試料破壊用ビーズを利用した生物検体の捕捉および溶出
溶解処理は、チャンバ内で、生体材料に対して親和性を有する溶解用粒状材料を含む溶媒とともに試料を攪拌する工程を含みうる。溶解用材料は、結合を促進する物質をコートしたビーズまたは他の材料を含みうる。前記媒体は、高塩濃度または低pHの流体を含みうる。前記生体材料は、塩濃度を下げることにより、または、pHを上昇させることにより溶出されうる。二以上の異なる親和性を有する溶解用材料が利用されうる。加熱処理が利用されうる。溶解処理はフロースルー装置で行われうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2009年6月26日出願の米国特許仮出願61/220,984および2010年3月25日出願の米国特許仮出願61/317,604に基づく優先権を主張する。
【0002】
本開示は、粒状材料を用いた、生体試料からのDNA等の核酸等の生体材料の抽出、捕捉および溶出に関する。本発明はまた、溶解処理(lysing)に関し、特に、溶解用粒状材料を用いて溶解対象材料の生体材料の溶解を行うシステム、装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生体試料の溶解、たとえば細胞の溶解は、組成解析に与される生体材料を得るために行われる。かかる生体材料の具体例には、タンパク質、脂質、および核酸の単体または複合体が挙げられる。細胞膜を溶解すると、核、ミトコンドリア、リソソーム、葉緑体および/または小胞体等の所定の細胞小器官が単離されうる。それらは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、電子顕微鏡法、ウェスタンブロッティング法またはその他の分析技術を用いて分析されうる。
【0004】
溶解処理には多数の方法がある。たとえば、細胞破壊に先だって適当な酵素を用いて細胞壁を除去する(すなわち、原形質体を調製する)酵素溶解法が使用されうる。別の方法として、界面活性剤を用いて細胞膜を化学的に破壊する方法がある。これらの化学的な溶解法は、放出される生成物の品質を損なう等、最終生成物に悪影響を及ぼしうる。そのため、化学的な溶解法は実用的でない場合がある。
【0005】
また、超音波を用いて細胞を破壊するためのキャビテーションおよび衝撃を発生させる方法がある。かかる方法では、多くの用途において必要とされるまたは所望される程度の溶解効率が得られないことがある。
【0006】
さらに、ビーズ(たとえば、ガラスまたはセラミック製)をボルテクス・ミキサー等で攪拌する方法がある。かかる溶解方法では化学的な溶解法による問題は解決されているものの、さらなる改良が望まれている。
【0007】
様々な分析または検査手順に使用される、細胞またはウイルスの内部から単離される特定の生体材料には、核酸がある。核酸は、たとえば、細菌性またはウイルス性感染症の検査のために単離・使用されうる。かかる目的のために核酸を分析または検査することで、従来の抗体検査で得られる結果に比べ、感度が向上するとともに、感染症の発生から陽性検査の結果の発現までの期間が短縮されうる。核酸の分析または検査は、通常、目的とする核酸(たとえば、デオキシリボ核酸(DNA))の生体試料からの抽出および単離と、それに次ぐ、PCR等の増幅反応とを含む。単離した核酸を増幅することで、得られた核酸の検出および同定の感度を向上することができる。
【0008】
特にDNA等の核酸を細胞から急速に抽出および単離するために通常用いられる技術では、シリカ製あるいはDNAの多陰イオン性に基づいて非特異的にDNAを捕捉する他の材料からなる膜または磁気ビーズを使用する。このような技術の多くは、細胞を溶解してDNAを単離する際に、カオトロピック塩(たとえば、塩酸グアニジニウム)またはプロテアーゼ等の強い試薬を利用する。上記のようなDNA単離方法において用いられる強い試薬は、その後の増幅反応とは相容れない。そのため、上記のような試薬は、単離したDNAを溶出させる前およびその後に使用または分析する前に、洗浄工程を多数回行って完全に除去する必要がある。特に強い試薬の利用といった上記のような操作を省略することにより、プロセスの効率および単離生成物の利用性を有利に向上させることができるため、前記を目的とする細胞DNAの処理を簡素化・最適化することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
効率的に生体材料を得ることができる粒子系システムおよび方法が求められている。上記のような改良されたシステムおよび方法は、サンプル(すなわち、生体材料を得るためのサンプル)の処理時間を削減し、かつ/またはそのスループットを向上しうる。また、そのような方法を用いることで、生体材料の収量を増やすことができるため、所定のサンプルサイズからより多くの生体材料を得ることができる。また、表面上に生体材料を捕捉した粒子を別個に処理することなく、生体材料を溶解、捕捉および溶出するシステムおよび方法が求められている。特に、単に化学組成と試薬のフローを制御することにより、同一システム内で生体材料を溶解、捕捉および溶出することができるシステムおよび方法が求められている。また、強い試薬を用いることなく細胞を溶解するシステムおよび方法が求められている。上記の方法では、粒子系システムにより捕捉した生体材料を処理する際に、洗浄工程が不要になりうる。また、サンプルの加熱をシステムに組み込んで行うことができるシステムおよび方法が求められている。また、細胞成分を特異的に捕捉するシステムおよび方法が求められている。さらに、小型でそのため運搬可能であり、かつ比較的安価で、それでいて移動や厳しい動作環境に十分耐えうる頑強さを有する溶解装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
生体材料の獲得方法は、生体材料を含む試料をチャンバに導入するステップと、溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を前記チャンバ内で攪拌して前記試料を機械的に溶解するステップとを含み、前記溶解用粒状材料は、前記流体の存在下で前記生体材料に対する親和性を有し、前記親和性は、前記生体材料の少なくとも一部を前記溶解用粒状材料の少なくとも一部に結合させるのに十分である、方法であると要約されうる。
【0011】
前記溶解用粒状材料は、複数のビーズを含み、前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内で前記複数のビーズとともに前記試料を攪拌するステップを含みうる。
【0012】
前記溶解用粒状材料は、複数のセラミックビーズ、複数のガラスビーズ、複数のジルコニウムビーズ、複数のシリカビーズ、複数の砂、または、生体材料に親和性を有するようにまたは生体材料に結合するように修飾可能なラテックス等の材料で金属芯をコートしてなる複数のビーズのうちの少なくとも一つを含みうる。
【0013】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内で前記複数のセラミックビーズ、前記複数のガラスビーズ、前記複数のジルコニウムビーズ、前記複数のシリカビーズ、または前記複数の砂のうちの少なくとも一つとともに前記試料を攪拌するステップを含みうる。
【0014】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内で直径または最小の横寸法が約10〜約600ミクロンの範囲である溶解用粒状材料とともに前記試料攪拌するステップを含みうる。
【0015】
前記流体は高塩濃度であり、前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内で前記高塩濃度の前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含みうる。
【0016】
高塩濃度の前記流体は、少なくとも約500ミリモル濃度の塩濃度の流体を含みうる。
【0017】
前記流体は低pHであり、前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内で前記低pHの前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含みうる。
【0018】
低pHの流体は、pHが約4以上である流体を含みうる。
【0019】
前記チャンバ内の溶解用粒状材料と流体を含む前記媒体は、化学溶解剤を含まなくてもよい。
【0020】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバを搭載したアームを振動させるステップを含みうる。
【0021】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内に少なくとも部分的に配置された多数のブレードを有するインペラを駆動するステップを含みうる。
【0022】
前記方法は、前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させるステップを更に含みうる。
【0023】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させるステップは、前記溶解用粒状材料が含まれる系の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させるステップの少なくとも一つを含みうる。
【0024】
前記溶解用粒状材料が含まれる系の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させるステップは、前記チャンバ内で前記流体の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させるステップを含みうる。
【0025】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させるステップは、洗浄せずに前記材料を溶出させるステップを含みうる。
【0026】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させるステップは、DNA材料、タンパク質またはポリペプチド材料あるいは他の細胞成分材料のうちの少なくとも一つを溶出させるステップを含みうる。
【0027】
前記方法は、前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させた後に前記生体材料を加熱するステップを更に含みうる。
【0028】
前記方法は、前記チャンバを介して、第1の時間および第1の速度で第1の方向に流し、第2の時間および第2の速度で前記第1の方向とは反対の第2の方向に流すステップを更に含みうる。
【0029】
前記方法は、第1の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第1の溶解用粒状材料、および、第2の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第2の溶解用粒状材料である、二つの異なる化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された二つの溶解用粒状材料を含みうる溶解用粒状材料を有する媒体を含みうる。
【0030】
前記第1の化学特性を有する生体材料はDNAであり、前記第2の化学特性を有する生体材料は、タンパク質またはポリペプチドでありうる。
【0031】
タンパク質またはポリペプチドを結合する方法は、捕捉中に、溶液相標識(solution phase tagged)されたリガンドを用いて前記タンパク質またはポリペプチドを標識して、その後の前記タンパク質またはポリペプチドの検出を容易にするステップを更に含みうる。
【0032】
前記方法は、固相から、第1の化学特性を有する生体材料と第2の化学特性を有する生体材料とを別個に溶出させるステップを更に含みうる。
【0033】
上記の別個に溶出される生体材料は、DNAおよびタンパク質またはポリペプチドでありうる。
【0034】
前記DNAは低pHで溶出されうり、前記タンパク質またはポリペプチドは尿素で別個に溶出されうる。
【0035】
前期方法は、前記溶解用粒状材料に未結合の生体材料をさらなる処理のために分離移動させるステップを更に含みうる。
【0036】
前記非結合生体材料は、別個のチャンバまたは容器に移動されうる。
【0037】
前記方法は、前記生体材料に特異的な受容体の光切断可能な接合部を介して生体材料が結合された溶解用粒状材料によって前記生体材料を捕捉するステップと、光切断可能な接合部を切断するのに適した波長の光に暴露することで前記生体材料の複合体および前記受容体を溶出させるステップとを含みうる。
【0038】
前記生体材料に結合される前記受容体は、たとえば、DNAに特異的に結合するのに適した配列特異的捕捉プローブまたはタンパク質またはポリペプチドに特異的に結合するのに適した抗体でありうる。
【0039】
試料を溶解しかつ前記溶解した試料から特定の生体材料を単離するシステムは、単離対象である生体材料を含む試料を収容するチャンバと;溶解用粒状材料および流体を含む媒体であって、前記溶解用粒状材料は、前記流体の存在下で前記生体材料に対する親和性を有し、前記親和性は、前記生体材料の少なくとも一部を前記溶解用粒状材料の少なくとも一部に結合させるのに十分である媒体と;前記チャンバ内で前記流体および溶解用粒状材料を含む前記媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を機械的に溶解すると共に、前記生体材料の少なくとも一部を前記粒状溶解材料の少なくとも一部に結合させるように選択的に動作可能な攪拌器と;を有するシステムと要約されうる。
【0040】
前記溶解用粒状材料は、複数のビーズを含みうる。
【0041】
前記溶解用粒状材料は、複数のセラミックビーズ、複数のガラスビーズ、複数のジルコニウムビーズ、複数のシリカビーズ、複数の砂のうちの少なくとも一つを含みうる。
【0042】
前記溶解用粒状材料は、直径または最小の横寸法が約10〜約600ミクロンの範囲でありうる。
【0043】
前記流体は、高塩濃度でありうる。
【0044】
前記塩濃度は、少なくとも約200ミリモル濃度でありうる。
【0045】
前記流体は、低pHでありうる。
【0046】
前記pHは、約4以上でありうる。
【0047】
前記チャンバ内の前記媒体は化学溶解剤を含まなくてもよい。
【0048】
前記攪拌器は、少なくとも一つのモータおよび前記チャンバを保持するアームを備え、前記アームは振動駆動可能に前記モータに連結されうる。
【0049】
前記攪拌器は、少なくとも一つのモータと、少なくとも部分的に前記チャンバ内に配置可能なインペラとを備え、前記インペラは振動駆動可能に前記モータに連結されうる。
【0050】
前記システムにより単離される前記生体材料は、DNA材料、タンパク質またはポリペプチド材料、または他の細胞成分材料のうちの少なくとも一つを有しうる。
【0051】
前記システムは、前記チャンバの容量を超える量の前記試料を前記チャンバ内に流すように動作可能なポンプを更に有しうる。
【0052】
前記システムは、前記チャンバを介して、第1の時間および第1の速度で第1の方向に流し、第2の時間および第2の速度で前記第1の方向とは反対の第2の方向に流すように動作可能なポンプを更に有しうる。
【0053】
前記システムは、前記生体材料を加熱するように選択的に動作可能である、ポンプと熱接触するヒータを更に有しうる。
【0054】
前記システムは、第1の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第1の溶解用粒状材料、および、第2の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第2の溶解用粒状材料である、二つの異なる化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された溶解用粒状材料を含みうる。
【0055】
第1の化学特性を有する生体材料はDNAであり、第2の化学特性を有する生体材料は、タンパク質またはポリペプチドでありうる。
【0056】
前記システムは、前記溶解用粒状材料に未結合の生体材料を別個に収容するチャンバを更に有しうる。
【0057】
図面において、同一の構成要素または動作には同一の符号を付す。図面において、構成要素の寸法および相対位置は必ずしも正確な縮尺で写していない。たとえば、さまざまな構成要素の形状および角度は正確な縮尺で写しておらず、いくつかの構成要素は、見易さを考慮して恣意的に拡大して配置している。さらに、写された構成要素の特定の形状は、前記特定の構成要素の実際の形状に関しなんらの情報をももたらす意図はなく、図面の認識しやすさのみを考慮して選択している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】一例示実施形態に係る材料溶解装置の正面図
【図1B】図1Aの装置の正面、右側、上面等角図
【図1C】図1Aの装置の正面、左側、下面等角図
【図2A】正面カバーをはずした状態の、一例示実施形態に係る図1Aの装置の正面図
【図2B】図2Aの装置の正面、右側、上面等角図
【図2C】図2Aの装置上面、右側、下面等角図
【図3】図1A〜図2Cの装置のモータおよび駆動機構の正面、右側等角図
【図4】材料溶解装置、溶解対象材料を供給する上流サブシステム、溶解された材料を分析する下流サブシステム、および制御サブシステムを備えた、一例示実施形態に係るフロースルー処理システムの概略図
【図5】特にフロースルー溶解において有用である、一例示実施形態に係る溶解対象材料、溶解用粒状材料、および溶解された材料を収容するチャンバを有する容器の断面図
【図6】図1A〜図4の溶解装置の操作方法のフローチャート
【図7】一実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図8】他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図9】さらに他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図10】さらに他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図11】一例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解された材料を排出する方法のフローチャート
【図12】他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解された材料を排出する方法のフローチャート
【図13】さらに他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法
【図14】さらに他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図15】一例示実施形態に係る、図4に示すような溶解された材料を分析するフロースルー式溶解システムの操作方法
【図16】他の例示実施形態に係る溶解装置の分解等角図
【図17】溶解装置、溶解対象材料を供給する上流サブシステム、溶解された材料を分析する下流サブシステム、および制御サブシステムを備えた、他の例示実施形態に係る溶解システムの概略図
【図18】一例示実施形態に係る溶解装置およびピペットの正面図
【図19】一例示実施形態に係る、図16および図17に示すような溶解装置の操作方法のフローチャート
【図20】他の例示実施形態に係る、図16および図17に示すような溶解装置操作時においてチャンバから溶解された材料を排出する方法のフローチャート
【図21】一例示実施形態に係る、図16および図17に示すような溶解装置操作時にチャンバにおいて溶解対象材料を収容する方法のフローチャート
【図22】一例示実施形態に係る、図16および図17に示すような溶解装置操作時においてチャンバ内に溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図23】他の例示実施形態に係る、図16および図17に示すような溶解装置操作時においてチャンバ内に溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図24】一例示実施形態に係る、図16、図17、図18に示すような溶解システムのインペラの操作方法のフローチャート
【図25】一例示実施形態に係る、図16、図17または図18に示すような溶解システムのインペラの操作方法のフローチャート
【図26】一例示実施形態に係る、図16、図17または図18に示すような溶解システムのマイクロモータの交換方法のフローチャート
【図27】一例示実施形態に係る、図18に示すような溶解装置の操作方法のフローチャート
【図28】一例示実施形態に係る、図18に示すような溶解装置の操作方法のフローチャート
【図29】一例示実施形態に係る、図18に示すような溶解装置のチャンバから溶解された材料を取り出す方法のフローチャート
【図30】他の例示実施形態に係る、図18に示すような溶解装置のマイクロモータを再利用する方法のフローチャート
【図31】図4と同様の装置を用いた、溶解時間に対する溶解効率の依存関係を示すデータの図
【図32】振動数に対する溶解効率の依存関係を示す図
【図33】図16の装置の実施形態に係る、溶解時間に対するスポアの溶解の依存関係を示す図
【図34A】サンプルおよび溶出モジュール、溶解モジュール、シリンジポンプならびにヒータを備えた、一例示実施形態に係る溶解、捕捉および溶出をするための双方向フローシステムの概略図
【図34B】図34Aの実施形態に係る、システムの操作中におけるサンプルおよび溶出モジュール内の弁の位置を示す概略図
【図35A】Luer−Lockカップラーおよび当該カップラーを用いて溶解装置に連結可能な二つのシリンジを備えた、一例示実施形態に係る溶解装置の平面図
【図35B】図51Aの溶解装置の等角図
【図36】互いに一列に連結された一例示実施形態に係る複数の溶解装置の平面図
【図37A】一例示実施形態に係る溶解装置のマニホールドすなわちアレイの等角図
【図37B】溶解された材料をプレートの各ウェルに分注するよう配置された一例示実施形態に係る溶解装置の、フレームに備え付けられたマニホールドすなわちアレイの等角図
【図38A】選択した二つのポートを介して第一流路を設けるように内部を回転させまたは構成した、一例示実施形態に係る止水栓型溶解装置の側面図
【図38B】選択した二つのポートを介して第二流路を設けるように内部を回転させまたは構成した、図38Aの止水栓型溶解装置の側面図
【図39A】開口した底部を有し、外側容器に対し第一の向きに配向された内側容器を示す、一例示実施形態に係る止水栓型溶解装置の分解等角図
【図39B】外側容器内に収容した内側容器ならびに内側容器内に配置したモータおよびインペラを含む駆動装置を示す図39Aの止水栓型溶解装置の等角図
【図39C】図39Aで示した方向と異なる第二の向きに配向された内側容器を示す、図39Aの内側容器の等角図
【図40A】閉じた底部を有する内側容器を示す、他の例示実施形態に係る止水栓型溶解装置の分解側面図
【図40B】図40Aの止水栓型溶解装置の底面図
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下の記載において、開示するさまざまな実施形態を完全に理解できるように、ある具体的な詳細内容を規定している。ただし、当業者は、一以上のこれらの具体的な詳細内容を用いずに、または他の方法、成分、材料等を用いて、実施形態を実施しうることを理解する。他の例では、マイクロモータ、コントローラ(たとえば、モータコントローラ)、および制御システム(たとえば、プログラム式汎用コンピュータシステム)に関連する公知の構造については、本実施形態を不要に不明瞭に記載することを避けるため、詳細には図示も記載もしない。他の例では、核酸、タンパク質、ポリペプチド、および他の生体材料の操作において使用される一般的な公知の方法については、前記材料の当業者であるならばそれらの方法を容易に利用可能であるため、記載しない。上記の一般的な方法の例として、たとえば、PCR法およびDNAの熱変性法がある。
【0060】
文脈によって特に規定しない限り、明細書および添付の特許請求の範囲を通じて、「comprise」およびそのバリエーション、たとえば、「comprises」や「comprising」は、オープンかつ非排他的、すなわち「〜を含むが、それらに限定されない」として解釈される。
【0061】
本明細書を通じて「one embodiment(一実施形態)」または「an embodiment(ある実施形態)」が言及するものは、その実施形態に関連して記載される特定の構成、構造または特徴が少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。そのため、本明細書を通じてさまざまな箇所において「in one embodiment(一実施形態において)」または「in an embodiment(ある実施形態において)」の言い回しが使用されていても、必ずしも同一の実施形態に言及しているわけではない。さらに、上記の特定の構成、構造または特徴は、一つまたは二つ以上の実施形態において、任意の適した方法を用いて組み合わせうる。
【0062】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形を示す「a」、「an」および「the」は、その内容において特に明白に規定しない限り、複数の指示対象を含む。なお、さらに、「or」という単語は、その内容において特に明白に規定しない限り、「and/or」を含む意味で用いられる。
【0063】
本明細書に用いられる項目名および要約書は、単に便宜的に用いており、実施形態の範囲または意味を解釈するものではない。
【0064】
本明細書において、溶解装置、システムおよび使用方法の多くの実施形態を記載する。前記溶解装置およびシステムは、溶解用粒状材料を用いて溶解対象材料を溶解し、溶解材料、すなわち溶解された材料を生成する。前記溶解対象材料は、通常、液体培地にサスペンドさせた細胞、胞子、組織、酵母、菌類、植物、細菌等の生体材料でありうる。前記溶解用粒状材料は、さまざまな形態をとりうる。本明細書において、「ビーズ」という用語を多用しているが、これは、ビーズのサイズまたは形状を限定するものではない。前記ビーズは、たとえば、セラミックビーズ、ガラスビーズ、ジルコニウムビーズ、ジルコニウム/シリカビーズ、金属ビーズ、プラスチックビーズ、砂、および/または上記のような材料からなるビーズ以外の粒子でありうる。前記溶解された材料も、同様に、たとえば核酸、ポリペプチド、タンパク質、細胞小器官(たとえば、核、ミトコンドリア、リソソーム、葉緑体、小胞体)でありうる。
【0065】
材料の単離および/または溶解装置ならびにシステムに関するさまざまな実施形態は、たとえば、1)バッチモード、2)フロースルーストップすなわちセミバッチモード、または3)連続フロースルーモードで動作させる。バッチモードでは、溶解対象材料のサンプルを保持するチャンバを有する容器をホルダに配置し、振動させる。前記容器は、十分振動させた後に取り外し、溶解された材料を回収する。フロースルーストップすなわちセミバッチモードでは、溶解対象材料のサンプルが流入し、チャンバを充填する。次に、前記容器を、溶解が十分に行われるまで振動させる。前記チャンバから、溶解された材料を排出する。フロースルーモードでは、溶解対象材料のサンプルが振動中に前記容器のチャンバ内を所望の流量で流れることにより、所望のまたは所定の時間、溶解対象材料のサンプルをチャンバ内で滞留させる。フロースルーストップすなわちセミバッチモードでは、サンプルは非混和性の液体またはガスと接触され、液体またはガス等の流体の吹きつけによりチャンバから排出されうる。
【0066】
少なくともいくつかの実施形態では、生体サンプルを機械的に破裂させる力が振動数の二乗と一致するという知見と、比較的小さなサンプルサイズを採用することにより、本明細書に記載のさまざまな実施形態において市販の装置よりも比較的高い振動数を得ることができるため、溶解を急速にかつ効率的に行うことができるという知見とを利用している。
【0067】
特にDNA等の核酸などの生体材料の抽出、捕捉および溶出を行うシステムならびに方法について、多くの実施形態を記載する。細胞またはウイルス等の生体試料は、粒状材料(たとえば、シリカ製および/またはジルコニウム製のビーズ)を入れた溶解チャンバにおいて、機械的な破壊により溶解しうる。前記溶解チャンバは、前記粒状材料で充填されうる。溶解チャンバ内の粒状材料を小型モータに接続したインペラで急速に駆動することにより、生体試料を溶解しうる。前記モータは使い捨てでありうる。あるいは、溶解チャンバを振動させて前記粒状材料を駆動することにより、生体試料を溶解しうる。さらに、溶解チャンバの内容物の処理には、超音波処理が含まれる。上記のような異なる種類の機械的な破壊方法により、カオトロピック剤のような強い化学薬品を使用せずに溶解を行うことが可能になる。生体材料を調製するための標準手順と比較すると、本明細書で開示する手順では、強い化学薬品を除去するために通常行われる洗浄工程を省略することにより、作業時間を短縮することができる。溶解チャンバ内の化学条件は、溶解中に、生体試料の溶解と、溶解により放出された生体材料(たとえば、DNAまたはタンパク質あるいはその両方)の粒状材料の結合、すなわち回収とを同時に行うように制御しうる。前記装置またはシステムは、溶解チャンバ内の化学条件および/またはフロー条件を変更するよう操作し、粒状材料から目的とする生体材料を溶出しうる。そのため、本明細書に開示された前記システムおよび方法を用いることで、生体試料から生体材料を容易かつ効率的に溶解、捕捉および溶出することができる。上記の驚くほど優れた方法は、溶解システム内における流体の流れ方向および化学組成の適時かつ容易な管理を含む。DNA等の前記生体材料は、その後、検査または分析されたり、あるいは他の目的に使用されうる。溶解中に強い試薬を用いないことにより、工程時間を短縮しうるだけではなく、その後の工程での使用により適する材料を生成することができる。そのため、本明細書で開示された前記システムおよび方法を用いることで、特に溶解、捕捉および溶出に適する化学組成を有する流体を連続的に使用することにより、一チャンバ内において、急速にかつ効率的に細胞等の試料を溶解し、DNA等の生体材料を捕捉することができる。以下、具体的な実施形態について詳細に記載する。
【0068】
図1A〜1Cおよび図2A〜2Cは、容器12に含まれる溶解対象材料の溶解を行うように動作可能な、一例示実施形態に係る装置10を示す。ある実施形態において、溶解対象材料の試料および前記溶解用粒状材料または別の材料を入れる容器12として、市販のバイアルおよびPCR用チューブまたはエッペンドルフチューブ等のチューブを用いてもよい。図1A〜1Cおよび図2A〜2Cはバッチモードを示すが、溶解装置10は、図4で示すようにフロースルーストップすなわちセミバッチモード、または連続モードで使用されうる。
【0069】
容器12は、取り外し可能に、ホルダ16を介してアーム14と連結しうる。ホルダ16はさまざまな形態をとりうる。たとえば、ホルダ16はU型クランプ等の部材の形態でありうる。ホルダ16は、容器を固定させた状態で容器内においてホルダ16を固定するように動作可能な留め具(たとえば、ねじ、ボルト)16aを備えうる。あるいは、ホルダ16は、弾性を有し、構成を固定する前記容器に付勢されうる。
【0070】
アーム14は、容器12が弧状軌道20に沿って振動するように軸18の周りを旋回するように連結されうる。弧状軌道20に沿った振動により、強力な粒の流れ場と液体溶液またはスラリー中のビーズ間に大きなずり速度をもたらす角加速度を有する、周期的な狭い流れ場ができる。出願人による実験では、形状を小型化することで、高い振動数(たとえば、約100Hz超)において、より優れた溶解が得られることが実証された。液体中の非中性密度(non-neutral density)のビーズへの相対的な力は、ωを角速度、rを回転中心からのビーズの距離として、ω2rに従って大きくなるため、角速度の僅かな増加によって、実質的にサイズを低減して同様の性能を得ることを可能にする。直線振動運動を用いた場合、高い振動数においても、生体サンプルがほとんど溶解されない一方、円弧運動の場合、市販のビーズを利用した溶解装置よりも優れた溶解が得られる。高速撮影では、直線運動によってビーズの周期的な集結が起こり、その後、ビーズが膨張し互いから離れるが、直線運動の軸に沿わないビーズの相対運動は比較的ほとんど起こらないことが、明確に示されている。一方、容器が円弧状に振動するときは、強い渦巻が引き起こされたときのようにビーズが高密度に圧縮されることが観察され、そのため、非常に効果的に溶解が行われる。懸濁させたビーズの相対運動による衝突および剪断は、高効率の溶解に寄与する。
【0071】
アーム14は、固定アーム、すなわち、溶解対象材料と溶解用粒状材料が入った容器に予想される負荷と少なくともほぼ等しい質量の負荷をかけて振動させたときにほとんど曲がらないアーム、でありうる。あるいは、アーム14は、フレキシブルアーム、すなわち、溶解対象材料および任意で溶解用粒状材料が入った容器に予想される負荷と少なくともほぼ等しい質量の負荷をかけて振動させたときにかなり曲がるアームでありうる。
【0072】
カバープレート24をはずした図2A〜2Cおよび図3に最もよく示されるように、アーム14はモータ22および駆動機構26(4バーリンケージの形態でありうる)で駆動されうる。特に、モータ22のシャフト28は第1部材(たとえば、バー)を駆動するが、ここでは、偏心カム30である。偏心カム30は、第二部材または連結アーム34の孔32に収容される。連結アーム34は、ロッカーアーム36の軸18によりホルダ16に駆動連結される。駆動機構26は、弧状軌道20に沿って比較的高い振動数による振動運動を実現するための低コストで信頼性の高い機構である。上記の振動数は、他の種類の装置やインスタンス回転装置または超音波装置については高くないと考えられうるが、上記の振動数は高振動型の装置と考えられる。
【0073】
図4は、一例示実施形態に係るフロースルー式溶解システム400を示している。本明細書に詳細に記載するように、フロースルー式溶解システム400は、フロースルーストップすなわちセミバッチモード、または連続フロースルーモードで作動しうる。
【0074】
フロースルーシステム400は、上記の実施形態と同様でありうる溶解装置410および容器412を備える。たとえば、溶解装置410は、アーム414、および軸418の周りを旋回して振動する容器としての容器412を保持するホルダ416を備えうる。
【0075】
フロースルー式溶解システム400は、溶解対象材料を送出する上流サブシステム438を備えうる。たとえば、上流サブシステム438は、溶解対象材料を容器412にくみ上げるまたは送出するように動作可能なポンプ440を備えうる。上流サブシステム438はまた、溶解対象材料を収容するリザーバ442を備えうる。
【0076】
上流サブシステム438は、さらに、または代替として、溶解対象材料を回収する機構、たとえばサンプリング装置439を備えうる。サンプリング装置439は、手動操作または自動操作でありうる。サンプリング装置439は、周囲環境(たとえば、空気または雰囲気、水または流体、土または他の固体)をサンプリングしうる。サンプリング装置439は、真空室すなわちサンプルを抽出するための陰圧を作る機構を備えうる。サンプリング装置439は、たとえば、サンプルを回収するためのシャベルまたはブラシを有するアーム等のアクチュエータを備えうる。前記サンプリング装置は、たとえば、サンプルを採取するための針およびシリンジ等のアクチュエータを備えうる。
【0077】
溶解対象材料は、一以上の導管(たとえば、容器412の入口446aに通じる管444a)を介して送出しうる。管444aは、その一端または両端を補強してもよく、たとえば、管448aに対し同心円上に配置された複数の層で補強しうる。管444aは、容器412およびアーム414が振動できる程度に十分に長く、かつ、前記管における共振を防ぐ程度に短い、長さL1を有しうる。長さL1は、そこに運ばれる任意の溶解対象材料の密度、質量および/または剛性とともに、管444aの密度、剛性、または取付方法に依存すると思われる。
【0078】
フロースルー式溶解システム400は、下流分析サブシステム449をさらに備えうる。下流分析サブシステム449は、一以上の下流分析装置450を備えうる。下流分析装置450は、任意の形態となりうる。たとえば、下流分析装置450は、核酸増幅装置、電子顕微鏡、ウェスタンブロッティング装置、質量分析器、ガスクロマトグラフ等を備えうる。
【0079】
下流分析サブシステム449は、下流分析装置450に通信可能に連結された一以上のコンピュータシステム452をさらに備えうる。コンピュータシステム452は、一以上のネットワーク453(たとえば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等の広域ネットワーク(WAN)、および/または無線広域ネットワーク(WWAN))に連結しうる。コンピュータシステム452は、ネットワーク453を通じ、溶解された材料の分析結果に関する情報を提供しうる。たとえば、コンピュータシステム452は、前記分析結果に基づき、警告または他のメッセージを適切なシステムに自動的に提供しうる。上記の例としては、たとえば、有毒なまたは危険な物質または条件が検出されたときに警告を送信するなどがありうる。
【0080】
下流分析装置450は、一以上の導管(たとえば、管444b)を介して容器412の出口446bに流体が連通するように連結しうる。管444bは、その一端または両端を、たとえば、同心円状に配置された一以上のある長さの管448bにより補強されうる。管444bは、容器412およびアーム414が自由に振動できる程度に十分に長く、かつ、管444bにおける共振を防ぐ程度に短い、長さL2を有しうる。長さL2は、そこに運ばれる任意の溶解対象材料の密度、質量および/または剛性とともに、管444bの密度、剛性、または取付方法に依存しうる。
【0081】
フロースルー式溶解システム400はさらに、一以上の制御システム454を備えうる。制御システム454は、一以上のモータコントローラおよび/またはコンピュータシステムの形態でありうる。制御システム454は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードおよび/または連続フロースルーモードでフロースルーシステム400を動作させるように構成されうる。制御システム454は、たとえば、溶解装置410および/またはポンプ440を制御するために通信可能に連結しうる。
【0082】
フロースルーシステム400は、バッチベースの装置と比較して、多くの優れた点をもつ。たとえば、ある種類のビーズは、溶解により放出されたある生成物に対し親和性を有しうるため、細胞内容物の一部は、ビーズの表面で吸着され、「失われて」しまうことがある。フロースルー設計は、吸着された生体分子を有利に自動的に溶出しうる。上記の設計では、また、バッチモード構成で必要とされうる、チャンバを空にするための困難なまたは追加の作業を防ぐことができる。たとえば、上記のフロースルーを採用した実施形態では、溶解された材料の入ったチャンバを空にするために、空気等の流体でチャンバ内にブラストを起こさせる必要をなくしうる。
【0083】
図5は、一例示実施形態に係る容器512を示す。容器512は、前記容器の外部560から容器512のチャンバ562に流体を連通させる入口546aを有しうる。容器512は、外部560と容器512のチャンバ562との間の流体の連通を可能にする出口546bを備えうる。第1の管544aは、溶解対象材料564を入口546aを介してチャンバ562に供給する容器512に連結しうる。先に記載のとおり、管544aは、たとえば、同心円上に配置された配管548aの一以上の層で補強しうる。第2管544bは、出口546bを介して溶解された材料566を排出するために、出口546bを介して容器512に連結しうる。ある実施形態では、容器512は、管544a、544bを取り付けあるいは連結または固定するための取付構造を備えうる。たとえば、容器512は、入口546aにリブ付ニップル568aおよび/または出口546bまたはその付近にリブ付ニップル568bを備えうる。
【0084】
前記容器は、溶解用材料570を収容する。溶解用材料570は、さまざまな形態をとることができ、たとえば、複数のビーズでありうる。ビーズは、生体親和性材料または受容体(たとえば、配列特異的なプローブまたは抗体)でコートされた一以上のセラミックビーズ、ガラスビーズ、ジルコニウムビーズ、ジルコニウム/シリカビーズ、金属ビーズ、プラスチックビーズ、砂、および/または金属ビーズを含みうる。ビーズの直径は特に限定されず、たとえば、約10ミクロン〜600ミクロンでありうる。
【0085】
前記フロースルーの実施形態では、容器512は、入口546aの比較的近くに配される第1フィルタ572aと、出口546bの比較的近くに配される第2フィルタ572bとを備えうる。第1および第2フィルタ572a、572bは、溶解用粒状材料570が保持される粒子保持領域574を形成する。特に、フィルタ572a、572bは、溶解対象材料564と溶解された材料566をそれぞれ通し、かつ溶解用粒状材料570を通さないように採寸された複数の開口部を有しうる。容器512は、一以上の構造、たとえば、第1および第2フィルタ572a、572bを所定の位置に保持するタブまたはリング状の畝576a、576bを備えうる。フィルタは、たとえば、ナイロンまたはステンレス鋼メッシュフィルタの形態をとりうる。
【0086】
図1A〜図5に示す実施形態は、有利に非常に高い充填密度を実現しうる。上記の実施形態において、粒状材料の量は、有利にも、溶解対象材料の量または溶解された材料の量を超えうる。さらにまたは代替として、上記の実施形態では、有利にも、チャンバ内に実質的に空気を含まないことがある。ここで、「実質的に空気を含まない」とは、チャンバが、意図せずに閉じ込められうる小さな泡以外の空気を含まないことを意味する。これにより、溶解効率が向上し、また、液体と空気との接触線運動による摩擦によって前記システムが望ましくなく加熱することを防ぐことができる。
【0087】
図6は、一例示実施形態に係る、図1A〜図4に示すような材料溶解装置を操作する方法600を示す。
【0088】
602において、溶解対象材料を容器のチャンバに収容する。チャンバは、溶解用粒状材料を事前に保持しうる。604において、容器を弧状軌道に沿って振動させる。この振動により、個々の溶解用粒状材料の間での運動に大きな多様性をもたらす。このような多様性は、並進運動または回転運動におけるよりも顕著である。606において、溶解された材料を容器のチャンバから排出する。
【0089】
図7は、一例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法700を示す。
【0090】
702において、溶解対象材料を容器のチャンバ内にくみ上げる。
【0091】
図8は、一例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法800を示す。
【0092】
802において、容器が振動する間、溶解対象材料は、前記容器のチャンバ内に間欠的にくみ上げられる。上記の操作は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードに適しうる。
【0093】
図9は、他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法900を示す。
【0094】
902において、溶解対象材料がチャンバ内で十分な時間滞留し、所望の溶解レベルが得られるように、溶解対象材料をチャンバ内に間欠的にくみ上げる。このように、30秒の振動によって所望の溶解レベルが得られると判断された場合、ポンプは、約30秒ごとに溶解対象材料をチャンバにくみ上げするように間欠的に操作されうる。数秒または数十秒の振動時間が適しうる。上記の操作は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードに適しうる。
【0095】
図10は、他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法1000を示す。
【0096】
1002において、溶解対象材料は、前記間欠的なくみ上げの各サイクルにおいてチャンバから溶解された材料が完全に排出されるように、チャンバ内に間欠的にくみ上げられる。上記の操作は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードに適しうる。
【0097】
図11は、他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解された材料を排出する方法1100を示す。
【0098】
1102において、前記間欠的なくみ上げの各サイクルにおいて、より多くの溶解対象材料を前記チャンバ内にくみ上げることにより、前記チャンバから溶解された材料を排出する。上記の操作は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードに適しうる。
【0099】
図12は、他の例示実施形態に係る、図4に示すような溶解装置の操作方法1200を示す。
【0100】
1202において、前記間欠的なくみ上げの各サイクルにおいて、不活性の流体をチャンバ内にくみ上げることにより、前記チャンバから溶解された材料を排出する。不活性の流体は、液体またはガスの形態をとりうり、また、溶解された材料または溶解対象材料に対して非混和でありうる。上記の操作は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードに適しうる。
【0101】
図13は、一例示実施形態に係る連続溶解装置を操作する方法1300を示す。
【0102】
1302において、容器が振動する間、溶解対象材料を前記容器のチャンバ内に連続的にくみ上げる。上記の操作は、フロースルー連続モードに適しうる。
【0103】
図14は、他の例示実施形態に係るフロースルー溶解装置の操作方法1400を示す。
【0104】
1402において、溶解対象材料がチャンバ内で十分な時間(すなわち、所望のまたは所定の時間)滞留して所望の溶解レベルが得られるように、少なくとも一部には前記チャンバの長さおよび自由体積に基づき、溶解対象材料のくみ上げ流量を調節する。上記の操作は、フロースルー連続モードに適しうる。
【0105】
図15は、他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー溶解装置の操作方法1500を示す。
【0106】
1502において、容器のチャンバから排出した溶解された材料を、少なくとも一の分析装置に送る。1504において、前記溶解された材料を分析する。分析は、さまざまな形態をとりうり、たとえば、電子顕微鏡観察、ウェスタンブロッティング、質量分析、ガスクロマトグラフィーによる分析でありうる。上記は、すべてのモード、特にフロースルーモードに適しうる。
【0107】
図16は、他の例示実施形態に係るフロースルー溶解装置1600を示す。本明細書に詳細に記載するように、フロースルー式溶解システム1600は、フロースルーストップすなわちセミバッチモード、または連続フロースルーモードで動作する。
【0108】
フロースルー溶解装置1600は、チャンバ1604を有する容器1602、およびインペラ1608を回転させるために連結されるマイクロモータ1606を備える。
【0109】
図に示すように、チャンバ1604は、容器1602の外部1610からチャンバ1604に流体を供給する入口として機能する、第1の開口部1604aを備えうる。また、図に示すとおり、チャンバ1604は、チャンバ1604から外部1610に流れる流体を排出する出口として機能する第2の開口部1604bを備えうる。容器1602は、マイクロモータ1606の外部を封止して係合するために、インペラ1608を収容するよう採寸された第3の開口部1604cをさらに備えうる。ある実施形態では、マイクロモータ1606と第3の開口部1604cとの間を封止するあるいはその封止を強化する軸受筒またはOリングを備えうる。
【0110】
第1のカップラー1610aは、流体をチャンバ1604に連通させるために、密閉しながら開口部1604aに収容されるように採寸されたステム1612aを備えうる。ステム1612aは、相補的なねじ山を有する穴1604aにねじ込まれうる。第1のカップラー1610aは、取付構造、たとえば、管1616aを固定し、溶解対象材料の流れをチャンバ1604に供給するリブ付ニップル1614aを備えうる。Oリング1618aまたは他の同様の構造は、第1のカップラー1610aのフランジと容器1602との間の封止を強化しうる。
【0111】
第2のカップラー1610bは、チャンバ1604に流体を連通させるために、密閉しながら開口部1604bに収容されるように採寸されたステム1612bを備えうる。ステム1612bは、相補的なねじ山を有する穴1604bにねじ込まれうる。第2のカップラー1610bは、取付構造、たとえば、管1616bを固定し、溶解対象材料の流れをチャンバ1604に供給するリブ付ニップル1614bを備えうる。Oリング1618bまたは他の同様の構造は、第2のカップラー1610bのフランジと容器1602との間の封止を強化しうる。
【0112】
フィルタ1619a、1619bは、その間に溶解用粒状材料を挟んで保持するようにチャンバ内に配置されうる。フィルタ1619a、1619bは、たとえば、適した取付部品に配された50ミクロンの開口部を有するナイロンメッシュフィルタの形態をとりうる。
【0113】
マイクロモータ1606は、たとえば、4mm直径のマイクロモータの形態をとり、液体およびビーズがない状態でインペラを高速(たとえば、約50000RPM)で駆動可能でありうる。インペラ1608は、多くの羽根を有するナイロンまたはアクリル製インペラでありうる。上記羽根は、材料が主として円周方向に動くように、その付属品に湾曲や角度がなく、直線でありうる。たとえば、フロースルーモード(たとえば、図16および図17)において、チャンバ内で材料が軸方向または水平方向に動くことが望ましい場合、そのような軸方向または流れの動きは、くみ上げによって引き起こされるのであって、前記インペラの回転により引き起こされるのではない。これにより、材料がチャンバ内に滞留しそこで溶解にさらされる時間をより正確に制御することができる。前記羽根は、たとえば、図1A〜図4の実施形態より5倍近く高い振動数で、しかし、より小さい振幅の運動でもって、周期的な流れを生み出しうる。
【0114】
溶解装置1600はまた、マイクロモータ1606を制御するために連結されるコントローラ1620を備えうる。コントローラ1620は、たとえば、モータコントローラおよび/またはプログラム式汎用コンピュータシステム、専用コンピュータ、ASIC(application specific integrated circuit)および/またはFPGA(field programmable gate array)を備えうる。コントローラ1620は、たとえば、モータを脈動させるようプログラムまたは構成されうる。上記の脈動は、溶解の効果を向上させうる。
【0115】
図17は、一例示実施形態に係るフロースルー式溶解システム1700を示す。本明細書に詳細に記載するように、フロースルー式溶解システム1700は、フロースルーストップすなわちセミバッチモード、または連続フロースルーモードで作動する。
【0116】
フロースルー式溶解システム1700は、チャンバ(図17に図示せず)を有する容器1702、開口部1704a、1704c(二つのみ図示する)、およびインペラ(図17に図示せず)に連結されたマイクロモータ1706を備える。開口部すなわち入口1704は、リザーバ1722から第1の導管すなわち管1716aを介して溶解対象材料を送出するポンプ1720に流体が連通するように連結されうる。第2の開口部すなわち出口は、溶解された材料を、一以上の導管(たとえば、管1716b)を介して一以上の下流分析装置1724に送出しうる。先に記載したように、下流分析は、さまざまな形態をとりうり、たとえば、核酸の増幅、電気泳動、ウェスタンブロッティング、質量分析、ガスクロマトグラフィーでありうる。下流分析装置1724は、一以上のコンピュータシステム1726に通信可能に連結されうる。フロースルー式溶解システム1700はまた、マイクロモータ1706および/またはポンプ1720を制御しうる一以上の制御システム1728を備えうる。制御システム1728は、たとえば、フロースルーストップすなわちセミバッチモードを実行するために、くみ上げおよび振動を同調させうる。制御システム1728は、たとえば、フロースルー連続モードを実行するために、たとえば、前記くみ上げを制御して、所望のまたは所定の時間、材料をチャンバ内に滞留させることにより、所望のまたは所定の溶解レベルを得てもよい。
【0117】
図16および図17に示す実施形態は、有利に非常に高い充填密度を実現しうる。上記の実施形態において、粒状材料の量は、溶解対象材料の量または溶解された材料の量を有利に超えうる。さらにまたは代替として、上記の実施形態では、有利にも、チャンバ内に実質的に空気を含まないことがある。ここで、「実質的に空気を含まない」とは、チャンバが、意図せずに閉じ込められうる小さな泡以外の空気を含まないことを意味する。これにより、溶解効率が向上し、また、液体と空気との接触線運動による摩擦によって前記システムが望ましくなく加熱することを防ぐことができる。
【0118】
図18は、他の例示実施形態に係る溶解システム1800を示す。溶解システム1800は、特に、バッチモード溶解操作に適している。
【0119】
溶解システム1800は、容器1802の外部に流体を連通させる一の開口部1804aを有するチャンバ1804を備える容器1802を備えている。装置1800は、チャンバ1804内に収容されるインペラ1808を駆動するために連結されるマイクロモータ1806を備える。マイクロモータ1806の一部分は、開口部1804aと容器1802との間を封止して係合するように採寸される。ある実施形態では、前記封止を確実にするための一以上の軸受筒またはOリング(図示せず)を備えうる。
【0120】
まず、チャンバ1804内に、溶解対象材料1810および溶解用粒状材料1812を充填する。インペラ1808を回転させた後、チャンバ1804は、溶解された材料および溶解用粒状材料1812を十分な時間、収容する。マイクロモータ1806とインペラ1808は、その後、取り外してもよく、また、溶解された材料は、たとえば、ピペット1814を用いて取り出されうる。バッチモードの実施形態に係るチャンバ1804については、前記溶解された材料を取り出す装置のためのスペースが限られうるため、フロースルーモードの実施形態のように密に充填しなくてもよい。
【0121】
ある実施形態では、市販のバイアルおよびチューブ(たとえば、PCR用チューブまたはエッペンドルフチューブ)を、溶解対象材料の試料および溶解用粒状材料を保持する容器1802として使用しうる。
【0122】
図18に示す実施形態は、有利に非常に高い充填密度を実現しうる。上記の実施形態において、粒状材料の量は、溶解対象材料の量または溶解された材料の量を有利に超えうる。本実施形態では、前記取り出し装置(たとえば、ピペット)を収容するためのスペースが必要であるため、チャンバ内に実質的に空気を含まないことを確実にする可能性が小さくてもよい。しかし、可能な場合は、前記チャンバにおける空気を排除することで、溶解効率が向上し、また、液体と空気との接触線運動による摩擦によって前記システムが望ましくなく加熱することを防ぐことができる。
【0123】
図19は、一例示実施形態に係る、フロースルー溶解装置および/またはシステムの操作方法1900を示す。上記のような実施形態は、フロースルーストップすなわちセミバッチモード、またはフロースルー連続モードにおいて有用でありうる。
【0124】
1902において、溶解対象材料を入口から容器のチャンバ内に収容する。前記チャンバは、溶解用粒状材料を事前に保持しうる。1904において、マイクロモータは、インペラを駆動し、溶解用粒状材料を用いて溶解対象材料を溶解する。1906において、出口を介して容器のチャンバから溶解した物質を排出する。
【0125】
図20は、一例示実施形態に係る、チャンバから溶解された材料を排出する方法2000を示す。
【0126】
2002において、溶解した物質は、装置またはシステムを介して材料の流路において、前記出口の前に配された第1フィルタを介して排出しうる。
【0127】
図21は、他の例示実施形態に係る、チャンバ内で溶解対象材料を収容する方法2100を示す。
【0128】
2102において、溶解対象材料は、装置またはシステムを介して流路において、チャンバの入口の後に配された第2フィルタを介して、前記チャンバ内に収容される。
【0129】
図22は、他の例示実施形態に係る、溶解対象材料をチャンバ内にくみ上げる方法2200を示す。
【0130】
2202において、溶解対象材料を、入口を介してチャンバ内に間欠的にくみ上げる。上記の操作は、特にフロースルーストップすなわちセミバッチモード操作に適しうる。
【0131】
図23は、一例示実施形態に係る、溶解対象材料をチャンバ内にくみ上げる方法2300を示す。
【0132】
2302において、溶解対象材料は、前記溶解対象材料がチャンバ内で十分な時間(すなわち、所望のまたは所定の時間)滞留して所望の溶解レベルが得られる流量で、入口を介して容器のチャンバ内に連続的にくみ上げられる。マイクロモータは、前記溶解対象材料を溶解するためにインペラを連続的に駆動しうる。上記の操作は、特にフロースルー連続モード操作に適しうる。
【0133】
図24は、一例示実施形態に係る、溶解システムのインペラの操作方法2400を示す。
【0134】
2402において、マイクロモータは、脈動によってインペラを駆動する。脈動は、前記マイクロモータに印加する電圧または電流を変化させることにより得られうる。脈動により、高い溶解効率が得られ、それにより、スループットが増加し、また、所望のまたは所定の溶解レベルを得るのに必要な時間が削減されうる。
【0135】
図25は、一例示実施形態に係る、溶解システムのインペラの操作方法2500を示す。
【0136】
2502において、マイクロモータは、液体およびビーズの存在下で、10000を超えるRPMでインペラを駆動する。比較的高速でインペラを駆動させることにより、所望のまたは所定の溶解レベルを得ることができる。
【0137】
図26は、一例示実施形態に係る、溶解システムのマイクロモータの交換方法2600を示す。
【0138】
2602において、マイクロモータは、新しいマイクロモータに交換しうる。2604において、古いマイクロモータは、処分または再利用しうる。上記の構成は、高速マイクロモータの内部構成要素(たとえば、ロータやステータ)を周囲環境へ曝露しないように封止することが困難であり、そのためマイクロモータが他の実施形態または環境においてより頻繁に故障しうるため、特に有用でありうる。
【0139】
図27は、一例示実施形態に係る、バッチベースの溶解装置の操作方法2700を示す。方法2700は、特に図18の実施形態での使用に有用でありうる。
【0140】
2702において、溶解対象材料は、入口を介して第1の容器のチャンバに収容される。前記チャンバは、溶解用粒状材料を事前に保持するか、あるいは、溶解用粒状材料は、溶解対象材料とともにまたは溶解対象材料の投入後にチャンバに供給しうる。
【0141】
2704において、インペラを第1の容器のチャンバに配置する。2706において、第1の容器への入口を、マイクロモータでふさぐまたは封止する。2708において、マイクロモータは、インペラを駆動し、溶解対象材料および溶解用粒状材料を循環させる。マイクロモータは、所望のまたは所定の溶解レベルが得られるまで、十分な速度かつ十分な時間、インペラを駆動しうる。
【0142】
図28は、一例示実施形態に係る溶解装置の操作方法2800を示す。前記方法2800は、特に図18の実施形態において有用でありうる。
【0143】
2802において、第1の容器の入口からマイクロモータを取り外してもよい。2804において、溶解された材料を、前記入口を介して第1の容器のチャンバから排出する。
【0144】
図29は、一例示実施形態に係る、溶解された材料を取り出す方法2900を示す。
【0145】
2902において、前記溶解された材料はピペットを用いて取り出しうる。
【0146】
図30は、他の例示実施形態に係る溶解装置の操作方法3000を示す。
【0147】
3002において、マイクロモータは、一以上の他の容器に再利用されうる。なお、マイクロモータは、特に高速で動作させる場合には、溶解対象材料、溶解用粒状材料、または溶解された材料から特に十分に保護されないことがある。その結果、マイクロモータは磨耗しうる。多くの用途において、マイクロモータは、故障するまでに複数のサンプルの溶解に使用されうる。
【0148】
図31は、図4と同様の装置を用いた場合の溶解効率のデータを示す。
【0149】
第1の曲線3102は、図4に示すものと同様の実施形態を用いて測定された蛍光強度と振動時間との関係を示す。蛍光強度は、細胞から放出された核酸の量に比例している。第2の曲線3105は、市販のMINI−BEADBEATER−1(Biospec Products,Inc.Bartlesville、オクラホマ州)を用いて測定された蛍光強度と振動時間との関係を示す。第1の曲線3102および第2の曲線3105の比較からわかるように、図4に示す実施形態では、市販の装置よりも効率的に細胞内容物の放出が行われている。
【0150】
図32は、振動数に対する溶解効率の依存関係を示す。
【0151】
曲線3202は、一定時間印加電圧を変化させることにより制御されるように、振動数に対し溶解の度合いがほぼ二次関数的に依存していることを示していると考えられる。
【0152】
図33は、図16および図17と同様の実施形態に係る、溶解時間に対するスポアの溶解の依存関係を示す。
【0153】
曲線3302、3304は、飽和までの時間は、図4の実施形態と同等であるが、ピーク効率はわずか80%であることを示している。上記の効率に必要となる力はわずか400mWであり、これは、他の実施形態で使用される力よりも小さい。
【0154】
図34Aは、一例示実施形態に係る、生体材料を溶解、捕捉、および溶出する双方向フローシステム3400を示す。本明細書により詳細に記載するように、双方向フローシステム3400は、生体試料を溶解し、粒状材料上に生体材料を捕捉し、前記生体材料を前記粒状材料から溶出させるように動作しうる。図34Aにおけるシステム3400は、特に、生体試料を溶解すること、また、溶解チャンバ内の流体の方向および流量、化学組成および物理特性を制御して、溶解用粒状材料による生体材料の捕捉と、溶解用粒状材料からの前記生体材料の溶出を誘発することに適している。溶解、捕捉および溶出のためのシステム3400を効率的に利用するには、驚くべきことに、前記システム内の流体の流れ方向、pHおよび塩濃度を単に制御するだけでよい。ある条件下では、流体の温度を制御することもまた有利でありうる。
【0155】
本明細書に記載の装置またはシステムの設計に係るある実施形態は、以下にさらに記載するように、複数のモジュールを備えうる。各モジュールは、上記の装置またはシステムを利用する方法の特定の態様を実現するために有用でありうる。各モジュールは独立して機能しうるが、たとえば、システムにおいて互いに留めることであるいはLuer−Lockコネクタを用いて互いに連結してもよい。
【0156】
ある実施形態では、試料の溶解ならびにその後の目的とする生体材料の捕捉および溶出を一体化するモジュールのシステムの設計は、前記システムにより複数の機能を実行するものである。上記の設計を用いたシステムは、前記システムの異なる機能または操作段階においてシステム内の流体の流れ方向や流体の化学組成を制御することにより、生体材料を溶解、捕捉および溶出することに特に適している。サンプルを細胞、生体材料をDNAとして例示している図34Aに示すようなシステムの機能は、以下を含みうる:サンプルの導入、流体の運動、細胞破壊およびDNAの捕捉、DNAの溶出、任意での加熱および冷却、ならびに、任意の単離DNAの検査。各機能においては、少なくとも流れ方向および化学組成を制御する。
【0157】
図34Aにおいて、生体材料を溶解、捕捉および溶出する双方向フローシステム3400は、サンプルおよび溶出モジュール3434、溶解モジュール3410、シリンジ3413、および任意でヒータ3416を備える。サンプルおよび溶出モジュール3434は、サンプル槽3402および溶出用バッファ槽3420を備える。溶解モジュール3410は、溶解チャンバ3412とインペラ3431に連結されたマイクロモータ3430を備える。システム3400の動作中、溶解チャンバ3412は流体と溶解用粒状材料を含む。溶解用粒状材料は、前記チャンバに密に充填されうる。シリンジ3413は、バレル3414とプランジャ3415を備える。シリンジ3413は、たとえば、シリンジ3413をシリンジポンプ(図34Aに図示せず)内に配置することにより、手動で操作または自動で駆動しうる。シリンジポンプは、たとえば、New Era Pump Systems,Inc.(Wantagh、ニューヨーク州、米国)から入手できる。ヒータ3416は、シリンジ3413のバレル3414内に配され、流体を加熱しうる。
【0158】
サンプルおよび溶出モジュール3434のサンプル槽3402は、導管3404、弁3406、および導管3408を介して溶解モジュール3410の溶解チャンバ3412に流体が連通するように連結される。ある実施形態では、サンプル槽3402は、溶解によって生体試料から生体材料を放出させた後、溶解チャンバ3412内で粒状材料による生体材料の捕捉を誘発するのに適した化学組成を有する流体中に懸濁または溶解させた生体試料を含む。
【0159】
サンプルおよび溶出モジュール3434の溶出用バッファ槽3420は、導管3418、弁3406、および導管3408を介して溶解モジュール3410の溶解チャンバ3412に流体が連通するように連結される。ある実施形態では、溶出用バッファ槽3420は、溶解チャンバ3412内で表面上に生体材料を捕捉した粒状材料から生体材料を放出させることを誘発するのに適した化学組成を有する流体を含む。
【0160】
マイクロモータ3430は、コントローラ3432に電気的に連通するように連結される。コントローラは、マイクロモータの速度、持続時間および/または操作タイミングを制御しうり、また、それにより溶解チャンバ3412内でインペラ3431を制御しうる。
【0161】
溶解モジュール3410は、流体が連通するように、シリンジ3413のバレル3414に連結される。シリンジ3413のプランジャ3415は、シリンジ3413のバレル3414内に配置する。シリンジ3413のプランジャ3415は、手動でまたは制御によって摺動可能に操作することにより、バレル3414内の流体の量が増える方向にプランジャ3415を動かして流体をバレル3414内に吸引しうる。あるいは、シリンジ3413のプランジャ3415は、手動または制御によって摺動可能に操作することにより、バレル3414内の流体の量を減らす方向にプランジャ3415を動かしてバレル3414から流体を押し出しうる。シリンジ3413のバレル3414は、任意でヒータ3416と熱接触する。ヒータ3416は、たとえば、電気的に抵抗性の帯状材料、たとえば、ホイル製のバンドを備えうる。ヒータ3416は、スイッチ3426に電流を通し、電源3428からヒータ3416に電圧を供給することで、シリンジ3413のバレル3414に熱を供給しうる。シリンジ3413のバレル3414に供給される熱レベルは、たとえば、電位差計または他のコントローラ(図34Aに図示せず)を介して制御しうる。
【0162】
サンプルおよび溶出モジュール3434は、導管3408および弁3406を介して溶解チャンバ3412に流体が連通するように連結された排出管3422をさらに備える。排出管3422は、溶出した生体材料を他の目的(たとえば、検査または分析)に使用するために貯蔵容器3424に分配する導管として配される。シリンジ3413のプランジャ3415はたとえば、ポンプの操作を制御することにより、手動でまたはコントローラ(図34Aに図示せず)を介して操作され、流体を第1の流量にてシリンジ3413のバレル3414に吸引する、流体を第2の流量にてシリンジ3413のバレル3414から押し出す、および/または流れを一定の時間止める、などの操作が行われる。前記第1の流量および第2の流量は、同一でも異なってもよい。
【0163】
システム3400の操作の第1の段階において、シリンジ3413のプランジャ3415は、生体試料をサンプル槽3402から弁3406を介して溶解チャンバ3412に、または溶解チャンバ3412を介してシリンジ3413のバレル3414に吸引するよう操作されうる。上記の一実施形態では、インペラ3431は、サンプルが溶解チャンバ内で引き出される間に操作されうる。他の実施形態では、インペラ3431および/または流れを間欠的に停止しうる。さらに、流量またはインペラ3431の回転速度は変化しうる。一以上のこれらの変数を制御することで、生体試料の溶解および/または生体試料からの生体材料の回収を最適化しうる。
【0164】
サンプル槽3402内の生体試料を含む流体の化学組成は、チャンバ3412内で生体試料が溶解された時に前記生体試料からの生体材料の捕捉を誘発するまたは捕捉をさせるものを選択する。たとえば、特にDNA等の核酸を生体試料から単離するためのある実施形態では、溶解チャンバ3412内での粒状材料を用いての核酸の溶解および結合の準備として生体試料を懸濁または溶解させうるサンプル槽3402内の流体は、高塩濃度および/または低pHでありうる。
【0165】
高塩濃度の試料含有流体の実施形態では、溶解チャンバ3412内で特にDNA等の核酸の粒状材料への結合を誘発するのに適した、サンプル槽3402内の流体の塩濃度は、約200〜500μMの範囲で変わりうる。他の上記のような実施形態では、特にDNA等の核酸の結合を誘発するのに適した試料含有流体の塩濃度は、約1000μMまでの値をとりうる。さらに他の上記のような実施形態では、特にDNA等の核酸の結合を誘発するのに適した塩濃度は、約2000μM以上でありうる。
【0166】
低pHのサンプル含有流体の実施形態では、溶解チャンバ3412内で特にDNA等の核酸の粒状材料への結合を誘発するのに適した、サンプル槽3402内の上記の流体のpHは、約3.5〜5の間で変わりうる。他の上記のような実施形態では、特にDNA等の核酸の結合を誘発する試料含有流体のpHは、約3.75〜4.25の範囲で変わりうる。さらに他の上記のような実施形態では、特にDNA等の核酸の結合を誘発する試料含有流体のpHは、約4でありうる。
【0167】
ビーズは、たとえば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のエンテロキシンBタンパク質等の、病原菌マーカーに特異的な抗体でコートすることができる。同様に、ビーズは、p53タンパク質等の癌マーカーを結合する抗体でコートすることができる。
【0168】
また、たとえば、「サンドイッチ」法において、ビーズをより汎用の受容体(たとえば、ストレプトアビジン)でプレコートし、対応するビオチン等のリガンドを付与した試薬を捕捉できるようにすることができる。ビオチン化抗体は、市販されており、または、容易につくれる。この方法により、一種類のビーズ(ストレプトアビジンでコートしたビーズ等)は、対応するビオチン化抗体と結合することで、その後任意の特異的なタンパク質を捕捉するために使用される汎用品とさせることができる。ビオチン化抗体の結合は、サンプル処理の前に製造工程としてまたはサンプル処理の前にユーザによって、ビーズ上に捕捉することができ、あるいは、サンプル処理の一部として、ビーズ、抗体およびサンプルを同時に組み合わせることができる。
【0169】
別の例として、特異的なタンパク質を捕捉するための「汎用の」ビーズを得ることの代わりとしての「サンドイッチ」法は、ビーズを他の種の抗体に特異的な抗体(たとえば、マウスの抗ヤギIgG)でプレコートし、次に、目的とするタンパク質に特異的なヤギ抗体を使用する。
【0170】
システム3400の操作の第2の段階では、シリンジ3413のプランジャ3415は、サンプル槽3402での生体材料の捕捉または結合後に、流体を、シリンジ3413のバレル3414から溶解チャンバを通じ逆流させ、試料をサンプル槽3402に戻すよう操作されうる。ビーズ上でのDNAの非特異的な捕捉は、サンプルが溶解チャンバを出る経路とまた戻る経路の両方において起こりうる。配列特異的な捕捉をするために、シリンジ3413のバレル3414における流体は、さらに以下に記載するように、流れ方向を逆にする前に加熱および冷却しうる。捕捉工程の最後におけるサンプル槽内の流体は、廃液材料すなわちビーズにより捕捉されるものとは化学的性質が異なる検体を含む物質である。そのため、たとえば、DNAはビーズ上に捕捉されうり、また、変性剤にさらされていないタンパク質をサンプルチャンバに戻し、その後、特定のタンパク質を分析するこができる。大量の空気を、まず、第1の操作段階のはじめにシリンジ3413のバレル3414に吸引し、第1の操作段階の終わりに、廃棄流体全てを溶解チャンバおよび導管からサンプル/廃液槽に押し出すために、使用しうる。ある実施形態では、前記システムは、他の粒状材料が核酸の捕捉専用である一方、検体のタンパク質またはポリペプチドマーカーを捕捉するための抗体を付着させた粒状材料を備えうる。さらに、標識抗体を、たとえば、前記タンパク質またはポリペプチドを標識するために、溶解および捕捉中に導入しうる。捕捉後、標識抗体は、たとえば、尿素を用いて溶出されうる。ある実施形態では、たとえば、ビーズの一部がDNAの捕捉用に設計され、他の部分がタンパク質またはポリペプチドの捕捉用に設計されている場合、両方の捕捉が同時に起こりうる。上記の実施形態では、DNAを、低塩濃度で溶出し、タンパク質またはポリペプチドを尿素を用いて溶出しうる。
【0171】
タンパク質の捕捉用に設計されたビーズは、核酸の捕捉用に設計されたビーズとは別個につくられる。それぞれの製造工程を完了した後、二種類のビーズは、有用な割合で一つのカートリッジ内で混合され、それにより、タンパク質と核酸を処理できる状態になる。前記タンパク質の捕捉用に設計されたビーズには、タンパク質に特異的な抗体、またはタンパク質に特異的なアプタマー、またはストレプトアビジン等の汎用の受容体、または特異的な捕捉のために「設計された(engineered)」タンパク質を結合する結合剤が付与されうる。これには、ヒスチジンテールを用いてタンパク質を捕捉するために使用される、ニッケルをコートしたビーズの使用を含む。
【0172】
核酸の捕捉用に設計されるビーズは、実質的に全ての核酸を結合する一般的なものでよい(たとえば、シリカまたはジルコニウムビーズ)。あるいは、これらのビーズには、ハイブリダイゼーションにより特定の検体と結合する特異的な核酸(捕捉プローブ)を付与しうる。ビーズに「汎用の」捕捉プローブを付与し、その後、一方の領域が検体に相補的であり他方の領域が「汎用の」捕捉プローブに相補的である二つの領域を有するリンカープローブを付与するサンドイッチ法によっても、特異的な核酸の捕捉を促進することができる。
【0173】
特定のまたは一般的な核酸用のビーズの多くの組み合わせは、一のカートリッジ内で、特定のまたは一般的なタンパク質用のビーズと組み合せられる。
【0174】
システム3400の第3の操作段階では、溶出用バッファは、溶出用バッファ槽3420から弁3406を介し、溶解チャンバ3412を通って、シリンジ3413のバレル3414に吸引されうる。上記のように、流れは、連続的または間欠的であり、かつ、流量および/または量は、溶解用粒状材料からの生体材料の溶出を最適化するために変化しうる。さらに、シリンジ3413のバレル3414は、この段階で加熱してもよく、たとえば、溶出流体を加熱することにより、溶解チャンバ内で粒状材料から捕捉された生体材料を最適な状態で溶出しうる。
【0175】
特にDNA等の核酸の単離のためのシステムおよび方法に係るある実施形態では、溶解チャンバ内において粒状材料から核酸を溶出させるためのバッファは、上記のように、特にDNA等の核酸の粒状材料への結合を誘発するために、核酸を懸濁または溶解させた生体試料を含む流体よりも低い塩濃度および/または高いpHでありうる。
【0176】
より低塩濃度のサンプル溶出用バッファの実施形態では、溶出用バッファ槽3420に入れられかつそこから引きだされる溶出用バッファの塩濃度は、約200μM未満でありうる。他の上記のような実施形態では、溶出用バッファの塩濃度は、約100μM未満でありうる。さらに他の上記のような実施形態では、溶出用バッファの塩濃度は、約10μM未満でありうる。特に上記のような実施形態では、溶出用バッファは塩を含まなくてもよい。
【0177】
より高いpHのサンプル溶出用バッファに係るある実施形態では、溶出用バッファのpHは、約5を超えうる。他の上記のような実施形態では、溶出用バッファのpHは、約6を超えうる。さらに他の上記のような実施形態では、溶出用バッファのpHは、約7を超えうる。さらに上記のような実施形態では、溶出用バッファのpHは、約8を超えうる。
【0178】
第4の段階の操作では、溶出された材料は、シリンジ3413のバレル3414と溶解チャンバ3412から、導管3408、弁3406および排出管3422を介して貯蔵容器3424に押し出され、分析または検査などのさらなる操作のために使用されうる。空気が、シリンジ3413のバレル3414から再度排出され、生体材料を含む全ての流体を前記システムから貯蔵容器に押し出しうる。貯蔵容器において溶出液を回収する代わりに、排出管を検査装置に直接連結することにより、溶出した材料を溶出直後に検査装置において分析しうる。排出管は、必要に応じて、分配された流体の慎重な計測を可能にする直径が小さく採寸された流路を有する。排出口はまた、流体の流れを監視するための、また、シリンジ3413の操作を制御する制御システムに対しフィードバックを送るための流体感知システムを備えうる。
【0179】
前記溶解、捕捉および溶出システム内で流れを供給するためにシリンジ3413を使用することで、前記システムの使用毎にシリンジ3413を容易にかつ安価に交換することができるため、汚染を起こさない効率的な方法を実現している。本明細書に開示された前記システムおよび方法で使用するためにシリンジポンプを開示しているが、他の種類のポンプ、たとえば、蠕動ポンプまたは他の種類の計測ポンプも用いてもよい。シリンジポンプまたは蠕動ポンプを使用することには、蠕動ポンプのシリンジまたは配管が使い捨てであり、そのため使用毎に溶解チャンバとともに処分することができる、という格別な利点がある。これにより、サンプルが他のサンプルにクロスコンタミネーションする懸念なしにサンプルを効率的に処理するための簡易的な構成が可能になる。洗浄工程を省いたことは、本明細書に開示された前記システムおよび方法において際立って有利な点ではあるが、特定の実施形態で望まれる場合、サンプル槽または溶出用バッファ槽のいずれかを介して洗浄流体を供給する一以上の洗浄工程が含まれうる。
【0180】
本明細書に記載のシステムおよび方法により得られる生体材料の分析または検査には、たとえば、PCRによるDNAの増幅が含まれうる。上記のような手順では、ヒータ3416が有利に使用されうる。たとえば、システム3434を使用してPCR等による酵素増幅を含む検査のためにDNAを提供する際に、ヒータ3416は、貯蔵容器3424に分配する前に、熱を加えてDNAを変性させることにより、シリンジ3413のバレル3414内で一本鎖DNAを形成する。熱変性したDNAは、次に、シリンジ3413のバレル3414内に留まっている間に、鎖の再会合を防ぐために冷却されうる。上記のような熱変性したDNAは、PCR等による酵素増幅反応において特に有用でありうる。
【0181】
図34Bは、一例示実施形態に係る図34Aのシステム3400のある操作段階における弁3406の位置を示す。
【0182】
図34Bにおける弁の位置3406aは、二つの操作段階において利用されうる。一つの段階は、サンプル槽3402から、導管3404、弁3406と導管3408を介して、溶解チャンバ3412とシリンジ3413のバレル3414に生体試料を吸引することに対応する。弁の位置3406aを用いる他の操作段階は、溶解および回収後に残った試料を、シリンジ3413のバレル3414と溶解チャンバ3412から、導管3408、弁3406および導管3404を介して、サンプル槽3402に押し戻すことに対応する。
【0183】
図34Bにおける弁の位置3406bは、さらに他の操作段階に利用されうる。上記段階すなわち溶出段階は、溶出用バッファを、溶出槽3420から、導管3418、弁3406と導管3408を介して、溶解チャンバ3412とシリンジ3413のバレル3414に吸引することに対応する。
【0184】
図34Bにおける弁の位置3406cは、さらに他の操作段階で利用されうる。上記の段階すなわち分配段階では、溶出した生体材料を、シリンジ3413のバレル3414と溶解チャンバ3412から、導管3408、弁3406と排出管3422を介して、貯蔵容器3424に押し入れることに対応する。
【0185】
図34Aに示すような本明細書に開示された前記システムにおいて使用する細胞サンプルは、スワブを用いて、ヒトまたは動物等のソースから得られうる。スワブはまた、目的とするさまざまな細胞試料を保持しうる表面から検査用にサンプルを回収して使用しうる。スワブ上に回収した細胞材料は、次に、流体に懸濁しうる。適当なバッファ、塩および弱い界面活性剤は、前記流体中に入れて、細胞の溶解中に溶解チャンバ内でビーズにDNAを捕捉させてもよい。細胞を含む流体サンプルは、たとえば、図34Aに示されるシステムのサンプルおよび溶出モジュール内のサンプル槽内に置く。
【0186】
たとえば、核酸の結合は、十分に低いpH(3.0程度)、または十分に高い塩濃度(たとえば、200mM〜5MのNaCl)、塩化リチウム、硫酸アンモニウム、または酢酸アンモニウムのいずれかによってもたらされるカチオンによって促進することができる。カオトロピック塩は、6Mまで使用できる。
【0187】
高塩濃度により、DNAのシリカ表面への非特異的な結合と配列特異的なDNAの捕捉(ハイブリダイゼーション)の両方が促進される。
【0188】
バインディングバッファ中のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の界面活性剤は、非特異的な結合を減らすために使用しうる。界面活性剤がPCR等の核の増幅反応と相性が良い場合、DNAの溶出の前に界面活性剤を洗い流す必要性がない。これらの界面活性剤は、通常、非イオン性であり、Tween、Triton、Nonidetでありうる。DNAの結合を促進するために使用される塩が有機塩である場合、このような塩、たとえば、アニオンとして酢酸塩またはカチオンとしてグアニジウムは、非特異的な結合を減らす役割をも果たしうる。
【0189】
DNAの放出および溶出を促進する溶液は、イオン強度が低く(たとえば、水)、通常、10〜30mMのトリス等のバッファ濃度によりバッファされる。バインディングバッファが低pHである場合(たとえば、pH3〜5)、溶出用バッファ中のpHを上昇させることにより、pH8〜10の範囲になるようにバインディングバッファを中和することを促進することができる。これにより、放出が促進されるとともに、その後の核酸増幅反応との相性が向上する。
【0190】
特にDNA等の核酸は、本明細書に記載するように、溶解用粒状材料に非特異的に結合しうる。あるいは、本明細書に記載の材料および方法のある態様は、配列特異的な核酸の捕捉に適用しうる。配列特異的な捕捉方法が有利になりうるのは、非特異的な捕捉が、目的の生体材料及び他の生体材料の捕捉につながるときである。たとえば、本明細書に開示したシステムおよび方法を用いた場合、土壌または便サンプルは、核酸に加え、非特異的に捕捉されうる陰イオン性多糖類を含みうる。さらに、便サンプルは、非特異的に結合し、かつその後DNA等の核酸と同時に精製されうるさまざまなPCR阻害剤を含みうる。DNAおよび他の同様の材料に非特異的に結合する粒状材料を用いる代わりに、配列特異的な捕捉プローブを溶解用粒状材料上に付与することができる。これらのプローブは、目的とする核酸に含まれるある配列に対する結合特異性に基づき選択することができる。上記のように、配列特異的な捕捉を行うことで、非核酸材料の結合が防止されるだけでなく、スワブ上に集まったホスト細胞からのホスト核酸の結合が防止されると思われる。配列特異的な捕捉方法は、このように、感度を向上させうる。前記粒状材料すなわちビーズは、配列特異的な捕捉の際に使用されるさまざまな方法により、官能基化されうる。
【0191】
たとえば、ビーズに、HIVのポリメラーゼ遺伝子を結合する捕捉プローブを付与されうる。ターゲットに特異的な配列の、検体に対する親和性と特異性を十分に促進させる長さは、たとえば、10〜60ヌクレオチド長の範囲でありうるが、これに限定されない。前記捕捉プローブは、さらに縮重させて設計することにより、検体の全てまたは大部分の種類を捕捉することができる。
【0192】
配列特異的な捕捉を用いる場合、上記のように、溶解、捕捉および溶出方法のある種の態様は、変化しうる。たとえば、上記プローブによる特異的な結合のためにDNAの配列を露出するためには、二本鎖ゲノムDNAを変性させて一本鎖DNAを生成する必要がある。これは、熱変性により行うことができる。このように、試料が溶解チャンバを介してシリンジに入るとき、シリンジは次に、溶解チャンバ内ではまだビーズに結合していないDNAを変性するために加熱される。加熱することで、DNAは一本鎖DNAに変性するが、その後、再アニールするのを防ぐため、DNAは冷却される。このように、熱変性された一本鎖DNAの配列は、加熱/冷却した試料が溶解チャンバを通って戻る流路において、プローブを有するビーズに特異的に結合されるようにさらされる。
【0193】
ある実施形態では、生体試料を溶解し、生体材料を捕捉および溶出するシステムは、溶解用粒状材料を含む溶解チャンバを有する溶解モジュール(たとえば、ビーズ、マイクロモータで駆動するインペラおよび二つのシリンジ(それぞれ、流体が連通するよう溶解モジュールの溶解チャンバに連結されたバレルを有する第1のシリンジおよび第2のシリンジ))でありうる。いずれか一つまたは両方のシリンジのバレルは、両シリンジと熱接触するヒータをさらに有しうる。上記のようなシステムは、上記に記載のシステムと同様に動作しうる。たとえば、生体試料は、第1のシリンジのバレルから溶解チャンバに、および溶解チャンバを介して、第2のシリンジのバレルに押し出されうる。廃棄サンプルは、次に、第2のシリンジのバレルから溶解チャンバを介して逆流して第1のシリンジのバレルに押し出されうるが、第1のシリンジを取り外している場合には、廃棄貯蔵容器に直接押し出されうる。溶出用バッファを含むバレルを有する第3のシリンジは、次に、第1のシリンジと置き換えられうる。溶出用バッファは、第3のシリンジのバレルから、溶解チャンバを介して、第2のシリンジのバレルに送出されうる。第3のシリンジは、次に、取り外すか、またはバレルを有する第4のシリンジに置き換えられうる。溶出用バッファは、次に、第2のシリンジのバレルから逆流して溶解チャンバに、および溶解チャンバから貯蔵容器または第4のシリンジのバレルに押し出されうる。第2のシリンジのバレルは、上記のように、溶解および捕捉段階および/または溶出段階において加熱されうる。各シリンジは、たとえば、シリンジポンプ、モータおよびリンク機構、ソレノイド、または他のアクチュエータを使用して、単に手動でまたは自動的に操作されうる。
【0194】
本明細書に記載のシステムを使用中に、溶解チャンバを通り抜けて特にDNA等の生体材料が細胞破壊され捕捉されたサンプルの量は、溶解チャンバの容積の何倍にもなりうる。ある実施形態では、サンプルの量は、100〜2000μLの範囲でありうる。本明細書に開示されたシステムおよび方法のある特定の実施形態では、溶解モジュールは、OmniLyserTM(OLTM)溶解装置でありうる。前記OLTM溶解装置を用いた特定の実施形態では、上記の量のサンプルの処理時間は、約15〜120秒の範囲でありうる。
【0195】
図34Aおよび図34Bに示され、本明細書に詳細に記載されたシステムおよび方法の実施形態は、溶解チャンバ3412内でインペラ装置を用いて溶解した生体試料から生体材料を単離することを例示しているが、これに限定されない。しかし、当業者であれば、図34Aおよび図34Bで例示したシステムおよびその使用を、他の手段により溶解した生体試料から放出された生体材料の単離に容易に利用できることを認識するであろう。たとえば、本明細書に詳細に記載するように、上記のような生体試料は、溶解チャンバを振動させることにより溶解しうる。さらに、ある処理方法が溶解チャンバ内で生体材料を粒状材料に結合するのに適当である化学組成を有する生体材料を生成するのであれば、また、前記粒状材料から捕捉し溶出した前記生体材料がさらなる使用または分析に適するのであれば、試料の溶解は超音波を用いて行うことができ、または、いくつかの他の種類の物理処理または化学処理を含むこともできる。
【0196】
図35Aおよび図35Bは、他の例示実施形態に係る溶解装置3500を示す。
【0197】
溶解装置3500は、チャンバ3504を形成する本体3502を備える。本体3502は、インペラ3508がチャンバ3504に配されるように、その中に前記インペラを収容するよう採寸された開口部3506を備えうる。開口部3506は、駆動モータ(たとえば、マイクロ電動モータ3510)の一部またはその全てを、任意で通しうる。電動モータ3510は、インペラ3508を駆動するために連結される。電動モータ3510は、モータに供給された電力に応じて選択的に動作可能である。電動モータ3510は、加圧型の取付部品または締まりばねを介して、開口部3506内で固定されうる。特に、開口部3506を形成する内壁および/またはチャンバ3504は、電動モータが開口部3506を介してチャンバ3504内に進むにつれてわずかに漸減し、電動モータ3510の側壁に密閉するように係合しうる。あるいは、または追加で、電動モータ3510の側壁は、電動モータ3510が開口部3506を介してチャンバ3504内に進むにつれてわずかに漸減し、開口部3506の側壁および/またはチャンバ3504を密閉するように係合しうる。あるいは、電動モータ3510と開口部3506および/またはチャンバ3504は、カップラー構造を備えうる。たとえば、電動モータ3510と開口部3506および/またはチャンバ3504は、電動モータ3510が開口部3506を介してチャンバ3504内に進むにつれて噛み合わせて封止するねじ山(図示せず)を備えうる。あるいは、差込型(図示せず)または突起型(図示せず)のカップラー構造を採用しうる。他の封止構造もまた採用しうる。たとえば、ガスケット、ワッシャまたはOリングを固定するための固定リングまたは外周リングを用いてあるいはそれらを用いずに、一以上のガスケット、ワッシャまたはOリング(図示せず)を利用しうる。封止は、流体を通さない封止および/またはガスを通さない封止でありうる。
【0198】
前記溶解装置は、第1のポート3512aおよび第2のポート3512b(3512と総称する)を備える。第1のおよび第2のポート3512は、その外部からチャンバに流体を連通させるための流路3514a、3514b(3514と総称する)をそれぞれ備えうる。ポート3512は、材料をチャンバ3504に供給する供給ポートとしておよび/またはチャンバ3504から材料を排出する排出ポートとして使用されうる。
【0199】
それぞれのポート3512は、ポート3512a、3512bそれぞれに選択的に連結することができるカップラー3516a、3516b(3516と総称する)を備えうる。
【0200】
たとえば、それぞれのポート3512は、オスまたはメスの各Luer−Lock(R)取付部品またはLuer−Slip(R)取付部品を備えうる。Luer−Lock(R)またはLuer‐Taper(R)取付部品を用いることで、シリンジ3518a、3518b(図35A、3518と総称する)を溶解装置3500に結合することができる。たとえば、第1のシリンジ3518aは、第1のポート3512aに連結され、サンプルまたは試料を注入させる一方、第2のシリンジ3518bは、第2のポート3512bに結合され、溶解後にサンプルまたは試料(たとえば、溶解された材料)を排出させるようにしうる。これにより、サンプルまたは試料がチャンバ3504を介して往復して通過するため、たとえば、溶解またはDNAの捕捉の能力を高めうる。シリンジ3518は、ポート3512aと3512bのいずれかまたは両方のポート3512にて使用しうる。サンプルまたは試料送出システムとしてシリンジ3518を用いることにおいて有利な点は、シリンジ3518が安価で使い捨てであること、かつ、分配量が急速である場合にも、流体が高い信頼度で確実に入れ替わることである。Luer−Lock(R)の設計は、確実に封止し、また、相補的なLuer−Lock(R)取付部品を有する多くの装置に接続する汎用の付属品の例を示している。
【0201】
図36に示すように、選択的に固定できる取付部品(たとえば、Luer−Lock(R)取付部品)を用いることで、複数の溶解装置3500a、3500b(3500と総称する、三つのみ図示する)を連続で結合しうる。これにより、複数の段階を通じて、サンプルまたは試料を連続的に処理するために有利に使用しうる。さらにまたは代替として、異なる連続する溶解装置3500において、ビーズ等の溶解用粒子は、それぞれ異なる分子に対する感受性を有しうる。たとえば、連続する溶解装置のある装置における溶解用粒子には、同一サンプルまたは試料からそれぞれ異なる分子を捕捉するための受容体(たとえば、結合部位)を付与しうる。捕捉された異なる分子を有するそれぞれの溶解装置3500は、次に、互いの装置から容易に分離され、異なる種類の溶出または溶出ステップにより個別に処理されうる。
【0202】
図37Aおよび図37Bは、一例示実施形態に係る溶解マニホールドすなわちアレイ3700を示す。溶解マニホールドすなわちアレイ3700は、複数の位置3704a、3704h(3704と総称する、図37Aでは二つのみ表記する)を有するブロックまたはフレーム3702を備えることにより、一以上の独立した溶解装置3706a〜3706h(3706と総称する、六つ図示する)のそれぞれを保持する。独立した溶解装置3706は、たとえば、インペラと電動モータを収容するチャンバを採用する別個の溶解装置の形態をとりうり、たとえば、独立した溶解装置3706は、溶解装置3500(図35)と同一または類似でありうる。独立した溶解装置3706は、それぞれ、インペラを駆動するために連結される使い捨て電動モータを備えうる。独立した溶解装置3706は、それぞれ、第1のポート3708aと第2のポート3708b(3708と総称する、図37Aには二つのみ表記する)を備えうる。ポート3708は、チャンバ(図37Aまたは図37Bには表記せず)への供給口および/または排出口として機能しうる。
【0203】
図37Bに示すように、溶解マニホールドすなわちアレイ3700は、一以上のブロックまたはフレーム3702および連結された独立した溶解装置3706を支持する支持構造3710を備えうる。特に、支持構造3710は、溶解された材料を収容する構造体(たとえば、マイクロタイタープレート3712)に対して配置された、ブロックまたはフレーム3702および連結された個々の溶解装置3706を保持するレール3710a、3710bを備えうる。たとえば、支持構造3710は、連結された独立した溶解装置3706がマイクロタイタープレート3712の複数のウェル3712a(図37Bには、一つのみ表記する)それぞれの上に位置するように、ブロックまたはフレーム3702を保持しうる。図37Bは、一の一次元アレイ溶解装置3706を構成する一列のみの独立した溶解装置3706を備えた溶解マニホールドすなわちアレイ3700を示す。あるいは、支持構造3710は、それぞれが一列の独立した溶解装置3706を備える追加の溶解マニホールドすなわちアレイを備えうる。複数の溶解マニホールドすなわちアレイ3700が備える独立した溶解装置3706は、二次元アレイを構成することができる。さらなる代替として、一の溶解マニホールドすなわちアレイ3700は、二次元アレイに配された独立した溶解装置3706を備えうる。さらに別の代替として、モータと駆動機構を連結することにより、独立した溶解装置3706を備えた一の溶解マニホールドすなわちアレイ3700を、支持構造3710のレール3710a、3710bに沿って動かしうる。このように、溶解装置3706の一次元アレイは、位置の二次元アレイを実現するために動かされうる。この動きは、たとえば、一以上のコンピュータ処理機、モータ、アクチュエータおよび/または伝送を通じて、手動または自動で制御されうる。
【0204】
直前に記載したように、独立した溶解装置3706は、複数の装置をつなぎ合わせて溶解マニホールドすなわちアレイ3700(たとえば、一次元または二次元)を構成することにより、多重処理を行うことができる。これらの独立した溶解装置3706の中心間の距離は、たとえば、9mmまたは9mmの倍数にすることで、マイクロタイタープレート3712(たとえば、9mm間隔で96個以上のウェルを有するプレート)の標準フォーマットに合わせることができる。同様に、4.5mm未満の直径の電動モータを使用することで、溶解装置3700のマニホールドすなわちアレイを、4.5mmの間隔のマイクロタイタープレートのフォーマット(たとえば、384個のウェルを有するプレート)に合わせて使用することができる。独立した溶解装置3706を4、8、6または12の列または並びに構成することで、マイクロタイターのフォーマットでサンプルを自動化または準自動処理するために使用することを促進しうる。さらに、独立した溶解装置3706の吸入ポート3708aがサンプルまたは試料をピペットの先から受け入れるよう設計される場合、独立した溶解装置3706には、手動操作または機械操作のいずれかで、マルチチャネルピペッターを用いて分注しうる。ブロックまたはフレーム3702は、一つのブロックから独立した溶解装置3706用の複数の部位を有するように成形またはカット押出しされた一体構造として作製されうる。
【0205】
ある実施形態におけるフロースルーの性質により、追加のサンプルまたは試料を処理するためにシステムを再利用できるようにしうる。たとえば、前記フロースルーの性質により、前記システムの滅菌を行うあるいは他の殺菌または洗浄を行うための、一回以上の洗浄または洗浄ステップにおける性能が向上しうる。容器は、使用と使用の間に洗浄および/または滅菌することにより再利用しうる。これは、あるサンプルまたは試料の下流処理と調整することで、下流処理が行われる間に他のサンプルまたは試料のために前記容器が準備されるようにしうる。前記容器の洗浄および/または滅菌は、たとえば、高pHまたは低pHの溶液、漂白剤、界面活性剤、またはそれらを組み合わせて一回以上行ってもよい。pHの中和は容易であるため、pHを調整することにより、洗浄または洗浄ステップの回数を有利に削減しうる。別の方法として、ジエチルピロカーボネート(DEPC)を使用しうる。DEPC化合物は、タンパク質および核酸を破壊することができる。この処理の後には、洗浄が一回行われ、その後に熱い空気が吹き付けられうる。DEPCは揮発性が高いため、DEPCで処理した表面全体を熱した空気の中を通す動作中に、分解および蒸発により取り除かれうる。
【0206】
上記のさまざまな実施形態により、フロースルーであるかそうでないかに関わらず、さまざまな機構を介して、溶解が行われる同じチャンバ内および/または他のチャンバ内(たとえば、サンプルまたは試料の流れの後に配されるチャンバ)のいずれかで、検体の捕捉を行わせてもよい。本明細書に記載するように、前記フロースルーシステムまたは装置(たとえば、弧状振動運動に基づくまたは回転インペラに基づく)は、同一の粒状物質(すなわち、溶解用粒状物質)を用いて検体捕捉と組み合わせて溶解を行うことで、同一チャンバ内で検体分子を捕捉することができる。さらに、または代替として、溶解は、通常溶解の後に行われうる、他の機構を使用する検体捕捉または検体捕捉ステップと組み合わせることもできる。この方法によっても、強い試薬の使用を有利に省略し、かつ、洗浄後に起きうる任意の酵素反応に先立つ洗浄動作またはステップを行うことに関連する必要性をなくすことができる。たとえば、1μmの磁気粒子は、破壊(すなわち、溶解)の前後に、サンプルまたは試料に混合することができる。そのため、DNAの捕捉は、より大きな溶解用粒子すなわちビーズによる破壊が完了した後に、これらの磁気粒子上で起こりうる。この原理はまた、他の非化学的な細胞溶解法(たとえば、超音波処理と同時にまたはそれに続いて、別の表面で捕捉が発生しうるような超音波処理)に適応しうる。そのような方法によっても、洗浄または洗浄ステップを任意の酵素反応の前に行うことを避けることができる。
【0207】
フロースルー構成を採用し、溶解用粒子すなわちビーズを高いエネルギーで混合することは、結合キネティクスおよび溶出キネティクスにおいて、際立った利点を有しうる。サンプルまたは試料を、活発に振とう・攪拌されている溶解用粒子すなわちビーズの高濃度縣濁液を含む比較的小型のチャンバに通すことにより、検体DNAと溶解用粒子すなわちビーズとの間に「衝突」を高確率で誘発する。これは、サンプルまたは試料を親和性フィルタに通すことといくつかの点で類似しており、ミクロンサイズの磁気ビーズを用いる通常の方法に対してあきらかな利点を有しうる。上記のような磁気ビーズは、通常、サンプルまたは試料の体積全体にわたって分散させなければならない。
【0208】
固相と溶液相の界面は、当該液相において比較的静的で、能動的な混合に寄与しない境界層を有する。溶液相における分子は、この層を介して拡散し、固相の表面に到達する必要がある。拡散は、渦混合および対流と比較して緩慢な工程である。溶解用粒子すなわちビーズの運動エネルギーが上昇するにつれて、能動的な混合の度合いが上昇して、この境界層を減少させ、DNAがビーズの表面に到達する速度を増加させ、それにより、結合が加速する。あるいは、DNAを溶出させるとき、溶解用粒子すなわちビーズの高いエネルギー運動はまた、溶解用粒子すなわちビーズと境界層からDNAを運ぶ働きをするため、溶解用粒子すなわちビーズからのDNAの解離が加速する。これは、DNA結合システムが高容量DNA(たとえば、5〜60μg)を捕捉するための高い結合能力を有するという一般的な場合において特に有用でありうる一方、非常に低容量の検体DNAを捕捉する場合にも有用である。前記高い結合能力は、再結合のためのかなり広い表面面積およびDNAの一部を保持することができる境界層を数多く提供することにより、通常、低コピー数のときには溶出効率を下げる。弧状振動運動に基づく実施形態(図1A〜図5)または回転インペラに基づく実施形態(図16〜図18)による高いエネルギー運動によって生み出されるせん断力は、DNAを表面から解離させることおよび減少した境界層からDNAを運ぶことに寄与することができ、溶出または溶出ステップ中にDNAがチャンバから分配されるバルク流体に合流することを可能にする。
【0209】
本明細書に記載の少なくともいくつかの実施形態では、溶解用粒子すなわちビーズを用いた「サンドイッチ」型の検出方式が可能となりうる。この原理は、タンパク質および核酸とともに、他のリガンド/受容体の組み合わせに対しても適用することができる。核酸の場合、Chiron社で開発された分岐DNAアッセイ等のDNAの捕捉方式を、弧状振動運動に基づく装置(たとえば、ビーズビーター)または回転インペラに基づく装置(たとえば、ビーズブレンダー)のいずれかにおいて、細胞を溶解し、DNAを結合するために使用される、ビーズ等の溶解用粒状材料に用いることができる。検体の核酸は、溶解用粒子すなわちビーズに接着した捕捉プローブに検体配列を架橋する、ヘテロ二官能性延長プローブにより捕捉することができる。分岐DNAアッセイを行った後の層は、溶解用粒子すなわちビーズ上に捕捉された検体に加えることができる。プローブの各層は、溶解用粒子すなわちビーズの混合の調整速度を伴わせることで、各層の結合の加速と高いせん断力によるするDNA切断との間を媒介することができる。これらの溶解用粒子すなわちビーズに分岐DNA方式を構築することで、検体の捕捉を含む各層における結合の急速な結合キネティクスを促進することができる。これにより、また、かなり大容量の試料からの非常に効率的に検体の濃縮が促進され、また、各結合または結合ステップ間における効率的な洗浄または洗浄ステップが促進される。
【0210】
分岐DNA方式のプローブの完全な複合体が溶解用粒子すなわちビーズに構築された後、検出に進むためには、少なくとも三つの方法がある。一つの方法は、溶解装置(たとえば、ビーズブレンダー)の容器またはカートリッジ内で検出することである。化学発光検出の場合、混合は検出または検出ステップ中に発生しうる。他の方法は、溶解用粒子すなわちビーズを検出用のウェルまたは管の中に分注することである。さらに他の方法は、溶解用粒子すなわちビーズからDNA複合体を放出させ、レポーター基を検出用のウェルまたは管の中に溶出させることである。この方法には、実際に検体に特異的である放出または放出ステップを可能にすることで、検体特異的なシグナルとバックグラウンドシグナルとのより良い比が得られるという潜在的な利点がある。たとえば、プローブの一以上の層は、光切断可能な接合部において光で切断することにより放出されうる。高pHまたは低塩濃度において加熱によって溶出させることで、DNAが変性し、また、そのためレポーター基が放出される。ヌクレアーゼは、特異的な部位においてまたは非特異的にDNA複合体を放出するために使用されうる。前記振動回転運動に基づく装置(たとえば、ビーズビーター)または前記回転インペラに基づく装置(たとえば、ビーズブレンダー)による急速な動作は、放出・溶出または放出・溶出ステップの効率を向上しうる。
【0211】
本明細書の教示に基づき当業者により認識されるように、細胞を溶解しDNAを抽出する溶解用粒子すなわちビーズの使用は、DNAに対し非特異的な親和性を有する任意の表面化学反応により行うことができる。これには、シリカまたはシリカ様ビーズを用いること、ならびに、BOOM法により、高塩濃度または低pHを用いてDNAのビーズへの結合を誘発し、その後、低塩濃度の溶液をアプライしてDNAを溶出させることが含まれうる。これにはまた、二価のカチオン(たとえば、Mg++)の溶液とともに用いられたときに、ビーズとDNAの間に塩架橋を形成する負に帯電したビーズを用いることが含まれうる。この方法はまた、低濃度の塩およびEDTAを使用してDNAを溶出させる。上記の方法は、Hawkins, et al,. Nucleic Acids Res. 1995, 23:22.に記載されている。これはまた、シリカ溶解用粒子すなわちビーズ上のアニオン交換樹脂を用いたDNAの捕捉および放出を含みうる。第3級アミンを含むジアチルアミノエタノール等の樹脂は、低pHにおいてDNAを結合させ、次に、高塩濃度の媒体の存在下でDNAを溶出させることができる。
【0212】
図38Aおよび図38Bは、さらに他の例示実施形態に係る、止水栓弁3800の形態の溶解装置を示す。止水栓弁3800は、貯蔵容器を形成する外側本体部3802、または外側チャンバ3804を備える。止水栓弁3800は、貯蔵容器を形成する内側本体部3806、または内側チャンバ3808を備える。止水栓弁3800はまた、内側チャンバ3808内に収容され中で回転するインペラ3810を備える。止水栓弁3800はさらに、インペラを駆動するために連結される電動モータ3812を備える。止水栓弁3800は、トルクを内側本体部3806にかけることにより、内側本体部を外側本体部3802に対し容易に回転させるまたは旋回させるハンドル3818または他の係合可能な構造をさらに備えうる。
【0213】
内側本体部3806は、内側チャンバ3808内で従軸3809の周りを回転することにより(両矢印3807)複数のポート3820a〜3820c(3820と総称する)を開閉し、それにより、内側チャンバ3808との流体の連通を開閉している。上記の構成は、止水栓弁型溶解装置3800を操作時および/または止水栓弁型溶解装置3800を介して異なる流路を画定するために、内側チャンバ3808を介して異なる時間に異なる流体を流させるために採用しうる。前記構造は、内側チャンバ3808の壁における一以上のポートが外側本体部3802を介してポート、流路または通路との間で流体を確実に連通させうる。このように、ポート3820は、少なくとも一つの他のポート3820が内側チャンバ3808を通るよう設計された流体を含む流路に連通して流体が流れるように、ポンプにつながる流路に並べられうる。この設計により、止水栓型溶解装置3800を、他の機能を担うまたは他の流体を保持する他のチャンバと一体化させることができる(たとえば、サンプルとバインディングバッファの混合液、溶出用バッファ、ポンプ、廃液槽、および/または増幅および検出用のチャンバ)。
【0214】
図39A〜39Cは、図38Aおよび図38Bと同様の溶解装置3900を示す。特に、図39Aは、溶解装置3900の分解図であり、図39Bは、溶解装置3900を組み立てた図であり、図39Cは、図39Aに示した向きから180°回転させた溶解装置3900を示す。
【0215】
溶解装置3900は、外側チャンバ3904を形成する外側容器3902、内側チャンバ3908を形成する内側容器3906、インペラ3910およびインペラ3910を駆動するために連結される電動モータ3912、を備えうる。外側チャンバ3904は、内側容器3906をその中に収容するよう採寸される。たとえば、外側チャンバ3904は、内側容器3906の外周径または外径D2を密接に収容する内周径または内径D1を有しうる。上記の内周径または内径は、間を密閉して流体またはガスを通さないよう、前記外周径または外径を十分に密接に収容しうる。さらに、または代替として、一以上のガスケット、ワッシャまたはOリングを利用しうる。さらに、または代替として、カップラー構造(たとえば、ねじ山)を利用しうる。外側チャンバ3904は、内側容器3906を収容するために、一端3914aにおいて開いている。外側チャンバ3904は、他端3914bにおいて閉じうる。内側チャンバ3908は、インペラ3910および任意で電動モータ3912を収容するために、一端3916aにおいて開いている。内側チャンバ3908は、図39Aおよび39Cに示すように、他端3916bにおいて(たとえば、外側チャンバ3904が他端3914bにおいて閉じている場所において)開きうる。あるいは、図40Aおよび図40Bに示すように、内側チャンバ3908は、他端3916bにおいて閉じうる。
【0216】
内側チャンバ3908は、インペラ3910および任意で電動モータ3912の一部またはその全てをその中に収容するよう採寸される。たとえば、内側チャンバ3908は、電動モータ3912の外周径または外径D4を密接に収容する内周径または内径D3を有しうる。上記の内周径または内径は、間を密閉して流体またはガスを通さないよう、前記外周径または外径を十分に密接に収容しうる。さらに、または代替として、一以上のガスケット、ワッシャまたはOリングを利用しうる。さらに、または代替として、カップラー構造(たとえば、ねじ山)を利用しうる。内側容器3902は、前記内側容器から外側に延伸する一以上の突起または他の係合可能な構造3918a、3918b(3918と総称する)を備えうる。これにより、内側容器3906を外側容器3902内で容易に回転させることができる。
【0217】
図39Aに最もよく示されるように、外側容器3902は、外側チャンバ3904と外側容器3902の外部との間に流体を連通させるまたは流体流路を提供するための多くのポート3920a〜3920c(3920と総称する)を有する。例示実施形態には、三つのポート3920a〜3920cを示しているが、より少ないまたはより多くのポートを利用しうる。同様に、内側容器3906は、内側チャンバ3908と内側容器3906の外部との間に流体を連通させるまたは流体流路を提供するための多くのポート3922a〜3922c(3922と総称する)を有する。例示実施形態には、三つのポート3922a〜3922cを示しているが、より少ないまたはより多くのポートを利用しうる。ポート3920、3922は、内側容器3906上の選択されたポートが外側容器3902の選択されたポート上に第1の向きまたは構成(図39A)で並ぶように配置される一方、内側容器3906上の選択されたポートが外側容器3902上の選択されたポートに第1の向きまたは構成とは異なる第2の向きまたは構成(図39C)で並ぶように配置されるように、配置される。前記流体流路は、内側容器3906を単に外側容器3902に対して配向することにより変更することができる。たとえば、例示実施形態では、外側容器3902のポート3920aと3920bとの間の第1の流体流路は、内側容器3906が外側容器3902に対し第1の向きにあるとき(図39A)に確立される。内側容器3906を、外側容器3902に対し、たとえば従軸の周りを180°回転させることにより(図39Cに示す向き)、外側容器3902のポート3920aと3920cとの間に第2の流体流路を確立させる。なお、外側チャンバ3904を形成する前記内壁または内周は、外側容器3902に対する内側容器3906の向きに応じて、内側容器3906のポート3922a、3922cのうちの一つを選択的に密閉する。他の実施形態では、さらなるポートを使用しうる。ポートは、互いに180°以外の角度になるように配向されうる。このため、たとえば、内側容器3906は、互いに90°、60°または45°の角度になるように配向されたポートを有しうる。これにより、選択的に選択できる流体流路をより多く提供しうる。外側および内側容器3902、3906は、それぞれ、互いに等しい数のポート3920、3922を備えていることが図示されているが、ある実施形態では、外側および内側容器3902、3906のポートの数は、互いに等しくなくてもよい。
【0218】
図40Aおよび図40Bは、図38Aおよび図38Bと同様の溶解装置4000を示す。特に、図40Aは、溶解装置4000の分解図であり、図40Bは、溶解装置4000の底面図である。
【0219】
溶解装置4000は、外側チャンバ4004を形成する外側容器4002、内側チャンバ4008を形成する内側容器4006、インペラ4010、およびインペラ4010を駆動するために連結される電動モータ4012を備えうる。外側チャンバ4004は、内側容器4006をその中に収容するように採寸される。たとえば、外側チャンバ4004は、内側容器4006の外周径または外径を密接に収容する内周径または内径を有しうる。上記の内周径または内径は、間を密閉して流体またはガスを通さないよう、前記外周径または外径を十分に密接に収容しうる。さらに、または代替として、一以上のガスケット、ワッシャまたはOリングを利用しうる。さらに、または代替として、カップラー構造(たとえば、ねじ山)を利用しうる。外側チャンバ4004は、内側容器4006収容するために両端4014a、4014bにおいて開きうる。内側チャンバ4008は、インペラ4010および任意で電動モータ4012を収容するため、一端4016aにおいて開きうる。内側チャンバ4008は、外側チャンバ4004の他端4014bを閉じるため、他端4016bにおいて閉じている。内側容器4006は、前記内側容器の他端4016bから延伸する一以上の突起または他の係合可能な構造4018を有する。これにより、内側容器4006を外側容器4002内で容易に回転させることができる。
【0220】
内側チャンバ4008は、インペラ4010および任意で電動モータ4012の一部またはその全てをその中に収容するよう採寸される。たとえば、内側チャンバ4008は、電動モータ4012の外周径または外径を密接に収容する内周径または内径を備えうる。これにより、間を密閉して流体またはガスを通さないよう、十分に密接に収容されうる。さらに、または代替として、一以上のガスケット、ワッシャまたはOリングを利用しうる。さらに、または代替として、カップラー構造(たとえば、ねじ山)を利用しうる。
【0221】
図40Aに最もよく示されるように、外側容器4002は、外側チャンバ4004と外側容器4002の外部との間に流体を連通させるまたは流体流路を提供するための多くのポート4020a〜4020c(4020と総称する)を有する。例示実施形態には、三つのポート4020a〜4020cを示すが、より少ないまたはより多くのポートを利用しうる。同様に、内側容器4006は、内側チャンバ4008および内側容器4006の外部との間に流体を連通させるまたは流体流路を提供するための多くのポート4022a〜4022c(4022と総称する)を有する。例示実施形態には、三つのポート4022a〜4022cを示すが、より少ないまたはより多くのポートを利用しうる。ポート4020、4022は、内側容器4006上の選択されたポートが外側容器4002の選択されたポート上に第1の向きまたは構成(図40A)で並ぶように配置される一方、内側容器4006上の選択されたポートが外側容器4002上の選択されたポートに第1の向きまたは構成とは異なる第2の向きまたは構成で並ぶように配置されるように、配置される。前記流体流路は、内側容器4006を単に外側容器4002に対して配向することにより変更することができる。たとえば、例示実施形態では、外側容器4002のポート4020a、4020bの間の第1の流体流路は、内側容器4006が外側容器4002に対し第1の向きにあるとき(図40A)、確立される。内側容器4006を、外側容器4002に対し、たとえば、従軸の周りを180°回転させることにより、外側容器4002のポート4020aと4020cとの間に第2の流体流路を確立させる。なお、外側チャンバ4004を形成する内壁または内周は、外側容器4002に対する内側容器4006の向きに応じて、内側容器4006のポート4022a、4022cのうち一つを選択的に密閉する。他の実施形態では、さらなるポートを使用しうる。ポートは、互いに180°以外の角度になるように配向されうる。このため、たとえば、内側容器4006は、互いに90°、60°または45°の角度になるように配向されたポートを有しうる。これにより、選択的に選択できる流体流路をより多く提供しうる。外側および内側容器4002、4006は、それぞれ、互いに同数のポート4020、4022を備えていることが図示されているが、ある実施形態では、外側および内側容器4002、4006のポートの数は互いに等しくなくてもよい。
【0222】
図38A、38B、図39A〜39C、図40A、40Bの実施形態が、すべて手動で操作しうる(たとえば、手動で回転させ、所望の流路またはポートを選択する)一方、ある実施形態では、たとえば、電動モータ、ソレノイドあるいは他の電気的または電気機械的なアクチュエータにより駆動することにより、自動的に操作しうる。
【0223】
前記溶解およびDNA抽出システムは、他の構成要素および機能と一体化できる。これは、廃液槽、洗浄槽および機能、サンプルすなわち試料の導入用のチャンバ、溶出用バッファチャンバおよび機能、増幅・検出用のチャンバおよび機能をさらに一体化させることができるポンプおよび弁に、特にいえる。これらの全ての構造および機能は、溶解または検体抽出のいずれかまたは両方のためのビーズ叩き機能を備える使い捨て容器またはカートリッジに一体化させることができる。これらの構造および機能を使い捨てユニットに一体化させることは、ポイント・オブ・ケアおよびポイント・オブ・ユーズ診断の用途において、実用的な面での利点を有する。これらの構造機能を使い捨てユニットに一体化させることは、ポイント・オブ・ケアおよびポイント・オブ・ユーズ診断の用途において、実用的な面での利点を有する。
【0224】
上記に記載のさまざまな実施形態は、組み合わせることにより、他の実施形態とすることができる。米国特許仮出願番号61/020,072(2008年1月9日出願、国際特許出願番号PCT/US2009/030622(2009年1月9日出願、WO2009/089466として公開)、米国特許仮出願番号61/117,012(2008年11月21日出願)、米国特許仮出願番号61/220,984(2009年6月26日出願)、米国特許非仮出願番号12/732,070(2010年3月25日出願)、および米国特許仮出願番号61/317,604(2010年3月25日出願)は、すべて本願明細書に援用される。実施形態の態様は、さらに他の実施形態を提供するためのさまざまな特許、出願および公開の概念を採用するために、必要に応じて改変することができる。
【0225】
上記のおよび他の変更は、上記の詳細な記載を考慮して、上記実施形態に対して行うことができる。一般的に、下記の請求項では、使用される用語は、本請求項を本明細書および本請求項に開示された特定の実施形態に限定するよう解釈されるべきではないが、そのような請求項に与えられる均等物の全ての範囲とともにすべての可能性のある実施形態を備えうると解釈されるべきである。それにより、本請求項は本開示により限定されない。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2009年6月26日出願の米国特許仮出願61/220,984および2010年3月25日出願の米国特許仮出願61/317,604に基づく優先権を主張する。
【0002】
本開示は、粒状材料を用いた、生体試料からのDNA等の核酸等の生体材料の抽出、捕捉および溶出に関する。本発明はまた、溶解処理(lysing)に関し、特に、溶解用粒状材料を用いて溶解対象材料の生体材料の溶解を行うシステム、装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生体試料の溶解、たとえば細胞の溶解は、組成解析に与される生体材料を得るために行われる。かかる生体材料の具体例には、タンパク質、脂質、および核酸の単体または複合体が挙げられる。細胞膜を溶解すると、核、ミトコンドリア、リソソーム、葉緑体および/または小胞体等の所定の細胞小器官が単離されうる。それらは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、電子顕微鏡法、ウェスタンブロッティング法またはその他の分析技術を用いて分析されうる。
【0004】
溶解処理には多数の方法がある。たとえば、細胞破壊に先だって適当な酵素を用いて細胞壁を除去する(すなわち、原形質体を調製する)酵素溶解法が使用されうる。別の方法として、界面活性剤を用いて細胞膜を化学的に破壊する方法がある。これらの化学的な溶解法は、放出される生成物の品質を損なう等、最終生成物に悪影響を及ぼしうる。そのため、化学的な溶解法は実用的でない場合がある。
【0005】
また、超音波を用いて細胞を破壊するためのキャビテーションおよび衝撃を発生させる方法がある。かかる方法では、多くの用途において必要とされるまたは所望される程度の溶解効率が得られないことがある。
【0006】
さらに、ビーズ(たとえば、ガラスまたはセラミック製)をボルテクス・ミキサー等で攪拌する方法がある。かかる溶解方法では化学的な溶解法による問題は解決されているものの、さらなる改良が望まれている。
【0007】
様々な分析または検査手順に使用される、細胞またはウイルスの内部から単離される特定の生体材料には、核酸がある。核酸は、たとえば、細菌性またはウイルス性感染症の検査のために単離・使用されうる。かかる目的のために核酸を分析または検査することで、従来の抗体検査で得られる結果に比べ、感度が向上するとともに、感染症の発生から陽性検査の結果の発現までの期間が短縮されうる。核酸の分析または検査は、通常、目的とする核酸(たとえば、デオキシリボ核酸(DNA))の生体試料からの抽出および単離と、それに次ぐ、PCR等の増幅反応とを含む。単離した核酸を増幅することで、得られた核酸の検出および同定の感度を向上することができる。
【0008】
特にDNA等の核酸を細胞から急速に抽出および単離するために通常用いられる技術では、シリカ製あるいはDNAの多陰イオン性に基づいて非特異的にDNAを捕捉する他の材料からなる膜または磁気ビーズを使用する。このような技術の多くは、細胞を溶解してDNAを単離する際に、カオトロピック塩(たとえば、塩酸グアニジニウム)またはプロテアーゼ等の強い試薬を利用する。上記のようなDNA単離方法において用いられる強い試薬は、その後の増幅反応とは相容れない。そのため、上記のような試薬は、単離したDNAを溶出させる前およびその後に使用または分析する前に、洗浄工程を多数回行って完全に除去する必要がある。特に強い試薬の利用といった上記のような操作を省略することにより、プロセスの効率および単離生成物の利用性を有利に向上させることができるため、前記を目的とする細胞DNAの処理を簡素化・最適化することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
効率的に生体材料を得ることができる粒子系システムおよび方法が求められている。上記のような改良されたシステムおよび方法は、サンプル(すなわち、生体材料を得るためのサンプル)の処理時間を削減し、かつ/またはそのスループットを向上しうる。また、そのような方法を用いることで、生体材料の収量を増やすことができるため、所定のサンプルサイズからより多くの生体材料を得ることができる。また、表面上に生体材料を捕捉した粒子を別個に処理することなく、生体材料を溶解、捕捉および溶出するシステムおよび方法が求められている。特に、単に化学組成と試薬のフローを制御することにより、同一システム内で生体材料を溶解、捕捉および溶出することができるシステムおよび方法が求められている。また、強い試薬を用いることなく細胞を溶解するシステムおよび方法が求められている。上記の方法では、粒子系システムにより捕捉した生体材料を処理する際に、洗浄工程が不要になりうる。また、サンプルの加熱をシステムに組み込んで行うことができるシステムおよび方法が求められている。また、細胞成分を特異的に捕捉するシステムおよび方法が求められている。さらに、小型でそのため運搬可能であり、かつ比較的安価で、それでいて移動や厳しい動作環境に十分耐えうる頑強さを有する溶解装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
生体材料の獲得方法は、生体材料を含む試料をチャンバに導入するステップと、溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を前記チャンバ内で攪拌して前記試料を機械的に溶解するステップとを含み、前記溶解用粒状材料は、前記流体の存在下で前記生体材料に対する親和性を有し、前記親和性は、前記生体材料の少なくとも一部を前記溶解用粒状材料の少なくとも一部に結合させるのに十分である、方法であると要約されうる。
【0011】
前記溶解用粒状材料は、複数のビーズを含み、前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内で前記複数のビーズとともに前記試料を攪拌するステップを含みうる。
【0012】
前記溶解用粒状材料は、複数のセラミックビーズ、複数のガラスビーズ、複数のジルコニウムビーズ、複数のシリカビーズ、複数の砂、または、生体材料に親和性を有するようにまたは生体材料に結合するように修飾可能なラテックス等の材料で金属芯をコートしてなる複数のビーズのうちの少なくとも一つを含みうる。
【0013】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内で前記複数のセラミックビーズ、前記複数のガラスビーズ、前記複数のジルコニウムビーズ、前記複数のシリカビーズ、または前記複数の砂のうちの少なくとも一つとともに前記試料を攪拌するステップを含みうる。
【0014】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内で直径または最小の横寸法が約10〜約600ミクロンの範囲である溶解用粒状材料とともに前記試料攪拌するステップを含みうる。
【0015】
前記流体は高塩濃度であり、前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内で前記高塩濃度の前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含みうる。
【0016】
高塩濃度の前記流体は、少なくとも約500ミリモル濃度の塩濃度の流体を含みうる。
【0017】
前記流体は低pHであり、前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内で前記低pHの前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含みうる。
【0018】
低pHの流体は、pHが約4以上である流体を含みうる。
【0019】
前記チャンバ内の溶解用粒状材料と流体を含む前記媒体は、化学溶解剤を含まなくてもよい。
【0020】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバを搭載したアームを振動させるステップを含みうる。
【0021】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解するステップは、前記チャンバ内に少なくとも部分的に配置された多数のブレードを有するインペラを駆動するステップを含みうる。
【0022】
前記方法は、前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させるステップを更に含みうる。
【0023】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させるステップは、前記溶解用粒状材料が含まれる系の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させるステップの少なくとも一つを含みうる。
【0024】
前記溶解用粒状材料が含まれる系の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させるステップは、前記チャンバ内で前記流体の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させるステップを含みうる。
【0025】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させるステップは、洗浄せずに前記材料を溶出させるステップを含みうる。
【0026】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させるステップは、DNA材料、タンパク質またはポリペプチド材料あるいは他の細胞成分材料のうちの少なくとも一つを溶出させるステップを含みうる。
【0027】
前記方法は、前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させた後に前記生体材料を加熱するステップを更に含みうる。
【0028】
前記方法は、前記チャンバを介して、第1の時間および第1の速度で第1の方向に流し、第2の時間および第2の速度で前記第1の方向とは反対の第2の方向に流すステップを更に含みうる。
【0029】
前記方法は、第1の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第1の溶解用粒状材料、および、第2の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第2の溶解用粒状材料である、二つの異なる化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された二つの溶解用粒状材料を含みうる溶解用粒状材料を有する媒体を含みうる。
【0030】
前記第1の化学特性を有する生体材料はDNAであり、前記第2の化学特性を有する生体材料は、タンパク質またはポリペプチドでありうる。
【0031】
タンパク質またはポリペプチドを結合する方法は、捕捉中に、溶液相標識(solution phase tagged)されたリガンドを用いて前記タンパク質またはポリペプチドを標識して、その後の前記タンパク質またはポリペプチドの検出を容易にするステップを更に含みうる。
【0032】
前記方法は、固相から、第1の化学特性を有する生体材料と第2の化学特性を有する生体材料とを別個に溶出させるステップを更に含みうる。
【0033】
上記の別個に溶出される生体材料は、DNAおよびタンパク質またはポリペプチドでありうる。
【0034】
前記DNAは低pHで溶出されうり、前記タンパク質またはポリペプチドは尿素で別個に溶出されうる。
【0035】
前期方法は、前記溶解用粒状材料に未結合の生体材料をさらなる処理のために分離移動させるステップを更に含みうる。
【0036】
前記非結合生体材料は、別個のチャンバまたは容器に移動されうる。
【0037】
前記方法は、前記生体材料に特異的な受容体の光切断可能な接合部を介して生体材料が結合された溶解用粒状材料によって前記生体材料を捕捉するステップと、光切断可能な接合部を切断するのに適した波長の光に暴露することで前記生体材料の複合体および前記受容体を溶出させるステップとを含みうる。
【0038】
前記生体材料に結合される前記受容体は、たとえば、DNAに特異的に結合するのに適した配列特異的捕捉プローブまたはタンパク質またはポリペプチドに特異的に結合するのに適した抗体でありうる。
【0039】
試料を溶解しかつ前記溶解した試料から特定の生体材料を単離するシステムは、単離対象である生体材料を含む試料を収容するチャンバと;溶解用粒状材料および流体を含む媒体であって、前記溶解用粒状材料は、前記流体の存在下で前記生体材料に対する親和性を有し、前記親和性は、前記生体材料の少なくとも一部を前記溶解用粒状材料の少なくとも一部に結合させるのに十分である媒体と;前記チャンバ内で前記流体および溶解用粒状材料を含む前記媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を機械的に溶解すると共に、前記生体材料の少なくとも一部を前記粒状溶解材料の少なくとも一部に結合させるように選択的に動作可能な攪拌器と;を有するシステムと要約されうる。
【0040】
前記溶解用粒状材料は、複数のビーズを含みうる。
【0041】
前記溶解用粒状材料は、複数のセラミックビーズ、複数のガラスビーズ、複数のジルコニウムビーズ、複数のシリカビーズ、複数の砂のうちの少なくとも一つを含みうる。
【0042】
前記溶解用粒状材料は、直径または最小の横寸法が約10〜約600ミクロンの範囲でありうる。
【0043】
前記流体は、高塩濃度でありうる。
【0044】
前記塩濃度は、少なくとも約200ミリモル濃度でありうる。
【0045】
前記流体は、低pHでありうる。
【0046】
前記pHは、約4以上でありうる。
【0047】
前記チャンバ内の前記媒体は化学溶解剤を含まなくてもよい。
【0048】
前記攪拌器は、少なくとも一つのモータおよび前記チャンバを保持するアームを備え、前記アームは振動駆動可能に前記モータに連結されうる。
【0049】
前記攪拌器は、少なくとも一つのモータと、少なくとも部分的に前記チャンバ内に配置可能なインペラとを備え、前記インペラは振動駆動可能に前記モータに連結されうる。
【0050】
前記システムにより単離される前記生体材料は、DNA材料、タンパク質またはポリペプチド材料、または他の細胞成分材料のうちの少なくとも一つを有しうる。
【0051】
前記システムは、前記チャンバの容量を超える量の前記試料を前記チャンバ内に流すように動作可能なポンプを更に有しうる。
【0052】
前記システムは、前記チャンバを介して、第1の時間および第1の速度で第1の方向に流し、第2の時間および第2の速度で前記第1の方向とは反対の第2の方向に流すように動作可能なポンプを更に有しうる。
【0053】
前記システムは、前記生体材料を加熱するように選択的に動作可能である、ポンプと熱接触するヒータを更に有しうる。
【0054】
前記システムは、第1の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第1の溶解用粒状材料、および、第2の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第2の溶解用粒状材料である、二つの異なる化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された溶解用粒状材料を含みうる。
【0055】
第1の化学特性を有する生体材料はDNAであり、第2の化学特性を有する生体材料は、タンパク質またはポリペプチドでありうる。
【0056】
前記システムは、前記溶解用粒状材料に未結合の生体材料を別個に収容するチャンバを更に有しうる。
【0057】
図面において、同一の構成要素または動作には同一の符号を付す。図面において、構成要素の寸法および相対位置は必ずしも正確な縮尺で写していない。たとえば、さまざまな構成要素の形状および角度は正確な縮尺で写しておらず、いくつかの構成要素は、見易さを考慮して恣意的に拡大して配置している。さらに、写された構成要素の特定の形状は、前記特定の構成要素の実際の形状に関しなんらの情報をももたらす意図はなく、図面の認識しやすさのみを考慮して選択している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】一例示実施形態に係る材料溶解装置の正面図
【図1B】図1Aの装置の正面、右側、上面等角図
【図1C】図1Aの装置の正面、左側、下面等角図
【図2A】正面カバーをはずした状態の、一例示実施形態に係る図1Aの装置の正面図
【図2B】図2Aの装置の正面、右側、上面等角図
【図2C】図2Aの装置上面、右側、下面等角図
【図3】図1A〜図2Cの装置のモータおよび駆動機構の正面、右側等角図
【図4】材料溶解装置、溶解対象材料を供給する上流サブシステム、溶解された材料を分析する下流サブシステム、および制御サブシステムを備えた、一例示実施形態に係るフロースルー処理システムの概略図
【図5】特にフロースルー溶解において有用である、一例示実施形態に係る溶解対象材料、溶解用粒状材料、および溶解された材料を収容するチャンバを有する容器の断面図
【図6】図1A〜図4の溶解装置の操作方法のフローチャート
【図7】一実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図8】他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図9】さらに他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図10】さらに他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図11】一例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解された材料を排出する方法のフローチャート
【図12】他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解された材料を排出する方法のフローチャート
【図13】さらに他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法
【図14】さらに他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図15】一例示実施形態に係る、図4に示すような溶解された材料を分析するフロースルー式溶解システムの操作方法
【図16】他の例示実施形態に係る溶解装置の分解等角図
【図17】溶解装置、溶解対象材料を供給する上流サブシステム、溶解された材料を分析する下流サブシステム、および制御サブシステムを備えた、他の例示実施形態に係る溶解システムの概略図
【図18】一例示実施形態に係る溶解装置およびピペットの正面図
【図19】一例示実施形態に係る、図16および図17に示すような溶解装置の操作方法のフローチャート
【図20】他の例示実施形態に係る、図16および図17に示すような溶解装置操作時においてチャンバから溶解された材料を排出する方法のフローチャート
【図21】一例示実施形態に係る、図16および図17に示すような溶解装置操作時にチャンバにおいて溶解対象材料を収容する方法のフローチャート
【図22】一例示実施形態に係る、図16および図17に示すような溶解装置操作時においてチャンバ内に溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図23】他の例示実施形態に係る、図16および図17に示すような溶解装置操作時においてチャンバ内に溶解対象材料をくみ上げる方法のフローチャート
【図24】一例示実施形態に係る、図16、図17、図18に示すような溶解システムのインペラの操作方法のフローチャート
【図25】一例示実施形態に係る、図16、図17または図18に示すような溶解システムのインペラの操作方法のフローチャート
【図26】一例示実施形態に係る、図16、図17または図18に示すような溶解システムのマイクロモータの交換方法のフローチャート
【図27】一例示実施形態に係る、図18に示すような溶解装置の操作方法のフローチャート
【図28】一例示実施形態に係る、図18に示すような溶解装置の操作方法のフローチャート
【図29】一例示実施形態に係る、図18に示すような溶解装置のチャンバから溶解された材料を取り出す方法のフローチャート
【図30】他の例示実施形態に係る、図18に示すような溶解装置のマイクロモータを再利用する方法のフローチャート
【図31】図4と同様の装置を用いた、溶解時間に対する溶解効率の依存関係を示すデータの図
【図32】振動数に対する溶解効率の依存関係を示す図
【図33】図16の装置の実施形態に係る、溶解時間に対するスポアの溶解の依存関係を示す図
【図34A】サンプルおよび溶出モジュール、溶解モジュール、シリンジポンプならびにヒータを備えた、一例示実施形態に係る溶解、捕捉および溶出をするための双方向フローシステムの概略図
【図34B】図34Aの実施形態に係る、システムの操作中におけるサンプルおよび溶出モジュール内の弁の位置を示す概略図
【図35A】Luer−Lockカップラーおよび当該カップラーを用いて溶解装置に連結可能な二つのシリンジを備えた、一例示実施形態に係る溶解装置の平面図
【図35B】図51Aの溶解装置の等角図
【図36】互いに一列に連結された一例示実施形態に係る複数の溶解装置の平面図
【図37A】一例示実施形態に係る溶解装置のマニホールドすなわちアレイの等角図
【図37B】溶解された材料をプレートの各ウェルに分注するよう配置された一例示実施形態に係る溶解装置の、フレームに備え付けられたマニホールドすなわちアレイの等角図
【図38A】選択した二つのポートを介して第一流路を設けるように内部を回転させまたは構成した、一例示実施形態に係る止水栓型溶解装置の側面図
【図38B】選択した二つのポートを介して第二流路を設けるように内部を回転させまたは構成した、図38Aの止水栓型溶解装置の側面図
【図39A】開口した底部を有し、外側容器に対し第一の向きに配向された内側容器を示す、一例示実施形態に係る止水栓型溶解装置の分解等角図
【図39B】外側容器内に収容した内側容器ならびに内側容器内に配置したモータおよびインペラを含む駆動装置を示す図39Aの止水栓型溶解装置の等角図
【図39C】図39Aで示した方向と異なる第二の向きに配向された内側容器を示す、図39Aの内側容器の等角図
【図40A】閉じた底部を有する内側容器を示す、他の例示実施形態に係る止水栓型溶解装置の分解側面図
【図40B】図40Aの止水栓型溶解装置の底面図
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下の記載において、開示するさまざまな実施形態を完全に理解できるように、ある具体的な詳細内容を規定している。ただし、当業者は、一以上のこれらの具体的な詳細内容を用いずに、または他の方法、成分、材料等を用いて、実施形態を実施しうることを理解する。他の例では、マイクロモータ、コントローラ(たとえば、モータコントローラ)、および制御システム(たとえば、プログラム式汎用コンピュータシステム)に関連する公知の構造については、本実施形態を不要に不明瞭に記載することを避けるため、詳細には図示も記載もしない。他の例では、核酸、タンパク質、ポリペプチド、および他の生体材料の操作において使用される一般的な公知の方法については、前記材料の当業者であるならばそれらの方法を容易に利用可能であるため、記載しない。上記の一般的な方法の例として、たとえば、PCR法およびDNAの熱変性法がある。
【0060】
文脈によって特に規定しない限り、明細書および添付の特許請求の範囲を通じて、「comprise」およびそのバリエーション、たとえば、「comprises」や「comprising」は、オープンかつ非排他的、すなわち「〜を含むが、それらに限定されない」として解釈される。
【0061】
本明細書を通じて「one embodiment(一実施形態)」または「an embodiment(ある実施形態)」が言及するものは、その実施形態に関連して記載される特定の構成、構造または特徴が少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。そのため、本明細書を通じてさまざまな箇所において「in one embodiment(一実施形態において)」または「in an embodiment(ある実施形態において)」の言い回しが使用されていても、必ずしも同一の実施形態に言及しているわけではない。さらに、上記の特定の構成、構造または特徴は、一つまたは二つ以上の実施形態において、任意の適した方法を用いて組み合わせうる。
【0062】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形を示す「a」、「an」および「the」は、その内容において特に明白に規定しない限り、複数の指示対象を含む。なお、さらに、「or」という単語は、その内容において特に明白に規定しない限り、「and/or」を含む意味で用いられる。
【0063】
本明細書に用いられる項目名および要約書は、単に便宜的に用いており、実施形態の範囲または意味を解釈するものではない。
【0064】
本明細書において、溶解装置、システムおよび使用方法の多くの実施形態を記載する。前記溶解装置およびシステムは、溶解用粒状材料を用いて溶解対象材料を溶解し、溶解材料、すなわち溶解された材料を生成する。前記溶解対象材料は、通常、液体培地にサスペンドさせた細胞、胞子、組織、酵母、菌類、植物、細菌等の生体材料でありうる。前記溶解用粒状材料は、さまざまな形態をとりうる。本明細書において、「ビーズ」という用語を多用しているが、これは、ビーズのサイズまたは形状を限定するものではない。前記ビーズは、たとえば、セラミックビーズ、ガラスビーズ、ジルコニウムビーズ、ジルコニウム/シリカビーズ、金属ビーズ、プラスチックビーズ、砂、および/または上記のような材料からなるビーズ以外の粒子でありうる。前記溶解された材料も、同様に、たとえば核酸、ポリペプチド、タンパク質、細胞小器官(たとえば、核、ミトコンドリア、リソソーム、葉緑体、小胞体)でありうる。
【0065】
材料の単離および/または溶解装置ならびにシステムに関するさまざまな実施形態は、たとえば、1)バッチモード、2)フロースルーストップすなわちセミバッチモード、または3)連続フロースルーモードで動作させる。バッチモードでは、溶解対象材料のサンプルを保持するチャンバを有する容器をホルダに配置し、振動させる。前記容器は、十分振動させた後に取り外し、溶解された材料を回収する。フロースルーストップすなわちセミバッチモードでは、溶解対象材料のサンプルが流入し、チャンバを充填する。次に、前記容器を、溶解が十分に行われるまで振動させる。前記チャンバから、溶解された材料を排出する。フロースルーモードでは、溶解対象材料のサンプルが振動中に前記容器のチャンバ内を所望の流量で流れることにより、所望のまたは所定の時間、溶解対象材料のサンプルをチャンバ内で滞留させる。フロースルーストップすなわちセミバッチモードでは、サンプルは非混和性の液体またはガスと接触され、液体またはガス等の流体の吹きつけによりチャンバから排出されうる。
【0066】
少なくともいくつかの実施形態では、生体サンプルを機械的に破裂させる力が振動数の二乗と一致するという知見と、比較的小さなサンプルサイズを採用することにより、本明細書に記載のさまざまな実施形態において市販の装置よりも比較的高い振動数を得ることができるため、溶解を急速にかつ効率的に行うことができるという知見とを利用している。
【0067】
特にDNA等の核酸などの生体材料の抽出、捕捉および溶出を行うシステムならびに方法について、多くの実施形態を記載する。細胞またはウイルス等の生体試料は、粒状材料(たとえば、シリカ製および/またはジルコニウム製のビーズ)を入れた溶解チャンバにおいて、機械的な破壊により溶解しうる。前記溶解チャンバは、前記粒状材料で充填されうる。溶解チャンバ内の粒状材料を小型モータに接続したインペラで急速に駆動することにより、生体試料を溶解しうる。前記モータは使い捨てでありうる。あるいは、溶解チャンバを振動させて前記粒状材料を駆動することにより、生体試料を溶解しうる。さらに、溶解チャンバの内容物の処理には、超音波処理が含まれる。上記のような異なる種類の機械的な破壊方法により、カオトロピック剤のような強い化学薬品を使用せずに溶解を行うことが可能になる。生体材料を調製するための標準手順と比較すると、本明細書で開示する手順では、強い化学薬品を除去するために通常行われる洗浄工程を省略することにより、作業時間を短縮することができる。溶解チャンバ内の化学条件は、溶解中に、生体試料の溶解と、溶解により放出された生体材料(たとえば、DNAまたはタンパク質あるいはその両方)の粒状材料の結合、すなわち回収とを同時に行うように制御しうる。前記装置またはシステムは、溶解チャンバ内の化学条件および/またはフロー条件を変更するよう操作し、粒状材料から目的とする生体材料を溶出しうる。そのため、本明細書に開示された前記システムおよび方法を用いることで、生体試料から生体材料を容易かつ効率的に溶解、捕捉および溶出することができる。上記の驚くほど優れた方法は、溶解システム内における流体の流れ方向および化学組成の適時かつ容易な管理を含む。DNA等の前記生体材料は、その後、検査または分析されたり、あるいは他の目的に使用されうる。溶解中に強い試薬を用いないことにより、工程時間を短縮しうるだけではなく、その後の工程での使用により適する材料を生成することができる。そのため、本明細書で開示された前記システムおよび方法を用いることで、特に溶解、捕捉および溶出に適する化学組成を有する流体を連続的に使用することにより、一チャンバ内において、急速にかつ効率的に細胞等の試料を溶解し、DNA等の生体材料を捕捉することができる。以下、具体的な実施形態について詳細に記載する。
【0068】
図1A〜1Cおよび図2A〜2Cは、容器12に含まれる溶解対象材料の溶解を行うように動作可能な、一例示実施形態に係る装置10を示す。ある実施形態において、溶解対象材料の試料および前記溶解用粒状材料または別の材料を入れる容器12として、市販のバイアルおよびPCR用チューブまたはエッペンドルフチューブ等のチューブを用いてもよい。図1A〜1Cおよび図2A〜2Cはバッチモードを示すが、溶解装置10は、図4で示すようにフロースルーストップすなわちセミバッチモード、または連続モードで使用されうる。
【0069】
容器12は、取り外し可能に、ホルダ16を介してアーム14と連結しうる。ホルダ16はさまざまな形態をとりうる。たとえば、ホルダ16はU型クランプ等の部材の形態でありうる。ホルダ16は、容器を固定させた状態で容器内においてホルダ16を固定するように動作可能な留め具(たとえば、ねじ、ボルト)16aを備えうる。あるいは、ホルダ16は、弾性を有し、構成を固定する前記容器に付勢されうる。
【0070】
アーム14は、容器12が弧状軌道20に沿って振動するように軸18の周りを旋回するように連結されうる。弧状軌道20に沿った振動により、強力な粒の流れ場と液体溶液またはスラリー中のビーズ間に大きなずり速度をもたらす角加速度を有する、周期的な狭い流れ場ができる。出願人による実験では、形状を小型化することで、高い振動数(たとえば、約100Hz超)において、より優れた溶解が得られることが実証された。液体中の非中性密度(non-neutral density)のビーズへの相対的な力は、ωを角速度、rを回転中心からのビーズの距離として、ω2rに従って大きくなるため、角速度の僅かな増加によって、実質的にサイズを低減して同様の性能を得ることを可能にする。直線振動運動を用いた場合、高い振動数においても、生体サンプルがほとんど溶解されない一方、円弧運動の場合、市販のビーズを利用した溶解装置よりも優れた溶解が得られる。高速撮影では、直線運動によってビーズの周期的な集結が起こり、その後、ビーズが膨張し互いから離れるが、直線運動の軸に沿わないビーズの相対運動は比較的ほとんど起こらないことが、明確に示されている。一方、容器が円弧状に振動するときは、強い渦巻が引き起こされたときのようにビーズが高密度に圧縮されることが観察され、そのため、非常に効果的に溶解が行われる。懸濁させたビーズの相対運動による衝突および剪断は、高効率の溶解に寄与する。
【0071】
アーム14は、固定アーム、すなわち、溶解対象材料と溶解用粒状材料が入った容器に予想される負荷と少なくともほぼ等しい質量の負荷をかけて振動させたときにほとんど曲がらないアーム、でありうる。あるいは、アーム14は、フレキシブルアーム、すなわち、溶解対象材料および任意で溶解用粒状材料が入った容器に予想される負荷と少なくともほぼ等しい質量の負荷をかけて振動させたときにかなり曲がるアームでありうる。
【0072】
カバープレート24をはずした図2A〜2Cおよび図3に最もよく示されるように、アーム14はモータ22および駆動機構26(4バーリンケージの形態でありうる)で駆動されうる。特に、モータ22のシャフト28は第1部材(たとえば、バー)を駆動するが、ここでは、偏心カム30である。偏心カム30は、第二部材または連結アーム34の孔32に収容される。連結アーム34は、ロッカーアーム36の軸18によりホルダ16に駆動連結される。駆動機構26は、弧状軌道20に沿って比較的高い振動数による振動運動を実現するための低コストで信頼性の高い機構である。上記の振動数は、他の種類の装置やインスタンス回転装置または超音波装置については高くないと考えられうるが、上記の振動数は高振動型の装置と考えられる。
【0073】
図4は、一例示実施形態に係るフロースルー式溶解システム400を示している。本明細書に詳細に記載するように、フロースルー式溶解システム400は、フロースルーストップすなわちセミバッチモード、または連続フロースルーモードで作動しうる。
【0074】
フロースルーシステム400は、上記の実施形態と同様でありうる溶解装置410および容器412を備える。たとえば、溶解装置410は、アーム414、および軸418の周りを旋回して振動する容器としての容器412を保持するホルダ416を備えうる。
【0075】
フロースルー式溶解システム400は、溶解対象材料を送出する上流サブシステム438を備えうる。たとえば、上流サブシステム438は、溶解対象材料を容器412にくみ上げるまたは送出するように動作可能なポンプ440を備えうる。上流サブシステム438はまた、溶解対象材料を収容するリザーバ442を備えうる。
【0076】
上流サブシステム438は、さらに、または代替として、溶解対象材料を回収する機構、たとえばサンプリング装置439を備えうる。サンプリング装置439は、手動操作または自動操作でありうる。サンプリング装置439は、周囲環境(たとえば、空気または雰囲気、水または流体、土または他の固体)をサンプリングしうる。サンプリング装置439は、真空室すなわちサンプルを抽出するための陰圧を作る機構を備えうる。サンプリング装置439は、たとえば、サンプルを回収するためのシャベルまたはブラシを有するアーム等のアクチュエータを備えうる。前記サンプリング装置は、たとえば、サンプルを採取するための針およびシリンジ等のアクチュエータを備えうる。
【0077】
溶解対象材料は、一以上の導管(たとえば、容器412の入口446aに通じる管444a)を介して送出しうる。管444aは、その一端または両端を補強してもよく、たとえば、管448aに対し同心円上に配置された複数の層で補強しうる。管444aは、容器412およびアーム414が振動できる程度に十分に長く、かつ、前記管における共振を防ぐ程度に短い、長さL1を有しうる。長さL1は、そこに運ばれる任意の溶解対象材料の密度、質量および/または剛性とともに、管444aの密度、剛性、または取付方法に依存すると思われる。
【0078】
フロースルー式溶解システム400は、下流分析サブシステム449をさらに備えうる。下流分析サブシステム449は、一以上の下流分析装置450を備えうる。下流分析装置450は、任意の形態となりうる。たとえば、下流分析装置450は、核酸増幅装置、電子顕微鏡、ウェスタンブロッティング装置、質量分析器、ガスクロマトグラフ等を備えうる。
【0079】
下流分析サブシステム449は、下流分析装置450に通信可能に連結された一以上のコンピュータシステム452をさらに備えうる。コンピュータシステム452は、一以上のネットワーク453(たとえば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等の広域ネットワーク(WAN)、および/または無線広域ネットワーク(WWAN))に連結しうる。コンピュータシステム452は、ネットワーク453を通じ、溶解された材料の分析結果に関する情報を提供しうる。たとえば、コンピュータシステム452は、前記分析結果に基づき、警告または他のメッセージを適切なシステムに自動的に提供しうる。上記の例としては、たとえば、有毒なまたは危険な物質または条件が検出されたときに警告を送信するなどがありうる。
【0080】
下流分析装置450は、一以上の導管(たとえば、管444b)を介して容器412の出口446bに流体が連通するように連結しうる。管444bは、その一端または両端を、たとえば、同心円状に配置された一以上のある長さの管448bにより補強されうる。管444bは、容器412およびアーム414が自由に振動できる程度に十分に長く、かつ、管444bにおける共振を防ぐ程度に短い、長さL2を有しうる。長さL2は、そこに運ばれる任意の溶解対象材料の密度、質量および/または剛性とともに、管444bの密度、剛性、または取付方法に依存しうる。
【0081】
フロースルー式溶解システム400はさらに、一以上の制御システム454を備えうる。制御システム454は、一以上のモータコントローラおよび/またはコンピュータシステムの形態でありうる。制御システム454は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードおよび/または連続フロースルーモードでフロースルーシステム400を動作させるように構成されうる。制御システム454は、たとえば、溶解装置410および/またはポンプ440を制御するために通信可能に連結しうる。
【0082】
フロースルーシステム400は、バッチベースの装置と比較して、多くの優れた点をもつ。たとえば、ある種類のビーズは、溶解により放出されたある生成物に対し親和性を有しうるため、細胞内容物の一部は、ビーズの表面で吸着され、「失われて」しまうことがある。フロースルー設計は、吸着された生体分子を有利に自動的に溶出しうる。上記の設計では、また、バッチモード構成で必要とされうる、チャンバを空にするための困難なまたは追加の作業を防ぐことができる。たとえば、上記のフロースルーを採用した実施形態では、溶解された材料の入ったチャンバを空にするために、空気等の流体でチャンバ内にブラストを起こさせる必要をなくしうる。
【0083】
図5は、一例示実施形態に係る容器512を示す。容器512は、前記容器の外部560から容器512のチャンバ562に流体を連通させる入口546aを有しうる。容器512は、外部560と容器512のチャンバ562との間の流体の連通を可能にする出口546bを備えうる。第1の管544aは、溶解対象材料564を入口546aを介してチャンバ562に供給する容器512に連結しうる。先に記載のとおり、管544aは、たとえば、同心円上に配置された配管548aの一以上の層で補強しうる。第2管544bは、出口546bを介して溶解された材料566を排出するために、出口546bを介して容器512に連結しうる。ある実施形態では、容器512は、管544a、544bを取り付けあるいは連結または固定するための取付構造を備えうる。たとえば、容器512は、入口546aにリブ付ニップル568aおよび/または出口546bまたはその付近にリブ付ニップル568bを備えうる。
【0084】
前記容器は、溶解用材料570を収容する。溶解用材料570は、さまざまな形態をとることができ、たとえば、複数のビーズでありうる。ビーズは、生体親和性材料または受容体(たとえば、配列特異的なプローブまたは抗体)でコートされた一以上のセラミックビーズ、ガラスビーズ、ジルコニウムビーズ、ジルコニウム/シリカビーズ、金属ビーズ、プラスチックビーズ、砂、および/または金属ビーズを含みうる。ビーズの直径は特に限定されず、たとえば、約10ミクロン〜600ミクロンでありうる。
【0085】
前記フロースルーの実施形態では、容器512は、入口546aの比較的近くに配される第1フィルタ572aと、出口546bの比較的近くに配される第2フィルタ572bとを備えうる。第1および第2フィルタ572a、572bは、溶解用粒状材料570が保持される粒子保持領域574を形成する。特に、フィルタ572a、572bは、溶解対象材料564と溶解された材料566をそれぞれ通し、かつ溶解用粒状材料570を通さないように採寸された複数の開口部を有しうる。容器512は、一以上の構造、たとえば、第1および第2フィルタ572a、572bを所定の位置に保持するタブまたはリング状の畝576a、576bを備えうる。フィルタは、たとえば、ナイロンまたはステンレス鋼メッシュフィルタの形態をとりうる。
【0086】
図1A〜図5に示す実施形態は、有利に非常に高い充填密度を実現しうる。上記の実施形態において、粒状材料の量は、有利にも、溶解対象材料の量または溶解された材料の量を超えうる。さらにまたは代替として、上記の実施形態では、有利にも、チャンバ内に実質的に空気を含まないことがある。ここで、「実質的に空気を含まない」とは、チャンバが、意図せずに閉じ込められうる小さな泡以外の空気を含まないことを意味する。これにより、溶解効率が向上し、また、液体と空気との接触線運動による摩擦によって前記システムが望ましくなく加熱することを防ぐことができる。
【0087】
図6は、一例示実施形態に係る、図1A〜図4に示すような材料溶解装置を操作する方法600を示す。
【0088】
602において、溶解対象材料を容器のチャンバに収容する。チャンバは、溶解用粒状材料を事前に保持しうる。604において、容器を弧状軌道に沿って振動させる。この振動により、個々の溶解用粒状材料の間での運動に大きな多様性をもたらす。このような多様性は、並進運動または回転運動におけるよりも顕著である。606において、溶解された材料を容器のチャンバから排出する。
【0089】
図7は、一例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法700を示す。
【0090】
702において、溶解対象材料を容器のチャンバ内にくみ上げる。
【0091】
図8は、一例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法800を示す。
【0092】
802において、容器が振動する間、溶解対象材料は、前記容器のチャンバ内に間欠的にくみ上げられる。上記の操作は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードに適しうる。
【0093】
図9は、他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法900を示す。
【0094】
902において、溶解対象材料がチャンバ内で十分な時間滞留し、所望の溶解レベルが得られるように、溶解対象材料をチャンバ内に間欠的にくみ上げる。このように、30秒の振動によって所望の溶解レベルが得られると判断された場合、ポンプは、約30秒ごとに溶解対象材料をチャンバにくみ上げするように間欠的に操作されうる。数秒または数十秒の振動時間が適しうる。上記の操作は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードに適しうる。
【0095】
図10は、他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解対象材料をくみ上げる方法1000を示す。
【0096】
1002において、溶解対象材料は、前記間欠的なくみ上げの各サイクルにおいてチャンバから溶解された材料が完全に排出されるように、チャンバ内に間欠的にくみ上げられる。上記の操作は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードに適しうる。
【0097】
図11は、他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー式溶解システムにおいて溶解された材料を排出する方法1100を示す。
【0098】
1102において、前記間欠的なくみ上げの各サイクルにおいて、より多くの溶解対象材料を前記チャンバ内にくみ上げることにより、前記チャンバから溶解された材料を排出する。上記の操作は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードに適しうる。
【0099】
図12は、他の例示実施形態に係る、図4に示すような溶解装置の操作方法1200を示す。
【0100】
1202において、前記間欠的なくみ上げの各サイクルにおいて、不活性の流体をチャンバ内にくみ上げることにより、前記チャンバから溶解された材料を排出する。不活性の流体は、液体またはガスの形態をとりうり、また、溶解された材料または溶解対象材料に対して非混和でありうる。上記の操作は、フロースルーストップすなわちセミバッチモードに適しうる。
【0101】
図13は、一例示実施形態に係る連続溶解装置を操作する方法1300を示す。
【0102】
1302において、容器が振動する間、溶解対象材料を前記容器のチャンバ内に連続的にくみ上げる。上記の操作は、フロースルー連続モードに適しうる。
【0103】
図14は、他の例示実施形態に係るフロースルー溶解装置の操作方法1400を示す。
【0104】
1402において、溶解対象材料がチャンバ内で十分な時間(すなわち、所望のまたは所定の時間)滞留して所望の溶解レベルが得られるように、少なくとも一部には前記チャンバの長さおよび自由体積に基づき、溶解対象材料のくみ上げ流量を調節する。上記の操作は、フロースルー連続モードに適しうる。
【0105】
図15は、他の例示実施形態に係る、図4に示すようなフロースルー溶解装置の操作方法1500を示す。
【0106】
1502において、容器のチャンバから排出した溶解された材料を、少なくとも一の分析装置に送る。1504において、前記溶解された材料を分析する。分析は、さまざまな形態をとりうり、たとえば、電子顕微鏡観察、ウェスタンブロッティング、質量分析、ガスクロマトグラフィーによる分析でありうる。上記は、すべてのモード、特にフロースルーモードに適しうる。
【0107】
図16は、他の例示実施形態に係るフロースルー溶解装置1600を示す。本明細書に詳細に記載するように、フロースルー式溶解システム1600は、フロースルーストップすなわちセミバッチモード、または連続フロースルーモードで動作する。
【0108】
フロースルー溶解装置1600は、チャンバ1604を有する容器1602、およびインペラ1608を回転させるために連結されるマイクロモータ1606を備える。
【0109】
図に示すように、チャンバ1604は、容器1602の外部1610からチャンバ1604に流体を供給する入口として機能する、第1の開口部1604aを備えうる。また、図に示すとおり、チャンバ1604は、チャンバ1604から外部1610に流れる流体を排出する出口として機能する第2の開口部1604bを備えうる。容器1602は、マイクロモータ1606の外部を封止して係合するために、インペラ1608を収容するよう採寸された第3の開口部1604cをさらに備えうる。ある実施形態では、マイクロモータ1606と第3の開口部1604cとの間を封止するあるいはその封止を強化する軸受筒またはOリングを備えうる。
【0110】
第1のカップラー1610aは、流体をチャンバ1604に連通させるために、密閉しながら開口部1604aに収容されるように採寸されたステム1612aを備えうる。ステム1612aは、相補的なねじ山を有する穴1604aにねじ込まれうる。第1のカップラー1610aは、取付構造、たとえば、管1616aを固定し、溶解対象材料の流れをチャンバ1604に供給するリブ付ニップル1614aを備えうる。Oリング1618aまたは他の同様の構造は、第1のカップラー1610aのフランジと容器1602との間の封止を強化しうる。
【0111】
第2のカップラー1610bは、チャンバ1604に流体を連通させるために、密閉しながら開口部1604bに収容されるように採寸されたステム1612bを備えうる。ステム1612bは、相補的なねじ山を有する穴1604bにねじ込まれうる。第2のカップラー1610bは、取付構造、たとえば、管1616bを固定し、溶解対象材料の流れをチャンバ1604に供給するリブ付ニップル1614bを備えうる。Oリング1618bまたは他の同様の構造は、第2のカップラー1610bのフランジと容器1602との間の封止を強化しうる。
【0112】
フィルタ1619a、1619bは、その間に溶解用粒状材料を挟んで保持するようにチャンバ内に配置されうる。フィルタ1619a、1619bは、たとえば、適した取付部品に配された50ミクロンの開口部を有するナイロンメッシュフィルタの形態をとりうる。
【0113】
マイクロモータ1606は、たとえば、4mm直径のマイクロモータの形態をとり、液体およびビーズがない状態でインペラを高速(たとえば、約50000RPM)で駆動可能でありうる。インペラ1608は、多くの羽根を有するナイロンまたはアクリル製インペラでありうる。上記羽根は、材料が主として円周方向に動くように、その付属品に湾曲や角度がなく、直線でありうる。たとえば、フロースルーモード(たとえば、図16および図17)において、チャンバ内で材料が軸方向または水平方向に動くことが望ましい場合、そのような軸方向または流れの動きは、くみ上げによって引き起こされるのであって、前記インペラの回転により引き起こされるのではない。これにより、材料がチャンバ内に滞留しそこで溶解にさらされる時間をより正確に制御することができる。前記羽根は、たとえば、図1A〜図4の実施形態より5倍近く高い振動数で、しかし、より小さい振幅の運動でもって、周期的な流れを生み出しうる。
【0114】
溶解装置1600はまた、マイクロモータ1606を制御するために連結されるコントローラ1620を備えうる。コントローラ1620は、たとえば、モータコントローラおよび/またはプログラム式汎用コンピュータシステム、専用コンピュータ、ASIC(application specific integrated circuit)および/またはFPGA(field programmable gate array)を備えうる。コントローラ1620は、たとえば、モータを脈動させるようプログラムまたは構成されうる。上記の脈動は、溶解の効果を向上させうる。
【0115】
図17は、一例示実施形態に係るフロースルー式溶解システム1700を示す。本明細書に詳細に記載するように、フロースルー式溶解システム1700は、フロースルーストップすなわちセミバッチモード、または連続フロースルーモードで作動する。
【0116】
フロースルー式溶解システム1700は、チャンバ(図17に図示せず)を有する容器1702、開口部1704a、1704c(二つのみ図示する)、およびインペラ(図17に図示せず)に連結されたマイクロモータ1706を備える。開口部すなわち入口1704は、リザーバ1722から第1の導管すなわち管1716aを介して溶解対象材料を送出するポンプ1720に流体が連通するように連結されうる。第2の開口部すなわち出口は、溶解された材料を、一以上の導管(たとえば、管1716b)を介して一以上の下流分析装置1724に送出しうる。先に記載したように、下流分析は、さまざまな形態をとりうり、たとえば、核酸の増幅、電気泳動、ウェスタンブロッティング、質量分析、ガスクロマトグラフィーでありうる。下流分析装置1724は、一以上のコンピュータシステム1726に通信可能に連結されうる。フロースルー式溶解システム1700はまた、マイクロモータ1706および/またはポンプ1720を制御しうる一以上の制御システム1728を備えうる。制御システム1728は、たとえば、フロースルーストップすなわちセミバッチモードを実行するために、くみ上げおよび振動を同調させうる。制御システム1728は、たとえば、フロースルー連続モードを実行するために、たとえば、前記くみ上げを制御して、所望のまたは所定の時間、材料をチャンバ内に滞留させることにより、所望のまたは所定の溶解レベルを得てもよい。
【0117】
図16および図17に示す実施形態は、有利に非常に高い充填密度を実現しうる。上記の実施形態において、粒状材料の量は、溶解対象材料の量または溶解された材料の量を有利に超えうる。さらにまたは代替として、上記の実施形態では、有利にも、チャンバ内に実質的に空気を含まないことがある。ここで、「実質的に空気を含まない」とは、チャンバが、意図せずに閉じ込められうる小さな泡以外の空気を含まないことを意味する。これにより、溶解効率が向上し、また、液体と空気との接触線運動による摩擦によって前記システムが望ましくなく加熱することを防ぐことができる。
【0118】
図18は、他の例示実施形態に係る溶解システム1800を示す。溶解システム1800は、特に、バッチモード溶解操作に適している。
【0119】
溶解システム1800は、容器1802の外部に流体を連通させる一の開口部1804aを有するチャンバ1804を備える容器1802を備えている。装置1800は、チャンバ1804内に収容されるインペラ1808を駆動するために連結されるマイクロモータ1806を備える。マイクロモータ1806の一部分は、開口部1804aと容器1802との間を封止して係合するように採寸される。ある実施形態では、前記封止を確実にするための一以上の軸受筒またはOリング(図示せず)を備えうる。
【0120】
まず、チャンバ1804内に、溶解対象材料1810および溶解用粒状材料1812を充填する。インペラ1808を回転させた後、チャンバ1804は、溶解された材料および溶解用粒状材料1812を十分な時間、収容する。マイクロモータ1806とインペラ1808は、その後、取り外してもよく、また、溶解された材料は、たとえば、ピペット1814を用いて取り出されうる。バッチモードの実施形態に係るチャンバ1804については、前記溶解された材料を取り出す装置のためのスペースが限られうるため、フロースルーモードの実施形態のように密に充填しなくてもよい。
【0121】
ある実施形態では、市販のバイアルおよびチューブ(たとえば、PCR用チューブまたはエッペンドルフチューブ)を、溶解対象材料の試料および溶解用粒状材料を保持する容器1802として使用しうる。
【0122】
図18に示す実施形態は、有利に非常に高い充填密度を実現しうる。上記の実施形態において、粒状材料の量は、溶解対象材料の量または溶解された材料の量を有利に超えうる。本実施形態では、前記取り出し装置(たとえば、ピペット)を収容するためのスペースが必要であるため、チャンバ内に実質的に空気を含まないことを確実にする可能性が小さくてもよい。しかし、可能な場合は、前記チャンバにおける空気を排除することで、溶解効率が向上し、また、液体と空気との接触線運動による摩擦によって前記システムが望ましくなく加熱することを防ぐことができる。
【0123】
図19は、一例示実施形態に係る、フロースルー溶解装置および/またはシステムの操作方法1900を示す。上記のような実施形態は、フロースルーストップすなわちセミバッチモード、またはフロースルー連続モードにおいて有用でありうる。
【0124】
1902において、溶解対象材料を入口から容器のチャンバ内に収容する。前記チャンバは、溶解用粒状材料を事前に保持しうる。1904において、マイクロモータは、インペラを駆動し、溶解用粒状材料を用いて溶解対象材料を溶解する。1906において、出口を介して容器のチャンバから溶解した物質を排出する。
【0125】
図20は、一例示実施形態に係る、チャンバから溶解された材料を排出する方法2000を示す。
【0126】
2002において、溶解した物質は、装置またはシステムを介して材料の流路において、前記出口の前に配された第1フィルタを介して排出しうる。
【0127】
図21は、他の例示実施形態に係る、チャンバ内で溶解対象材料を収容する方法2100を示す。
【0128】
2102において、溶解対象材料は、装置またはシステムを介して流路において、チャンバの入口の後に配された第2フィルタを介して、前記チャンバ内に収容される。
【0129】
図22は、他の例示実施形態に係る、溶解対象材料をチャンバ内にくみ上げる方法2200を示す。
【0130】
2202において、溶解対象材料を、入口を介してチャンバ内に間欠的にくみ上げる。上記の操作は、特にフロースルーストップすなわちセミバッチモード操作に適しうる。
【0131】
図23は、一例示実施形態に係る、溶解対象材料をチャンバ内にくみ上げる方法2300を示す。
【0132】
2302において、溶解対象材料は、前記溶解対象材料がチャンバ内で十分な時間(すなわち、所望のまたは所定の時間)滞留して所望の溶解レベルが得られる流量で、入口を介して容器のチャンバ内に連続的にくみ上げられる。マイクロモータは、前記溶解対象材料を溶解するためにインペラを連続的に駆動しうる。上記の操作は、特にフロースルー連続モード操作に適しうる。
【0133】
図24は、一例示実施形態に係る、溶解システムのインペラの操作方法2400を示す。
【0134】
2402において、マイクロモータは、脈動によってインペラを駆動する。脈動は、前記マイクロモータに印加する電圧または電流を変化させることにより得られうる。脈動により、高い溶解効率が得られ、それにより、スループットが増加し、また、所望のまたは所定の溶解レベルを得るのに必要な時間が削減されうる。
【0135】
図25は、一例示実施形態に係る、溶解システムのインペラの操作方法2500を示す。
【0136】
2502において、マイクロモータは、液体およびビーズの存在下で、10000を超えるRPMでインペラを駆動する。比較的高速でインペラを駆動させることにより、所望のまたは所定の溶解レベルを得ることができる。
【0137】
図26は、一例示実施形態に係る、溶解システムのマイクロモータの交換方法2600を示す。
【0138】
2602において、マイクロモータは、新しいマイクロモータに交換しうる。2604において、古いマイクロモータは、処分または再利用しうる。上記の構成は、高速マイクロモータの内部構成要素(たとえば、ロータやステータ)を周囲環境へ曝露しないように封止することが困難であり、そのためマイクロモータが他の実施形態または環境においてより頻繁に故障しうるため、特に有用でありうる。
【0139】
図27は、一例示実施形態に係る、バッチベースの溶解装置の操作方法2700を示す。方法2700は、特に図18の実施形態での使用に有用でありうる。
【0140】
2702において、溶解対象材料は、入口を介して第1の容器のチャンバに収容される。前記チャンバは、溶解用粒状材料を事前に保持するか、あるいは、溶解用粒状材料は、溶解対象材料とともにまたは溶解対象材料の投入後にチャンバに供給しうる。
【0141】
2704において、インペラを第1の容器のチャンバに配置する。2706において、第1の容器への入口を、マイクロモータでふさぐまたは封止する。2708において、マイクロモータは、インペラを駆動し、溶解対象材料および溶解用粒状材料を循環させる。マイクロモータは、所望のまたは所定の溶解レベルが得られるまで、十分な速度かつ十分な時間、インペラを駆動しうる。
【0142】
図28は、一例示実施形態に係る溶解装置の操作方法2800を示す。前記方法2800は、特に図18の実施形態において有用でありうる。
【0143】
2802において、第1の容器の入口からマイクロモータを取り外してもよい。2804において、溶解された材料を、前記入口を介して第1の容器のチャンバから排出する。
【0144】
図29は、一例示実施形態に係る、溶解された材料を取り出す方法2900を示す。
【0145】
2902において、前記溶解された材料はピペットを用いて取り出しうる。
【0146】
図30は、他の例示実施形態に係る溶解装置の操作方法3000を示す。
【0147】
3002において、マイクロモータは、一以上の他の容器に再利用されうる。なお、マイクロモータは、特に高速で動作させる場合には、溶解対象材料、溶解用粒状材料、または溶解された材料から特に十分に保護されないことがある。その結果、マイクロモータは磨耗しうる。多くの用途において、マイクロモータは、故障するまでに複数のサンプルの溶解に使用されうる。
【0148】
図31は、図4と同様の装置を用いた場合の溶解効率のデータを示す。
【0149】
第1の曲線3102は、図4に示すものと同様の実施形態を用いて測定された蛍光強度と振動時間との関係を示す。蛍光強度は、細胞から放出された核酸の量に比例している。第2の曲線3105は、市販のMINI−BEADBEATER−1(Biospec Products,Inc.Bartlesville、オクラホマ州)を用いて測定された蛍光強度と振動時間との関係を示す。第1の曲線3102および第2の曲線3105の比較からわかるように、図4に示す実施形態では、市販の装置よりも効率的に細胞内容物の放出が行われている。
【0150】
図32は、振動数に対する溶解効率の依存関係を示す。
【0151】
曲線3202は、一定時間印加電圧を変化させることにより制御されるように、振動数に対し溶解の度合いがほぼ二次関数的に依存していることを示していると考えられる。
【0152】
図33は、図16および図17と同様の実施形態に係る、溶解時間に対するスポアの溶解の依存関係を示す。
【0153】
曲線3302、3304は、飽和までの時間は、図4の実施形態と同等であるが、ピーク効率はわずか80%であることを示している。上記の効率に必要となる力はわずか400mWであり、これは、他の実施形態で使用される力よりも小さい。
【0154】
図34Aは、一例示実施形態に係る、生体材料を溶解、捕捉、および溶出する双方向フローシステム3400を示す。本明細書により詳細に記載するように、双方向フローシステム3400は、生体試料を溶解し、粒状材料上に生体材料を捕捉し、前記生体材料を前記粒状材料から溶出させるように動作しうる。図34Aにおけるシステム3400は、特に、生体試料を溶解すること、また、溶解チャンバ内の流体の方向および流量、化学組成および物理特性を制御して、溶解用粒状材料による生体材料の捕捉と、溶解用粒状材料からの前記生体材料の溶出を誘発することに適している。溶解、捕捉および溶出のためのシステム3400を効率的に利用するには、驚くべきことに、前記システム内の流体の流れ方向、pHおよび塩濃度を単に制御するだけでよい。ある条件下では、流体の温度を制御することもまた有利でありうる。
【0155】
本明細書に記載の装置またはシステムの設計に係るある実施形態は、以下にさらに記載するように、複数のモジュールを備えうる。各モジュールは、上記の装置またはシステムを利用する方法の特定の態様を実現するために有用でありうる。各モジュールは独立して機能しうるが、たとえば、システムにおいて互いに留めることであるいはLuer−Lockコネクタを用いて互いに連結してもよい。
【0156】
ある実施形態では、試料の溶解ならびにその後の目的とする生体材料の捕捉および溶出を一体化するモジュールのシステムの設計は、前記システムにより複数の機能を実行するものである。上記の設計を用いたシステムは、前記システムの異なる機能または操作段階においてシステム内の流体の流れ方向や流体の化学組成を制御することにより、生体材料を溶解、捕捉および溶出することに特に適している。サンプルを細胞、生体材料をDNAとして例示している図34Aに示すようなシステムの機能は、以下を含みうる:サンプルの導入、流体の運動、細胞破壊およびDNAの捕捉、DNAの溶出、任意での加熱および冷却、ならびに、任意の単離DNAの検査。各機能においては、少なくとも流れ方向および化学組成を制御する。
【0157】
図34Aにおいて、生体材料を溶解、捕捉および溶出する双方向フローシステム3400は、サンプルおよび溶出モジュール3434、溶解モジュール3410、シリンジ3413、および任意でヒータ3416を備える。サンプルおよび溶出モジュール3434は、サンプル槽3402および溶出用バッファ槽3420を備える。溶解モジュール3410は、溶解チャンバ3412とインペラ3431に連結されたマイクロモータ3430を備える。システム3400の動作中、溶解チャンバ3412は流体と溶解用粒状材料を含む。溶解用粒状材料は、前記チャンバに密に充填されうる。シリンジ3413は、バレル3414とプランジャ3415を備える。シリンジ3413は、たとえば、シリンジ3413をシリンジポンプ(図34Aに図示せず)内に配置することにより、手動で操作または自動で駆動しうる。シリンジポンプは、たとえば、New Era Pump Systems,Inc.(Wantagh、ニューヨーク州、米国)から入手できる。ヒータ3416は、シリンジ3413のバレル3414内に配され、流体を加熱しうる。
【0158】
サンプルおよび溶出モジュール3434のサンプル槽3402は、導管3404、弁3406、および導管3408を介して溶解モジュール3410の溶解チャンバ3412に流体が連通するように連結される。ある実施形態では、サンプル槽3402は、溶解によって生体試料から生体材料を放出させた後、溶解チャンバ3412内で粒状材料による生体材料の捕捉を誘発するのに適した化学組成を有する流体中に懸濁または溶解させた生体試料を含む。
【0159】
サンプルおよび溶出モジュール3434の溶出用バッファ槽3420は、導管3418、弁3406、および導管3408を介して溶解モジュール3410の溶解チャンバ3412に流体が連通するように連結される。ある実施形態では、溶出用バッファ槽3420は、溶解チャンバ3412内で表面上に生体材料を捕捉した粒状材料から生体材料を放出させることを誘発するのに適した化学組成を有する流体を含む。
【0160】
マイクロモータ3430は、コントローラ3432に電気的に連通するように連結される。コントローラは、マイクロモータの速度、持続時間および/または操作タイミングを制御しうり、また、それにより溶解チャンバ3412内でインペラ3431を制御しうる。
【0161】
溶解モジュール3410は、流体が連通するように、シリンジ3413のバレル3414に連結される。シリンジ3413のプランジャ3415は、シリンジ3413のバレル3414内に配置する。シリンジ3413のプランジャ3415は、手動でまたは制御によって摺動可能に操作することにより、バレル3414内の流体の量が増える方向にプランジャ3415を動かして流体をバレル3414内に吸引しうる。あるいは、シリンジ3413のプランジャ3415は、手動または制御によって摺動可能に操作することにより、バレル3414内の流体の量を減らす方向にプランジャ3415を動かしてバレル3414から流体を押し出しうる。シリンジ3413のバレル3414は、任意でヒータ3416と熱接触する。ヒータ3416は、たとえば、電気的に抵抗性の帯状材料、たとえば、ホイル製のバンドを備えうる。ヒータ3416は、スイッチ3426に電流を通し、電源3428からヒータ3416に電圧を供給することで、シリンジ3413のバレル3414に熱を供給しうる。シリンジ3413のバレル3414に供給される熱レベルは、たとえば、電位差計または他のコントローラ(図34Aに図示せず)を介して制御しうる。
【0162】
サンプルおよび溶出モジュール3434は、導管3408および弁3406を介して溶解チャンバ3412に流体が連通するように連結された排出管3422をさらに備える。排出管3422は、溶出した生体材料を他の目的(たとえば、検査または分析)に使用するために貯蔵容器3424に分配する導管として配される。シリンジ3413のプランジャ3415はたとえば、ポンプの操作を制御することにより、手動でまたはコントローラ(図34Aに図示せず)を介して操作され、流体を第1の流量にてシリンジ3413のバレル3414に吸引する、流体を第2の流量にてシリンジ3413のバレル3414から押し出す、および/または流れを一定の時間止める、などの操作が行われる。前記第1の流量および第2の流量は、同一でも異なってもよい。
【0163】
システム3400の操作の第1の段階において、シリンジ3413のプランジャ3415は、生体試料をサンプル槽3402から弁3406を介して溶解チャンバ3412に、または溶解チャンバ3412を介してシリンジ3413のバレル3414に吸引するよう操作されうる。上記の一実施形態では、インペラ3431は、サンプルが溶解チャンバ内で引き出される間に操作されうる。他の実施形態では、インペラ3431および/または流れを間欠的に停止しうる。さらに、流量またはインペラ3431の回転速度は変化しうる。一以上のこれらの変数を制御することで、生体試料の溶解および/または生体試料からの生体材料の回収を最適化しうる。
【0164】
サンプル槽3402内の生体試料を含む流体の化学組成は、チャンバ3412内で生体試料が溶解された時に前記生体試料からの生体材料の捕捉を誘発するまたは捕捉をさせるものを選択する。たとえば、特にDNA等の核酸を生体試料から単離するためのある実施形態では、溶解チャンバ3412内での粒状材料を用いての核酸の溶解および結合の準備として生体試料を懸濁または溶解させうるサンプル槽3402内の流体は、高塩濃度および/または低pHでありうる。
【0165】
高塩濃度の試料含有流体の実施形態では、溶解チャンバ3412内で特にDNA等の核酸の粒状材料への結合を誘発するのに適した、サンプル槽3402内の流体の塩濃度は、約200〜500μMの範囲で変わりうる。他の上記のような実施形態では、特にDNA等の核酸の結合を誘発するのに適した試料含有流体の塩濃度は、約1000μMまでの値をとりうる。さらに他の上記のような実施形態では、特にDNA等の核酸の結合を誘発するのに適した塩濃度は、約2000μM以上でありうる。
【0166】
低pHのサンプル含有流体の実施形態では、溶解チャンバ3412内で特にDNA等の核酸の粒状材料への結合を誘発するのに適した、サンプル槽3402内の上記の流体のpHは、約3.5〜5の間で変わりうる。他の上記のような実施形態では、特にDNA等の核酸の結合を誘発する試料含有流体のpHは、約3.75〜4.25の範囲で変わりうる。さらに他の上記のような実施形態では、特にDNA等の核酸の結合を誘発する試料含有流体のpHは、約4でありうる。
【0167】
ビーズは、たとえば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のエンテロキシンBタンパク質等の、病原菌マーカーに特異的な抗体でコートすることができる。同様に、ビーズは、p53タンパク質等の癌マーカーを結合する抗体でコートすることができる。
【0168】
また、たとえば、「サンドイッチ」法において、ビーズをより汎用の受容体(たとえば、ストレプトアビジン)でプレコートし、対応するビオチン等のリガンドを付与した試薬を捕捉できるようにすることができる。ビオチン化抗体は、市販されており、または、容易につくれる。この方法により、一種類のビーズ(ストレプトアビジンでコートしたビーズ等)は、対応するビオチン化抗体と結合することで、その後任意の特異的なタンパク質を捕捉するために使用される汎用品とさせることができる。ビオチン化抗体の結合は、サンプル処理の前に製造工程としてまたはサンプル処理の前にユーザによって、ビーズ上に捕捉することができ、あるいは、サンプル処理の一部として、ビーズ、抗体およびサンプルを同時に組み合わせることができる。
【0169】
別の例として、特異的なタンパク質を捕捉するための「汎用の」ビーズを得ることの代わりとしての「サンドイッチ」法は、ビーズを他の種の抗体に特異的な抗体(たとえば、マウスの抗ヤギIgG)でプレコートし、次に、目的とするタンパク質に特異的なヤギ抗体を使用する。
【0170】
システム3400の操作の第2の段階では、シリンジ3413のプランジャ3415は、サンプル槽3402での生体材料の捕捉または結合後に、流体を、シリンジ3413のバレル3414から溶解チャンバを通じ逆流させ、試料をサンプル槽3402に戻すよう操作されうる。ビーズ上でのDNAの非特異的な捕捉は、サンプルが溶解チャンバを出る経路とまた戻る経路の両方において起こりうる。配列特異的な捕捉をするために、シリンジ3413のバレル3414における流体は、さらに以下に記載するように、流れ方向を逆にする前に加熱および冷却しうる。捕捉工程の最後におけるサンプル槽内の流体は、廃液材料すなわちビーズにより捕捉されるものとは化学的性質が異なる検体を含む物質である。そのため、たとえば、DNAはビーズ上に捕捉されうり、また、変性剤にさらされていないタンパク質をサンプルチャンバに戻し、その後、特定のタンパク質を分析するこができる。大量の空気を、まず、第1の操作段階のはじめにシリンジ3413のバレル3414に吸引し、第1の操作段階の終わりに、廃棄流体全てを溶解チャンバおよび導管からサンプル/廃液槽に押し出すために、使用しうる。ある実施形態では、前記システムは、他の粒状材料が核酸の捕捉専用である一方、検体のタンパク質またはポリペプチドマーカーを捕捉するための抗体を付着させた粒状材料を備えうる。さらに、標識抗体を、たとえば、前記タンパク質またはポリペプチドを標識するために、溶解および捕捉中に導入しうる。捕捉後、標識抗体は、たとえば、尿素を用いて溶出されうる。ある実施形態では、たとえば、ビーズの一部がDNAの捕捉用に設計され、他の部分がタンパク質またはポリペプチドの捕捉用に設計されている場合、両方の捕捉が同時に起こりうる。上記の実施形態では、DNAを、低塩濃度で溶出し、タンパク質またはポリペプチドを尿素を用いて溶出しうる。
【0171】
タンパク質の捕捉用に設計されたビーズは、核酸の捕捉用に設計されたビーズとは別個につくられる。それぞれの製造工程を完了した後、二種類のビーズは、有用な割合で一つのカートリッジ内で混合され、それにより、タンパク質と核酸を処理できる状態になる。前記タンパク質の捕捉用に設計されたビーズには、タンパク質に特異的な抗体、またはタンパク質に特異的なアプタマー、またはストレプトアビジン等の汎用の受容体、または特異的な捕捉のために「設計された(engineered)」タンパク質を結合する結合剤が付与されうる。これには、ヒスチジンテールを用いてタンパク質を捕捉するために使用される、ニッケルをコートしたビーズの使用を含む。
【0172】
核酸の捕捉用に設計されるビーズは、実質的に全ての核酸を結合する一般的なものでよい(たとえば、シリカまたはジルコニウムビーズ)。あるいは、これらのビーズには、ハイブリダイゼーションにより特定の検体と結合する特異的な核酸(捕捉プローブ)を付与しうる。ビーズに「汎用の」捕捉プローブを付与し、その後、一方の領域が検体に相補的であり他方の領域が「汎用の」捕捉プローブに相補的である二つの領域を有するリンカープローブを付与するサンドイッチ法によっても、特異的な核酸の捕捉を促進することができる。
【0173】
特定のまたは一般的な核酸用のビーズの多くの組み合わせは、一のカートリッジ内で、特定のまたは一般的なタンパク質用のビーズと組み合せられる。
【0174】
システム3400の第3の操作段階では、溶出用バッファは、溶出用バッファ槽3420から弁3406を介し、溶解チャンバ3412を通って、シリンジ3413のバレル3414に吸引されうる。上記のように、流れは、連続的または間欠的であり、かつ、流量および/または量は、溶解用粒状材料からの生体材料の溶出を最適化するために変化しうる。さらに、シリンジ3413のバレル3414は、この段階で加熱してもよく、たとえば、溶出流体を加熱することにより、溶解チャンバ内で粒状材料から捕捉された生体材料を最適な状態で溶出しうる。
【0175】
特にDNA等の核酸の単離のためのシステムおよび方法に係るある実施形態では、溶解チャンバ内において粒状材料から核酸を溶出させるためのバッファは、上記のように、特にDNA等の核酸の粒状材料への結合を誘発するために、核酸を懸濁または溶解させた生体試料を含む流体よりも低い塩濃度および/または高いpHでありうる。
【0176】
より低塩濃度のサンプル溶出用バッファの実施形態では、溶出用バッファ槽3420に入れられかつそこから引きだされる溶出用バッファの塩濃度は、約200μM未満でありうる。他の上記のような実施形態では、溶出用バッファの塩濃度は、約100μM未満でありうる。さらに他の上記のような実施形態では、溶出用バッファの塩濃度は、約10μM未満でありうる。特に上記のような実施形態では、溶出用バッファは塩を含まなくてもよい。
【0177】
より高いpHのサンプル溶出用バッファに係るある実施形態では、溶出用バッファのpHは、約5を超えうる。他の上記のような実施形態では、溶出用バッファのpHは、約6を超えうる。さらに他の上記のような実施形態では、溶出用バッファのpHは、約7を超えうる。さらに上記のような実施形態では、溶出用バッファのpHは、約8を超えうる。
【0178】
第4の段階の操作では、溶出された材料は、シリンジ3413のバレル3414と溶解チャンバ3412から、導管3408、弁3406および排出管3422を介して貯蔵容器3424に押し出され、分析または検査などのさらなる操作のために使用されうる。空気が、シリンジ3413のバレル3414から再度排出され、生体材料を含む全ての流体を前記システムから貯蔵容器に押し出しうる。貯蔵容器において溶出液を回収する代わりに、排出管を検査装置に直接連結することにより、溶出した材料を溶出直後に検査装置において分析しうる。排出管は、必要に応じて、分配された流体の慎重な計測を可能にする直径が小さく採寸された流路を有する。排出口はまた、流体の流れを監視するための、また、シリンジ3413の操作を制御する制御システムに対しフィードバックを送るための流体感知システムを備えうる。
【0179】
前記溶解、捕捉および溶出システム内で流れを供給するためにシリンジ3413を使用することで、前記システムの使用毎にシリンジ3413を容易にかつ安価に交換することができるため、汚染を起こさない効率的な方法を実現している。本明細書に開示された前記システムおよび方法で使用するためにシリンジポンプを開示しているが、他の種類のポンプ、たとえば、蠕動ポンプまたは他の種類の計測ポンプも用いてもよい。シリンジポンプまたは蠕動ポンプを使用することには、蠕動ポンプのシリンジまたは配管が使い捨てであり、そのため使用毎に溶解チャンバとともに処分することができる、という格別な利点がある。これにより、サンプルが他のサンプルにクロスコンタミネーションする懸念なしにサンプルを効率的に処理するための簡易的な構成が可能になる。洗浄工程を省いたことは、本明細書に開示された前記システムおよび方法において際立って有利な点ではあるが、特定の実施形態で望まれる場合、サンプル槽または溶出用バッファ槽のいずれかを介して洗浄流体を供給する一以上の洗浄工程が含まれうる。
【0180】
本明細書に記載のシステムおよび方法により得られる生体材料の分析または検査には、たとえば、PCRによるDNAの増幅が含まれうる。上記のような手順では、ヒータ3416が有利に使用されうる。たとえば、システム3434を使用してPCR等による酵素増幅を含む検査のためにDNAを提供する際に、ヒータ3416は、貯蔵容器3424に分配する前に、熱を加えてDNAを変性させることにより、シリンジ3413のバレル3414内で一本鎖DNAを形成する。熱変性したDNAは、次に、シリンジ3413のバレル3414内に留まっている間に、鎖の再会合を防ぐために冷却されうる。上記のような熱変性したDNAは、PCR等による酵素増幅反応において特に有用でありうる。
【0181】
図34Bは、一例示実施形態に係る図34Aのシステム3400のある操作段階における弁3406の位置を示す。
【0182】
図34Bにおける弁の位置3406aは、二つの操作段階において利用されうる。一つの段階は、サンプル槽3402から、導管3404、弁3406と導管3408を介して、溶解チャンバ3412とシリンジ3413のバレル3414に生体試料を吸引することに対応する。弁の位置3406aを用いる他の操作段階は、溶解および回収後に残った試料を、シリンジ3413のバレル3414と溶解チャンバ3412から、導管3408、弁3406および導管3404を介して、サンプル槽3402に押し戻すことに対応する。
【0183】
図34Bにおける弁の位置3406bは、さらに他の操作段階に利用されうる。上記段階すなわち溶出段階は、溶出用バッファを、溶出槽3420から、導管3418、弁3406と導管3408を介して、溶解チャンバ3412とシリンジ3413のバレル3414に吸引することに対応する。
【0184】
図34Bにおける弁の位置3406cは、さらに他の操作段階で利用されうる。上記の段階すなわち分配段階では、溶出した生体材料を、シリンジ3413のバレル3414と溶解チャンバ3412から、導管3408、弁3406と排出管3422を介して、貯蔵容器3424に押し入れることに対応する。
【0185】
図34Aに示すような本明細書に開示された前記システムにおいて使用する細胞サンプルは、スワブを用いて、ヒトまたは動物等のソースから得られうる。スワブはまた、目的とするさまざまな細胞試料を保持しうる表面から検査用にサンプルを回収して使用しうる。スワブ上に回収した細胞材料は、次に、流体に懸濁しうる。適当なバッファ、塩および弱い界面活性剤は、前記流体中に入れて、細胞の溶解中に溶解チャンバ内でビーズにDNAを捕捉させてもよい。細胞を含む流体サンプルは、たとえば、図34Aに示されるシステムのサンプルおよび溶出モジュール内のサンプル槽内に置く。
【0186】
たとえば、核酸の結合は、十分に低いpH(3.0程度)、または十分に高い塩濃度(たとえば、200mM〜5MのNaCl)、塩化リチウム、硫酸アンモニウム、または酢酸アンモニウムのいずれかによってもたらされるカチオンによって促進することができる。カオトロピック塩は、6Mまで使用できる。
【0187】
高塩濃度により、DNAのシリカ表面への非特異的な結合と配列特異的なDNAの捕捉(ハイブリダイゼーション)の両方が促進される。
【0188】
バインディングバッファ中のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の界面活性剤は、非特異的な結合を減らすために使用しうる。界面活性剤がPCR等の核の増幅反応と相性が良い場合、DNAの溶出の前に界面活性剤を洗い流す必要性がない。これらの界面活性剤は、通常、非イオン性であり、Tween、Triton、Nonidetでありうる。DNAの結合を促進するために使用される塩が有機塩である場合、このような塩、たとえば、アニオンとして酢酸塩またはカチオンとしてグアニジウムは、非特異的な結合を減らす役割をも果たしうる。
【0189】
DNAの放出および溶出を促進する溶液は、イオン強度が低く(たとえば、水)、通常、10〜30mMのトリス等のバッファ濃度によりバッファされる。バインディングバッファが低pHである場合(たとえば、pH3〜5)、溶出用バッファ中のpHを上昇させることにより、pH8〜10の範囲になるようにバインディングバッファを中和することを促進することができる。これにより、放出が促進されるとともに、その後の核酸増幅反応との相性が向上する。
【0190】
特にDNA等の核酸は、本明細書に記載するように、溶解用粒状材料に非特異的に結合しうる。あるいは、本明細書に記載の材料および方法のある態様は、配列特異的な核酸の捕捉に適用しうる。配列特異的な捕捉方法が有利になりうるのは、非特異的な捕捉が、目的の生体材料及び他の生体材料の捕捉につながるときである。たとえば、本明細書に開示したシステムおよび方法を用いた場合、土壌または便サンプルは、核酸に加え、非特異的に捕捉されうる陰イオン性多糖類を含みうる。さらに、便サンプルは、非特異的に結合し、かつその後DNA等の核酸と同時に精製されうるさまざまなPCR阻害剤を含みうる。DNAおよび他の同様の材料に非特異的に結合する粒状材料を用いる代わりに、配列特異的な捕捉プローブを溶解用粒状材料上に付与することができる。これらのプローブは、目的とする核酸に含まれるある配列に対する結合特異性に基づき選択することができる。上記のように、配列特異的な捕捉を行うことで、非核酸材料の結合が防止されるだけでなく、スワブ上に集まったホスト細胞からのホスト核酸の結合が防止されると思われる。配列特異的な捕捉方法は、このように、感度を向上させうる。前記粒状材料すなわちビーズは、配列特異的な捕捉の際に使用されるさまざまな方法により、官能基化されうる。
【0191】
たとえば、ビーズに、HIVのポリメラーゼ遺伝子を結合する捕捉プローブを付与されうる。ターゲットに特異的な配列の、検体に対する親和性と特異性を十分に促進させる長さは、たとえば、10〜60ヌクレオチド長の範囲でありうるが、これに限定されない。前記捕捉プローブは、さらに縮重させて設計することにより、検体の全てまたは大部分の種類を捕捉することができる。
【0192】
配列特異的な捕捉を用いる場合、上記のように、溶解、捕捉および溶出方法のある種の態様は、変化しうる。たとえば、上記プローブによる特異的な結合のためにDNAの配列を露出するためには、二本鎖ゲノムDNAを変性させて一本鎖DNAを生成する必要がある。これは、熱変性により行うことができる。このように、試料が溶解チャンバを介してシリンジに入るとき、シリンジは次に、溶解チャンバ内ではまだビーズに結合していないDNAを変性するために加熱される。加熱することで、DNAは一本鎖DNAに変性するが、その後、再アニールするのを防ぐため、DNAは冷却される。このように、熱変性された一本鎖DNAの配列は、加熱/冷却した試料が溶解チャンバを通って戻る流路において、プローブを有するビーズに特異的に結合されるようにさらされる。
【0193】
ある実施形態では、生体試料を溶解し、生体材料を捕捉および溶出するシステムは、溶解用粒状材料を含む溶解チャンバを有する溶解モジュール(たとえば、ビーズ、マイクロモータで駆動するインペラおよび二つのシリンジ(それぞれ、流体が連通するよう溶解モジュールの溶解チャンバに連結されたバレルを有する第1のシリンジおよび第2のシリンジ))でありうる。いずれか一つまたは両方のシリンジのバレルは、両シリンジと熱接触するヒータをさらに有しうる。上記のようなシステムは、上記に記載のシステムと同様に動作しうる。たとえば、生体試料は、第1のシリンジのバレルから溶解チャンバに、および溶解チャンバを介して、第2のシリンジのバレルに押し出されうる。廃棄サンプルは、次に、第2のシリンジのバレルから溶解チャンバを介して逆流して第1のシリンジのバレルに押し出されうるが、第1のシリンジを取り外している場合には、廃棄貯蔵容器に直接押し出されうる。溶出用バッファを含むバレルを有する第3のシリンジは、次に、第1のシリンジと置き換えられうる。溶出用バッファは、第3のシリンジのバレルから、溶解チャンバを介して、第2のシリンジのバレルに送出されうる。第3のシリンジは、次に、取り外すか、またはバレルを有する第4のシリンジに置き換えられうる。溶出用バッファは、次に、第2のシリンジのバレルから逆流して溶解チャンバに、および溶解チャンバから貯蔵容器または第4のシリンジのバレルに押し出されうる。第2のシリンジのバレルは、上記のように、溶解および捕捉段階および/または溶出段階において加熱されうる。各シリンジは、たとえば、シリンジポンプ、モータおよびリンク機構、ソレノイド、または他のアクチュエータを使用して、単に手動でまたは自動的に操作されうる。
【0194】
本明細書に記載のシステムを使用中に、溶解チャンバを通り抜けて特にDNA等の生体材料が細胞破壊され捕捉されたサンプルの量は、溶解チャンバの容積の何倍にもなりうる。ある実施形態では、サンプルの量は、100〜2000μLの範囲でありうる。本明細書に開示されたシステムおよび方法のある特定の実施形態では、溶解モジュールは、OmniLyserTM(OLTM)溶解装置でありうる。前記OLTM溶解装置を用いた特定の実施形態では、上記の量のサンプルの処理時間は、約15〜120秒の範囲でありうる。
【0195】
図34Aおよび図34Bに示され、本明細書に詳細に記載されたシステムおよび方法の実施形態は、溶解チャンバ3412内でインペラ装置を用いて溶解した生体試料から生体材料を単離することを例示しているが、これに限定されない。しかし、当業者であれば、図34Aおよび図34Bで例示したシステムおよびその使用を、他の手段により溶解した生体試料から放出された生体材料の単離に容易に利用できることを認識するであろう。たとえば、本明細書に詳細に記載するように、上記のような生体試料は、溶解チャンバを振動させることにより溶解しうる。さらに、ある処理方法が溶解チャンバ内で生体材料を粒状材料に結合するのに適当である化学組成を有する生体材料を生成するのであれば、また、前記粒状材料から捕捉し溶出した前記生体材料がさらなる使用または分析に適するのであれば、試料の溶解は超音波を用いて行うことができ、または、いくつかの他の種類の物理処理または化学処理を含むこともできる。
【0196】
図35Aおよび図35Bは、他の例示実施形態に係る溶解装置3500を示す。
【0197】
溶解装置3500は、チャンバ3504を形成する本体3502を備える。本体3502は、インペラ3508がチャンバ3504に配されるように、その中に前記インペラを収容するよう採寸された開口部3506を備えうる。開口部3506は、駆動モータ(たとえば、マイクロ電動モータ3510)の一部またはその全てを、任意で通しうる。電動モータ3510は、インペラ3508を駆動するために連結される。電動モータ3510は、モータに供給された電力に応じて選択的に動作可能である。電動モータ3510は、加圧型の取付部品または締まりばねを介して、開口部3506内で固定されうる。特に、開口部3506を形成する内壁および/またはチャンバ3504は、電動モータが開口部3506を介してチャンバ3504内に進むにつれてわずかに漸減し、電動モータ3510の側壁に密閉するように係合しうる。あるいは、または追加で、電動モータ3510の側壁は、電動モータ3510が開口部3506を介してチャンバ3504内に進むにつれてわずかに漸減し、開口部3506の側壁および/またはチャンバ3504を密閉するように係合しうる。あるいは、電動モータ3510と開口部3506および/またはチャンバ3504は、カップラー構造を備えうる。たとえば、電動モータ3510と開口部3506および/またはチャンバ3504は、電動モータ3510が開口部3506を介してチャンバ3504内に進むにつれて噛み合わせて封止するねじ山(図示せず)を備えうる。あるいは、差込型(図示せず)または突起型(図示せず)のカップラー構造を採用しうる。他の封止構造もまた採用しうる。たとえば、ガスケット、ワッシャまたはOリングを固定するための固定リングまたは外周リングを用いてあるいはそれらを用いずに、一以上のガスケット、ワッシャまたはOリング(図示せず)を利用しうる。封止は、流体を通さない封止および/またはガスを通さない封止でありうる。
【0198】
前記溶解装置は、第1のポート3512aおよび第2のポート3512b(3512と総称する)を備える。第1のおよび第2のポート3512は、その外部からチャンバに流体を連通させるための流路3514a、3514b(3514と総称する)をそれぞれ備えうる。ポート3512は、材料をチャンバ3504に供給する供給ポートとしておよび/またはチャンバ3504から材料を排出する排出ポートとして使用されうる。
【0199】
それぞれのポート3512は、ポート3512a、3512bそれぞれに選択的に連結することができるカップラー3516a、3516b(3516と総称する)を備えうる。
【0200】
たとえば、それぞれのポート3512は、オスまたはメスの各Luer−Lock(R)取付部品またはLuer−Slip(R)取付部品を備えうる。Luer−Lock(R)またはLuer‐Taper(R)取付部品を用いることで、シリンジ3518a、3518b(図35A、3518と総称する)を溶解装置3500に結合することができる。たとえば、第1のシリンジ3518aは、第1のポート3512aに連結され、サンプルまたは試料を注入させる一方、第2のシリンジ3518bは、第2のポート3512bに結合され、溶解後にサンプルまたは試料(たとえば、溶解された材料)を排出させるようにしうる。これにより、サンプルまたは試料がチャンバ3504を介して往復して通過するため、たとえば、溶解またはDNAの捕捉の能力を高めうる。シリンジ3518は、ポート3512aと3512bのいずれかまたは両方のポート3512にて使用しうる。サンプルまたは試料送出システムとしてシリンジ3518を用いることにおいて有利な点は、シリンジ3518が安価で使い捨てであること、かつ、分配量が急速である場合にも、流体が高い信頼度で確実に入れ替わることである。Luer−Lock(R)の設計は、確実に封止し、また、相補的なLuer−Lock(R)取付部品を有する多くの装置に接続する汎用の付属品の例を示している。
【0201】
図36に示すように、選択的に固定できる取付部品(たとえば、Luer−Lock(R)取付部品)を用いることで、複数の溶解装置3500a、3500b(3500と総称する、三つのみ図示する)を連続で結合しうる。これにより、複数の段階を通じて、サンプルまたは試料を連続的に処理するために有利に使用しうる。さらにまたは代替として、異なる連続する溶解装置3500において、ビーズ等の溶解用粒子は、それぞれ異なる分子に対する感受性を有しうる。たとえば、連続する溶解装置のある装置における溶解用粒子には、同一サンプルまたは試料からそれぞれ異なる分子を捕捉するための受容体(たとえば、結合部位)を付与しうる。捕捉された異なる分子を有するそれぞれの溶解装置3500は、次に、互いの装置から容易に分離され、異なる種類の溶出または溶出ステップにより個別に処理されうる。
【0202】
図37Aおよび図37Bは、一例示実施形態に係る溶解マニホールドすなわちアレイ3700を示す。溶解マニホールドすなわちアレイ3700は、複数の位置3704a、3704h(3704と総称する、図37Aでは二つのみ表記する)を有するブロックまたはフレーム3702を備えることにより、一以上の独立した溶解装置3706a〜3706h(3706と総称する、六つ図示する)のそれぞれを保持する。独立した溶解装置3706は、たとえば、インペラと電動モータを収容するチャンバを採用する別個の溶解装置の形態をとりうり、たとえば、独立した溶解装置3706は、溶解装置3500(図35)と同一または類似でありうる。独立した溶解装置3706は、それぞれ、インペラを駆動するために連結される使い捨て電動モータを備えうる。独立した溶解装置3706は、それぞれ、第1のポート3708aと第2のポート3708b(3708と総称する、図37Aには二つのみ表記する)を備えうる。ポート3708は、チャンバ(図37Aまたは図37Bには表記せず)への供給口および/または排出口として機能しうる。
【0203】
図37Bに示すように、溶解マニホールドすなわちアレイ3700は、一以上のブロックまたはフレーム3702および連結された独立した溶解装置3706を支持する支持構造3710を備えうる。特に、支持構造3710は、溶解された材料を収容する構造体(たとえば、マイクロタイタープレート3712)に対して配置された、ブロックまたはフレーム3702および連結された個々の溶解装置3706を保持するレール3710a、3710bを備えうる。たとえば、支持構造3710は、連結された独立した溶解装置3706がマイクロタイタープレート3712の複数のウェル3712a(図37Bには、一つのみ表記する)それぞれの上に位置するように、ブロックまたはフレーム3702を保持しうる。図37Bは、一の一次元アレイ溶解装置3706を構成する一列のみの独立した溶解装置3706を備えた溶解マニホールドすなわちアレイ3700を示す。あるいは、支持構造3710は、それぞれが一列の独立した溶解装置3706を備える追加の溶解マニホールドすなわちアレイを備えうる。複数の溶解マニホールドすなわちアレイ3700が備える独立した溶解装置3706は、二次元アレイを構成することができる。さらなる代替として、一の溶解マニホールドすなわちアレイ3700は、二次元アレイに配された独立した溶解装置3706を備えうる。さらに別の代替として、モータと駆動機構を連結することにより、独立した溶解装置3706を備えた一の溶解マニホールドすなわちアレイ3700を、支持構造3710のレール3710a、3710bに沿って動かしうる。このように、溶解装置3706の一次元アレイは、位置の二次元アレイを実現するために動かされうる。この動きは、たとえば、一以上のコンピュータ処理機、モータ、アクチュエータおよび/または伝送を通じて、手動または自動で制御されうる。
【0204】
直前に記載したように、独立した溶解装置3706は、複数の装置をつなぎ合わせて溶解マニホールドすなわちアレイ3700(たとえば、一次元または二次元)を構成することにより、多重処理を行うことができる。これらの独立した溶解装置3706の中心間の距離は、たとえば、9mmまたは9mmの倍数にすることで、マイクロタイタープレート3712(たとえば、9mm間隔で96個以上のウェルを有するプレート)の標準フォーマットに合わせることができる。同様に、4.5mm未満の直径の電動モータを使用することで、溶解装置3700のマニホールドすなわちアレイを、4.5mmの間隔のマイクロタイタープレートのフォーマット(たとえば、384個のウェルを有するプレート)に合わせて使用することができる。独立した溶解装置3706を4、8、6または12の列または並びに構成することで、マイクロタイターのフォーマットでサンプルを自動化または準自動処理するために使用することを促進しうる。さらに、独立した溶解装置3706の吸入ポート3708aがサンプルまたは試料をピペットの先から受け入れるよう設計される場合、独立した溶解装置3706には、手動操作または機械操作のいずれかで、マルチチャネルピペッターを用いて分注しうる。ブロックまたはフレーム3702は、一つのブロックから独立した溶解装置3706用の複数の部位を有するように成形またはカット押出しされた一体構造として作製されうる。
【0205】
ある実施形態におけるフロースルーの性質により、追加のサンプルまたは試料を処理するためにシステムを再利用できるようにしうる。たとえば、前記フロースルーの性質により、前記システムの滅菌を行うあるいは他の殺菌または洗浄を行うための、一回以上の洗浄または洗浄ステップにおける性能が向上しうる。容器は、使用と使用の間に洗浄および/または滅菌することにより再利用しうる。これは、あるサンプルまたは試料の下流処理と調整することで、下流処理が行われる間に他のサンプルまたは試料のために前記容器が準備されるようにしうる。前記容器の洗浄および/または滅菌は、たとえば、高pHまたは低pHの溶液、漂白剤、界面活性剤、またはそれらを組み合わせて一回以上行ってもよい。pHの中和は容易であるため、pHを調整することにより、洗浄または洗浄ステップの回数を有利に削減しうる。別の方法として、ジエチルピロカーボネート(DEPC)を使用しうる。DEPC化合物は、タンパク質および核酸を破壊することができる。この処理の後には、洗浄が一回行われ、その後に熱い空気が吹き付けられうる。DEPCは揮発性が高いため、DEPCで処理した表面全体を熱した空気の中を通す動作中に、分解および蒸発により取り除かれうる。
【0206】
上記のさまざまな実施形態により、フロースルーであるかそうでないかに関わらず、さまざまな機構を介して、溶解が行われる同じチャンバ内および/または他のチャンバ内(たとえば、サンプルまたは試料の流れの後に配されるチャンバ)のいずれかで、検体の捕捉を行わせてもよい。本明細書に記載するように、前記フロースルーシステムまたは装置(たとえば、弧状振動運動に基づくまたは回転インペラに基づく)は、同一の粒状物質(すなわち、溶解用粒状物質)を用いて検体捕捉と組み合わせて溶解を行うことで、同一チャンバ内で検体分子を捕捉することができる。さらに、または代替として、溶解は、通常溶解の後に行われうる、他の機構を使用する検体捕捉または検体捕捉ステップと組み合わせることもできる。この方法によっても、強い試薬の使用を有利に省略し、かつ、洗浄後に起きうる任意の酵素反応に先立つ洗浄動作またはステップを行うことに関連する必要性をなくすことができる。たとえば、1μmの磁気粒子は、破壊(すなわち、溶解)の前後に、サンプルまたは試料に混合することができる。そのため、DNAの捕捉は、より大きな溶解用粒子すなわちビーズによる破壊が完了した後に、これらの磁気粒子上で起こりうる。この原理はまた、他の非化学的な細胞溶解法(たとえば、超音波処理と同時にまたはそれに続いて、別の表面で捕捉が発生しうるような超音波処理)に適応しうる。そのような方法によっても、洗浄または洗浄ステップを任意の酵素反応の前に行うことを避けることができる。
【0207】
フロースルー構成を採用し、溶解用粒子すなわちビーズを高いエネルギーで混合することは、結合キネティクスおよび溶出キネティクスにおいて、際立った利点を有しうる。サンプルまたは試料を、活発に振とう・攪拌されている溶解用粒子すなわちビーズの高濃度縣濁液を含む比較的小型のチャンバに通すことにより、検体DNAと溶解用粒子すなわちビーズとの間に「衝突」を高確率で誘発する。これは、サンプルまたは試料を親和性フィルタに通すことといくつかの点で類似しており、ミクロンサイズの磁気ビーズを用いる通常の方法に対してあきらかな利点を有しうる。上記のような磁気ビーズは、通常、サンプルまたは試料の体積全体にわたって分散させなければならない。
【0208】
固相と溶液相の界面は、当該液相において比較的静的で、能動的な混合に寄与しない境界層を有する。溶液相における分子は、この層を介して拡散し、固相の表面に到達する必要がある。拡散は、渦混合および対流と比較して緩慢な工程である。溶解用粒子すなわちビーズの運動エネルギーが上昇するにつれて、能動的な混合の度合いが上昇して、この境界層を減少させ、DNAがビーズの表面に到達する速度を増加させ、それにより、結合が加速する。あるいは、DNAを溶出させるとき、溶解用粒子すなわちビーズの高いエネルギー運動はまた、溶解用粒子すなわちビーズと境界層からDNAを運ぶ働きをするため、溶解用粒子すなわちビーズからのDNAの解離が加速する。これは、DNA結合システムが高容量DNA(たとえば、5〜60μg)を捕捉するための高い結合能力を有するという一般的な場合において特に有用でありうる一方、非常に低容量の検体DNAを捕捉する場合にも有用である。前記高い結合能力は、再結合のためのかなり広い表面面積およびDNAの一部を保持することができる境界層を数多く提供することにより、通常、低コピー数のときには溶出効率を下げる。弧状振動運動に基づく実施形態(図1A〜図5)または回転インペラに基づく実施形態(図16〜図18)による高いエネルギー運動によって生み出されるせん断力は、DNAを表面から解離させることおよび減少した境界層からDNAを運ぶことに寄与することができ、溶出または溶出ステップ中にDNAがチャンバから分配されるバルク流体に合流することを可能にする。
【0209】
本明細書に記載の少なくともいくつかの実施形態では、溶解用粒子すなわちビーズを用いた「サンドイッチ」型の検出方式が可能となりうる。この原理は、タンパク質および核酸とともに、他のリガンド/受容体の組み合わせに対しても適用することができる。核酸の場合、Chiron社で開発された分岐DNAアッセイ等のDNAの捕捉方式を、弧状振動運動に基づく装置(たとえば、ビーズビーター)または回転インペラに基づく装置(たとえば、ビーズブレンダー)のいずれかにおいて、細胞を溶解し、DNAを結合するために使用される、ビーズ等の溶解用粒状材料に用いることができる。検体の核酸は、溶解用粒子すなわちビーズに接着した捕捉プローブに検体配列を架橋する、ヘテロ二官能性延長プローブにより捕捉することができる。分岐DNAアッセイを行った後の層は、溶解用粒子すなわちビーズ上に捕捉された検体に加えることができる。プローブの各層は、溶解用粒子すなわちビーズの混合の調整速度を伴わせることで、各層の結合の加速と高いせん断力によるするDNA切断との間を媒介することができる。これらの溶解用粒子すなわちビーズに分岐DNA方式を構築することで、検体の捕捉を含む各層における結合の急速な結合キネティクスを促進することができる。これにより、また、かなり大容量の試料からの非常に効率的に検体の濃縮が促進され、また、各結合または結合ステップ間における効率的な洗浄または洗浄ステップが促進される。
【0210】
分岐DNA方式のプローブの完全な複合体が溶解用粒子すなわちビーズに構築された後、検出に進むためには、少なくとも三つの方法がある。一つの方法は、溶解装置(たとえば、ビーズブレンダー)の容器またはカートリッジ内で検出することである。化学発光検出の場合、混合は検出または検出ステップ中に発生しうる。他の方法は、溶解用粒子すなわちビーズを検出用のウェルまたは管の中に分注することである。さらに他の方法は、溶解用粒子すなわちビーズからDNA複合体を放出させ、レポーター基を検出用のウェルまたは管の中に溶出させることである。この方法には、実際に検体に特異的である放出または放出ステップを可能にすることで、検体特異的なシグナルとバックグラウンドシグナルとのより良い比が得られるという潜在的な利点がある。たとえば、プローブの一以上の層は、光切断可能な接合部において光で切断することにより放出されうる。高pHまたは低塩濃度において加熱によって溶出させることで、DNAが変性し、また、そのためレポーター基が放出される。ヌクレアーゼは、特異的な部位においてまたは非特異的にDNA複合体を放出するために使用されうる。前記振動回転運動に基づく装置(たとえば、ビーズビーター)または前記回転インペラに基づく装置(たとえば、ビーズブレンダー)による急速な動作は、放出・溶出または放出・溶出ステップの効率を向上しうる。
【0211】
本明細書の教示に基づき当業者により認識されるように、細胞を溶解しDNAを抽出する溶解用粒子すなわちビーズの使用は、DNAに対し非特異的な親和性を有する任意の表面化学反応により行うことができる。これには、シリカまたはシリカ様ビーズを用いること、ならびに、BOOM法により、高塩濃度または低pHを用いてDNAのビーズへの結合を誘発し、その後、低塩濃度の溶液をアプライしてDNAを溶出させることが含まれうる。これにはまた、二価のカチオン(たとえば、Mg++)の溶液とともに用いられたときに、ビーズとDNAの間に塩架橋を形成する負に帯電したビーズを用いることが含まれうる。この方法はまた、低濃度の塩およびEDTAを使用してDNAを溶出させる。上記の方法は、Hawkins, et al,. Nucleic Acids Res. 1995, 23:22.に記載されている。これはまた、シリカ溶解用粒子すなわちビーズ上のアニオン交換樹脂を用いたDNAの捕捉および放出を含みうる。第3級アミンを含むジアチルアミノエタノール等の樹脂は、低pHにおいてDNAを結合させ、次に、高塩濃度の媒体の存在下でDNAを溶出させることができる。
【0212】
図38Aおよび図38Bは、さらに他の例示実施形態に係る、止水栓弁3800の形態の溶解装置を示す。止水栓弁3800は、貯蔵容器を形成する外側本体部3802、または外側チャンバ3804を備える。止水栓弁3800は、貯蔵容器を形成する内側本体部3806、または内側チャンバ3808を備える。止水栓弁3800はまた、内側チャンバ3808内に収容され中で回転するインペラ3810を備える。止水栓弁3800はさらに、インペラを駆動するために連結される電動モータ3812を備える。止水栓弁3800は、トルクを内側本体部3806にかけることにより、内側本体部を外側本体部3802に対し容易に回転させるまたは旋回させるハンドル3818または他の係合可能な構造をさらに備えうる。
【0213】
内側本体部3806は、内側チャンバ3808内で従軸3809の周りを回転することにより(両矢印3807)複数のポート3820a〜3820c(3820と総称する)を開閉し、それにより、内側チャンバ3808との流体の連通を開閉している。上記の構成は、止水栓弁型溶解装置3800を操作時および/または止水栓弁型溶解装置3800を介して異なる流路を画定するために、内側チャンバ3808を介して異なる時間に異なる流体を流させるために採用しうる。前記構造は、内側チャンバ3808の壁における一以上のポートが外側本体部3802を介してポート、流路または通路との間で流体を確実に連通させうる。このように、ポート3820は、少なくとも一つの他のポート3820が内側チャンバ3808を通るよう設計された流体を含む流路に連通して流体が流れるように、ポンプにつながる流路に並べられうる。この設計により、止水栓型溶解装置3800を、他の機能を担うまたは他の流体を保持する他のチャンバと一体化させることができる(たとえば、サンプルとバインディングバッファの混合液、溶出用バッファ、ポンプ、廃液槽、および/または増幅および検出用のチャンバ)。
【0214】
図39A〜39Cは、図38Aおよび図38Bと同様の溶解装置3900を示す。特に、図39Aは、溶解装置3900の分解図であり、図39Bは、溶解装置3900を組み立てた図であり、図39Cは、図39Aに示した向きから180°回転させた溶解装置3900を示す。
【0215】
溶解装置3900は、外側チャンバ3904を形成する外側容器3902、内側チャンバ3908を形成する内側容器3906、インペラ3910およびインペラ3910を駆動するために連結される電動モータ3912、を備えうる。外側チャンバ3904は、内側容器3906をその中に収容するよう採寸される。たとえば、外側チャンバ3904は、内側容器3906の外周径または外径D2を密接に収容する内周径または内径D1を有しうる。上記の内周径または内径は、間を密閉して流体またはガスを通さないよう、前記外周径または外径を十分に密接に収容しうる。さらに、または代替として、一以上のガスケット、ワッシャまたはOリングを利用しうる。さらに、または代替として、カップラー構造(たとえば、ねじ山)を利用しうる。外側チャンバ3904は、内側容器3906を収容するために、一端3914aにおいて開いている。外側チャンバ3904は、他端3914bにおいて閉じうる。内側チャンバ3908は、インペラ3910および任意で電動モータ3912を収容するために、一端3916aにおいて開いている。内側チャンバ3908は、図39Aおよび39Cに示すように、他端3916bにおいて(たとえば、外側チャンバ3904が他端3914bにおいて閉じている場所において)開きうる。あるいは、図40Aおよび図40Bに示すように、内側チャンバ3908は、他端3916bにおいて閉じうる。
【0216】
内側チャンバ3908は、インペラ3910および任意で電動モータ3912の一部またはその全てをその中に収容するよう採寸される。たとえば、内側チャンバ3908は、電動モータ3912の外周径または外径D4を密接に収容する内周径または内径D3を有しうる。上記の内周径または内径は、間を密閉して流体またはガスを通さないよう、前記外周径または外径を十分に密接に収容しうる。さらに、または代替として、一以上のガスケット、ワッシャまたはOリングを利用しうる。さらに、または代替として、カップラー構造(たとえば、ねじ山)を利用しうる。内側容器3902は、前記内側容器から外側に延伸する一以上の突起または他の係合可能な構造3918a、3918b(3918と総称する)を備えうる。これにより、内側容器3906を外側容器3902内で容易に回転させることができる。
【0217】
図39Aに最もよく示されるように、外側容器3902は、外側チャンバ3904と外側容器3902の外部との間に流体を連通させるまたは流体流路を提供するための多くのポート3920a〜3920c(3920と総称する)を有する。例示実施形態には、三つのポート3920a〜3920cを示しているが、より少ないまたはより多くのポートを利用しうる。同様に、内側容器3906は、内側チャンバ3908と内側容器3906の外部との間に流体を連通させるまたは流体流路を提供するための多くのポート3922a〜3922c(3922と総称する)を有する。例示実施形態には、三つのポート3922a〜3922cを示しているが、より少ないまたはより多くのポートを利用しうる。ポート3920、3922は、内側容器3906上の選択されたポートが外側容器3902の選択されたポート上に第1の向きまたは構成(図39A)で並ぶように配置される一方、内側容器3906上の選択されたポートが外側容器3902上の選択されたポートに第1の向きまたは構成とは異なる第2の向きまたは構成(図39C)で並ぶように配置されるように、配置される。前記流体流路は、内側容器3906を単に外側容器3902に対して配向することにより変更することができる。たとえば、例示実施形態では、外側容器3902のポート3920aと3920bとの間の第1の流体流路は、内側容器3906が外側容器3902に対し第1の向きにあるとき(図39A)に確立される。内側容器3906を、外側容器3902に対し、たとえば従軸の周りを180°回転させることにより(図39Cに示す向き)、外側容器3902のポート3920aと3920cとの間に第2の流体流路を確立させる。なお、外側チャンバ3904を形成する前記内壁または内周は、外側容器3902に対する内側容器3906の向きに応じて、内側容器3906のポート3922a、3922cのうちの一つを選択的に密閉する。他の実施形態では、さらなるポートを使用しうる。ポートは、互いに180°以外の角度になるように配向されうる。このため、たとえば、内側容器3906は、互いに90°、60°または45°の角度になるように配向されたポートを有しうる。これにより、選択的に選択できる流体流路をより多く提供しうる。外側および内側容器3902、3906は、それぞれ、互いに等しい数のポート3920、3922を備えていることが図示されているが、ある実施形態では、外側および内側容器3902、3906のポートの数は、互いに等しくなくてもよい。
【0218】
図40Aおよび図40Bは、図38Aおよび図38Bと同様の溶解装置4000を示す。特に、図40Aは、溶解装置4000の分解図であり、図40Bは、溶解装置4000の底面図である。
【0219】
溶解装置4000は、外側チャンバ4004を形成する外側容器4002、内側チャンバ4008を形成する内側容器4006、インペラ4010、およびインペラ4010を駆動するために連結される電動モータ4012を備えうる。外側チャンバ4004は、内側容器4006をその中に収容するように採寸される。たとえば、外側チャンバ4004は、内側容器4006の外周径または外径を密接に収容する内周径または内径を有しうる。上記の内周径または内径は、間を密閉して流体またはガスを通さないよう、前記外周径または外径を十分に密接に収容しうる。さらに、または代替として、一以上のガスケット、ワッシャまたはOリングを利用しうる。さらに、または代替として、カップラー構造(たとえば、ねじ山)を利用しうる。外側チャンバ4004は、内側容器4006収容するために両端4014a、4014bにおいて開きうる。内側チャンバ4008は、インペラ4010および任意で電動モータ4012を収容するため、一端4016aにおいて開きうる。内側チャンバ4008は、外側チャンバ4004の他端4014bを閉じるため、他端4016bにおいて閉じている。内側容器4006は、前記内側容器の他端4016bから延伸する一以上の突起または他の係合可能な構造4018を有する。これにより、内側容器4006を外側容器4002内で容易に回転させることができる。
【0220】
内側チャンバ4008は、インペラ4010および任意で電動モータ4012の一部またはその全てをその中に収容するよう採寸される。たとえば、内側チャンバ4008は、電動モータ4012の外周径または外径を密接に収容する内周径または内径を備えうる。これにより、間を密閉して流体またはガスを通さないよう、十分に密接に収容されうる。さらに、または代替として、一以上のガスケット、ワッシャまたはOリングを利用しうる。さらに、または代替として、カップラー構造(たとえば、ねじ山)を利用しうる。
【0221】
図40Aに最もよく示されるように、外側容器4002は、外側チャンバ4004と外側容器4002の外部との間に流体を連通させるまたは流体流路を提供するための多くのポート4020a〜4020c(4020と総称する)を有する。例示実施形態には、三つのポート4020a〜4020cを示すが、より少ないまたはより多くのポートを利用しうる。同様に、内側容器4006は、内側チャンバ4008および内側容器4006の外部との間に流体を連通させるまたは流体流路を提供するための多くのポート4022a〜4022c(4022と総称する)を有する。例示実施形態には、三つのポート4022a〜4022cを示すが、より少ないまたはより多くのポートを利用しうる。ポート4020、4022は、内側容器4006上の選択されたポートが外側容器4002の選択されたポート上に第1の向きまたは構成(図40A)で並ぶように配置される一方、内側容器4006上の選択されたポートが外側容器4002上の選択されたポートに第1の向きまたは構成とは異なる第2の向きまたは構成で並ぶように配置されるように、配置される。前記流体流路は、内側容器4006を単に外側容器4002に対して配向することにより変更することができる。たとえば、例示実施形態では、外側容器4002のポート4020a、4020bの間の第1の流体流路は、内側容器4006が外側容器4002に対し第1の向きにあるとき(図40A)、確立される。内側容器4006を、外側容器4002に対し、たとえば、従軸の周りを180°回転させることにより、外側容器4002のポート4020aと4020cとの間に第2の流体流路を確立させる。なお、外側チャンバ4004を形成する内壁または内周は、外側容器4002に対する内側容器4006の向きに応じて、内側容器4006のポート4022a、4022cのうち一つを選択的に密閉する。他の実施形態では、さらなるポートを使用しうる。ポートは、互いに180°以外の角度になるように配向されうる。このため、たとえば、内側容器4006は、互いに90°、60°または45°の角度になるように配向されたポートを有しうる。これにより、選択的に選択できる流体流路をより多く提供しうる。外側および内側容器4002、4006は、それぞれ、互いに同数のポート4020、4022を備えていることが図示されているが、ある実施形態では、外側および内側容器4002、4006のポートの数は互いに等しくなくてもよい。
【0222】
図38A、38B、図39A〜39C、図40A、40Bの実施形態が、すべて手動で操作しうる(たとえば、手動で回転させ、所望の流路またはポートを選択する)一方、ある実施形態では、たとえば、電動モータ、ソレノイドあるいは他の電気的または電気機械的なアクチュエータにより駆動することにより、自動的に操作しうる。
【0223】
前記溶解およびDNA抽出システムは、他の構成要素および機能と一体化できる。これは、廃液槽、洗浄槽および機能、サンプルすなわち試料の導入用のチャンバ、溶出用バッファチャンバおよび機能、増幅・検出用のチャンバおよび機能をさらに一体化させることができるポンプおよび弁に、特にいえる。これらの全ての構造および機能は、溶解または検体抽出のいずれかまたは両方のためのビーズ叩き機能を備える使い捨て容器またはカートリッジに一体化させることができる。これらの構造および機能を使い捨てユニットに一体化させることは、ポイント・オブ・ケアおよびポイント・オブ・ユーズ診断の用途において、実用的な面での利点を有する。これらの構造機能を使い捨てユニットに一体化させることは、ポイント・オブ・ケアおよびポイント・オブ・ユーズ診断の用途において、実用的な面での利点を有する。
【0224】
上記に記載のさまざまな実施形態は、組み合わせることにより、他の実施形態とすることができる。米国特許仮出願番号61/020,072(2008年1月9日出願、国際特許出願番号PCT/US2009/030622(2009年1月9日出願、WO2009/089466として公開)、米国特許仮出願番号61/117,012(2008年11月21日出願)、米国特許仮出願番号61/220,984(2009年6月26日出願)、米国特許非仮出願番号12/732,070(2010年3月25日出願)、および米国特許仮出願番号61/317,604(2010年3月25日出願)は、すべて本願明細書に援用される。実施形態の態様は、さらに他の実施形態を提供するためのさまざまな特許、出願および公開の概念を採用するために、必要に応じて改変することができる。
【0225】
上記のおよび他の変更は、上記の詳細な記載を考慮して、上記実施形態に対して行うことができる。一般的に、下記の請求項では、使用される用語は、本請求項を本明細書および本請求項に開示された特定の実施形態に限定するよう解釈されるべきではないが、そのような請求項に与えられる均等物の全ての範囲とともにすべての可能性のある実施形態を備えうると解釈されるべきである。それにより、本請求項は本開示により限定されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体材料を含む試料をチャンバに導入するステップと、
弧状振動運動または回転インペラに基づく運動により、溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を前記チャンバ内で攪拌して前記試料を機械的に溶解するステップとを含み、
前記溶解用粒状材料は、前記流体の存在下で前記生体材料に対する親和性を有し、
前記流体は、前記生体材料の前記溶解用粒状材料への結合を促進する少なくとも一つの物理特性および/または化学特性を有し、
前記親和性は、前記流体の存在下で前記生体材料の少なくとも一部を前記溶解用粒状材料の少なくとも一部に結合させるのに十分である、生体材料の獲得方法。
【請求項2】
前記溶解用粒状材料は複数のビーズを有し、
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内で前記複数のビーズとともに前記試料を攪拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶解用粒状材料は、複数のセラミックビーズ、複数のガラスビーズ、複数のジルコニウムビーズ、複数のシリカビーズ、複数の砂、または、前記生体材料の前記試料への結合を促進する材料で金属芯をコートしてなる複数のビーズのうちの少なくとも一つを含み、
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内で前記複数のセラミックビーズ、前記複数のガラスビーズ、前記複数のジルコニウムビーズ、前記複数のシリカビーズ、または、前記複数の砂のうちの少なくとも一つとともに前記試料を攪拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内で直径または最小の横寸法が約10〜約600ミクロンの範囲である溶解用粒状材料とともに前記試料攪拌するステップを含む。請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記流体は高塩濃度であり、
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内で前記高塩濃度の前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記チャンバ内で前記高塩濃度の前記流体を用いて前記試料を攪拌する前記ステップは、前記チャンバ内で少なくとも約200ミリモル濃度の塩濃度の前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記流体は低pHであり、
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内で前記低pHの前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記チャンバ内で前記低pHの前記流体を用いて前記試料を攪拌する前記ステップは、前記チャンバ内で前記pHが約4以上である前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記チャンバ内の前記媒体は化学溶解剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバを搭載したアームを振動させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内に少なくとも部分的に配置された多数のブレードを有するインペラを駆動するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させる前記ステップは、前記溶解用粒状材料が含まれる系の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させるステップの少なくとも一つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶解用粒状材料が含まれる系の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させる前記ステップは、前記チャンバ内で前記流体の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させる前記ステップは、洗浄せずに前記材料を溶出するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させる前記ステップは、DNA材料、タンパク質もしくはポリペプチド材料、または、他の細胞成分材料のうちの少なくとも一つを溶出させるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させた後に前記生体材料を加熱するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記試料を溶解した後に前記生体材料を加熱するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記チャンバの容量を超える量の前記試料を前記チャン中に流すステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記試料を、前記チャンバを介して、第1の時間および第1の速度で第1の方向に流し、第2の時間および第2の速度で前記第1の方向とは反対の第2の方向に流すステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記媒体は、第1の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第1の溶解用粒状材料、および、第2の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第2の溶解用粒状材料である、二つの異なる化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された二つの溶解用粒状材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
第1の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された前記第1の溶解用粒状材料は、DNAと結合するように修飾された溶解用粒状材料であり、
第2の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された前記第2の溶解用粒状材料は、タンパク質またはポリペプチドを結合するように修飾された溶解用粒状材料である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
結合中に、溶液相標識(solution-phase tagged)リガンドを用いて前記タンパク質またはポリペプチドを標識して、その後の前記タンパク質またはポリペプチドの検出を容易にするステップを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の化学特性を有する生体材料と前記第2の化学特性を有する生体材料とを別個に溶出させるステップを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の化学特性を有する生体材料はDNAであり、前記第2の化学特性を有する生体材料は、タンパク質またはポリペプチドである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記DNAを低塩濃度で溶出させ、前記タンパク質またはポリペプチドを尿素で溶出させる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶解用粒状材料に未結合の生体材料を更に分析または処理するために別個のチャンバまたは容器に分離移動させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
単離対象である生体材料を含む試料を収容するチャンバと、
溶解用粒状材料および流体を含む媒体であって、前記溶解用粒状材料は、前記流体の存在下で前記生体材料に対する親和性を有し、前記流体は前記生体材料の前記溶解用粒状材料への結合を促進する物理特性および/または化学特性を有し、前記親和性は、前記流体存在下で、前記生体材料の少なくとも一部分の前記溶解用粒状材料の少なくとも一部分への結合を誘発するのに十分である、媒体と、
弧状振動運動または回転インペラに基づく運動により、前記チャンバ内で前記流体および溶解用粒状材料を含む前記媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を機械的に溶解すると共に、前記生体材料の少なくとも一部分を前記粒状溶解対象材料の少なくとも一部分に結合させるように選択的に動作可能な攪拌器と、
を有する、試料を溶解しかつ前記溶解された試料から特定の生体材料を単離するシステム。
【請求項29】
前記溶解用粒状材料は複数のビーズを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記溶解用粒状材料は、複数のセラミックビーズ、複数のガラスビーズ、複数のジルコニウムビーズ、複数のシリカビーズ、複数の砂、または、前記生体材料の結合を促進する材料で金属芯をコートしてなる複数のビーズのうちの少なくとも一つを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記溶解用粒状材料は、直径または最小の横寸法が約10〜約600ミクロンの範囲である、請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
前記流体は、高塩濃度である、請求項28に記載のシステム。
【請求項33】
前記高塩濃度は、少なくとも約200ミリモル濃度である、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記流体は低pHである、請求項28に記載のシステム。
【請求項35】
前記pHは約4以上である、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記チャンバ内の前記媒体は化学溶解剤を含まない、請求項28に記載のシステム。
【請求項37】
前記攪拌器は、少なくとも一つのモータおよび前記チャンバを保持するアームを備え、
前記アームは振動駆動可能に前記モータに連結される、請求項28に記載のシステム。
【請求項38】
前記攪拌器は、少なくとも一つのモータと、少なくとも部分的に前記チャンバ内に配置可能なインペラとを備え、
前記インペラは振動駆動可能に前記モータに連結される、請求項28に記載のシステム。
【請求項39】
前記生体材料は、DNA材料、タンパク質またはポリペプチド材料、または他の細胞成分材料のうちの少なくとも一つを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項40】
前記チャンバの容量を超える量の前記試料を前記チャンバ内に流すように動作可能なポンプを更に有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項41】
前記試料を、前記チャンバを介して、第1の時間および第1の速度で第1の方向に流し、第2の時間および第2の速度で前記第1の方向とは反対の第2の方向に流すように動作可能なポンプを更に有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項42】
前記生体材料を加熱するように選択的に動作可能である、ポンプと熱接触するヒータを更に有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項43】
前記媒体は、第1の化学特性を有する生体材料を結合するように修飾された第1の溶解用粒状材料、および、第2の化学特性を有する生体材料を結合するように修飾された第2の溶解用粒状材料である、二つの異なる化学特性を有する生体材料を結合するように修飾された溶解用粒状材料を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項44】
前記第1の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された前記第1の溶解用粒状材料は、DNAと結合するように修飾された溶解用粒状材料であり、
前記第2の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された前記第2の溶解用粒状材料は、タンパク質またはポリペプチドと結合するように修飾された溶解用粒状材料である、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記溶解用粒状材料に未結合の生体材料を収容するチャンバまたは容器を更に有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項1】
生体材料を含む試料をチャンバに導入するステップと、
弧状振動運動または回転インペラに基づく運動により、溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を前記チャンバ内で攪拌して前記試料を機械的に溶解するステップとを含み、
前記溶解用粒状材料は、前記流体の存在下で前記生体材料に対する親和性を有し、
前記流体は、前記生体材料の前記溶解用粒状材料への結合を促進する少なくとも一つの物理特性および/または化学特性を有し、
前記親和性は、前記流体の存在下で前記生体材料の少なくとも一部を前記溶解用粒状材料の少なくとも一部に結合させるのに十分である、生体材料の獲得方法。
【請求項2】
前記溶解用粒状材料は複数のビーズを有し、
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内で前記複数のビーズとともに前記試料を攪拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶解用粒状材料は、複数のセラミックビーズ、複数のガラスビーズ、複数のジルコニウムビーズ、複数のシリカビーズ、複数の砂、または、前記生体材料の前記試料への結合を促進する材料で金属芯をコートしてなる複数のビーズのうちの少なくとも一つを含み、
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内で前記複数のセラミックビーズ、前記複数のガラスビーズ、前記複数のジルコニウムビーズ、前記複数のシリカビーズ、または、前記複数の砂のうちの少なくとも一つとともに前記試料を攪拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内で直径または最小の横寸法が約10〜約600ミクロンの範囲である溶解用粒状材料とともに前記試料攪拌するステップを含む。請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記流体は高塩濃度であり、
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内で前記高塩濃度の前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記チャンバ内で前記高塩濃度の前記流体を用いて前記試料を攪拌する前記ステップは、前記チャンバ内で少なくとも約200ミリモル濃度の塩濃度の前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記流体は低pHであり、
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内で前記低pHの前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記チャンバ内で前記低pHの前記流体を用いて前記試料を攪拌する前記ステップは、前記チャンバ内で前記pHが約4以上である前記流体を用いて前記試料を攪拌するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記チャンバ内の前記媒体は化学溶解剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバを搭載したアームを振動させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記チャンバ内で溶解用粒状材料および流体を含む媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を溶解する前記ステップは、前記チャンバ内に少なくとも部分的に配置された多数のブレードを有するインペラを駆動するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させる前記ステップは、前記溶解用粒状材料が含まれる系の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させるステップの少なくとも一つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶解用粒状材料が含まれる系の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させる前記ステップは、前記チャンバ内で前記流体の塩濃度を下げるステップまたはpHを上昇させるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させる前記ステップは、洗浄せずに前記材料を溶出するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させる前記ステップは、DNA材料、タンパク質もしくはポリペプチド材料、または、他の細胞成分材料のうちの少なくとも一つを溶出させるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記生体材料を少なくとも前記溶解用粒状材料から溶出させた後に前記生体材料を加熱するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記試料を溶解した後に前記生体材料を加熱するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記チャンバの容量を超える量の前記試料を前記チャン中に流すステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記試料を、前記チャンバを介して、第1の時間および第1の速度で第1の方向に流し、第2の時間および第2の速度で前記第1の方向とは反対の第2の方向に流すステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記媒体は、第1の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第1の溶解用粒状材料、および、第2の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された第2の溶解用粒状材料である、二つの異なる化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された二つの溶解用粒状材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
第1の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された前記第1の溶解用粒状材料は、DNAと結合するように修飾された溶解用粒状材料であり、
第2の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された前記第2の溶解用粒状材料は、タンパク質またはポリペプチドを結合するように修飾された溶解用粒状材料である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
結合中に、溶液相標識(solution-phase tagged)リガンドを用いて前記タンパク質またはポリペプチドを標識して、その後の前記タンパク質またはポリペプチドの検出を容易にするステップを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の化学特性を有する生体材料と前記第2の化学特性を有する生体材料とを別個に溶出させるステップを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の化学特性を有する生体材料はDNAであり、前記第2の化学特性を有する生体材料は、タンパク質またはポリペプチドである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記DNAを低塩濃度で溶出させ、前記タンパク質またはポリペプチドを尿素で溶出させる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶解用粒状材料に未結合の生体材料を更に分析または処理するために別個のチャンバまたは容器に分離移動させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
単離対象である生体材料を含む試料を収容するチャンバと、
溶解用粒状材料および流体を含む媒体であって、前記溶解用粒状材料は、前記流体の存在下で前記生体材料に対する親和性を有し、前記流体は前記生体材料の前記溶解用粒状材料への結合を促進する物理特性および/または化学特性を有し、前記親和性は、前記流体存在下で、前記生体材料の少なくとも一部分の前記溶解用粒状材料の少なくとも一部分への結合を誘発するのに十分である、媒体と、
弧状振動運動または回転インペラに基づく運動により、前記チャンバ内で前記流体および溶解用粒状材料を含む前記媒体とともに前記試料を攪拌して前記試料を機械的に溶解すると共に、前記生体材料の少なくとも一部分を前記粒状溶解対象材料の少なくとも一部分に結合させるように選択的に動作可能な攪拌器と、
を有する、試料を溶解しかつ前記溶解された試料から特定の生体材料を単離するシステム。
【請求項29】
前記溶解用粒状材料は複数のビーズを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記溶解用粒状材料は、複数のセラミックビーズ、複数のガラスビーズ、複数のジルコニウムビーズ、複数のシリカビーズ、複数の砂、または、前記生体材料の結合を促進する材料で金属芯をコートしてなる複数のビーズのうちの少なくとも一つを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記溶解用粒状材料は、直径または最小の横寸法が約10〜約600ミクロンの範囲である、請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
前記流体は、高塩濃度である、請求項28に記載のシステム。
【請求項33】
前記高塩濃度は、少なくとも約200ミリモル濃度である、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記流体は低pHである、請求項28に記載のシステム。
【請求項35】
前記pHは約4以上である、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記チャンバ内の前記媒体は化学溶解剤を含まない、請求項28に記載のシステム。
【請求項37】
前記攪拌器は、少なくとも一つのモータおよび前記チャンバを保持するアームを備え、
前記アームは振動駆動可能に前記モータに連結される、請求項28に記載のシステム。
【請求項38】
前記攪拌器は、少なくとも一つのモータと、少なくとも部分的に前記チャンバ内に配置可能なインペラとを備え、
前記インペラは振動駆動可能に前記モータに連結される、請求項28に記載のシステム。
【請求項39】
前記生体材料は、DNA材料、タンパク質またはポリペプチド材料、または他の細胞成分材料のうちの少なくとも一つを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項40】
前記チャンバの容量を超える量の前記試料を前記チャンバ内に流すように動作可能なポンプを更に有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項41】
前記試料を、前記チャンバを介して、第1の時間および第1の速度で第1の方向に流し、第2の時間および第2の速度で前記第1の方向とは反対の第2の方向に流すように動作可能なポンプを更に有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項42】
前記生体材料を加熱するように選択的に動作可能である、ポンプと熱接触するヒータを更に有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項43】
前記媒体は、第1の化学特性を有する生体材料を結合するように修飾された第1の溶解用粒状材料、および、第2の化学特性を有する生体材料を結合するように修飾された第2の溶解用粒状材料である、二つの異なる化学特性を有する生体材料を結合するように修飾された溶解用粒状材料を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項44】
前記第1の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された前記第1の溶解用粒状材料は、DNAと結合するように修飾された溶解用粒状材料であり、
前記第2の化学特性を有する生体材料と結合するように修飾された前記第2の溶解用粒状材料は、タンパク質またはポリペプチドと結合するように修飾された溶解用粒状材料である、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記溶解用粒状材料に未結合の生体材料を収容するチャンバまたは容器を更に有する、請求項28に記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34A】
【図34B】
【図35A】
【図35B】
【図36】
【図37A】
【図37B】
【図38A】
【図38B】
【図39A】
【図39B】
【図39C】
【図40A】
【図40B】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34A】
【図34B】
【図35A】
【図35B】
【図36】
【図37A】
【図37B】
【図38A】
【図38B】
【図39A】
【図39B】
【図39C】
【図40A】
【図40B】
【公表番号】特表2012−531432(P2012−531432A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517746(P2012−517746)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/039872
【国際公開番号】WO2010/151705
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511312300)クレアモント バイオソリューソンズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/039872
【国際公開番号】WO2010/151705
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511312300)クレアモント バイオソリューソンズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
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