診断分析器のための自動校正方法およびシステム
【課題】血液分析器のような診断機器をリアルタイムに校正するための自動化システムおよび方法を提供する。
【解決手段】診断機器、特に動物自動化血液分析器の安定性および性能を追跡する方法は、分析器で計算した患者サンプルの診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用する。管理図ルールが用いられて、加重平均診断結果が限界または範囲内に有るか範囲外に有るかを判定するために、そのような限界または範囲を設定する。加重平均診断結果がそのような管理図ルールの限界の外であれば、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムが加重平均診断結果へ適用される。
【解決手段】診断機器、特に動物自動化血液分析器の安定性および性能を追跡する方法は、分析器で計算した患者サンプルの診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用する。管理図ルールが用いられて、加重平均診断結果が限界または範囲内に有るか範囲外に有るかを判定するために、そのような限界または範囲を設定する。加重平均診断結果がそのような管理図ルールの限界の外であれば、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムが加重平均診断結果へ適用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、人(human)や動物(veterinary(獣医学))用の診断機器に関し、より特定的には、そのような機器を校正するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析器のための患者ベース(patient-based)の品質保証に関して、いくつかの研究が発表されている。これらの研究のサブセット(部分集合)は、患者ベースの結果が分析器の性能に関する情報を提供できるということを、既に論証した(Ye JJ, Ingels SC, and Parvin CA, “Performance Evaluation and Planning for Patient-Based Quality Control Procedures,”「患者ベースの品質制御手順のための性能評価および設計」 Am J Clin Pathol 2000; 113: 240-248を参照されたい。)。他の調査およびアプローチを放棄する理由の一般的な中心点(focus)は、報告するものを基礎として、各患者の結果を適格とする(qualify)ことであった(Norbert W. Tietz, Ed. Fundamentals of Clinical Chemistry(臨床化学の基礎), Third Ed. Philadelphia, PA: W.B. Saunders Company; 1987: 249-251を参照されたい。)。1つだけの患者結果(patient result)は、その患者結果が報告するのに適当かどうかを判断するためには使えないという理由で、そのアプローチには基本的な欠陥がある。集計した患者結果から生成した個体群のデータを用いて機器のシステム性能をモニタするように、中心点をわずかに変更すれば、このアプローチは、有力で、全体性能に関する信頼できる情報を提供するであろう。
【0003】
ブルの移動平均(Bull’s moving averages)から始まって、X-Bまたは/XB(「/」はXBの上に引かれる横線(バー)を意味する。)と呼ばれる、加重移動平均アルゴリズム(weighted moving averages algorithms)が、人の血液(hematology)分析器の性能の分析のために1974年頃から既に使用されている(Bull B.S., et al., “A study of various estimators for the derivation of quality control procedures from patient erythrocyte indices”「患者の赤血球指数からの品質制御手順の起源についての各種評価の研究」, Am. J. Clin. Pathol. 1974; Vol. 61:473-481を参照されたい。)。それ以来、EWMA、XMまたは/(バー)XMと呼ばれる指数型加重移動平均アルゴリズム(exponentially weighted moving averages algorithms)を含む追加の方法論がすでに導入されかつ実現されている(Beckman Coulter Bulletin 9611 2006; www.beckmancoulter.com; 1-800-352-3433を参照されたい。)。人サンプル用の自動化した血液分析器において、機器性能および校正設定を判定するために、固定細胞制御(fixed cell controls)が共通的に用いられる。加重平均は、分析器上における患者サンプルのラン(run:実行)上で分析が行われ、かつその分析が制御ラン間のギャップを埋めるという利点がある。ランは、臨床・検査標準協会(Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI, Wayne, PA; http://www.clsi.org/; 1-877-447-1888)のような組織によってしばしば推奨されるように、通常、1シフトおよそ8時間かそれ以上毎に1回である。加重平均の使用は、次の制御を実行する時間の前であっても、結果が問題あるかもしれないと、早期に警告を与えることができる。
【0004】
診断機器は人および動物用の市場で長期にわたって使用されている。これらの機器は、血液分析器、血液化学分析器、および患者のある種の生理学的な特性を判定する機器を含む。動物用の市場で、VetTest(登録商標)化学分析器やVetAutoread(商標)自動血液分析器が遅くとも、1990年代から利用可能になっている。固定の光学基準を利用して機器性能を判定する、VetAutoread(商標)血液分析器のようないくつかの分析器は、本件出願人である、メイン州ウェストブルークのアイデックスラボラトリーズ(IDEXX Laboratories, Inc. of Westbrook, Maine, (www.idexx.com参照。))によって製造されている。IDEXX LaserCyte(登録商標)血液分析器のような他の分析器は、Qualibeads(商標)と呼ばれる光学性能を確保するために、固定のサイズおよび屈折率を有するポリマを取り入れる。さらに、兵庫県のシスメックス株式会社(Sysmex Corp. of Hyogo, Japan (www.sysmex.com参照。))によって製造されているSysmex XT-Vのような分析器は、CLSI(臨床・検査標準協会)のような組織によって提供されるガイドライン、たとえばthe College of American Pathologists (アメリカ病理学者の団体)(CAP, Northfield, IL; www.cap.org) および the American Society for Veterinary Clinical Pathology (獣医学臨床病理のためのアメリカの団体)(ASVCP) (Flatland B, Freeman KP, Friedrichs KR, et al., “ASVCP quality assurance guidelines: control of general analytical factors in veterinary laboratories,”「ASVCP品質保証ガイドライン:獣医学の研究所における一般的な分析要素」Vet Clin Pathol 39/3 (2010) 264-277を参照されたい。)に基づいて、分析(assay)性能を保証するための、固定細胞(fixed cell)の制御材料を用いる。
【0005】
人の細胞は一般に、固定細胞制御の定式化(formulation)において利用される。これらのサンプルは、動物サンプルのアルゴリズムとは非常に異なり得る特定の(人の)アルゴリズムが必要となる。基本的に、制御ランは安定でかつ正確であるが、特定種(specific species)の応答は、化学的な、流体力学的な、計算手法的なあるいは他の理由のために、逸脱するかもしれない。患者ベースの方法は、固定細胞制御で性能チェックを増やすことができるかつ種毎にシステムが正確に動作していることを確認できる、種特定分析(species-specific analyses)を提供する。
【0006】
後でわかるように、この発明の方法はまた非血液的システムにおける潜在的な応用を有する。化学分析器は、システム制御を証明するために光学的基準を共通に持っている。研究室の品質結果に関して、合格(qualification)または不合格(disqualification)に対応する結果によってシステムの故障を検出するための、数多くの方法が提案されている。これらの方法はしばしば、検体特定制御限界(analyte-specific control limits)を使用する(Chembrowski, George S., “Thoughts on quality-control systems: a laboratorian’s perspective,”「品質制御システムの考察:研究者の見方」 Clinical Chemistry 43:5, 886-892, 1997を参照されたい。)。患者ベースの品質保証の1つの追加の利点は、化学制御製品は一般に人が期待する性能に基づいていて、それは非人用サンプルと非常に異なるということである。化学分析器についての患者ベースの品質保証の1つの批判は、多くの血液パラメータとは違って、化学結果は広い基準間隔を有しかつ臨床的に病気の患者において非常に広い変動を有することである。ルール(rules)またはバッチサイズ(batch size)における特定検体の変更が要求される。この発明の理解を容易にするために、好ましい実施例の説明は主として血液応用へ向けられる。
【0007】
動物用市場はコストに非常に敏感であり、制御は、人でのやり方、これは8時間シフト毎におよそ少なくとも1回固定細胞制御をランするやり方、と同じ態様では行われない。したがって、患者サンプル上で行う加重移動平均の使用は動物応用に対して利点がある。さらに、加重移動平均は、動物応用において付加的な利点、費用が正常な患者でのラン中にカバーされ、余計な制御材料が必要でなく、消耗品を使える、という利点がある。固定細胞制御の分析器においても、患者サンプルへ移動平均アルゴリズムを適用することからの利点は大きい。なぜなら、固定細胞制御の材料分析は、制御ラン間において患者ランの数および時間が増えるにつれてパワーを失うからである(Westgard “QP-14: What’s wrong with statistical quality control? - Westgard QC”; ww.westgard.comを参照されたい。)。
【0008】
ブル(Bull’s)の移動平均アルゴリズムが既に、動物応用のための自動化した血液分析器における患者結果を追跡するために使用されている(Sysmex XT-V; www.sysmex.com; 1-800-462-1262; Siemens Advia(登録商標) 120 Hematology System; www.medical.siemens.com; 1-800-888-7436; Abbott Cell-Dyn(登録商標) 3700; www.abbottdiagnostics.com; (847) 937-6100)を参照されたい。)。ブルのアルゴリズムは以下の態様で書かれている(Bull B.S., et al. “A study of various estimators for the derivation of quality control procedures from patient erythrocyte indices”「患者赤血球指数からの品質制御手順の逸脱に関する種々の評価の研究」, Am. J. Clin. Pathol. 1974; Vol. 61:473-481を参照されたい。)。
【0009】
【数1】
一般に、ブルのアルゴリズムは、上記数1に基づいて、20個の連続する患者結果を1つのブルバッチ(Bull batch)へグループ化する。以下の論理フローはブルバッチの値を判定するための上記数1において使用するステップを記述する。
【0010】
1.最初のN=20サンプル(これは最初のブルバッチである)の平均を判定する。
【0011】
2.次のN=20サンプルの各々について、各患者結果と前のブルバッチとの間の絶対差を計算する。
【0012】
3.ステップ(2)からのすべての値を合計する(合計内の差の符号は維持する)。
【0013】
4.ステップ(3)からの結果を2乗してNで割る。
【0014】
5.ステップ(4)からの結果を先のブルバッチへ加えて、現在のブルバッチを定義する。
【0015】
6.残りのすべてのブルバッチ計算のためにステップ(2)‐(5)を繰り返す。
【0016】
個々の患者結果から概略のバッチを生成するために、ブルのアルゴリズムを適用する際の、上で述べたステップの図形表現/フローチャートが図1Aに示される。
【0017】
患者サンプルを1つの管理図へ要約するためにブルバッチを利用する多くの利点がある。管理図は分析器上で表示されるので、固定細胞制御テストの間の期間中であっても、分析器を再校正する必要があるかどうかを、臨床医が判断できる。ブルの加重移動平均アルゴリズムは、バッチ結果上における、1つのサンプルの変動の強い影響を減じるための手段を提供する。また、赤血球指数(red cell indices)、すなわち、RBC(red blood cells赤血球)、MCV(mean corpuscular volume平均赤血球容積)、HGB(hemoglobinヘモグロビン)、HCT(hematocritヘマトクリット値(赤血球容積率))、MCH(mean corpuscular hemoglobin平均赤血球ヘモグロビン量)、およびMCHC(mean corpuscular hemoglobin concentration平均赤血球ヘモグロビン濃度)について分析を利用することは、それらのパラメータのいくつか(MCV、MCHおよびMCHC)が厳しい正常変動を有するので、付加的な利点を持っている。患者群について、MCV、MCHおよびMCHCにおける大きな変動を生じる2、3の臨床的条件があるので、多病(multiple sick)患者や腫瘍患者を診断する専門家に関する多くの問題が軽減され得る。
【0018】
臨床的なフラグまたは不可能応答(ショートサンプルから生じるゼロのような)を有するランを除去することによって、バッチ結果が、患者応答、サンプル処理、分析器変動などに起因する、外れ値(outliers)によって重く重み付けされないチャート結果を容易に提供する。
【0019】
詳しく言うと、結果はバッチ分析へ含めるより前に修正されなければならない。バッチ内において特定の患者への繰り返しのランは除去される。臨床的なもしくは分析器フラグを持つランは除去される。不可能応答を伴うラン、たとえばショートサンプルのように機器全体の誤動作から取り除かれるようなものは、除去される。バッチ結果は、患者応答、サンプル処理または分析器変動のために起因する外れ値によって重く重み付けされることがない、チャート値を容易に提供する。患者応答またはシステムの誤動作のために、分析器上の正常に測定した群よりかなり異なる報告を患者結果として定義するようなランは、バッチへ大きな影響を与えない(図1(a))。フラギング(flagging)や他の内部的なチェックのために、これらの結果はしばしばユーザへ報告されない。20サンプル平均のバッチ結果は、患者群の結果を非常によく追跡する。
【0020】
図1は、生の患者結果およびブルバッチとしての両方のMCHC結果の表現を示す。上で述べたように、図1(a)に示す、外れ値のランがブルバッチ上において制限された影響を持つように示される。さらに、図1(b)は図1(a)から設定した同じデータを示し、外れ値を排除して結果を拡大し、ブルバッチが患者群の結果を非常にうまく追跡することを確認する。
【0021】
詳しく言うと、図1は自動化した血液分析器のための関連するブルバッチでのMCHCの馬(equine)の患者結果の1組のグラフである。図1(a)はすべてのデータを含み、ブルバッチ(バッチ毎に20ラン)上において外れ値からの小さい影響を示す。図1(b)はブルバッチが群変動を追跡することを示す図1(a)から取った、機器応答の最も大きな群を拡大したものである。
【0022】
ブルバッチが限界の外の傾向またはバイアス(trend or bias)を示すとき、フィードバックを提供するために、多くの従来の血液分析器において管理図ルール(control chart rules)が適切である。標準的なウェストガードルール(Westgard Rules)が既に、化学や血液の自動化分析器における加重移動平均の多くの応用において用いられている(Westgard J.O., et al. “A Multi-Rule Shewhart Chart for Quality Control in Clinical Chemistry”「臨床化学における品質制御のためのマルチルールのシューハート管理図」, Clin. Chem. 27/3, 493-501, 1981、 Koch D.D. “Selection of Medically Useful Quality-Control Procedures for Individual Tests Done in a Multitest Analytical System”「マルチテスト分析システムにおいて行われる個々のテストのための医学的に有用な品質制御の選択」, Clin. Chem., Vol. 36, No 2: 230-233, 1990、Lunetzky ES Cembrowski GS, “Performance characteristics of Bull's multirule algorithm for the quality control of multichannel hematology analyzers”「マルチチャネルの血液分析器の品質制御のためのブルのマルチルールアルゴリズムの性能特性」, American Journal of Clinical Pathology, 1987 Nov. 88(5):634-8.を参照されたい。)。ブルバッチ上で実現されるルールは、各ブルバッチが20患者ランに対応しているので、同じ数の患者結果より高いパワーを持ち得る。ランを、先のバッチ値を含むバッチへグループ化する動作は平滑化の効果を提供し、そのために、さもなければ10ポイントを必要とするかもしれないルールがはるかに少ないポイントで利用され得る。
【0023】
すべてかもしくは大部分の従来の血液分析器において、人用か動物用かに限らず、分析器の校正が外れていて、たとえば光学ゲインのようなそれのパラメータの1つの調整が必要かどうかを判断するために、臨床医は、分析器上に表示されたグラフとして描かれた管理図を手動的に比較しなければならない。このことは、管理図が、周期的なランの固定細胞制御から抽出されたのか、または患者サンプルへ適用した加重移動平均から抽出されたのかに当てはまる。発明者が知る限り、患者サンプルに基づいて分析器の性能をモニタしかつ校正規格内に分析器を維持するためにフィードバックを通して分析器のプリセットパラメータをリアルタイムで調整する、人用血液分析器または動物用血液分析器のいずれにおいても、自動化した方法およびシステム用いられていない。
【発明の目的および概要】
【0024】
この発明の目的は、血液分析器のような診断機器をリアルタイムに校正するための自動化システムおよび方法を提供することである。
【0025】
この発明の他の目的は、校正規格内に分析器を維持するために、分析器の性能をモニタしかつフィードバックを通して分析器のパラメータを調整するように、自動的に加重移動平均アルゴリズムを採用する、血液分析器を校正するためのシステムおよび方法を提供することである。
【0026】
この発明のなおも他の目的は、加重移動平均アルゴリズム、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムを用いて、患者サンプルに基づいて、血液分析器のような人用または動物用診断機器を自動的に校正するためのシステムおよび方法を提供することである。
【0027】
この発明の別の目的は、公知の分析器校正システムおよび方法に固有の不利益を克服する、診断分析器を校正するための自動化システムおよび方法を提供することである。
【0028】
この発明によれば、先に述べたような血液分析器を含むがそれらには限定されない診断機器、動物または人応用に使われる、たとえば、IDEXX Laboratories, Inc.が製造したLaserCyte(登録商標)分析器 またはSysmex Corporationが製造した ProCyte Dx(登録商標) 分析器または, IDEXX Laboratories, Inc.が製造したCatalyst DX(登録商標)分析器 のような乾式試薬のテストスライドの化学分析器(ここでは、これらをまとめて「診断分析器」と呼ぶ。)の自動化したリアルタイム校正のためのシステムおよび方法が、分析器の予め設定しているパラメータ(プリセットパラメータ)(たとえば、光学ゲインのような)を使って分析器で計算した患者サンプルの診断(たとえば血液)結果を受け取り、そして、その患者サンプル診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用して加重平均診断結果を得る。次いで、ウェストガードルールまたは任意の他のSPC管理図ルールが加重平均診断結果へ適用される。管理図ルール(またはより好ましくはウェストガードルール)が限界または範囲(limits or ranges)を作り、それが、そのような限界または範囲内に加重平均診断結果が存在している程度をテストするために使用される。したがって、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲と比較される。もし、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るなら、プリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を使って分析器で計算した患者サンプルの診断結果へどんな倍率(multiplying factors)も適用されない。
【0029】
しかしながら、そのような比較の間に加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲外へ出るなら、この発明の方法およびシステムは、加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用して、管理図ルールの許容できる限界または範囲内に入っている、患者サンプルの調整した診断結果を得る。そのような調整済み診断結果は分析器によって読み出されもしくは表示され、患者サンプルの診断結果の一層正確な計算を表現する。
【0030】
また、加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から、1つまたはそれ以上の倍率が抽出される。倍率は、分析器のプリセットパラメータで分析器が行った計算を修正する際に用いられ、それによって、分析器のメモリにストアしている分析器のプリセットパラメータを実際に変更する必要なしに、そのような計算の結果を訂正することができる。したがって、たとえば、抽出した倍率を適用することによって、分析器の光学システムへの全体ゲインが1.03から1.04へ効果的に調整され得て、分析器によって読み出されまたは表示される患者サンプルの診断結果を一層正確に提供することができる。
【0031】
校正方法は好ましくは、一層正確な患者読み取り値を提供するために、計算結果がリアルタイムに自動的に調整され得るとともに、倍率(これは分析器のプリセットパラメータへ適用される)が絶えず変更され得るように、診断分析器が患者サンプル結果を生成するとき毎に適用される。
【0032】
この発明のより好ましい実施例においては、患者サンプルへ適用する加重移動平均アルゴリズムはブルのアルゴリズムである。さらに、この発明の他の好ましい形態においては、加重移動平均アルゴリズムへ適用する管理図ルールはウェストガードルールである。使用に際して、特に、人用分析器を運用するとき、ユーザは調整が必要らしいという警告を受け得る。ユーザは、そして、調整が適切に、すなわち追加のサンプルを実行する前に確実に行われるように、制御流体による調整および追跡を許容する。動物応用のためには、調整が自動的に行われる。また、動物の分野において、ターゲットおよび範囲は典型的に特定種、たとえば犬、猫、馬である。
【0033】
この発明の自動化校正方法を実現するシステムは、ソフトウェア、より正確にはアプリケーションプログラム、もしくはファームウェアまたはハードウェアによって実現され得る。このシステムはEEPROM(電子的に消去可能なプログラマブルROM)のようなメモリを含み、その中には、加重移動平均アルゴリズム、管理図ルール、ファジー論理、勾配降下アルゴリズムおよび倍率がストアされる。メモリまたは記憶装置が、分析器のプリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を使って分析器で計算した患者サンプルの未調整の診断結果、加重移動平均アルゴリズムの適用から結果的に得られた加重平均診断結果、およびファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から結果的に得られた調整済または訂正済の診断患者サンプルをストアするために設けられる。マイクロプロセサ、マイクロコントローラまたはCPUが加重移動平均アルゴリズム、管理図ルール、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムの患者データへの適用を実行し、または、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内かどうかを判断するための比較を行い、さらに、分析器のプリセットパラメータへ適用される倍率を使用するために用いられる。もちろん、そのような構成(たとえば、メモリ、マイクロプロセサおよび類似のもの)は分析器内に既に存在すること、そしてそのような構成はこの発明の自動校正方法の機能をランするに際して有利に利用され得るということがわかる。
【0034】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】図1Aは個々の患者結果から概略のバッチを生成するためにブルのアルゴリズムを適用する際に使用するステップの図形表現/フロー図である。
【図1】図1は自動診断分析器のための関連するブルバッチを有する機器のラン数に対するMCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)馬の患者サンプルの結果をプロットした1組のグラフであり、図1(a)はすべてのデータを含み、そしてすべてのバッチ(バッチ毎に20ラン)上の外れ値からの小さい影響を示し、図1(b)は図1(a)からの最も大きな群の機器応答の拡大を示しかつブルバッチが群変動を追跡することを示す。
【図2】図2はこの発明のシステムおよび方法において用いるターゲット応答(ブル)に対するファジー論理(fuzzy logic)ガウス相関関数(Gaussian correlation function)のグラフである。
【図2A】図2Aはこの発明のシステムおよび方法において用いるターゲット応答(ブル)に対するファジー論理比例相関関数(proportional correlation function)のグラフである。
【図3】図3は関係Y=(X−10)2+50(Yが縦軸、Xが横軸)を有し、導関数(微分係数)のために0.1に等しい勾配係数を有する勾配降下モデルのグラフであり、これは最小値収束機能のためにこの発明の方法およびシステムにおいて使用する勾配降下モデルの一例である。
【図3A】図3AはHGBの異なる値についてRBGゲインに対してプロットした相関関数のグラフである。
【図3B】図3Bはこの発明の方法に従って、相関する計算済みパラメータHCT、MCHおよびMCHCでRBC、MCVを調整した有効な結果に基づく、2‐d(2次元)勾配降下ファジー相関関数のチャートである。
【図4】図4は、診断分析器が実行している犬(canine)のサンプルについて生の患者サンプル結果をプロットする1組のグラフである。灰色のドットは時間順次の患者結果を表す。必要な場合、ブルの調整のためのターゲットおよびウェストガードルールのための基準範囲(reference ranges)が黒色で示される。詳しく言うと、図4(a)は機器のランに対するRBCをプロットし、図4(b)は機器のランに対するMCVをプロットし、図4(c)は機器のランに対するHGBをプロットし、図4(d)は機器のランに対するHCTをプロットし、図4(e)は機器のランに対するMCHをプロットし、そして図4(f)は機器のランに対するMCHCをプロットしたものである。
【図5】図5は、図4において使用した診断分析器のデータセットから計算し、この発明に従ってウェストガードルールがトリガする、勾配降下およびファジー論理による調整に基づいて訂正した値をプロットする1組のグラフである。この図で示す灰色の点は生の患者ブルバッチを表し、黒の点は調整論理が実現された後のブルバッチを表す。必要な場合、ブルターゲット(Bull target)および基準範囲が含まれる。図5(a)はブルバッチ数に対するRBCをプロットし、図5(b)はブルバッチ数に対するMCVをプロットし、図5(c)はブルバッチ数に対するHGBをプロットし、図5(d)はブルバッチ数に対するHCTをプロットし、図5(e)はブルバッチ数に対するMCHをプロットし、そして、図5(f)はブルバッチ数に対するMCHCをプロットしたものである。
【図6】図6は、この発明に従って患者サンプル結果への訂正が実現された後のHCT(パーセント)に対するPCV(ヘマトクリット値(血中血球容積))(パーセント)をプロットするグラフである。図6のグラフの縦軸がPCVのパーセント値を表し、横軸がHCTのパーセント値を表す。上限(UL)および下限(LL)が、PCVがHCTに等しい線と一緒に図6に示される。
【図7】図7は診断分析器のリアルタイム自動校正のための、この発明のシステムおよび方法の動作を示すフロー図である。
【図7A】図7Aは診断分析器のリアルタイム自動校正のための、この発明のシステムおよび方法の別の動作を示すフロー図であり、最適値が得られるまでファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用する際の好ましいインタラクティブプロセスを示す。
【図8】図8はこの発明に従って形成した診断分析器を校正するための自動化システムのブロック図であり、システムと診断分析器との間の協働をまた示している。
【図9】図9はこの発明に従って形成した診断分析器を校正するための自動化システムの別の実施例のブロック図であり、システムと診断分析器との間の協働をまた示している。
【好ましい実施例の詳細な説明】
【0036】
この発明の方法の1つの好ましい形態およびその方法を実現するシステムをここで説明する。この発明の1つの形態に従えば、血液分析器のような診断分析器をリアルタイムに校正するための自動化方法は、好ましくは、分析器のプリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を用いて分析器で計算した患者サンプルの診断(たとえば血液)結果を受けるステップ、およびその患者サンプルの診断結果に対して加重移動平均のアルゴリズムを適用して加重平均診断結果を得るステップを含む。方法はさらに、加重平均診断結果に管理図ルールを適用するステップ、および管理図ルールから限界または範囲−これは加重平均診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用される−を作るステップを含む。方法はさらに、加重平均診断結果をそのような管理図ルールの限界または範囲と比較するステップを含む。もし加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るなら、分析器のプリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を使って分析器で計算した患者サンプルの診断結果にどんな倍率も適用しない。
【0037】
しかしながら、そのような比較の間に、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲の外へ出るなら、この発明の方法はさらに、加重平均診断結果に対してファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用して、管理図ルールの許容できる限界または範囲内に入る、患者サンプルの調整された診断結果を得るステップを含む。そのような調整済の診断結果は分析器によって読み出されもしくは表示され、患者サンプルの診断結果の一層正確な計算を提供する。
【0038】
さらに、自動校正方法は、加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から、1つまたはそれ以上の倍率を抽出するステップ、およびその倍率によって、分析器のメモリにストアしている分析器のプリセットパラメータを実際に変更する必要なしに、プリセットパラメータで分析器が行う計算を修正してその計算の結果を訂正するステップを含む。したがって、たとえば、抽出した倍率を適用することによって、分析器の光学システムの全体ゲインが1.03から1.04へ効果的に調整され、分析器が読み出しもしくは表示する患者サンプルの診断結果を一層正確に提供する。
【0039】
校正方法は好ましくは、計算した結果がリアルタイムで調整され得て、そして一層正確な患者の読み取り値を提供するために、必要に応じて、倍率(これは分析器のプリセットパラメータに適用される)が絶えずに変更され得るように、診断分析器が患者サンプル結果を発生するとき毎に適用される。
【0040】
この発明の好ましい実施例において、患者サンプルへ適用される加重移動平均アルゴリズムはブルのアルゴリズムである。この発明の他の好ましい形態においては、加重移動平均アルゴリズムに適用される管理図ルールはウェストガードのルールであり、このウェストガードのルールの適用のために赤血球指数のターゲットおよび範囲が抽出される。使用に際して、特に、人用分析器を運用するとき、ユーザは調整が必要らしいことを警告される。ユーザはそして、調整が適切に、すなわち追加のサンプルのランの前に確実になされるようにするために、制御流体での調整および追跡を許容する。動物応用のためには、調整は自動的に行われ得る。また、動物応用のために、赤血球指数ターゲットおよび範囲が動物の或る選択された種から抽出される。すなわち、動物の分野において、ターゲットおよび範囲は典型的に特定の種、たとえば犬、猫、馬である。
【0041】
この発明の1つの形態によれば、管理図ルールは、ブルバッチが或る限界の外の傾向またはバイアスを示すとき、フィードバックを提供する方法によって実現される。先に述べたように、この発明のシステムおよび方法は好ましくはウェストガードのルールを用いる。
【0042】
この発明の方法は好ましくは、ブルバッチを用いる管理図のために2つのルールを選択する。第1のものは2SLとして認識され、そこでは2つの連続するバッチが同じ特定の限界を超えるとき制御誤差(control error)が発生される。第2のものは4/(バー)Xとして認識され、そこでは、4つの連続するバッチがターゲットの一方側にあるとき制御誤差を発生する。
【0043】
動物応用において、特に、種独特の変動の独自の学習に基づいて、MCV、MCHおよびMCHCについての限界が既に定義されている。種によって使用される好ましい具体的な数値が表1Aに示される。
【0044】
【表1A】
表1Bは表1Aに示す同じデータを示していて、表1Aに示す範囲に代えて表1Bでは間隔を示す。
【0045】
【表1B】
特に、MCHCは、結果的に低いMCHCの値になる臨床的条件が比較的稀なので、機器の性能を測定するために有用である。さらに、生体内溶血(vivo hemolysis)において血管内の血液の病気(intravascular hemolytic disease)に関連するMCHCの増加は比較的稀である。不十分なサンプル処理のための試験管内溶血(vitro hemolysis)が問題であり、したがって、適切なサンプル処理の技術が習得されなければならない。脂血症(lipemia)やハインツ小体(Heinz body)の形成を引き起こす条件が問題であり、結果的に増加したヘモグロビンを間違って測定したり、増加したMCHCの計算を生じたりする(Thrall MA, Baker DC, Campbell T, et al., “Veterinary Hematology and Clinical Chemistry,”「動物血液(学)および臨床化学」 Ames, IA:Blackwell Publishing; 2006を参照されたい。)。
【0046】
RBC(M/ul)、MCV(fl)、およびHGB(g/dl)と計算したパラメータ(HCT(%))、MCH(g)およびMCHC(g)の間の関係は、この発明の方法に従って、測定したパラメータを調整するための基礎を提供する。HCT、MCHおよびMCHC間の関係が次の数2、数3および数4にそれぞれ示される。
【0047】
【数2】
【0048】
【数3】
【0049】
【数4】
MCV、MCHおよびMCHCがターゲットおよび範囲を有するので、数2ないし数4は3つの未知数(RBC、HGBおよびHCT)を伴う3つの式を提供する。MCHおよびMCHCは独立した式ではない(MCHはMCVによって直接MCHCに関連付けられる)ので、3つの未知数(RBC、HGBおよびHCT)を有するただ2つの式(数2および数4)がある。この発明の方法に従って、勾配降下アルゴリズム(Haykin, Simon, “Neural Networks: A Comprehensive Foundation” 「ニューラルネットワーク:総合基礎」(2nd Edition), 1998を参照されたい。)およびファジー論理(Yen, John and Reza Langari, “Fuzzy Logic: Intelligence, Control, and Information"「ファジー論理:理解、制御および情報」, 1998を参照されたい。)が用いられ、ファジー論理の原理に従ってHCT、MCHおよびMCHCについてMCV調整(MCVターゲットに基づく)とともに対にするための最適化したRBCおよびHGB調整を提供する。単純な結果の確認は、患者サンプルを割ることおよび結果を確認するために回転した(spun)HCT(PCV)を行うによってなされ得る。
【0050】
詳しくいうと、ファジー論理アルゴリズムがこの発明において利用され、上の式のシステムに加えて、専門家の人の決定を取り入れる。ファジー論理は伝統的な論理プログラミングに対する改善を提供し、場合分け文(if-then)がどちらかの条件のための適宜の動作によって、その表現が真であるか偽であるかを判断するために使用される。ファジー論理は、たとえば30%または70%真である値の正しさのレベルを与える。ファジー論理の適用の一例は、人の年齢が35歳であるなら年老いているかまたは若いかを判断することであり、それは比較の原点に依存する。ファジー論理は文脈内に専門家の論理を取り入れる。この発明におけるファジー論理を実現するために、血液の分析の結果および分割した基準との比較において、ソフトウェアで実現したエキスパートシステムが、データに基づく動作を定義する各論理入力を記述する。これらの論理入力は次いで、ソフトウェアツールが前方への移動を用いる、ファジー関係に翻訳される。論理入力は基本的にファジー論理アルゴリズムのためのトレーニングセットであり、それは次いで、新しいテストケース(test cases)とともに実現されかつ比較される。
【0051】
この発明に従って、ファジー論理はターゲット、範囲および数2ないし数4を用いて実現され、そしてこの組み合わせは、分析器の計算した結果に積極的に影響を与える分析システムの調整を決定する基礎を提供する。自動化した方法やシステムが血液分析器のような診断分析器によってどのように患者サンプルの結果をリアルタイムに訂正したり分析器を校正したりするために使用されるかという一例がここで説明される。この例において、血液機器がバイアスされていて、そして図4(a)‐図4(f)がRBC、MCV、HGB、HCT、MCHおよびMCHCの判定における機器のバイアスの結果を示す。ターゲット範囲がMCV、MCHおよびMCHCについていか先の表1に含まれる。ターゲットは、範囲の重なり合いの点の密度のためにMCHおよびMCHCのグラフ上で部分的に塞がれている。
【0052】
ガウス相関関数(Fc)、数5Aおよび図2がエキスパートシステム分析に基づく、ターゲットへの応答上の1組のパラメータの影響の「正しさ」を記述するために使用される。数5AからのパラメータAおよびσ(シグマ)は、以下に説明されるが、パラメータ毎の正しい振幅(amplitude)と幅(width)にガウス関数を操作するために選択される変数を表す。これらの変数は表1Aまたは表1Bからの許容される範囲のターゲットおよびサイズの信頼に基づいて調整される。
【0053】
【数5A】
ガウス関数に対する別のものは比例関数である。比例関数は、図2A(Fc(X)=0 if |X| > 5)で示すように、傾きmおよびy切片(y-intercept)Aが直線的な応答を有することを除いて、ガウス関数と同様である。Fc(X)=0 if |mX| > Aとなるように、比例関数の関係が数5Bで有効な限界とともに示される。
【0054】
【数5B】
ファジー論理相関関数は最適ターゲット応答で最大ピークを有し、最適値から離れるように応答が移動するにつれて下へ傾く。図2はガウス相関関数の使用を示していて、そこでは、基準ターゲットA1、シグマ=2に対する入力が示される。図2Aは比例相関関数の使用を示し、そこでは、入力は基準ターゲットA=1、傾き=0.2についてである。
【0055】
ファジーシステムをトレーニングすることは、パラメータを最適化するための手段を提供し、そのためにより広い範囲を有するパラメータにおける小さな変化は測定した全体の変動においてわずかの影響を持つ。Aの操作値が関数の振幅に影響を与え、残りのパラメータへの比較的に高い(>1)または低い(<1)影響を与える。sの操作数値は曲線の幅に影響を与える。sの操作値が曲線の幅に影響し、より大きな操作値は、結果に影響を与える前のターゲットからのより大きな変動のための基礎を与え、より小さい操作値は結果の値への一層速い影響を有する。
【0056】
この発明の方法において用いる勾配降下アルゴリズム(Haykin, Simon, “Neural Networks: A Comprehensive Foundation”「ニューラルネットワーク:総合基礎」 (2nd Edition), 1998を参照されたい。)は、現在の位置に近い領域において関数の知識(knowledge of function)を有するとき、関数の最小値を探索するための技術を提供する。一般的なブローチは、場所(開始点のために何も前もっての知識は不要だが、アルゴリズムは最小値へ近づき始めると一層速く収束する)において開始して、その場所における関数の傾きを判定することである。傾きは最小値へ向かって進む方向およびそのステップの大きさを判定するのに使用される。スカラ乗算器が、そのステップのサイズを加速しまたは加減するために、傾きの大きさに適用され得る。小さな傾きは収束するのに長時間かかるが、大きな傾きは一層速く遠くまで移動して最小値付近で発振を生じる。
【0057】
勾配降下アルゴリズムは、最小値を探索するための閉形式解(closed form solution)はないので、数2ないし数4に関連する。この考えは、HGBを増加させることによって、またはRBCおよび/またはMCVを減少させることによって、MCHCが増加され得るということである。MCHの評価はMCVに関係しない情報を提供し、HCTの評価はHGBに関係しない情報を提供する。RBC、MCVおよび/またはHGB上において右方向に移動することによって、これらの計算した関係のすべてについて最適応答を獲得することができる。
【0058】
勾配降下アルゴリズムへの1つの共通の落とし穴は、その方法が行き詰まって大域的最小値(global minima)に達しないような関数において、局所的最小値(local minima)があるかどうかを明示できる。この発明の方法によって最小化しようと試みている式のシステムの利点は、関係はすべて第1階(first order)であり、論理は常に大域的最小値において収束するべきであるので、局所的最小値がないことである。
【0059】
この発明において使用する勾配降下アルゴリズムを使って認識した2次関数および付属値(associated values)の一例が図3に示される。方法(アルゴリズム)は、最小値から遠いときは大きなステップを作り、最小値に近づくにつれてあまり積極的ではない移動を作るということが、移動矢印のサイズおよび方向によって明らかである。この発明で採用したこのアプローチは、HCT、MCHおよびMCHC応答に関係する基準とともに、RBC、MCVおよびHGBを最適化するための方法を提供する。応答と特定種のターゲットとの間の差異に対して重み付けを与えるために、ファジー論理がこの発明の方法で使用される。数5で規定するガウス関数が、この方法においては、図6に示す相関関数(Fc)への入力として使用される。相関関数は、ブルバッチの関数として、各パラメータ(RBC、MCV、HGB、HCT、MCHおよびMCHC)についてN個のガウス関数の結果をとる。結果は、調整に基づいて結果がどのように相関するかを定義する単一の値である。この発明に従ってこの相関関数出力値を最適化することは、勾配降下最小化アルゴリズムの基礎を提供する。
【0060】
【数6】
2‐d(2次元)勾配降下アルゴリズムは、MCVが既にターゲット値を有するので、HCT、MCHおよびMCHCに対してRBCおよびHGBを最適化するために使用され得る。2‐dマップのための一定のHGB曲線の表現が図3Aに示される。勾配降下アルゴリズムで使用するモデルへこれらの曲線を翻訳することは、図3Bに示す勾配降下アルゴリズムがそれに後続するので、2‐dマップの一例を提供する。すべての点において、すべての8つの最近接(nearest neighbor)位置における値が評価され、中心点が最大値になるまで、最大値へ移動する。
【0061】
したがって、図3Aは相関関数のグラフである。各曲線は、係数を0.7から1.30の範囲にすることによってRBCが変化したときの、一定のHGBおよびファジー論理相関関数を表す。HGBの係数範囲は0.90から1.10である。太い実線は0.90におけるHGBを表し、太い灰色の実線は0.95のときを表し、実線は1.00のときを表し、黒の点線は1.05のときを表し、灰色の点線は1.10のときを表す。
【0062】
図3Bは、相関する計算したパラメータHCT、MCHおよびMCHCでのRBC、MCVおよびHGB上の調整の有効な結果に基づく2‐d勾配降下ファジー相関関数の表である。勾配降下マップは(1,1)から開始し、RBCおよびHGBへの調整はなく、最適場所へ移動している。
【0063】
この発明の方法を説明するために先に述べた例において、図4において使用した同じデータセットがついで、上で定義したウェストガードルール、勾配降下アルゴリズムおよびファジー論理を用いて分析され、分析器の患者血液結果における調整を規定し、ついで更新した機器結果およびブルバッチを計算する。図5は、この発明に従った、これらの結果に対する調整の前後の結果を示す。HGBはアルゴリズムに基づいて調整されておらず、データ点は生のブルバッチと調整済のブルバッチについて完全にオーバラップしている。
【0064】
この発明のシステム論理が、RBCに対するわずかの変化、MCVに対する一層大きな変化、およびHGB、HCTに対する変化なしを作る。HCTは安定化されかつPCV(packed cell volume:ヘマトクリット値(血中血球容積))と一致される。
【0065】
図6は、この発明に従ってブル調整が行われた後の、機器が報告した一連のHCT対PCVを示す。MCHおよびMCHCはマークを付した改良を示し、図5に示すように、十分ターゲット内に入っている。
【0066】
図7は、血液分析器のような診断分析器を校正するための、この方法の自動化したシステムの動作を説明する簡単なフロー図である。患者サンプルに基づいて分析器の計算から結果的に生じた患者サンプルの診断読み取り値は、加重移動平均アルゴリズムが適用されるサブルーチンにおいて動作する(ステップS1)。好ましくは、この加重移動平均アルゴリズムはブルのアルゴリズムである。分析器は分析器のプリセットパラメータ(たとえば、光学ゲインのような)を用いて診断結果を計算する。このサブルーチンが加重平均した診断結果を与える。
【0067】
ついで、ウェストガードルールまたは任意の他のSPC管理図ルールが加重平均した診断結果に適用される(ステップS2)。管理図ルール(または一層好ましくは、ウェストガードルール)は限界または範囲を作り、それは加重平均した診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用される。したがって、加重平均した診断結果は、ステップS2において、管理図ルールの限界または範囲と比較される。加重平均した診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るなら、プリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を使って分析器で計算した患者サンプル診断結果へ倍率は適用されない(ステップS3)。
【0068】
しかしながら、ステップS2における比較の間に、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲の外へ出るなら、この発明の方法およびシステムはついで、ファジー論理(ステップS4)および勾配降下アルゴリズム(ステップS5)を加重平均した診断結果へ適用し、管理図ルールの許容できる限界や範囲に入る患者サンプルの調整済みの診断結果を得る。そのような、調整済みの診断結果は、分析器によって読み出されまたは表示され(ステップS6)、患者サンプルの一層正確な計算を提示する。
【0069】
また、加重平均した診断結果へのファジー論理(ステップS4)および勾配降下アルゴリズム(ステップS5)の適用から、1つまたはそれ以上の倍率が抽出される(ステップS7)。ステップS8に示すように、倍率は、プリセットパラメータで分析器が行った計算を修正して、分析器のメモリにストアしている分析器のプリセットパラメータを実際に変更する必要なしに、そのような計算の結果を訂正する。したがって、たとえば、抽出した倍率を適用することによって、分析器の光学システムの全体のゲインが効果的に、1.03から1.04へ調整され得て、一層正確に、分析器データ読み出したりまたは表示したりする患者サンプル診断結果を提供する。
【0070】
校正方法は、好ましくは、計算した結果がリアルタイムに自動的に調整され得るように、倍率は診断分析器が患者サンプル結果を生成するとき毎に適用され、そして、一層正確な患者読み取り値を提供するためには、倍率(分析器のプリセットパラメータに適用する)は必要に応じて絶えず変更され得る。
【0071】
図7Aは診断分析器を校正するための、この発明の自動化したシステムの別の動作を説明する簡単なフロー図である。プロセスの最初のステップは患者サンプルを実行することである(ステップS10)。患者結果が完了した(ステップS11)後、この発明の自動化システムは、ブルバッチのようなバッチを適格にするのに十分なサンプルがあるかどうかの判断を行う(ステップS12)。バッチを適格にするのに十分でないとき、システムは、追加の患者結果を入手する(ステップS11)。しかしながら、バッチを適格にするのに十分なサンプルがあるときは、この発明の方法に従って、次いで患者結果はバッチされる(ステップS13)。ここで、ウェストガードルールのような管理図ルールがバッチした患者結果へ適用される(ステップS14)。
【0072】
その後、この発明の方法に従って、自動化したシステムは、管理図ルールで作った限界または範囲内に患者診断結果があるかどうか判断する(ステップS15)。もし、患者診断結果がそのような管理図の限界または範囲内なら、診断結果にはさらなる訂正は必要ではなく、患者結果は完全であり、自動化したシステムによって出力される(ステップS11)。しかしながら、ステップS15において患者診断結果が管理図ルールの限界または範囲の外にあるなら、ファジー論理(ステップS16)および勾配降下アルゴリズム(ステップS17)が診断結果に適用され、調整済みの患者診断結果を得る。
【0073】
この発明の自動化したシステムが、調整済みの診断結果が最適化されていないと判断した(ステップS18)なら、ファジー論理(ステップS16)および勾配降下アルゴリズム(ステップS17)が調整済み診断結果に繰り返し適用される。自動化したシステムが、最適化した値に既になっていることを判断すれば(ステップS18)、ついで、分析器のメモリにストアしている分析器のプリセットパラメータを実際に変更する必要なしに、プリセットパラメータで分析器が行った計算を修正する際に倍率が使用され、この倍率は次の患者サンプルのためにこの発明の自動化したシステムで適用する(ステップS19)。
【0074】
図8は、この発明の自動校正方法を実現するシステム2の1つの形態のブロック図である。このシステム2は、ソフトウェア、またはより正確には、アプリケーションプログラムによって、もしくはファームウェアまたはハードウェアによって実現することができる。システム2は、加重移動平均アルゴリズムをストアしたEEPRO(電子的に消去可能な読み出し専用メモリ)のようなメモリ4、管理図ルールをストアしたメモリ6、ファジー論理をストアしたメモリ8、勾配降下アルゴリズムをストアしたメモリ10および倍率をストアしたメモリ12を含む。メモリまたは記憶素子がまた、分析器によって判断される患者サンプル測定値をストアするためのメモリ14、分析器のプリセットパラメータをストアするためのメモリ16、分析器のプリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を使って分析器が計算した患者サンプルの調整済み診断結果をストアするためのメモリ18、加重移動平均アルゴリズムの適用から結果的に生じる加重平均診断結果をストアするためのメモリ20、およびファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から結果的に生じる調整したまたは訂正した診断患者サンプルをストアするためのメモリ22を有する。マイクロプロセサ、マイクロコントローラまたはCPU24は、加重移動平均アルゴリズム、管理図ルール、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムの患者データへの適用を実行する、または加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に有るかどうかの判断を行うため、そして分析器のプリセットパラメータへの倍率を抽出するために、用いられる。もちろん、そのような構成(たとえば、メモリ、マイクロプロセサなど)はすでに分析器26の中に存在し、そのような構成は、この発明の自動化した校正方法の機能を実行する際に従来から利用されているものでよい。
【0075】
図9はこの発明の自動校正方法を実現するシステム2の第2の形態のブロック図である。自動化システムは、プリセットパラメータを使っての患者診断サンプル上での計算を実行する診断分析器26をリアルタイムに校正する。好ましくは、自動校正システムは分析器のプリセットパラメータを使って分析器が計算した患者サンプルの診断結果を受け取る受信手段50、患者サンプル診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用する第1適用手段52、および加重平均診断結果へ管理図ルールを適用するとともに、管理図から限界または範囲‐この限界または範囲は加重平均診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用される‐を作る第2適用手段54を含む。自動化校正システムはさらに、第3適用手段56を含み、これは加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する。
【0076】
この発明の自動校正システムはまた、比較手段58を含み、この比較手段58は、加重平均診断結果を管理図ルールの限界または範囲と比較する。もし、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内にあるなら、プリセットパラメータを使って分析器26で計算した患者サンプル診断結果に倍率は適用しない。しかしながら、もし、加重平均診断結果が、そのような比較の間に管理図ルールの限界または範囲の外にあるなら、第3適用手段56は、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムを加重平均診断結果に適用し、管理図ルールの許容できる限界または範囲に入る患者サンプルの調整済みの診断結果を得る。
【0077】
システムはさらに読み出し手段または表示手段60を含み、それは、分析器26による調整済みの診断結果を読み出したりまたは表示したりする。自動校正システムはまた、加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から1つまたはそれ以上の倍率を抽出する抽出手段62、および分析器のプリセットパラメータを変更する必要なしに、分析器26の計算の結果を訂正するために、倍率によって、プリセットパラメータを用いて分析器26が実行した計算を修正する修正手段64を含む。
【0078】
この発明の別の好ましい実施例では、図9に示すように、自動化校正システムの第3適用手段56は、加重平均診断結果を得るために、患者サンプル診断結果へウェストガードのルールを適用する。自動化システムはウェストガードルールの適用のための赤血球指数を抽出する第2抽出手段66を含んでもよい。
【0079】
上で説明した自動校正システムのコンポーネンツはマイクロプロセサ、マイクロコントローラ、またはCPU24、もしくはディスクリートな電気部品または回路、もしくはソフトウェアを使って実現され得る。
【0080】
血液分析器のような自動化した診断分析器は、特定種のターゲット(特に、動物応用)、勾配降下アルゴリズムおよびファジー論理を有する赤血球指数のための血液学の基本を利用するこの発明のシステムおよび方法に従って、改善した安定性および減じられたバイアスを有する。HCTとのPCV(ヘマトクリット値)の単純な比較は、分析器の設定に対する適切な調整を証明し、参考検査室(reference laboratory)を有する固定細胞制御またはサンプル分割を利用しまたは利用しないで、正確さを保証する。この発明のシステムおよび方法は、動物血液分析器でそして獣医のオフィスにおいて全く有用である。そこでは、制御流体のコストがそれらの普通の使用を禁止し、多くが患者サンプルとともに用いるものとは異なるアルゴリズムを必要とする、人の固定細胞に基づく。
【0081】
システム性能をモニタし制御するために患者ベースの結果を使用することは、特定種変化が、結果を生成するために使用される態様で認識でき得るので、有効である。単一の患者結果は、決定をしたり、システム性能に関して動作をしたりするために十分なパワーを提供せず、集合患者ベースの結果は増強した分析パワーを提供する。分析サンプルの数が増えれば増えるほど、分析パワーを増大する。分析のためのランの時間長さや数が増えれば増えるほど、動作する前の時間が長くなる。高い分析パワーおよび即時応答時間を持つという要望のために、サンプルサイズと動作するための必要パワーのバランスを取ることが重要である。
【0082】
患者結果ではなくバッチが機器応答を表すことが基本的な前提でなければならず、バッチに含まれるサンプルがランダムな患者群からのものでなければならない。データがランダムである限り、サンプルは繰り返されず、同様の不正常な応答条件を有する患者結果の大きな群(2つの連続するバッチの30%以上が価値あるランである)は順番には実行せず、統計量(statistics)が、機器応答を表すバッチを生成するのに十分である。これらのバッチは、正確さのために、システム応答を調整するために使用され得る。
【0083】
バッチを用いて管理図へ患者サンプルを要約するのに多くの利点がある。ブルの論理はバッチの結果に1つのサンプルの変化の影響を減じるための手段を提供する。さらに、赤血球パラメータ(RBC、MCV、HGB、HCT、MCHおよびMCHC)のためにこの分析を利用することは、付加的な利点を持っている。なぜなら、MCV、MCHおよびMCHCを含むいくつかのパラメータは、結果の正確さに対して追加の情報を与えることができる、種の中で厳しい正常変動を有するからである。調整分析は特定のパラメータのための中央の基準範囲の値(central reference interval value)に基づく「ターゲット」を基準とするので、いくつかの問題が提起されている。これらの問題は、一般的には、多病患者を診断する専門家に関するもので、しかしながら、これは、患者群のためのMCV、MCHおよびMCHCにおける大きな変化を駆動する2、3の臨床的な条件があるので、緩和され得る。開業医は、群のMCHCが37または29の近くにバイアスされていると、システムが正しく機能していないことを認識し得る。しかしながら、この分析は、MCHがバイアスのこのレベルになる前に、バイアスを見つけかつ正すために最適化論理を利用する
特定種結果についての考察はまた、この分析での価値を提供する。人細胞に基づく固定細胞制御材料とともにシステムを考える。この機器は、MCV>80fLで共通に制御シーケンスおよびアルゴリズムを実行する。システムはこの材料については正しく機能するであろうが、犬のMCVは名目上は70fL前後であり、猫は<50fLであるので、特定種バイアスがある。この大きい範囲にわたる技術、アルゴリズムおよび性能によって、特定種調整が必要である。血液システムが年を経ると、制御材料とともに応答が直線にはならず、加重移動平均分析の応用は異なる種の正確なMCV値を保証する必要がある。
【0084】
説明してきたアプローチは、分析システムが正しく機能することを保証するための手段を提供し、かつ正確な性能を維持するためのフィードバック制御を与える手段を提供する。分析前誤差が、粗悪な準備を補償するために分析器への調整を駆動することがないことを補償するために、論理(logic)が含まれなければならない。たとえば、試験管内溶血(vitro hemolysis)において生じる矛盾しない分析前誤差は、結果的に高いMCHC値を生じるが、調整のためにバイアスされる正確な測定をそれが引き起こすので、機器は調整する必要がない。意味のある脂肪血症(lipemia)のような他の分析前問題は、自動分析に影響を及ぼす。これらの公知の条件のいくつかをブロックするために論理は正しい場所に置かれ得るが、しかし、開業医にまで適当な研究室の手法が正しい分析を補償する助けのために用いられるのを補償する。
【0085】
制御流体に関連してこの発明の方法を用いる患者サンプルでの性能を保証することによって追加の利点が実現される。なぜなら、この発明の方法が分析に静的なパワーを加えるための他の基準を提供するからである。他の血液パラメータのために加重移動平均分析のこの方法の応用は可能である。さらに、これらの方法は、化学分析器性能のために最適化され得て、また潜在的な価値を有する。分析の分析(analytical)パワーは、機器および/またはサンプル群からの大きな正常変動を有するシステムにおいてさえ、平均値が素早く収束するという知見によって引き出される。ここで説明したこの発明の方法は、選択したパラメータについて自動化した動物血液分析器を用いてテストしたが、それは動物化学へ直接一般化することができる。さらに、人血液および化学システムは、制御の使用を最適化しかつフィードバック制御を自動化するブルのアルゴリズムの実現の上でも前でも、この発明の方法を利用できる。
【0086】
この発明のシステムおよび方法は、分析器のディスプレイ上に現れたグラフや他のデータの臨床医による解釈に基づいて手動的に分析器に対する調整を臨床医がする必要なしに、分析器で行う計算に対して必要に応じて、リアルタイムに調整を行うので、臨床医における間違い、または可能性のある精密な機器のバイアスの過剰修正を最少にしまたは除去できる。
【符号の説明】
【0087】
2 …自動校正システム
4‐22 …メモリ
24 …マイクロプロセサ
26 …分析器
50 …受信手段
52 …第1適用手段
54 …第2適用手段
56 …第3適用手段
58 …比較手段
60 …ディスプレイ
62 …第1抽出手段
64 …修正手段
66 …第2抽出手段
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、人(human)や動物(veterinary(獣医学))用の診断機器に関し、より特定的には、そのような機器を校正するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析器のための患者ベース(patient-based)の品質保証に関して、いくつかの研究が発表されている。これらの研究のサブセット(部分集合)は、患者ベースの結果が分析器の性能に関する情報を提供できるということを、既に論証した(Ye JJ, Ingels SC, and Parvin CA, “Performance Evaluation and Planning for Patient-Based Quality Control Procedures,”「患者ベースの品質制御手順のための性能評価および設計」 Am J Clin Pathol 2000; 113: 240-248を参照されたい。)。他の調査およびアプローチを放棄する理由の一般的な中心点(focus)は、報告するものを基礎として、各患者の結果を適格とする(qualify)ことであった(Norbert W. Tietz, Ed. Fundamentals of Clinical Chemistry(臨床化学の基礎), Third Ed. Philadelphia, PA: W.B. Saunders Company; 1987: 249-251を参照されたい。)。1つだけの患者結果(patient result)は、その患者結果が報告するのに適当かどうかを判断するためには使えないという理由で、そのアプローチには基本的な欠陥がある。集計した患者結果から生成した個体群のデータを用いて機器のシステム性能をモニタするように、中心点をわずかに変更すれば、このアプローチは、有力で、全体性能に関する信頼できる情報を提供するであろう。
【0003】
ブルの移動平均(Bull’s moving averages)から始まって、X-Bまたは/XB(「/」はXBの上に引かれる横線(バー)を意味する。)と呼ばれる、加重移動平均アルゴリズム(weighted moving averages algorithms)が、人の血液(hematology)分析器の性能の分析のために1974年頃から既に使用されている(Bull B.S., et al., “A study of various estimators for the derivation of quality control procedures from patient erythrocyte indices”「患者の赤血球指数からの品質制御手順の起源についての各種評価の研究」, Am. J. Clin. Pathol. 1974; Vol. 61:473-481を参照されたい。)。それ以来、EWMA、XMまたは/(バー)XMと呼ばれる指数型加重移動平均アルゴリズム(exponentially weighted moving averages algorithms)を含む追加の方法論がすでに導入されかつ実現されている(Beckman Coulter Bulletin 9611 2006; www.beckmancoulter.com; 1-800-352-3433を参照されたい。)。人サンプル用の自動化した血液分析器において、機器性能および校正設定を判定するために、固定細胞制御(fixed cell controls)が共通的に用いられる。加重平均は、分析器上における患者サンプルのラン(run:実行)上で分析が行われ、かつその分析が制御ラン間のギャップを埋めるという利点がある。ランは、臨床・検査標準協会(Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI, Wayne, PA; http://www.clsi.org/; 1-877-447-1888)のような組織によってしばしば推奨されるように、通常、1シフトおよそ8時間かそれ以上毎に1回である。加重平均の使用は、次の制御を実行する時間の前であっても、結果が問題あるかもしれないと、早期に警告を与えることができる。
【0004】
診断機器は人および動物用の市場で長期にわたって使用されている。これらの機器は、血液分析器、血液化学分析器、および患者のある種の生理学的な特性を判定する機器を含む。動物用の市場で、VetTest(登録商標)化学分析器やVetAutoread(商標)自動血液分析器が遅くとも、1990年代から利用可能になっている。固定の光学基準を利用して機器性能を判定する、VetAutoread(商標)血液分析器のようないくつかの分析器は、本件出願人である、メイン州ウェストブルークのアイデックスラボラトリーズ(IDEXX Laboratories, Inc. of Westbrook, Maine, (www.idexx.com参照。))によって製造されている。IDEXX LaserCyte(登録商標)血液分析器のような他の分析器は、Qualibeads(商標)と呼ばれる光学性能を確保するために、固定のサイズおよび屈折率を有するポリマを取り入れる。さらに、兵庫県のシスメックス株式会社(Sysmex Corp. of Hyogo, Japan (www.sysmex.com参照。))によって製造されているSysmex XT-Vのような分析器は、CLSI(臨床・検査標準協会)のような組織によって提供されるガイドライン、たとえばthe College of American Pathologists (アメリカ病理学者の団体)(CAP, Northfield, IL; www.cap.org) および the American Society for Veterinary Clinical Pathology (獣医学臨床病理のためのアメリカの団体)(ASVCP) (Flatland B, Freeman KP, Friedrichs KR, et al., “ASVCP quality assurance guidelines: control of general analytical factors in veterinary laboratories,”「ASVCP品質保証ガイドライン:獣医学の研究所における一般的な分析要素」Vet Clin Pathol 39/3 (2010) 264-277を参照されたい。)に基づいて、分析(assay)性能を保証するための、固定細胞(fixed cell)の制御材料を用いる。
【0005】
人の細胞は一般に、固定細胞制御の定式化(formulation)において利用される。これらのサンプルは、動物サンプルのアルゴリズムとは非常に異なり得る特定の(人の)アルゴリズムが必要となる。基本的に、制御ランは安定でかつ正確であるが、特定種(specific species)の応答は、化学的な、流体力学的な、計算手法的なあるいは他の理由のために、逸脱するかもしれない。患者ベースの方法は、固定細胞制御で性能チェックを増やすことができるかつ種毎にシステムが正確に動作していることを確認できる、種特定分析(species-specific analyses)を提供する。
【0006】
後でわかるように、この発明の方法はまた非血液的システムにおける潜在的な応用を有する。化学分析器は、システム制御を証明するために光学的基準を共通に持っている。研究室の品質結果に関して、合格(qualification)または不合格(disqualification)に対応する結果によってシステムの故障を検出するための、数多くの方法が提案されている。これらの方法はしばしば、検体特定制御限界(analyte-specific control limits)を使用する(Chembrowski, George S., “Thoughts on quality-control systems: a laboratorian’s perspective,”「品質制御システムの考察:研究者の見方」 Clinical Chemistry 43:5, 886-892, 1997を参照されたい。)。患者ベースの品質保証の1つの追加の利点は、化学制御製品は一般に人が期待する性能に基づいていて、それは非人用サンプルと非常に異なるということである。化学分析器についての患者ベースの品質保証の1つの批判は、多くの血液パラメータとは違って、化学結果は広い基準間隔を有しかつ臨床的に病気の患者において非常に広い変動を有することである。ルール(rules)またはバッチサイズ(batch size)における特定検体の変更が要求される。この発明の理解を容易にするために、好ましい実施例の説明は主として血液応用へ向けられる。
【0007】
動物用市場はコストに非常に敏感であり、制御は、人でのやり方、これは8時間シフト毎におよそ少なくとも1回固定細胞制御をランするやり方、と同じ態様では行われない。したがって、患者サンプル上で行う加重移動平均の使用は動物応用に対して利点がある。さらに、加重移動平均は、動物応用において付加的な利点、費用が正常な患者でのラン中にカバーされ、余計な制御材料が必要でなく、消耗品を使える、という利点がある。固定細胞制御の分析器においても、患者サンプルへ移動平均アルゴリズムを適用することからの利点は大きい。なぜなら、固定細胞制御の材料分析は、制御ラン間において患者ランの数および時間が増えるにつれてパワーを失うからである(Westgard “QP-14: What’s wrong with statistical quality control? - Westgard QC”; ww.westgard.comを参照されたい。)。
【0008】
ブル(Bull’s)の移動平均アルゴリズムが既に、動物応用のための自動化した血液分析器における患者結果を追跡するために使用されている(Sysmex XT-V; www.sysmex.com; 1-800-462-1262; Siemens Advia(登録商標) 120 Hematology System; www.medical.siemens.com; 1-800-888-7436; Abbott Cell-Dyn(登録商標) 3700; www.abbottdiagnostics.com; (847) 937-6100)を参照されたい。)。ブルのアルゴリズムは以下の態様で書かれている(Bull B.S., et al. “A study of various estimators for the derivation of quality control procedures from patient erythrocyte indices”「患者赤血球指数からの品質制御手順の逸脱に関する種々の評価の研究」, Am. J. Clin. Pathol. 1974; Vol. 61:473-481を参照されたい。)。
【0009】
【数1】
一般に、ブルのアルゴリズムは、上記数1に基づいて、20個の連続する患者結果を1つのブルバッチ(Bull batch)へグループ化する。以下の論理フローはブルバッチの値を判定するための上記数1において使用するステップを記述する。
【0010】
1.最初のN=20サンプル(これは最初のブルバッチである)の平均を判定する。
【0011】
2.次のN=20サンプルの各々について、各患者結果と前のブルバッチとの間の絶対差を計算する。
【0012】
3.ステップ(2)からのすべての値を合計する(合計内の差の符号は維持する)。
【0013】
4.ステップ(3)からの結果を2乗してNで割る。
【0014】
5.ステップ(4)からの結果を先のブルバッチへ加えて、現在のブルバッチを定義する。
【0015】
6.残りのすべてのブルバッチ計算のためにステップ(2)‐(5)を繰り返す。
【0016】
個々の患者結果から概略のバッチを生成するために、ブルのアルゴリズムを適用する際の、上で述べたステップの図形表現/フローチャートが図1Aに示される。
【0017】
患者サンプルを1つの管理図へ要約するためにブルバッチを利用する多くの利点がある。管理図は分析器上で表示されるので、固定細胞制御テストの間の期間中であっても、分析器を再校正する必要があるかどうかを、臨床医が判断できる。ブルの加重移動平均アルゴリズムは、バッチ結果上における、1つのサンプルの変動の強い影響を減じるための手段を提供する。また、赤血球指数(red cell indices)、すなわち、RBC(red blood cells赤血球)、MCV(mean corpuscular volume平均赤血球容積)、HGB(hemoglobinヘモグロビン)、HCT(hematocritヘマトクリット値(赤血球容積率))、MCH(mean corpuscular hemoglobin平均赤血球ヘモグロビン量)、およびMCHC(mean corpuscular hemoglobin concentration平均赤血球ヘモグロビン濃度)について分析を利用することは、それらのパラメータのいくつか(MCV、MCHおよびMCHC)が厳しい正常変動を有するので、付加的な利点を持っている。患者群について、MCV、MCHおよびMCHCにおける大きな変動を生じる2、3の臨床的条件があるので、多病(multiple sick)患者や腫瘍患者を診断する専門家に関する多くの問題が軽減され得る。
【0018】
臨床的なフラグまたは不可能応答(ショートサンプルから生じるゼロのような)を有するランを除去することによって、バッチ結果が、患者応答、サンプル処理、分析器変動などに起因する、外れ値(outliers)によって重く重み付けされないチャート結果を容易に提供する。
【0019】
詳しく言うと、結果はバッチ分析へ含めるより前に修正されなければならない。バッチ内において特定の患者への繰り返しのランは除去される。臨床的なもしくは分析器フラグを持つランは除去される。不可能応答を伴うラン、たとえばショートサンプルのように機器全体の誤動作から取り除かれるようなものは、除去される。バッチ結果は、患者応答、サンプル処理または分析器変動のために起因する外れ値によって重く重み付けされることがない、チャート値を容易に提供する。患者応答またはシステムの誤動作のために、分析器上の正常に測定した群よりかなり異なる報告を患者結果として定義するようなランは、バッチへ大きな影響を与えない(図1(a))。フラギング(flagging)や他の内部的なチェックのために、これらの結果はしばしばユーザへ報告されない。20サンプル平均のバッチ結果は、患者群の結果を非常によく追跡する。
【0020】
図1は、生の患者結果およびブルバッチとしての両方のMCHC結果の表現を示す。上で述べたように、図1(a)に示す、外れ値のランがブルバッチ上において制限された影響を持つように示される。さらに、図1(b)は図1(a)から設定した同じデータを示し、外れ値を排除して結果を拡大し、ブルバッチが患者群の結果を非常にうまく追跡することを確認する。
【0021】
詳しく言うと、図1は自動化した血液分析器のための関連するブルバッチでのMCHCの馬(equine)の患者結果の1組のグラフである。図1(a)はすべてのデータを含み、ブルバッチ(バッチ毎に20ラン)上において外れ値からの小さい影響を示す。図1(b)はブルバッチが群変動を追跡することを示す図1(a)から取った、機器応答の最も大きな群を拡大したものである。
【0022】
ブルバッチが限界の外の傾向またはバイアス(trend or bias)を示すとき、フィードバックを提供するために、多くの従来の血液分析器において管理図ルール(control chart rules)が適切である。標準的なウェストガードルール(Westgard Rules)が既に、化学や血液の自動化分析器における加重移動平均の多くの応用において用いられている(Westgard J.O., et al. “A Multi-Rule Shewhart Chart for Quality Control in Clinical Chemistry”「臨床化学における品質制御のためのマルチルールのシューハート管理図」, Clin. Chem. 27/3, 493-501, 1981、 Koch D.D. “Selection of Medically Useful Quality-Control Procedures for Individual Tests Done in a Multitest Analytical System”「マルチテスト分析システムにおいて行われる個々のテストのための医学的に有用な品質制御の選択」, Clin. Chem., Vol. 36, No 2: 230-233, 1990、Lunetzky ES Cembrowski GS, “Performance characteristics of Bull's multirule algorithm for the quality control of multichannel hematology analyzers”「マルチチャネルの血液分析器の品質制御のためのブルのマルチルールアルゴリズムの性能特性」, American Journal of Clinical Pathology, 1987 Nov. 88(5):634-8.を参照されたい。)。ブルバッチ上で実現されるルールは、各ブルバッチが20患者ランに対応しているので、同じ数の患者結果より高いパワーを持ち得る。ランを、先のバッチ値を含むバッチへグループ化する動作は平滑化の効果を提供し、そのために、さもなければ10ポイントを必要とするかもしれないルールがはるかに少ないポイントで利用され得る。
【0023】
すべてかもしくは大部分の従来の血液分析器において、人用か動物用かに限らず、分析器の校正が外れていて、たとえば光学ゲインのようなそれのパラメータの1つの調整が必要かどうかを判断するために、臨床医は、分析器上に表示されたグラフとして描かれた管理図を手動的に比較しなければならない。このことは、管理図が、周期的なランの固定細胞制御から抽出されたのか、または患者サンプルへ適用した加重移動平均から抽出されたのかに当てはまる。発明者が知る限り、患者サンプルに基づいて分析器の性能をモニタしかつ校正規格内に分析器を維持するためにフィードバックを通して分析器のプリセットパラメータをリアルタイムで調整する、人用血液分析器または動物用血液分析器のいずれにおいても、自動化した方法およびシステム用いられていない。
【発明の目的および概要】
【0024】
この発明の目的は、血液分析器のような診断機器をリアルタイムに校正するための自動化システムおよび方法を提供することである。
【0025】
この発明の他の目的は、校正規格内に分析器を維持するために、分析器の性能をモニタしかつフィードバックを通して分析器のパラメータを調整するように、自動的に加重移動平均アルゴリズムを採用する、血液分析器を校正するためのシステムおよび方法を提供することである。
【0026】
この発明のなおも他の目的は、加重移動平均アルゴリズム、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムを用いて、患者サンプルに基づいて、血液分析器のような人用または動物用診断機器を自動的に校正するためのシステムおよび方法を提供することである。
【0027】
この発明の別の目的は、公知の分析器校正システムおよび方法に固有の不利益を克服する、診断分析器を校正するための自動化システムおよび方法を提供することである。
【0028】
この発明によれば、先に述べたような血液分析器を含むがそれらには限定されない診断機器、動物または人応用に使われる、たとえば、IDEXX Laboratories, Inc.が製造したLaserCyte(登録商標)分析器 またはSysmex Corporationが製造した ProCyte Dx(登録商標) 分析器または, IDEXX Laboratories, Inc.が製造したCatalyst DX(登録商標)分析器 のような乾式試薬のテストスライドの化学分析器(ここでは、これらをまとめて「診断分析器」と呼ぶ。)の自動化したリアルタイム校正のためのシステムおよび方法が、分析器の予め設定しているパラメータ(プリセットパラメータ)(たとえば、光学ゲインのような)を使って分析器で計算した患者サンプルの診断(たとえば血液)結果を受け取り、そして、その患者サンプル診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用して加重平均診断結果を得る。次いで、ウェストガードルールまたは任意の他のSPC管理図ルールが加重平均診断結果へ適用される。管理図ルール(またはより好ましくはウェストガードルール)が限界または範囲(limits or ranges)を作り、それが、そのような限界または範囲内に加重平均診断結果が存在している程度をテストするために使用される。したがって、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲と比較される。もし、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るなら、プリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を使って分析器で計算した患者サンプルの診断結果へどんな倍率(multiplying factors)も適用されない。
【0029】
しかしながら、そのような比較の間に加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲外へ出るなら、この発明の方法およびシステムは、加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用して、管理図ルールの許容できる限界または範囲内に入っている、患者サンプルの調整した診断結果を得る。そのような調整済み診断結果は分析器によって読み出されもしくは表示され、患者サンプルの診断結果の一層正確な計算を表現する。
【0030】
また、加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から、1つまたはそれ以上の倍率が抽出される。倍率は、分析器のプリセットパラメータで分析器が行った計算を修正する際に用いられ、それによって、分析器のメモリにストアしている分析器のプリセットパラメータを実際に変更する必要なしに、そのような計算の結果を訂正することができる。したがって、たとえば、抽出した倍率を適用することによって、分析器の光学システムへの全体ゲインが1.03から1.04へ効果的に調整され得て、分析器によって読み出されまたは表示される患者サンプルの診断結果を一層正確に提供することができる。
【0031】
校正方法は好ましくは、一層正確な患者読み取り値を提供するために、計算結果がリアルタイムに自動的に調整され得るとともに、倍率(これは分析器のプリセットパラメータへ適用される)が絶えず変更され得るように、診断分析器が患者サンプル結果を生成するとき毎に適用される。
【0032】
この発明のより好ましい実施例においては、患者サンプルへ適用する加重移動平均アルゴリズムはブルのアルゴリズムである。さらに、この発明の他の好ましい形態においては、加重移動平均アルゴリズムへ適用する管理図ルールはウェストガードルールである。使用に際して、特に、人用分析器を運用するとき、ユーザは調整が必要らしいという警告を受け得る。ユーザは、そして、調整が適切に、すなわち追加のサンプルを実行する前に確実に行われるように、制御流体による調整および追跡を許容する。動物応用のためには、調整が自動的に行われる。また、動物の分野において、ターゲットおよび範囲は典型的に特定種、たとえば犬、猫、馬である。
【0033】
この発明の自動化校正方法を実現するシステムは、ソフトウェア、より正確にはアプリケーションプログラム、もしくはファームウェアまたはハードウェアによって実現され得る。このシステムはEEPROM(電子的に消去可能なプログラマブルROM)のようなメモリを含み、その中には、加重移動平均アルゴリズム、管理図ルール、ファジー論理、勾配降下アルゴリズムおよび倍率がストアされる。メモリまたは記憶装置が、分析器のプリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を使って分析器で計算した患者サンプルの未調整の診断結果、加重移動平均アルゴリズムの適用から結果的に得られた加重平均診断結果、およびファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から結果的に得られた調整済または訂正済の診断患者サンプルをストアするために設けられる。マイクロプロセサ、マイクロコントローラまたはCPUが加重移動平均アルゴリズム、管理図ルール、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムの患者データへの適用を実行し、または、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内かどうかを判断するための比較を行い、さらに、分析器のプリセットパラメータへ適用される倍率を使用するために用いられる。もちろん、そのような構成(たとえば、メモリ、マイクロプロセサおよび類似のもの)は分析器内に既に存在すること、そしてそのような構成はこの発明の自動校正方法の機能をランするに際して有利に利用され得るということがわかる。
【0034】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】図1Aは個々の患者結果から概略のバッチを生成するためにブルのアルゴリズムを適用する際に使用するステップの図形表現/フロー図である。
【図1】図1は自動診断分析器のための関連するブルバッチを有する機器のラン数に対するMCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)馬の患者サンプルの結果をプロットした1組のグラフであり、図1(a)はすべてのデータを含み、そしてすべてのバッチ(バッチ毎に20ラン)上の外れ値からの小さい影響を示し、図1(b)は図1(a)からの最も大きな群の機器応答の拡大を示しかつブルバッチが群変動を追跡することを示す。
【図2】図2はこの発明のシステムおよび方法において用いるターゲット応答(ブル)に対するファジー論理(fuzzy logic)ガウス相関関数(Gaussian correlation function)のグラフである。
【図2A】図2Aはこの発明のシステムおよび方法において用いるターゲット応答(ブル)に対するファジー論理比例相関関数(proportional correlation function)のグラフである。
【図3】図3は関係Y=(X−10)2+50(Yが縦軸、Xが横軸)を有し、導関数(微分係数)のために0.1に等しい勾配係数を有する勾配降下モデルのグラフであり、これは最小値収束機能のためにこの発明の方法およびシステムにおいて使用する勾配降下モデルの一例である。
【図3A】図3AはHGBの異なる値についてRBGゲインに対してプロットした相関関数のグラフである。
【図3B】図3Bはこの発明の方法に従って、相関する計算済みパラメータHCT、MCHおよびMCHCでRBC、MCVを調整した有効な結果に基づく、2‐d(2次元)勾配降下ファジー相関関数のチャートである。
【図4】図4は、診断分析器が実行している犬(canine)のサンプルについて生の患者サンプル結果をプロットする1組のグラフである。灰色のドットは時間順次の患者結果を表す。必要な場合、ブルの調整のためのターゲットおよびウェストガードルールのための基準範囲(reference ranges)が黒色で示される。詳しく言うと、図4(a)は機器のランに対するRBCをプロットし、図4(b)は機器のランに対するMCVをプロットし、図4(c)は機器のランに対するHGBをプロットし、図4(d)は機器のランに対するHCTをプロットし、図4(e)は機器のランに対するMCHをプロットし、そして図4(f)は機器のランに対するMCHCをプロットしたものである。
【図5】図5は、図4において使用した診断分析器のデータセットから計算し、この発明に従ってウェストガードルールがトリガする、勾配降下およびファジー論理による調整に基づいて訂正した値をプロットする1組のグラフである。この図で示す灰色の点は生の患者ブルバッチを表し、黒の点は調整論理が実現された後のブルバッチを表す。必要な場合、ブルターゲット(Bull target)および基準範囲が含まれる。図5(a)はブルバッチ数に対するRBCをプロットし、図5(b)はブルバッチ数に対するMCVをプロットし、図5(c)はブルバッチ数に対するHGBをプロットし、図5(d)はブルバッチ数に対するHCTをプロットし、図5(e)はブルバッチ数に対するMCHをプロットし、そして、図5(f)はブルバッチ数に対するMCHCをプロットしたものである。
【図6】図6は、この発明に従って患者サンプル結果への訂正が実現された後のHCT(パーセント)に対するPCV(ヘマトクリット値(血中血球容積))(パーセント)をプロットするグラフである。図6のグラフの縦軸がPCVのパーセント値を表し、横軸がHCTのパーセント値を表す。上限(UL)および下限(LL)が、PCVがHCTに等しい線と一緒に図6に示される。
【図7】図7は診断分析器のリアルタイム自動校正のための、この発明のシステムおよび方法の動作を示すフロー図である。
【図7A】図7Aは診断分析器のリアルタイム自動校正のための、この発明のシステムおよび方法の別の動作を示すフロー図であり、最適値が得られるまでファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用する際の好ましいインタラクティブプロセスを示す。
【図8】図8はこの発明に従って形成した診断分析器を校正するための自動化システムのブロック図であり、システムと診断分析器との間の協働をまた示している。
【図9】図9はこの発明に従って形成した診断分析器を校正するための自動化システムの別の実施例のブロック図であり、システムと診断分析器との間の協働をまた示している。
【好ましい実施例の詳細な説明】
【0036】
この発明の方法の1つの好ましい形態およびその方法を実現するシステムをここで説明する。この発明の1つの形態に従えば、血液分析器のような診断分析器をリアルタイムに校正するための自動化方法は、好ましくは、分析器のプリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を用いて分析器で計算した患者サンプルの診断(たとえば血液)結果を受けるステップ、およびその患者サンプルの診断結果に対して加重移動平均のアルゴリズムを適用して加重平均診断結果を得るステップを含む。方法はさらに、加重平均診断結果に管理図ルールを適用するステップ、および管理図ルールから限界または範囲−これは加重平均診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用される−を作るステップを含む。方法はさらに、加重平均診断結果をそのような管理図ルールの限界または範囲と比較するステップを含む。もし加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るなら、分析器のプリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を使って分析器で計算した患者サンプルの診断結果にどんな倍率も適用しない。
【0037】
しかしながら、そのような比較の間に、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲の外へ出るなら、この発明の方法はさらに、加重平均診断結果に対してファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用して、管理図ルールの許容できる限界または範囲内に入る、患者サンプルの調整された診断結果を得るステップを含む。そのような調整済の診断結果は分析器によって読み出されもしくは表示され、患者サンプルの診断結果の一層正確な計算を提供する。
【0038】
さらに、自動校正方法は、加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から、1つまたはそれ以上の倍率を抽出するステップ、およびその倍率によって、分析器のメモリにストアしている分析器のプリセットパラメータを実際に変更する必要なしに、プリセットパラメータで分析器が行う計算を修正してその計算の結果を訂正するステップを含む。したがって、たとえば、抽出した倍率を適用することによって、分析器の光学システムの全体ゲインが1.03から1.04へ効果的に調整され、分析器が読み出しもしくは表示する患者サンプルの診断結果を一層正確に提供する。
【0039】
校正方法は好ましくは、計算した結果がリアルタイムで調整され得て、そして一層正確な患者の読み取り値を提供するために、必要に応じて、倍率(これは分析器のプリセットパラメータに適用される)が絶えずに変更され得るように、診断分析器が患者サンプル結果を発生するとき毎に適用される。
【0040】
この発明の好ましい実施例において、患者サンプルへ適用される加重移動平均アルゴリズムはブルのアルゴリズムである。この発明の他の好ましい形態においては、加重移動平均アルゴリズムに適用される管理図ルールはウェストガードのルールであり、このウェストガードのルールの適用のために赤血球指数のターゲットおよび範囲が抽出される。使用に際して、特に、人用分析器を運用するとき、ユーザは調整が必要らしいことを警告される。ユーザはそして、調整が適切に、すなわち追加のサンプルのランの前に確実になされるようにするために、制御流体での調整および追跡を許容する。動物応用のためには、調整は自動的に行われ得る。また、動物応用のために、赤血球指数ターゲットおよび範囲が動物の或る選択された種から抽出される。すなわち、動物の分野において、ターゲットおよび範囲は典型的に特定の種、たとえば犬、猫、馬である。
【0041】
この発明の1つの形態によれば、管理図ルールは、ブルバッチが或る限界の外の傾向またはバイアスを示すとき、フィードバックを提供する方法によって実現される。先に述べたように、この発明のシステムおよび方法は好ましくはウェストガードのルールを用いる。
【0042】
この発明の方法は好ましくは、ブルバッチを用いる管理図のために2つのルールを選択する。第1のものは2SLとして認識され、そこでは2つの連続するバッチが同じ特定の限界を超えるとき制御誤差(control error)が発生される。第2のものは4/(バー)Xとして認識され、そこでは、4つの連続するバッチがターゲットの一方側にあるとき制御誤差を発生する。
【0043】
動物応用において、特に、種独特の変動の独自の学習に基づいて、MCV、MCHおよびMCHCについての限界が既に定義されている。種によって使用される好ましい具体的な数値が表1Aに示される。
【0044】
【表1A】
表1Bは表1Aに示す同じデータを示していて、表1Aに示す範囲に代えて表1Bでは間隔を示す。
【0045】
【表1B】
特に、MCHCは、結果的に低いMCHCの値になる臨床的条件が比較的稀なので、機器の性能を測定するために有用である。さらに、生体内溶血(vivo hemolysis)において血管内の血液の病気(intravascular hemolytic disease)に関連するMCHCの増加は比較的稀である。不十分なサンプル処理のための試験管内溶血(vitro hemolysis)が問題であり、したがって、適切なサンプル処理の技術が習得されなければならない。脂血症(lipemia)やハインツ小体(Heinz body)の形成を引き起こす条件が問題であり、結果的に増加したヘモグロビンを間違って測定したり、増加したMCHCの計算を生じたりする(Thrall MA, Baker DC, Campbell T, et al., “Veterinary Hematology and Clinical Chemistry,”「動物血液(学)および臨床化学」 Ames, IA:Blackwell Publishing; 2006を参照されたい。)。
【0046】
RBC(M/ul)、MCV(fl)、およびHGB(g/dl)と計算したパラメータ(HCT(%))、MCH(g)およびMCHC(g)の間の関係は、この発明の方法に従って、測定したパラメータを調整するための基礎を提供する。HCT、MCHおよびMCHC間の関係が次の数2、数3および数4にそれぞれ示される。
【0047】
【数2】
【0048】
【数3】
【0049】
【数4】
MCV、MCHおよびMCHCがターゲットおよび範囲を有するので、数2ないし数4は3つの未知数(RBC、HGBおよびHCT)を伴う3つの式を提供する。MCHおよびMCHCは独立した式ではない(MCHはMCVによって直接MCHCに関連付けられる)ので、3つの未知数(RBC、HGBおよびHCT)を有するただ2つの式(数2および数4)がある。この発明の方法に従って、勾配降下アルゴリズム(Haykin, Simon, “Neural Networks: A Comprehensive Foundation” 「ニューラルネットワーク:総合基礎」(2nd Edition), 1998を参照されたい。)およびファジー論理(Yen, John and Reza Langari, “Fuzzy Logic: Intelligence, Control, and Information"「ファジー論理:理解、制御および情報」, 1998を参照されたい。)が用いられ、ファジー論理の原理に従ってHCT、MCHおよびMCHCについてMCV調整(MCVターゲットに基づく)とともに対にするための最適化したRBCおよびHGB調整を提供する。単純な結果の確認は、患者サンプルを割ることおよび結果を確認するために回転した(spun)HCT(PCV)を行うによってなされ得る。
【0050】
詳しくいうと、ファジー論理アルゴリズムがこの発明において利用され、上の式のシステムに加えて、専門家の人の決定を取り入れる。ファジー論理は伝統的な論理プログラミングに対する改善を提供し、場合分け文(if-then)がどちらかの条件のための適宜の動作によって、その表現が真であるか偽であるかを判断するために使用される。ファジー論理は、たとえば30%または70%真である値の正しさのレベルを与える。ファジー論理の適用の一例は、人の年齢が35歳であるなら年老いているかまたは若いかを判断することであり、それは比較の原点に依存する。ファジー論理は文脈内に専門家の論理を取り入れる。この発明におけるファジー論理を実現するために、血液の分析の結果および分割した基準との比較において、ソフトウェアで実現したエキスパートシステムが、データに基づく動作を定義する各論理入力を記述する。これらの論理入力は次いで、ソフトウェアツールが前方への移動を用いる、ファジー関係に翻訳される。論理入力は基本的にファジー論理アルゴリズムのためのトレーニングセットであり、それは次いで、新しいテストケース(test cases)とともに実現されかつ比較される。
【0051】
この発明に従って、ファジー論理はターゲット、範囲および数2ないし数4を用いて実現され、そしてこの組み合わせは、分析器の計算した結果に積極的に影響を与える分析システムの調整を決定する基礎を提供する。自動化した方法やシステムが血液分析器のような診断分析器によってどのように患者サンプルの結果をリアルタイムに訂正したり分析器を校正したりするために使用されるかという一例がここで説明される。この例において、血液機器がバイアスされていて、そして図4(a)‐図4(f)がRBC、MCV、HGB、HCT、MCHおよびMCHCの判定における機器のバイアスの結果を示す。ターゲット範囲がMCV、MCHおよびMCHCについていか先の表1に含まれる。ターゲットは、範囲の重なり合いの点の密度のためにMCHおよびMCHCのグラフ上で部分的に塞がれている。
【0052】
ガウス相関関数(Fc)、数5Aおよび図2がエキスパートシステム分析に基づく、ターゲットへの応答上の1組のパラメータの影響の「正しさ」を記述するために使用される。数5AからのパラメータAおよびσ(シグマ)は、以下に説明されるが、パラメータ毎の正しい振幅(amplitude)と幅(width)にガウス関数を操作するために選択される変数を表す。これらの変数は表1Aまたは表1Bからの許容される範囲のターゲットおよびサイズの信頼に基づいて調整される。
【0053】
【数5A】
ガウス関数に対する別のものは比例関数である。比例関数は、図2A(Fc(X)=0 if |X| > 5)で示すように、傾きmおよびy切片(y-intercept)Aが直線的な応答を有することを除いて、ガウス関数と同様である。Fc(X)=0 if |mX| > Aとなるように、比例関数の関係が数5Bで有効な限界とともに示される。
【0054】
【数5B】
ファジー論理相関関数は最適ターゲット応答で最大ピークを有し、最適値から離れるように応答が移動するにつれて下へ傾く。図2はガウス相関関数の使用を示していて、そこでは、基準ターゲットA1、シグマ=2に対する入力が示される。図2Aは比例相関関数の使用を示し、そこでは、入力は基準ターゲットA=1、傾き=0.2についてである。
【0055】
ファジーシステムをトレーニングすることは、パラメータを最適化するための手段を提供し、そのためにより広い範囲を有するパラメータにおける小さな変化は測定した全体の変動においてわずかの影響を持つ。Aの操作値が関数の振幅に影響を与え、残りのパラメータへの比較的に高い(>1)または低い(<1)影響を与える。sの操作数値は曲線の幅に影響を与える。sの操作値が曲線の幅に影響し、より大きな操作値は、結果に影響を与える前のターゲットからのより大きな変動のための基礎を与え、より小さい操作値は結果の値への一層速い影響を有する。
【0056】
この発明の方法において用いる勾配降下アルゴリズム(Haykin, Simon, “Neural Networks: A Comprehensive Foundation”「ニューラルネットワーク:総合基礎」 (2nd Edition), 1998を参照されたい。)は、現在の位置に近い領域において関数の知識(knowledge of function)を有するとき、関数の最小値を探索するための技術を提供する。一般的なブローチは、場所(開始点のために何も前もっての知識は不要だが、アルゴリズムは最小値へ近づき始めると一層速く収束する)において開始して、その場所における関数の傾きを判定することである。傾きは最小値へ向かって進む方向およびそのステップの大きさを判定するのに使用される。スカラ乗算器が、そのステップのサイズを加速しまたは加減するために、傾きの大きさに適用され得る。小さな傾きは収束するのに長時間かかるが、大きな傾きは一層速く遠くまで移動して最小値付近で発振を生じる。
【0057】
勾配降下アルゴリズムは、最小値を探索するための閉形式解(closed form solution)はないので、数2ないし数4に関連する。この考えは、HGBを増加させることによって、またはRBCおよび/またはMCVを減少させることによって、MCHCが増加され得るということである。MCHの評価はMCVに関係しない情報を提供し、HCTの評価はHGBに関係しない情報を提供する。RBC、MCVおよび/またはHGB上において右方向に移動することによって、これらの計算した関係のすべてについて最適応答を獲得することができる。
【0058】
勾配降下アルゴリズムへの1つの共通の落とし穴は、その方法が行き詰まって大域的最小値(global minima)に達しないような関数において、局所的最小値(local minima)があるかどうかを明示できる。この発明の方法によって最小化しようと試みている式のシステムの利点は、関係はすべて第1階(first order)であり、論理は常に大域的最小値において収束するべきであるので、局所的最小値がないことである。
【0059】
この発明において使用する勾配降下アルゴリズムを使って認識した2次関数および付属値(associated values)の一例が図3に示される。方法(アルゴリズム)は、最小値から遠いときは大きなステップを作り、最小値に近づくにつれてあまり積極的ではない移動を作るということが、移動矢印のサイズおよび方向によって明らかである。この発明で採用したこのアプローチは、HCT、MCHおよびMCHC応答に関係する基準とともに、RBC、MCVおよびHGBを最適化するための方法を提供する。応答と特定種のターゲットとの間の差異に対して重み付けを与えるために、ファジー論理がこの発明の方法で使用される。数5で規定するガウス関数が、この方法においては、図6に示す相関関数(Fc)への入力として使用される。相関関数は、ブルバッチの関数として、各パラメータ(RBC、MCV、HGB、HCT、MCHおよびMCHC)についてN個のガウス関数の結果をとる。結果は、調整に基づいて結果がどのように相関するかを定義する単一の値である。この発明に従ってこの相関関数出力値を最適化することは、勾配降下最小化アルゴリズムの基礎を提供する。
【0060】
【数6】
2‐d(2次元)勾配降下アルゴリズムは、MCVが既にターゲット値を有するので、HCT、MCHおよびMCHCに対してRBCおよびHGBを最適化するために使用され得る。2‐dマップのための一定のHGB曲線の表現が図3Aに示される。勾配降下アルゴリズムで使用するモデルへこれらの曲線を翻訳することは、図3Bに示す勾配降下アルゴリズムがそれに後続するので、2‐dマップの一例を提供する。すべての点において、すべての8つの最近接(nearest neighbor)位置における値が評価され、中心点が最大値になるまで、最大値へ移動する。
【0061】
したがって、図3Aは相関関数のグラフである。各曲線は、係数を0.7から1.30の範囲にすることによってRBCが変化したときの、一定のHGBおよびファジー論理相関関数を表す。HGBの係数範囲は0.90から1.10である。太い実線は0.90におけるHGBを表し、太い灰色の実線は0.95のときを表し、実線は1.00のときを表し、黒の点線は1.05のときを表し、灰色の点線は1.10のときを表す。
【0062】
図3Bは、相関する計算したパラメータHCT、MCHおよびMCHCでのRBC、MCVおよびHGB上の調整の有効な結果に基づく2‐d勾配降下ファジー相関関数の表である。勾配降下マップは(1,1)から開始し、RBCおよびHGBへの調整はなく、最適場所へ移動している。
【0063】
この発明の方法を説明するために先に述べた例において、図4において使用した同じデータセットがついで、上で定義したウェストガードルール、勾配降下アルゴリズムおよびファジー論理を用いて分析され、分析器の患者血液結果における調整を規定し、ついで更新した機器結果およびブルバッチを計算する。図5は、この発明に従った、これらの結果に対する調整の前後の結果を示す。HGBはアルゴリズムに基づいて調整されておらず、データ点は生のブルバッチと調整済のブルバッチについて完全にオーバラップしている。
【0064】
この発明のシステム論理が、RBCに対するわずかの変化、MCVに対する一層大きな変化、およびHGB、HCTに対する変化なしを作る。HCTは安定化されかつPCV(packed cell volume:ヘマトクリット値(血中血球容積))と一致される。
【0065】
図6は、この発明に従ってブル調整が行われた後の、機器が報告した一連のHCT対PCVを示す。MCHおよびMCHCはマークを付した改良を示し、図5に示すように、十分ターゲット内に入っている。
【0066】
図7は、血液分析器のような診断分析器を校正するための、この方法の自動化したシステムの動作を説明する簡単なフロー図である。患者サンプルに基づいて分析器の計算から結果的に生じた患者サンプルの診断読み取り値は、加重移動平均アルゴリズムが適用されるサブルーチンにおいて動作する(ステップS1)。好ましくは、この加重移動平均アルゴリズムはブルのアルゴリズムである。分析器は分析器のプリセットパラメータ(たとえば、光学ゲインのような)を用いて診断結果を計算する。このサブルーチンが加重平均した診断結果を与える。
【0067】
ついで、ウェストガードルールまたは任意の他のSPC管理図ルールが加重平均した診断結果に適用される(ステップS2)。管理図ルール(または一層好ましくは、ウェストガードルール)は限界または範囲を作り、それは加重平均した診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用される。したがって、加重平均した診断結果は、ステップS2において、管理図ルールの限界または範囲と比較される。加重平均した診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るなら、プリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を使って分析器で計算した患者サンプル診断結果へ倍率は適用されない(ステップS3)。
【0068】
しかしながら、ステップS2における比較の間に、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲の外へ出るなら、この発明の方法およびシステムはついで、ファジー論理(ステップS4)および勾配降下アルゴリズム(ステップS5)を加重平均した診断結果へ適用し、管理図ルールの許容できる限界や範囲に入る患者サンプルの調整済みの診断結果を得る。そのような、調整済みの診断結果は、分析器によって読み出されまたは表示され(ステップS6)、患者サンプルの一層正確な計算を提示する。
【0069】
また、加重平均した診断結果へのファジー論理(ステップS4)および勾配降下アルゴリズム(ステップS5)の適用から、1つまたはそれ以上の倍率が抽出される(ステップS7)。ステップS8に示すように、倍率は、プリセットパラメータで分析器が行った計算を修正して、分析器のメモリにストアしている分析器のプリセットパラメータを実際に変更する必要なしに、そのような計算の結果を訂正する。したがって、たとえば、抽出した倍率を適用することによって、分析器の光学システムの全体のゲインが効果的に、1.03から1.04へ調整され得て、一層正確に、分析器データ読み出したりまたは表示したりする患者サンプル診断結果を提供する。
【0070】
校正方法は、好ましくは、計算した結果がリアルタイムに自動的に調整され得るように、倍率は診断分析器が患者サンプル結果を生成するとき毎に適用され、そして、一層正確な患者読み取り値を提供するためには、倍率(分析器のプリセットパラメータに適用する)は必要に応じて絶えず変更され得る。
【0071】
図7Aは診断分析器を校正するための、この発明の自動化したシステムの別の動作を説明する簡単なフロー図である。プロセスの最初のステップは患者サンプルを実行することである(ステップS10)。患者結果が完了した(ステップS11)後、この発明の自動化システムは、ブルバッチのようなバッチを適格にするのに十分なサンプルがあるかどうかの判断を行う(ステップS12)。バッチを適格にするのに十分でないとき、システムは、追加の患者結果を入手する(ステップS11)。しかしながら、バッチを適格にするのに十分なサンプルがあるときは、この発明の方法に従って、次いで患者結果はバッチされる(ステップS13)。ここで、ウェストガードルールのような管理図ルールがバッチした患者結果へ適用される(ステップS14)。
【0072】
その後、この発明の方法に従って、自動化したシステムは、管理図ルールで作った限界または範囲内に患者診断結果があるかどうか判断する(ステップS15)。もし、患者診断結果がそのような管理図の限界または範囲内なら、診断結果にはさらなる訂正は必要ではなく、患者結果は完全であり、自動化したシステムによって出力される(ステップS11)。しかしながら、ステップS15において患者診断結果が管理図ルールの限界または範囲の外にあるなら、ファジー論理(ステップS16)および勾配降下アルゴリズム(ステップS17)が診断結果に適用され、調整済みの患者診断結果を得る。
【0073】
この発明の自動化したシステムが、調整済みの診断結果が最適化されていないと判断した(ステップS18)なら、ファジー論理(ステップS16)および勾配降下アルゴリズム(ステップS17)が調整済み診断結果に繰り返し適用される。自動化したシステムが、最適化した値に既になっていることを判断すれば(ステップS18)、ついで、分析器のメモリにストアしている分析器のプリセットパラメータを実際に変更する必要なしに、プリセットパラメータで分析器が行った計算を修正する際に倍率が使用され、この倍率は次の患者サンプルのためにこの発明の自動化したシステムで適用する(ステップS19)。
【0074】
図8は、この発明の自動校正方法を実現するシステム2の1つの形態のブロック図である。このシステム2は、ソフトウェア、またはより正確には、アプリケーションプログラムによって、もしくはファームウェアまたはハードウェアによって実現することができる。システム2は、加重移動平均アルゴリズムをストアしたEEPRO(電子的に消去可能な読み出し専用メモリ)のようなメモリ4、管理図ルールをストアしたメモリ6、ファジー論理をストアしたメモリ8、勾配降下アルゴリズムをストアしたメモリ10および倍率をストアしたメモリ12を含む。メモリまたは記憶素子がまた、分析器によって判断される患者サンプル測定値をストアするためのメモリ14、分析器のプリセットパラメータをストアするためのメモリ16、分析器のプリセットパラメータ(たとえば、光学ゲイン)を使って分析器が計算した患者サンプルの調整済み診断結果をストアするためのメモリ18、加重移動平均アルゴリズムの適用から結果的に生じる加重平均診断結果をストアするためのメモリ20、およびファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から結果的に生じる調整したまたは訂正した診断患者サンプルをストアするためのメモリ22を有する。マイクロプロセサ、マイクロコントローラまたはCPU24は、加重移動平均アルゴリズム、管理図ルール、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムの患者データへの適用を実行する、または加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に有るかどうかの判断を行うため、そして分析器のプリセットパラメータへの倍率を抽出するために、用いられる。もちろん、そのような構成(たとえば、メモリ、マイクロプロセサなど)はすでに分析器26の中に存在し、そのような構成は、この発明の自動化した校正方法の機能を実行する際に従来から利用されているものでよい。
【0075】
図9はこの発明の自動校正方法を実現するシステム2の第2の形態のブロック図である。自動化システムは、プリセットパラメータを使っての患者診断サンプル上での計算を実行する診断分析器26をリアルタイムに校正する。好ましくは、自動校正システムは分析器のプリセットパラメータを使って分析器が計算した患者サンプルの診断結果を受け取る受信手段50、患者サンプル診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用する第1適用手段52、および加重平均診断結果へ管理図ルールを適用するとともに、管理図から限界または範囲‐この限界または範囲は加重平均診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用される‐を作る第2適用手段54を含む。自動化校正システムはさらに、第3適用手段56を含み、これは加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する。
【0076】
この発明の自動校正システムはまた、比較手段58を含み、この比較手段58は、加重平均診断結果を管理図ルールの限界または範囲と比較する。もし、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内にあるなら、プリセットパラメータを使って分析器26で計算した患者サンプル診断結果に倍率は適用しない。しかしながら、もし、加重平均診断結果が、そのような比較の間に管理図ルールの限界または範囲の外にあるなら、第3適用手段56は、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムを加重平均診断結果に適用し、管理図ルールの許容できる限界または範囲に入る患者サンプルの調整済みの診断結果を得る。
【0077】
システムはさらに読み出し手段または表示手段60を含み、それは、分析器26による調整済みの診断結果を読み出したりまたは表示したりする。自動校正システムはまた、加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から1つまたはそれ以上の倍率を抽出する抽出手段62、および分析器のプリセットパラメータを変更する必要なしに、分析器26の計算の結果を訂正するために、倍率によって、プリセットパラメータを用いて分析器26が実行した計算を修正する修正手段64を含む。
【0078】
この発明の別の好ましい実施例では、図9に示すように、自動化校正システムの第3適用手段56は、加重平均診断結果を得るために、患者サンプル診断結果へウェストガードのルールを適用する。自動化システムはウェストガードルールの適用のための赤血球指数を抽出する第2抽出手段66を含んでもよい。
【0079】
上で説明した自動校正システムのコンポーネンツはマイクロプロセサ、マイクロコントローラ、またはCPU24、もしくはディスクリートな電気部品または回路、もしくはソフトウェアを使って実現され得る。
【0080】
血液分析器のような自動化した診断分析器は、特定種のターゲット(特に、動物応用)、勾配降下アルゴリズムおよびファジー論理を有する赤血球指数のための血液学の基本を利用するこの発明のシステムおよび方法に従って、改善した安定性および減じられたバイアスを有する。HCTとのPCV(ヘマトクリット値)の単純な比較は、分析器の設定に対する適切な調整を証明し、参考検査室(reference laboratory)を有する固定細胞制御またはサンプル分割を利用しまたは利用しないで、正確さを保証する。この発明のシステムおよび方法は、動物血液分析器でそして獣医のオフィスにおいて全く有用である。そこでは、制御流体のコストがそれらの普通の使用を禁止し、多くが患者サンプルとともに用いるものとは異なるアルゴリズムを必要とする、人の固定細胞に基づく。
【0081】
システム性能をモニタし制御するために患者ベースの結果を使用することは、特定種変化が、結果を生成するために使用される態様で認識でき得るので、有効である。単一の患者結果は、決定をしたり、システム性能に関して動作をしたりするために十分なパワーを提供せず、集合患者ベースの結果は増強した分析パワーを提供する。分析サンプルの数が増えれば増えるほど、分析パワーを増大する。分析のためのランの時間長さや数が増えれば増えるほど、動作する前の時間が長くなる。高い分析パワーおよび即時応答時間を持つという要望のために、サンプルサイズと動作するための必要パワーのバランスを取ることが重要である。
【0082】
患者結果ではなくバッチが機器応答を表すことが基本的な前提でなければならず、バッチに含まれるサンプルがランダムな患者群からのものでなければならない。データがランダムである限り、サンプルは繰り返されず、同様の不正常な応答条件を有する患者結果の大きな群(2つの連続するバッチの30%以上が価値あるランである)は順番には実行せず、統計量(statistics)が、機器応答を表すバッチを生成するのに十分である。これらのバッチは、正確さのために、システム応答を調整するために使用され得る。
【0083】
バッチを用いて管理図へ患者サンプルを要約するのに多くの利点がある。ブルの論理はバッチの結果に1つのサンプルの変化の影響を減じるための手段を提供する。さらに、赤血球パラメータ(RBC、MCV、HGB、HCT、MCHおよびMCHC)のためにこの分析を利用することは、付加的な利点を持っている。なぜなら、MCV、MCHおよびMCHCを含むいくつかのパラメータは、結果の正確さに対して追加の情報を与えることができる、種の中で厳しい正常変動を有するからである。調整分析は特定のパラメータのための中央の基準範囲の値(central reference interval value)に基づく「ターゲット」を基準とするので、いくつかの問題が提起されている。これらの問題は、一般的には、多病患者を診断する専門家に関するもので、しかしながら、これは、患者群のためのMCV、MCHおよびMCHCにおける大きな変化を駆動する2、3の臨床的な条件があるので、緩和され得る。開業医は、群のMCHCが37または29の近くにバイアスされていると、システムが正しく機能していないことを認識し得る。しかしながら、この分析は、MCHがバイアスのこのレベルになる前に、バイアスを見つけかつ正すために最適化論理を利用する
特定種結果についての考察はまた、この分析での価値を提供する。人細胞に基づく固定細胞制御材料とともにシステムを考える。この機器は、MCV>80fLで共通に制御シーケンスおよびアルゴリズムを実行する。システムはこの材料については正しく機能するであろうが、犬のMCVは名目上は70fL前後であり、猫は<50fLであるので、特定種バイアスがある。この大きい範囲にわたる技術、アルゴリズムおよび性能によって、特定種調整が必要である。血液システムが年を経ると、制御材料とともに応答が直線にはならず、加重移動平均分析の応用は異なる種の正確なMCV値を保証する必要がある。
【0084】
説明してきたアプローチは、分析システムが正しく機能することを保証するための手段を提供し、かつ正確な性能を維持するためのフィードバック制御を与える手段を提供する。分析前誤差が、粗悪な準備を補償するために分析器への調整を駆動することがないことを補償するために、論理(logic)が含まれなければならない。たとえば、試験管内溶血(vitro hemolysis)において生じる矛盾しない分析前誤差は、結果的に高いMCHC値を生じるが、調整のためにバイアスされる正確な測定をそれが引き起こすので、機器は調整する必要がない。意味のある脂肪血症(lipemia)のような他の分析前問題は、自動分析に影響を及ぼす。これらの公知の条件のいくつかをブロックするために論理は正しい場所に置かれ得るが、しかし、開業医にまで適当な研究室の手法が正しい分析を補償する助けのために用いられるのを補償する。
【0085】
制御流体に関連してこの発明の方法を用いる患者サンプルでの性能を保証することによって追加の利点が実現される。なぜなら、この発明の方法が分析に静的なパワーを加えるための他の基準を提供するからである。他の血液パラメータのために加重移動平均分析のこの方法の応用は可能である。さらに、これらの方法は、化学分析器性能のために最適化され得て、また潜在的な価値を有する。分析の分析(analytical)パワーは、機器および/またはサンプル群からの大きな正常変動を有するシステムにおいてさえ、平均値が素早く収束するという知見によって引き出される。ここで説明したこの発明の方法は、選択したパラメータについて自動化した動物血液分析器を用いてテストしたが、それは動物化学へ直接一般化することができる。さらに、人血液および化学システムは、制御の使用を最適化しかつフィードバック制御を自動化するブルのアルゴリズムの実現の上でも前でも、この発明の方法を利用できる。
【0086】
この発明のシステムおよび方法は、分析器のディスプレイ上に現れたグラフや他のデータの臨床医による解釈に基づいて手動的に分析器に対する調整を臨床医がする必要なしに、分析器で行う計算に対して必要に応じて、リアルタイムに調整を行うので、臨床医における間違い、または可能性のある精密な機器のバイアスの過剰修正を最少にしまたは除去できる。
【符号の説明】
【0087】
2 …自動校正システム
4‐22 …メモリ
24 …マイクロプロセサ
26 …分析器
50 …受信手段
52 …第1適用手段
54 …第2適用手段
56 …第3適用手段
58 …比較手段
60 …ディスプレイ
62 …第1抽出手段
64 …修正手段
66 …第2抽出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断分析器をリアルタイムに校正するための自動化方法であって、
分析器のプリセットパラメータを用いて分析器で計算した患者サンプルの診断結果を受けるステップ、
移動平均診断結果を得るために、加重移動平均アルゴリズムの診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用するステップ、および
加重平均診断結果へ管理図ルールを適用して、その管理図ルールから限界または範囲を作るステップを含み、この限界または範囲は加重平均診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用され、さらに
加重平均診断結果を管理図ルールの限界または範囲と比較するステップ、
加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るなら、分析器のプリセットパラメータを用いて分析器で計算した患者サンプルの診断結果へ倍率を適用しないステップ、
比較の間に加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲外へ出るなら、管理図ルールの許容できる限界または範囲内にある患者サンプルの調整済み診断結果を得るために、加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用するステップ、
分析器によってそのような調整済み診断結果を読み出しまたは表示するステップ、
加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から1つまたはそれ以上の倍率を抽出するステップ、および
分析器のプリセットパラメータを変更する必要なしに、分析器の計算の結果を訂正するために、倍率によって、プリセットパラメータで分析器が行う計算を修正するステップを含む、方法。
【請求項2】
患者サンプルへ適用する加重移動平均アルゴリズムはブルの(Bull’s)アルゴリズムである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
管理図ルールはウェストガードルール(Westgard Rules)であり、さらに
ウェストガードルールの適用のために赤血球指数ターゲットおよび範囲を抽出するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
赤血球指数ターゲットおよび範囲は動物の或る選択した種について抽出する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
診断分析器は血液分析器および化学分析器からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
診断分析器は血液分析器である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲外へ出るときに加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用して調整した診断結果を得るステップは、さらに加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを必要に応じて繰り返し適用することによって得られる調整済み診断結果を最適化するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
加重平均診断結果へ適用される勾配降下アルゴリズムは2−d(2次元)勾配降下アルゴリズムである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
プリセットパラメータを用いて患者診断サンプル上に計算を行う診断分析器をリアルタイムに校正するための自動化システムであって、
加重移動平均アルゴリズム、管理図ルール、ファジー論理、勾配降下アルゴリズムおよび倍率を記憶した1つまたはそれ以上のメモリ、および
1つまたはそれ以上のメモリへ作動的に結合されていて、患者データへ加重移動平均アルゴリズム、管理図ルール、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムの操作を実行し、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内にあるかどうかを判定するために比較を行い、そして分析器のプリセットパラメータへ適用する倍率を抽出する、マイクロプロセサを備える、システム。
【請求項10】
診断分析器は血液分析器および化学分析器からなる群から選択される、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
診断分析器は血液分析器である、請求項9記載のシステム。
【請求項12】
プリセットパラメータを用いて患者診断サンプル上で計算を行う診断分析器をリアルタイムに校正するための自動化システムであって、
分析器のプリセットパラメータを用いて分析器で計算した患者サンプルの診断結果を受ける手段、
加重平均診断結果を得るために、患者診断サンプルの診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用する手段、
加重平均診断結果へ管理図ルールを適用して、管理図ルールから限界または範囲−加重平均診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用される−を作る手段、
加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する手段、
加重平均診断結果を管理図ルールの限界または範囲と比較する手段を備え、さらに
加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るなら、プリセットパラメータを用いて分析器で計算する患者サンプルの診断結果へ倍率を適用せず、加重平均診断結果がそのような比較の間に管理図ルールの限界または範囲外へ出るなら、加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用して管理図ルールの許容できる限界または範囲内にある患者サンプルの調整済み診断結果を得る手段、
調整済み診断結果を分析器によって読み出しまたは表示する手段、
加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から1つまたはそれ以上の倍率を抽出する手段、および
倍率によって、プリセットパラメータを用いて分析器で行う計算を修正して、分析器のプリセットパラメータを変更する必要なしに分析器の計算の結果を訂正する手段を備える、システム。
【請求項13】
管理図ルールを適用する手段は患者サンプルの診断結果へウェストガードルールを適用して加重平均診断結果を得て、さらに
ウェストガードルールの適用のために赤血球指数のターゲットおよび範囲を抽出する手段を備える、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する手段は、加重平均診断結果へ2−d勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する、請求項12記載のシステム。
【請求項15】
プリセットパラメータを用いて患者診断サンプル上で計算を行う診断分析器をリアルタイムに校正するための自動化システムであって、
分析器のプリセットパラメータを用いて分析器で計算する患者サンプルの診断結果を受ける受信手段、
加重平均診断結果を得るために、患者サンプルの診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用する第1適用手段、
加重平均診断結果へ管理図ルールを適用して、管理図ルールから限界または範囲−加重平均診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用される−を作る、第2適用手段、
加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する第3適用手段、
加重平均診断結果を管理図ルールの限界または範囲と比較する比較手段を備え、
加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るならプリセットパラメータを用いて分析器で計算する患者サンプルの診断結果へ倍率を適用せず、加重平均診断結果がそのような比較の間に管理図ルールの限界または範囲外へ出るなら、第3適用手段は加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用して管理図ルールの許容できる限界または範囲内に有る患者サンプルの調整済み診断結果を得て、さらに
分析器によってそのような調整済み診断結果を読み出しまたは表示する読出器または表示手段、
加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から1つまたはそれ以上の倍率を抽出する第1抽出手段、および
倍率によって、プリセットパラメータを用いて分析器で行う計算を修正して分析器のプリセットパラメータを変更する必要なしに分析器の計算の結果を訂正する修正手段を備える、システム。
【請求項16】
第3適用手段は患者サンプルの診断結果へウェストガードルールを適用して加重平均診断結果を得て、さらに
ウェストガードルールの適用のために赤血球指数のターゲットおよび範囲を抽出する第2抽出手段を備える、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する第3適用手段は、加重平均診断結果へ2−d(2次元)勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する、請求項15記載のシステム。
【請求項1】
診断分析器をリアルタイムに校正するための自動化方法であって、
分析器のプリセットパラメータを用いて分析器で計算した患者サンプルの診断結果を受けるステップ、
移動平均診断結果を得るために、加重移動平均アルゴリズムの診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用するステップ、および
加重平均診断結果へ管理図ルールを適用して、その管理図ルールから限界または範囲を作るステップを含み、この限界または範囲は加重平均診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用され、さらに
加重平均診断結果を管理図ルールの限界または範囲と比較するステップ、
加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るなら、分析器のプリセットパラメータを用いて分析器で計算した患者サンプルの診断結果へ倍率を適用しないステップ、
比較の間に加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲外へ出るなら、管理図ルールの許容できる限界または範囲内にある患者サンプルの調整済み診断結果を得るために、加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用するステップ、
分析器によってそのような調整済み診断結果を読み出しまたは表示するステップ、
加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から1つまたはそれ以上の倍率を抽出するステップ、および
分析器のプリセットパラメータを変更する必要なしに、分析器の計算の結果を訂正するために、倍率によって、プリセットパラメータで分析器が行う計算を修正するステップを含む、方法。
【請求項2】
患者サンプルへ適用する加重移動平均アルゴリズムはブルの(Bull’s)アルゴリズムである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
管理図ルールはウェストガードルール(Westgard Rules)であり、さらに
ウェストガードルールの適用のために赤血球指数ターゲットおよび範囲を抽出するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
赤血球指数ターゲットおよび範囲は動物の或る選択した種について抽出する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
診断分析器は血液分析器および化学分析器からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
診断分析器は血液分析器である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲外へ出るときに加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用して調整した診断結果を得るステップは、さらに加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを必要に応じて繰り返し適用することによって得られる調整済み診断結果を最適化するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
加重平均診断結果へ適用される勾配降下アルゴリズムは2−d(2次元)勾配降下アルゴリズムである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
プリセットパラメータを用いて患者診断サンプル上に計算を行う診断分析器をリアルタイムに校正するための自動化システムであって、
加重移動平均アルゴリズム、管理図ルール、ファジー論理、勾配降下アルゴリズムおよび倍率を記憶した1つまたはそれ以上のメモリ、および
1つまたはそれ以上のメモリへ作動的に結合されていて、患者データへ加重移動平均アルゴリズム、管理図ルール、ファジー論理および勾配降下アルゴリズムの操作を実行し、加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内にあるかどうかを判定するために比較を行い、そして分析器のプリセットパラメータへ適用する倍率を抽出する、マイクロプロセサを備える、システム。
【請求項10】
診断分析器は血液分析器および化学分析器からなる群から選択される、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
診断分析器は血液分析器である、請求項9記載のシステム。
【請求項12】
プリセットパラメータを用いて患者診断サンプル上で計算を行う診断分析器をリアルタイムに校正するための自動化システムであって、
分析器のプリセットパラメータを用いて分析器で計算した患者サンプルの診断結果を受ける手段、
加重平均診断結果を得るために、患者診断サンプルの診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用する手段、
加重平均診断結果へ管理図ルールを適用して、管理図ルールから限界または範囲−加重平均診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用される−を作る手段、
加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する手段、
加重平均診断結果を管理図ルールの限界または範囲と比較する手段を備え、さらに
加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るなら、プリセットパラメータを用いて分析器で計算する患者サンプルの診断結果へ倍率を適用せず、加重平均診断結果がそのような比較の間に管理図ルールの限界または範囲外へ出るなら、加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用して管理図ルールの許容できる限界または範囲内にある患者サンプルの調整済み診断結果を得る手段、
調整済み診断結果を分析器によって読み出しまたは表示する手段、
加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から1つまたはそれ以上の倍率を抽出する手段、および
倍率によって、プリセットパラメータを用いて分析器で行う計算を修正して、分析器のプリセットパラメータを変更する必要なしに分析器の計算の結果を訂正する手段を備える、システム。
【請求項13】
管理図ルールを適用する手段は患者サンプルの診断結果へウェストガードルールを適用して加重平均診断結果を得て、さらに
ウェストガードルールの適用のために赤血球指数のターゲットおよび範囲を抽出する手段を備える、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する手段は、加重平均診断結果へ2−d勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する、請求項12記載のシステム。
【請求項15】
プリセットパラメータを用いて患者診断サンプル上で計算を行う診断分析器をリアルタイムに校正するための自動化システムであって、
分析器のプリセットパラメータを用いて分析器で計算する患者サンプルの診断結果を受ける受信手段、
加重平均診断結果を得るために、患者サンプルの診断結果へ加重移動平均アルゴリズムを適用する第1適用手段、
加重平均診断結果へ管理図ルールを適用して、管理図ルールから限界または範囲−加重平均診断結果がそのような限界または範囲内に存在している程度をテストするために使用される−を作る、第2適用手段、
加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する第3適用手段、
加重平均診断結果を管理図ルールの限界または範囲と比較する比較手段を備え、
加重平均診断結果が管理図ルールの限界または範囲内に入るならプリセットパラメータを用いて分析器で計算する患者サンプルの診断結果へ倍率を適用せず、加重平均診断結果がそのような比較の間に管理図ルールの限界または範囲外へ出るなら、第3適用手段は加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを適用して管理図ルールの許容できる限界または範囲内に有る患者サンプルの調整済み診断結果を得て、さらに
分析器によってそのような調整済み診断結果を読み出しまたは表示する読出器または表示手段、
加重平均診断結果へのファジー論理および勾配降下アルゴリズムの適用から1つまたはそれ以上の倍率を抽出する第1抽出手段、および
倍率によって、プリセットパラメータを用いて分析器で行う計算を修正して分析器のプリセットパラメータを変更する必要なしに分析器の計算の結果を訂正する修正手段を備える、システム。
【請求項16】
第3適用手段は患者サンプルの診断結果へウェストガードルールを適用して加重平均診断結果を得て、さらに
ウェストガードルールの適用のために赤血球指数のターゲットおよび範囲を抽出する第2抽出手段を備える、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
加重平均診断結果へファジー論理および勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する第3適用手段は、加重平均診断結果へ2−d(2次元)勾配降下アルゴリズムを選択的に適用する、請求項15記載のシステム。
【図1A】
【図1(a)】
【図1(b)】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図4(d)】
【図4(e)】
【図4(f)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図5(d)】
【図5(e)】
【図5(f)】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図8】
【図9】
【図1(a)】
【図1(b)】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図4(d)】
【図4(e)】
【図4(f)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図5(d)】
【図5(e)】
【図5(f)】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−13704(P2012−13704A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−145130(P2011−145130)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(300004500)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145130(P2011−145130)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(300004500)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】
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