説明

設備稼働状態診断方法および設備稼働状態診断装置

【課題】対象設備を複数備える装置構成においても、必要最小限の計測器により、リアルタイムに対象設備の稼動状態を診断することを目的とする。
【解決手段】全ての対象設備が消費する合計消費エネルギーおよび各対象設備の製造個数から、1時間あたりの各対象設備の固定エネルギーおよび比例エネルギーを算出し(ステップ2)、それらを用いて対象設備の稼動状態を診断することにより(ステップ3)、対象設備を複数備える装置構成においても、必要最小限の計測器により、リアルタイムに対象設備の稼動状態を診断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備や機械を利用して生産等を行う際に、設備稼働状態の診断を行う方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模で温暖化などの環境問題が話題となっており、その原因である温室効果ガスを削減することが必要不可欠になってきている。また、日本の省エネ法でも単位活動量に対する温室効果ガスの排出量である原単位での削減目標が義務付けられており、生産活動の増減に伴って増減する使用電力等のエネルギーの増減を正確に可視化し、無駄に消費しているエネルギーを削減する取組みが必要になっている。
【0003】
また、装置の故障等により消費電力が大きくなることもあり、消費電力の異常から装置の故障を診断することも行われていた。
従来の設備稼働状態診断方法としては、図12に示すような各設備に消費エネルギー量計測装置を用いる方式があった。
【0004】
図12は従来の設備稼働状態診断方法に用いる設備稼働状態診断装置の構成を説明する図である。
図12に示すように、従来の設備稼働状態診断装置は、データ入出力装置51と省エネ支援処理装置52および消費エネルギー量計測装置53から構成され、それらが通信線55によって接続される。ここで、消費エネルギー量計測装置53は製造装置等の対象設備54の電力供給ケーブル類に対して電力計測センサー等を接続して、消費エネルギー量を計測する。この対象設備54が2つ以上ある場合、同様に各対象設備54に消費エネルギー量計測装置53を電力供給ケーブル類でつなぎ、通信線55を経由して各対象設備54のエネルギー量データが省エネ支援処理装置52で読み込まれる。このような設備稼働状態診断装置を用い、データ入出力装置51から入力された消費エネルギー計測時の生産量等のデータから特性グラフなどを作成し、設備稼働状態診断を行っていた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−132119号公報
【特許文献2】特開2009−98991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の方法では、対象設備54からの情報は、消費エネルギー量計測装置53での情報のみであり、実際に装置が稼動しているのか、停止しているのかが不明であり、更に生産数量に関する情報も別途入力する必要があるため、各対象設備54の稼動状態をリアルタイムに診断することができないという課題を有していた。また、複数の対象設備54が存在する場合、各対象設備54に消費エネルギー量計測装置53を個別に設置しなければならなかった。CO排出量を削減する対象設備54や、複数の対象設備54を稼働させる工程が増える程、この消費エネルギー量計測装置53の設置数量も増加せざるをえないという問題点を有していた。
【0007】
本発明の設備稼働状態診断方法は、上記従来の課題に鑑み、対象設備を複数備える装置構成においても、必要最小限の計測器により、リアルタイムに対象設備の稼動状態を診断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の設備稼働状態診断方法は、複数の対象設備で製品の製造を行う装置についての稼働状態を電力消費量で診断する際に、前記対象設備ごとの1時間あたりの消費エネルギーの基準値を予め設定する工程と、前記対象設備ごとの前記製品の製造個数を随時計測する工程と、全ての前記対象設備の消費エネルギーを合わせた合計消費エネルギーを随時計測する工程と、前記対象設備ごとの1時間あたりの消費エネルギーである設備消費エネルギーを前記製造個数に比例エネルギーを乗じた値と固定エネルギーとの和で定義する工程と、前記合計消費エネルギーの計測結果から1時間ごとの前記合計消費エネルギーを全ての前記対象設備の前記設備消費エネルギーの和で定義する工程と、前記1時間ごとの前記合計消費エネルギーを前記対象設備の個数の2倍時間について連続して定義して前記対象設備ごとの前記固定エネルギーおよび前記対象設備ごとの前記比例エネルギーを連立方程式を解くことにより算出する工程と、前記対象設備ごとの前記固定エネルギーと前記対象設備ごとの前記比例エネルギーとの和が前記消費エネルギーの基準値より大きい場合に前記装置に電力異常が生じたと判断する工程とを有することを特徴とする。
【0009】
また、前記対象設備ごとの1時間あたりの固定エネルギーの基準値を予め設定しておき、算出した前記固定エネルギーが前記固定エネルギーの基準値より大きい場合にも前記装置に電力異常が生じたと判断しても良い。
【0010】
また、前記固定エネルギーの基準値を前記装置の稼働中に更新しても良い。
また、前記対象設備ごとに1時間あたりの前記消費エネルギーと前記製造個数との関係を随時求める工程と、前記消費エネルギーと前記製造個数との関係から第1の回帰直線を随時求める工程と、直前までに求めた前記第1の回帰直線上に一致しない前記消費エネルギーと前記製造個数との関係が2回以上続いた場合に前記一致しない前記消費エネルギーと前記製造個数との関係のみで第2の回帰直線を求める工程とを有し、前記電力異常が生じたことの判断を行う際に、前記第2の回帰直線のy軸切片の値を前記固定エネルギー、傾きを前記比例エネルギーとして前記電力異常が生じたことの判断を行うことも可能である。
【0011】
また、本発明の設備稼働状態診断方法は、複数の対象設備で製品の製造を行う装置についての稼働状態を電力消費量で診断する際に、前記対象設備ごとの前記製品の製造個数を随時計測する工程と、全ての前記対象設備の消費エネルギーを合わせた合計消費エネルギーを随時計測する工程と、前記対象設備ごとの1時間あたりの消費エネルギーである設備消費エネルギーを前記製造個数に比例エネルギーを乗じた値と固定エネルギーとの和で定義する工程と、前記合計消費エネルギーの計測結果から1時間ごとの前記合計消費エネルギーを全ての前記対象設備の前記設備消費エネルギーの和で定義する工程と、前記1時間ごとの前記合計消費エネルギーを前記対象設備の個数の2倍時間について連続して定義して前記対象設備ごとの前記固定エネルギーおよび前記対象設備ごとの前記比例エネルギーを連立方程式を解くことにより算出する工程と、算出した前記固定エネルギーを1時間ごとに算出および記録して過去最小の算出した前記固定エネルギーに所定の割合を付加した値を基準値に設定する工程と、前記対象設備ごとの前記固定エネルギーが前記基準値より大きい場合に前記装置に電力異常が生じたと判断する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
また、算出した前記比例エネルギーを1時間ごとに算出および記録して過去最小の算出した前記比例エネルギーを規定する工程をさらに備え、過去最小の算出した前記固定エネルギーと過去最小の算出した前記比例エネルギーとの和に所定の割合を付加した値を合計基準値と設定して、算出した前記固定エネルギーと前記比例エネルギーとの和が前記合計基準値より大きい場合にも前記装置に電力異常が生じたと判断しても良い。
【0013】
また、前記対象設備ごとに1時間あたりの前記消費エネルギーと前記製造個数との関係を随時求める工程と、前記消費エネルギーと前記製造個数との関係から第1の回帰直線を随時求める工程と、直前までに求めた前記第1の回帰直線上に一致しない前記消費エネルギーと前記製造個数との関係が2回以上続いた場合に前記一致しない前記消費エネルギーと前記製造個数との関係のみで第2の回帰直線を求める工程とを有し、前記基準値または前記合計基準値を設定する際に、前記第2の回帰直線のy軸切片の値を前記固定エネルギー、傾きを前記比例エネルギーとして前記過去最小の算出した前記固定エネルギーまたは前記過去最小の算出した前記比例エネルギーを求めることにより前記基準値または前記合計基準値を設定することも可能である。
【0014】
また、求めた前記消費エネルギーが前記第1の回帰直線における前記製造個数に対応する前記消費エネルギーに対して20%以上背離したときに前記第1の回帰直線と一致しないと判断しても良い。
【0015】
また、前記所定の割合が20パーセント以上であることが好ましい。
また、前記連立方程式を逆行列関数を用いて解くことが好ましい。
さらに、本発明の設備稼働状態診断装置は、製品の製造を行う複数の対象設備と、前記対象設備ごとに設けられて前記各対象設備で製造される前記製品の製造個数を計測する物流カウンターと、全ての前記対象設備で消費する合計消費エネルギーを随時計測する電力計と、前記合計消費エネルギーおよび前記製造個数から前記各対象設備の電力異常を診断して稼働状態を診断する電力異常診断部とを有し、電力異常診断部が、1時間ごとの前記合計消費エネルギーと前記対象設備ごとの1時間あたりの製造個数から前記各対象設備の1時間ごとの固定エネルギーと比例エネルギーとを算出し、前記固定エネルギーと前記比例エネルギーとから前記電力異常を診断することを特徴とする。
【0016】
以上により、対象設備を複数備える装置構成においても、必要最小限の計測器により、リアルタイムに対象設備の稼動状態を診断することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、全ての対象設備が消費する合計消費エネルギーおよび各対象設備の製造個数から、1時間あたりの各対象設備の固定エネルギーおよび比例エネルギーを算出し、それらを用いて対象設備の稼動状態を診断することにより、対象設備を複数備える装置構成においても、必要最小限の計測器により、リアルタイムに対象設備の稼動状態を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の設備稼働状態診断方法を実施する装置構成例を示す概略図
【図2】本発明の対象設備ごとのエネルギー消費量の処理個数との関係を例示する図
【図3】本発明の対象設備ごとの固定エネルギーおよび比例エネルギーと処理個数との関係を例示する図
【図4】対象設備の電源投入タイミングを例示する図
【図5】対象設備の稼働状態を例示するタイミングチャート
【図6】対象設備の1時間ごとの消費エネルギーの変化を例示する図
【図7】対象設備の1時間ごとの処理結果を例示する図
【図8】本発明の設備稼働状態診断方法の具体例を説明する図
【図9】本発明の設備稼働状態診断方法を示すフロー図
【図10】固定エネルギーに異常が生じた場合に回帰グラフにより異常を検出する方法を説明する図
【図11】比例エネルギーに異常が生じた場合に回帰グラフにより異常を検出する方法を説明する図
【図12】従来の設備稼働状態診断方法に用いる設備稼働状態診断装置の構成を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の設備稼働状態診断方法について、図1〜図9を用いて説明する。
図1は本発明の設備稼働状態診断方法を実施する装置構成例を示す概略図である。図2は本発明の対象設備ごとのエネルギー消費量の処理個数との関係を例示する図、図3は本発明の対象設備ごとの固定エネルギーおよび比例エネルギーと処理個数との関係を例示する図、図4は対象設備の電源投入タイミングを例示する図、図5は対象設備の稼働状態を例示するタイミングチャート、図6は対象設備の1時間ごとの消費エネルギーの変化を例示する図、図7は対象設備の1時間ごとの処理結果を例示する図、図8は本発明の設備稼働状態診断方法の具体例を説明する図、図9は本発明の設備稼働状態診断方法を示すフロー図である。
【0020】
まず、対象設備が実装装置である場合を例に本発明の設備稼働状態診断方法を実施する装置構成について説明する。
図1において、実装装置1,2,3は、基板に電子部品を実装する装置で、それぞれ個別に実装処理を行う装置である。実装装置1の入口には物流センサー4が設置されている。同様に実装装置2の入口には、物流センサー5が設置され、さらに実装装置3の入口には、物流センサー6が設置されている。物流センサー4〜6はそれぞれが設置された実装装置1〜3に基板が搬送されたことを検出しており、実装装置1〜3に処理対象となる基板が入ったことを認識できる。この物流センサー4〜6は、実装装置1〜3に基板が搬入された際に信号を出力し、基板が搬入されると実装装置1〜3にて実装処理が開始される。ただし、基板は1枚ずつ実装が行われる。さらに、物流センサー4,5,6には、それぞれ物流カウンター7,8,9が併設されており、実装装置1,2,3で処理した基板の枚数を実装装置ごとに積算カウントする。また、各実装装置1〜3の入口にある物流センサー4〜6が信号を出力してから、次に信号を出力するまでの間が基板を1枚実装するのに要する時間、すなわち処理タクトを意味する。実装装置1,2,3は電源盤10に繋がっており、電源盤10に接続される電力計11によりリアルタイムに実装装置1〜3が消費した合計のエネルギーを計測することができるようになっている。また、各物流センサー4〜6が出力する情報と電力計11が計測する情報が、通信線12を介して、リアルタイムで電力異常診断処理装置13へと集められる。
【0021】
次に、本発明における電力異常診断方法について詳細に説明する。
実装装置1と実装装置2および実装装置3における、実装処理時間と基板が移動する時間の和、すなわち処理タクトが、それぞれ実装装置1=60秒、実装装置2=40秒、実装装置3=50秒である場合を例に説明する。また、各実装装置で1枚処理するのに必要なエネルギーを1時間あたりのエネルギーに換算した規格エネルギー(固定エネルギーと比例エネルギーの和)は、実装装置1=2kWh、実装装置2=1kWh、実装装置3は1.5kWhであるとする。
【0022】
図2に上記の想定における各実装装置の1時間当りのエネルギー消費を示す。図2に示すように、各実装装置の1時間当りのエネルギー消費は、実装装置を1時間稼動させた場合の固定エネルギーと、実装処理を連続的に1時間行った場合の比例エネルギーの合計となる。上記想定においては、実装装置1が1時間に60枚処理する際に消費するエネルギーは120kWhであり、実装装置2が1時間に90枚処理するのに消費するエネルギーは90kWh、同様に実装装置3が1時間に72枚処理するのに必要なエネルギーは108kWhとなる。ここで、E1kは実装装置1を1時間稼働させたときの固定エネルギー、E2kは実装装置2を1時間稼働させたときの固定エネルギー、E3kは実装装置3を1時間稼働させたときの固定エネルギーである。本発明では、このような1時間あたりの規格エネルギーをあらかじめ規定し、後述の設備稼働状態診断方法に用いる(図9のステップ1)。
【0023】
図3に、処理枚数に応じて消費する固定エネルギーと比例エネルギーの関係図を示す。図3において、ある実装装置で消費するエネルギーを固定エネルギーEk21と比例エネルギーEh22と定義する。このうち、固定エネルギーEk21は実装する基板枚数に関係せずに稼働時間に応じて発生するエネルギーであり、1時間ごとに消費するエネルギーと定義する。同様に、比例エネルギーEh22は実装する基板枚数に比例して増加するするエネルギーであり、1枚の基板を実装処理した場合に消費するエネルギーを1時間あたりのエネルギーに換算したものと定義する。さらに、比例エネルギーにおいて、1時間で1枚の基板を実装するとした時に消費するエネルギーを単位比例エネルギーと定義する。したがって、上記定義においては、図3に示すように、1時間に1枚の基板を実装処理すると、消費する設備消費エネルギー=固定エネルギー+比例エネルギー=Ek+Ehとなり、1時間に2枚の基板を実装処理すると、消費するエネルギー=Ek+2Ehとなり、1時間に3枚の基板を実装処理すると、消費するエネルギー=Ek+3Ehとなる。
【0024】
例えば、実装装置1においては、消費する固定エネルギーをE1k、比例エネルギーをE1hとすると、物流センサー4が信号を出力してから、1時間後に信号を出力するまでの間に実装装置1で消費するエネルギーはE1k+E1hとなる。一方、基板が搬入されず実装装置1が待機状態となる物流センサー4が信号を出力しない時は、実装装置1では1時間当たり固定エネルギーE1kを消費している。実装装置2も同様に、固定エネルギーをE2k、比例エネルギーをE2h、実装装置3も同様に固定エネルギーをE3k、比例エネルギーをE3hとし、実装装置2が1時間に1枚の基板を実装処理する場合に消費するエネルギーはE2k+E2h、実装装置3が1時間に1枚の基板を実装処理する場合に消費するエネルギーはE3k+E3hとなる。そして、実装装置1〜3において、1時間の間に処理する基板の数が1枚増すごとにそれぞれE1h、E2h、E3hが増加し、実装処理する基板の枚数に関わらず、1時間の稼働状態における固定エネルギーE1k、E2k、E3kは一定となる。
【0025】
図4には各実装装置のメイン電源をONにした時のタイミングチャートを示し、図9のステップ1における基準値の具体的な規定方法の例を示す。まず、0時から実装装置1のみのメイン電源をONに立上げて実装処理をしない状態で、任意の時間t1[分]経過後に電力計11で測定した実装装置1、実装装置2、実装装置3の合計消費エネルギーである積算エネルギーE(t1)を測定する。この場合、比例エネルギーは発生しないので、1時間当たりのエネルギーに換算して、実装装置1の固定エネルギーE1k=E(t1)×(60/t1)[kWh]と表せる。続いて、t2[分]で装置2を立上げた時、E(t2)=E1k+E2kであるから、E2k=E(t2)−E(t1)=E(t2)×(60/t2)−E1k×(60/t1)[kWh]で算出できる。同様に、t3[分]で装置3を立上げた時に、E(t3)=E1k+E2k+E3kであるから、E3k=E(t3)×(60/t3)−E(t2)×(60/t2)[kWh]で算出することができる。
【0026】
このように、各実装装置のメイン電源を順次ONに立ち上げて一定時間実装処理しない待機状態で、各実装装置の設備消費エネルギーの合計である積算エネルギーを測定し、動作中の実装装置の固定エネルギーを算出することにより、各実装装置の固定エネルギーを算出する。本発明では、この固定エネルギーを図2で説明した固定エネルギーの規定値として後述の設備稼働状態診断方法に用いる。
【0027】
図5には各実装装置の実装開始から稼動中のタイミングチャートを示し、動作中の積算エネルギーから消費エネルギーを算出し、設備稼働状態診断を行う方法を説明する。各装置の搬送時間を含めたタクトはそれぞれ実装装置1=60秒、実装装置2=40秒、実装装置3=50秒であり、それぞれ個別に実装を開始してから、途中で実装装置1,2,3の実装処理が一時停止し、さらに再開する場合を考える。図6には、図5に示すように装置1,2,3のそれぞれ各1時間当りに消費したエネルギーを示す。さらに、図7には各1時間当りに実装装置1,2,3で生産した枚数を示す。図5,6,7より、実装開始T時間後における消費エネルギーは(T−1)時からT時までの積算エネルギーであるとすると、(T−1)時から(T+5)時までの1時間毎のエネルギー消費は以下のように、6時間分の6つの方程式で表せる。
E(T−1〜T)=E1k+E1h×55+E2k+E2h×90+E3k+E3h×65
E(T〜T+1)=E1k+E1h×58+E2k+E2h×35+E3k+E3h×62
E(T+1〜T+2)=E1k+E1h×57+E2k+E2h×62+E3k+E3h×48
E(T+2〜T+3)=E1k+E1h×50+E2k+E2h×45+E3k+E3h×30
E(T+3〜T+4)=E1k+E1h×40+E2k+E2h×35
E(T+4〜T+5)=E1k+E1h×30+E2k
ここで、(T+3〜T+4)時には実装装置3のメイン電源を停止し、(T+4〜T+5)時には装置2,3共にメイン電源停止の状態である。ここで、(T+5)時までの1時間ごとの電力積算値(単位;kWh)が以下のような値であった場合を考える。
(E(T−1〜T)、E(T〜T+1)、E(T+1〜T+2)、E(T+2〜T+3)、E(T+3〜T+4)、E(T+4〜T+5))=
(322、264、268、205.1、123.5、64.2)
この場合、(T−1〜T+5)時における各実装装置の固定/比例エネルギー(E1h、E1k、E2h、E2k、E3h、E3k)を行列式で表すと以下のようになる。
【0028】
【数1】

式1から逆行列を用いて算出すると、
【0029】
【数2】

となる(図9のステップ2)。そして、このように、リアルタイムに算出した実装装置ごとの固定エネルギーと比例エネルギーとの合計と規格エネルギーを比較する。この場合、図2で示した実装装置1が1個の稼動処理をするのに必要な規格エネルギー2.0kWh/枚に対して、実装装置1ではE1h+E1k=2.53kWhとなり、(T+5)時到達までの1時間では生産1枚当りの消費エネルギーが、T時到達1時間の値よりも、0.53kW超過していることになる。同様に、実装装置2では、E2h+E2k=1.29kWhとなり、図2で示した実装装置2が1枚の実装をするのに必要なエネルギー1.0kWh/枚に対して、0.29kWh超過していることになる。さらに装置3ではE3h+E3k=1.77kWhとなり、図2で示した実装装置3が1枚の実装をするのに必要なエネルギー1.5kWh/枚に対して、0.27kW超過していることになる(図9のステップ3)。
【0030】
以後、このように、単位時間ごとに各実装装置の固定エネルギーと比例エネルギーの算出を行い、リアルタイムに診断を継続する。
なお、行列関数において、式1に示すように0の成分を含まない場合、すなわち、実装装置が停止している場合の式を含まない場合には逆行列を求めることができない。そのため、行列を用いて時間毎の積算エネルギーを表す式から各実装装置の固定エネルギーと比例エネルギーとを算出する際には、いずれかの実装装置が停止している状態の積算エネルギーを表す式を含むようにする。例えば、3台の装置を観測する場合は、1台のみ稼動している事象と更に他の1台を加えた2台が稼動している事象を含めて行列式を作成する。上記の場合、(T+3〜T+4)時と(T+4〜T+5)時の2条件における式をそのまま残し、その後、全装置が稼動している事象における式を1時間ずつ行列の一番左の行へ追加していく。この際、全装置が稼動している事象の最も古い事象を削除していくことになる。
【0031】
このように、行列を用いて固定エネルギーと比例エネルギーとを算出する際に、対象設備がA台とすると、0台から(A−1)台までの少なくともA通り(A種類)の対象設備が停止した状態の式を含めて行列式を作成することにより、行列を用いて各対象設備の固定エネルギーおよび比例エネルギーを求めることができる。例えば、対象設備が3台の場合、対象設備の内、任意に0台、1台、2台が停止する3種類の状態の式を含めて行列式を作成する。
【0032】
以上のように、実装装置ごとに固定エネルギーと比例エネルギーを定義し、実装装置の台数の2倍の時間連続稼働させ、1時間ごとの積算エネルギーを算出し、積算エネルギーと固定エネルギーおよび比例エネルギーとの関係を示す連立方程式を実装装置の台数の2倍個作り、これらの連立方程式から実装装置ごとの固定エネルギーおよび比例エネルギーを算出し、予め実装装置ごとに定めた規格エネルギーと、1時間あたりの消費エネルギーとして固定エネルギーおよび比例エネルギーの合計である合計エネルギーを比較することにより設備稼働状態診断を行う。
【0033】
また、図4で示したように時間t1、t2、t3で予め測定した各装置の固定エネルギー(E1k、E2k、E3k)=(0.3、0.2、0.1)に対して、それぞれ、式2から求めたE1k=0.4kWhであるから、0.1kWh増加、E2kでは0.21kWhとの差0.01kWh増加、さらにE3kでは、0.12kWhとの差0.02kWh増加していることがわかる。
【0034】
このように、上述の固定エネルギーおよび比例エネルギーの合計に加え、連立方程式から算出した固定エネルギーと予め求めた固定エネルギーの基準値を比較することにより設備稼働状態診断を行うことも可能である。
【0035】
なお、比例エネルギーを用いて設備稼働状態診断を行うことも可能であるが、製造する製品によっては比例エネルギーが微小である場合があり、対象設備への搬入時間ばらつきが比例エネルギーに与える影響が大きくなることがあるので、固定エネルギーに比べて誤差が生じやすい。
【0036】
さらに、図9のステップ1における基準値の規定方法として、設備稼働状態診断に用いる基準となる固定エネルギーを予め求めていたが、設備の稼働中にあらたに基準となる固定エネルギーを規定、あるいは修正することができる。この場合には、実装装置のメイン電源を1時間以上立ち下げる事象を含む必要があり、実装装置のメイン電源を1時間以上立ち下げた後、再起動してからの測定結果から、再び固定エネルギーを算出する必要がある。そのため、電力計11で積算電力値を採取する際に、1時間に達しない途中でメイン電源をONした場合はデータを採取しないようにする。このように、物流センサー4〜6と物流カウンター7〜9の情報および1個の電力計から上記のアルゴリズムで行列関数を用いるなどして連立方程式を解くことで、各実装装置での1時間あたりの消費エネルギーをリアルタイムに算出し、固定エネルギーと比例エネルギーの内訳まで求めることが可能になる。そのため、それぞれの実装装置に電力計を設けなくとも、各実施装置の1時間あたりの合計エネルギーあるいは固定エネルギーを算出することができ、これを用いて設備稼働状態診断を行うことができる。
【0037】
例えば、電力計11に設定された計測タイミングに応じて随時値が更新されていき、ある時間帯において、過去の計測結果に対して単位時間当たりの(E1k E1h E2k
E2h E3k E3h)が最小となった時の値を装置ごとに別々に(E1km E1hm E2km E2hm E3km E3hm)として記録する。これらを基に、基準となる合計エネルギーや固定エネルギー等を求めて設備稼働状態診断を行う。
【0038】
図8には、図9のステップ3において、基準値を随時変更する場合の設備稼働状態診断方法の概略を示す。装置稼動以降、実装装置の台数の2倍の時間連続稼働させた後、積算エネルギーと単位時間当たりの処理数量からリアルタイムに算出された固定エネルギーまたは合計エネルギーの値が、予め定めた基準値に対して1項目でも上回った場合、何らかの原因で排出エネルギーが高くなっていると判断し、その差が大きくなるほど、電力異常として診断することが可能である。図8で実装装置1のエネルギー消費量の時間推移を示しているが、31は時間Tで計測された最小値の固定エネルギーE1kmを示し、基準となる固定エネルギーとする。32は時間Tで計測された最小値の比例エネルギーE1hmを示し、最小値の固定エネルギー31と最小値の比例エネルギー32とを合わせたエネルギーが基準となる合計エネルギーとなる。これに対し、33は各時間における固定エネルギーと時間Tにおける固定エネルギー(基準となる最小値の固定エネルギー31)との差分を意味し、34は各時間における合計エネルギーと時間Tにおける合計エネルギー(最小値の固定エネルギー32と最小値の比例エネルギー32との和)との差分になる。35は予め規定していたエネルギー量である合計エネルギーの閾値であり、時間Tv時に合計エネルギーの閾値35を超えており、このタイミングでその設備が異常状態であるとの診断を発することになる。この場合は、時間Tv時に最小排出量に対して規定量、例えば20%を超過したことを示している。同様に、実装装置2、実装装置3においても観測し、稼動状態が異常になる場合は、異常状態であると診断することが可能である。さらに、合計エネルギーを基準として判断する場合のほかに、単独で、あるいは合計エネルギーと同時に、固定エネルギーの基準値と算出した固定エネルギーを比較して設備稼働状態診断を行っても良い。
【0039】
このアルゴリズムを用いることによって、設備や機器の入出口の情報と全体で1つの電力計測機からの情報を用いて、各時間における固定/比例エネルギーを算出し、異常な状態を診断することが可能になる。
【0040】
更に、固定エネルギーおよび比例エネルギーをより正確に算出することにより、以下の方法を用いて診断精度を向上させることもできる。以下、図10,図11を用いて説明する。
【0041】
図10は固定エネルギーに異常が生じた場合に回帰グラフにより異常を検出する方法を説明する図であり、図10(a)は回帰グラフを、図10(b)は単位時間当たりの製品製造数と消費エネルギーの値を例示する図である。図11は比例エネルギーに異常が生じた場合に回帰グラフにより異常を検出する方法を説明する図であり、図11(a)は回帰グラフを、図11(b)は単位時間当たりの製品製造数と消費エネルギーの値を例示する図である。
【0042】
まず、上述の連立方程式を解くことにより求めた固定エネルギーと比例エネルギーとを合わせて、単位時間当たりの消費エネルギーを算出する。そして、この時間において測定した製品の製造個数を用い、各時間の消費エネルギーと製造した製品数との関係を記録する(図10(b))。次に、時間の経過と共に、対象設備ごとに各時間の消費エネルギーと製造した製品数との関係をグラフ化する(図10(a))。図10、図11には、横軸に実装装置1で1時間に製造した製品数を、縦軸にはその際に各装置で消費した1時間あたりの消費エネルギー量を表示する。具体的なグラフは、1時間ごとの製造数に対するそのときの消費エネルギーをプロットして作成している。ここでは、以下の時間TからT+8時間において、各時間当たりに製造した製品数とそのときに消費した消費エネルギー値をプロットし、グラフ化している。グラフは製造した1時間あたりの製品数をX、そのときに消費した消費エネルギー値をYとして表し、この例では、線形回帰によりY=2.13X+0.4のグラフを得る。図10では、時間TからT+6においては、Y=2.13X+0.4の直線上に存在するが、時間T+6からT+8の2点では、前記直線上から外れる。この際、この2点から回帰直線を引き、傾きとY切片を求めると各々、比例エネルギーと固定エネルギーとして算出できる。つまり、診断開始時は正常に稼働していると仮定し、この時の回帰直線を示す式を算出する。例えば、測定開始2時間経過後から回帰直線を毎時算出し、この直線と一致しない、または所定の割合を超えて異なるデータを計測するまでの直線を正常稼働時の回帰直線と定義する。その後、この直線に則らないプロットが、例えば2回以上続いた時に異常が発生したと判断し、このときのプロットから別の回帰直線を求め、この直線の傾きを比例エネルギー、Y切片を固定エネルギーとして算出する。このように、行列式等を用い、連立方程式から求めた固定エネルギーと比例エネルギーとを、さらに製造数との関係を示すグラフとして表し、詳細な固定エネルギーと比例エネルギーとを求めることにより、異常診断精度を向上させることができる。
【0043】
ここで、製造する製品や製造設備の状況に応じて、正常稼働時の回帰直線に対して所定の割合背離したプロットを直線に則らないプロットとする。この割合が小さい程診断精度が高くなるが、例えば、算出した消費エネルギーが、正常稼働時の回帰直線における製造数に対する消費エネルギーより20%以上背離したプロットを直線に則らないプロットとすることができる。また、別の回帰直線を生成するプロットの数が多くなる程詳細に固定エネルギーと比例エネルギーとを求めることができる。
【0044】
図10からは、TからT+6までは、比例エネルギー0.4kWh、固定エネルギーは2.13kWhであり、T+6時間からT+8までは、比例エネルギーは変わらず、固定エネルギーが2.1kWhへ増加したことがわかる。この増減分を、あらかじめ定めた閾値と比較して異常診断を行う。
【0045】
同様に、図11に示す例では、時間TからT+5までは、Y=2.13X+0.4の直線上に存在するが、T+6からT+8の2点では、前記直線上から外れ、この2点から回帰直線を引き、傾きとY切片を求めると固定エネルギーは変化せず、比例エネルギーが2.6kWhへ増加したことがわかる。この増減分を、あらかじめ定めた閾値と比較して異常診断を行う。
【0046】
この2つの事例から、異常状態が例えば2回以上連続することにより、固定エネルギーと比例エネルギーの内訳についてもリアルタイムに異常診断をすることが可能になり、異常診断精度が向上する。
【0047】
以上の説明では、基板に実装処理を行う実装装置を例に説明したが、セット系、デバイス系の商品を製造する過程で用いる様々な装置等の、対象設備で処理される個数をカウントできる各種製造装置にも用いることができる。
【0048】
また、本発明の設備稼働状態診断方法は、省エネ活動を進める上で、どの時点でどの箇所に異常が生じているかが認識でき、即座に改善に結び付けることが可能になる。その結果、多くの生産工場やオフィス、家庭にいたるまで広く活用できCO削減が実現できる。また、活動を加速するために必要であった計測器等の設備投資を大幅に縮小することが可能となり、事業上大きな効果を有し、広く活用されることが見込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、対象設備を複数備える装置構成においても、必要最小限の計測器により、リアルタイムに対象設備の稼動状態を診断することができ、設備や機械を利用して生産等を行う際に、設備稼働状態の診断を行う方法および装置等に有用である。
【符号の説明】
【0050】
1・・実装装置
2・・実装装置
3・・実装装置
4・・物流センサー
5・・物流センサー
6・・物流センサー
7・・物流カウンター
8・・物流カウンター
9・・物流カウンター
10・・電源盤
11・・電力計
12・・通信線
13・・電力異常診断処理装置
21・・固定エネルギーEk
22・・比例エネルギーEh
31・・最小値の固定エネルギー
32・・最小値の比例エネルギー
33・・固定エネルギーの差分
34・・比例エネルギーの差分
35・・消費エネルギーの閾値
51・・データ入出力装置
52・・省エネ支援処理装置
53・・消費エネルギー量計測装置
54・・対象設備
55・・通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対象設備で製品の製造を行う装置についての稼働状態を電力消費量で診断する際に、
前記対象設備ごとの1時間あたりの消費エネルギーの基準値を予め設定する工程と、
前記対象設備ごとの前記製品の製造個数を随時計測する工程と、
全ての前記対象設備の消費エネルギーを合わせた合計消費エネルギーを随時計測する工程と、
前記対象設備ごとの1時間あたりの消費エネルギーである設備消費エネルギーを前記製造個数に比例エネルギーを乗じた値と固定エネルギーとの和で定義する工程と、
前記合計消費エネルギーの計測結果から1時間ごとの前記合計消費エネルギーを全ての前記対象設備の前記設備消費エネルギーの和で定義する工程と、
前記1時間ごとの前記合計消費エネルギーを前記対象設備の個数の2倍時間について連続して定義して前記対象設備ごとの前記固定エネルギーおよび前記対象設備ごとの前記比例エネルギーを連立方程式を解くことにより算出する工程と、
前記対象設備ごとの前記固定エネルギーと前記対象設備ごとの前記比例エネルギーとの和が前記消費エネルギーの基準値より大きい場合に前記装置に電力異常が生じたと判断する工程と
を有することを特徴とする設備稼働状態診断方法。
【請求項2】
前記対象設備ごとの1時間あたりの固定エネルギーの基準値を予め設定しておき、
算出した前記固定エネルギーが前記固定エネルギーの基準値より大きい場合にも前記装置に電力異常が生じたと判断することを特徴とする請求項1記載の設備稼働状態診断方法。
【請求項3】
前記固定エネルギーの基準値を前記装置の稼働中に更新することを特徴とする請求項2記載の設備稼働状態診断方法。
【請求項4】
前記対象設備ごとに1時間あたりの前記消費エネルギーと前記製造個数との関係を随時求める工程と、
前記消費エネルギーと前記製造個数との関係から第1の回帰直線を随時求める工程と、
直前までに求めた前記第1の回帰直線上に一致しない前記消費エネルギーと前記製造個数との関係が2回以上続いた場合に前記一致しない前記消費エネルギーと前記製造個数との関係のみで第2の回帰直線を求める工程と
を有し、前記電力異常が生じたことの判断を行う際に、前記第2の回帰直線のy軸切片の値を前記固定エネルギー、傾きを前記比例エネルギーとして前記電力異常が生じたことの判断を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の設備稼働状態診断方法。
【請求項5】
求めた前記消費エネルギーが前記第1の回帰直線における前記製造個数に対応する前記消費エネルギーに対して20%以上背離したときに前記第1の回帰直線と一致しないと判断することを特徴とする請求項4記載の設備稼働状態診断方法。
【請求項6】
複数の対象設備で製品の製造を行う装置についての稼働状態を電力消費量で診断する際に、
前記対象設備ごとの前記製品の製造個数を随時計測する工程と、
全ての前記対象設備の消費エネルギーを合わせた合計消費エネルギーを随時計測する工程と、
前記対象設備ごとの1時間あたりの消費エネルギーである設備消費エネルギーを前記製造個数に比例エネルギーを乗じた値と固定エネルギーとの和で定義する工程と、
前記合計消費エネルギーの計測結果から1時間ごとの前記合計消費エネルギーを全ての前記対象設備の前記設備消費エネルギーの和で定義する工程と、
前記1時間ごとの前記合計消費エネルギーを前記対象設備の個数の2倍時間について連続して定義して前記対象設備ごとの前記固定エネルギーおよび前記対象設備ごとの前記比例エネルギーを連立方程式を解くことにより算出する工程と、
算出した前記固定エネルギーを1時間ごとに算出および記録して過去最小の算出した前記固定エネルギーに所定の割合を付加した値を基準値に設定する工程と、
前記対象設備ごとの前記固定エネルギーが前記基準値より大きい場合に前記装置に電力異常が生じたと判断する工程と
を有することを特徴とする設備稼働状態診断方法。
【請求項7】
算出した前記比例エネルギーを1時間ごとに算出および記録して過去最小の算出した前記比例エネルギーを規定する工程をさらに備え、
過去最小の算出した前記固定エネルギーと過去最小の算出した前記比例エネルギーとの和に所定の割合を付加した値を合計基準値と設定して、算出した前記固定エネルギーと前記比例エネルギーとの和が前記合計基準値より大きい場合にも前記装置に電力異常が生じたと判断することを特徴とする請求項6記載の設備稼働状態診断方法。
【請求項8】
前記対象設備ごとに1時間あたりの前記消費エネルギーと前記製造個数との関係を随時求める工程と、
前記消費エネルギーと前記製造個数との関係から第1の回帰直線を随時求める工程と、
直前までに求めた前記第1の回帰直線上に一致しない前記消費エネルギーと前記製造個数との関係が2回以上続いた場合に前記一致しない前記消費エネルギーと前記製造個数との関係のみで第2の回帰直線を求める工程と
を有し、前記基準値または前記合計基準値を設定する際に、前記第2の回帰直線のy軸切片の値を前記固定エネルギー、傾きを前記比例エネルギーとして前記過去最小の算出した前記固定エネルギーまたは前記過去最小の算出した前記比例エネルギーを求めることにより前記基準値または前記合計基準値を設定することを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の設備稼働状態診断方法。
【請求項9】
求めた前記消費エネルギーが前記第1の回帰直線における前記製造個数に対応する前記消費エネルギーに対して20%以上背離したときに前記第1の回帰直線と一致しないと判断することを特徴とする請求項8記載の設備稼働状態診断方法。
【請求項10】
前記所定の割合が20パーセント以上であることを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれかに記載の設備稼働状態診断方法。
【請求項11】
前記連立方程式を逆行列関数を用いて解くことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の設備稼働状態診断方法。
【請求項12】
製品の製造を行う複数の対象設備と、
前記対象設備ごとに設けられて前記各対象設備で製造される前記製品の製造個数を計測する物流カウンターと、
全ての前記対象設備で消費する合計消費エネルギーを随時計測する電力計と、
前記合計消費エネルギーおよび前記製造個数から前記各対象設備の電力異常を診断して稼働状態を診断する電力異常診断部と
を有し、電力異常診断部が、1時間ごとの前記合計消費エネルギーと前記対象設備ごとの1時間あたりの製造個数から前記各対象設備の1時間ごとの固定エネルギーと比例エネルギーとを算出し、前記固定エネルギーと前記比例エネルギーとから前記電力異常を診断することを特徴とする設備稼働状態診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−8349(P2013−8349A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4543(P2012−4543)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】