説明

診断支援システム及びコンピュータプログラム

【課題】 患者の糖尿病に関する情報及びメタボリックシンドロームに関する情報を提供することが可能な診断支援システム及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】 診断支援システム10は、生理データ入力部1、糖尿病疾患リスク分析部2、メタボリックシンドローム疾患リスク分析部3、診断支援情報生成部4、生体モデル生成部5、病態シミュレーション部6、および診断支援情報出力部7の各機能ブロックを有している。糖尿病疾患リスク分析部2及びメタボリックシンドローム疾患リスク分析部3により、夫々糖尿病及びメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する。診断支援情報生成部4が分析結果から診断支援情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者における糖尿病及びメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析することにより糖尿病及びメタボリックシンドロームの疾患リスク情報を提供する診断支援システム、及びコンピュータを診断支援システムとして機能させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は生活習慣病の代表であり、生活習慣の欧米化に伴い、患者数が急増している疾患である。かかる糖尿病は、その病態が多数のパターンに分れており、夫々の病態パターンに合致した治療パターンを選択することが必要とされるが、糖尿病の専門医でなければ、患者に最適な治療パターンを選択することは困難であった。そこで、糖尿病の専門家ではない開業医、一般内科医等であっても最適な糖尿病の診断を行うことができるように、糖尿病の診断を支援する情報を提供する診断支援システムが開発されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
その一方で、かかる糖尿病を含む生活習慣病の発症リスクを高める因子として、「内臓脂肪症候群」、「シンドロームX」、「死の四重奏」、「インスリン抵抗性症候群」、「マルチプルリスクファクター症候群」などが研究者によって発表されている。現在では、これらの概念は代謝症候群とも称される「メタボリックシンドローム」という概念に統一されている。メタボリックシンドロームは、高血圧症、高脂血症、インスリン抵抗性、高尿酸血症などの生活習慣病危険因子を併せ持つことで、動脈硬化性疾患の発症リスクを著しく引き上げる症候群とされている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−332704号公報
【特許文献2】特開平11−296598号公報
【特許文献3】特開2004−154341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかるメタボリックシンドロームは、数々の生活習慣病の危険因子となるため、その是正は健康政策上の重要な課題である。そのためには、患者のメタボリックシンドロームの疾患リスクを的確に分析することが必要である。また、メタボリックシンドロームが糖尿病と密接に関係していることから、糖尿病の診断において、患者のメタボリックシンドロームに関する疾患情報があれば、これを考慮することで診断の信頼性を高めることができ、またその反対にメタボリックシンドロームの診断においても、患者の糖尿病に関する疾患情報を考慮することによってその診断の信頼性を高めることができる。しかしながら、上述したような従来の診断支援システムにあっては、システムが提供可能な情報が糖尿病の疾患リスク等の糖尿病に関する情報のみであり、メタボリックシンドロームに関する情報を提供することはできなかった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、対象者(患者)の糖尿病に関する情報だけでなく、メタボリックシンドロームに関する情報をも提供することが可能な診断支援システム及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る診断支援システムは、対象者の生理状態を示す生理情報の入力を受け付ける入力受付手段と、当該入力受付手段が受け付けた生理情報と、予め設定された判定基準とを比較して、対象者における糖尿病の疾患リスクを分析する第1リスク分析手段と、前記入力受付手段が受け付けた生理情報と、予め設定された判定基準とを比較して、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する第2リスク分析手段と、前記第1リスク分析手段による分析結果と、前記第2リスク分析手段による分析結果とを出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成とすることにより、第1リスク分析手段によって分析された糖尿病の疾患リスクと、第2リスク分析手段によって分析されたメタボリックシンドロームの疾患リスクとを提供することができ、糖尿病又はメタボリックシンドロームの診断において、その診断の信頼性を高めることができる。
【0009】
上記発明においては、前記生理情報は、ウェスト径、中性脂肪値、HDLコレステロール値、血圧値、及び空腹時血糖値を含み、前記第2リスク分析手段は、生理情報に含まれるウェスト径、中性脂肪値、HDLコレステロール値、血圧値、空腹時血糖値が各別に対応する判定基準を夫々超えるか否かを判別し、判別結果に基づいて対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する構成とすることが好ましい。これにより、メタボリックシンドロームの疾患リスクを正確に分析することが可能となる。
【0010】
上記発明においては、前記第2リスク分析手段は、生理情報に含まれる少なくとも中性脂肪値又はHDLコレステロール値、血圧値、及び空腹時血糖値のうちのいくつが前記判定基準を超えたかを計数する計数手段と、当該計数手段による計数結果が所定数を超えるか否かを判別する判別手段とを備え、当該判別手段によって前記計数結果が所定数を超えると判別された場合に、メタボリックシンドロームの疾患リスクが高いと分析するように構成されていることが好ましい。なお、ここでいう「判定基準を超える」とは、ウェスト径等の値が、判定基準によって区分される正常側領域と異常側領域とのうち異常側領域に入ることを意味し、例えば、判定基準を上回った場合に異常とされる場合には判定基準を上回ることを意味し、判定基準を下回った場合に異常とされる場合には判定基準を下回ることを意味する。
【0011】
上記発明においては、前記生理情報に、血圧値、高脂血症に関する検査値、内臓脂肪肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値を含めることが好ましい。
【0012】
上記発明においては、前記生理情報は、例えば、糖尿病、耐糖能異常に該当しているか否かを示す情報、糖尿病、耐糖能異常の程度(重度、中度、軽度等)を示す情報等のような糖尿病及び/又は耐糖能異常に関する情報を更に含み、前記第2リスク分析手段は、前記対象者が糖尿病又は耐糖能異常に該当しているか否かを判別する第1分析手段と、生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、内臓脂肪肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値が各別に対応する判定基準を夫々超えるか否かを判別する第2分析手段とを備え、前記第1分析手段による判別結果と、前記第2分析手段による判別結果とに基づいて、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する構成とすることができるし、前記第2リスク分析手段は、前記第1リスク分析手段による分析結果に基づいて前記対象者が糖尿病に該当しているか否かを判別する第1分析手段と、生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、内臓脂肪肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値が各別に対応する判定基準を夫々超えるか否かを判別する第2分析手段とを備え、前記第1分析手段による判別結果と、前記第2分析手段による判別結果とに基づいて、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する構成とすることもできる。
【0013】
また、かかる場合においては、前記第2分析手段は、生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、内臓脂肪肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値のうちのいくつが前記判定基準を超えたかを計数するように構成されており、前記第2リスク分析手段は、前記第2分析手段による計数結果が所定数を超えるか否かを判別する判別手段を備え、前記第1分析手段による判別の結果、対象者が糖尿病又は耐糖能異常に該当しており、しかも、前記判別手段によって前記計数結果が所定数を超えると判別された場合に、メタボリックシンドロームの疾患リスクが高いと分析するように構成されていることが好ましい。これにより、メタボリックシンドロームの疾患リスクを正確に分析することが可能となる。なお、ここでいう「判定基準を超える」とは、血圧等の値が、判定基準によって区分される正常側領域と異常側領域とのうち異常側領域に入ることを意味し、例えば、判定基準を上回った場合に異常とされる場合には判定基準を上回ることを意味し、判定基準を下回った場合に異常とされる場合には判定基準を下回ることを意味する。
【0014】
上記発明においては、前記生理情報は、インスリン抵抗性に関する検査値を更に含み、前記第2リスク分析手段は、前記対象者がインスリン抵抗性に該当しているか否かを判別する第1分析手段と、生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、内臓脂肪肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値が各別に対応する判定基準を夫々超えるか否かを判別する第2分析手段とを備え、前記第1分析手段による判別結果と、前記第2分析手段による判別結果とに基づいて、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する構成とすることが可能であり、また、前記第2リスク分析手段は、前記第1リスク分析手段による分析結果に基づいて前記対象者がインスリン抵抗性に該当しているか否かを判別する第1分析手段と、生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、内臓脂肪肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値が各別に対応する判定基準を夫々超えるか否かを判別する第2分析手段とを備え、前記第1分析手段による判別結果と、前記第2分析手段による判別結果とに基づいて、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する構成とすることも可能である。
【0015】
かかる場合においては、前記第2分析手段は、生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、内臓脂肪肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値のうちのいくつが前記判定基準を超えたかを計数するように構成されており、前記第2リスク分析手段は、前記第2分析手段による計数結果が所定数を超えるか否かを判別する判別手段を備え、前記第1分析手段による判別の結果、対象者がインスリン抵抗性に該当しており、しかも、前記判別手段によって前記計数結果が所定数を超えると判別された場合に、メタボリックシンドロームの疾患リスクが高いと分析するように構成されていることが好ましい。これにより、メタボリックシンドロームの疾患リスクを正確に分析することが可能となる。
【0016】
上記発明においては、前記高脂血症に関する検査値を、中性脂肪値又はHDLコレステロール値とすることが可能である。また、前記内臓脂肪肥満に関する検査値を、ウェスト径、ウェスト/ヒップ比又はBMIとすることが可能である。また、前記微量アルブミン尿に関する検査値を、μ−Alb又はアルブミン/クレアチニン比とすることも可能である。
【0017】
上記発明においては、前記第1リスク分析手段は、対象者におけるインスリン抵抗性の程度を分析するインスリン抵抗性リスク分析手段と、対象者におけるブドウ糖放出亢進の程度を分析するブドウ糖放出亢進リスク分析手段と、対象者におけるインスリン分泌低下の程度を分析するインスリン分泌低下リスク分析手段とを備える構成とすることが好ましい。糖尿病の病態は、インスリン抵抗性、ブドウ糖放出亢進、及びインスリン分泌低下に大別されるため、かかる構成とすることにより、夫々の病態毎にその程度が求められることとなる。よって、これらの病態の程度を総合的に判断することにより、糖尿病の疾患リスクを正確に分析することが可能となる。
【0018】
また、この場合においては、前記第1リスク分析手段は、対象者における糖毒性の程度を分析する糖毒性リスク分析手段を更に備える構成とすることも可能である。基本的には、糖尿病の病態は上述した3つの病態インスリン抵抗性、ブドウ糖放出亢進、及びインスリン分泌低下)に分けられるが、糖毒性についての分析結果を併せることにより、より一層糖尿病の疾患リスクの分析結果をより一層高めることができる。
【0019】
上記発明においては、入力に対して生体器官における糖尿病の病態を模した出力を生成する生体モデルと、当該生体モデルを用いて対象者に治療を行った場合の生体器官をシミュレートし、治療後の病態を予測する病態予測手段と、当該病態予測手段による予測結果を出力する予測結果出力手段とを更に備える構成とすることが好ましい。これにより、治療を行ったときの治療の効果を予測することができ、糖尿病の非専門医であっても正しい治療パターンの検討を容易に行うことができる。
【0020】
上記発明においては、前記第1リスク分析手段による分析結果に基づいて、医師の診断に使用するための診断支援情報を生成する診断支援情報生成手段と、当該診断支援情報生成手段によって生成された診断支援情報を出力する診断支援情報出力手段とを更に備える構成とすることが好ましい。これにより、糖尿病の非専門家であっても、診断支援情報を用いることによって糖尿病の診断を容易且つ正確に行うことが可能となる。
【0021】
本発明に係るコンピュータプログラムは、入力装置及び出力装置を有するコンピュータを、糖尿病及びメタボリックシンドロームの診断の支援に用いられる診断支援システムとして機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、前記入力装置によって対象者の生理状態を示す生理情報の入力を受け付ける入力受付手段と、当該入力受付手段が受け付けた生理情報と、予め設定された判定基準とを比較して、対象者における糖尿病の疾患リスクを分析する第1リスク分析手段と、前記入力受付手段が受け付けた生理情報と、予め設定された判定基準とを比較して、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する第2リスク分析手段と、前記第1リスク分析手段による分析結果と、前記第2リスク分析手段による分析結果とを前記出力装置に出力させる出力手段として機能させることを特徴とする。
【0022】
このようにすることにより、第1リスク分析手段によって分析された糖尿病の疾患リスクと、第2リスク分析手段によって分析されたメタボリックシンドロームの疾患リスクとを提供することができ、糖尿病又はメタボリックシンドロームの診断において、その診断の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る診断支援システム及びコンピュータプログラムによれば、糖尿病の疾患リスクと、メタボリックシンドロームの疾患リスクとを医師等に提供することができ、糖尿病又はメタボリックシンドロームの診断において、その診断の信頼性を高めることができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る診断支援システム及びコンピュータプログラムについて、図面を参照しながら具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係る診断支援システムの概念的構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、この実施形態の診断支援システム10は、生理データ入力部1、糖尿病疾患リスク分析部2、メタボリックシンドローム疾患リスク分析部3、診断支援情報生成部4、生体モデル生成部5、生体モデル5a、生体モデル駆動部5b、病態シミュレーション部6、および診断支援情報出力部7の各機能ブロックを有している。このようなそれぞれの機能ブロックは、次のようなハードウェア構成と、コンピュータプログラムとが協働することにより実現されている。
【0025】
図2は、本実施の形態1に係る診断支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。本実施の形態1に係る診断支援システム10は、本体11と、ディスプレイ12と、入力デバイス13とから主として構成されたコンピュータ10aによって構成されている。本体11は、CPU11aと、ROM11bと、RAM11cと、ハードディスク11dと、読出装置11eと、入出力インタフェース11fと、通信インタフェース11gと、画像出力インタフェース11hとから主として構成されており、CPU11a、ROM11b、RAM11c、ハードディスク11d、読出装置11e、入出力インタフェース11f、および画像出力インタフェース11hは、バス11iによってデータ通信可能に接続されている。
【0026】
CPU11aは、ROM11bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM11cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム14aを当該CPU11aが実行することにより、前述した各機能ブロックが実現され、コンピュータ10aが診断支援システム10として機能する。
【0027】
ROM11bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU11aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
【0028】
RAM11cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM11cは、ROM11bおよびハードディスク11dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU11aの作業領域として利用される。
【0029】
ハードディスク11dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラム等、CPU11aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよび当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。後述するアプリケーションプログラム14aも、このハードディスク11dにインストールされている。
【0030】
読出装置11eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体14に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体14には、コンピュータを本発明に係る診断支援システムとして機能させるためのアプリケーションプログラム14aが格納されており、コンピュータ10aが当該可搬型記録媒体14から本発明に係るアプリケーションプログラム14aを読み出し、当該アプリケーションプログラム14aをハードディスク11dにインストールすることが可能である。
【0031】
なお、前記アプリケーションプログラム14aは、可搬型記録媒体14によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ10aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム14aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ10aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク11dにインストールすることも可能である。
【0032】
また、ハードディスク11dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態1に係るアプリケーションプログラム14aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0033】
入出力インタフェース11fは、例えばUSB,IEEE1394,RS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,IEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース11fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス13が接続されており、ユーザが当該入力デバイス13を使用することにより、コンピュータ10aにデータを入力することが可能である。
【0034】
画像出力インタフェース11hは、LCDまたはCRT等で構成されたディスプレイ12に接続されており、CPU11aから与えられた画像データに応じた映像信号をディスプレイ12に出力するようになっている。ディスプレイ12は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0035】
図1に示す生理データ入力部1は、血糖値等の検査結果の数値(検査値)、医師の問診により得られた所見情報、その他の対象者(診断対象者、患者)の生理状態を示す情報を本システムに入力する部分であり、図2に示すような入力デバイス13、入出力インタフェース11f、及び入力デバイス13からの情報の入力の受け付けに関するコンピュータプログラムによって構成されている。本実施の形態1では、生理データ入力部1を入力デバイス13により構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、入力デバイス13以外にも、OCR、スキャナ等の各種入力機器を備える構成としてもよいし、コンピュータ10aがアクセス可能なデータベース等に各種情報を登録しておき、このデータベースにコンピュータ10aがアクセスすることにより情報を入力する構成としてもよい。入力された情報は、糖尿病疾患リスク分析部2、メタボリックシンドローム疾患リスク分析部3等で利用されるように、ハードディスク11dに格納される。
【0036】
ここで、本実施形態では、入力される生理データとしては、少なくとも、経口糖負荷試験におけるインスリン値(μu/ml)、血糖値(mg/dl)、空腹時および食後2時間のインスリン値a(μu/ml)、血糖値b(mg/dl)、HOMA−IR値(=a×b/405)、24時間尿中Cペプチド(μg)、糖化タンパク指標HbA1C、体重減少の有無、BMI値、ΔIRI/ΔBS、尿ケトン体が陽性か否か、ウェスト径、中性脂肪値、HDLコレステロール値、血圧値などがあげられる。ただし、これらに限るものではなく、必要に応じて他の検査値等を入力してもよい。また、臨床所見としては、肥満または痩せの状態、空腹時または食後の血糖値の状態、糖質の摂取状態等が挙げられる。また、HOMA−IR値は、生理データとして入力されるのではなく、CPU11aが空腹時のインスリン値aと、血糖値bとを用いて算出してもよい。
【0037】
糖尿病疾患リスク分析部2は、入力された生理データに基づいて、対象者の糖尿病に関する疾患リスクを分析する部分である。以下の実施例では、糖尿病の原因となる病因を次の4つに分類するものとする。
(a)末梢のインスリン抵抗性
(b)肝臓からのブドウ糖放出亢進
(c)長期の高血糖にさらされた糖毒性
(d)インスリン分泌の低下
糖尿病疾患リスク分析部2では、この4つの病因それぞれについて、評価値を算出する。評価値とは、その病因の糖尿病への影響度を意味する。各評価値は、後述するような分析判定基準に基づいて算出され、実数値として出力される。以下、この評価値をスコアと呼ぶ。上記分析判定基準は、予めハードディスク11dに格納されており、アプリケーションプログラム14aに基づいて、順次入力データと判定基準値との比較をすることによりスコアが算出される。出力されたスコアは、診断支援情報生成部4に与えられ、治療方法などの支援情報の作成に用いられる。
【0038】
メタボリックシンドローム疾患リスク分析部3は、入力された生理データに基づいて、対象者のメタボリックシンドロームに関する疾患リスクを分析する部分である。メタボリックシンドローム疾患リスク分析部3では、1つの評価値(スコア)を算出する。かかるスコアも、後述するような分析判定基準に基づいて算出され、実数値として出力される。メタボリックシンドロームに関する分析に使用される判定基準は、予めハードディスク11dに格納されており、アプリケーションプログラム14aに基づいて、順次入力データと判定基準値との比較をすることによりスコアが算出される。かかるメタボリックシンドローム疾患リスク分析部3から出力されたスコアもまた、診断支援情報生成部4に与えられる。
【0039】
診断支援情報生成部4は、糖尿病疾患リスク分析部2及びメタボリックシンドローム疾患リスク分析部3での分析結果と、生理データ入力部1から入力された生理データおよび専門医のノウハウを格納したデータベースなどを利用して、後述するような診断判断基準に基づいて、最適と考えられる治療方法をはじめとする診断支援情報を生成する部分である。専門医のノウハウを格納したデータベースは、専門医の糖尿病に対する薬剤の知識、運動療法に関する知識、食事療法に関する知識などからなり、各病態のパターンや患者の臨床所見、手術歴などに応じて治療方針として体系化されたものである。これらの情報はハードディスク11dに格納されている。
【0040】
薬剤の知識としては、糖尿病の各病態に応じて投与できる薬剤の候補、臨床所見に応じた薬剤の選択順位や投与量、患者の状態によっては投与できない薬剤の種類(禁忌情報)などが挙げられる。薬剤の投与比率は、その患者における各病因の糖尿病への影響度や腎臓など臓器器官に障害があるか否かのようなパラメータの強度の関数で与えられる。たとえば、TZDにAGIを併用するといった薬剤投与の方針は、その患者の糖尿病の病因のうちインスリン抵抗性の向上が最大の影響を与えており、更に心不全がなく、電解質異常がなく、過去に消化管の手術がない等の条件を考え併せることで与えられる。運動療法の知識としては、各病態に応じた運動強度、運動量や推奨される運動種目などが挙げられる。食事療法の知識としては、各病態に応じた許容摂取カロリー、各栄養素の許容摂取量などが挙げられる。
【0041】
生体モデル生成部5は、入力された生理データ及び糖尿病疾患リスク分析部2による分析結果に基づいて、対象者固有の生体パラメータ値を推定して生体モデル5aを生成する部分である。生体モデル5aは、糖尿病に関連する臓器、器官の機能を数理モデルとして記述したモデルであり、たとえば膵臓においてはインスリンの分泌機能、肝臓においてはブドウ糖の取り込みと放出の機能、末梢組織においてはインスリンを用いた糖の代謝の機能を表現することができる。モデルの表現方式としては、たとえば物質濃度を変数とする微分方程式として表現することができる。ただし、これらに限るものではなく、必要に応じて他の臓器、器官や他の機能を含んでもよく、他の表現方式を用いてもよい。この生体モデル5aは、各患者に共通の構造部分と、患者ごとに異なる変数である生体パラメータとを有する。この生体パラメータは、たとえば、「糖利用」,「インスリン分泌」,「糖放出」の程度を表しており、対象者毎に異なるパラメータ値が定められる。これらのパラメータ値は、病態シミュレーション部6に与えられ、対象者の今後の糖尿病の病態を予測するのに用いられる。たとえば、「糖利用」とは筋や肥肪組織など末梢組織をはじめとする各細胞での糖類の消費量を意味し、これはインスリン抵抗性を予測するのに用いられる。
【0042】
生体モデル駆動部5bは、生体モデル5aを用いて、生体の挙動を再現するための計算を行うための部分である。たとえば、MatLab(マスワークス社製品)やE-Cell(慶應義塾大学公開ソフトウェア)を用いて、生体モデルの挙動を計算してもよい。また、他の計算システムを用いてもよい。前記生体モデル5aとして前述したような微分方程式による数理モデルを用いる場合には、生体モデル駆動部5bとして、前記微分方程式の任意のパラメータ値を任意の時間間隔で計算できる数値計算ソフトウェアを用いることができる。
【0043】
生体モデル生成部5は、生体モデル駆動部5bの出力が、入力された生理データ及び糖尿病疾患リスク分析部2から与えられた分析結果と合致するような、生体モデル5aの各パラメータ値を推定する。各パラメータ値の推定方法としては、公知の最少二乗法、最急降下法、遺伝的アルゴリズム、又はシミュレーテッドアニーリング等を用いることができるが、これらに限るものではなく、必要に応じて他のアルゴリズムを用いてもよい。
【0044】
病態シミュレーション部6は、生体モデル生成部5で生成された患者固有の生体モデルを用いて、その患者に対してある治療を行なった後の病態を予測する部分である。たとえば、治療前の病態が長期の高血糖にさらされた糖毒性を最大影響病因とする患者に対し、インスリン投与を施したと仮定するシミュレーションの結果、「インスリン分泌」の上昇と「糖放出」の低下は見られたが「糖利用」の上昇が見られないといった場合には、治療後の病態をインスリン抵抗性が最大影響病因と予測し、それを意味する結果を出力する。
【0045】
診断支援情報出力部7は、診断支援情報生成部4で生成された治療方法又はメタボリックシンドロームの疾患リスクや、病態シミュレーション部6で予測される病態又は治療結果などの診断支援情報をディスプレイ12に表示させる部分である。なお、ディスプレイ12への表示に限らず、たとえば、プリンタなどの印刷装置に診断支援情報を印刷する構成であってもよい。このように診断支援情報は、ディスプレイ12へ表示され、又は所定の用紙へ印刷されて、医師および患者等のユーザに提供される。
【0046】
次に、本実施の形態1に係る診断支援システムの動作について説明する。コンピュータ10aのCPU11aが、アプリケーションプログラム14aを実行することにより、コンピュータ10aが診断支援システム10として機能し、以下のように動作する。図3は、本発明の実施の形態1に係る診断支援システム10の動作の流れを示すフローチャートである。まず、CPU11aは、前記したようなある患者の生理データの入力を受け付ける(ステップS1)。
【0047】
次に、CPU11aは、糖尿病疾患リスク分析処理を実行する(ステップS2)。
糖尿病疾患リスク分析処理では、主として、次の4つの判定処理を行う。
ステップS2−1:末梢のインスリン抵抗性判定
ステップS2−2:肝臓からのブドウ糖放出亢進判定
ステップS2−3:長期の高血糖にさらされた糖毒性判定
ステップS2−4:インスリン分泌の低下判定
各ステップの詳細処理内容については、図4から図7に示す。
【0048】
各ステップの判定処理が実行されると、そのステップごとに、CPU11aによりスコアが算出され、RAM11c又はハードディスク11dに一時保存される。たとえば、ステップS2−1では、末梢のインスリン抵抗性判定処理を実行することにより、インスリン抵抗性が糖尿病の原因としてどの程度影響を及ぼしているかを示す評価値(スコアAとする)が求められる。このスコアAが一時保存され、後の診断支援情報生成処理(ステップS5)で用いられる。
【0049】
同様に、ステップS2−2にて、CPU11aによってブドウ糖放出亢進の評価値であるスコアBが算出され、ステップS2−3にて糖毒性のスコアCが、ステップS2−4にてインスリン分泌低下のスコアDが夫々CPU11aにより算出される。これらのスコアは、数値が大きいほどその病因の影響度が大きいことを示す。
【0050】
次に、CPU11aは、メタボリックシンドローム疾患リスク分析処理を実行する(ステップS3)。ここでは、メタボリックシンドロームの疾患リスクを示す評価値(スコアEとする)が算出される。このスコアEは、数値が大きいほどメタボリックシンドロームの疾患リスクが高い、即ち、メタボリックシンドロームの症状が重い、又はメタボリックシンドロームを発症する蓋然性が高いことを示す。当該ステップS3の詳細処理内容については、図8に示す。
【0051】
次に、CPU11aは、ステップS4において、診断支援情報の生成処理(ステップS5)へ進むか、生体モデル生成処理(ステップS6)へ進むかの判断をする。この判断は、利用者の入力をうながす表示をして、所定のキー入力により行なうようにしてもよい。あるいは、ステップS1の入力のときに、予め、利用者がどちらの処理をするかの情報を入力するようにしてもよい。また、このステップS4の分岐判断は必須のものではなく、ステップS5を実行した後に、シーケンシャルにステップS6,S7を実行するようにしてもよいし、ステップS6,7を実行した後に、シーケンシャルにステップS5を実行するようにしてもよい。
【0052】
ステップS4において、診断支援情報生成処理をしない場合には(ステップS4においてNO)、CPU11aは、ステップS6へ処理を進め、生体モデル生成処理を実行する。生体モデル生成処理(ステップS6)では、主として入力された生理データ等を基に関数の値の算出などが行なわれ、前記したような生体パラメータ値が求められる。ステップS6の後、病態シミュレーション処理(ステップS7)が実行され、CPU11aが、求められた生体パラメータ値を用いて、治療を行なった後の患者の病態を予測する。病態の予測は、たとえば、ある薬剤を特定量投与するといった情報を入力することで、CPU11aが前記生態パラメータ値を表す各関数値を算出し、それら各生体パラメータ値の増加または減少からその患者の生理データを予測し、その結果を用いてステップS5を実行することにより行われる。この後、ステップS8へ進み、ステップS2,S3,S6およびS7で求められた診断に役立つ情報をディスプレイ12に表示(またはプリンタで印刷)する。
【0053】
ステップS4において、診断情報生成処理をする場合には(ステップS4においてYES)、CPU11aは、ステップS5へ処理を進め、診断支援情報生成処理を実行する。診断支援情報生成処理(ステップS5)では、ステップS2で求めた4つのスコア(A,B,C,D)の大小関係によって、次の4つの処理のうちいずれかの処理がCPU11aにより実行される。
ステップS5−1:末梢のインスリン抵抗性と判定された場合
ステップS5−2:肝臓からのブドウ糖放出亢進と判定された場合
ステップS5−3:長期の高血糖にさらされた糖毒性と判定された場合
ステップS5−4:インスリン分泌の低下と判定された場合
これらの4つの処理では、CPU11aが、それぞれの病因について、所定の診断基準に基づいて、治療方針,投与する薬剤等からなる診断支援情報を生成する。
【0054】
また、ステップS5では、CPU11aが、ステップS3で求めたスコア(E)を用いて、メタボリックシンドロームに疾患リスクを判定する(ステップS5−5)。各ステップS5−1〜S5−5の詳細処理内容については、図9〜図14に示す。そして、ステップS5の後、CPU11aが診断支援情報をディスプレイ12に表示(またはプリンタで印刷)する(ステップS8)。以上がこの発明の診断支援システムの全体フローである。
【0055】
次に、ステップS2の中の各判定処理について説明する。図4は、末梢のインスリン抵抗性判定処理(S2−1)の処理手順を示すフローチャートであり、図5は、肝臓からのブドウ糖放出亢進判定処理(S2−2)の処理手順を示すフローチャートであり、図6は、長期の高血糖にさらされた糖毒性判定処理(S2−3)の処理手順を示すフローチャートであり、図7は、インスリン分泌の低下判定処理(S2−4)の処理手順を示すフローチャートである。ステップS2−1,S2−2,S2−3およびS2−4の各処理の終了時において、それぞれ、スコアA,B,CおよびDが算出される。
【0056】
各スコア(A、B、C、D)は、その判定処理で予め定められた数値の合計値(SC)として求められる。ただし、スコアを百分率(%)で表わすために、算出されたスコア値SCを、最悪の場合に相当するスコアが最も高くなるような判定がされた場合のその総スコア値SAで除算したものをスコアとして用いてもよい。すなわち、スコア(A,B,C,D)=(SC/SA)×100(%)とする。また、分析判定基準の中に実施していない検査Kがある場合、最悪の場合の総スコア値SAからその検査Kで得られるはずであったスコアの値(SB)を減算したものを総スコア値SAとする(SA=SA−SB)。このように%で表わすことにより、実施した検査の種類や個数によらない結果を得ることができる。
【0057】
まず、図4における判定処理(S2−1)では、CPU11aが、入力された「空腹時インスリン値」、「食後2時間血糖値」、「HOMA−IR」、「インスリンOGTT頂値」、「24時間尿中Cペプチド」のそれぞれについて、予め定められた判定基準値と比較する。更に具体的に説明すると、CPU11aは、スコアAを算出するための変数Aを用意し、初期値をゼロとし、ステップS101〜S115の各判断において"YES"となった場合に、所定の点数を、この変数Aに加算していく。
【0058】
たとえば、ステップS101において、入力された「空腹時インスリン値」が10以上の場合には"YES"となるので、CPU11aは、この変数Aに、1.5を加算する。また、たとえば「HOMA−IR」の検査を実施していない場合には、ステップS107で"NO"となり、CPU11aは、数値の加算をせずに次の判断(ステップS110)へ処理を進める。CPU11aは、ステップS101からステップS115までの各判断を実行した後、ステップS116において、変数Aの値を用いてスコアAの算出,保存を行なう。スコアAは、変数Aの数値をそのまま採用してもよいが、前記したように、変数AをこのステップS2−1全体の最大のスコア値となるルートをたどった場合の総スコア値SA(=23点)で除算し%で表わしたもの(変数A/SA)×100を採用することが好ましい。
【0059】
同様にして、図5のステップS2−2において、CPU11aは、初期値ゼロの変数Bに対して、判断ごとに数値を加算していき、ステップS121〜S133の後、ステップS134において、変数BからスコアBを算出する。また、図6のステップS2−3において、CPU11aは、初期値ゼロの変数Cに対して、ステップS141〜S152の判断ごとに数値を加算していき、ステップS153において、変数CからスコアCを算出する。さらに、CPU11aは、図7のステップS2−4において、初期値ゼロの変数Dに対して、ステップS161〜S169の判断ごとに数値を加算していき、ステップS170において、変数DからスコアDを算出する。以上のようにして、ステップS2の処理が終了し、スコアA,B,C,Dが算出される。
【0060】
このように、糖尿病疾患リスク分析処理(ステップS2)の4つの判定処理(図4〜図7)により、4つの評価値(スコア)が求められたが、これらのスコアの大きさを比較することにより、どの病因が最も影響度が大きいかを判断することができる。また、これら4つのスコア値各々の絶対的大きさの組み合わせで分類する処理をCPU11aが行うことにより、患者の病態を前記したような5つの糖尿病の病態のいずれに属するかを分類することができる。たとえば、図16に示すように「インスリン抵抗性」、「糖毒性」、「インスリン分泌」の3つのスコア値を3次元空間にマッピングすれば、臨床像によって異なる位置にプロットされ、主要な病因に応じて病態を分類できる。また、図17に示すように「インスリン抵抗性」「肝糖放出亢進」「インスリン分泌低下」の3つのスコア値を3次元空間にマッピングすれば、臨床像によって異なる位置にプロットされ、主要な病因に応じて病態を分類できる。
【0061】
図15は、入力データと、ステップS2で算出されたスコアについて、各病因の患者ごとの具体例を示す図表である。たとえば、インスリン抵抗性の判定において、スコアAが最も高い数値0.85となった患者は、インスリン抵抗性の病因が最も影響力が大きいことを示しており、「インスリン抵抗性患者」と判定される。
【0062】
次に、メタボリックシンドローム疾患リスク分析処理(ステップS3)の処理内容について説明する。メタボリックシンドロームを構成する各因子は、それぞれが独立して存在するのではなく、原因となる主因子と、その因子と連動して引き起こされる従属因子に分けられ、それらの因子は相互に関連している。そのため、患者所見からメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析するためには、単に特定の臨床検査値のみを用いるのではなく、複数の臨床検査値、所見を組み合わせて疾患リスクの分析を行うことが必要とされる。かかる見地から、米国コレステロール教育プログラム (NCEP)によってATPIII(Adult Treatment Panel III 2001)として以下のような基準が発表されている。
【0063】
ATPIII診断基準によれば、以下のうちの3個以上の条件を満たす場合にメタボリックシンドロームの疾患リスクが高いと判定する。
(1)内蔵肥満
ウェスト径が男性で102cm以上、女性で88cm以上であること。
(2)中性脂肪
中性脂肪値が150mg/dL以上であること。
(3)HDLコレステロール
HDLコレステロール値が男性で40mg/dL未満、女性で55mg/dL未満であること。
(4)血圧
血圧値が収縮期において130mmHg以上、拡張期において85mmHg以上であること。
(5)空腹時血糖値
空腹時血糖値が110mg/dL以上であること。
以下に説明するメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理においては、このような診断基準を用いて疾患リスクの分析を行うことができる。これにより、基準に合致した正確なメタボリックシンドロームの疾患リスクの判定を行うことが可能となる。なお、上記の診断基準は米国人向けに作成されたものであるので、例えば患者が日本人である場合には、上記のウェスト径の診断基準に代えて、次のような日本人向けの診断基準(2005年4月8日、第102回日本内科学会講演会にて発表)を用いることができる。
【0064】
以下のうちの(1)の条件を満たし、且つ(2)〜(4)の条件のうち2つ以上を満たす場合にメタボリックシンドロームの疾患リスクが高いと判定する。
(1)ウェスト径が男性で85cm以上、女性90cm以上であること。
(2)中性脂肪値が150mg/dL以上の高トリグリセライド血症、HDLコレステロール値が40mg/dL未満の低HDLコレステロール血症のいずれか又は両方であること。
(3)血圧値が収縮期において130mmHg以上、拡張期において85mmHg以上のいずれか又は両方であること。
(4)空腹時血糖値が110mg/dL以上であること。
このように対象者(患者)に適した診断基準を採用することにより、正確に疾患リスクを判定することができる。
【0065】
図8は、本実施の形態1に係るメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理(ステップS3)の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、上述した日本人向けの診断基準を用いてメタボリックシンドロームの疾患リスク分析を行う場合について説明する。まずCPU11aは、ステップS1において入力を受け付けた生理データに含まれるウェスト径を所定の基準値と比較し(ステップS181)、ウェスト径が基準値を超えた場合には(ステップS181においてYES)、初期値ゼロにセットされた変数Eに1を加算し(ステップS182)、ステップS183へと処理を進める。一方、ステップS181においてウェスト径が基準値を超えなかった場合には(ステップS181においてNO)、CPU11aは処理をリターンする。
【0066】
ステップS183においては、CPU11aは、生理データに含まれる中性脂肪値を所定の基準値と比較する。このステップS183での比較の結果、中性脂肪値が基準値を超えた場合には(ステップS183においてYES)、CPU11aは変数Eに1を加算し(ステップS184)、ステップS187へと処理を進める。ステップS183において中性脂肪値が基準値を超えなかった場合には(ステップS183においてNO)、CPU11aはステップS185へ処理を進める。
【0067】
ステップS185においては、CPU11aは、生理データに含まれるHDLコレステロール値を所定の基準値と比較する。このステップS185での比較の結果、HDLコレステロール値が基準値を下回った場合には(ステップS185においてYES)、CPU11aは変数Eに1を加算し(ステップS186)、ステップS187へと処理を進める。ステップS185においてHDLコレステロール値が基準値を超えた場合にも(ステップS185においてNO)、CPU11aはステップS187へ処理を進める。
【0068】
ステップS187においては、CPU11aは、生理データに含まれる血圧値を所定の基準値と比較する。このステップS187での比較の結果、血圧値が基準値を超えた場合には(ステップS187においてYES)、CPU11aは変数Eに1を加算し(ステップS188)、ステップS189へと処理を進める。ステップS187において血圧値が基準値を超えなかった場合にも(ステップS187においてNO)、CPU11aはステップS189へ処理を進める。
【0069】
ステップS189においては、CPU11aは、生理データに含まれる空腹時血糖値を所定の基準値と比較する。このステップS189での比較の結果、空腹時血糖値が基準値を超えた場合には(ステップS189においてYES)、CPU11aは変数Eに1を加算し(ステップS190)、処理をリターンする。また、ステップS189において空腹時血糖値が基準値を超えなかった場合には(ステップS189においてNO)、CPU11aは処理をリターンする。以上のようなメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理3では、変数Eの数値をそのままスコアEとして採用する。
【0070】
次に、診断支援情報生成処理(ステップ5)の処理内容について説明する。図9は、診断支援情報生成処理(ステップS5)の処理手順を示すフローチャートである。まず、CPU11aは、ステップS2及びステップS3で求めた各スコア(A,B,C,D,E)を読み出し、このうち4つのスコアA,B,C,Dを比較して、4つのスコアA,B,C,Dのうち最大のものを探し出す(ステップS51)。そして、最大のスコアに対応する病因の治療方針の決定処理を実行し、処理をリターンする。ステップS52において、スコアAが他のスコアよりも大きく最大のとき(ステップS52においてYES)、CPU11aはステップS5−1へ処理を進め、「末梢のインスリン抵抗性の治療方針決定処理」を実行する。
【0071】
同様に、CPU11aは、ステップS53においてスコアBが最大のとき(ステップS53においてYES)、ステップS5−2へ処理を進め、「肝臓からのブドウ糖放出亢進の治療方針決定処理」を実行する。ステップS54においてスコアCが最大のとき(ステップS54においてYES)、CPU11aはステップS5−3へ処理を進め、「長期の高血糖にさらされた糖毒性の治療方針決定処理」を実行する。ステップS55においてスコアDが最大のとき(ステップS55においてYES)、CPU11aはステップS5−4へ処理を進め、「インスリン分泌の低下の治療方針決定処理」を実行する。なお、同点数のスコアがある場合は、複数の病因が同時に影響を与えていることを意味しており、同点数のスコア全てに対応する処理を行った後、たとえば薬剤であれば併用投与をすすめるなど、結果の全てを出力するようにすればよい。また、上述の処理を行った後には、CPU11aは、ステップS5−5へと処理を移し、「メタボリックシンドロームの疾患リスク判定処理」を実行する。
【0072】
図10は、ステップS5−1の「末梢インスリン抵抗性の治療方針の決定処理」の処理手順を示すフローチャートである。まず、CPU11aは、ステップS201において「条件1:心不全がないこと」および「条件2:電解質異常がないこと」が成立するか否か判断する。ここで、「心不全がないこと」は、入力されたデータのうち、データベース等にすでに入力されている情報により判断される。同様に「電解質異常がないこと」は、データベース等にすでに入力されている情報により判断される。
【0073】
そして、ステップS201において条件1および条件2が成立すると判断された場合には(ステップS201においてYES)、CPU11aはステップS204へと処理を進め、「インスリン注射よりも、TZDを第1選択」という治療方針を選択する。ステップS201で、「条件1かつ条件2」が成立しない場合には(ステップS201においてNO)、CPU11aはステップS202へと処理を進め、入力データから「過去の消化管手術歴の有無」を判断する。ステップS202において手術歴がない場合には(ステップS202においてNO)、CPU11aはステップS203へ処理を進め、「高血糖の是正を急くべきか否か」を判断する。高血糖の是正の判断は、入力されたデータのうち、データベース等にすでに入力されている情報により行うことができる。すなわち、データベース等に「高血糖の是正を急ぐ」というデータが入力されているのであれば、CPU11aが高血糖の是正を急くべきと判断する。
【0074】
ステップS202において、手術歴がある場合には(ステップS202において「有り」)、CPU11aはステップS205へと処理を進め、このステップに対応する治療方針を採用する。また、手術歴がない場合には(ステップS202において「無し」)、CPU11aは、ステップS203における判断の結果に応じて、ステップS206(ステップS203においてYESの場合)あるいはステップS207(ステップS203においてNOの場合)の治療方針を採用する。
【0075】
図11は、ステップS5−2の「肝臓からのブドウ糖放出亢進の治療方針の決定処理」の処理手順を示すフローチャートである。まず、CPU11aは、ステップS211において、「条件1:クレアチニン<1.40であること」および「条件2:肝障害がないこと」が成立するか否か判断する。「条件2:肝障害がないこと」は、データベース等にすでに入力されている情報により判断できる。
【0076】
「条件1かつ条件2」が成立しないときは(ステップS211においてNO)、CPU11aは、ステップS212へ処理を進め、術中または術後数日以内であるか否かを判別する。術中であるか術後数日以内であるかの判断は、入力された患者に関するデータベース等にすでに入力されている情報を参照すればよい。なお、数日とは、入力された患者の生理データから導かれる関数の値として算出される。CPU11aは、このような判断に基づいて、それぞれ、S213からS215に示した治療方針のいずれかを選択する。
【0077】
図12は、ステップS5−3の「長期の高血糖にさらされた糖毒性の治療方針の決定処理」の処理手順を示すフローチャートである。CPU11aは、まずステップS221において、「糖毒性の程度が軽いか否か」を判断する。糖毒性の程度が軽いことは、ステップS2−3により算出された糖毒性のスコアCにより判断できる。たとえば、CPU11aは、糖毒性のスコアCが4つの病因スコアA,B,C,Dのうち最小のときには、糖毒性の程度が軽いと判断する。程度が軽くないと判断されたときには(ステップS221においてNO)、CPU11aはステップS226の食事療法を採用する。程度が軽いときには(ステップ221においてYES)、CPU11aは、ステップS222からステップS225の血糖低下の状況について順次判断する。
【0078】
SU,AGI,BGおよびTZDのいずれかにより血糖が低下したと判断された場合には(ステップS222,S223,S224,S225においてYES)、CPU11aは、ステップS228の治療方針を採用し、いずれによっても血糖低下していない場合には(ステップS222,S223,S224,S225においてNO)、ステップS227の治療方針を採用する。ここで、血糖が低下したか否かの判断は、データベース等にすでに入力された情報により行うことができる。たとえば、ある薬剤の投与歴があり、その後の入力データのうち血糖値が低下しているなどのとき、血糖が低下したと判断する。
【0079】
図13は、ステップS5−4の「インスリン分泌の低下の治療方針の決定処理」の処理手順を示すフローチャートである。まず、CPU11aは、ステップS231において、「尿中および血中ケトン体が高値」であるか否かを判断する。ここで高値とは、たとえば入力データの尿中ケトン体が2+程度以上であることをいう。ケトン体が高値であると判断した場合には(ステップS231においてYES)、CPU11aは、ステップS232へ処理を進め、入力データの「24時間尿中Cペプチド」が30μgよりも小さいか否かを判断する。「24時間尿中Cペプチド」が30μgよりも小さい場合には(ステップS232においてYES)、「I型糖尿病」と判断されるので、CPU11aがステップS236の治療方針を採用する。
【0080】
ステップS231またはS232で"NO"と判断した場合には、CPU11aは、ステップS233へ処理を進め、「治療過程でインスリン分泌が枯渇したか否か」を判断する。ここで、枯渇か否かは、空腹時インスリン値や24時間尿中Cペプチドにより判断できる。たとえば、24時間尿中Cペプチドが50μg未満のとき、インスリン分泌が枯渇したと判断する。
【0081】
CPU11aは、インスリン分泌が枯渇したと判断したとき(ステップS233においてYES)、ステップS237へ処理を進め、消化管の手術をした後か否か判断し、この判断結果に対応した治療方針を採用する(ステップS238,S239)。一方、ステップS233で枯渇していないと判断した場合には(ステップS233においてNO)、CPU11aは、ステップS234へと処理を進める。ステップS234においては、CPU11aは、残存膵予備能がある程度温存されているか否かを判断する。残存膵予備能がある程度温存されていると判断された場合には(ステップS234においてYES)、CPU11aはステップS240へ処理を進め、そうでないときには(ステップS234においてNO)、ステップS235へと処理を進める。
【0082】
残存膵予備能がある程度温存されているか否かは、
(1)空腹時のインスリン≧5μg/ml
(2)24時間尿中Cペプチド≧50μg
のどちらかが成立するか否かによって判断される。すなわち、(1)または(2)が成立すれば、CPU11aは、残存膵予備能がある程度温存されていると判断する。
【0083】
CPU11aは、ステップS240では、SUに徐々に反応しなくなったか否かを判断し、その判断結果に基づいてそれぞれの治療方針を採用する(ステップS241,S242)。SUに徐々に反応しなくなったか否かの判断は、たとえばデータベース等にすでに入力された情報を用いればよい。このとき、SU投与後の血糖値が投与前と比して低下していないような場合には、SUに反応しなくなったと判断される。
【0084】
また、CPU11aは、ステップS235において、術前までやせが続いていたか否かを判断し、その判断結果に基づいて、それぞれの治療方針を採用する(ステップS243,S244)。やせが続いていたか否かは、たとえばデータベース等にすでに入力された情報により判断され、BMI(=体重×10000/(身長×身長))<18が複数回続いたときの場合にやせが続いていたと判断される。
【0085】
図14は、ステップS5−5の「メタボリックシンドロームの疾患リスク判定処理」の処理手順を示すフローチャートである。CPU11aは、ステップS3において算出したスコアEが所定の基準値(例えば3)以上であるか否かを判別する(ステップS241)。スコアEが基準値以上である場合には(ステップS241においてYES)、CPU11aは、診断支援情報として、「メタボリックシンドロームの疾患リスクが高い」を採用し(ステップS242)、処理をリターンする。一方、ステップS241において、スコアEが基準値未満であった場合には(ステップS241においてNO)、診断支援情報として「メタボリックシンドロームの疾患リスクは通常レベル」を採用し(ステップS243)、処理をリターンする。
【0086】
上記のような診断支援情報生成処理S5により生成された診断支援情報は、ステップS8にて出力(画面表示)されることとなる。かかる診断支援情報には、上述したようにメタボリックシンドロームを有することによって増加する心血管イベントを中心とした疾患リスクに関する情報が含まれている。中村他( Nakamura et al. )、マグニチュード・オブ・サステインド・マルチプル・リスク・ファクターズ・フォー・イスケミック・ハート・ディジーズ・イン・ジャパニーズ・エンプロイーズ−ア・ケース・コントロール・スタディー−( Magnitude of Sustained Multiple Risk Factors for Ischemic Heart Disease in Japanese Employees - A Case-Control Study - )、ジャパニーズ・サーキュレーション・ジャーナル( Japanese Circulation Journal )、(日本)、日本循環器学会、2001年、第65巻、第1号、p.11−17に開示されている通り、日本人において、糖尿病患者がさらにメタボリックシンドロームを有するということは、内臓脂肪肥満があり、さらに高脂血症または高血圧症を並存する場合であるが、そのいずれもが、糖尿病の合併症のうち最も重篤な合併症である大血管障害に対するリスクを非常に高めることが知られている。
【0087】
このため医師が対象者が単なる糖尿病なのか、糖尿病であると共にメタボリックシンドロームでもあるのかを考慮することにより、対象者に対してより一層適切な診断、治療方針の決定等を行うことができる。また、メタボリックシンドロームの疾患リスクを診断支援情報の一部として単に出力するだけでなく、例えば、スコアEの大きさによって糖尿病の疾患リスクに重み付けをしてもよいし、メタボリックシンドロームの疾患リスクが高いか通常レベルかを単に示す情報ではなく、例えば、スコアEの大きさによってメタボリックシンドロームの疾患リスクを多値的に表した情報(例えば、疾患リスクが非常に高い、高い、中程度、低い等)を表示してもよい。これに対しては既にかなり多数の臨床疫学データ、EBMデータが出版されており、参考に出来る。
【0088】
以上が診断支援情報生成処理の詳細な処理手順であるが、これに限るものではなく、患者の状況、医師独自の判断基準,論文など糖尿病及びメタボリックシンドロームの研究の成果などを考慮して、必要に応じて判断基準を追加,削除または変更してもよい。このシステムの利用者や専門の医師が容易に判断基準を追加等することができるように、判断基準の追加,変更をするための専用ツールを用いてもよい。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る診断支援システムについて説明する。図2に示すように、本実施の形態2に係る診断支援システム20は、ハードディスク11dにコンピュータ10aを以下のように動作させるアプリケーションプログラム24aがインストールされている。本実施の形態2に係る診断支援システムのその他の構成は、実施の形態1に係る診断支援システム10の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0089】
次に、本実施の形態2に係る診断支援システム20の動作について説明する。コンピュータ10aのCPU11aが、アプリケーションプログラム24aを実行することにより、コンピュータ10aが診断支援システム20として機能し、以下のように動作する。本実施の形態2に係る診断支援システム20は、メタボリックシンドローム疾患リスク分析処理(S23)及び診断支援情報生成処理(ステップS25)以外の部分においては、実施の形態1に係る診断支援システム10と同様の動作を行うので(図3参照)、同様の部分については説明を省略する。
【0090】
図18は、本実施の形態2に係るメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理(ステップS23)の処理手順を示すフローチャートである。なお、本実施の形態2においては、ステップS1において入力される生理データに、糖尿病の有無、耐糖能異常の有無、血圧値、中性脂肪値、HDLコレステロール値、ウェスト/ヒップ比、BMI、μ−Alb、アルブミン/クレアチニン比が含まれる。また、メタボリックシンドローム疾患リスク分析処理では、メタボリックシンドロームの疾患リスクを示す2つの評価値(スコアF,Gとする)が算出される。
【0091】
WHOにより策定された診断基準では、以下のうちの条件(1)、(2)のいずれか一つと、条件(3)〜(5)のうちの2つ以上を満たす場合にメタボリックシンドロームの疾患リスクが高いと判定される。
(1)耐糖能異常
耐糖能異常であること。
(2)糖尿病
糖尿病であること。
(3)血圧
血圧値が収縮期において140mmHg以上、拡張期において90mmHg以上であること。
(4)高脂血症
血清中性脂肪量が150mg/dL以上であるか、HDLコレステロール値が男性で35mg/dL未満、女性で39mg/dL未満であること。
(5)内臓脂肪肥満
ウェスト/ヒップ比が男性で0.90以上、女性で0.85以上であるか、BMIが30以上であること。
n(6)微量アルブミン尿
μ-Albが20μg/分 以上であるか、アルブミン/クレアチニン比が30mg/g以上であること。
本実施形態2に係るメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理S23においては、かかる診断基準を用いて疾患リスクの分析を行う。
【0092】
本実施の形態2に係るメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理においては、まずCPU11aは、変数F及びGを夫々0にセットする(ステップS281)。次にCPU11aは、生理データに含まれる糖尿病の有無から、患者が糖尿病であるか否かを判別する(ステップS282)。糖尿病である場合には(ステップS282においてYES)、CPU11aは変数Fに1を加算し(ステップS283)、ステップS286へと処理を進める。ステップS282において糖尿病でなかった場合には(ステップS282においてNO)、CPU11aはステップS284へ処理を進める。
【0093】
ステップS284においては、CPU11aは、生理データに含まれる耐糖能異常の有無から、患者が耐糖能異常であるか否かを判別する。耐糖能異常である場合には(ステップS284においてYES)、CPU11aは、変数Fに1を加算し(ステップS285)、ステップS286へと処理を進める。ステップS284において耐糖能異常でなかった場合にも(ステップS284においてNO)、CPU11aはステップS286へ処理を進める。
【0094】
ステップS286においては、CPU11aは、生理データに含まれる血圧値を所定の基準値と比較する。このステップS286での比較の結果、血圧値が基準値を超えた場合には(ステップS286においてYES)、CPU11aは変数Gに1を加算し(ステップS287)、ステップS288へと処理を進める。ステップS286において血圧値が基準値を超えなかった場合にも(ステップS286においてNO)、CPU11aはステップS288へ処理を進める。
【0095】
ステップS288においては、CPU11aは、生理データに含まれる高脂血症に関する検査値(例えば、中性脂肪値及びHDLコレステロール値)を所定の基準値と比較して、患者が高脂血症であるか否かを判別する。この結果、高脂血症に該当する場合には(ステップS288においてYES)、CPU11aは変数Gに1を加算し(ステップS289)、ステップS290へと処理を進める。ステップS288において高脂血症に該当しなかった場合にも(ステップS288においてNO)、CPU11aはステップS290へ処理を進める。
【0096】
ステップS290においては、CPU11aは、生理データに含まれる内臓脂肪肥満に関する検査値(例えば、ウェスト/ヒップ比、BMI)を所定の基準値と比較して、患者が内臓脂肪肥満であるか否かを判別する。この結果、内臓脂肪肥満に該当する場合には(ステップS290においてYES)、CPU11aは変数Gに1を加算し(ステップS291)、ステップS292へと処理を進める。ステップS290において内臓脂肪肥満に該当しなかった場合にも(ステップS290においてNO)、CPU11aはステップS292へ処理を進める。
【0097】
ステップS292においては、CPU11aは、生理データに含まれる微量アルブミン尿に関する検査値(例えば、μーAlb、アルブミン/クレアチニン比)を所定の基準値と比較して、患者が微量アルブミン尿であるか否かを判別する。この結果、微量アルブミン尿に該当する場合には(ステップS292においてYES)、CPU11aは変数Gに1を加算し(ステップS293)、処理をリターンする。ステップS292において微量アルブミン尿に該当しなかった場合にも(ステップS292においてNO)、CPU11aは処理をリターンする。
【0098】
図3に示すように、本実施の形態2に係る診断支援情報生成処理(ステップS25)では、末梢インスリン抵抗性の治療方針の決定処理(ステップS5−1)、肝臓からのブドウ糖放出亢進の治療方針の決定処理(ステップS5−2)、長期の高血糖にさらされた糖毒性の治療方針の決定処理(ステップS503)、インスリン分泌の低下の治療方針の決定処理(ステップS5−4)、及びメタボリックシンドロームに疾患リスク判定処理(ステップS5−25)が実行される。ここで、メタボリックシンドロームに疾患リスク判定処理(ステップS5−25)以外の処理(ステップS5−1〜S5−4)は、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。図19は、本実施の形態2に係る「メタボリックシンドロームの疾患リスク判定処理」の処理手順を示すフローチャートである。CPU11aは、ステップS341において、ステップS23において算出したスコアFが所定の基準値(例えば1)以上であるか否かを判別する。スコアFが基準値以上である場合には(ステップS341においてYES)、CPU11aは、ステップS23において算出したスコアGが所定の基準値(例えば2)以上であるか否かを判別する(ステップS342)。スコアGが基準値以上である場合には(ステップS342においてYES)、CPU11aは、診断支援情報として、「メタボリックシンドロームの疾患リスクが高い」を採用し(ステップS343)、処理をリターンする。一方、ステップS341において、スコアEが基準値未満であった場合(ステップS341においてNO)、又はステップS342において、スコアGが基準値未満であった場合には(ステップS342においてNO)、診断支援情報として「メタボリックシンドロームの疾患リスクは通常レベル」を採用し(ステップS344)、処理をリターンする。
【0099】
なお、以上のようなメタボリックシンドロームの疾患リスクの分析では、上述したようなWHOによって策定された診断基準を用いてもよいが、この診断基準は欧米人向けのものであるので、例えば患者が日本人の場合には、日本人に適合した診断基準を用いることにより、より一層正確な診断支援情報を提供することができる。また、上述した診断基準は例であり、したがって本発明に係る診断支援システムにおいて用いられる糖尿病又はメタボリックシンドロームの診断基準は上述したものに限定されず、糖尿病又はメタボリックシンドロームの診断基準であれば、他の診断基準を適用してもよいことはいうまでもない。
【0100】
また、本実施の形態2においては、糖尿病の有無を生理データとして外部から受け付け、これを用いてメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、ステップS5−1〜S5−4において糖尿病であるか否かを判定し、この判定結果を用いてメタボリックシンドローム疾患リスク分析を行う構成であってもよい。糖尿病であるか否かの判定は、例えば、スコアA〜Dの何れか少なくとも1つが所定値よりも大きいか否かを判別したり、スコアA〜Dの合計が所定値よりも大きいか否かを判別したりすることにより行うことが可能である。また、この場合には、ステップS5−1〜S5−4の処理をメタボリックシンドロームの疾患リスク分析処理(ステップS33)よりも先に実行しておくことが必要である。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る診断支援システムについて説明する。図2に示すように、本実施の形態3に係る診断支援システム30は、ハードディスク11dにコンピュータ10aを以下のように動作させるアプリケーションプログラム34aがインストールされている。本実施の形態3に係る診断支援システムのその他の構成は、実施の形態1に係る診断支援システム10の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0101】
次に、本実施の形態3に係る診断支援システム30の動作について説明する。コンピュータ10aのCPU11aが、アプリケーションプログラム34aを実行することにより、コンピュータ10aが診断支援システム30として機能し、以下のように動作する。本実施の形態3に係る診断支援システム30は、メタボリックシンドローム疾患リスク分析処理(S33)以外の部分においては、実施の形態2に係る診断支援システム20と同様の動作を行うので(図3参照)、同様の部分については説明を省略する。
【0102】
図20は、本実施の形態3に係るメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理(ステップS33)の処理手順を示すフローチャートである。なお、本実施の形態3においては、ステップS1において入力される生理データに、糖尿病の有無、耐糖能異常の有無に代えて、インスリン抵抗性の有無が含まれる。本実施の形態3に係るメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理においては、CPU11aが変数F及びGを夫々0にセットした(ステップS281)後、生理データに含まれるインスリン抵抗性の有無から、患者がインスリン抵抗性であるか否かを判別する(ステップS382)。インスリン抵抗性である場合には(ステップS382においてYES)、CPU11aは変数Fに1を加算し(ステップS383)、ステップS286へと処理を進める。ステップS382においてインスリン抵抗性でなかった場合にも(ステップS382においてNO)、CPU11aはステップS286へ処理を進める。本実施の形態3におけるメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理(ステップS33)のその他の処理は、実施の形態2において説明したメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理(ステップS23)と同様であるので、その説明を省略する。
【0103】
このように、本実施の形態3においては、インスリン抵抗性の有無を用いてメタボリックシンドロームの疾患リスク分析を行う。メタボリックシンドロームにおける糖代謝異常は、インスリン抵抗性が原因であると考えられており、よってかかるメタボリックシンドロームの重大な危険因子であるインスリン抵抗性の有無を用いることにより、高精度なリスク分析を行うことができる。
【0104】
なお、本実施の形態3においては、インスリン抵抗性を生理データとして外部から受け付け、これによってメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、ステップS5−1においてインスリン抵抗性であるか否かを判定し、この判定結果を用いてメタボリックシンドローム疾患リスク分析を行う構成であってもよい。インスリン抵抗性であるか否かの判定は、例えば、スコアAが所定値よりも大きいか否かを判別することにより行うことが可能である。また、この場合には、ステップS5−1〜S5−4の処理をメタボリックシンドロームの疾患リスク分析処理(ステップS33)よりも先に実行しておくことが必要である。
【0105】
以上説明したように実施の形態1〜3に係る診断支援システム10,20,30においては、糖尿病の治療方針及びメタボリックシンドロームの疾患リスク分析結果が決定された後、ステップS8において、決定された治療方針及びメタボリックシンドロームの疾患リスク分析結果を含む診断支援情報が医師等に提供されることになる。1人の患者について、再診および再々診等ごとに同様の検査、分析をして数値化した分析結果(スコア)を得るとともに診断支援情報を提供することができるので、時間経過に伴う患者の状態の変化を客観的かつ的確に把握し、経過状態に応じて適切な判断に基づく治療をすることができる。
【0106】
たとえば、スコアの変化を見ることにより、単に分類された糖尿病の病態の変化及びメタボリックシンドロームの病態の変化を知ることができるだけでなく、定量化されたスコア値からどの程度病態が変化したかを確認することができ、より適切な判断、治療が可能となる。また、この診断支援システムを利用することにより、不確定要素の多い経験や主観に頼らずに、予め用意された画一的な判断基準で病態の分析や治療方針を得ることができるので、糖尿病及びメタボリックシンドロームの専門医でない者でも、専門医と同等かまたはそれに近い判断や治療をすることが可能となる。
【0107】
また、糖尿病と密接な関係を有するメタボリックシンドロームについての疾患リスクを利用者に提供することができるため、この情報に基づいて医師が糖尿病の治療方針、予防方針を決定することもできる。例えば、糖尿病の非専門医が当該システム10,20をある患者について使用して、当該患者においては糖尿病はまだ発症していないものの、メタボリックシンドロームの疾患リスクが高いという診断支援情報を得た場合には、当該患者に対してメタボリックシンドロームの治療及び糖尿病の予防プログラムを実行するという診断を下すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明に係る診断支援システム及びコンピュータプログラムは、糖尿病の疾患リスクと、メタボリックシンドロームの疾患リスクとを医師等に提供することができ、糖尿病又はメタボリックシンドロームの診断において、その診断の信頼性を高めることができるという効果を奏し、対象者における糖尿病及びメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析することにより糖尿病及びメタボリックシンドロームの疾患リスク情報を提供する診断支援システム、及びコンピュータを診断支援システムとして機能させるためのコンピュータプログラムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施の形態1に係る診断支援システムの概念的構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る診断支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る診断支援システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】末梢のインスリン抵抗性判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】肝臓からのブドウ糖放出亢進判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】長期の高血糖にさらされた糖毒性判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】インスリン分泌の低下判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態1に係るメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態1に係る診断支援情報生成処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】末梢インスリン抵抗性の治療方針の決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】肝臓からのブドウ糖放出亢進の治療方針の決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】長期の高血糖にさらされた糖毒性の治療方針の決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】インスリン分泌の低下の治療方針の決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態1に係るメタボリックシンドロームの疾患リスク判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】各病因の患者ごとの生理データ及びスコアの具体例を示す図表である。
【図16】糖尿病の病態を3次元的に分類した例を示す3次元グラフである。
【図17】糖尿病の病態を3次元的に分類した例を示す3次元グラフである。
【図18】本発明の実施の形態2に係るメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】本発明の実施の形態2に係るメタボリックシンドロームの疾患リスク判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図20】本発明の実施の形態3に係るメタボリックシンドローム疾患リスク分析処理の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0110】
1 生理データ入力部
2 糖尿病疾患リスク分析部
3 メタボリックシンドローム疾患リスク分析部
4 診断支援情報生成部
5 生体モデル生成部
5a 生体モデル
5b 生体モデル駆動部
6 病態シミュレーション部
7 診断支援情報出力部
10,20,30 診断支援システム
10a コンピュータ
11 本体
11a CPU
11b ROM
11c RAM
11d ハードディスク
11e 読出装置
11f 入出力インタフェース
11g 通信インタフェース
11h 画像出力インタフェース
11i バス
12 ディスプレイ
13 入力デバイス
14 可搬型記録媒体
14a,24a,34a アプリケーションプログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の生理状態を示す生理情報の入力を受け付ける入力受付手段と、
当該入力受付手段が受け付けた生理情報と、予め設定された判定基準とを比較して、対象者における糖尿病の疾患リスクを分析する第1リスク分析手段と、
前記入力受付手段が受け付けた生理情報と、予め設定された判定基準とを比較して、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する第2リスク分析手段と、
前記第1リスク分析手段による分析結果と、前記第2リスク分析手段による分析結果とを出力する出力手段とを備える診断支援システム。
【請求項2】
前記生理情報は、ウェスト径、中性脂肪値、HDLコレステロール値、血圧値、及び空腹時血糖値を含み、
前記第2リスク分析手段は、生理情報に含まれるウェスト径、中性脂肪値、HDLコレステロール値、血圧値、空腹時血糖値が各別に対応する判定基準を夫々超えるか否かを判別し、判別結果に基づいて対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する請求項1に記載の診断支援システム。
【請求項3】
前記第2リスク分析手段は、生理情報に含まれる少なくとも中性脂肪値又はHDLコレステロール値、血圧値、及び空腹時血糖値のうちのいくつが前記判定基準を超えたかを計数する計数手段と、当該計数手段による計数結果が所定数を超えるか否かを判別する判別手段とを備え、当該判別手段によって前記計数結果が所定数を超えると判別された場合に、メタボリックシンドロームの疾患リスクが高いと分析するように構成されている請求項3に記載の診断支援システム。
【請求項4】
前記生理情報は、血圧値、高脂血症に関する検査値、中心性肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値を含む請求項1に記載の診断支援システム。
【請求項5】
前記生理情報は、糖尿病及び/又は耐糖能異常に関する情報を更に含み、
前記第2リスク分析手段は、
前記対象者が糖尿病又は耐糖能異常に該当しているか否かを判別する第1分析手段と、
生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、中心性肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値が各別に対応する判定基準を夫々超えるか否かを判別する第2分析手段とを備え、
前記第1分析手段による判別結果と、前記第2分析手段による判別結果とに基づいて、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する請求項4に記載の診断支援システム。
【請求項6】
前記第2リスク分析手段は、
前記第1リスク分析手段による分析結果に基づいて前記対象者が糖尿病に該当しているか否かを判別する第1分析手段と、
生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、中心性肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値が各別に対応する判定基準を夫々超えるか否かを判別する第2分析手段とを備え、
前記第1分析手段による判別結果と、前記第2分析手段による判別結果とに基づいて、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する請求項4に記載の診断支援システム。
【請求項7】
前記第2分析手段は、生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、中心性肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値のうちのいくつが前記判定基準を超えたかを計数するように構成されており、
前記第2リスク分析手段は、前記第2分析手段による計数結果が所定数を超えるか否かを判別する判別手段を備え、
前記第1分析手段による判別の結果、対象者が糖尿病又は耐糖能異常に該当しており、しかも、前記判別手段によって前記計数結果が所定数を超えると判別された場合に、メタボリックシンドロームの疾患リスクが高いと分析するように構成されている請求項5又は6に記載の診断支援システム。
【請求項8】
前記生理情報は、インスリン抵抗性に関する検査値を更に含み、
前記第2リスク分析手段は、
前記対象者がインスリン抵抗性に該当しているか否かを判別する第1分析手段と、
生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、中心性肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値が各別に対応する判定基準を夫々超えるか否かを判別する第2分析手段とを備え、
前記第1分析手段による判別結果と、前記第2分析手段による判別結果とに基づいて、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する請求項4に記載の診断支援システム。
【請求項9】
前記第2リスク分析手段は、
前記第1リスク分析手段による分析結果に基づいて前記対象者がインスリン抵抗性に該当しているか否かを判別する第1分析手段と、
生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、中心性肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値が各別に対応する判定基準を夫々超えるか否かを判別する第2分析手段とを備え、
前記第1分析手段による判別結果と、前記第2分析手段による判別結果とに基づいて、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する請求項4に記載の診断支援システム。
【請求項10】
前記第2分析手段は、生理情報に含まれる血圧値、高脂血症に関する検査値、中心性肥満に関する検査値、及び微量アルブミン尿に関する検査値のうちのいくつが前記判定基準を超えたかを計数するように構成されており、
前記第2リスク分析手段は、前記第2分析手段による計数結果が所定数を超えるか否かを判別する判別手段を備え、
前記第1分析手段による判別の結果、対象者がインスリン抵抗性に該当しており、しかも、前記判別手段によって前記計数結果が所定数を超えると判別された場合に、メタボリックシンドロームの疾患リスクが高いと分析するように構成されている請求項8又は9に記載の診断支援システム。
【請求項11】
前記高脂血症に関する検査値は、中性脂肪値又はHDLコレステロール値である請求項4乃至10の何れかに記載の診断支援システム。
【請求項12】
前記中心性肥満に関する検査値は、ウェスト径、ウェスト/ヒップ比又はBMIである請求項4乃至11の何れかに記載の診断支援システム。
【請求項13】
前記微量アルブミン尿に関する検査値は、μ−Alb又はアルブミン/クレアチニン比である請求項4乃至12の何れかに記載の診断支援システム。
【請求項14】
前記第1リスク分析手段は、
対象者におけるインスリン抵抗性の程度を分析するインスリン抵抗性分析手段と、
対象者におけるブドウ糖放出亢進の程度を分析するブドウ糖放出亢進分析手段と、
対象者におけるインスリン分泌低下の程度を分析するインスリン分泌低下分析手段とを備える請求項1乃至13の何れかに記載の診断支援システム。
【請求項15】
前記第1リスク分析手段は、対象者における糖毒性の程度を分析する糖毒性分析手段を更に備える請求項14に記載の診断支援システム。
【請求項16】
入力に対して生体器官における糖尿病の病態を模した出力を生成する生体モデルと、
当該生体モデルを用いて対象者に治療を行った場合の生体器官をシミュレートし、治療後の病態を予測する病態予測手段と、
当該病態予測手段による予測結果を出力する予測結果出力手段とを更に備える請求項1乃至15の何れかに記載の診断支援システム。
【請求項17】
前記第1リスク分析手段による分析結果に基づいて、医師の診断に使用するための診断支援情報を生成する診断支援情報生成手段と、
当該診断支援情報生成手段によって生成された診断支援情報を出力する診断支援情報出力手段とを更に備える請求項1乃至16の何れかに記載の診断支援システム。
【請求項18】
入力装置及び出力装置を有するコンピュータを、糖尿病及びメタボリックシンドロームの診断の支援に用いられる診断支援システムとして機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、前記入力装置によって対象者の生理状態を示す生理情報の入力を受け付ける入力受付手段と、
当該入力受付手段が受け付けた生理情報と、予め設定された判定基準とを比較して、対象者における糖尿病の疾患リスクを分析する第1リスク分析手段と、
前記入力受付手段が受け付けた生理情報と、予め設定された判定基準とを比較して、対象者におけるメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する第2リスク分析手段と、
前記第1リスク分析手段による分析結果と、前記第2リスク分析手段による分析結果とを前記出力装置に出力させる出力手段として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−304833(P2006−304833A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127641(P2005−127641)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】