説明

診断試験のキャリブレーションを調整するための方法

本発明は、事前に検量した試薬を用いる機器で実施する医学生物学的診断試験のための事前に規定されたキャリブレーションカーブ(プレキャリブレーションカーブ)又は機器によって測定されたシグナル又は計算された活性のいずれかを調整するための方法であって、以下の工程:(i)試験化合物の事前に決定した濃度又は活性を有する1つ又は2つのキャリブレーション調整物について、標準値と称されるシグナル又は活性値を規定し、標準シグナル又は活性値と機器によって測定したシグナル又はプレキャリブレーションカーブを使用して算出した活性値のいずれかの値との間の差を、前記調整物について測定する工程、測定した差が許容し得る値を有する場合には、(ii)1つ又は双方の調整物についてプレキャリブレーションカーブで測定されたシグナル又は算出された活性の値が、1つの調整物又は2つの調整物の各々について工程(i)で決定した標準シグナル又は活性値と同一のシグナル又は活性値となるように、機器によって測定したシグナル値若しくは機器によって算出された活性の値又はプレキャリブレーションカーブの値を調整する工程、(iii)工程(ii)と同じ調整を、前記事前に検量した試薬を用いてシグナル又は活性が測定される試験サンプルの全てについて適用する工程、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学生物学、とりわけ、止血の分野において、診断試験を実施するための適切な試薬について、事前に規定されたキャリブレーションの調整をするための直接的又は間接的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
止血は、出血を妨げる又は止めることに関わる一連の生理的なメカニズムであると解される。
【0003】
血液の流動性は、凝固因子アクチベーターとインヒビターとの間のバランスによって維持されるため、止血は多くの場合において基準と比較される。
【0004】
このバランスにおける何らかの欠陥は、病理プロセス:インヒビター欠乏によって引き起こされる傾向がある凝血塊の形成による血栓症、又は凝固因子欠乏によって引き起こされる傾向がある出血へと向わせる。
【0005】
凝固活性化因子又は凝固阻害因子の分析及びアッセイは、かくして、各種の臨床的状況における血栓症又は出血の素因又はリスクを診断することを可能にする。
【0006】
これらの試験は、主に、半自動化又は自動化された態様で、試験研究所又は病院において日常的に実施されている。
【0007】
一般的には、実施した試験又は使用した機器に依存して、結果が、機器によって測定したシグナル又は機器によって算出された生物学的活性のいずれかからなる。
【0008】
試験系において実施される大半の生物学的試験について、自動化止血試験を実施する際に、直接的に試験因子のレベル又は活性を算出するためにキャリブレーションが必要とされる。これらのキャリブレーションデータは、一般的には、標的試験物質のよく特徴付けられた活性又は濃度を有するキャリブレーターを使用して得られ、それらに基づいてキャリブレーションカーブを規定して、所定のシグナル強度に対する濃度又は活性を決定することが可能である。
【0009】
しかしながら、異なる区分の系に対して同じ試験を頻繁に実施する可能性がある場合には、機器間の変動が多くの場合において認められる。この変動のために、同じ標準キャリブレーションを常に使用して異なる機器で得られた結果を、同じ試験について、常に直接的な比較ができるわけではない。
【0010】
さらに、多数の試薬が液体の形態にあるため、これらの試薬は、凍結乾燥状態の試薬よりも経時的な現象の影響をより受けやすい可能性がある。そのため、これらの試薬がある時点において機能的な状態であっても、その感度は部分的に低減しているか又は経時的に変化し得る。
【0011】
これによって、同じ試薬を使用しているが、異なる期間に亘って実施した試験に由来する結果を解釈することが困難になる。
【0012】
米国出願第2007/0020765号は、サンプルの凝固時間を標準化するための方法であって、サンプルに適用したのと同じ試験系において標準凝固時間を事前に決定するために、少なくとも2つのキャリブレーターが使用され、それに基づいて、事前に決定した標準時間と使用した試験で同じキャリブレーターについて実際に測定した時間との間でキャリブレーションカーブを規定する、方法を開示している。
【0013】
サンプルについて測定した凝固時間は、規定したキャリブレーションカーブを使用して標準化された凝固時間に変換される。
【0014】
したがって、この方法は、新しいキットを使用して止血試験において凝固時間を測定する際は常に、限定的にキャリブレーションを作成することからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国出願第2007/0020765号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、試験機器及び事前に検量した試薬を調整するための方法であって、経時的に得られた結果の変動及び/又は試験に使用した機器のタイプによる結果の変動を限定又は避けることを可能にする、方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かくして、本発明は、事前に検量した試薬を用いる機器で実施される医学生物学的診断試験のための、機器又は事前に規定したキャリブレーションカーブ(プレキャリブレーションカーブ)によって測定されたシグナル又は算出された活性のいずれかを調整するための方法であって、以下の工程:
(i)試験化合物の事前に決定した濃度又は活性を有する1つ又は2つのキャリブレーション調整物について、標準値と称されるシグナル又は活性値を規定し、標準シグナル又は活性値と機器によって測定したシグナル又はプレキャリブレーションカーブを使用して算出された活性値のいずれかの値との間の差を、前記調整物について測定する工程、
(ii)1つ又は双方の調整物についてプレキャリブレーションカーブで測定されたシグナル又は算出された活性の値が、1つの調整物又は2つの調整物の各々について工程(i)で決定した標準シグナル又は活性値と同一のシグナル又は活性値となるように、機器によって測定したシグナル若しくは機器によって算出した活性の値又はプレキャリブレーションカーブの値を調整する工程、
(iii)工程(ii)と同じ調整を、前記事前に検量した試薬を用いてシグナル又は活性が測定される試験サンプルの全てについて適用する工程、
を含む、方法に関する。
【0018】
好適には、本発明に係る方法は、血液凝固検査に使用される。
【0019】
測定した差異が「許容し得る値」を有するなる用語は、使用する試薬及び機器について、当業者に許容され得ると解される値である、2つの値の間にある差異を示す。
【0020】
この差異は、使用した試験の感度及び測定したシグナルの大きさによって変化し得る。
【0021】
このために、プレキャリブレーションの調整が許容され得ない上限は、使用する試験及び機器のタイプに関連して規定されなければならない。
【0022】
自動試験装置によって得られる結果を分析するのに慣れた当業者は、試験を実施する際に、使用した試薬又は機器のいずれかによる、異常であると解される結果の値を容易に検出することが可能である。
【0023】
かくして、当業者は、使用した試薬又は装置の異常を隠さないような十分に小さいものである、本発明に係る方法の工程(i)による標準シグナル又は活性の値と機器によって測定されるシグナル値又はプレキャリブレーションカーブで算出される活性値との間の差を規定することが可能である。
【0024】
好ましくは、測定される差は20から30%を超えない。
【0025】
1つの好ましい代替的な実施態様によれば、本発明に係る方法は1つの調整物を用いて実施される。
【0026】
本発明の1つの特定の実施態様によれば、本発明に係る方法の工程(i)及び(ii)による、所定の試験の一部として測定されるシグナルの、1つの調整物を用いた調製は、以下のように実施されてよい。
【0027】
−標準値を規定する工程(i)については、以下の手法が適用される。
【0028】
前記調製物に割り当てられる標準シグナル値は、問題となっているもののプレキャリブレーションを決定するための工程の間に決定される結果に基づいて算出される。プレキャリブレーションの決定は、試験物質(試験化合物)の既知のレベルを有する標準物質を複数の機器のパネル上に流すことからなる。前記標準物質の各々を各機器において二回、三回、四回重複して流す。
【0029】
同時に、シグナルの漸増する調整物質も、同じ機器において同時に二回、三回、又は四回重複して流す。
【0030】
次いで、数学的平均値、切断分布平均値(truncated mean)、又は中央値を、各標準物質及び調整物について別々に、得られたシグナル値の全てに対して、機器の外部で算出する。
【0031】
プレキャリブレーション方程式の決定は、各種のペア(シグナルの平均値又は中央値;標準濃度)に対して最小二乗回帰を用いて、機器の外部で算出される。
【0032】
調整物の標準シグナル値は、各々、選択した計算方法によるプレキャリブレーション決定の一部として当該調整物に対して測定した全てのシグナル値の数学的平均値、切断分布平均値、又は中央値に対応する。この調整物について計算した標準シグナル値は、事前に検量したものの特定のバッチについて有効であるにすぎない。
【0033】
したがって、1つ又は複数の調整物の標準シグナル又は活性値(以下の記載を参照のこと)は、かくして、診断試験からは独立して事前に実施されてよい。(1つ又は複数の)調整物の標準シグナル(又は活性)値は、したがって、使用する試薬のバッチ及び調製物(1つ又は複数)を用いる診断試験の使用者に提供されてよい。
【0034】
−調整物及び試験サンプルについて測定した値を調整するための工程(ii)及び(iii)に関しては、以下の手法が適用される。
【0035】
その事前に検量したもののバッチについて、調整物に割り当てた標準シグナル値はSと称される。この調整物が、その事前に検量したもののバッチを用いて二回、三回、又は四回重複して機器に流される際に、Sを決定するために選択した計算方法によって、これらの各種の測定したシグナルの数学的平均値、切断分布平均値、又は中央値に対応するシグナルTが機器によって算出される。SとTとの間の差異が機器によって既知の許容基準に合致する場合は、前記機器は、Tに対するSの比率と等しい調整係数C(C=S/T)を算出する。調整物について機器によって測定されたシグナルTを、S/Tと等しい当該調整係数Cによって乗算すると、調整物のシグナルの調整された値がSと等しい。同様に、アッセイサンプルを同じ機器に流す際には、調整係数Cによって測定値を乗算することによって、得られたシグナルの測定値が調整される。次いで、アッセイする試験物の濃度又は活性が、この調整したシグナル値にプレキャリブレーションを適用することによって算出される。
【0036】
本発明の更なる特定の実施態様によれば、1つの調整物を用いた調整が、本発明に係る方法の工程(i)及び(ii)によって、試験機器によって算出された活性に対して以下のように実施される。
【0037】
−標準値を規定するための工程(i)について
標準活性値は、滴定によって調整物に割り当てられる。この目的のために、各種の系において事前に検量した試薬の1つ又は様々なバッチを用いて、複数の試験が実施される。測定回数は、問題のパラメータによって変化するであろうが、常に3以上である。この滴定は、プレキャリブレーションによる決定とは別のものである。
【0038】
調整物(例えば、賦形剤とともに、対照物/キャリブレータータイプの凍結乾燥血漿に基づく試薬)を、各測定の間に二回、三回、又は四回重複して試験する。プレキャリブレーションで測定したシグナルを読取ることによって、その標準活性を推定する。
【0039】
次いで、数学的平均値、切断分布平均値、又は中央値を、各調整物について各自動装置において事前に検量した試薬の各バッチを用いて得られた活性の全てに対して、機器の外部で算出する。調整物の標準活性値又は滴定量は、採用した計算方法によって、当該滴定の一部として調整物に対して測定した全ての活性値の数学的平均値、切断分布平均値、又は中央値に対応する。標準活性は、事前に検量したものの1つ又は複数のバッチについて有効であり得る。
【0040】
可能である場合には、調整物の滴定は、パラメータの内部標準と相関させる。これによって、問題の系における均一性に加え、国際的な系の一貫性を確実にする。
【0041】
−測定した活性を調整するための工程(ii)及び(iii)について
調整物に割り当てた滴定量はSと称される。この調整物が、対応する事前に検量したものの1つ又は複数のバッチを用いて機器に二回、三回、又は四回重複して流される際に、機器は、測定したシグナルに基づいて、Sを決定するために選択した計算方法によって、当該各種の測定シグナルの数学的平均値、切断分布平均値、又は中央値に対応する活性Tを算出する。SとTとの間の差異が機器によって既知の許容基準に合致する場合には、機器は、Tに対するSの比率と等しい調整係数C(C=S/T)を算出する。このようにして、S/Tと等しい当該調整係数Cによって、調整物について機器によって測定したシグナルTを乗算すると、調整物のシグナルの調整した値がSに等しい。同様に、アッセイするサンプルを同じ機器において流す際には、測定したシグナルを、試薬のプレキャリブレーションの式を用いて活性に変換する。次いで、得られた活性を、前記調整係数Cによって乗算することによって調整する。
【0042】
本発明に係る方法の範囲内で使用される調整物は、以下のものである。
−新しい試薬のバッチを使用する間に、プレキャリブレーションを使用するとともに、試験を実施するために使用する機器に対して、戻ってきた試験結果を調整するための組成物(対照が体系的に相殺される際に対照を再調整することを目的とする)、
−経時的に、例えばその経時変化による試薬の感度の損失を補償するための組成物(上述のように、この点は、特に凍結乾燥試薬よりも経時的に安定ではない液体試薬に適用可能である)。
【0043】
凝固因子又は他の構成成分について調整物の組成は、実施する試験によって規定される。
【0044】
前記調整物は、その濃度又は活性が事前に決定されている、使用する試験において試験する化合物を少なくとも含有する必要がある。
【0045】
血液凝固検査の場合には、調整物は、好ましくは、安定化した凍結乾燥血漿又は安定化した凍結乾燥血漿プールからなる。
【0046】
前記調整物は、精製又は半精製した血漿タンパク質からなってもよく、前記タンパク質は、実施する試験の一部として生じる反応を実施するために必要とされる因子を供給するものであり、さらにその濃度又は活性が事前に決定されている試験化合物(試験因子とも称される)を含む。
【0047】
調整物に使用する、試験因子の濃度(又は活性レベル)は、プレキャリブレーションの補正における潜在的なバックグランドノイズの影響を最小化するように選択されなければならない。
【0048】
この目的のために、調整物の試験化合物濃度又は活性が、シグナル/バックグランドノイズ比が高くなるように規定される。
【0049】
使用する試験のタイプによって、測定したシグナルと調整物の試験化合物の活性又は濃度との間の関係が異なる。このために、試験によって異なるプロフィールを有するカーブが得られる。
【0050】
例えば、Diagnostica Stagoによって市販されているSTA−Stachrom ATIIIキットによって提案されているものなどの抗トロンビン(AT)アッセイの場合には、ATIII濃度が増大する際にDOD(デルタOD)が低減する。
【0051】
しかしながら、ATIII濃度は正常状態よりも疾患状態で低いため、本発明に係る調整方法を実施するための調整物のAT濃度は、調整物が疾患状態における値(すなわち、低量のATIII)を網羅する範囲に位置するように選択されるであろう。
【0052】
逆に、STA−StachromプロテインCキット(Diagnostica Stago)によって提案されているものなどのプロテインCアッセイの場合には、測定されるシグナルはプロテインCの量に比例して増大し、正常な範囲はプロテインCレベルの値の上限によって範囲が定まるため、前記調整物は、清浄なプロテインC濃度に対応する範囲に位置するであろう、
【0053】
例えばSTA−Liatest D−Di キット(Diagnostica Stago)によって実施されるものなどのD−二量体アッセイの場合には、D−Diの量と共にシグナルが増大するのが認められる。しかしながら、正常な状態では、D−二量体レベルは疾患状態よりも低い。かくして、観察されるシグナルが疾患状態における範囲に位置するように、本発明に係る調整物が選択される。STA−Liatest Kitを使用するアッセイの場合には、前記調整物は、STA Liatest Control PまたはSTA Liatest Control N試薬の組成を有してよい。
【0054】
本発明に係る方法は、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)、PT(プロトロンビン時間又はクイックタイム(Quick time)、若しくはTT(トロンビン時間)、又は吸光度(OD)若しくは時間測定に基づく任意の他の従来の酵素学的試験などの任意のタイプの血液凝固検査のために使用してよい。
【0055】
ミクロスフェア懸濁物の濁度における増大の光学的測定に基づいて、分散固相免疫学的アッセイに適用してもよい。
【0056】
以下の実施例によって、本発明を説明する。
【実施例】
【0057】
実施例1
STA Liatest D−Diのプレキャリブレーションの調整についての試験:経時的な試薬に関連する反応性の損失に対する1つの点によるDOD補正の実行可能性
本発明に係る方法を、Diagnostica StagoによるSTA−Liatest D−Diという名称で市販されている試験に適用する。
【0058】
前記試験は、2つの抗D−二量体モノクローナル抗体で被覆したラテックスミクロスフェアを使用する免疫比濁法による血漿D−二量体(D−Di)アッセイキットからなる。
【0059】
試験物質(D−二量体)の存在下において、抗原/抗体タイプの反応が、ラテックス粒子の凝集を誘導し、反応混合物の濁度における増大を誘導する。
【0060】
これは、STA range analyser(Diagnostic Stago)で、140秒に亘って540nmの動力学モードで、キットの包装内に含まれている説明書に従って測定される。
【0061】
吸光度における増大は、試験サンプルのD−二量体濃度に比例する。
【0062】
キット試薬は液体であり、直ぐに使用できる。
【0063】
各試薬バッチについて、プレキャリブレーションは、バーコードラベルによって与えられる。かくして、使用したバッチのプレキャリブレーション係数は、バーコードラベルを単純にスキャンして機器に直接送られる。
【0064】
対照血漿(陽性対照及び陰性対照)を使用して、キャリブレーションを検証し、アッセイを実施する。
【0065】
D−Di濃度測定は、STA Liatest D−Diの特定のバッチを用いて4つの血漿サンプルに対してT=0において最初に実施し(表1)、20ヵ月後(T=20月の時点)に同じサンプル及び同じバッチに対して2回目を実施した(表2)。
【0066】
使用した血漿は、測定したパラメータについて規定されている目標値(目標値=多数の実験で決定した平均値)を有する標準血漿である:
−RIN2は、0.58μg/mlの目標D−Di値を有する血漿である
−PN2は、0.83μg/mlの目標D−Di値を有する血漿である
−LCPは、2.40μg/mlのD−Diを目標とする疾患状態の対照血漿(STA Liatest Control P)である
−P2は、更なる疾患状態の血漿である。
【0067】
この実施例において使用した調整点は、「STA Liatest Control P」(LCP)である。
【0068】
DODは、10のSTA range機器において測定する。
【0069】
各機器によって測定されるDODを、各機器において四回重複して実施して得られたDODの平均値に対する、0.129に等しい、この試薬の標準DODの比率によって算出される係数によって補正した。
【0070】
0.129である当該標準DODは、使用したSTA Liatest D−Diのバッチのプレキャリブレーションの決定の間に、STA Liatest Control P(本実施例のLCP)のバッチに対して得られた平均DODに相当する。
【0071】
T=0において事前に検量した特定のSTA Liatest D−Diバッチに対して、四つの濃度レベルについて試験した。
【0072】
表1及び2は、T=0で得られた結果(表1)およびT=20月で得られた結果(表2)の各々を与える。
【0073】
表3の結果は、LCPによって調整した後のT=20ヶ月後に得られたものであり、T=0で最初に得られたもの(表1)と非常に類似している。
【0074】
結論、DODの一点による調整によって、T=0で事前に検量した試薬を用いて、20ヵ月後に、T=0で得られたもの(表1)と同等の平均濃度が取り戻される(表3)。
【0075】
したがって、測定したDODの一点による調整は、STA Liatest D−Diの感度の損失を補償するため有効である。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
実施例2
STA Liatest Free PSについてのプレキャリブレーション調整試験
Diagnostic Stago社によって市販されている別のキットであるSTA Liatest Free PSを用いて、試験を実施する。
【0080】
前記キットは、免疫比濁方法を使用する遊離のプロテインSの定量アッセイのための、実施例1で使用したキットと同じタイプのものである。
【0081】
測定は、10のSTA機器において実施した。
【0082】
前記測定は、異なる血漿バッチ、すなわち、
−正常な対照血漿及び疾患状態の対照血漿(LCN及びLCP:STA Liatest Control N+P−);
−53%血漿(凍結乾燥した疾患状態の血漿);
−凍結単位血漿プール(Stagoプール);
−凍結単位血漿
に対して実施した。
【0083】
表4は、内部キャリブレーターを用いた各装置のキャリブレーションによって得られた遊離プロテインS濃度(%)を与える。
【0084】
表5は、調整せずに適用した市販のプレキャリブレーションを用いて得られた遊離プロテインS濃度(%)を与える(非調整プレキャリブレーション)。
【0085】
表6は、Stagoプールにおいて一点によるDOD調整後の市販のプレキャリブレーションを用いて得られた遊離プロテインS濃度(%)を与える(調整プレキャリブレーション)。
【0086】
【表4】

【0087】
【表5】

【0088】
【表6】

【0089】
事前に検量したSTA Liatest Free PS(非調整プレキャリブレーション)を用いて、50%を超える濃度についての10のSTAに対して測定した機器間の変動は顕著に区別される。LCNに対する機器間のCVは、非調整プレキャリブレーションにおいて9.16%であるのに対し、各機器のキャリブレーションでは2.78%であり、調整プレキャリブレーションでは2.45%である。
【0090】
同様に、機器間の変動は、プレキャリブレーションが調整された際に、53%血漿及び26%LCPにおいて(明白な範囲で)改善された:
53%血漿:CV機器キャリブレーション=3.40%、CV非調整プレキャリブレーション=6.62%、CV調整プレキャリブレーション=1.97%;
26%LCP血漿;CV機器キャリブレーション=2.45%、CV非調整プレキャリブレーション=2.45%、CV調整プレキャリブレーション=2.22%。
【0091】
したがって、全ての濃度レベルにおいて、一点によるプレキャリブレーション調整は、機器間CV値を与え、これは、
−非調整プレキャリブレーションを用いて得られたものよりも優れており、
−少なくとも、内部キャリブレーターによる各機器のキャリブレーションを用いて得られたものと等しい。
【0092】
結論として、機器間の変動は、本発明に係る一点によるDOD調整方法を用いたSTA Liatest Free PSで顕著に改善される。
【0093】
実施例3
STA−Fib2プレキャリブレーション調整試験:対照のアラインメントに対するレベル(g/l)の補正の実行可能性(目標値に最も近い得られた値=所定の系について与えられる範囲の中心)。
【0094】
本発明に係る方法は、Diagnostica StagoによってSTA−Fib2なる名称で市販されている試験に適用した。
【0095】
前記試験は、Clauss法を使用する血漿フィブリノゲンアッセイキットからなる。
【0096】
過剰なトロンビンの存在下において、適切な割合で希釈した血漿の凝固時間は、血漿のフィブリノゲンレベルに反比例した。
【0097】
キット試薬は凍結乾燥されている。各試薬バッチについて、プレキャリブレーションがバーコードラベルで与えられる。使用したバッチのプレキャリブレーション係数は、かくして、バーコードラベルを単純にスキャンすることによって機器に直接送られる。
【0098】
対照血漿(清浄及び低フィブリノゲン血症)を使用して、キャリブレーションを評価し、アッセイを実行する。
【0099】
血漿フィブリノゲンレベルの測定は、約40のSTA−R、約10のSTAc、及びSTA−Satelliteシステムを含む71の機器の系の群に対して各種の対照血漿において実施した。
【0100】
使用した対照は、測定パラメータについて以下の目標値:
−CCNは2.95g/lの目標値を有する血漿である;
−CCPは1.30g/lの目標値を有する血漿である;
−HYPERは5.27g/lの目標値を有する血漿である
を有する標準血漿である。
【0101】
調整物としての役割を有する血漿は、3.20g/lの目標値を有するAJP血漿であった。
【0102】
本試験のために、各試験機器についてn=5でレベルを測定した。各系におけるAJP血漿について得られた値に基づいて、レベルを調整した(算出された活性に対する調整のため、本願で開示した方法を用いて)。
【0103】
下表は、調整有り又は無しで得られた平均レベル(問題のバッチをプレキャリブレートすることによって得られたレベル)を、試験対照の目標値と得られた全体の標準偏差との関連で与えるものである。
【0104】
【表7】

【0105】
結論として、調整によって、試験した群について均一な標準偏差を保持しながら、その目標値に関して各種の血漿で得られたレベルを再調整する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前に検量した試薬を用いる機器で実施される、医学生物学的診断試験のための、機器又は事前に規定されているキャリブレーションカーブ(プレキャリブレーションカーブ)によって測定されたシグナル又は算出された活性のいずれかのための方法であって、以下の工程:
(i)試験化合物の事前に決定された濃度又は活性を有する1つ又は2つのキャリブレーション調整物について、標準値として参照される、シグナル又は活性値を規定し、前記調整物について、標準シグナル又は活性値と、機器によって測定した値又はプレキャリブレーションカーブを使用して算出した活性値のいずれかの値との差を測定する工程、及び
前記測定した差が許容可能な値である場合には、
(ii)1つ又は双方の調整物について測定したシグナル又はプレキャリブレーションカーブで算出した活性の値が、1つの調整物又は2つの調整物の各々について工程(i)で決定した標準シグナル又は活性値と同一のシグナル又は活性値となるように、機器によって測定したシグナル若しくは機器によって算出した活性の値を調整するか、又はプレキャリブレーションカーブの値を調整する工程、
(iii)前記事前に検量した試薬を用いてシグナル又は活性が測定される試験サンプルの全てに、(ii)に記載のものと同じ調整を適用する工程
を含む、方法。
【請求項2】
血液凝固検査に使用されることを特徴とする、請求項1に記載の調整方法。
【請求項3】
シグナル/ノイズ比が問題の試験において高いように、前記調整物の試験化合物濃度又は活性が規定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1つの調整物を使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の調整方法。
【請求項5】
前記工程(i)で測定した差が20から30%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の調整方法。
【請求項6】
前記調整物の組成が凝固因子に関して前記凝固検査にしたがって規定され、前記調整物が、濃度又は活性が事前に決定されている、使用する試験において試験する化合物を少なくとも含有することを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の調整方法。
【請求項7】
前記調整物が、安定化凍結乾燥血漿又は安定化凍結乾燥血漿プールからなることを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記調整物が精製又は半精製血漿タンパク質からなり、前記タンパク質が、実施する試験の一部として生じる反応を実施するために必要な因子を供給し、濃度又は活性が事前に決定されている試験化合物を更に含むことを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記血液凝固検査が分散固相免疫学的アッセイ試験であることを特徴とする、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
機能検査がD−二量体アッセイ試験である、請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記凝固検査が、APTT試験、PT試験、TT試験、又は任意の他の従来の酵素学的試験である、請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記調整物がプレキャリブレーションカーブを作成するために使用されない、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
特に試薬の保存期間による、医学生物学的診断試験を実施するための所定の自動装置において使用する、各種の試薬、特に液体試薬の影響を補正するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項14】
医学生物学的診断試験に使用する機器の影響を補正するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項15】
前記試験が血液凝固検査であることを特徴とする、請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
血液凝固検査のためのキャリブレーション調整物であって、前記調整物が安定化凍結乾燥血漿又は安定化凍結乾燥血漿プールからなり、凝固検査の試験化合物の濃度又は活性が事前に決定されていることを特徴とする、キャリブレーション調整物。
【請求項17】
血液凝固検査のためのキャリブレーション調整物であって、前記調整物が精製又は半精製血漿タンパク質からなり、前記タンパク質が、実施する試験の一部として生じる反応を実施するために必要とされる因子を供給し、その濃度又は活性が事前に決定されている試験化合物を更に含むことを特徴とする、キャリブレーション調整物。
【請求項18】
試験化合物の濃度又は活性が、前記検査について高いシグナル/ノイズ比に対応する範囲において選択されることを特徴とする、請求項16又は17に記載のキャリブレーション調整物。

【公表番号】特表2010−540950(P2010−540950A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527495(P2010−527495)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001379
【国際公開番号】WO2009/077678
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(508328800)
【Fターム(参考)】