診察業務支援装置
【課題】MD値などの検査値の時系列をグラフ化して表示する際に、全体の検査値の時系列から任意の一部の検査値を選択して、その近似関数のグラフを表示することができる診察業務支援装置を提供する。
【解決手段】表示部203に表示される散布図の複数の検査値から一部の検査値を選択するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、当該一部の検査値に対して回帰分析処理が実行され、この回帰分析処理の結果として算出された近似関数の定数に基づいて、当該一部の検査値についての近似関数のグラフが表示部203に表示される。これにより、散布図における全体の検査値から任意の一部の検査値を選択して、その近似関数のグラフを表示することができる。
【解決手段】表示部203に表示される散布図の複数の検査値から一部の検査値を選択するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、当該一部の検査値に対して回帰分析処理が実行され、この回帰分析処理の結果として算出された近似関数の定数に基づいて、当該一部の検査値についての近似関数のグラフが表示部203に表示される。これにより、散布図における全体の検査値から任意の一部の検査値を選択して、その近似関数のグラフを表示することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院での診察業務を支援する診察業務支援装置に係り、特に、医学検査の結果を示す検査値の時系列をグラフ化して表示する診察業務支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医学的検査の結果は、患者の治療方針を決める上で最も基本的な情報を与えるものであり、医師の診察業務において極めて重要である。下記の特許文献には、医学検査の結果を医師に分かり易く提示するコンピュータシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010−270955号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば眼科においては、緑内障などの患者の視野を計測する測定機として、ハンフリー(HUMPHREY:登録商標)視野計が標準的に用いられている。ハンフリー視野計は、患者の視点のまわりに様々な強さの光点をランダムに表示させ、各光点が視認されたか否かを患者に答えさせることで、視野の欠損の状態を調べる測定機である。ハンフリー視野計は、視野の欠損の分布を表すグラフ(グレースケール)に加えて、全体的な視野の欠損の程度を示すMD(mean deviation)と呼ばれるデジベル単位の数値を出力する。MD値は、視野の欠損の程度が正常人の年齢補正された平均値からどの位ずれているかを示す数値であり、MD値が負側に大きくなるほど、同じ年齢の正常人に比べて視野の欠損の度合いが大きくなる。
【0005】
長期にわたって徐々に視野の欠損が進行する緑内障の場合、その治療計画を立てる際の目安として、MD値の経時変化を表したグラフが使用される。一般に、MD値の経時変化は直線で近似され、その傾き具合から視野欠損の進行状態が把握される。また、近似直線の外挿によって、将来のMD値が予想される。
【0006】
MD値は、特に緑内障の診断において重要なデータであるが、検査時の患者の状態などに応じて誤差を生じ易いため、近似直線の引き方が変わると病状の把握や将来の視野の予想が大きく変わってしまうという課題がある。例えば、MD値の測定は、投薬や手術などと並行して継続的に行われるため、MD値の経時的な推移の傾向が治療の効果に応じて変化することがある。ところが、そのような傾向の変化を無視して全期間を1本の直線で近似してしまうと、患者の病状を正しく表したグラフが得られない可能性がある。また、検査時の患者の状態などからMD値の信頼性が乏しいと判断される場合、そのようなMD値は近似の対象から除外することが望ましい。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、MD値などの検査値の時系列をグラフ化して表示する際に、全体の検査値の時系列から任意の一部の検査値を選択して、その近似関数のグラフを表示することができる診察業務支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る診察業務支援装置は、医学検査の結果を示す検査値の時系列をグラフ化して表示する診察業務支援装置であって、前記検査値の時系列を記憶する記憶部と、入力される表示信号に応じた画像を表示する表示部と、利用者による所定の指示入力操作に応じた指示信号を生成する指示入力部と、前記検査値の散布図を表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記記憶部に記憶される前記検査値の時系列に基づいて、一の座標軸が検査日若しくは検査日に対応する数値を示し、他の一の座標軸が前記検査値を示す散布図を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する第1処理部と、前記表示部に表示される前記散布図における複数の検査値から一部の検査値を選択して、前記一部の検査値に基づいて近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記一部の検査値の時系列に対して回帰分析処理を実行する第2処理部とを有する。前記第1処理部は、前記回帰分析処理の結果として算出された前記近似関数の定数に基づいて、前記近似関数のグラフを前記表示部に表示する前記表示信号を生成する。
【0009】
好適に、前記第2処理部は、前記検査日若しくは前記検査日に対応する数値の範囲を指定して、前記範囲に属する検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記検査日若しくは前記検査日に対応する数値が前記範囲に属する検査値の時系列に対して前記回帰分析処理を実行してよい。
【0010】
好適に、前記第2処理部は、前記表示部に表示される前記散布図の複数の前記検査値から少なくとも1つの検査値を指定して、前記指定した検査値を除外した残りの検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記残りの検査値の時系列に対して前記回帰分析処理を実行してよい。
【0011】
好適に、前記記憶部は、前記検査値を含む検査に関する情報、診察に関する情報、治療に関する情報、手術に関する情報および処方薬に関する情報の少なくとも1つと日付の情報とが関連付けられた医療情報の時系列を記憶してよい。前記第1処理部は、前記表示部に表示される前記散布図において一の検査値を指定して、前記一の検査値に関連する前記医療情報を表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記記憶部において前記一の検査値と同一の前記医療情報に属する前記検査に関する情報、前記診察に関する情報、前記治療に関する情報、前記手術に関する情報および前記処方薬に関する情報の少なくとも1つを前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【0012】
好適に、上記診察業務支援装置は、前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列において前後に連続する2つの医療情報をそれぞれ比較し、当該比較結果に基づいて、前記検査値の時系列の傾向に変化を及ぼし得る要因が発生した日を判定する第3処理部を有してよい。前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【0013】
好適に、前記第3処理部は、前記連続する2つの医療情報に含まれる処方薬の情報を比較し、当該比較結果に基づいて、前記処方薬が変更された日を前記変化要因が発生した日と判定してよい。
【0014】
好適に、前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日の情報に付帯する情報として、変更前及び変更後の処方薬に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【0015】
好適に、前記第3処理部は、前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列において所定の手術若しくは治療が行われたことを示す情報が含まれた医療情報を検索し、当該検索結果に基づいて、前記手術若しくは治療行為が実施された日を前記変化要因が発生した日と判定してよい。
【0016】
好適に、前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日の情報に付帯する情報として、当該日に実施された手術若しくは治療行為の情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【0017】
好適に、前記第3処理部は、前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日より後であり、かつ、当該日に最も近い日付の前記医療情報であって、前記検査値を含んだ前記医療情報を検索するか、又は、前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日と同日若しくは当該日より前であり、かつ、当該日に最も近い日付の前記医療情報であって、前記検査値を含んだ前記医療情報を検索してよい。前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について検索された前記医療情報に含まれる前記検査値を、前記検査値の時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値として識別できるように表した前記散布図を前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【0018】
好適に、上記診察業務支援装置は、前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列から、前記検査値を含む前記医療情報を検索し、当該検索したそれぞれの医療情報に含まれる検査の信頼性に関する情報に基づいて、前記それぞれの医療情報に含まれる前記検査値を前記回帰分析処理の対象から除外する候補とするか否か判定する第4処理部を有してよい。前記第1処理部は、前記第4処理部において前記除外候補と判定された前記検査値に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、MD値などの検査値の時系列をグラフ化して表示する際に、全体の検査値の時系列から任意の一部の検査値を選択して、その近似関数のグラフを表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る診察業務支援装置の全体構成の一例を示す図である。
【図2】サーバ装置の構成の一例を示す図である。
【図3】患者データベース部に記憶される医療データの構造を説明するための図である。
【図4】検査データの構造を説明するための図である。
【図5】診察用端末装置の構成の一例を示す図である。
【図6】カルテ画面を表示する場合の処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】医師が利用する電子カルテの表示画面の一例を示す図である。
【図8】表示部の画面に表示されるMD値の散布図の一例を示す図である。
【図9】図8において指定された検査日の範囲(始点と終点)に基づき計算された回帰直線のグラフを示す図である。
【図10】検査値が所定の値に達するまでの予想年数を表示する画面の一例を示す第1の図である。
【図11】検査値が所定の値に達するまでの予想年数を表示する画面の一例を示す第1の図である。
【図12】散布図の横軸の単位を年齢に変更する操作の一例を説明するための図である。
【図13】回帰分析の対象から一部の検査値を除外する操作の一例を説明するための図である。
【図14】図13において指定された2点の検査値を除外して再計算された回帰直線のグラフを示す図である。
【図15】複数の検査日の範囲を指定して、それぞれの範囲について回帰分析処理を実行する操作の一例を説明するための図である。
【図16】図15において指定された2つの検査日の範囲における回帰直線のグラフを示す図である。
【図17】検査値に関する補足情報を画面に表示する操作の一例を説明するための図である。
【図18】検査値の時系列の傾向が変化する境界の目安を散布図において表示する例を示す図である。
【図19】検査値の時系列の傾向が変化する要因の発生日を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
【図20】時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
【図21】検査値の時系列の傾向に変化を及ぼし得る変化要因の発生日に基づいて、時系列の傾向が変化する境界の目安の検査値を判定する具体例を説明するための図である。
【図22】回帰分析の対象から除外する検査値の候補を散布図において表示する例を示す図である。
【図23】回帰分析の対象から除外する候補の検査値を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
【図24】関連する複数の検査値の散布図を並べて表示した画面の一例を示す図である。
【図25】検査値の補足情報を検査値の散布図と同一の時間軸上に並べて表示した画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本実施形態に係る診察業務支援装置の全体構成の一例を示す図である。
図1に示す診察業務支援装置は、サーバ装置1と、複数の診察用端末装置2と、検査用端末装置4と、視野検査装置5を有する。診察用端末装置2および検査用端末装置4は、通信ネットワーク3を介してサーバ装置1に接続される。
【0022】
[サーバ装置1]
サーバ装置1は、診察業務支援装置において各診察端末装置2及び検査用端末装置5が共通に利用・参照するデータを管理する装置であり、職員データベース部11と患者データベース部12を有する。
本明細書では、職員データベース部11及び患者データベース部12を総称して「データベース部」と記す場合がある。
【0023】
図2は、サーバ装置1の構成の一例を示す図である。
図2に示すサーバ装置1は、処理部101と、通信部102と、表示部103と、指示入力部104と、記憶部105と、作業メモリ106とを有する。
【0024】
通信部102は、通信ネットワーク3を介して端末装置2と通信を行うための回路であり、例えばイーサネット(登録商標)などの所定の規格に適合した通信を行うための信号処理や制御、有線や無線で伝送される信号の変調・復調、データの符号化・復号化、パケットの処理、送受信のタイミングの調整などを行う。
【0025】
表示部103は、処理部101において生成される表示信号に応じた画面を表示する。例えば表示部103は、液晶ディスプレイ、ELパネルディスプレイ、CRTなどの表示デバイスを含む。
【0026】
指示入力部104は、利用者の指示を入力するための装置であり、所定の指示入力操作に応じた指示信号を生成する。例えばキーボード、マウス、操作ボタン、キーパッド、タッチセンサなどを含む。
【0027】
記憶部105は、処理部101及び周辺ハードウェア(102〜104)の初期化・制御等に使用される低レベルのプログラム(BIOS等)や、ファイル・オペレーティング・システム、アプリケーション・プログラムなどを格納するとともに、これらのプログラムで利用されるデータを格納する。記憶部205には、例えばハードディスク、フラッシュ・メモリ等の不揮発性メモリ、DVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、磁気テープ、プログラマブルROM、マスクROMなどが用いられる。
【0028】
記憶部105は、職員データベース部11と患者データベース部12の記憶領域としてそれぞれ利用される。
職員データベース部11は、医師や看護師、検査員、事務職員などの病院職員に関する種々の情報を管理する。
患者データベース部12は、患者に関する種々の情報を管理し、特に患者の診察や治療に関する医療情報(カルテ)を管理する。
記憶部105は、本発明における記憶部の一例である。
【0029】
作業メモリ106は、処理部101のプロセッサがアクセスしてプログラムやデータを一時的に格納する比較的高速なメモリであり、例えばダイナミックRAMやスタティックRAMなどの半導体メモリを含む。
【0030】
処理部101は、サーバ装置1の全体的な動作を制御する。すなわち、通信部102における診察用端末装置2との通信や、表示部103に供給する表示信号の生成、指示入力部104における利用者からの指示の入力等を、記憶部105や作業メモリ106に格納されるプログラムに基づいて制御する。例えば処理部101は、プログラムに基づいて処理を行うプロセッサ(CPU)や、周辺ハードウェア(102〜106)を制御する回路、周辺ハードウェアとデータをやり取りするためのバス、バス制御回路(バスブリッジ回路)、キャッシュメモリなどを含む。
【0031】
この処理部101は、機能的なブロックとして、職員データベース部11に関わる処理を実行する職員データベース処理部111と、患者データベース部12に関わる処理を実行する患者データベース処理部112を有する。
【0032】
職員データベース処理部111は、職員に関する種々のデータを所定のデータ構造で記憶部105に格納するとともに、職員のデータへのアクセスを求める診察用端末装置2からの要求が通信部102において受信されると、要求に応じてデータの検索、読み出し、書き込み、並び替え等を実行する。
同様に、患者データベース処理部112は、患者に関する種々のデータを所定のデータ構造で記憶部105に格納するとともに、患者のデータへのアクセスを求める診察用端末装置2からの要求が通信部102において受信されると、この要求に応じた検索等の処理を実行する。
【0033】
図3は、患者データベース部12に記憶される医療データの構造を説明するための図である。
患者データベース部12は、患者に関する種々の情報を記憶しており、その一部として、患者の診察や治療に関する医療データ52を記憶する。医療データ52は、患者の識別データ42と、医療行為が実施された日付51に関連付けられている。
医療データ52は、例えば図3に示すように、担当医師の識別データ41と、医学検査の結果に関する検査データ53と、医師の診察所見に関する所見データ54と、医師が処方した薬剤並びに医師の指示に関する処方データ55と、手術に関する情報を記録した手術記録データ56とを含んでいる。ただし、医療データ52は、これらのデータを全て含んでいるとは限らず、一部の医療行為(検査,手術など)が実施されなかった場合は、その実施されなかった医療行為のデータ(検査データ53,手術記録データ56など)を含まない。
本明細書では、1回分(1日付分)のカルテに対応する1つの医療データ52の内容を単に「カルテ」と記す場合がある。
【0034】
図4は、検査データ53のデータ構造を説明するための図である。
検査データ53は、患者に対して実施された検査結果のデータ533を含む。検査結果のデータ533は、例えば文字(数値)や画像などのデータであり、検査種別コード531と付帯情報532に関連付けられている。検査種別コード531は、患者に実施された検査の種別を示す。付帯情報532は、検査日、検査を担当した検査員の識別データ、検査員が記録した連絡事項、検査の信頼性に関する評価のランクなど、検査に関する付帯的な情報を含む。
【0035】
[診察用端末装置2]
図5は、診察用端末装置2の構成の一例を示す図である。
図5に示す診察用端末装置2は、処理部201と、通信部202と、表示部203と、指示入力部204と、記憶部205と、作業メモリ206とを有する。
表示部203は、本発明における表示部の一実施形態である。
指示入力部204は、本発明における指示入力部の一実施形態である。
【0036】
通信部202は、通信ネットワーク3を介してサーバ装置1と通信を行うための回路であり、例えば上述した通信部102と同様の構成を有する。
【0037】
表示部203は、処理部201において生成される表示信号に応じた画面を表示する装置であり、例えば上述した表示部103と同様の構成を有する。
【0038】
指示入力部204は、利用者の指示を入力するための装置であり、例えば上述した指示入力部104と同様の構成を有する。
【0039】
記憶部205は、処理部201及び周辺ハードウェア(202〜204)の初期化・制御等に使用される低レベルのプログラム(BIOS等)や、ファイル・オペレーティング・システム、アプリケーション・プログラムなどを格納するとともに、これらのプログラムで利用されるデータを格納する。記憶部205は、例えば上述した記憶部105と同様の構成を有する。
【0040】
作業メモリ206は、処理部201のプロセッサがアクセスしてプログラムやデータを一時的に格納する比較的高速なメモリであり、例えば上述した作業メモリ106と同様の構成を有する。
【0041】
処理部201は、診察用端末装置2の全体的な動作を制御する回路であり、記憶部205や作業メモリ206に格納されるプログラムに基づいて周辺ハードウェア(202〜204)の制御やデータ処理を行う。例えば処理部201は、例えば上述した処理部101と同様の構成を有する。
【0042】
この処理部201は、機能的なブロックとして、データベース要求処理部210と、表示処理部211と、回帰分析処理部212と、変化要因判定処理部231と、除外候補判定処理部214を有する。
表示処理部211は、本発明における第1処理部の一例である。
回帰分析処理部212は、本発明における第2処理部の一例である。
変化要因判定処理部213は、本発明における第3処理部の一例である。
除外候補判定処理部214は、本発明における第4処理部の一例である。
【0043】
データベース要求処理部210は、指示入力部204において入力される利用者の指示に応じて、サーバ装置1の職員データベース部11や患者データベース部12にアクセスし、データの検索や読み出し、書き込み等を行う。データベース要求処理部210は、職員データベース部11や患者データベース部12から読み出したデータを、一時的に作業メモリ206や記憶部205の一方若しくは両方に格納する。
【0044】
表示処理部211は、指示入力部204において入力される利用者の指示に応じて、表示部203に映し出す画像の表示信号を生成する。例えば、表示処理部211は、指示入力部204において所定の指示が入力されたことを示す指示信号が入力されると、職員データベース部11や患者データベース部12などから読み出されるデータに応じた画像(カルテの情報、検査結果のグラフなど)を表示部203に表示する表示信号を生成する。
なお、本明細書では、表示処理部211が表示部203に画像を表示する表示信号を生成することを、単に「表示処理部211が表示部203に画像を表示する」と記載する場合がある。
【0045】
回帰分析処理部212は、患者データベース部12に記憶される検査値の時系列に応じた散布図が表示部203において表示されている場合において、この散布図における複数の検査値から一部の検査値を選択して、当該一部の検査値に基づいて近似関数のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、当該一部の検査値の時系列に対して回帰分析処理を実行し、近似関数の定数を算出する。
【0046】
例えば、回帰分析処理部212は、検査日若しくは検査日に対応する数値(患者の年齢など)の範囲を指定して、この指定範囲に属する検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、検査日若しくは検査日に対応する数値が上記の指定範囲に属する検査値の時系列に対して最小二乗法などの回帰分析処理を実行する。
また、例えば回帰分析処理部212は、表示部203に表示される散布図の複数の検査値から少なくとも1つの検査値を指定して、当該指定した検査値を除外した残りの検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、この残りの検査値の時系列に対して回帰分析処理を実行する。
表示処理部211は、回帰分析処理部212による回帰分析処理の結果として算出された近似関数の定数(多項式の係数など)に基づいて、この近似関数のグラフを表示部203に表示する。
【0047】
変化要因判定処理部213は、患者データベース部12に記憶される医療データ52(図3)の時系列において前後に連続する2つの医療データ52をそれぞれ比較し、当該比較結果に基づいて、表示部203に散布図として表示される検査値(MD値など)の時系列の傾向(例えばグラフの傾き)に変化を及ぼし得る要因(変化要因)が発生した日を判定する。
【0048】
例えば、変化要因判定処理部213は、医療データ52(図3)の時系列において連続する2つの医療データ52に含まれる処方薬の情報を比較し、当該比較結果に基づいて、処方薬が変更された日を上記変化要因が発生した日と判定する。
また、変化要因判定処理部213は、患者データベース部12に記憶される医療データ52の時系列において所定の手術若しくは治療が行われたことを示す情報が含まれた医療データ52を検索し、当該検索結果に基づいて、手術若しくは治療行為が実施された日を上記変化要因が発生した日と判定する。
表示処理部211は、変化要因判定処理部213において上記変化要因が発生したと判定された日に関する情報を表示部203に表示する。この情報は、回帰分析処理対象の検査値の範囲を決める際の目安となる。
【0049】
除外候補判定処理部214は、患者データベース部12に記憶される医療データ52(図3)の時系列から所定の検査値を含む医療データ52を検索し、当該検索したそれぞれの医療データ52に含まれる検査の信頼性に関する情報に基づいて、当該検索したそれぞれの医療データ52に含まれる検査値を回帰分析処理の対象から除外する候補とするか否か判定する。例えば、検査の信頼性が所定の基準以下であることを示す情報が医療データ52に含まれている場合、除外候補判定処理部214は、この医療データ52に属する検査値を回帰分析処理対象からの除外候補と判定する。
表示処理部211は、除外候補判定処理部214において除外候補と判定された検査値に関する情報を表示部203に表示する。この情報は、回帰分析処理対象から除外する検査値を決める際の目安となる。
【0050】
ここで、上述した構成を有する本実施形態に係る診察業務支援装置の動作について説明する。
【0051】
図6は、本実施形態に係る診察業務支援装置においてカルテ画面を表示する場合の処理を説明するためのフローチャートである。
医師は、患者の電子カルテを開く場合、まず診察用端末装置2の指示入力部204においてサーバ装置1にログインするための操作を行う。処理部201は、この操作に応じた指示信号を入力すると、サーバ装置1へログインする処理を行う(ST100)。この際、処理部201は、指示入力部204から医師のID(医師識別データ41)を入力し、記憶部205若しくは作業メモリ206(以下、これらを総称して「メモリ」と記す場合がある)に格納する。
【0052】
サーバ装置1にログインすると、データベース要求処理部210は、メモリに格納した医師識別データ41をサーバ装置1の職員データベース部11に対して送信し、この医師識別データ41に関連付けられた環境設定(画面表示のカスタマイズ情報など)に関するデータを職員データベース部11から読み出す(ST105)。
【0053】
また、ログイン後、表示処理部211は、患者を特定するための情報(例えば患者識別データ42)の入力を求める画面を表示部203に表示する。この画面に促されて、患者を特定する情報が指示入力部204に入力されると(ST110)、データベース要求処理部210は、入力した情報に基づいて、患者の固有の情報(氏名、年齢、性別等)と医療データ52を患者データベース部12に要求し、要求に応じて取得したデータをメモリに格納する(ST115)。
【0054】
なお、患者データベース部12から取得する医療データ52は、該当する患者についての全データを取得しても良いし、一部に限定してもよい。より多くの医療データ52をメモリに格納しておくことで、患者データベース部12からの読み出し処理に伴う遅延を減らせるので、表示部203における表示処理を高速化できる。ただし、メモリの容量に制限がある場合は、例えば取得する診察日の日数に上限を設定して、最新の医療データ52を含んだ上限日数以下の医療データ52を取得するようにしてもよい。
【0055】
処理部201は、患者データベース部12から必要なデータを取得すると、取得したデータに基づいて、表示部203の画面に電子カルテを表示する(ST120)。
【0056】
図7は、本発明の実施形態に係る診察業務支援装置において医師が利用する電子カルテの表示画面の一例を示す図である。本実施形態に係る診察業務支援装置においては、図7に示すように、同一患者の複数診察日のカルテを日付順に並べて画面上に表示する。
【0057】
図7において、「A1」及び「A1−1」,「A1−2」はそれぞれ1回の診察に係るカルテの表示領域を示す。領域A1が今回(最新)のカルテを示し、領域A1−1が前回(1回前)のカルテを示し、領域A1−2が前々回(2回前)のカルテを示す。最新のカルテを含む一連の3日分のカルテが横方向に並んで表示される。
そして、各カルテの表示領域(A1,A1−1,A1−2)には、検査結果に関する情報が表示される領域(A11,A11−1,A11−2)と、医師の診察所見に関する情報が表示される領域(A12,A12−1,A12−2)と、処方薬の情報や医師の指示に関する情報が表示される領域(A13,A13−1,A13−2)がそれぞれ設けられている。
また、このカルテ表示領域の上側には、患者に関する固有の情報(患者ID、氏名、年齢、性別、住所、禁忌薬剤、アレルギーなど)を表示するための横長に延びた表示領域A2が設けられている。
更に、領域A2の右側には、他の情報の画面(手術歴の画面、処方歴の画面、関係連絡先の画面など)へ遷移するためのボタン等が配置される領域A3が設けられている。
このように、最新のカルテを含む一連の複数診察日のカルテが日付順に並んで一挙に表示されるため、紙のカルテやこれを模した従来の電子カルテのようにクリックやスクロール等の操作を行うことなく、一目で患者の状態の経過を把握することができる。
【0058】
図7に示すような電子カルテの画面を表示部203において表示すると、処理部201は、指示入力部204において利用者の指示入力操作により生成される指示信号の入力を待つ(ST125)。指示信号が入力されると、処理部201は、これに応じて画面を更新する処理やデータベース部(11,12)へのデータ記録処理などを実行し(ST130)、実行後に再び指示入力待ち状態となる(ST125)。
【0059】
例えば本実施形態の一例において、表示部203の画面には、指示入力部204としてタッチセンサが設けられている。画面の表面にペン等が接触若しくは近接したことをタッチセンサが検出すると、処理部201は、そのペン等の接触位置(若しくは近接位置)に応じて種々の処理を行う。
【0060】
具体的には、例えば図7に示すように3日分のカルテが横に並んで表示された画面において、カルテとカルテの境界を越えるようにペン等の接触位置が左右にスライドされると、処理部201は、右端に位置する最新のカルテの表示を固定した状態で、中央と左端に位置する2つのカルテの表示を更新する。すなわち、処理部201は、連続する2日分のカルテを、時系列の前若しくは後に1日だけシフトさせた2日分のカルテに置換し、置換したカルテを日付順に並べて画面の中央および左端に表示する。これにより、ページをめくるような感覚で画面のカルテを日付順にシフトさせながら、過去2回分のカルテと最新のカルテとを一画面上で比較することができる。
【0061】
また、検査結果の表示領域(A11,A11−1,A11−2)に含まれる検査結果の画像やテキスト(数値)がペン等でクリックされると、処理部201は、クリックされた検査結果の画像を拡大表示したり、クリックされた検査値(例えばMD値)の時系列をグラフ化した新たなウィンドウを生成して画面上に表示する(図8等)。
【0062】
指示入力部204においてログオフを指示する信号が生成された場合(例えば画面上のログオフ用のボタンがペン等でタッチされた場合)、処理部201は所定のログオフ処理を実行して動作を終了する(ST135)。
【0063】
次に、患者データベース部12に記憶された患者の医療データ52に基づいて、検査値の時系列のグラフを表示部203の画面上に表示する処理について説明する。
【0064】
例えば上述した電子カルテの画面上で特定の検査値(MD値など)をペン等でクリックする操作が行われ、これにより当該検査値の時系列から散布図を表示するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、データベース要求処理部210は、表示中の患者について患者データベース部12に記録される一群の医療データ52(図3)の中から、クリックされた検査値の時系列を取得する。表示処理部211は、患者データベース部12から取得された検査値の時系列に基づいて、検査値の経時的な変化を表したグラフを表示部203に表示する。例えば表示部211は、横軸が検査日を示し、縦軸が検査値を示す散布図を表示部203に表示する。
【0065】
図8は、表示部203の画面に表示されるMD値の散布図61の一例を示す図である。
例えば、図7に示す電子カルテの画面上でMD値(検査値)の表示領域をペン等でクリックすると、電子カルテの前面において新規のウィンドウ60が開き、その中に、図8に示す散布図61が表示される。散布図61の横軸はハンフリー視野計による視野検査を行った日を示し、縦軸はMD値(単位dB)を示す。
【0066】
本実施形態に係る診察業務支援装置において散布図61に近似関数(例えば一次関数,回帰直線)のグラフを表示する場合、例えば図8に示すように、ペン80を使って横軸(検査日)の範囲を指定する。具体的には、例えばペン80の先を散布図61における目的のMD値の点に接触させ、この接触状態を一定時間保持する操作や、ペン80に備わるボタンをクリックする操作などにより所定のメニューを画面上に表示させ、このメニューにおいて検査値を「始点」若しくは「終点」に設定する操作を行う。
【0067】
上述のような操作により検査日の範囲(始点と終点)を指定して、当該範囲に属する検査値(MD値)についての回帰直線のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部104(タッチセンサ)において生成されると、データベース要求処理部210は、指定された検査日の範囲に属する検査値の時系列を患者データベース部12から読み出す。回帰分析処理部212は、患者データベース部12から読みだされた検査値の時系列に対して最小二乗法などの回帰分析処理を実行し、回帰直線の定数(傾き,切片)を算出する。表示処理部211は、算出された回帰直線の定数に基づいて、回帰直線のグラフを表示部203に表示する。
【0068】
図9は、図8において指定された検査日の範囲(始点と終点)に基づき計算された回帰直線のグラフを示す図である。表示処理部211は、例えば図9に示すように、回帰分析処理部212で計算された回帰直線62を散布図61の上に重ねて表示するとともに、回帰直線62の傾きに関する情報63を散布図61の隅に表示する。
【0069】
また表示処理部211は、例えば図9に示すように、MD値が所定の値(−15dB,−25dB)に達するまでの年数の計算を実行するボタン64,65を散布図の横に表示する。
図10において示すように、ペン80の先で「−15dB」と書かれたボタン64に触れたことを示す指示信号が指示入力部104(タッチセンサ)において生成されると、表示処理部211は、回帰分析処理部212で算出された近似関数(回帰直線)に基づいて、MD値が「−15dB」に達する日を求め、現在からその日までの年数を算出する。表示処理部211は、算出した年数(図10の例では9年)の情報66を画面に表示する。MD値「−15dB」は、生活に不便を生じるようになる目安を表す。
他方、図11において示すように、ペン80の先で「−25dB」と書かれたボタン65に触れたことを示す指示信号が指示入力部104(タッチセンサ)において生成されると、表示処理部211は、回帰分析処理部212で算出された近似関数(回帰直線)に基づいて、MD値が「−25dB」に達する日を求め、現在からその日までの年数を算出する。表示処理部211は、算出した年数(図11の例では19年)の情報66を画面に表示する。MD値「−25dB」は、社会的失明状態の目安を表す。
【0070】
なお図10,図11の例では横軸を検査日としているが、図12において示すように、横軸を患者の年齢で表示してもよい。例えば、ペン80の先を散布図61の横軸に接触させた状態で、この接触状態を一定時間保持させたり、ペン80に備わるボタンをクリックしたりする操作が指示入力部104(タッチセンサ)において入力されると、表示処理部211は、横軸の各種設定を行うためのメニュー75を画面に表示する。このメニューにおいて横軸の単位が患者の年齢に設定されると、表示処理部211は、散布図に表示する各検査値の日付のデータと、患者データベース部12から取得した患者の生年月日のデータとに基づいて、横軸の目盛りが検査日から年齢に変更された散布図61を構成し、画面に表示する。この場合、ボタン64,65がペン80で操作されると、表示処理部211は、回帰分析処理部212で算出された回帰直線に基づいて、MD値が所定の値(−15dB、−25dB)に達するときの患者の年齢を算出し、その情報66を画面に表示する。図10の例では、MD値「−15dB」に到達する年齢が60才と予想されている。
【0071】
次に、回帰分析の対象から一部の検査値を除外する処理について説明する。
【0072】
本実施形態に係る診察業務支援装置において散布図61に近似関数(回帰直線)のグラフを表示する場合、例えば図13に示すように、ペン80を使って一部の検査値を回帰分析の対象から除外することができる。具体的には、例えばペン80の先を除外対象のMD値の点に接触させた状態で、この接触状態を一定時間保持する操作や、ペン80に備わるボタンをクリックする操作などにより所定のメニューを画面上に表示させ、このメニューにおいて当該MD値を回帰分析の対象から除外する操作を行う。
【0073】
表示処理部211は、ペン80の操作によって除外するように指定された検査値を、他の検査値とは異なる態様で画面に表示する。例えば図13において、除外するように指定された検査値の点はグレーの色に塗りつぶされた三角形であり、他の検査値の点は黒色の線で描かれた三角形である。
【0074】
幾つかの除外対象の検査値(MD値)を指定して、当該指定した検査値を除く残りの検査値についての回帰直線のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部104(タッチセンサ)において生成されると、回帰分析処理部212は、除外指定された検査値を除く残りの検査値の時系列に対して最小二乗法などの回帰分析処理を再度実行し、回帰直線の定数(傾き,切片)を算出する。表示処理部211は、算出された回帰直線の定数に基づいて、回帰直線のグラフを表示部203に表示する。
図14は、図13において指定された2点の検査値(MD値)を除外して再計算された回帰直線のグラフを示す図である。図14に示す回帰直線62は、図13に比べてやや傾きが小さくなっている。
【0075】
次に、散布図の横軸(検査日,年齢等)の範囲を複数指定して、それぞれの範囲についての近似関数(回帰直線)を計算する処理について説明する。
【0076】
処方薬の変更や手術などを行うことによって症状が変化すると、検査値の時系列の傾向が不連続に変化することがある。例えば緑内障の場合、年月の経過とともにMD値が低下(視野欠損が増大)していくが、点眼薬の変更や手術などをきっかけに症状が改善すると、MD値の低下が緩やかになる(傾きが小さくなる)ことがある。本実施形態に係る診察業務支援装置では、検査値の時系列の傾向が不連続に変化する場合でも適切な近似関数で検査値の傾向を表せるようにするため、利用者が指定した検査日(年齢)の範囲毎に回帰分析処理を行い、各範囲の近似関数のグラフを表示する。
【0077】
図15は、複数の検査日の範囲を指定して、それぞれの範囲について回帰分析処理を実行する操作の一例を示す図である。図15の例では、始点と終点のセットが2組(始点1及び終点1、始点2及び終点2)設定される。ペン80の操作によって所望の検査値を始点又は終点に設定する方法は、図8の場合と同様である。
図15に示すように複数の検査日の範囲(始点1及び終点1、始点2及び終点2)を指定して、各範囲の回帰直線のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部104(タッチセンサ)において生成されると、回帰分析処理部212は、指定された各範囲の検査値の時系列に対して回帰分析処理を行い、回帰直線の定数(傾き,切片)をそれぞれ算出する。表示処理部211は、算出された各範囲の回帰直線の定数に基づいて、各範囲の回帰直線のグラフを表示部203に表示する。
【0078】
図16は、図15において指定された2つの検査日の範囲における回帰直線62−1,62−2のグラフを示す図である。図16の例では、後半の範囲における回帰直線62−2の傾きが前半の範囲における回帰直線61−1に比べて緩やかになっていることから、症状の進行が抑制されていることが示唆される。
【0079】
次に、散布図の各検査値に関する補足的な情報を画面に表示する処理について説明する。
【0080】
回帰分析の対象とする検査値の範囲を定める場合や(図8,図15)、回帰分析の対象から除外すべき検査値を決める場合(図13)において、検査値に関する補足的な情報が必要になることがある。例えば、検査当日のカルテの情報や、検査の前後における処方薬の情報、検査員が記録した検査の信頼性に関する情報などが、回帰分析対象の範囲を定めたり、除外すべき検査値を決める際の参考になる。本実施形態に係る診察業務支援装置では、ペン80の操作によって散布図上の任意の検査値を指定することにより、その検査値に関連する医療データ52(図3)から必要な補足情報を画面上に表示することができる。
【0081】
図17は、検査値に関する補足情報を画面に表示する操作の一例を示す図である。ペン80の先を散布図61における所望の検査値の点に接触させた状態で、この接触状態を一定時間保持させたり、ペン80に備わるボタンをクリックしたりする操作が指示入力部104(タッチセンサ)において入力されると、表示処理部211は、この検査値に関する補足情報を選択するためのメニュー67を画面に表示する。このメニュー67では、例えば検査データ53(図4)の付帯情報532に記録される測定環境の情報や、測定の信頼性に関する情報、検査結果533に記録される各種の検査結果の情報、医療データ52(図3)の検査データ53,所見データ54,処方データ55からなるカルテ(図7)の情報、手術記録データ56に含まれる手術の情報、処方データ55に含まれる処方薬の情報などを補足情報として選択することができる。
メニュー67において補足情報が選択されると、表示処理部211は、ペン80の操作により指定された一の検査値と同一の医療データ52(図3)に含まれる情報から、このメニュー67において選択された補足情報を取得して画面上に表示する。例えば表示処理部211は、選択された補足情報に関する新規のウィンドウを画面上に表示する。
【0082】
次に、回帰分析対象の検査値の範囲を決定する場合(図8,図15)の参考の情報として、検査値(MD値)の時系列の傾向が変化する境界の目安を表示する処理について説明する。
【0083】
図18は、検査値(MD値)の時系列の傾向(グラフの傾きなど)が変化する境界の目安を散布図61において表示する例を示す図である。
表示処理部211は、例えば図18に示すように、検査値(MD値)の時系列の傾向が変化する検査値(変化点)の候補を表示するためのボタン68を散布図61のウィンドウ60に表示する。ペン80によってこのボタン68が押されたことを示す指示入力部204(タッチセンサ)の指示信号が生成されると、変化要因判定処理部213は、患者データベース部12から取得された医療データ52(図3)の時系列において前後に連続する2つの医療データ52をそれぞれ比較する。変化要因判定処理部213は、この比較処理によって、医療データ52に含まれる所定の情報に変化が生じた日を検索し、これを検査値(MD値)の時系列の傾向に変化を及ぼし得る要因(変化要因)が発生した日と判定する。
【0084】
例えば、変化要因判定処理部213は、前後に連続する2つの医療データ52に含まれる処方データ55(図3)を比較し、当該比較結果に基づいて、処方薬が変更された日を変化要因の発生日と判定する。すなわち、前後に連続する2つの医療データ52において処方データ55に記録される処方薬が一致しない場合、この2つの医療データ52における後の医療データ52に関連付けられた日付を変化要因の発生日と判定する。
【0085】
また、変化要因判定処理部213は、患者データベース部12から取得された医療データ52の時系列において所定の手術や治療が行われたことを示す手術記録データ56(図3)が含まれた医療データ52を検索し、当該検索結果に基づいて、所定の手術や治療が行われた日を変化要因の発生日と判定する。
【0086】
図19は、検査値の時系列の傾向が変化する要因の発生日を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
【0087】
変化要因判定処理部213は、患者データベース部12から取得された医療データ52の時系列から、日付順に一の医療データ52を選択する(ST200)。例えば、変化要因判定処理部213は、時系列において2番目に古い日付の医療データ52から日付順に一ずつ医療データ52を選択する。
【0088】
変化要因判定処理部213は、ステップST200で選択した医療データ52に含まれる処方データ55と、この医療データ52より1つ前の医療データ52に含まれる処方データ55とを比較する(ST205)。この比較の結果、処方薬が一致していない場合(ST210)、変化要因判定処理部213は、ステップST200で選択した医療データ52の日付を変化要因の発生日と判定する(ST220)。また、変化要因判定処理部213は、ステップST200で選択した医療データ52に所定の手術若しくは治療に関する手術記録データ56(図3)が含まれるか否か判定し(ST215)、該当する手術記録データ56が含まれる場合、ステップST200で選択した医療データ52の日付を変化要因の発生日と判定する(ST220)。
ステップST205〜ST220の処理を行うと、変化要因判定処理部213は時系列の最後の医療データ52まで到達したか判定し(ST225)、最後の医療データ52まで到達していなければ次の医療データ52を選択して(ST230)、ステップST205以降の処理を繰り返す。
【0089】
上記のようにして変化要因の発生日を特定すると、次に変化要因判定処理部213は、検査値の時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値を特定する。すなわち、変化要因判定処理部213は、変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日より後であり、かつ、当該日に最も近い日付の医療データ52であって、検査値(MD値)を含んだ医療データ52を検索する。
【0090】
表示処理部211は、変化要因判定処理部213において検索された医療データ52に含まれる検査値(MD値)を、上記境界の目安となる検査値として識別できるように表した散布図を構成し、表示部203に表示する。例えば図18の散布図61の例において、表示処理部211は、上記境界の目安となる検査値を菱形状のマーク70で囲むことで、他の検査値から識別できるようにしている。
【0091】
変化要因判定処理部213において特定される検査値は、変化要因発生日の後に得られる最初の検査値であり、変化要因発生日の後一定の傾向で推移する検査値の時系列の先頭であることが見込まれる。そのため、変化要因判定処理部213において特定される検査値は、図15に示すような回帰分析範囲の設定を行う際の「始点」の候補となる。利用者は、図18の例に示すように他の検査値から識別可能に表示された「始点」の候補を参考にすることができるため、適切な回帰分析の範囲を設定し易くなる。
【0092】
図20は、変化要因判定処理部213において時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
変化要因判定処理部213は、図19のフローチャートにおいて1以上の変化要因発生日を特定した場合、その中から一の変化要因発生日を選択する(ST300)。例えば、変化要因判定処理部213は、最も古い日付のものから日付順に一の変化要因発生日を選択する。
【0093】
変化要因判定処理部213は、患者データベース部12から取得された医療データ52の時系列の中から、ステップST300で選択した変化要因発生日より後の日付に関連付けられた医療データ52(図3)を、最も古い日付に関連付けられたものから日付順に選択する(ST305)。
【0094】
変化要因判定処理部213は、ステップST305において選択した医療データ52の検査データ53に所定の検査値(MD値)が含まれているか否か判定する(ST310)。選択した医療データ52に所定の検査値が含まれる場合、変化要因判定処理部213は、この検査値を、時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値であると判定する(ST315)。他方、選択した医療データ52に所定の検査値が含まれない場合、変化要因判定処理部213は、現在選択中の医療データ52が時系列の最後の医療データ52であるか否か判定し(ST320)、時系列の最後の医療データ52でなければ、ステップST305の処理に戻る。
ステップST315において時系列の傾向が変化する境界の目安の検査値を判定した場合、または、ステップST320においてが時系列の最後の医療データ52を選択していると判定した場合、変化要因判定処理部213は、ステップST305において全ての変化要因発生日を選択したか否か判定する(ST325)。まだ選択していない変化要因発生日がある場合、変化要因判定処理部213は、その変化要因発生日を選択して(ST330)ステップST305の処理に戻る。
【0095】
図21は、検査値の時系列の傾向に変化を及ぼし得る変化要因の発生日に基づいて、時系列の傾向が変化する境界の目安の検査値を判定する具体例を説明するための図である。
【0096】
図21の例では、所定の手術が実施された2007年5月15日と、点眼薬が「A」から「B」へ変更された2008年3月22日が、それぞれ変化要因の発生日として判定される。
2007年5月15日の変化要因発生日の後、最初に検査値が得られるのは2007年7月30日であるため、この日に得られた検査値が上記境界の目安として判定される。
また、2008年3月22日の変化要因発生日の後、最初に検査値が得られるのは2009年3月10日であるため、この日に得られた検査値が上記境界の目安として判定される。2008年3月22日の変化要因発生日に得られた検査値は、境界の目安として判定されない。
【0097】
次に、回帰分析の対象から除外する検査値の候補を表示する処理について説明する。
【0098】
図22は、回帰分析の対象から除外する検査値の候補を散布図61において表示する例を示す図である。
表示処理部211は、例えば図22に示すように、回帰分析の対象から除外する検査値(除外点)の候補を表示するためのボタン69を散布図61のウィンドウ60に表示する。ペン80によってこのボタン69が押されたことを示す指示入力部204(タッチセンサ)の指示信号が生成されると、除外候補判定処理部214は、患者データベース部12から取得された医療データ52(図3)の時系列から、散布図61において表示する検査値(MD値)を含んだ医療データ52を検索する。除外候補判定処理部214は、検査値(MD値)を含んだ医療データ52を検索すると、当該検索したそれぞれの医療データ52に含まれる検査の信頼性に関する情報に基づいて、当該検索したそれぞれの医療データ52に含まれる検査値を回帰分析処理の対象から除外する候補とするか否か判定する。例えば、検査を担当した検査員が検査結果の信頼性の評価ランクについて記録した情報が検査データ53の付帯情報532(図4)に含まれる場合、この信頼性のランクが所定の基準以下である検査値を回帰分析処理対象からの除外候補と判定する。
【0099】
表示処理部211は、除外候補判定処理部214において除外候補と判定された検査値に関する情報を表示部203に表示する。例えば図22の散布図61の例において、表示処理部211は、回帰分析対象からの除外候補の検査値を円形状のマーク71で囲むことで、他の検査値から識別できるようにしている。
【0100】
図23は、回帰分析の対象から除外する候補の検査値を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
【0101】
除外候補判定処理部214は、患者データベース部12から取得された医療データ52の時系列から、日付順に一の医療データ52を選択する(ST400)。例えば、変化要因判定処理部213は、時系列において最も古い日付の医療データ52から日付順に一ずつ医療データ52を選択する。
【0102】
除外候補判定処理部214は、ステップST400において選択した医療データ52の検査データ53に所定の検査値(MD値)が含まれるか否か判定する(ST405)。検査データ53に所定の検査値が含まれる場合、除外候補判定処理部214は、この検査データ53の付帯情報532(図4)に含まれる検査結果の信頼性についての評価ランクを取得し(ST410)、信頼性の評価ランクが所定の基準以下であるか否か判定する(ST415)。信頼性の評価ランクが所定の基準以下である場合、除外候補判定処理部214は、この検査値を回帰分析対象から除外する候補として判定する(ST420)。
ステップST405〜ST420の処理を行うと、除外候補判定処理部214は時系列の最後の医療データ52まで到達したか判定し(ST425)、最後の医療データ52まで到達していなければ次の医療データ52を選択して(ST430)、ステップST405以降の処理を繰り返す。
【0103】
以上説明したように、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、表示部203に表示される散布図の複数の検査値から一部の検査値を選択するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、当該一部の検査値に対して回帰分析処理が実行され、この回帰分析処理の結果として算出された近似関数の定数に基づいて、当該一部の検査値についての近似関数のグラフが表示部203に表示される。
これにより、散布図における全体の検査値から任意の一部の検査値を選択して、その近似関数のグラフを表示することができるため、治療の効果などに応じて検査値の時系列の傾向が不連続に変化する場合でも、患者の病状をより適切に表した近似関数をグラフを作成することができる。
【0104】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、散布図における検査日(若しくは年齢等)の範囲(始点,終点)を指定することによって、回帰分析処理の対象とする検査値の範囲を簡単に指定できる。例えば、表示部203の画面に接触若しくは近接する物体を検知するタッチセンサ(指示入力部204)を用いて始点と終点の検査値をそれぞれ指定することにより、回帰分析処理の対象範囲を簡単に指定できる。
【0105】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、散布図における検査値を個別に指定することによって、回帰分析処理の対象から除外する検査値を簡単に指定することができる。例えば、タッチセンサ(指示入力部204)を用いて画面上の検査値を直接指定することにより、回帰分析処理の除外対象を簡単に指定できる。
【0106】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、散布図における検査値を個別に指定することによって、その検査値に関連する補足情報(検査に関する情報、診察に関する情報、治療に関する情報、手術に関する情報、処方薬に関する情報など)を表示部203の画面に簡単に表示できる。これにより、回帰分析処理の対象とする検査日等の範囲を決める場合や、回帰分析処理の対象から除外する検査値を決める場合に必要な情報を表示部203の画面上で簡単に確認できる。
【0107】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、患者データベース部12に記憶される医療データ52の時系列において前後に連続する2つの医療データ52がそれぞれ比較され、当該比較結果に基づいて、検査値の時系列の傾向に変化を及ぼし得る要因(変化要因)の発生日が判定され、その情報が表示部203に表示される。これにより、回帰分析処理の対象とする検査値の範囲を決める際の参考情報が得られるため、適切な近似関数のグラフを得やすくなり、診察業務の効率を向上できる。
【0108】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、散布図の各検査値について記録された検査結果の信頼性に関する情報に基づいて、所定の信頼性の基準に達しない検査値が回帰分析処理対象からの除外候補の検査値として判定される。これにより、回帰分析処理対象から除外する検査値を決める際の参考情報が得られるため、適切な近似関数のグラフを得やすくなり、診察業務の効率を向上できる。
【0109】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、複数のカルテを診察日順に並べて表示することから、複数のカルテを参照する際にクリックやスクロール等の特別な操作が不要になるので、診察業務の効率を高めることができる。
【0110】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、診察において必ず必要となる最新のカルテの表示を固定した状態で過去のカルテの表示を変更できるようにしているため、必要なカルテを画面に表示させるためのクリックやスクロール等の操作を減らすことができる。
【0111】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、他の種々のバリエーションを含んでいる。
【0112】
上述した実施形態では、回帰分析処理により求める近似関数の一例として一次関数(回帰直線)を例に挙げているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の種々の近似関数を求める場合にも適用可能である。
【0113】
上述した実施形態では、変化要因判定処理部213において検査値の時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値を特定する場合に、変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日より後であり、かつ、当該日に最も近い日付の医療データ52であって、検査値を含んだ医療データ52が検索されるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、上述した実施形態では、変化要因が発生した後における一連の検査値の先頭を「境界の目安」として判定しているが、本発明の他の実施形態では、変化要因の発生日以前における一連の検査値の末尾を「境界の目安」として判定してもよい。
例えば、変化要因判定処理部213は、変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日と同日若しくは当該日より前であり、かつ、当該日に最も近い日付の医療データ52であって、検査値を含んだ医療データ52を検索し、この医療データ52に含まれる検査値を「境界の目安」として判定してもよい。具体的には、図20のフローチャートにおけるステップST305において、変化要因判定処理部213は、変化要因発生日以前の一連の医療データ52を最も新しい医療データ52から日付順に選択すればよい。この場合、変化要因判定処理部213において特定される検査値は、図15に示すような回帰分析範囲の設定を行う際の「終点」の候補となる。
【0114】
上述した実施形態では、変化要因判定処理部213において変化要因の発生日が判定されると、この発生日に基づいて特定された上記「境界の目安」の検査値を識別するマーク等が画面に表示されるが(図18,図22)、本発明はこれに限定されない。
本発明の他の実施形態では、変化要因判定処理部213においての判定された変化要因の発生日に関する他の種々の情報を表示部203において表示してもよい。例えば、表示処理部211は、散布図の横軸上やその近傍に、変化要因の発生日を示すマーク(矢印など)を表示してよい。
また、表示処理部211は、変化要因の発生日に付帯する情報として、変更前の処方薬と変更後の処方薬の情報や、当該変化要因の発生日に実施された手術等の情報など、変化要因の内容に関する情報を表示部203に表示してもよい。例えば、変化要因の発生日を示す上述したマークの上にペン80を置いた状態で所定時間以上経過したり、その状態でペン80のボタンがクリックされたりしたことを示す指示信号が指示入力部204(タッチセンサ)において生成されると、表示処理部211は、付帯情報が記載されたポップアップウィンドウを表示部203に表示してよい。ポップアップウィンドウには、例えば、処方薬の変更について「処方薬A→処方薬B」などの具体的変更内容を表示してもよいし、実施された手術の術式などを表示してもよい。
【0115】
上述した実施形態では、検査値の時系列に基づく散布図を単独で表示する例を挙げているが、本発明はこれに限定されない。
本発明の他の実施形態では、関連性のある複数の検査値の時系列の散布図を並べて表示してもよい。例えば表示処理部211は、図24に示すように、MD値の散布図61と並べて眼圧の散布図72を表示してもよい。
また、本発明の他の実施形態では、検査値の時系列の散布図とともに、補足的な情報を散布図と同じ時間軸上に並べて表示してもよい。例えば表示処理部211は、図25に示すように、MD値の散布図61及び眼圧の散布図72に並べて、点眼薬に関する情報73と、手術の実施日に関する情報74を表示してもよい。
この場合、表示処理部211は、指示入力部204において生成される指示信号に応じて、画面に表示する検査値の種類や補足情報の種類を任意に選択できるようにしてもよいし、それらの並び順を任意に選択できるようにしてもよい。
【0116】
上述した実施形態では、除外対象の検査値の候補を判定するために参照する検査結果の信頼性に関する情報として、検査員が記録した信頼性の評価ランクの情報を使用する例が挙げられているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、検査員の能力やスキルの評価ランクに関する情報を使用してもよい。
例えば、職員データベース部11の検査員に係る情報には、検査員の識別番号と関連付けて、その検査員の能力やスキルの評価ランクに関する情報が記憶されており、検査データ52の付帯情報532には、検査に係った検査員の識別データが含まれる。
除外候補の表示を求める操作(例えばボタン69(図22)の押下)がなされたことを示す指示入力部204(タッチセンサ)の指示信号が生成されると、除外候補判定処理部214は、患者データベース部12から取得された医療データ52(図3)の時系列から、散布図61において表示する検査値(MD値)を含んだ医療データ52を検索する。除外候補判定処理部214において検査値(MD値)を含んだ医療データ52が検索されると、データベース要求処理部210は、その検査に係った検査員の識別データに基づいて、職員データベース部11から当該検査員の能力・スキルの評価ランクに関する情報を取得する。除外候補判定処理部214は、取得された能力・スキルの評価ランクが所定の基準以下である場合、この検査値を回帰分析処理対象からの除外候補と判定する。
【0117】
上述した実施形態では、図示の都合上、散布図上に片眼の検査値のみが表示される例を挙げているが、本発明はこれに限定されるものではなく、両眼の検査値を同一の散布図に表示してもよいし、片眼ずつの検査値の散布図を上下に並べて表示してもよい。
【0118】
上述した実施形態では、医学検査における検査値の一例としてMD値を挙げてるが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の種々の医学検査の結果をグラフ化して表示する診察業務支援装置に広く適用可能である。
【0119】
上述した実施形態ではサーバ装置にデータベース部を設けているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、データベース部を端末装置に設けてもよく、その場合はサーバ装置を省略してよい。
【0120】
また、サーバ装置は、通信ネットワークにより接続された複数のコンピュータで構成してもよい。例えば、職員データベース部11と患者データベース部12をそれぞれ別のコンピュータで構成してもよい。
【符号の説明】
【0121】
1…サーバ装置、2…診察用端末装置、3…通信ネットワーク、4…検査用端末装置、5…視野計測装置、11…職員データベース部、12…患者データベース部、61…散布図、62…回帰直線、80…ペン、101,201…処理部、102,202…通信部、103,203…表示部、104,204…指示入力部、105,205…記憶部、106,206…作業メモリ、210…データベース要求処理部、211…表示処理部、212…回帰分析処理部、213…変化要因判定処理部、214…除外候補判定処理部、41…医師識別データ、42…患者識別データ、52…医療データ、53…検査データ、54…所見データ、55…処方データ、56…手術記録データ、531…検査種別コード、532…付帯情報、533…検査結果のデータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院での診察業務を支援する診察業務支援装置に係り、特に、医学検査の結果を示す検査値の時系列をグラフ化して表示する診察業務支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医学的検査の結果は、患者の治療方針を決める上で最も基本的な情報を与えるものであり、医師の診察業務において極めて重要である。下記の特許文献には、医学検査の結果を医師に分かり易く提示するコンピュータシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010−270955号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば眼科においては、緑内障などの患者の視野を計測する測定機として、ハンフリー(HUMPHREY:登録商標)視野計が標準的に用いられている。ハンフリー視野計は、患者の視点のまわりに様々な強さの光点をランダムに表示させ、各光点が視認されたか否かを患者に答えさせることで、視野の欠損の状態を調べる測定機である。ハンフリー視野計は、視野の欠損の分布を表すグラフ(グレースケール)に加えて、全体的な視野の欠損の程度を示すMD(mean deviation)と呼ばれるデジベル単位の数値を出力する。MD値は、視野の欠損の程度が正常人の年齢補正された平均値からどの位ずれているかを示す数値であり、MD値が負側に大きくなるほど、同じ年齢の正常人に比べて視野の欠損の度合いが大きくなる。
【0005】
長期にわたって徐々に視野の欠損が進行する緑内障の場合、その治療計画を立てる際の目安として、MD値の経時変化を表したグラフが使用される。一般に、MD値の経時変化は直線で近似され、その傾き具合から視野欠損の進行状態が把握される。また、近似直線の外挿によって、将来のMD値が予想される。
【0006】
MD値は、特に緑内障の診断において重要なデータであるが、検査時の患者の状態などに応じて誤差を生じ易いため、近似直線の引き方が変わると病状の把握や将来の視野の予想が大きく変わってしまうという課題がある。例えば、MD値の測定は、投薬や手術などと並行して継続的に行われるため、MD値の経時的な推移の傾向が治療の効果に応じて変化することがある。ところが、そのような傾向の変化を無視して全期間を1本の直線で近似してしまうと、患者の病状を正しく表したグラフが得られない可能性がある。また、検査時の患者の状態などからMD値の信頼性が乏しいと判断される場合、そのようなMD値は近似の対象から除外することが望ましい。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、MD値などの検査値の時系列をグラフ化して表示する際に、全体の検査値の時系列から任意の一部の検査値を選択して、その近似関数のグラフを表示することができる診察業務支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る診察業務支援装置は、医学検査の結果を示す検査値の時系列をグラフ化して表示する診察業務支援装置であって、前記検査値の時系列を記憶する記憶部と、入力される表示信号に応じた画像を表示する表示部と、利用者による所定の指示入力操作に応じた指示信号を生成する指示入力部と、前記検査値の散布図を表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記記憶部に記憶される前記検査値の時系列に基づいて、一の座標軸が検査日若しくは検査日に対応する数値を示し、他の一の座標軸が前記検査値を示す散布図を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する第1処理部と、前記表示部に表示される前記散布図における複数の検査値から一部の検査値を選択して、前記一部の検査値に基づいて近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記一部の検査値の時系列に対して回帰分析処理を実行する第2処理部とを有する。前記第1処理部は、前記回帰分析処理の結果として算出された前記近似関数の定数に基づいて、前記近似関数のグラフを前記表示部に表示する前記表示信号を生成する。
【0009】
好適に、前記第2処理部は、前記検査日若しくは前記検査日に対応する数値の範囲を指定して、前記範囲に属する検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記検査日若しくは前記検査日に対応する数値が前記範囲に属する検査値の時系列に対して前記回帰分析処理を実行してよい。
【0010】
好適に、前記第2処理部は、前記表示部に表示される前記散布図の複数の前記検査値から少なくとも1つの検査値を指定して、前記指定した検査値を除外した残りの検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記残りの検査値の時系列に対して前記回帰分析処理を実行してよい。
【0011】
好適に、前記記憶部は、前記検査値を含む検査に関する情報、診察に関する情報、治療に関する情報、手術に関する情報および処方薬に関する情報の少なくとも1つと日付の情報とが関連付けられた医療情報の時系列を記憶してよい。前記第1処理部は、前記表示部に表示される前記散布図において一の検査値を指定して、前記一の検査値に関連する前記医療情報を表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記記憶部において前記一の検査値と同一の前記医療情報に属する前記検査に関する情報、前記診察に関する情報、前記治療に関する情報、前記手術に関する情報および前記処方薬に関する情報の少なくとも1つを前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【0012】
好適に、上記診察業務支援装置は、前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列において前後に連続する2つの医療情報をそれぞれ比較し、当該比較結果に基づいて、前記検査値の時系列の傾向に変化を及ぼし得る要因が発生した日を判定する第3処理部を有してよい。前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【0013】
好適に、前記第3処理部は、前記連続する2つの医療情報に含まれる処方薬の情報を比較し、当該比較結果に基づいて、前記処方薬が変更された日を前記変化要因が発生した日と判定してよい。
【0014】
好適に、前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日の情報に付帯する情報として、変更前及び変更後の処方薬に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【0015】
好適に、前記第3処理部は、前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列において所定の手術若しくは治療が行われたことを示す情報が含まれた医療情報を検索し、当該検索結果に基づいて、前記手術若しくは治療行為が実施された日を前記変化要因が発生した日と判定してよい。
【0016】
好適に、前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日の情報に付帯する情報として、当該日に実施された手術若しくは治療行為の情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【0017】
好適に、前記第3処理部は、前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日より後であり、かつ、当該日に最も近い日付の前記医療情報であって、前記検査値を含んだ前記医療情報を検索するか、又は、前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日と同日若しくは当該日より前であり、かつ、当該日に最も近い日付の前記医療情報であって、前記検査値を含んだ前記医療情報を検索してよい。前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について検索された前記医療情報に含まれる前記検査値を、前記検査値の時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値として識別できるように表した前記散布図を前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【0018】
好適に、上記診察業務支援装置は、前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列から、前記検査値を含む前記医療情報を検索し、当該検索したそれぞれの医療情報に含まれる検査の信頼性に関する情報に基づいて、前記それぞれの医療情報に含まれる前記検査値を前記回帰分析処理の対象から除外する候補とするか否か判定する第4処理部を有してよい。前記第1処理部は、前記第4処理部において前記除外候補と判定された前記検査値に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成してよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、MD値などの検査値の時系列をグラフ化して表示する際に、全体の検査値の時系列から任意の一部の検査値を選択して、その近似関数のグラフを表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る診察業務支援装置の全体構成の一例を示す図である。
【図2】サーバ装置の構成の一例を示す図である。
【図3】患者データベース部に記憶される医療データの構造を説明するための図である。
【図4】検査データの構造を説明するための図である。
【図5】診察用端末装置の構成の一例を示す図である。
【図6】カルテ画面を表示する場合の処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】医師が利用する電子カルテの表示画面の一例を示す図である。
【図8】表示部の画面に表示されるMD値の散布図の一例を示す図である。
【図9】図8において指定された検査日の範囲(始点と終点)に基づき計算された回帰直線のグラフを示す図である。
【図10】検査値が所定の値に達するまでの予想年数を表示する画面の一例を示す第1の図である。
【図11】検査値が所定の値に達するまでの予想年数を表示する画面の一例を示す第1の図である。
【図12】散布図の横軸の単位を年齢に変更する操作の一例を説明するための図である。
【図13】回帰分析の対象から一部の検査値を除外する操作の一例を説明するための図である。
【図14】図13において指定された2点の検査値を除外して再計算された回帰直線のグラフを示す図である。
【図15】複数の検査日の範囲を指定して、それぞれの範囲について回帰分析処理を実行する操作の一例を説明するための図である。
【図16】図15において指定された2つの検査日の範囲における回帰直線のグラフを示す図である。
【図17】検査値に関する補足情報を画面に表示する操作の一例を説明するための図である。
【図18】検査値の時系列の傾向が変化する境界の目安を散布図において表示する例を示す図である。
【図19】検査値の時系列の傾向が変化する要因の発生日を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
【図20】時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
【図21】検査値の時系列の傾向に変化を及ぼし得る変化要因の発生日に基づいて、時系列の傾向が変化する境界の目安の検査値を判定する具体例を説明するための図である。
【図22】回帰分析の対象から除外する検査値の候補を散布図において表示する例を示す図である。
【図23】回帰分析の対象から除外する候補の検査値を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
【図24】関連する複数の検査値の散布図を並べて表示した画面の一例を示す図である。
【図25】検査値の補足情報を検査値の散布図と同一の時間軸上に並べて表示した画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本実施形態に係る診察業務支援装置の全体構成の一例を示す図である。
図1に示す診察業務支援装置は、サーバ装置1と、複数の診察用端末装置2と、検査用端末装置4と、視野検査装置5を有する。診察用端末装置2および検査用端末装置4は、通信ネットワーク3を介してサーバ装置1に接続される。
【0022】
[サーバ装置1]
サーバ装置1は、診察業務支援装置において各診察端末装置2及び検査用端末装置5が共通に利用・参照するデータを管理する装置であり、職員データベース部11と患者データベース部12を有する。
本明細書では、職員データベース部11及び患者データベース部12を総称して「データベース部」と記す場合がある。
【0023】
図2は、サーバ装置1の構成の一例を示す図である。
図2に示すサーバ装置1は、処理部101と、通信部102と、表示部103と、指示入力部104と、記憶部105と、作業メモリ106とを有する。
【0024】
通信部102は、通信ネットワーク3を介して端末装置2と通信を行うための回路であり、例えばイーサネット(登録商標)などの所定の規格に適合した通信を行うための信号処理や制御、有線や無線で伝送される信号の変調・復調、データの符号化・復号化、パケットの処理、送受信のタイミングの調整などを行う。
【0025】
表示部103は、処理部101において生成される表示信号に応じた画面を表示する。例えば表示部103は、液晶ディスプレイ、ELパネルディスプレイ、CRTなどの表示デバイスを含む。
【0026】
指示入力部104は、利用者の指示を入力するための装置であり、所定の指示入力操作に応じた指示信号を生成する。例えばキーボード、マウス、操作ボタン、キーパッド、タッチセンサなどを含む。
【0027】
記憶部105は、処理部101及び周辺ハードウェア(102〜104)の初期化・制御等に使用される低レベルのプログラム(BIOS等)や、ファイル・オペレーティング・システム、アプリケーション・プログラムなどを格納するとともに、これらのプログラムで利用されるデータを格納する。記憶部205には、例えばハードディスク、フラッシュ・メモリ等の不揮発性メモリ、DVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、磁気テープ、プログラマブルROM、マスクROMなどが用いられる。
【0028】
記憶部105は、職員データベース部11と患者データベース部12の記憶領域としてそれぞれ利用される。
職員データベース部11は、医師や看護師、検査員、事務職員などの病院職員に関する種々の情報を管理する。
患者データベース部12は、患者に関する種々の情報を管理し、特に患者の診察や治療に関する医療情報(カルテ)を管理する。
記憶部105は、本発明における記憶部の一例である。
【0029】
作業メモリ106は、処理部101のプロセッサがアクセスしてプログラムやデータを一時的に格納する比較的高速なメモリであり、例えばダイナミックRAMやスタティックRAMなどの半導体メモリを含む。
【0030】
処理部101は、サーバ装置1の全体的な動作を制御する。すなわち、通信部102における診察用端末装置2との通信や、表示部103に供給する表示信号の生成、指示入力部104における利用者からの指示の入力等を、記憶部105や作業メモリ106に格納されるプログラムに基づいて制御する。例えば処理部101は、プログラムに基づいて処理を行うプロセッサ(CPU)や、周辺ハードウェア(102〜106)を制御する回路、周辺ハードウェアとデータをやり取りするためのバス、バス制御回路(バスブリッジ回路)、キャッシュメモリなどを含む。
【0031】
この処理部101は、機能的なブロックとして、職員データベース部11に関わる処理を実行する職員データベース処理部111と、患者データベース部12に関わる処理を実行する患者データベース処理部112を有する。
【0032】
職員データベース処理部111は、職員に関する種々のデータを所定のデータ構造で記憶部105に格納するとともに、職員のデータへのアクセスを求める診察用端末装置2からの要求が通信部102において受信されると、要求に応じてデータの検索、読み出し、書き込み、並び替え等を実行する。
同様に、患者データベース処理部112は、患者に関する種々のデータを所定のデータ構造で記憶部105に格納するとともに、患者のデータへのアクセスを求める診察用端末装置2からの要求が通信部102において受信されると、この要求に応じた検索等の処理を実行する。
【0033】
図3は、患者データベース部12に記憶される医療データの構造を説明するための図である。
患者データベース部12は、患者に関する種々の情報を記憶しており、その一部として、患者の診察や治療に関する医療データ52を記憶する。医療データ52は、患者の識別データ42と、医療行為が実施された日付51に関連付けられている。
医療データ52は、例えば図3に示すように、担当医師の識別データ41と、医学検査の結果に関する検査データ53と、医師の診察所見に関する所見データ54と、医師が処方した薬剤並びに医師の指示に関する処方データ55と、手術に関する情報を記録した手術記録データ56とを含んでいる。ただし、医療データ52は、これらのデータを全て含んでいるとは限らず、一部の医療行為(検査,手術など)が実施されなかった場合は、その実施されなかった医療行為のデータ(検査データ53,手術記録データ56など)を含まない。
本明細書では、1回分(1日付分)のカルテに対応する1つの医療データ52の内容を単に「カルテ」と記す場合がある。
【0034】
図4は、検査データ53のデータ構造を説明するための図である。
検査データ53は、患者に対して実施された検査結果のデータ533を含む。検査結果のデータ533は、例えば文字(数値)や画像などのデータであり、検査種別コード531と付帯情報532に関連付けられている。検査種別コード531は、患者に実施された検査の種別を示す。付帯情報532は、検査日、検査を担当した検査員の識別データ、検査員が記録した連絡事項、検査の信頼性に関する評価のランクなど、検査に関する付帯的な情報を含む。
【0035】
[診察用端末装置2]
図5は、診察用端末装置2の構成の一例を示す図である。
図5に示す診察用端末装置2は、処理部201と、通信部202と、表示部203と、指示入力部204と、記憶部205と、作業メモリ206とを有する。
表示部203は、本発明における表示部の一実施形態である。
指示入力部204は、本発明における指示入力部の一実施形態である。
【0036】
通信部202は、通信ネットワーク3を介してサーバ装置1と通信を行うための回路であり、例えば上述した通信部102と同様の構成を有する。
【0037】
表示部203は、処理部201において生成される表示信号に応じた画面を表示する装置であり、例えば上述した表示部103と同様の構成を有する。
【0038】
指示入力部204は、利用者の指示を入力するための装置であり、例えば上述した指示入力部104と同様の構成を有する。
【0039】
記憶部205は、処理部201及び周辺ハードウェア(202〜204)の初期化・制御等に使用される低レベルのプログラム(BIOS等)や、ファイル・オペレーティング・システム、アプリケーション・プログラムなどを格納するとともに、これらのプログラムで利用されるデータを格納する。記憶部205は、例えば上述した記憶部105と同様の構成を有する。
【0040】
作業メモリ206は、処理部201のプロセッサがアクセスしてプログラムやデータを一時的に格納する比較的高速なメモリであり、例えば上述した作業メモリ106と同様の構成を有する。
【0041】
処理部201は、診察用端末装置2の全体的な動作を制御する回路であり、記憶部205や作業メモリ206に格納されるプログラムに基づいて周辺ハードウェア(202〜204)の制御やデータ処理を行う。例えば処理部201は、例えば上述した処理部101と同様の構成を有する。
【0042】
この処理部201は、機能的なブロックとして、データベース要求処理部210と、表示処理部211と、回帰分析処理部212と、変化要因判定処理部231と、除外候補判定処理部214を有する。
表示処理部211は、本発明における第1処理部の一例である。
回帰分析処理部212は、本発明における第2処理部の一例である。
変化要因判定処理部213は、本発明における第3処理部の一例である。
除外候補判定処理部214は、本発明における第4処理部の一例である。
【0043】
データベース要求処理部210は、指示入力部204において入力される利用者の指示に応じて、サーバ装置1の職員データベース部11や患者データベース部12にアクセスし、データの検索や読み出し、書き込み等を行う。データベース要求処理部210は、職員データベース部11や患者データベース部12から読み出したデータを、一時的に作業メモリ206や記憶部205の一方若しくは両方に格納する。
【0044】
表示処理部211は、指示入力部204において入力される利用者の指示に応じて、表示部203に映し出す画像の表示信号を生成する。例えば、表示処理部211は、指示入力部204において所定の指示が入力されたことを示す指示信号が入力されると、職員データベース部11や患者データベース部12などから読み出されるデータに応じた画像(カルテの情報、検査結果のグラフなど)を表示部203に表示する表示信号を生成する。
なお、本明細書では、表示処理部211が表示部203に画像を表示する表示信号を生成することを、単に「表示処理部211が表示部203に画像を表示する」と記載する場合がある。
【0045】
回帰分析処理部212は、患者データベース部12に記憶される検査値の時系列に応じた散布図が表示部203において表示されている場合において、この散布図における複数の検査値から一部の検査値を選択して、当該一部の検査値に基づいて近似関数のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、当該一部の検査値の時系列に対して回帰分析処理を実行し、近似関数の定数を算出する。
【0046】
例えば、回帰分析処理部212は、検査日若しくは検査日に対応する数値(患者の年齢など)の範囲を指定して、この指定範囲に属する検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、検査日若しくは検査日に対応する数値が上記の指定範囲に属する検査値の時系列に対して最小二乗法などの回帰分析処理を実行する。
また、例えば回帰分析処理部212は、表示部203に表示される散布図の複数の検査値から少なくとも1つの検査値を指定して、当該指定した検査値を除外した残りの検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、この残りの検査値の時系列に対して回帰分析処理を実行する。
表示処理部211は、回帰分析処理部212による回帰分析処理の結果として算出された近似関数の定数(多項式の係数など)に基づいて、この近似関数のグラフを表示部203に表示する。
【0047】
変化要因判定処理部213は、患者データベース部12に記憶される医療データ52(図3)の時系列において前後に連続する2つの医療データ52をそれぞれ比較し、当該比較結果に基づいて、表示部203に散布図として表示される検査値(MD値など)の時系列の傾向(例えばグラフの傾き)に変化を及ぼし得る要因(変化要因)が発生した日を判定する。
【0048】
例えば、変化要因判定処理部213は、医療データ52(図3)の時系列において連続する2つの医療データ52に含まれる処方薬の情報を比較し、当該比較結果に基づいて、処方薬が変更された日を上記変化要因が発生した日と判定する。
また、変化要因判定処理部213は、患者データベース部12に記憶される医療データ52の時系列において所定の手術若しくは治療が行われたことを示す情報が含まれた医療データ52を検索し、当該検索結果に基づいて、手術若しくは治療行為が実施された日を上記変化要因が発生した日と判定する。
表示処理部211は、変化要因判定処理部213において上記変化要因が発生したと判定された日に関する情報を表示部203に表示する。この情報は、回帰分析処理対象の検査値の範囲を決める際の目安となる。
【0049】
除外候補判定処理部214は、患者データベース部12に記憶される医療データ52(図3)の時系列から所定の検査値を含む医療データ52を検索し、当該検索したそれぞれの医療データ52に含まれる検査の信頼性に関する情報に基づいて、当該検索したそれぞれの医療データ52に含まれる検査値を回帰分析処理の対象から除外する候補とするか否か判定する。例えば、検査の信頼性が所定の基準以下であることを示す情報が医療データ52に含まれている場合、除外候補判定処理部214は、この医療データ52に属する検査値を回帰分析処理対象からの除外候補と判定する。
表示処理部211は、除外候補判定処理部214において除外候補と判定された検査値に関する情報を表示部203に表示する。この情報は、回帰分析処理対象から除外する検査値を決める際の目安となる。
【0050】
ここで、上述した構成を有する本実施形態に係る診察業務支援装置の動作について説明する。
【0051】
図6は、本実施形態に係る診察業務支援装置においてカルテ画面を表示する場合の処理を説明するためのフローチャートである。
医師は、患者の電子カルテを開く場合、まず診察用端末装置2の指示入力部204においてサーバ装置1にログインするための操作を行う。処理部201は、この操作に応じた指示信号を入力すると、サーバ装置1へログインする処理を行う(ST100)。この際、処理部201は、指示入力部204から医師のID(医師識別データ41)を入力し、記憶部205若しくは作業メモリ206(以下、これらを総称して「メモリ」と記す場合がある)に格納する。
【0052】
サーバ装置1にログインすると、データベース要求処理部210は、メモリに格納した医師識別データ41をサーバ装置1の職員データベース部11に対して送信し、この医師識別データ41に関連付けられた環境設定(画面表示のカスタマイズ情報など)に関するデータを職員データベース部11から読み出す(ST105)。
【0053】
また、ログイン後、表示処理部211は、患者を特定するための情報(例えば患者識別データ42)の入力を求める画面を表示部203に表示する。この画面に促されて、患者を特定する情報が指示入力部204に入力されると(ST110)、データベース要求処理部210は、入力した情報に基づいて、患者の固有の情報(氏名、年齢、性別等)と医療データ52を患者データベース部12に要求し、要求に応じて取得したデータをメモリに格納する(ST115)。
【0054】
なお、患者データベース部12から取得する医療データ52は、該当する患者についての全データを取得しても良いし、一部に限定してもよい。より多くの医療データ52をメモリに格納しておくことで、患者データベース部12からの読み出し処理に伴う遅延を減らせるので、表示部203における表示処理を高速化できる。ただし、メモリの容量に制限がある場合は、例えば取得する診察日の日数に上限を設定して、最新の医療データ52を含んだ上限日数以下の医療データ52を取得するようにしてもよい。
【0055】
処理部201は、患者データベース部12から必要なデータを取得すると、取得したデータに基づいて、表示部203の画面に電子カルテを表示する(ST120)。
【0056】
図7は、本発明の実施形態に係る診察業務支援装置において医師が利用する電子カルテの表示画面の一例を示す図である。本実施形態に係る診察業務支援装置においては、図7に示すように、同一患者の複数診察日のカルテを日付順に並べて画面上に表示する。
【0057】
図7において、「A1」及び「A1−1」,「A1−2」はそれぞれ1回の診察に係るカルテの表示領域を示す。領域A1が今回(最新)のカルテを示し、領域A1−1が前回(1回前)のカルテを示し、領域A1−2が前々回(2回前)のカルテを示す。最新のカルテを含む一連の3日分のカルテが横方向に並んで表示される。
そして、各カルテの表示領域(A1,A1−1,A1−2)には、検査結果に関する情報が表示される領域(A11,A11−1,A11−2)と、医師の診察所見に関する情報が表示される領域(A12,A12−1,A12−2)と、処方薬の情報や医師の指示に関する情報が表示される領域(A13,A13−1,A13−2)がそれぞれ設けられている。
また、このカルテ表示領域の上側には、患者に関する固有の情報(患者ID、氏名、年齢、性別、住所、禁忌薬剤、アレルギーなど)を表示するための横長に延びた表示領域A2が設けられている。
更に、領域A2の右側には、他の情報の画面(手術歴の画面、処方歴の画面、関係連絡先の画面など)へ遷移するためのボタン等が配置される領域A3が設けられている。
このように、最新のカルテを含む一連の複数診察日のカルテが日付順に並んで一挙に表示されるため、紙のカルテやこれを模した従来の電子カルテのようにクリックやスクロール等の操作を行うことなく、一目で患者の状態の経過を把握することができる。
【0058】
図7に示すような電子カルテの画面を表示部203において表示すると、処理部201は、指示入力部204において利用者の指示入力操作により生成される指示信号の入力を待つ(ST125)。指示信号が入力されると、処理部201は、これに応じて画面を更新する処理やデータベース部(11,12)へのデータ記録処理などを実行し(ST130)、実行後に再び指示入力待ち状態となる(ST125)。
【0059】
例えば本実施形態の一例において、表示部203の画面には、指示入力部204としてタッチセンサが設けられている。画面の表面にペン等が接触若しくは近接したことをタッチセンサが検出すると、処理部201は、そのペン等の接触位置(若しくは近接位置)に応じて種々の処理を行う。
【0060】
具体的には、例えば図7に示すように3日分のカルテが横に並んで表示された画面において、カルテとカルテの境界を越えるようにペン等の接触位置が左右にスライドされると、処理部201は、右端に位置する最新のカルテの表示を固定した状態で、中央と左端に位置する2つのカルテの表示を更新する。すなわち、処理部201は、連続する2日分のカルテを、時系列の前若しくは後に1日だけシフトさせた2日分のカルテに置換し、置換したカルテを日付順に並べて画面の中央および左端に表示する。これにより、ページをめくるような感覚で画面のカルテを日付順にシフトさせながら、過去2回分のカルテと最新のカルテとを一画面上で比較することができる。
【0061】
また、検査結果の表示領域(A11,A11−1,A11−2)に含まれる検査結果の画像やテキスト(数値)がペン等でクリックされると、処理部201は、クリックされた検査結果の画像を拡大表示したり、クリックされた検査値(例えばMD値)の時系列をグラフ化した新たなウィンドウを生成して画面上に表示する(図8等)。
【0062】
指示入力部204においてログオフを指示する信号が生成された場合(例えば画面上のログオフ用のボタンがペン等でタッチされた場合)、処理部201は所定のログオフ処理を実行して動作を終了する(ST135)。
【0063】
次に、患者データベース部12に記憶された患者の医療データ52に基づいて、検査値の時系列のグラフを表示部203の画面上に表示する処理について説明する。
【0064】
例えば上述した電子カルテの画面上で特定の検査値(MD値など)をペン等でクリックする操作が行われ、これにより当該検査値の時系列から散布図を表示するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、データベース要求処理部210は、表示中の患者について患者データベース部12に記録される一群の医療データ52(図3)の中から、クリックされた検査値の時系列を取得する。表示処理部211は、患者データベース部12から取得された検査値の時系列に基づいて、検査値の経時的な変化を表したグラフを表示部203に表示する。例えば表示部211は、横軸が検査日を示し、縦軸が検査値を示す散布図を表示部203に表示する。
【0065】
図8は、表示部203の画面に表示されるMD値の散布図61の一例を示す図である。
例えば、図7に示す電子カルテの画面上でMD値(検査値)の表示領域をペン等でクリックすると、電子カルテの前面において新規のウィンドウ60が開き、その中に、図8に示す散布図61が表示される。散布図61の横軸はハンフリー視野計による視野検査を行った日を示し、縦軸はMD値(単位dB)を示す。
【0066】
本実施形態に係る診察業務支援装置において散布図61に近似関数(例えば一次関数,回帰直線)のグラフを表示する場合、例えば図8に示すように、ペン80を使って横軸(検査日)の範囲を指定する。具体的には、例えばペン80の先を散布図61における目的のMD値の点に接触させ、この接触状態を一定時間保持する操作や、ペン80に備わるボタンをクリックする操作などにより所定のメニューを画面上に表示させ、このメニューにおいて検査値を「始点」若しくは「終点」に設定する操作を行う。
【0067】
上述のような操作により検査日の範囲(始点と終点)を指定して、当該範囲に属する検査値(MD値)についての回帰直線のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部104(タッチセンサ)において生成されると、データベース要求処理部210は、指定された検査日の範囲に属する検査値の時系列を患者データベース部12から読み出す。回帰分析処理部212は、患者データベース部12から読みだされた検査値の時系列に対して最小二乗法などの回帰分析処理を実行し、回帰直線の定数(傾き,切片)を算出する。表示処理部211は、算出された回帰直線の定数に基づいて、回帰直線のグラフを表示部203に表示する。
【0068】
図9は、図8において指定された検査日の範囲(始点と終点)に基づき計算された回帰直線のグラフを示す図である。表示処理部211は、例えば図9に示すように、回帰分析処理部212で計算された回帰直線62を散布図61の上に重ねて表示するとともに、回帰直線62の傾きに関する情報63を散布図61の隅に表示する。
【0069】
また表示処理部211は、例えば図9に示すように、MD値が所定の値(−15dB,−25dB)に達するまでの年数の計算を実行するボタン64,65を散布図の横に表示する。
図10において示すように、ペン80の先で「−15dB」と書かれたボタン64に触れたことを示す指示信号が指示入力部104(タッチセンサ)において生成されると、表示処理部211は、回帰分析処理部212で算出された近似関数(回帰直線)に基づいて、MD値が「−15dB」に達する日を求め、現在からその日までの年数を算出する。表示処理部211は、算出した年数(図10の例では9年)の情報66を画面に表示する。MD値「−15dB」は、生活に不便を生じるようになる目安を表す。
他方、図11において示すように、ペン80の先で「−25dB」と書かれたボタン65に触れたことを示す指示信号が指示入力部104(タッチセンサ)において生成されると、表示処理部211は、回帰分析処理部212で算出された近似関数(回帰直線)に基づいて、MD値が「−25dB」に達する日を求め、現在からその日までの年数を算出する。表示処理部211は、算出した年数(図11の例では19年)の情報66を画面に表示する。MD値「−25dB」は、社会的失明状態の目安を表す。
【0070】
なお図10,図11の例では横軸を検査日としているが、図12において示すように、横軸を患者の年齢で表示してもよい。例えば、ペン80の先を散布図61の横軸に接触させた状態で、この接触状態を一定時間保持させたり、ペン80に備わるボタンをクリックしたりする操作が指示入力部104(タッチセンサ)において入力されると、表示処理部211は、横軸の各種設定を行うためのメニュー75を画面に表示する。このメニューにおいて横軸の単位が患者の年齢に設定されると、表示処理部211は、散布図に表示する各検査値の日付のデータと、患者データベース部12から取得した患者の生年月日のデータとに基づいて、横軸の目盛りが検査日から年齢に変更された散布図61を構成し、画面に表示する。この場合、ボタン64,65がペン80で操作されると、表示処理部211は、回帰分析処理部212で算出された回帰直線に基づいて、MD値が所定の値(−15dB、−25dB)に達するときの患者の年齢を算出し、その情報66を画面に表示する。図10の例では、MD値「−15dB」に到達する年齢が60才と予想されている。
【0071】
次に、回帰分析の対象から一部の検査値を除外する処理について説明する。
【0072】
本実施形態に係る診察業務支援装置において散布図61に近似関数(回帰直線)のグラフを表示する場合、例えば図13に示すように、ペン80を使って一部の検査値を回帰分析の対象から除外することができる。具体的には、例えばペン80の先を除外対象のMD値の点に接触させた状態で、この接触状態を一定時間保持する操作や、ペン80に備わるボタンをクリックする操作などにより所定のメニューを画面上に表示させ、このメニューにおいて当該MD値を回帰分析の対象から除外する操作を行う。
【0073】
表示処理部211は、ペン80の操作によって除外するように指定された検査値を、他の検査値とは異なる態様で画面に表示する。例えば図13において、除外するように指定された検査値の点はグレーの色に塗りつぶされた三角形であり、他の検査値の点は黒色の線で描かれた三角形である。
【0074】
幾つかの除外対象の検査値(MD値)を指定して、当該指定した検査値を除く残りの検査値についての回帰直線のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部104(タッチセンサ)において生成されると、回帰分析処理部212は、除外指定された検査値を除く残りの検査値の時系列に対して最小二乗法などの回帰分析処理を再度実行し、回帰直線の定数(傾き,切片)を算出する。表示処理部211は、算出された回帰直線の定数に基づいて、回帰直線のグラフを表示部203に表示する。
図14は、図13において指定された2点の検査値(MD値)を除外して再計算された回帰直線のグラフを示す図である。図14に示す回帰直線62は、図13に比べてやや傾きが小さくなっている。
【0075】
次に、散布図の横軸(検査日,年齢等)の範囲を複数指定して、それぞれの範囲についての近似関数(回帰直線)を計算する処理について説明する。
【0076】
処方薬の変更や手術などを行うことによって症状が変化すると、検査値の時系列の傾向が不連続に変化することがある。例えば緑内障の場合、年月の経過とともにMD値が低下(視野欠損が増大)していくが、点眼薬の変更や手術などをきっかけに症状が改善すると、MD値の低下が緩やかになる(傾きが小さくなる)ことがある。本実施形態に係る診察業務支援装置では、検査値の時系列の傾向が不連続に変化する場合でも適切な近似関数で検査値の傾向を表せるようにするため、利用者が指定した検査日(年齢)の範囲毎に回帰分析処理を行い、各範囲の近似関数のグラフを表示する。
【0077】
図15は、複数の検査日の範囲を指定して、それぞれの範囲について回帰分析処理を実行する操作の一例を示す図である。図15の例では、始点と終点のセットが2組(始点1及び終点1、始点2及び終点2)設定される。ペン80の操作によって所望の検査値を始点又は終点に設定する方法は、図8の場合と同様である。
図15に示すように複数の検査日の範囲(始点1及び終点1、始点2及び終点2)を指定して、各範囲の回帰直線のグラフを表示するように指示する指示信号が指示入力部104(タッチセンサ)において生成されると、回帰分析処理部212は、指定された各範囲の検査値の時系列に対して回帰分析処理を行い、回帰直線の定数(傾き,切片)をそれぞれ算出する。表示処理部211は、算出された各範囲の回帰直線の定数に基づいて、各範囲の回帰直線のグラフを表示部203に表示する。
【0078】
図16は、図15において指定された2つの検査日の範囲における回帰直線62−1,62−2のグラフを示す図である。図16の例では、後半の範囲における回帰直線62−2の傾きが前半の範囲における回帰直線61−1に比べて緩やかになっていることから、症状の進行が抑制されていることが示唆される。
【0079】
次に、散布図の各検査値に関する補足的な情報を画面に表示する処理について説明する。
【0080】
回帰分析の対象とする検査値の範囲を定める場合や(図8,図15)、回帰分析の対象から除外すべき検査値を決める場合(図13)において、検査値に関する補足的な情報が必要になることがある。例えば、検査当日のカルテの情報や、検査の前後における処方薬の情報、検査員が記録した検査の信頼性に関する情報などが、回帰分析対象の範囲を定めたり、除外すべき検査値を決める際の参考になる。本実施形態に係る診察業務支援装置では、ペン80の操作によって散布図上の任意の検査値を指定することにより、その検査値に関連する医療データ52(図3)から必要な補足情報を画面上に表示することができる。
【0081】
図17は、検査値に関する補足情報を画面に表示する操作の一例を示す図である。ペン80の先を散布図61における所望の検査値の点に接触させた状態で、この接触状態を一定時間保持させたり、ペン80に備わるボタンをクリックしたりする操作が指示入力部104(タッチセンサ)において入力されると、表示処理部211は、この検査値に関する補足情報を選択するためのメニュー67を画面に表示する。このメニュー67では、例えば検査データ53(図4)の付帯情報532に記録される測定環境の情報や、測定の信頼性に関する情報、検査結果533に記録される各種の検査結果の情報、医療データ52(図3)の検査データ53,所見データ54,処方データ55からなるカルテ(図7)の情報、手術記録データ56に含まれる手術の情報、処方データ55に含まれる処方薬の情報などを補足情報として選択することができる。
メニュー67において補足情報が選択されると、表示処理部211は、ペン80の操作により指定された一の検査値と同一の医療データ52(図3)に含まれる情報から、このメニュー67において選択された補足情報を取得して画面上に表示する。例えば表示処理部211は、選択された補足情報に関する新規のウィンドウを画面上に表示する。
【0082】
次に、回帰分析対象の検査値の範囲を決定する場合(図8,図15)の参考の情報として、検査値(MD値)の時系列の傾向が変化する境界の目安を表示する処理について説明する。
【0083】
図18は、検査値(MD値)の時系列の傾向(グラフの傾きなど)が変化する境界の目安を散布図61において表示する例を示す図である。
表示処理部211は、例えば図18に示すように、検査値(MD値)の時系列の傾向が変化する検査値(変化点)の候補を表示するためのボタン68を散布図61のウィンドウ60に表示する。ペン80によってこのボタン68が押されたことを示す指示入力部204(タッチセンサ)の指示信号が生成されると、変化要因判定処理部213は、患者データベース部12から取得された医療データ52(図3)の時系列において前後に連続する2つの医療データ52をそれぞれ比較する。変化要因判定処理部213は、この比較処理によって、医療データ52に含まれる所定の情報に変化が生じた日を検索し、これを検査値(MD値)の時系列の傾向に変化を及ぼし得る要因(変化要因)が発生した日と判定する。
【0084】
例えば、変化要因判定処理部213は、前後に連続する2つの医療データ52に含まれる処方データ55(図3)を比較し、当該比較結果に基づいて、処方薬が変更された日を変化要因の発生日と判定する。すなわち、前後に連続する2つの医療データ52において処方データ55に記録される処方薬が一致しない場合、この2つの医療データ52における後の医療データ52に関連付けられた日付を変化要因の発生日と判定する。
【0085】
また、変化要因判定処理部213は、患者データベース部12から取得された医療データ52の時系列において所定の手術や治療が行われたことを示す手術記録データ56(図3)が含まれた医療データ52を検索し、当該検索結果に基づいて、所定の手術や治療が行われた日を変化要因の発生日と判定する。
【0086】
図19は、検査値の時系列の傾向が変化する要因の発生日を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
【0087】
変化要因判定処理部213は、患者データベース部12から取得された医療データ52の時系列から、日付順に一の医療データ52を選択する(ST200)。例えば、変化要因判定処理部213は、時系列において2番目に古い日付の医療データ52から日付順に一ずつ医療データ52を選択する。
【0088】
変化要因判定処理部213は、ステップST200で選択した医療データ52に含まれる処方データ55と、この医療データ52より1つ前の医療データ52に含まれる処方データ55とを比較する(ST205)。この比較の結果、処方薬が一致していない場合(ST210)、変化要因判定処理部213は、ステップST200で選択した医療データ52の日付を変化要因の発生日と判定する(ST220)。また、変化要因判定処理部213は、ステップST200で選択した医療データ52に所定の手術若しくは治療に関する手術記録データ56(図3)が含まれるか否か判定し(ST215)、該当する手術記録データ56が含まれる場合、ステップST200で選択した医療データ52の日付を変化要因の発生日と判定する(ST220)。
ステップST205〜ST220の処理を行うと、変化要因判定処理部213は時系列の最後の医療データ52まで到達したか判定し(ST225)、最後の医療データ52まで到達していなければ次の医療データ52を選択して(ST230)、ステップST205以降の処理を繰り返す。
【0089】
上記のようにして変化要因の発生日を特定すると、次に変化要因判定処理部213は、検査値の時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値を特定する。すなわち、変化要因判定処理部213は、変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日より後であり、かつ、当該日に最も近い日付の医療データ52であって、検査値(MD値)を含んだ医療データ52を検索する。
【0090】
表示処理部211は、変化要因判定処理部213において検索された医療データ52に含まれる検査値(MD値)を、上記境界の目安となる検査値として識別できるように表した散布図を構成し、表示部203に表示する。例えば図18の散布図61の例において、表示処理部211は、上記境界の目安となる検査値を菱形状のマーク70で囲むことで、他の検査値から識別できるようにしている。
【0091】
変化要因判定処理部213において特定される検査値は、変化要因発生日の後に得られる最初の検査値であり、変化要因発生日の後一定の傾向で推移する検査値の時系列の先頭であることが見込まれる。そのため、変化要因判定処理部213において特定される検査値は、図15に示すような回帰分析範囲の設定を行う際の「始点」の候補となる。利用者は、図18の例に示すように他の検査値から識別可能に表示された「始点」の候補を参考にすることができるため、適切な回帰分析の範囲を設定し易くなる。
【0092】
図20は、変化要因判定処理部213において時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
変化要因判定処理部213は、図19のフローチャートにおいて1以上の変化要因発生日を特定した場合、その中から一の変化要因発生日を選択する(ST300)。例えば、変化要因判定処理部213は、最も古い日付のものから日付順に一の変化要因発生日を選択する。
【0093】
変化要因判定処理部213は、患者データベース部12から取得された医療データ52の時系列の中から、ステップST300で選択した変化要因発生日より後の日付に関連付けられた医療データ52(図3)を、最も古い日付に関連付けられたものから日付順に選択する(ST305)。
【0094】
変化要因判定処理部213は、ステップST305において選択した医療データ52の検査データ53に所定の検査値(MD値)が含まれているか否か判定する(ST310)。選択した医療データ52に所定の検査値が含まれる場合、変化要因判定処理部213は、この検査値を、時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値であると判定する(ST315)。他方、選択した医療データ52に所定の検査値が含まれない場合、変化要因判定処理部213は、現在選択中の医療データ52が時系列の最後の医療データ52であるか否か判定し(ST320)、時系列の最後の医療データ52でなければ、ステップST305の処理に戻る。
ステップST315において時系列の傾向が変化する境界の目安の検査値を判定した場合、または、ステップST320においてが時系列の最後の医療データ52を選択していると判定した場合、変化要因判定処理部213は、ステップST305において全ての変化要因発生日を選択したか否か判定する(ST325)。まだ選択していない変化要因発生日がある場合、変化要因判定処理部213は、その変化要因発生日を選択して(ST330)ステップST305の処理に戻る。
【0095】
図21は、検査値の時系列の傾向に変化を及ぼし得る変化要因の発生日に基づいて、時系列の傾向が変化する境界の目安の検査値を判定する具体例を説明するための図である。
【0096】
図21の例では、所定の手術が実施された2007年5月15日と、点眼薬が「A」から「B」へ変更された2008年3月22日が、それぞれ変化要因の発生日として判定される。
2007年5月15日の変化要因発生日の後、最初に検査値が得られるのは2007年7月30日であるため、この日に得られた検査値が上記境界の目安として判定される。
また、2008年3月22日の変化要因発生日の後、最初に検査値が得られるのは2009年3月10日であるため、この日に得られた検査値が上記境界の目安として判定される。2008年3月22日の変化要因発生日に得られた検査値は、境界の目安として判定されない。
【0097】
次に、回帰分析の対象から除外する検査値の候補を表示する処理について説明する。
【0098】
図22は、回帰分析の対象から除外する検査値の候補を散布図61において表示する例を示す図である。
表示処理部211は、例えば図22に示すように、回帰分析の対象から除外する検査値(除外点)の候補を表示するためのボタン69を散布図61のウィンドウ60に表示する。ペン80によってこのボタン69が押されたことを示す指示入力部204(タッチセンサ)の指示信号が生成されると、除外候補判定処理部214は、患者データベース部12から取得された医療データ52(図3)の時系列から、散布図61において表示する検査値(MD値)を含んだ医療データ52を検索する。除外候補判定処理部214は、検査値(MD値)を含んだ医療データ52を検索すると、当該検索したそれぞれの医療データ52に含まれる検査の信頼性に関する情報に基づいて、当該検索したそれぞれの医療データ52に含まれる検査値を回帰分析処理の対象から除外する候補とするか否か判定する。例えば、検査を担当した検査員が検査結果の信頼性の評価ランクについて記録した情報が検査データ53の付帯情報532(図4)に含まれる場合、この信頼性のランクが所定の基準以下である検査値を回帰分析処理対象からの除外候補と判定する。
【0099】
表示処理部211は、除外候補判定処理部214において除外候補と判定された検査値に関する情報を表示部203に表示する。例えば図22の散布図61の例において、表示処理部211は、回帰分析対象からの除外候補の検査値を円形状のマーク71で囲むことで、他の検査値から識別できるようにしている。
【0100】
図23は、回帰分析の対象から除外する候補の検査値を判定する処理について説明するためのフローチャートである。
【0101】
除外候補判定処理部214は、患者データベース部12から取得された医療データ52の時系列から、日付順に一の医療データ52を選択する(ST400)。例えば、変化要因判定処理部213は、時系列において最も古い日付の医療データ52から日付順に一ずつ医療データ52を選択する。
【0102】
除外候補判定処理部214は、ステップST400において選択した医療データ52の検査データ53に所定の検査値(MD値)が含まれるか否か判定する(ST405)。検査データ53に所定の検査値が含まれる場合、除外候補判定処理部214は、この検査データ53の付帯情報532(図4)に含まれる検査結果の信頼性についての評価ランクを取得し(ST410)、信頼性の評価ランクが所定の基準以下であるか否か判定する(ST415)。信頼性の評価ランクが所定の基準以下である場合、除外候補判定処理部214は、この検査値を回帰分析対象から除外する候補として判定する(ST420)。
ステップST405〜ST420の処理を行うと、除外候補判定処理部214は時系列の最後の医療データ52まで到達したか判定し(ST425)、最後の医療データ52まで到達していなければ次の医療データ52を選択して(ST430)、ステップST405以降の処理を繰り返す。
【0103】
以上説明したように、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、表示部203に表示される散布図の複数の検査値から一部の検査値を選択するように指示する指示信号が指示入力部204において生成されると、当該一部の検査値に対して回帰分析処理が実行され、この回帰分析処理の結果として算出された近似関数の定数に基づいて、当該一部の検査値についての近似関数のグラフが表示部203に表示される。
これにより、散布図における全体の検査値から任意の一部の検査値を選択して、その近似関数のグラフを表示することができるため、治療の効果などに応じて検査値の時系列の傾向が不連続に変化する場合でも、患者の病状をより適切に表した近似関数をグラフを作成することができる。
【0104】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、散布図における検査日(若しくは年齢等)の範囲(始点,終点)を指定することによって、回帰分析処理の対象とする検査値の範囲を簡単に指定できる。例えば、表示部203の画面に接触若しくは近接する物体を検知するタッチセンサ(指示入力部204)を用いて始点と終点の検査値をそれぞれ指定することにより、回帰分析処理の対象範囲を簡単に指定できる。
【0105】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、散布図における検査値を個別に指定することによって、回帰分析処理の対象から除外する検査値を簡単に指定することができる。例えば、タッチセンサ(指示入力部204)を用いて画面上の検査値を直接指定することにより、回帰分析処理の除外対象を簡単に指定できる。
【0106】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、散布図における検査値を個別に指定することによって、その検査値に関連する補足情報(検査に関する情報、診察に関する情報、治療に関する情報、手術に関する情報、処方薬に関する情報など)を表示部203の画面に簡単に表示できる。これにより、回帰分析処理の対象とする検査日等の範囲を決める場合や、回帰分析処理の対象から除外する検査値を決める場合に必要な情報を表示部203の画面上で簡単に確認できる。
【0107】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、患者データベース部12に記憶される医療データ52の時系列において前後に連続する2つの医療データ52がそれぞれ比較され、当該比較結果に基づいて、検査値の時系列の傾向に変化を及ぼし得る要因(変化要因)の発生日が判定され、その情報が表示部203に表示される。これにより、回帰分析処理の対象とする検査値の範囲を決める際の参考情報が得られるため、適切な近似関数のグラフを得やすくなり、診察業務の効率を向上できる。
【0108】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、散布図の各検査値について記録された検査結果の信頼性に関する情報に基づいて、所定の信頼性の基準に達しない検査値が回帰分析処理対象からの除外候補の検査値として判定される。これにより、回帰分析処理対象から除外する検査値を決める際の参考情報が得られるため、適切な近似関数のグラフを得やすくなり、診察業務の効率を向上できる。
【0109】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、複数のカルテを診察日順に並べて表示することから、複数のカルテを参照する際にクリックやスクロール等の特別な操作が不要になるので、診察業務の効率を高めることができる。
【0110】
また、本実施形態に係る診察業務支援装置によれば、診察において必ず必要となる最新のカルテの表示を固定した状態で過去のカルテの表示を変更できるようにしているため、必要なカルテを画面に表示させるためのクリックやスクロール等の操作を減らすことができる。
【0111】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、他の種々のバリエーションを含んでいる。
【0112】
上述した実施形態では、回帰分析処理により求める近似関数の一例として一次関数(回帰直線)を例に挙げているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の種々の近似関数を求める場合にも適用可能である。
【0113】
上述した実施形態では、変化要因判定処理部213において検査値の時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値を特定する場合に、変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日より後であり、かつ、当該日に最も近い日付の医療データ52であって、検査値を含んだ医療データ52が検索されるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、上述した実施形態では、変化要因が発生した後における一連の検査値の先頭を「境界の目安」として判定しているが、本発明の他の実施形態では、変化要因の発生日以前における一連の検査値の末尾を「境界の目安」として判定してもよい。
例えば、変化要因判定処理部213は、変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日と同日若しくは当該日より前であり、かつ、当該日に最も近い日付の医療データ52であって、検査値を含んだ医療データ52を検索し、この医療データ52に含まれる検査値を「境界の目安」として判定してもよい。具体的には、図20のフローチャートにおけるステップST305において、変化要因判定処理部213は、変化要因発生日以前の一連の医療データ52を最も新しい医療データ52から日付順に選択すればよい。この場合、変化要因判定処理部213において特定される検査値は、図15に示すような回帰分析範囲の設定を行う際の「終点」の候補となる。
【0114】
上述した実施形態では、変化要因判定処理部213において変化要因の発生日が判定されると、この発生日に基づいて特定された上記「境界の目安」の検査値を識別するマーク等が画面に表示されるが(図18,図22)、本発明はこれに限定されない。
本発明の他の実施形態では、変化要因判定処理部213においての判定された変化要因の発生日に関する他の種々の情報を表示部203において表示してもよい。例えば、表示処理部211は、散布図の横軸上やその近傍に、変化要因の発生日を示すマーク(矢印など)を表示してよい。
また、表示処理部211は、変化要因の発生日に付帯する情報として、変更前の処方薬と変更後の処方薬の情報や、当該変化要因の発生日に実施された手術等の情報など、変化要因の内容に関する情報を表示部203に表示してもよい。例えば、変化要因の発生日を示す上述したマークの上にペン80を置いた状態で所定時間以上経過したり、その状態でペン80のボタンがクリックされたりしたことを示す指示信号が指示入力部204(タッチセンサ)において生成されると、表示処理部211は、付帯情報が記載されたポップアップウィンドウを表示部203に表示してよい。ポップアップウィンドウには、例えば、処方薬の変更について「処方薬A→処方薬B」などの具体的変更内容を表示してもよいし、実施された手術の術式などを表示してもよい。
【0115】
上述した実施形態では、検査値の時系列に基づく散布図を単独で表示する例を挙げているが、本発明はこれに限定されない。
本発明の他の実施形態では、関連性のある複数の検査値の時系列の散布図を並べて表示してもよい。例えば表示処理部211は、図24に示すように、MD値の散布図61と並べて眼圧の散布図72を表示してもよい。
また、本発明の他の実施形態では、検査値の時系列の散布図とともに、補足的な情報を散布図と同じ時間軸上に並べて表示してもよい。例えば表示処理部211は、図25に示すように、MD値の散布図61及び眼圧の散布図72に並べて、点眼薬に関する情報73と、手術の実施日に関する情報74を表示してもよい。
この場合、表示処理部211は、指示入力部204において生成される指示信号に応じて、画面に表示する検査値の種類や補足情報の種類を任意に選択できるようにしてもよいし、それらの並び順を任意に選択できるようにしてもよい。
【0116】
上述した実施形態では、除外対象の検査値の候補を判定するために参照する検査結果の信頼性に関する情報として、検査員が記録した信頼性の評価ランクの情報を使用する例が挙げられているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、検査員の能力やスキルの評価ランクに関する情報を使用してもよい。
例えば、職員データベース部11の検査員に係る情報には、検査員の識別番号と関連付けて、その検査員の能力やスキルの評価ランクに関する情報が記憶されており、検査データ52の付帯情報532には、検査に係った検査員の識別データが含まれる。
除外候補の表示を求める操作(例えばボタン69(図22)の押下)がなされたことを示す指示入力部204(タッチセンサ)の指示信号が生成されると、除外候補判定処理部214は、患者データベース部12から取得された医療データ52(図3)の時系列から、散布図61において表示する検査値(MD値)を含んだ医療データ52を検索する。除外候補判定処理部214において検査値(MD値)を含んだ医療データ52が検索されると、データベース要求処理部210は、その検査に係った検査員の識別データに基づいて、職員データベース部11から当該検査員の能力・スキルの評価ランクに関する情報を取得する。除外候補判定処理部214は、取得された能力・スキルの評価ランクが所定の基準以下である場合、この検査値を回帰分析処理対象からの除外候補と判定する。
【0117】
上述した実施形態では、図示の都合上、散布図上に片眼の検査値のみが表示される例を挙げているが、本発明はこれに限定されるものではなく、両眼の検査値を同一の散布図に表示してもよいし、片眼ずつの検査値の散布図を上下に並べて表示してもよい。
【0118】
上述した実施形態では、医学検査における検査値の一例としてMD値を挙げてるが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の種々の医学検査の結果をグラフ化して表示する診察業務支援装置に広く適用可能である。
【0119】
上述した実施形態ではサーバ装置にデータベース部を設けているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、データベース部を端末装置に設けてもよく、その場合はサーバ装置を省略してよい。
【0120】
また、サーバ装置は、通信ネットワークにより接続された複数のコンピュータで構成してもよい。例えば、職員データベース部11と患者データベース部12をそれぞれ別のコンピュータで構成してもよい。
【符号の説明】
【0121】
1…サーバ装置、2…診察用端末装置、3…通信ネットワーク、4…検査用端末装置、5…視野計測装置、11…職員データベース部、12…患者データベース部、61…散布図、62…回帰直線、80…ペン、101,201…処理部、102,202…通信部、103,203…表示部、104,204…指示入力部、105,205…記憶部、106,206…作業メモリ、210…データベース要求処理部、211…表示処理部、212…回帰分析処理部、213…変化要因判定処理部、214…除外候補判定処理部、41…医師識別データ、42…患者識別データ、52…医療データ、53…検査データ、54…所見データ、55…処方データ、56…手術記録データ、531…検査種別コード、532…付帯情報、533…検査結果のデータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医学検査の結果を示す検査値の時系列をグラフ化して表示する診察業務支援装置であって、
前記検査値の時系列を記憶する記憶部と、
入力される表示信号に応じた画像を表示する表示部と、
利用者による所定の指示入力操作に応じた指示信号を生成する指示入力部と、
前記検査値の散布図を表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記記憶部に記憶される前記検査値の時系列に基づいて、一の座標軸が検査日若しくは検査日に対応する数値を示し、他の一の座標軸が前記検査値を示す散布図を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する第1処理部と、
前記表示部に表示される前記散布図における複数の検査値から一部の検査値を選択して、前記一部の検査値に基づいて近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記一部の検査値の時系列に対して回帰分析処理を実行する第2処理部と、
を有し、
前記第1処理部は、前記回帰分析処理の結果として算出された前記近似関数の定数に基づいて、前記近似関数のグラフを前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
診察業務支援装置。
【請求項2】
前記第2処理部は、前記検査日若しくは前記検査日に対応する数値の範囲を指定して、前記範囲に属する検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記検査日若しくは前記検査日に対応する数値が前記範囲に属する検査値の時系列に対して前記回帰分析処理を実行する、
請求項1に記載の診察業務支援装置。
【請求項3】
前記第2処理部は、前記表示部に表示される前記散布図の複数の前記検査値から少なくとも1つの検査値を指定して、前記指定した検査値を除外した残りの検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記残りの検査値の時系列に対して前記回帰分析処理を実行する、
請求項2に記載の診察業務支援装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記検査値を含む検査に関する情報、診察に関する情報、治療に関する情報、手術に関する情報および処方薬に関する情報の少なくとも1つと日付の情報とが関連付けられた医療情報の時系列を記憶しており、
前記第1処理部は、前記表示部に表示される前記散布図において一の検査値を指定して、前記一の検査値に関連する前記医療情報を表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記記憶部において前記一の検査値と同一の前記医療情報に属する前記検査に関する情報、前記診察に関する情報、前記治療に関する情報、前記手術に関する情報および前記処方薬に関する情報の少なくとも1つを前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項2又は3に記載の診察業務支援装置。
【請求項5】
前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列において前後に連続する2つの医療情報をそれぞれ比較し、当該比較結果に基づいて、前記検査値の時系列の傾向に変化を及ぼし得る要因が発生した日を判定する第3処理部を有し、
前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項4に記載の診察業務支援装置。
【請求項6】
前記第3処理部は、前記連続する2つの医療情報に含まれる処方薬の情報を比較し、当該比較結果に基づいて、前記処方薬が変更された日を前記変化要因が発生した日と判定する、
請求項5に記載の診察業務支援装置。
【請求項7】
前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日の情報に付帯する情報として、変更前及び変更後の処方薬に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項6に記載の診察業務支援装置。
【請求項8】
前記第3処理部は、前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列において所定の手術若しくは治療が行われたことを示す情報が含まれた医療情報を検索し、当該検索結果に基づいて、前記手術若しくは治療行為が実施された日を前記変化要因が発生した日と判定する、
請求項5乃至7の何れか一項に記載の診察業務支援装置。
【請求項9】
前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日の情報に付帯する情報として、当該日に実施された手術若しくは治療行為の情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項8に記載の診察業務支援装置。
【請求項10】
前記第3処理部は、
前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日より後であり、かつ、当該日に最も近い日付の前記医療情報であって、前記検査値を含んだ前記医療情報を検索するか、
又は、
前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日と同日若しくは当該日より前であり、かつ、当該日に最も近い日付の前記医療情報であって、前記検査値を含んだ前記医療情報を検索し、
前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について検索された前記医療情報に含まれる前記検査値を、前記検査値の時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値として識別できるように表した前記散布図を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項5乃至9の何れか一項に記載の診察業務支援装置。
【請求項11】
前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列から、前記検査値を含む前記医療情報を検索し、当該検索したそれぞれの医療情報に含まれる検査の信頼性に関する情報に基づいて、前記それぞれの医療情報に含まれる前記検査値を前記回帰分析処理の対象から除外する候補とするか否か判定する第4処理部を有し、
前記第1処理部は、前記第4処理部において前記除外候補と判定された前記検査値に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項5乃至10の何れか一項に記載の診察業務支援装置。
【請求項1】
医学検査の結果を示す検査値の時系列をグラフ化して表示する診察業務支援装置であって、
前記検査値の時系列を記憶する記憶部と、
入力される表示信号に応じた画像を表示する表示部と、
利用者による所定の指示入力操作に応じた指示信号を生成する指示入力部と、
前記検査値の散布図を表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記記憶部に記憶される前記検査値の時系列に基づいて、一の座標軸が検査日若しくは検査日に対応する数値を示し、他の一の座標軸が前記検査値を示す散布図を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する第1処理部と、
前記表示部に表示される前記散布図における複数の検査値から一部の検査値を選択して、前記一部の検査値に基づいて近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記一部の検査値の時系列に対して回帰分析処理を実行する第2処理部と、
を有し、
前記第1処理部は、前記回帰分析処理の結果として算出された前記近似関数の定数に基づいて、前記近似関数のグラフを前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
診察業務支援装置。
【請求項2】
前記第2処理部は、前記検査日若しくは前記検査日に対応する数値の範囲を指定して、前記範囲に属する検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記検査日若しくは前記検査日に対応する数値が前記範囲に属する検査値の時系列に対して前記回帰分析処理を実行する、
請求項1に記載の診察業務支援装置。
【請求項3】
前記第2処理部は、前記表示部に表示される前記散布図の複数の前記検査値から少なくとも1つの検査値を指定して、前記指定した検査値を除外した残りの検査値についての近似関数のグラフを表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記残りの検査値の時系列に対して前記回帰分析処理を実行する、
請求項2に記載の診察業務支援装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記検査値を含む検査に関する情報、診察に関する情報、治療に関する情報、手術に関する情報および処方薬に関する情報の少なくとも1つと日付の情報とが関連付けられた医療情報の時系列を記憶しており、
前記第1処理部は、前記表示部に表示される前記散布図において一の検査値を指定して、前記一の検査値に関連する前記医療情報を表示するように指示する前記指示信号が前記指示入力部において生成されると、前記記憶部において前記一の検査値と同一の前記医療情報に属する前記検査に関する情報、前記診察に関する情報、前記治療に関する情報、前記手術に関する情報および前記処方薬に関する情報の少なくとも1つを前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項2又は3に記載の診察業務支援装置。
【請求項5】
前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列において前後に連続する2つの医療情報をそれぞれ比較し、当該比較結果に基づいて、前記検査値の時系列の傾向に変化を及ぼし得る要因が発生した日を判定する第3処理部を有し、
前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項4に記載の診察業務支援装置。
【請求項6】
前記第3処理部は、前記連続する2つの医療情報に含まれる処方薬の情報を比較し、当該比較結果に基づいて、前記処方薬が変更された日を前記変化要因が発生した日と判定する、
請求項5に記載の診察業務支援装置。
【請求項7】
前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日の情報に付帯する情報として、変更前及び変更後の処方薬に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項6に記載の診察業務支援装置。
【請求項8】
前記第3処理部は、前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列において所定の手術若しくは治療が行われたことを示す情報が含まれた医療情報を検索し、当該検索結果に基づいて、前記手術若しくは治療行為が実施された日を前記変化要因が発生した日と判定する、
請求項5乃至7の何れか一項に記載の診察業務支援装置。
【請求項9】
前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定された日の情報に付帯する情報として、当該日に実施された手術若しくは治療行為の情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項8に記載の診察業務支援装置。
【請求項10】
前記第3処理部は、
前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日より後であり、かつ、当該日に最も近い日付の前記医療情報であって、前記検査値を含んだ前記医療情報を検索するか、
又は、
前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について、当該日と同日若しくは当該日より前であり、かつ、当該日に最も近い日付の前記医療情報であって、前記検査値を含んだ前記医療情報を検索し、
前記第1処理部は、前記第3処理部において前記変化要因が発生したと判定したそれぞれの日について検索された前記医療情報に含まれる前記検査値を、前記検査値の時系列の傾向が変化する境界の目安となる検査値として識別できるように表した前記散布図を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項5乃至9の何れか一項に記載の診察業務支援装置。
【請求項11】
前記記憶部に記憶される前記医療情報の時系列から、前記検査値を含む前記医療情報を検索し、当該検索したそれぞれの医療情報に含まれる検査の信頼性に関する情報に基づいて、前記それぞれの医療情報に含まれる前記検査値を前記回帰分析処理の対象から除外する候補とするか否か判定する第4処理部を有し、
前記第1処理部は、前記第4処理部において前記除外候補と判定された前記検査値に関する情報を前記表示部に表示する前記表示信号を生成する、
請求項5乃至10の何れか一項に記載の診察業務支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−84082(P2013−84082A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222693(P2011−222693)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【特許番号】特許第5028537号(P5028537)
【特許公報発行日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(599030633)有限会社 杉浦技術士事務所 (8)
【出願人】(510088480)医療法人明和会宮田眼科病院 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【特許番号】特許第5028537号(P5028537)
【特許公報発行日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(599030633)有限会社 杉浦技術士事務所 (8)
【出願人】(510088480)医療法人明和会宮田眼科病院 (8)
【Fターム(参考)】
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