説明

設計支援システム、設計支援方法及びプログラム

【課題】設計図面の完成度を高くすることにより、開発期間を短縮し、開発コストを低減することを目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも設計情報格納手段、演算手段判断手段、演算手段、演算結果判断手段、を有する設計支援システムであって、設計部品に関する演算結果が要求設計基準に達しているかどうか判断する手段と、前記判断した結果が前記要求設計基準を満たしている場合は、設計情報を格納する手段と、前記要求設計基準を満たしていない場合は、設計者にその内容を報知する報知手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は設計支援システム、設計支援方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の設計方法は、量産図出図前に複数の試作機を製作して検討し、設計図面が設計要求基準を満たしているかどうかを判断していた。設計要求基準を満たしていない設計図面を出図すると、設計のやり直し、型の作り直し等で無駄な時間やコストが発生してしまう。また、試作機は高価であると共に試作するのには時間がかかってしまう。そのためシミュレーションを多用して開発期間と試作費とを削減するのが近年の傾向である。そして、シミュレーション用の解析ソフトウェアは目的別に特化しているので、各々の部品の検討には目的に合わせてどのソフトを用いるかを判断する必要がある。ところが、設計者自らが解析ソフトを駆使し、シミュレーションするには、設計以外の時間がかかる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−281202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一方、開発期間を厳守するため、図面完成度が未知のまま設計図面を出図してしまう恐れがある。この場合、設計のやり直しや型の作り直し等を防止するためにこれまで培ってきた設計の経験に基づいて安全マージンを大きくとった設計をするために、出図した部品のコストが高くなってしまう。また、この場合でも、必ず設計図面が設計要求基準を満たしているとは限らず、設計のやり直し、型の作り直しを強いられることが考えられる。
【0005】
特許文献1には、かかる不具合を防止する技術が開示されている。特許文献1に開示された設計支援装置は、設計対象の「属性」を受け付け、強度計算を実施し、「入力パラメータ部」に負荷を計算させるためのパラメータを入力させて設計対象に作用する負荷を算出し、強度が負荷に耐えられるかどうかを求めて報告する。ところが、この技術では、強度は設計対象の属性情報に基づいて計算を実施するが、負荷を計算させるためにパラメータを手動で入力する手間が必要になり、設計期間短縮の阻害要因となってしまう。また、設計図面完成度が十分かどうかを判断するために必要な情報とは、設計部品の強度が設計部品に作用する負荷に耐えうることだけではなく、設計部品の大量生産が容易にできることが確認されている必要がある。しかしながら、特許文献1の技術ではこれらの点に関して解決されていない。
【0006】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、設計図面の完成度を高くすることにより、開発期間を短縮し、開発コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも設計情報格納手段、演算手段判断手段、演算手段、演算結果判断手段、を有する設計支援システムであって、設計部品に関する演算結果が要求設計基準に達しているかどうか判断する手段と、前記判断した結果が前記要求設計基準を満たしている場合は、設計情報を格納する手段と、前記要求設計基準を満たしていない場合は、設計者にその内容を報知する報知手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、要求設計基準を満たした図面のみ保管することになるので、設計図面の完成度を高くすることが可能になり、設計のやり直しや型の作り直し等で無駄な時間やコストの発生を防止できる。従って、開発期間を短縮し、開発コストを低減することができる。
【0009】
また、本発明によれば、設計が全て完了していなくても他の設計部品の演算に必要な情報なら全て備えている部品を設計情報格納手段に格納しておけば、その演算に必要な情報に基づいて、他の部品が要求設計基準に達したかどうか演算して判断ができる。従って、演算実行のために設計を全て完了させて設計情報格納手段に格納する必要が無くなるので、開発期間をさらに短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る設計支援システムのシステム構成図及び機能ブロックを示す図である。図1に示すように、設計支援システム1は、LAN等のネットワーク51で設計ツール40と接続されており、設計ツール40による設計情報を受けることが可能なように構成されている。設計ツール40としては、本実施形態では、機械設計に係る3次元CADを想定しているが、例えば電気設計に係るCAD等の他のツールであってもよい。
【0011】
設計支援システム1は、設計ツール40から演算に用いるために設計情報を格納する第一の設計情報格納手段10、設計情報に基づいてどのような演算をするべきか判断をするための演算手段判断手段20を有する。また、設計支援システム1は、設計情報を用いて演算を実施する演算手段30、演算の結果が要求設計基準を満たしているかどうかを判断する演算結果判断手段50を有する。また、設計支援システム1は、演算に必要な設計情報が第一の設計情報格納手段10に全て格納完了されているかどうかを判断する格納状況確認手段110を有する。また、設計支援システム1は、格納状況確認手段110が演算のための設計情報の格納が不十分である場合には演算を保留し、その保留の演算情報を格納するための演算保留情報格納手段100を有する。また、設計支援システム1は、演算結果判断手段50の判断結果が要求設計基準を満たしている場合、設計情報を格納する第二の設計情報格納手段60を有する。また、設計支援システム1は、演算結果判断手段50の判断結果が要求設計基準を満たしていない場合はその結果を設計者に報知する報知手段70を有している。
【0012】
設計支援システム1の第一の設計情報格納手段10は、複数の設計ツール40と接続されている。複数の設計ツール40とは、例えば、機械設計用のCAD、電気設計用のCAD等である。設計された部品の設計情報がすべて第一の設計情報格納手段10に格納される。各設計部品は、部品に纏わる属性情報を有している。
演算手段判断手段20は、格納状況確認手段110を経由して複数の演算手段30と接続されている。さらに、演算手段判断手段20は、設計部品の属性情報に関する複数のカテゴリーを有しており、各々のカテゴリーにおいて、どの演算手段30を用いて何を演算するべきか、予め記憶されている。設計情報が第一の設計情報格納手段10に格納されると、演算手段判断手段20は、その設計部品の属性情報がどのカテゴリーに属するのかを判断する。さらに、演算手段判断手段20は格納状況確認手段110に接続されている。
【0013】
格納状況確認手段110は、予め設計部品が所属するカテゴリーが記憶している演算項目に、設計部品の属性情報を当てはめて演算できるだけの情報を完備しているかどうかを確認する。演算できるだけの情報が完備されたと格納状況確認手段110が判断したら、これに接続された複数の演算手段30に対し、予め記憶している演算項目に、設計部品の属性情報を当てはめて演算するよう指示する。演算手段30は、演算結果を、演算手段30に接続してある演算結果判断手段50に渡す。
【0014】
演算結果判断手段50は、演算手段30の演算結果が設計部品の要求設計基準を満たしているか判断する。判断する基準は、各々の設計部品が有している属性情報に基づく。演算結果判断手段50の判断結果が要求設計基準を満たしている場合、設計情報を格納する第二の設計情報格納手段60に設計情報を格納する。演算結果判断手段50の判断結果が要求設計基準を満たしていない場合、その結果を設計者に報知する報知手段70によって設計者に報知する。
【0015】
ここで、上記の動作例は演算できるだけの情報が完備されたと格納状況確認手段110が判断した場合である。もし、演算できるだけの情報が不足していると格納状況確認手段110が判断したら、演算を保留し、演算保留情報格納手段100にその保留の演算情報を格納すると共に、演算を保留したことを報知する報知手段70によって設計者に報知する。演算を保留した状態で、演算可能な設計情報が第一の設計情報格納手段10に格納されたことを格納状況確認手段110が確認すると、保留の演算情報を格納するための演算保留情報格納手段100から保留状態であった演算情報を演算手段30に送り演算を再開する。
【0016】
設計支援システム1は、複数のコンピュータ、ハードディスク等の記憶装置、キーボード、マウスの入力装置等により構成される。設計支援システム1を動作させるためには、記憶装置に記憶されている必要なプログラムをコンピュータのCPUが実行することにより行われる。なお、必要なプログラムは、CD-R、DVD、フレキシブルディスク等の記録媒体に記録されていてもよい。ここで、具体的に、図1の設計支援システム1を利用してカラーレーザープリンタ(以下、カラーLBPと略する)を構成する複数の部品の設計図面を作成する場合について説明する。
【0017】
カラーLBPは、画像形成手段が形成したトナー画像を、シート給送手段が転写位置に目掛けて給送した紙等の転写材に転写位置で転写手段を用いて転写した後、定着手段によって永久画像として定着させる複雑な装置である。従って、カラーLBPは、数多くの電気部品等を必要とする。上記機能を満たすための部品とは、複数の板金部品、軸部品、歯車、ゴムローラ、センサ、モータ、軸受、電源、電線、画像形成手段に含まれる潜像形成手段、現像器、像担持体(感光体)等である。
【0018】
上記の部品のうち、カラーLBPの設計において、設計部品が歯車の場合について、本実施形態の設計支援システムがどのように動作するのか詳細に説明する。
まず、3次元CAD等の設計ツール40から、「歯車A」の設計情報が第一の設計情報格納手段10に格納される。ここで、「歯車A」の設計情報は、例えば歯車の要目表、歯車の形状を決定する全ての寸法(はめあい含む)、材質、製造方法、他の歯車と噛合う位置、を含んでいる。
【0019】
次に、演算手段判断手段20は、格納された設計部品(ここでは歯車A)が、カラーLBPを構成する複数の部品の中で、どの部品群(カテゴリー)に属するのかを判断する。演算手段判断手段20は、「歯車A」の設計情報に含まれる、「歯車」カテゴリーを見出すことによって、「歯車A」は歯車であると判断する。さらに、「歯車」のカテゴリーには、量産性も考慮した上で必要な要求設計品質を満たしていることを知るために、以下1〜6の情報が含まれている。「歯車A」の設計情報に、以下1〜6を確認するために必要な情報が格納されていると格納状況確認手段110が判断すると、これら1〜6が要求設計品質を満たすかどうか、演算手段30に演算するように指示する。
1、歯面の接触応力(ヘルツ応力)が材料の許容限界を下回ること。
2、歯元の曲げ応力が材料の許容限界を下回ること。
3、軸受部のPV値が材料の許容限界を下回ること(歯車がアイドラの場合)。
4、軸との連結部(例えば、Dカット形状)の応力が材料の許容限界を下回ること。
5、歯車同士の軸間ピッチが確保され、歯底当たりしないこと。
6、成型時の充填確実性が確認されていること。
【0020】
また、上記1〜6の結果を求めるために、少なくとも以下の演算用情報が必要である。この情報は、演算手段判断手段20に格納してもよいし、別の情報格納手段に格納されていてもよい。本実施形態では演算手段判断手段20に格納している。
a、動力源(例えばモータ)の仕様〜定格回転数、定格出力、回転方向、モータ歯車の、他の歯車との噛合位置
b、駆動負荷
c、各材料の強度、弾性係数
【0021】
上記1〜4、の演算方法は、例えば歯車とそれに付随する部品群とが有限要素法を用い計算ができるようモデル化し、上記a、b、cの情報に基づいて、歯車Aの噛合位置に他の歯車から伝達トルクを受けて、さらに他の歯車にトルクを伝える様子を再現させる。この一連の、モデル化し計算をするソフトウェアとしては、例えばクボタソリッドテクノロジー社の3GAが挙げられる。有限要素法で計算するにあたり、モデル化するソフト(プリプロセッサ)、計算するソフト(ソルバー)、結果表示するソフト(ポストプロセッサ)は上記の例に限定されるものではない。
【0022】
上記5、の計算方法は、歯車Aと、それに隣接する歯車とにおいて、各々の設計情報が有する属性情報(ここではモジュールと歯数)から基準ピッチ円直径を求める。
歯車Aと、それに隣接する歯車(歯車B)との軸間距離=xとし
(歯車Aのピッチ円直径)/2+(歯車Bのピッチ円直径)/2=yとしたときに
x>y の関係になっていることを確認する。
この一連のソフトウェアは、例えばマイクロソフト社のエクセルを用いて作成したマクロが挙げられる。演算のためのソフトウェアは、上記計算ができればよく、これに限定されるものではない。
【0023】
上記6、の計算方法は、樹脂流動解析用のソフトウェアを用いる必要がある。属性情報に含まれる歯車Aの樹脂のグレード、歯車Aを射出成型で製造するためのゲートの位置を用いて充填確実性の検討をする。樹脂流動解析のソフトウェアの例としては、東レ株式会社製の3D TIMONや、モールドフロージャパン株式会社製のMPAやMPIが挙げられる。
【0024】
次に、上記1〜6の演算結果を、上記演算手段に接続されている演算結果判断手段50に全て送信する。演算結果判断手段50は、その結果が歯車Aの属性情報に含まれる要求設計基準を満足しているかどうかを判断する。
ここで2つの場合が考えられる。
(1)全ての結果が満足する場合。
(2)少なくとも1つの項目が満足しない結果の場合。
【0025】
(1)の場合、「歯車A」は要求設計基準を満足しているわけであるから、「歯車A」の図面を用いて製造してもよいと判断することができる。この場合、第二の設計情報格納手段60に「歯車A」の情報を格納して、「歯車A」の設計は完了とする。
(2)の場合、「歯車A」は何らかの訂正が必要であるので、設計者に報知する必要がある。報知手段70は、どの演算結果が、どのように満足していなかったかを、設計者に例えば電子メールでその内容を報知する。設計者に「歯車A」の設計に訂正が必要であるという報知が可能ならば、報知手段70は必ずしも電子メールでなくてもよい。設計者は、報知された情報を基にして、「歯車A」の設計変更を行い、再度設計変更した「歯車A」を第一の設計情報格納手段10に格納する。
【0026】
演算結果判断手段50は上記(1)又は(2)の判定を行い、全ての設計要求基準を満足できる(1)の判定が出て、第二の設計情報格納手段60に「歯車A」の情報が格納されるまで設計者は設計変更を繰り返す。上記「歯車A」の演算を完全に終えるには、演算に必要な情報(他の部品の設計情報)が全てそろった状態であることが前提条件となる。
【0027】
実際の設計においては、複数の部品の設計は同時に終了するものではなく、少しずつ完成させる場合が多く、設計情報を第一の設計情報格納手段10に格納した時点で、演算に必要な他の部品の設計情報が不足するために、演算を開始できないときがある。
「歯車A」において、演算開始できない場合を具体的に述べると、以下の項目が挙げられる。
(a)「歯車A」と係合する他の歯車の軸方向寸法が不明な場合、上記1、のヘルツ応力の計算ができない。
(b)「歯車A」の軸の外径が不明の場合、上記3、の軸受部のPV値の計算ができない。
この場合は、演算手段30が演算を保留すると共に、演算保留情報格納手段100に保留の演算情報を格納する。設計者に対しては、演算保留であること及び設計未完了部品の存在を、報知手段70が報知し、設計者に対して、演算手段30は演算を保留していることを報知する。なお、設計者に「演算保留」及び「演算開始」を報知することができれば、報知する手段はどのようなものでもよい。
【0028】
また、「歯車A」に関する演算が終了し、歯車Aの要求設計基準を満たすという判定を得た後に「歯車A」に関する演算に必要な他の部品の情報が変更になってしまった場合には、その変更が「歯車A」にとって弊害がないかどうか確認する必要がある。第一の設計情報格納手段10から他の部品の情報が変更になったという情報を演算手段判断手段20が受理する。そして、演算手段30が、再度「歯車A」に関する演算を行い、演算結果判断手段50が、「歯車A」が要求設計基準を満たすかどうかを再び判断する。
【0029】
設計は完了していないにも関わらず、即ち、設計情報が不十分の状態で設計情報を第一の設計情報格納手段10に格納される場合がある。この図面の設計情報の格納状況は不十分であるので格納状況確認手段110は演算手段30にこの図面の情報を送るのではなく、演算保留情報格納手段100にこの図面に関する演算保留の情報を保管する。また、報知手段70によって設計者に演算保留であることを報知する。この図面が「完成」した(設計情報が整った)ら、再度この図面を第一の設計情報格納手段10に格納する。演算手段判断手段20を経た後、格納状況確認手段110が演算再開するのに十分な情報が格納されているかどうか確認すると、演算保留情報格納手段100から演算手段30に演算情報を送り、これを動作させる。演算結果判断手段50によってその結果を判断し、結果が要求設計水準を満足するときは第二の設計情報格納手段60に軸81の図面を格納し、そうでなければ報知手段70によって演算結果を設計者に報知する。
【0030】
上述したように、実際の設計においては、複数の部品の設計は同時に終了するものではなく、少しずつ完成させていくものである場合が多い。設計情報を第一の設計情報格納手段10に格納した時点で、演算に必要な他の部品の設計情報が不足するために、演算を開始できないときがある。これを防止するために、設計は完了していないものの、他の部品の演算に必要な設計情報を提供する目的で、未完成(設計情報が不十分)の状態で設計情報を第一の設計情報格納手段10に格納してもよい。
【0031】
具体的に、歯車80とこの歯車80によって駆動トルクを伝達される軸81との設計を例に挙げて説明する。図9に示すように、軸81の軸の端部はD字状になっており、ここに歯車80が挿入される。歯車80が不図示の他の歯車に回転されるときのトルクは、D字状の挿入部を通じて軸81に伝えられて軸81は回転する。
【0032】
本設計支援システム1の動作例を示すため、歯車80の設計は完了、軸81の設計は未完了であり、この両者の設計が完了していれば要求設計基準に達したかどうかの演算が可能であるという前提にする。このとき、歯車80と軸81とを第一の設計情報格納手段10に格納する順序は次の2通りが考えられる。
(A)歯車80を先ず格納し、次に設計未完了の軸81を格納し、最後に設計を完了させた軸81を格納する。
(B)設計未完了の軸81を先ず格納し、次に歯車80を格納し、最後に設計を完了させた軸81を格納する。
【0033】
(A)の場合、歯車80を先に第一の設計情報格納手段10に格納すると、演算手段30で演算する以前に、演算に必要な情報が全て揃っていないことが判明するので演算保留情報格納手段100にその歯車80の演算情報を格納する。また、歯車80の演算を保留したことを報知する報知手段70によって設計者に報知する(図2参照)。
歯車80の演算を保留した状態において、軸81の設計情報が第一の設計情報格納手段10に格納されたことを格納状況確認手段110が確認すると、軸81の設計情報を利用して、保留状態であった歯車80の演算を再開する(図3参照)。
軸81は当初設計情報を第一の設計情報格納手段10に格納した際には設計未完了で、演算に必要な情報が全て揃っていないために演算保留情報格納手段100にその軸81の演算情報を格納される(図4参照)。
この軸81の設計を完成させて第一の設計情報格納手段10に格納すると、設計情報を格納済の歯車80の情報を用いて軸81の要求設計基準に達したかどうかの演算を演算手段30で実行することができる(図5参照)。
【0034】
(B)の場合、設計未完了の軸81を先ず、先に第一の設計情報格納手段10に格納する。設計未完了というものの、D字状の歯車80挿入部の設計と、軸81を回転させるのに必要なトルクとの計算は終了している。この場合、軸81は未完成部品のために演算に必要な情報は全て揃わないので演算手段30で演算されることはなく、演算保留情報格納手段100にその軸81の演算情報を格納する。そして、軸81の演算を保留したことを報知する報知手段70によって設計者に報知する(図6参照)。
次に、設計が完了した歯車80を第一の設計情報格納手段10に格納する。歯車80の演算に必要な部分の軸81の情報は既に格納済であるので、これを用いて歯車80に関わる演算を演算手段30を用いて実行できる(図7参照)。
軸81の設計を完成させて第一の設計情報格納手段10に格納すると、設計情報を格納済の歯車80の情報を用いて軸81の要求設計基準に達したかどうかの演算を演算手段30で実行することができる(図8参照)。
【0035】
上述した例のように、本発明の設計支援システム1は設計情報を格納する順序によらず、動作することができる。上述した例は、2つの部品を用いて設計支援システム1の動作の仕組みを説明したが、格納される部品数は2つに限定されるものではなく、部品数はもっと多くても同じ要領で動作させることができる。さらに、設計部品が有する設計情報が演算手段の演算に必要な情報の全てを含まない状態であっても、この設計部品に関連する設計情報が全て揃った設計部品が設計要求基準を満たすかどうか知るための演算を行なうことができる。
【0036】
また、カラーLBPを構成する部品の中で、歯車を例に挙げて設計支援システム1の動作例を示したが、設計するものならば歯車に限らず、どのカテゴリーの設計部品でも、このような動作方法で設計図面の完成度を向上させることができる。また、本設計支援システム1の適用はカラーLBPの設計に限定せず、複数の部品によって構成されるものの設計全てに適用することができる。
【0037】
上述した本発明の実施形態における設計支援システムを構成する各手段、設計支援システムを制御する方法の各ステップ及び設計支援方法の各ステップは、コンピュータのRAMやROM等に記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明に含まれる。
【0038】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記録媒体等としての実施形態も可能であり、具体的には、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システム又は装置に直接、又は遠隔から供給する。そして、そのシステム又は装置のコンピュータが前記供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。
【0040】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0041】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。更に、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS等が、実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0042】
更に、その他の方法として、まず記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。そして、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態に係る設計支援システムの構成及び機能ブロックを示す図である。
【図2】設計完了した歯車の設計図面の格納時の設計支援システムの動作を説明するための図である。
【図3】設計が未完了の軸を第一の設計情報格納手段に格納すると、保留していた歯車の演算が再開される様子を説明するための図である。
【図4】設計が未完了の軸を第一の設計情報格納手段に格納すると、情報が不足によって軸の演算が保留になる様子を説明するための図である。
【図5】軸の設計が完了し、これを第一の設計情報格納手段に格納すると、演算の保留が解除され、演算が開始することを説明するための図である。
【図6】設計が未完了の軸を第一の設計情報格納手段に格納すると、情報が不足によって軸の演算が保留になる様子を説明するための図である。
【図7】設計完了した歯車の設計図面の格納時の設計支援システムの動作を説明するための図である。
【図8】軸の設計が完了し、これを第一の設計情報格納手段に格納すると、演算の保留が解除され、演算が開始することを説明するための図である。
【図9】歯車と軸とを説明するための図である。
【符号の説明】
【0044】
1 設計支援システム
10 第一の設計情報格納手段
20 演算手段判断手段
30 演算手段
40 設計ツール
50 演算結果判断手段
51 ネットワーク
60 第二の設計情報格納手段
70 報知手段
80 歯車
81 軸
100 演算保留情報格納手段
110 格納状況確認手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも設計情報格納手段、演算手段判断手段、演算手段、演算結果判断手段、を有する設計支援システムであって、
設計部品に関する演算結果が要求設計基準に達しているかどうか判断する手段と、
前記判断した結果が前記要求設計基準を満たしている場合は、設計情報を格納する手段と、
前記要求設計基準を満たしていない場合は、設計者にその内容を報知する報知手段とを有することを特徴とする設計支援システム。
【請求項2】
前記設計部品が有する設計情報が、前記演算手段の演算に必要な情報を全て含むものの、前記設計部品が有するべき設計情報の全てを含んでいない状態であっても、前記設計部品を前記設計情報格納手段に格納することを特徴とする請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項3】
少なくとも設計情報格納手段、演算手段判断手段、演算手段、演算結果判断手段、を有する設計支援システムにおける設計支援方法であって、
設計した部品に関する演算結果が要求設計基準に達しているかどうか判断するステップと、
前記判断した結果が前記要求設計基準を満たしている場合は、設計情報を格納するステップと、
前記要求設計基準を満たしていない場合は、設計者にその内容を報知する報知ステップとを有すること特徴とする設計支援方法。
【請求項4】
少なくとも設計情報格納手段、演算手段判断手段、演算手段、演算結果判断手段、を有する設計支援システムを制御するプログラムであって、
設計した部品に関する演算結果が要求設計基準に達しているかどうか判断するステップと、
前記判断した結果が前記要求設計基準を満たしている場合は、設計情報を格納するステップと、
前記要求設計基準を満たしていない場合は、設計者にその内容を報知する報知ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−122867(P2009−122867A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294860(P2007−294860)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】