説明

設備用基礎構造体

【目的】埋戻し土を利用することで、設備用基礎構造体として必要なコンクリート部材の重量を低減し、その作業工期の短縮と作業工程の簡略化を図る。
【構成】設備を設置しようとする場所に配置し、前記設備を支持する設備用基礎構造体1であって、所定の間隔で、複数の下部材3を配設し、この下部材3の上部に、前記下部材3と交差するように、所定の間隔で複数の上部材2A,2Cを固設し、前記隣接する下部材3,3間、及び、隣接する上部材2A,2B(2C,2D)間を、埋戻し土18で埋める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備用基礎構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
空調設備の室外機や給湯器などの比較的重量のある小型設備を屋外に設置する場合には、この小型設備を設置する地面に、該小型設備を支持する設備用基礎構造体を配設し、その上部に前記小型設備を固定し設置することが行われている。
【0003】
従来、この設備用基礎構造体として、所定の間隔を持って略並列して配設された一対のベース部材と、該ベース部材の上面と嵌合する凹部を両端部に有し、かつ、前記ベース部材間に嵌合する凸部を有するT字状の水平連結部材とを有し、ベース部材と水平連結部材は、コンクリートで成形され、このベース部材と水平連結部材とを組み合わせて、直方体状の設備用基礎構造体を形成するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2008−223399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
設備用基礎構造体の上部に小型基礎を設置した際に、設備用基礎が浮上がらないために、設備用基礎構造体全体として、一定以上の重量が必要となる。
【0006】
前記従来技術においては、その重量を、コンクリート部材であるベース部材と水平連結部材の総重量で構成しているため、必要な重量分のコンクリート部材を、小型設備の設置場所まで運ぶ必要がある。また、小型設備を住宅の裏庭等に設置する際、その設置場所に重機が搬入できない場合があり、多数のベース部材や水平連結部材を手作業で、設置場所まで運ぶ必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、埋戻し土を利用することで、設備用基礎構造体として必要なコンクリート部材の重量を低減し、その作業工期の短縮と作業工程の簡略化を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、設備を設置しようとする場所に配置し、前記設備を支持する設備用基礎構造体であって、
所定の間隔で、複数の下部材を配設し、この下部材の上部に、前記下部材と交差するように、所定の間隔で複数の上部材を固設し、
前記隣接する下部材間、及び、隣接する上部材間を、埋戻し土で埋めたことを特徴とする設備用基礎構造体である。
【0009】
請求項2記載の発明は、設備を設置しようとする場所に配置し、前記設備を支持する設備用基礎構造体であって、
前記設備を設置しようとする地表に根切りを行い、その中に所定の間隔で、複数の下部材を配設し、この下部材の上部に、前記下部材と交差するように、所定の間隔で複数の上部材を固設し、
前記根切り内、隣接する下部材間、及び、隣接する上部材間を、埋戻し土で埋め、前記下部材を埋設するとともに、前記上部材の少なくとも一部を埋設したことを特徴とする設備用基礎構造体である。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記隣接する下部材において、これら相互の対向する側面を、上方が内側方向に傾斜するテーパ面で形成し、
前記隣接する上部材において、これら相互の対向する側面を、上方が内側方向に傾斜するテーパ面で形成したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の発明において、前記下部材同士を、略平行となるように配置し、前記上部材を前記下部材に対して略直交するように前記上部材に載置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の下部材を配設し、この下部材の上部に、前記下部材と交差するように、所定の間隔で複数の上部材を固設し、隣接する下部材間、及び、隣接する上部材間を、埋戻し土で埋め、この埋戻し土の一部を設備用基礎構造体の浮き上がり時の抵抗として利用することで、設備用基礎構造体において必要な下部材及び上部材の総重量を、前記従来技術におけるコンクリート部材の総重量よりも少なくすることが出来、設備用基礎構造体の設置作業の工期短縮と作業工程の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1の設備用基礎構造体から埋戻し土を除いた状態の斜視図。
【図2】図1の上面図。
【図3】本発明の実施例1の設備用基礎構造体の正面図。
【図4】図1の部分拡大縦断面図。
【図5】(a)は図3に用いる上部材の上面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図。
【図6】(a)は図3に用いる下部材の上面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図。
【図7】本発明の実施例1の設備用基礎構造体に設備を固定した状態を示す部分縦断面図。
【図8】本発明のその他の例の設備用基礎構造体から埋戻し土を除いた状態示す上面図。
【図9】本発明のその他の例の設備用基礎構造体から埋戻し土を除いた状態示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
図1乃至図7は実施例1を示す。
【0015】
本発明の設備用基礎構造体1は、図1〜4に示すように、複数の上部材2A,2B,2C,2Dと、複数の下部材3を有する。
【0016】
前記上部材2A〜2Dは、図2,5に示すように、コンクリートで長尺状に形成されたブロック体(PCa部材)で形成されている。また、図5に示すように、その長尺方向の左右両側面は、上面に対して略直交する平面で形成されている。隣接する上部材2A,2B(2C,2D)の相互に対向する面2a,2b、及び、その外側に位置する面2c,2d(即ち、図1における正面2a,2cと背面2b,2d)が、図4,5(c)に示すように、上方が内側方向に傾斜するテーパ面に形成されている。このテーパ面の垂直面に対する角度αは任意に設定することができるが、本実施例においては約3.3°とした。
【0017】
前記上部材2A〜2Dには、その長尺方向の両側部に、上下に貫通する第1連結孔4,4が計2個形成されている。該第1連結孔4は、上部材2A〜2Dを取付ける下部材3における第2連結孔6の位置に対応した位置に設けられている。
【0018】
前記上部材2A〜2Dの上面には、設備を固定するための有底状の取付孔5が形成され、該取付孔5内には、雌ネジが刻設された連結具が設けられている。該取付孔5の位置は、固定する設備の固定部材の位置に対応して設定されるもので、本実施例1では、3個の上部材2B〜2Dにおける取付孔5の位置は相互に異なって設定され、1個の上部材2Aには取付孔5が形成されていない。なお、取付孔5の位置は、本実施例1の図1,2に示す位置以外にも、設置する設備20における固定用部材21の取付孔21aの位置に対応して任意に設定するものである。
【0019】
各上部材2A〜2Dは、取付孔5の有無及びその位置以外は、同じ形状に形成されている。前記上部材2A〜2Dの大きさは任意に設定することができるが、本実施例1においては、長尺方向の長さを500mm、下面の短尺方向の長さを170mm、上面の短尺方向の長さを150mm、高さを170mmとした。
【0020】
前記各下部材3は、図2,6に示すように、コンクリートで長尺状に形成されたブロック体(PCa部材)に形成されている。また、図6に示すように、その長尺方向の左右両側面は、上面に対して略直交する平面で形成されている。隣接する下部材3,3の対向する面3a,3b、及び、外側に位置する面3c,3d(即ち、図1における両側面3a〜3d)は、図3,6(c)に示すように、上方が内側方向に傾斜するテーパ状に形成されている。このテーパ面の垂直面に対する角度αは任意に設定することができるが、本実施例においては約3.3°とした。
【0021】
前記下部材3には、その長尺方向の両側部に、上方に開口する有底状の第2連結孔6,6が計2個形成されている。該第2連結孔6は、取り付ける上部材2A〜2Dの第1連結孔4の位置に対応した位置に設けられ、この第2連結孔6内には、雌ネジが刻設された連結具が設けられている。
【0022】
前記下部材3の下面には、その短尺方向全長に亘る凹部7が形成され、該凹部7が、長手方向において、適宜間隔を有して複数本形成されている。前記下部材3の大きさは任意に設定することができるが、本実施例1においては、長尺方向の長さを600mm、下面の短尺方向の長さを170mm、上面の短尺方向の長さを150mm、高さを170mmとした。
【0023】
次に、本発明の設備用基礎構造体1の設置方法について説明する。
先ず、設備を設置する場所の地表を掘削して根切り9を形成し、その底面を転圧等し根切底10を形成する。
【0024】
次に、該根切底10の上面に、図3に示すように、4個の下部材3を、その長手方向が略平行となるように、所定の間隔を有して離間して配置し、隣接する下部材3,3間の隙間15を、埋戻し土18で空間が形成しないように埋める。なお、この埋戻し土18として、根切り9内の空隙を埋めるのに適した土や土砂等であれば任意のものを用いることが出来、前記掘り起こした土以外にも、この掘り起こした土の土質を改良したものや、他から搬入した新たな土や土砂等の任意のものを用いることができる。
【0025】
次に、図1,3に示す左側に位置する2個の下部材3の上面間に、2個の上部材2A,2Bを、その長手方向が、略平行で、かつ、下部材3の長手方向と直交するように所定の間隔を有して離間して載置する。また、図1,3に示す右側に位置する2個の下部材3の上面間に、2個の上部材2C,2Dを、その長手方向が、略平行で、かつ、下部材3の長手方向と直交するように所定の間隔を有して離間して載置する。このとき、左側の上部材2A(2B)と、右側2C(2D)の軸方向が、一直線上に位置するように配置する。
【0026】
次に、図4に示すように、上部材2A〜2Dの第1連結孔4の上部から端部に雄ネジが刻設されたボルト13を挿通して、下部材3の第2連結孔6内の雌ネジに螺合する。
【0027】
次に、第1連結孔4内にグラウト材14を注入し硬化させて上部材2A〜2Dと下部材3とを連結する。グラウト材14としては、例えば、住友化学(株)社製のダイルコンSスーパー、太平洋マテリアル(株)社製のプレューロックスM−S、日本化成(株)社製のNSグラウト、宇部興産(株)社製のフィルターG等を用いることができる。
【0028】
次に、上部材2A〜2Dの上部が地表に突出するように根切り9内に、前記埋戻し土18を埋戻す。この時、隣接する下部材3,3間の隙間15、地表GL下に位置する隣接する上部材2A(2C)と2B(2D)間の隙間16、上部材2A〜2Dと下部材3と根切り9の内壁面との隙間17に空間が形成しないように前記埋戻し土18を埋戻し、設備用基礎構造体1となる。
【0029】
次に、本発明の設備用基礎構造体1に対する設備の設置方法を説明する。
上記のように、所定の位置に設備用基礎構造体1を設置した後に、図7に示すように、設備用基礎構造体1上の所定の位置に設備20を載置し、設備20の下端に設けられた固定用部材21の取付孔21a内に、ボルト22を挿通し、該ボルト22を上部材2A〜2Dの取付孔5内の雌ネジに螺合する。これにより、設備用基礎構造体1上に設備20を固定することができる。
【0030】
本発明の設備用基礎構造体1は上記のような構造を有することにより、次のような作用、効果を奏する。
【0031】
複数の下部材3を離間して配設し、この下部材3の上部に、該下部材3と直交するように所定の間隔で複数の上部材2A〜2Dを載置し、隣接する下部材間の隙間15、及び、隣接する上部材間の隙間16、及び、上部材2A〜2Dと下部材3と根切り9の外壁との隙間17を埋戻し土18で埋め、この埋戻し土18の一部を設備用基礎構造体1の浮き上がり時の抵抗として利用することで、設備用基礎構造体1に必要な下部材3及び上部材2a〜2Dの総重量を、前記従来技術におけるコンクリート部材の総重量よりも少なくすることが出来、設備用基礎構造体1の設置作業の工期短縮、及び、作業工程の簡略化を図ることができる。
【0032】
また、隣接する上部材2A,2B(2C,2D)における、その対向する面2a,2b、及び、その外側に位置する面2c,2dと、隣接する下部材3,3における、その対向する面3a,3b、及び、その外側に位置する面3c,3dを、夫々上方が内側方向に傾斜するテーパ状に形成したことにより、隣接する下部材間の隙間15、及び、隣接する上部材間の隙間16、及び、上部材2A〜2Dと下部材3と根切り9の外壁との隙間17を埋める埋戻し土18のより多くを設備用基礎構造体1の浮き上がり時の抵抗として利用することができ、その分、設備用基礎構造体1に必要な下部材3及び上部材2A〜2Dの総重量を、より前記従来技術におけるコンクリート部材の総重量よりも少なくすることが出来、より設備用基礎構造体1の工期短縮、及び、作業工程の簡略化を図ることができる。
【0033】
また、下部材3の下面に複数の凹部7を設けたことにより、設備用基礎構造体1の根切底10に対する定着状態を高めることができる。
【0034】
また、隣接する下部材間の隙間15、及び、隣接する上部材間の隙間16を埋める埋戻し土18内に、設置する設備の配管等を設置することもできるため、様々な設備20を設備用基礎構造体1上に設置することがきる。
[その他の実施例]
なお、各上部材2A〜2Dにおける第1連結孔4の数及び位置と、各下部材3における第2連結孔6の数及び位置は、上記の数及び位置以外にも任意に設定することができる。
【0035】
また、上部材2A〜2Dと下部材3との連結手段としては、上記のボルトと雌ネジ以外にも、任意の連結手段を用いることができる。
【0036】
また、上部材2A〜2Dと下部材3とは、交差するように配置されていれば良く、上記のように直交する以外にも任意に配置することができる。
【0037】
上部材2A〜2Dの第1連結孔4と、下部材3の第2連結孔6の位置や、上部材2A〜2D、下部材3の大きさを図1〜7の実施例1とは変更することで、設備用基礎構造体1を、例えば、図8や図9に示すように、様々に変更することができる。
【0038】
図8に示す設備用基礎構造体1は、下部材23を5個使用し、上部材22を4個使用したものである。この上部材22Aは、前記実施例1の上部材2A〜2Dとは、大きさが同じであるが、第1連結孔4の位置と、取付孔5の有無及びその位置が異なる。下部材23は、前記実施例1の下部材3とは長尺方向の大きさと、第2連結孔6の位置が異なる。
【0039】
図9に示す設備用基礎構造体1は、下部材33Aを2個、下部材33Bを2個使用し、上部材32Aを2個、上部材32B,32C,32Dを各1個使用したものである。この上部材32A〜32Dは、前記実施例1の上部材2A〜2Dとは、大きさが同じであるが、第1連結孔4の位置と、取付孔5の有無及びその位置が異なる。下部材33A,33Bは、前記実施例1の下部材3とは大きさが同じであるが、第2連結孔6の位置が異なる。
【0040】
このように、上部材2A〜2D,22,32A〜32Dと、下部材3,23,33A,33Bの配置や大きさを変更することにより、様々な大きさの設備を設備用基礎構造体1上に設置することがきる。
【符号の説明】
【0041】
1 設備用基礎構造体
2A〜2D,22,32A〜32D 上部材
3,23,33A,33B 下部材
18 埋戻し土
20 設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備を設置しようとする場所に配置し、前記設備を支持する設備用基礎構造体であって、
所定の間隔で、複数の下部材を配設し、この下部材の上部に、前記下部材と交差するように、所定の間隔で複数の上部材を固設し、
前記隣接する下部材間、及び、隣接する上部材間を、埋戻し土で埋めたことを特徴とする設備用基礎構造体。
【請求項2】
設備を設置しようとする場所に配置し、前記設備を支持する設備用基礎構造体であって、
前記設備を設置しようとする地表に根切りを行い、その中に所定の間隔で、複数の下部材を配設し、この下部材の上部に、前記下部材と交差するように、所定の間隔で複数の上部材を固設し、
前記根切り内、隣接する下部材間、及び、隣接する上部材間を、埋戻し土で埋め、前記下部材を埋設するとともに、前記上部材の少なくとも一部を埋設したことを特徴とする設備用基礎構造体。
【請求項3】
前記隣接する下部材において、これら相互の対向する側面を、上方が内側方向に傾斜するテーパ面で形成し、
前記隣接する上部材において、これら相互の対向する側面を、上方が内側方向に傾斜するテーパ面で形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の設備用基礎構造体。
【請求項4】
前記下部材同士を、略平行となるように配置し、前記上部材を前記下部材に対して略直交するように前記上部材に載置したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の設備用基礎構造体。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−57329(P2012−57329A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199979(P2010−199979)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000241474)トヨタT&S建設株式会社 (52)
【Fターム(参考)】