説明

証券及び/又は重要書類

【課題】特に紙幣のような証券及び/又は重要書類を提供すること。
【解決手段】紙材からなる基底材(1)と、一つ以上の光学的な防犯機能を有し、特に細長形状又は繊維状をなした膜部材(2)とを備え、基底材(1)は、膜部材(2)により閉鎖される一つ以上の窓状をなした開口(31,32,33,34,35,36)を有し、膜部材(2)は、開口(31乃至36)内から該開口の全ての縁部を超えて開口の外方へ突出する特に紙幣のような証券及び/又は重要書類であって、少なくとも開口(31乃至36)の周囲で膜部材(2)の表面を覆う密封層(4,5,6)が、紙材からなる基底材(1)の側面に塗布されており、密封層(4,5,6)は、膜部材(2)に対して反対の位置関係を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙幣、小切手、株券、クレジットカード、ソフトウエア証書又は身分証明書又は通行書のような、証券及び/又は重要書類であって、一つ以上の窓状をなした開口を有する紙材からなる基底材と、好ましくは細長形状又は繊維状をなした膜部材とを備える証券及び/又は重要書類に関する。
【背景技術】
【0002】
証券及び/又は重要書類には、それら書類の偽造を困難にすることにより、できる限り偽造を防止することができる防犯機能を与える必要がある。その点に関して、透光モードで見たときに検出することができ、また、カラーコピーによる偽造品に対する特に高い水準の防犯性を得ることができる透過型の防犯部材を有する証券及び/又は重要書類が既に知られている。
【0003】
その点に関して、重要書類内に組み込まれる防犯繊維(セキュリティースレッド)が既に提案されており、この防犯繊維は、繊維上に付加された防犯部材を検出することができるように、例えばプリントパターン及び回折構造等のように、表面に部分的に露出している。例えばEP−A−0229645には、他の領域よりも厚さが薄い領域又は開口を有する二つの分離した紙の層が形成された繊維状をなす防犯部材が組み込まれた防犯用紙の製品が記載されている。それらの二つの紙の層は接合され、それらを接合する作業が行われている間に、防犯部材としての機能を果たすバンドが取り入れられる。この状況において、防犯部材を両面上の紙膜上の同一の位置で露出させるべく二つの紙の層の開口が一致した関係で互いに重なり合うように配置が選択される。このような配置は、防犯部材を透光モードで見ることも可能にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この提案では、防犯繊維を紙膜内に組み込む必要があり、紙がそれ自体でまとまることを妨げないようにするために防犯繊維の幅が狭くなるという不都合に悩まされている。それは、特に、防犯部材を透光モードで見ることができるように、紙膜が両面上の一致関係で露出する場合である。更に、ここでは、防犯繊維がそれらの幅の狭さに関わらず十分な抗張力を発揮するように、比較的厚い防犯繊維を用いることが必要である。比較的狭い領域で起こるその厚化効果は、シートの粗末な平面的な配置に起因する。これにより、重要書類の先の加工に問題をもたらす。
【0005】
また、DE−A−4334847には、窓状をなした開口が後のスタンピング作業又は切削作業により重要書類の基底材に形成された重要書類が記載されている。その後、これらの開口はカバー膜により閉鎖される。カバー膜は、少なくとも部分的に透明であり、全ての縁部で開口を超えて突出し、基底材の全域に亘って基底材の表面に固定される。このような配置により、一つ以上の防犯部材を有する比較的大きなカバー膜を使用することができる。その結果、上記したような紙製品で製造された窓に比べてより大きな窓を用いることができ且つ膜部材の厚さを削減することができる。しかしながら、そのような方法の実用的な実施の面では、比較的幅の広い窓が使用されていることから、証券及び/又は重要書類の先の加工に問題が生じることがわかった。
【0006】
そこで、本発明は、透光モードで検出することができる防犯部材の使用に適した証券及び/又は重要書類であって問題なく先の加工を行うことのできる証券及び/又は重要書類を提供するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、一つ以上の窓状をなした開口を有する紙材からなる基底材と、一つ以上の光学的な防犯機能をし、特に細長形状又は繊維状をなした膜部材とを備え、一つ以上の窓状をなした開口が、開口の全ての縁部を超えて突出する膜部材により閉鎖され、少なくとも開口の周囲で膜部材の表面を覆う密封層が、膜部材に対して反対の位置関係を有する紙材からなる基底材の側面に塗布された証券及び/又は重要書類により達成される。
【0008】
その点に関して、紙材からなる基底材が温度に加えて湿度のような別の環境の影響にさらされるように、特に、本発明は、紙材からなる基底材の両側面を完全に覆うことのない膜部材及び/又は密封層に関する。
【0009】
その状態では、膜部材は、紙材からなる基底材の一面の面積の最大50%までを覆うことが好ましく、特に、最大20%までを覆うことが好ましい。膜部材の領域範囲に関しては、最短の間隔である紙材からなる基底材に固定された膜部材の縁部と開口の縁部との間の間隔が、最大でそれぞれの開口の長さ、幅又は直径に相応するとうい性質を膜部材が持つことが好ましく、ただし、それらの間隔がそれぞれの開口の長さ、幅又は直径の最大で50%に相応するという性質を膜部材が持つことが好ましい。
【0010】
本発明は、紙材からなる基底材の窓状をなした開口が膜部材により閉鎖された場合、基底材が作られた紙材の特別な材料特性が、証券及び/又は重要書類の先の加工に問題を引き起こすという現実に基づくものである。従って、紙材の膨張特性は、湿度、紙材の繊維方向及び温度に依存している。紙材からなる基底材における開口が膜部材により閉鎖されると、紙材からなる基底材の膨張特性と大幅に異なる膜部材の膨張特性と、先の加工での例えば湿度又は温度変化のような影響は、先の加工の結果を深刻に悪化させる。また、完成した証券及び/又は重要書類のその後の使用に悪影響を与える。ここで、本発明は改善措置を提供する。証券及び/又は重要書類の先の加工を利用可能な技術で行うことができるように、開口は背面側で密封層により固定される。また、証券及び/又は重要書類の外観に対して温度及び湿度の影響が少ない場合、証券及び/又は重要書類のその後の使用に更に有益である。本発明は、基底材としての紙材の利点と共に、透光に適した防犯部材の幅を更に増大させることができる。これにより、証券及び/又は重要書類の偽造に対する防護対策を更に増大させことができる。
【0011】
本発明の有益な構成は従属項に記載されている。
【0012】
本発明の好ましい実施例によると、密封層は、膜部材の表面積の少なくとも80%の範囲に亘って配置されている。そのように膜部材が全域に亘り背面で固定されることにより、水分の紙材への貫通を実質的に防止することができる。これにより、紙材の膨張特性は実質的に影響を受ける。また、それは、膜部材に関した機械的な補償及び調整を提供する。これにより、隆起構造の発生は難しくなる。
【0013】
密封層の領域が膜部材の領域の100〜120%の場合は更に有益である。このような密封層の領域により、一方では正確なレジスター位置関係で密封層を塗付するために許容範囲が与えられ、他方では過剰に大きい密封層により加工への不利益な影響を与えることが回避される。
【0014】
証券及び/又は重要書類のグラフィック構成に影響を与えないように、密封層は透明であることが望ましい。
【0015】
密封層及び/又は膜部材が少なくとも部分的に印刷により刷り重ねられている場合、証券及び/又は重要書類の偽造立証性は更に向上する。これにより、例えば膜部材の除去のような膜部材又は密封層への変化が直ちに明らかになる。例えば、スチール凹版印刷によるこのような刷り重ねは、証券/及び又は重要書類がさらされる温度及び湿気の状態に対して大きな影響を与える。これにより、ここでの効果は、本発明の使用により大幅に向上する。
【0016】
本発明の好ましい実施例によると、密封層は、紙材からなる基底材に印刷により塗付されることが好ましい厚さ約2〜10μmのラッカー層を有する。特に、ここでの印刷工程には、スクリーン印刷工程、好ましくはフラットスクリーンによる印刷が適している。この点に関して、印刷により2〜10μmの範囲の厚さの比較的厚いラッカー層を塗付すると特によい結果が得られる。このようなラッカー層は、水分の浸入を確実に防止し、膜部材の膨張性に対し「カウンターウエイト」として機能する必要な厚さを有する。ラッカー層の厚さ及びその組成は、ラッカー層の膨張率が膜部材の膨張率にほぼ相応するように選択されることが好ましい。これにより、隆起の形成をほぼ完全に防止することができる。
【0017】
この点に関して、「膨張率」は、一方では熱による長さ膨張率α(線状熱膨張率)を意味する。基底材における窓状をなした開口の領域での温度変化に応じて、膜部材及び密封層の長さは、それらの形成に使用されたそれぞれの材料に応じて変化する。従って、温度変化に応じて膜部材が密封層よりも大きく膨張又は縮小すると、不要な隆起が窓状をなした開口の部分に生じる。
【0018】
他方では、「膨張率」は膜部材及び密封層の拡張性を意味する。拡張性は、弾力性Eの材料依存モジュール又はその逆数である膨張値1/Eにより規定される。窓状をなした開口の領域における膜部材及び密封層に与えられた例えば折り畳み、曲げ又はしわのような機械的荷重に応じて、材料の弾性限界を超えることにより永久的に変形した場合、それらの材料は、それらの材料の弾性モジュールに応じて変形する。ここで、膜部材及び密封層にほぼ同量の力が加えられた状態で、例えば膜部材が密封層よりも先に弾性限界を越えると、弾性的にのみ変形した密封層が初期の状態に戻ろうとする間、膜部材は塑性変形する。そのような変形は、膜部材の弾性モジュールが密封層の弾性モジュールと一致した場合に回避することのできる不要な隆起に起因する。
【0019】
更に、本発明の好ましい実施例によると、密封層は、レジスター位置関係において反対に積層された膜、好ましくは、レジスター位置関係において反対に積層された冷間スタンピング膜又は熱間スタンピング膜により製造される。この場合、反対に積層された膜がラッカー層及び接着材層を有することが好ましいい。上記した理由からラッカー層の厚さは、約2〜10μmの範囲であることが好ましい。また、反対に積層された膜として、接着剤層と例えば12〜16μmの厚さのPETフィルムのような膜体とを備える膜を用いることもできる。
【0020】
この点に関して、反対に積層された膜が膜部材の膨張率にほぼ相応する膨張率を有することが特に好ましい。上記したように、ラッカー層を密封層として使用することに関して、膨張率は、一方では長さ膨張率を意味し、他方では弾性モジュールを意味する。
【0021】
一般的に、密封層が膜部材の膨張率にほぼ相応する膨張率、特に、長さ膨張率又は弾性のモジュールに相応する膨張率を有することが有益であることは証明されている。
【0022】
この点に関して、密封層の長さ膨張率と膜部材の長さ膨張率との間の差異は、10%以下、好ましくは5%以下であることが有益である。従って、密封層は、温度変化に応じて膜部材とほぼ同じ長さで変化する。これにより、基底材の窓状をなした開口の領域に隆起が生じることはなくなる。これは、例えば紙幣を積み重ねる又は基底材を自動工程において平らな面が必要とされる例えば印刷作業、又はスタンピング作業のような先の加工を受けさせる場合に、特に有益であることが証明されている。
【0023】
密封層の弾性モジュールと膜部材の弾性モジュールとの間の差異は、10%以下好のましくは5%以下であることが更に好ましい。このような膜部材及び密封層の構成は、完成した証券又は重要書類の最適な扱いを許す。通常、紙幣は、例えば折り曲げにより窓状をなした開口の領域で機械的に圧力を加えられる。密着層の弾性モジュールと膜部材の弾性モジュールとの一致の不具合が生じた場合は隆起が生じ、これにより、一方では紙幣の光学的な機能障害が発生し、他方では技術的な不備が引き起こると共に現金自動預け払い機が故障する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例ついて図面を参照して説明する。
【実施例】
【0025】
図1に示された重要書類は紙幣である。重要書類を、紙幣に代えて、チェック、トラベラーズチェック、株券又はソフトウエア証書、例えば身分証明書又は通行書のような保証書類等で構成することができる。
【0026】
図1に示された重要書類は、紙材からなる基底材1を備える。紙材は、紙幣に利用され且つ既知の方法で透かし、特別な印刷及び他の防犯部材が設けられた紙質を有することが好ましい。更に、このような防犯部材は、例えばホログラム又は色変化部材のような、例えばスチール凹版印刷、マイクロ印刷、又は反射防犯機能を備える。
【0027】
紙材からなる基底材1の厚さは約100μmであることが好ましい。通常、基底材1は、図1に示すように、重要書類の生産における紙膜又はペーパシートの一部であり、完成後、紙膜又はペーパシートから切り離される。
【0028】
基底材1は、図1に示すように、複数の窓状をなした開口31乃至36を有する。これらの窓状をなした開口を膜部材2の領域に自由な配置及び構成で設けることができる。この場合、開口31乃至36は、膜部材2を塗付する前にスタンピングまたは切削作業好ましくは従来のスタンピング工程、又はレーザ又はウォータジェット切削により、ペーパシートに形成される。しかしながら、膜部材2を塗付する前に、膜部材2が塗付される表面2の領域にエンボス又はスタンピング工具により凹部を形成することも可能である。その後、膜部材はその凹部に設けられる。そのような性質の凹部の形成により、重要書類1の厚さを減少させることでき、紙材は平坦化される。これにより、その後の膜部材の剥離はより困難になる。
【0029】
膜部材2は、細長状又は繊維状をなしていることが好ましく、その幅は4〜30mmの範囲であることが好ましい。この場合、膜部材2は、基底材の1の幅全体又は全長に亘り横方向に伸びることが好ましい。これにより、生産技術の観点からすると、膜部材2の塗付は簡略化される。
【0030】
図2は、開口35の領域における図1に示された重要書類の部分的な領域を示す断面図である。図2は、開口35の領域に広がる密封層4を示すと共に、基底材1と、装飾層22及び支持膜21を有する膜部材2とを示す。
【0031】
図1及び2に示されたように、窓状をなした開口35は膜部材2により閉鎖されている。この場合、膜部材2は、接着剤層により基底材1の全領域にわたりその表面に固定されている。膜部材2が開口31乃至36の周囲で基底材1の表面に固着するように、膜部材は、基底材の表面に固着され、全ての側面で窓状をなした開口31乃至36を超えて突出する。この場合、図2に示されたように、膜部材2は、熱及び圧力、例えば特別なスタンピングローラ、熱及び圧力より活性化する接着剤層により、基底材1の紙材に固定されることが好ましい。同時に、加圧により膜部材の領域に凹部が形成される。これにより、上記したような利点を達成することができる。尚、膜部材2を冷間スタンピング工程により紙材に設けることも可能であり、接着剤層をUV放射又は低温硬化により硬化する例えば接着剤又は粘着剤で構成することができる。
【0032】
図3に示された例を用いて膜部材2の構成を説明する。
【0033】
図3は、透明な支持膜21及び装飾層22を有する膜部材2を示す。
【0034】
支持膜21は10〜50μmの膜厚を有するPET又はBOPPフィルムからなる。この点に関して、支持膜21のために選択される好ましい支持膜の膜厚が開口31乃至36の幅により実質的に決められるように、支持膜21は、開口31乃至36を覆うために必要な安定性を提供する役割を果たす。しかしながら、この点に関して、装飾層22及び密封層4の適切な選択によりこれらの層の組立体は、必要な機械的安定性を既に有する。これにより、支持膜21を使用する必要はなくなる。
【0035】
装飾層22は、図3に示された実施例では、結合層23、第一ラッカー層24、光学分離層25及び接着剤層26を有する。
【0036】
0.2〜2μmの範囲の厚さの結合層23は、印刷工程により支持膜21に塗付される。ある状況下では、支持膜21と第一ラッカー層24との間にすでに十分な接着力がある場合又は支持膜21が使用されていない場合は、結合層23を削除することもできる。
【0037】
第一ラッカー層24は、回折構造27が熱及び圧力の作用のもとで複製工具により複製される熱可塑性又は架橋重合体からなる複製ラッカー層である。
【0038】
一例として、第一ラッカー層24に使用されたラッカーを以下の組成からなるラッカーで構成することができる。ラッカーは、乾燥後、約2.2g/mの1平方メートルあたりの重量で全表面に塗付される。
組成: 重量割合:
高分子PMMA樹脂 2000
シリコーンアルチドオイルフリー 300
非イオン湿潤剤 50
低粘性ニトロセルロース 750
メチルエチルケトン 4200
トルエン 2000
ジアセトンアルコール 2500
ラッカーを乾燥させた後、回折構造27は、例えば100〜120℃の乾燥通路でスタンピングダイによるエンボスにより製造される。
【0039】
その後、光学分離層25が第一ラッカー層24に塗付される。この場合、回折構造27が透明な防犯機能を提供することができるように、光学分離層24は、ラッカー層24の反射率と著しく異なる反射率を有する透明材料を含む。また、第一ラッカー層24に部分的又は全面に金属層を光学分離層25として設けることができる。
【0040】
このような金属層に用いられる材料を、例えば、アルミニュウム、クロム、金又はシルバー又はこれらの合金で構成することができる。この場合、メタライゼーションが第一ラッカー層24に蒸着又はスパッタリングにより施されることが好ましい。また、メタライゼーションに代えて、HRI又はLRI層(HRI=high refraction index(高屈折率);LRI=low Refraction index(低屈折率))を第一ラッカー層に全面的に又は部分的に塗付することもできる。
【0041】
HRI又はLRI層は、例えば、TiO又はZnS(HRI)又はMgF(LRI)のような適切な誘電体から構成されることが好ましい。
【0042】
開口35の領域には、回折構造27により、例えば、ホログラム又はキネグラムのような光学回折効果を有する透過型の防犯部材が生成される。この点において、上記の防犯特性に代えて又は上記の防犯特性の他に、開口35の領域において装飾層22に一つ以上の以下の防犯機能を導入することができる。
【0043】
薄膜層顔料又はコレステリック液晶材料を有する薄膜層システム又はカラー層を開口35の領域に設けることができる。これらの層は、視角依存色ずれ効果を生み出し、これにより、観察者は防犯機能としての色変化部材を認識する。
【0044】
このような薄膜層システムは、例えば、吸収層、スペーサ層としてのλ/2層、屈折率がスペーサ層とは異なる層との複合層から構成される。尚、このような種類の薄膜層システムを、例えば、3〜9又は2〜10層の連続した高反射層及び低反射層から構成することもできる。層の数が多ければ多いほど、色変化効果のための波長をより顕著に設定することができる。このような薄膜層システムの個々の層の通常の厚さに関する例と、このような薄膜層システムの層に原則として用いることのできる材料に関する例とについては、WO01/03945の5頁30行目から8頁5行目に開示されている。
【0045】
更に、装飾層22は、開口35の領域において、例えば配向及び架橋液晶重合体からなる分極層を有する。分極層は、開口35の領域において別の防犯機能を提供する。
【0046】
更に、装飾層22は、発光性と特に例えばパターン状に配置されかつ別の防犯機能として機能するUV又はIR蛍光性顔料とを備える一つ以上のカラー層を有する。
【0047】
また、装飾層22は、例えば、開口35の領域にマイクロスクリプトのような防犯印刷による一つ以上のカラー層又はパターン状に金属がはがされかつ防犯機能を構成する一つ以上の層を有する。
【0048】
この点に関して、装飾層22における開口35の領域にあらゆる組み合わせの上記の防犯機能を設けることができる。
【0049】
接着剤層26は、5〜6μmの範囲の厚さを有し且つ熱活性化接着剤から構成される。一例として、以下の組成の接着剤を接着剤層26として用いることができる。
組成: 重量割合:
トルエン 2000g
アセトン 2100g
高分子エチルメタクリレート Tg60℃ 300g
メタクリレート共重合体 Tg40−80℃ 700g
熱可塑性ポリ酢酸ビニル Tg80−83℃ 200g
エタノール 2100g
高分散ケイ酸 100g
その接着剤は、例えば、60l/cmのラインラスタ及び5〜6g/mの塗付重量で装飾層22の水平層に塗付される。
【0050】
膜部材2が固定された後に、密封層4が膜部材2と反対の位置関係にある基底材1の側面に膜部材2の領域に亘って印刷工程により塗付される。
【0051】
この点に関して、開口31乃至36が膜部材2により閉鎖された後、膜部材2と反対の位置関係にある基底材1の側面の少なくとも基底材1の開口31乃至36の領域に、密封層4を塗付することが特に重要である。これらの領域に密封層4を設けることにより、紙材からなる基底材1の切り口は、そこへの水分の浸透に対して密封され、膜部材2において露出している接着剤層は封止され、窓状をなした開口は機械的に固定される。
【0052】
図2に示すように、膜部材2の領域と僅かに重なる領域において、密封層4を膜部材2と反対の位置関係にある基底材1の側面に塗付することは更に有益である。これにより、膜部材2の全域は機械的に安定し、紙材は水分の浸透に対して封止される。
【0053】
密封層4を、印刷、注入、分散又は散水又は吹き付けにより基底材1に塗付することができる。密封層4を塗付する作業は、スクリーン印刷工程により行われることが好ましい。このような工程により、比較的厚いラッカー層を基底材1に十分な精度で塗付することができる。密封層4が膜部材2に対して機械的な対応物を形成することができるように、ラッカー層には一定の厚さが必要となる。従って、密封層4は、2〜10μmの厚さと膜部材2の膨張率にほぼ相応する膨張率とを有するラッカー層から構成される。このようにして湿度及び温度又は機械的負荷のような環境状態の変化に応じた膜部材2の領域での隆起の形成を実質的に回避することができる。
【0054】
原則として、密封層4の形成に用いられるラッカーを、溶媒ベアリング二液型ラッカーと、固形の割合が高い水成分散及びUVラッカーとで構成することができる。この点に関して、密封層4に用いられるラッカーを透明のラッカー又は有色ラッカーとで構成することができる。また、密封層4を例えばそれぞれがハーフトーンで使い切られる異なる色の印刷により構成することもできる。また、密着層4に使用されるラッカーを刷り重ねラッカー、すなわち、印刷インクがそこに付着するように過度に架橋されていないラッカーで構成することができる。
【0055】
従って、一例として、以下の組成を有するラッカーを密封層4のラッカーとして用いることができる。
組成: 重量割合:
シクロヘキサノン 2800g
キシレン 1400g
エチレン酢酸ビニル共重合体 Tg65−70℃ 100g
PVC共重合体 Tg75−80℃ 500g
PMMA Tg115℃ 500g
高分散ケイ素 50g
シリコーンベースの消泡剤 15g
そのラッカーは、直接エマルジョンが塗付されたフラットスクリーン77Tで印刷により上記したような2〜10μmの範囲の厚さ及び塗付重量で基底材1に設けられる。その
ラッカーは、上記したような層の厚さ範囲を得ることが可能な方法で基底材1に設けられる。
【0056】
密封層4のラッカーを硬化又は架橋させた後、密封層4及び/又は膜部材2は、少なくとも部分的に刷り重ねられる。これにより、防犯性を更に高めることができる。この場合、刷り重ね作業はダイスタンビングにより行われることが好ましい。
【0057】
密封層4が反対に積層された膜より形成された本発明の別の実施例について図4及び図5を参照しながら説明する。
【0058】
図4は、基底材1と、支持膜21及び装飾層22を有する膜部材2と、開口35と、支持膜52及び接着剤51からなる反対に積層された膜を有する密着層5とを示す。
【0059】
基底材1及び膜部材2は図1乃至3に示されたように成形されている。
【0060】
接着剤層51は、圧力又は熱により活性化される粘着剤又はUV硬化粘着剤からなる。一例として、接着剤層51は、図3に示された膜部材2の接着剤層26に使用された接着剤により形成される。
【0061】
膜5は、熱間又は冷間スタンピング膜によりプレハブ形成され、圧力及び熱又は圧力及びUV放射を用いて膜部材2と反対の関係にある基底材の側面に積層されることが好ましい。
【0062】
支持膜5は、12〜16μmの範囲の厚さの透明のPET又はBOPPフィルムである。
【0063】
図5に示された例では、膜5に代えて、膜6が膜部材と反対の関係にある基底材1の側面に塗付されている。膜6は、好ましくは厚さ2〜12μmの範囲の保護ラッカー層62及び粘着層61を有する。膜6は、冷間又は熱間スタンピング膜の転写層の一部として基底材1に塗付されることが好ましい。膜部材2の接着剤層26に使用された接着剤を接着剤層61の接着剤として用いることができる。
【0064】
保護ラッカー層62は透明であり、例えば以下の組成とすることができる。
【0065】
組成: 重量割合:
メチルエチルケトン 300
酢酸エチル 170
シクロヘキサノン 100
ヒドロキシ官能アクリレート(60%キシレン/EPA、 200
OHインデックス140)
セルロースナイトレイト(低粘度、65%アルコール) 80
芳香イソシアネイト(50%酢酸エチル、NCO含有量8%)150
この点に関して、結合層を膜5の支持膜62又は膜6の保護ラッカー層62に塗付することもできる。結合層はその後の密封層の刷り重ねを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る重要書類を示す概略図である。
【図2】図1の重要書類の断面を示す概略図である。
【図3】図2の重要書類に用いられた膜部材を詳細に示す図である。
【図4】別の実施例における本発明に係る重要書類の断面を示す概略図である。
【図5】別の実施例における本発明に係る重要書類の断面を示す概略図である。
【符号の説明】
【0067】
1 基底材
2 膜部材
4,5,6 密封層
31,32,33,34,35,36 開口
51,61 接着剤層
52 膜体
62 ラッカー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙材からなる基底材(1)と、一つ以上の光学的な防犯機能を有し、特に細長形状又は繊維状をなした膜部材(2)とを備え、前記基底材(1)は、前記膜部材(2)により閉鎖される一つ以上の窓状をなした開口(31,32,33,34,35,36)を有し、前記膜部材(2)は、前記開口(31乃至36)内から該開口の全ての縁部を超えて前記開口の外方へ突出する特に紙幣のような証券及び/又は重要書類であって、
少なくとも前記開口(31乃至36)の周囲で前記膜部材(2)の表面を覆う密封層(4,5,6)が、紙材からなる前記基底材(1)の側面に塗布されており、前記密封層(4,5,6)は、前記膜部材(2)に対して反対の位置関係を有することを特徴とする証券及び/又は重要書類。
【請求項2】
前記密封層(4,5,6)は、前記膜部材(2)の表面の少なくとも80%の範囲に亘って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項3】
前記密封層(4)の面積は、前記膜部材(2)の面積の100乃至120%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項4】
前記密封層(4,5,6)は透明であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項5】
前記密封層(4,5,6)及び/又は前記膜部材(2)は、少なくとも部分的に印刷により刷り重ねられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項6】
前記密封層(4)は、ラッカー層であって好ましくは2〜10μmの範囲の厚さを有するラッカー層で構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項7】
前記密封層(4)は、スクリーン印刷方法を用いて、好ましくは、フラットスクリーンを用いて、印刷により前記基底材(1)に塗布されていることを特徴とする請求項6に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項8】
前記ラッカー層は、前記膜部材(2)の膨張率とほぼ等しい膨張率を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項9】
前記密封層(4,5,6)は、レジスター位置関係において反対に積層された膜(5,6)であって好ましくはレジスター位置関係において反対に積層された冷間スタンピング膜又は熱間スタンピング膜で構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項10】
前記反対に積層された膜(6)は、接着剤層(61)及びラッカー層(62)を有することを特徴とする請求項9に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項11】
前記反対に積層された膜(5)は、接着剤層(51)と、膜体(52)であって特に12〜16μmの厚さを有するPETフィルムで構成された膜体(52)とを有することを特徴とする請求項9に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項12】
前記反対に積層された膜(5,6)は、前記膜部材(2)の膨張率とほぼ等しい膨張率を有することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか一項に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項13】
前記密封層(4)は、前記膜部材(2)の膨張率とほぼ等しい膨張率を有し、特に、前記膜部材(2)の長さ膨張率及び/又は弾性モジュールは、前記密封層(4)のそれらにほぼ等しいことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項14】
前記密封層(4)の長さ膨張率と前記膜部材(2)の長さ膨張率との間の差異は、10%以下好ましくは5%以下であることを特徴とする請求項13に記載の証券及び/又は重要書類。
【請求項15】
前記密封層(4)の弾性モジュールと前記膜部材(2)の弾性モジュールとの間の差異は、10%以下好ましくは5%以下であることを特徴とする請求項13又は14に記載の証券及び/又は重要書類。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−530313(P2007−530313A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504249(P2007−504249)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000528
【国際公開番号】WO2005/095118
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506088850)レオンハード クルツ ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー (15)
【Fターム(参考)】