診断方法および超音波測定装置
【課題】超音波測定装置の測定結果に生じた異常を診断する際の演算負荷を軽減する。
【解決手段】管路判断部85は、同期加算部84による同期加算の演算結果に基づいて測定結果の異常を診断する。これにより、例えば相互相関と減衰率といった複数の量を求める必要がなく、さらには、フーリエ変換よりも演算負荷の軽減された手法により測定装置の測定結果の異常の原因の診断を実現することができる。
【解決手段】管路判断部85は、同期加算部84による同期加算の演算結果に基づいて測定結果の異常を診断する。これにより、例えば相互相関と減衰率といった複数の量を求める必要がなく、さらには、フーリエ変換よりも演算負荷の軽減された手法により測定装置の測定結果の異常の原因の診断を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して管路内の流体の状態を測定する超音波測定装置に関し、特に超音波測定装置の測定結果に生じた異常を診断する診断方法および超音波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波測定装置は、管路内を流れる流体に超音波センサによって超音波を伝播させ、その伝播速度の変化に基づいて流体の流速や流量などを測定する測定装置である。このような超音波測定装置において、例えば測定結果が得られないなど、その測定結果に異常が生じる場合がある。測定結果に異常が生じる原因としては、超音波センサ自身の故障、流路内での気泡の大量発生、流路内への異物の混入などが考えられ、これらの原因を識別することは、適切な対策を採る上で重要である。
【0003】
従来より、超音波測定装置の測定結果に異常が生じた原因を識別する方法について、様々な提案がなされている。
例えば、特許文献1においては、流路の上流から下流に向けて伝搬する超音波を受診した上流側信号と下流から上流に向けて伝搬する超音波を受診した下流側信号との相互相関と、受信超音波の減衰度とをそれぞれ演算し、この演算によって得られた相互相関の最大値および減衰度とに基づいて、配管の状態を診断する方法が提案されている。この方法では、その相関の最大値および減衰度の大小関係に基づいて、超音波診断装置が正常に動作しなくなった原因が、配管への付着物の堆積、および、配管内への気泡の混入のうちのいずれであるかを診断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4273519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、超音波信号の相互相関と減衰量という2つの値を把握しなければならず、さらには、その相互相関を求めるのにフーリエ変換等の複雑な演算を行っていた。その結果、異常の原因を診断するための演算負荷が高いものとなっていた。
【0006】
そこで、本願発明は、超音波測定装置の測定結果に生じた異常を診断する際の演算負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る診断方法は、流体が流れる配管の上流側に配置された超音波センサと下流側に配置された超音波センサとの間で超音波の送受信を行って流体の状態を測定した測定結果に生じた異常を診断する診断方法であって、1の超音波センサから所定の超音波信号を複数回送信させる送信ステップと、他の超音波センサで受信した所定の超音波信号の波形を同期加算する同期加算ステップと、この同期加算ステップによる演算結果に基づいて測定結果に生じた異常を診断する診断ステップとを有することを特徴とする。
【0008】
上記診断方法において、上記診断ステップは、他の超音波センサで受信した所定の超音波信号のSN比が同期加算することによって改善されたか否かに基づいて配管内に生じている異常を診断するようにしてもよい。
【0009】
また、上記診断方法において、送信ステップに先立って、超音波センサの異常の診断するステップをさらに備えるようにしてもよい。
【0010】
また、上記診断方法において、超音波センサは、配管の上流側に設けられた第1の超音波センサと、配管の下流側に設けられた第2の超音波センサとから構成され、第1の超音波センサおよび第2の超音波センサは、1の超音波センサまたは他の超音波センサとして機能するようにしてもよい。
【0011】
また、上記診断方法において、超音波センサは、配管の上流側に設けられ、超音波を送信する第1の超音波センサと、配管の下流側に設けられ、超音波を送信する第2の超音波センサと、配管の流れ方向における第1の超音波センサと第2の超音波センサとの間に設けられ、超音波を受信する第3のセンサとから構成され、第1の超音波センサおよび第2の超音波センサは、1の超音波センサとして機能し、第3の超音波センサは、他の超音波センサとして機能するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明に係る測定装置は、流体が流れる配管の上流側に配置された超音波センサと下流側に配置された超音波センサとの間で超音波の送受信を行って、流体の状態を測定する超音波測定装置であって、1の超音波センサから所定の超音波信号を複数回送信させる送信手段と、他の超音波センサで受信した所定の超音波信号の波形を同期加算する同期加算手段と、この同期加算手段による演算結果に基づいて測定結果に生じた異常を診断する診断手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、同期加算の演算結果に基づいて測定結果の異常を診断するので、例えば、相互相関と減衰率といった複数の量を求める必要がなく、さらには、フーリエ変換よりも演算負荷の軽減された手法により測定装置の測定結果の異常の原因の診断を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る測定装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの構成を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの圧電素子の構成を模式的に示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る測定装置における測定結果の異常診断動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの故障の診断方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの故障の診断方法を説明するための模式図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの故障の診断方法を説明するための模式図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの故障の診断方法を説明するための模式図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの故障の診断方法を説明するための模式図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る測定装置において同期加算を行う前の超音波信号の波形を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る測定装置において同期加算を行った超音波信号の波形を示す図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る測定装置の変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
<超音波測定装置の構成>
図1に示すように、本実施の形態に係る超音波測定装置は、測定対象となる流体が内部を流通する管路1に配置された第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bと、これら超音波センサ10a、10bの間で入出力される信号を切り替える切替部4と、この切替部4を介して1の超音波センサ10a(10b)に信号を入力して超音波信号を送出させる送信部5と、切替部4を介して他の超音波センサ10b(10a)によって受信した超音波信号に応じた信号を受信する受信部6と、各種情報を出力する出力部7と、測定装置全体の動作を制御する制御部8とを備えている。
【0017】
第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bは、第1の超音波センサ10aが第2の超音波センサ10bよりも上流側に位置し、かつ、管路1の中心軸を挟んだ管路1の管壁に配設されている。第1の超音波センサ10aと第2の超音波センサ10bとは、互いの送受信面が対向するように、管路1の軸線に対して斜めに、すなわち、軸線に対して90°未満の角度をなして対向配置されている。
【0018】
切替部4は、制御部8の指示に基づいて、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bと、送信部5および受信部6との接続を切り替えるスイッチング回路である。
【0019】
送信部5は、制御部8からの制御信号に基づいて、切替部4を介して第1の超音波センサ10aまたは第2の超音波センサ10bに電圧を印加して、これらの超音波センサ10a、10bのいずれか一方から、例えばパルス状の所定の超音波信号を送出させる駆動回路である。
【0020】
受信部6は、切替部4を介して第1の超音波センサ10aまたは第2の超音波センサ10bにより受信された超音波信号に応じた電圧信号を受信し、制御部8に出力する受信回路である。
【0021】
出力部7は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなど、制御部8の指示に基づいて、各種情報を表示するインターフェース装置から構成される。
【0022】
制御部8は、切替部4、送信部5、受信部6および出力部7との間で各種信号をやりとりすることにより、測定装置全体の動作を制御する電子回路から構成される。このような制御部8は、測定部81、異常検出部82、超音波センサ診断部83、同期加算部84、管路診断部85および記憶部86を備えている。
【0023】
測定部81は、受信部6から入力される信号に基づいて、管路1内の流体の状態、例えば流速や流量などを演算する機能部である。具体的には、基準信号を送信部5に送出し、切替部4によりその基準信号を第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bに順次入力させて超音波信号を発信させる。これにより、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bが順次受信した超音波信号を切替部4および受信部6を介して受信し、その超音波信号の到達時間等に基づいて、管路1内の流体の状態を測定する。この測定結果は、出力部7に出力されたり、記憶部86に記憶されたりする。
【0024】
異常検出部82は、例えば送信部5に対しては1の超音波センサ10a(または10b)から超音波信号を出力させる信号を出力しているにも関わらず、測定部81から測定結果が得られないなど、測定部81による測定結果に異常が発生しているか否かを検出する機能部である。
【0025】
超音波センサ診断部83は、異常検出部82により測定結果に異常が発生していることが検出されると、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの何れかに異常が発生しているか否かを診断する機能部である。この超音波センサ診断部83による第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの診断動作については後述する。
【0026】
同期加算部84は、超音波センサ診断部83により、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bに異常が発生していないと診断された場合に、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bに所定の超音波信号の送受信を複数回数行わせるとともに、これらの超音波信号を受信した信号波形を同期加算する、同期制御および演算機能部である。
【0027】
管路診断部85は、同期加算部84の演算結果に基づいて、管路1内部の異常を診断する機能部である。この管路診断部85による診断動作については後述する。
【0028】
記憶部86は、測定部81から出力される基準信号、測定部81による測定結果、制御部8の動作プログラムなど、測定装置の動作に必要な各種情報を記憶する機能部である。
【0029】
第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの構成例を図2に示す。
超音波センサ10は、ケース11と、円盤状の圧電素子12とを備え、この圧電素子12はケース11の内部に接着剤13等により固定されている。
【0030】
ケース11は、ステンレス等の導電性を有する材料から構成され、一端が開口する円筒状の内部空間を有している。このようなケース11の開口部11aと対向する底部11bの内壁面には、圧電素子12が接着剤13によって固定される。
【0031】
圧電素子12は、2枚の電極121a,121bで挟まれた円盤状の圧電体板121を備えている。この圧電体板121のケース11の底部と対向する下面には、ほぼ全面に亘って負極121bが形成されている。一方、圧電体板121の上面には、図3に示すように、一部を除いた部分に正極121aが形成され、その一部には、下面の負極121bと電気的に接続された折り返し電極121b’が形成されている。すなわち、下面のほぼ全面に亘って形成された負極121bは、圧電体板121の側面を経てその上面まで延在して形成されている。この上面において、折り返し電極121b’は、正極121aと所定間隔離間しており、正極121aとは絶縁されている。上面の正極121aには、第1のリード14および第2のリード15が互いに離間した位置に接続されている。一方、上面の負極121bには、第3のリード16が接続されている。本実施の形態においては、折り返し電極121b’を備えることにより、圧電素子12の上面のみから正極121aおよび負極121bにリード線を接続することが可能となる。なお、図1等においては、説明のために正極121a,負極121bおよび折り返し電極121b’の厚みを大きく記載しているが、実際それらの厚さはごく小さなものとなっている。
【0032】
接着剤13は、エポキシ樹脂など、導電性を有する公知の接着剤から構成され、ケース11の底部11bに圧電素子12を固定するとともに、ケース11と圧電素子12の負極121bとを電気的に接続する。なお、ケース11と圧電素子12とを固定する方法はこれに限定されず、ケース11と圧電素子12とが電気的に接続された状態でケース11に圧電素子12が固定されるのであれば、各種方法を適宜自由に適用することができる。例えば、導電性を有さない接着剤により、圧電素子12をケース11に固定するようにしてもよい。この場合には、圧電素子12の負極21bとケース11の底部11bとが点接触する程度に接着剤13の層を薄くすればよい。また、ロウ材により圧電素子12をケース11に固定するようにしてもよい。以下においては、導電性を有する接着剤13を用いた場合を例に説明を行う。
【0033】
<測定装置の異常診断動作>
次に、図4を参照して、本実施の形態に係る測定装置における測定結果の異常診断動作について説明する。
【0034】
制御部8の測定部81が管路1内部の流体の状態を測定している状態において、異常検出部82は、その測定結果に異常が発生しているか否かを監視している(ステップS1)。このような状態において、例えば、送信部5に対しては1の超音波センサ10a(または10b)から超音波信号を出力させる信号を出力しているにも関わらず、測定部81から得られる測定結果が所定の値に至らず、測定結果が得られないと見なされるなど、測定結果に異常が発生したことが検出されると(ステップS1:YES)、異常検出部82は、その異常検出時に受信部6が受信した超音波信号の最大振幅を測定する(ステップS2)。この測定値は、最大振幅αとして、記憶部86に記憶される。
【0035】
(超音波センサの診断)
最大振幅αが記憶部86に記憶されると、超音波センサ診断部83は、まず、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bに異常が発生しているか否かを診断する(ステップS3)。この診断動作の詳細について、図5〜図9を参照して説明する。
【0036】
第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bは、図6に示すように、圧電素子12の正極121aに接続された第1のリード14または第2のリード15の何れか1つ(以下、簡単のため、第1のリード14を例に説明する。)を正極、ケース11を負極として切替部4に接続されている。また、第2のリード15および第3のリード16についても、切替部4に接続されている。このような状態において、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bにより超音波を発信させる場合、第1のリード14とケース11との間に電圧を印加する。ケース11は導電性を有する材料から構成されており、ケース11の底部の内壁面と圧電素子12の下面、すなわち負極121bとを接着する接着剤13も、導電性を有する材料から構成されているので、圧電体板121の正極121aと負極121bとの間に電圧が印加されると、圧電体板121が振動し、ケース11の底部から超音波が発信される。一方、超音波センサにより超音波を受信する場合には、ケース11の底部に超音波が到達すると、この超音波により圧力を受ける圧電体板121により超音波の振動が電圧の変化に変換される。この電圧は、正極121aに接続された第1のリード14、および、負極121bに接着剤13を介して接続されたケース11を介して、切替部4および受信部6を介して制御部8の測定部81により検出されることとなる。
【0037】
このように第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bを動作させている状態において、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bに異常が発生しているか否か診断する旨の指示を受信すると(ステップS11)、超音波センサ診断部83は、図7に示すように、ケース11と第3のリード16との間の電気的導通を確認する(ステップS12)。上述したように、ケース11は、接着剤13を介して圧電体板121の下面に形成された負極121bに接続されている。また、第3のリード16は、折り返し電極の構造により、圧電体板121の上面に形成された折り返し電極121b’に接続されている。したがって、ケース11と第3のリード16との間の電気的導通を確認することにより、それらの間、すなわち、ケース11、接着剤13、負極121bおよび第3のリード16の間に異常が発生したか否かを確認することができる。
【0038】
ケース11と第3のリード16との間の電気的導通が確認できなかった場合には(ステップS12:NO)、それらの間に異常が発生していると判断する(ステップS13)。この場合の異常としては、ケース11と圧電体板121との接着不良、第3のリード16と負極121bとの接続不良、第3のリード16の断線などが挙げられる。この場合は、超音波センサ自体の交換を検討することとなる。
【0039】
一方、ケース11と第3のリード16との間の電気的導通が確認できた場合には(ステップS12:YES)、それらの間には異常が無いと判断する(ステップS4)。次いで、図8に示すように、第1のリード14と第2のリード15との間の電気的導通を確認する(ステップS15)。上述したように、第1のリード14および第2のリード15は、圧電体板121上面の正極121aに接続されている。したがって、第1のリード14と第2のリード15との間の電気的導通を確認することにより、それらの間、すなわち、第1のリード14、正極121a、第2のリード15の間に異常が発生したか否かを確認することができる。
【0040】
第1のリード14と第2のリード15との間の電気的導通が確認できた場合には(ステップS15:YES)、それらの間には異常が無いと判断する(ステップS16)。これにより、ケース11と第3のリード16との間、および、第1のリード14と第2のリード15との間に異常が無いことが確認されたので、超音波センサではなく管路1に異常が発生したと考えることができる。
【0041】
一方、第1のリード14と第2のリード15との間の電気的導通が確認できなかった場合(ステップS15:NO)、それらの間に異常が発生していると判断することができる。そこで、第1のリード14と第2のリード15の何れに異常が発生しているかを判断するために、図9に示すように、第2のリード15を正極、ケース11を負極として、これらの間に電源回路に接続して電圧を印加し、超音波センサが正常に動作するか否かを確認する(ステップS17)。上述したように、ケース11は、導電性の接着剤13を介して圧電体板121の下面に形成された負極121bに接続されている。また、第2のリード15は、圧電体板121の上面に形成された正極121aに接続されている。したがって、第2のリード15やその接点に異常が無い場合には、ケース11と第2のリード15との間に電圧を印加すると、圧電体板121の正極121aと負極121bとの間に電圧が印加されるので、圧電体板121が振動してケース11の底部から超音波が発信されることとなる。よって、正極として第1のリード14と第2のリード15とをそれぞれ選択した場合に第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bから超音波が出力されるか否かにより、第1のリード14と第2のリード15の何れに異常が発生しているかを判断することができる。
【0042】
第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bから超音波が出力された場合には(ステップS17:YES)、第2のリード15やその接点には異常が発生していない、すなわち、第1のリードやその接点に異常が発生していると判断する(ステップS18)。この異常としては、第1のリード14の断線、第1のリード14と正極121aの接続不良などが挙げられる。このような場合、第1のリード14の替わりに、第2のリード15を正極として用いるようにすることにより、超音波センサを正常に動作させることができる。このように、本実施の形態に係る超音波センサは、冗長性を有するものと言うことができる。
【0043】
超音波センサから超音波が出力されない場合には(ステップS17:NO)、第2のリード15やその接点または圧電体板121に異常が発生している、すなわち、第1のリードやその接点に異常が発生していないと判断する(ステップS19)。この異常としては、第2のリード15と正極121aの接続不良、第2のリード15の断線などが挙げられる。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、圧電素子12が、第1のリード14,第2のリード15および第3のリード16を備えることにより、これらのリード間の電気的導通を確認することで超音波センサに生じた異常の原因を突き止めることができる。また、その原因に応じて、電子回路に接続するリードを変更するだけで、超音波センサを正常に動作させることが可能となるので、超音波センサに異常が発生しても超音波センサを交換せずにその異常を解決することが可能となる。
【0045】
上述したステップS13,S18,S19のように、超音波センサ診断部83により、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの何れかに異常が発生したと診断されると(ステップS4:YES)、異常検出部82は、測定結果に異常が発生した原因が第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの何れかの故障によるものであると診断する(ステップS9)。この診断結果は、出力部7に出力するようにしてもよい。これにより、オペレータは、出力部7に出力された診断結果に基づいて、故障が発生した第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bを交換するなどの対応を採ることが可能となる。また、測定装置の測定結果に生じた異常を解決することができる。
【0046】
(管路内の診断)
一方、上述したステップS16のように、超音波センサ診断部83により、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの何れかに異常が発生していないと診断されると(ステップS4:NO)、管路1内において超音波測定を阻害する要因が発生している可能性が高いと考えられるので、次のような管路内の診断処理を実行する。
まず、同期加算部84は、送信部5に対して第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bのいずれか一方に所定の超音波信号の送信を複数回数行わせるように指示するとともに、送信された超音波信号を他の超音波センサ(第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bのうちの他方)によって受信した信号を受信部6を介して受信して、それらを同期加算する(ステップS5)。この同期加算とは、受信用の他の超音波センサ(第1の超音波センサ10aまたは第2の超音波センサ10b)により、例えば100回など、複数回受信された超音波信号の波形を同期をとって足し合わせる演算方法である。具体的には、送信用の超音波センサから所定の超音波信号を送信するタイミングと同期して受信された信号波形を互いに加算する。
なお、この同期加算は、第1の超音波センサ10aと第2の超音波センサ10bとの間で送信用超音波センサおよび受信用超音波センサの役割を交換して、それぞれの場合に対して個別に行ってもよい。
【0047】
図10に同期加算を行う前の超音波信号の波形の例を、図11に同期加算を行った後の超音波信号の波形の例を示す。ここで図10の符号aおよび図11の符号cで示す波形は、下流側に配置された第2の超音波センサ10bによって受信された超音波信号の受信波形の一例を示すものであり、図10の符号bおよび図11の符号dで示す波形は、上流側に配置された第1の超音波センサ10aによって受信された超音波信号の受信波形の一例を示すものである。
【0048】
超音波センサ10a、10bに故障が発生していない場合に超音波診断装置による測定結果が正常に得られなくなる原因としては、管路1内での気泡の混入や管路1内への付着物の堆積が考えられるが、そのときの同期加算前の受信信号波形は、図10に示すように、信号波形がノイズに埋もれている。
ここで、少量の気泡により超音波信号の伝播が阻害されている場合は、第1および第2の超音波センサ10a、10b間では、わずかながらも超音波信号の送受信は可能であるので、超音波信号の送受信を複数回繰り返し、これらを加算するいわゆる同期加算を行うと、図11の符号c,dで示すように、SN比が向上し、その信号レベルが大きく現れることとなる。
一方、大量の気泡や堆積物などにより超音波信号の伝播が阻害されている場合、2つの超音波センサ10a、10b間での超音波信号の送受信が行えなくなる。この場合、受信信号波形には、そもそも送信された超音波信号の信号成分が含まれていない。このため、同期加算を行ったとしても、その信号レベルが大きく現れない。
そこで、同期加算を行ったSN比が改善されたか否かを評価することによって、測定結果に異常が発生した原因が、少量の気泡によるものなのか、または、大量の気泡もしくは堆積物によるものなのかを判別することができる。
同期加算の結果に基づく具体的な診断方法としては、例えば、同期加算処理後の信号波形の信号レベルと異常検出時に記憶部86に記憶した最大振幅αとを比較して、同期加算処理後の信号波形の信号レベルが最大振幅αを所定の値以上上回っていれば、異常が発生した原因が、少量の気泡によるものと診断し、上回っていなければ、大量の気泡もしくは堆積物によるものと診断することができる。
【0049】
具体的には、同期加算が行われると、管路診断部85は、その同期加算が行われた超音波信号の波形における最大振幅βを測定する(ステップS6)。この最大振幅βは、記憶部86に記憶されるようにしてもよい。
【0050】
最大振幅βが測定されると、管路診断部85は、その最大振幅βが上述したステップS2で測定した最大振幅αよりも大きいか否か比較する(ステップS7)。
【0051】
最大振幅βが最大振幅αよりも大きい場合(ステップS7:YES)、管路診断部85は、測定結果に異常が発生した原因が、少量の気泡によるものであると診断する(ステップS8)。一方、最大振幅βが最大振幅αよりも大きくない場合(ステップS7:NO)、管路診断部85は、測定結果に異常が発生した原因が、大量の気泡や堆積物によるものであると診断する(ステップS9)。これらの診断結果は、出力部7に出力するようにしてもよい。これにより、オペレータは、出力部7に出力された診断結果に基づいて、対応を採ることが可能となる。具体的には、原因が少量の気泡の場合には、特に対応を行わなくて良いことを認識することができる。一方、原因が大量の泡や堆積物の場合には、管路1を清掃したり、流体の流速や流量等を変化させたりすることにより、管路1内の異常を解決するための対応を行うことができる。
【0052】
なお、同期加算の結果に基づく具体的な診断方法として、最大振幅に基づく方法について説明したが、同期加算によるSN比の改善が判別できれば、他のいかなる手法を用いることができる。
例えば、送信した超音波信号波形と同期加算後の信号波形とを比較して、その差を最小二乗法等の手法により評価してもよいし、また、同期加算後の信号波形を、送信した超音波信号波形や同期加算前の信号波形とともにモニタ等の出力部7に表示して、これらをユーザが比較することによって同期加算によるSN比の改善を評価し、異常の発生原因を特定してもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態によれば、管路判断部85が、同期加算部84による同期加算の演算結果に基づいて測定結果の異常を診断するので、例えば、相互相関と減衰率といった複数の量を求める必要がなく、さらには、フーリエ変換よりも演算負荷の軽減された手法により測定装置の測定結果の異常の原因の診断を実現することができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、2つの超音波センサ間で超音波信号を相互に送受信する場合を例に説明したが、超音波センサの構成はそれに限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、図12に示すように、送信用の第1の超音波センサ10cおよび第2の超音波センサ10dと、受信用の第3の超音波センサ10eとを備えるようにしてもよい。ここで、第1〜第3の超音波センサ10c〜10eは、それぞれ上述した超音波センサ10から構成される。また、第1の超音波センサ10c、第3の超音波センサ10e、第2の超音波センサ10dの順番で上流側から配置され、かつ、第1の超音波センサ10cおよび第2の超音波センサ10dと、第3の超音波センサ10eとが管路1の中心軸に対して反対側の管路1の管壁に配設されている。このとき、第1の超音波センサ10cおよび第2の超音波センサ10dは、送信面が第2の超音波センサの受信面を向くように、管路1の軸線に対して斜めに配置されている。さらに、第1の超音波センサ10cと第2の超音波センサ10dは、切替部4を介して送信部5に接続され、第3の超音波センサ10eは、受信部6に接続されている。その他の構成については、図1を参照して説明した本実施の形態における測定装置と同等である。このようにしても、本実施の形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0055】
また、上述した実施の形態においては、超音波測定装置の測定結果に異常が発生したことが検出されると、管路内の診断に先立って超音波センサの診断(第1の超音波センサ10aまたは第2の超音波センサ10bが故障しているか否かの診断)を実施するものとして説明したが、本発明においては、超音波センサの診断を省略したり、超音波センサの診断に先立って管路内の診断を実施してもよい。
また、超音波センサの診断について、本実施の形態では、超音波センサ診断部83により第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bが故障しているか否かを診断する場合を例に説明したが、その診断はユーザにより行うようにしてもよい。この場合、第1〜第3のリード14〜16の導通状態をテスタ等で行うことにより、実現することができる。このような場合、超音波センサ診断部83は、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bが故障しているか否かの診断を行わせる指示を出力部7に出力させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、超音波センサにより流体の状態を測定する各種測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…管路、4…切替部、5…送信部、6…受信部、7…出力部、8…制御部、10…超音波センサ、10a…第1の超音波センサ、10b…第2の超音波センサ、10c…第1の超音波センサ、第2の超音波センサ…10d、10e…第3の超音波センサ、11…ケース、11a…開口、11b…底部、12…圧電素子、13…接着剤、14…第1のリード、15…第2のリード、16…第3のリード、121…圧電体板、121a…正極、121b…負極、121b’…折り返し電極、
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して管路内の流体の状態を測定する超音波測定装置に関し、特に超音波測定装置の測定結果に生じた異常を診断する診断方法および超音波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波測定装置は、管路内を流れる流体に超音波センサによって超音波を伝播させ、その伝播速度の変化に基づいて流体の流速や流量などを測定する測定装置である。このような超音波測定装置において、例えば測定結果が得られないなど、その測定結果に異常が生じる場合がある。測定結果に異常が生じる原因としては、超音波センサ自身の故障、流路内での気泡の大量発生、流路内への異物の混入などが考えられ、これらの原因を識別することは、適切な対策を採る上で重要である。
【0003】
従来より、超音波測定装置の測定結果に異常が生じた原因を識別する方法について、様々な提案がなされている。
例えば、特許文献1においては、流路の上流から下流に向けて伝搬する超音波を受診した上流側信号と下流から上流に向けて伝搬する超音波を受診した下流側信号との相互相関と、受信超音波の減衰度とをそれぞれ演算し、この演算によって得られた相互相関の最大値および減衰度とに基づいて、配管の状態を診断する方法が提案されている。この方法では、その相関の最大値および減衰度の大小関係に基づいて、超音波診断装置が正常に動作しなくなった原因が、配管への付着物の堆積、および、配管内への気泡の混入のうちのいずれであるかを診断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4273519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、超音波信号の相互相関と減衰量という2つの値を把握しなければならず、さらには、その相互相関を求めるのにフーリエ変換等の複雑な演算を行っていた。その結果、異常の原因を診断するための演算負荷が高いものとなっていた。
【0006】
そこで、本願発明は、超音波測定装置の測定結果に生じた異常を診断する際の演算負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る診断方法は、流体が流れる配管の上流側に配置された超音波センサと下流側に配置された超音波センサとの間で超音波の送受信を行って流体の状態を測定した測定結果に生じた異常を診断する診断方法であって、1の超音波センサから所定の超音波信号を複数回送信させる送信ステップと、他の超音波センサで受信した所定の超音波信号の波形を同期加算する同期加算ステップと、この同期加算ステップによる演算結果に基づいて測定結果に生じた異常を診断する診断ステップとを有することを特徴とする。
【0008】
上記診断方法において、上記診断ステップは、他の超音波センサで受信した所定の超音波信号のSN比が同期加算することによって改善されたか否かに基づいて配管内に生じている異常を診断するようにしてもよい。
【0009】
また、上記診断方法において、送信ステップに先立って、超音波センサの異常の診断するステップをさらに備えるようにしてもよい。
【0010】
また、上記診断方法において、超音波センサは、配管の上流側に設けられた第1の超音波センサと、配管の下流側に設けられた第2の超音波センサとから構成され、第1の超音波センサおよび第2の超音波センサは、1の超音波センサまたは他の超音波センサとして機能するようにしてもよい。
【0011】
また、上記診断方法において、超音波センサは、配管の上流側に設けられ、超音波を送信する第1の超音波センサと、配管の下流側に設けられ、超音波を送信する第2の超音波センサと、配管の流れ方向における第1の超音波センサと第2の超音波センサとの間に設けられ、超音波を受信する第3のセンサとから構成され、第1の超音波センサおよび第2の超音波センサは、1の超音波センサとして機能し、第3の超音波センサは、他の超音波センサとして機能するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明に係る測定装置は、流体が流れる配管の上流側に配置された超音波センサと下流側に配置された超音波センサとの間で超音波の送受信を行って、流体の状態を測定する超音波測定装置であって、1の超音波センサから所定の超音波信号を複数回送信させる送信手段と、他の超音波センサで受信した所定の超音波信号の波形を同期加算する同期加算手段と、この同期加算手段による演算結果に基づいて測定結果に生じた異常を診断する診断手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、同期加算の演算結果に基づいて測定結果の異常を診断するので、例えば、相互相関と減衰率といった複数の量を求める必要がなく、さらには、フーリエ変換よりも演算負荷の軽減された手法により測定装置の測定結果の異常の原因の診断を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る測定装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの構成を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの圧電素子の構成を模式的に示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る測定装置における測定結果の異常診断動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの故障の診断方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの故障の診断方法を説明するための模式図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの故障の診断方法を説明するための模式図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの故障の診断方法を説明するための模式図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る測定装置における超音波センサの故障の診断方法を説明するための模式図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る測定装置において同期加算を行う前の超音波信号の波形を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る測定装置において同期加算を行った超音波信号の波形を示す図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る測定装置の変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
<超音波測定装置の構成>
図1に示すように、本実施の形態に係る超音波測定装置は、測定対象となる流体が内部を流通する管路1に配置された第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bと、これら超音波センサ10a、10bの間で入出力される信号を切り替える切替部4と、この切替部4を介して1の超音波センサ10a(10b)に信号を入力して超音波信号を送出させる送信部5と、切替部4を介して他の超音波センサ10b(10a)によって受信した超音波信号に応じた信号を受信する受信部6と、各種情報を出力する出力部7と、測定装置全体の動作を制御する制御部8とを備えている。
【0017】
第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bは、第1の超音波センサ10aが第2の超音波センサ10bよりも上流側に位置し、かつ、管路1の中心軸を挟んだ管路1の管壁に配設されている。第1の超音波センサ10aと第2の超音波センサ10bとは、互いの送受信面が対向するように、管路1の軸線に対して斜めに、すなわち、軸線に対して90°未満の角度をなして対向配置されている。
【0018】
切替部4は、制御部8の指示に基づいて、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bと、送信部5および受信部6との接続を切り替えるスイッチング回路である。
【0019】
送信部5は、制御部8からの制御信号に基づいて、切替部4を介して第1の超音波センサ10aまたは第2の超音波センサ10bに電圧を印加して、これらの超音波センサ10a、10bのいずれか一方から、例えばパルス状の所定の超音波信号を送出させる駆動回路である。
【0020】
受信部6は、切替部4を介して第1の超音波センサ10aまたは第2の超音波センサ10bにより受信された超音波信号に応じた電圧信号を受信し、制御部8に出力する受信回路である。
【0021】
出力部7は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなど、制御部8の指示に基づいて、各種情報を表示するインターフェース装置から構成される。
【0022】
制御部8は、切替部4、送信部5、受信部6および出力部7との間で各種信号をやりとりすることにより、測定装置全体の動作を制御する電子回路から構成される。このような制御部8は、測定部81、異常検出部82、超音波センサ診断部83、同期加算部84、管路診断部85および記憶部86を備えている。
【0023】
測定部81は、受信部6から入力される信号に基づいて、管路1内の流体の状態、例えば流速や流量などを演算する機能部である。具体的には、基準信号を送信部5に送出し、切替部4によりその基準信号を第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bに順次入力させて超音波信号を発信させる。これにより、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bが順次受信した超音波信号を切替部4および受信部6を介して受信し、その超音波信号の到達時間等に基づいて、管路1内の流体の状態を測定する。この測定結果は、出力部7に出力されたり、記憶部86に記憶されたりする。
【0024】
異常検出部82は、例えば送信部5に対しては1の超音波センサ10a(または10b)から超音波信号を出力させる信号を出力しているにも関わらず、測定部81から測定結果が得られないなど、測定部81による測定結果に異常が発生しているか否かを検出する機能部である。
【0025】
超音波センサ診断部83は、異常検出部82により測定結果に異常が発生していることが検出されると、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの何れかに異常が発生しているか否かを診断する機能部である。この超音波センサ診断部83による第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの診断動作については後述する。
【0026】
同期加算部84は、超音波センサ診断部83により、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bに異常が発生していないと診断された場合に、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bに所定の超音波信号の送受信を複数回数行わせるとともに、これらの超音波信号を受信した信号波形を同期加算する、同期制御および演算機能部である。
【0027】
管路診断部85は、同期加算部84の演算結果に基づいて、管路1内部の異常を診断する機能部である。この管路診断部85による診断動作については後述する。
【0028】
記憶部86は、測定部81から出力される基準信号、測定部81による測定結果、制御部8の動作プログラムなど、測定装置の動作に必要な各種情報を記憶する機能部である。
【0029】
第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの構成例を図2に示す。
超音波センサ10は、ケース11と、円盤状の圧電素子12とを備え、この圧電素子12はケース11の内部に接着剤13等により固定されている。
【0030】
ケース11は、ステンレス等の導電性を有する材料から構成され、一端が開口する円筒状の内部空間を有している。このようなケース11の開口部11aと対向する底部11bの内壁面には、圧電素子12が接着剤13によって固定される。
【0031】
圧電素子12は、2枚の電極121a,121bで挟まれた円盤状の圧電体板121を備えている。この圧電体板121のケース11の底部と対向する下面には、ほぼ全面に亘って負極121bが形成されている。一方、圧電体板121の上面には、図3に示すように、一部を除いた部分に正極121aが形成され、その一部には、下面の負極121bと電気的に接続された折り返し電極121b’が形成されている。すなわち、下面のほぼ全面に亘って形成された負極121bは、圧電体板121の側面を経てその上面まで延在して形成されている。この上面において、折り返し電極121b’は、正極121aと所定間隔離間しており、正極121aとは絶縁されている。上面の正極121aには、第1のリード14および第2のリード15が互いに離間した位置に接続されている。一方、上面の負極121bには、第3のリード16が接続されている。本実施の形態においては、折り返し電極121b’を備えることにより、圧電素子12の上面のみから正極121aおよび負極121bにリード線を接続することが可能となる。なお、図1等においては、説明のために正極121a,負極121bおよび折り返し電極121b’の厚みを大きく記載しているが、実際それらの厚さはごく小さなものとなっている。
【0032】
接着剤13は、エポキシ樹脂など、導電性を有する公知の接着剤から構成され、ケース11の底部11bに圧電素子12を固定するとともに、ケース11と圧電素子12の負極121bとを電気的に接続する。なお、ケース11と圧電素子12とを固定する方法はこれに限定されず、ケース11と圧電素子12とが電気的に接続された状態でケース11に圧電素子12が固定されるのであれば、各種方法を適宜自由に適用することができる。例えば、導電性を有さない接着剤により、圧電素子12をケース11に固定するようにしてもよい。この場合には、圧電素子12の負極21bとケース11の底部11bとが点接触する程度に接着剤13の層を薄くすればよい。また、ロウ材により圧電素子12をケース11に固定するようにしてもよい。以下においては、導電性を有する接着剤13を用いた場合を例に説明を行う。
【0033】
<測定装置の異常診断動作>
次に、図4を参照して、本実施の形態に係る測定装置における測定結果の異常診断動作について説明する。
【0034】
制御部8の測定部81が管路1内部の流体の状態を測定している状態において、異常検出部82は、その測定結果に異常が発生しているか否かを監視している(ステップS1)。このような状態において、例えば、送信部5に対しては1の超音波センサ10a(または10b)から超音波信号を出力させる信号を出力しているにも関わらず、測定部81から得られる測定結果が所定の値に至らず、測定結果が得られないと見なされるなど、測定結果に異常が発生したことが検出されると(ステップS1:YES)、異常検出部82は、その異常検出時に受信部6が受信した超音波信号の最大振幅を測定する(ステップS2)。この測定値は、最大振幅αとして、記憶部86に記憶される。
【0035】
(超音波センサの診断)
最大振幅αが記憶部86に記憶されると、超音波センサ診断部83は、まず、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bに異常が発生しているか否かを診断する(ステップS3)。この診断動作の詳細について、図5〜図9を参照して説明する。
【0036】
第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bは、図6に示すように、圧電素子12の正極121aに接続された第1のリード14または第2のリード15の何れか1つ(以下、簡単のため、第1のリード14を例に説明する。)を正極、ケース11を負極として切替部4に接続されている。また、第2のリード15および第3のリード16についても、切替部4に接続されている。このような状態において、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bにより超音波を発信させる場合、第1のリード14とケース11との間に電圧を印加する。ケース11は導電性を有する材料から構成されており、ケース11の底部の内壁面と圧電素子12の下面、すなわち負極121bとを接着する接着剤13も、導電性を有する材料から構成されているので、圧電体板121の正極121aと負極121bとの間に電圧が印加されると、圧電体板121が振動し、ケース11の底部から超音波が発信される。一方、超音波センサにより超音波を受信する場合には、ケース11の底部に超音波が到達すると、この超音波により圧力を受ける圧電体板121により超音波の振動が電圧の変化に変換される。この電圧は、正極121aに接続された第1のリード14、および、負極121bに接着剤13を介して接続されたケース11を介して、切替部4および受信部6を介して制御部8の測定部81により検出されることとなる。
【0037】
このように第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bを動作させている状態において、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bに異常が発生しているか否か診断する旨の指示を受信すると(ステップS11)、超音波センサ診断部83は、図7に示すように、ケース11と第3のリード16との間の電気的導通を確認する(ステップS12)。上述したように、ケース11は、接着剤13を介して圧電体板121の下面に形成された負極121bに接続されている。また、第3のリード16は、折り返し電極の構造により、圧電体板121の上面に形成された折り返し電極121b’に接続されている。したがって、ケース11と第3のリード16との間の電気的導通を確認することにより、それらの間、すなわち、ケース11、接着剤13、負極121bおよび第3のリード16の間に異常が発生したか否かを確認することができる。
【0038】
ケース11と第3のリード16との間の電気的導通が確認できなかった場合には(ステップS12:NO)、それらの間に異常が発生していると判断する(ステップS13)。この場合の異常としては、ケース11と圧電体板121との接着不良、第3のリード16と負極121bとの接続不良、第3のリード16の断線などが挙げられる。この場合は、超音波センサ自体の交換を検討することとなる。
【0039】
一方、ケース11と第3のリード16との間の電気的導通が確認できた場合には(ステップS12:YES)、それらの間には異常が無いと判断する(ステップS4)。次いで、図8に示すように、第1のリード14と第2のリード15との間の電気的導通を確認する(ステップS15)。上述したように、第1のリード14および第2のリード15は、圧電体板121上面の正極121aに接続されている。したがって、第1のリード14と第2のリード15との間の電気的導通を確認することにより、それらの間、すなわち、第1のリード14、正極121a、第2のリード15の間に異常が発生したか否かを確認することができる。
【0040】
第1のリード14と第2のリード15との間の電気的導通が確認できた場合には(ステップS15:YES)、それらの間には異常が無いと判断する(ステップS16)。これにより、ケース11と第3のリード16との間、および、第1のリード14と第2のリード15との間に異常が無いことが確認されたので、超音波センサではなく管路1に異常が発生したと考えることができる。
【0041】
一方、第1のリード14と第2のリード15との間の電気的導通が確認できなかった場合(ステップS15:NO)、それらの間に異常が発生していると判断することができる。そこで、第1のリード14と第2のリード15の何れに異常が発生しているかを判断するために、図9に示すように、第2のリード15を正極、ケース11を負極として、これらの間に電源回路に接続して電圧を印加し、超音波センサが正常に動作するか否かを確認する(ステップS17)。上述したように、ケース11は、導電性の接着剤13を介して圧電体板121の下面に形成された負極121bに接続されている。また、第2のリード15は、圧電体板121の上面に形成された正極121aに接続されている。したがって、第2のリード15やその接点に異常が無い場合には、ケース11と第2のリード15との間に電圧を印加すると、圧電体板121の正極121aと負極121bとの間に電圧が印加されるので、圧電体板121が振動してケース11の底部から超音波が発信されることとなる。よって、正極として第1のリード14と第2のリード15とをそれぞれ選択した場合に第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bから超音波が出力されるか否かにより、第1のリード14と第2のリード15の何れに異常が発生しているかを判断することができる。
【0042】
第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bから超音波が出力された場合には(ステップS17:YES)、第2のリード15やその接点には異常が発生していない、すなわち、第1のリードやその接点に異常が発生していると判断する(ステップS18)。この異常としては、第1のリード14の断線、第1のリード14と正極121aの接続不良などが挙げられる。このような場合、第1のリード14の替わりに、第2のリード15を正極として用いるようにすることにより、超音波センサを正常に動作させることができる。このように、本実施の形態に係る超音波センサは、冗長性を有するものと言うことができる。
【0043】
超音波センサから超音波が出力されない場合には(ステップS17:NO)、第2のリード15やその接点または圧電体板121に異常が発生している、すなわち、第1のリードやその接点に異常が発生していないと判断する(ステップS19)。この異常としては、第2のリード15と正極121aの接続不良、第2のリード15の断線などが挙げられる。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、圧電素子12が、第1のリード14,第2のリード15および第3のリード16を備えることにより、これらのリード間の電気的導通を確認することで超音波センサに生じた異常の原因を突き止めることができる。また、その原因に応じて、電子回路に接続するリードを変更するだけで、超音波センサを正常に動作させることが可能となるので、超音波センサに異常が発生しても超音波センサを交換せずにその異常を解決することが可能となる。
【0045】
上述したステップS13,S18,S19のように、超音波センサ診断部83により、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの何れかに異常が発生したと診断されると(ステップS4:YES)、異常検出部82は、測定結果に異常が発生した原因が第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの何れかの故障によるものであると診断する(ステップS9)。この診断結果は、出力部7に出力するようにしてもよい。これにより、オペレータは、出力部7に出力された診断結果に基づいて、故障が発生した第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bを交換するなどの対応を採ることが可能となる。また、測定装置の測定結果に生じた異常を解決することができる。
【0046】
(管路内の診断)
一方、上述したステップS16のように、超音波センサ診断部83により、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bの何れかに異常が発生していないと診断されると(ステップS4:NO)、管路1内において超音波測定を阻害する要因が発生している可能性が高いと考えられるので、次のような管路内の診断処理を実行する。
まず、同期加算部84は、送信部5に対して第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bのいずれか一方に所定の超音波信号の送信を複数回数行わせるように指示するとともに、送信された超音波信号を他の超音波センサ(第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bのうちの他方)によって受信した信号を受信部6を介して受信して、それらを同期加算する(ステップS5)。この同期加算とは、受信用の他の超音波センサ(第1の超音波センサ10aまたは第2の超音波センサ10b)により、例えば100回など、複数回受信された超音波信号の波形を同期をとって足し合わせる演算方法である。具体的には、送信用の超音波センサから所定の超音波信号を送信するタイミングと同期して受信された信号波形を互いに加算する。
なお、この同期加算は、第1の超音波センサ10aと第2の超音波センサ10bとの間で送信用超音波センサおよび受信用超音波センサの役割を交換して、それぞれの場合に対して個別に行ってもよい。
【0047】
図10に同期加算を行う前の超音波信号の波形の例を、図11に同期加算を行った後の超音波信号の波形の例を示す。ここで図10の符号aおよび図11の符号cで示す波形は、下流側に配置された第2の超音波センサ10bによって受信された超音波信号の受信波形の一例を示すものであり、図10の符号bおよび図11の符号dで示す波形は、上流側に配置された第1の超音波センサ10aによって受信された超音波信号の受信波形の一例を示すものである。
【0048】
超音波センサ10a、10bに故障が発生していない場合に超音波診断装置による測定結果が正常に得られなくなる原因としては、管路1内での気泡の混入や管路1内への付着物の堆積が考えられるが、そのときの同期加算前の受信信号波形は、図10に示すように、信号波形がノイズに埋もれている。
ここで、少量の気泡により超音波信号の伝播が阻害されている場合は、第1および第2の超音波センサ10a、10b間では、わずかながらも超音波信号の送受信は可能であるので、超音波信号の送受信を複数回繰り返し、これらを加算するいわゆる同期加算を行うと、図11の符号c,dで示すように、SN比が向上し、その信号レベルが大きく現れることとなる。
一方、大量の気泡や堆積物などにより超音波信号の伝播が阻害されている場合、2つの超音波センサ10a、10b間での超音波信号の送受信が行えなくなる。この場合、受信信号波形には、そもそも送信された超音波信号の信号成分が含まれていない。このため、同期加算を行ったとしても、その信号レベルが大きく現れない。
そこで、同期加算を行ったSN比が改善されたか否かを評価することによって、測定結果に異常が発生した原因が、少量の気泡によるものなのか、または、大量の気泡もしくは堆積物によるものなのかを判別することができる。
同期加算の結果に基づく具体的な診断方法としては、例えば、同期加算処理後の信号波形の信号レベルと異常検出時に記憶部86に記憶した最大振幅αとを比較して、同期加算処理後の信号波形の信号レベルが最大振幅αを所定の値以上上回っていれば、異常が発生した原因が、少量の気泡によるものと診断し、上回っていなければ、大量の気泡もしくは堆積物によるものと診断することができる。
【0049】
具体的には、同期加算が行われると、管路診断部85は、その同期加算が行われた超音波信号の波形における最大振幅βを測定する(ステップS6)。この最大振幅βは、記憶部86に記憶されるようにしてもよい。
【0050】
最大振幅βが測定されると、管路診断部85は、その最大振幅βが上述したステップS2で測定した最大振幅αよりも大きいか否か比較する(ステップS7)。
【0051】
最大振幅βが最大振幅αよりも大きい場合(ステップS7:YES)、管路診断部85は、測定結果に異常が発生した原因が、少量の気泡によるものであると診断する(ステップS8)。一方、最大振幅βが最大振幅αよりも大きくない場合(ステップS7:NO)、管路診断部85は、測定結果に異常が発生した原因が、大量の気泡や堆積物によるものであると診断する(ステップS9)。これらの診断結果は、出力部7に出力するようにしてもよい。これにより、オペレータは、出力部7に出力された診断結果に基づいて、対応を採ることが可能となる。具体的には、原因が少量の気泡の場合には、特に対応を行わなくて良いことを認識することができる。一方、原因が大量の泡や堆積物の場合には、管路1を清掃したり、流体の流速や流量等を変化させたりすることにより、管路1内の異常を解決するための対応を行うことができる。
【0052】
なお、同期加算の結果に基づく具体的な診断方法として、最大振幅に基づく方法について説明したが、同期加算によるSN比の改善が判別できれば、他のいかなる手法を用いることができる。
例えば、送信した超音波信号波形と同期加算後の信号波形とを比較して、その差を最小二乗法等の手法により評価してもよいし、また、同期加算後の信号波形を、送信した超音波信号波形や同期加算前の信号波形とともにモニタ等の出力部7に表示して、これらをユーザが比較することによって同期加算によるSN比の改善を評価し、異常の発生原因を特定してもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態によれば、管路判断部85が、同期加算部84による同期加算の演算結果に基づいて測定結果の異常を診断するので、例えば、相互相関と減衰率といった複数の量を求める必要がなく、さらには、フーリエ変換よりも演算負荷の軽減された手法により測定装置の測定結果の異常の原因の診断を実現することができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、2つの超音波センサ間で超音波信号を相互に送受信する場合を例に説明したが、超音波センサの構成はそれに限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、図12に示すように、送信用の第1の超音波センサ10cおよび第2の超音波センサ10dと、受信用の第3の超音波センサ10eとを備えるようにしてもよい。ここで、第1〜第3の超音波センサ10c〜10eは、それぞれ上述した超音波センサ10から構成される。また、第1の超音波センサ10c、第3の超音波センサ10e、第2の超音波センサ10dの順番で上流側から配置され、かつ、第1の超音波センサ10cおよび第2の超音波センサ10dと、第3の超音波センサ10eとが管路1の中心軸に対して反対側の管路1の管壁に配設されている。このとき、第1の超音波センサ10cおよび第2の超音波センサ10dは、送信面が第2の超音波センサの受信面を向くように、管路1の軸線に対して斜めに配置されている。さらに、第1の超音波センサ10cと第2の超音波センサ10dは、切替部4を介して送信部5に接続され、第3の超音波センサ10eは、受信部6に接続されている。その他の構成については、図1を参照して説明した本実施の形態における測定装置と同等である。このようにしても、本実施の形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0055】
また、上述した実施の形態においては、超音波測定装置の測定結果に異常が発生したことが検出されると、管路内の診断に先立って超音波センサの診断(第1の超音波センサ10aまたは第2の超音波センサ10bが故障しているか否かの診断)を実施するものとして説明したが、本発明においては、超音波センサの診断を省略したり、超音波センサの診断に先立って管路内の診断を実施してもよい。
また、超音波センサの診断について、本実施の形態では、超音波センサ診断部83により第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bが故障しているか否かを診断する場合を例に説明したが、その診断はユーザにより行うようにしてもよい。この場合、第1〜第3のリード14〜16の導通状態をテスタ等で行うことにより、実現することができる。このような場合、超音波センサ診断部83は、第1の超音波センサ10aおよび第2の超音波センサ10bが故障しているか否かの診断を行わせる指示を出力部7に出力させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、超音波センサにより流体の状態を測定する各種測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…管路、4…切替部、5…送信部、6…受信部、7…出力部、8…制御部、10…超音波センサ、10a…第1の超音波センサ、10b…第2の超音波センサ、10c…第1の超音波センサ、第2の超音波センサ…10d、10e…第3の超音波センサ、11…ケース、11a…開口、11b…底部、12…圧電素子、13…接着剤、14…第1のリード、15…第2のリード、16…第3のリード、121…圧電体板、121a…正極、121b…負極、121b’…折り返し電極、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる配管の上流側に配置された超音波センサと下流側に配置された超音波センサとの間で超音波の送受信を行って前記流体の状態を測定した測定結果に生じた異常を診断する診断方法であって、
1の超音波センサから所定の超音波信号を複数回送信させる送信ステップと、
他の超音波センサで受信した前記所定の超音波信号の波形を同期加算する同期加算ステップと、
この同期加算ステップによる演算結果に基づいて前記測定結果に生じた異常を診断する診断ステップと
有することを特徴とする診断方法。
【請求項2】
前記診断ステップは、
前記他の超音波センサで受信した前記所定の超音波信号のSN比が同期加算することによって改善されたか否かに基づいて前記配管内に生じている異常を診断する
こと特徴とする請求項1記載の診断方法。
【請求項3】
前記送信ステップに先だって、前記超音波センサの異常の診断するステップ
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の診断方法。
【請求項4】
前記超音波センサは、前記配管の上流側に設けられた第1の超音波センサと、前記配管の下流側に設けられた第2の超音波センサとから構成され、
前記第1の超音波センサおよび前記第2の超音波センサは、前記1の超音波センサまたは前記他の超音波センサとして機能する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の診断方法。
【請求項5】
前記超音波センサは、前記配管の上流側に設けられ、超音波を送信する第1の超音波センサと、前記配管の下流側に設けられ、超音波を送信する第2の超音波センサと、前記配管の流れ方向における前記第1の超音波センサと前記第2の超音波センサとの間に設けられ、超音波を受信する第3のセンサとから構成され、
前記第1の超音波センサおよび前記第2の超音波センサは、前記1の超音波センサとして機能し、
前記第3の超音波センサは、前記他の超音波センサとして機能する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の診断方法。
【請求項6】
流体が流れる配管の上流側に配置された超音波センサと下流側に配置された超音波センサとの間で超音波の送受信を行って、前記流体の状態を測定する超音波測定装置であって、
1の超音波センサから所定の超音波信号を複数回送信させる送信手段と、
他の超音波センサで受信した前記所定の超音波信号の波形を同期加算する同期加算手段と、
この同期加算手段による演算結果に基づいて前記測定結果に生じた異常を診断する診断手段と
を備えることを特徴とする超音波測定装置。
【請求項1】
流体が流れる配管の上流側に配置された超音波センサと下流側に配置された超音波センサとの間で超音波の送受信を行って前記流体の状態を測定した測定結果に生じた異常を診断する診断方法であって、
1の超音波センサから所定の超音波信号を複数回送信させる送信ステップと、
他の超音波センサで受信した前記所定の超音波信号の波形を同期加算する同期加算ステップと、
この同期加算ステップによる演算結果に基づいて前記測定結果に生じた異常を診断する診断ステップと
有することを特徴とする診断方法。
【請求項2】
前記診断ステップは、
前記他の超音波センサで受信した前記所定の超音波信号のSN比が同期加算することによって改善されたか否かに基づいて前記配管内に生じている異常を診断する
こと特徴とする請求項1記載の診断方法。
【請求項3】
前記送信ステップに先だって、前記超音波センサの異常の診断するステップ
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の診断方法。
【請求項4】
前記超音波センサは、前記配管の上流側に設けられた第1の超音波センサと、前記配管の下流側に設けられた第2の超音波センサとから構成され、
前記第1の超音波センサおよび前記第2の超音波センサは、前記1の超音波センサまたは前記他の超音波センサとして機能する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の診断方法。
【請求項5】
前記超音波センサは、前記配管の上流側に設けられ、超音波を送信する第1の超音波センサと、前記配管の下流側に設けられ、超音波を送信する第2の超音波センサと、前記配管の流れ方向における前記第1の超音波センサと前記第2の超音波センサとの間に設けられ、超音波を受信する第3のセンサとから構成され、
前記第1の超音波センサおよび前記第2の超音波センサは、前記1の超音波センサとして機能し、
前記第3の超音波センサは、前記他の超音波センサとして機能する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の診断方法。
【請求項6】
流体が流れる配管の上流側に配置された超音波センサと下流側に配置された超音波センサとの間で超音波の送受信を行って、前記流体の状態を測定する超音波測定装置であって、
1の超音波センサから所定の超音波信号を複数回送信させる送信手段と、
他の超音波センサで受信した前記所定の超音波信号の波形を同期加算する同期加算手段と、
この同期加算手段による演算結果に基づいて前記測定結果に生じた異常を診断する診断手段と
を備えることを特徴とする超音波測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−208057(P2012−208057A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75079(P2011−75079)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
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