説明

診断・カウンセリング支援システム

【課題】非常に多くの検査項目を用いて病気やその推移を判断する際に、検査方法や検査施設によって基準値が異なっていても、判断の誤りを防ぎ、その判断を的確に行うことができる診断・カウンセリング支援システムを提供する。
【解決手段】本システムは、診断・カウンセリング支援のために必要な各種データの授受を行う入出力部を有するユーザインタフェース装置1、データベース装置2及び検査値正規化装置3を備える。データベース装置2は、クライアント検査データベースと、検査値を正規化する正規化関数を生成するための変換パラメータを蓄積する変換パラメータデータベースと、基準値等を蓄積する検査基準値データベースを有する。検査値正規化装置3は、検査項目の検査値を正規化関数により正規化し、各検査値の検査項目グループ毎の平均値を算出し、診断・カウンセリング支援情報を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液・尿などの臨床検査データを用いた自動診断・カウンセリング支援を行うために、これらのデータの評価が医者やクライアントにわかりやすく理解できるように評価手法を工夫した診断・カウンセリング支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液・尿などの臨床検査データを用いて病気の状態を判断するために、血液・尿検査をはじめ多くの検査や診察を行ってその判断がなされている。本願の発明者らは、このような検査や診察による診断を支援するため、臨床検査データ等をデータベースに蓄積して診断を支援するシステムをいくつか提案している(特許文献1〜4)。
【0003】
一方、血液・尿検査では、それぞれの検査について基準値が決められており、異常な状態かどうかの判断に用いられている。また通常、1種類の血液や尿検査だけで病気かどうかを判断することはなく、複数の検査を行ってそれらの値を基準値に照らして総合的に検討した結果、病気や異常があるかどうかを判断している。ところが、非常に多くの検査項目を用いて、自動的に診断をしたり、傾向を調べたりする時に、検査項目によって基準値がまちまちであり、また、同じ検査項目であっても、検査方法や検査施設によって基準値が異なっているために、単純に数値を比較するだけでは、判断を誤ってしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−58551号公報
【特許文献2】特開2005−108248号公報
【特許文献3】特開2005−41389号公報
【特許文献4】特開2009−178266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、このような従来技術の実情に鑑み、非常に多くの検査項目を用いて病気やその推移を判断する際に、検査方法や検査施設によって基準値が異なっていても、判断の誤りを防ぎ、その判断を的確に行うことができる診断・カウンセリング支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、第1には、診断・カウンセリング支援のために必要な各種データの授受を行う入出力部を有するユーザインタフェース装置、データベース装置及び検査値正規化装置を備える診断・カウンセリング支援システムであって、
前記データベース装置は、
クライアント別に検査日毎、検査項目毎に血液・尿などの臨床検査データを蓄積するクライアント検査データベースと、
検査値を正規化する正規化関数を生成するための変換パラメータを検査項目毎に蓄積する変換パラメータデータベースと、
検査値の基準値範囲領域の基準値範囲中間領域、基準値範囲下側領域及び基準値範囲上側領域、異常低値領域並びに異常高値領域を規定する値を蓄積する検査基準値データベースを有し、
前記検査値正規化装置は、
前記ユーザインタフェース装置から入力されたクライアント情報から、対応するクライアントのすべての検査値を、前記クライアント検査データベースから取得する検査値取得部と、
前記検査値取得部で取得したクライアントの検査値を、検査日毎及び検査項目グループ毎に分類する検査値分類部と、
前記変換パラメータデータベースから検査値の変換パラメータを取得し、検査項目の検査値を、基準値範囲領域と異常低値領域と異常高値領域に分けるとともに、基準値範囲領域を、基準値範囲中間領域と基準値範囲下側領域と基準値範囲上側領域に分け、基準値範囲中間領域は無変換とし、基準値範囲下側領域及び基準値範囲上側領域は直線的に変換し、異常低値領域と異常高値領域は指数関数により変換する正規化関数を生成し、この正規化関数により前記検査値分類部で分類された各検査値を正規化する検査値正規化部と、
前記検査値正規化部で正規化した各検査値の検査項目グループ毎の平均値を算出する検査値平均値算出部と、
前記検査値算出部による算出結果に基づいて、前記ユーザインタフェース装置の前記表示部に診断・カウンセリング支援情報を表示させる表示制御部を有することを特徴とする診断・カウンセリング支援システムを提供する。
【0007】
第2には、上記第1の発明において、前記データベース装置が、検査項目毎の異常値と可能性の高い疾患との関係を関連付けたデータを蓄積する疾患データベースを有し、前記検査値正規化装置から取得した異常値項目を検索条件として疾患候補のスコアリングを行うことを特徴とする診断・カウンセリング支援システムを提供する。
【0008】
第3には、上記第1又は第2の発明において、前記検査値正規化装置が、過去の検査値の影響度を取り込んで正規化検査値を算出することを特徴とする診断・カウンセリング支援システムを提供する。
【0009】
第4には、上記第3の発明において、前記データベース装置が、検査項目毎に影響が半減する半減期を定義した半減期定義データベースを有し、前記検査値正規化装置が、過去の検査値の影響度として前記半減期定義データ値の半減期を過去の検査値の影響度として用いることを特徴とする診断・カウンセリング支援システムを提供する。
【0010】
第5には、上記第3又は第4の発明において、前記検査値正規化装置が、過去の検査値の影響度のうち、一過性の変化であった場合でその理由が明らかであり且つ病気の変化に対しては無視すべきものである場合には、その影響度を排除して正規化検査値を算出することを特徴とする診断・カウンセリング支援システムを提供する。
【0011】
第6には、上記第1ないし第5のいずれかの発明において、前記データベース装置が、検査項目グループにおける各検査項目が寄与する重み係数を蓄積する重み係数データベースを有し、前記検査値平均値算出部が、前記重み係数データベースからの重み係数を用いて各検査値の検査項目グループ毎の平均値を算出することを特徴とする診断・カウンセリング支援システムを提供する。
【0012】
第7には、上記第1ないし第6のいずれかの発明において、前記検査値正規化部が、基準値範囲中間領域の値は0とし、正規化後の検査値を−1〜1の範囲となるように正規化関数を生成することを特徴とする診断・カウンセリング支援システムを提供する。
【0013】
第8には、上記第1ないし第7のいずれかの発明において、前記データベース装置が、診断記録、転帰記録、投薬記録などの診断関係のデータを蓄積する診断データベースを備え、前記ユーザインタフェース装置の前記表示部に前記診断関係のデータを併せて表示可能であることを特徴とする診断・カウンセリング支援システムを提供する。
【0014】
第9には、上記第1ないし第8のいずれかの発明において、前記表示制御部は、前記ユーザインタフェース部の前記表示部に臓器モデル表示を行い、臓器別に異常の有無を可視化することを特徴とする診断・カウンセリング支援システムを提供する。
【0015】
第10には、上記第1ないし第9のいずれかの発明において、診断・カウンセリング支援のための各種情報をHTML変換し、ブラウザを介してクライアントに提示することを特徴とする診断・カウンセリング支援システムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、非常に多くの検査項目を用いて病気やその推移を判断する際に、検査方法や検査施設によって基準値が異なっていても、判断の誤りを防ぎ、その判断を的確に行うことができるようになる。
【0017】
また、本発明によれば、過去の検査結果を反映したより精度の高い診断・カウンセリング支援を行うことが可能となる。
【0018】
また、本発明によれば、正規化した検査値を臓器や疾患などの単位でグループ化して算出した平均値を用いることで、表現を単純化して全体をわかりやすく把握することができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、クライアントが確認したいが記憶があいまいな診断・カウンセリング支援に関する情報を、ブラウザを通して確実に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る診断・カウンセリング支援システムの実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】ユーザインタフェース装置の構成例を模式的に示すブロック図である。
【図3】データベース装置の構成例を示す図である。
【図4】検査値正規化装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】半減期を設定して過去の検査値の影響を見積もる方法の概念図である。
【図6】特定の検査値を無視するための設定方法の概念図である。
【図7】検査値正規化部の正規化法の説明図である。
【図8】検査の正規化例を示す図である。
【図9】検査値を正規化するためのアルゴリズムを示すフロー図である。
【図10】検査値の正規化を使ったチャートグラフを示す図である。
【図11】検査値の正規化を使った時系列グラフを示す図である。
【図12】正規化した検査値から疾患候補を抽出するためのアルゴリズムを示すフロー図である。
【図13】疾患データベース例を示す図である。
【図14】本実施形態の診断・カウンセリング支援システムの応用例の全体概要を示す図である。
【図15】ユーザ認証、検査分類別概要、検査値+相対位置の画面を示す図である。
【図16】概要時系列+臓器可能性、概要時系列+疾患別可能性、トレンドグラフの画面を示す図である。
【図17】検査グラフ表示、検査項目解説表示の画面を示す図である。
【図18】臓器モデル表示の画面を示す図である。
【図19】カウンセリング内容の記述を追加した画面を示す図である。
【図20】診断・転帰記録、投薬記録管理の画面を示す図である。
【図21】診断・カウンセリング支援情報をHTMLファイルに出力した画面を示す図である。
【図22】ユーザ登録、検査項目パラメータ設定、疾患・臓器パラメータ設定の画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の診断・カウンセリング支援システムの実施形態について詳述する。
【0022】
本発明の診断・カウンセリング支援システムは、非常に多くの検査項目の血液・尿などの臨床検査データをもとに臓器の状態や疾患の可能性を自動診断・カウンセリングするものである。
【0023】
本発明の一実施形態の診断・カウンセリング支援システムは、図1に示すように、ユーザインタフェース装置1、データベース装置2、検査値正規化装置3及び疾患候補抽出装置4からなる。これら各種装置はコンピュータを利用した1つのユニットであってもよいし、電気通信回線を通じて離間して設けられたものであってもよい。
【0024】
ユーザインタフェース装置1は、診断・カウンセリング支援のため必要な各種データの授受を行う入出力部を備える。ユーザインタフェース装置1としては例えばパーソナルコンピュータを利用することができ、図2に示すような外部とのデータ等のやりとりを行う入出力インタフェース部(I/O)11、データや指令等を入力するためのキーボードやマウス、タッチパネルなどの入力部12、診断・カウンセリング支援のためにシステムを動作させるプログラムを格納した主記憶部13、装置各部の動作を制御したり、各種演算を行う制御部(CPU)14、データ等を記憶するメモリ15、ディスプレイ等からなる表示部16、プリンタ等からなる出力部17等から構成される。場合によっては、ユーザインタフェース装置1は、データベース装置2、検査値正規化装置3、疾患候補抽出装置4の機能を担っていてもよい。
【0025】
データベース装置2は、図3に示すように、クライアント検査データベース2−1、変換パラメータ・半減期定義等データベース2−2、検査基準値データベース2−3、疾患データベース2−4、診断データベース2−5等を有している。
【0026】
クライアント検査データベース2−1は、クライアント別に検査日毎、検査項目毎に血液・尿などの臨床検査データを蓄積している。変換パラメータ・半減期定義等データベース2−2は、検査値を正規化する正規化関数を生成するための変換パラメータを検査項目毎に蓄積するとともに、過去の検査値の影響を直近の検査値に反映させるために用いる半減期定義や検査項目の重み付けを行うための重み係数等を検査項目毎に蓄積している。変換パラメータ・半減期定義等データベース2−2は、それぞれの機能を有する複数のデータベースから構成されていてもよい。検査基準値データベース2−3は、検査項目毎に検査値の基準値範囲領域の基準値範囲中間領域、基準値範囲下側領域及び基準値範囲上側領域、異常低値領域並びに異常高値領域を規定する値を蓄積している。疾患データベース2−4は、検査項目毎の異常値と可能性の高い疾患との関係を関連付けたデータを蓄積している。診断データベース2−5は、診断記録、転帰記録、投薬記録などの診断関係のデータを蓄積している。
【0027】
検査値正規化装置3は、図4に示すように検査値取得部3−1、検査値分類部3−2、変換パラメータ・半減期等取得部3−3、検査基準値取得部3−4、検査値正規化部3−5、検査値平均値算出部3−6、表示制御部3−7等を有している。
【0028】
検査値取得部3−1は、ユーザインタフェース装置1から入力されたクライアント情報をもとに、対応するクライアントのすべての検査値を、クライアント検査データベース2−1から取得する。検査値分類部3−2は、検査値取得部3−1で取得したクライアントの検査値を、検査日毎及び検査項目グループ毎に分類する。変換パラメータ・半減期定義等取得部3−3は、変換パラメータ・半減期定義等データベース2−2から検査値の変換パラメータ、半減期定義、重み係数等を取得する。検査基準値取得部3−4は、検査基準値データベース2−3から検査基準値を取得する。検査値正規化部3−5は、検査項目の検査値を、基準値範囲領域と異常低値領域と異常高値領域に分けるとともに、基準値範囲領域を、基準値範囲中間領域と基準値範囲下側領域と基準値範囲上側領域に分け、基準値範囲中間領域は無変換とし、基準値範囲下側領域及び基準値範囲上側領域は直線的に変換し、異常低値領域と異常値高値領域は指数関数により変換する正規化関数を生成する。そして、検査値正規化部3−5は、この正規化関数により検査値分類部3−2で分類された各検査値を正規化する。その際、検査値正規化部2−3は、過去の検査値の影響度を取り込むため半減期を考慮した正規化計算を行う。また、過去の検査値の影響度のうち、一過性の変化であった場合でその理由が明らかであり且つ病気の変化に対しては無視すべきものである場合には、その影響度を無視して正規化検査値を算出してもよい。検査値平均値算出部3−6は、検査値正規化部3−5で正規化した各検査値の検査項目毎の平均値を算出するが、その際、変換パラメータ・半減期定義等取得部3−3からの重み係数を考慮して算出を行う。表示制御部3−7は、検査項目グループ毎に算出した平均値をチャートにプロットした画面や、検査日毎に検査項目グループ毎の平均値を時系列としてプロットした画面等の診断・カウンセリング支援情報をユーザインタフェース装置1の表示部に表示させる。
【0029】
疾患候補抽出装置4は、検査値正規化装置3から取得した異常値項目を検索条件として疾患データベース2−4を検索し、疾患候補のスコアリングを行う。
【0030】
次に、本診断・カウンセリング支援システムにおいて、検査値の経時的影響を考慮する方法について述べる。
【0031】
身体の状態によって検査値は常に変化をしており、検査の項目によっては、短時間で変動するものと、比較的長い期間似た値を示す検査項目がある。検査値の変動は病気などの変化によってもたらさせるものばかりではなく、日内変動のように生理的変化や検査毎の測定誤差などが影響して変化することもある。検査値の変化にはこのようなノイズが多く含まれているため、複数回の検査値を平均して、値の変動幅を求める方法も使用されている。
【0032】
本実施形態では、過去に大きな値の変化があった場合、その影響が現在の値に及ぼしている変化を考慮するために、検査値が影響する半減期をパラメータとして与えている。最近計測した値の変化をより重く見積もり、過去の変化を少なく見積もるような計算を行う。図5は半減期を設定して過去の検査値の影響を見積もる方法の概念図である。図5の左側の図が検査日と検査値の関係の例であり、図5の下の図が影響度と経過日の関係の例であり、図5の右側が半減期を考慮した検査日と検査値の関係の例である。半減期の長さは、検査項目毎に異なるためパラメータとしてそれぞれに定義できるようにする。
【0033】
さらに、本実施形態では、一過性の変化があった場合で、その理由が明らかであり且つ病気の変化に対しては無視すべき理由がある場合は、その検査値を計算から取り除くことができるよう工夫を加えている。図6は特定の検査値を無視するための設定方法の概念図である。
【0034】
具体的に述べると、直近の検査をT[0]、m日前の検査をT[m]とする。現在の検査値(V[0])以前の検査値(V[n])も考慮した値(E[0])を見積もるために、現在に近い検査値ほど影響が大きくする。そこで検査項目毎に半減期(H(日))を設定して影響の度合い(P[m])を計算する。影響の度合いは次式で算出できる。
【0035】
P[m]=1/2(T[m]/H)
そして、過去の大きな変化の原因がわかっており、それが病気の変化に無視できるものであればその検査値を排除する。そのため、見積もり要素F[m]を導入する。たとえば、通常はF[m]=1に設定しておき、ある検査日[q]の値を無視したければF[q]=0に設定する。
【0036】
直近の検査値と過去の検査値の差に、影響の度合いP[m]と見積もり要素F[m]を乗じ、現在の値に加えることで現在の検査値E[0]を見積もる。現在の検査値E[0]は次式で算出できる。
【0037】
E[0]=V[0]+Σ((V[m]−V[0])*P[m]*F[m])
次に、本実施形態における検査正規化装置3の検査値正規化部3−5の正規化法について図7を参照して述べる。
【0038】
臨床検査項目の基準値は、健常者で測定した値の分布の中央部分95%の範囲(およそ平均値±2・標準偏差)となるように決められている。本実施形態では、正規化後の値を−1〜0〜1の範囲となるようにする。基準値の中央近くの領域では、検査値を変換値=0とし、基準値内で上限値に近付くにしたがって、直線的に変換値を大きくしていく。基準値上限を越える領域では、検査値を指数関数によって変換し、漸近的に1に近付くようにする。また、反対側も同様に、基準値の中央近くの領域より基準値下限に近付くにしたがって直線的に変換値を小さくして変化させ、基準値下限を下回った領域では、検査値を指数関数によって変換し、漸近的に−1に近付くように変換する。基準値内で変化する場合、基準値の上限では、変換値を0〜1の範囲で適当に定める。また基準値上限を越えた時の変換値を基準値内からの変化と連続するように定めてもいいし、不連続的な値となるように定めてもいい。これは基準値下限近くでも同様に定めることができる。
【0039】
本実施形態による正規化方法のパラメータは検査項目毎に独立した定義が必要である。基準値上限、下限からどのくらい割り込んで変化が始まるようにするか、その傾き及び基準値の外側での開始点と指数関数の変化の仕方などのパラメータを基準値の上側と下側それぞれについて定義する。また、パラメータの設定によっては右上がりの変換曲線でなくてもよく、右下がりでもよい。また、検査項目によっては、両肩上がり、両肩下がりの変化も定義できる。
【0040】
このように、本実施形態の正規化法では、基準値のまわりでは変換値を0として、検査値の変動にしたがって−1〜0〜1の範囲で変換値が変動するようにしている。本実施形態での検査値の変換は次のように意味がある。基準値内での変化は生理的変動の範囲であるため基本的に病気などとはかかわりを持たない。しかし、基準値上限、下限近くになると多少病気との関係を気遣う必要がある。基準値を越えた場合は注意を促す必要があるため、断層や急激な変化があるようにしている。
【0041】
より詳細に述べると、図7に示すように各値を次のように定める。
【0042】
Min:基準値範囲の下限値
Max:基準値の上限値
A:基準値範囲内の上側で値を変換する下限値
B:基準値範囲上限値のときに変換する値
C:基準値範囲上限値の時に変換する値(指数関数曲線用)
D:基準値範囲上限値より高い領域での指数関数曲線係数
E:指数変換の高さを規定する係数
F:基準値範囲内の下側で値を変換する上限値
G:基準値範囲下限値のときに変換する値
H:基準値範囲下限値のときに変換する値(指数関数曲線用)
I:基準値範囲下限値より低い領域での指数関数曲線係数
J:指数変換の高さを規定する係数
そして、図中のVal(0)〜Val(4)の正規化変換値を次表の式にしたがって算出する。
【0043】
【表1】

【0044】
ここで、検査値の正規化例を説明すると、各パラメータを表2のように設定すると、正規化値は表3、図8に示すようになる。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
以上の検査値の正規化をするためのアルゴリズムを示すフロー図を図9に示す。
【0048】
次に、本実施形態により、複数の正規化した検査値を用いて臓器や病気などの状態を判定する方法について述べる。この方法は検査値平均値算出部3−6と表示制御部3−7、そして疾患候補抽出装置が行う。
【0049】
ある臓器が健康な状態にあるか異常な状態にあるかは、その臓器にかかわりのある検査項目が何個異常値であるか、その異常値はどの程度の異常であるかなどによって判断できる。ある検査項目グループの複数の検査項目の検査値を正規化した値を単に合計して平均値を求めた場合、検査を多く行った場合は基準値範囲にある検査項目が多くなるため平均値は少なく算出される傾向にあり、健康から外れている状態を過小評価することがある。そこで、本実施形態では、なるべく異常状態を感知しやすくするために、異常値項目に注目して計算を行う。そのため、ある疾患に関して重要な指標となっている検査項目には重み係数を与える。異常値項目について、正規化値×重み係数で計算した平均値は、異常値の数と異常の程度を反映しているため、この値を使って臓器や病気の見積もりとする。平均値の算出は検査値平均値算出部3−6が行う。このときの見積もりは、同じ検査値が複数の臓器や病気にまたがって使用されてもよく、それぞれの臓器や病気に対する影響を重み係数として独立に与えることができる。また、重み係数には正の値ばかりでなく負の値も与えることができる。
【0050】
ここで計算した平均値は、対象とする検査項目を臓器毎あるいは病気毎にグループ化して扱うことによってその臓器の健康状態や病気の状態を見積もることができる。また、全身状態を反映するような多数の検査項目を実施している健康診断では、すべての検査項目をひとつのグループとして扱って計算することによって、全身の健康状態の指標としてみることも可能である。ただし、全身を扱う場合は、それぞれの正規化した検査値の絶対値を用いて計算した方が分かりやすい指標となる。
【0051】
上記で算出した正規化した平均値は、相対的な量として臓器や病気などのグループ間で比較可能である。これをチャートグラフなどによって表現することで、全身のどの部分に異常があるかどうかを一目で判別することができる。その例を図10に示す。また、時系列グラフとして表すことによって、健康状態の経過を俯瞰的に観察できるようになる。その例を図11に示す。一般的な検査値毎の時系列グラフでも、どの項目がいつ異常値となり、また正常に戻ってきたかを詳細に観察することはできる。しかし、臓器毎あるいは病気毎の状態の推移を把握するためには、注目すべき重要な検査項目を理解していなければ難しく、また、非常に多くの検査項目を用いた健康診断では、人間的な見逃しも起こりうる。これらの表示は、表示制御部3−7が制御する。
【0052】
本実施形態では、正規化した検査値を臓器や病気などの単位でグループ化して計算した平均値を用いることで、表現を単純化して全体を把握しやすくしている。また、正常領域、正常上側領域、異常傾向領域、異常領域などのように区分して色表現することによって視認性を向上させている。
【0053】
以上の正規化した検査値から疾患候補を抽出するためのアルゴリズムのフロー図を図12に示す。また、疾患データベース例を図13に示す。
【0054】
次に、本実施形態の診断・カウンセリング支援システムの応用例の概要を図14〜図22を用いて述べる。
【0055】
図14は、全体概要を示す図で、設定・登録、医師+クライアント、クライアントの各フェーズからなり、これらは次の各ステージに細分化される。
【0056】
先ず、ユーザインタフェース装置1の表示部の画面に表示されたユーザ認証画面を見ながら、ユーザがパスワードを入力するより、ユーザ認証が行われる(図15(A))。ユーザであることが確認されると、検査分類別概要と検査値+相対位置の画面が表示され、全身状態の把握が可能となる(図15(B)、(C))。次に、概要時系列+臓器別可能性(図16(D))、概要時系列+疾患別可能性(図16(E))、トレンドグラフ(図16(F))の画面が順次表示され、時系列変化の概要の把握が可能となる。
【0057】
図17の(G)、(H)に示すように検査グラフ表示、検査項目解説表示の画面も表示でき、検査項目毎の時系列変化、検査項目の意義の把握が可能となる。
【0058】
本実施形態では、臓器モデル表示(図18(I))も行うことができ、異常値に関連すると考えられる臓器別可能性の視認が行えるようになっている。また、カウンセリング内容の記述も可能である(図19(J))。さらに、診断・転帰記録、投薬記録管理の確認、把握もできるようになっている(図20(K))。
【0059】
さらに、本実施形態では、得られた診断・カウンセリング支援のための各種情報をHTML変換し、クライアントは自宅でブラウザを介してその情報を確認することができる(図21(M)、(L))。
【0060】
なお、図22の(N)、(M)、(O)は、それぞれユーザ登録、検査項目パラメータ設定、疾患・臓器パラメータ設定の画面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断・カウンセリング支援のために必要な各種データの授受を行う入出力部を有するユーザインタフェース装置、データベース装置及び検査値正規化装置を備える診断・カウンセリング支援システムであって、
前記データベース装置は、
クライアント別に検査日毎、検査項目毎に血液・尿などの臨床検査データを蓄積するクライアント検査データベースと、
検査値を正規化する正規化関数を生成するための変換パラメータを検査項目毎に蓄積する変換パラメータデータベースと、
検査値の基準値範囲領域の基準値範囲中間領域、基準値範囲下側領域及び基準値範囲上側領域、異常低値領域並びに異常高値領域を規定する基準値を蓄積する検査基準値データベースを有し、
前記検査値正規化装置は、
前記ユーザインタフェース装置から入力されたクライアント情報から、対応するクライアントのすべての検査値を、前記クライアント検査データベースから取得する検査値取得部と、
前記検査値取得部で取得したクライアントの検査値を、検査日毎及び検査項目グループ毎に分類する検査値分類部と、
前記変換パラメータデータベースから検査値の変換パラメータを取得し、検査項目の検査値を、基準値範囲領域と異常低値領域と異常高値領域に分けるとともに、基準値範囲領域を、基準値範囲中間領域と基準値範囲下側領域と基準値範囲上側領域に分け、基準値範囲中間領域は無変換とし、基準値範囲下側領域及び基準値範囲上側領域は直線的に変換し、異常低値領域と異常高値領域は指数関数により変換する正規化関数を生成し、この正規化関数により前記検査値分類部で分類された各検査値を正規化する検査値正規化部と、
前記検査値正規化部で正規化した各検査値の検査項目グループ毎の平均値を算出する検査値平均値算出部と、
前記検査値算出部による算出結果に基づいて、前記ユーザインタフェース装置の前記表示部に診断・カウンセリング支援情報を表示させる表示制御部を有することを特徴とする診断・カウンセリング支援システム。
【請求項2】
前記データベース装置が、検査項目毎の異常値と可能性の高い疾患との関係を関連付けたデータを蓄積する疾患データベースを有し、前記検査値正規化装置から取得した異常値項目を検索条件として疾患候補のスコアリングを行うことを特徴とする請求項1に記載の診断・カウンセリング支援システム。
【請求項3】
前記検査値正規化装置が、過去の検査値の影響度を取り込んで正規化検査値を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の診断・カウンセリング支援システム。
【請求項4】
前記データベース装置が、検査項目毎に影響が半減する半減期を定義した半減期定義データベースを有し、前記検査値正規化装置が、過去の検査値の影響度として前記半減期定義データ値の半減期を過去の検査値の影響度として用いることを特徴とする請求項3に記載の診断・カウンセリング支援システム。
【請求項5】
前記検査値正規化装置が、過去の検査値の影響度のうち、一過性の変化であった場合でその理由が明らかであり且つ病気の変化に対しては無視すべきものである場合には、その影響度を排除して正規化検査値を算出することを特徴とする請求項3又は4に記載の診断・カウンセリング支援システム。
【請求項6】
前記データベース装置が、検査項目グループにおける各検査項目が寄与する重み係数を蓄積する重み係数データベースを有し、前記検査値平均値算出部が、前記重み係数データベースからの重み係数を用いて各検査値の検査項目グループ毎の平均値を算出することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の診断・カウンセリング支援システム。
【請求項7】
前記検査値正規化部が、基準値範囲中間領域の値は0とし、正規化後の検査値を−1〜1の範囲となるように正規化関数を生成することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の診断・カウンセリング支援システム。
【請求項8】
前記データベース装置が、診断記録、転帰記録、投薬記録などの診断関係のデータを蓄積する診断データベースを備え、前記ユーザインタフェース装置の前記表示部に前記診断関係のデータを併せて表示可能であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の診断・カウンセリング支援システム。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記ユーザインタフェース部の前記表示部に臓器モデル表示を行い、臓器別に異常の有無を可視化することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の診断・カウンセリング支援システム。
【請求項10】
診断・カウンセリング支援のための各種情報をHTML変換し、ブラウザを介してクライアントに提示することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の診断・カウンセリング支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate