説明

試料中の複数分析物の検出装置

【課題】 現在のイムノクロマトグラフィー用ディップスティックの1つの欠点は、ただ1つの分析物の存在しか検出できないことである。また、たとえば尿分析装置は装置間の物質の持ち越しによる汚染の機会が増加し、結果が不正確になる可能性がある。さらに、この形式は、試験片を尿試料から取り出す間に使用者を汚染する可能性があり、吸収紙で吸い取ることでそれを汚染し、それをしばしば製品容器の外面にある見本と対比することで、製品の包装容器自身を汚染させる。しかも、述べたように、結果を読むのに外部の見本が必要となる。
【解決手段】本発明は、分析装置、特に流体試料中の複数の分析物の存在及び/又は量を判定し、その試料のより完全な診断又は分析を可能とするイムノアッセイ装置を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2003年11月22日に出願された米国仮出願第60/505,092に基づく優先権の利益を主張するものであり、該仮出願は参照により完全に本書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般的に単一の流体試料中の、もし存在する場合は複数の分析物(アナライト)を検出し識別する分析法及びその装置、手法に関係する。
【背景技術】
【0003】
迅速診断試験の分野は長年にわたって進化してきており、多様な種類の試料中の分析物の検出が可能となっている。ポリクローナル抗体の使用はモノクローナル抗体の使用に取って替わられ、ホルモン、血球、薬物及びその代謝物のみならず、連鎖球菌A、連鎖球菌B、クラミジア、HIV、RSV、インフルエンザA、インフルエンザBほか多数を含む伝染性病原体の抗原を含む多くの分析物のための高い特性を持つ分析を生み出した。試験線位置での酵素触媒反応又は可視信号の蓄積により発生する可視信号もまた、高感度結果の急速な発展をもたらした。迅速イムノアッセイをベースとする試験の多くは、試験片を内蔵する堅いケースを含む。しかし最近、堅いケースを持たないイムノクロマトグラフィックアッセイが開発された。このような試験は、ディップスティック(dipsticks)ないし尿試験紙と称されるが、あらかじめ決められた量の対象液体試料を入れた容器に直接浸すことができる。試料を受入れるパッドを有するディップスティックの先端は、通常液体試料と接触し、液体が流路を移動上昇する。ディップスティック方式の利点は、使用が簡単で最小の手間でできることであり、それは汚染の機会と操作ミスを減らし、製造費が安くできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在のイムノクロマトグラフィー用ディップスティックの1つの欠点は、ただ1つの分析物の存在しか検出できないことである。これらの装置は、流路に沿って可能性のある複数の試験線の位置をマークする対策がとられていないため、しばしば限定的である。化学的尿分析の分野では、ディップスティックは複数のパッドを有し、その一つ一つが検出・測定すべき尿中の分析物に対応し、ディップスティックは尿試料中に浸漬され、容器から取り出し、余剰な尿を吸い取り、結果を読み取るために見本と対比される。これらの装置は複数の分析物を評価することができるが、問題を含んでいる。たとえば、このような装置は装置間の物質の持ち越しによる汚染の機会が増加し、結果が不正確になる可能性がある。さらに、この形式は、試験片を尿試料から取り出す間に使用者を汚染する可能性があり、吸収紙で吸い取ることでそれを汚染し、それをしばしば製品容器の外面にある見本と対比することで、製品の包装容器自身を汚染させる。しかも、述べたように、結果を読むのに外部の見本が必要となる。
【0005】
いろいろな分野において、たとえば一度に1つの分析物しか評価できないことから、単一分析物の迅速分析を使用することはしばしば制約的であることが認識されている。そのため、迅速性の利点は、病状診断に付属する現在の分析の制約によって疑問視されている。たとえば、小児科においては、緊急な処置が必要な子供に対して、インフルエンザA、インフルエンザB、RSV、その他の上気道ウイルスの識別診断をしなければならない。迅速な試験パネルの使用が可能になれば、状況診断をする医師の努力を助け、適切な行動をより早く、より容易に、そしてより安価にとることができる。現在までのところ、1つの試験片から2以上の分析物を、最小限の必要な手続きで識別診断可能とする分析は開発されていなかった。
【0006】
まとめると、尿試料中の複数の分析物の存在(又はその量)を判定する、尿の化学的ディップスティック分析は長年にわたって使用されてきた。しかし、このような分析に使用される技術は、望ましくない使用上の特徴があるばかりでなく、試料中に装置を浸漬(特に装置の試験部分を浸漬)させるのではなく、試料を分析装置に流す必要のある免疫学をベースとする分析(ディップスティック又は側方流)にはすぐには適用できない。たとえば、化学的尿分析用ディップスティックについては、それらを尿試料中に浸漬し、取り出して余剰の尿を吸い取り、そして通常再利用可能な(従って汚染の可能性がある)外部の試験結果パネル(すなわち見本)と物理的に接触(又は非常に近接)させて対比しなければならないという事実は、望ましくないばかりではなく、安全でもない。特に、試料にウイルスやバクテリアなどの伝染性病原体が含まれている場合はそうである。さらに、免疫学をベースとする分析は、通常2以上の、一般的な連続反応(たとえば標識後、捕捉(試験)反応)を採用するため、装置を化学的尿分析ディップスティックと同じように試料中に浸漬することは受け入れられない。従って、当該分野におけるこれらの問題点を処理する装置や方法が必要となっている。本発明は、当該分野におけるこれらの及び関連する必要性を処理するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、分析装置、特に流体試料中の複数の分析物の存在及び/又は量を判定し、該試料のより完全な診断又は分析を可能とするイムノアッセイ装置を提供するものである。本装置は、ディップスティック又は側方流装置として都合良く構成でき、いずれにしても試験結果を判定するための外部試験結果パネルは不要である。複数の試験ゾーン及び/又はコントロールゾーンを本発明に従って試験装置上に決められたパターンで配置することによって、外部試験結果パネルさらには試験装置のケース上のマーキングさえも省略できる。好ましい実施形態における具体例として、1つのコントロールゾーンが2つの試験ゾーンの間に配置され、各試験ゾーンはそれぞれ1つの異なる分析物の存在又は量を試験する。これまではコントロールゾーンは、コントロールゾーンとして機能するために、試験ゾーンの下流側に配置されなければならないと考えられていた。しかし本発明者らは、それは必要でないことを発見し、むしろ、1以上のコントロールゾーンがイムノアッセイ装置において、分析の完了及び/又は試験可能性の表示だけでなく、1以上の試験線の相対位置を表示するために用いられる可能性があり、それによって1つのイムノアッセイ試験装置で流体試料中の分析物の迅速識別が可能となることを発見した。
【0008】
本開示の1つの実施形態において、流体中の複数の分析物の検出のための装置が提供され、当該装置は軸方向流路を定めるマトリックスを含み、そのマトリックスは、
i)流路の上流端において前記流体試料を受入れる試料受入れゾーンと、ii)前記流路内試料受入れゾーンの下流側に位置する標識ゾーンであって、1以上の分析物と結合して標識分析物とすることができ流体試料の存在下で流動化可能な1以上の標識試薬を含む標識ゾーンと、iii)前記流路内標識ゾーンの流路下流側に位置する1以上の試験ゾーンであって、各試験ゾーン中に異なる1つの標識分析物、又は1つの試験ゾーンで複数の標識分析物を組み合わせて拘束する手段を有し、標識分析物を各試験ゾーンで検出できる、該1以上の試験ゾーンと、iv)前記流路内標識ゾーンの流路下流側に位置し、分析の完了を表示する手段を組み込んだ1以上のコントロールゾーンと、を含む。最もよくある態様としては、本装置は、1試料中の2以上の異なる標識分析物を捕捉すなわち検出する手段を組み込んでいる。またよくある態様として、本装置は、ディップスティック分析装置を含む。随時の態様として、2又は3以上の試験ゾーンと、2以上のコントロールゾーンを含む。
【0009】
本装置は、1試料中の複数の分析物を外部の見本なしで検出できる。さらに、しばしば本装置は外部ケースのないディップスティック分析を含む。通常、分析物は対象となる分析物を含み、及びとりわけここに提供した分析物を含む。しばしば、本装置は分析物の特別なパネルの分析に有益である。またしばしば、本装置は、1試料中の2以上の異なる分析物を同時に検出するのに有益である。時には、本装置及び方法は、インフルエンザパネル(インフルエンザA、インフルエンザB、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、アデノウイルス、ライノウイルス、及び/又はパラインフルエンザウイルスのうちから選択したものを捕捉できる試薬を含有する試験ゾーンを含む)、肺炎連鎖球菌、肺炎マイコプラズマ及び/又はクラミジアの1以上を含むパネル、HIVパネル、狼そうパネル、H.ピロリパネル、トキソプラズマパネル、ヘルペスパネル、ボレリア菌パネル、風疹パネル、サイトメガロウイルスパネル、リューマチ性関節炎パネル又はエプスタイン−バーパネルその他から選択された、対象となる分析物パネルの検出に有益である。
【0010】
1つの望ましい側面では、1以上の各試験ゾーンは、お互いに流体をやり取りする役目を持っている。さらに、他の側面では、1以上の試験ゾーンは、1以上のコントロールゾーンと流体をやり取りする役目を持っている。さらなる側面では、本発明装置は、1又は複数の縦孔ではなく、軸方向流を定めるマトリックスを用いている。よくある1つの実施形態として、本開示による装置は1以上の試験ゾーンとの流体のやり取りの役目を果たす1つの試料受入れゾーンを有している。
【0011】
よくある実施態様として、コントロールゾーンが1以上の試験ゾーンの間に配置される。随時の態様として、1以上の試験ゾーンの間にコントロールゾーンを配置することには、2つの試験ゾーンの間に1つのコントロールゾーンを配置することを含む。また随時の態様としては、1以上の試験ゾーンの間にコントロールゾーンを配置することには、複数の試験ゾーンと複数のコントロールゾーンを、各コントロールゾーンを2つの試験ゾーンの間に交互に配置することを含む。しばしば、コントロールゾーンは試験ゾーンの上流側に配置される。またしばしば、コントロールゾーンは試験ゾーンの下流側に配置される。随時の態様として、コントロールゾーンは1以上の試験ゾーンのそれぞれ、又はすべてより下流側に配置される。他の態様では、試験ゾーンとコントロールゾーンとが流路内で交互に配置され、最上流側は試験ゾーンで始まるように配置される。
【0012】
1つの実施形態において、1以上の試験ゾーンのそれぞれが、1つの分析物と特異的に結合することができる固定された試薬を含む手段を有する。従って、この実施形態では、1以上の試験ゾーンがそれぞれ1つの分析物と特異的に結合する固定化された試薬を有し、それぞれの固定された試薬は、装置中の他の試験ゾーン中に固定されたどの試薬とも異なる分析物と結合することができる。これらの手段は、ここのどこかに説明された特異的結合対構成物のいずれをも含むことができる。必要に応じ、各試験ゾーン中の異なる標識分析物を拘束する手段は、固定された捕捉試薬を含む。
【0013】
1つの側面では、試験ゾーンは、それぞれの試験ゾーンが、もし存在する場合は他の試験ゾーンと、その試験ゾーンで拘束された標識分析物がもし存在する場合はその存在下で、コントロールゾーン(単数又は複数)とを識別して検出可能であるという制限下において、どのような形状及び配置とすることも可能である。関連する側面において、コントロールゾーンは、分析の完了に当たってそれぞれのコントロールゾーンが、もし存在する場合は他のコントロールゾーンと、試験ゾーンとを識別して検出可能であるという制限下において、どのような形状及び配置とすることも可能である。
【0014】
他の実施形態では、標識ゾーンは複数の標識試薬を含み、それぞれの標識試薬は1つの分析物と特異的に結合することができる。随時の態様として、標識試薬は試料中のもし存在する場合は複数の分析物のうちのいずれか又は全てと結合できる試薬である。しばしば、それぞれの標識試薬は他と識別して検出可能である。同様にしばしば、標識試薬の標識成分は、化学発光試薬、粒子状標識、コロイド標識、比色試薬、エネルギー転移試薬、酵素、蛍光試薬及び放射性同位元素からなるグループから選択される。随時の態様として、標識試薬は異なる色の標識試薬を含む。たとえば、標識試薬は2,3,4,5、又は6以上の異なる着色粒子状試薬を含む。本実施形態では、赤、青、黒、紫及びその他のコントラストの高い色を含む粒子状の標識色がしばしば用いられる。よくある態様として、着色粒子状標識として着色ラテックス粒子状標識を含む。他の態様において、しばしば、着色標識にはカーボン、金、セレンの着色コロイド標識を含む。時には、異なる着色粒子状標識試薬を用いることにより、それぞれの試験ゾーンで異なる標識分析物を拘束する結果、1以上の試験ゾーンのいずれか1以上で、異なる検出信号(たとえば異なる色)を観察することで複数の分析物を検出することができる。よりまれな態様において、標識試薬には、1の装置において、各分析物が異なる検出信号を出すために異なる標識試薬で標識されるように、検出可能な種々の標識スキームの取合せのいずれかを含むことができる。
【0015】
随時の実施形態として、1の試験ゾーンは、その試験ゾーンで複数の標識分析物を拘束して検出できるように、1の分析物と特異的に結合する、固定された1以上の試薬を含み得る。本実施形態では、本装置で対象となる分析物は複数ありうるが、しばしば一回の流体試料中にせいぜいあったとしてもそれらのうちの1つの分析物しか存在しない。従って、本実施形態においては、分析物に特異的であること及び識別検出(すなわち異なる色)可能であることからも、複数の標識試薬を用いることが有益である。たとえば、本実施形態の装置においては、1の試料中の、もし存在すれば、インフルエンザA又はインフルエンザBの抗原を検出可能である。インフルエンザAの場合、インフルエンザAと特異的に結合する赤色標識試薬が用いられ、分析物であるインフルエンザAを含む流体試料の分析完了後には試験ゾーンが赤く着色するであろう。インフルエンザBの場合、インフルエンザBと特異的に結合する青色標識試薬が用いられ、分析物であるインフルエンザBを含む流体試料の分析完了後には試験ゾーンが青く着色するであろう。当業者は、これらの色は置換でき、そして/又はその他のここで考察された識別検出可能な標識手段を使用できうることに気がつくであろう。しばしば、このような試験ゾーンは複数の捕捉試薬の混合物を含む単独のゾーン又は単独の捕捉試薬の隣接ゾーンとして置かれる。本実施形態ではまれに、対象となる複数の分析物が流体試料中に一緒に存在し、装置に接触した後で標識され、試験ゾーン中で拘束される。従って、複数の標識分析物が1つの試験ゾーン中で拘束され得る。
【0016】
他の実施形態において、試料受入れゾーンと標識ゾーンは、流体流の接触において分離した複数要素を含む。よくある実施形態において、1以上の試験ゾーンとコントロールゾーンが1の試験領域中に配される。さらにしばしば、試料受入れゾーン、標識ゾーン、試験領域は流体流の接触において分離した複数要素を含む。またしばしば、試験領域は、試験試薬及びコントロール試薬を固定するために適したニトロセルロースその他の物質を含み、及び/又はプラスチック基材上に薄く張られている。時にはマトリックスは支持体及び任意に含み得るカバーを含み、試料受入れ口及び1以上の観察孔を有するケースの中に配置される。随時の態様として、コントロールゾーンは、試験領域が湿った状態において試験領域の中で検出可能なマークを含む。本実施形態においては、試験領域は、液体試料が試験領域を湿らせた時にマークが見えるようにするために、試験領域が乾燥した状態では不透明であるが、湿った状態では透明になる物質を含む。
【0017】
さらなる実施形態として、装置は、1の試料中のもし存在する場合にはインフルエンザa及び/又はインフルエンザbを検出できる。随時の態様として、それぞれの分析物は、毒素、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、バクテリア、ウイルス、アミノ酸、核酸、炭水化物、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬物、抗体及びハプテンからなるグループから選択される。
【0018】
他のさらなる実施形態では、コントロールゾーンの数が変数「n」で、試験ゾーンの数が変数「n+1」で表され、該試験ゾーンとコントロールゾーンとが交互に列をなして配され、列の下流側の最後が試験ゾーンである。変数「n」はしばしば2の試験ゾーンを示す。しかし時には変数「n」は2から約5の試験ゾーンを示す。従って、時には2,3,4,5あるいはそれ以上の試験ゾーンが装置上に設置される。しばしば、各試験ゾーンは1つの異なる分析物を拘束できる。時には装置は、変数「n」で表される数の分析物を検出でき、コントロールゾーンの数と検出可能な異なる分析物の数とが同じである。また時には装置は、変数「n+1」で表される数の分析物を検出でき、試験ゾーンの数と検出可能な異なる分析物の数とが同じである。
【0019】
よくある実施形態において、流体試料中の複数の分析物の検出装置が提供され、当該装置は軸方向流路を定めるマトリックスを含み、そのマトリックスは、
i)流路の上流端において流体試料を受入れる試料受入れゾーンと、
ii)試料受入れゾーンの流路下流側に、それぞれが1の分析物に特異的に結合して標識分析物とすることができ、流体試料の存在下で流動化可能な第1及び第2の標識試薬を含む標識ゾーンと、
iii)第1試験ゾーン、第2試験ゾーン、コントロールゾーンを含む試験領域であって、コントロールゾーンは流路中の第1及び第2試験ゾーンの間に配され、第1及び第2試験ゾーンはそれぞれのゾーン中で異なる分析物を検出する手段を有し、コントロールゾーンは分析の完了を表示する手段を備えた、前記試験領域と、
を含む。随時の態様として第1のゾーンは流路中のコントロールゾーンの上流側に、第2のゾーンは流路中のコントロールゾーンの下流側に配される。
【0020】
他の実施形態において、1の試料中から1以上の分析物を検出する方法が提供される。たとえば、流体試料中の複数の分析物検出方法が提供され、その方法は、
i)上記記載の装置と、対象となる1以上の分析物を含むと思われる流体サンプルとを接触させ、その装置中の1以上の試験ゾーンはそれぞれの試験ゾーンで、異なる1つの標識分析物又は異なる複数の標識分析物の組み合わせを拘束する手段を有し、
ii)1以上の試験ゾーンで拘束された1以上の標識分析物を検出すること、
を含む。しばしば、この装置はディップスティックタイプの装置を含む。通常対象となる分析物は、とりわけここに示したものを含む。しばしば、本方法は分析物の特別なパネルの分析に有益である。またしばしば、本方法は、1試料中の2以上の分析物を同時に検出するのに有益である。共通して、本装置及び方法は医学的状況を診断するのに用いられる。また共通して、本装置及び方法は治療上の決定をする手助けとなる。時には、本方法のステップは、異なる場所、異なる物によって実施され得る。
【0021】
本発明のこれらのそしてその他の特徴及び利点は、以下の発明の詳細な説明、実施例によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
開示を明確にするために、限定する目的でなく、発明の詳細な説明を以下に示すサブセクションに分ける。
【0023】
A.定義
別途定義しない限り、ここで使用される技術的、科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解する意味と同じ意味を持つ。ここで引用する全ての特許、出願、出願公開、他の刊行物は参照により完全に組み込む。もしこの章で説明する定義が、参照により組み込む特許、出願、出願公開、他の刊行物で説明される定義に反する又は矛盾する場合は、この章で説明する定義が参照により組み込む定義に優先する。
【0024】
ここで使用される「1の」は「少なくとも1」又は「1以上」を意味する。「1以上」の用語は、ここで意図する「1の」の意味を変えるものではない。
【0025】
ここで使用される「病気又は疾患」とは、たとえば感染症や遺伝子損傷によって引き起こされ、同定できる症状によって特定される生物の病理学上の症状を意味する。
【0026】
ここで使用される「試料」とは、分析が望まれる分析物を含む可能性のあるあらゆるものを意味する。試料は生物学的流体又は生物学的組織のような生物学的試料でありうる。生物学的流体の例は、尿、血、血漿、血清、唾液、精液、大便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、羊水等を含む。生物学的組織は、通常、縦連神経、上皮、筋肉及び神経組織を含む人、動物、植物、バクテリア、真菌類及びウイルスの構造の構造物質の1つを形成する細胞間質を伴う、特別な種類の細胞の集まりである。生物学的組織の例には、臓器、腫瘍、リンパ節、動脈及び個々の細胞も含む。
【0027】
「流体試料」とは、対象となる分析物を含むと思われる物質であって、ここでいうイムノアッセイ装置を流れ通過するのに十分な流動性を持つものを意味する。流体試料は、採取元から直接得られたものを使用するか、その特性を変えるための前処理をしてから使用されうる。このような試料には、人、動物、人が作った試料が含まれ得る。試料は、分析を妨害しないあらゆる都合のいい媒体中に調製できる。試料は通常、以下に詳細に示すように水溶液又は生物学的流体である。
【0028】
流体試料は、血液、血清、血漿、唾液、痰、水晶体液、汗、尿、乳、腹水、粘液、関節滑液、腹膜水、皮膚の浸出物、咽頭浸出物、気管支胞洗液、気管吸引物、脳脊髄液、精液、子宮頸管粘液、膣又は尿道分泌物、羊水等を含む生理学的流体のように、あらゆる発生源から得られる。ここで、たとえば髪、皮膚と削った爪、肉の抽出物及び果実や木の実の皮のような細胞組織の均質化(ホモジュネート)流体も生物学的流体とされる。前処理には、血液からの血漿調製、粘性流体の希釈等が含まれ得る。処理方法には、ろ過、蒸留、分離、濃縮、妨害物質の不活性化及び試薬の追加が含まれ得る。生理学的流体の他、診断上の分析と同様、工業的、環境的、食物生産上の分析を実施するため、水、食物、土壌抽出物、等のような、他の試料も使用できる。さらに、分析物を含むと思われる固体物質も、液体媒体にするか、分析物を放出するように変形すれば、試験試料として使用できる。生物学的、工業的、環境的試料の試験前の選択と前処理は、当業者によく知られており、詳細を述べる必要はない。
【0029】
ここで使用されているように、「特異的に結合する」とは、特異的結合対の結合特異性を意味する。「特異的結合対構成物」とは、特異的結合対の構成物、すなわち一方の分子が他の分子と化学的又は物理的手段で特異的に結合する、2つの異なる分子を意味する。2つの分子は、互いの結合が、似たような特徴を持つ他の分析構成要素と結合相手とを区別できるという意味において関係している。特異的結合対の構成物は、リガンド(配位子)と受容体(アンチリガンド)、sbp構成物とsbp結合物、等と称される。1つの分子もまた分子の集合体に対してsbp構成物となりうる。たとえば、別の抗体とそれに対する抗原からなる免疫複合体に対する1つの抗体は、免疫複合体に対するsbp構成物と考えることができる。
【0030】
抗原と抗体という特異的結合対構成物の他に、他の特異的結合対としては、たとえば、ビオチンとアビジン、炭水化物とレクチン、相補性ヌクレオチド配列、相補性ペプチド配列、エフェクター分子とレセプター分子、補酵素と酵素、酵素ブロッキング剤と酵素、ペプチド配列と当該配列又はタンパク質全体に対応する抗体、重合体の酸と塩基、色素とタンパク結合剤、ペプチドと特異的タンパク結合剤(たとえばリボヌクレアーゼ、S−ペプチドとリボヌクレアーゼSタンパク質)、金属とキレート剤、等を含むが、これらに限定されない。さらに特異的結合対は、もともとの特異的結合構成物に類似したもの、たとえば分析物類似体又は遺伝子組換え技術や分子工学で得られる特異的結合構成物も含み得る。
【0031】
あるsbp構成物ともうひとつの構成物が、他の同じ相補的sbp構成物と結合できる場合は、それらは類似であるという。そのような構成物は、たとえば少なくとも1つの水素原子を、たとえば標識リガンド又は標識受容体を提供する1つの基に置換して変形されたリガンドか受容体がありうる。そのsbp構成物は、分析物又は分析物と相補的なsbp構成物と類似又は相補的でありうる。
【0032】
もしも特異的結合構成物が免疫生成物であれば、それはたとえば抗体、抗原、ハプテン、あるいはこれらの複合体でありうる。抗体であれば、抗体及び他の特異的結合構成物の混合物と同様、モノクローナル又はポリクローナル抗体、組換えタンパク質又は抗体、キメラ抗体、これらの混合物又は断片でありうる。このような抗体の調製の詳細と特異的結合構成物としての適用性は、当業者に周知である。
【0033】
「抗原」は、抗体に結合できるあらゆる化合物、又はそれに対して抗体が発生するものを意味する。
【0034】
「抗体」は、1つの免疫グロブリン遺伝子又は複数の免疫グロブリン遺伝子又はこれらの断片によって実質的にコードされたポリペプチドを意味する。認知された複数の免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、ミューの定常部、同様に免疫グロブリンの複数の可変部遺伝子多数を含む。軽鎖はカッパ又はラムダに分類される。重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、イプシロンに分類され、それぞれ順に免疫グロブリンクラスIgG,IgM,IgA,IgD,IgEを定義する。通常、抗体はその表面又は空洞中に、他分子の特別な空間的及び極性構造と特異的に結合する部分を有する免疫グロブリンであり、それゆえ相補的であるといわれる。抗体はモノクローナル又はポリクローナルでありうる。抗体は完全な免疫グロブリン又はその断片を含み得る。その断片はFab、Fv及びF(ab’)2、Fab’等を含み得る。抗体は、遺伝子組換え技術によって作られるキメラ抗体及びその断片も含み得る。
【0035】
「分析物」とは、検出又は測定すべき化合物又は合成物であり、少なくとも1つのエピトープ又は結合部位を有する。分析物は、分析物の特異的結合構成物が自然に存在するか、又はたとえば炭水化物とレクチン、ホルモンと受容体、相補的核酸等の分析物の特異的結合構成物を調製し得る、あらゆる物質でありうる。さらに対象となりうる分析物は、事実上、免疫学的に検出できるあらゆる化合物、合成物、集合物その他の物質を含む。すなわち、分析物又はその一部は、少なくとも1つの決定部位を持つ抗原的、ハプテン的なもの又は自然に存在する結合対の構成物である。
【0036】
分析物は、毒素、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、バクテリア、ウイルス、アミノ酸、核酸、炭水化物、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬物(治療目的で投与されたもの及び不正目的で投与されたものを含む)、汚染物質、殺虫剤及びあらゆる上記物質の代謝物又は抗体を含むが、これらに限定されない。分析物という用語は抗原的物質、ハプテン、抗体、巨大分子、これらの結合物をも含む。全てではないが、典型的な分析物のリストが米国特許第4,366,241号の19段7行目から26段42行目までに記載されており、この開示は参照により本書に組み込む。典型的な分析物のさらなる記載とリストが米国特許第4,299,916号;4,275,149号及び4,806,311号にあり、参照により全て本書に組み込む。
【0037】
「標識試薬」は、特異的結合構成物に付加された検出可能な標識を含む物質を意味する。その付加は共有結合又は非共有結合でありうるが、しかし付加方法は本発明では重要ではない。標識は、標識試薬に流体試料中で分析物の存在に関係する信号を発生させる。標識試薬の特異的結合構成物の成分は、分析物と直接又は補助的特異的結合構成物によって間接的に結合するように選択され、それはこの後十分に詳述する。標識試薬は試験装置の捕捉ゾーンの上流側に投入でき、流体溶液になるように流体試料と結合でき、試験試料とは別に試験装置に投入でき、捕捉ゾーンに付着又は可逆的に固定化できる。さらに、特異的結合構成物は適当な付属方法により、分析前又は分析中に標識しうる。
【0038】
「標識」とは、視覚的に又は機器的手段によって検出できる信号を発生できるあらゆる物質を意味する。本発明に適用できる種々の標識には、化学的又は物理的手段によって信号を発生する標識を含みうる。そのような標識は、酵素と基質、色原体、触媒、蛍光化合物、化学発光化合物、放射性標識を含む。その他の適当な標識には、金のようなコロイド状金属粒子、セレン、テルルのようなコロイド状非金属粒子、着色プラスチック、染色した微生物のような着色又は染色粒子、有機高分子ラテックス粒子及びリポソーム、着色ビーズ、高分子マイクロカプセル、嚢、赤血球、溶血赤血球あるいはその他の直接観察できる物質を含む小嚢等を含む。通常、可視的に検出可能な標識が、標識試薬の標識成分として、検出部位で信号生成成分を追加することなく、試験試料中の分析物の存在又は量を直接可視的に又は機器的に読み取りできるように使用される。
【0039】
特定の標識を選択することは本発明において重要ではないが、標識はそれ自身で、又は機器を用いて、又は酵素/基質信号発生系のように1以上の信号発生成分を追加して、検出可能信号を発生しうる。種々の異なる標識試薬が、標識又は標識試薬の特異的結合構成物の成分を変えることにより形成されうるが、その選択には、検出すべき分析物と望ましい検出手段とを検討する必要があることが、当業者には理解されるであろう。以下に検討するように、標識は分析のための制御システムに組み込まれうる。
【0040】
たとえば、1以上の信号発生成分が、検出可能な信号を発生させるために標識と反応しうる。標識が酵素の場合、酵素を1以上の基質と反応させ、又は検出可能な反応生成物を得るために酵素及び基質を追加して反応させることにより、検出信号を増幅することができる。
【0041】
代替的信号発生システムとして、検出信号を発生させるため、標識の酵素的取扱いが不要になる蛍光化合物を標識に用いることができうる。蛍光分子には、このような系での標識としての使用に適したものとして、たとえばフルオレセイン、フィコビリプロテイン、ローダミン及びこれらの誘導物及び類似物がある。
【0042】
生物学的物質、たとえばタンパク質、炭水化物、核酸、生物全体を染色するために色素を用いることは文献にある。ある種の色素は、色素とリガンドとの化学的融和性から特定の物質を選択的に染色することが知られている。たとえば、タンパク質に対するクーマシーブルー(Coomassie Blue)とメチレンブルー、炭水化物に対する過ヨウ素酸−シッフ試薬、全細胞染色に対するクリスタルバイオレット、サフラニンO、トリパンブルー、核酸染色に対する臭化エチジウム、アクリジンオレンジ、蛍光顕微鏡検査による検出に用いられるローダミン、カルコフルールホワイトのような蛍光色素がある。標識のさらなる例は米国特許第4,695,554号;4,863,875号;4,373,932号及び4,366,241号にあり、全て参照により本書に組み込む。
【0043】
「信号発生成分」は、他の分析試薬又は分析物と反応して、分析物の存在を示し、可視的又は機器的手段で検出できる反応生成物又は信号を発生する、どのような物質をも意味する。ここでいう「信号発生システム」とは、望ましい反応生成物又は信号を発生させるのに必要な分析試薬のグループを意味する。
【0044】
ここで用いる「観察できる信号」とは、請求する装置及び方法の中で発生する、可視的に検出できる信号を意味する。制限することなく、発生する信号のタイプは、(ここに説明された)用いられる標識試薬とマークによる。一般的に、試料中の分析物の存在又は不存在を示す可視信号は、プラス又はマイナス、特別な形状をした符号のようにそれ自体で明白であるか、又は色指示パネルのようにパネルとの比較により明白となりうるものである。
【0045】
ここで用いる「軸方向流」とは、1以上の試験ゾーン及び/又はコントロールゾーンを含む特別なマトリックス又は材料を通じて流れる、側方向、縦方向又は横断的な流れを意味する。特別の装置、分析、方法の中で考察した流れのタイプは、装置の構造によって変わる。理論によって拘束されることなく、側方向、縦方向又は横断的な流れは、特別なマトリックスの一端又は一辺(上流又は中心部)での流体接触点から、この接触の下流域(末端)までの、流体試料の流れを意味しうる。下流域は、流体の接触点から、マトリックスと同じ側又は反対側にありうる。たとえば、本発明の垂直流装置において、軸方向流は第1の要素から垂直に(逆さまに)第2の要素に進み、そこから吸収媒体の上に流れる。さらなる例では、当業者には理解されるように、たとえばディップスティックとして構成された垂直流装置では、流体試料は装置を文字通り上方向に流れるが、それにもかかわらず、流体試料が装置と最初に接触した部分は上流(中心)端、流れの終点は下流端(末端)と考える。
【0046】
ここで用いる「吸収材」とは、垂直流装置及び分析において用いられ、流体試料を第1要素及び第2要素を通って流れさせ、促進させる物質を意味する。このような物質は、米国特許第4,632,901号に記載されているように、たとえば酢酸セルロース繊維のような繊維状材料、セルロース又はその誘導物、ポリエステル、ポリオレフィンのようなものである。一般的に、ここで使用される吸収材は、そこを通る流体の流れを促進させるため第2要素と直接又は密接な接触を保持する必要がある。意図した流体吸収力を持つ吸収材は、一般的に圧縮可能であり、本発明の装置の中で第2の要素又は能動制御材との接触を確実にするため、圧縮されうる。
【0047】
ここで用いられているように「試験領域が湿った状態の時に試験領域内で検出可能なマーク」とは、たとえば2001年11月10日出願で現在係属中の米国特許出願第09/950,366号、これは米国特許出願公開第20030049167号として公開されている、及び2002年11月10日出願で現在係属中の米国特許出願第10/241,822号、これは米国特許出願公開第20030157699号として公開されている、に記載されたタイプのマークを意味する。
【0048】
ここで用いられているように、「上流」及び「下流」とは、本公開において典型的な装置と接触した後、流体試料の流れる方向を意味し、通常の操作条件下では流体試料は上流から下流に向かって流れる。たとえば、流体試料が試料受入れゾーンで最初に接触した後、流体試料は標識ゾーン等を通って下流に流れる。
【0049】
ここで用いられているように、「分析の完了」とは、1以上の分析物を含むと思われる液体試料が、典型的な装置の少なくとも1の試験ゾーンと少なくとも1つのコントロールゾーンの下流方向を通過する軸方向流を意味する。従って、ここで用いられているように、複数の試験ゾーンとコントロールゾーンとを交互に配した対を含む1つの装置で複数の分析を遂行できる。より一般的には、分析の完了とは、1以上の分析物を含むと思われる液体試料が、典型的な装置の中又は上にある全ての試験ゾーン及びコントロールゾーンの下流方向を通過する軸方向流を意味する。
【0050】
B. 試験装置
【0051】
本記載は、1つのイムノアッセイ装置において、個々の試験ゾーンに関連してあらかじめ決められた方法で配置された1又は複数のコントロールゾーンの開発と使用法についてのものであり、これにより装置内で試験される、対象となる1以上の分析物のそれぞれの同定が容易になるものである。本記載はさらに、種々の形状、物理的又は化学的性質、色を持つコントロールゾーンの作成について述べる。一部に、このようなコントロールゾーンの使用を、イムノアッセイ装置、特に使用が簡単で、1つの分析手順において複数の分析物の同定が可能なディップスティックを含む装置のために検討する。
【0052】
本記載はさらに、環境モニタリング、医学、特に感染症の分野といった、多くの分野で必要とされる、迅速で複数の分析物分析を確立する手段を提供する。たとえば、考察した装置は、異なる処置が必要となるインフルエンザA又はインフルエンザBの識別診断、あるいはインフルエンザA,インフルエンザB及び/又はRSVの識別診断を1ステップで行うのに有益である装置を含む。このような装置は、1つの試料で複数の分析物を一度に分析でき、取扱いと診断プロセスの時間をかなり短縮することにより、医者又は一般の使用者の利益になるものである。
【0053】
本開示の装置及び方法を用いて、種々の分析物を分析しうる。試料中の1以上の目的とする分析物の分析に有用な特別の装置においては、対象となる分析物の集団がパネルと称される。たとえば、パネルはインフルエンザA,インフルエンザB,呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルスのいずれか(又は全て)の組合せを含みうる。他のパネルは、たとえば肺炎連鎖球菌、マイコプラズマ及び/又は肺炎を含む1以上の上気道感染症を選択する試験を含みうる。また他のパネルは、たとえばクラミジア、トリコモナス及び/又は淋病を含む性伝染症の診断に工夫できる。
【0054】
時にはパネルは、種々の対象となる分析物を任意に含み、次のようなものが含まれる。SARSに関連したコロナウイルス、インフルエンザC;B型肝炎の表面抗原又は抗体、B型肝炎の核抗体、A型肝炎のウイルス抗体、C型肝炎ウイルスからの選択を含む肝炎パネル;抗カルジオリピン抗体(IgG,IgA及びIgMアイソタイプ)からの選択を含むリン脂質パネル;リューマチ因子、抗核抗体及び尿酸からの選択を含む関節炎パネル;エプスタイン−バー核抗原、エプスタイン−バーウイルスキャプシッド抗原及びエプスタイン−バーウイルス、初期抗原からの選択を含むエプスタイン−バーパネル;HIVパネル、狼そうパネル、H.ピロリ菌パネル、トキソプラズマパネル、ヘルペスパネル、ボレリアパネル、風疹パネル、サイトメガロウイルスパネル、その他多数を含むパネル。当業者はここに記載したイムノアッセイを通じて種々のパネルが分析できることを理解されるであろう。たとえばCURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY(ジョンE.コリガン他(Coligan,John E.et.al.,)編、1999年)を参照。
【0055】
他の関連分野としては、獣の病気、畜肉、鶏肉、魚肉のバクテリア汚染分析、食品工場、レストラン、病院その他の公共施設の検査、海水、湖、プールの水汚染を含む環境試料分析、が含まれる。これらの試験で検出できる分析物は、ウイルス性及びバクテリア性抗原とともに、たとえば鉛、農薬、ホルモン、薬物及びその代謝物、炭水化物及び全ての有機又は無機化合物を含む化学物質を含む。
【0056】
本開示は、流体試料中の複数の分析物の存在又は不存在を判定する試験装置特にイムノアッセイ装置を提供する。一般的に、本開示の試験装置は、軸方向流路を定めるマトリックスを含む。通常、マトリックスはさらに試料受入れゾーン、標識ゾーン、試験ゾーン及びコントロールゾーンを含む。よくある実施形態として、試験領域は試験ゾーンとコントロールゾーンとを含む。関連する実施形態として、マトリックスはさらに試験領域の下流側に配される吸収ゾーンを含む。さらに好ましい実施形態では、試験ゾーンとコントロールゾーンを含む試験領域は、観察できる。
【0057】
本発明に従って、当業者に公知の多くの分析装置が、複数の分析物を検出するのに用いられうる。例として、側方流の通過流装置、特にイムノアッセイ装置としてのディップスティック装置が、複数の分析物を識別検出するために本発明に従って変形されうる。典型的な側方流装置として、米国特許第4,818,677号、第4,943,522号、第5,096,837号(RE35,306)、第5,096,837号、第5,118,428号、第5,118,630号、第5,221,616号、第5,223,220号、第5,225,328号、第5,415,994号、第5,434,057号、第5,521,102号、第5,536,646号、第5,541,069号、第5,686,315号、第5,763,262号、第5,766,961号,第5,770,460号、第5,773,234号、第5,786,220号,第5,804,452号、第5,814,455号、第5939,331号及び第6,306,642号に記載された装置を含む。流体試料中の複数の分析物の識別検出用に変形できうる他の側方流装置として、米国特許第4,703,017号、第6,187,598号、第6,352,862号、第6,485,982号、第6,534,320号及び第6,767,714号に記載された装置を含む。典型的なディップスティック装置としては、米国特許第4,235,601号、第5,559,041号、第5,712,172号、第6,790,611号に記載の装置を含む。前述の特許はしばしば1以上の分析形態を開示しており、ここで追加の開示のために参照されていることが当業者には理解されるであろう。有益にも、ここで記載される改良は種々の分析形態、特にイムノアッセイに適用できる。
【0058】
よくある実施形態として、試料受入れゾーンは対象となる分析物が含まれる可能性のある流体試料を受入れる。他の態様では、試料受入れゾーンは流体試料に浸漬される。標識ゾーンは試料受入れゾーンの下流側にあり、対象となる分析物を認識するか結合できる1以上の可動性標識試薬を含む。さらに、試験領域が標識ゾーンの下流側に配され、試験ゾーン及びコントロールゾーンを含む。試験ゾーンは、一般的に各試験ゾーンで対象となる特定の分析物を拘束する手段を含む。しばしば、試験ゾーンに含まれる手段は、対象となる分析物と結合する固定された捕捉試薬を含む。一般的に、その固定された捕捉試薬は、対象となる分析物と特異的に結合する。しかし時には、各試験ゾーンで対象となる特定の分析物を拘束する手段は、対象となる分析物を特異的に拘束する他の物理的、化学的又は免疫学的手段を含む。従って、流体試料がマトリックスを流れるに従って、対象となる分析物はまず標識ゾーンで流動化可能な標識試薬と結合し、そして試験ゾーンで拘束される。随時の実施形態として、試験領域は、乾燥状態では不透明だが湿った状態では透明になる物質を含む。従って、装置上にマークを含むコントロールゾーンが用いられている場合は、試験領域が湿った状態の時に試験領域内でマークが見えるようにするため、このマークは試験領域付近に配される。
【0059】
他の好ましい実施形態では、流体試料は流路に沿って試料受入れゾーン(上流側)から標識ゾーンを通り、試験ゾーン及びコントロールゾーン(いずれも試験領域に含まれる)(下流側)に流れる。任意として、流体試料はその後吸収ゾーンに続きうる。
【0060】
1つの実施形態において、試料受入れゾーンは吸収材用パッドを含む。吸収材用パッドの製造に適した材料として、親水性ポリエチレン材又はパッド、アクリル繊維、ガラス繊維、ろ紙又はパッド、乾燥紙、紙パルプ、織物等が含まれるが、これらに限定されない。たとえば、試料受入れゾーンはアクリル繊維の不織レースのような材料、たとえばニューマージ(New Merge)(デュポン(DuPont)より購入可能)やHDK材(HDKインダストリーズ社(HDK Industries,Inc.)より購入可能)を含み得る。関連する実施形態において、試料受入れゾーンは水を吸収するどんな物質からも作られる。
【0061】
他の実施形態として、試料受入れゾーンは流体試料が標識ゾーンへ通りぬけることができるどんな物質をも含む。さらに、吸収材用パッドは、流体試料中に発生する可能性のある細胞性構成物、ホルモン、粒子その他のある種の物質をろ過するように作られうる。本発明に適したパッド材は、米国特許第5,075,078号に開示されたパッド材も含み、参照により本書に組み込む。
【0062】
試料受入れゾーンの役割は、たとえば適用される試料のpH制御/調整及び/又は比重の制御/調整、試料の分析中の非特異的結合の原因又は試験領域への試料の直接かつ制御流入の妨害となる物質の除去又は変形が含まれる。ろ過によって、対象となる分析物は、妨害物質がほとんどない、あってもごくわずかな中で、制御された方法で、装置を通って移動することができる。ろ過段階がもし存在すれば、しばしば試験の成功率や正確さの可能性がより高くなる。他の実施形態では、試料受入れゾーンは試料中に存在する可能性のある対象外の分析物との交差反応性を避け、及び/又は試料を調整するのに有益な試薬を組み込み得る。特別な実施形態によっては、これらの試薬は、非hCGブロッカー、抗RBC試薬、3塩基緩衝液、EDTAその他を含み得る。全血を使用することを考えた場合、抗RBC試薬がよく用いられる。さらに他の態様においては、試料受入れゾーンは補助的特異的結合構成物、流体試料前処理試薬及び信号発生試薬のような他の試薬を組み込み得る。
【0063】
さらなる1つの実施形態において、試料受入れゾーンは追加の試料受入れ材(たとえば芯材)を含む。従って、1つの側面において、試料受入れゾーンは試料受入れパッドとともに、試料受入れ材も含み得る。しばしば試料受入れ材は、ここで考察するあらゆる種類の流体試料を速やかに吸収し、その物理的形状をしっかりと保つ材料を含む。よく試料受入れ材は白色に固めたポリエステル繊維のような物質を含む。さらに、試料受入れ材は、存在する場合、試料受入れパッドとの流体流の接触中に配置される。この流体流の接触は重なり合い、隣接し、交差するタイプの接触を含みうる。随時の態様として、試料受入れ材は、親水性処理剤で処理されうる。しばしば試料受入れ材は、存在する場合、典型的な試料受入れパッドに用いられるのと似た試薬を含み、似た材料を含みうる。
【0064】
他の実施形態において、試験装置は免疫学的分析プロセスを達成するよう構成される。さらに他の態様では、マトリックスに沿った液体輸送は毛細管現象に基づく。さらに別の態様では、マトリックスに沿った液体輸送は、非吸水性の側方流に基づき、ここで液体試料中の全ての溶解又は分散した成分は、たとえば1以上の成分が化学的、物理的、イオン的又はその他の相互作用をする物質内で起こる、1以上の成分が優先的に保持される状況とは対照的に、物質的に等しい率で、相対的に弱められていない流れでマトリックスを通して側方的に運ばれる。たとえば米国特許第4,943,522号を参照、これは参照により本書に組み込む。
【0065】
標識ゾーンの1つの目的は、標識試薬とコントロール試薬を安定な状態に保ち、これらを迅速かつ効果的に溶解、流動化し、流体試料中に含まれる可能性のある対象となる分析物と特異的に反応するのを促進することである。
【0066】
1つの実施形態において、標識ゾーンは、米国ジョージア州フェアバーンにあるポレックステクノロジーズ社(Porex Technologies Corp.)が製造する高密度ポリエチレンシート材のような多孔性物質が含まれる。そのシート材は開孔構造を持ち、40%空隙率における典型的密度は0.57グラム/ccであり、平均孔径は1から250マイクロメーターであり、通常平均孔径は3から100マイクロメーターである。他の態様では、標識ゾーンはたとえばニューマージ(New Merge)又はHDK材といったアクリル繊維の不織レース(試料受入れゾーンと同様)のような多孔性物質を含む。よく多孔性物質は、たとえばマイラー(Mylar)のような一般的な不透水性層で支持するか薄く張られうる。そのような場合、支持材は一般に接着剤(たとえば3M444両面接着テープ)でマトリックスと固定されている。通常不透水性支持材は薄いメンブレンに使用される。広範な種類の高分子が、分析成分と非特異的に結合せず、流体試料の流れを妨害しないように用いられうる。実例としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンその他が含まれる。時にはマトリックスは自立的でありうる。ポリビニルクロライド、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートとビニルクロライドのコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリスチレン等の、非吸水性流に従う他のメンブレンも用いられる。さらに他の態様では、標識ゾーンは未処理の紙、セルロース混合物、ニトロセルロース、ポリエステル、アクリロニトリルコポリマー等のような物質も含む。標識ゾーンは吸水性又は非吸水性の流れを形成するように作られ、しばしば流れのタイプは少なくとも試料受入れゾーン部分で形成される流れと類似又は同一である。よくある態様において、標識ゾーンはレーヨン又はガラス繊維のような不織繊維を含む。本発明において標識ゾーンに用いるのに適した他の材料として、米国特許第5,075,078号に開示されたクロマトグラフ用材料が含まれ、参照により本書に組み込む。
【0067】
よくある実施形態において、標識ゾーン材料は物質ブロッキング剤、標識安定剤を含む標識溶液で処理される。ブロッキング剤には牛の血清アルブミン(BSA)、メチル化BSA、カゼイン、脱脂粉乳が含まれる。安定剤は、すぐに利用でき、当業者に公知であり、たとえば標識試薬を安定化するために用いられる。よくある態様において、標識ゾーンに標識試薬とともに選択したブロッキング剤と安定剤を使用した後、そのブロッキング剤と安定剤を乾燥する(たとえば凍結乾燥又は温風乾燥プロセス)という方法が、装置の性能を向上させるために取られる。
【0068】
標識ゾーンは通常1つの標識試薬を有し、しばしば1以上の標識試薬を含む。考察された多くの実施形態においては、標識ゾーンにおいて、装置と接触する流体試料に浸透するように複数のタイプの標識試薬が用いられる。このような複数のタイプの標識試薬は、分析物に特異的又はコントロール試薬であり、同一装置内で使用された場合に標識試薬を他の標識試薬と区別するために異なる検出特性(たとえば異なる色)を持ちうる。標識試薬は、流体試料が標識ゾーンを通過したのち、特定の対象となる分析物に結合するため、異なる特性(分析物への特異性、コントロール標識試薬を含む)を持つ標識試薬の識別検出は望ましい特性になりうる。しかし標識成分のみに起因する異なる特性を持つ標識試薬の識別検出能力は、指定されたゾーンに標識試薬を蓄積する明確な試験ゾーン及びコントロールゾーンが装置内にあることから、しばしば不要である。
【0069】
1つの実施形態において、非粒子状標識方法が考察された。これらの装置内では、染色された抗体−酵素複合物が用いられた。この染色された抗体−酵素複合物は、酵素基質と界面活性剤の存在下で、抗体−酵素コンジュゲートをポリマー化することで調製できる。たとえば国際公開第9401775号パンフレットを参照のこと。通常、標識ゾーンは酵素−抗体コンジュゲート、粒子状標識試薬又は染色された標識試薬、金属ゾル標識試薬等を含む検出可能な部分あるいは可視又は可視ではないが試験ゾーン及び/又はコントロールゾーンで蓄積すると検出できる部分を含む。検出可能部分は、十分な量が集まると可視となる色素又は染色されたポリマーでありうるし、あるいは染色又は着色したラテックスビーズ、リポソーム、金属又は非金属コロイド、有機物、無機物、色素、染色又は着色された細胞又は器官、赤血球その他のような粒子でありうるし、また好ましい。分析に用いられる検出可能な部分は、結果の本質及び/又は量を検出する手段を与え、従って試験ゾーンでのそれらの局在化は試料中の分析物の機能でありうる。一般的に、これは試験ゾーンにある対象となる分析物を拘束する手段により、対象となる分析物と特異的に結合又は競争するリガンドと検出可能な部分とを結合させることで達成される。最初のアプローチでは、検出可能な部分は、分析物と特異的に結合する特異的結合相手と結合する。たとえば、分析物が抗原であれば、その抗原に特異的な抗体が使用される。F(ab')2,Fab又はFab’のような、免疫学的に反応性のある抗体の断片も使用できる。検出可能な部分と結合したこれらのリガンドは、標識ゾーンを通過する間に、対象となる分析物が試料中に存在する場合はそれと結合し、装置内の流体流によって試験領域に運ばれる。標識分析物が捕捉ゾーンに到達すると、抗体や他の特異的結合対の構成物のように、分析物に特異的な、標識/検出可能な部分に特異的な、リガンドに特異的な、拘束試薬に拘束される。2番目のアプローチとしては、コンジュゲート又は粒子状の部分は、試験ゾーン内の分析物に特異的な拘束試薬として、分析物と競争的であるリガンドと結合する。試料からの分析物と、検出可能な部分と結合した競争相手はともに流体試料の流れに乗って試験領域に進む。そして分析物とその競争相手は共に、試験ゾーンにある分析物に特異的な拘束試薬と反応する。従って標識されていない分析物は、試験ゾーンに保持された、競争相手と共役した検出可能な部分の量を減らすことができる。この検出可能な部分の保持量の減少は、試料中の分析物の計測器になる。
【0070】
本発明のイムノアッセイ装置の標識ゾーンは、コントロールタイプの試薬も含む。このような標識されたコントロール試薬は、試験ゾーンで拘束されずに装置内の流体試料の流れによって試験領域及びコントロールゾーンに運ばれる、検出可能な部分をしばしば含む。よくある実施形態において、このような検出可能な部分は特異的結合対の構成物と結合し、試験領域の分離されたコントロールゾーンで対応する特異的結合対の構成物によって拘束され、液体流が予定通りであることを証明するコントロールコンジュゲートを形成する。標識されたコントロール試薬に用いられる可視的部分は、対象となる分析物と特異的な標識試薬に使用されるものと同じか又は異なる色、あるいは同じか又は異なるタイプのものがありうる。異なる色のものを使用すると、結果の観察が容易であることが強調されうる。一般的に、ここで用いられているように、標識コントロール試薬は、対象となる分析物に特異的な標識試薬あるいは標識試験試薬とともに「標識試薬」という。
【0071】
試験領域は、よくセルロース、ニトロセルロース、ナイロン又は親水性ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)のような物質を含む。親水性ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)(マサチューセッツ州ビレリカ、ミリポア(Millipore)社で購入可能)。「ニトロセルロース」は、セルロースのあらゆる硝酸エステルを意味する。従って、適当な物質には、セルロースのカルボン酸エステルと合わせて用いるニトロセルロースが含まれ得る。ニトロセルロースメンブレンの孔径は大きく変わりうるが、しばしば約5から20ミクロンの範囲であり、好ましくは約8から15ミクロンである。しかし当業者に公知の他の物質が考察されている。よくある実施形態として、試験領域は、透明な支持マイラー上に薄く張られたミリポアニトロセルロースロールから作られる、ニトロセルロース繊維の集合体を含む。他の態様では、試験領域はナイロンから作られる。まれな態様では、試験領域は、分析物と特異的に結合する第2の試薬を運ぶラテックス又は他の粒子を固定化し、試験ゾーンを特定する物質、たとえば圧縮ナイロン粉末又はガラス繊維を含む。随時の態様として、試験領域は乾燥した状態では不透明で、湿った状態では透明になる物質を含む。好ましくは、試験ゾーン及びコントロールゾーンは、試験領域のために挙げた上記のいずれかの物質から作られうる。しばしば試験ゾーン及びコントロールゾーンは試験領域の特定要素を形成する。特に好ましい態様として、試験ゾーン及びコントロールゾーンは、試験領域と同じ材料を含む。しばしば、ここで用いられる「試験領域」は、少なくとも試験ゾーン及びコントロールゾーンとを含む装置内/上の領域を意味する。非吸水性流を提供するために、これらの材料は吸水性メンブレンの吸水性を引き起こす力をブロッキングするブロッキング剤で処理されうるし、またそれが好ましい。適当なブロッキング剤には、牛の血清アルブミン、メチル化した牛の血清アルブミン、加工していない動物の血清、カゼイン及び脱脂粉乳が、多くの界面活性剤や高分子たとえばPEG,PVA等とともに含まれる。好ましくも未処理の吸水性メンブレンの妨害部位はブロッキング剤で完全にブロックされ、それにより非吸水性流がそこにできる。ここに示したように、本開示は複数の試験ゾーン及びコントロールゾーンを有する試験装置を認識している。
【0072】
試験領域は、一般的に、試料の流れが期待通りであることを確認するのに有用なコントロールゾーンを含む。各コントロールゾーンは、標識コントロール試薬と反応する、固定された特異的結合対構成物をしばしば含む空間的に分離した領域を含む。随時の態様として、手続き上のコントロールゾーンは、対象となる分析物又はその断片の本物標本を含む。この実施形態では、あるタイプの標識試薬を使用でき、流体試料が標識試薬を試験ゾーン及びコントロールゾーンに運び、対象となる分析物に結合しなかった標識試薬は、コントロールゾーンにある対象となる分析物の本物標本と結合する。他の態様では、コントロールゾーン線は、標識試薬に特異的であるか、そうでなければ標識試薬を固定化するための抗体を含む。操作においては、標識試薬は、たとえ対象となる分析物のいずれか又は全てが試験試料中に存在しない場合であっても、1以上のコントロールゾーンのそれぞれにおいて拘束される。
【0073】
まれな実施形態としては、標識コントロール試薬は、コントロールゾーンの上流で流体試料の流れの中に導入される。たとえば、標識コントロール試薬は、試料が分析装置に適用される前に、流体試料中に加えられうる。よくある態様では、標識コントロール試薬は、試料受入れゾーン内に拡散的に結合しうるが、好ましくは標識ゾーン内に拡散的に結合される。
【0074】
標識コントロール試薬とゾーンの典型的な機能は、たとえば、試料の液体流が標識ゾーンに置かれた標識試薬を効果的に溶解、流動化し、十分な量の液体が試料受入れゾーン、標識ゾーン、試験ゾーン及びコントロールゾーンを正しく通過して、十分な量の分析物が標識ゾーンの対応する特定の標識と反応し、試験ゾーン及びコントロールゾーンを含む試験領域に移動し、試験結果が陽性の場合には、標識分析物が蓄積して可視的又は読み取り可能な信号が試験ゾーンにおいて生成するのに十分な量が試験ゾーンを横断することの確認を含む。さらに、コントロールゾーンの追加的機能は、使用者に可読ゾーンとして表示される試験結果を同定させるための参照ゾーンとして働くことである。
【0075】
本発明の装置は、1以上のコントロールゾーンを有しうるので、標識コントロール試薬及び対応するコントロールゾーンは、対象となる1以上の分析物が存在するしないにかかわらず、流体試料が装置と接触した後に、各コントロールゾーンが全てのコントロールゾーンのために、望ましい強度で可視化するように好ましく開発される。
【0076】
1つの実施形態においては、単一の標識コントロール試薬が試験片の各コントロールゾーンで捕捉される。しばしば、このような標識コントロール試薬は、複数のコントロールゾーンが存在する場合には連結したコントロールゾーンの全結合能力を超える量が、標識ゾーン上又は内に添加される。従って、コントロール標識に特異的な捕捉試薬は、1以上のコントロールゾーンに望ましい強度の信号を生成し、また各コントロールゾーンで望ましい量の標識コントロール試薬を拘束するような量で添加しうる。分析完了時には、好ましくも各コントロールゾーンで、望ましい及び/又はあらかじめ設計した信号(強度及び形態)が発生する。考察されたあらかじめ設計された信号の例として、各コントロールゾーンで等しい強度の信号、コントロールゾーン内で次第に増加又は減少する信号あるいはその他の信号強度の望ましいパターンを含む。
【0077】
他の実施形態では、各コントロールゾーンは1つのコントロール試薬に特異的である。この実施形態では、標識ゾーンは分析におけるコントロールゾーンの数と同じ、複数の異なる標識コントロール試薬を含み得るし、また関連する類型も含む。ここでは、各標識コントロール試薬は、1以上のあらかじめ決められた特定のコントロールゾーンで拘束されうる。これらの標識コントロール試薬は、コントロールゾーン内で蓄積し、同じ検出可能な信号(たとえば同じ色)を発生するか、識別検出可能な信号(たとえば異なる色の標識又は他の検出システム)を発生する。
【0078】
さらに他の実施形態では、コントロールゾーンは、先の実施形態で説明した2つのタイプのコントロールゾーンの組合せを含み得る。特に、1以上のコントロールゾーンは1つのタイプの標識コントロール試薬を拘束又は結合し、同じ試験片上の他のコントロールゾーンは1又はいくつかの特定の標識コントロール試薬を結合できる。
【0079】
1つの実施形態において、標識コントロール試薬は、特異的結合対構成物と結合した検出可能な部分を含む。通常、標識コントロール試薬は、試験ゾーンで対象となる分析物を拘束できる手段によって認識される試薬とは異なる試薬から選択される。さらに、標識コントロール試薬は、一般的に分析物と特異的ではない。よくある態様においては、標識コントロール試薬は、コントロールゾーン上又は内で固定化された、対応する特異的結合対構成物又はコントロール捕捉相手と結合することができる。従って、標識コントロール試薬はコントロールゾーン内で直接拘束される。
【0080】
他の実施形態では、標識コントロール試薬の標識成分を形成する検出可能な部分は、対象となる分析物の標識試験試薬の標識成分として用いられる、検出可能な部分と同じである。よくある態様においては、標識コントロール試薬の標識成分は、標識試験試薬の標識成分と異なるため、分析結果が容易に判定できる。他のよくある態様では、コントロール標識と試験標識は着色ビーズたとえば着色ラテックスを含む。同様によく、コントロールラテックスビーズ及び試験ラテックスビーズは異なる色を含む。
【0081】
さらなる実施形態では、標識コントロール試薬は、ストレプトアビジン、アビジン又はビオチンを含み、コントロール捕捉相手は、お互いに速やかにかつ特異的に結合するそのような特異的結合対に対応する構成物を含む。1つの例では、標識コントロール試薬はビオチンを含み、コントロール捕捉相手はストレプトアビジンを含む。熟練者は、たとえば抗原/抗体反応を含む他の特異的結合対構成物が、分析物に関係なく代替的に使用できうることを認識されるであろう。
【0082】
コントロールゾーンの使用は、たとえ結果が陰性であった場合でも、試験結果を読める時を表示する信号を、コントロールゾーンにおいて表出するという点で有用である。従って、コントロール線に予期した信号が現れた時、試験ゾーンにおける信号の有無を確認しうるのである。
【0083】
さらなる実施形態では、試験領域が湿った状態の時に試験領域で見えるようになるマークを含むコントロールゾーンが使用される。このタイプのコントロールゾーンは、2001年11月10日出願で現在出願中の米国特許出願第09/950,366号、出願公開番号第20030049167号、2002年11月10日出願で現在出願中の米国特許出願第10/241,822号、出願公開番号第20030157699号に記載されている。
【0084】
時には実施形態として、1以上のこのタイプのコントロールゾーンが用いられる。他の態様においては、標識コントロール試薬とコントロールゾーンを用いるタイプと、湿った状態の時にコントロールゾーンを表示するタイプのコントロールゾーンが組み合わせて使用できうる。この方法では、標識パッド内での試薬の再溶解及び流動化プロセスを確実に効果的にし、試料パッド、標識パッド、試験片及び吸収パッドで規定される全ての流路に沿って予期したとおりに起こる特異的反応を確実なものにするために、試薬を基本とするコントロールゾーンを用いることができるとともに、コントロールゾーンの構成を単純にすることができる。本実施形態では、分析における試験片の末端又は下流端のコントロールゾーンを除く各コントロールゾーンのために、試験領域が湿った状態の時に見えるようになる1以上のコントロールゾーンの使用が含まれる。
【0085】
上記の通り、対象となる分析物と特異的に結合できる特異的結合対構成物と結合した試験標識をしばしば含む標識試験試薬がさらに提供される。従って、一般的に、複数の標識試験試薬が標識ゾーンに配置され、それぞれはあらかじめ決められた対象となる分析物に特異的である。
【0086】
本記載の試験ゾーンは、対象となる分析物を拘束する手段を含む。しばしば、本記載の試験ゾーンは対象となる分析物と特異的に結合することができるリガンドを含む。代替的に、本記載の試験ゾーンは、対象となる分析物と結合した標識試薬と特異的に結合できるリガンドを含む。現実的には、標識試験試薬は、代表的な装置と接触し、流体試料が標識ゾーンに流入、通過した後に、流体試料中に存在する対象となる分析物と結合する。その後、標識分析物を含む流体試料は試験ゾーンに進み、試験ゾーン内で拘束される。標識分析物が試験ゾーン内に蓄積すると、検出可能な信号が生成する。しばしば本開示の装置は1以上の試験ゾーンを含み、それぞれが流体試料中の、存在するとすれば、複数の異なる分析物を拘束できる。従って、代表的な実施形態においては、1つの装置で2,3,4,5又はそれ以上の対象となる(標識)分析物が1つの又は異なる試験ゾーンで拘束され、そしてそこで検出されうる。
【0087】
本装置は、さらに任意で、試験ゾーンを通過した後の余剰の試料を吸収する吸収ゾーンを含みうる。存在する場合には、吸収ゾーンは試験領域との流体流の接触の中に配置される。この流体流の接触は重なり合い、隣接し、交差するタイプの接触を含みうる。随時の態様として、コントロール領域(分析終了表示器)は、分析の完了を表示するために吸収ゾーンの中に置かれる。この実施形態では、pHに敏感な試薬(ブロモクレゾールグリーンのような)のような特別な試薬が、流体試料が全ての試験ゾーン及びコントロールゾーンを浸透し通過したことを表示するために用いられる。代替的に、分析終了コントロール領域は、全ての試験ゾーン及びコントロールゾーンの後の試験領域上の吸収ゾーンとの接点に可溶性のインク線を置くことで効果的になりうる。一般的に、捕捉ゾーンを移動する液体の先端がインクを溶かし、吸収材に移動させるであろう。その結果、色の変化が吸収ゾーンの上にある観察窓に見られ、分析の終了を表示する。従って、このタイプのコントロール領域は、特別の分析物に特異的なものではない。一般的に、吸収ゾーンは、ろ紙、ガラス繊維ろ紙等のような吸収物質からなる。
【0088】
随時の態様として、流体試料は、複数の対象となる分析物のうち少なくとも1つを正確に検出するために、装置に接触させる前に処理されなければならない。この実施形態では、抽出液のような試薬が試料を調製するために使用されうる。代替的に、流体試料が最初に接触した後に、試薬を装置に加えることができる。たとえば、試料を装置に導入し、その後に、分析を完全にするために染色液のような試薬を加える。
【0089】
図1は、考察された本装置の代表的な種々の構成を表す。これらの構成は、ここで考察されたイムノアッセイ装置の中でとりわけディップスティックタイプの分析に適用しうるが、ディップスティックタイプの分析に限定するわけではない。図の矢印は、装置と最初に接触した後の流体試料の流れる一般的方向を示す。垂直線及び/又は斜線をつけた枠はコントロールゾーンを、網掛けした枠は試験ゾーンを示す。試料受入れゾーン(1)、標識ゾーン(2)、試験領域(3)も示されている。本開示は、図1から図3に示した構成(AからJ)に限定することを意図したものではない。これらの図は単に例示目的のためである。たとえば、試験ゾーン及びコントロールゾーンは、図1に示すように同じ形状、寸法である必要はない。さらに、試料受入れゾーン、標識ゾーン及び試験領域は必ずしも同一の縮尺である必要はない。図1のAは、2つの試験ゾーンと1つのコントロールゾーンを有し、コントロールゾーンが流路中で試験ゾーンの間に配置された装置である。図1のBは、3つの試験ゾーンと2つのコントロールゾーンとを有し、コントロールゾーンが流路中で試験ゾーンの間に配置された装置である。さらに図1のBは、2番目の試験ゾーンが流路中で2つのコントロールゾーンの間に配置されている。図1のCは、4つの試験ゾーンと2つのコントロールゾーンを有し、コントロールゾーンが流路中で試験ゾーンの間に配置された装置である。さらに図1のCは、2番目と3番目の試験ゾーンがコントロールゾーンを挟まずにコントロールゾーンの間で隣り合っている。図1のDは、2つの試験ゾーンと1つのコントロールゾーンを有し、コントロールゾーンが流路中で試験ゾーンの下流側に配置された装置である。図2のEは、2つの試験ゾーンと1つのコントロールゾーンを有し、コントロールゾーンが流路中で試験ゾーンの上流側に配置された装置である。図2のFは、4つの試験ゾーンと3つのコントロールゾーンを有し、コントロールゾーンが流路中で試験ゾーンの間に交互に配置された装置である。図2のGは、5つの試験ゾーンと1つのコントロールゾーンを有し、コントロールゾーンが流路中で最後から2番目と最後の試験ゾーンの間に配置された装置である。さらに図2のGは、最初から4番目までの試験ゾーンが、コントロールゾーンを挟まずに隣り合っている。図2のHは、3つの試験ゾーンと1つのコントロールゾーンを有し、コントロールゾーンが流路中で2番目と3番目の試験ゾーンの間に配置された装置である。図3のIは、4つの試験ゾーンと3つのコントロールゾーンを有している。(ここで、2つのコントロールゾーンは同じ標識コントロール試薬と特異的試薬結合対(又は代替的に試験ゾーンが湿った状態の時に見えるようになる刺激物)を含むが、1つのコントロールゾーン(斜線で示す)は標識コントロール試薬とコントロールゾーン結合試薬との別個の対を含む。)図3のJは、4つの試験ゾーンと3つのコントロールゾーンを有している。(ここで、1つのコントロールゾーンは同じ標識コントロール試薬と特異的試薬結合対(又は代替的に試験ゾーンが湿った状態の時に見えるようになる刺激物)を含むが、2つのコントロールゾーン(斜線で示す)は標識コントロール試薬とコントロールゾーン結合試薬との別個の対を含む。)2つのタイプのコントロールゾーン又はコントロールゾーン試薬対を使用すると、それぞれのコントロールゾーンはしばしば異なる色になりうる。本開示の範囲内の他の装置構成が考察されている。たとえば、示されていないが、本開示では、1つの試験ゾーンと1つのコントロールゾーンを有し、複数の分析物が試験ゾーンで検出できる装置を考察している。
【0090】
当業者には、本装置に直接又は間接の種々の分析形式が適用できることを認識されるであろう。よくある実施形態では、直接分析形式が利用される。直接分析は試料中の抗体の存在の検出のみならず、試料中の抗原の検出がその典型例となる。
【0091】
上に述べたように、本発明の特別な装置は、支持体を含む。これらの装置における支持体は、分析の実施のために便利な台を提供する。しかし、支持体の構造及び形状は重要ではなく、変わりうる。時には、支持体はプラスチック又はナイロン材を含みうる。
【0092】
よくある実施形態では、本装置はディップスティックの形態をとる。一般的に、本発明におけるディップスティックは、ここで説明する側方分析と、流体試料との接触方法を除き、機能的に類似している。ディップスティック形態での実施形態では、マトリックスと支持体は通常、ディップスティックの一端に存在する。このような装置の形態によって、マトリックスの一端すなわち試料受入れゾーンを、流体試料に浸漬又は接触させることが可能となる。流体試料の接触後、試料は好ましくもマトリックスを通る軸方向流路内を試料受入れゾーンから標識ゾーン及び試験領域まで移動する。代替的に、本発明の装置は、試料を浸漬以外の方法たとえばピペッターによる一定量の試料投入等によって装置に投入できるような形状にしうる。
【0093】
本発明は以下の実施例によって詳細に説明される。実施例は、単に特定の実施形態を参照として本発明を例示するために提供するものである。これらの典型例は、本発明のある特定の一面を表すものであるが、開示された発明の範囲の限界を示したり、制限したりするものではない。
【実施例1】
【0094】
インフルエンザAとインフルエンザBを識別する典型的な試験装置
【0095】
本発明に従って、複数の分析物の存在を判定し、それらを識別するために用いられるイムノアッセイ装置を作製した。特に、インフルエンザの診断及びインフルエンザA感染とインフルエンザB感染の識別が可能なディップスティックイムノアッセイ装置を用意した。当業者は、他の側方流イムノアッセイ装置と同様、ディップスティックイムノアッセイ装置(たとえば米国特許第5,712,172号を参照)を用意する一般的方法には慣れ親しんでいる。ここで説明する典型的装置も同様に作製されうる。
【0096】
典型的な試験装置は、試料調整試薬を含む試料パッド及び標識パッドを含んだ。標識パッドには、赤く着色したラテックス微粒子(デュークサイエンティフィック(Duke Scientific)社)と共有結合した、インフルエンザA核タンパク質に対するモノクローナル抗体、赤く着色したラテックス微粒子と共有結合したインフルエンザB核タンパク質に対するモノクローナル抗体、及び青色ラテックス微粒子(デュークサイエンティフィック(Duke Scientific)社)と結合した関連性のないタンパク質(本実施例ではビオチニル化したBSA)が含まれた。装置は、流体流路内に順に、試料パッド、標識パッド、試験パッド(観察ゾーン)、そして装置の最後に吸収パッドから構成された。これらのパッドは、1つのパッドから次のパッドへの側方流を達成するように、流路内で順にマイラー支持材上に3M接着剤で薄く張られた。そして観察ゾーン上の切欠(窓)を含むプラスチック片が、試料を付着させるために装置の試料パッド部分を除いて、装置の上部に薄く張られた。このプラスチックカバーは、これらのパッドをその場所に固定し、お互いにオーバーラップして接触させてパッド間の流体移動を維持する目的があった。さらに、このプラスチック材は、最終的な装置に十分な強度を与えて取扱いを便利にし、ディップスティックの試験プロセス中湿った状態になる部分を分離するために選択された。
【0097】
観察ゾーンは、白色マイラー支持材の上にミリポア(Millipore)製のハイフロープラス(Highflow Plus)ニトロセルロースメンブレンを薄く張って作られた。試験試薬及びコントロール試薬は、標準技術を用いて、観察ゾーンメンブレン上に3本の線で、それぞれ試料の流れに対して直角に上流から下流に次の順で添加された。すなわち、インフルエンザB核タンパク質の2番目のエピトープに対する抗インフルエンザBモノクローナル抗体をリン酸緩衝液中に約3mg/ml濃度としたものを最初の試験ゾーンとして添加し、最初の試験ゾーンから約3mm下流側にストレプトアビジンで標識されたBSAを添加してコントロールゾーンを形成し、最初のコントロールゾーンから約3mm下流側に、インフルエンザA核タンパク質の2番目のエピトープに対する抗体(同じくリン酸緩衝液中に約3mg/ml濃度としたもの)を添加して2番目の試験ゾーンを形成した。従って、2つの試験ゾーンと1つのコントロールゾーンが、図1のAに示すように構成された。
【0098】
いったん試験試薬及びコントロール試薬がニトロセルロースメンブレン上に添加され、乾燥されると、メンブレンはブロッキング溶液で処理して非吸水性にされた。上で論じたように、非吸水性流は、分析中の対象成分を選択的に保持することなく、試験片に沿って実質的に同じ率で移動させる。これによって十分な量の標識物質が試験ゾーン及びコントロールゾーンを通過することを促進し、コントロール線を2番目の試験線の上流側に配置しても、コントロールゾーンの効果や信頼性が妨害されることがない。
【0099】
本実施例では、試験装置の最後に、観察ゾーンが、セルロース吸収紙(ワットマン
(Whatman)紙)で作った吸収パッドとの流体接触内に置かれる。
【0100】
産業界で一般的なように、非特異的結合を避けつつ必要な感度を得るように、試験の開発中に各成分の濃度が最適化された。たとえば、着色ラテックス/抗インフルエンザA抗体コンジュゲートが連続的に希釈され、機能的試験片に乾燥、配置された標識パッドに添加され、7.5ng/mlから100ng/mlの濃度範囲のウイルス性核タンパク質の液体試料と試験された。7.5ng/mlの核タンパク質溶液を検出できる最低コンジュゲート濃度が最適値として選択された。抗インフルエンザB抗体/着色ラテックスコンジュゲートの濃度も同様に最適化された。コントロールタンパク質/着色ラテックスコンジュゲートの最適濃度は、アッセイの通常のインキュベーションの後に線が明確に肉眼視できるように選択された。最終製品を作るために、最適化された標識(コンジュゲート)溶液が混合され、標準技術を用いて標識パッドに添加、乾燥された。
【0101】
吸収パッドのサイズ/容量は、十分な量の試料液が試験片を通って2つの試験ゾーンと1つのコントロールゾーンを横断し、試料中にわずか7.5ng/mlのインフルエンザA核タンパク質及び7.5ng/mlのインフルエンザB核タンパク質が含まれる場合にも正確な可視信号が発生するように最適化された。
【実施例2】
【0102】
典型的装置の試験
【0103】
コントロールゾーンが試験ゾーンの上流側にあっても、本発明による装置の精度を低下させないことを確認するため、2つの装置が製作され、比較された。いずれの装置も、インフルエンザA試験ゾーン(単一の分析物)のみからなることを除き、上記のとおりに製作された。一方の装置では、コントロールゾーンは試験ゾーンの上流側に配置され、2番目の装置はコントロールゾーンが試験ゾーンの下流側に配置された。比較的濃度の低い(10分間のインキュベーションの後に光学密度走査計で測定できる約0.030ODの可視信号を発生するのに十分な)インフルエンザA核タンパク質試料を準備し、2つの装置に適用した。図4は、2つの装置の、試料の量に対する試験ゾーンとコントロールゾーンとのOD値の割合を示す。試料量が25μLから300μLまで増加するにつれ、設計仕様に合う分析に十分な信号を発生するのに必要な最低限の試料量の同定が容易となる。図4のグラフは、2つの装置の試験ゾーンとコントロールゾーンで発生する信号の比率は、試験ゾーンのコントロールゾーンに対する位置にかかわらず実質上同一であることを明確に示している。
【0104】
上記実施例は、例示を目的とするのみであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。上に説明したものの多くの変形例が可能である。上記実施例の修正、変形は当業者には明らかであり、本発明は、添付の特許請求の範囲のみによって制限されるものである。ここで引用した刊行物や書類は、これらのいずれもが適切な先行技術であることを認めるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】A〜Dは、意図された装置における、試験ゾーン及びコントロールゾーンの種々の構成例を示す。各図の矢印は装置に最初に接触した後の流体試料の流れ方向を示す。垂直線及び/又は斜線を含む枠はコントロールゾーンを、網掛けした枠は試験ゾーンを示す。さらに、試料受入れゾーン(1)、標識ゾーン(2)、試験領域(3)を示している。本装置は、ここに挙げた実施形態に示された側面に限定するものではなく、他の形態も考えられる。さらに、示した側面は必ずしも同一の縮尺を表すものではない。
【図2】E〜Hは図1の他の構成例を示す。
【図3】I及びJは、図1及び2の他の構成例を示す。
【図4】典型的な装置における、試料量の違いによる試験ゾーンとコントロールゾーンの信号の比率を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料中の複数の分析物の検出装置であって、
軸方向流路を定めるマトリックスを含み、該マトリックスは、
i)前記流路の上流端において前記流体試料を受入れる試料受入れゾーンと、
ii)前記流路内試料受入れゾーンの下流側に位置する標識ゾーンであって、分析物と結合して標識分析物とすることができ流体試料の存在下で流動化可能な標識試薬を含む、該標識ゾーンと、
iii)前記流路内標識ゾーンの下流側に位置する1以上の試験ゾーンであって、各試験ゾーン中に異なる1つの標識分析物又は複数の標識分析物の組み合わせを拘束する手段を有し拘束された標識分析物を各試験ゾーンで検出できる、該1以上の試験ゾーンと、
iv)前記流路内標識ゾーンの下流側に位置し、分析の完了を表示する手段を組み込んだ1以上のコントロールゾーンと、
を含む検出装置。
【請求項2】
2つの試験ゾーンが存在する場合に、前記1以上のコントロールゾーンが前記試験ゾーンの間に配される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1以上のコントロールゾーンが前記試験ゾーンの上流側に配される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記1以上のコントロールゾーンが前記試験ゾーンの下流側に配される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
3以上の試験ゾーンと、2以上のコントロールゾーンとを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記試験ゾーンとコントロールゾーンとを前記流路中に交互に配すると共に、どのコントロールゾーンよりも上流側に試験ゾーンから始めて配した、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記1以上のコントロールゾーンが全ての試験ゾーンの下流側にある、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記1以上の試験ゾーンのそれぞれが、1つの分析物と特異的に結合をすることができる固定された試薬を含む手段を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記1以上の試験ゾーンのそれぞれが、1つの標識試薬と特異的に結合をすることができる固定された試薬を含む手段を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
1つの試料から、もし存在した場合には、インフルエンザA及び/又はインフルエンザBを検出できる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記標識ゾーンが複数の標識試薬を含み、該標識試薬のそれぞれが1つの分析物と特異的に結合をすることができる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の標識試薬それぞれが検出可能な程度に互いに識別可能である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記標識試薬の標識成分が、化学発光試薬、粒子状標識、比色試薬、エネルギー転移試薬、酵素、蛍光試薬、放射性同位元素からなるグループから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記複数の標識試薬が、異なった色の粒子状標識試薬を含む請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記標識試薬が、試料中の、もし存在すれば、いずれか又は全ての複数の分析物に結合できる試薬である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
それぞれの試験ゾーンで異なる標識分析物を拘束する前記手段として、固定された捕捉試薬を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
流体流の接触において、前記試料受入れゾーンと前記標識ゾーンとが分離した複数要素を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記1以上の試験ゾーンと前記コントロールゾーンとが1つの試験領域に配されている、請求項1に記載の試験装置。
【請求項19】
流体流の接触において、前記試料受入れゾーン、標識ゾーン及び前記試験領域が分離した複数要素を含む、請求項18に記載の試験装置。
【請求項20】
前記コントロールゾーンが、前記試験領域が湿った状態の時に該試験領域において検出可能なマークを含む、請求項18に記載の試験装置。
【請求項21】
前記試験領域がニトロセルロースを含む、請求項18に記載の試験装置。
【請求項22】
前記試験領域がプラスチックの基材上に薄く張られている、請求項18に記載の試験装置。
【請求項23】
複数の前記分析物のそれぞれが、毒素、無機化合物、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、バクテリア、ウイルス、アミノ酸、核酸、炭水化物、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬物、抗体、及びハプテンからなるグループから選択される、請求項1に記載の試験装置。
【請求項24】
支持体及び任意に含み得るカバーを含み、かつ注入開口及び1以上の観察孔を有するケースの中に前記マトリックスが配される、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
コントロールゾーンの数が変数「n」で、試験ゾーンの数が変数「n+1」で表され、該試験ゾーンとコントロールゾーンとが交互に列をなして配され、列の下流側の最後が試験ゾーンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
変数「n」で表される複数の異なる分析物を検出でき、コントロールゾーンの数と前記装置によって検出できる異なる分析物の数とが同じである、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
変数「n+1」で表される複数の異なる分析物を検出でき、試験ゾーンの数と前記装置によって検出できる異なる分析物の数とが同じである、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記装置はディップスティック分析装置を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
流体試料中の複数の分析物の検出装置であって、
軸方向流路を定めるマトリックスを含み、該マトリックスは、
i)該流路の上流端において該流体試料を受入れる試料受入れゾーンと、
ii)該試料受入れゾーンの該流路下流側に、それぞれが1つの分析物に特異的に結合して標識分析物とすることができ、流体試料の存在下で流動化可能な第1及び第2の標識試薬を含む標識ゾーンと、
iii)第1試験ゾーン、第2試験ゾーン、及びコントロールゾーンを含む試験領域であって、該コントロールゾーンは該流路中の該第1及び第2試験ゾーンの間に配され、該第1及び第2試験ゾーンは各試験ゾーン中で異なる分析物を検出する手段を有し、該コントロールゾーンは分析の完了を表示する手段を備えた、前記試験領域と、
を含む検出装置。
【請求項30】
前記第1のゾーンが前記コントロールゾーンの前記流路上流側に配され、前記第2のゾーンが前記コントロールゾーンの前記流路下流側に配される、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
流体試料中の複数の分析物を検出する方法であって、
i)請求項1に記載の装置と、対象となる1以上の分析物を含むと思われる流体サンプルとを接触させ、前記1以上の試験ゾーンはそれぞれの試験ゾーンで、異なる1つの標識分析物又は複数の標識分析物の組み合わせを拘束する手段を有し、
ii)前記1以上の試験ゾーンで拘束された1以上の対象標識分析物を検出すること、
を含む方法。
【請求項32】
流路と、2以上の試験ゾーンと、少なくとも1つのコントロールゾーンとを含み、少なくとも1つの該コントロールゾーンは、2以上の該試験ゾーンのうち少なくとも1つの試験ゾーンの該流路上流側に配される、流体試料中の2以上の分析物のそれぞれの存在の有無を検出するためのイムノアッセイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−506115(P2007−506115A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528156(P2006−528156)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/031220
【国際公開番号】WO2005/031355
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(504195071)クイデル コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】