説明

試薬添加方法および試薬添加装置

【課題】 細胞集団の特定細胞ないし特定領域に液中で微量な試薬を添加できる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の生体試料に試薬を添加する方法は、生体試料固定用基板、前記生体試料固定用基板の生体試料固定用表面上に固定された生体試料、前記生体試料に接する液層、および試薬を含む試薬含有体を準備する工程(a)、前記試薬含有体を破壊し、前記試薬を含む試薬微粒子を分離する工程(b)、前記試薬微粒子に前記生体試料方向への力を付与し、前記試薬微粒子を前記生体試料に添加する工程(c)を有し、前記工程(a)において、前記試薬含有体は前記液層内に含まれるように、または前記液層に接するように配置され、前記工程(b)と前記工程(c)とは、前記試薬含有体にレーザー光を照射することによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料に微量の試薬を添加する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々生命現象の検討には、実際の生命体を扱う必要がある。特に創薬分野では薬剤の薬効や副作用を調べるために、マウスやラット、ミドリザルなどの哺乳類個体を利用するケースが多い。しかしながら、創薬に関して言えば、ヒトとそれ以外の動物では種の壁があり、同一成分の物質であってもその薬効が異なるケースが多い。本来ならば、動物ではなく、ヒトの個体で実験を行うのがよいが、予期せぬ効果により個体にダメージを与えるリスクがかなり低いとのデータを動物実験で得た後で無ければ、当然のことながらヒトでの実験を行うことはできない。最近では薬効が期待できる量の1/1000の薬剤を実際にヒトに投与して、薬物の代謝を追跡するマイクロドージングを実施するケースが多くなったが、ヒトへの毒性が保障されるわけではない。したがって、ヒト個体を用いるのではなく、ヒト培養細胞を用いて研究を進めるケースが今後増えると予想される。また、動物愛護の観点からも動物を極力使用しない実験系が要求されるようになっている。実際ヒト細胞そのものをセンサーに見立てて、極微量物質を検出するバイオアッセイの研究が盛んになりつつあり、多細胞系を基板上に再構築する研究も行われている。将来、このような研究成果をもとに動物実験のかなりの部分が細胞ベースでのアッセイに移行することは時代の趨勢である。
【0003】
また、基礎的な生命科学研究においても、動物実験では個体毎の状態をコントロールすることが難しいことが生命現象追求を行う上でネックとなっている。もちろん、生育条件が管理された純系統の動物を用いて実験を行うわけであるが、それでも、実験結果のバラつきがかなりある。その点培養細胞では、個体と違って特定の特徴を持つ均一な細胞での実験が可能なため、薬効や毒性がダイレクトに計測できる可能性がある。特に、ヒトへの利用を目標とする創薬分野では、ヒトの培養細胞を用いることで種の壁を越えることができるので今後ますます発展すると考えられる。しかしながら、多くの場合、培養細胞系は単一細胞のクローンで構成される。ヒトを初めとする哺乳類は多細胞系であり、個々の臓器、個々の細胞が役割を分担するとともに協調して固体としての生命現象を維持している。このため、単一細胞系からなる培養細胞では、評価の範囲が限定される。
【0004】
そこで多細胞系を再構築して、細胞のネットワークパターンを化学的、あるいは物理的な手法を用いて制御する技術について古くから多くの研究がなされている。たとえば、化学的方法では、Letourneau達が神経細胞を培養する基板表面にラミニンなどの細胞接着性の基質でパターンを描き、神経突起をパターンに沿って伸展させることに成功している(例えば、非特許文献4参照)。物理学的方法では、基板表面に神経細胞の伸展にとって障壁となる段差を構築した基板上で培養することで、障壁の高さが10μm程度以上であれば神経細胞の伸展・移動を制限することが可能という報告がある(例えば、非特許文献5、6参照)。
【0005】
関連技術として、特定の一細胞のみを選択し、その一細胞を細胞株として培養する技術、及び細胞を観察する場合に、細胞の溶液環境条件を制御し、かつ、容器中での細胞濃度を一定に制御する技術、あるいは相互作用する細胞を特定しながら培養観察する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、細胞培養を行いながら集束光を照射して加熱した領域の細胞培養容器の形状を自在に変化させることが可能な細胞培養マイクロチャンバーが開発されている(例えば、特許文献2参照)。さらには、近年の再生医療に係り、細胞を培養して細胞を組織的な構造体に構築することも試みられている。すでに上皮細胞を培養し、シート状にする技術などが確立している。
【0006】
しかし、多くの場合、細胞培養で行われる細胞は均一なクローンであり、細胞間のインタラクションや細胞接触による高次細胞構築に関しては、我々の知識的蓄積はそれほど多くないのが現状である。このため、細胞群を再構築して機能的な構造体を得ようとする試みは新しい生物学を切り開くとともに、これからの再生医療分野の重要な課題となると言える。細胞群の再構築に関しては、たとえば、神経細胞において、人工的に少数の神経細胞からなる比較的単純な神経回路網を構築し、制御された環境下で、細胞ネットワークの情報処理機能を明らかにしようとする研究も盛んに行われている(例えば、非特許文献1、2、3参照)。
【0007】
基板上に配した細胞アレイの特定の細胞を薬剤で刺激する方法としては、毛細管を用いて刺激したい細胞の近傍や細胞内に物理的に薬剤を添加する方法がとられている。あるいは、使用できる物質に制限があるが、ケージドATPのように生理活性物質のケージド化合物を添加し、刺激したい細胞のみに紫外光を照射して局在的に生理活性物質をリリースする方法が開発されている。ケージド化合物を用いる方法は、毛細管を用いる方法にくらべて、空間的により狭い領域のみに生理活性物質を添加することができるので、今後適用できる物質が増えるものと期待される。
【特許文献1】特開2004−81086号公報
【特許文献2】特開2004−81085号公報
【非特許文献1】Dichter, M.A. Brain Res., 149, 279-293 (1978) や、Mains R.E., Patterson P. H. J. Cell. Biol., 59, 329-345 (1973)
【非特許文献2】Potter S.M., DeMarse T.B., J. Neurosci. Methods, 110, 17-24 (2001)
【非特許文献3】Jimbo Y., Tateno T., Robinson H.P.C., Biophys. J. 76, 670-678 (1999)
【非特許文献4】Letourneau P.C.: Dev. Biol., 66, 183-196 (1975)
【非特許文献5】Stopak D. et al.: Dev. Biol., 90, 383-398 (1982)
【非特許文献6】Hirono T.,Torimitsu K., Kawana A., Fukuda J., Brain Res., 446, 189-194 (1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多細胞生物は、数多くの細胞が役割を分担すると同時に、全体がオーケストラのように調和して活動することで成り立っている。生命現象を生身の体として理解するには、オーケストレーションしている様々な細胞が時々刻々変化する活動状況を解析する必要がある。細胞はお互いに相互作用しているのであるから、細胞間の空間的な位置関係を考慮して各細胞の生理的挙動を記述することが必要である。これは、臓器組織をそのまま利用しようが、基盤の上に複数の細胞を再構成した細胞チップを用いようが同じである。細胞からの情報は、たとえば、形状変化や、心筋細胞の拍動のような挙動の変化や、神経細胞での電気生理学的な信号検出で得ることができる。
【0009】
問題は、複数種の細胞からなる集合体の特定の細胞のみを薬剤で刺激する万能な手段が無い点にある。前記したとおり、微小領域への薬剤添加法としては、毛細管を用いる方法とケージド化合物を利用する方法がある。毛細管ピペットを用いる方法では、毛細管ピペット先端を特定領域に接近させて薬剤を添加するため、複数の薬剤を逐次添加しようとするとそのつど毛細管ピペットを細胞近傍に接近したり放したりする必要があり、操作が煩雑で時間がかかり、熟練を要する作業となる。添加できる液量に関しても制約がある。細胞の大きさはせいぜい10μm四方、すなわち1ピコリットルである。多細胞系の特定の細胞のみを薬剤刺激しようとすると、実質的に細胞サイズの1/10のサイズの1μm四方すなわち薬剤の体積は1フェムトリットル以下である必要がある。このような極微量試薬を取り扱うにはキャピラリーは必ずしも適しているとはいえない。ケージド化合物を用いる系では、使用できる薬剤に制限がある。また、ピコリットルオーダーの液滴を添加する方法としてインクジェット方式があるが、液滴体積が要求の1000倍以上もある上、基本的に気相での使用に限られ、溶液中での試薬添加は困難である。このため、細胞試料に対して使用するケースは多くない。
【0010】
本発明は、細胞集団(組織の役割分担を行っていると思われる細胞群)の特定細胞ないし特定領域に液中でアットリットルないしフェムトリットルの試薬を添加できるユニバーサルな方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、生体試料固定用基板、前記生体試料固定用基板の生体試料固定用表面上に固定された生体試料、前記生体試料に接する液層、および試薬を含む試薬含有体を準備する工程(a)、前記試薬含有体を破壊し、前記試薬を含む試薬微粒子を分離する工程(b)、前記試薬微粒子に前記生体試料方向への力を付与し、前記試薬微粒子を前記生体試料に添加する工程(c)を有し、前記工程(a)において、前記試薬含有体は前記液層内に含まれるように、または前記液層に接するように配置され、前記工程(b)と前記工程(c)とは、前記試薬含有体にレーザー光を照射することによる、生体試料に試薬を添加する方法である。
【0012】
前記工程(b)と前記工程(c)とは、好ましくは、前記レーザー光の照射により誘起される物理的な力により行われる、より好ましくは、集光光学系によるレーザー光の集光により誘起される力である。
【0013】
本発明の一形態において、前記工程(b)で、前記試薬微粒子の表面に前記試薬が露出する。
【0014】
また、本発明の一形態において、前記工程(a)で、前記試薬含有体を試薬固定用基板の試薬固定用表面に固定し、前記生体試料固定用基板と前記試薬固定用基板とを前記生体試料固定用表面と前記試薬固定用表面とが前記液層を介して対向するように配置する。
【0015】
上記方法を、例えば、前記生体試料が細胞であり、前記液層が培養液からなる系に適用することができる。
【0016】
また、本発明は、生体試料固定用基板、液層、試薬が固定されている試薬固定用基板、レーザー照射手段、集光光学系を有し、前記生体試料固定用基板、前記液層、前記試薬固定用基板がこの順で積層され、前記集光光学系と、前記レーザー照射手段とが、前記レーザー照射手段から照射されたレーザー光が前記集光光学系を介して前記試薬固定用基板に固定されている前記試薬の近傍に照射されるように配置されている、試薬添加装置である。
【0017】
また、本発明は、生体試料固定用基板、液層、試薬が固定されている試薬固定用基板、レーザー照射手段、集光光学系を有する試料添加装置により、生体試料に試薬を添加する方法であって、前記試料添加装置は、前記生体試料固定用基板、前記液層、前記試薬固定用基板がこの順で積層され、前記集光光学系と、前記レーザー照射手段とが、前記レーザー照射手段から照射されたレーザー光が前記集光光学系を介して前記試薬固定用基板に固定されている前記試薬の近傍に集光されるように配置され、前記方法は、前記生体試料固定用基板に生体試料を固定する工程(A)、前記レーザー照射手段によりレーザー光を照射し、前記集光光学系を介して前記試薬の近傍に集光させる工程(B)を有し、前記工程(B)により前記試薬が前記生体試料に添加される、生体試料に試薬を添加する方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液中極微量試薬添加装置と方法を用いることで、液中でのアットリットルからフェムトリットルの極微量試薬添加が可能となる。また、本発明では溶液内の任意の空間領域にのみ極技量試薬を添加することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
【0020】
本発明は生体試料への試薬添加方法であって、生体試料固定用基板、前記生体試料固定用基板の生体試料固定用表面上に固定された生体試料、前記生体試料に接する液層、および試薬を含む試薬含有体を準備する工程(a)、前記試薬含有体を破壊し、前記試薬を含む試薬微粒子を分離する工程(b)、前記試薬微粒子に前記生体試料方向への力を付与し、前記試薬微粒子を前記生体試料に添加する工程(c)を有し、前記工程(a)において、前記試薬含有体は前記液層内に含まれるように、または前記液層に接するように配置され、前記工程(b)と前記工程(c)とは、前記試薬含有体にレーザー光を照射することにより実施される。
【0021】
本発明の方法において、前記工程(b)と前記工程(c)とは、レーザー光の照射で誘起される物理的な力によることが好ましく、レンズを含む光学システムの集光により誘起される物理的な力であることがさらに好ましい。レーザー光の集光位置は、分離させる試薬微粒子そのもの、または分離させる試薬微粒子近傍であることが好ましく、試薬微粒子近傍がより好ましい。分離させる試薬微粒子の近傍としては、例えば試薬含有体または液層中の領域が挙げられる。
【0022】
本発明の試薬微粒子を分離する工程(b)と前記試薬微粒子を生体試料に添加する工程(c)において、レーザー光の集光により誘起される物理的な力は、レーザーアブレーションに基づく力学的な力であることが好ましい。前記レーザーアブレーションに基づき力学的な力を試薬含有体に接触させることで、試薬含有体を破壊し、破壊により複数の試薬微粒子を形成し、そして試薬微粒子を分離させる。また、レーザーアブレーションは、衝撃波、気泡、及び対流の少なくとも一つの発生を含むものであることが好ましい。さらに、レーザーアブレーションにより、各試薬微粒子に生体試料方向へ移動する力が付与され、工程(c)が実行されることが好ましい。
【0023】
本発明において、前記レーザー光は、赤外光、可視光及び紫外光からなる群から選択される光であることが好ましい。また、前記レーザー光は、ナノ秒レーザー光、ピコ秒レーザー光及びフェムト秒レーザー光からなる群から選択されるパルスレーザー光、または連続波発振レーザー光であることが好ましい。
【0024】
本発明において、前記試薬含有体は、生体試料添加用の試薬と担体とからなることが好ましい。担体は、例えば、高分子、金属、半導体、生体分子の集合体、これらの結晶、またはこれらの組合せからなる群から選択される。
【0025】
本発明において、前記生体試料としては、細胞または組織であることが好ましく、前記液層はこれらの培養液からなることが好ましい。
【0026】
本発明は、従来の毛細管を用いる方法やケージド化合物を用いる方法とは根本的に異なる方法となっている。細胞を取り扱う上で特に考慮する必要があるのは、組織断片であっても細胞チップであっても、細胞群は培養液中に存在することである。したがって、培養液中で極微量試薬を添加し、特定の細胞の存在する空間ないし特定の細胞内に運ぶ必要がある。また、添加する試薬は有機物で、タンパク質や糖鎖からなるものであることを考えると、温和な条件で添加ができる必要がある。
【0027】
したがって、添加すべき試薬そのものは、細胞の存在するのと同じ環境、具体的には培地中に接した状態であるが細胞とは隔離された状態で存在し、必要に応じて必要な細胞に対してのみ接触できるように試薬を移動させることとする。このとき、移動させる試薬は液体でも良いし、実質的に液体として振舞うことのできるサイズまで微小化したナノ粒子の形状を採用することにより実現することができる。本発明では、当初は基板や巨大粒子に試薬を実質固相として保持しておき、必要に応じて溶液やナノ粒子の形に変換することで、フェムトリットル以下の試薬の自在な溶液中での移動すなわち添加を可能としている。
【0028】
フェムトリットル以下の試薬を液体として液中において添加することはもはや困難であるとの認識から、本発明では添加する物質を固体として扱う。液体の場合でも、固体の担体に吸着ないし包摂させることで、個体として扱うことが好ましい。
【0029】
本発明の一形態では、添加用試薬をコーティングにより固相に保持した担体を一面に固定した試薬基板あるいは棒状の部材を使用する。担体としてはマイクロカプセルの形で液体試薬を保持した粒子状の担体、基板上に固体の担体相を設け、この担体相の表面に試薬を吸着させたものないし担体相の内部に包摂させてあたかも固体のような状態にして用いることができる。あるいは固体試薬の場合はそのまま基板上に塗布してもよく、また基板上に担体相を形成し、その上に固体試薬相を塗布した構成のいずれでも可能である。いずれも、1枚の基板上に1種類の試薬を固定した状態でも、ドット状にしたり、粒子毎に異なる試薬を固定したりしたものを基板上に配することで、1枚の基板上に複数種の試薬を配した構成としてもよい。複数の試薬を配した基板では、異なる試薬を同じ細胞あるいは異なる位置の細胞に対して順次添加することが可能となる利点がある。
【0030】
本発明の他の形態では、試薬を実質固相のように保持した担体相を破壊して試薬を溶液中に放出する構成を採用する。放出する試薬や試薬が添加される細胞に決定的なダメージを与えることが無いように、担体相の破壊には高出力の超短パルスレーザー光を使用することが好ましい。レーザー出力が多光子吸収を起こす領域にすることで、焦点面の限られた3次元領域(実質的にサブマイクロメータ四方)のみに可視光を照射したのと同じ効果が得られる。パルス幅が200フェムト秒以下であれば、照射時間が短いので焦点面が細胞の特定位置に一致しない限り実質細胞に影響を与えることはない。しかしこのような条件のレーザーを水溶液に照射すると、焦点位置で衝撃波が発生するので、焦点位置近傍に存在する物質は破壊される。焦点位置あるいはその近傍に固体が存在する場合は、固体が衝撃波により粉々になり、微粒子を形成する。したがって、試薬を保持した担体相を超短パルスレーザーの焦点位置あるいはその近傍に一致させると、サブマイクロメータの範囲の担体相が破壊されて、そこに固定されていた試薬が放出される。
【0031】
焦点面を固液界面より少し離れた液相位置に合わせることで、垂直方向に照射される衝撃波により限られた領域が破壊されると同時に、周りの担体相が障壁となり、ナノ粒子化した試薬を液中にある細胞ターゲットに向けてコーン状に放出することができる。焦点面と固液界面の距離は、20μm以内、より好ましくは5μm以内である。焦点面と固液界面の距離が10μmのときの焦点面におけるパルスレーザー強度は2 nJ/パルス〜8μJ/パルスが好ましい。パルスレーザーの波長は、基板の透過特性を確保し、実質的な水溶液における多光子吸収による衝撃波発生に適した波長として600〜1100nmを用いることができる。
【0032】
担体相がマイクロカプセルの状態では、中に詰まっている液体試薬が放出されることになる。毛細管による従来の試薬添加と違う点は、ある程度の距離なら方向性を持って試薬を液中放出することができる点である。本発明では特定の細胞に対して試薬を添加する必要性から、超短パルスレーザー光の収束光の照射位置に照準を合わせる機構を設けることが好ましい。すなわち、あらかじめ画像として取り込んだ組織細胞像の特定細胞位置を指定すると、標的細胞位置に基板を保持している二次元ステージが移動し、自動焦点機構により試薬キャリアー相にZ軸方向に長短パルスレーザー光の焦点が移動する。細胞試料基板面か試薬基板のどちらかを自動焦点機構で認識し、そこから一定の距離面をレーザー照射用焦点面とする。レーザー光を照射して試薬担体相の破壊の度合いを画像としてモニターしながら必要な領域の担体相が破壊されたとところでレーザー光の照射を停止する。レーザー光の照射位置が設定した焦点面に対してずれることもありえるので、Z軸方向のレーザー光の照射面を画像による試薬担体相の破壊計測を行いながら移動する機構も設けることとする。本発明の方法により、生体試料を保持した基板上の微小空間に添加用試薬を添加することを可能となる。
【0033】
本発明の他の形態として、試薬を固定する固相として液中すなわち培地中を浮遊する粒子の形状とすることもできる。粒子としては、粒径が0.05〜2マイクロメータで固体粒子の表面に試薬が固定されている構造となっている。あるいは表面から芯まで添加したい試薬でできていても、試薬そのものが非水溶性であれば可能である。マイクロカプセルとして内部に試薬を詰めたものでも良い。これら粒子状の試薬はいわゆるレーザーピンセットや超音波輻射圧で所定の位置まで搬送する。標的細胞の近傍に試薬が来たところで、長短パルスレーザー光を照射し、ナノ粒子化した試薬あるいはマイクロカプセル内の液体試薬を放出する。この系では試薬は全方向に広がる可能性がある。溶液中に浮遊する試薬粒子を用いる系では、細胞の存在する試薬を添加したい特定微小領域に存在する粒子担体を画像検出して標的細胞の近傍に存在する粒子に照準を合わせることでも同様の目的を達成できる。しかし、この場合、標的細胞との位置関係を前記方法ほど厳密にすることができないが、粒子搬送機構が不要となるので装置としてはコンパクトに仕上げることができる利点がある。また、粒子担体を用いると、あらかじめファゴトーシスやエンドサイトーシスで粒子担体を細胞内に取り込ませた後で、超短パルスレーザー光を照射して、細胞内で薬剤を任意の時間に細胞内で放出させることができる。
【0034】
溶液中の細胞等生体試料存在する特定空間領域に微量液体試薬を添加する装置と方法の態様としては、無数に空いたマイクロメーターレベルの径を有するポーラス基板の穴に添加用試薬を保持した試薬基板を用いることもできる。ポーラス基板の穴は基板に対して貫通していても良いし、井戸のような穴でも良い。基板としてはシリコンが加工性に優れており、陽極エッチングで無数の穴を開けたポーラスシリコンを作成することができる。長短パルスレーザーを貫通孔あるいは凹部内の試薬溶液に照射することで衝撃波を発生させ、内部に保持した液体試薬を基板面に対して垂直方向に方向性を持って放出することができる。ポーラス基板そのものに焦点面を合わせても良い。また、ポーラスシリコンの部位を区切って異なる試薬を保持させることで、複数の試薬を特定細胞に逐次添加することが可能である。細胞試料面に対して、試薬を保持したポーラスシリコンを移動させることで、任意の細胞に対して任意の試薬を1枚のポーラスシリコンを用いて添加することが可能となる。
【0035】
本発明で使用する超短パルスレーザーとしては、発振周波数が1Hz以上20Hz以下でパルス幅が500ピコ秒以下、より好ましい条件としては発振周波数が10Hz以上10kHz以下でパルス幅が500フェムト秒以下である。発振周波数が10Hzより大幅に低いと処理できる試薬担体が少なく、すなわち放出するナノ担体粒子が少なくなる。また、パルス幅が長いと、多光子吸収に必要なレーザー光密度が高くなるために、生体試料に対する影響が無視できなくなるし、必然的に対流の問題が発生する。
【0036】
また、本発明の方法に用いられる、生体試料を保持した試料基板の生体試料を保持した面に溶液を介して相対する位置に試薬含有体が固定されている基板をセットとして試料添加キットで供給されることが好ましい。
【0037】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0038】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、基板上で培養してネットワークを形成している細胞群の特定の細胞に異なる試薬を添加する試薬添加方法である。ここでは、細胞はラット神経細胞を用いてニューラルネットワークを形成している細胞群の特定細胞に異なる3種の試薬を添加する。
【0039】
本実施形態を図1と図2を用いて説明する。図1は、本実施形態で用いる試薬添加装置の準備工程を模式的に示す図である。図1に示すように、試薬添加装置1の準備工程において、細胞基板2と試薬基板8とを用意し、細胞基板2の細胞固定用表面2aの上にはスペーサ3を設ける。試薬基板8をスペーサ3の上に載せることで、細胞基板2と試薬基板8の間に培地保持部4が形成される。細胞基板2の細胞固定用表面2aには、神経細胞5a、5b、5cが着床し、ネットワーク6を形成している。
【0040】
次に、神経細胞の調製方法、および試薬添加装置の準備工程の詳細について述べる。ラット大脳半球由来の細胞を培地に分散し、一旦ポリ−L−リジンコートした10cm径のプラスティック製ペトリディッシュに播種し、5%CO2、飽和水蒸気雰囲気下、37℃で一週間培養すると、ところどころに細胞塊を形成する。細胞塊を形成した状態で、スクレイパーを用いて細胞を回収し、細胞塊をほぐして細胞分散液として浮遊培養する。浮遊培養で得られるマイクロスフェアーを3000rpmで遠心して回収する。この時点で、回収される細胞は神経幹細胞由来の細胞である。分化した細胞は、浮遊培養中に死滅する。
【0041】
回収したマイクロスフェアーを0.25%トリプシンで約1分間処理して分散させた細胞懸濁液に、大豆由来トリプシンインヒビターを添加してトリプシン活性を阻害させる。遠心して培地を交換した後に細胞基板2の細胞固定用表面2aに細胞分散液の一部を播種し、1〜3週間5%CO2で飽和水蒸気雰囲気下、37℃で培養する。この状態では細胞固定用表面2aは上部開放の状態で、一般的にはペトリディッシュに細胞基板2をのせて培養する。残りの細胞懸濁液に関しては、浮遊培養を続けて神経幹細胞を経代培養する。細胞基板2上で培養を続けると1〜3週間で神経細胞ネットワーク6を形成する。
【0042】
その後、細胞基板2の細胞固定用表面2aの細胞培養領域から外れた位置にスペーサ3を接着させ、スペーサ3の上部に試薬基板8を設置する。以上の工程を経て、細胞基板2の細胞ネットワーク6の存在する細胞固定用表面2aは培地保持部4に満たされている培地を介して添加用試薬を固定した試薬基板8と向かい合っている。
【0043】
細胞基板2と試薬基板8はいずれも350〜1100 nmで実質的に吸収を持たない石英ガラス(厚み0.11 mm)でできている。細胞基板2と試薬基板8はスペーサ3を介して、0.1 mmのギャップを形成している。
【0044】
試薬基板8の細胞基板2と対向する面8aには異なる試薬A、B、Cがそれぞれ含まれるようにドット列状に塗布された試薬ドット9a、9b、9cが形成されている。ここでは試薬Aとしてphthalocyanine Cd、試薬Bとしてphthalocyanine Fe(III)、試薬Cとしてphthalocyanine を用いる例について述べる。本実施形態において、試薬A、B、Cはいずれも非水溶性であり試薬基板8の表面8aに固定されているため、そのままの状態では、培地保持部4に溶出することはない。
【0045】
図2は、細胞基板2の上に試薬基板8がセットされた状態を示す断面図である。試薬基板8は細胞基板2に対して、スペーサ3で一定のギャップを保ちながらスライドできる構成となっている。これにより、試薬ドット9a、9b、9cのいずれかを標的細胞の上部に一致させることができる。たとえば、神経細胞ネットワーク6の細胞5aに試薬ドット9cを、試薬基板10の位置を調整することで一致させる。
【0046】
以上のように、試薬添加装置の準備工程が終了したら、レーザー光照射工程に移行する。サファイアチタンパルスレーザー11からのレーザー光(800 nm、150 fsパルス、1 mJ/パルス、1 kHz)をポラライザー12、コリメータレンズ13、対物レンズ14からなる光学系で収束光15を作成し、収束光15を試料ドット9cに照射する。収束光15の焦点では衝撃波18が発生し、試薬ドット9cが破壊され一部が試薬基板8から分離されて試薬微粒子となって溶液中に飛び散る。試薬ドット9cの内、飛散せずに試薬固定用基板8に固定されたままの部分は飛散する試薬微粒子の飛散方向を規定する。すなわち、試薬微粒子の飛び散る方向は、試薬基板8に固定されたままの試薬ドット9cによって規定される円錐エリア19に限られる。したがって、所望の細胞5aに試薬微粒子が添加される。
【0047】
(第2の実施形態)
本実施形態の試薬添加方法は、第1の実施形態の試薬添加方法とは、試薬添加装置における試薬基板の構成のみが異なる。
【0048】
図3は、本実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子24が細胞5aに添加される様子を模式的に示す断面図である。本実施形態の試薬添加装置21において、試薬基板23の試薬固定用表面23aには試薬層22が形成されている。試薬層22は試薬のみ、または試薬と担体とからなる。
【0049】
レーザー光の照射工程において、収束光15の焦点は試薬層22近傍の培地保持部4内の培地に一致するように調整することが好ましい。収束光15の焦点では衝撃波18が発生し、その衝撃波18により試薬層22が破壊されその一部が試薬基板23から分離されて試薬微粒子24として飛び散る。試薬微粒子24が飛び散る方向は、固定された状態の試薬層22によって規定される。すなわち、試薬微粒子24は細胞5aを含む円錐エリア19の方向に飛び散り、所望の細胞5aに試薬微粒子24が添加される。
(第3の実施形態)
本実施形態の試薬添加方法は、第1の実施形態の試薬添加方法とは、試薬添加装置における試薬基板の構成のみが異なる。
【0050】
図4は、本実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子36が細胞5aに添加される様子を模式的に示す断面図である。本実施形態の試薬添加装置31において、試薬基板32の試薬固定用表面32aには試薬層33が形成されている。試薬層33は、試薬分子35が担体34に分散されてなる。担体34としては、ポリアクリルアミド、架橋デキストラン、架橋セルロース、ポリアルギン酸などの高分子膜やゼラチン、アルブミン、フィブリノーゲン、フィブロイン等の架橋タンパク質膜、PMMAやPVAなどのプラスチック類を試薬分子35の種類に応じて選択して使用することができる。
【0051】
レーザー光の照射工程において、収束光15の焦点が試薬層33の近傍に位置するように照射する。収束光15の焦点近傍では衝撃波18が発生し、その衝撃波18により試薬層33が破壊されその一部が試薬基板32から分離されて試薬微粒子36として飛び散る。試薬微粒子36が飛び散る方向は、固定された状態の試薬層33によって規定される。すなわち、試薬微粒子36は細胞5aを含む円錐エリア19の方向に飛び散り、所望の細胞5aに試薬微粒子36が添加される。
【0052】
試薬微粒子36は、試薬層33の一部から形成されるので、担体34中に試薬分子35が包含されている構成である。したがって、試薬微粒子36が細胞5aに添加されることにより、試薬分子35が細胞に添加される。
【0053】
(第4の実施形態)
本実施形態の試薬添加方法は、第1の実施形態の試薬添加方法とは、試薬添加装置における試薬基板の構成のみが異なる。
【0054】
図5は、本実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子45が細胞5aに添加される様子を模式的に示す断面図である。本実施形態の試薬添加装置41において、試薬基板42の試薬固定用表面42aには試薬層43が形成され、さらにその上には試薬保護層44が形成されている。試薬層43は、添加用の試薬を含有する。試薬保護層44は、試薬層43の培地への溶出を防ぎ、また試薬層43の試薬基板42への固定を補助する。したがって、本実施形態は、培地に溶出しやすい試薬を用いる場合に特に有用である。
【0055】
レーザー光の照射工程において、収束光15の焦点が試薬層43の近傍に位置するように照射する。収束光15の焦点近傍では衝撃波18が発生し、その衝撃波18により試薬層43および試薬保護層44が破壊されその一部が試薬基板42から分離されて試薬微粒子45として飛び散る。試薬微粒子45が飛び散る方向は、固定された状態の試薬層43および試薬保護層44によって規定される。すなわち、試薬微粒子45は細胞5aを含む円錐エリア19の方向に飛び散り、所望の細胞5aに試薬微粒子45が添加される。
【0056】
試薬微粒子45は、試薬保護層44のみからなるものもあるが、試薬含有層43を含む場合、これが再表面に露出することになるので、試薬43によりもたらされる細胞または細胞のネットワークに与える影響を観察することができる。
【0057】
(第5の実施形態)
本実施形態の試薬添加方法は、第1の実施形態の試薬添加方法とは、試薬添加装置における試薬基板の構成のみが異なる。
【0058】
図6は、本実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子55が細胞5aに添加される様子を模式的に示す断面図である。本実施形態の試薬添加装置51において、試薬基板52の試薬固定用表面52aには試薬を含有する複数の粒子状の試薬含有体53が固定されている。
【0059】
試薬含有体53は、粒子状の担体54の中に試薬微粒子55が包摂されている。担体としては、ミセルやエマルジョン状のものや、高分子からなる固体を用いることができる。
レーザー光の照射工程において、収束光15の焦点が試薬含有体53の近傍に位置するように照射する。収束光15の焦点近傍では衝撃波18が発生し、その衝撃波18により試薬含有体53が破壊されその内部から試薬微粒子55が流出する。または、試薬含有体53が破壊され、試薬微粒子55と担体54とからなる微粒子が形成されて流出する。流出する試薬微粒子55には、衝撃波18により細胞方向への力が付与され、かかる力により試薬微粒子55が所望の細胞5aに添加される。担体54がミセルやエマルジョンの場合はレーザー光の照射によりミセルやエマルジョンが破壊され内包されている試薬55が流出する。
【0060】
(第6の実施形態)
本実施形態の試薬添加方法は、第5の実施形態の試薬添加方法とは、試薬添加装置において試薬基板を有さず試薬含有体が培地に浮遊している点が異なる。
【0061】
図7は、本実施形態の試薬添加方法により試薬62が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。本実施形態の試薬添加装置61において、試薬含有体64は、第5の試薬含有体53と同様の構成であり、粒子状の担体63の中に試薬微粒子62が内包されている。試薬含有体64は基板には固定されておらず、培地4に添加され、培地4中に浮遊している。
【0062】
レーザー光の照射工程において、レーザー光の照射で所定領域(レーザーピンセット)65a内に試薬含有体64をトラップする効果を生じさせる。その後、生じたレーザーピンセット65aをレーザーの照射位置を矢印66の方向にしたがって移動させて、これに伴い試薬含有体64を移動させる。そして、所望の細胞5aの上にレーザーピンセット65bにより試薬含有体64が保持されている状態とする。この状態から、パルスレーザー光15を照射して試薬含有体64を破壊する。なお、レーザーピンセットは、連続波レーザー光を照射することにより生じさせることができる。
図7ではレーザーピンセット65a、65bとパルスレーザー光15を独立に記載しているが、レーザーピンセットとパルスレーザーを同軸に配置することで、確実に細胞5aに対して試薬含有体64を搬送して破壊することができる。上記例においては、試薬62はレーザーピンセット65bの軸方向に拡散する。すなわち図7では上下方向に試薬62が飛び散るが、横方向にはレーザーピンセット65bの光圧力が働くので光軸方向に比べて拡散量を少なくすることができる。このようにして、試薬62を所望の細胞5aに添加することができる。なお、第1〜第5の実施形態においても、試薬含有体を破壊させるためのレーザー光(例えば、フェムト秒パルスレーザー光による)と、レーザーピンセット(例えば、連続波レーザー光による)とを組み合わせることで、試薬含有体を破壊させた後の試薬の横方向への拡散を防止することができる。
【0063】
(第7の実施形態)
本実施形態の試薬添加方法は、第1の実施形態の試薬添加方法とは、試薬添加装置において、試薬基板の構成のみが異なる。
【0064】
図8は、本実施形態の試薬添加方法により試薬75が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。本実施形態の試薬添加装置71において、試薬基板72として、複数の貫通孔73を有する基板を用いる。試薬基板72の貫通孔73内には、試薬75を含有する溶液74が充填されている。複数の貫通孔73を有する試薬基板72として、多孔質基板を用いることができる。多孔質基板の材質には、シリコンに陽極エッチングの技術で無数の穴をあけたいわゆるポーラスシリコンや酸化アルミニウムなどを使用することができる。貫通孔73に試薬75を含有する溶液74を充填した後、試薬基板72の両面を脂質膜76で覆うことが好ましい。このような構成とすることにより、貫通孔73内から溶液74がもれ出ることを防ぐことができる。
【0065】
貫通孔73への試薬75を含有する溶液74の充填および脂質膜76の作成方法の一例について説明する。まず試薬75を含む溶液74が入った容器に試薬基板72を浸漬し、減圧脱気した後に常圧に戻す。試薬溶液の表面にたとえばステアリン酸の単層を形成する。次に、表面にステアリン酸の単層を界面にはった液層から空気層にむかって試薬基板72を引き上げる。この一連の操作はラングミュアーの装置を用いれば容易に多孔質基板である試薬基板72の貫通孔73内に試薬が入り貫通孔73の出口がステアリン酸の膜で覆われた基板72を作成することができる。必要に応じて試薬基板72を液界面から出し入れすることで多層のステアリン酸膜で貫通孔73をふさぐこともできる。この方法は、本実施形態のように貫通孔73を持つ基板72でも、また、後述する第8の実施形態のように凹部を有する基板にも適用することができる。
【0066】
レーザー光照射工程において、貫通孔73の一つにレーザー光の収束光15を照射すると貫通孔73の内部の試薬75を含有する溶液74が脂質膜75を破り、試薬75が放出される。放出された試薬75は対象の細胞5aに添加される。レーザー光の収束光15の焦点が、貫通光73の試薬基板72の培地とは反対側の面と一致するようにすることで、試薬75が効率よく対象の細胞5aの方向に放出される。
【0067】
(第8の実施形態)
本実施形態の試薬添加方法は、第7の実施形態の試薬添加方法とは、試薬添加装置において試薬基板の構成のみが異なる。
【0068】
図9は、本実施形態の試薬添加方法により試薬85が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。本実施形態の試薬添加装置81において、試薬基板82として、複数の凹部83を有する基板を用いる。複数の凹部83を有する基板82は、基板をエッチング加工することにより製造することができる。凹部112内には試薬85を含有する溶液84が充填されている。凹部83への溶液84の充填方法および凹部の開口端への脂質膜の形成は、上述の第7の実施形態の方法にしたがう。
レーザー光照射工程において、凹部83の底面近傍に集光するように収束光15を照射すると、凹部83内の試薬85を含有する溶液84が脂質膜を破り、試薬85が放出される。放出された試薬85は対象の細胞5aに添加される。
【0069】
(第9の実施形態)
本実施形態の試薬添加方法は、第7の実施形態の試薬添加方法とは、試薬添加装置において試薬基板の構成のみが異なる。
図10は、本実施形態の試薬添加方法により試薬96が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。本実施形態の試薬添加装置91において、試薬基板92として、複数の凸部93を有する基板を用いる。複数の凸部93を有する基板92は、基板をエッチング加工することにより製造することができる。凸部93の先端部には、試薬層94が形成されている。そして、試薬層94さらには凸部93の全体を覆うように脂質膜95が形成されている。このような構成とすることにより、凸部93の先端部に試薬層94が固定され、培地内に試薬がもれ出ることを防ぐことができる。
【0070】
例えば、試薬基板92は、平面状ガラス基板(2×10×0.5 mm(t))を用いて形成することができ、この表面に多数の凸部93を形成する。凸部93の形成方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、ガラス基板上にマスクを作成し、ガラス基板をエッチングして作成する。凸部93は、例えば、直径100μm、高さは100μmの円柱形状を有し、間隔は500μmでガラス基板上に規則正しく配列されている構成とすることができる。
【0071】
試薬層153の形成には、あらかじめアセチルコリンあるいはエピネフリンを1mMの濃度で含むポリエチレングリコールをスピンコーターで他のガラス基板上(25×25 mm)にあらかじめ塗布した基板を準備する。ここでは、200rpmで30秒間の条件で基板上に塗布する。試薬を含むポリエチレングリコールが乾く前に上記凸部93を有するガラス基板の凸部93の形成面を押し付けて、凸部93の先端部に試薬付ポリエチレングリコールを転写する。乾燥後、ステアリン酸膜95を作成し、純水でリンスして、試薬基板92を得る。
【0072】
レーザー照射工程においては、細胞基板2の上に試薬基板92を設置し、標的細胞塊の近傍に凸部93の先端部が位置するように試薬基板92を移動させ、フェムト秒レーザー光を凸部93に直接又はその近傍の培養液中に焦点を合わせて照射すると試薬層94が崩壊し、試薬微粒子96が標的細胞に添加される。
【0073】
本実施形態の試薬添加方法により、エプネフリン、またはアセチルコリンを添加すると、後述する実施例2と同様にエピネフリンでは拍動が増強され、アセチルコリンでは5〜6分間心拍が停止した後、拍動が再開する現象が確認できる。
【0074】
本実施形態の試薬添加方法では、試薬基板の凸部93間に隙間があるので、細胞基板2の上に試薬基板92を設置したままで長時間培養を続けても、細胞培養中の細胞に対する酸素や養分供給や細胞の代謝産物の拡散が容易になり、細胞育成がより確実になるメリットがある。実際本実施形態の試薬添加装置91では、細胞基板2と試薬基板92とを設置したままで、周辺の培地を交換するだけで、2週間以上の連続培養が可能である。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
本実施例では、第1の実施形態に記載の試薬添加方法により、細胞基板上でネットワークを構築している細胞に試薬を添加した後、細胞の活動に由来する信号を取得する細胞信号取得方法を行う。
【0076】
細胞基板上の細胞の培養を続けながら、試薬を添加した細胞5aと隣接細胞5b、遠隔細胞5cから得られる信号を取得する。信号取得には、公知の方法を用いることができる。本実施例では、特開2006−198610号公報に記載の色素センサーアレイからなる細胞解析用センサーアレイ基板を用いる。図11は、本実施例の細胞信号取得方法により細胞5a、5b、5cの活動に由来する信号を取得する様子を模式的に示す断面図である。
【0077】
細胞解析用センサーアレイ100は、厚み0.11mmの石英基板101の表面101aに、複数の種類の検出用化合物を固定した64種の検出用粒子をランダムに配置した構造となっている。図11では、4種の検出用粒子102a、102b、102c、102dを模式的に示している。検出用粒子102a、102b、102c、102dの表面は低分子物質透過性のフルオロカーボン系の分子膜103で覆われている。細胞の発する低分子代謝産物のうち、低沸点の化合物は分子膜103を透過して検出用粒子102a、102b、102c、102dまで到達する。分子膜103を透過した低分子代謝産物は粒子に固定されている検出用化合物と相互作用する。検出用化合物には、特定の低分子代謝産物と相互作用すると、その光学的なスペクトルが変化するものを用いる。検出用化合物としては、例えば64種の金属配位ポルフィリン誘導体を用いることができる。細胞解析用センサーアレイ100の製造方法は、特開2006−198610号公報に記載の方法による。本実施例で用いる金属配位ポルフィリン色素の中には、Sn(TPP)Cl2、Co(TPP)Cl、Cr(TPP)Cl、Mn(TPP)Cl、Co(TPP)、Cu(TPP)、Ru(TPP)、Zn(TPP)、Ag(TPP)、Fe(TFPP)Clなどが含まれる。
【0078】
本実施例では、第1の実施形態の方法により、試薬を添加した後に試薬基板を取り外し、スペーサ3上に細胞解析用センサーアレイ100を装着する。試薬を添加する細胞5aとその隣接細胞5b、遠隔細胞5cが固定された生体試料固定用基板1に対しておおよそ10μmのギャップをおいて細胞解析用センサーアレイ100を装着する。ギャップ403の部分には培地が充填されている。培地は必要に応じて交換することができる。連続して、すべての検出用粒子の380〜900nmにおけるスペクトルを30分間間隔で測定する。
【0079】
図12A、図12Bは、試薬Aの添加前後における、各検出用粒子のスペクトルの波長ピークでの光信号変化量を示す。ここでスペクトルとは、吸収スペクトル、蛍光スペクトル、多光子吸収に由来する遷移スペクトルをあらわし、光信号変化量とは、これらスペクトルの極大波長あるいはその近傍の信号変化量を示す。図12Aは、試薬を添加した細胞5a近傍の粒子から得られる典型的な光信号変化を、図12Bは、遠隔細胞5c近傍の粒子から得られる光信号変化のグラフとして示す。試薬を添加した細胞5aから得られる光信号曲線200aと遠隔細胞5cから得られる光信号曲線200c、同じく光信号曲線201aと201c、光信号曲線202aと202c、光信号曲線203aと203cは、それぞれ同一種類の金属配位ポルフィリン誘導体を有する検出用粒子からの光信号変化である。すなわち、図12Aの曲線200aと図12Bの曲線200cはそれぞれ試薬Aを添加した細胞5aの近傍と遠隔細胞5cの近傍における第1の特定金属配位ポルフィリン誘導体を有する粒子の信号の経時変化、曲線201aと曲線201cはそれぞれ第2の特定金属配位ポルフィリン誘導体を有する検出用粒子の信号変化を、曲線202aと曲線202cは第3の特定金属配位ポルフィリン誘導体を有する粒子の信号変化を表し、T1は試薬Aを添加した時刻である。
【0080】
試薬を時刻T1に細胞5aに添加すると、試薬を添加した細胞5aと遠隔細胞5cで光信号強度が変化する曲線200a、200c(検出用粒子102a由来)および曲線202a、202c(検出用粒子102b由来)のようなケースと、光信号強度が変化しない曲線203a、203c(検出用粒子102c由来)、試薬添加に関係なくゆるやかに光信号強度が変化する曲線201aや201c(検出用粒子102d由来)が得られる。
【0081】
検出用粒子102a由来の曲線200a、200cと、粒子102b由来の曲線202a、202cは、試薬を添加した細胞5aで信号変化が検出された後、時間遅れを持って細胞5cで信号変化が見られる。検出用粒子102c由来の曲線203a、203cではいずれの細胞でも変化は揺らぎレベルである。検出用粒子102d由来の曲線201a、201cでは細胞5aと遠隔細胞5cで差が見られない。
【0082】
検出用粒子102a由来の信号曲線200a、200cからは、細胞5aに試薬添加後に細胞5aと遠隔細胞5cで時間差をもって同種の代謝活動が行われていることが予想される。
【0083】
同様にして試薬B、試薬Cを添加した場合に検出される信号の観察を行うが、試薬Bと試薬Cではいずれの細胞においても差吸光度の変化は試薬Aの時に比べて小さい。
【0084】
本発明によると、組織のように複数の細胞から成り立っている系においても、個別の細胞における特定分子群の量的変動の数値的評価が可能となり、組織内の、分子群の経時的マッピングが可能となる。したがって、組織における細胞の役割分担やコミュニケーションが物質レベルで数値化できるようになる。
【0085】
(実施例2)
本実施例では、マウスエンブリオカルシノーマ由来のP19CL6を1%DMSO を添加した10%FBSを含むα−MEM培地で2週間37℃、5%二酸化炭素雰囲気で培養して、心筋拍動細胞に分化誘導した細胞に対して、アセチルコリンあるいはエピネフリンを添加する方法とその結果について述べる。
【0086】
図5に示す装置を用い、第4の実施形態に示す試薬添加方法で試薬を添加する。試薬基板42はガラス基板42の表面42aにアセチルコリンあるいはエピネフリンを所定の濃度で含むポリエチレングリコールからなる試薬層43とアセチルコリンあるいはエピネフリンが培地中に溶け出すのを防止する試薬保護層44からなる。試薬層43のサイズは2×10×0.5mm(t)である。アセチルコリンあるいはエピネフリンを1mMの濃度で含むポリエチレングリコールをスピンコーターでガラス基板42の表面42a上に塗布して試薬層43を形成する。スピンコーターの条件は、ガラス基板1cm2あたり200μlの試薬入りポリエチレングリコールを添加し、20℃で、20rpmで30秒間塗布し、つづいて2000rpmで60秒間行う。次に、ラングミュアーの装置の水槽に水界面にステアリン酸をたらしてほぼ細密状態に分子膜を形成し、その中を水中から空気中に上記ポリエチレングリコールを塗布したガラス基板をくぐらして試薬保護層44を形成する。その後純水でリンスして、試薬層43および試薬保護層44が形成された試薬基板42を得る。
【0087】
細胞基板2としては、ここでは底面がガラスでできた市販のガラスボトムディッシュを用いる。細胞基板2の細胞固定用表面2aにP19CL6細胞を播種し、1%DMSO を添加した10%FBSを含むα−MEM培地で培養する。2日に一回の頻度で培地を交換する。1週間目から拍動を開始する細胞塊が現れるので、そのまま2日に一回の頻度で培地を交換して培養を続ける。培養開始から2週間後に、上記試薬基板42を試薬層43を下にして、培地が挟まるように細胞基板2の上にセットする。試薬基板42と細胞基板2の間は100μmとする。倒立形顕微鏡下で拍動中の細胞塊を探し、試薬を添加する位置を確認する。
フォーカスを試薬基板から5μm以内の培地に合わせてフェムト秒レーザー(チタンサファイアパルスレーザー:800 nm、150 fsパルス、1 mJ/パルス)の単パルスを照射する。パルス照射前後の心筋細胞の拍動状態を30Hzのフレームレートで画像を取得し、標的細胞塊の拍動状況をフレーム毎の輝度差分を測定することで解析する。その結果を図13と図14に示す。図13は試薬層43にアセチルコリンを含む試薬基板42を用いた結果であり、図14は試薬層43にエピネフリンを含む試薬基板42を用いた結果である。それぞれの図において、横軸は時間、縦軸は輝度差分に相当する任意値である。アセチルコリンを添加する前はほぼ一定の間隔で拍動しているが、レーザー照射(T2)後一定時間を置いた後は拍動が停止し、約20秒後に拍動が再開することがわかる。拍動再開後はレーザー照射前に比べて拍動間隔のバラつきが大きくなることがわかる。エピネフリンを添加するケースでは、レーザー照射(T2)後に拍動数が上昇することがわかる。図15は試薬層43にエピネフリンもアセチルコリンも含まない試薬基板42を用いた例で、レーザー照射(T2)しても心筋拍動に変化が無いことがわかる。
【0088】
この結果は、レーザー照射により試薬基板の試薬層が崩壊し、標的細胞塊に試薬が到達することを示している。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の試薬添加方法は生命科学分野への応用に有用であり、細胞組織や多細胞系からなる細胞集団の特定細胞に対してのみアットリットルからフェムトリットルの試薬を添加することが可能となるため、薬物投与による遠隔の細胞が受ける影響の解析が可能となる。このため、本発明は生命現象解明や細胞を用いた薬物の影響を調べる上で有用であり、例えば創薬における毒性試験等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1の実施形態で用いる試薬添加装置の準備工程を模式的に示す図である。
【図2】第1の実施形態で用いる試薬添加装置の断面図である。
【図3】第2の実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。
【図4】第3の実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。
【図5】第4の実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。
【図6】第5の実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。
【図7】第6の実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。
【図8】第7の実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。
【図9】第8の実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。
【図10】第9の実施形態の試薬添加方法により試薬微粒子が細胞に添加される様子を模式的に示す断面図である。
【図11】実施例1の細胞信号取得方法により細胞5a、5b、5cの活動に由来する信号を取得する様子を模式的に示す断面図である。
【図12A】実施例1で試薬を添加した細胞近傍の検出用粒子から得られる光信号変化を示すグラフである。
【図12B】実施例1で試薬を添加した細胞の遠隔細胞近傍の検出用粒子から得られる光信号変化を示すグラフである。
【図13】実施例2でアセチルコリンを添加した細胞塊の活動状況を示すグラフである。
【図14】実施例2でエピネフリンを添加した細胞塊の活動状況を示すグラフである。
【図15】実施例2で添加薬にアセチルコリン、エピネフリンを含まない場合の細胞塊の活動状況を示すグラフである。
【符号の説明】
【0091】
1,21,31,41,51,61,71,81,91 試薬添加装置
2 細胞基板
2a 細胞固定用表面
3 スペーサ
4 培地保持部
5a,5b,5c 細胞
8 試薬基板
11 サファイアチタンパルスレーザー
12 ポラライザー
13 コリメータレンズ
14 対物レンズ
15 収束光
22 試薬層
23 試薬基板
24 試薬微粒子
32 試薬基板
33 試薬層
34 担体
35 試薬分子
42 試薬基板
43 試薬層
44 試薬保護層
52 試薬基板
53 試薬含有体
55 試薬微粒子
62 試薬
64 試薬含有体
72 試薬基板
73 貫通孔
75 試薬
76 脂質膜
82 試薬基板
85 試薬
92 試薬基板
93 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料固定用基板、前記生体試料固定用基板の生体試料固定用表面上に固定された生体試料、前記生体試料に接する液層、および試薬を含む試薬含有体を準備する工程(a)、
前記試薬含有体を破壊し、前記試薬を含む試薬微粒子を分離する工程(b)、
前記試薬微粒子に前記生体試料方向への力を付与し、前記試薬微粒子を前記生体試料に添加する工程(c)を有し、
前記工程(a)において、前記試薬含有体は前記液層内に含まれるように、または前記液層に接するように配置され、
前記工程(b)と前記工程(c)とは、前記試薬含有体にレーザー光を照射することによる、生体試料に試薬を添加する方法。
【請求項2】
前記工程(b)と前記工程(c)とは、前記レーザー光の照射により誘起される物理的な力により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザー光の照射により誘起される物理的な力が、集光光学系によるレーザー光の集光により誘起される力である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)において、前記試薬微粒子の表面に前記試薬が露出する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(a)において、前記試薬含有体を試薬固定用基板の試薬固定用表面に固定し、前記生体試料固定用基板と前記試薬固定用基板とを前記生体試料固定用表面と前記試薬固定用表面とが前記液層を介して対向するように配置する、請求項1乃至4いずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記生体試料が細胞であり、前記液層が培養液からなる、請求項1乃至5いずれかに記載の方法。
【請求項7】
生体試料固定用基板、液層、試薬が固定されている試薬固定用基板、レーザー照射手段、集光光学系を有し、
前記生体試料固定用基板、前記液層、前記試薬固定用基板がこの順で積層され、
前記集光光学系と、前記レーザー照射手段とが、前記レーザー照射手段から照射されたレーザー光が前記集光光学系を介して前記試薬固定用基板に固定されている前記試薬の近傍に照射されるように配置されている、試薬添加装置。
【請求項8】
生体試料固定用基板、液層、試薬が固定されている試薬固定用基板、レーザー照射手段、集光光学系を有する試料添加装置により、生体試料に試薬を添加する方法であって、
前記試料添加装置は、
前記生体試料固定用基板、前記液層、前記試薬固定用基板がこの順で積層され、
前記集光光学系と、前記レーザー照射手段とが、前記レーザー照射手段から照射されたレーザー光が前記集光光学系を介して前記試薬固定用基板に固定されている前記試薬の近傍に集光されるように配置され、
前記方法は、
前記生体試料固定用基板に生体試料を固定する工程(A)、
前記レーザー照射手段によりレーザー光を照射し、前記集光光学系を介して前記試薬の近傍に集光させる工程(B)を有し、
前記工程(B)により前記試薬が前記生体試料に添加される、生体試料に試薬を添加する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−278939(P2009−278939A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135869(P2008−135869)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年11月25日 BMB2007発行の「BMB2007(第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会 合同大会)講演要旨集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 成20年2月12日 インターネットアドレス「http://spiedigitallibrary.aip.Org/vsearch/servlet/VerityServlet?KEY=PSISDG&smode=strresults&sort=rel&maxdisp=25 & threshold=0&pjournals=PSISDG&possibel=kazunori+Okano &possiblelzone=article&SMODE=strsearch&OUTLOG=NO&deliveryType=spied&viewabs=PSISDG&key=DISPLAY&docID=1&page=0&chapter=0」に発表
【出願人】(508154531)
【Fターム(参考)】