説明

記録装置、記録装置の制御方法、及び、プログラム

【課題】フォントサイズの縮小や解像度を低くして記録を行う場合に文字の潰れ等を回避する。
【解決手段】記録する文字のデータを含む記録用データに基づいて、記録ヘッド36により記録媒体にフォントを記録するプリンター1は、記録ヘッド36の最高印刷解像度より低い解像度に変換する記録、或いは、指定されたフォントより小さいサイズのフォントに変換する記録のいずれかを行う特別記録モードと、記録ヘッド36の最高記録解像度で、指定されたフォントにより記録を行う通常記録モードとを切り換えて記録を行い、フォントデータを特別記録モードで記録する際に、少なくとも一部のフォントに装飾を施す設定がされている場合には当該フォントデータを含む部分を通常記録モードで記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録を行う記録装置、記録装置の制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンター等の記録装置において、記録データにより指定されるフォントサイズよりも小さいフォントサイズに変換して記録する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、より小さいサイズの用紙に同じ桁数の文字(フォント)を記録できるようになり、用紙の消費量を節約できる等の利点がある。また、記録解像度が低い記録装置と同じような記録結果となるように、記録解像度を意図的に低い解像度にして記録する記録装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−6022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の記録装置のように、フォントサイズの縮小や解像度を低くして記録を行うと、もとの文字が小さい場合に文字の潰れ等が起きやすくなるという問題があった。また、文字装飾を施すと、さらに潰れが顕著となり易い。
そこで本発明は、上記課題を解消するため、フォントサイズの縮小や解像度を低くして記録を行う場合に文字の潰れ等を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、記録ヘッドと、記録するフォントデータを含む記録用データに基づいて前記記録ヘッドにより記録媒体にフォントを記録する記録制御部と、を備え、前記記録制御部は、前記記録ヘッドの最高記録解像度より低い解像度に変換する記録、或いは、指定されたフォントより小さいサイズのフォントに変換する記録のいずれかを行う特別記録モードと、前記記録ヘッドの最高記録解像度で、指定されたフォントにより記録を行う通常記録モードとを切り換えて実行可能であり、前記記録用データに含まれるフォントデータを前記特別記録モードで記録する際に、少なくとも一部のフォントに装飾を施す設定がされている場合には、当該フォントデータを含む部分を前記通常記録モードで記録することを特徴とする。
本発明によれば、特別記録モードにより、記録ヘッドの最高記録解像度より低い解像度に変換する記録、或いは、指定されたフォントより小さいサイズのフォントに変換する記録を行うことが可能であるため、例えば他機種の記録装置と互換性を持たせることが可能である。そして、この記録装置が特別記録モードにおいてフォントに装飾を施す場合には、このフォントデータを含む部分を、記録ヘッドの最高記録解像度で指定されたフォントで装飾を施して記録する。これにより、文字の潰れを回避しながらフォントデータの装飾を施して記録を行うことができる。従って、最高記録解像度より低い解像度に変換する記録または指定されたフォントより小さいサイズのフォントによる記録を可能としながら、フォントデータの装飾を可能とし、かつ、装飾時の文字の潰れ等を回避できる。
【0006】
また、本発明は、上記記録装置において、前記記録制御部は、前記特別記録モードと前記通常記録モードとを前記記録媒体への記録の行単位で切り換え可能であり、前記記録用データに含まれるフォントデータを前記特別記録モードで記録する際に、少なくとも一部のフォントデータに装飾を施す設定がされている場合には、当該フォントデータを含む行を前記通常記録モードで記録することを特徴とする。
本発明によれば、特別記録モードと通常記録モードとを行単位で切り換えて、装飾を施すフォントデータを含む行を通常記録モードで記録するので、必要な部分のみ装飾を施して、記録する文書のレイアウトを乱すことなく良好な記録結果を得ることができる。
【0007】
また、本発明は、上記記録装置において、前記記録制御部は、前記記録用データに含まれる一部のフォントデータに装飾が設定されている場合には、当該フォントデータを通常記録モードかつ装飾を施した状態で、空白部分を除く当該フォントデータを含む全てを前記記録媒体へ記録する際の同一行に記録できるか否かを判別し、同一行に記録できない場合は装飾なしで前記特別記録モードにより記録することを特徴とする。
本発明によれば、特別記録モードで記録を行う場合に、装飾が施されるフォントデータを含む部分を通常記録モードで装飾を施して記録する際に、特別記録モードで記録する場合よりも行数が増加し、或いは1行からはみ出す部分が生じる等、レイアウトが乱れる場合には、装飾しないで特別記録モードで記録する。これにより、最高記録解像度より低い解像度に変換する記録または指定されたフォントより小さいサイズのフォントによる記録を可能とし、かつ、記録する文書のレイアウトを乱さない範囲で、文字の潰れ等を起こさないようにフォントデータを装飾して記録できる。
【0008】
また、本発明は、上記記録装置において、特別記録モードにおける動作条件と、通常記録モードにおける動作条件とを、それぞれの記録モードで使用するフォント名に対応付けて記憶する記憶部を備え、前記記録制御部は、前記記録用データにフォント名が含まれている場合に、このフォント名に対応付けて前記記憶部に記憶された動作条件を読み出し、読み出した動作条件に対応する動作モードを実行することを特徴とする。
本発明によれば、フォント名によって特別記録モードと通常記録モードとを指定して記録することができるので、フォント名を選択することで、動作モードに関する知識を持たないオペレーターであっても容易に良好な記録結果を得ることができる。
【0009】
また、本発明は、上記記録装置において、前記記録用データは、記録すべきフォントデータと当該フォントの装飾を指示する装飾データとを含み、前記記録制御部は、前記記録用データに含まれる装飾データに基づいて装飾を施すか否かを判別することを特徴とする。
本発明によれば、記録用データに含まれるフォントデータに装飾を施すか否かを速やかに、かつ確実に判別できる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明は、記録するフォントデータを含む記録用データに基づいて、記録ヘッドにより記録媒体にフォントを記録する記録装置の制御方法であって、前記記録ヘッドの最高記録解像度より低い解像度に変換する記録、或いは、指定されたフォントより小さいサイズのフォントに変換する記録のいずれかを行う特別記録モードと、前記記録ヘッドの最高記録解像度で、指定されたフォントにより記録を行う通常記録モードとを切り換えて記録を行い、前記記録用データに含まれるフォントデータを前記特別記録モードで記録する際に、少なくとも一部のフォントに装飾を施す設定がされている場合には当該フォントデータを含む部分を前記通常記録モードで記録を行うことを特徴とする。
本発明の制御方法を実行することで、記録装置は、特別記録モードにより、記録ヘッドの最高記録解像度より低い解像度に変換する記録、或いは、指定されたフォントより小さいサイズのフォントに変換する記録を行うことが可能であるため、例えば他機種の記録装置と互換性を持たせることが可能である。そして、この記録装置が特別記録モードにおいてフォントに装飾を施す場合には、このフォントデータを含む部分を、記録ヘッドの最高記録解像度で指定されたフォントで装飾を施して記録する。これにより、文字の潰れを回避しながらフォントデータの装飾を施して記録を行うことができる。従って、最高記録解像度より低い解像度に変換する記録または指定されたフォントより小さいサイズのフォントによる記録を可能としながら、フォントデータの装飾を可能とし、かつ、文装飾時の文字の潰れ等を回避できる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、記録するフォントデータを含む記録用データに基づいて、記録ヘッドにより記録媒体にフォントを記録する記録装置を制御する制御部が実行するプログラムであって、前記制御部は、前記記録ヘッドの最高記録解像度より低い解像度に変換する記録、或いは、指定されたフォントより小さいサイズのフォントに変換する記録のいずれかを行う特別記録モードと、前記記録ヘッドの最高記録解像度で、指定されたフォントにより記録を行う通常記録モードとを切り換えて記録を行い、前記記録用データに含まれるフォントデータを前記特別記録モードで記録する際に、少なくとも一部のフォントに装飾を施す設定がされている場合には当該フォントデータを含む部分を前記通常記録モードで記録を行うことを特徴とする。
本発明のプログラムを制御部によって実行することにより、特別記録モードにより、記録ヘッドの最高記録解像度より低い解像度に変換する記録、或いは、指定されたフォントより小さいサイズのフォントに変換する記録を行うことが可能であるため、例えば他機種の記録装置と互換性を持たせることが可能である。そして、この記録装置が特別記録モードにおいてフォントに装飾を施す場合には、このフォントデータを含む部分を、記録ヘッドの最高記録解像度で指定されたフォントで装飾を施して記録する。これにより、文字の潰れを回避しながらフォントデータの装飾を施して記録を行うことができる。従って、最高記録解像度より低い解像度に変換する記録または指定されたフォントより小さいサイズのフォントによる記録を可能としながら、フォントデータの装飾を可能とし、かつ、文装飾時の文字の潰れ等を回避できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、最高記録解像度より低い解像度に変換する記録または指定されたフォントより小さいサイズのフォントによる記録を可能としながら、フォントデータの装飾を可能とし、かつ、装飾時の文字の潰れ等を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るプリンターの構成を示す機能ブロック図である。
【図2】プリンターの設定データの内容の具体例を示す説明図である。
【図3】プリンターが受信する印刷ジョブの構成例を模式的に示す図である。
【図4】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【図5】印刷物の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係るプリンター1の構成を示す機能ブロック図である。
記録装置としてのプリンター1は、外部の装置を接続するインターフェイス(I/F)部13を備え、このインターフェイス部13を介してホストコンピューター2に接続されている。プリンター1は、CPU10(記録制御部)によって各部を制御することにより、ホストコンピューター2から送信された印刷ジョブをインターフェイス部13により受信し、この印刷ジョブを実行して、記録媒体としてのロール紙に文字や画像等を印刷(記録)する。
CPU10は、不揮発性メモリー12に記憶された制御プログラム(図示略)を読み出して実行することにより、プリンター1の各部を制御して、上記の印刷動作等を実行させる。この印刷動作において、CPU10は、ゲートアレイ14から入力されるデータに基づき、用紙センサー31及びキャリッジ位置センサー32の検出値を取得し、これらの検出値をもとに、モータードライバー15を制御して、搬送モーター33、キャリッジ駆動モーター34及びカッター駆動モーター35を駆動し、ヘッドドライバー16を制御して、記録ヘッド36を駆動する。
【0015】
プリンター1において使用可能な記録媒体は、連続紙(ロール紙、ファンフォールド紙等)およびカット紙のいずれであってもよく、1枚のシートからなる用紙の他に、単票複写紙、連続複写紙、冊子を用いることも可能である。また、普通紙のほかに感熱紙や表面にコーティングが付された用紙を用いることができる。本実施形態では、80mm幅または58mm幅の普通紙からなるロール紙を用いる場合を例に挙げて説明する。
プリンター1は、ロール紙の残量が所定以上か否かを検出する用紙センサー31と、後述するキャリッジ駆動モーター34により、ロール紙の幅方向(桁方向)に走査されるキャリッジ(図示略)の桁位置を検出するキャリッジ位置センサー32を備えている。また、これらのセンサーが出力するアナログの出力値をデジタルデータに変換してCPU10に出力するゲートアレイ(G/A)14を備えている。
【0016】
プリンター1は、ロール紙を挟持する搬送ローラー(図示略)を回転させて、ロール紙を、その長手方向に搬送する搬送モーター33と、記録ヘッド36を搭載したキャリッジを桁方向に往復走査させるキャリッジ駆動モーター34と、記録ヘッド36により印刷がなされたロール紙を切断するカッター機構(図示略)を駆動するカッター駆動モーター35とを備えている。本実施形態では、一例として、搬送モーター33及びカッター駆動モーター35はステッピングモーターとして構成され、モータードライバー15から入力される駆動電流及び駆動パルスに従って動作する。また、キャリッジ駆動モーター34はサーボモーターとして構成され、モータードライバー15から入力される駆動電流によりキャリッジを移動させる。
【0017】
プリンター1は、複数の記録ワイヤー(図示略)と、これら記録ワイヤーを記録媒体に向けて打突する突出機構(図示略)とを備えた記録ヘッド36を、インリボンカートリッジ(図示略)とともにキャリッジ(図示略)に搭載した構成を有するシリアルドットインパクトプリンターである。
記録ヘッド36は、ヘッドドライバー16により制御される駆動電流により突出機構を動作させ、インクリボンを介して記録ワイヤーをロール紙に打ち当てることでドットを形成することにより、記録媒体に文字や画像を印刷する。記録ヘッド36を搭載したキャリッジは、キャリッジ駆動モーター34によって、ロール紙の幅方向に往復走査される。キャリッジ駆動モーター34がキャリッジを移動させる移動速度と記録ヘッド36が記録ワイヤーを打突するタイミングとはCPU10によって制御可能であり、これにより、ロール紙に形成されるドットピッチすなわち印刷解像度(記録解像度)を任意に調整できる。プリンター1においては、各部の仕様から印刷可能な最大解像度(最高記録解像度)が、標準的な印刷解像度として定められている。プリンター1は、CPU10の制御により、標準的な印刷解像度で印刷を実行可能であるほか、CPU10によってモータードライバー15及びヘッドドライバー16を制御して、キャリッジ駆動モーター34の回転速度と記録ヘッド36の打突タイミングとを調整することで、標準的な印刷解像度より低い任意の解像度で印刷できる。
【0018】
RAM11は、CPU10が実行するプログラムやデータを一時的に記憶する記憶領域を有し、ホストコンピューター2から受信したデータを一時的に記憶する受信バッファー、印刷するフォントデータや画像データをラスターデータに展開して保持するプリントバッファー等として機能する。
不揮発性メモリー12は、CPU10が実行する制御プログラムや、制御プログラムに関する各種設定値などのデータを記憶する。また、不揮発性メモリー12は、記憶部として機能し、印刷解像度やフォント、字間ピッチ等の設定値を含む設定データ20、及び、実際に印刷されるフォントの実フォントデータ21を記憶している。
【0019】
設定データ20は、フォントA〜Dの4つのフォント名に対応付けて、フォントの形態で不揮発性メモリー12に記憶されているが、その実態は、使用するフォント、字間のピッチ、印刷解像度、使用するロール紙の幅等を定めた設定値である。設定データ20により指定されるフォントの実際のフォントデータは実フォントデータ21として不揮発性メモリー12に記憶されている。本実施形態では、2種類のフォント(9ドット×9ドットの英数字のフォントと、7ドット×7ドットの英数字のフォント)が記憶されていて、このいずれかを用いて印刷することができる。
ホストコンピューター2がフォントA〜Dのいずれかのフォント名を指定すると、CPU10は、設定データ20の各フォントから指定されたフォント名に対応する設定値を読み出す。CPU10は、読み出した設定値に合わせた動作モードで印刷する。
【0020】
図2は、設定データ20の内容の具体例を示す図である。
この図2に示すように、フォントA〜Dは、それぞれ、印刷解像度、使用するロール紙の幅(サイズ)、1行あたりの印刷桁数、1行あたりのドット数、使用するフォント、字間のピッチを定めるデータを含んでいる。プリンター1は、フォントA〜Dのうち指定されたフォントのデータに基づく動作モードで動作を行う。なお、1行あたりのドット数は印刷解像度とロール紙の幅から求められ、印刷桁数はフォント、ピッチ、及び横ドット数から求められるため、設定データ20の設定値に含めなくても良い。
【0021】
フォントAの設定値は、プリンター1が印刷可能な最高解像度である180dpiで、標準的なフォントである9ドット×9ドットのフォントを用いて印刷する場合の設定値である。この設定値は標準的な動作モードである「標準モード」(通常記録モード)に対応する。ホストコンピューター2からプリンター1に対して送信される印刷ジョブにより、フォントが指定されていない場合には、プリンター1はフォントAのデータに基づいて印刷する。すなわち、フォントAはデフォルトのフォントとして予め指定されている。
フォントBは、プリンター1よりも低解像度の他機種のプリンターとの互換性を持たせるための、「互換モード」(特別記録モード)に対応する。フォントBの設定値は、印刷解像度を128dpiとし、80mm幅のロール紙に、1行あたり50桁で印刷する場合の設定値であり、このために小さいフォント(7×7)が指定され、字間のピッチは1ドットとされる。
フォントCの設定値は、58mm幅のロール紙を用いて標準的な印刷を行う場合の設定値であり、58mm幅のロール紙を使用する場合の「標準モード」(通常記録モード)に対応する。使用するロール紙の幅が58mmであり、ホストコンピューター2からプリンター1に対して送信される印刷ジョブにより、フォントが指定されていない場合には、プリンター1はフォントCのデータに基づいて印刷する。なお、ロール紙の幅は、ホストコンピューター2から送信されるコマンドにより設定され、オペレーターが操作する操作パネル(図示略)の操作によって設定され、或いは、ロール紙の幅を検出するセンサー(図示略)によって検出される。このため、印刷時に、セットされているロール紙の幅をCPU10が取得できるようになっている。
フォントDは、58mm幅のロール紙を用いて、80mmで印刷する場合との互換性を持たせるための「互換モード」(特別記録モード)に対応する。フォントDの設定値は、印刷解像度を180dpiとし、58mm幅のロール紙に、80mm幅のロール紙に印刷した場合に近い45桁で印刷して、印刷結果の見た目の互換性を持たせるための設定値であり、狭いロール紙に多くの桁数を印刷するため小さいフォントを使用し、字間のピッチも1ドットとなっている。
【0022】
このように、不揮発性メモリー12には、プリンター1の動作モードに対応した設定値がフォントの形態で記憶されているので、ホストコンピューター2からプリンター1に対して「フォント」を指定すると、プリンター1に対して、使用する実フォントの種類だけでなく、字間ピッチ、桁数、印刷解像度を指定できる。つまり、ホストコンピューター2がフォントを指定することで、プリンター1の動作モードを、プリンター1の仕様に適した標準モードと、他機種のプリンターとの互換性を持たせる互換モードとのいずれかに指定できる。また、本実施形態ではフォントA〜Dの4つのフォントが設定データ20として格納されているので、2種類のロール紙の幅に対応している。
【0023】
図3は、ホストコンピューター2からプリンター1に送信される印刷ジョブの構成例を模式的に示す図である。
ホストコンピューター2が印刷ジョブとしてプリンター1に送信し、プリンター1が受信するデータは、各種のコマンドと、印刷すべきデータとを含んでいる。図3に例示する印刷ジョブは、先頭に印刷開始コマンドとフォント指定コマンドとが含まれ、以下に1行分の印刷データと、改行コマンドとが交互に含まれる。印刷ジョブの末尾には、カット位置までロール紙を搬送するための搬送コマンドと、カッター機構によりロール紙をカットさせるためのカットコマンドとが含まれている。
印刷データの先頭のフォント指定コマンドは、上述した設定データ20のフォントA〜Dを指定するコマンドである。CPU10は、このフォント指定コマンドに従って設定データ20のフォントA〜Dのいずれかを選択して読み出す。ここで、CPU10は、現在セットされているロール紙の幅に基づいて、フォントAとC、フォントBとDをロール紙の幅に合わせて適宜選択してもよい。
【0024】
印刷データには、1行に印刷するフォントデータ(文字データ)が含まれている。また、その行に印刷される全部または一部のフォントデータに装飾を施す場合には、印刷データに、装飾を指定する装飾データが含まれる。装飾データは、装飾の種類を示すデータと、装飾の開始位置及び終了位置を示すデータとを含んでいる。装飾の種類としては、例えば、太字、斜体、横拡大、縦拡大、縮小、上付き、下付き等が挙げられる。装飾の開始位置と終了位置は、例えば桁位置で指定される。
【0025】
上述したように、プリンター1は、ホストコンピューター2から受信した印刷ジョブによりフォントB、Dが指定された場合、互換モードとして動作し、小さいフォントを用いて印刷する。この互換モードでは、1文字あたりのドット数が少ないため、太字、斜体、縮小などの装飾を施すと、文字の潰れが起き、視認性を損なう可能性がある。
そこで、プリンター1は、互換モードにおいて装飾が指定されたフォントデータを印刷する場合には、そのフォントデータを含む行を標準モードで印刷する。これにより、文字の潰れを起こさずにフォントデータの装飾を施して印刷できる。
ここで、本実施形態の標準モードでは1行あたりの桁数が互換モードよりも少なくなるので、フォントデータに装飾を施すために標準モードに切り換えた場合、印刷データに含まれる1行の文字が、1行に収まらなくなる可能性がある。そこで、プリンター1は、装飾が指定されたフォントデータを含む行を印刷する場合、標準モードで1行に収めて印刷可能な場合は、その行を標準モードで印刷し、標準モードでは1行に収まらない場合には、互換モードのまま装飾を施すことなく印刷する。この動作についてフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0026】
図4は、プリンター1の印刷動作を示すフローチャートである。
プリンター1のCPU10は、ホストコンピューター2から送信された印刷ジョブをインターフェイス部13により受信し(ステップS11)、印刷ジョブに含まれるフォント指定コマンドを解析する(ステップS12)。CPU10は、フォント指定コマンドにより指定されたフォント名に従って、指定されたフォントを設定データ20のフォントA〜Dから選択するとともに、指定されたフォントが互換モードのフォントか標準モードのフォントかを判別する(ステップS13)。指定されたフォントが互換モードのフォントである場合(ステップS13;Yes)、CPU10は、互換モードで印刷を開始する(ステップS14)。すなわち、フォント指定コマンドにより指定されたフォントの設定値に従って、印刷解像度と実フォントとピッチを設定する。
【0027】
CPU10は、印刷対象の行の印刷データを取得し(ステップS15)、この行の印刷データに含まれる装飾データを検出して、装飾の有無を判別する(ステップS16)。印刷対象の行の一部または全部のフォントデータに装飾が指定されている場合(ステップS16;Yes)、CPU10は、印刷対象の行を標準モードで印刷し、かつ装飾を施した場合に、1行に全ての文字を印刷できるか否かを判別する(ステップS17)。
各々の互換モードには、対応する標準モードが予め設定されている。本実施形態の例では、フォントB(互換モード)にはフォントA(標準モード)が対応付けられ、フォントD(互換モード)にはフォントC(標準モード)が対応付けられている。これは使用するロール紙の幅が共通しているためであるが、他の理由で対応付けが決められても良い。この各互換モードと標準モードとの対応関係を示す情報は、例えば設定データ20に記憶されている。
また、1行に印刷可能な桁数は、装飾の種類や装飾する文字数によって変わる。装飾の種類が縮小や下付きなど文字が小さくなる装飾を施す場合は印刷可能桁数が増え、太字や斜体、拡大などの装飾を施す場合は文字が大きくなるので印刷可能桁数が減る。このような装飾による印刷可能桁数への影響は、装飾するフォントデータの字数が多いほど、大きい。このため、CPU10は、ステップS17で、印刷対象の行を標準モードでかつ装飾を施した場合に1行分のフォントデータが同一の行に収まるか否かを判別する。
【0028】
そして、印刷対象の行を標準モードで、かつ装飾データで指定された装飾を施して、同一の行に全てのフォントデータを印刷できる場合(ステップS17;Yes)、CPU10は、互換モードから、対応する標準モードに切り換えて、装飾するフォントデータを含む行を標準モードで、装飾を施して印刷する(ステップS18)。
また、装飾データにより装飾が指示されたフォントデータが含まれない場合(ステップS16;No)、及び、印刷対象の行を標準モードで装飾を施して印刷すると同一の行に収まらない場合(ステップS17;No)、CPU10は、印刷対象の行を、フォント指定コマンドにより指定されたフォント名に対応する互換モードで、装飾を施すことなく印刷する(ステップS19)。
【0029】
ステップS18、S19で印刷を行った後、CPU10は、印刷ジョブに含まれる全ての印刷データの印刷を完了したか否かを判別し(ステップS20)、まだ印刷していない印刷データがある場合には(ステップS20;No)、ステップS15に戻る。一方、全ての印刷データを印刷した場合(ステップS20;Yes)、CPU10はホストコンピューター2からの印刷ジョブまたは他のコマンドの送信に待機する待機状態に移行して(ステップS21)、本処理を終了する。
また、印刷ジョブのフォント指定コマンドにより指定されたフォント名が標準モードに対応する場合(ステップS13;No)、CPU10は、指定されたフォント名に従って設定データ20からフォントを選択し、このフォントの内容に従って設定を行い、標準モードで印刷する(ステップS22)。印刷終了後はステップS21に移行する。
【0030】
図5は、図4に示す動作により印刷される印刷物の具体例を示す図であり、図5(A)は全ての行を互換モードで印刷した例を示し、図5(B)は一部の行を標準モードで印刷し、装飾を施した例を示す。
この図5(A)に例示するように、多くの場合、互換モードでは低解像度の他機種のプリンターや幅の大きい用紙に印刷した場合との互換性を持たせるため、1行あたりの桁数を多くする必要があり、小さな文字で印刷される。このような互換モードの文字を、太字や斜体にしたり、フォントデータを縮小したりすると、文字の潰れ等を起こして判読性が損なわれかねない。しかし、全ての装飾を排除してしまうと印刷物の外観が平坦な印象となり、美観の点で劣ってしまう。
そこで、図5(B)に例示するように、行単位で互換モードと標準モードとを切り換えて、装飾が必要な行は標準モードのフォントを用いて印刷することで、美観の面で優れた印刷物を提供できる。また、標準モードで印刷すると同一行に収まらない場合には互換モードで印刷を行うので、桁数の少ない標準モードで、かつ、太字等の装飾により印刷可能桁数が減少する場合であっても、1行で印刷すべき行が2行に跨ってしまうことがなく、印刷レイアウトを大きく崩してしまう心配がない。
図5(B)に示す例では、標準モードで印刷する行は、全てのフォントデータに拡大または太字の装飾が施されているが、一部のフォントデータのみ装飾することも勿論可能である。
【0031】
以上のように、本発明を適用した実施形態に係るプリンター1によれば、CPU10の制御によって、印刷するフォントデータを含む印刷ジョブに基づいて記録ヘッド36によりロール紙に文字を印刷し、CPU10は、記録ヘッド36の最高印刷解像度より低い解像度に変換する印刷、或いは、指定されたフォントより小さいサイズのフォントに変換する印刷のいずれかを行う互換モードと、記録ヘッド36の最高記録解像度で指定されたフォントにより印刷する標準モードとを切り換えて実行可能であり、互換モードでフォントデータを印刷する際に、一部のフォントデータに装飾を施す場合には当該フォントデータを含む部分を、標準モードで、指定された装飾を施して印刷する。このため、記録ヘッド36の最高印刷解像度よりも低い解像度に変換する印刷または通常使用するフォントとして指定されたフォントよりも小さいサイズのフォントに変換する印刷を行うことが可能であり、例えば他機種のプリンターと互換性を持たせることが可能である。そして、このプリンター1が、装飾が指定されたフォントデータを印刷する場合に、そのフォントデータを含む部分を、より解像度が高く、或いはより大きいサイズのフォントを用いる標準モードで印刷するので、文字の潰れ等を回避しながら装飾を施して印刷できる。従って、最高記録解像度より低い解像度に変換する記録または指定されたフォントより小さいサイズのフォントによる記録を可能としながら、フォントデータの装飾を可能とし、かつ、装飾時の文字の潰れ等を回避できる。
【0032】
また、CPU10は、互換モードと標準モードとを行単位で切り換え可能であり、印刷ジョブにより印刷が指示されたフォントデータを互換モードで印刷する際に、装飾を施すフォントデータを含む行を標準モードに切り換えて印刷するので、必要な部分のみ装飾を施して、印刷する文書のレイアウトを乱すことなく良好な記録結果を得ることができる。
【0033】
さらに、CPU10は、印刷ジョブのフォントデータに装飾データにより装飾が設定されている場合に、当該フォントデータを通常記録モードでかつ装飾を施した状態で、空白部分を除く当該フォントデータを含む全てを、ロール紙に同一の行に印刷できるか否かを判別し、同一行に印刷できない場合は装飾なしで互換モードにより印刷するので、標準モードに切り換えて装飾を施すことによって行数が増加し、或いは1行からはみ出す部分が生じる等、レイアウトが乱れる場合には、装飾を行わずに互換モードで印刷する。これにより、最高印刷解像度より低い解像度に変換する印刷または指定されたフォントより小さいサイズのフォントによる印刷を可能とし、かつ、印刷する文書のレイアウトを乱さない範囲で、文字の潰れ等を起こさないようにフォントデータを装飾して記録できる。
【0034】
また、プリンター1は、互換モードにおける動作条件(印刷解像度、フォント、字間のピッチ等)と、標準モードにおける動作条件とを、それぞれの印刷モードで使用するフォント名A〜Dに対応付けて記憶し、CPU10は、印刷ジョブにフォント名が含まれている場合に、このフォント名に対応付けて不揮発性メモリー12に記憶されたフォントA〜Dの内容に対応する動作モード(互換モード、標準モード)を実行するので、フォント名によって互換モードと標準モードとを指定して印刷できる。このため、フォント名を選択することで、動作モードに関する知識を持たないオペレーターであっても、ホストコンピューター2を操作してフォント名を指定することで、他機種のプリンターとの互換性を持たせた2種類の互換モードと、標準モードとを任意に指定することができ、容易に良好な印刷結果を得ることができる。
【0035】
また、印刷ジョブには、印刷すべきフォントデータと装飾を指示する装飾データとが含まれており、この装飾データに基づいてCPU10が装飾を施すか否かを判別するので、印刷ジョブに含まれるフォントデータに装飾を施すか否かを速やかに、かつ確実に判別できる。
【0036】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、不揮発性メモリー12に、4つのフォント名に対応付けて4種類の設定データ20が記憶され、そのうち互換モードが2種類、標準モードが2種類含まれていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、互換モード及び標準モードに対応するフォントの数はいずれも制限されない。例えば、フォントのサイズを拡大し、或いは文字ピッチを拡げるような互換モードに対応するフォントを設定データ20に記憶させても良い。この互換モードでは文字装飾を施しても文字の潰れが起きにくいので、CPU10は、文字の潰れが起きやすい互換モードでは、ステップS13〜S19(図4)の処理により文字装飾を行う行を標準モードで記録する動作を行い、文字の潰れが起きにくい互換モードでは、標準モードと同様に、他の動作モードに切り換えることなく文字装飾を含めて指定された通りの印刷を行ってもよい。
また、上記実施形態では、印刷ジョブに含まれる装飾データに基づいて装飾を行うか否かを判別する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、印刷ジョブに装飾を指示するコマンドが含まれている場合には、このコマンドに基づいて、どのフォントデータにどのような装飾を施すかを識別しても良い。また、印刷ジョブに含まれる文字に対してその他の方法で装飾が指定された場合も、印刷ジョブを解析して、CPU10が自動的に装飾されるフォントデータと装飾の種類とを特定すればよい。
【0037】
また、上記実施形態では、ロール紙に対して記録ヘッド36を搭載したキャリッジを走査させて印刷するシリアルドットインパクトプリンターを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱昇華型やインクジェット式プリンターに本発明を適用することも可能であり、また、ラインヘッドを有するサーマルプリンターやドットインパクトプリンターに本発明を適用してもよい。その他、他の装置に組み込まれる各種プリンターにも本発明を適用可能である。また、上述の動作を行うCPU10が実行するプログラムは、プリンター1が備える不揮発性メモリー12に限らず、他の記憶装置、記憶媒体や外部装置の記憶媒体に記憶させ、CPU10により読み出して実行する構成としても良い。
【符号の説明】
【0038】
1…プリンター(記録装置)、2…ホストコンピューター、10…CPU(記録制御部)、12…不揮発性メモリー(記憶部)、20…設定データ、21…実フォントデータ、36…記録ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドと、記録するフォントデータを含む記録用データに基づいて前記記録ヘッドにより記録媒体にフォントを記録する記録制御部と、を備え、
前記記録制御部は、前記記録ヘッドの最高記録解像度より低い解像度に変換する記録、或いは、指定されたフォントより小さいサイズのフォントに変換する記録のいずれかを行う特別記録モードと、前記記録ヘッドの最高記録解像度で、指定されたフォントにより記録を行う通常記録モードとを切り換えて実行可能であり、前記記録用データに含まれるフォントデータを前記特別記録モードで記録する際に、少なくとも一部のフォントに装飾を施す設定がされている場合には、当該フォントデータを含む部分を前記通常記録モードで記録すること、
を特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録制御部は、前記特別記録モードと前記通常記録モードとを前記記録媒体への記録の行単位で切り換え可能であり、前記記録用データに含まれるフォントデータを前記特別記録モードで記録する際に、少なくとも一部のフォントデータに装飾を施す設定がされている場合には、当該フォントデータを含む行を前記通常記録モードで記録することを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録制御部は、前記記録用データに含まれる一部のフォントデータに装飾が設定されている場合には、当該フォントデータを通常記録モードかつ装飾を施した状態で、空白部分を除く当該フォントデータを含む全てを前記記録媒体へ記録する際の同一行に記録できるか否かを判別し、同一行に記録できない場合は装飾なしで前記特別記録モードにより記録することを特徴とする請求項1または2記載の記録装置。
【請求項4】
特別記録モードにおける動作条件と、通常記録モードにおける動作条件とを、それぞれの記録モードで使用するフォント名に対応付けて記憶する記憶部を備え、
前記記録制御部は、前記記録用データにフォント名が含まれている場合に、このフォント名に対応付けて前記記憶部に記憶された動作条件を読み出し、読み出した動作条件に対応する動作モードを実行することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録用データは、記録すべきフォントデータと当該フォントの装飾を指示する装飾データとを含み、
前記記録制御部は、前記記録用データに含まれる装飾データに基づいて装飾を施すか否かを判別することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
記録するフォントデータを含む記録用データに基づいて、記録ヘッドにより記録媒体にフォントを記録する記録装置の制御方法であって、
前記記録ヘッドの最高記録解像度より低い解像度に変換する記録、或いは、指定されたフォントより小さいサイズのフォントに変換する記録のいずれかを行う特別記録モードと、前記記録ヘッドの最高記録解像度で、指定されたフォントにより記録を行う通常記録モードとを切り換えて記録を行い、
前記記録用データに含まれるフォントデータを前記特別記録モードで記録する際に、少なくとも一部のフォントに装飾を施す設定がされている場合には当該フォントデータを含む部分を前記通常記録モードで記録を行うこと、
を特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項7】
記録するフォントデータを含む記録用データに基づいて、記録ヘッドにより記録媒体にフォントを記録する記録装置を制御する制御部が実行するプログラムであって、
前記制御部は、前記記録ヘッドの最高記録解像度より低い解像度に変換する記録、或いは、指定されたフォントより小さいサイズのフォントに変換する記録のいずれかを行う特別記録モードと、前記記録ヘッドの最高記録解像度で、指定されたフォントにより記録を行う通常記録モードとを切り換えて記録を行い、前記記録用データに含まれるフォントデータを前記特別記録モードで記録する際に、少なくとも一部のフォントに装飾を施す設定がされている場合には当該フォントデータを含む部分を前記通常記録モードで記録を行うこと、
を特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−86485(P2012−86485A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236198(P2010−236198)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】