説明

診断法および治療法ならびにそれに有用な薬剤

本発明は一般に、対象における新生物細胞死の量をスクリーニングする方法に関する。より詳細には、本発明は、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量を検出することによる、新生物細胞死の量をスクリーニングする方法を提供する。本発明の方法は、新生物状態の評価、そのような状態の進行のモニタリング、治療薬または治療計画の有効性の評価、および対象がより進行した疾患状態に進行するかまたは寛解状態に入る可能性の予測を含むがこれらに限定されない一連の用途に有用である。本発明はまた、テロメラーゼタンパク質および/または核酸分子を検出するのに有用な診断薬も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、対象における新生物細胞死の量をスクリーニングする方法に関する。より詳細には、本発明は、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量を検出することによる、新生物細胞死の量をスクリーニングする方法を提供する。本発明の方法は、新生物状態の評価、そのような状態の進行のモニタリング、治療薬または治療計画の有効性の評価、および対象がより進行した疾患状態に進行するかまたは寛解状態に入る可能性の予測を含むがこれらに限定されない一連の用途に有用である。本発明はまた、テロメラーゼタンパク質および/または核酸分子を検出するのに有用な診断薬も提供する。
【0002】
本発明はさらに、細胞増殖の阻害剤のような薬物のインビトロまたはインビボでの治療的標的指向化の手段を提供する。死滅したまたは死滅しかけた新生物細胞が生存新生物細胞と共に局在しているという事実から、死滅したまたは死滅しかけた新生物細胞を標的化する能力は、一連の免疫治療および免疫予防処置において有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本明細書において本発明者らが参照する出版物の書誌的詳細は、本記載の末尾にアルファベット順に収載する。
【0004】
本明細書におけるいかなる先行技術への言及も、その先行技術がオーストラリアにおける共通の一般知識の一部を形成するとの認識でもいかなる形態での示唆でもなく、またそのように解釈されるべきでもない。
【0005】
悪性腫瘍または癌は無制御な様式で成長し、正常組織に浸潤し、多くの場合、転移して元の組織から離れた部位で成長する。一般に、癌は、悪性形質転換と呼ばれる十分に理解されていない過程を起こした1つまたはわずかな正常細胞に由来する。癌は、体内のほとんどすべての組織から生じ得る。上皮細胞に由来する癌は癌腫と称され、最も多く見られる癌の種類である。肉腫は、線維芽細胞、筋細胞、および脂肪細胞などの細胞から生じる間葉組織の悪性腫瘍である。リンパ組織の固形悪性腫瘍はリンパ腫と称され、リンパ球および他の造血細胞の髄および血液由来悪性腫瘍は白血病と称される。
【0006】
癌は、先進工業国における3つの主要な死因の1つである。感染症の治療および心疾患の予防は改良が続けられ、平均寿命も延びているため、これらの国々では癌が最も頻度の高い致死的疾患になる可能性が高い。このため、癌治療の成功は、患者が死亡することなく、悪性細胞がすべて除去または破壊されることを必要とする。これを実現する理想的な方法は、腫瘍の細胞とそれらの正常な細胞対応物とを識別する、腫瘍に対する免疫応答を誘導することにある。しかし、癌治療に対する免疫学的アプローチは、結果が立証できないまま100年以上にわたり試みが続けられている。
【0007】
したがって、癌を治療する現行の方法は、外科的切除(可能であれば)の後に、必要に応じて放射線療法および/または化学療法を行うという、長い間用いられている手順に依然として従っている。この幾分未完成な治療形態の成功率には非常に幅があり、一般に、腫瘍がより進行し転移するにつれて顕著に減少する。さらに、これらの治療は重篤な副作用を伴い、これには、手術による美観の問題および瘢痕(例えば、乳房切除、四肢の切断)、化学療法による重篤な嘔気および嘔吐、ならびに最も顕著には、ほとんどの癌治療の一部を形成する毒性薬の比較的非特異的な標的化機構の結果として誘導される、毛包、腸、および骨髄などの正常組織の損傷が含まれる。
【0008】
さらに、細胞毒性化学療法薬、シグナル伝達阻害剤、放射線療法、モノクローナル抗体、および細胞傷害性リンパ球を含むほとんどの抗癌治療は、癌細胞をアポトーシスによって死滅させる。抗癌治療を施す前に、腫瘍はある割合のアポトーシス細胞および壊死領域さえも含み得るが、抗癌治療に反応した腫瘍では、アポトーシス細胞数の増加および壊死領域の拡大が予測される。しかし、進行癌の治療に細胞毒性化学療法薬を用いる場合、細胞死滅の程度、ひいては最初の治療に対する腫瘍の反応は、評価が困難である場合が多い。慣習的に、患者は化学療法を最低3サイクル受け、その後、腫瘍反応の臨床学的および放射線学的評価が行われる。通常、進行癌患者の一部しか細胞毒性薬に反応せず、そのため患者は、恩恵を受けることなく治療の副作用に悩む可能性がある。したがって、治療反応が予測され、ひいては生存が予測されることの多い、1サイクル目の治療後の腫瘍細胞の死滅を、迅速、簡便、かつ確実に検出できるようにする診断法の、まだ対処されていない医学的必要性が存在する。例えば、手術前に放射線化学療法を受けた食道腺癌患者において、フルオロデオキシグルコースを用いた陽電子放射断層撮影(FDG-PET)を用いたところ、治療に反応した患者と反応しなかった患者が、>90%の感度および特異性で識別され、その後腫瘍の治癒的切除を受ける患者を予測しやすい傾向があった。腫瘍が反応するかどうかを早く知ることにより、多くの患者に、効果がなく場合によっては毒性である治療を行わずにすむ。次いで、反応しなかった患者には、二次治療または治験薬の臨床試験を提供することができる。
【0009】
したがって、標的化様式で癌を診断および治療する新たな方法を開発する、差し迫った現行の必要性が存在する。悪性細胞を効率的に標的化して死滅させるというこの概念は、今日まで達成されていない。
【0010】
本発明に通じる研究において、死滅した癌細胞、特に抗癌剤治療の結果として死滅した癌細胞においてテロメラーゼ発現が上方制御されていることが意外にも判明した。この知見は、癌存在の指標としてのテロメラーゼの使用を、テロメラーゼ活性に関して生存癌細胞をスクリーニングする状況において診断ツールとして使用することに向けた先行技術とはかなり異なる。したがってこのように判明したことにより、死細胞によるテロメラーゼの発現の、正常な量に対する量の増加のスクリーニングに基づく、死滅したまたは死滅しかけている新生物細胞を同定する手段の開発が促進された。これは、新生物細胞の死滅を対象とする治療処置計画の進行をモニタリングする状況において特に重要である。さらに、これらの知見により、高度な標的化かつ特異的様式での抗腫瘍治療の施行を容易にする手段として、テロメラーゼを用いることが可能になった。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本明細書を通して、特に断りのない限り、「含む(comprise)」という語ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変化形は、記載の整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を含むことを意味するが、任意の他の整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を排除することを意味するものではないと理解される。
【0012】
本明細書で用いる「に由来する」という用語は、特定の完全体または完全体群が明記した種を起源とするものの、明記した起源から直接得られているとは限らないことを示唆するものとする。
【0013】
本明細書は、本明細書において参考文献目録の後に提示した、プログラムPatentIn Version 3.1を用いて作成されたヌクレオチド配列情報を含む。各ヌクレオチド配列は、数字標識子<210>、それに続く配列識別子(例えば、<201>1、<201>2など)により配列リストにおいて特定される。各配列の長さ、配列の型(DNAなど)、および起源生物は、それぞれ数字標識子フィールド<211>、<212>、および<213>に提供される情報によって示される。本明細書において参照するヌクレオチド配列は、標識子配列番号、それに続く配列識別子(例えば、配列番号:1、配列番号:2など)により特定される。本明細書において参照する配列識別子は、配列リストにおいて数字標識子フィールド<400>、それに続く配列識別子(例えば、<400>1、<400>2など)に提供される情報と関連している。すなわち、本明細書で記載する配列番号:1は、配列リストで<400>1と示される配列と関連している。
【0014】
本発明の1つの局面は、対象における非生存新生物細胞を検出する方法であって、対象または対象由来の生物試料中の非生存細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している非生存細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより非生存新生物細胞の存在が示される方法を対象とする。
【0015】
本発明の別の局面は、対象における死滅新生物細胞を検出する方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0016】
本発明のさらに別の局面は、細胞死が抗新生物細胞治療計画によって誘導された、対象における死滅新生物細胞を検出する方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0017】
本発明のまた別の局面は、対象における死滅新生物細胞を検出する方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるhTERTタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、hTERTを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0018】
本発明のさらに別の局面は、対象における死滅新生物細胞を検出する方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるhTR RNAの発現量をスクリーニングする段階を含み、hTRを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0019】
本発明のまたさらに別の局面は、対象における新生物状態を評価および/またはモニタリングする方法であって、対象または対象由来の生物試料中の非生存細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している非生存細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより非生存新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0020】
本発明のさらにまた別の局面は、対象における新生物状態を評価および/またはモニタリングする方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0021】
本発明のさらなる局面は、対象における新生物状態を評価および/またはモニタリングする方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるhTERTタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、hTERTを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0022】
本発明の別のさらなる局面は、対象における新生物状態を評価および/またはモニタリングする方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるhTR RNAの発現量をスクリーニングする段階を含み、hTR RNAを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0023】
本発明のもう1つのさらなる局面は、対象における新生物治療処置計画の有効性を評価および/またはモニタリングする方法であって、対象または対象由来の生物試料中の非生存細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している非生存細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより新生物細胞死の誘導が示される方法を対象とする。
【0024】
本発明のまた別のさらなる局面は、テロメラーゼまたはテロメラーゼをコードする核酸分子を検出するための薬剤を含むように適合化された第1区画、および第1区画中の薬剤による検出を促進するのに有用な試薬を含むように適合化された第2区画を区画形態で含む、生物試料用の診断キットを提供する。例えば、生物試料を受け入れるためのさらなる区画を含めてもよい。薬剤は抗体またはその他の適切な検出分子であってよい。
【0025】
本発明のさらにまた別のさらなる局面は、患者由来の生物試料中の死滅新生物細胞を検出するための定量的または半定量的診断キットの製造における、テロメラーゼに対する相互作用分子の使用を提供する。キットには使用説明書を同梱することができ、キットは自動化もしくは半自動化されてもよく、または自動化機器もしくはソフトウェアと適合する形態にあってもよい。
【0026】
本発明のまたもう1つのさらなる局面は、対象における新生物状態を治療する方法であって、エフェクター機構と連結、結合、またはさもなくば会合する、テロメラーゼまたはその抗原性部分に対する相互作用分子の有効量を、状態を治療するのに十分な時間および条件の下で対象に投与する段階を含む方法を対象とする。
【0027】
本発明の別の局面は、対象における新生物状態を治療する方法であって、新生物の成長を阻害する、減少させる、またはさもなくばダウンレギュレーションするのに十分な時間および条件の下で、エフェクター機構と連結、結合、またはさもなくば会合する、hTERTタンパク質またはその抗原性部分に対する免疫相互作用分子の有効量を対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0028】
本発明のさらに別の局面は、対象における新生物状態を治療する方法であって、新生物の成長を阻害する、減少させる、またはさもなくばダウンレギュレーションするのに十分な時間および条件の下で、エフェクター機構と連結、結合、またはさもなくば会合する、hTERTもしくはhTR RNAまたはそれらの抗原性部分に対する免疫相互作用分子の有効量を対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0029】
本発明のまた別の局面は、対象における転移癌を治療的に処置する方法であって、治療的エフェクター機構と連結、結合、またはさもなくば会合する、テロメラーゼまたはその抗原性部分に対する相互作用分子の有効量を、転移癌の成長を阻害する、減少させる、またはさもなくばダウンレギュレーションするのに十分な時間および条件の下で対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0030】
本発明のまたさらに別の局面は、対象における新生物状態を治療するための医薬品の製造における、エフェクター機構に結合している抗テロメラーゼ相互作用分子の使用であって、エフェクター機構によってその状態が治療される使用を意図する。
【0031】
もう1つのさらなる局面において、本発明は、本明細書において先に定義した調節剤を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤と共に含む薬学的組成物を意図する。
【0032】
本発明のさらに別の局面は、本発明の方法において用いる場合の、本明細書において先に定義した薬剤に関する。
【0033】
発明の詳細な説明
本発明は、死滅しかけているおよび死滅した新生物細胞においてテロメラーゼ発現が検出され得る、より詳細には、例えばDNA損傷試薬などの細胞毒性薬により新生物細胞死を誘導するとテロメラーゼ発現が増加するという驚くべき知見を一部前提とする。したがって、死細胞によるテロメラーゼ発現の、正常な量に対する量の増加の検出により、死滅新生物細胞量を定量的および/または半定量的に評価するための簡便でかつ正確な機構が提供される。したがってこれらの知見により、特に新生物状態の進行をモニタリングする、または治療薬もしくは治療計画の有効性を評価する状況において、哺乳動物における新生物状態を評価するための高感度でかつ正確な手段が提供される。また、新生物細胞の部位に対して治療処置を標的化し、バイスタンダー殺傷機構を介して新生物細胞の死滅を達成する高度に特異的な手段が促進される。
【0034】
したがって、本発明の1つの局面は、対象における非生存新生物細胞を検出する方法であって、対象または対象由来の生物試料中の非生存細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している非生存細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより非生存新生物細胞の存在が示される方法を対象とする。
【0035】
「非生存」細胞への言及は、死滅したまたは死滅しかけている細胞への言及として理解されるべきである。後者との関連で、殺傷機構によっては、完全な細胞死に至る一連の段階をもたらすものもある。例えば、アポトーシスは、アポトーシスシグナルの発生に続いて起こるが、最終的な細胞死よりも前に起こる一連の細胞事象を特徴とする。「死滅しかけている」への言及は、細胞死事象への拘束をもたらすシグナルまたはその他の刺激を受けとった任意の細胞への言及を包含することが意図される。本発明をいずれか1つの理論または作用機序に限定することはないが、新生物細胞は一般に、無制限に複製する能力、ならびに通常であればDNA損傷およびチェックポイント制御の障害により誘導されるアポトーシスの回避の両方を特徴とする。それにもかかわらず、治療処置計画が存在しない場合でさえ、腫瘍量は通常、例えば腫瘍血液供給の公知の不均一性に起因し得る一定の割合の死滅したまたは死滅しかけている細胞によって特徴づけられる。しかしより一般的には、新生物細胞死は、治療的放射線療法または化学療法などの外因的手段により誘導される。これらの治療計画が新生物細胞死を達成する機構は様々であり、使用するために選択した治療計画の特定の性質に依存する。電離放射線および/または細胞毒性薬によって起こるDNA損傷は通常、影響を受けた細胞のアポトーシスをもたらすが、悪性細胞の固有の特徴はアポトーシス経路を無能化することである。したがって、悪性細胞は、DNA損傷剤のアポトーシス促進効果に対して耐性となることが予測される。それにもかかわらず、壊死、分裂死、自己貪食、および成熟前老化などの細胞死の別の機構が活性化されるため、電離放射線および/または細胞毒性薬による治療に応答して、多くの場合にやはり細胞死が起こる。そのため、新生物細胞アポトーシスの誘導は、これらの広く用いられている治療計画の結果としてこれまで信じられていたよりもずっと稀である。近年のデータから、悪性細胞がアポトーシスによって早期に死滅しない場合、DNA修復のための時間が存在することが示唆される。しかし、有糸分裂期に察知したDNAの修復が行われないかまたは誤修復されるのであれば、有糸分裂後細胞死が起こることになる(Brown and Attardi., 2004, Nature Reviews Cancer 5:231-237)。しかしながら、新生物細胞死アポトーシスの誘導は、より広く用いられている治療計画のいずれの状況にも共通した結果である。「アポトーシス」細胞への言及は、アポトーシスを起こしているまたは起こした細胞への言及として理解されるべきである。本発明をいずれか1つの理論または作用機序に限定することはないが、アポトーシスは、死滅していく細胞による代謝活性を必要とする能動的な過程である。アポトーシスは多くの場合、細胞の収縮、DNAの断片への切断(ゲル上で「ラダーパターン」を生じる)、ならびにクロマチンの凝縮および辺縁化を特徴とする。
【0036】
残念なことに、迅速に分裂している細胞集団(正常および悪性)に対する治療計画(特に、全身に施される化学療法)の比較的非特異的な効果のために、患者は治療に関連した重篤な毒性を被る可能性がある。したがって、治療計画の有効性をより正確にかつ迅速にモニタリングする(または、さらに内因的な免疫応答の有効性をモニタリングする)手段の設計は、治療計画を評価するおよび/または目的に合わせるより効果的な手段を提供するという点で大いに価値がある。したがって本発明との関連において、「非生存」新生物細胞は、アポトーシスおよび非アポトーシス手段を含む任意の手段によって非生存となったものであると理解されるべきである。アポトーシス性非生存新生物細胞の例としては、細胞アポトーシスを誘導する薬物の投与により死滅したものが挙げられ、非アポトーシス性非生存新生物細胞の例としては、古典的補体経路により溶解したものが挙げられる。好ましくは、非生存新生物細胞は死滅新生物細胞である。
【0037】
したがって、本発明はより詳細には、対象における死滅新生物細胞を検出する方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0038】
したがって、本発明はさらにより詳細には、細胞死が抗新生物細胞治療計画によって誘導された、対象における死滅新生物細胞を検出する方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0039】
「抗新生物細胞治療計画」への言及は、新生物細胞の死滅を対象とする任意の治療計画への言及として理解されるべきである。本治療計画は、この点で特異的であっても非特異的であってもよい。このような治療計画の例には、化学療法および放射線療法に基づく計画が含まれる。
【0040】
「新生物」への言及は、新生物細胞の被包性または非被包性成長への言及として理解されるべきである。「新生物細胞」への言及は、異常な成長を示す細胞への言及として理解されるべきである。「成長(growth)」という用語はその最も広い意味で理解されるべきであり、これには増殖(proliferation)への言及が含まれる。
【0041】
この関連における「異常な成長」という語句は、正常な細胞成長と比較して、細胞分裂速度の増加、細胞分裂回数の増加、細胞分裂期間の長さの減少、細胞分裂期間の頻度の増加、または制御不能な増殖、およびアポトーシスの回避のうちの1つまたは複数を示す細胞成長への言及を意味する。本発明を何ら限定することはないが、「新形成」という用語の一般的な医学的意味は、正常な成長制御に対する応答性の欠如に起因する「新生細胞の成長」、例えば新生物細胞の成長を指す。新形成には「腫瘍」が含まれ、これは良性、前癌性、または悪性であってよい。「新生物」という用語は、新生物細胞を含む病変、腫瘍、またはその他の被包性もしくは非被包性の塊、またはその他の成長形態への言及として理解されるべきである。
【0042】
「新生物」という用語は、本発明との関連において、組織病理学的な型および浸潤性の状態にかかわらず、あらゆる種類の癌性成長または発癌過程、転移性組織または悪性形質転換した細胞、組織、もしくは器官への言及を含むと理解されるべきである。
【0043】
「癌腫」という用語は当業者に認識されており、呼吸器系癌、消化器系癌、泌尿生殖器系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、および黒色腫を含む、上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。例示的な癌腫には、乳房組織から形成されるものが含まれる。この用語には癌肉腫も含まれ、これには例えば、癌性および肉腫性の組織から構成される悪性腫瘍が含まれる。「腺癌」とは、腺組織に由来する癌腫、または腫瘍細胞が認識し得る腺構造を形成する癌腫を指す。
【0044】
新生物を含む新生物細胞は、上皮細胞または非上皮細胞など、任意の組織に由来する任意の細胞種であってよい。本明細書における「悪性新生物」および「癌」および「癌腫」という用語への言及は、互換的であると理解されるべきである。
【0045】
「新生物」という用語は、新生物細胞を含む病変、腫瘍、またはその他の被包性もしくは非被包性の塊、またはその他の成長形態への言及として理解されるべきである。新生物を含む新生物細胞は、上皮細胞または非上皮細胞など、任意の組織に由来する任意の細胞種であってよい。本発明が包含する新生物および新生物細胞の例には、これらに限定されないが、中枢神経系腫瘍、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫およびその他の小児腫瘍、頭頸部癌(例えば、扁平細胞癌)、乳癌および前立腺癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、腎臓癌(例えば、腎細胞腺癌)、食道胃癌、肝細胞癌、膵胆管新形成(例えば、腺癌および島細胞腫瘍)、結腸直腸癌、子宮頸癌および肛門癌、子宮癌およびその他の生殖管の癌、尿路癌(例えば、尿管および膀胱の)、胚細胞腫瘍(例えば、精巣胚細胞腫瘍または卵巣胚細胞腫瘍)、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌)、原発不明の癌腫、ヒト免疫不全関連悪性腫瘍(例えば、カポジ肉腫)、リンパ腫、白血病、悪性黒色腫、肉腫、内分泌腫瘍(例えば、甲状腺の)、中皮腫およびその他の胸膜または腹膜腫瘍、神経内分泌腫瘍、ならびにカルチノイド腫瘍が含まれる。
【0046】
本明細書において先に詳述したように、本発明は、新生物細胞死を誘導するとテロメラーゼ発現の上方制御が起こるという知見を前提とする。本発明をいずれか1つの理論または作用機序に限定することはないが、テロメラーゼは、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)として知られる触媒サブユニットタンパク質、およびヒトテロメラーゼ内在性RNA(hTR)として知られるテロメラーゼ伸長のための451塩基対RNA鋳型を含むリボ核タンパク質複合体である。hTERTはテロメラーゼの活性にとって非常に重要なまたは律速の酵素である。テロメラーゼは通常、活性化リンパ球、新たな生物の創造をもたらす生殖細胞、および成体生物においてさえ進行中の多くの組織の再生に関与している幹細胞など、高い複製能を有する体内の細胞によって発現される。
【0047】
したがって「テロメラーゼ」への言及は、すべての形態のテロメラーゼ複合体またはその置換成分hTERTおよびhTR、ならびにそれらの断片、変異体、または変種への言及として理解されるべきである。hTERT mRNAの選択的スプライシングによって生じ得る任意のアイソフォーム、またはhTERTの変異体もしくは多形型への言及を含むこともまた理解されるべきである。「テロメラーゼ」への言及は限定を意図するものではなく、任意のタンパク質、RNA、またはmRNA型、単量体、多量体、融合タンパク質、またはその他の複合体として存在するかにかかわらず、生成され得る前駆体型などの任意のサブユニットポリペプチドを含む、すべての形態のテロメラーゼ複合体またはその置換成分への言及を含むものとして解釈されるべきである。したがって、hTERT/hTR複合体としてまたは単離されたhTERTもしくはhTRサブユニットとしての形態で、テロメラーゼをスクリーニングできることが理解されるべきである。好ましくは、テロメラーゼはhTERTまたはhTRである。
【0048】
したがって本発明は好ましくは、対象における死滅新生物細胞を検出する方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるhTERTタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、hTERTを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0049】
好ましくは、hTERTはタンパク質型である。
【0050】
別の好ましい態様においては、対象における死滅新生物細胞を検出する方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるhTR RNAの発現量をスクリーニングする段階を含み、hTRを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0051】
好ましくは、細胞死は抗新生物細胞治療計画によって誘導されたものである。
【0052】
より好ましくは、新生物は、中枢神経系腫瘍、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫およびその他の小児腫瘍、頭頸部癌(例えば、扁平細胞癌)、乳癌および前立腺癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、腎臓癌(例えば、腎細胞腺癌)、食道胃癌、肝細胞癌、膵胆管新形成(例えば、腺癌および島細胞腫瘍)、結腸直腸癌、子宮頸癌および肛門癌、子宮癌およびその他の生殖管の癌、尿路癌(例えば、尿管および膀胱の)、胚細胞腫瘍(例えば、精巣胚細胞腫瘍または卵巣胚細胞腫瘍)、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌)、原発不明の癌腫、ヒト免疫不全関連悪性腫瘍(例えば、カポジ肉腫)、リンパ腫、白血病、悪性黒色腫、肉腫、内分泌腫瘍(例えば、甲状腺の)、中皮腫およびその他の胸膜または腹膜腫瘍、神経内分泌腫瘍、ならびにカルチノイド腫瘍である。
【0053】
やはり本発明を何ら限定することはないが、大部分の真核細胞において、テロメアは各染色体の線状末端において特殊化した構造を含み、これはひと続きの5〜20キロベースにわたる反復性DNA配列、TTAGGGを含み、多くの特異的なタンパク質がこれに結合している。切断された染色体は相互に融合する粘着末端を有するが、テロメアは染色体の融合が起こらないように機能する。その保護機能をかんがみて、テロメアにおけるDNA-タンパク質複合体は、テロメア「キャップ」としても知られている。逆に、テロメアの機能障害または「脱キャップ化」は、二動原体染色体を生じる染色体の末端融合として顕在化する可能性があり、二動原体染色体は有糸分裂期に不均等に分離して、いわゆる切断-融合-架橋サイクルを生じる可能性がある。その結果生じた娘細胞間の遺伝物質の不均等な分配は、ゲノムの不安定性を引き起こし、また分裂死として知られる致死的事象を誘導し得る。結果として、テロメアにおける特殊化したDNA-タンパク質複合体は、染色体末端に「キャップをする」または染色体末端が二本鎖切断として曝露されないようにするために必要とされ、この二本鎖切断はDNA修復をもたらし得るDNA損傷応答を開始し、損傷が修復され得ない場合には細胞のアポトーシスが起こる。
【0054】
テロメアは、新規の高次DNA構造であるTループ、ならびに多くのテロメア結合タンパク質およびテロメラーゼ結合タンパク質を組み入れた複雑な構造である。テロメア反復結合因子-2(TRF2)はテロメアの構造および機能の特に重要な成分であり、hTERTとは異なり、すべてのヒト正常細胞種で発現されている。TRF2は、テロメアにおいてDNA損傷応答を制限する上で重要な役割を果たしている。正常細胞で発現されているその他のテロメア結合タンパク質には、テロメア反復結合因子-1(TRF1)、タンキラーゼ、TRF1相互作用タンパク質(TIN2)、hRap1、Mre11/Rad50/Nbs1 DNA修復複合体、Ku70/80ヘテロ二量体が含まれる。テロメラーゼ結合タンパク質には、ヴォールトタンパク質TEP1、シャペロンタンパク質p23およびhsp90、核小体低分子(sno)RNA結合タンパク質であるジスケリンおよびhGar1、ヘテロ核リボ核タンパク質(hnRNP) C1/2、Laリボ核タンパク質、ならびにL22リボソームタンパク質および二本鎖RNA結合タンパク質、hStauが含まれる。
【0055】
本明細書における「対象」への言及は、ヒト、霊長動物、家畜動物(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、ペット動物(例えば、イヌ、ネコ)、および捕獲野生動物(例えば、キツネ、カンガルー、シカ)を包含すると理解されるべきである。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0056】
「生物試料」への言及は、これらに限定されないが、細胞物質、生体液(例えば、血液)、便、組織生検試料、外科的試料、または動物の体内に導入され、その後採取された液体(例えば、肺洗浄または浣腸洗浄から回収された溶液など)など、動物に由来する生体物質の任意の試料への言及として理解されるべきである。本発明の方法に従って試験する生物試料は、直接試験できる場合もあれば、または試験の前に何らかの形態の処理を必要とする場合もある。例えば、生検試料または外科的試料は、試験の前にホモジネート化を必要とする場合もあれば、またはインサイチュー試験用に切片作製を必要とする場合もある。または、死細胞試料は、試験の前に透過処理を必要とする場合がある。さらに、生物試料が液体形態でない限りは(そのような形態が試験に必要とされる場合)、試料に移動性を付与するために緩衝液などの試薬の添加を必要とする場合がある。
【0057】
標的分子が生物試料中に存在する限りは、生物試料を直接試験してもよいし、さもなければ生物試料中に存在する核酸物質のすべてまたは一部を試験の前に単離してもよい。さらに別の例では、解析前に試料を部分精製するか、またはそうでなければ濃縮することもできる。例えば、生物試料が非常に多様な細胞集団を含む限りは、死細胞を濃縮する、または新生物細胞が一部を形成する細胞集団を濃縮するなど、特に関心対象となる亜集団を選択することが望ましいと考えられる。例えば、生存ウイルスを不活化するまたはゲル上で泳動するなど、由来元となる標的細胞集団または分子を試験の前に前処理することも、本発明の範囲内である。生物試料は新たに回収してもよいし、または試験に先立って保存されるか(例えば、凍結による)、もしくはそうでなければ試験に先立って処理されてもよい(培養を経るなど)こともまた理解されるべきである。
【0058】
本明細書に開示する方法に従って試験するのにどのような種類の試料が最も適切であるかの選択は、モニタリングする状態の性質など、その状況の性質に依存することになる。好ましくは、試料は、血液、尿、脳脊髄液、胸膜または腹膜の滲出液および腹水、中咽頭、肺、胆道系、結腸、または膀胱からの洗液およびブラッシング液、胆汁、膵臓、および乳腺吸引液、ならびに生検試料および外科的切除物のものである。
【0059】
本発明は、死滅新生物細胞がテロメラーゼ発現量の上方制御を示すという予想外の発見を前提とする。したがって、この知見により、所与の時点で存在する死滅したおよび死滅しかけている新生物細胞の量との関連で、新生物状態をモニタリングする手段が本明細書に提供される。これは、例えば、治療処置計画の有効性を評価し、それによって治療計画の最適化を促進する高感度でかつ迅速な手段を提供する状況において、特に有用である。この点に関して、当業者は、タンパク質(例えば、hTERT)またはコード核酸分子(例えば、hTERTまたはhTR mRNA)量でテロメラーゼ量の変化をスクリーニングできることを理解すると考えられる。必ずしも明記しない限り、本明細書における「テロメラーゼ」量のスクリーニングへの言及は、関連タンパク質またはそれをコードする一次RNA転写産物もしくはmRNAのスクリーニングへの言及を含むことが理解されるべきである。
【0060】
本明細書において上記したように、テロメラーゼは通常、活性化リンパ球、生殖細胞、および幹細胞など、高い複製能を有する体内の細胞によって発現される。テロメラーゼは、大部分の体細胞において活性がない。したがって本発明との関連において、主に体細胞からなる多くの種類の生物試料の死細胞集団におけるテロメラーゼ発現の存在は、それ自体で死滅新生物細胞の存在を示すことになる。例えば、正常末梢血単核細胞の集団は、死細胞成分において無視できるほどのテロメラーゼ量を示す。しかしながら、リンパ節生検試料などのいくつかの生物試料では、免疫応答期にリンパ球に必要とされる高い複製能のために、テロメラーゼを発現している非新生物死細胞がより高い比率で認められ得る。
【0061】
したがって、本発明が、テロメラーゼの量とこの分子の対照量との相関関係を対象とすることが理解されるべきである。「対照」量は「正常」量であってもよいし、または同じ患者からそれよりも前の時点で得られた量であってもよい。「正常」量とは、新生物状態を発症していない任意の個体の、解析する試料と対応する生物試料中のテロメラーゼタンパク質またはコード核酸分子の量である。そのためこの結果は、存在するのであれば、新生物細胞死に起因するのではなく、高い複製活性のためにテロメラーゼを発現した非新生物死細胞に単に対応するテロメラーゼのバックグラウンド量を提供する。大部分の試料との関連においては、これらの「正常」または「バックグランド」量は無視できると予測される。したがって本発明の方法は、健常個体から得られた個々のまたは集合的な結果を反映する基準結果に対する試験結果の解析など、適切な形態の解析をすべて包含することが理解されるべきである。好ましい態様において、正常参照量は、本発明の方法によってスクリーニングする対象のコホートと関連のあるコホートの1つまたは複数の対象から決定された量である。「関連のあるコホート」とは、スクリーニングの対象となる対象にやはり特有である1つまたは複数の特徴によって特徴づけられるコホートを意味する。これらの特徴には、これらに限定されないが、年齢、性別、民族性、喫煙/非喫煙状況、またはその他の健康状態パラメータが含まれる。本明細書において先に詳述したように、試験結果はまた、対象の生体液から決定された以前のテロメラーゼ量結果に対応する対照量に対して解析することもできる。これは、治療計画の経過期間などの一定期間にわたって、新生物細胞死の割合および程度に関連した情報を提供する相対的解析の形態(それでもなお、「正常」量に対して評価することもできる)である。
【0062】
「正常な量」は、個々の量または一定範囲の量であってよい。正常範囲よりも高い死細胞テロメラーゼ量を示す個体は一般に、新生物細胞死を起こしたと見なされ、これは治療反応性および/または寛解状態への移行を示し得るため、有望な予後と対応する。この点に関して、テロメラーゼ量は定量的または定性的読み取り値により評価またはモニタリングできることが理解されるべきである。参照量はまた、hTERTとhTRなど、テロメラーゼの個々の形態間で異なり得る。
【0063】
したがって本発明は、対象における死滅新生物細胞の集団の存在および程度を評価する手段を提供する。本明細書において先に詳述したように、これは、治療処置計画の有効性の評価の点から見て極めて重要な意味を有する。そのために、生物試料中の新生物死細胞量の1回限りの解析は、新生物細胞死が起こったかどうかに関する情報を提供するが、本発明はまた継続的モニタリングとしても有用であり、特に価値がある。これは、使用している化学療法薬に対して新生物細胞が応答した最初の事象が、使用している化学療法薬に対して新生物細胞が耐性となることに最終的に移行する治療処置計画を同定およびモニタリングする状況において必須であり得る。本明細書に記載するスクリーニング計画を用いて観察される結果は、1回限りの試験を用いる場合の、正常な量を上回る量のテロメラーゼの存在のスクリーニングに対応し得る。または、患者を継続的モニタリングに供し、それぞれの連続的な試験結果を以前の結果と関連づける場合には、使用に選択した治療計画の継続的作用および有効性を描き出す、死細胞テロメラーゼ発現の一連の増加および減少を観察することができる。したがって、正常な量に対する死細胞テロメラーゼ量の増加は新生物細胞死を示し、これはおそらくは、患者自身の免疫応答または有効な治療計画を含む多くの事象のいずれか1つに起因する。患者由来の以前に解析した試料に対する死細胞テロメラーゼ発現の量の増加は、新生物細胞死の割合の増加を示す可能性があり、この状況におけるテロメラーゼ発現の量の減少は、選択した治療計画の有効性の喪失、または実質的にすべての新生物細胞の死滅および排除に起因して患者が寛解状態に移行したことを示す可能性がある。
【0064】
したがって別の局面において、本発明は、対象における新生物状態を評価および/またはモニタリングする方法であって、対象または対象由来の生物試料中の非生存細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している非生存細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより非生存新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0065】
より具体的には、対象における新生物状態を評価および/またはモニタリングする方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0066】
好ましくは、テロメラーゼはhTERTまたはhTRである。
【0067】
この好ましい態様に従って、対象における新生物状態を評価および/またはモニタリングする方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるhTERTタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、hTERTを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0068】
より好ましくは、hTERTはタンパク質型である。
【0069】
別の好ましい態様においては、対象における新生物状態を評価および/またはモニタリングする方法であって、対象または対象由来の生物試料中の死細胞によるhTR RNAの発現量をスクリーニングする段階を含み、hTR RNAを発現している死細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより死滅新生物細胞の存在が示される方法を提供する。
【0070】
好ましくは、細胞死は抗新生物細胞治療計画によって誘導されたものである。
【0071】
より好ましくは、新生物状態は、中枢神経系腫瘍、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫およびその他の小児腫瘍、頭頸部癌(例えば、扁平細胞癌)、乳癌および前立腺癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、腎臓癌(例えば、腎細胞腺癌)、食道胃癌、肝細胞癌、膵胆管新形成(例えば、腺癌および島細胞腫瘍)、結腸直腸癌、子宮頸癌および肛門癌、子宮癌およびその他の生殖管の癌、尿路癌(例えば、尿管および膀胱の)、胚細胞腫瘍(例えば、精巣胚細胞腫瘍または卵巣胚細胞腫瘍)、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌)、原発不明の癌腫、ヒト免疫不全関連悪性腫瘍(例えば、カポジ肉腫)、リンパ腫、白血病、悪性黒色腫、肉腫、内分泌腫瘍(例えば、甲状腺の)、中皮腫およびその他の胸膜または腹膜腫瘍、神経内分泌腫瘍、ならびにカルチノイド腫瘍の新生物を特徴とする。
【0072】
本発明のさらに別の局面は、対象における新生物治療処置計画の有効性を評価および/またはモニタリングする方法であって、対象または対象由来の生物試料中の非生存細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している非生存細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより新生物細胞死の誘導が示される方法を対象とする。
【0073】
好ましくは、テロメラーゼはhTERTタンパク質もしくはmRNAまたはhTR RNAである。
【0074】
本発明のこの局面との関連においては、本明細書において先に詳述したように、テロメラーゼ発現死細胞の量の正常な量に対する増加は、新生物細胞の死滅を対象とする治療処置計画の有効性を示す。逆に、テロメラーゼ量が正常な量と比較して本質的に変化しないままである場合には、その治療計画が有効でないことが示される。同様に、以前に得られた1つまたは複数の結果に対する、死滅新生物細胞テロメラーゼ量の減少は、治療計画の有効性の漸減またはそれに対する抵抗性の上方制御さえ示し得る。
【0075】
本発明はまた、診断法にまで及ぶことも理解されるべきである。すなわち、治療処置計画の経過中および経過後に死細胞集団の変化を追跡するために本方法を使用することに加えて、治療前でさえ全腫瘍内に一定割合のテロメラーゼ発現死細胞が存在することから、本方法は診断としても役立つ。
【0076】
したがって、本発明はさらに、対象における新生物状態を診断する方法であって、対象または対象由来の生物試料中の非生存細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含み、テロメラーゼを発現している非生存細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより腫瘍の存在が示される方法を提供する。
【0077】
本明細書において先に詳述したように、テロメラーゼをタンパク質またはmRNA量でスクリーニングすることができる。特記しない限り、本明細書における「テロメラーゼ」のスクリーニングへの言及は、テロメラーゼ複合体またはテロメラーゼサブユニットタンパク質もしくはそれをコードする一次RNA転写産物もしくはmRNAのスクリーニングへの言及を含むことが理解されるべきである。
【0078】
対象または対象由来の生物試料中のテロメラーゼ量の変化をスクリーニングする手段は、当業者に周知である任意の適切な方法によって達成され得る。簡潔に説明すると、生物試料中のhTERTタンパク質または内在性ヒトテロメラーゼRNA(hTR)の検出に努めることができる。抗テロメラーゼ免疫相互作用分子を用いてhTERTタンパク質を直接同定すること、またはテロメラーゼRNP複合体全体を単離する手段を提供することができ、この複合体は続いてhTERT触媒活性および/またはhTR RNAについてアッセイすることができる。抗La免疫相互作用分子は、テロメラーゼRNP複合体全体を単離するための間接的手段を提供し、この複合体は続いてhTERT触媒活性および/またはhTR RNAについてアッセイすることができる。インビボ解析に関しては、特に抗癌治療の施行後に死滅癌細胞に対する特異的結合を視覚化するために、抗テロメラーゼ免疫相互作用分子を医学的造影剤と結合させることができる。より具体的には、これらの方法には、非限定的に以下のものが含まれる。
【0079】
(i) テロメラーゼのインビボ検出。生物試料中のテロメラーゼRNA、mRNA、またはタンパク質発現産物の発現量の変化を明らかにし得る画像化プローブまたは試薬を投与した後に、分子画像化を用いることができる。
【0080】
分子画像化(Moore et al., BBA, 1402:239-249, 1998;Weissleder et al., Nature Medicine, 6:351-355, 2000)とは、X線、コンピューター断層撮影(CT)、MRI、陽電子放出断層撮影(PET)、またはSPECTなどの「古典的」画像診断技法を用いてあまねく視覚化された巨視的特徴と相関する分子発現のインビボ画像化である。1つの態様において、相互作用分子は、インジウム-IIIもしくはテクネチウム-99などの核医学造影剤と、またはPET造影剤と、ナノ粒子などのMRI造影剤と結合される。別の例では、例えばADEPTのように検出剤としての酵素の結合を含めることができ、この場合、テロメラーゼ相互作用分子の標的への結合後および酵素基質の注射後に、分析物がインビボで生成される
【0081】
(ii) 蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)による死細胞における、または定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(QRTPCR)もしくは競合的RT-PCR産物のフローサイトメトリー定性化(Wedemeyer et al., Clinical Chemistry 48:9 1398-1405, 2002)もしくはアレイ技術などの技術による死細胞由来抽出物におけるRNA発現の解析。
【0082】
例えば、テロメラーゼをコードする標識ポリヌクレオチドを、生物試料から得られたRNA抽出物のノーザンブロットにおけるプローブとして用いることができる。好ましくは、RT PCR、リアルタイムPCR、またはSAGEなどの核酸増幅反応において、対象由来の核酸抽出物を、テロメラーゼをコードするポリヌクレオチドまたはその隣接配列のセンス配列およびアンチセンス配列に対応するオリゴヌクレオチドプライマーと共に使用する。種々の自動化固相検出技法もまた適している。例えば、例えばFodorら、1991(Science 251(4995):767-73)およびKazalら、1996によって記載されているように、非常に大規模な固定化プライマーアレイ(VLSIPS(商標))が核酸の検出に用いられる。上記の遺伝子技法は当業者には周知である。
【0083】
例えば、テロメラーゼをコードするRNA転写産物を検出するには、新生物細胞を含むと予想される細胞試料からRNAを単離する。RNAは、例えばTRIZOL(商標)試薬(GIBCO-BRL/Life Technologies、メリーランド州、ゲイサーズバーグ)を用いるなど、当技術分野において公知の方法によって単離することができる。オリゴdT、またはランダム配列オリゴヌクレオチド、および配列特異的オリゴヌクレオチドを逆転写反応のプライマーとして用いて、単離したRNAから第1鎖cDNAを調製することができる。次いで、生じた第1鎖cDNAをPCR反応において配列特異的オリゴヌクレオチドを用いて増幅し、増幅産物を取得する。
【0084】
「ポリメラーゼ連鎖反応法」または「PCR法」とは、核酸、RNA、および/またはDNAの所定の断片の量を米国特許第4,683,195号に記載されるように増幅する手順または技法を指す。一般に、関心対象の領域の末端またはその先からの配列情報を使用して、オリゴヌクレオチドプライマーを設計する。これらのプライマーは、増幅しようとする鋳型の逆鎖と同一または類似の配列となる。PCR法を用いて、特定のRNA配列および全細胞RNAから転写されたcDNAを増幅することができる。一般的には、Mullisら、1987;(Methods Enzymol 155:335-50)およびErlich,1989(J Clin Immunol 9(6):437-47)を参照されたい。したがって、PCR法による特定の核酸配列の増幅は、関連遺伝子またはタンパク質配列のアラインメントから推定される保存されたヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドまたは「プライマー」に依存する。例えば、テロメラーゼをコードするcDNA分子のアンチセンス鎖にアニーリングすると予測される一方のプライマーを調製し、センス鎖とアニーリングすると予測されるもう一方のプライマーを調製する。
【0085】
増幅された産物を検出するには、反応混合物を典型的にはアガロースゲル電気泳動またはその他の簡便な分離技法に供し、増幅されたテロメラーゼ特異的核酸の相対的な存在を検出する。例えば、増幅されたテロメラーゼ核酸は、特異的オリゴヌクレオチドプローブによるサザンハイブリダイゼーションを用いて、またはその電気泳動移動度を公知の分子量の核酸標準物質と比較することにより検出することができる。増幅されたテロメラーゼ核酸の単離、精製、および特徴づけは、ゲルから断片を切り出すかまたは溶出し(例えば、参考文献Lawn et al., 1981;Goeddel et al., 1980を参照されたい)、増幅された産物を適切なベクター、例えばpCRIIベクター(Invitrogen)のクローニング部位にクローニングし、クローニングされた挿入物を配列決定し、そのDNA配列をテロメラーゼの公知の配列と比較することにより達成することができる。次いで、テロメラーゼmRNAおよびcDNAの相対量を決定することができる。
【0086】
(iii) 例えばモノクローナル抗体(例えば、抗テロメラーゼ、またはLaがテロメラーゼと相互作用している場合の抗La)などの免疫相互作用分子を用いる免疫測定法による、細胞抽出物または血液またはその他の適切な生物試料中のテロメラーゼタンパク質量の変化の定性的または定量的測定。
【0087】
一例を挙げると、テロメラーゼ-免疫相互作用分子複合体形成の検出に努めることができる。例えば、レポーター分子を付随させた本発明による抗体を免疫測定法において用いることができる。そのような免疫測定法には、これらに限定されないが、当業者に周知である放射免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、および免疫クロマトグラフィー技法(ICT)、ウェスタンブロッティング法が含まれる。例えば、本発明に従って用いることのできる種々の免疫測定法を開示している「Current Protocols in Immunology」、1994を参照することができる。免疫測定法には競合アッセイ法も含まれ得る。本発明が定性的および定量的な免疫測定法を包含することは理解されると考えられる。
【0088】
適切な免疫測定技法は、例えば、米国特許第4,016,043号、第4,424,279号、および第4,018,653号に記載されている。これらには、非競合型の一部位および二部位アッセイ法、ならびに従来の競合結合アッセイ法が含まれる。これらのアッセイ法には、標識した抗原結合分子の標的抗原との直接結合もまた含まれる。この場合の抗原はテロメラーゼまたはその断片である。
【0089】
二部位アッセイ法は本発明における使用に特に好ましい。これらのアッセイ法には多くの変法が存在し、これらはすべて本発明に包含されるものとする。簡潔に説明すると、典型的な順方向アッセイ法では、非標識抗体などの非標識抗原結合分子を固体基剤上に固定化し、被験試料を、結合した分子と接触させる(抗原は好ましくはテロメラーゼであるが、Laなどのテロメラーゼ関連タンパク質であってもよい)。抗体-抗原複合体を形成するのに十分である適当な期間インキュベートした後、検出可能なシグナルを生じ得るレポーター分子で標識した別の抗原結合分子(抗原に対して特異的な二次抗体が適している)を添加してインキュベートし、抗体-抗原-標識抗体という別の複合体が形成されるのに十分な時間をおく。未反応の物質を洗浄除去し、レポーター分子によって生じるシグナルを観察することにより抗原の存在を判定する。結果は視認し得るシグナルの単純な観察により定性的であってよく、または公知の量の抗原を含む対照試料との比較によって定量化してもよい。順方向アッセイ法の変法には、結合した抗体に対して試料および標識抗体の両方を同時に添加する同時アッセイ法が含まれる。容易に明白であると考えられるわずかな変更を含め、これらの技法は当業者には周知である。
【0090】
典型的な順方向アッセイ法では、抗原またはその抗原性部分に対する特異性を有する一次抗体を、固体表面に対して共有結合させるかまたは受動的に結合させる。固体表面は典型的にはガラスまたはポリマーであり、最もよく用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、塩化ポリビニル、またはポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートのディスク、または免疫測定を行うのに適した任意のその他の表面の形態であってよい。結合過程は当技術分野において周知であり、一般に架橋共有結合または物理的吸着からなり、被験試料の調製時にポリマー-抗体複合体を洗浄する。次いで被験試料の一定分割量を固体複合体に添加し、十分な期間および適切な条件下でインキュベートして、存在する抗原を抗体に結合させる。インキュベーション期間後に、抗原-抗体複合体を洗浄して乾燥させ、抗原の一部に対して特異的な二次抗体と共にインキュベートする。二次抗体には一般に、二次抗体と抗原との結合を示すために用いられるレポーター分子が付随している。付随するレポーター分子によって測定される、結合する標識抗体の量は、固定化した一次抗体と結合した抗原の量に比例する。
【0091】
変法では、生物試料中の抗原を固定化する段階、および次いで固定化抗原を特異的抗体(レポーター分子で標識してもしなくてもよい)に対して曝露する段階を含む。標的の量およびレポーター分子のシグナルの強さに依存して、抗体による直接標識化により、結合した抗原を検出することができる。または、一次抗体に対して特異的な標識二次抗体を標的-一次抗体複合体に対して曝露して、標的-一次抗体-二次抗体という三次複合体を形成させる。この複合体は、レポーター分子が発するシグナルにより検出される。
【0092】
上記の内容から、抗原結合分子に付随するレポーター分子は以下を含み得ることが理解されると考えられる:
(a) レポーター分子の抗体との直接的な結合;
(b) レポーター分子の抗体との間接的な結合;すなわち、レポーター分子と、後に抗体に結合させる別のアッセイ試薬との結合;および
(c) 抗体のその後の反応産物との結合。
【0093】
レポーター分子は、色素原、触媒、酵素、蛍光色素、化学発光分子、常磁性イオン、ユーロピウム(Eu34)などのランタニドイオン、他の核標識タグを含む放射性同位体、および直接観察用標識を含む群より選択され得る。
【0094】
直接観察用標識の場合には、コロイド状の金属性もしくは非金属性粒子、色素粒子、酵素もしくは基質、有機ポリマー、ラテックス粒子、リポソーム、またはシグナル生成物質を含むその他の小胞などを用いることができる。
【0095】
レポーター分子としての使用に適した数多くの酵素が、米国特許第4,366,241号、第4,843,000号、および第4,849,338号に開示されている。本発明において有用である適切な酵素には、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼなどが含まれる。酵素は単独で用いてもよく、または溶液中の二次酵素と組み合わせて用いてもよい。
【0096】
適切な蛍光色素には、これらに限定されないが、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、R-フィコエリトリン(RPE)、およびテキサスレッドが含まれる。その他の例示的な蛍光色素には、Dowerら、国際公開公報第93/06121号によって考察されたものが含まれる。米国特許第5,573,909号(Singerら)、第5,326,692号(Brinkleyら)に記載された蛍光色素を参照することもできる。または、米国特許第5,227,487号、第5,274,113号、第5,405,975号、第5,433,896号、第5,442,045号、第5,451,663号、第5,453,517号、第5,459,276号、第5,516,864号、第5,648,270号、および第5,723,218号に記載された蛍光色素を参照することも可能である。
【0097】
酵素免疫測定法の場合には、一般にグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸により、酵素を二次抗体と結合させる。しかし、容易に認識されるように、当業者が容易に利用し得る広範な種々の結合技法が存在する。特定の酵素と共に用いられる基質は一般に、対応する酵素による加水分解によって検出可能な色の変化を生じるように選択される。適切な酵素の例には前記のものが含まれる。また、上記の発色基質ではなく、蛍光産物を生じる蛍光基質を用いることも可能である。いずれの場合にも、酵素標識抗体を一次抗体-抗原複合体に対して添加し、結合させ、次いで過剰な試薬を洗浄除去する。続いて、適切な基質を含む溶液を抗体-抗原-抗体という複合体に対して添加する。この基質は二次抗体に連結されている酵素と反応して定性的な視覚シグナルを生じるが、これをさらに定量化すること(通常は分光測定で)により、試料中に存在した抗原の量の指標を得ることができる。
【0098】
または、フルオレセイン、ローダミン、およびランタニド、ユーロピウム(EU)などの蛍光化合物を、抗体に対して、その結合能を変化させることなく化学的に結合させてもよい。特定波長の光の照射により活性化されると、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収して分子の励起状態を誘導し、その後、光学的顕微鏡により視覚的に検出できる特徴的な色調の光を放射する。蛍光標識抗体を、一次抗体-抗原複合体と結合させる。結合していない試薬を洗浄除去した後、残存する三次複合体に適当な波長の光を照射する。観察される蛍光は、関心対象の抗原の存在を示す。免疫蛍光アッセイ法(IFMA)は当技術分野において十分に確立されており、本方法にとっても特に有用である。しかし、放射性同位体、化学発光分子、または生物発光分子などの他のレポーター分子を用いることも可能である。
【0099】
(iv) 上記の要点(iii)で詳述したものに加えて、任意の適切な機能試験、酵素試験、または免疫学的試験に基づくタンパク質発現の変化の判定。
【0100】
(v) Ferrari(Nature Reviews Cancer 5:161-171, 2005)およびDuncan(Nature Reviews Drug Discovery, 2:347-360, 2003)に概説されているようなナノテクノロジー関連技法。
【0101】
本発明の方法は分離した試験として行うことができること、またはさらなる診断もしくは予後情報を提供し得る任意の他の適切な診断試験と併用できることもまた理解され得るべきである。例えば、本発明の適用を何ら限定することはないが、本発明の方法は、末梢血中の低頻度の循環腫瘍細胞を効率的かつ確実に同定するCellSearch(登録商標)などの技術と共に実施してもよい。
【0102】
本発明の別の局面は、テロメラーゼまたはテロメラーゼをコードする核酸分子を検出するための薬剤、およびそのような薬剤による検出を促進するのに有用な試薬を含む、生物試料用の診断キットを提供する。薬剤は抗体またはその他の適切な検出分子であってよい。
【0103】
本発明はさらに、患者由来の生物試料中の死滅新生物細胞を検出するための定量的または半定量的診断キットの製造における、テロメラーゼに対する相互作用分子の使用を意図する。キットには使用説明書を同梱することができ、キットは自動化もしくは半自動化されてもよく、または自動化機器もしくはソフトウェアと適合する形態にあってもよい。
【0104】
本発明の方法の診断上の明らかな利点に加えて、新生物細胞を正確に標的化する能力により、限局的かつ高度な標的化様式で治療処置を実現する手段が提供される。今日まで、そのような処置(「魔法の弾丸」と称される場合が多い)は達成されていなかった。特に、腫瘍治療の状況においては、抗体が対象とし得る適切な腫瘍特異的抗原の同定ができていないという事実に起因して、標的治療という概念は達成されていなかった。しかし本発明は、腫瘍を含む死細胞に治療処置を誘導することによって、これらの欠点を克服する。本明細書において先に詳述したように、治療を行っていなくとも、腫瘍は通常ある割合の死細胞を含み、治療処置の標的とするためにこれを用いることができる。乳癌における乳房切除および腸癌における結腸切除などの一次治療の機会を減らす微小転移巣でさえ治療的であり、これはアポトーシス細胞を含む。微小転移巣は通常直径1 mm未満の癌の沈着物であり、腫瘍細胞増殖の速度が腫瘍細胞アポトーシスの速度と平衡を保っていることから、休眠状態にあると考えられている。治療計画が進行中である限り、本発明の方法は二次治療を設計および実行する機会を提供し、この例としては、第1ラウンドの治療は寛解を誘導するには適していなかった可能性があるが、この第1ラウンドの治療によって誘導された死滅新生物細胞の領域により特異的に標的化することができるより毒性の高い治療が挙げられる。またさらに、本方法は、腫瘍部位における死滅新生物細胞数を増加させるためにより毒性の低い第1ラウンド治療を施行する手段を提供し、これによって顕著により毒性の高い第2ラウンド治療を正確に標的化するための手段を提供する。これは、化学療法に通常付随する全身性副作用を軽減する手段を提供し得る。抗テロメラーゼ相互作用分子(Laまたは抗テロメラーゼ抗体)に結合させることができ、生存腫瘍細胞である、死細胞の近傍に位置する細胞に機能する治療的エフェクター機構を選択することにより、腫瘍の効果的な死滅が達成され得る。本エフェクター機構は任意の適切な形態をとってよいが、毒性分子を送達するか、またはさもなくば近傍に位置する生存腫瘍細胞を死滅させることが好ましい。
【0105】
したがって本発明の別の局面は、対象における新生物状態を治療する方法であって、エフェクター機構と連結、結合、またはさもなくば会合する、テロメラーゼまたはその抗原性部分に対する相互作用分子の有効量を、状態を治療するのに十分な時間および条件の下で対象に投与する段階を含む方法を対象とする。
【0106】
好ましくは、テロメラーゼはhTERTタンパク質もしくはmRNAまたはhTR RNAである。
【0107】
より好ましくは相互作用分子は免疫相互作用分子であり、さらにより好ましくは抗テロメラーゼ抗体である。
【0108】
好ましくは、新生物状態は、中枢神経系腫瘍、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫およびその他の小児腫瘍、頭頸部癌(例えば、扁平細胞癌)、乳癌および前立腺癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、腎臓癌(例えば、腎細胞腺癌)、食道胃癌、肝細胞癌、膵胆管新形成(例えば、腺癌および島細胞腫瘍)、結腸直腸癌、子宮頸癌および肛門癌、子宮癌およびその他の生殖管の癌、尿路癌(例えば、尿管および膀胱の)、胚細胞腫瘍(例えば、精巣胚細胞腫瘍または卵巣胚細胞腫瘍)、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌)、原発不明の癌腫、ヒト免疫不全関連悪性腫瘍(例えば、カポジ肉腫)、リンパ腫、白血病、悪性黒色腫、肉腫、内分泌腫瘍(例えば、甲状腺の)、中皮腫およびその他の胸膜または腹膜腫瘍、神経内分泌腫瘍、ならびにカルチノイド腫瘍を特徴とする。
【0109】
「テロメラーゼ」、「新生物の」、「非生存」、および「対象」への言及は、本明細書において先に提供した意味と同じ意味を有すると理解されるべきである。
【0110】
本発明は好ましくは、対象における新生物状態を治療する方法であって、新生物の成長を阻害する、減少させる、またはさもなくばダウンレギュレーションするのに十分な時間および条件の下で、エフェクター機構と連結、結合、またはさもなくば会合する、hTERTタンパク質またはその抗原性部分に対する免疫相互作用分子の有効量を対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0111】
別の好ましい態様においては、対象における新生物状態を治療する方法であって、新生物の成長を阻害する、減少させる、またはさもなくばダウンレギュレーションするのに十分な時間および条件の下で、エフェクター機構と連結、結合、またはさもなくば会合する、hTERTもしくはhTR RNAまたはそれらの抗原性部分に対する免疫相互作用分子の有効量を対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0112】
好ましくは、新生物状態は悪性腫瘍である。
【0113】
「エフェクター機構」への言及は、死細胞の部位に局在する場合に、直接または間接的に問題の新生物状態を治療する、例えば隣接する生存腫瘍細胞の成長をダウンレギュレーションする、任意の適切な機構への言及として理解されるべきである。この好ましい態様との関連において、エフェクター機構は、この結果を達成するタンパク質性または非タンパク質性の分子または分子群である可能性が最も高い。本発明の方法における使用に適したエフェクター機構の例には、非限定的に以下のものが含まれる。
【0114】
(i) 免疫応答の1つまたは複数の局面を誘導または増強するように作用して、それによってバイスタンダー殺傷を増大させる、マクロファージ、樹状細胞、および/またはT細胞活性化因子などのサイトカイン、ケモカイン、またはその他の因子に結合している抗体の使用。例えば、走化性ペプチド、N-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(FMLP)(Morikawa et al. Cancer Immunol Immunother 27(1):1-6, 1998)および新規細菌リポペプチド、JBT2002(Shinohara et al. J Immunother 23(3):321-331, 2000)はいずれも、腫瘍関連マクロファージの活性化因子である。
【0115】
(ii) 毒素に結合している抗体の使用。
【0116】
「毒素」への言及は、細胞の増殖、分化、または維持を減少させる、阻止する、またはさもなくば抑制する(本明細書においては、細胞の「成長をダウンレギュレーションすること」と称する)シグナルを提供するという目的を達成する、任意の適切なタンパク質性または非タンパク質性分子への言及として理解されるべきである。本毒素は、対象細胞と直接接触することによりそのシグナルを提供する段階、またはシグナルを対象細胞に提供する、放射性同位体毒素の場合の放射線などの分子もしくは粒子を放射する段階を含む、様々な手段によって作用し得る。毒素は放射性同位体であることが好ましく、近距離で毒性が高くかつ半減期が短く、よって近傍に位置する非標的細胞に対する不用意な毒性の発生を最小限に抑える放射性同位体であることがさらにより好ましい。最も顕著には、放射性同位体はα粒子放射放射性同位体である。しかし、放射性同位体はα粒子放射放射性同位体に限定されず、臨床状況に応じてβ線およびγ線放射放射性同位体も含まれ得ることが理解されるべきである。本発明の方法における使用に適したα線放射放射性同位体の例には、これらに限定されないが、Tb-149、Bi-213、またはトリウム-229が含まれる。本発明の方法において使用する毒素は、精製形態、部分精製形態、または未精製形態であってよいことが理解されるべきである。これはまた、より大きな分子の成分を形成してもよい。毒素は天然であってもよいし、合成または組換えで産生されてもよい。
【0117】
「毒素」の範囲に入ると理解されるべき分子のその他の例には、リシン、カリチアマイシン(colicheamicin)、プロドラッグ(抗体指向性プロドラッグ変換酵素療法[ADEPT]として)、および触媒抗体などの新規のバイオ治療薬が含まれる。
【0118】
本発明の方法は、インビボまたインビトロで実行し得ることが理解されるべきである。インビトロ用途の例には、新生物細胞を含む生物試料の体外癌細胞排除(in vitro purging)が含まれるが、これに限定されない。例えば、骨髄および/または血液を患者から採取し、本発明の方法に従って腫瘍細胞を死滅させて排除し、その後これを患者に戻す。このような手順は、標的化様式が著しく低いにもかかわらず現在行われており、混入する悪性細胞の移植に起因する再発のリスクを軽減できる可能性がある。
【0119】
抗テロメラーゼ抗体またはその他の免疫相互作用分子と「連結、結合、またはさもなくば会合する」エフェクター機構への言及は、2つの分子の結合を達成する任意の共有結合性または非共有結合性相互作用機構への言及として理解されるべきである。これには、ペプチド結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力、または任意の他の相互作用結合機構が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
細胞または新生物の「成長」への言及は、本細胞の増殖、分化、および/または生存度の維持への言及として理解されるべきであり、細胞または新生物の「成長をダウンレギュレーションすること」とは、細胞の老化の過程、または本細胞の増殖、分化、および/もしくは生存度の維持を減少させること、阻止すること、もしくは抑制することへの言及である。好ましい態様において、本成長とは増殖であり、ダウンレギュレーションは死滅である。この関連において、死滅は、細胞に致死的打撃を送達することにより、または細胞のアポトーシスを誘導するシグナルを細胞に送達することにより達成され得る。
【0121】
本明細書における「治療的」または「予防的」処置への言及は、その最も広い文脈で考えるべきである。「治療」という用語は、必ずしも対象を完全に回復するまで治療することを意味するわけではない。同様に、「予防」は必ずしも対象が結果的に疾患状態にかからないことを意味するわけではない。したがって、治療および予防には、特定の状態の症状の改善、または特定の状態を発症するリスクを妨げるかもしくはさもなければ軽減することを含む。「予防」という用語は、特定の状態の重症度または発症を軽減することと見なし得る。「治療」もまた、既存の状態の重症度を軽減し得る。
【0122】
本発明をいずれか1つの理論または作用機序に限定することはないが、抗癌治療は通常はアポトーシスにより死滅させるものであるものの、進行癌の多くの症例では、一部の癌細胞は特定の抗癌治療によって誘導され得るアポトーシスに対して耐性を示す。これらのアポトーシス耐性腫瘍細胞は疾患の臨床的再発の原因であり、この再発のために、進行癌患者のほとんどおよびそれよりも初期段階の癌患者のかなりの割合が最終的に死亡する。腫瘍細胞の死滅がインビボで実証され得たために、最初の治療様式に反応することが示され得た進行癌患者においては、別の非交差耐性の治療様式も使用することができれば、生存および生活の質をさらに高めることが可能である。したがって、本発明の方法を用いて反応性の癌患者を診断することにより、詳述したような治療的複合体またはハイブリッド融合タンパク質を用いた補助的治療が有用であると考えられる患者を同定することができる。
【0123】
抗テロメラーゼ抗体の使用はまた、補助的臨床設定においても好ましい。早期の乳癌および結腸癌は例えばいずれも手術によって治療することができるが、原発腫瘍が何らかのリスクの高い特徴を有するおよび/または所属リンパ節が転移を含む患者では、検出不可能な全身性微小転移巣が既に存在する可能性があるために、明白かつ治療不能な全身再発のリスクは増大する。そのため、補助化学療法および/または補助ホルモン療法(特に乳癌の場合)によって、おそらくは全身性微小転移巣がうまく除去されるために、さらに一部の割合の患者が治癒する。
【0124】
さらに、休眠腫瘍は血液供給の欠如のために小さいままであるが、病変内の腫瘍細胞は細胞分裂速度とアポトーシス速度の平衡を保ちながら急速にターンオーバーしている。したがって、休眠腫瘍でさえも本技術に適した標的となる。臨床的に明らかな転移および微小転移巣ではいずれの場合も、アポトーシス耐性癌細胞は感受性癌細胞と混在し得る。最初の治療によってアポトーシス性となった癌細胞の近傍に腫瘍殺傷の非交差耐性および/または相乗的手段が送達されれば、これらの残存癌細胞のバイスタンダー殺傷が起こり得る。バイスタンダー殺傷能を有するこの技術を備えたさらなる技術によって、治療効果が改善され得る。
【0125】
したがって、本発明の最も好ましい態様は転移癌の治療を対象とする。
【0126】
この好ましい態様に従って、対象における転移癌を治療的に処置する方法であって、治療的エフェクター機構と連結、結合、またはさもなくば会合する、テロメラーゼまたはその抗原性部分に対する相互作用分子の有効量を、転移癌の成長を阻害する、減少させる、またはさもなくばダウンレギュレーションするのに十分な時間および条件の下で対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0127】
本明細書において先に詳述したように、本発明がインビトロ環境における新生物細胞の成長のダウンレギュレーションにまで及ぶことも理解されるべきである。例えば、自家移植する前に、骨髄または末梢血幹細胞の接種物から新生物細胞を排除することができる。
【0128】
「有効量」とは、少なくともある程度、所望の応答を達成するため、または治療しようとする特定の状態の発症を遅延させるため、もしくは進行を抑制するため、もしくはその発症もしくは進行を完全に停止させるために必要な量を意味する。その量は治療しようとする個体の健康状態および身体状態、治療しようとする個体の分類群、所望の防御の程度、組成物の処方、医学的状態の評価、ならびにその他の関連要因に応じて変動する。その量は比較的広い範囲にわたり、日常的試験によって決定し得ると考えられる。
【0129】
本発明はさらに、癌の治療において、哺乳動物の体内に細胞毒性薬を循環させることまたは哺乳動物に放射線療法を行うことと共に抗体を投与するといった、併用療法も意図する。別の例では、放射性核種と放射線増感剤との間の相乗的相互作用が特に重要である。例えば、電離放射線を放射する放射性核種に結合した抗テロメラーゼ抗体とゲムシタビンなどの放射線増感剤を同時投与する放射免疫療法計画を計画することができる。
【0130】
薬学的組成物の形態としての相互作用分子(本明細書においては「調節剤」と称する)の投与は、任意の簡便な手段によって行うことができる。薬学的組成物の調節剤は、ある量を投与した場合に治療活性を示すことが意図され、その量は個々の場合に応じて決まる。その差異は、例えば、ヒトであるか動物であるか、および選択した調節剤に依存する。広範囲にわたる用量が適用できる。例えば、患者を考えた場合には、体重1kg当たり1日につき約0.1 mg〜約1 mgの調節剤を投与することができる。投与計画は、最適な治療反応が得られるように調節することができる。例えば、数回に分割した用量を毎日、毎週、毎月、もしくは他の適切な間隔で連続して投与してもよいし、または状況の必要性によって示される程度に比例して用量を減らしてもよい。
【0131】
調節剤は、経口、静脈内(水溶性の場合)、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、または座薬経路または移植(例えば、徐放性分子を用いる)などの簡便な方法で投与することができる。調節剤は、酸付加塩または例えば亜鉛、鉄などとの金属複合体のような、薬学的に許容される非毒性塩(この用途のための塩と見なされる)の形態で投与してもよい。このような酸付加塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩などがある。活性成分を錠剤の形態で投与する場合には、錠剤は、トラガカント、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤;アルギン酸などの崩壊剤;およびステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を含んでもよい。
【0132】
投与経路には、これらに限定されないが、気道、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、皮内、筋肉内、眼内、くも膜下腔内、脳内、鼻腔内、注入、経口、直腸内、静脈内点滴、パッチ、および埋め込みが含まれる。
【0133】
これらの方法によると、本発明に従って定義される薬剤は、1つまたは複数の他の化合物または分子と同時投与することができる。「同時投与」とは、同一もしくは異なる経路による同一製剤もしくは2つの異なる製剤での同時投与、または同一もしくは異なる経路による連続投与を意味する。例えば、本薬剤は、その効果を増強するために作動性薬と共に投与することができる。「連続」投与とは、2種類の分子の投与間に数秒、数分、数時間、または数日の時間差があることを意味する。これらの分子は任意の順序で投与することができる。
【0134】
本発明の別の局面は、対象における新生物状態を治療するための医薬品の製造における、エフェクター機構に結合している抗テロメラーゼ相互作用分子の使用であって、エフェクター機構によってその状態が治療される使用を意図する。
【0135】
好ましくは相互作用分子は免疫相互作用分子であり、さらにより好ましくはモノクローナル抗体などの抗テロメラーゼ抗体である。
【0136】
好ましくは、新生物状態は、中枢神経系腫瘍、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫およびその他の小児腫瘍、頭頸部癌(例えば、扁平細胞癌)、乳癌および前立腺癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、腎臓癌(例えば、腎細胞腺癌)、食道胃癌、肝細胞癌、膵胆管新形成(例えば、腺癌および島細胞腫瘍)、結腸直腸癌、子宮頸癌および肛門癌、子宮癌およびその他の生殖管の癌、尿路癌(例えば、尿管および膀胱の)、胚細胞腫瘍(例えば、精巣胚細胞腫瘍または卵巣胚細胞腫瘍)、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌)、原発不明の癌腫、ヒト免疫不全関連悪性腫瘍(例えば、カポジ肉腫)、リンパ腫、白血病、悪性黒色腫、肉腫、内分泌腫瘍(例えば、甲状腺の)、中皮腫およびその他の胸膜または腹膜腫瘍、神経内分泌腫瘍、ならびにカルチノイド腫瘍を特徴とする。
【0137】
もう1つのさらなる局面において、本発明は、本明細書において先に定義した調節剤を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤と共に含む薬学的組成物を意図する。
【0138】
注射用用途に適した薬学的形態には、滅菌水溶液(水溶液の場合)または分散液および滅菌注射用溶液または分散液を即時調製するための滅菌粉末が含まれ、またはクリーム形態もしくは局所適用に適した他の形態であってもよい。それは製造および保存条件下において安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用を受けないよう保存されねばならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒であってよい。例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合には必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持することができる。微生物作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に使用することによってもたらされ得る。
【0139】
滅菌注射液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した種々の他の成分と共に適切な溶媒に組み入れ、濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、滅菌した種々の活性成分を、基本的な分散媒および上記に列挙したもののうち必要な他の成分を含む滅菌媒体に組み入れることによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製法は真空乾燥法および凍結乾燥法であり、これらの方法により、あらかじめ濾過滅菌したその溶液から活性成分および補足的な所望の成分の粉末が得られる。
【0140】
活性成分が適切に保護されている場合には、例えば不活性希釈剤もしくは吸収性の可食担体と共に経口投与することができ、または硬もしくは軟ゼラチンカプセルに封入することができ、または錠剤に打錠成型することができ、または食材に直接組み入れることもできる。経口治療投与では、活性化合物を賦形剤と共に組み入れて、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、オブラートなどの形態で使用することができる。このような組成物および調製物は、少なくとも1重量%の活性化合物を含むべきである。組成物および調製物の割合は当然ながら変動してよく、約5〜約80重量%の単位であるのが好都合である。このような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適切な用量が得られるような量である。本発明による好ましい組成物または調製物は、経口投与単位剤形が約0.1μg〜約2000 mgの活性化合物を含むように調製される。
【0141】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどは、以下に記載する成分も含み得る:ゴム、アカシアゴム、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤;第二リン酸カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;およびショ糖、乳糖、またはサッカリンなどの甘味剤を添加することができ、ペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリー香味料などの香料添加剤を添加することもできる。投与単位剤形がカプセルである場合には、上記の種類の物質に加えて液体担体を含めてもよい。コーティングとしての、またはさもなくば投与単位の物理的形態を改良するための他の様々な物質が存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルは、シェラック、糖、またはその両方でコーティングすることができる。シロップまたはエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのショ糖、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素、ならびにチェリーまたはオレンジフレーバーなどの香味料を含み得る。当然のことながら、いかなる投与単位剤形を調製する際に用いられるいかなる物質も、薬学的に純粋であり、かつ使用量では実質的に無毒であるべきである。さらに、1つまたは複数の活性化合物を、徐放性の調製物および製剤に組み入れることも可能である。
【0142】
本発明のさらに別の局面は、本発明の方法に用いる場合の、本明細書において先に定義した薬剤に関する。
【0143】
本発明を以下の非制限的な実施例によりさらに規定する。
【0144】
実施例1
材料および方法
ヒト末梢血単核細胞およびヒトJurkat T細胞白血病細胞のインビトロ培養およびアポトーシス誘導
末梢血単核細胞(PBMC)は、南オーストラリア赤十字血液バンクから入手した廃棄単位の全血のバフィーコートから調製した。最初に、Lymphoprep(Axis-Shield、英国、ダンディー)にて密度勾配遠心分離によりPBMCを分離し、速度制御フリーザーを用いて一定分量で凍結した。続いて、一定分量の細胞を融解し、Lymphoprepで再度精製して生細胞を得た。PBMCを、10%ウシ胎仔血清(FBS)、50 U/mLペニシリン、および50μg/mL硫酸ストレプトマイシ(JRH Biosciences、米国、カンザス州、レネックサ)を添加したRPMIで72時間培養した。培養物の半量をT細胞マイトジェン、コンカナバリンA(ConA)(Sigma、米国、ミズーリ州、セントルイス)、10μg/mlで処理し、培養物の半量は未処理とした。培養後、細胞をLymphoprepで再度精製して死細胞を除去し、1μMスタウロスポリン(STS)(Sigma)と共にさらに24時間培養してアポトーシスの状態にした。Jurkat細胞は、10% FCS、50 U/mLペニシリン、および50μg/mL硫酸ストレプトマイシン、ならびに0.5μM STSを添加したRMPI中で24時間培養して、アポトーシスの状態にした。PBMCに由来する初代単球およびリンパ球細胞を試験するため、Lymphoprep(登録商標)分離手順を用いてまずPBMCを精製した。次いで、5% FCSを添加したRPMI-1640中でPBMCを一晩培養して、懸濁細胞(主にTリンパ球)から接着細胞(主に単球細胞)を分離した。懸濁細胞を回収し、5% FCSを添加したRPMI-1640中、1μM STSの存在化または非存在下においてインキュベートし、Jurkat細胞も同様に0.5μM STSの存在下または非存在下においてインキュベートした。接着単球細胞およびU937細胞(単球性リンパ腫細胞株)は、5% FCSを添加したRPMI-1640中、それぞれ1μMおよび0.5μM STSの存在下または非存在下においてインキュベートした。24時間後および48時間後に未処理(対照)およびSTS処理細胞を回収し、対照細胞は、2%パラホルムアルデヒド溶液を使用し、次いで-20℃のメタノールで1:10希釈して5分間置くことにより透過処理した。
【0145】
処理後、全細胞を回収してPBSで洗浄し、7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)(2μg/mL)、ならびに抗La 3B9 mAbまたはそのアイソタイプ対照mAb Sal5および次のR-フィコエリトリン結合二次抗マウス抗体(Zymed、米国、カリフォルニア州、サンフランシスコ)、またはラット抗hTERT mAb(Alexis Biochemicals、米国、カリフォルニア州、サンディゴ)および次のFITC結合二次抗ラット抗体(Chemicon)で染色した。FACScan(Becton Dickinson、米国、ニュージャージー州、フランクリンレイク)を用いて細胞を解析し、その結果をWinMDI v2.8ソフトウェアで解析した。
【0146】
悪性ヒト細胞株の細胞毒性処理ならびにそれに続くアポトーシス性悪性細胞および初代細胞におけるhTERTの検出
JurkatおよびRaji細胞株は、10% FCS、50 U/mLペニシリン、および50μg/mL硫酸ストレプトマイシンを添加したRPMIで培養し、U2OSおよびHeLa細胞株は、10% FCS、50 U/mLペニシリン、および50μg/mL硫酸ストレプトマイシン(JRH Laboratories)を添加したDMEMで培養した。細胞株を以下のように種々の細胞毒性薬で24時間または48時間処理した:JurkatおよびRaji細胞はエトポシド、20μg/mLで;HeLaおよびU2OS細胞はシスプラチン、1μg/mLおよびビンクリスチン、0.1μg/mLで;Jurkat、HeLa、およびU2OS細胞は0.5μM STSで、ならびにRaji細胞は2μM STSで処理した。処理細胞をヨウ化プロピジウム(PI)(Sigma) 0.5μg/mL、ならびにFITC結合Sal5もしくは3B9 mAb、またはマウス抗TRF2 mAb(クローン36、Becton-Dickinson)および次の二次抗体、抗マウスFITC(Chemicon、米国、カリフォルニア州、テメキュラ)、またはラット抗hTERT mAb(クローン36-10、Alexis Biochemicals)および次の二次抗体、抗ラットFITC(Caltag、米国、カリフォルニア州、バーリンゲーム)で染色した。精製マウスIgGまたはラットIgG(Institute of Medical and Veterinary Science、オーストラリア、アデレード)を、それぞれTRF2およびhTERT染色の陰性対照として使用した。おそらくは赤血球細胞から放射される自己蛍光の存在によって妨害されたと考えられる全血染色において後に使用する目的で、hTERTの検出方法をさらに改良するため、抗hTERTモノクローナル抗体クローン36-10を、355 nmで励起されて420〜460 nmで最大放射するAlexaFluor350(Molecular Probes)と直接結合した。抗hTERT-Alexa350は、488 nmで励起されて560〜590 nmで放射するPEと結合したEpCAMモノクローナル抗体(BD Biosciences)、および560 nmで励起されて近赤外領域(>650 nm)で最大放射するDNA結合色素TOPRO3(Molecular Probes)と併用した。これらの分子はそれぞれ、ハイスループットLSR-IIフローサイトメーター(BD Biosciences)において異なるレーザーを用いて励起され、放射は別個のフィルターを用いて回収されるため、蛍光色素のこの併用はシグナルの補正を必要としない。
【0147】
結果
抗La(モノクローナル抗体ハイブリドーマ3B9)結合を、主にT細胞であるアポトーシス性のPBMCとヒトT細胞白血病株であるアポトーシス性のJurkat細胞とで比較した。蛍光強度はアポトーシス性PBMCよりもアポトーシス性Jurkat細胞で高いことが明らかであり(図3)、Laが死滅したおよび死滅しかけている腫瘍細胞においてより高く発現されることが示唆される。
【0148】
ヒトT細胞白血病株JurkatおよびヒトBリンパ腫細胞株Rajiを、以下の細胞毒性薬で24時間または48時間処理した:総キナーゼ阻害剤であるスタウロスポリン、トポイソメラーゼII阻害剤であるエトポシド、微小管脱重合剤であるビンクリスチン、およびDNA架橋剤であるシスプラチン。次いで、細胞をヨウ化プロピジウム(PI)および抗Laモノクローナル抗体(mAb) 3B9もしくはそのアイソタイプ対照Sal5、またはhTERTもしくはTRF2に特異的なmAbで染色した。hTERTまたはTRF2特異的mAbによる染色の陰性対照として、それぞれラットIgGおよび抗ラット二次抗体またはマウスIgGおよび抗マウス二次抗体を使用した。
【0149】
フローサイトメトリーを用いて、種々の細胞毒性薬が、Jurkat細胞(図4A)およびRaji細胞(図4C)において細胞毒性処理の24時間後すぐに、PIおよび3B9の結合によって明白な細胞死を誘導したことが認められた。同様に、PI+死滅Jurkat細胞のTRF2染色が、細胞毒性処理の24時間後すぐに(図4D)および後の48時間後に(図4E)認められた。ビンクリスチンおよびシスプラチン処理したRaji細胞では、48時間の時点で、TRF2染色のわずかな増加が認められた(矢印、図4F)。対照的に、PI+死滅Jurkat細胞のhTERT染色が明らかになるのには、シスプラチン、エトポシド、およびビンクリスチンによる処理後48時間を要した(矢印、図4B)。PI+死滅Raji細胞のhTERT染色は、ビンクリスチンによる処理の48時間後に認められた(矢印、図4C)。さらなる対照として、テロメラーゼ発現ヒト子宮頸癌細胞株HeLaおよびテロメラーゼ陰性ヒト骨肉腫細胞株U2OS(M Frolkis et al. Cancer Gene Therapy 10, 239-249, 2003)もまた、スタウロスポリン、ビンクリスチン、およびエトポシドで処理し、処理の48時間後にフローサイトメトリーにより解析した。hTERTおよびTRF2の明らかな染色がPI+死滅HeLa細胞では認められたが(図4G)、PI+死滅U2OS細胞では認められなかった(図4H)。癌細胞に対して細胞毒性薬でアポトーシスを誘導した後にテロメラーゼタンパク質の発現が増加することは、DNA損傷薬によって誘導されたテロメラーゼ脱キャップ化に対するフィードバック反応を示すと考えられる。
【0150】
ヒトリンパ球、特に活性化リンパ球もまたテロメラーゼを発現する。図5に示すように、スタウロスポリンによるアポトーシスの誘導の24時間後では、主にリンパ球である死滅PBMCにおいてもJurkat細胞においてもテロメラーゼ発現はほとんど認められなかった。図6から、固定化の人為的影響または細胞毒性損傷の結果としてのJurkat細胞の透過化が、hTERTタンパク質に対する36-10 mAb結合の検出に必要であることが示される。興味深いことに、エトポシド処理したJurkat細胞を固定化すると、処理の48時間後まで非固定化処理細胞において認められなかった36-10 mAb結合のさらなる部位が現れた。さらに、エトポシドで処理していない(対照)Jurkat細胞の固定化により、36-10 mAbによって認識される決定基のさらなる曝露が生じると考えられた。アポトーシス小体の特徴を有するPI-中間Jurkat 細胞に対する36-10 mAb結合の欠如と考え合わせると(図4B)、これらのデータから、hTERTの高次構造および/またはhTERTの他のタンパク質との会合がプログラム細胞死の間に変化して、36-10 mAb結合部位の利用能を制限することが示される(図6)。悪性細胞および初代細胞の透過処理により、悪性JurkatおよびU937細胞が、対応する初代細胞対応物、それぞれリンパ球細胞および単球細胞よりも有意に大きな量のhTERT発現を示したことが実証される(図7)。アポトーシスを誘導するためのこれら細胞種のスタウロスポリンによる処理、およびアポトーシス後の細胞透過処理により、この悪性細胞がなお高レベルのhTERT発現を示すことが示され、hTERTが選択的腫瘍標的化のための適切な腫瘍関連抗原となることが示唆される。
【0151】
細胞毒性薬エトポシドを同様に用いて、小細胞肺癌(SCLC)として知られる化学反応性腫瘍に由来する細胞株であるH69を処理し、細胞死の程度が用量依存的であることを示した(図8)。モノクローナル抗体BerEP4は、多くの種類の上皮細胞およびそれらの悪性対応物が有する上皮細胞接着分子(EpCAM)上の決定基を認識する。ヨウ化プロピジウム(PI)は核非透過性の核酸結合蛍光色素であり、そのためPIによる細胞の染色によって、細胞死の結果としての細胞膜の完全性の喪失が示される。したがって、BerEP4+ PI+は死滅H69癌細胞と明白に見なすことができ、その最大比率は200〜400μg/mLのエトポシド濃度で達成された(図8A)。続いて、細胞毒性処理後の死滅H69細胞におけるhTERTタンパク質発現の上昇制御を検出するのに必要な抗hTERTモノクローナル抗体、クローン36-10の最適濃度が50μg/mLであることが実証された(図9B)。対照的に、同等濃度のアイソタイプ対照モノクローナル抗体は、細胞毒性処理後の死滅H69細胞の有意な染色を生じなかった(図9A)。エトポシドにより死滅し、BerEP4+ 7-AAD+として同定されるH69細胞は、正常末梢血単核細胞(PBMD)中の1:50希釈において検出された(図10)。しかしながら、正常PBMCのバックグラウンド中でのエトポシド処理悪性細胞の検出を確実にするためには、補正段階を必要とした。エトポシド処理悪性細胞を検出するこの方法は、蛍光色素を併用することによって改良され、併用することでフローサイトメーターにおける補正の必要なしにDNA、hTERT、およびEpCAMが標識され、よってより確実にエトポシド悪性細胞が同定された(図11)。
【0152】
実施例2
材料および方法
インビトロにおける癌細胞株の細胞毒性薬処理
H69細胞を、5%ウシ胎仔血清(FCS)および400μg/mLエトポシドを含むRPMI-1640で培養した。24時間、48時間、および72時間の時点で一定分量を採取し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、次いで細胞蛍光図式解析のために染色した。
【0153】
小細胞肺癌(SCLC)患者の血液からの循環腫瘍細胞の濃縮
ヘパリン処理チューブ中に回収した血液試料(2.5 mL)を、CELLection(商標) Epithelial Enrichキットを用いて製造業者の指示書通りに(Dynal(登録商標) Biotech、Invitrogen Corp.、米国)、BerEP4上皮細胞接着分子(EpCAM)の発現に関して濃縮した。簡潔に説明すると、BerEP4ビーズ250μLを血液試料と室温で30分間混合した。ビーズをDynal(登録商標)磁石に結合させ、PBSで5回洗浄した。ビーズに結合した細胞を、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)およびデオキシリボヌクレアーゼI(DNase I)を含むPBSを用いて製造業者によって記載されている通りに、磁石から遊離させた。遊離した細胞を新たなチューブに移し、遠心分離し、PBSで洗浄した。単離された細胞上に残存しているマウスBerEP4抗体をブロッキングするため、試料を抗マウスIgG(2μg/mL)と共に室温で30分間インキュベートし、次いでPBSで洗浄し、その後染色してフローサイトメトリーにより解析した。
【0154】
細胞蛍光図式解析のための全血試料の調製
赤血球細胞溶解緩衝液(8 g/L塩化アンモニウムおよび1.2 g/L Tris-HCl、pH 7.2)で血液を1:10希釈し、希釈試料を室温で15分間常に回転させて、ヘパリン処理した末梢血試料(2.5 mL)中の赤血球を溶解させた。次いで、細胞を3,000 xgで10分間ペレット化してPBSで洗浄し、その後染色してフローサイトメトリーにより解析した。
【0155】
細胞蛍光図式解析
細胞を50μg/mL濃度のモノクローナル抗体(mAb):ラット抗hTERT mAb(クローン36-10;Alexis Biochemicals)であるAPOTEL(商標)、または特異性に関連のない適合アイソタイプ(IgG2aκ)対照mAbと共に室温(RT)で30分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、2μg/mL濃度のビオチン結合抗ラットIgG抗体(Fab')2断片と共に室温で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、2μg/mL濃度のストレプトアビジン-PEまたはストレプトアビジン-FITCと共に室温で15分間インキュベートした。最後に、細胞をPBSで洗浄し、2μg/mL 7-アミノ-アクチノマイシンD(7-ADD)と共に室温で15分間インキュベートした後に、フローサイトメトリー(FACScan、Becton-Dickinson)により解析した。
【0156】
統計解析
GraphPad Prism v.4.0ソフトウェアを用いて統計解析を行った。
【0157】
結果
ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)を特異的に認識するモノクローナル抗体(mAb)の能力を、細胞毒性薬を用いて細胞死を誘導した後に、インビトロおよびインビボで小細胞肺癌(SCLC)の死細胞に結合する能力に関して試験した。最初に、上皮細胞接着分子(EpCAM)のBerEP4マーカーを発現するSCLC細胞株H69について試験した。H69はインビトロで培養し、エトポシドで処理して細胞死を誘導した。癌細胞の生存能の消失は、細胞がDNA結合色素7-AADと結合したことから、細胞毒性薬処理の24時間後に明らかとなった(図12A)。hTERT特異的モノクローナル抗体(mAb)であるAPOTEL(商標)の死滅H69細胞に対する結合は、細胞毒性薬処理の24時間、48時間、および72時間後に認められたが、特異的なAPOTEL(商標)結合は処理の48時間後に有意に増加した(図1B)。
【0158】
次に、進展期のSCLCを有する73歳男性患者、GPの末梢血におけるAPOTEL(商標)の結合について試験した。それまで癌の治療を受けたことのないGPに、AUC5のカルボプラチン(1日目)およびエトポシド120 mg/m2(1、2、および3日目)を用いて細胞毒性化学療法を施行した。化学療法前(0時間)、ならびに化学療法開始の24時間、48時間、および72時間後に、患者からヘパリン処理末梢血試料を採取した。GPの血液が循環腫瘍細胞(CTC)を含むことを実証するため、この血液を細胞毒性薬治療の前および後に、正常健常ボランティアの末梢血中には存在しないBerEP4発現細胞に関して濃縮した(図13、上段パネル)。細胞毒性化学療法の48時間後に、APOTEL(商標)と明白にかつ特異的に結合する死滅(7-AAD+)CTCの数が大幅に増加した(図13、中段および下段パネル)。さらに、細胞毒性化学療法の前および後にGPから全血試料を採取したが、これは、7-AADを用いて生存度について解析するおよび7-AAD+細胞におけるhTERT発現を解析する前に赤血球を溶解させる以外はさらなる操作に供さなかった。GPの血中の7-AAD+細胞の最大増加は、細胞毒性化学療法を開始してから48時間後に認められ、この7-AAD+細胞は最も高いAPOTEL(商標)結合を有した(図14)。併せ考えると、SCLC細胞のインビトロ培養によって実証されたのと同様に、これらの結果から、細胞毒性化学療法が循環SCLC細胞の死滅を誘導するばかりでなく、また死滅腫瘍細胞におけるhTERT発現も増強することが示される(図15および16)。
【0159】
研究所のこの知見は、化学療法に対する全体的な腫瘍反応の正式な放射線学的評価とまだ関連づけられていないものの、細胞毒性化学療法を行う前はGPは明白かつ有痛性の胸骨腫瘤を有したが、細胞毒性化学療法を施行して2週間以内に腫瘤の痛みは顕著に軽減し、大きさは著しく縮小した。
【0160】
これらの結果から、APOTEL(商標)は細胞毒性薬投与の結果として死滅した癌細胞を同定し、よってAPOTEL(商標)は癌患者における早期の化学療法反応を予測する上で有用であることが示される。
【0161】
考察
APOTEL(商標)試験は、単独での使用に加えて、CellSearch(登録商標)(Veridex、米国、ニュージャージー州、ウォレン)と称される循環腫瘍細胞(CTC)を計数する免疫磁気ビーズに基づく方法である、循環腫瘍細胞(CTC)を検出するための唯一FDAに認可されている技術と有効に統合することができる。このシステムは、最初にBerEP4特異的抗体コート磁気ビーズによって血液から分離された上皮細胞を計数するように設計されている。CTCは、二重基準DNA特異的色素4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ならびに白血球(CD45-アロフィコシアニン)および上皮細胞(サイトケラチン8-、18-、および19-フィコエリトリン)に特異的なmAbで蛍光標識し、CellSpotter Analyzer(登録商標)(Veridex)を用いて解析した後に、単離された細胞の中から同定される。この技術は、正常個体ならびに悪性および非悪性疾患を有する個体の大規模な調査によって示されるように、CTCの特異的検出を促進する。健常であるまたは非悪性疾患を有する個体344名のうち1名(0.3%)が、≧2 CTC/7.5 mL血液を有した。転移癌患者964名に由来する2.183の血液試料では、CTCは0〜23,618 CTC/7.5 mLの範囲であり(平均、60±693 CTC/7.5 mL)、試料の36%(2,183のうち781)が≧2 CTCを有した。≧2 CTCの検出は以下の割合で起こった:前立腺癌の57%(188のうち107)、乳癌の37%(1,316のうち489)、卵巣癌の37%(53のうち20)、結腸直腸癌の30%(333のうち99)、肺癌の20%(168のうち34)、およびその他の癌の26%(125のうち32)(Allard et al. Clin Cancer Res 10:6897-6904, 2004)。
【0162】
前立腺癌患者の血液の試験において示されたように、BerEP4濃縮の最初の段階の後、CellSearch(登録商標)技術により細胞の検出が可能になる。ここで、無傷のCTCはほとんどなく、顕微鏡観察により大部分が損傷細胞または細胞断片として見えた。フローサイトメトリーによると、これらのCTC事象はDAPIにより様々に染色され、アポトーシス誘導性カスパーゼ切断サイトケラチン-18を高頻度で発現していた(Larson et al. Cytometry Part A 62A, 46-53, 2004)。
【0163】
転移性乳癌患者におけるCTCの研究において、正常対照対象145名のうち>2 CTC/7.5 mL血液を有するものはいなかったのに対し、癌患者177名においては患者の61%で>2 CTC/7.5 mL血液が認められた。それでもなお、5 CTC/7.5 mL血液というカットオフを選択して、予後不良患者と予後良好患者とに識別された。この研究の結果から、治療前のCTC数が、転移性乳癌患者における無進行生存および全生存の独立した予測因子となることが示された(Cristofanilli et al. New Engl J Med 351:781-791, 2004)。
【0164】
一次化学療法を受けている転移性乳癌患者において見出されるCTCの重要性を解析した、この研究のさらなる報告が公表された。これらの患者では、一次化学療法の開始前に末梢血7.5 mL中に≧5 CTCが存在することが、短期の無進行生存(PFS)および全生存(OS)と関連していた。この時点の中央値OSは、<5 CTCを有する患者では>18カ月であるのに対し、≧5 CTCを有する患者では14.2か月であった。さらに、中央値OSの統計的に最も大きく異なる相違は、化学療法を受けており、かつホルモン受容体およびHER2/neuに関して陰性である、内臓疾患を有する患者のサブセット(22%)で認められた。治療後約1カ月の最初の経過観察採血の時点では、中央値PFSは<5 CTCを有する患者で9.5カ月であるのに対し、≧5 CTCを有する患者では2.1か月であり(P=0.0057)、中央値OSは<5 CTCを有する患者で18カ月超であるのに対し、≧5 CTCを有する患者では11.1か月であった(P=0.0012)。治療後約9週間における最初の経過観察画像診断診察の時点では、中央値PFSは<5 CTCを有する患者で8.9カ月であるのに対し、≧5 CTCを有する患者では1.8か月であり(P=0.0001)、中央値OSは<5 CTCを有する患者で18カ月であるのに対し、≧5 CTCを有する患者では11.1か月であった(P=0.0001)。これらのデータから、治療後3〜4週間におけるCTCの検出により治療有効性が予測され、これが治療後8〜10週間における医学的画像診断により判定されることが示唆された(Cristofanilli et al. J Clin Oncol. 23:1420-1430, 2005)。
【0165】
しかしながら、細胞毒性化学療法を開始してから48時間後にAPOTEL(商標)により死滅CTCが検出されるため、APOTEL(商標)は、治療後3〜4週間のCTC数または治療後8〜10週間における医学的画像診断の結果のような他の方法よりもはるかに迅速な、有効でかつ生存を延長する化学療法反応の指標となり得る。
【0166】
実施例3
材料および方法
材料
細胞培養液、RPMI 1640、DMEM、およびトリプシンEDTAは、JRH Biosciences Inc(米国、カンザス州、レネックサ)から入手した。スタウロスポリンおよび臭化エチジウムは、Sigma-Aldrich Co.(米国、ミズーリ州、セントルイス)から入手した。TrizolおよびSuperscript IIはInvitrogen(米国、カリフォルニア州、カールズバッド)から購入し、Amplitaq GoldはApplied Biosystems(米国、カリフォルニア州、フォスターシティー)から購入した。プライマーはすべて、Geneworks(サウスオーストラリア州、アデレード)で作製された。
【0167】
細胞株および培養
Jurkat細胞(ATCC #TIB-152)は、5%ウシ胎仔血清(FCS)を添加したRPMI 1640で維持した。U2OS細胞(ATCC #HTB-96)は5% FCSを添加したDMEMで維持し、48〜72時間ごとにトリプシンEDTAで剥離して継代した。Jurkat細胞はテロメラーゼを発現し、そのため内在性RNA成分hTRを有するが、U2OS細胞はテロメラーゼおよびhTRを欠いている。アポトーシスは、0.5μMスタウロスポリンを培養液に添加し、24時間、48時間、または72時間置くことにより誘導した。
【0168】
RNA抽出および逆転写
細胞を回収しPBSで洗浄してから、製造業者の指示書に従ってTrizolにより5x106個細胞のRNA抽出を行った。RNAをDEPC水10 ulに再懸濁して、濃度を測定した。RNA 3μgを、製造業者の指示書に従ってSuperscript IIおよびオリゴdTを用いて逆転写した。
【0169】
hTR PCR
hTRに特異的なプライマーを用いてPCRを行った。2セットのプライマーを用いて、111 bp(Chen XQ et al. Clin Cancer Res 6:3823-3826, 2000)および153 bp(Bodnar AG et al. Exp Cell Res 228:58-64, 1996)の大きさのPCR産物を作製した:
hTR fwd

(配列番号:1)
hTR rev

(Chen et al.、前記)(配列番号:2)
hTR fwd

(Bodnar et al.、前記)(配列番号:3)およびChenリバースプライマー。
【0170】
対照セットのPCRプライマーを用いて、ハウスキーピング遺伝子GAPDHのmRNAを増幅した:
GAPDH fwd

(配列番号:4)
GAPDH rev

(308 bp PCR産物)(配列番号:5)
【0171】
cDNA 1μlを、1xPCR緩衝液、MgCl2 10 nmolおよびdNTP 5 nmol、各プライマー50 pmol、ならびにAmplitaq gold 0.625 Uを含む25μL反応でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供した。PCR増幅の反応条件は以下の通りであった:95℃で7分間の最初の変性、その後の95℃で30秒間、55℃で30秒間、および72℃で1分間の30サイクル、72℃で5分間の最終的な伸長。PCR産物を1%アガロースで電気泳動し、臭化エチジウム染色により可視化した。PCRの陰性対照はプライマーを添加した水であった。
【0172】
結果
GAPDHのRT-PCR増幅は、アポトーシス誘導の72時間後まで両細胞株で検出可能なmRNAを示す。トリパンブルー染色による生存度解析から、U2OS細胞の36%、95%、および100%がそれぞれ24時間、48時間、および72時間の時点で死滅し、Jurkat細胞の40%、85%、および100%がそれぞれ24時間、48時間、および72時間の時点で死滅していたことが示された。hTRのRNAはhTR陰性U2OS細胞では検出されなかったが、hTR陽性Jurkat細胞ではアポトーシス誘導の24時間、48時間、および72時間後に検出された。
【0173】
考察
これらのデータより、インビトロの死細胞から、GAPDHおよびhTRのRNAを含め、RNAをPCR増幅できることが示される。mRNAを含むRNAが、アポトーシスの過程で生じる、ヘテロ異所性RNP由来構造(Heterogenous Ectopic RNP-Derived Structure;HERDS)と称される新たな細胞内線維顆粒構造内に隔離されることを示す証拠が存在する。HERDSは細胞質に押し出され、アポトーシス突起(bleb)の一部として細胞表面に向かって移動し、アポトーシス突起は最終的にアポトーシス小体として放出される。HERDSの形成は、熱ショックおよびその他の物理的ストレス、栄養欠乏、ならびにDNA損傷剤の使用などの過程において起こり得る転写抑止の可逆的マーカーであることが示されたが、核小体タンパク質がHERDS中に同定される場合には、HERDSの形成およびアポトーシスへの拘束は不可逆的となる(Biggiogera et al. Biol Cell 96:603-615, 2004)。今日まで、HERDS内でのLa抗原の標識の報告は存在していない。しかしながら、LaはhTRと結合し得るため、死細胞からLaを免疫アフィニティー単離することは、早期癌患者の末梢血中を循環している腫瘍細胞を含み得る生体液中など、特に腫瘍細胞数が制限される場合に、hTRのPCR増幅を促進するはずである。QZyme(商標)技術(Clontech)は、PCRに基づく定量的アッセイ系の一例であり、生物試料の複雑度によって影響を受けず、また最適化の必要がないために、免疫アフィニティー法によって単離されたLa結合hTRに有効に適用できると考えられる。
【0174】
材料および方法
細胞透過処理
Clonetics(登録商標)馴化初代細胞およびレチノイン酸含有正常ヒト気管支上皮(NHBE)は、Combrex Corporation(米国、ニュージャージー州)から入手し、市販の培地を用いた培養で維持した。癌細胞株はATCCから入手し、推奨される培地で培養した。コンフルエントの時点でトリプシン-EDTA溶液を用いて細胞を剥離し、PBSで洗浄し、5x106個細胞/mLを2%パラホルムアルデヒドと共に室温で10分間インキュベートし、次いで-20℃の純メタノールで1:10希釈することにより透過処理した。
【0175】
細胞毒性処理
細胞死は、シスプラチンを20μg/mL濃度で培養液に添加し、48時間置くことによって誘導した。
【0176】
フローサイトメトリー
細胞を回収してPBSで洗浄し、50μg/mLのAPOTEL(商標)または特異性に関連のない適合アイソタイプ対照mAbと共に室温で30分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、2μg/mLの抗ラットIgG Alexa488結合抗体と共に室温で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、2μg/mL 7-AADと共に室温で10分間インキュベートし、次いでB-D FACScan装置を用いてフローサイトメトリーにより解析した。
【0177】
結果
初代および悪性気管支上皮細胞におけるテロメラーゼ発現は類似していた(図18AおよびB)。シスプラチン処理後には、悪性気管支上皮細胞株A549のhTERT特異的mAb結合の蛍光細胞数測定解析により、有意により多くのhTERTが検出された(図18C)。シスプラチン処理した気管支癌細胞におけるhTERT発現の明白な増加は、アポトーシスに特有である細胞内再構成中のタンパク質合成の増加および/もしくは別の細胞内区画からのタンパク質放出、ならびに/またはhTERT特異的mAbのより高い結合を支持する抗hTERT mAbエピトープの曝露に起因する可能性がある。この結果は、インビボでのヒトにおけるhTERT特異的mAb結合の挙動を予測すると考えられることから、臨床的に関連性がある。したがって、細胞毒性薬処理のために損傷し漏出性となった初代細胞は、損傷して漏出性となった癌細胞とは異なり、多量の抗テロメラーゼ抗体と結合することはなく、癌細胞が抗癌治療の真の標的となる。
【0178】
これらのインビトロ結果から、画像化および治療目的のためにインビボで、放射性核種などの搭載物を保有するhTERT特異的mAbを死滅癌細胞に対して標的化する可能性が示される。
【0179】
当業者は、本明細書に記載した本発明が具体的に記載した以外の変更および修飾を受け得ることを理解すると考えられる。本発明はそのような変更および修飾のすべてを含むものと理解されるべきである。本発明はまた、本明細書に引用するまたは示す段階、特徴、組成物、および化合物のすべてを個別にまたはまとめて含み、ならびにそのような段階または特徴の任意の2つまたはそれ以上の様々な組み合わせを含む。
【0180】
参考文献:


【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】テロメラーゼ相互作用分子が加えられ得る、インビトロおよびインビボの診断および治療的使用の略図である。A. テロメラーゼリボ核タンパク質(RNP)に対するLaタンパク質の結合により、La相互作用分子を間接的方法において用いて、触媒成分(hTERT)と共に内在性RNA(hTR)を含むテロメラーゼRNPの成分を同定することができる。テロメラーゼ相互作用分子自体を直接的方法において用いて、hTRおよびhTERTを検出することも可能である。B. 自発的なまたは抗癌治療によって誘導される癌細胞死については、テロメラーゼ相互作用分子を特異的に用いて、癌の存在を診断するまたは抗癌治療に対する反応を予測することができる。C. 一次化学療法後、抗テロメラーゼ試薬は、生存癌細胞(薄灰色)に近接して位置する死滅癌細胞(濃灰色)の検出を介して、インビボ診断試薬として役立ち得る。同様に、テロメラーゼ相互作用分子は、残存する生存癌細胞(赤色)にバイスタンダー殺傷を送達する非交差耐性抗癌治療(紫色)を備えている場合に、インビボ治療試薬として有用であり得る。
【図2】インビトロにおける様々な段階を経るアポトーシスの進行の略図である。アポトーシス刺激の後、アポトーシス細胞は収縮し、アポトーシス小体として知られる膜結合小胞に断片化し、アポトーシス小体は徐々に漏出性となるかまたは時間とともに二次的に壊死性となる。最終的に、アポトーシス小体は崩壊し、オリゴヌクレオソーム、ひいては遊離DNAとなる。
【図3】アポトーシス性初代T細胞と比較した、悪性Jurkat T細胞のアポトーシス後のLa/SS-B発現の上方制御のグラフ表示である。フィコール精製した末梢血単核細胞(PBMC)を、10%ウシ胎仔血清を添加したRPMI-1640中で4日間培養し、培養の最後の24時間は1μMスタウロスポリンで処理した。同様に、PBMCをT細胞マイトジェンコンカナバリンで活性化し、次いで1μMスタウロスポリンを24時間にわたり用いてアポトーシスを誘導した。Jurkat細胞(Jurkat)は、0.5μMスタウロスポリンによる24時間の処理によりアポトーシスの状態にした。4領域カーソルは、アイソタイプ対照Sal5によるが<3%となるように設定されている。
【図4】処理の24時間後にアポトーシス細胞においてTRF2およびLaの発現増加をもたらす、および処理の48時間にアポトーシス細胞においてhTERTの発現増加をもたらす、悪性ヒト細胞の細胞毒性処理のグラフ表示である。A. 細胞毒性薬による24時間処理後のJurkat細胞。すべての細胞毒性薬による処理の24時間後に、PIおよびPI細胞においてLa染色が認められたたのに対し(山形)、hTERTの染色は認められなかった。B. 細胞毒性薬による48時間処理後のJurkat細胞。すべての細胞毒性薬による処理の48時間後に、PIおよびPI細胞においてLa染色が認められたのに対し(山形)、エトポシド、ビンクリスチン、およびシスプラチンによる48時間処理によってのみ、PI細胞においてのみhTERTの染色増加が生じた(矢印)。C. 細胞毒性薬による24時間処理後のRaji細胞。すべての細胞毒性薬による処理の24時間後に、PIおよびPI細胞においてLa染色が認められたのに対し(山形)、ビンクリスチンによる24時間処理後にhTERTのわずかな染色増加が認められた(矢印)。D. 細胞毒性薬による24時間処理後のJurkat細胞。すべての細胞毒性薬による処理後に、アポトーシス細胞においてLa(3B9-FITC)およびTRF2染色が認められた。E. 細胞毒性薬による48時間処理後のJurkat細胞。すべての細胞毒性薬による処理の48時間後に、アポトーシス細胞におけるLa(3B9-FITC)およびTRF2の染色がより明白となった。F. 細胞毒性薬による48時間処理後のRaji細胞。すべての細胞毒性薬による処理の48時間後に、アポトーシス細胞においてLa染色が認められたものの(山形)、ビンクリスチンおよびシスプラチンで処理した細胞のみがTRF2染色の増加を示した。G. 細胞毒性薬による48時間処理後のHeLa細胞。スタウロスポリン、エトポシド、およびビンクリスチンはアポトーシスを誘導し、hTERTの染色およびTRF2のわずかな染色(矢印)と共にLa染色(山形)を誘導した。H. 細胞毒性薬による48時間処理後のU2OS細胞。スタウロスポリンのみがアポトーシスおよびLa染色(山形)を誘導し、hTERTにもTRF2にも対応する染色は認められなかった。いずれの場合にも、パネルの各列の上に染色を表示し、パネルの各行の左側に使用した細胞毒性を表示する。また、PIのみの対照、ならびにhTERT染色(精製ラットIgGまたは抗ラット二次抗体のみ)およびTRF2染色(精製マウスIgGまたは抗マウス二次抗体のみ)の陰性対照も表示する。
【図5】PMBCのコンカナバリンA(conA) 10μg/mLとの72時間の培養のグラフ表示である。密度勾配遠心分離により生細胞を得て、次いで1μMスタウロスポリンを24時間にわたり用いてアポトーシスを誘導した。Jurkat細胞もまた、1μMスタウロスポリンで24時間処理した。ドットプロットは、7-AADおよびhTERTの染色を示す。陰性対照は、二次抗体のみによる染色である。
【図6】未処理(対照)およびエトポシド処理Jurkat細胞における経時的なテロメラーゼ検出のグラフ表示である。細胞をエトポシド200μg/mLの非存在下(対照)または存在下(処理)で、24時間(白バー)、48時間(薄灰色バー)、72時間(濃灰色バー)、および96時間(黒バー)培養した。特定の時点で回収した細胞を、PBS中(非固定化)または2%パラホルムアルデヒド溶液中(固定化)、5 x 106個細胞/mLで室温にて10分間インキュベートした。固定化細胞は次いで、-20℃メタノールで1:10希釈して5分間置いた。次に全細胞を図7に記載するように50μg/mL濃度で二重染色し、FL2チャネル(PE)における死(7-AAD+)細胞の平均蛍光強度を異なる条件に関して(n=2)プロットした。平均値の標準誤差をプロットしているが、小さいためにグラフ上では見えない。
【図7】正常初代血液細胞の悪性対応物におけるテロメラーゼ検出のグラフ表示である。一晩培養した末梢血単核細胞(PBMC)は、プラスチック組織培養皿に接着するか(主に単球細胞として)または懸濁状態のままであった(主にTリンパ球として)ために、2つの主要な亜群に分離することができた。単球細胞の悪性対応物はU937であり、Tリンパ球の悪性対応物はJurkat細胞である。hTERTタンパク質の発現を、形質転換細胞と初代細胞とで比較した。アポトーシスを誘導するため、悪性細胞(U937またはJurkat細胞)および初代細胞(接着単球血液細胞または懸濁リンパ球血液細胞)を5% FCSを添加したRPMI-1640中、スタウロスポリン(STS)の存在下または非存在下において24時間(白バー)および48時間(灰色バー)インキュベートした。未処理(対照)細胞は、図6の説明文に記載した通りに透過処理した。透過処理した対照細胞および未加工のSTS処理細胞を、50μg/mLの抗hTERT-ビオチン中で室温で30分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、次いで1:100希釈のストレプトアビジン-PEと共に室温で30分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、2μg/mL 7-AAD溶液中で10分間インキュベートし、その後フローサイトメトリーにより解析した。hTERT発現の相違倍率を示すが、これはそれぞれ初代懸濁リンパ球細胞および接着単球細胞の平均蛍光強度(MFI)に対するJurkatおよびU937細胞のMFIの比から導いたものである。上段パネルに関しては、測定は2つ組で行い、SEMを示している。下段パネルに関しては、2回の独立した実験の代表的なものとして1回の測定値を示した。
【図8】抗上皮マーカーモノクローナル抗体BerEP4-FITCを用いたH69細胞の染色の略図である。H69細胞(1 x 106個細胞/mL)を5% FCSを含むRPMI-1640中で、特定濃度のエトポシド(0〜400μg/mL)の非存在下または存在下で培養した。インキュベーションの48時間後に細胞を回収し、(A) 5μg/mL BerEP4-FITCまたは(B) 5μg/mLマウスIgG1aκ-FITCアイソタイプと共に室温で15分間インキュベートした。細胞を洗浄し、ペレットをPBS中の0.5μg/mL PI溶液に再懸濁して、フローサイトメトリーにより解析した。
【図9】エトポシド処理したH69細胞におけるhTERTタンパク質の検出のグラフ表示である。H69細胞を200μg/mLエトポシドの存在下で48時間培養した。細胞を回収して洗浄し、(A) 50μg/mLラットIgG2aκ-ビオチン、または(B) 50μg/mL、(C) 25μg/mL、(D) 12.5μg/mL、もしくは(E) 2.5μg/mLのラット抗ヒトテロメラーゼビオチン結合モノクローナル抗体と共に室温で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、1:100希釈のストレプトアビジン-PEと共に室温で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、2μg/mL 7-AADと共に室温で10分間インキュベートし、次いでフローサイトメトリーにより解析した。
【図10】エトポシド処理したH69細胞の3カラー染色のグラフ表示である。400μg/mLエトポシドの存在下で48時間培養したH69細胞を回収し、(A、C)5μg/mLマウスIgG1aκ-FITCおよび50μg/mLラットIgG2aκ-ビオチン、または(B、D)5μg/mL BerEP4-FITCおよび50μg/mL抗テロメラーゼ-ビオチンの存在下でインキュベートした。細胞を洗浄し、1:100希釈のストレプトアビジン-PE中で室温にて30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、2μg/mL 7-AADと共に室温で10分間インキュベートした。細胞は直接解析するか(A、B)、または末梢血単核細胞中で最初に1:50希釈し(C、D)、次いでフローサイトメトリーにより解析した。
【図11】より感度の高い技法を用いた、エトポシド処理H69細胞の3カラー染色のグラフ表示である。エトポシド処理したH69細胞を、アイソタイプ対照としての10μg/mLマウスIgG1aκ-PEおよび50μg/mLラットIgG2aκ-Alexa350、または10μg/mL BerEP4-PEおよび50μg/mL抗hTERT-Alexa350と共に室温で15分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、1 mg/mL TOPRO-3 DNA色素と共に室温で10分カンインキュベートしてから、フローサイトメトリー(LSR-IIシステム)を用いて解析した。
【図12】細胞毒性薬処理によってアポトーシス状態にしたH69小細胞肺癌細胞株(SCLC)の細胞に対するインビトロでのAPOTEL(商標)特異的結合の表示である。エトポシド処理したH69細胞を、細胞毒性処理の誘導から24時間、48時間、および72時間後にフローサイトメトリーにより解析した。(A) 前方散乱(FCS) 対 側方散乱(SSC)(左側の列のパネル)、7-AAD蛍光 対 PE蛍光(中央の列のパネル)、および7-AADゲート設定事象のPE蛍光のヒストグラム重ねプロット(右側の列のパネル)を示す。7-AAD 対 PE密度プロットにおける4領域は、細胞が生存している箇所(7-AAD陰性)およびアイソタイプ対照に関して≦3%の細胞が陽性である箇所を示すように描画した。ヒストグラムは、アイソタイプ対照(白)およびAPOTEL(商標)(黒)との結合のPE蛍光度数分布を示す。(B) 棒グラフは特異的なAPOTEL(商標)結合を示し、これは、APOTEL(商標)とアイソタイプ対照の結合の平均蛍光強度(MFI)の差として計算された正味のMFI±平均値の標準誤差(SEM、n=3)として示している。*、すべての対のチューキー比較を用いた一元配置分散分析(ANOVA)に関してp<0.001。
【図13】小細胞肺癌(SCLC)患者の血液はEpCAM発現腫瘍細胞を含み、患者を細胞毒性化学療法で治療した後には、循環腫瘍細胞は生存能を失い、治療の48時間後にAPOTEL(商標)と結合した。正常健常ボランティア(正常対照;NC)または進展期SCLC患者(GP)の末梢血を、上皮細胞接着分子(EpCAM)の発現に関して濃縮し、フローサイトメトリーにより解析した。すべての試料についてFSC 対 SSC密度プロットを作成した(上段パネル)。領域(R1)は、特に赤血球に関連した事象を排除するように、対照血液の解析に基づいて描画した。R1領域において患者(GP)試料にゲートを設定し、7-AAD 対 PE蛍光の密度プロットとして表示する(中段パネル)。第2領域(R2)は、死(7-AAD+)細胞を選択するように作成した。R1およびR2ゲート設定集団のPE蛍光を、APOTEL(商標)(黒)または適合アイソタイプ対照mAb(白)で染色した試料のヒストグラムオーバーレイとして表示する(下段パネル)。注記:(i) ビーズ分離は、24時間の時点では失敗したと考えられた。(ii) 48時間および72時間の時点の対照および試験試料については、事象の同一および高度の蛍光亜集団が観察されたが、これは死細胞または死細胞断片と非特異的に結合したビーズの自己蛍光によるものと考えられた。このような試料のR2領域は、この亜集団を排除するように調節した。
【図14】SCLC患者を細胞毒性化学療法で治療した後、治療の48時間後に患者の血液中に死細胞のピーク数が認められたが、この時点ではAPOTEL(商標)結合もまた最大であったことを示すグラフ表示である。正常健常ボランティア(正常対照;NC)または進展期SCLC患者(GP)の末梢血試料を赤血球溶解に供して、フローサイトメトリーにより解析した。すべての試料についてFSC 対 SSC密度プロットを作成した(上段パネル)。領域(R1)は、特に赤血球に関連した事象を排除するように、対照血液の解析に基づいて描画した。R1領域において患者(GP)試料にゲートを設定し、7-AAD 対 FITC蛍光の密度プロットとして表示する(中段パネル)。第2領域(R2)は、死(7-AAD+)細胞を選択するように作成した。R1およびR2ゲート設定集団のFITC蛍光を、APOTEL(商標)(黒)または適合アイソタイプ対照mAb(白)で染色した試料のヒストグラムオーバーレイとして表示する(下段パネル)。注記:正常対照の血液中に7-AAD+事象が出現することから明らかなように、赤血球溶解段階は0時間時点で記録される死細胞数の増加に寄与した。
【図15】細胞毒性化学療法による治療の前および後の、SCLC患者(GP)由来のBerEP4濃縮血液試料および全血試料におけるAPOTEL(商標)結合の比較のグラフ表示である。正常対照(NC)および患者(GP)による試料の7-AAD 対 APOTEL(商標)のR1およびR2ゲート設定密度プロットを示す。これらのプロットにおける4領域は、細胞が生存している箇所(7-AAD陰性)およびアイソタイプ対照に関して≦3%の細胞が陽性である箇所を示すように描画した。
【図16】末梢血細胞に対するAPOTEL(商標)結合が、細胞毒性化学療法によるSCLC患者の治療48時間後にピークに達することを示すグラフ表示である。棒グラフは特異的なAPOTEL(商標)結合を示し、これは、図2および3に記載したようにR1およびR2にゲートを設定した亜集団に対するAPOTEL(商標)とアイソタイプ対照の結合の平均蛍光強度(MFI)の差として計算された正味のMFIとして示している。
【図17】hTR陽性Jurkat細胞およびhTR陰性U2OS細胞に由来するGAPDHおよびhTR mRNAのRT-PCRの画像である。M、分子量マーカー;レーン1、8、15:陰性対照;レーン2、9、16:24時間の時点におけるアポトーシス性U2OS細胞のcDNA;レーン3、10、17:48時間の時点におけるアポトーシス性U2OS細胞のcDNA;レーン4、11、18:72時間の時点におけるアポトーシス性U2OS細胞のcDNA;レーン5、12、19:24時間の時点におけるアポトーシス性Jurkat細胞のcDNA;レーン6、13、20:48時間の時点におけるアポトーシス性Jurkat細胞のcDNA;レーン7、14、21:72時間の時点におけるアポトーシス性Jurkat細胞のcDNA。
【図18】テロメラーゼ発現は、透過処理した初代および悪性気管支上皮細胞において同等であるが、細胞毒性薬処理後には気管支癌細胞において有意に増加する。(A) 透過処理したおよびシスプラチン処理した初代および悪性気管支上皮細胞の7-AAD蛍光(y軸) 対 Alexa488蛍光(x軸)を示す密度プロット。4領域は、細胞が生存している箇所(7-AAD陰性)およびアイソタイプ対照による染色が<3%となる箇所に設定している。(B) ヒストグラムは、7-AADゲート設定事象におけるAlexa488蛍光の度数分布を示す。(C) 棒グラフは、APOTEL(商標)結合とアイソタイプ対照の結合の平均蛍光強度(MFI)の差として計算された正味のMFI±SEM(n=2)としてのhTERT特異的結合を示す。*、シスプラチン処理した初代気管支上皮細胞における結合と比較した場合に、A549細胞ではシスプラチン処理後に有意に高いhTERT特異的結合が認められた(対比較のチューキーの事後検定を用いて、p<0.001)。細胞透過処理後には、hTERT特異的結合における有意な差は認められなかった。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象または該対象由来の生物試料中の非生存細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含む、対象における非生存新生物細胞を検出する方法であって、該テロメラーゼを発現している非生存細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより非生存新生物細胞の存在が示される方法。
【請求項2】
対象または該対象由来の生物試料中の非生存細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含む、対象における新生物状態を評価および/またはモニタリングする方法であって、該テロメラーゼを発現している非生存細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより非生存新生物細胞の存在が示される方法。
【請求項3】
対象または該対象由来の生物試料中の非生存細胞によるテロメラーゼタンパク質および/または遺伝子の発現量をスクリーニングする段階を含む、対象における新生物治療用処置計画の有効性を評価および/またはモニタリングする方法であって、該テロメラーゼを発現している非生存細胞の量が正常な量と比較して増加していることにより新生物細胞死の誘導が示される方法。
【請求項4】
上記非生存細胞が死細胞である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
上記細胞死が抗新生物細胞処置計画によって誘導される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
検出の対象であるテロメラーゼ分子が
(i) テロメラーゼ複合体;
(ii) hTERT;および/もしくは
(iii) hTR
またはそれらの断片、変異体、もしくは変種より選択される、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
上記テロメラーゼ分子が
(i) hTERTタンパク質;
(ii) hTERT mRNA;および/もしくは
(iii) hTR RNA
またはそれらの断片、変異体、もしくは変種より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
上記テロメラーゼ分子が、抗hTERTモノクローナル抗体を用いて検出されるhTERTタンパク質である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
上記新生物細胞が、中枢神経系腫瘍、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、小児腫瘍、扁平細胞癌などの頭頸部癌、乳癌および前立腺癌、肺癌、腎細胞腺癌などの腎臓癌、食道胃癌、肝細胞癌、腺癌および島細胞腫瘍などの膵胆管新形成、結腸直腸癌、子宮頸癌、肛門癌、子宮癌もしくはその他の生殖管の癌、尿管もしくは膀胱などの尿路癌、精巣胚細胞腫瘍もしくは卵巣胚細胞腫瘍などの胚細胞腫瘍、卵巣上皮癌などの卵巣癌、原発不明の癌腫、カポジ肉腫などのヒト免疫不全関連悪性腫瘍、リンパ腫、白血病、悪性黒色腫、肉腫、甲状腺の腫瘍などの内分泌腫瘍、中皮腫またはその他の胸膜もしくは腹膜の腫瘍、神経内分泌腫瘍、またはカルチノイド腫瘍に由来する、請求項1または請求項4〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
新生物状態または新生物が、中枢神経系腫瘍、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、小児腫瘍、扁平細胞癌などの頭頸部癌、乳癌および前立腺癌、肺癌、腎細胞腺癌などの腎臓癌、食道胃癌、肝細胞癌、腺癌および島細胞腫瘍などの膵胆管新形成、結腸直腸癌、子宮頸癌、肛門癌、子宮癌もしくはその他の生殖管の癌、尿管もしくは膀胱などの尿路癌、精巣胚細胞腫瘍もしくは卵巣胚細胞腫瘍などの胚細胞腫瘍、卵巣上皮癌などの卵巣癌、原発不明の癌腫、カポジ肉腫などのヒト免疫不全関連悪性腫瘍、リンパ腫、白血病、悪性黒色腫、肉腫、甲状腺の腫瘍などの内分泌腫瘍、中皮腫またはその他の胸膜もしくは腹膜の腫瘍、神経内分泌腫瘍、またはカルチノイド腫瘍である、請求項2、3、または4〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
対象に対してインビボで行われる、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
対象由来の生物試料に対してインビトロで行われる、請求項9または10記載の方法。
【請求項13】
上記生物試料が、血液、尿、脳脊髄液、胸膜または腹膜の滲出液および腹水、中咽頭、肺、胆道系、結腸、または膀胱からの洗液およびブラッシング液、胆汁、膵臓、および乳腺吸引液、ならびに生検試料および外科的切除物の試料である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
テロメラーゼまたはテロメラーゼをコードする核酸分子を検出するための薬剤、および該薬剤による検出を促進するのに有用な試薬を含む、生物試料用の診断キット。
【請求項15】
上記薬剤がhTERTタンパク質に対するモノクローナル抗体である、請求項14記載のキット。
【請求項16】
患者または患者由来の生物試料中の死滅新生物細胞を検出するための定量的または半定量的診断キットの製造における、テロメラーゼに対する相互作用分子の使用。
【請求項17】
上記相互作用分子がhTERTタンパク質に対するモノクローナル抗体である、請求項16記載の使用。
【請求項18】
対象における新生物状態を治療する方法であって、エフェクター機構と連結、結合、またはさもなくば会合する、テロメラーゼまたはその抗原性部分に対する相互作用分子の有効量を、該状態を治療するのに十分な時間および条件の下で該対象に投与する段階を含む方法。
【請求項19】
対象における転移癌を治療する方法であって、エフェクター機構と連結、結合、またはさもなくば会合する、テロメラーゼまたはその抗原性部分に対する相互作用分子の有効量を、該転移癌の成長を阻害する、減少させる、またはさもなくばダウンレギュレーションするのに十分な時間および条件の下で該対象に投与する段階を含む方法。
【請求項20】
上記テロメラーゼが
(i) テロメラーゼ複合体;
(ii) hTERT;および/または
(iii) hTR
より選択される、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
上記テロメラーゼ分子が
(i) hTERTタンパク質;
(ii) hTERT mRNA;および/もしくは
(iii) hTR RNA
またはそれらの断片、変異体、もしくは変種より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
上記テロメラーゼがhTERTタンパク質もしくはmRNAまたはhTR RNAである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
上記相互作用分子が免疫相互作用分子である、請求項20、21、または22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
上記免疫相互作用分子が抗テロメラーゼモノクローナル抗体である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
エフェクター機構が、バイスタンダー殺傷免疫応答を誘導または増強するように作用する可溶性因子であり、該可溶性因子が上記抗体に連結されている、請求項24記載の方法。
【請求項26】
上記可溶性因子が
(i) 走化性ペプチド;
(ii) N-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン;または
(iii) JBT2002
より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
上記エフェクター機構が毒素であり、該毒素が上記抗体に連結されている、請求項24記載の方法。
【請求項28】
上記毒素が
(i) α粒子放射放射性同位体、β粒子放射放射性同位体、もしくはγ粒子放射放射性同位体などの放射性同位体;
(ii) リシン;
(iii) カリチアマイシン(colicheamicin);
(iv) プロドラッグ;または
(v) 触媒抗体
より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
上記α粒子放射放射性同位体が
(i) Tb-149;
(ii) Bi-213;または
(iii) トリウム-229
より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
上記プロドラッグ療法が抗体指向性プロドラッグ変換酵素療法である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
上記新生物状態または癌が、中枢神経系腫瘍、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、小児腫瘍、扁平細胞癌などの頭頸部癌、乳癌および前立腺癌、肺癌、腎細胞腺癌などの腎臓癌、食道胃癌、肝細胞癌、腺癌および島細胞腫瘍などの膵胆管新形成、結腸直腸癌、子宮頸癌、肛門癌、子宮癌もしくはその他の生殖管の癌、尿管もしくは膀胱などの尿路癌、精巣胚細胞腫瘍もしくは卵巣胚細胞腫瘍などの胚細胞腫瘍、卵巣上皮癌などの卵巣癌、原発不明の癌腫、カポジ肉腫などのヒト免疫不全関連悪性腫瘍、リンパ腫、白血病、悪性黒色腫、肉腫、甲状腺の腫瘍などの内分泌腫瘍、中皮腫またはその他の胸膜もしくは腹膜の腫瘍、神経内分泌腫瘍、またはカルチノイド腫瘍である、請求項18〜30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
対象における新生物状態を治療するための医薬の製造における、エフェクター機構に接合している抗テロメラーゼ相互作用分子の使用であって、該エフェクター機構によって該状態が治療される、使用。
【請求項33】
上記テロメラーゼが
(i) テロメラーゼ複合体;
(ii) hTERT;および/または
(iii) hTR
より選択される、請求項32記載の使用。
【請求項34】
上記テロメラーゼ分子が
(i) hTERTタンパク質;
(ii) hTERT mRNA;および/または
(iii) hTR RNA
より選択される、請求項33記載の使用。
【請求項35】
上記テロメラーゼがhTERTタンパク質もしくはmRNAまたはhTR RNAである、請求項33または34記載の使用。
【請求項36】
上記相互作用分子が免疫相互作用分子である、請求項33、34、または35のいずれか一項記載の使用。
【請求項37】
上記免疫相互作用分子が抗テロメラーゼモノクローナル抗体である、請求項36記載の使用。
【請求項38】
上記エフェクター機構が、バイスタンダー殺傷免疫応答を誘導または増強するように作用する可溶性因子であり、該可溶性因子が上記抗体に連結されている、請求項37記載の使用。
【請求項39】
上記可溶性因子が
(i) 走化性ペプチド;
(ii) N-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン;または
(iii) JBT2002
より選択される、請求項38記載の使用。
【請求項40】
上記エフェクター機構が毒素であり、該毒素が上記抗体に連結されている、請求項37記載の使用。
【請求項41】
上記毒素が
(i) α粒子放射放射性同位体、β粒子放射放射性同位体、もしくはγ粒子放射放射性同位体などの放射性同位体;
(ii) リシン;
(iii) カリチアマイシン;
(iv) プロドラッグ;または
(v) 触媒抗体
より選択される、請求項40記載の使用。
【請求項42】
上記α粒子放射放射性同位体が
(i) Tb-149;
(ii) Bi-213;または
(iii) トリウム-229
より選択される、請求項41記載の使用。
【請求項43】
上記プロドラッグ療法が抗体指向性プロドラッグ変換酵素療法である、請求項41記載の使用。
【請求項44】
上記新生物状態または癌が、中枢神経系腫瘍、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、小児腫瘍、扁平細胞癌などの頭頸部癌、乳癌および前立腺癌、肺癌、腎細胞腺癌などの腎臓癌、食道胃癌、肝細胞癌、腺癌および島細胞腫瘍などの膵胆管新形成、結腸直腸癌、子宮頸癌、肛門癌、子宮癌もしくはその他の生殖管の癌、尿管もしくは膀胱などの尿路癌、精巣胚細胞腫瘍もしくは卵巣胚細胞腫瘍などの胚細胞腫瘍、卵巣上皮癌などの卵巣癌、原発不明の癌腫、カポジ肉腫などのヒト免疫不全関連悪性腫瘍、リンパ腫、白血病、悪性黒色腫、肉腫、甲状腺の腫瘍などの内分泌腫瘍、中皮腫またはその他の胸膜もしくは腹膜の腫瘍、神経内分泌腫瘍、またはカルチノイド腫瘍である、請求項32〜43のいずれか一項記載の使用。
【請求項45】
本明細書において定義した調節剤を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤と共に含む、薬学的組成物。
【請求項46】
請求項18〜31のいずれか一項記載の方法において用いる場合の、本明細書において定義した薬剤。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【公表番号】特表2008−537109(P2008−537109A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503321(P2008−503321)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000431
【国際公開番号】WO2006/102716
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(507244851)メドベット サイエンス ピーティーワイ. リミティッド (5)
【Fターム(参考)】