説明

試料作製装置、試料作製方法および試料観察方法

【課題】フィルム状試料の断面試料作製において、樹脂包埋を行わずに、特定の位置において、数mm以上の平滑な断面を簡便に作製し、破断した試料を顕微鏡によって容易に観察できる試料作製装置および試料作製方法を提供すること。
【解決手段】試料1を2つの治具で固定してナイフ2で破断させる装置で、固定する2つの治具の片方(可動側試料固定治具7)とナイフ2が可動する。試料を固定する治具は試料が貫通する構造を有し、特定箇所を破断位置に合わせる機構を有する。ナイフ2は試料1に対して垂直に可動し、試料面に数十umの傷をつけた後、可動側試料固定治具7を引っ張り、試料を破断させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学顕微鏡および走査電子顕微鏡で観察する試料作製技術に関するものであり、特に断面構造を観察するための試料作製装置と試料作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム状試料の断面構造を観察するための試料作製には、(1)液体窒素などの冷媒中に試料を浸し、凍結・硬化させた後、ピンセットやペンチなどの工具によって固定し、折り曲げることによって試料を破断させる方法と、(2)試料を樹脂包埋後、ミクロトーム装置またはクライオミクロトーム装置で断面を割断する方法と、(3)2つの部材で形成された筒状の治具に試料を入れ、凍結・硬化させた後、断面を割断する方法と、がある。
【0003】
上記(1)の方法は、凍結のときフィルムが湾曲しやすく、工具による固定がし難い。また、常温、凍結とも、破断面は平坦ではなく、特定位置を狙えない。(2)の方法は、樹脂で固定した試料を鋭利な刃物を用いて切削するため平滑な断面を出せるが、試料作製に時間がかかり、装置の移動ができない。(3)の方法は、試料の固定がし易く、簡便であるが、特定位置を狙えない、という問題点を含んでいる。特許文献1には、顕微鏡観察用の破断面を作製する技術が開示されているが、本発明とは手段が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−212271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点に鑑み、本発明は、フィルム状試料の断面試料作製において、樹脂包埋を行わずに、特定の位置において、数mm以上の平滑な断面を簡便に作製し、破断した試料を顕微鏡によって容易に観察できる試料作製装置および試料作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段として、請求項1に記載の発明は、平面状の試料を破断して断面を形成するための試料作製装置であって、
少なくとも前記試料の一部を固定する固定側試料固定治具と、
前記試料の前記固定側試料固定治具で固定した部位と対向する部位を固定する可動側試料固定治具と、
前記試料の面に垂直に刃を押圧することができるナイフと、を備えており、
前記可動側試料固定治具は、前記固定側試料固定治具と前記可動側試料固定治具を結ぶ直線方向に可動であり、
前記固定側試料固定治具と前記可動側試料固定治具に固定された前記試料を液体窒素に浸漬できるように、液体窒素充填容器の中に、前記固定側試料固定治具と前記可動側試料固定治具装填ごと装填できることを特徴とする試料作製装置である。
【0007】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の試料作製装置を使用した試料作製方法であって、少なくとも、
試料の一部を固定側試料固定治具に固定する第一固定工程と、
前記試料の既に固定された部位とは対向する部位を可動側試料固定治具に固定する第二固
定工程と、
前記固定側試料固定治具と前記可動側試料固定治具と前記試料とを、液体窒素が充填された液体窒素充填容器に装填し、前記試料を液体窒素に浸漬する浸漬工程と、
液体窒素温度に冷却された前記試料の面に垂直にナイフ(鋭利な刃物であり、カミソリを含む。)の刃を押し当て、加圧しながら水平方向に移動させて前記試料の表面にきずをつけた後、前記可動側試料固定治具を引っ張ることにより、前記試料を破断する試料破断工程と、からなることを特徴とする試料作製方法である。
【0008】
また請求項3に記載の発明は、請求項2の方法により破断した試料を作製した後、固定側試料固定治具の下地にねじを使って固定してあった前記固定側試料固定治具を外して取り出すことにより、前記固定側試料固定治具から前記試料を取り外すことなくその断面を顕微鏡観察することを特徴とする試料観察方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本発明により、数mm幅で平滑な破断面を得ることができる。また、特定位置をガイドに合わせることで、特定箇所の破断面も得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の本発明により、フィルム状試料を治具に固定し、数mm幅で平滑な破断面を得ることができる。また、特定位置をガイドに合わせることで、特定箇所の破断面も得ることができる。
【0011】
請求項3に記載の本発明により、破断した試料を固定治具から取り外すことなく、顕微鏡ステージに固定治具ごと移動し、顕微鏡観察を行い、観察時間の短縮ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の試料作製装置の形態の一例を示す断面概略図
【図2】本発明の試料作製装置に使用する固定側試料固定治具の一例を示す断面概略図
【図3】本発明の試料作製装置に使用する可動側試料固定治具の一例を示す断面概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の試料作製装置の形態の一例を示す断面図である。フィルム状試料1を試料固定治具6と可動側固定治具7に固定したのち、カミソリ2でフィルム状試料1の表面にキズをつける。取手10を引いてフィルム状試料を破断させる。
【0015】
特定箇所を破断させる場合は、特定箇所をガイド3に合わせたのち、フィルム状試料1の両端を試料固定治具6と可動側試料固定治具7に固定する。
【0016】
凍結破断させる場合は、液体窒素充填容器14に液体窒素を満たしてフィルム状試料1を凍結・硬化させる。この後、カミソリ2でフィルム状試料1の表面にキズをつけ、断熱材付取手10を引いてフィルム状試料を破断させる。
【0017】
光学顕微鏡観察の場合は、ネジ11を弛めて試料固定治具6を試料作製装置から取り外し、破断面を上向きにして固定治具6を顕微鏡のステージに置き、観察を行う。
【0018】
図2は本発明の試料作製装置に使用する固定側試料固定治具の一例を示す断面図である。フィルム状試料1を上側押え板8とネジ9で固定したのち、固定側試料固定治具6の貫通孔12と下側部材4のネジ穴13を合わせてネジ11で固定側試料固定治具6を下側部材4に固定する。
【0019】
図3は本発明の試料作製装置に使用する可動側試料固定治具の一例を示す断面図である。フィルム状試料1を上側押さえ板8とネジ9で可動側試料固定治具7に固定する。
【0020】
図1から図3の試料固定治具6と可動側試料固定治具7と上側押さえ板8のフィルム状試料1に接する面には、滑り止めの為、溝加工が施されている。
【符号の説明】
【0021】
1・・・フィルム状試料
2・・・カミソリ
3・・・ガイド
4・・・下側部材
5・・・可動用レール
6・・・固定側試料固定治具
7・・・可動側試料固定治具
8・・・上側押さえ板
9・・・ネジ
10・・・断熱材付取手
11・・・ネジ
12・・・貫通孔
13・・・ネジ穴
14・・・液体窒素充填容器
15・・・試料作製装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の試料を破断して断面を形成するための試料作製装置であって、
少なくとも前記試料の一部を固定する固定側試料固定治具と、
前記試料の前記固定側試料固定治具で固定した部位と対向する部位を固定する可動側試料固定治具と、
前記試料の面に垂直に刃を押圧することができる鋭利な刃物と、を備えており、
前記可動側試料固定治具は、前記固定側試料固定治具と前記可動側試料固定治具を結ぶ直線方向に可動であり、
前記固定側試料固定治具と前記可動側試料固定治具に固定された前記試料を液体窒素に浸漬できるように、液体窒素充填容器の中に、前記固定側試料固定治具と前記可動側試料固定治具装填ごと装填できることを特徴とする試料作製装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試料作製装置を使用した試料作製方法であって、少なくとも、
試料の一部を固定側試料固定治具に固定する第一固定工程と、
前記試料の既に固定された部位とは対向する部位を可動側試料固定治具に固定する第二固定工程と、
前記固定側試料固定治具と前記可動側試料固定治具と前記試料とを、液体窒素が充填された液体窒素充填容器に装填し、前記試料を液体窒素に浸漬する浸漬工程と、
液体窒素温度に冷却された前記試料の面に垂直に鋭利な刃物の刃を押し当て、押圧することにより前記試料の表面にきずをつけた後、前記可動側試料固定治具を引っ張ることにより、前記試料を破断する試料破断工程と、からなることを特徴とする試料作製方法。
【請求項3】
請求項2の方法により破断した試料を作製した後、固定側試料固定治具の下地にねじを使って固定してあった前記固定側試料固定治具を外して取り出すことにより、前記固定側試料固定治具から前記試料を取り外すことなくその断面を顕微鏡観察することを特徴とする試料観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−61164(P2013−61164A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198139(P2011−198139)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】