説明

設計支援システム及び設計支援方法

【課題】設計対象物の設計処理を効率的に行う。
【解決手段】コンピュータ11は、変更処理において、表示装置13に設計対象物の形態を表示するとともに、設計対象物の形態として変更可能な範囲を定義点を中心点とし、寸法範囲を1辺とする略正四角形領域として表示する。これにより、画面上で変更可能範囲を視覚的に確認しながら形態の変更を行うことができるので、設計対象物の形態の変更を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定された一連のプロセスに従って設計対象物の設計処理を支援する設計支援システム及び設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、設計対象物を指定する手順と、指定された設計対象物に固有の諸元値入力ウインドウを開く手順と、諸元値入力ウインドウ上で設計対象物に固有の各定義点に対し諸元値を入力する手順と、各定義点の諸元値に基づいてシミュレーションモデルを生成する手順とを含む設計支援方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−282866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
設計処理が完了した設計対象物に対し部品形状やレイアウト等の形態を変更する変更処理が必要になることがある。このような変更処理を行う際、一方の部品の設計値を変更すると他の部品の設計値が変化するような場合には、一つの変更に起因して様々な変更を行う必要性が生じる。このため従来の設計支援手法によれば、設計対象物の設計処理を効率的に行うことができない。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は設計対象物の設計処理を効率的に行うことが可能な設計支援システム及び設計支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、設計対象物の形態を変更する場合、一連の設計プロセスに従って決定された各パラメータを設計時の決定手順とは逆の順番に従って変更させる変更処理を行うと共に、設計対象物の形態として変更可能な範囲を定義点を中心とする球面形態で表示する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設計対象の性能に及ぼす影響を最小限に抑えると共に設計対象物の形態として変更可能な範囲を視覚的に確認できるので、設計対象物の設計処理を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態となる設計支援システムを概略的に示す構成図である。
【図2】図1に示す設計支援システムによって実行される一連の設計プロセスの流れを示すフローチャート図である。
【図3】入出力画面の一例を示す説明図である。
【図4】性能要件の一例を示す説明図である。
【図5】出力結果の一例を示す説明図である。
【図6】出力結果の一例を示す説明図である。
【図7】変更処理の手順を示す説明図である。
【図8】変更処理の手順を示す説明図である。
【図9】本発明の実施形態となる変更可能範囲表示処理の流れを示すフローチャート図である。
【図10】略正四角形領域の一例を示す模式図である。
【図11】略正四角形領域内に生成したメッシュポイントの一例を示す図である。
【図12】各メッシュポイントの要件と合否判定結果を示すスプレッドシートの一例である。
【図13】各メッシュポイントの合否判定結果を示すスプレッドシートの一例である。
【図14】各メッシュポイントの合否判定結果を示す表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔設計支援システムの構成〕
図1は、本発明の実施形態となる設計支援システムを概略的に示す構成図である。図1に示す設計支援システムはユーザ端末10とサーバ20を備え、設計対象物(本実施形態ではステアリングコラム)の形状やレイアウトといった形態を設計したり、設計された形態の変更を行ったりするシステムである。コンピュータ11とサーバ20とはLAN(Local Area Network)等の電気通信回線を介して互いに通信可能に接続されている。電気通信回線に接続する種々のユーザ端末は、後述する制御プログラムを実行する限り、サーバ20と連携して本実施形態に示す設計支援システムを構築するユーザ端末10として機能する。
【0010】
ユーザ端末10は、コンピュータ(処理手段)11、キーボードやマウス等の入力装置(入力手段)12、及びCRT(Cathode Ray Tube)や液晶ディスプレイ等の表示装置(表示手段)13を主体に構成されている。コンピュータ11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェースを主体に構成されている。コンピュータ11は、ROMに格納された制御プログラムに従って動作することにより、一連の設計プロセスを実行し、設計対象物であるステアリングコラムの形態を設計したり、設計されたステアリグコラムの形態を変更したりすることができる。コンピュータ11は、必要に応じて、サーバ20に格納されている各種データを参照することができる。設計者であるオペレータは、コンピュータ11によって表示装置13に表示される情報を参照しながら入力装置12を操作して必要な情報を入力することにより、ステアリングコラムの設計及び変更を行うことができる。
【0011】
サーバ(記憶手段)20には設計対象物の形態を設計するための設計データが格納されている。サーバ20は、部品データベース21と、性能データベース22と、諸元データベース23とを有する。部品データベース21は、車両を構成する種々の部品に関する情報を一元的に管理する。部品データベース21は、個々の部品に対応して設けられた部品レコードの集合である。個々の部品レコードには、部品ID、部品名称等が関連付けて記述されている。部品IDは、その部品を識別するための識別子であり、個々の部品にはユニークな部品IDが付与されている。部品名称は、その部品の名称である。性能データベース22は、各部品の性能要件に関する情報を一元的に管理する。諸元データベース23は、車両や各コンポーネントの主要寸法に関する情報を一元的に管理する。
【0012】
〔設計処理〕
図2は、上記設計支援システムによって実行される一連の設計プロセス(設計処理)を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理はユーザ端末10を構成するコンピュータ11によって実行される。まずコンピュータ11は、入出力画面メニュー及び後述する変更メニューを含む所定の初期画面を表示装置13に表示させる。コンピュータ11は、オペレータによる入力装置12の操作を通じて入出力画面メニューが選択されたことを認識すると、表示装置13を制御することにより入出力画面を表示する。これにより、一連の設計プロセスで構成される設計処理が開始される。
【0013】
図3は、入出力画面の一例を示す説明図である。図3に示す入出力画面は入力情報と出力情報とで構成されている。入力情報は、入力装置12を通じた操作によりオペレータによって入力される種々の項目を含む領域である。一方、出力情報は、入力情報に基づいて決定される出力情報、すなわち、それぞれが設計対象物の形態を規定する複数のパラメータを出力(表示)するための項目を含む領域である。
【0014】
入力情報は、ヒップポイント、ヒールポイント、A点高さ、A点からヒップポイントまでのオフセット量(A点−ヒップポイントオフセット量)、ステアリングホイールの平面角度(STRG WHEEL P/V角度)、ステアリングホイールの側面角度(STRG WHEEL S/V角度)、アッパーシャフト、ピニオンシャフト、ステアリングホイールの径(STRG WHEEL径)、D点の位置を含む。
【0015】
出力情報は、A点高さ、A点からヒップポイントまでのオフセット量、ステアリングホイールの平面角度、ステアリングホイールの側面角度、A点〜C点の位置、長さL1〜L3、及び側面角度θ1〜θ3を含む。ここで、ヒップポイントは、車両におけるドライバーの臀部位置であり、前後方向(X軸方向)、横方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)の座標により示される。ヒールポイントは、車両におけるドライバーの踵位置であり、前後方向(X軸方向)、横方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)の座標により示される。A点高さは、A点に関する三次元座標のうち上下方向(Z方向)の座標である。
【0016】
A点は、ステアリングホイールと、アッパーシャフトとの接続位置であり、前後方向(X軸方向)、横方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)の座標により示される。ステアリングホイールの平面角度は、平面(XY面)視におけるステアリングホイールの角度であり、ステアリングホイールの側面角度は、側面(XZ面)視におけるステアリングホイールの角度である。D点は、ピニオンシャフトの末端部であり、前後方向(X軸方向)、横方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)の座標により示される。
【0017】
B点は、アッパーシャフトとインターミディエイトシャフトとの接続位置であり、前後方向(X軸方向)、横方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)の座標により示される。C点は、インターミディエイトシャフトとピニオンシャフトとの接続位置であり、前後方向(X軸方向)、横方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)の座標により示される。長さL1は、ピニオンシャフトの長さであり、長さL2は、インターミディエイトシャフトの長さである。長さL3は、アッパーシャフトの長さである。側面角度θ1は、ピニオンシャフトと水平面(XY平面)とのなす角であり、側面角度θ2は、インターミディエイトシャフトと水平面(XY平面)とのなす角である。側面角度θ3は、アッパーシャフトと水平面(XY平面)とのなす角である。
【0018】
まずコンピュータ11は、オペーレータに対して、ヒップポイントとヒールポイントとの入力を促す。例えば、コンピュータ11は、入力情報におけるヒップポイントとヒールポイントとの項目を強調表示する、あるいは、当該項目以外の項目に対する入力を規制するといった如くである。ヒップポイント及びヒールポイントは、車両全体の乗員レイアウトから定められる値であり、オペレータは、所定の値を入力装置12を通じて入力する。コンピュータ11は、入力装置12を介して入力された情報をヒップポイント及びヒールポイントとして設定する。
【0019】
図4は、性能要件の説明図である。つぎに、コンピュータ11は、オペレータに対してA点高さの入力を促す。図4(a)に示すように、コンピュータ11は、例えば、A点高さを入力するための参照画面を新たに表示する。この参照画面には、A点高さとして選択することができる値の候補が表示される。同図において、実線は、A点高さとしての最適値を示しており、ハッチングで示される領域は、A点高さとして許容することができる値の範囲(許容範囲)を示している。コンピュータ11は、性能データベース22に格納されている情報に基づいて、最適値及び許容範囲を一義的に特定することができる。オペレータは、この参照画面を通じて、あるいは、参照画面を参照して、入力装置12からA点高さを入力する。コンピュータ11は、入力装置12を介して入力された情報を、A点高さとして設定する。
【0020】
次にコンピュータ11は、オペレータに対して、A点からヒップポイントまでのオフセット量(以下単に「オフセット量」という)と、ステアリングホイールの平面角度との入力を促す。図4(b)に示すように、コンピュータ11は、例えば、オフセット量とステアリングホイールの平面角度とを入力するための参照画面を新たに表示する。この参照画面には、オフセット量及びステアリングホイールの平面角度として選択することができる値の候補が表示される。
【0021】
同図において、ハッチングで示される領域は、オフセット量及びステアリングホイールの平面角度として推奨される値の範囲を示している。コンピュータ11は、性能データベース22に格納されている情報に基づいて、推奨範囲を一義的に特定することができる。オペレータは、この参照画面を通じて、あるいは、参照画面を参照して、入力装置12からオフセット量とステアリングホイールの平面角度とを入力する。コンピュータ11は、入力装置12を介して入力された個々の情報を、オフセット量及びステアリングホイールの平面角度としてそれぞれ設定する。
【0022】
次にコンピュータ11は、オペレータに対して、ステアリングホイールの側面角度の入力を促す。図4(c)に示すように、コンピュータ11は、例えば、ステアリングホイールの側面角度を入力するための参照画面を新たに表示する。この参照画面には、ステアリングホイールの側面角度として選択することができる候補が表示されている。同図において、実線は、ステアリングホイールの側面角度としての最適値を示しており、ハッチングで示される領域は、ステアリングホイールの側面角度として許容される範囲(許容範囲)を示している。コンピュータ11は、性能データベース22に格納されている情報に基づいて、最適値及び許容範囲を一義的に特定することができる。オペレータは、この参照画面を通じて、あるいは、参照画面を参照して、入力装置12からステアリングホイールの側面角度を入力する。コンピュータ11は、入力装置12を介して入力された情報を、ステアリングホイールの側面角度として設定する。
【0023】
これらの入力情報に基づいて、コンピュータ11はA点の位置(三次元位置)を決定する(ステップ1(S1))。つぎに、コンピュータ11は、アッパーシャフト及びピニオンシャフトの入力を促す。コンピュータ11は、部品種別に基づいて部品データベース21を検索し、アッパーシャフト及びピニオンシャフトに該当する部品を抽出し、抽出された部品群を表示装置13に表示させる。オペレータは、表示装置13に表示された部品群から、アッパーシャフト及びピニオンシャフトをそれぞれ入力装置12を通じて選択する。コンピュータ11は、入力装置12を介して入力された情報をアッパーシャフト及びピニオンシャフトとしてそれぞれ設定する。
【0024】
この入力情報に基づいて、コンピュータ11は長さL3を決定し(ステップ2(S2))、長さL1を決定する(ステップ3(S3))。またコンピュータ11は、側面角度θ1を決定する(ステップ4(S4))。この側面角度θ1は、ピニオンシャフトの標準部品とセットで決定することができる。またコンピュータ11は、上述した性能要件(ステアリングホイールの側面角度)にしたがって、側面角度θ3を決定する(ステップ5(S6))。
【0025】
コンピュータ11は、ステアリングホイールの径及びD点についての入力を促す。ステアリングホイールの径及びD点は、車両全体の乗員レイアウトから定められる値を入力装置を通じて入力する。コンピュータ11は、入力装置を介して入力された情報を、ステアリングホイールの径及びD点として設定する。
【0026】
コンピュータ11は、上記のように決定されたパラメータ(A点の位置、長さL3,L1,L2、側面角度θ1,θ3)に基づいて、B点及びC点の位置を決定する。そして、コンピュータ11は、B点及びC点の位置に基づいて、長さL2を決定する。これにより、出力情報に対応する全てのパラメータが決定される。なお、決定されたパラメータのうち、A点高さ、オフセット量、ステアリングホイールの平面角度及び側面角度は、入力情報がそのまま対応する。
【0027】
ステップ7(S7)において、コンピュータ11は、出力処理を行う。具体的には、コンピュータ11は、サーバ20内の諸元データベース23を更新する。また、コンピュータ11は、諸元データベース23の更新された情報が、性能要件を満たすか否かチェックする。そして、コンピュータ11は、そのチェック結果を、図3に示す出力情報、あるいは、図5に示す性能要件との比較として表示する(例えば、星印表示)。また、コンピュータ11は、図6に示すように、設定パラメータによって規定される形態となるステアリングコラムを、オペレータに対して表示する。なお、図6に示す例では、ステアリングコラムは、模式化して示されているが、部品の形状を再現した部品モデルを利用して、ステアリングコラムを表示してもよい。
【0028】
つぎに、このように設計されたステアリングコラムについて、部品形状の変更やレイアウトの変更といった形態変更が生じた場合について説明する。図7及び図8は、変更処理の手順を示す説明図である。図7(a)に示すように、コンピュータ11は、第1の変更ステップとして、インターミディエイトシャフトの長さL2及び側面角度θ2と、アッパーシャフトの側面角度θ3との変更を推奨する。オペレータは、入力装置12を操作して、これらのパラメータθ3,L2,θ2を変更する。この第1の変更ステップは、パラメータθ3の決定と関連がある。
【0029】
第1の変更ステップによっても適切な変更を行うことができない場合、コンピュータ11は、第2の変更ステップを実行する。図7(b)に示すように、コンピュータ11は、インターミディエイトシャフトの長さL2及び側面角度θ2と、ピニオンシャフトの側面角度θ1との変更を推奨する。オペレータは、入力装置12を操作して、これらのパラメータθ1,L2,θ2を変更する。この第2の変更ステップは、パラメータθ1の決定と関連がある。
【0030】
第2の変更ステップによっても適切な変更を行うことができない場合、コンピュータ11は、第3の変更ステップを実行する。図7(c)に示すように、コンピュータ11は、ピニオンシャフトの長さL1と、インターミディエイトシャフトの長さL2及び側面角度θ2との変更を推奨する。オペレータは、入力装置12を操作して、これらのパラメータθ3,L2,θ2を変更する。この第3の変更ステップは、パラメータL1の決定と関連がある。
【0031】
第3の変更ステップによっても適切な変更を行うことができない場合、コンピュータ11は、第4の変更ステップを実行する。図8(a)に示すように、コンピュータ11は、インターミディエイトシャフトの長さL2及び側面角度θ2と、アッパーシャフトの長さL3との変更を推奨する。オペレータは、入力装置12を操作して、これらのパラメータL3,L2,θ2を変更する。この第4の変更ステップは、パラメータL3の決定と関連がある。
【0032】
第4の変更ステップによっても適切な変更を行うことができない場合、コンピュータ11は、第5の変更ステップを実行する。図8(b)に示すように、コンピュータ11は、ピニオンシャフトの長さL1と、インターミディエイトシャフトの長さL2と、アッパーシャフトの長さL3との変更を推奨する。オペレータは、入力装置12を操作して、これらのパラメータL3,L2,L1を変更する。この第5の変更ステップは、パラメータL3の決定と関連がある。
【0033】
第5の変更ステップによっても適切な変更を行うことができない場合、コンピュータ11は、第6の変更ステップを実行する。図8(c)に示すように、コンピュータ11は、インターミディエイトシャフトの長さL2及び側面角度θ2と、A点との変更を推奨する。オペレータは、入力装置12を操作して、これらのパラメータA点,L2,θ2を変更する。この第6の変更ステップは、パラメータA点の決定と関連がある。
【0034】
このような変更処理において、コンピュータ11は要件を満足する定義点の変更可能範囲を表示する。具体的には、コンピュータ11は、オペレータが変更したい定義点の寸法範囲を入力すると、図9のフローチャートに示すように、定義点を中心点とし、寸法範囲を1辺とする略正四角形領域Sを定義点の変更を検討する範囲として定義する(ステップS11)。具体的には、オペレータがアッパーシャフトの下端点であるB点の位置を寸法範囲a内で変更することを入力すると、コンピュータ11は、図10に示すように、B点を中心点とし、半径L3の球面上で寸法範囲aを一辺とする略正四角形領域Sを表示画面上に表示する。
【0035】
次にコンピュータ11は、図11に示すようにステップS11の処理により定義した略正四角形領域Sに複数のメッシュポイントPxy(x=1〜7,y=1〜7)を生成し(ステップS12)、各メッシュポイントPxyの3次元座標値を算出する(ステップS13)。なお生成するメッシュポイントの数は略正四角形領域Sの大きさによらず固定値とすることが望ましい。このような構成によれば、細かいレイアウトを変更したい場合は、寸法範囲を小さくすることにより略正四角形領域Sの大きさが小さくなるが、略正四角形領域Sの分割数が一定でるために、生成されるメッシュポイントの間隔を短くすることができる。次にコンピュータ11は、ステップS13の処理により算出された3次元座標値を用いて定義点(図10に示すB点)の位置を各メッシュポイントPxyの位置に変更した場合の要件(機能や性能要件。例えば側面角度θ2,θ3等)を演算し、図12に示すように演算結果をスプレッドシートに記録する(ステップS14)。
【0036】
次にコンピュータ11は、ステップS14の処理により演算された各メッシュポイントPxyの要件の合否を判定し、判定結果を図12に示すスプレッドシートに記録する(ステップS15)。そして最後にコンピュータ11は、図12に示すスプレッドシートを表示させることにより定義点の変更可能範囲をオペレータに認識させる。このような処理によれば、変更可能範囲内の各メッシュポイントの合否判定を視覚的に確認しながらレイアウトの変更作業を行うことができるので、変更処理を効率的に行うことができる。なおスプレッドシートの形態は図12に示す形態に限定されることはなく、図13に示すように合否判定の結果(○,×)をメッシュポイントの位置と対応付けさせたスプレッドシートを表示してもよい。またコンピュータ11は表示画面上に球面形態の略正四角形領域Sを表示し、略正四角形領域Sのメッシュポイントに対応する位置に合否判定の結果を重畳表示するようにしてもよい。
【0037】
このように本実施形態によれば、コンピュータ11は、入力装置12から入力される入力結果と、サーバ20に格納される設計データとに基づいて、それぞれが設計対象物の形態を規定する複数のパラメータを決定するための一連の設計プロセス(S1〜S7)を実行する。具体的には、設計処理では、A点の位置、長さL3、長さL1、側面角度θ1、側面角度θ3、長さL2の順番で設計パラメータが決定されている。一方で、変更処理では、長さL2、側面角度θ3、側面角度θ1、長さL1、長さL3、A点の位置の順番で設計パラメータが決定される。換言すれば、コンピュータ11は、複数のパラメータにより形態が規定された設計対象物の形態を変更する場合、一連の設計プロセスで決定される複数のパラメータを逆順で決定することとなる。一般に、設計処理において、最初に決定するパラメータほど設計対象物の全体の性能に及ぼす影響が大きい。例えば、パラメータθ3の決定よりも、パラメータL3の決定のほうが、全体の性能に及ぼす影響が大きい。そこで、コンピュータ11は、変更処理において設計時に決定していくパラメータの順番とは逆の順番でパラメータの変更を実行する。そのため、性能に及ぼす影響を最小限に抑えることができ、効率的な設計が可能となる。
【0038】
また従来までの設計支援方法では、変更処理を行う場合、オペレータはCAD上で一旦変更処理を行った後に要件を計算,確認し、要件を満足していない場合に再度変更処理を行う必要があった。これに対し本実施形態によれば、コンピュータ11は、変更処理において、表示装置13に設計対象物の形態を表示するとともに、設計対象物の形態として変更可能な範囲を定義点を中心点とし、寸法範囲を1辺とする略正四角形領域Sとして表示する。かかる構成によれば、画面上で変更可能範囲を視覚的に確認しながら形態の変更を行うことができる。そのため、設計対象物の形態の変更を容易に行うことができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態にかかる設計支援システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、設計支援システムは、ネットワーク環境におけるユーザ端末10とサーバ20とで構成されている。しかしがら、ユーザ端末10と、サーバ20との機能を備える限り、設計支援システムは、スタンドアローンのコンピュータで実現してもよい。また上述した実施形態に示す設計処理及び変更処理を含む設計支援方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム自体も本発明の一部として機能する。すなわち、このコンピュータ・プログラムは、第1のステップと、第2のステップとを有することを特徴とする設計支援方法をコンピュータに実行させる。ここで、第1のステップは、それぞれが設計対象物の形態を規定する複数のパラメータを、一連の設計プロセスにしたがって順次決定する。第2のステップは、設計対象物の形態を変更する場合、一連の設計プロセスにしたがって決定された各パラメータを、決定手順とは逆順で変更する変更処理を行う。このコンピュータプログラムをコンピュータが実行することにより、上述した設計支援システムと同様の作用及び効果を奏する。
【0040】
当然ながらこのコンピュータ・プログラムを記録した記録媒体を、図1のような構成を有するシステムに対して供給してもよい。この場合、このシステム中のコンピュータ11が、記録媒体に格納されたコンピュータ・プログラムを読み取り実行することによって、本発明の目的を達成することができる。コンピュータ・プログラム自体が本発明の新規な機能を実現するため、そのプログラムを記録した記録媒体も本発明を構成する。コンピュータ・プログラムを記録した記録媒体としては、例えば、CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、メモリカード、光ディスク、DVD−ROM、DVD−RAM等が挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
10:ユーザ端末
11:コンピュータ
12:入力装置
13:表示装置
20:サーバ
21:部品データベース
22:性能データベース
23:諸元データベース
S:変更可能範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータによって操作される入力手段と、
設計対象物の形態を設計するための設計データが格納される記憶手段と、
前記入力手段から入力される入力結果と、前記記憶手段に格納される設計データとに基づいて、設計対象物の形態を規定する複数のパラメータを一連の設計プロセスにしたがって順次決定する処理手段と、
前記処理手段に制御されて、処理内容を表示する表示手段とを備え、
前記処理手段は、オペレータから前記設計対象物の形態を変更する要求があった場合、前記一連の設計プロセスにしたがって決定された各パラメータを設計時の決定手順とは逆の順番にしたがって変更させる変更処理を行い、当該変更処理において、前記表示手段に前記設計対象物の形態を表示するとともに、前記設計対象物の形態として変更可能な範囲を変更点を中心とする球面形態で表示することを特徴とする設計支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の設計支援システムにおいて、
前記処理手段は、前記設計対象物の形態として変更可能な範囲を表形態で表示することを特徴とする設計支援システム。
【請求項3】
設計対象物の形態を規定する複数のパラメータを一連の設計プロセスにしたがって順次決定する第1の処理と、
前記設計対象物の形態を変更する場合、前記一連の設計プロセスにしたがって決定された各パラメータを、設計時の決定手順とは逆の順番にしたがって変更させる変更処理を行う第2の処理とを有し、
前記第2の処理は、前記表示手段に前記設計対象物の形態を表示するとともに、前記設計対象物の形態として変更可能な範囲を変更点を中心とする球面形態で表示する処理を含むことを特徴とする設計支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−181937(P2010−181937A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22462(P2009−22462)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(501192130)デジタルプロセス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】