説明

記録装置及びその処理方法

【課題】画像データのうちの特定オブジェクトについて、そのエッジ部分のシャープネスを高くして記録を鮮明に行なえるようにする。
【解決手段】記録装置10は、同色インクに対応した複数の記録ヘッド14を有し、画像データから、予め決められたオブジェクトを特定し、特定オブジェクトを背景データと分離して抽出する抽出手段と、特定オブジェクトの外形のみを展開し、特定オブジェクトのアウトラインデータを生成する第1の展開手段67と、特定オブジェクトの全てを展開しその全体画像データを生成するとともに、背景データの全てを展開し背景画像データを生成する第2の展開手段68と、全体画像データ及び背景画像データを複数の記録ヘッド各々に分配して割り当てるとともに、アウトラインデータを複数の記録ヘッドのうちのいずれか1つに割り当てる割当手段と、複数の記録ヘッドを用いて、各記録ヘッドに割り当てられたデータに基づく記録を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及びその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式を採用した記録装置が知られている。一般に、インクジェット方式を採用した記録装置では、複数のノズルを配列した記録ヘッドをインク色と同数だけ備え、各記録ノズルからインクを吐出しながら記録媒体を走査することで記録媒体上に画像を記録する。
【0003】
このような記録装置の中でも、例えば、記録媒体の幅に相当する記録幅を持つ、いわゆる、フルラインタイプの記録装置においては、記録ヘッドが記録媒体上を走査する回数が一度だけである。そのため、ノズルのいずれかに不具合を生じて不吐出になる、各記録ノズルから吐出されるインク量の差によって形成された画像にムラを生じる、等の不具合が発生する可能性が高い。
【0004】
このような問題を解決するため、同色のインクに対して複数の記録ヘッドを備え、吐出するノズルを分散するようにした技術が提案されている。このような技術を採用した場合、1つのインク色で描かれる描画プレーンに対して複数ヘッドを使って描画を行なえる。そのため、画像の濃度向上や不吐出ノズルが発生した場合のフォローを行なうことができる等のメリットが得られる。
【0005】
また、このような記録装置では、高い鮮明性と高い濃度とを有する画像の記録が求められている。そこで、画像の構成要素毎にエッジ部及び非エッジ部を検出し、これらエッジ部及び非エッジ部の最大記録デューティを異ならせることで、画像のエッジ部を鮮明にし、且つ画像の非エッジ部の濃度を上げる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
しかし、上記した記録装置においては、複数の記録ヘッドについて記録位置の原点を一致させ、複数ヘッド間で記録画像のずれが発生しないようにする必要がある。これができない場合、複数ヘッドで記録した画像間にずれが生じ、記録結果のぼやけやムラが発生したり、また、画像のエッジ部が損なわれる等の不具合が発生したりする。特に、オフィス系と呼ばれるテキスト文書をメインで記録するような記録装置では、文字画像(文字オブジェクト)の輪郭部がシャープに記録されないことは致命的となる。
【0007】
これらの問題点を解決するための手法としては、画像エッジ部のシャープさを保証したい画像、例えば、文字部分を抽出し、片方のヘッドのみで記録するよう割り当てることで、シャープな文字画像を記録する技術が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−96188号公報
【特許文献2】特開平10−278346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1に開示された方法では、エッジ部を鮮明にしたい対象画像を複数の記録ヘッドに均等に割り当ててしまう。そのため、複数の記録ヘッド間にずれが発生している場合、画像エッジ部にもずれが生じ、文字エッジなどのぼやけが発生してしまう(図9(b))。
【0010】
また、特許文献2に開示された方法では、例えば、文字部分を単一の記録ヘッドのみを使用して記録するため、文字画像を100%以上の記録デューティで記録することができず、画像の鮮明さを欠いてしまう。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、画像データのうちの特定オブジェクトについて、そのエッジ部分のシャープネスを高くして記録を鮮明に行なえるようにした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、同色インクに対応した複数の記録ヘッドを有し、該複数の記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に走査して該複数の記録ヘッドに配された各ノズルからインクを吐出して記録媒体上に画像を記録する記録装置であって、1又は複数のオブジェクトを含む画像データから、予め決められたオブジェクトを特定し、該特定オブジェクトを背景データと分離して抽出する抽出手段と、前記特定オブジェクトの外形のみを展開し、該特定オブジェクトのアウトラインデータを生成する第1の展開手段と、前記特定オブジェクトの全てを展開しその全体画像データを生成するとともに、前記背景データの全てを展開し背景画像データを生成する第2の展開手段と、前記全体画像データ及び前記背景画像データを前記複数の記録ヘッド各々に分配して割り当てるとともに、前記アウトラインデータを前記複数の記録ヘッドのうちのいずれか1つに割り当てる割当手段と、前記複数の記録ヘッドを用いて、各記録ヘッドに割り当てられたデータに基づく記録を制御する記録制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画像データのうちの特定オブジェクトについて、そのエッジ部分のシャープネスを高くして記録を鮮明に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる記録装置を配して構成した記録システムの全体構成の一例を示す図。
【図2】記録ヘッド14の構成の一例を示す図。
【図3】図1に示す記録システムの機能的な構成の一例を示す図。
【図4】文字データの概要を示す図。
【図5】ホストコンピュータ40の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図6】記録装置10(コントローラ20)の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図7】記録装置10(エンジンコントローラ30)の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図8】図7に示すS303〜S307の処理の概要を示す図。
【図9】(a)は本実施形態に係わる効果を示す図であり、(b)は従来の課題を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明においては、インクジェット記録方式を用いた記録装置を例に挙げて説明する。記録装置は、例えば、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであっても良いし、また、例えば、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであっても良い。また、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置であっても良い。
【0016】
なお、以下の説明において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。更に人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン、構造物等を形成する、又は媒体の加工を行なう場合も表す。
【0017】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。
【0018】
更に、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表す。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係わる記録装置を配して構成した記録システムの全体構成の一例を示す図である。
【0020】
記録システムは、ホストコンピュータ40と、記録装置10とを具備して構成される。これら装置は、ネットワーク41を介して相互通信可能に接続されている。なお、勿論、両装置間は、例えば、USB(Universal Serial Bus)やIEEE1394などで接続されていても良いし、また、有線であっても無線であっても良い。
【0021】
ホストコンピュータ40は、印刷データを供給する機能を果たす。ホストコンピュータ40には、CPU等の主制御手段、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段が具備される。また、コンピュータにはその他、キーボードやマウス等の入出力手段、ネットワークカード等の通信手段等も具備されていても良い。なお、これら各構成部は、バス等により接続され、主制御手段が記憶手段に記憶されたプログラムを実行することで制御される。
【0022】
記録装置10は、ホストコンピュータ40から送られてきた印刷データに基づいて記録媒体上に画像を形成し記録を行なう機能を果たす。記録装置10には、当該印刷データを受信し、それの解析結果に基づいて記録ヘッド14(14a、14b)を制御して記録媒体上に記録を行なう。
【0023】
ここで、記録装置10は、オペレータパネル11と、コントローラ20と、エンジンコントローラ30と、記録ヘッドユニット13と、各アクチュエータ12とを具備して構成される。
【0024】
コントローラ20は、記録装置10における処理を統括制御する。コントローラ20には、RAM21と、メモリコントローラ22と、NVRAM23と、ROMコントローラ24と、パネルコントローラ25と、ネットワークI/F26と、CPU27と、画像処理回路28と、内部I/F29とが設けられる。
【0025】
RAM21は、各種情報を一時的に記憶する揮発性のメモリであり、メモリコントローラ22により制御される。NVRAM(Non Volatile RAM)は、プログラム等が格納される不揮発性ノメモリであり、ROMコントローラ24により制御される。パネルコントローラ25は、オペレータパネル11の制御を行なう。
【0026】
ネットワークI/F26は、外部装置(例えば、ホストコンピュータ40)との間のネットワーク41を介した通信を制御する。CPU27は、コントローラ20における処理を統括制御する。画像処理回路28は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成され、各種画像処理を行なう。内部I/F29は、エンジンコントローラ30との間の通信を制御する。
【0027】
エンジンコントローラ30は、コントローラ20からのジョブの投入に従い、記録ヘッド14や記録媒体の搬送の制御を行なう。エンジンコントローラ30には、プリントバッファ31と、デバイス制御回路32と、I/F33と、CPU34とが設けられる。
【0028】
プリントバッファ31は、各記録ヘッドに割り当てられたデータを一時的に格納する領域である。すなわち、プリントバッファ31内は、各記録ヘッドに対応してその領域が区切られており、各領域には各記録ヘッドに割り当てられたデータが格納される。
【0029】
内部I/F33は、コントローラ20との間の通信を制御する。CPU34は、エンジンコントローラ30における処理を統括制御する。デバイス制御回路32は、例えば、ASIC等で構成され、各種デバイスを制御する(各種アクチュエータ12、記録ヘッド14等)。
【0030】
ここで、記録ヘッドユニット13には、図2に示すように、複数の記録ヘッド14が設けられている。より具体的には、記録ヘッドユニット13には、記録媒体Pの幅に相当する記録幅を持つ、いわゆる、フルラインタイプの記録ヘッド14が設けられている。
【0031】
記録ヘッド各々は、図2に示すように、記録媒体Pの搬送方向と直交する方向(ノズル15の配列方向)に延在して設けられる。ここで、複数の記録ヘッドのうち、少なくとも2つの記録ヘッドは、同色のインクを吐出するように構成されている。
【0032】
なお、図2の場合、各記録ヘッド14にノズル列が2つずつ設けられているが、あくまで一例であり、これに限られない。また、例えば、このようなフルラインライプの記録ヘッド14においては、一般に、1又は複数のノズル列が記録チップに設けられており、当該記録チップが千鳥状に複数配されている場合が多いが、図2では当該構成についての図示は省略している。
【0033】
次に、図3を用いて、図1に示す記録システムの機能的な構成の一例について説明する。
【0034】
ホストコンピュータ40においては、OS(Operating System)上で、アプリケーション51とプリンタドライバ52とが動作しており、これらソフトウェアによって記録装置10に対して印刷データを供給する。また、ホストコンピュータ40では、RAM21等において背景データバッファ53及び文字データバッファ54が仮想的に確保されており、印刷データの生成に際して、これら領域をワークエリアとして利用する。
【0035】
記録装置10のコントローラ20には、I/F管理部61と、設定解析部62と、データ抽出部63と、ジョブ管理部64と、文字データバッファ65と、背景データバッファ66とが具備される。また、第1の展開部67、第2の展開部68、アウトラインバッファ71、文字画像バッファ72、等も具備される。
【0036】
I/F管理部61は、ネットワークI/F26を介したネットワーク通信を制御する。設定解析部62は、ホストコンピュータ40から受信した印刷データをデコードし、記録設定に係わる情報を抽出しそれを解析する。データ抽出部63は、当該解析結果に基づいて、印刷データから画像領域を抽出し、それを更に、背景データと文字データとに別々に分離して抽出する。そして、当該背景データを背景データバッファ66に格納し、文字データを文字データバッファ65に格納する。
【0037】
ジョブ管理部64は、ホストコンピュータ40から受信した印刷データに基づいてジョブを生成し、記録処理が完了するまでの間、当該ジョブの管理を行なう。
【0038】
第1の展開部67は、文字データバッファ65に格納された文字データのうち、文字外形(アウトライン)のみをレンダリング(2値化及びビットマップ化)し、アウトラインデータを生成する。そして、当該展開後のデータ(アウトラインデータ)をアウトラインバッファ71に格納する。
【0039】
第2の展開部68には、文字画像展開部69と、背景画像展開部70とが具備される。文字画像展開部69は、文字データバッファ65に格納された文字データ(の全て)をレンダリング(2値化及びビットマップ化)し、文字全体画像データを生成する。そして、当該展開後のデータ(文字全体画像データ)を文字画像バッファ72に格納する。
【0040】
背景画像展開部70は、背景データバッファ66に格納された背景データ(の全て)をレンダリング(2値化及びビットマップ化)し、背景画像データを生成する。そして、当該展開後のデータ(背景画像データ)を背景画像バッファ73に格納する。
【0041】
ここで、図4を用いて、上述した文字データについて説明する。例えば、TrueTypeなどの文字フォントは、一般的に、アウトラインフォントなどと呼ばれ、文字外形の相対的な座標や曲線データを含んで構成される(図4(a))。文字データのラスタライザにおいては、これらの外形データをトレースすることで文字外形をメモリ上に形成し(図4(b))、この内部を塗りつぶし処理することで文字のラスタデータを生成する(図4(c))。すなわち、本実施形態においては、図4(b)に示すアウトラインデータがアウトラインバッファ71に格納され、図4(c)に示す文字全体画像データが文字画像バッファ72に格納される。
【0042】
エンジンコントローラ30には、搬送コントローラ81と、搬送ユニット82と、ヘッドコントローラ83とが具備される。
【0043】
搬送ユニット82は、カセットや手差しなどの給紙口から記録媒体(用紙)を引き込み、それを搬送して排紙口に排紙する。搬送コントローラ81は、記録媒体の搬送に係わるアクチュエータを制御し、搬送ユニット82に記録媒体を搬送させる。その他、ソータ・ステプラ等の給紙・排紙関連アクセサリ等の制御を司る。
【0044】
ヘッドコントローラ83は、ヘッド制御に係わるアクチュエータ及びヘッド駆動を制御する。また、ヘッドコントローラ83は、ノズルの吐出制御や、ヘッド回復装置等のインク供給に係わるアクチュエータの制御等も行なう。
【0045】
ここで、ヘッドコントローラ83には、割当部84と、選択部85と、記録制御部86と、不吐検出部87とが設けられる。割当部84は、コントローラ20により処理された画像データ(背景画像データ、文字画像データ)を各記録ヘッドに割り当てる。選択部85は、複数の記録ヘッド14のうちのいずれか1つを選択する。詳細については後述するが、アウトラインデータに基づく記録は、この選択部85により選択された単一の記録ヘッド14によって行なわれる。記録制御部86は、割当部84の割当結果や選択部85による記録ヘッドの選択情報に基づいて各記録ヘッド14による記録処理を制御する。不吐検出部87は、記録ヘッド各々に配された各ノズルの不吐状態を検出する。すなわち、不吐ノズルの検出を行なう。
【0046】
次に、図1示す記録システムの処理の流れの一例について説明する。ここでは、ホストコンピュータ40のアプリケーションにおいて作成したドキュメントを、記録装置10において記録媒体上に記録する際の処理の流れについて説明する。
【0047】
まず、図5を用いて、ホストコンピュータ40の処理の流れの一例について説明する。
【0048】
ホストコンピュータ40は、プリンタドライバ52において、アプリケーション51を介したユーザからの記録処理の開始の指示を受信する(S101)。すると、プリンタドライバ52は、アプリケーション51から引き渡されたデータを文字データとそれ以外の背景データとに分離する。そして、文字データを文字データバッファ54に格納し、背景データを背景データバッファ53に格納する(S102)。
【0049】
続いて、プリンタドライバ52は、記録装置10が認識可能な形式の印刷データを生成する。具体的には、文字データを文字データ層に配置し、背景データデータを背景データ層に配置した印刷データを生成する(S103)。この印刷データは、記録装置10に応じたPDL(page description language)フォーマットで記述され、S102の処理で分離された背景データと文字データとが同一ファイル内に含められる。
【0050】
印刷データの生成が済むと、プリンタドライバ52は、当該生成した印刷データをネットワーク41を介して記録装置10へ送信する(S104)。
【0051】
次に、図6及び図7を用いて、記録装置10の処理の流れの一例について説明する。ここでは、まず、図6を用いて、コントローラ20において行なわれる処理(記録前の準備処理)の流れについて説明する。
【0052】
コントローラ20は、I/F管理部61において、ネットワークI/F26を介してホストコンピュータ40から印刷データを受信する(S201)。そして、設定解析部62において、当該印刷データのPDLコマンドに基づいて記録設定に係わる情報を解析する(S202)。
【0053】
続いて、コントローラ20は、データ抽出部63において、印刷データ内の画像データの圧縮解凍を行なう(S203)。更に、データ抽出部63は、文字データを抽出し、文字データバッファ65へ格納するとともに、背景データを抽出し、背景データバッファ66へ格納する(S204)。
【0054】
バッファへの格納が済むと、コントローラ20は、ジョブ管理部64において、S202の解析結果に基づく記録設定を取得し、当該記録設定に従って印刷ジョブを生成する(S205)。そして、ジョブ管理部64は、当該生成したジョブに従ってヘッドコントローラ83及び搬送コントローラ81を起動させて記録準備を行なわせた後(S206)、第1の展開部67及び第2の展開部68を起動させる(S207)。
【0055】
ここで、第1の展開部67は、文字データバッファ65に格納されている文字データについてアウトラインデータ(文字外形データ)を形成する。例えば、文字外形データに(フォント内部に向かって)所定のドット数の厚みを持たせたビットマップデータを生成し、アウトラインバッファ71の指定座標へ格納する(S208)。
【0056】
また、第2の展開部68は、文字画像展開部69において、上記S208の処理と同じ文字データについてその文字データ全体を通常のビットマップデータ(文字全体画像データ)への展開を行なう。そして、文字画像バッファ72の指定座標へ格納する。また、第2の展開部68は、背景画像展開部70において、背景データ(全体)について通常のビットマップデータ(背景画像データ)への展開を行なう。そして、背景画像バッファ73へ格納する(S209)。
【0057】
第1の展開部67及び第2の展開部68は、文字データバッファ65に格納された全ての文字データ及び背景データバッファ66に格納された全ての背景データについてそれぞれの展開処理が完了すると、ジョブ管理部64へ処理完了通知を発行する(S210)。
【0058】
次に、図7を用いて、エンジンコントローラ30において行なわれる処理(記録処理)の流れについて説明する。
【0059】
記録装置10は、コントローラ20のジョブ管理部64において、第1の展開部67及び第2の展開部68から処理完了通知を受けるとともに、エンジンコントローラ30から記録準備完了通知を受ける。すると、ジョブ管理部64から搬送コントローラ81及びヘッドコントローラ83へ記録開始通知が送信され、エンジンコントローラ30における処理が開始する(S301)。
【0060】
この処理が開始すると、搬送コントローラ81は、記録媒体(用紙)搬送動作を開始する。すなわち、用紙の引き込み、用紙の搬送及び排紙処理を開始する(S302)。また、ヘッドコントローラ83は、搬送ローラと連動するエンコーダパルスの入力を受け(S303)、背景画像バッファ73、アウトラインバッファ71及び文字画像バッファ72からそれぞれ1ライン分のビットマップデータを取得する。
【0061】
この取得処理では、まず、ヘッドコントローラ83は、割当部84において、背景画像バッファ73から背景画像データを取得し、当該データを複数の記録ヘッド全ての出力バッファ(プリントバッファ31)に均等に分配して割り当てる(S304)。続いて、割当部84は、文字画像バッファ72から文字全体画像データを取得し、複数の記録ヘッド全ての出力バッファ(プリントバッファ31)に均等に分配して割り当てる(S305)。なお、S304の処理で取得した背景画像データと、S305の処理で取得した文字全体画像データとで重複する領域がある場合、文字全体画像データが優先されて上書きされる。
【0062】
続いて、割当部84は、アウトラインバッファ71からアウトラインデータを取得し、全ての記録ヘッドのうちいずれか1つ(単一)の記録ヘッドの出力バッファ(プリントバッファ31)に書き込む(S306)。アウトラインデータが、S304の処理で取得した背景画像データ及びS305の処理で取得した文字全体画像データと重複する領域がある場合、アウトラインデータが優先され上書きされる。すなわち、当該単一の記録ヘッドに対しては、文字に係わるデータとして、文字全体画像データと、アウトラインデータとの論理和が割り当てられる。
【0063】
このようにして各記録ヘッド14へのデータの割り当てが済むと、ヘッドコントローラ83は、記録制御部86において。吐出信号を発行し、各記録ヘッド14からインクを吐出させる(S307)。これにより、記録媒体上に1ライン分の画像が記録される。
【0064】
その後、全てのラインについて上述した処理が完了していれば(S308でYES)、エンジンコントローラ308は、この処理を終了し、完了していなければ(S308でNO)、上述したS303〜307の処理を繰り返し行なう。
【0065】
なお、S306の処理における単一の記録ヘッドの選択の仕方としては、種々の方法が考えられるが、どのような方法で選択しても良い。例えば、単に、排紙口に近い位置の記録ヘッドを選択するようにしても良い。また、例えば、不吐検出部87(なお、この構成は記録ヘッドの外部に設けられていても良い)によって不吐ノズルを検出し、その検出結果に基づいて最もノズルの状態の良い(不吐ノズルの少ない)記録ヘッドを選択するようにしても良い。
【0066】
ここで、図8を用いて、上述したS303〜S307の処理の概要について説明する。具体例として、図8(a)に示す文字オブジェクトと背景オブジェクトとで構成される画像(オリジナル画像)を記録媒体上に記録する場合について説明する。また、ここでは、記録ヘッドが2つ設けられており、これら記録ヘッドに対して、背景画像データや文字全体画像データ、アウトラインデータを割り当てて記録を行なう場合について説明する。
【0067】
背景画像データ(91、94)は、図8(b)に示すように、オリジナル画像から均等に2つに分けられており、記録ヘッド1及び記録ヘッド2にそれぞれ割り当てられる。また、文字全体画像データ(92、95)も、図8(b)に示すように、背景画像データ(91、94)と同様に、オリジナル画像から均等に2つに分けられており、記録ヘッド1及び記録ヘッド2にそれぞれ割り当てられている。
【0068】
一方、アウトラインデータ93は、図8(b)に示すように、記録ヘッド1のみに割り当てられている。上述した通り、アウトラインデータについては、単一の記録ヘッドで記録処理が行なわれる。つまり、本実施形態においては、文字のアウトラインのみを単一の記録ヘッドで記録し、それ以外の画像については全ての記録ヘッドを用いて記録を行なう。
【0069】
このように本実施形態においては、2つの記録ヘッドにおける記録内容を非対称にする(すなわち、文字部分のアウトラインを単一の記録ヘッドで記録を行なう)。これにより、図9(a)に示すように、記録ヘッド間に多少のずれが発生していたとしても、エッジ部分のシャープネスを高くし、且つ鮮明な文字画像を記録できる。
【0070】
以上が本発明の代表的な実施形態の一例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0071】
例えば、上述した実施形態においては、具体例として、図8や図9を用いて記録ヘッドの数が2つである場合について説明したが、勿論、記録ヘッドの数は、2個に限られず、3個以上設けられていても良い。
【0072】
また、上述した実施形態においては、記録装置10において、展開処理(2値化及びビットマップ化)や、各記録ヘッドへのデータの割当、等を行なっているが、これに限られない。すなわち、これらの処理の少なくともいずれかがホストコンピュータ40(プリンタドライバ52)側で行なわれても良い。例えば、2値化処理をホストコンピュータ40のプリンタドライバ52で行ない、記録装置10側でビットマップの分離処理を行なう構成であっても良い。
【0073】
また、上述した実施形態においては、フルラインタイプの記録ヘッドを例に挙げて説明したが、これに限られない。すなわち、同色インクに対して複数の記録ヘッドを有し、当該複数の記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に走査して記録媒体上に画像を記録するタイプの記録装置であれば何でも良い。例えば、記録媒体の搬送方向に交差(例えば、直交)する方向に記録ヘッドを走査して記録を行なう、いわゆる、シリアルタイプの記録装置に上述した実施形態を適用しても構わない。
【0074】
また、例えば、上述した実施形態においては、文字画像(文字オブジェクト)を処理対象とする場合について説明したが、対象となるオブジェクトは、文字画像以外であっても良い。すなわち、エッジ部分のシャープネスさが重要となるオブジェクト(例えば、企業ロゴ等のマーク)であれば何でも良い。
【0075】
文字オブジェクト以外のオブジェクトを対象として処理を行なう場合、データ抽出部63においては、1又は複数のオブジェクトを含む画像データから、予め決められたオブジェクト(特定オブジェクト)を特定し、当該特定オブジェクトと、それ以外のデータ(背景データ)とを分離して抽出する。また、展開部(67、68)においても、データ抽出部63の処理に合わせて適宜処理を行なえば良い。なお、特定オブジェクトは、オブジェクト自体を指しても良いし、オブジェクトの種類を指していても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同色インクに対応した複数の記録ヘッドを有し、該複数の記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に走査して該複数の記録ヘッドに配された各ノズルからインクを吐出して記録媒体上に画像を記録する記録装置であって、
1又は複数のオブジェクトを含む画像データから、予め決められたオブジェクトを特定し、該特定オブジェクトを背景データと分離して抽出する抽出手段と、
前記特定オブジェクトの外形のみを展開し、該特定オブジェクトのアウトラインデータを生成する第1の展開手段と、
前記特定オブジェクトの全てを展開しその全体画像データを生成するとともに、前記背景データの全てを展開し背景画像データを生成する第2の展開手段と、
前記全体画像データ及び前記背景画像データを前記複数の記録ヘッド各々に分配して割り当てるとともに、前記アウトラインデータを前記複数の記録ヘッドのうちのいずれか1つに割り当てる割当手段と、
前記複数の記録ヘッドを用いて、各記録ヘッドに割り当てられたデータに基づく記録を制御する記録制御手段と
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記複数の記録ヘッド各々に配された各ノズルの不吐状態を検出する検出手段
を更に具備し、
前記割当手段は、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の記録ヘッドのうち、不吐ノズルの最も少ない記録ヘッドに対して前記アウトラインデータを割り当てる
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記特定オブジェクトは、文字データである
ことを特徴とする請求項1又は2記載の記録装置。
【請求項4】
同色インクに対応した複数の記録ヘッドを有し、該複数の記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に走査して該複数の記録ヘッドに配された各ノズルからインクを吐出して記録媒体上に画像を記録する記録装置の処理方法であって、
抽出手段が、1又は複数のオブジェクトを含む画像データから、予め決められたオブジェクトを特定し、該特定オブジェクトを背景データと分離して抽出する工程と、
第1の展開手段が、前記特定オブジェクトの外形のみを展開し、該特定オブジェクトのアウトラインデータを生成する工程と、
第2の展開手段が、前記特定オブジェクトの全てを展開しその全体画像データを生成するとともに、前記背景データの全てを展開し背景画像データを生成する工程と、
割当手段が、前記全体画像データ及び前記背景画像データを前記複数の記録ヘッド各々に分配して割り当てるとともに、前記アウトラインデータを前記複数の記録ヘッドのうちのいずれか1つに割り当てる工程と、
記録制御手段が、前記複数の記録ヘッドを用いて、各記録ヘッドに割り当てられたデータに基づく記録を制御する工程と
を含むことを特徴とする処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−99888(P2013−99888A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244963(P2011−244963)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】