説明

記録装置及び記録方法

【課題】記録手段による記録中に先端がカール矯正手段に到達するほど長尺な記録媒体であっても、記録媒体の搬送負荷を抑えつつ記録媒体にカール矯正処理を施すことができる記録装置及び記録方法を提供する。
【解決手段】シートを間欠搬送する搬送動作と、間欠搬送の合間の停止中のシートに記録を施す記録動作とが交互に行われることでシートに印刷が施される。シートを搬送する搬送動作中は、カール矯正機構を構成するデカールローラーを待機位置に配置してシートに少なくとも強いカール矯正処理を施さない(S7,S1)。一方、シートが記録位置で停止している印刷動作中は、デカールローラーを挟持位置に配置してシートにカール矯正処理を施す(S4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッド等の記録手段による記録が施された記録媒体にカールを矯正する処理を施すカール矯正手段を備えた記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、記録媒体に記録を施す記録ヘッド等の記録手段を備えた記録装置として、インクジェット式記録装置が広く知られている。この種の記録装置には、記録が施された後の記録媒体にカールを矯正するカール矯正処理(デカール処理)を施すカール矯正機構(デカール機構)を備えたものがある(例えば特許文献1)。このデカール機構は、一対の搬送ローラー(回転ローラー)と、一対の搬送ローラーのうち一方に対する相対移動が可能なデカールローラーとを備える。デカールローラーは、ローラー位置変更手段によって、ペーパーを挟持してデカールしながら搬送するデカール位置と、ペーパーから離間してデカールしないで搬送する搬送位置と、ペーパーの圧着を解除する圧着解除位置とに変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−179416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の記録装置において、例えばロール状の記録媒体から記録後にカットされた記録媒体が短尺である場合、その先端がデカール機構に到達したときには既に記録媒体はカット済みなので、カール矯正処理が施されても、その上流側で行われる記録ヘッドによる記録処理に悪影響を及ぼすことはない。
【0005】
しかし、カットされる記録媒体が長尺である場合は、その記録媒体がカットされる前の記録途中に、その先端がデカール機構に到達してしまう。デカール機構は、デカールローラーと搬送ローラーとの間に記録媒体を挟持しつつその挟持箇所の搬送方向上流側の部分をカールと逆向きに湾曲させることでカール矯正処理を施す。
【0006】
このとき、記録媒体はデカールローラーと搬送ローラーとの間に挟持されたまま搬送されることになるので、記録媒体の搬送負荷が比較的大きくなる。このため、記録媒体への記録位置が、デカール開始箇所の前後で搬送方向にずれてしまうという問題があった。この種の記録位置のずれは、記録画像にバンディング(白スジ等)が発生する原因になる。このため、この種の記録ヘッドによる記録中にその先端がデカール機構に到達してしまう長尺の記録媒体に対しては、少なくとも記録が終わってカットされるまではカール矯正処理が施されないか、カール矯正処理が施された場合には、バンディング等により印刷品質が低下することになっていた。なお、記録媒体が単票紙などの予めカットされたものの場合であっても、長尺の記録媒体である場合は同様の問題が起こりうる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、記録手段による記録中の記録媒体の先端がカール矯正手段に到達するほど長尺な記録媒体であっても、記録媒体の搬送負荷を抑えつつ記録媒体にカール矯正処理を施すことができる記録装置及び記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の態様の一つは、記録装置であって、記録媒体を間欠搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送されて停止している前記記録媒体に記録を施す記録手段と、前記記録手段の搬送方向下流側に配置され、前記記録媒体を保持可能に配置される一対の回転ローラーと、前記一対の回転ローラーと協働して前記記録媒体の挟持を伴って該記録媒体のカールを矯正する挟持位置と、該一対の回転ローラーから離間した離間位置の間を移動可能に配置される可動ローラーとを備えるカール矯正手段と、を備え、前記可動ローラーは、前記記録手段による記録が施される記録位置で前記記録媒体が停止しているときに前記挟持位置に位置し、当該記録媒体が搬送されているときに前記挟持位置よりも前記離間位置側の待機位置に位置することを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、記録手段による記録が施される記録位置で記録媒体が停止しているときに可動ローラーは挟持位置に位置し、記録媒体が搬送されているときに可動ローラーは、挟持位置よりも離間位置側の待機位置に位置する。このように記録媒体の搬送中は、可動ローラーが挟持位置よりも離間位置側の待機位置にあるため、記録媒体を搬送する際の搬送負荷を小さく抑えることができる。この結果、記録中に記録媒体の搬送方向下流側の先端がカール矯正手段に到達する記録媒体であっても、記録中の記録媒体の搬送負荷をさほど変化させることなく、その記録中の記録媒体にカール矯正処理を施すことができる。
【0010】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記搬送手段が記録媒体の連続搬送が可能であり、前記カール矯正手段の間欠搬送される前記記録媒体を挟持する際の挟持力が、連続搬送される前記記録媒体を挟持する際の挟持力より小さいことが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、間欠搬送のときに可動ローラーを待機位置に配置することで、カールの矯正を弱くし又は無くし、記録媒体が記録位置で停止しているときにカールを矯正する構成であるため、記録媒体の搬送方向に間欠的に矯正箇所が発生しカール矯正の程度が搬送方向に不均一になり易い。しかし、カール矯正手段の間欠搬送される記録媒体を挟持する際の挟持力が、連続搬送される記録媒体を挟持する際の挟持力より小さいので、記録中の記録媒体に施された間欠的なカール矯正処理による記録媒体の搬送方向におけるカール矯正の不均一な程度を低減できる。
【0012】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記可動ローラーが挟持位置に位置するときに、搬送方向における該可動ローラーと前記一方の回転ローラーとの挟持箇所と他方の前記回転ローラーが前記記録媒体を支持する支持箇所との間で前記記録媒体のカール矯正のために湾曲する部分の長さが、前記搬送手段による間欠搬送の最小搬送量より長いことが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、可動ローラーが一方の回転ローラーとの間に記録媒体を挟持する挟持箇所と、他方の回転ローラーが記録媒体を支持する支持箇所との間で記録媒体が湾曲する部分のその湾曲に沿った長さが、搬送手段が記録媒体を間欠搬送する際の最小搬送量より長い。湾曲する部分の長さを超える搬送量で記録媒体が搬送される場合、未カール矯正の部分ができるが、少なくとも最小搬送量で間欠搬送しながら記録される部分については、間欠的にカール矯正処理が施されても、未カール矯正の部分が発生しにくい。
【0014】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記搬送手段は、前記記録媒体の前記記録手段と前記カール矯正手段との間に位置する部分を挟持可能な第1位置と、前記記録媒体から離間する第2位置とに移動可能な従動ローラーを有する搬送ローラー対を備え、前記可動ローラーは、前記従動ローラーが前記第1位置に配置された状態の下で、前記待機位置から前記挟持位置に移動することが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、記録媒体のカール矯正手段よりも搬送方向上流側の部分が搬送ローラー対によって挟持された状態の下で、可動ローラーは待機位置から挟持位置に移動する。この結果、可動ローラーが記録媒体を挟持しつつ湾曲させて、記録媒体を搬送方向下流側へ引っ張っても、その引っ張り力は搬送ローラー対の挟持箇所でそれ以上伝播しにくくなるので、記録ヘッドによる記録が施される記録領域まで伝播しにくくなる。よって、その引っ張りに起因して記録媒体の記録領域の部分が搬送方向へ位置ずれすることを抑えることができる。例えば記録媒体の位置ずれに起因する記録位置のずれを小さく抑えることができる。
【0016】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記待機位置は、前記可動ローラーの移動経路上において前記挟持位置と前記離間位置との間の位置であることが好ましい。
上記構成によれば、可動ローラーは挟持位置と離間位置との間の待機位置から挟持位置へ移動することになるので、離間位置からに比べ遅れなく挟持位置へ移動できる。よって、カール矯正処理時間を相対的に長く確保できる。また、待機位置がカール矯正の可能な位置であれば、間欠搬送中の記録媒体にも搬送負荷にならない程度の弱いカール矯正、つまり可動ローラーが挟持位置にあるときより弱いカール矯正を施すことができる。
【0017】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記記録媒体は長尺の記録媒体であって、前記記録手段と前記カール矯正手段との間に前記長尺の記録媒体を切断する切断手段を更に備え、前記カール矯正手段は、先端がカール矯正手段に到達した記録中の記録媒体が前記切断手段により切断されるまでは、間欠搬送される記録媒体が記録位置で停止しているときに間欠的にカール矯正処理を施す第1カール矯正処理を行い、切断された後は切断された前記記録媒体を連続搬送しつつ該記録媒体にカール矯正処理を施す第2カール矯正処理を行うことが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、先端がカール矯正手段に到達した記録中の記録媒体が切断手段により切断されるまでは、間欠搬送される記録媒体が記録位置で停止しているときに間欠的にカール矯正処理を施す第1カール矯正処理が行われ、切断された後は切断された記録媒体を連続搬送しつつこの記録媒体にカール矯正を施す第2カール矯正処理が行われる。よって、切断される前であっても、記録媒体の搬送負荷を抑えつつ記録媒体にカール矯正処理を施すことができる。
【0019】
本発明の態様の一つは、記録手段に対して記録媒体の搬送方向下流側に配置され、前記記録媒体を保持可能に配置される一対の回転ローラーと、前記一対の回転ローラーと協働して前記記録媒体の挟持を伴って該記録媒体のカールを矯正する挟持位置と該一対の回転ローラーから離間した離間位置の間を移動可能に配置される可動ローラーとを備えるカール矯正手段を備えた記録装置における記録方法であって、前記記録手段による記録が施される記録位置で前記記録媒体が停止しているときに、前記可動ローラーが前記挟持位置に位置して前記記録媒体にカール矯正処理を施すカール矯正ステップと、前記記録手段が間欠搬送されているときに、前記可動ローラーが前記挟持位置よりも前記離間位置側の待機位置に位置して、前記挟持位置のときの挟持力よりも弱い挟持力で前記記録媒体を挟持するかあるいは前記記録媒体を挟持しない待機ステップと、を備えたことを要旨とする。上記の記録方法によれば、上記記録装置に係る発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施形態におけるプリンターの概略構成を示す側断面図。
【図2】(a),(b)カール矯正機構の構成及びその動作を説明する側面図。
【図3】(a)短尺シート、(b)長尺シートへの各印刷を説明する模式側面図。
【図4】(a)間欠搬送を示す模式平面図、(b)待機状態のカール矯正機構を示す模式側面図。
【図5】(a)印刷動作を示す模式平面図、(b)デカールON状態のカール矯正機構を示す模式側面図。
【図6】(a),(b)デカールローラーの動作位置を説明する模式側面図。
【図7】記録ヘッドとカール矯正機構との関係を説明する模式側面図。
【図8】プリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図9】印刷制御ルーチンを示すフローチャート。
【図10】デカールON時の従動ローラーの動作を説明する模式側面図。
【図11】変形例におけるカール矯正機構の概略構成を示す模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を、図1〜図10を用いて説明する。
図1に示すように、記録装置の一例であるインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター11」と称す。)は、前面(図1における左面)に開口する排紙口12aと、排紙口12aから排出された印刷後のシートCSを載置可能な排紙部12b(排出トレイ)とを有する本体ケース12を備えている。本体ケース12内には、長尺状のシートST(例えば連続紙)がロール状に巻回されたロール体RSを取着する給紙部13が設けられている。
【0022】
また、本体ケース12内には、給紙部13から排紙部12bに向かって延びる搬送経路に沿ってシートSTを搬送する搬送手段の一例としての搬送装置14を備えている。また、本体ケース12内には、搬送経路の途中でシートSTに対してインク滴を噴射して記録を施す記録部15と、記録後のシートSTを所定長さのカットシートCS(単票紙)に切断する切断手段の一例としてのカッター16とが設けられている。また、搬送経路においてカッター16の下流側には、カットシートCSの記録面(表面)に乾燥風を吹き付けてインクを乾燥させる乾燥装置17(ヒーターユニット)が設けられている。さらに、乾燥装置17よりも搬送経路の下流側には、カットシートCSのカール(巻きぐせ)を矯正するカール矯正手段の一例としてのカール矯正機構18(デカール機構)が設けられている。このカール矯正機構18は、カール矯正機能の他に搬送機能も備え、搬送装置14の一部を構成する。なお、本実施形態では、シートSTとカットシートCSが、記録媒体の一例を構成している。
【0023】
給紙部13は、ロール体RSを回転可能に支持する回転軸19と、回転軸19を回転させる給送モーター20(図6参照)とを備えている。そして、給送モーター20の駆動に伴って回転軸19が図1における反時計方向に回転することにより、ロール体RSからシートSTが繰り出される。
【0024】
搬送装置14は、長尺のシートSTを搬送方向Y(副走査方向)の上流側から下流側に向かって搬送する複数の搬送ローラー(駆動ローラー)21〜23と、カット後のシートCSを搬送方向Yの上流側から下流側に向かって搬送する複数の搬送ローラー(駆動ローラー)24〜27とを備える。さらに、搬送装置14は、各搬送ローラー21〜26との間にシートST,CSを挟持可能な位置に設けられた従動ローラー31〜36を備える。各搬送ローラー21〜26の駆動回転に伴い各従動ローラー31〜36が従動回転することにより、シートST,CSは搬送される。
【0025】
カール矯正機構18は、大径の搬送ローラー27(上流側固定ローラー)と、搬送ローラー27に対して搬送方向Yの下流側位置に配置されたそれぞれ小径の搬送ローラー26と従動ローラー36(以下、「デカールローラー36」ともいう。)からなるデカールローラー対DR(下流側作動ローラー対)とを備える。カール矯正機構18は、印刷中において、デカールローラー36を、搬送ローラー26上のシートCSから離間する離間位置から、シートCSを搬送ローラー26との間に挟持しつつシートCSにカールの向きと逆向きに湾曲させる矯正力を与えうる矯正位置(挟持位置)に移動させることにより、シートCSにカール矯正処理を施す。なお、本実施形態では、一対の搬送ローラー26,27が一対の回転ローラーの一例を構成し、デカールローラー36が可動ローラーの一例を構成している。
【0026】
また、搬送装置14は、搬送ローラー21〜23を回転させるための動力を出力する第1搬送モーター38(図3、図6参照)と、搬送ローラー24〜27を回転させるための動力を出力する第2搬送モーター39(図3、図6参照)とを備える。また、搬送経路上の所定箇所には、搬送中のシートCSの下面(記録面と反対側の面)を保持可能な搬送経路形成部材41が設けられている。なお、以下の説明において、互いに対をなす搬送ローラー23と従動ローラー33を搬送ローラー対R1、搬送ローラー24と従動ローラー34を搬送ローラー対R2、搬送ローラー25と従動ローラー35を搬送ローラー対R3という。
【0027】
図1に示す記録部15は、本体ケース12内における搬送経路の上側に、搬送方向Yと交差(直交)する主走査方向Xに沿って水平に延びた状態で架設されたガイド軸45と、ガイド軸45の長手方向(主走査方向X)に沿って移動可能な状態でガイド軸45に支持されたキャリッジ46とを備える。キャリッジ46には搬送経路に対向する位置に記録ヘッド47が取り付けられている。記録ヘッド47には、インクを噴射する複数のノズル47aが設けられている。そして、キャリッジ46がキャリッジモーター50(図8参照)の駆動によりガイド軸45に沿って往復移動することにより、キャリッジ46と共に記録ヘッド47が主走査方向Xに往復移動する。なお、本実施形態では、キャリッジ46及び記録ヘッド47等により、記録手段の一例が構成される。
【0028】
また、記録部15には、記録ヘッド47と搬送経路を挟んで対向する位置に支持台48が配置されている。支持台48は、その上面がシートSTを支持する搬送面となっており、その上面に開口する複数の吸引孔(図示略)を通じてシートSTを吸着可能な吸引力を発生する吸引機構49を内蔵している。そして、支持台48に支持された状態で停止しているシートSTの表面(図1では上面)に、主走査方向Xに移動する記録ヘッド47のノズル47aからインクが噴射されることで、シートSTにインクを付着させる記録(印刷)が施される。
【0029】
詳しくは、プリンター11が備える制御手段の一例としての制御装置100は、ホスト装置200(図6参照)から印刷ジョブデータを受信すると、その中に含まれる印刷データを、記録ヘッド47の1走査分(1パス分)に相当する記録データごとに分割する。キャリッジ46が1走査(1パス)する途中で記録ヘッド47は記録データに基づきノズル47aからインク滴を噴射する印刷処理を行う。そして、1走査毎の印刷処理の合間に、シートSTが次の記録位置まで搬送される。すなわち、記録部15では、キャリッジ46が主走査方向Xに移動して記録ヘッド47が1パス分の帯状の画像を形成する印刷動作と、次の記録位置までのシートSTを搬送する間欠搬送とが交互に繰り返されることにより、シートST上に印刷ジョブデータに基づく画像が形成される。
【0030】
また、カッター16によるシートSTの切断は、搬送装置14によるシートSTの搬送を停止させた状態で行われる。カッター16は、搬送ローラー対R1,R2に両側を挟持されたシート部分の略中央を主走査方向Xに切断し、シートSTからカットシートCSを切り離す。なお、本実施形態では、印刷過程でシートSTの搬送を停止したタイミングで、シートSTの切断を行う。
【0031】
さらに、乾燥装置17は、その下面に開口する吹出口17aから、カッター16により切断されたカットシートCS(以下、単に「シートCS」ともいう。)の表面(記録面)に温風(乾燥風)を吹き付けることで、インクを乾燥する乾燥処理をシートCSに施す。乾燥装置17は、制御装置100によって温度制御及び送風制御が行われる。
【0032】
図1に示すように、搬送ローラー対R3とカール矯正機構18との間の位置には、センサー42が設けられている。センサー42は、その上方位置を搬送されるシートCSの先端及び後端を検知する。制御装置100は、センサー42がシートCSの先端を検知した検知信号(先端検知信号)に基づき、その検知された先端がデカールローラー対DRの隙間に挿入したタイミングで、カール矯正機構18を作動させ、デカールローラー36を挟持位置に移動する。そして、制御装置100は、センサー42がシートCSの後端を検知した検知信号(後端検知信号)に基づき、その検知された後端がデカールローラー対DRを通過し終わった直後のタイミングで、カール矯正機構18を非作動状態とし、デカールローラー36を搬送ローラー26から離間する離間位置に復帰させる。
【0033】
次に、カール矯正機構18の詳細な構成を図2を用いて説明する。図2(a)はカール矯正機構が退避位置に配置された状態を示し、図2(b)はカール矯正機構が矯正位置に配置された状態を示す。
【0034】
カール矯正機構18は、主走査方向Xに延びる軸部27aに支持された大径の搬送ローラー27と、主走査方向Xに延びる軸部26a,36aにそれぞれ支持された小径の搬送ローラー26とデカールローラー36とからなるデカールローラー対DRとを備える。デカールローラー36が離間位置にあるときには、デカールローラー36と搬送ローラー26との離間距離がシートCSの厚さよりも長くなっており、シートCSはデカールローラー36に挟持されることなく、搬送ローラー26によって図2(a)に示す搬送経路で下流側(同図では左側)へ搬送される。
【0035】
また、カール矯正機構18は、デカールローラー対DRの隙間にシートCSを案内するための下側のガイド板71と上側のデカール板72とを備える。下側のガイド板71は、支持部74から搬送方向下流側に向けて延出し複数の搬送ローラー27間に配置される櫛歯状に形成されている。この櫛歯状のガイド板71は、案内位置(図2(a))ではその上面が搬送経路形成部材41(図2参照)の上面と略面一となってシートCSの搬送面を形成し、退避位置(図2(b))ではカール矯正処理の妨げにならないように下方へ退避する。そして、ガイド板71は搬送ローラー27によって搬送されるシートCSの裏面側をガイドする一方、デカール板72はシートCSの表面側をガイドしてシートCSの先端部をデカールローラー対DRの隙間へ案内する。
【0036】
カール矯正機構18は、デカールローラー36とガイド板71を作動させる動力源となるカムモーター73(図6参照)と、カムモーター73の動力をデカールローラー36とガイド板71に伝達するカム機構80とを備える。
【0037】
図2(a),(b)に示すように、カム機構80は、カムモーター73(図6参照)の動力により回転するカム軸82と、カム軸82の回転に伴って回転するカム部材83,84と、カム部材83,84の回転にそれぞれ従動するレバー85,86とを備える。レバー85は回動軸87を中心に回動可能となっている。レバー85の側面に固定された支持部74の先端部(上端部)にガイド板71は支持されている。また、レバー85は搬送方向Yの下流側に向けて斜め下方に延びる延出部85aを有し、延出部85aの端面(カムフォロア面)(図2では下面)にカム部材83が係合している。レバー85は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)によって図2における反時計方向に付勢され、常時はカム部材83及びレバー85が図2(a)に示す待機時の回動位置に配置される。
【0038】
また、レバー86は回動軸88を中心に回動可能となっている。レバー86は、回動軸88から下方に延びる延出部86aを有し、カム部材84はこの延出部86aの端面(カムフォロア面)に係合している。レバー86において回動軸88から上方に延びる延出部86bの先端部には、デカールローラー36の軸部36aが回転自在に支持されている。レバー86は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)の付勢力によって図2における反時計方向に付勢され、常時はカム部材84及びレバー86が図2(a)に示すデカールOFF時の回動位置に配置される。また、レバー86の延出部86bには支持部75を介してデカール板72が支持されている。なお、カム部材83,84及びレバー85,86は、シートCSの幅より長い軸長を有するカム軸82の軸方向両端部に1組ずつ設けられている。
【0039】
カム軸82がカムモーター73の駆動に伴って図2(a)に示す状態から略180度回転すると、カム部材83,84の回転に伴って、レバー85が図2(a)における反時計方向に回動するとともに、レバー86が図2(a)における時計方向に回動することにより、図2(b)に示す矯正時の回動位置に配置される。この結果、デカールローラー36が、回動軸88を中心に時計方向(搬送方向Yの上流側方向)へ円弧状の経路で変位することで、その変位の途中で搬送ローラー26との間にシートCSを挟持しつつその挟持箇所と搬送ローラー27との間のシート部分をカールと逆向きに湾曲させてカールを矯正する図2(b)に示すデカールON位置に配置される。このとき、ガイド板71は搬送面を形成する案内位置(図2(a))から、搬送面から下方へ退避する退避位置(図2(b))へ変位する。
【0040】
また、カムモーター73の駆動に伴ってカム軸82が図2(b)に示す状態から略180度回転すると、カム部材83,84の回転に伴って、レバー85が図2(b)における時計方向に回動するとともに、レバー86が図2(b)における反時計方向に回動する。この結果、デカールローラー36が、図2(b)に示すデカールON位置から図2(a)に示すデカールOFF位置に復帰するとともに、ガイド板71が、図2(b)に示す退避位置から図2(a)に示す案内位置に復帰する。
【0041】
本明細書では、例えば図2(a)に示すように、カール矯正機構18が、デカールローラー36をカールの矯正が行われないデカールOFF位置に配置する動作を「デカールOFF」、デカールローラー36がデカールOFF位置にある状態を「デカールOFF状態」と呼ぶ。また、図2(b)に示すように、カール矯正機構18が、デカールローラー36をカールの矯正が可能なデカールON位置に配置する動作を「デカールON」、デカールローラー36がデカールON位置にある状態を「デカールON状態」と呼ぶ。
【0042】
図3(a)に示すように、搬送装置14は、カッター16よりも搬送方向上流側に配置されて切断前のシートSTを搬送する搬送ローラー21〜23を回転させるための動力を出力する第1搬送モーター38と、カッター16により切断されたシートCSを搬送する搬送ローラー24〜27を回転させるための動力を出力する第2搬送モーター39とを備えている。
【0043】
本実施形態では、記録ヘッド47によりキャリッジ46が1回移動する1パス分の印刷が施されたシートSTを搬送ローラー21〜23が間欠搬送するように駆動されるのに対して、カッター16の位置よりも搬送方向下流側においてカット後のシートCSを所定距離の間隔を開けた状態で連続搬送するために搬送ローラー24〜27が駆動される。このように本実施形態では、記録(印刷)のための搬送系と、印刷されたシートを乾燥系へ排出するための搬送系とは、それぞれ独立駆動されるようになっている。
【0044】
本実施形態では、印刷を終えてカッター16により切断された後に搬送方向下流側の先端がカール矯正機構18に到達する相対的に短尺なシートCSである場合(図3(a))と、カッター16により切断される前にその搬送方向下流側の先端がカール矯正機構18に到達してしまう相対的に長尺なシートCSである場合(図3(b))とで、搬送制御及びカール矯正制御が異なっている。
【0045】
すなわち、図3(a)に示すように、短尺のシートCSの場合、記録部15において印刷中のシートSTから切断され分離されていて印刷への影響がないので、各搬送ローラー24〜27を一定速度で回転し続けることにより、シートCSを連続搬送する。この場合、短尺のシートCSには連続搬送されながらカール矯正処理が施される。また、図3(b)に示すように、長尺のシートSTの場合、記録部15に相対するシート部分が印刷中なので、その印刷に併せて間欠搬送される。この場合、切断前のシートSTには間欠搬送の合間にカール矯正処理が施される。そして、シートSTから長尺のカットシートCSがカッター16により切り離されると、そのシートCSは連続搬送される。この場合、長尺のシートCSには連続搬送されながらカール矯正処理が施される。
【0046】
また、図3(b)に示す従動ローラー34,35は、それぞれ対向する搬送ローラー24,25に対して接近・離間が可能な方向(同図では上下方向)に移動可能に構成されている。すなわち、従動ローラー34,35は、電動モーター51が正転駆動されることにより、シートから離間する退避位置からシートを搬送ローラー24,25との間に挟持するニップ位置(第1位置)に移動する。一方、従動ローラー34,35は、このニップ位置にある状態から、電動モーター51が逆転駆動されると、各搬送ローラー24,25上のシートST,CSから離間可能な退避位置(第2位置)へ移動する。そして、シートCSを連続搬送するときには、従動ローラー34,35をニップ位置に下降させて搬送ローラー24,25に従動回転させる。一方、シートSTを間欠搬送するときには、排出すべきシートCSが存在しない限り、従動ローラー34,35を退避位置に上昇させる。
【0047】
ここで、切断前の長尺なシートSTの搬送方向下流側の部分をカール矯正のためにデカールローラー対DRに挟持させると、その挟持力がシートSTを間欠搬送させるときの搬送負荷となる。そして、この搬送負荷は、シートSTが次パスの印刷位置まで搬送されるときの搬送位置精度を低め、印刷位置ずれの原因となる。このため、本実施形態では、間欠搬送時にはカール矯正機構18を連続搬送時のようには作動させないようにしている。しかし、カール矯正が施されないと、印刷物にカールが残るので、これを回避するため、間欠搬送の実施期間以外の期間、すなわち印刷のためシートSTが停止している印刷動作の実施期間に、カール矯正機構18がシートSTにカール矯正処理を施すようにしている。
【0048】
すなわち、図4(a)に示すように、長尺のシートSTが間欠搬送されるときには、デカールローラー36は、搬送ローラー26との間にシートSTを挟持しない、あるいは挟持力の極めて弱い、図4(b)に示す待機位置に配置される。また、図5(a)に示すように、キャリッジ46がガイド軸45に沿って主走査方向Xに移動する途中で記録ヘッド47がインク滴を噴射して長尺のシートSTに印刷をする印刷動作が行われるときには、図5(b)に示すようにデカールローラー36はデカールON位置に配置される。
【0049】
図6(a)に示すように、デカールローラー36は、シートST,CSから離間してシートST,CSにカール矯正処理を施さないデカールOFF位置(離間位置)と、シートST,CSを搬送ローラー26との間に挟持しつつ搬送面より下側へ押し込むことでシートST,CSにカール矯正処理を施すデカールON位置とに配置される。さらに、本実施形態では、デカールローラー36は、デカールON位置とデカールOFF位置との間の移動経路の途中に位置しシートST,CSを挟持せずシートST,CSにカール矯正処理を施さない待機位置にも配置される。
【0050】
そして、図4(a)に示すように、長尺のシートSTが間欠搬送されるときには、前述のように、デカールローラー36は、図4(b),図6(a)に示す待機位置に配置される。また、図5(a)に示すように、長尺のシートSTに印刷を施す印刷動作が行われるときには、デカールローラー36は、図5(b),図6(a)に示すデカールON位置に配置される。デカールローラー36は、デカールOFF位置にあるときは、搬送ローラー26からシートST,CSの厚みより長い所定距離だけ離間するため、シートST,CSからも離間する。また、デカールON位置に配置されたデカールローラー36は、搬送ローラー26との間でシートST,CSを挟持しつつシートを搬送面より下方へ押し込んでその挟持箇所と搬送ローラー27との間のシート部分をカールの向きと反対向きに湾曲させる。
【0051】
また、図6(b)に示すように、デカールON位置には、カット後のシートCSが連続搬送されるときの第1のデカールON位置と、シートSTが間欠搬送されるときの第2のデカールON位置とがある。デカールローラー36が第2のデカールON位置に配置されたときにデカールローラー対DRが間欠搬送の合間で停止中のシートSTを挟持する際の挟持力が、デカールローラー36が第1のデカールON位置に配置されたときにデカールローラー対DRが連続搬送されるシートCSを挟持する際の挟持力よりも小さくなるように設定されている。すなわち、デカールローラー36が第2のデカールON位置に配置されたときに間欠搬送の合間で停止中のシートSTをその搬送面よりも下側へ押し込む押込量が、デカールローラー36が第1のデカールON位置に配置されたときに連続搬送されるシートCSをその搬送面よりも下側へ押し込む押込量よりも少なくなっている。このため、第2のデカールON位置では、シートSTの挟持力を相対的に小さくできるが、カール矯正力も小さくなる。
【0052】
図7に示すように、記録ヘッド47は、例えば全てのノズル47aを使用して印刷を行う(但し、空白のドットのノズルからはインク滴は噴射されない)印刷方式であるバンド印刷を行う。バンド印刷では、各ノズル47aから噴射されてシートSTの表面に着弾して形成されるインクドットIDの形成領域の搬送方向長さに等しい搬送量が1回当たりの最小搬送量Lp(最小送りピッチ)となる。例えば写真印刷などの画像印刷では、印刷の途中に空白行がほとんどないので、シートSTは最小搬送量Lpずつ間欠搬送される。
【0053】
本実施形態のカール矯正機構18は、デカールローラー対DRの挟持位置と搬送ローラー27の上端位置(支持箇所)との間に形成されるシートST(又はCS)の湾曲部の長さLd(カール矯正長)が、記録ヘッド47によるバンド印刷時における1回当たりのシートSTの最小搬送量Lpよりも長くなるように、デカールON時の各ローラー26,27,36の位置関係が設定されている。このため、間欠搬送の合間の印刷動作期間のみにカール矯正処理が間欠的に施されるものの、シートSTが最小搬送量Lpずつ間欠搬送される画像の印刷が行われるときには、シートSTにおける間欠搬送実施期間にカール矯正機構18を通過する部分の搬送方向全域に亘りカール矯正処理を施すことが可能となっている。よって、シートSTの搬送方向にカール矯正処理が施されない漏れが発生しにくい。なお、記録ヘッド47は印刷モードに応じてバンド印刷以外の他の印刷方式も採用されるが、他の印刷方式はバンド印刷方式よりも最小搬送量が小さいので、当然、シートSTの湾曲部の長さLdは、他の印刷方式の最小搬送量よりも長くなっている。
【0054】
次に、プリンター11の電気的構成について図8を基に説明する。図8に示すように、プリンター11は、ホスト装置200と通信可能に接続され、ホスト装置200から印刷ジョブデータを受信する。ホスト装置200からプリンター11が受信した印刷ジョブデータは制御装置100に入力される。制御装置100は、コンピューター101と、ヘッド駆動回路102と、モーター駆動回路103〜108とを備えている。コンピューター101には、ヘッド駆動回路102及びモーター駆動回路103〜108が電気的に接続されている。
【0055】
コンピューター101は、ASIC109(Application Specific IC(特定用途向けIC))、CPU110、ROM111、RAM112および不揮発性メモリー113を備えている。ROM111には、各種制御プログラム及び各種設定データなどが記憶されている。不揮発性メモリー113には、ファームウェアプログラムをはじめとする各種プログラム及び印刷制御に必要な各種設定データなどが記憶されている。本実施形態では、不揮発性メモリー113に、図9にフローチャートで示す印刷制御用のプログラムが記憶されている。RAM112には、CPU110によって実行されるプログラムデータや各種設定データ、CPU110による演算結果の各種データ、並びにASIC109で処理された各種データなどが一時記憶される。
【0056】
コンピューター101は、CPU110がROM111や不揮発性メモリー113に記憶されたプログラムを実行することで、プリンター11における各種の制御を行う。例えば、コンピューター101は、ヘッド駆動回路102を介して記録ヘッド47を制御するとともに、モーター駆動回路103〜108を介してキャリッジモーター50、給送モーター20、記録系の第1搬送モーター38、排出系の第2搬送モーター39、電動モーター51及びカムモーター73をそれぞれ駆動制御する。また、コンピューター101は、乾燥装置17を駆動制御し、吹出口17aから吹き出される温風の温度及び風量を制御する。
【0057】
コンピューター101は、モーター駆動回路104を介して給送モーター20を駆動し、ロール体RS(図1参照)からシートSTを給送するとともに、モーター駆動回路105を介して第1搬送モーター38を駆動することにより、給送されたシートSTを搬送ローラー21〜23の回転により間欠搬送させる。また、コンピューター101は、モーター駆動回路106を介して第2搬送モーター39を駆動することにより、カッター16により切断された後のシートCSを搬送ローラー24〜27の回転により所定速度で連続搬送させる。
【0058】
コンピューター101には、搬送装置14を構成する第1搬送モーター38の回転量に比例したパルス数でパルス信号を出力するロータリーエンコーダー67が接続されている。そして、コンピューター101は、記録部15よりも搬送方向Yの上流側で不図示のセンサーによりシートSTの先端が検知されると、その検知位置を基準として、ロータリーエンコーダー67から入力するパルス信号のパルス数を計数し、その計数値から、シートST,CSの搬送位置を把握する。また、コンピューター101は、ロータリーエンコーダー67からのパルス信号に基づき、第1搬送モーター38の回転速度に比例する搬送速度なども検出する。
【0059】
また、コンピューター101は、図9に示す印刷制御用のプログラムに基づきカムモーター73を駆動制御することで、カール矯正機構18を制御する。すなわち、デカールローラー36の配置位置を、デカールOFF位置、待機位置、第1のデカールON位置及び第2のデカールON位置のうちいずれかの位置に配置することで、カール矯正機構18を制御する。このカール矯正機構18をデカールON・OFFさせる制御の詳細については後述する。
【0060】
また、コンピューター101に接続されたセンサー42は、例えば反射型の光学式センサーであり、図示しない光源部(発光素子)と受光部(受光素子)とを有している。センサー42は、光源部が搬送面と直交する上方に向けて出射した光(検出光)の反射光を受光部が受光することにより、反射光の強さに応じた電気信号を制御装置100に出力する。例えば、センサー42は、シートCSが反射対象となったときに所定の閾値よりも大きいON値を出力する一方、シートCSが反射対象となっていないときに前記閾値以下となるOFF値を出力する。したがって、センサー42の出力値がOFF値からON値に変化することでシートCSの先端が検知され、センサー42の出力値がON値からOFF値に変化することでシートCSの後端が検知される。
【0061】
さらにコンピューター101は、センサー42からの入力信号に基づきシートCSの先端を検知すると、その先端がデカールローラー対DRの隙間に挿入したタイミングで、カムモーター73を駆動してデカールONする。また、コンピューター101は、センサー42からの入力信号に基づきシートCSの後端を検知すると、その後端がデカールローラー対DRの隙間を通過し終えたタイミングで、カムモーター73を駆動してデカールOFFする。なお、シートCSの先端がデカールローラー対DRの隙間に挿入したタイミング、及びシートCSの後端がデカールローラー対DRの隙間を通過し終えたタイミングは、センサー42がシートCSの先端又は後端を検知したことを契機にロータリーエンコーダー67からのパルス信号のパルス数を計数したその計数値が設定値に達したことをもって決定される。
【0062】
図8に示すブロック図における左側には、CPU110が、不揮発性メモリー113に記憶された図9に示す印刷制御用のプログラムを実行することにより構築される機能ブロックを示している。CPU110がこのプログラムを実行することにより、コンピューター101内には、主制御部121、搬送制御部122、印刷制御部123及びデカール制御部124が構築される。もちろん、これらの各部121〜124は、CPU110がプログラムを実行することにより構築されるソフトウェアの構成に限らず、例えばコンピューター101が備える集積回路などの電子回路によりハードウェアで構成されてもよいし、さらにその一部がソフトウェアで他の一部がハードウェアの構成としてもよい。
【0063】
主制御部121は、印刷系(記録系・搬送系)、切断系、乾燥系及びカール矯正系などプリンター11の制御を統括的に司る。
搬送制御部122は、第1搬送モーター38及び第2搬送モーター39を駆動制御する。搬送制御部122は、第1搬送モーター38を各搬送ローラー21〜23によってシートCSが間欠搬送されるように間欠的に駆動させるとともに、第2搬送モーター39を各搬送ローラー24〜27によってシートCSが連続搬送されるように駆動させる。また、搬送制御部122は、電動モーター51を駆動させることにより、従動ローラー34,35をシートから離間する退避位置と、シートを挟持(ニップ)可能なニップ位置とに移動させる制御も行う。
【0064】
印刷制御部123は、キャリッジモーター50を駆動させてキャリッジ46を主走査方向Xに移動させるとともに、キャリッジ46の移動中に記録ヘッド47のノズル47aからインク滴を噴射させるインク噴射制御を行う。
【0065】
デカール制御部124は、モーター駆動回路108を介してカムモーター73を駆動制御することによりカール矯正機構18を制御する。詳しくは、デカール制御部124は、モーター駆動回路108に対して、デカールOFF指令、第1デカールON指令、第2デカールON指令及び待機指令のうちいずれかの指令を出力することで、デカールローラー36を、指令値に応じて、デカールOFF位置(離間位置)、第1デカールON位置、第2デカールON位置及び待機位置のうち指令値に応じたいずれかの位置に配置する。モーター駆動回路108は、デカール制御部124から入力した指令値に応じた回転量(例えばステップ数)だけカムモーター73を回転駆動させる。
【0066】
デカール制御部124は、第1判定手段の一例としての第1判定部125及び第2判定手段の一例としての第2判定部126を備えている。第1判定部125は、搬送制御部122から搬送完了通知を受け付けたか否かを判定し、搬送完了通知を受け付けたことをもってシートSTの1回の間欠搬送(搬送動作)が停止したと判定する。また、第2判定部126は、印刷制御部123から印刷完了通知を受け付けたか否かを判定し、印刷完了通知を受け付けたことをもってシートSTへのキャリッジ46の1パス分の印刷動作が完了したと判定する。そして、デカール制御部124は、第1判定部125の判定結果に基づき、搬送中であったシートSTが停止したと判定されると、その搬送動作が停止したタイミングで、カムモーター73を駆動させてカール矯正機構18をデカールONする。また、デカール制御部124は、第2判定部126の判定結果に基づき、キャリッジ46が主走査方向Xに1回移動する途中に実施される記録ヘッド47による1パス分の印刷動作を終えたと判定されると、その印刷動作の停止のタイミングで、カムモーター73を駆動させてカール矯正機構18をデカールOFFする。
【0067】
また、本実施形態では、図10に示すように、間欠搬送の合間の印刷動作期間にデカールローラー36をデカールON位置に移動させるときに、事前に、従動ローラー34,35を下降させてカール矯正機構18によるカール矯正処理位置よりも搬送方向Yの上流側においてシートSTをニップする。すなわち、搬送動作(間欠搬送)を終えてカムモーター73を駆動させる前に、電動モーター51を駆動させて従動ローラー34,35を下降させることにより、搬送ローラー対R2,R3によりシートSTをニップする。そして、カール矯正処理位置よりも搬送方向Yの上流側でシートSTがニップされた状態で、カムモーター73を駆動させてデカールローラー36を待機位置(又はデカールOFF位置)からデカールON位置へ移動させる。このとき、デカールローラー36をデカールON位置へ移動させた際にシートSTに湾曲部を形成すべくシートSTが搬送方向Yの下流側へ引っ張られるが、その搬送方向Yの上流側の搬送ローラー対R2,R3によるシートSTのニップ箇所で、その引っ張りによる張力の搬送方向上流側へのそれ以上の伝播が阻止される。よって、シートSTにおける記録ヘッド47による印刷が施される印刷領域(つまり支持台49の上面に相当する領域)に位置する部分が、その引っ張りにより搬送方向Yに位置ずれし、記録ヘッド47によるシートSTへの印刷位置が搬送方向Yにずれてしまう不都合が回避されるようになっている。
【0068】
次に、本実施形態のプリンター11の作用を説明する。
プリンター11がホスト装置200から印刷ジョブデータを受信すると、コンピューター101内の主制御部121は、受信した印刷ジョブデータを解釈して得たコマンドに従って、シートの給送・搬送、及び搬送されたシートへの記録を指示する。搬送制御部122は給送の指示を受け付けると、給送モーター20及び第1搬送モーター38を駆動してシートSTを印刷開始位置(頭出し位置)まで給送する。そして、印刷制御部123がキャリッジモーター50を駆動することによるキャリッジ46の主走査方向Xへの1回の移動(1パス)の途中で記録ヘッド47がインク滴を噴射して行われる印刷動作と、搬送制御部122が第1搬送モーター38を駆動することによるシートSTの間欠搬送とが交互に行われる。これにより、シートSTの表面に印刷ジョブに基づく画像が1パス分(1行)ずつ印刷される。画像が印刷されたシートSTは、1枚分の終端に相当する切断位置がカッター16に達する度に、カッター16により1枚のシートCSに切り離される。そして、シートCSが乾燥装置17の下側を搬送される過程で吹出口17aからの温風がシートCSの表面に吹き付けられることにより、シートCS上のインクが乾燥する。
【0069】
印刷が終わってカッター16により切断されてから先端がカール矯正機構18に到達する短尺のシートCSの場合と、カッター16により切断される前に先端がカール矯正機構18に到達する長尺のシートCSの場合とで、実施されるカール矯正処理が異なるので、以下、これらについて順番に説明する。
【0070】
図3(a)に示す短尺のシートCSの場合は、印刷されたシートSTからカッター16により短尺のシートCSが切り離され、カッター16の切断動作の終了確認後、電動モーター51が駆動されて従動ローラー34,35が下降される。従動ローラー34,35と搬送ローラー24,25との間に挟持されたシートSTは、第2搬送モーター39の駆動により搬送ローラー24〜27が回転することにより搬送方向下流側へ連続搬送される。そして、シートCSの先端がカール矯正機構18の手前のセンサー42に検知されると、先端がデカールローラー対DRの隙間に挿入したタイミングでカール矯正機構18が作動される。すなわち、カムモーター73が駆動されてデカールローラー36がデカールOFF位置から第1のデカールON位置に移動する。この結果、連続搬送されながらシートCSにカール矯正処理が施される。こうして短尺のシートCSはその搬送方向全域に亘って連続的にカール矯正される。
【0071】
一方、図3(b)に示す長尺のシートCSの場合は、シートSTから長尺のシートCSがカッター16により切り離される前に、シートSTの先端がカール矯正機構18に到達する。このとき、先端がカール矯正機構18の手前のセンサー42に検知されると、先端がデカールローラー対DRの隙間に挿入する少し手前の設定位置に達し、その設定位置に達した後の最初の記録位置で印刷動作を行った後、コンピューター101が図9に示す印刷制御ルーチンを実行する。
【0072】
以下、コンピューター101が、長尺のシートCSに対して印刷処理とカール矯正処理とを施す印刷制御を、図9に基づいて説明する。
まずステップS1では、搬送動作を行う。すなわち、次の記録位置までシートSTを間欠搬送する。搬送制御部122は、ロータリーエンコーダー67の検出パルスのパルスエッジの計数値に基づきシートSTの搬送位置を把握しており、現在の搬送位置から次回の記録位置に相当する搬送位置までの搬送量に相当する回転量だけ第1搬送モーター38を駆動する。詳しくは、搬送制御部122は、予め搬送速度テーブルを有し、このテーブルに従って所定の速度プロファイルで加速、定速、減速するように第1搬送モーター38を制御する。そして、搬送制御部122は、計数値に基づきシートSTが減速開始位置に達すると、第1搬送モーター38の減速を開始して第1搬送モーター38の駆動を停止させることで、シートSTを次回の記録位置に停止させる。停止したシートSTは支持台48の上面に吸着される。
【0073】
この搬送動作中はステップS2において、搬送動作を停止したか否かを判定する。この判定処理は、デカール制御部124の第1判定部125が行う。搬送動作を停止したと判定されていないうちはそのまま待機し、搬送動作を停止したと判定されると、ステップS3に進む。
【0074】
ステップS3では、従動ローラー34,35を下降させてシートSTを挟持(ニップ)する。すなわち、主制御部121は、電動モーター51を正転駆動させて従動ローラー34,35を、退避位置からニップ位置まで下降させることにより、搬送ローラー対R2,R3によりシートSTをニップさせる。
【0075】
次のステップS4では、カール矯正機構18をデカールONする。すなわち、デカール制御部124がカムモーター73を駆動して、デカールローラー36をデカールOFF位置から第2のデカールON位置(図6(b)参照)へ移動させる。ここで、第2のデカールON位置は、シートCSが連続搬送されるときの第1のデカールON位置(図6(b)参照)よりはデカールOFF位置側にあり、デカールローラー36と搬送ローラー26間のシートSTの挟持力は、シートCSが連続搬送されるときの挟持力より小さくなる(図6(b))。また、デカールローラー36が第2のデカールON位置に配置されたときにシートSTを搬送面より下側へ押し込む押込量は、デカールローラー36が第1のデカールON位置に配置されたときにシートCSを搬送面より下側へ押し込む押込量より少なくなる。このため、デカールローラー36が第2のデカールON位置に配置されたときにシートSTに形成される湾曲部は、デカールローラー36が第1のデカールON位置に配置されたときにシートSTに形成される湾曲部よりも小さな湾曲形状となる。こうしてシートSTには間欠搬送の合間の停止時(印刷動作時)にカール矯正処理が施される。なお、本実施形態では、搬送動作の終了から印刷動作の終了までのシート停止期間にカール矯正機構18をデカールON状態とするステップS4の処理が、第1カール矯正処理に相当する。
【0076】
このとき、第2のデカールON位置へ移動したデカールローラー36がシートSTを搬送面よりも下側へ押し込んで湾曲させるので、シートSTの搬送方向上流側の部分が搬送方向Yの下流側へ引っ張られることになる。しかし、シートSTは搬送方向の上流側部分で搬送ローラー対R2,R3によりニップされているので、その引っ張り力がそのニップ箇所よりも上流側へ伝播することが阻止される。よって、シートSTの印刷領域が引っ張り力によって搬送方向下流側へずれることが回避される。
【0077】
そして、次のステップS5では、印刷動作を行う。この印刷動作は、印刷制御部123がキャリッジモーター50及び記録ヘッド47を駆動させることにより行われる。すなわち、印刷制御部123は、キャリッジモーター50を駆動させて、図5(a)に示すようにキャリッジ46を主走査方向Xに移動させるとともに、その移動過程で記録ヘッド47のノズル47aからシートSTの表面に向かってインク滴を噴射することで、シートSTの表面に1パス分の印刷を施す。この印刷動作の期間中は、図5(b)に示すように、デカールローラー36が第2のデカールON位置に保持され、カール矯正機構18がデカールON状態にあるので、シートSTにカール矯正処理が施される。このとき、シートSTの印刷領域は、カール矯正機構18の作動による引っ張り力の伝播が搬送ローラー対R2,R3によるシートSTのニップにより阻止され、搬送方向に位置精度よく配置されているので、シートST上に記録ヘッド47による印刷が位置精度よく行われる。
【0078】
この印刷動作中はステップS6において、印刷動作を終了したか否かを判定する。この判定処理は、デカール制御部124の第2判定部126が行う。本実施形態の印刷制御部123は印刷動作を終えると、主制御部121及びデカール制御部124に対して印刷動作終了通知を出力する。第2判定部126は、この印刷動作終了通知を受け付けたことをもって、印刷動作を終了したと判定する。印刷動作を終了していない場合はそのまま待機し、印刷動作を終了したと判定すると、ステップS6に進む。
【0079】
ステップS7では、デカールローラー36を待機位置(図6(a)参照)へ移動させる。すなわち、デカール制御部124は、カムモーター73を駆動させてデカールローラー36を待機位置へ移動させる。この待機位置では、デカールローラー36は、シートSTを搬送面より下側へ押し付けることなく挟持もしておらず、例えばシートSTの表面に接触する程度の位置に配置される。
【0080】
次のステップS8では、従動ローラー34,35を上昇させてシートSTの挟持(ニップ)を解除する。すなわち、主制御部121が電動モーター51を逆転駆動させて、従動ローラー34,35を上昇させることにより、搬送ローラー対R2,R3によるシートSTの挟持を解除する。
【0081】
次のステップS9では、シートSTが切断位置に達したか否かを判定する。シートSTが切断位置に達していなければステップS1に戻り、一方、シートSTが切断位置に達したならばステップS10に進む。
【0082】
そして、ステップS1において次回の記録位置までシートSTを搬送する搬送動作を行う。図4(a)に示すようにシートSTが間欠搬送される搬送動作中は、図4(b)に示すようにデカールローラー36がシートSTを挟持しない待機位置に配置される。このため、シートSTの搬送負荷は、シートSTの先端がカール矯正機構18に到達する前とほとんど変化なく小さく抑えられる。そして、図9におけるステップS2で搬送動作を停止したと判定されると、従動ローラー34,35を下降させてシートSTを搬送ローラー対R2,R3で挟持(ニップ)し(S3)、このシートSTがニップされた状態の下でカール矯正機構18をデカールONする(S4)。そして、デカールON状態の下で、シートSTに1パス分の印刷を施す印刷動作が行われる(S5)。印刷動作を終了したと判定されると(S6で肯定判定)、デカールローラー36を待機位置へ配置し(S7)、さらに従動ローラー34,35を上昇させてシートSTの挟持を解除する(S8)。
【0083】
こうしてステップS9でシートSTが切断位置に達したと判定されるまで、ステップS1〜S8の各処理を実行することにより、次の記録位置までのシートSTの搬送動作と、1パス分の印刷動作とを交互に実施してシートSTへの画像の印刷が進められるとともに、これに並行して印刷動作期間に限りシートSTにカール矯正処理が施される。
【0084】
そして、ステップS9でシートSTが切断位置に達したと判断されると、次のステップS10において、シートを切断する。すなわち、主制御部121が不図示のカッターモーターを駆動させてカッター16を作動させることにより、シートSTからカットシートCSを切り離す。
【0085】
次のステップS11では、デカールONする。すなわち、デカール制御部124は、カムモーター73を駆動させてデカールローラー36を図6(b)に示す連続搬送時の第1のデカールON位置に配置する。この第1のデカールON位置では、シートCSに強いカール矯正処理を施すことが可能である。なお、本実施形態では、シートが連続搬送されるときにカール矯正機構18をデカールON状態とするステップS11の処理が、第2カール矯正処理に相当する。
【0086】
次のステップS12では、シートCSを連続搬送する。すなわち、搬送制御部122が、第2搬送モーター39を駆動させるとともに、従動ローラー34,35を下降させて搬送ローラー対R2,R3によりシートCSをニップすることにより、シートCSを連続搬送する。この結果、デカールローラー36が第1のデカールON位置に配置された状態でシートCSが連続搬送されることにより、シートCSには連続的に強めのカール矯正処理が施される。ここで、シートの切断後は、その切り離されたシートCSに挟持を伴うカール矯正処理が施されても、シートSTの印刷領域が引っ張られることがないため、シートCSの連続搬送時は強めのカール矯正処理が施される。
【0087】
そして、センサー42により検知されたシートCSの終端がデカールローラー対DR間を通過し終わったタイミングで、カムモーター73が駆動されてカール矯正機構18がデカールOFFされる。さらに後続のシートCSが存在しなければ、シートCSが排紙口12aから排出された後、第2搬送モーター39の駆動が停止される。このようにシートCSが短尺・長尺であるかに関わらず、その搬送方向全域にカール矯正処理が施される。
【0088】
シートCSが連続搬送されているときも、上流側のシートSTに対しては搬送動作と印刷動作とが交互に行われ、シートSTへの画像の印刷が並行して進められる。そして、シートSTの先端が設定位置に達すると、再び図9に示す印刷制御ルーチンが開始され、シートSTに対する搬送動作と印刷動作とを交互に行いながら、印刷動作の期間に限りシートSTにカール矯正処理が施される。
【0089】
以上詳述したように本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)デカールローラー36を、搬送動作(間欠搬送)中は待機位置に配置し、印刷動作中はデカールON位置に配置する。このため、シートSTの搬送負荷を小さく抑え、シートSTを次の搬送位置へ正確に搬送できる。このため、シートST上の印刷位置が搬送方向にずれることを回避でき、例えばバンディング等の発生を回避できる。
【0090】
(2)デカールローラー36の待機位置を、デカールOFF位置とデカールON位置との間の位置とした。このため、搬送動作終了後、デカールローラー36を速やかにデカールON位置に配置できる。よって、次の印刷動作の実施期間においてシートSTにカール矯正処理を施す時間を長く確保することができる。
【0091】
(3)連続搬送時の第1のデカールON位置と、間欠搬送時の第2のデカールON位置とを設定し、連続搬送されるシートCSに対するデカールローラー対DRの挟持力よりも、間欠搬送で印刷が行われるときのシートSTに対するデカールローラー対DRの挟持力を低く設定した。このため、間欠搬送時のシートSTの搬送負荷を小さく抑えて搬送位置精度の低下を抑えつつシートSTにカール矯正処理を施すことができる。また、連続搬送時と同様の強いカール矯正処理が施されると、シートSTの停止位置と対応する箇所が強く折られ、折れが搬送方向に一定間隔に形成されてしまう。しかし、本実施形態では、デカールローラー36をカール矯正力(挟持力)の相対的に弱い第2のデカールON位置に配置するので、カール矯正処理により形成される折れの程度を緩和した適度なカール矯正処理をシートSTに施すことができる。
【0092】
(4)バンド印刷1回当たりのシートSTの最小搬送量Lpよりも、デカールローラー対DRの挟持位置と搬送ローラー27の支持位置(上端位置)との間に形成されるシートST(又はCS)の湾曲部の長さ(カール矯正長)が長くなるように、カール矯正機構18の各ローラー26,27,36の位置関係を設定した。このため、印刷動作の実施期間に限り間欠的にカール矯正処理が施されるものの、少なくとも最小搬送量Lpで間欠搬送されながらカール矯正処理が施される部分については搬送方向全域に亘りカールを矯正できる。よって、シートSTの搬送方向にカールが矯正されないカール矯正漏れを極力低減することができる。
【0093】
(5)連続搬送されるシートCSには、デカールローラー36が第2のデカールON位置に配置されたカール矯正機構18により強めのカール矯正処理(第2カール矯正処理)が連続的に施されるので、シートCSのカールを効果的に矯正できる。よって、長尺のシートCSの場合、切断されるまでは弱めのカール矯正処理(第1カール矯正処理)が間欠的にしか施されないものの、切断後には短尺のシートCSと同様に強めのカール矯正処理を施すことができる。この点からも一層効果的にカール矯正を行うことができる。
【0094】
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・図10の例では、2つの搬送ローラー対R2,R3でシートSTを二箇所でニップしたが、従動ローラー34,35のうちいずれか1つをシートST側へ移動させて搬送ローラー対R2,R3のうち一方によりシートSTを1箇所でニップする構成としてもよい。すなわち、カール矯正機構18と記録ヘッド47との間の少なくとも一箇所でシートSTがローラー対にニップされれば足りる。もちろん、ニップ箇所は3箇所以上でもよい。
【0095】
・図11に示すように、デカールローラー対DRを構成する駆動側の搬送ローラー26を回転フリー状態に切り換え可能な構成を採用し、デカールON時にシートSTが搬送方向下流側へ引っ張られる力を緩和するようにしてもよい。詳しくは、図11に示すように、搬送ローラー26と第2搬送モーター39との間の動力伝達経路の途中にクラッチ手段の一例としての電磁クラッチ91を設ける。電磁クラッチ91は、第2搬送モーター39の動力を搬送ローラー26に伝達可能な接続状態と、その動力の伝達が切断されて搬送ローラー26を回転フリー状態とする切断状態とに切り換えられる。デカールローラー36をデカールON位置に移動させるに当たり、事前に電磁クラッチ91を切って搬送ローラー26を回転フリー状態にする。そして、搬送ローラー26を回転フリー状態としたうえで、デカールローラー36をデカールON位置へ移動させる。このとき、デカールローラー36がシートSTを搬送面より下側へ押し込むときに、両ローラー26,36が自由回転することにより、その挟持位置よりも搬送方向下流側のシート部分が引っ張られることになる。このため、その挟持位置よりも搬送方向上流側のシート部分を下流側へ引っ張る張力がシートSTに働き難くなる。例えば、図11に示すように、従動ローラー34,35を下降させなくても、シートSTの印刷領域が搬送方向へずれて印刷の位置ずれが発生することを極力緩和できる。この場合、デカールON直後に電磁クラッチ91を元の接続状態に切り換えて搬送ローラー25と第2搬送モーター39とを作動連結状態とすれば、湾曲部が保持され易くなって効果的にカール矯正処理を行うことができる。
【0096】
・デカールローラー36の待機位置は、シートSTの表面に接触する程度の位置に限定されない。要するに待機位置は、デカールON位置(挟持位置)よりもデカールOFF位置(離間位置)側の位置であればよい。例えば待機位置はデカールOFF位置(離間位置)であってもよい。また、待機位置は、シートSTを押し込んで湾曲部を形成しうる位置でもよい。この場合、デカールローラー対DRがシートSTを挟持しても挟持しなくてもよい。シートSTを挟持する場合の待機位置は、デカールローラー対DRがシートSTを第2のデカールON位置のときよりも弱い挟持力で挟持しうる位置とする。このような湾曲部を形成しうる待機位置であれば、搬送負荷を小さく抑えつつ、搬送動作(間欠搬送)期間にもシートSTにカール矯正処理を施し、シートSTのカール矯正効果を一層高めることができる。
【0097】
・印刷動作期間におけるデカールローラー36の配置位置を、第2のデカールON位置に替え、連続搬送時と同じ第1のデカールON位置としてもよい。
・前記実施形態において、デカールON時に搬送ローラー対R3,R4でシートSTをニップしない構成も採用できる。
【0098】
・デカールローラー36の移動機構は、レバーの回動を利用した回動機構に限定されず、デカールローラー36が直線経路に沿って離間位置と挟持位置との間を移動する直動機構(リニア機構)でもよい。この場合、カム機構を利用してデカールローラー36を直線移動させてもよいし、例えばエアシリンダーを駆動源としてデカールローラー36を直線移動させてもよい。また、デカールローラー36は1個に限定されず、複数個設けられてもよい。例えば搬送ローラー27との間でシートSTを挟持可能なデカールローラーがさらに設けられていてもよい。
【0099】
・前記実施形態では、記録装置をインクジェット式記録装置に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液体噴射装置でもよい。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために熱硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。このように記録媒体は、紙などのシート(連続紙や単票紙)に限定されず、素子や配線等がインクジェットで形成される基板でもよい。また、合成樹脂や金属からなるシートでもよい。なお、本明細書において「液体」には、液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。要するに、乾燥手段からの乾燥風により乾燥が必要になる液体であれば足りる。
【0100】
・記録ヘッド47はインクジェット記録方式に限定されず、ドットインパクト記録方式でもよい。要するにシリアルプリンターであればその記録方式は特に限定されない。
・記録媒体を構成するシートST,CSは、紙、プラスチックフィルム、金属箔、プラスチックと金属との複合材料又は布であってもよい。
【符号の説明】
【0101】
11…記録装置の一例であるプリンター、14…搬送手段の一例である搬送装置、15…記録部、16…切断手段の一例であるカッター、17…乾燥装置、18…カール矯正手段の一例であるカール矯正機構、21〜25…搬送ローラー、26,27…カール矯正手段の一例を構成するとともに一対の回転ローラーの一例である搬送ローラー、34,35…従動ローラー、36…可動ローラーの一例であるデカールローラー、38…第1搬送モーター、39…第2搬送モーター、42…センサー、46…記録手段の一例を構成するキャリッジ、47…記録手段の一例を構成する記録ヘッド、50…キャリッジモーター、51…電動モーター、100…制御装置(制御手段)、101…コンピューター、121…主制御部、122…搬送制御部、123…印刷制御部、124…デカール制御部、125…第1判定手段の一例である第1判定部、126…第2判定手段の一例である第2判定部、R2,R3…搬送ローラー対、DR…デカールローラー対、ST,CS…記録媒体の一例であるシート、Ld…湾曲する部分の長さの一例としての湾曲部の長さ、Lp…最小搬送量、X…主走査方向、Y…搬送方向(副走査方向)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を間欠搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されて停止している前記記録媒体に記録を施す記録手段と、
前記記録手段の搬送方向下流側に配置され、前記記録媒体を保持可能に配置される一対の回転ローラーと、前記一対の回転ローラーと協働して前記記録媒体の挟持を伴って該記録媒体のカールを矯正する挟持位置と、該一対の回転ローラーから離間した離間位置の間を移動可能に配置される可動ローラーとを備えるカール矯正手段と、
を備え、
前記可動ローラーは、前記記録手段による記録が施される記録位置で前記記録媒体が停止しているときに前記挟持位置に位置し、当該記録媒体が搬送されているときに前記挟持位置よりも前記離間位置側の待機位置に位置することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記搬送手段が記録媒体の連続搬送が可能であり、前記カール矯正手段の間欠搬送される前記記録媒体を挟持する際の挟持力が、連続搬送される前記記録媒体を挟持する際の挟持力より小さいことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記可動ローラーが挟持位置に位置するときに、搬送方向における該可動ローラーと前記一方の回転ローラーとの挟持箇所と他方の前記回転ローラーが前記記録媒体を支持する支持箇所との間で前記記録媒体のカール矯正のために湾曲する部分の長さが、前記搬送手段による間欠搬送の最小搬送量より長いことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、前記記録媒体の前記記録手段と前記カール矯正手段との間に位置する部分を挟持可能な第1位置と、前記記録媒体から離間する第2位置とに移動可能な従動ローラーを有する搬送ローラー対を備え、前記可動ローラーは、前記従動ローラーが前記第1位置に配置された状態の下で、前記待機位置から前記挟持位置に移動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記待機位置は、前記可動ローラーの移動経路上において前記挟持位置と前記離間位置との間の位置であることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録媒体は長尺の記録媒体であって、前記記録手段と前記カール矯正手段との間に前記長尺の記録媒体を切断する切断手段を更に備え、
前記カール矯正手段は、先端がカール矯正手段に到達した記録中の記録媒体が前記切断手段により切断されるまでは、間欠搬送される記録媒体が記録位置で停止しているときに間欠的にカール矯正処理を施す第1カール矯正処理を行い、切断された後は切断された前記記録媒体を連続搬送しつつ該記録媒体にカール矯正処理を施す第2カール矯正処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
記録手段に対して記録媒体の搬送方向下流側に配置され、前記記録媒体を保持可能に配置される一対の回転ローラーと、前記一対の回転ローラーと協働して前記記録媒体の挟持を伴って該記録媒体のカールを矯正する挟持位置と該一対の回転ローラーから離間した離間位置の間を移動可能に配置される可動ローラーとを備えるカール矯正手段を備えた記録装置における記録方法であって、
前記記録手段による記録が施される記録位置で前記記録媒体が停止しているときに、前記可動ローラーが前記挟持位置に位置して前記記録媒体にカール矯正処理を施すカール矯正ステップと、
前記記録手段が間欠搬送されているときに、前記可動ローラーが前記挟持位置よりも前記離間位置側の待機位置に位置して、前記挟持位置のときの挟持力よりも弱い挟持力で前記記録媒体を挟持するかあるいは前記記録媒体を挟持しない待機ステップと、
を備えたことを特徴とする記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−103790(P2013−103790A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248287(P2011−248287)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】