、BMセンサー64がブラックマークを検出する毎に、当該ブラックマークと前回検出されたブラックマークとの間の距離を求め、求めた距離が所定範囲内である場合は前回検出されたブラックマークの位置に基づいてロール紙22上の被カット位置を決定し、求めた距離が所定範囲を逸脱している場合には新たに検出されたブラックマークの位置に基づいて被カット位置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、記録装置の制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール紙等の記録媒体に記録を行う記録装置において、記録を行うとともに記録媒体に対するカット等の処理を行うものが知られている。この種の記録装置は、記録した位置に合わせて処理を行うために処理対象位置の位置合わせを行う。このため、この種の記録装置で使用される記録媒体には、例えばブラックマークと呼ばれる位置検出用のマークが設けられており、記録装置は、位置検出用マークを検出する手段を備えている。そして、位置検出用マークの位置を基準としてカット等の処理が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−326408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の記録装置において、位置検出用マークを検出してから処理対象位置を決定する場合、位置検出用マークを検出する位置とカット等の処理を行う位置との間の距離によっては、位置検出用マークを検出した時点で本来の処理対象位置とすべき位置が処理位置を通過してしまっていることがある。その原因は、位置検出用マークと処理対象位置との位置関係と、位置検出用マークを検出する位置と処理を行う位置との位置関係が適合していないことである。このため、記録媒体においてカット等の処理を行う処理対象位置は、位置検出用マークを検出する位置と処理を行う位置との位置関係、即ち機械的構造の制約を受けるという問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、記録媒体に記録を行うとともにカット等の処理を行う記録装置において、記録媒体が処理される処理対象位置に関する制約を緩和できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により前記記録媒体が搬送される搬送路の所定位置に設けられ、当該位置において前記記録媒体に対する処理を行う処理手段と、前記搬送路の所定位置に設けられ、前記記録媒体上に搬送方向に所定間隔で設けられている位置検出用マークを検出するマーク検出手段と、前記マーク検出手段の検出状態に基づいて、前記処理手段による処理を実行させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記マーク検出手段が前記位置検出用マークを検出する毎に、当該位置検出用マークと前回検出された前記位置検出用マークとの間の距離を求める距離検出手段と、前記距離検出手段が求めた距離が所定範囲内である場合は、前回検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記処理手段が処理を実行する前記記録媒体上の処理対象位置を決定し、前記距離検出手段が求めた距離が所定範囲を逸脱している場合には新たに検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記記録媒体上の処理対象位置を決定する処理位置制御手段と、前記処理位置制御手段により決定された前記記録媒体上の処理対象位置が前記処理手段の位置に達した場合に前記処理手段に処理を実行させる実行制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、位置検出用マークを検出して記録媒体を処理する場合に、記録媒体に所定間隔で設けられている位置検出用マーク間の距離が所定範囲内であれば先に検出した位置検出用マークに基づいて処理対象位置を決定するので、適切に搬送されている間は処理対象位置に関する制約を緩和し、処理の効率を高めることができる。また、記録媒体の搬送の支障等により位置検出用マーク間の距離が所定範囲を逸脱した場合には、後に検出される位置検出用マークに基づいて、支障の影響を受けることなく正確に処理対象位置を決定し、正確な位置で記録媒体を処理できる。
【0006】
また、本発明は、上記記録装置において、前記処理位置制御手段は、前記位置検出用マークの前記所定間隔と、前記距離検出手段が求めた距離とのずれ量に基づいて、前記記録媒体に外部から引張り力が作用したことを検出し、この引張り力が働いた場合には新たに検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記記録媒体上の処理対象位置を決定することを特徴とする。
本発明によれば、記録媒体に対して外部から引張り力が作用したことを速やかに、かつ確実に検出し、引張り力を受けた場合であっても正確な位置で記録媒体を処理できる。
【0007】
また、本発明は、上記記録装置において、前記制御手段は、前記処理位置制御手段が決定した前記記録媒体上の処理対象位置が、前記処理手段の位置より下流側にある場合に、当該処理対象位置が前記処理手段の位置に達するように前記搬送手段によって前記記録媒体を逆方向に搬送させる搬送制御手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、位置検出用マークに基づいて、処理手段の位置より下流側に達している処理対象位置において記録媒体を処理することができる。また、適切に搬送されている間は先に検出された位置検出用マークに基づいて処理対象位置を決定するので、逆方向への搬送を行うことなく記録媒体を処理できる。これにより、必要に応じて逆方向への搬送を行って位置検出用マークと処理対象位置との位置関係に関する制約を緩和する一方、逆方向への搬送の頻度を必要最小限に抑えることでスループットの低下を抑えることができる。
【0008】
また、本発明は、上記記録装置において、前記搬送制御手段は、前記マーク検出手段の検出位置から前記処理手段の位置までの距離と、前記マーク検出手段が前記位置検出用マークを検出してからの前記搬送手段による搬送量とを比較することにより、前記処理位置制御手段が決定した前記記録媒体上の処理対象位置が、前記処理手段の位置を既に通過したか否かを判定することを特徴とする。
本発明によれば、処理対象位置が処理手段の位置を既に通過したか否かを速やかに、かつ正確に判定できる。
【0009】
また、本発明は、上記記録装置において、前記距離検出手段は、前記距離検出手段が求めた距離が所定範囲を逸脱していて、前記処理位置制御手段が新たに検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記記録媒体上の処理対象位置を決定した場合には、この新たに検出された前記位置検出用マークと次の前記位置検出用マークとの間の距離を求めることを特徴とする。
本発明によれば、搬送の支障等によって、求めた位置検出用マーク間の距離が所定範囲を逸脱している場合に、それ以後の位置検出用マーク間の距離を、支障等の影響を受けることなく正確に求めることができる。
【0010】
また、本発明は、上記記録装置において、前記処理手段は、前記記録媒体を、搬送方向に対し直交する方向にカットするカッターユニットを備えて構成され、前記実行制御手段は、前記処理位置制御手段により決定された前記記録媒体上の処理対象位置で前記記録媒体がカットされるように前記カッターユニットを制御することを特徴とする。
本発明によれば、位置検出用マークとカット位置との位置関係に関する制約を緩和し、効率よく記録媒体をカットできる。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により前記記録媒体が搬送される搬送路の所定位置に設けられ、当該位置において前記記録媒体に対する処理を行う処理手段と、前記搬送路の所定位置に設けられ、前記記録媒体上に搬送方向に所定間隔で設けられている位置検出用マークを検出するマーク検出手段と、を備えた記録装置を制御して、前記マーク検出手段が前記位置検出用マークを検出する毎に、当該位置検出用マークと前回検出された前記位置検出用マークとの間の距離を求め、前記求められた距離が所定範囲内である場合は、前回検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記処理手段が処理を実行する前記記録媒体上の処理対象位置を決定し、前記求められた距離が所定範囲を逸脱している場合には新たに検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記記録媒体上の処理対象位置を決定し、決定した前記記録媒体上の処理対象位置が前記処理手段の位置に達した場合に前記処理手段に処理を実行させること、を特徴とする。
本発明によれば、位置検出用マークを検出して記録媒体を処理する場合に、記録媒体に所定間隔で設けられている位置検出用マーク間の距離が所定範囲内であれば先に検出した位置検出用マークに基づいて処理対象位置を決定するので、適切に搬送されている間は処理対象位置に関する制約を緩和し、処理の効率を高めることができる。また、記録媒体の搬送の支障等により位置検出用マーク間の距離が所定範囲を逸脱した場合には、後に検出される位置検出用マークに基づいて、支障の影響を受けることなく正確に処理対象位置を決定し、正確な位置で記録媒体を処理できる。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により前記記録媒体が搬送される搬送路の所定位置に設けられ、当該位置において前記記録媒体に対する処理を行う処理手段と、前記搬送路の所定位置に設けられ、前記記録媒体上に搬送方向に所定間隔で設けられている位置検出用マークを検出するマーク検出手段とを備えた記録装置を制御する制御部が実行可能なプログラムであって、前記制御部を、前記マーク検出手段が前記位置検出用マークを検出する毎に、当該位置検出用マークと前回検出された前記位置検出用マークとの間の距離を求める距離検出手段と、前記距離検出手段が求めた距離が所定範囲内である場合は、前回検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記処理手段が処理を実行する前記記録媒体上の処理対象位置を決定し、前記距離検出手段が求めた距離が所定範囲を逸脱している場合には新たに検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて処理対象位置を決定する処理位置制御手段と、前記処理位置制御手段により決定された前記記録媒体上の処理対象位置が前記処理手段の位置に達した場合に前記処理手段に処理を実行させる実行制御手段と、して機能させるためのプログラムである。
本発明によれば、位置検出用マークを検出して記録媒体を処理する場合に、記録媒体に所定間隔で設けられている位置検出用マーク間の距離が所定範囲内であれば先に検出した位置検出用マークに基づいて処理対象位置を決定するので、適切に搬送されている間は処理対象位置に関する制約を緩和し、処理の効率を高めることができる。また、記録媒体の搬送の支障等により位置検出用マーク間の距離が所定範囲を逸脱した場合には、後に検出される位置検出用マークに基づいて、支障の影響を受けることなく正確に処理対象位置を決定し、正確な位置で記録媒体を処理できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記録媒体が適切に搬送されている間は位置検出用マークと処理対象位置との位置関係に関する制約を緩和し、処理の効率を高めることができ、搬送の支障等が生じた場合であっても正確な位置で記録媒体を処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンターの外観斜視図である。
【図2】プリンターの要部構成を示す側面図である。
【図3】プリンターにより出力される帳票の例を示す図である。
【図4】プリンターの制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】プリンターとホストコンピューターの動作シーケンスを示す図である。
【図6】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係る印刷システム1の概略構成を示す図である。また、図2は、印刷システム1が備えるプリンター2(記録装置)の要部の構成を示す側面図である。
図1に示す印刷システム1は、例えば小売店等の店頭に設置された販売時点管理システム(POSシステム)のレジスター、或いは、富くじや各種チケットを発券する発券システムを構成し、レシート、クーポン、富くじ、チケット等の帳票10(図3)を印刷出力する。この図1に示す印刷システム1は、帳票10を発行するプリンター2に、プリンター2を制御するホストコンピューター3を接続して構成される。
【0016】
ホストコンピューター3は、売上登録処理や精算処理の処理内容、或いは発行する帳票に関する情報を表示するディスプレイ12、帳票発行に関するバーコードを読み取るバーコードスキャナー13、帳票発行指示等のキー等の各種キーを備えたキー入力部14、精算用の現金を収容するキャッシュドロワー15等を備えている。また、ホストコンピューター3には、プリンター2による帳票10の発行記録や取引記録のデータを収集するサーバー16が接続されている。帳票10の発行に際し、ホストコンピューター3は、バーコードスキャナー13からの入力値や、キー入力部14からの入力値に基づいて、サーバー16にアクセスし、帳票10を発行するために必要な情報を取得し、プリンター2に帳票10の発行に係る各種動作を行わせる制御データを生成し、プリンター2に出力する。プリンター2は、ホストコンピューター3から入力された制御データに基づいて、各部を動作させ、帳票10を発行する。
また、図1に示すように、プリンター2の本体20には開閉可能なカバー35が設けられる。本体20には、カバー35を開くためのレバー36が設けられ、カバー35を開くと、ロール紙22を収容する空間が露出し、ロール紙22の補充や交換が可能になる。また、本体20には、プリンター2の電源をオン/オフさせる電源スイッチ37、動作モードの切り替え等の操作を行うための紙送りスイッチ38、及び、LEDの点灯/消灯状態によりプリンター2の動作状態等を表示するLED表示部39が設けられている。
【0017】
図2に示すように、プリンター2は、長尺の感熱紙をロール状に巻いたロール紙22を記録媒体として用い、サーマルヘッド24によりロール紙22に熱を加えて文字等を記録(印刷)する。印刷後のロール紙22はカッターユニット25によって切断され、帳票10として排紙口28(図1)から排出される。
プリンター2は、本体20にロール紙22を収容し、このロール紙22を繰り出して搬送するローラー形状のプラテン23(搬送手段)と、プラテン23に対向配置されたサーマルヘッド24と、搬送方向に対し直交する方向にロール紙22を切断するカッターユニット25(処理手段)とを備える。カッターユニット25は、ロール紙22を幅方向に完全に切断する構成であっても、幅方向中央または端部を切り残す構成であってもよい。
プラテン23は、図示しない駆動機構を介して搬送モーター33(図4)に連結されており、搬送モーター33の動作により回転する。プラテン23とサーマルヘッド24とは板ばね等の付勢手段により相互に密接するよう付勢されている。また、プラテン23の周面はゴム等を用いて摩擦係数の高い面となっている。このため、プラテン23の回転に伴い、プラテン23とサーマルヘッド24との間に挟まれたロール紙22が搬送される。搬送モーター33が正方向に回転する場合、プラテン23はロール紙22を排紙口28に向けて搬送する方向に回転する。この場合の搬送方向を正方向とし、図2に矢印Fで示す。反対に、搬送モーター33が逆方向に回転する場合、プラテン23はロール紙22を排紙口28から引き戻す方向に回転する。この場合の搬送方向を逆方向とする。
【0018】
ロール紙22は、少なくとも一方の面に熱によって発色する発色層が設けられ、この面が表面10A(記録面)となっている。表面10Aの反対側、即ち裏面10Bには、印刷や切断の位置合わせのために、位置検出用マークとしてのブラックマーク(以下、BMという)が所定間隔で設けられている。なお、裏面10Bにおける発色層の有無は問わない。
BMは裏面10Bの幅方向の一端に形成された所定サイズのマークであり、例えば、搬送方向に沿ったサイズが五ミリ程度の長方形である。BMの色としては、白色のロール紙22に黒いBMが形成される態様が一般的であるが、後述するBMセンサー64のような光センサーが検出可能であればよい。BMは、ロール紙22の全長にわたって、所定長さ毎に、即ち等間隔で印刷等により形成されている。
【0019】
プリンター2は、ロール紙22の表面10Aに接するようにサーマルヘッド24が配置され、裏面10Bに対向してBMセンサー64(マーク検出手段)が設けられている。BMセンサー64は、例えば反射型の光センサーであり、裏面10Bに対して光を照射し、その反射光の光量を検出する。このBMセンサー64が検出した光量の変化に基づきBMを検出できる。
また、カッターユニット25は、ロール紙22の搬送路の一方側(裏面10B側)に配置された固定刃30と、この固定刃30に対向してロール紙22の搬送路の他方側(表面10A側)に配置された可動刃31と、可動刃31を固定刃30に向けてスライドさせるカッター駆動モーター32とを備えている。カッター駆動モーター32の駆動力により、駆動機構(図示略)を介して可動刃31がカッター駆動モーター32に向けて移動され、固定刃30と可動刃31との間に印刷後のロール紙22が挟まれ、切断される。
【0020】
ここで、BMセンサー64が裏面10BのBMを読み取る位置を読取位置RPとし、サーマルヘッド24が表面10Aに印刷する位置を印刷位置PPとし、カッターユニット25がロール紙22を切断する位置をカッター位置CPとすると、図2に示すロール紙22の搬送路において、搬送方向Fの上流側から順に、読取位置RP、印刷位置PP、カッター位置CPの順に並んでいる。読取位置RP、印刷位置PP、カッター位置CPの間の搬送路に沿う距離は、いずれもプリンター2の機械的構造によって決定される。
【0021】
図3は、プリンター2が印刷出力する帳票10の一例を示す図であり、図3(A)は裏面10Bを示し、図3(B)は表面10Aを示す。
図3(A)及び(B)には帳票10の一例として、一般にロッタリー(Lottery,lotto)と呼ばれる数字選択式の富くじを示す。この図では、ロール紙22を切断して複数枚の帳票10を発行する様子を説明するため、カッターユニット25によってカットされる帳票10(ロール紙22)上の位置を実線の被カット位置CLで示す。
1枚の帳票10において、表面10Aには発行日時、発行した店舗や売り場、発券番号等の情報と、購入者が選択または自動選択された数字の組み合わせと、これらの数字の組み合わせを表す機械読み取り可能なコードが印刷されている。裏面10Bには、偽造を防止するために予め絵柄等が印刷され、帳票10の数に相当するシリアル番号と、位置合わせ用のBMが印刷されている。図3の例では1枚の帳票10に使用する長さが決まっているので、この長さに合わせて絵柄、シリアル番号及びBMが等間隔であらかじめ印刷されている。
【0022】
ここで、裏面10Bに予め設けられたBMどうしの間隔(BM間距離)を距離D11とし、図3(A)に示したBMを、搬送方向Fの下流(先頭)側から順にBM1、BM2、BM3とする。また、BMセンサー64が検出するBMの先頭側の端から被カット位置CLまでの長さを距離D12とする。
プリンター2は、読取位置RP(図2)においてBMセンサー64がBMを検出したら、この検出したBMの位置を基準としてロール紙22の被カット位置CLを決定し、ロール紙22を正方向に搬送して被カット位置CLがカッター位置CP(図2)に達したら、カッター駆動モーター32を駆動してカットする。被カット位置CLがカッター位置CPに達するタイミングは、プラテン23を回転させる搬送モーター33(図4)の回転数やパルス数により特定できる。
【0023】
しかしながら、図2に示したようにBMセンサー64はカッターユニット25よりも上流側にあるため、BMセンサー64がBMを検出したときに、既にロール紙22の被カット位置CLがカッター位置CPを通過してしまっている場合がある。
この場合について詳細に説明する。図3(B)には、プリンター2のカッター位置CP、印刷位置PP及び読取位置RPの位置を、ロール紙22に対応させて示している。そして、読取位置RPの位置をBM2に並ぶように破線で示している。印刷位置PPとカッター位置CPとの距離(搬送路に沿う距離)を距離D1、読取位置RPと印刷位置PPの間の距離(搬送路に沿う距離)を距離D2とし、読取位置RPとカッター位置CPとの間の距離(搬送路に沿う距離)を距離D3とする。
例えば、BMセンサー64がBM2を検出した後で、このBM2よりも距離D12だけ先頭側にある被カット位置CLでカットする場合を想定する。BMセンサー64がBM2を検出したときには、読取位置RP(図2)にBM2が位置していることになる。この時点で、カッターユニット25のカッター位置CP(図2)は、図3(B)に破線CPで示すロール紙22上の位置にある。
【0024】
ここで、プリンター2は、BM2の位置を基準として、BM2より下流側(先頭側、排出口側)にある被カット位置CL2の位置を決定する。ところが、BMから被カット位置CLまでの距離D12と、読取位置RPからカッター位置CPまでの距離D3とを比較して、D12>D3となっている場合は、図3(B)に示すように、BM2が読取位置RPで検出されたときに、すでにロール紙22上の被カット位置CL2がカッター位置CPよりも先(排出口側)に位置している。この状態では、カッター位置CPを通過した被カット位置CL2でカットすることはできない。
そこで、本実施形態のプリンター2は、二通りの方法により、被カット位置CL2におけるカットを可能とする。
【0025】
プリンター2は、ロール紙22が安定して適正に搬送されている間は、BM2よりも上流側(ロール側)に位置する被カット位置CL3を決定して、カッターユニット25によりカットを実行させる。図3(A)の例では、BMセンサー64によりBM1が検出されたときに、BM1の位置を基準として、BM1とBM2の間の被カット位置CL2の位置を決定する。BMセンサー64によりBM2が検出されたときには、BM2の位置を基準として、BM2とBM3の間の被カット位置CL3の位置を決定する。この場合、被カット位置CL2、CL3は、それぞれ基準となったBM1、BM2よりも後にカッター位置CPを通過するので、カットを実行できる。
【0026】
一方、ロール紙22の搬送に支障が生じた場合を考慮すると、BM2より下流側に位置する被カット位置CL3を決定する方が、BM2より上流側に位置する被カット位置CL2を決定するよりも好ましい。理由は、既にロールから引き出され、プラテン23を通過しているロール紙22は、正常に搬送される可能性が高いためである。これに対し、まだロールから繰り出されていない部分が正常に搬送される可能性は、上記の場合ほど高くはない。
そこで、本実施形態のプリンター2は、ロール紙22の搬送に支障が生じた場合には、読取位置RPにおいてBMセンサー64がBM2を検出したときに、検出されたBM2よりも下流側に位置する被カット位置CL1の位置を決定して、この被カット位置CL1に合わせてカッターユニット25がカットする動作を行う。但しこの場合、上述したように、ロール紙22上の被カット位置CL1がカッター位置CPを通過している可能性があるが、プリンター2は、プラテン23を逆回転させてロール紙22を逆搬送(バックフィード)することで、被カット位置CL1をカッター位置CPに合わせる。これによって、支障なくカットを行える。
【0027】
さらに、プリンター2は、ロール紙22の搬送に支障が生じているか否かを、BM間の距離に基づいて判定する。即ち、プリンター2は、BMセンサー64によりBMが検出される毎に、その前に検出されたBMとの間の距離を求め、本来のBM間の距離D13とのずれ量を算出する。このずれ量が予め設定された所定範囲内であれば搬送は正常と判定し、ずれ量が所定範囲を超えた場合は搬送に支障が生じたものと判定する。これにより、BMを検出するBMセンサー64を利用して、搬送の支障の有無を正確に判定できる。
【0028】
また、BM間距離のずれ量の原因は、プラテン23を含む機械構造の公差などの他に、外部から印刷中のロール紙22に対して力が加わることが挙げられる。通常、機械構造等に起因する搬送量のばらつきは、発行する帳票の品質に影響しない程度に抑えられているので、許容しても問題がない。これに対し、例えば帳票10を早く発行させたいがために、カッターユニット25がカットする前に帳票10の先端を引っ張る行為により、搬送量が大きくずれることがある。カッターユニット25は排紙口28の近傍に配置されるため、カットする前に帳票10の一部が排紙口28よりも外に出ることがあり、上記の行為によりロール紙22に引張り力が作用することがある。この外力は、プラテン23及びサーマルヘッド24に挟まれた箇所にも作用し、プラテン23との間に滑りを生じながらロール紙22が引き出される。この場合、ロール紙22はプラテン23の回転量よりも多く繰り出され、サーマルヘッド24が1枚の帳票10の印刷を終えたときには、1枚の帳票10を超える長さのロール紙22が消費される。この場合、通常と同じ位置でロール紙22をカットしてしまうと、印刷された文字やマークが途切れる可能性もある。
【0029】
つまり、BM間距離のずれ量が所定範囲を逸脱している場合には、外部からの引張り力によりロール紙22が過剰に引き出されたことと想定されるので、この場合にBMを基準としてBMより上流側の被カット位置CLを決めてしまうと、被カット位置CLが文字やマークに重なる可能性がある。
上述のように、BM間距離のずれ量が所定範囲を逸脱している場合に、より上流側に位置する次のBMが検出されるまで搬送を行い、当該BMを検出したら、このBMを基準として先頭側の被カット位置CLを決定すれば、引張り力の影響を受けたときに検出したBMの位置を避けて、その後のBMの位置に基づいて適切な被カット位置CLを決定できるという利点がある。これにより、外部から搬送に支障を来すような引張り力が加わった場合であっても、文字やマークに重ならない適切な位置でカットできる。
【0030】
図4は、プリンター2の機能的構成を示すブロック図である。
プリンター2は、プリンター2の各部を中枢的に制御する制御部4(制御手段)、制御部4の制御に従って各種センサーの検出状態を取得するセンサー制御部51、制御部4の制御のもとに各モーターを駆動するモータードライバー52、制御部4の制御のもとにサーマルヘッド24への通電を行うヘッドドライバー53、ホストコンピューター3に接続され、ホストコンピューター3との間で各種データを送受信するインターフェイス(I/F)部54、スイッチ38の操作を検出する入力部55、及び、制御部4の制御によってLED表示部39のLEDの点灯状態を切り替える表示部56を備えている。
【0031】
センサー制御部51には、カバー35が開いたことを検出するカバーセンサー61と、サーマルヘッド24の上流側に配置され、ロール紙22が無くなったことを検出するリアルエンドセンサー62及びニアエンドセンサー63と、BMセンサー64とが接続されている。カバーセンサー61はカバー35が開いた場合にオンとなるスイッチ式のセンサーである。リアルエンドセンサー62及びニアエンドセンサー63は、例えば反射型または透過型の光センサーにより構成され、リアルエンドセンサー62はサーマルヘッド24の近傍に配置され、ニアエンドセンサー63はリアルエンドセンサー62よりもサーマルヘッド24から離れた位置に配置される。センサー制御部51は、これら各センサーに動作用の電力を供給し、各センサーの検出状態に応じて変化する出力電流を検出する。そして、センサー制御部51は、各センサーの出力電流に基づいて各センサーの検出状態を特定し、検出状態を示すデジタルデータを生成して、制御部4に出力する。
【0032】
モータードライバー52には、プラテン23を回転させる搬送モーター33、及び、カッターユニット25が備えるカッター駆動モーター32が接続されている。モータードライバー52は、カッター駆動モーター32及び搬送モーター33に対し、制御部4の制御に従って駆動電流を供給し、カッター駆動モーター32と搬送モーター33をそれぞれ正方向あるいは逆方向に回転させる。ここで、カッター駆動モーター32、搬送モーター33がステッピングモーターとして構成されている場合、モータードライバー52は、駆動電流とともに駆動パルスを出力する。
ヘッドドライバー53は、サーマルヘッド24が備える発熱素子に駆動電流を供給し、さらに発熱素子毎の電流の供給を制御することにより、サーマルヘッド24によってロール紙22に印刷を実行させる。
【0033】
制御部4は、制御プログラム及び制御プログラムに係る設定値等のデータを記憶する不揮発性メモリー、このROMに記憶されたプログラムを実行するCPU、CPUが実行するプログラム及び処理されるデータを一時的に記憶するRAM等を備えて構成される。制御部4は、上記CPUがプログラムを実行することで、ソフトウェアとハードウェアの協働により、種々の機能を実現する。これらの機能は、記録制御部41、距離検出部42、処理位置制御部43、搬送制御部44、実行制御部45、及び記憶部46として表現される。
【0034】
記録制御部41は、インターフェイス部54を介してホストコンピューター3から受信したコマンド及びデータに従って、モータードライバー52を制御して搬送モーター33を動作させ、ヘッドドライバー53を制御し、ロール紙22への印刷を実行する。
距離検出部42(距離検出手段)は、センサー制御部51を介してBMセンサー64の検出状態を監視する処理と、搬送モーター33の回転量に基づいてBMセンサー64がBMを検出してからのロール紙22の搬送量をカウントする処理とを実行する。そして、距離検出部42は、BMセンサー64がBMを検出する毎に、検出されたBMと、その直前に検出されたBMとの間の距離(BM間距離)を、カウント値に基づいて算出する。また、距離検出部42は、後述する処理位置制御部43によって、BM間距離のずれ量が所定範囲を逸脱していると判定された場合には、カウント値をクリアし、BMセンサー64が次のBMを検出してからカウントを開始する。
【0035】
処理位置制御部43(処理位置制御手段)は、距離検出部42が算出したBM間距離と、予め記憶部46に記憶されているBM間距離の基準値とをもとにずれ量を算出する。処理位置制御部43は、算出したずれ量と、記憶部46に記憶されているしきい値とを比較し、ずれ量がしきい値を超えているか否か、即ち設定された範囲から逸脱しているか否かを判定する。ずれ量が設定範囲内である場合、処理位置制御部43は、直前にBMセンサー64が検出したBMの位置を基準として、それより上流側の被カット位置CLを決定する。また、ずれ量が設定範囲内である場合、処理位置制御部43は、直前にBMセンサー64が検出したBMの位置を基準として、それより先頭側の被カット位置CLを決定する。
【0036】
搬送制御部44(搬送制御手段)は、モータードライバー52を制御して搬送モーター33を動作させ、処理位置制御部43が決定した被カット位置CLがカッターユニット25のカッター位置CPに達するようにロール紙22を搬送する。処理位置制御部43が決定した被カット位置CLが、既にカッター位置CPよりも下流側に位置している場合には、搬送モーター33を逆回転させてロール紙22をバックフィードして(逆搬送して)、被カット位置CLとカッター位置CPの位置を合わせる。搬送制御部44は、BMセンサー64の検出位置からカッターユニット25の処理位置までの距離(図3の距離D3)と、BMセンサー64がBMを検出してからの搬送量とを比較することにより、被カット位置CLがカッターユニット25の位置を既に通過したか否かを判定する。
実行制御部45(実行制御手段)は、搬送制御部44の制御によってロール紙22上の被カット位置CLがカッター位置CPに達すると、モータードライバー52を制御してカッターユニット25を動作させ、ロール紙22をカットする。
【0037】
記憶部46は、フラッシュROMやEEPROM等の書き換え可能な不揮発性メモリーにより構成され、各種設定値を不揮発的に記憶する。記憶部46が記憶する設定値としては、ロール紙22に設けられているBMのBM間距離、処理位置制御部43が判定を行うためのしきい値等が挙げられる。これらの設定値は、ホストコンピューター3から送信された値、スイッチ38の操作により選択または入力された値、或いは、出荷時に予め記憶されていた値である。記憶部46が記憶する設定値は、例えば、ロール紙22の幅方向のサイズ毎に複数記憶されており、ホストコンピューター3から送信されるコマンドやスイッチ38の操作によりロール紙22のサイズが指定されることで、このサイズに対応する他の設定値が選択される構成としてもよい。
【0038】
図5は、プリンター2とホストコンピューター3の動作シーケンスを示す図である。図5(A)はホストコンピューター3の動作を示し、図5(B)はプリンター2の動作を示す。
ホストコンピューター3は、帳票10の印刷に先だって、プリンター2に対して設定情報を送信する(ステップS11)。この設定情報は、少なくとも、ロール紙22のBM間距離を含み、サーマルヘッド24による印刷開始位置や、ロール紙22のサイズ、使用するフォント等の情報を含んでいてもよい。
プリンター2の制御部4は、ホストコンピューター3から送信された設定情報を受信し(ステップS21)、受信した設定情報に含まれるBM間距離を記憶部46に記憶する等、設定情報に従ってプリンター2の動作に関する設定を行う(ステップS22)。
【0039】
その後、ホストコンピューター3は、プリンター2に対するトランザクションを実行し、プリンター2に対して印刷実行を指示するコマンド、印刷するデータ等を含む情報を送信する(ステップS12)。
プリンター2の制御部4は、ホストコンピューター3のトランザクションにおいて送信されるコマンドやデータを受信し、受信したコマンドに従って、記録制御部41がロール紙22への印刷を実行する(ステップS23)。この印刷を開始した後、制御部4は、帳票カット処理を実行し、印刷済みのロール紙22を順次カットして帳票10を出力する(ステップS24)。
【0040】
図6は、プリンターの動作を示すフローチャートであり、図5のステップS24に示した帳票カット処理を詳細に示す。
この帳票カット処理は、プリンター2の印刷の開始(図5のステップS23)とともに開始される。
制御部4の距離検出部42は、BMセンサー64がBMを検出してから次のBMが検出されるまでの搬送量のカウントを実行し、BMセンサー64が次のBMを検出すると(ステップS31)、前回(直前)にBMセンサー64が検出したBMからのBM間距離を算出する(ステップS32)。
【0041】
処理位置制御部43は、距離検出部42が算出したBM間距離と、記憶部46が記憶しているBM間距離の基準値とをもとに、ずれ量を算出する(ステップS33)。次に、搬送制御部44は、処理位置制御部43が算出したずれ量が記憶部46に記憶されたしきい値を超えているか否か、即ち設定範囲内であるか設定範囲を逸脱しているかを判定する(ステップS34)。
【0042】
処理位置制御部43は、ずれ量が設定範囲内であると判定した場合(ステップS34;Yes)、ステップS31で検出したBMの位置に基づいてロール紙22上の被カット位置CLを決定する(ステップS35)。その後、搬送制御部44が搬送モーター33を動作させて被カット位置CLがカッター位置CPの位置に達するまでロール紙22の搬送方向Fの搬送を行い(ステップS36)、被カット位置CLがカッター位置CPに達すると実行制御部45がカッター駆動モーター32を動作させてカットを実行し(ステップS37)、排紙口28から帳票10を排出して(ステップS38)、本処理を終了する。
【0043】
また、処理位置制御部43は、ずれ量が設定範囲を逸脱していると判定した場合(ステップS34;No)、次のBMがBMセンサー64によって検出されるまでロール紙22を搬送させる(ステップS39)。そして、次のBMが検出されると、距離検出部42がBM間距離のカウントをリセットして、ここで検出されたBMの位置からBM間距離のカウントを再開するとともに(ステップS40)、処理位置制御部43が、ステップS39で検出されたBMの位置に基づいて、より先頭側(下流側)の被カット位置CLを決定する(ステップS41)。
【0044】
搬送制御部44は、処理位置制御部43がステップS41で決定したロール紙22の被カット位置CLが、カッター位置CPを既に通過しているか否かを判定する(ステップS42)。ここで、既に通過している場合には(ステップS42;Yes)、搬送モーター33を逆回転させて、被カット位置CLをカッター位置CPの位置に合わせるようにロール紙22をバックフィードする(ステップS43)。被カット位置CLがカッター位置CPに達したらステップS37に移行して、実行制御部45がカットを実行する。
また、被カット位置CLがカッター位置CPを通過していない場合(ステップS42;No)、搬送制御部44は搬送モーター33を動作させて、被カット位置CLがカッター位置CPの位置に達するまで搬送方向Fの搬送を行い(ステップS44)、被カット位置CLがカッター位置CPに達したらステップS37に移行して、実行制御部45がカットを実行する。
【0045】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態に係る印刷システム1によれば、プリンター2は、ロール紙22を搬送するプラテン23及び搬送モーター33と、プラテン23及び搬送モーター33によりロール紙22が搬送される搬送路の所定位置に設けられ、当該位置においてロール紙22に対するカット処理を行うカッターユニット25と、搬送路の所定位置に設けられ、ロール紙22上に搬送方向に所定間隔で設けられているBMを検出するBMセンサー64と、BMセンサー64の検出状態に基づいて、カッターユニット25による処理を実行させる制御部4と、を備え、制御部4は、BMセンサー64がBMを検出する毎に、当該BMと前回検出されたBMとの間の距離を求める距離検出部42と、距離検出部42が求めた距離が所定範囲内である場合は、前回検出されたBMの位置に基づいてカッターユニット25が処理を実行するロール紙22上の被カット位置CLを決定し、距離検出部42が求めた距離が所定範囲を逸脱している場合には新たに検出されたBMの位置に基づいてロール紙22上の被カット位置CLを決定する処理位置制御部43と、処理位置制御部43により決定されたロール紙22上の被カット位置CLがカッターユニット25の位置に達した場合にカッターユニット25に処理を実行させる実行制御部45とを備え、距離検出部42が求めたBM間の距離が所定範囲内であれば先に検出したBMに基づいて被カット位置CLを決定するので、適切に搬送されている間は被カット位置CLに関する制約を緩和し、処理の効率を高めることができる。また、ロール紙22の搬送の支障等によりBM間の距離が所定範囲を逸脱した場合には、後に検出されるBMに基づいて、支障の影響を受けることなく正確に被カット位置CLを決定し、正確な位置で効率よくロール紙22をカットできる。
【0046】
また、処理位置制御部43は、ロール紙22に設けられているBMの所定間隔と、距離検出部42が求めた距離とのずれ量に基づいて、ロール紙22に外部から引張り力が作用したことを検出し、この引張り力が働いた場合には新たに検出されたBMの位置に基づいてロール紙22上の被カット位置CLを決定するので、ロール紙22に対して外部から引張り力が作用したことを速やかに、かつ確実に検出し、引張り力を受けた場合であっても正確な位置でロール紙22をカットできる。
【0047】
また、制御部4は、処理位置制御部43が決定したロール紙22上の被カット位置CLが、カッターユニット25の位置より下流側にある場合に、当該被カット位置CLがカッターユニット25の位置に達するようにプラテン23及び搬送モーター33によってロール紙22を逆方向に搬送させる搬送制御部44を備えるので、カッターユニット25の位置を通過して下流側に達した被カット位置CLにおいてロール紙22をカットできる。また、ロール紙22が適切に搬送されている間は先に検出されたBMに基づいて被カット位置CLを決定するので、逆方向への搬送を行うことなくロール紙22をカットできる。これにより、必要に応じて逆方向への搬送を行ってBMと被カット位置CLとの位置関係に関する制約を緩和する一方、逆方向への搬送の頻度を必要最小限に抑えることでスループットの低下を抑えることができる。
【0048】
さらに、搬送制御部44は、BMセンサー64の検出位置からカッターユニット25の被カット位置CLまでの距離と、BMセンサー64がBMを検出してからのプラテン23及び搬送モーター33による搬送量とを比較することにより、処理位置制御部43が決定したロール紙22上の被カット位置CLが、カッターユニット25の位置を既に通過したか否かを判定するので、被カット位置CLがカッターユニット25の位置を既に通過したか否かを速やかに、かつ正確に判定できる。
【0049】
また、距離検出部42は、距離検出部42が求めたBM間の距離が所定範囲を逸脱していて、処理位置制御部43が新たに検出されたBMの位置に基づいてロール紙22上の被カット位置CLを決定した場合には、この新たに検出されたBMと次のBMとの間の距離を求めるので、搬送の支障等によりBM間の距離が所定範囲を逸脱した場合に、それ以後のBM間の距離を、支障等の影響を受けることなく正確に求めることができる。
【0050】
なお、上記実施形態は本発明を適用した一具体例を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プリンター2において、ロール紙22を処理する処理手段は、カッターユニット25に限定されず、例えばロール紙22の裏面10Bに記録を行う記録ヘッドや、表面10Aまたは裏面10Bを光学的に読み取るスキャナー等を用いてもよい。
また、例えば、プリンター2からホストコンピューター3に対し、BMセンサー64によるBMの検出状態や距離検出部42が求めたBM間隔をステータス情報として送信し、ホストコンピューター3が、BMの検出位置及びBM間隔のずれ量に基づいて、図6に示した帳票カット処理における制御を実行し、被カット位置CLを決定してプリンター2に送信し、この情報をプリンター2が受信してカットを実行させる構成としてもよい。
【0051】
また、例えば、上記実施形態において、プリンター2が、ホストコンピューター3から受信したコマンドやデータ等を一時的に記憶する受信バッファーを備えた構成としてもよい。さらに、図4のブロック図に示した各機能部は機能的構成を示すものであって、各機能部を独立したハードウェアにより構成する必要はなく、ソフトウェアとハードウェアとの協働により、複数の機能部の機能を1つのハードウェアに集約して実現することも、一つの機能部を複数のハードウェアにより実現することも勿論可能である。
また、本発明を適用可能な記録装置は、記録媒体を搬送して記録するプリンターであって少なくとも一つの記録ヘッドと、この記録ヘッド以外の処理手段を備えるものであればよく、サーマルラインプリンターに限らず、インクジェット式プリンター、ドットインパクト式プリンター、レーザープリンター、熱昇華型プリンターのいずれであってもよいし、他の方式で文字や画像を形成するプリンターであってもよい、また、他の装置に組み込まれる各種プリンターにも本発明を適用可能であり、プリンター2の機構をホストコンピューター3に組み込み、一体型の装置として構成することも可能である。また、上述の動作を行う制御部4のCPUが実行するプログラムは、制御部4の不揮発性メモリーが記憶する構成に限らず、可搬型の記録媒体に記憶されている構成であってもよいし、或いは、通信回線を介して接続された他の装置にダウンロード可能に記憶され、これらの装置からプリンター2が上記プログラムをダウンロードして実行してもよく、その他の構成についても任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…印刷システム、2…プリンター(記録装置)、3…ホストコンピューター、4…制御部(制御手段)、22…ロール紙(記録媒体)、23…プラテン(搬送手段)、24…サーマルヘッド、25…カッターユニット(処理手段)、32…カッター駆動モーター、33…搬送モーター、41…記録制御部、42…距離検出部(距離検出手段)、43…処理位置制御部(処理位置制御手段)、44…搬送制御部(搬送制御手段)、45…実行制御部(実行制御手段)、46…記憶部、64…BMセンサー(マーク検出手段)、BM…ブラックマーク(位置検出用マーク)、CL…被カット位置(処理対象位置)、CP…カッター位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により前記記録媒体が搬送される搬送路の所定位置に設けられ、当該位置において前記記録媒体に対する処理を行う処理手段と、
前記搬送路の所定位置に設けられ、前記記録媒体上に搬送方向に所定間隔で設けられている位置検出用マークを検出するマーク検出手段と、
前記マーク検出手段の検出状態に基づいて、前記処理手段による処理を実行させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記マーク検出手段が前記位置検出用マークを検出する毎に、当該位置検出用マークと前回検出された前記位置検出用マークとの間の距離を求める距離検出手段と、
前記距離検出手段が求めた距離が所定範囲内である場合は、前回検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて、前記処理手段が処理を実行する前記記録媒体上の処理対象位置を決定し、前記距離検出手段が求めた距離が所定範囲を逸脱している場合には新たに検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記記録媒体上の処理対象位置を決定する処理位置制御手段と、
前記処理位置制御手段により決定された前記記録媒体上の処理対象位置が、前記処理手段の位置に達した場合に前記処理手段に処理を実行させる実行制御手段と、を備えること、
を特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記処理位置制御手段は、前記位置検出用マークの前記所定間隔と、前記距離検出手段が求めた距離とのずれ量に基づいて、前記記録媒体に外部から引張り力が作用したことを検出し、この引張り力が働いた場合には新たに検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記記録媒体上の処理対象位置を決定することを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記処理位置制御手段が決定した前記記録媒体上の処理対象位置が、前記処理手段の位置より搬送方向の下流側にある場合に、当該処理対象位置が前記処理手段の位置に達するように前記搬送手段によって前記記録媒体を逆方向に搬送させる搬送制御手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の記録装置。
【請求項4】
前記搬送制御手段は、前記マーク検出手段の検出位置から前記処理手段の位置までの距離と、前記マーク検出手段が前記位置検出用マークを検出してからの前記搬送手段による搬送量とを比較することにより、前記処理位置制御手段が決定した前記記録媒体上の処理対象位置が、前記処理手段の位置を既に通過したか否かを判定することを特徴とする請求項3記載の記録装置。
【請求項5】
前記距離検出手段は、前記距離検出手段が求めた距離が所定範囲を逸脱していて、前記処理位置制御手段が新たに検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記記録媒体上の処理対象位置を決定した場合には、この新たに検出された前記位置検出用マークと次の前記位置検出用マークとの間の距離を求めることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記処理手段は、前記記録媒体を、搬送方向に対し直交する方向にカットするカッターユニットを備えて構成され、
前記実行制御手段は、前記処理位置制御手段により決定された前記記録媒体上の処理対象位置で前記記録媒体がカットされるように前記カッターユニットを制御することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により前記記録媒体が搬送される搬送路の所定位置に設けられ、当該位置において前記記録媒体に対する処理を行う処理手段と、前記搬送路の所定位置に設けられ、前記記録媒体上に搬送方向に所定間隔で設けられている位置検出用マークを検出するマーク検出手段と、を備えた記録装置を制御して、
前記マーク検出手段が前記位置検出用マークを検出する毎に、当該位置検出用マークと前回検出された前記位置検出用マークとの間の距離を求め、
前記求められた距離が所定範囲内である場合は、前回検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記処理手段が処理を実行する前記記録媒体上の処理対象位置を決定し、前記求められた距離が所定範囲を逸脱している場合には新たに検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記記録媒体上の処理対象位置を決定し、
決定した前記記録媒体上の処理対象位置が前記処理手段の位置に達した場合に前記処理手段に処理を実行させること、
を特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項8】
記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により前記記録媒体が搬送される搬送路の所定位置に設けられ、当該位置において前記記録媒体に対する処理を行う処理手段と、前記搬送路の所定位置に設けられ、前記記録媒体上に搬送方向に所定間隔で設けられている位置検出用マークを検出するマーク検出手段とを備えた記録装置を制御する制御部が実行可能なプログラムであって、
前記制御部を、
前記マーク検出手段が前記位置検出用マークを検出する毎に、当該位置検出用マークと前回検出された前記位置検出用マークとの間の距離を求める距離検出手段と、
前記距離検出手段が求めた距離が所定範囲内である場合は、前回検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて前記処理手段が処理を実行する前記記録媒体上の処理対象位置を決定し、前記距離検出手段が求めた距離が所定範囲を逸脱している場合には新たに検出された前記位置検出用マークの位置に基づいて処理対象位置を決定する処理位置制御手段と、
前記処理位置制御手段により決定された前記記録媒体上の処理対象位置が前記処理手段の位置に達した場合に前記処理手段に処理を実行させる実行制御手段と、
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−228839(P2012−228839A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99455(P2011−99455)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】