説明

試料分析装置及び試料容器

【課題】 試料由来の廃液を容器の外側に排出することなく、ロバストかつ簡便な方法で尿試料中の薬物濃度を定量できる方法を提供すること。
【解決手段】 容器に目的とする成分を抽出できる部材(固相抽出剤、吸着材、分離剤、濃縮機構等)を持ち、容器内部および外部に導入口および排出口を持ち、それぞれの導入口および排出口を開閉するバルブを持つ容器であって、バルブ開閉機構と送液機構を持つ分析装置と一体化することにより、簡便に目的とする成分の抽出、脱離、検出が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の分析装置及びそれに用いる試料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
尿に含まれる違法薬物、乱用薬物、毒性薬物、治療薬物などの検査を屋外で可能な装置が求められている。そのため、装置は、微量薬物を高感度で定量でき、簡便な取り扱いが可能であり、メンテナンス頻度が少ないなどの高ロバスト性を持ち、低コストで検査が可能である事などが望まれている。さらに、屋外で計測を行うために簡便に持ち運びが可能である要求もあり,小型かつ低重量な装置が望まれている。そのため、検出器だけでなく、尿を前処理するための送液機構、洗浄機構、廃液の処理機構などを簡便な機構で実現することが望ましい。
【0003】
屋外での検査はイムノクロマト法、イオン移動度測定法などを基盤技術とした携帯可能な装置で一部実現されているが、定量可能な薬物の種類は、まだまだ少ない。屋内での検査は、尿中の微量薬物を固相抽出し、タンデム四重極型質量分析装置を用いた質量分析法で定量する手法が薬物定量の標準的な手法となりつつある。この手法を用いると多種の薬物が定量可能になり、さらに高選択かつ高感度で検査可能になる。
【0004】
尿中の微量成分を抽出する抽出法には様々な種類がある。抽出法の一つとして、固相抽出法がある。固相抽出法にも様々な種類があり、例えば、抽出用の部材としてpolydimethylsiloxane (PDMS)を使用し、抽出法としてインチューブPDMS法を行う方法がある(非特許文献1)。これは、内側がPDMSでコートされた配管に尿を通液することにより目的とする薬剤を抽出する方法である。
【0005】
また、試料の採取方法、採取容器にも様々な方法がある。試料採取容器としては汚染の可能性が低く、簡便な操作で目的とする成分を抽出できる容器がある(特許文献1)。これは、容器内側に抽出剤を備え、目的とする成分を抽出し、脱着させるものである。また、例えば、容器外部に導入口と排出口があり容器内部にフィルタがある容器もある(特許文献2)。これは、容器の外部から試料を導入できる導入口を持ち、夾雑物を容器内部のフィルタで除去した試料を容器外部の排出口を通り、分析部に送るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−8384
【特許文献2】特開平8−271385
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Anal Bioanal Chem, 2002, 373, 31−45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
尿中の薬物濃度を屋外で測定可能な簡便な装置は、屋内での使用よりも過酷な環境であるためロバスト性の高い装置であることが必須である課題があった。さらに、汚染を最小限にするため、尿の入った容器から蓋を開ける、もしくは、尿に触れることなく、目的とする成分を取り出すことは困難であるという課題もあった。
【0009】
非特許文献1に記載のインチューブ PDMS法では、液体クロマトグラフを用いて送液を行う。そのためには,液体クロマトグラムに尿を導入する機構が必要であり装置が複雑化してしまう。さらに、バルブの弁が流路内側にあるため、測定ごとにバルブの弁を洗浄する必要もあった。また、液体クロマトグラフに導入した試料はもとの容器に戻す機構がないため、最終的に、廃液が必ず生じてしまう課題があった。
【0010】
特許文献1に記載の試料採取容器では、汚染の可能性を低く、蓋を開けることなく試料中から目的成分を抽出できるが、蓋にシリンジ等を刺して試料を出し入れする必要があり、汚染が生じる可能性があり、シリンジ等の洗浄機構が必要となる。
【0011】
特許文献2に記載の試料貯蔵容器では、容器外部に導入口と排出口があり、容器内部にフィルタがあり、精製した成分のみ分析部に送ることができるが、廃液を処理する機構がないため、廃液が生じてしまう課題があった。また、容器自身の交換または容器中の試料交換が困難であるため、多数の検体検査に不向きであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、容器に測定対象とする成分を抽出できる部材(固相抽出剤、吸着材、分離剤、濃縮機構等)を持ち、容器内部および外部に、それぞれ試料又は分析に必要なガス又は溶液等、あるいは溶液等の導入口および排出口を持ち、それぞれの導入口および排出口を開閉するバルブを持つ容器であって、バルブ開閉機構と送液機構を持つ分析装置に設置させることにより、簡便に目的とする成分の抽出、脱離、検出が可能になることを特徴としている。
【0013】
すなわち、まず本発明の代表的な分析用の試料容器の一例としては、試料を保持する保持容器と、試料に含まれる特定成分を分離して留める分離材と、試料を通し分離材を内部に保持する流路と、流路の端部として、試料を保持容器内から流路に導入する内部導入口と、流路に導入された試料を保持容器内に排出する内部排出口と、流路に保持容器外からガス又は溶液を導入する外部導入口と、流路を通ったガス又は溶液を保持容器外へ排出する外部排出口と、内部導入口、内部排出口、外部導入口、外部排出口のそれぞれの開閉をするバルブとを有する。
【0014】
そして、当該試料容器を設置させて分析する分析装置の代表的な構成の一例としては、上記の試料容器を設置させる試料容器保持部と、外部導入口に接続されガス又は溶液を導入するガス又は溶液導入部と、外部排出部に接続され試料の分析を行う分析部と、バルブに結合されバルブの開閉を行うバルブ開閉機構と、バルブ開閉機構の開閉制御を行う制御部とを有する。
【0015】
分析装置側に設けられたバルブ開閉機構は、試料に接触することなくバルブを開閉できるため、分析装置が試料によって汚染されることがないため、装置の洗浄頻度が低くなり、ロバスト性が上がる。
【0016】
また、試料容器内部にある導入口から試料を導入し、部材を通液し、試料容器内部にある排出口から試料を排出するため、試料容器の蓋を開けることなく成分を分離して留めるための部材に試料を通液できる。そのような機構であるため、分析装置および分析装置使用者が試料によって汚染されることが極めて少ない。さらに、試料容器内部にある排出口から試料を排出するため、排出された物質を貯蔵する新たな容器を必要としない。
【0017】
試料容器外部にある導入口から加圧ガス又は溶液を導入して、試料容器外部にある排出口から部材から脱離させた成分だけを、それぞれの導入口および排出口についたバルブによって開閉することにより、分析装置に送ることができるため、分析装置の汚染は最小限で済み、装置の洗浄頻度が低くなりロバスト性があがる。
【0018】
また、試料容器を分析装置に取り付けるだけで、分析可能な構成であるため、容器および試料の交換が容易である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、試料由来の廃液を容器の外側に排出することなく、ロバストかつ簡便な方法で試料中の成分を分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】試料容器と分析装置の構成例を示す概略全体図
【図2】試料容器の例
【図3】バルブの開閉例
【図4】送液例
【図5】試料容器を分析装置に設置した時の構成例を示す概略全体図
【図6】試料容器を分析装置に設置した時の構成例を示す概略図
【図7】容器底面に部材を有する試料容器を分析装置に設置した時の構成例
【図8】容器側面に部材を有する試料容器を分析装置に設置した時の構成例
【図9】プラズマ発生領域を有する試料容器を分析装置に設置した時の構成例
【図10】プラズマ発生領域を有する試料容器を分析装置に設置した時の構成例
【図11】試料容器と分析装置に設置した時の構成例
【図12】ヘッドスペース法を用いた構成例
【図13】目的とする成分を溶液を用いて脱離する実施例の構成例
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は試料採取容器と分析装置の構成例を示す概略全体図である。図1(A)に示すように、本実施形態の試料容器1は蓋2と試料を保持する保持容器3を有する。この図では、試料4を保持容器3に事前に導入してある例を示している。試料4は、例えば、尿、唾液、痰、血漿、血清、全血、血球、汗、涙、母乳、毛髪、皮膚、爪、大便、培養細胞などの生体試料、培養微生物などの微生物、藻類、植物葉、茎、果実、花弁、種子などの植物、各種酒、発酵乳などの食品、海水、淡水、飲料水、工業用水などの水のいずれか、もしくは、これらの混合物などである。
【0023】
蓋2には、容器に入れられた試料について、試料を通過させる流路と、流路内に試料中の成分を溜めておくための部材5を備え、その流路の端部として、試料容器内部の試料を部材に導入するための容器内側に設けられた導入口6、試料容器内部に試料を部材から排出するための容器内側に設けられた排出口7、部材にガス又は溶液を導入するための容器外側に設けられた導入口8、部材から脱離された成分を排出するための容器外側に設けられた排出口9があり、そして、導入口と排出口(6,7,8,9)の開閉を行うためのそれぞれのバルブを有する。バルブとしては、容器内側の導入口6の開閉を行うための内側バルブIN10と、容器内側の排出口7の開閉を行うための内側バルブOUT13と、容器外側の導入口8の開閉を行うための外側バルブIN11と、容器外側の排出口9の開閉を行うための外側バルブOUT12がある。部材5に繋がる全てのバルブが予め閉じられているようにすることで、部材が大気中に含まれる成分によって汚染されるのを防止することできる。
【0024】
部材5は、測定対象の成分を試料から分離して留めておけるものであれば、特に制限されないものであり、測定対象成分に応じて最適な部材を選択することが望ましい。さらに、目的とする成分と共存する成分によって影響を受けにくい部材であることが望ましい。
【0025】
部材5を構成する部材として、例えば、配管の内側をpolydimethylsiloxane(PDMS)でコートした固相抽出剤を挙げることができる。固相抽出剤は、C18、C8、C4、フェニル基、アミノ基、シアノ基などの化学結合型抽出剤、ポリスチレンジビニルベンゼン、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシメタアクリルレートなどのポリマー系抽出剤、ジオール基、グリセルプロピル基などのシリカ系抽出剤、第4級アンモニウム基、ジエチルアミノエチル基、アミノ基などの陰イオン交換基を持つ抽出剤、スルホ基、スルホプロピル基、カルボキシメチル基などの陽イオン交換基を持つ抽出剤、抗体、アプタマー、酵素などのタンパク質または核酸で構成される抽出剤、その他、シリカゲル、アルミナ、チタニア、カーボンによる抽出剤でもよい。
【0026】
保持容器3は、試料内側の排出口7から出てきた廃液が試料4と混じらないように、区切られていてもよい。
【0027】
図1(B)に示すように、本実施形態の分析装置100は、装置側にあるバルブ開閉機構(図1(A)の例では四ヶ所)101、試料採取容器を設置させ固定する試料採取容器フォルダー103、目的とする成分を検出する検出器104、加圧ガス部105、加圧ガス部105と容器外側の導入口8をつなぐ配管IN106、検出器104と容器外側の排出口9をつなぐ配管OUT107、その他としては、装置側にあるヒーター108、分析装置の蓋109、分析装置を制御する分析装置の制御部110、検出器104によって検出された測定成分の定量値等を出力するための測定部111からなる。測定部111は、検出器による検出結果に対応した濃度を算出するためのデータや計算部、そして出力部を有している。また、流路内の試料が部材5に、より効率よく送られるように送液機構102があるとよい。
【0028】
加圧ガスには空気を用いることができ、その他、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどを用いてもよい。加圧ガスの代わりに圧縮していない大気圧の空気を用いてもよい。また、加圧ガス部105の代わりに、溶液タンク112を設け、流路に溶液を導入してもよい。
【実施例2】
【0029】
続いて、試料が尿である場合に特に有用な容器とその採取方法を説明する。尿は紙コップなどを用いて採取したあとで、図1(A)で示した試料採取容器1に分注してもよいが、図2で示した尿の採取容器を用いてもよい。また、試料は尿以外では、生体試料、微生物、植物、食品、水などのいずれか、もしくは、これらの混合物を用いることもできる。
【0030】
図2で示す例では、試料採取容器1は内側容器20と、当該内側容器を内包できる構成をした外側容器26を用いている。まず、図2(A)に示すように、内側容器20を準備する。内側容器20には、入口となる容器入口21があり、そして、容器側面に穴が2箇所開いており、容器入口21と繋がる穴A22と容器側面の例えば中心付近にある穴B23がある。
【0031】
次に、容器入口21付近を持ちながら、穴B23を目標として放尿された尿は、図2(B)で示したように、穴B23の高さまで尿を採取でき、採取した尿24が得られる。
【0032】
図2(C)に、採尿した尿24が入った内側容器20を外側容器26の中に入れ、蓋25を閉めた構成図を示した。前記蓋25は外側容器26を閉めることができるようになっている。
【0033】
図2(D)に、前記図2(C)で示した容器の上下を逆にすると、穴A22を通って内側容器20と外側容器26の間に尿が浸透されることを示ししている。穴A22は便宜のため内側容器20と外側容器26の間にも尿が浸透されるようにしたものであるが、蓋25に設けられた導入口6から尿を導入できるような構成であればよい。穴A22を有することにより、蓋25を閉めた容器を逆さまにした時に、尿が内側容器20と外側容器26の間に溜まって取り出せなくなってしまうことを防ぐことができる。
【0034】
尿を採取した内側容器20を外側容器26の中に格納することにより、利用者や装置の汚染を減らすことができる。また、尿などの生体試料で汚染された物質を一箇所にまとめることができ、廃棄物質の拡散を最小限に抑えることができる。
【0035】
図2で示した採尿方法に用いた試料採取容器1は、実施例1のように図1(B)に示す装置に適用することができる。その際、図1(A)における蓋2と図2における蓋25、図1における容器3と図2における内側・外側容器20、26は同義と考えればよい。
【実施例3】
【0036】
バルブおよびその開閉の仕組みの一例を図3に示す。図3は流路方向に切った断面図で示した模式図である。導入口(容器内側の導入口6、容器外側の導入口8)または排出口(容器内側の排出口7、容器外側の排出口9)と部材5の間は配管31で繋がっており、その間に、容器内側の導入口6の開閉をする内側バルブIN10と、容器内側の排出口7の開閉をする内側バルブOUT13と、容器外側の導入口8の開閉をする外側バルブIN11と、容器外側の排出口9の開閉をする外側バルブOUT12とがある。この例では、配管を変形させて流れを制御することにより、バルブの弁が試料に接触することなく流路を開閉できる。ここでは、バルブの構造にばね等の弾性体を用いた例を示しているが、バルブの外部から積極的にエネルギーを加え続けることなく閉まった状態を保てるバルブであれば、試料採取や装置での分析等に応じた流路内の試料の制御を簡便に行うことができる。
【0037】
図3(A)に示すように、試料採取容器単独では、容器側のバルブ付流路30は、ばね32に押された弁33により配管31の流路が狭められ、閉まった状態である。弁33を引っ張ることにより容器側のバルブ付流路30を開けることができるが、ここでは、引っ張られていない状態を示している。図3(A)の下に示すのは装置側に設けられたバルブ開閉機構34であり、装置に試料採取容器が設置された後に、弁33が引っ張られて配管31を開通させる機構となっている。
【0038】
図3(B)は、分析装置100の試料採取容器フォルダー103に試料採取容器1を据え付けたときのバルブの状態を示している。このとき、弁33と装置側のバルブ開閉機構34は結合されているが、弁33は引っ張られてないため、流路は閉まった状態である。
【0039】
図3(C)に示すように、装置側のバルブ開閉機構34により弁33は引っ張られると、配管31の流路の変形はもとに戻り、開いた状態になる。
【0040】
このような機構において、少なくともバルブの開閉機構に携わる箇所の配管31の材質としては、元に戻りやすいようゴムのような弾性体で作られてもよいし、弾性のあるプラスチックやシリコーンで作られていてもよい。
【実施例4】
【0041】
部材5の上流または下流の配管そのものに外側から力を加え、配管が変形した力を利用して送液のための駆動力を生み出すことにより、送液機構が試料に接触することなく送液を行う例を示す。その一例として、図4の流路方向に切った断面図で示す模式図を用いて説明する。
【0042】
図4(A)の上に示すのは、容器側にある配管31には何も力がかかっていなく、流れのない状態である。そして、図4(A)の下に示すのは、装置に設けられた配管に沿って回転するような回転体等を有する送液機構102である。この例では、試料採取容器単独では流れが無い状態であり、送液するためには、装置側の送液機構102と接触する必要がある。
【0043】
送液機構の一例として、流路そのものに外側から力を加えて送液を行う原理のペリスタポンプを用いて例示する。配管31は、送液機構を用いて力を加えたときに変形可能な硬さであり、力を加えてないときに、もとの形状に戻る弾力性のあるものであればよい。また、目的である成分を吸着しにくい材質を選択することが望ましい。
【0044】
図4(B)に示すように、分析装置100の試料採取容器フォルダー103に試料採取容器1を据え付けたときの部材5の上流または下流にある配管31が、装置側の送液機構102と接触している状態である。このとき、装置側の送液機構102は回転していないため、流れのない状態である。
【0045】
図4(C)に示すように、装置側の送液機構102の回転により、部材5の上流または下流にある配管31中の液体は送液される。
【実施例5】
【0046】
図5に、本発明による試料採取容器がフォルダー103に備え付けられ、分析装置と結合されて一体化した時の構成例を示す全体概略図を示す。図5の例では、試料の入った試料採取容器1は、逆さまにして試料採取容器フォルダー103に据え付けられ、分析装置の蓋106が閉められている。
【0047】
詳細な構成を図6で示す。図6は、試料採取容器と分析装置が一体化した時の構成例の断面図を示す。容器外側導入口8は、加圧ガス部105と接続される配管IN106と接続している。容器外側排出口9は、検出部104と接続される配管OUT107と接続している。フォルダー103内は、試料採取容器の設置において、このような接続を使用者が簡便にできるように、例えば、試料採取容器の蓋2の決まった位置にピンのような出っ張りをつけ、フォルダー103に受け手となる穴を設ける。ピンと受けてとなる穴の位置が最初に決まることにより、その他の位置も容易に決まる仕掛けを設けておいてもよい。
【0048】
内側バルブIN10、外側バルブIN11、外側バルブOUT12、内側バルブOUT13は、装置側のバルブ開閉機構34それぞれと結合する。結合の機構としては、図3(B)に示すようにつめ等の引っかかりを用いた構造等を用いることができる。さらに、配管31は装置側の送液機構35と接触させるようにする。また、部材5は装置側のヒーター108と接触するようにして、熱による脱離等をさせるようにしてもよい。部材5に対する温度制御としては、部材の材質等によるが、80度から600度程度が考えられる。試料採取容器1を加温または冷却してから計測する必要がある場合は、試料採取容器フォルダー103に加温または冷却機能をつけ、例えば100度まで加温または―30度まで冷却してもよい。試料を一定の温度にすることにより、温度の影響による測定値のばらつきを最小限にできる。また、温度を上げることにより、内部標準物質、酸性物質、アルカリ性物質の溶解性を増したり、攪拌が促進される効果があり、さらには、揮発性の成分が揮発しやすくなる効果がある。温度を下げることにより、測定対象とする成分の分解または修飾を最小限にできる。加温または冷却する場合には、試料が設定した温度に達し、定常状態になったあとに以下の動作シーケンスを行うものとするが、試料によっては試料温度を上昇もしくは下降させながら動作シーケンスを行ってもよい。
【0049】
次に、図5で示した試料採取容器1を装置側に取り付けた状態における、分析の際の動作シーケンスの一例を述べる。動作シーケンスを大きく分類すると、試料から目的とする成分を部材で抽出するステップ、部材を洗浄するステップ、部材から目的とする成分を脱離するステップからなる。ここでは、成分を部材で抽出するステップと、部材から目的とする成分を脱離するステップとの間に、部材を洗浄するステップがある場合を説明する。これらの制御は、バルブ開閉制御部により行われる。以下に詳細を示す。
【0050】
1.抽出ステップ
(1)初期状態は、開閉機構34に結合された内側バルブIN10、外側バルブIN11、外側バルブOUT12、内側バルブOUT13は閉まっており、装置側の送液機構35、装置側のヒーター108は停止している。
(2)内側バルブIN10、内側バルブOUT13を開く。尚、初期状態として内側バルブIN10、内側バルブOUT13を開いておいてもよい。
(3)装置側の送液機構35を動かすと、容器内側導入口6から、試料4が導入され、配管31を通り、部材5の中を試料4が通液し、容器内側排出口7から排出される。装置側の送液機構35の位置は、試料が導入口6から排出口7方向に流れればよく、部材5より上流側でもよいし、下流側でもよく、部材5と同じ場所でもよい。
(4)任意の時間、例えば3分間、送液側の送液機構35を動かす。
(5)装置側の送液機構35を止める。
(6)内側バルブIN10を閉める。
【0051】
2.洗浄ステップ
(1)外側バルブIN11を開く。
(2)加圧ガス部105から加圧用のガスを出す。加圧ガスは、加圧ガス部105と接続された配管IN106を通り、配管IN106と接続された容器外側導入口8から導入され、配管31を通り、そして配管内部に設けられた部材5を通り、容器内側排出口7から排出される。このとき、配管に溜まった試料を容器内側排出口7から排出する。このとき、加圧ガスでなく、例えば、洗浄を目的とした溶液流してもよい。溶液とは、水やメタノール、エタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、ヘキサン、トリエチルアミンなどの有機溶媒であり、もしくは、それらを混合したものである。溶液を導入する場合には、装置側の送液機構35を動かして送液する。また、溶液タンク112などを設けておき、外部導入口である容器外側導入口8に接続できるようにしておくか、又はガス導入とは別の導入口を設けておいてもよい。
(3)任意のガス量、例えば、加圧ガスが通る配管の体積と同じ量のガスを出したら加圧ガスを止める。大量の加圧ガスを流す場合は、容器3の底にフィルタをつけたリーク弁をつけてもよい。容器3の底にフィルタのついたリーク弁を設けることにより、大量の加圧ガスが導入されても、配管または容器には一定以上の圧力がかからないため、破裂または液漏れを防止できる効果がある。
(4)外側バルブIN11、内側バルブOUT13を閉める。
【0052】
3.脱離ステップ
(1)温度調節が可能な装置側のヒーター108で部材5を加熱し、目的とする成分を脱離させる。例えば、加熱温度、加熱時間は、300℃、1分とする。脱離したい成分の特性に合わせて、加熱温度、加熱時間を選択するとよい。加熱温度が高いほうが、目的とする成分が脱離しやすくなる。一方で、同時に目的としない成分も脱離しやすくなってしまう、目的とする成分が熱分解しやすくなる、ヒーターの消費電力が大きくなるなどの問題が生じる場合があるので目的に応じて加熱温度を調節するとよい。また、夾雑物の影響を避けるために温度勾配を作って加熱し、目的とする成分と夾雑物の脱離時間とをずらしてもよい。
(2)外側バルブOUT12を開き、脱離した成分を検出器104に導入する。このとき、外側バルブIN11は開かなくてもよいが、外側バルブIN11を開き、加圧ガスを導入して、脱離した成分を検出器104に押し出してもよい。加圧ガスの代わりに圧縮していない大気圧の空気を用いてもよい。また、脱離した成分が途中の配管に吸着しないように、装置側のヒーター108を用いて容器外側排出口9、配管OUT107、配管31も加熱できるようにしてもよい。
【0053】
4.分析ステップ
検出器104に導入され、分析された成分について、測定部111におけるデータと照合し、定量値等の測定結果を出力する。
【実施例6】
【0054】
図7に、容器底面に部材5がある試料採取容器1と、分析装置が一体化した時の構成例を示す。試料の入った試料採取容器1は、逆さまにはせず、試料採取容器フォルダー103に入れられ、分析装置の蓋106が閉められる。その後の動作シーケンスは実施例5と同様にすればよい。尚、大量の加圧ガスを流す場合は、蓋2にフィルタの付いたリーク弁をつけてもよい。蓋2にフィルタのついたリーク弁を設けることにより、大量の加圧ガスが導入されても、配管または容器には一定以上の圧力がかからないため、破裂または液漏れを防止できる効果がある。
【実施例7】
【0055】
図8に、容器側面に部材5がある試料採取容器1と、分析装置が一体化した時の構成例を示す。試料の入った試料採取容器1は、逆さまにせず、試料採取容器フォルダー103に入れられ、分析装置の蓋106が閉められる。動作シーケンスは実施例5と同様にすればよい。尚、大量の加圧ガスを流す場合は、実施例6と同じく蓋2にフィルタの付いたリーク弁をつけてもよい。
【実施例8】
【0056】
図9に、部材5を備えた配管にプラズマ発生領域を有する導入管40を組み込んだ試料採取容器1と、分析装置とが一体化した時の構成例を示す。ここでは、試料採取容器1として、プラズマ発生領域を有する導入管40を組み込んだものを用いる。導入管40は最初から組み込まれた試料採取容器を用いてもよいし、後から取り付けるようになっているものでもよい。
【0057】
ここでは、導入管40は部材5の上流に位置している例を示す。導入管40の両端には電極42があり、分析装置100と一体化したときに、装置側にある交流電源41と接続するようになっている。このときの検出器104は真空引き機能を有する質量分析装置であるとよく、プラズマ発生領域でイオン化した成分が検出器に導入されるため、さらなるイオン化機構は必要ない。検出器104とプラズマ発生領域43の間は、遮るものがないほど透過するイオンの量が増えるため、途中の配管が真っ直ぐであることが望ましい。その他の構成は実施例5と同様のため説明を省略する。導入管40は、誘電体として、ガラスや樹脂などでできた管を用いる。その他の構成については実施例5と同じである。また、導入管40の位置は、部材5より上流側でもよいし、下流側でもよく、部材5と同じ場所でもよい。電極42の位置は、電極間にプラズマが発生する構成であればよく、導入管40の内側にあってもよい。
【0058】
次に、図9で示した状態における、分析の際の動作シーケンスの一例を述べる。動作シーケンスを大きく分類すると、試料から目的とする成分を部材で抽出するステップ、部材を洗浄するステップ、部材から目的とする成分を脱離し、プラズマを用いてイオン化するステップからなり、列挙した順番で実施される。以下に詳細を示す。
【0059】
1.抽出ステップ
実施例5と同様の方法を用いればよい。
【0060】
2.洗浄ステップ
実施例5と同様の方法を用いればよい。
【0061】
3.脱離ステップ
(1)外側バルブIN11を開き、加圧された空気、窒素、ヘリウム、ネオン等のガスもしくは大気圧の空気を配管31に導入し、外側バルブOUT12を開き、真空引き機能を有する検出器104を用いて配管31内の真空引きを行う。この時、例えば、100−10,000[Pa]の圧力になるよう調整する。外側のバルブIN11の開閉量で真空度を調整してもよい。
(2)装置側にある交流電源の電源を入れ、電極間にプラズマ43を発生させ、誘電体バリアー放電を起こす。プラズマには励起分子あるいはイオンが含まれる。
(3)装置側のヒーター108で部材5を加熱し、目的とする成分を脱離させる。
(4)加熱温度、加熱時間は例えば300℃、1分である。脱離したい成分の特性に合わせて、加熱温度、加熱時間を選択するとよい。成分の特性によっては、温度勾配を作って加熱してもよい。
(5)ガス化した試料は、励起分子あるいはイオンと接触しイオン化する。イオン化した試料は検出器104によって検出される。ここでは、イオン化した試料を検出器104に連続的に導入する実施例を示しているが、イオン検出の間だけ外側バルブOUT12を開閉することにより、間欠的にイオンを検出器に導入してもよい。間欠的に導入することにより、検出器104にある真空ポンプの負荷が減るため、高性能な真空ポンプを用いなくても目的とする真空度に達せさせることができる。また、脱離した成分が途中の配管に吸着しないように、装置側のヒーター108を用いて容器外側排出口9、配管OUT107、導入管40、配管31も加熱できるようにしてもよい。
【0062】
4.分析ステップ
検出器104に導入され、分析された成分について、測定部111におけるデータと照合し、定量値等の測定結果を出力する。
【実施例9】
【0063】
実施例6もしくは実施例7に記載の構成に、実施例8に記載の導入管40、装置側にある交流電極41、電極42、プラズマ43を加え、実施例8に記載の動作シークエンス例を用いて、目的とする成分をプラズマでイオン化し、検出することもできる。
【実施例10】
【0064】
図10に、プラズマ発生領域を有する導入管40が配管31に直交した構成を示す。動作シーケンスは実施例8と同様にすればよい。ここでは、導入管40は部材の上流に位置した例を示したが、下流側でもよく、部材5と同じ場所でもよい。
【実施例11】
【0065】
実施例6もしくは実施例7に記載の構成に、実施例10に記載の導入管40、装置側にある交流電極41、電極42、プラズマ43を加え、実施例10に記載の動作シークエンス例を用いて、目的とする成分をプラズマでイオン化し、検出することもできる。
【実施例12】
【0066】
試料に濃度のわかった内部標準物質を加えて、濃度補正に用いると、目的とする成分の濃度をより正確に求めることが出来る。実施例5〜11いずれかに記載の構成において、容器3の中に事前に内部標準物質を同封しておけばよい。内部標準物質は目的とする成分と化学的性質の近い物質、あるいは、一部を安定同位体で置換した物質などを例示できる。
【実施例13】
【0067】
実施例5〜11いずれかに記載の構成において、配管31の中に事前に内部標準物質を同封しておいてもよい。
【実施例14】
【0068】
試料のpHを調整することにより、部材5と測定対象とする成分の親和性が高まり、抽出効率が向上する場合がある。実施例5〜11のいずれかに記載の構成において、容器3の中に事前にアルカリ性物質または酸性物質を同封しておけばよい。アルカリ性物質は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸アンモニウム、トリエチルアミン、アンモニア水などを例示でき、酸性物質は蟻酸、酢酸、塩酸、トリフルオロ酢酸、硝酸などを例示できる。
【実施例15】
【0069】
実施例5〜11いずれかに記載の構成において、配管31の中に事前にアルカリ性物質または酸性物質を同封しておけばよい。アルカリ性物質は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸アンモニウム、トリエチルアミン、アンモニア水などを例示でき、酸性物質は蟻酸、酢酸、塩酸、トリフルオロ酢酸、硝酸などを例示できる。
【実施例16】
【0070】
図11に試料採取容器1と分析装置に、上記の実施例からさらにバルブを追加したときの構成例を示す。ここで示す追加のバルブは内部標準用バルブ50である。この内部標準物質用バルブ50は、容器内側排出口7と内側バルブOUT13の間に位置する。そして、内部標準物質52は内部標準物質用バルブ50と内側バルブOUT13の間に位置する。内部標準物質用バルブ50は、内側バルブOUT13などと同じ原理で開閉するバルブとすればよく、内部標準物質用バルブ50を開閉する機構として、装置側のバルブ開閉機構51を示す。装置側のバルブ開閉機構51は、装置側のバルブ開閉機構34と同じ原理のものを用いればよい。その他の構成については実施例8と同じである。内部標準物質52の位置は、使用者による内部標準物質の意図的な廃棄などを防ぐために、試料採取容器1が分析装置に設置して初めて取り出せる位置にあり、導入管40と部材5に接触しない位置であることが望ましく、内部標準用バルブ50を、容器内側導入口6と内側バルブIN10の間に設けてもよく、その場合の内部標準物質52は内部標準用バルブ50と内側バルブIN10の間に位置する。尚、内部標準物質52の位置に、アルカリ性物質または酸性物質を置いてもよい。
【0071】
次に、図11で示した状態における、分析の際の動作シーケンスの一例を述べる。動作シーケンスを大きく分類すると、試料から目的とする成分を部材で抽出しながら、内部標準物質を攪拌するステップ、部材を洗浄するステップ、部材から目的とする成分を脱離し、プラズマを用いてイオン化するステップからなり、以下に詳細を示す。
【0072】
1.抽出ステップ
(1)初期状態は、内側バルブIN10、外側バルブIN11、外側バルブOUT12、内側バルブOUT13、内部標準物質用バルブ50は閉まっており、装置側の送液機構35、装置側のヒーター108、装置側にある交流電源41は停止している。
(2)内側バルブIN10、内側バルブOUT13、内部標準物質用バルブ50を開く。
(3)装置側の送液機構35を動かすと、容器内側導入口6から、試料4が導入され、配管31を通り、配管31内の部材5の中を試料4が通液し、容器内側排出口7から排出される。装置側の送液機構35の位置は、部材5より上流側でもよいし、下流側でもよく、部材5と同じ場所でもよい。
(4)任意の時間、例えば3分間、送液側の送液機構35を動かす。
(5)装置側の送液機構35を止める。
(6)内側バルブIN10を閉める。
【0073】
2.洗浄ステップ
(1)外側バルブIN11を開く。
(2)加圧ガス部105から加圧用のガスを出す。加圧ガスは、配管IN106を通り、容器外側導入口8から導入され、配管31を通り、部材5を通り、容器内側排出口7から排出される。このとき、配管に溜まった試料を容器内側排出口7から排出する。このとき、加圧ガスでなく、例えば溶液を流して配管を洗浄してもよい。溶液とは、水やメタノール、エタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、ヘキサン、トリエチルアミンなどの有機溶媒であり、もしくは、それらを混合したものである。溶液を導入する場合には、装置側の送液機構35を動かして送液する。また、溶液タンク112などを設けておき、外部導入口である容器外側導入口8に接続できるようにしておくか、又はガス導入とは別の導入口を設けておいてもよい。
(3)任意のガス量、例えば、加圧ガスが通る配管の体積と同じ量のガスを出したら加圧ガスの導入を止める。大量の加圧ガスを流す場合は、容器3にフィルタをつけたリーク弁をつけてもよい。
(4)外側バルブIN11、内側バルブOUT13、内部標準物質用バルブ50を閉める。
【0074】
3.脱離ステップ
実施例8と同じである。
【0075】
4.分析ステップ
検出器104に導入され、分析された成分について、測定部111におけるデータと照合し、定量値等の測定結果を出力する。このとき、容器内に排出された内部標準物質52を用いて、目的とする成分の濃度補正を行うと、より正確な濃度を求めることができる。
【実施例17】
【0076】
実施例8〜15いずれかに記載の構成において、実施例16に記載の内部標準物質用バルブ50を加え、実施例16に記載の動作シークエンス例を用いて、目的とする成分をプラズマでイオン化し、検出することもできる。
【実施例18】
【0077】
図12に実施例14の構成を用い、蓋2を上部にして利用する構成例を示す。試料の入った試料採取容器1は、逆さまにせず、試料採取容器フォルダー103に入れられ、分析装置の蓋106が閉められる。図12では容器内側排出口7が試料4に浸かってない図を用いて例示したが、試料4に浸かっていてもよい。容器内側導入口6と排出口7が試料4に浸かってない場合には、試料の揮発成分を利用する。
【0078】
次に図11で示した状態における、分析の際の動作シーケンスの一例を述べる。動作シーケンスを大きく分類すると、揮発した試料から目的とする成分を部材で抽出しながら、内部標準物質を攪拌するステップ、部材を洗浄するステップ、部材から目的とする成分を脱離し、プラズマを用いてイオン化するステップからなり、列挙した順番で実施される。以下に詳細を示す。
【0079】
1.抽出ステップ
(1)初期状態は、内側バルブIN10、外側バルブIN11、外側バルブOUT12、内側バルブOUT13、内部標準物質用バルブ50は閉まっており、装置側の送液機構35、装置側のヒーター108、装置側になる交流電源41は停止している。
(2)内側バルブIN10、内側バルブOUT13、内部標準物質用バルブ50を開く。
装置側の送液機構35を動かすと、容器内側導入口6から、揮発した試料が導入され、配管31を通り、部材5の中を揮発した試料が通過し、容器内側排出口7から排出される。(3)このとき、内部標準物質52も排出される。装置側の送液機構35の位置は、部材5より上流側でもよいし、下流側でもよく、部材5と同じ場所でもよい。
【0080】
試料の揮発成分を使うため、溶液の場合よりは洗浄ステップの必要性は低い。
(4)任意の時間、例えば3分間、送液側の送液機構35を動かす。
(5)装置側の送液機構35を止める。
(6)内側バルブIN10を閉める。
【0081】
2.洗浄ステップ
試料の揮発成分を使うため、溶液の場合よりは洗浄ステップの必要性は低い。
(1)外側バルブIN11、を開く。
(2)加圧ガスを出す。加圧ガスは、配管IN106を通り、容器外側導入口8から導入され、配管31を通り、配管31に設けられた部材5を通り、容器内側排出口7から排出される。このとき、配管に溜まった成分を容器内側排出口7から排出する。このとき、加圧ガスでなく、例えば、洗浄目的とした溶液を流してもよい。溶液とは、水やメタノール、エタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、ヘキサン、トリエチルアミンなどの有機溶媒であり、もしくは、それらを混合したものである。溶液を導入する場合には、装置側の送液機構35を動かして送液する。また、溶液タンク112などを設けておき、外部導入口である容器外側導入口8に接続できるようにしておくか、又はガス導入とは別の導入口を設けておいてもよい。
(3)任意のガス量、例えば、加圧ガスが通る配管の体積と同じ量のガスを出したら加圧ガスを止める。大量の加圧ガスを流す場合は、容器3にフィルタをつけたリーク弁をつけてもよい。
(4)外側バルブIN11、内側バルブOUT13、内部標準物質用バルブ50を閉める。
【0082】
3.脱離ステップ
実施例8と同様のステップとすればよい。
【0083】
尚、実施例8〜18では、導入管40を用いたプラズマ発生を利用する場合を図示しているが、導入管40を用いない構成でもよい。
【0084】
4.分析ステップ
検出器104に導入され、測定された成分について、測定部111におけるデータと照合し、定量値等の測定結果を出力する。このとき、容器内に排出された内部標準物質52を用いて、目的とする成分の濃度補正を行うと、より正確な濃度を求めることができる。
【実施例19】
【0085】
実施例5に記載の構成から、加圧ガス部105を溶液タンク112に変更し、配管OUT107と検出器104の間にイオン源113を設けた構成を図13に示す。この構成により、測定対象とする成分は部材5から溶液を用いて脱離され、検出の直前にイオン化される。
【0086】
次に、図13で示した状態における、分析の際の動作シーケンスの一例を述べる。動作シーケンスを大きく分類すると、試料から目的とする成分を部材で抽出するステップ、部材を洗浄するステップ、部材から目的とする成分を脱離し、エレクトロスプレーイオン化法を用いてイオン化するステップからなり、列挙した順番で実施される。以下に詳細を示す。
【0087】
1.抽出ステップ
実施例5と同様の方法を用いればよい。
【0088】
2.洗浄ステップ
(1)外側バルブIN11を開く。
(2)溶液タンク112から溶液を出す。溶液とは、水やメタノール、エタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、ヘキサン、トリエチルアミンなどの有機溶媒であり、もしくは、それらを混合したものである。溶液は、溶液タンク112と接続された配管IN106を通り、配管IN106と接続された容器外側導入口8から導入され、装置側の送液機構35によって送液され、配管31を通り、そして配管内部に設けられた部材5を通り、容器内側排出口7から排出される。このとき、配管に溜まった試料を容器内側排出口7から排出する。このとき、溶液でなく、例えば、洗浄を目的とした加圧ガスを流してもよい。
(3)任意の溶液量、例えば、溶液が通る配管の体積と同じ量の溶液を流したら溶液を止める。大量の溶液を流す場合は、容器3の底にフィルタをつけたリーク弁をつけてもよい。容器3の底にフィルタのついたリーク弁を設けることにより、大量の溶液が導入されても、配管または容器には一定以上の圧力がかからないため、破裂または液漏れを防止できる効果がある。
(4)内側バルブOUT13を閉める。
【0089】
3.脱離およびイオン化のステップ
(1)外側バルブOUT12を開ける。
(2)装置側の送液機構35を動かすと、容器外側導入口8から、溶液が導入され、配管31を通り、配管31内の部材5の中を溶液が通液し、脱離した成分が溶けた溶液が、容器外側排出口9を通り、配管OUT107から排出される。溶液とは、水やメタノール、エタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、ヘキサン、トリエチルアミンなどの有機溶媒であり、もしくは、それらを混合したものである。
(3)配管OUT107から排出された溶液は、イオン源113でイオン化される。イオン化は、エレクトロスプレーイオン化法、大気圧化学イオン化法をなど用いてなされる。
(4)検出器104で検出される。ここで用いた検出器はイオン化機構を除いた質量分析装置である。
(5)任意の時間、例えば3分間、送液側の送液機構35を動かす。
(6)装置側の送液機構35を止める。
(7)外側バルブIN11、外側バルブOUT12を閉める。
【0090】
4.分析ステップ
検出器104に導入され、分析された成分について、測定部111におけるデータと照合し、定量値等の測定結果を出力する。
【実施例20】
【0091】
実施例6もしくは実施例7に記載の構成に、実施例19に記載の溶液タンク112、イオン源113を加え、実施例19に記載の動作シーケンスを用いて、目的とする成分をイオン化し、検出することもできる。
【符号の説明】
【0092】
1・・・試料採取容器、2・・・蓋、3・・・容器、4・・・試料、5・・・部材、6・・・容器内側の導入口、7・・・容器内側の排出口、8・・・容器外側の導入口、9・・・容器外側の排出口、10・・・内側バルブIN、11・・・外側バルブIN、12・・・外側バルブOUT、13・・・内側バルブOUT、20・・・内側容器、21・・・容器入口、22・・・穴A、23・・・穴B、24・・・採取した尿、25・・・蓋、26・・・外側容器、30・・・容器側のバルブ付流路、31・・・配管、32・・・ばね、33・・・弁、34・・・装置側のバルブ開閉機構、40・・・導入管、41・・・装置側にある交流電源、42・・・電極、43・・・プラズマ、50・・・内部標準物質用バルブ、51・・・装置側のバルブ開閉機構、52・・・内部標準物質、100・・・分析装置、101・・・装置側のバルブ開閉機構(四ヶ所)、102・・・装置側の送液機構、103・・・試料採取容器フォルダー、104・・・検出器、105・・・加圧ガス部、106・・・配管IN、107・・・配管OUT、108・・・装置側のヒーター、109・・・分析装置の蓋、110・・・分析装置の制御部、111・・・測定部、112・・・溶液タンク、113・・・イオン源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料分析装置であって、
試料を保持する保持容器と、前記試料に含まれる特定成分を分離して留める分離材と、前記試料を通し前記分離材を内部に保持する流路と、前記流路の端部として、前記試料を前記保持容器内から前記流路に導入する内部導入口と、前記流路に導入された前記試料を前記保持容器内に排出する内部排出口と、前記流路に前記保持容器外からガス又は溶液を導入する外部導入口と、前記流路を通った前記ガス又は溶液を前記保持容器外へ排出する外部排出口と、前記内部導入口、前記内部排出口、前記外部導入口、前記外部排出口のそれぞれの開閉をするバルブとを有する試料容器を設置させる試料容器保持部と、
前記外部導入口に接続され、ガス又は溶液を導入するガス又は溶液導入部と、
前記外部排出部に接続され、前記試料の分析を行う分析部と、
前記バルブに結合され、前記バルブの開閉を行うバルブ開閉機構と、
前記バルブ開閉機構の開閉制御を行う制御部とを有する試料分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試料分析装置において、前記制御部は、前記試料に含まれる特定成分を前記分離材にて分離して留める分離ステップでは、前記内部導入口と前記内部排出口のバルブを開状態、前記外部導入口と前記外部排出口のバルブを閉状態にし、前記分離材に留められた特定成分を前記分析部において分析する分析ステップでは、前記内部導入口と前記内部排出口のバルブを閉状態、前記外部導入口と前記外部排出口のバルブを開状態に前記バルブを制御することを特徴とする試料分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の試料分析装置において、前記制御部は、前記分析ステップにおいて前記外部排出口のバルブの開閉を間欠的に制御することを特徴とする試料分析装置。
【請求項4】
請求項2に記載の試料分析装置において、前記分離ステップと前記分析ステップとの間に前記流路を洗浄する洗浄ステップを有し、前記制御部は、前記洗浄ステップにおいて前記内部導入口のバルブを閉状態に、前記外部導入口のバルブを開状態に制御することを特徴とする試料分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の試料分析装置において、設置される前記試料容器の前記流路内の試料を送液する送液手段を有することを特徴とする試料分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の試料分析装置において、設置される前記試料容器の前記分離材の温度を調節する温度調節部を有することを特徴とする試料分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の試料分析装置において、前記温度調節部は、前記分離材の温度を80度から600度の範囲で調節することを特徴とする試料分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の試料分析装置において、前記流路の温度を調節する温度調節部を有することを特徴とする試料分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載の試料分析装置において、設置される前記保持容器の温度を調節する温度調節部を有することを特徴とする試料分析装置。
【請求項10】
請求項9に記載の試料分析装置において、前記温度調節部は、前記試料の温度を−30度から100度までの範囲で調節することを特徴とする試料分析装置。
【請求項11】
請求項1に記載の試料分析装置において、設置される前記試料容器の前記流路にプラズマを発生させるための電極に対し、交流電圧を印加するための交流電源を備えていることを特徴とする試料分析装置。
【請求項12】
請求項1に記載の試料分析装置において、前記試料容器保持部は、前記流路が上部になるように前記試料容器を保持するものであり、前記内部導入口から前記試料の揮発成分を導入させることを特徴とする試料分析装置。
【請求項13】
試料を保持する保持容器と、
前記試料に含まれる特定成分を分離して留める分離材と、
前記試料を通し前記分離材を内部に保持する流路と、
前記流路の端部として、前記試料を前記保持容器内から前記流路に導入する内部導入口と、前記流路に導入された前記試料を前記保持容器内に排出する内部排出口と、前記流路に前記保持容器外からガス又は溶液を導入する外部導入口と、前記流路を通った前記ガス又は溶液を前記保持容器外へ排出する外部排出口と、
前記内部導入口、前記内部排出口、前記外部導入口、前記外部排出口のそれぞれの開閉をするバルブとを有することを特徴とする試料容器。
【請求項14】
請求項13に記載の試料容器において、さらに前記保持容器の蓋を有し、前記流路と前記バルブとは前記蓋に設けられていることを特徴とする試料容器。
【請求項15】
請求項13に記載の試料容器において、前記流路と前記バルブとは、前記保持容器の底部又は側面の外側に設けられていることを特徴とする試料容器。
【請求項16】
請求項13に記載の試料容器において、前記バルブは閉じられた状態であることを特徴とする試料容器。
【請求項17】
請求項13に記載の試料容器において、前記流路には、電極を備え前記電極に対して印加される電圧によりプラズマを発生させるプラズマ発生領域を有することを特徴とする試料容器。
【請求項18】
請求項13に記載の試料容器において、前記流路内又は前記保持容器に内部標準を有することを特徴とする試料容器。
【請求項19】
請求項13に記載の試料容器において、前記流路内又は前記保持容器にpH調整剤を有することを特徴とする試料容器。
【請求項20】
請求項13に記載の試料容器において、前記流路の少なくとも前記バルブ設置位置は弾性体で形成されており、前記バルブは圧力により前記流路を外部から変形させて開閉することを特徴とする試料容器。
【請求項21】
請求項13に記載の試料容器において、前記保持容器は、第1の容器と、前記第1の容器を内包する第2の容器と、前記第1,2の容器を覆う蓋からなり、前記第1の容器の側面は試料採取用の穴が設けられていることを特徴とする試料容器。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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