試薬部の配置を改良した分析用具および分析方法
本発明は、血球を含んだ試料を移動させるための流路(5)と、流路(5)に試料を導入するための導入口(50)と、流路(5)の内部に配置された試薬部(51)と、試料中の分析対象成分の分析を行うために必要な情報を、電子授受量に相関させて得るための電子検出媒体(52)と、を備えた分析用具(1)に関する。試薬部(51)は、試料中の分析対象成分から取り出した電子を電子検出媒体(52)に供給するための電子伝達物質を含んでおり、かつ少なくとも一部が導入口(50)の近傍に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる分析対象成分を分析する技術、たとえば血液中のグルコース濃度を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
全血を試料とするグルコースセンサとしては、比色法あるいは電極法を採用したものがある(たとえば特許文献1,2参照)。いずれの方法を採用したグルコースセンサを用いる場合であっても、グルコースから取り出した電子を電子検出媒体(発色剤あるいは電極)に供給し、その電子供給量をグルコースセンサの外部から把握することにより、グルコース濃度を演算することができる。グルコースセンサは、通常、酸化還元酵素によってグルコースから電子を取り出し、その電子を、電子伝達物質を介して電子検出媒体に供給するように構成される。
【0003】
全血を用いてグルコース濃度を測定する場合、測定結果が血球濃度(ヘマトクリット)の影響を受け、高ヘマトクリットの全血ほど、測定結果が真値よりも低値となることが知られている。この原因の1つとして、血清(血漿)中に存在するグルコースからの電子の取り出しに比べて、血球中に存在するグルコースからの電子の取り出しのほうに時間がかかることが指摘されている。すなわち、血清(血漿)中のグルコースからは、酸化還元酵素によって即座に電子を取り出すことができる。これに対して、血球中のグルコースからは、血清(血漿)にグルコースを移行させた後でないと、電子を取り出すことができない。しかも、血球内から血清(血漿)へのグルコースの移行は、血球内外でのグルコース濃度の差に起因する単純拡散ではなく、血球膜のグルコース透過能力に依存する促進拡散である。すなわち、血球外へのグルコースの拡散速度は、ミカエリスメンテン式にしたがうものであって、限界値を有しており、血球内外のグルコース濃度の差が一定値以上となれば、血球外へのグルコースの拡散速度は一定値となる。そのため、全血内において、酸化還元酵素、電子伝達物質および電子検出媒体が共存する系では、血清(血漿)内でのグルコースから取り出された電子が即座に電子検出媒体に供給されるものの、その供給量に対応したグルコースを血球外に拡散させるには時間がかかる。その結果、もともと血球内に存在していたグルコースから取り出される電子は、もともと血清(血漿)内に存在していたグルコースに比べて、電子検出媒体に対して遅れて供給される。このような遅れは、血球濃度の高い全血において大きく現れる。したがって、血糖値が同じ全血であっても、試料の供給から一定時間経過後の段階では、血球濃度の高い全血では、血球濃度の低い全血に比べて、血球から血清(血漿)へのグルコースの移行割合が少ないという現象が起こりうる。
【0004】
近年においては、測定時間が短縮化の傾向にあり、そのために新たな酸化還元酵素および電子伝達物質が模索されている。このような状況下においては、血清(血漿)中に存在するグルコースは、より短時間で消費される。これに対して、血球内から血清(血漿)へのグルコースの拡散は、血球膜のグルコース透過能力に依存するものであるため、血球からのグルコースの移行速度については大きな変化はない。したがって、高ヘマトクリットの全血では、測定時間を短縮化すればするほど、当該測定時間内において血球内から血清(血漿)に移行させることができるグルコースの割合が少なくなり、低値化の問題がより顕著に現れる。
【0005】
また、酸化還元酵素および電子伝達物質は、たとえば血液に溶解する固相の試薬部としてグルコースセンサにおいて保持される(たとえば特許文献3参照)。そのため、測定時間を短縮化する場合には、試薬部の溶解性が測定精度に与える影響が大きくなる。すなわち、試薬部の溶解性が悪ければ、血液によって試薬部を溶解させたときに生じる液相反応系において、酸化還元酵素や電子伝達物質が均一に分散せず、測定結果にバラツキを生じさせる。このような測定結果のバラツキは、血液中のグルコース濃度が小さい場合により顕著に現れる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−175699号公報
【特許文献2】特公平8−10208号公報
【特許文献3】特開2004−101519号公報
【発明の開示】
【0007】
本発明は、血球を含んだ試料の分析を行う場合(たとえば血液中のグルコース濃度を測定する場合)に、血球濃度の影響を抑制し、とくに高血球濃度の試料における低値化を抑制することを目的としている。
【0008】
本発明はさらに、測定時間を短縮化する場合に生じる測定結果のバラツキを抑制し、とくに低濃度域での測定再現性を向上させることを目的としている。
【0009】
本発明の第1の側面においては、血球を含んだ試料(たとえば血液)を移動させるための流路と、上記流路に試料を導入するための導入口と、上記流路の内部に配置された試薬部と、試料中の対象成分(たとえばグルコース)の分析を行うために必要な情報を、電子授受量に相関させて得るための電子検出媒体と、を備えた分析用具であって、上記試薬部は、試料中の分析対象成分から取り出した電子を上記電子検出媒体に供給するための電子伝達物質を含んでおり、かつ少なくとも一部が上記導入口の近傍に配置されている、試薬部の配置を改良した分析用具が提供される。
【0010】
試薬部は、たとえば電子検出媒体とは分離された状態で、電子検出媒体よりも試料の流れ方向における上流側に配置される。この場合の試薬部は、流路に試料を供給したときに溶解する固体状に形成するのが好ましい。
【0011】
試薬部と電子検出媒体との間の距離は、予め設定した検出範囲の上限量の分析対象成分が試料に含まれる場合において、上記上限量の分析対象成分から電子伝達物質への電子移動が、電子伝達物質が電子検出媒体に対して電子を供給しうる状態となるまでの間に、実質的に完了する長さに設定するのが好ましい。
【0012】
試薬部における電子伝達物質の含有量は、予め設定した検出範囲の上限量の分析対象成分が試料に含まれる場合において、上記上限量のグルコースから取り出せる全ての電子を、電子伝達物質において受け取ることができる量に設定するのが好ましい。
【0013】
電子検出媒体は、発色剤を含んだものとして構成することができる。この場合、電子検出媒体は、試料に対して難溶性の多孔質体に、発色剤を保持させた構成とするのが好ましい。多孔質体としては、典型的には、ポリアクリルアミドあるいはポリビニルアルコールなどのゲル状物を挙げることができる。一方、発色剤としては、たとえばMTT(3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide)、INT(2-(4-lodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-phenyl-2H-tetrazolium chloride) 、WST−4(2-(4- lodophenyl) -3-(2,4-dinitrophenyl)-5-(2,4- disulfophenyl)-2H-tetrazolium,monosodium salt)、および4AA(4-Aminoantipyrine)が挙げられる。
【0014】
電子検出媒体は、導体として構成することもできる。導体としては、たとえば流路に試料が供給されたときに、電子伝達物質に電圧を印加するために利用されるものが挙げられる。
【0015】
試薬部は、たとえば試料中の分析対象成分から電子を取り出して電子伝達物質に電子を供給するための酸化還元酵素を含んだものとして構成される。酸化還元酵素は、試薬部とは分離した追加の試薬部として分析用具に保持させてもよい。この場合、追加の試薬部は、流路の内部における試料の流れ方向において、試薬部と電子検出媒体との間に配置するのが好ましい。追加の試薬部は、たとえば流路に試料を供給したときに溶解する固体状に形成される。
【0016】
本発明の第2の側面においては、血球を含んだ試料を移動させるための流路と、上記流路に試料を導入するための導入口と、試料中の分析対象成分の分析を行うために必要な情報を、電子授受量に相関させて得るためのものであり、かつ試料に対して難溶性の多孔質体に発色剤を保持させた構成の電子検出媒体と、試料中の分析対象成分から取り出した電子を上記電子検出媒体に供給するための電子伝達物質を含み、かつ上記流路に試料を供給したときに溶解するように構成された電子伝達物質層と、試料中の分析対象成分から電子を取り出して上記電子伝達物質に電子を供給するための酸化還元酵素を含み、かつ上記流路に試料を供給したときに溶解するように構成された酸化還元酵素層と、を備えた分析用具であって、上記流路において、上記電子伝達物質層、上記酸化還元酵素層および上記電子検出媒体がこの順序で、試料の流れ方向の上流側から順番に並んで配置されている、分析用具が提供される。
【0017】
試薬部(電子伝達物質層)は、たとえば追加の試薬部(酸化還元酵素層)よりも、平面視面積が大きく、試料の流れ方向の長さが大きく、あるいは厚みが小さく(たとえば酸化還元酵素層の厚みの15〜80%)とされる。試薬部(電子伝達物質層)は、追加の試薬部(酸化還元酵素層)における導入口側の縁から導入口までの距離における50〜90%の長さ範囲を占めるように形成してもよい。試薬部(電子伝達物質層)はまた、流路における電子検出媒体の平面視面積の1.5〜10倍の平面視面積を有するものとすることもできる。
【0018】
本発明における電子伝達物質としては、Ru錯体を用いるのが好ましい。Ru錯体としては、[Ru(NH3)5X]n+として表現されるものを使用するのが好ましい。ここで、上記化学式において、Xは、たとえばNH3、ハロゲンイオン、CN、ピリジン、ニコチンアミド、あるいはH2Oであり、n+は、Xの種類により決定される酸化型Ru(III)錯体の価数である。
【0019】
本発明における酸化還元酵素としては、たとえばグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を使用することができる。GDHとしては、PQQGDH、αGDH、あるいはCyGDHを用いるのが好ましい。
【0020】
ここで、PQQGDHとは、ピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするものである。一方、αGDH およびCyGDHは、国際公開第WO02/36779号パンフレットに開示されているものをさしている。すなわち、αGDHおよびCyGDHは、ブルクホルデリア属に属する微生物に由来のグルコース脱水素酵素(GDH)をさしており、形質転換体に産出させたものも含まれる。
【0021】
より具体的には、αGDHは、FADを補欠因子としてもち、かつグルコース脱水素活性を有するサブユニットとして、還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約60kDaであるGDH活性タンパク質(αサブユニット)を含んだものである。一方、CyGDHは、αサブユニットと、還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約43kDaである電子伝達タンパク質(チトクロムC)と、をサブユニットとして含むものである。αGDHやCyGDHとしては、αサブユニットやチトクロムC以外のサブユニットをさらに有するものを使用することもできる。
【0022】
CyGDHは、たとえばブルクホルデリア・セパシアに属する微生物が菌体外に分泌した酵素を精製し、あるいは当該菌体の菌体内酵素を精製することにより得ることができる。一方、αGDHは、たとえばブルクホルデリア・セパシアに属する微生物から採取したαGDHをコードする遺伝子が移入された形質転換体を形成し、この形質転換体から外部に分泌された酵素を精製し、あるいは当該形質転換体の菌体内酵素を精製することにより得ることができる。
【0023】
ブルクホルデリア・セパシアに属する微生物としては、たとえばブルクホルデリア・セパシアKS1株を使用することができる。このKS1株は、平成12年9月25日に独立特許法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に微生物受託番号第FERM BP−7306として寄託されている。
【0024】
本発明のグルコースセンサは、流路において毛細管力が生じるように構成することもできる。
【0025】
本発明の第3の側面においては、血球を含んだ試料が移動した状態において、上記試料に含まれる分析対象成分から取り出した電子を電子伝達物質に供給し、上記試料に含まれる全ての分析対象成分から上記電子伝達物質への電子移動を、実質的に完了する過程と、上記試料の移動が停止した状態において、上記電子伝達物質と電子検出媒体との間の電子授受反応を行う過程と、上記電子検出媒体を介して得られる情報に基づいて、分析対象成分の分析に必要な演算を行う過程と、を含んでいる、分析方法が提供される。
【0026】
電子検出媒体は、本発明の第1の側面と同様に、たとえば発色剤を含んだものとして、あるいは導体として構成される。
【0027】
ここで、本発明において血球を含んだ試料とは、少なくとも全血、および全血の希釈液などの調整液を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るグルコースセンサの全体斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示したグルコースセンサの分解斜視図である。
【図4】図1に示したグルコースセンサの作用を説明するための図2に相当する断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るグルコースセンサの全体斜視図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図5に示したグルコースセンサの分解斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るグルコースセンサの全体斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】図8に示したグルコースセンサの分解斜視図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係るグルコースセンサの全体斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿う断面図である。
【図13】図11に示したグルコースセンサの分解斜視図である。
【図14】実施例1〜3において使用したグルコースセンサの基本構成を説明するための斜視図である。
【図15】実施例11〜3において使用したグルコースセンサの試薬部の構成を説明するための透明カバーを省略して示した平面図である。
【図16A】実施例1において、グルコースセンサ(1)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図16B】実施例1において、グルコースセンサ(2)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図16C】実施例1において、グルコースセンサ(3)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図17】Hctが42%のときを基準とした場合のバイアスとして、Hctの影響を示したグラフである。
【図18A】実施例2において、グルコースセンサ(1)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図18B】実施例2において、グルコースセンサ(2)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図18C】実施例2において、グルコースセンサ(3)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図19】実施例4において使用した本案グルコースセンサの試薬部の構成を説明するための透明カバーを省略して示した平面図である。
【図20A】実施例4において、本案グルコースセンサを使用して波長660nmで吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図20B】実施例4において、本案グルコースセンサを使用して波長940nmで吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図20C】実施例4において本案グルコースセンサを使用したときに、波長660nmにおいて吸光度を測定したときの結果から波長940nmにおいて吸光度を測定したときの結果を差分として表したタイムコースである。
【図21A】実施例4において、参照グルコースセンサを使用して波長660nmで吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図21B】実施例4において、参照グルコースセンサを使用して波長940nmで吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図21C】実施例4において参照グルコースセンサを使用したときに、波長660nmにおいて吸光度を測定したときの結果から波長940nmにおいて吸光度を測定したときの結果を差分として表したタイムコースである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の第1〜第4の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0030】
まず、本発明の第1の実施の形態について、図1〜図3を参照しつつ説明する。
【0031】
図1〜図3に示したグルコースセンサ1は、使い捨てとして構成されたものであり、比色により血液中のグルコース濃度を測定するように構成されたものである。このグルコースセンサ1は、長矩形の基板2に対して、スペーサ3を介してカバー4を接合した形態を有しており、各要素2〜4により、基板2の長手方向に延びるキャピラリ5が規定されている。キャピラリ5は、毛細管力により血液を移動させるとともに、反応場を提供するためのものである。このキャピラリ5は、開口50を介して外部と連通している。開口50は、キャピラリ5の内部に血液を導入するためのものである。
【0032】
基板2は、PET、PMMA、ビニロンなどにより透明に形成されている。基板2には、キャピラリ5の内部に収容された状態で第1および第2試薬部51,52が設けられている。
【0033】
第1試薬部51は、第2試薬部52よりも血液の流れ方向の上流に位置するように、開口50の近傍に設けられている。この第1試薬部51は、たとえば酸化還元酵素および電子伝達物質を含んでおり、血液に対して溶解しやすい固体状に形成されている。このため、キャピラリ5に血液を導入した場合には、キャピラリ5の内部には、グルコース、酸化還元酵素および電子伝達物質を含む液相反応系が構築される。
【0034】
酸化還元酵素としては、たとえばグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を用いることができ、典型的にはPQQGDH、αGDHあるいはCyGDHが使用される。
【0035】
電子伝達物質としては、たとえば Ru錯体やOs錯体などの金属錯体を用いることができる。Ru錯体としては、[Ru(NH3)6]Cl3を用いるのが好ましい。電子伝達物質としては、PMS(5-methylphenazinium methylsulfate)の他、チトクロムやNAD-1を使用することもできる。ここで、電子伝達物質の含有量は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、上限量のグルコースから取り出せる全ての電子を、電子伝達物質において受け取ることができる量として設定されている。たとえば、測定範囲の上限量が600mg/dL(33mM)であり、グルコースと電子伝達物質が化学量論的に1:2の割合で反応する場合には、電子伝達物質の含有量は、キャピラリ5が血液によって満たされたときの濃度が66mM以上となるように設定される。
【0036】
第2試薬部52は、発色剤を含んでおり、血液に対して難溶性の固層として形成されている。この第2試薬部52は、たとえば基板2に対して固定されたゲル状担体に対して、発色剤を担持させた構成とされている。この構成では、発色剤を血液に分散させることなく、第2試薬部52の内部に電子伝達物質を拡散させ、第2試薬部52において、発色剤に対して電子伝達物質からの電子を供給することができる。
【0037】
ゲル状担体としては、ポリアクリルアミドあるいはポリビニルアルコールを使用することができる。一方、発色剤としては、公知の種々のものを用いることができるが、電子を受け取って発色したときの吸収波長が、血液の吸収波長からずれたものを用いるのが好ましい。発色剤としては、たとえばMTT、INT、WST−4、および4AAを用いることができる。
【0038】
ここで、第1試薬部51と第2試薬部52との中心間距離D1は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、血液が第2試薬部52に到達するまで(電子伝達物質が発色剤に電子を供給することが可能となるまで)の間に、上限量のグルコースから電子伝達物質への電子移動が実質的に完了する長さに設定されている。この中心間距離D1は、酸化還元酵素がグルコースから電子を取り出す速度(触媒能力)、電子伝達物質がグルコースから電子を受け取る速度(電子伝達速度)、およびキャピラリ5における血液の移動速度などに応じて適宜設定される。たとえば、キャピラリ5を血液により満たすのに要する時間が2秒であり、酸化還元酵素としてPQQGDHを用い、電子伝達物質として[Ru(NH3)6]Cl3を用いる場合には、中心間距離D1は、たとえば0.5〜1.0mmの範囲に設定される。
【0039】
スペーサ3は、基板2とカバー4の間の距離、すなわちキャピラリ5の高さ寸法を規定するためのものである。このスペーサ3は、キャピラリ5の幅寸法を規定するためのスリット30を有している。
【0040】
カバー4は、全体が透明に形成されている。このカバー4は、基板2と同様な材料により形成することができる。カバー4には、貫通孔40が形成されている。貫通孔40は、キャピラリ5の内部の気体を外部に排出するためのものであり、キャピラリ5の内部に連通している。
【0041】
グルコースセンサ1では、開口50を介してキャピラリ5に血液を供給した場合には、図4A〜図4Cに示したように、キャピラリ5において生じる毛細管力により、血液がキャピラリ5の内部を進行する。血液の進行過程においては、図4Aおよび図4Bに示したように、血液により第1試薬部51が溶解させられる。これにより、第1試薬部51に含まれる酸化還元酵素および電子伝達物質が血液中に分散し、これらが血液とともに貫通孔40ひいては第2試薬部52に向けて移動する。このとき、酸化還元酵素によって血清(血漿)のグルコースから電子が取り出され、グルコースがグルコノラクトンとされ、血清(血漿)におけるグルコース濃度が減少する。グルコースから取り出された電子は、酸化還元酵素の作用によって電子伝達物質に供給される。一方、血清(血漿)におけるグルコース濃度の減少に伴い、血球中のグルコースが血清(血漿)中に移行する。血球外に移行したグルコースからは、先に説明したのと同様にして電子が取り出され、電子伝達物質に供給される。
【0042】
図4Cに示したように、血液の進行は、血液が貫通孔40に到達したときに停止する。このとき、血液が第2試薬部52に浸透する。キャピラリ5においては、血液とともに電子伝達物質も移動させられるため、第2試薬部52への血液の浸透に伴い、第2試薬部52の内部に電子伝達物質が拡散する。このため、第2試薬部52においては、発色剤に対して電子伝達物質から電子が供給されて発色剤が発色し、第2試薬部52が着色される。第2試薬部52の着色の程度は、血液の供給開始から一定時間経過後において、たとえば第2試薬部52に対してカバー4を介して光を照射し、そのときに第2試薬部52および基板2を透過した光、あるいは反射した光を受光することにより把握される。照射光の波長は、発色剤の発現色における吸収の大きな波長の光のものが採用される。最終的なグルコース濃度は、たとえば照射光の強度と、透過光の強度と、の比に基づいて演算される。
【0043】
グルコースセンサ1では、第1試薬部51が第2試薬部52に比べて、血液の流れ方向の上流側に設けられている。そのため、キャピラリ5に対する血液の導入と同時に電子伝達物質をグルコースと反応させることができる。しかも、第1試薬部51を開口50の近傍に配置することにより、血液が第2試薬部52に到達するまでの間において、電子伝達物質とグルコースとを反応させるための時間を長く確保することができる。その結果、電子伝達物質が第2試薬部52に到達する前(電子伝達物質が発色剤と反応する前)に電子伝達物質を積極的にグルコースと反応させることができる。とくに、グルコースセンサ1では、電子伝達物質の含有量が、測定濃度範囲の上限量のグルコースの全てから電子を、電子伝達物質において受け取ることができる量として設定され、中心間距離D1が、血液が第2試薬部52に到達するまでの間に、グルコースの全てから電子伝達物質への電子移動が実質的に完了するように設定されている。したがって、グルコースセンサ1では、電子伝達物質が発色剤と反応を開始するまでの間に、血球中のグルコースを確実に血清(血漿)中に移行させることができる。その結果、血液における血球濃度の影響を抑制し、精度良くグルコース濃度を測定できるようになる。
【0044】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るグルコースセンサについて、図5〜図7を参照して説明する。ただし、図5〜図7においては、先に説明したグルコースセンサ1(図1ないし図3参照)と同様な要素については同一の符号を付してあり、重複説明は省略する。
【0045】
図5〜図7に示したグルコースセンサ1′は、第1ないし第3試薬部51′,52′,53′を備えている点において、先に説明したグルコースセンサ1(図1〜図3参照)とは異なっている。
【0046】
第1試薬部51′は、電子伝達物質を含んだものであり、キャピラリ5に試料が供給されたときに溶解するように構成されている。この第1試薬部51′は、開口50の近傍に設けられている。第1試薬部51′に含ませる電子伝達物質としては、先に説明したグルコースセンサ1(図1〜図3参照)と同様なものを例示することができる。
【0047】
第2試薬部52′は、先に説明したグルコースセンサ1の第2試薬部52(図1〜図3参照)と同様な構成とされている。すなわち、第2試薬部52′は、たとえば電子検出媒体である発色剤を、血液に対して難溶性のゲル状担体に担持させた構成とされている。
【0048】
第3試薬部53′は、酸化還元酵素を含んだものであり、キャピラリ5に試料が供給されたときに溶解するように構成されている。この第3試薬部53′は、第1試薬部51′と第2試薬部52′との間に設けられている。第3試薬部53′に含ませる酸化還元酵素としては、先に説明したグルコースセンサ1(図1〜図3参照)と同様なものを例示することができる。
【0049】
ここで、第1試薬部51′と第2試薬部52′との中心間距離D1は、グルコースセンサ1(図1〜図3参照)と同様に設定されている。すなわち、中心間距離D1は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、血液が第2試薬部52′に到達するまで(電子伝達物質が発色剤に電子を供給することが可能となるまで)の間に、上限量のグルコースから電子伝達物質への電子移動が実質的に完了する長さに設定されている。一方、第1試薬部51′と第3試薬部53′との中心間距離D2は、第1試薬部51′に含まれる電子伝達物質の存在によって血球中から血球外に取り出し可能なグルコースの最大量の殆ど全ての量のグルコースを取り出せる距離に設定される。第2試薬部52′と第3試薬部53′との中心間距離D3は、第3試薬部53′が十分に溶解し、酸化還元酵素を血液中に十分に分散させることができる距離に設定される。
【0050】
このようなグルコースセンサ1′においては、キャピラリ5に血液が供給されたときに、まず第1試薬部51′が溶解して血液中に電子伝達物質が分散する。このとき、血球の周りに無機物たる電子伝達物質が存在しているために、血球中から血球外へのグルコースの拡散が促進される。次いで、血液が第3試薬部53′に到達したときに第3試薬部53′が溶解して血液中に酸化還元酵素が分散する。このとき、酸化還元酵素の作用によって、血清中のグルコースと電子伝達物質の反応が促進される。最終的には、血液が第2試薬部52′に到達した場合には、酸化還元酵素の作用によって、電子伝達物質から発色剤に電子が供給され、発色剤が発色する。
【0051】
グルコースセンサ1′では、血清中のグルコースを電子伝達物質に供給する前に、血球中のグルコースを積極的に取り出すようにしている。すなわち、電子伝達物質に酸化還元酵素を作用させる前に、血清中にグルコース濃度が高くされており、電子伝達物質に酸化還元酵素を作用させた後における血球中からのグルコースの拡散が少なくなるようになされている。その結果、後述の実施例からも明らかとなるが、電子伝達物質と発色剤との間の反応初期速度が大きくなり、測定時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0052】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るグルコースセンサについて、図8〜図10を参照して説明する。ただし、図8〜図10においては、先に説明したグルコースセンサ1,1′(図1〜図3、あるいは図5〜図7参照)と同様な要素については同一の符号を付してあり、重複説明は省略する。
【0053】
図8〜図10に示したグルコースセンサ1″は、第1〜第3試薬部51″,52″,53″を備えている点において、第1の実施の形態に係るグルコースセンサ1(図1〜図3参照)とは異なっている一方で、第2の実施の形態に係るグルコースセンサ1′(図5〜図7参照)と同様な構成とされている。また、グルコースセンサ1″は、第1試薬部51″の構成が第2の実施の形態に係るグルコースセンサ1′(図5〜図7参照)とは異なっている。
【0054】
第1試薬部51″は、先に説明したグルコースセンサ1,1′と同様な電子伝達物質を含んだものであり、キャピラリ5に試料が供給されたときに溶解するように構成されている。この第1試薬部51″は、開口50と第3試薬部53″との間において塗り広げられている。
【0055】
第1試薬部51″は、第2試薬部52″および第3試薬部53″よりも、平面視面積、およびキャピリラリ5における血液の流れ方向の長さが大きい長矩形状に形成されている。より具体的には、第1試薬部51″は、開口50から第3試薬部53″における開口50側の縁までの間において、その占有長さが50〜90%とされ、その厚みが、たとえば第3試薬部53″の厚みの15〜80%とされる。これらの数値範囲は、第1試薬部51″の溶解性を十分に改善することができ、かつ、製造上の限界を考慮したものである。第1試薬部51″は、第2試薬部53″を基準とした場合には、その平面視面積が第2試薬部53″の1.5〜10倍とされる。
【0056】
第1試薬部51″と第2試薬部52″中心間距離D1は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、血液が第2試薬部52″に到達するまで(電子伝達物質が発色剤に電子を供給することが可能となるまで)の間に、上限量のグルコースから電子伝達物質への電子移動が実質的に完了する長さに設定されている。一方、第1試薬部51″と第3試薬部53″との中心間距離D2は、第1試薬部51″に含まれる電子伝達物質の存在によって血球中から血球外に取り出し可能なグルコースの最大量の殆ど全ての量のグルコースを取り出せる距離に設定される。第2試薬部52″と第3試薬部53″との中心間距離D3は、第3試薬部53″が十分に溶解し、酸化還元酵素を血液中に十分に分散させることができる距離に設定される。
【0057】
このようなグルコースセンサ1″においては、第1試薬部51″が薄く塗り広げられたものとなっているため、キャピラリ5に血液が供給されたときに、第1試薬部51″の溶解性が高く、血液中に電子伝達物質が良好に分散する。そのため、キャピラリ5に血液が供給されたときに形成される血液と電子伝達物質の混合系においては、電子伝達物質の濃度のバラツキが小さくなる。その結果、測定後の反応速度のバラツキを抑制できるようになり、電子伝達物質の濃度のバラツキの影響を受けやすい低濃度域での測定再現性が向上する。また、グルコースセンサ1″では、グルコースセンサ1′と同様に、血清中のグルコースを電子伝達物質に供給する前に、血球中のグルコースをより積極的に取り出すようにしているために、電子伝達物質と発色剤との間の反応初期速度が大きくなって、測定時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0058】
次に、本発明の第4の実施の形態に係るグルコースセンサについて、図11〜図13を参照して説明する。
【0059】
図11〜図13に示したグルコースセンサ6は、使い捨てとして構成されたものであり、電極法によりグルコース濃度を測定できるように構成されたものである。このグルコースセンサ6は、先に説明したグルコースセンサ1(図1〜図3参照)と同様に、基板7に対して、スペーサ8を介してカバー9を積層した形態を有しており、各要素7〜9により規定されたキャピラリ60を有している。
【0060】
スペーサ8およびカバー9は、先に説明したグルコースセンサ1のスペーサ3およびカバー4(図1〜図3参照)と同様な構成とされている。すなわち、スペーサ8は、キャピラリ60の幅寸法を規定するスリット80を有しており、カバー9はキャピラリ60の内部に連通する貫通孔90を有している。ただし、カバー9は必ずしも透明に形成する必要はない。
【0061】
基板7の上面70には、作用極71、対極72および試薬部73が形成されている。作用極71および対極72は、端部71a,72aが基板7の短手方向に延びている。端部71a,72aは、貫通孔90に比較的に近い部位において基板7の長手方向に並んで設けられており、それらの一部がキャピラリ60の内部において臨んでいる。一方、作用極71および対極72の端部71b,72bは、キャピラリ60の外部において露出している。これらの端部71b,72bは、端部71a,72aの間に電位差を生じさせる際に、プローブなどの端子を接触させるための部分である。
【0062】
試薬部73は、キャピラリ60の内部において開口61の近傍に設けられている。すなわち、試薬部73は、作用極71および対極72の端部71a,72aとは分離された状態において、キャピラリ60における試料の流れ方向の上流に設けられている。この試薬部73は、たとえば電子伝達物質および酸化還元酵素を含む固体状に形成されている。この試薬部73は、血液に対して容易に溶解するものとして形成されている。酸化還元酵素および電子伝達物質としては、グルコースセンサ1の第1試薬部51(図1〜図3参照)における酸化還元酵素および電子伝達物質と同様なものを使用することができる。
【0063】
ここで、試薬部73における電子伝達物質の含有量は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、上限量のグルコースから取り出せる全ての電子を、電子伝達物質において受け取ることができる量として設定されている。また、試薬部73と作用極71の端部71aとの中心間距離D4は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、血液が作用極71の端部71aに到達するまでの間に、上限量のグルコースから電子伝達物質への電子移動が実質的に完了するように設定されている。
【0064】
グルコースセンサ6においても、開口61を介してキャピラリ60に血液を供給した場合には、キャピラリ60において生じる毛細管力により、血液がキャピラリ60の内部を進行する。血液の進行過程においては、血液により試薬部73が溶解させられる。このとき、酸化還元酵素によって血清(血漿)のグルコースから電子が取り出される一方、グルコースから取り出された電子は、酸化還元酵素の作用によって電子伝達物質に供給される。血球内のグルコースは、血液におけるグルコースの消費に伴って血清(血漿)中に移行し、移行したグルコースからは、先に説明したのと同様にして電子が取り出されて電子伝達物質に供給される。血液の進行は、血液が貫通孔90に到達したときに停止する。このとき、電子伝達物質が作用極71の端部71aの表面に存在する。作用極71の端部71aに対しては、作用極71と対極72の間に電圧を印加することにより、電子伝達物質から電子が供給される。最終的なグルコース濃度は、作用極71の端部71aに対して電子伝達物質から供給された電子の量に基づいて演算される。
【0065】
グルコースセンサ6では、試薬部73が作用極71の端部71aに比べて、血液の流れ方向の上流側に設けられ、かつ開口50の近傍に配置されている。そのため、電子伝達物質が作用極71の端部71aに到達する前に、電子伝達物質を積極的にグルコースと反応させることができる。したがって、グルコースセンサ6では、先に説明したグルコースセンサ1(図1〜図3参照)と同様に、全血中における血球濃度の影響を抑制し、精度良くグルコース濃度を測定できるようになる。
【0066】
グルコースセンサ6においては、試薬部73が電子伝達物質および酸化還元酵素を含んでいたが、先に説明したグルコースセンサ1′,1″(図8〜図10、あるいは図11〜図13参照)と同様に、電子伝達物質を含む試薬部と、酸化還元酵素を含む試薬部に分離して形成してもよい。
【0067】
本発明は、試料として血液以外のもの、たとえば血液の希釈液を使用するように構成されたグルコースセンサにも適用することができる。本発明はさらに、グルコース以外の成分、たとえばコレステロールや乳酸を分析するように構成された分析用具に適用することもできる。
【実施例1】
【0068】
本実施例においては、比色用のグルコースセンサを用いた血糖値の測定において、血液における血球濃度(ヘマトクリット値(Hct))が測定結果に与える影響を検討した。グルコースセンサとしては、以下に説明するグルコースセンサ(1)〜(3)を用いた。Hct値が測定結果に与える影響は、吸光度のタイムコースおよび特定時間経過後におけるバイアスに基づいて検討した。
【0069】
(グルコースセンサの基本構成)
グルコースセンサ(1)〜(3)の基本構成(試薬部を除く)は図14に示した通りである。すなわち、各グルコースセンサ(1)〜(3)は、透明基板2Aに対してスペーサ3Aを介して透明カバー4Aを積層した形態を有するとともに、各要素2A〜4Aによってキャピラリ5Aが規定されたものとされている。キャピラリ5Aの寸法は、図14に記入したように、1.3mm×9mm×50μmである。透明基板2Aおよび透明カバー4Aは、厚みが250μmであるPETにより形成し、スペーサ3Aは両面テープにより構成した。
【0070】
(試薬部の構成および形成方法)
各グルコースセンサ(1)〜(3)においては、発色剤を含んだ試薬部を、電子伝達物質および酸化還元酵素のうちの少なくとも一方を含む試薬部に対して、キャピラリの流れ方向に分離して設けた。
【0071】
グルコースセンサ(1)(本案)では、図15Aに示したように電子伝達物質および酸化還元酵素を含む第1試薬部51Aをキャピラリ5Aの上流側に、発色剤を含む第2試薬部52Aをキャピラリ5Aにおける下流側に設けた。第1試薬部51Aは、その中心が試料導入口50Aから3mmの距離のところに位置し、かつ血液に対して溶解するように形成した。第2試薬部52Aは、その中心が貫通孔40Aの最上流点40Aaから1mmの距離のところに位置するとともに、透明基板2Aに対して固定化され、かつ血液に対して難溶なゲル状担体に発色剤を保持させた構成に形成した。第1試薬部51Aと第2試薬部52Aとの中心間距離は、5mmに設定した。
【0072】
第1および第2試薬部51A,52Aは、目的とする材料液を目的部位に塗布した後、材料液を送風乾燥(30℃、10%Rh)させることにより形成した。なお、第1および第2試薬部51A,52Aを形成する場合の材料液の組成および材料液の塗布量については、下記表1および表2に示した通りである。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
グルコースセンサ(2)(本案)は、図15Bに示したように、グルコースセンサ(1)(図15A参照)において第1試薬部51Bが酸化還元酵素を含まないものとする代わりに、第1試薬部51Bと第2試薬部52Bとの間に、酸化還元酵素を含む第3試薬部53Bを形成したものとした。この第3試薬部53Bは、その中心が、第1試薬部51Bの中心と第2試薬部52Bの中心との中間に位置するように形成した。
【0076】
第1〜第3試薬部51B,52B,53Bは、目的とする材料液を目的部位に塗布した後、材料液を送風乾燥(30℃、10%Rh)させることにより形成した。なお、第1〜第3試薬部51B,52B,53Bを形成する場合の材料液の組成および材料液の塗布量については、下記表3〜表5に示した通りである。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
グルコースセンサ(3)(比較)は、図15Cに示したように、グルコースセンサ(1)(図15A参照)において、発色剤を含む試薬部の位置と、電子伝達物質および酸化還元酵素を含む試薬部の位置とを入れ替えた構成とした。すなわち、第1試薬部51Cは、グルコースセンサ(1)における第2試薬部52Aに対応する部位(下流側)において、血液に対して難溶なゲル状担体に電子伝達物質および酸化還元酵素を保持させた状態で透明基板2Aに対して固定化した。一方、第2試薬部52Cは、グルコースセンサ(1)における第1試薬部51Aに対応する部位(上流側)において、血液に対して溶解するように形成した。
【0081】
第1および第2試薬部51C,52Cは、目的とする材料液を目的部位に塗布した後、材料液を送風乾燥(30℃、10%Rh)させることにより形成した。なお、第1および第2試薬部51C,52Cを形成する場合の材料液の組成および材料液の塗布量については、下記表6および表7に示した通りである。
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
表1〜表7において、CHAPSは3-[(3-cholamidopropyl)dimethylammonio] propanesulfonic acidの略号であり、ACESはN-(2-acetamido)-2-aminoethanesulfonic acidの略号であり、MTTは3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromideの略
号である。CHAPSとしては同仁化学研究所(日本国)製「KC062」を、ACESとしては同仁化学研究所(日本国)製「ED067」を、MTTとしては同仁化学研究所(日本国)製「M009」を、PQQGDHとしては同仁化学研究所(日本国)製のものを、[Ru(NH3)6]Cl3としては同仁化学研究所(日本国)製「LM722」を、スクロースモノラウレートとしては同仁化学研究所(日本国)製「PV689」を、ポリアクリルアミドとしてはナカライテスク(日本国)製「Z2T8071」を使用した。
【0085】
(吸光度のタイムコース測定)
吸光度タイムコースは、キャピラリに検体を供給した時点から0.1秒毎に吸光度を繰り返し測定して作成した。各回の吸光度の測定においては、グルコースセンサ(1),(2)については第2試薬部52A,52Bに対して、グルコースセンサ(3)については第1試薬部51Cに対して、それぞれキャピラリの高さ方向に沿って光を照射し、そのときにグルコースセンサ(1)〜(3)を透過した光を受光した。光の照射は、発光ダイオードを用いて、630nmの光を照射することにより行った。透過光は、フォトダイオードにおいて受光した。吸光度は、下記数式1により算出した。
【0086】
【数1】
【0087】
吸光度のタイムコースは、各グルコースセンサ(1)〜(3)において、ヘマトクリット値の異なる3種類の検体(Hct=20%、42%、60%)について5回ずつ測定した。検体におけるグルコース濃度は、430mg/dLに調整した。吸光度のタイムコースについては、グルコースセンサ(1)については図16Aに、グルコースセンサ(2)については図16Bに、グルコースセンサ(3)については図16Cにそれぞれ示した。一方、バイアスの演算結果については、図17に示した。図17においては、バイアスは測定開始から5秒経過後の吸光度に基づいて、各グルコースセンサ(1)〜(3)毎および各Hctの検体毎に、5回の測定の平均値として示してある。
【0088】
図16A 〜図16Cから分かるように、グルコースセンサ(1),(2)(本案)は、グルコースセンサ(3)(比較)に比べて試薬部への酵素含有量(活性基準)が少ないにも拘らず、いずれのHctの検体においても、吸光度の立ち上がりが大きい上に吸光度が一定値に漸近するまでの時間が短い。そのため、グルコースセンサ(1),(2)(本案)を用いれば、使用する酵素量を少なくしつつも、測定時間の短縮化を図ることができるといえる。とくに、グルコースセンサ(2)(本案)においては、グルコースセンサ(1)(本案)に比べて測定初期(5秒以下)におけるタイムコースが安定し、かつ一定値に漸近するまでの時間が短い。そのため、Hctが未知の検体を短時間で正確に測定する観点からは、グルコースセンサ(2)(本案)がさらに有用である。
【0089】
一方、図17から分かるように、グルコースセンサ(1),(2)(本案)は、グルコースセンサ(3)(比較)に比べて、高Hct検体(60%)および低Hct検体(20%)の双方における5秒値のバイアスが小さく、中Hct検体(42%)からのずれ量が小さい。この点からは、グルコースセンサ(1),(2)(本案)は、グルコースセンサ(3)(比較)に比べてHctの影響を受けにくいといえる。
【実施例2】
【0090】
本実施例においては、実施例1と同様にして作成したグルコースセンサ(1)〜(3)を用いて、グルコース濃度が異なる5種類の検体(0mg/dL 、113mg/dL、212mg/dL、430mg/dL、598 mg/dL)について、実施例1と同様にして吸光度のタイムコースを測定した。その結果を図18A〜図18Cに示した。
【0091】
図18A〜図18Cから分かるように、グルコースセンサ(1),(2)(本案)は、グルコースセンサ(3)(比較)に比べて試薬部への酵素含有量(活性基準)が少ないにも拘らず、いずれのグルコース濃度の検体においても、吸光度の立ち上がりが大きい上に吸光度が一定値に漸近するまでの時間が短い。このことは同時に、グルコースセンサ(1),(2)は、グルコースセンサ(3)に比べて、測定時間が短い場合(たとえば5秒以下)においても、吸光度とグルコース濃度との関係が高い直線性を示すことを意味している。すなわち、グルコースセンサ(1),(2)では、測定レンジを広く確保しつつも、測定時間の短縮化を図ることができる。
【実施例3】
【0092】
実施例2において得られたデータに基づいて、測定再現性を評価した。測定再現性は、各グルコースセンサ(1)〜(3)毎に、各グルコース濃度の検体について、測定開始から5秒後における吸光度のバラツキを計算することにより行った。計算結果については、下記表8〜表10に示した。
【0093】
【表8】
【0094】
【表9】
【0095】
【表10】
【0096】
表8〜表10から分かるように、グルコースセンサ(1),(2)(本案)は、グルコースセンサ(3)(比較)に比べて、総合的にC.V.(%)が小さく、その値自体も小さいことから、測定再現性が優れていると言える。
【0097】
実施例1〜3の結果を総合すれば、次のように結論付けることができる。すなわち、電子伝達物質を含んだ第1試薬部51A,51Bと発色剤を含んだ第2試薬部52A,52Bとを分離し、かつ第1試薬部51A,51Bを第2試薬部52A,52Bよりも上流側に配置した場合(グルコースセンサ(1),(2))には、第2試薬部52Cを第1試薬部51Cよりも上流側に配置した場合(グルコースセンサ(3))に比べて、Hctの影響を受けにくく、少ない酵素量によって、測定レンジを広く確保しつつ測定時間の短縮化を図ることができる。とくに、電子伝達物質を含んだ第1試薬部51Bと酸化還元酵素を含んだ第3試薬部53Bとを分離し、かつ第1試薬部51Bを第3試薬部53Bよりも上流側に配置した場合(グルコースセンサ(2))には、電子伝達物質と酸化還元酵素とを混在させて第1試薬部51Aを構成する場合(グルコースセンサ(1))に比べて、さらに測定時間の短縮化を図り、しかも測定安定性を向上させることができる。
【実施例4】
【0098】
本実施例では、図19に示した構成の本案グルコースセンサ、および図15Bのグルコースセンサ(2)に相当する参照グルコースセンサについて測定再現性を検討した。
【0099】
参照グルコースセンサについては、実施例1のグルコースセンサ(2)と同様な手法により作成した。一方、本案グルコースセンサは、参照グルコースセンサ(実施例1のグルコースセンサ(2))を形成する場合において、第1試薬部51B′は、第1試薬部51Bを形成するときと同量かつ同組成の材料液を塗布した後に、この材料液を目的とする大きさに広げてから乾燥させて形成した点を除いて、参照グルコースセンサ(実施例1のグルコースセンサ(2))と同様にして作成した。ここで、本案グルコースセンサにおける第1試薬部51B′は、第3試薬部53Bよりも長い3.5mmの長さに、第3試薬部53Bよりも厚みを小さく形成し、第3試薬部53Bにおける導入口50B側の縁から導入口50Bまでの距離における87.5%の長さ範囲を占めるものとして形成した。
【0100】
測定再現性については、上述の本案グルコースセンサおよび参照グルコースセンサを用いて、Hctが42%である検体について、実施例1と同様にして吸光度のタイムコースを測定した結果、および測定開始から5秒後における吸光度のバラツキを計算することにより検討した。検体としては、グルコース濃度が異なる3種類(0mg/dL、100mg/dL、400mg/dL)のものを使用した。タイムコースは、各グルコースセンサについて、0mg/dLの検体において5回、100mg/dLおよび400mg/dLの検体において10回測定した。
【0101】
吸光度のタイムコースを測定した結果は、本案グルコースセンサについては図20A〜図20Cに、参照グルコースセンサについては図21A〜図21Cにそれぞれ示した。5秒後の吸光度のバラツキの計算結果は、本案グルコースセンサについては表11に、参照グルコースセンサについては表12にそれぞれ示した。なお、図20A〜図20Cおよび図21A〜図21Cにおいては、波長660nmで吸光度を測定した結果、波長940nmで吸光度を測定した結果、および波長660nmでの測定結果から波長940nmでの測定結果を差分した結果をそれぞれ示し、表11および表12においては波長660nmでの測定結果から波長940nmでの測定結果を差分した結果についてのバラツキの計算結果を示した。
【0102】
【表11】
【0103】
【表12】
【0104】
図20A〜図20Cと、図21A〜図21Cとを比較すれば分かるように、本案グルコースセンサのほうが参照グルコースセンサに比べて、吸光度のタイムコースにおけるバラツキが明らかに少ない。一方、表11と表12とを比較すれば分かるように、5秒値における吸光度のバラツキは、本案グルコースセンサのほうが参照グルコースセンサに比べて、低濃度域(100mg/dL以下)におけるC.V.(%)が小さい。すなわち、本案グルコースセンサのほうが参照グルコースセンサに比べて、低濃度域(100mg/dL以下)における測定再現性が優れていると言える。
【0105】
ここで、参照グルコースセンサは、実施例1〜3におけるグルコースセンサ(2)に相当するものであり、このグルコースセンサ(2)は、実施例1〜3におけるグルコースセンサ(1),(3)に比べて測定再現性に優れるものである。すなわち、本案グルコースセンサにおいては、測定再現性に優れるグルコースセンサ(2)(参照グルコースセンサ)よりもさらに、低濃度における再現性が優れたものとなっている。
【0106】
この結果は、本案グルコースセンサにおいて、第1試薬部51B′を薄く塗り広げることにより第1試薬部51B′の溶解性が高められ、流路に導入された試料における電子伝達物質の濃度のバラツキが小さくなっているためであると考えられる。そのため、低濃度における再現性を改善するためには、電子伝達物質と酸化還元酵素とを分離しつつも、電子伝達物質については、その溶解性(試料に対する拡散性)を高めるために、第1試薬部51B′を薄膜とし、あるいは他の試薬部52B,53Bやなどよりも試料の流れ方向に長い形態とするのが好ましいと言える。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる分析対象成分を分析する技術、たとえば血液中のグルコース濃度を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
全血を試料とするグルコースセンサとしては、比色法あるいは電極法を採用したものがある(たとえば特許文献1,2参照)。いずれの方法を採用したグルコースセンサを用いる場合であっても、グルコースから取り出した電子を電子検出媒体(発色剤あるいは電極)に供給し、その電子供給量をグルコースセンサの外部から把握することにより、グルコース濃度を演算することができる。グルコースセンサは、通常、酸化還元酵素によってグルコースから電子を取り出し、その電子を、電子伝達物質を介して電子検出媒体に供給するように構成される。
【0003】
全血を用いてグルコース濃度を測定する場合、測定結果が血球濃度(ヘマトクリット)の影響を受け、高ヘマトクリットの全血ほど、測定結果が真値よりも低値となることが知られている。この原因の1つとして、血清(血漿)中に存在するグルコースからの電子の取り出しに比べて、血球中に存在するグルコースからの電子の取り出しのほうに時間がかかることが指摘されている。すなわち、血清(血漿)中のグルコースからは、酸化還元酵素によって即座に電子を取り出すことができる。これに対して、血球中のグルコースからは、血清(血漿)にグルコースを移行させた後でないと、電子を取り出すことができない。しかも、血球内から血清(血漿)へのグルコースの移行は、血球内外でのグルコース濃度の差に起因する単純拡散ではなく、血球膜のグルコース透過能力に依存する促進拡散である。すなわち、血球外へのグルコースの拡散速度は、ミカエリスメンテン式にしたがうものであって、限界値を有しており、血球内外のグルコース濃度の差が一定値以上となれば、血球外へのグルコースの拡散速度は一定値となる。そのため、全血内において、酸化還元酵素、電子伝達物質および電子検出媒体が共存する系では、血清(血漿)内でのグルコースから取り出された電子が即座に電子検出媒体に供給されるものの、その供給量に対応したグルコースを血球外に拡散させるには時間がかかる。その結果、もともと血球内に存在していたグルコースから取り出される電子は、もともと血清(血漿)内に存在していたグルコースに比べて、電子検出媒体に対して遅れて供給される。このような遅れは、血球濃度の高い全血において大きく現れる。したがって、血糖値が同じ全血であっても、試料の供給から一定時間経過後の段階では、血球濃度の高い全血では、血球濃度の低い全血に比べて、血球から血清(血漿)へのグルコースの移行割合が少ないという現象が起こりうる。
【0004】
近年においては、測定時間が短縮化の傾向にあり、そのために新たな酸化還元酵素および電子伝達物質が模索されている。このような状況下においては、血清(血漿)中に存在するグルコースは、より短時間で消費される。これに対して、血球内から血清(血漿)へのグルコースの拡散は、血球膜のグルコース透過能力に依存するものであるため、血球からのグルコースの移行速度については大きな変化はない。したがって、高ヘマトクリットの全血では、測定時間を短縮化すればするほど、当該測定時間内において血球内から血清(血漿)に移行させることができるグルコースの割合が少なくなり、低値化の問題がより顕著に現れる。
【0005】
また、酸化還元酵素および電子伝達物質は、たとえば血液に溶解する固相の試薬部としてグルコースセンサにおいて保持される(たとえば特許文献3参照)。そのため、測定時間を短縮化する場合には、試薬部の溶解性が測定精度に与える影響が大きくなる。すなわち、試薬部の溶解性が悪ければ、血液によって試薬部を溶解させたときに生じる液相反応系において、酸化還元酵素や電子伝達物質が均一に分散せず、測定結果にバラツキを生じさせる。このような測定結果のバラツキは、血液中のグルコース濃度が小さい場合により顕著に現れる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−175699号公報
【特許文献2】特公平8−10208号公報
【特許文献3】特開2004−101519号公報
【発明の開示】
【0007】
本発明は、血球を含んだ試料の分析を行う場合(たとえば血液中のグルコース濃度を測定する場合)に、血球濃度の影響を抑制し、とくに高血球濃度の試料における低値化を抑制することを目的としている。
【0008】
本発明はさらに、測定時間を短縮化する場合に生じる測定結果のバラツキを抑制し、とくに低濃度域での測定再現性を向上させることを目的としている。
【0009】
本発明の第1の側面においては、血球を含んだ試料(たとえば血液)を移動させるための流路と、上記流路に試料を導入するための導入口と、上記流路の内部に配置された試薬部と、試料中の対象成分(たとえばグルコース)の分析を行うために必要な情報を、電子授受量に相関させて得るための電子検出媒体と、を備えた分析用具であって、上記試薬部は、試料中の分析対象成分から取り出した電子を上記電子検出媒体に供給するための電子伝達物質を含んでおり、かつ少なくとも一部が上記導入口の近傍に配置されている、試薬部の配置を改良した分析用具が提供される。
【0010】
試薬部は、たとえば電子検出媒体とは分離された状態で、電子検出媒体よりも試料の流れ方向における上流側に配置される。この場合の試薬部は、流路に試料を供給したときに溶解する固体状に形成するのが好ましい。
【0011】
試薬部と電子検出媒体との間の距離は、予め設定した検出範囲の上限量の分析対象成分が試料に含まれる場合において、上記上限量の分析対象成分から電子伝達物質への電子移動が、電子伝達物質が電子検出媒体に対して電子を供給しうる状態となるまでの間に、実質的に完了する長さに設定するのが好ましい。
【0012】
試薬部における電子伝達物質の含有量は、予め設定した検出範囲の上限量の分析対象成分が試料に含まれる場合において、上記上限量のグルコースから取り出せる全ての電子を、電子伝達物質において受け取ることができる量に設定するのが好ましい。
【0013】
電子検出媒体は、発色剤を含んだものとして構成することができる。この場合、電子検出媒体は、試料に対して難溶性の多孔質体に、発色剤を保持させた構成とするのが好ましい。多孔質体としては、典型的には、ポリアクリルアミドあるいはポリビニルアルコールなどのゲル状物を挙げることができる。一方、発色剤としては、たとえばMTT(3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide)、INT(2-(4-lodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-phenyl-2H-tetrazolium chloride) 、WST−4(2-(4- lodophenyl) -3-(2,4-dinitrophenyl)-5-(2,4- disulfophenyl)-2H-tetrazolium,monosodium salt)、および4AA(4-Aminoantipyrine)が挙げられる。
【0014】
電子検出媒体は、導体として構成することもできる。導体としては、たとえば流路に試料が供給されたときに、電子伝達物質に電圧を印加するために利用されるものが挙げられる。
【0015】
試薬部は、たとえば試料中の分析対象成分から電子を取り出して電子伝達物質に電子を供給するための酸化還元酵素を含んだものとして構成される。酸化還元酵素は、試薬部とは分離した追加の試薬部として分析用具に保持させてもよい。この場合、追加の試薬部は、流路の内部における試料の流れ方向において、試薬部と電子検出媒体との間に配置するのが好ましい。追加の試薬部は、たとえば流路に試料を供給したときに溶解する固体状に形成される。
【0016】
本発明の第2の側面においては、血球を含んだ試料を移動させるための流路と、上記流路に試料を導入するための導入口と、試料中の分析対象成分の分析を行うために必要な情報を、電子授受量に相関させて得るためのものであり、かつ試料に対して難溶性の多孔質体に発色剤を保持させた構成の電子検出媒体と、試料中の分析対象成分から取り出した電子を上記電子検出媒体に供給するための電子伝達物質を含み、かつ上記流路に試料を供給したときに溶解するように構成された電子伝達物質層と、試料中の分析対象成分から電子を取り出して上記電子伝達物質に電子を供給するための酸化還元酵素を含み、かつ上記流路に試料を供給したときに溶解するように構成された酸化還元酵素層と、を備えた分析用具であって、上記流路において、上記電子伝達物質層、上記酸化還元酵素層および上記電子検出媒体がこの順序で、試料の流れ方向の上流側から順番に並んで配置されている、分析用具が提供される。
【0017】
試薬部(電子伝達物質層)は、たとえば追加の試薬部(酸化還元酵素層)よりも、平面視面積が大きく、試料の流れ方向の長さが大きく、あるいは厚みが小さく(たとえば酸化還元酵素層の厚みの15〜80%)とされる。試薬部(電子伝達物質層)は、追加の試薬部(酸化還元酵素層)における導入口側の縁から導入口までの距離における50〜90%の長さ範囲を占めるように形成してもよい。試薬部(電子伝達物質層)はまた、流路における電子検出媒体の平面視面積の1.5〜10倍の平面視面積を有するものとすることもできる。
【0018】
本発明における電子伝達物質としては、Ru錯体を用いるのが好ましい。Ru錯体としては、[Ru(NH3)5X]n+として表現されるものを使用するのが好ましい。ここで、上記化学式において、Xは、たとえばNH3、ハロゲンイオン、CN、ピリジン、ニコチンアミド、あるいはH2Oであり、n+は、Xの種類により決定される酸化型Ru(III)錯体の価数である。
【0019】
本発明における酸化還元酵素としては、たとえばグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を使用することができる。GDHとしては、PQQGDH、αGDH、あるいはCyGDHを用いるのが好ましい。
【0020】
ここで、PQQGDHとは、ピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするものである。一方、αGDH およびCyGDHは、国際公開第WO02/36779号パンフレットに開示されているものをさしている。すなわち、αGDHおよびCyGDHは、ブルクホルデリア属に属する微生物に由来のグルコース脱水素酵素(GDH)をさしており、形質転換体に産出させたものも含まれる。
【0021】
より具体的には、αGDHは、FADを補欠因子としてもち、かつグルコース脱水素活性を有するサブユニットとして、還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約60kDaであるGDH活性タンパク質(αサブユニット)を含んだものである。一方、CyGDHは、αサブユニットと、還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約43kDaである電子伝達タンパク質(チトクロムC)と、をサブユニットとして含むものである。αGDHやCyGDHとしては、αサブユニットやチトクロムC以外のサブユニットをさらに有するものを使用することもできる。
【0022】
CyGDHは、たとえばブルクホルデリア・セパシアに属する微生物が菌体外に分泌した酵素を精製し、あるいは当該菌体の菌体内酵素を精製することにより得ることができる。一方、αGDHは、たとえばブルクホルデリア・セパシアに属する微生物から採取したαGDHをコードする遺伝子が移入された形質転換体を形成し、この形質転換体から外部に分泌された酵素を精製し、あるいは当該形質転換体の菌体内酵素を精製することにより得ることができる。
【0023】
ブルクホルデリア・セパシアに属する微生物としては、たとえばブルクホルデリア・セパシアKS1株を使用することができる。このKS1株は、平成12年9月25日に独立特許法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に微生物受託番号第FERM BP−7306として寄託されている。
【0024】
本発明のグルコースセンサは、流路において毛細管力が生じるように構成することもできる。
【0025】
本発明の第3の側面においては、血球を含んだ試料が移動した状態において、上記試料に含まれる分析対象成分から取り出した電子を電子伝達物質に供給し、上記試料に含まれる全ての分析対象成分から上記電子伝達物質への電子移動を、実質的に完了する過程と、上記試料の移動が停止した状態において、上記電子伝達物質と電子検出媒体との間の電子授受反応を行う過程と、上記電子検出媒体を介して得られる情報に基づいて、分析対象成分の分析に必要な演算を行う過程と、を含んでいる、分析方法が提供される。
【0026】
電子検出媒体は、本発明の第1の側面と同様に、たとえば発色剤を含んだものとして、あるいは導体として構成される。
【0027】
ここで、本発明において血球を含んだ試料とは、少なくとも全血、および全血の希釈液などの調整液を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るグルコースセンサの全体斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示したグルコースセンサの分解斜視図である。
【図4】図1に示したグルコースセンサの作用を説明するための図2に相当する断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るグルコースセンサの全体斜視図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図5に示したグルコースセンサの分解斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るグルコースセンサの全体斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】図8に示したグルコースセンサの分解斜視図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係るグルコースセンサの全体斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿う断面図である。
【図13】図11に示したグルコースセンサの分解斜視図である。
【図14】実施例1〜3において使用したグルコースセンサの基本構成を説明するための斜視図である。
【図15】実施例11〜3において使用したグルコースセンサの試薬部の構成を説明するための透明カバーを省略して示した平面図である。
【図16A】実施例1において、グルコースセンサ(1)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図16B】実施例1において、グルコースセンサ(2)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図16C】実施例1において、グルコースセンサ(3)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図17】Hctが42%のときを基準とした場合のバイアスとして、Hctの影響を示したグラフである。
【図18A】実施例2において、グルコースセンサ(1)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図18B】実施例2において、グルコースセンサ(2)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図18C】実施例2において、グルコースセンサ(3)を使用して吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図19】実施例4において使用した本案グルコースセンサの試薬部の構成を説明するための透明カバーを省略して示した平面図である。
【図20A】実施例4において、本案グルコースセンサを使用して波長660nmで吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図20B】実施例4において、本案グルコースセンサを使用して波長940nmで吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図20C】実施例4において本案グルコースセンサを使用したときに、波長660nmにおいて吸光度を測定したときの結果から波長940nmにおいて吸光度を測定したときの結果を差分として表したタイムコースである。
【図21A】実施例4において、参照グルコースセンサを使用して波長660nmで吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図21B】実施例4において、参照グルコースセンサを使用して波長940nmで吸光度のタイムコースを測定した結果を示すグラフである。
【図21C】実施例4において参照グルコースセンサを使用したときに、波長660nmにおいて吸光度を測定したときの結果から波長940nmにおいて吸光度を測定したときの結果を差分として表したタイムコースである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の第1〜第4の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0030】
まず、本発明の第1の実施の形態について、図1〜図3を参照しつつ説明する。
【0031】
図1〜図3に示したグルコースセンサ1は、使い捨てとして構成されたものであり、比色により血液中のグルコース濃度を測定するように構成されたものである。このグルコースセンサ1は、長矩形の基板2に対して、スペーサ3を介してカバー4を接合した形態を有しており、各要素2〜4により、基板2の長手方向に延びるキャピラリ5が規定されている。キャピラリ5は、毛細管力により血液を移動させるとともに、反応場を提供するためのものである。このキャピラリ5は、開口50を介して外部と連通している。開口50は、キャピラリ5の内部に血液を導入するためのものである。
【0032】
基板2は、PET、PMMA、ビニロンなどにより透明に形成されている。基板2には、キャピラリ5の内部に収容された状態で第1および第2試薬部51,52が設けられている。
【0033】
第1試薬部51は、第2試薬部52よりも血液の流れ方向の上流に位置するように、開口50の近傍に設けられている。この第1試薬部51は、たとえば酸化還元酵素および電子伝達物質を含んでおり、血液に対して溶解しやすい固体状に形成されている。このため、キャピラリ5に血液を導入した場合には、キャピラリ5の内部には、グルコース、酸化還元酵素および電子伝達物質を含む液相反応系が構築される。
【0034】
酸化還元酵素としては、たとえばグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を用いることができ、典型的にはPQQGDH、αGDHあるいはCyGDHが使用される。
【0035】
電子伝達物質としては、たとえば Ru錯体やOs錯体などの金属錯体を用いることができる。Ru錯体としては、[Ru(NH3)6]Cl3を用いるのが好ましい。電子伝達物質としては、PMS(5-methylphenazinium methylsulfate)の他、チトクロムやNAD-1を使用することもできる。ここで、電子伝達物質の含有量は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、上限量のグルコースから取り出せる全ての電子を、電子伝達物質において受け取ることができる量として設定されている。たとえば、測定範囲の上限量が600mg/dL(33mM)であり、グルコースと電子伝達物質が化学量論的に1:2の割合で反応する場合には、電子伝達物質の含有量は、キャピラリ5が血液によって満たされたときの濃度が66mM以上となるように設定される。
【0036】
第2試薬部52は、発色剤を含んでおり、血液に対して難溶性の固層として形成されている。この第2試薬部52は、たとえば基板2に対して固定されたゲル状担体に対して、発色剤を担持させた構成とされている。この構成では、発色剤を血液に分散させることなく、第2試薬部52の内部に電子伝達物質を拡散させ、第2試薬部52において、発色剤に対して電子伝達物質からの電子を供給することができる。
【0037】
ゲル状担体としては、ポリアクリルアミドあるいはポリビニルアルコールを使用することができる。一方、発色剤としては、公知の種々のものを用いることができるが、電子を受け取って発色したときの吸収波長が、血液の吸収波長からずれたものを用いるのが好ましい。発色剤としては、たとえばMTT、INT、WST−4、および4AAを用いることができる。
【0038】
ここで、第1試薬部51と第2試薬部52との中心間距離D1は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、血液が第2試薬部52に到達するまで(電子伝達物質が発色剤に電子を供給することが可能となるまで)の間に、上限量のグルコースから電子伝達物質への電子移動が実質的に完了する長さに設定されている。この中心間距離D1は、酸化還元酵素がグルコースから電子を取り出す速度(触媒能力)、電子伝達物質がグルコースから電子を受け取る速度(電子伝達速度)、およびキャピラリ5における血液の移動速度などに応じて適宜設定される。たとえば、キャピラリ5を血液により満たすのに要する時間が2秒であり、酸化還元酵素としてPQQGDHを用い、電子伝達物質として[Ru(NH3)6]Cl3を用いる場合には、中心間距離D1は、たとえば0.5〜1.0mmの範囲に設定される。
【0039】
スペーサ3は、基板2とカバー4の間の距離、すなわちキャピラリ5の高さ寸法を規定するためのものである。このスペーサ3は、キャピラリ5の幅寸法を規定するためのスリット30を有している。
【0040】
カバー4は、全体が透明に形成されている。このカバー4は、基板2と同様な材料により形成することができる。カバー4には、貫通孔40が形成されている。貫通孔40は、キャピラリ5の内部の気体を外部に排出するためのものであり、キャピラリ5の内部に連通している。
【0041】
グルコースセンサ1では、開口50を介してキャピラリ5に血液を供給した場合には、図4A〜図4Cに示したように、キャピラリ5において生じる毛細管力により、血液がキャピラリ5の内部を進行する。血液の進行過程においては、図4Aおよび図4Bに示したように、血液により第1試薬部51が溶解させられる。これにより、第1試薬部51に含まれる酸化還元酵素および電子伝達物質が血液中に分散し、これらが血液とともに貫通孔40ひいては第2試薬部52に向けて移動する。このとき、酸化還元酵素によって血清(血漿)のグルコースから電子が取り出され、グルコースがグルコノラクトンとされ、血清(血漿)におけるグルコース濃度が減少する。グルコースから取り出された電子は、酸化還元酵素の作用によって電子伝達物質に供給される。一方、血清(血漿)におけるグルコース濃度の減少に伴い、血球中のグルコースが血清(血漿)中に移行する。血球外に移行したグルコースからは、先に説明したのと同様にして電子が取り出され、電子伝達物質に供給される。
【0042】
図4Cに示したように、血液の進行は、血液が貫通孔40に到達したときに停止する。このとき、血液が第2試薬部52に浸透する。キャピラリ5においては、血液とともに電子伝達物質も移動させられるため、第2試薬部52への血液の浸透に伴い、第2試薬部52の内部に電子伝達物質が拡散する。このため、第2試薬部52においては、発色剤に対して電子伝達物質から電子が供給されて発色剤が発色し、第2試薬部52が着色される。第2試薬部52の着色の程度は、血液の供給開始から一定時間経過後において、たとえば第2試薬部52に対してカバー4を介して光を照射し、そのときに第2試薬部52および基板2を透過した光、あるいは反射した光を受光することにより把握される。照射光の波長は、発色剤の発現色における吸収の大きな波長の光のものが採用される。最終的なグルコース濃度は、たとえば照射光の強度と、透過光の強度と、の比に基づいて演算される。
【0043】
グルコースセンサ1では、第1試薬部51が第2試薬部52に比べて、血液の流れ方向の上流側に設けられている。そのため、キャピラリ5に対する血液の導入と同時に電子伝達物質をグルコースと反応させることができる。しかも、第1試薬部51を開口50の近傍に配置することにより、血液が第2試薬部52に到達するまでの間において、電子伝達物質とグルコースとを反応させるための時間を長く確保することができる。その結果、電子伝達物質が第2試薬部52に到達する前(電子伝達物質が発色剤と反応する前)に電子伝達物質を積極的にグルコースと反応させることができる。とくに、グルコースセンサ1では、電子伝達物質の含有量が、測定濃度範囲の上限量のグルコースの全てから電子を、電子伝達物質において受け取ることができる量として設定され、中心間距離D1が、血液が第2試薬部52に到達するまでの間に、グルコースの全てから電子伝達物質への電子移動が実質的に完了するように設定されている。したがって、グルコースセンサ1では、電子伝達物質が発色剤と反応を開始するまでの間に、血球中のグルコースを確実に血清(血漿)中に移行させることができる。その結果、血液における血球濃度の影響を抑制し、精度良くグルコース濃度を測定できるようになる。
【0044】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るグルコースセンサについて、図5〜図7を参照して説明する。ただし、図5〜図7においては、先に説明したグルコースセンサ1(図1ないし図3参照)と同様な要素については同一の符号を付してあり、重複説明は省略する。
【0045】
図5〜図7に示したグルコースセンサ1′は、第1ないし第3試薬部51′,52′,53′を備えている点において、先に説明したグルコースセンサ1(図1〜図3参照)とは異なっている。
【0046】
第1試薬部51′は、電子伝達物質を含んだものであり、キャピラリ5に試料が供給されたときに溶解するように構成されている。この第1試薬部51′は、開口50の近傍に設けられている。第1試薬部51′に含ませる電子伝達物質としては、先に説明したグルコースセンサ1(図1〜図3参照)と同様なものを例示することができる。
【0047】
第2試薬部52′は、先に説明したグルコースセンサ1の第2試薬部52(図1〜図3参照)と同様な構成とされている。すなわち、第2試薬部52′は、たとえば電子検出媒体である発色剤を、血液に対して難溶性のゲル状担体に担持させた構成とされている。
【0048】
第3試薬部53′は、酸化還元酵素を含んだものであり、キャピラリ5に試料が供給されたときに溶解するように構成されている。この第3試薬部53′は、第1試薬部51′と第2試薬部52′との間に設けられている。第3試薬部53′に含ませる酸化還元酵素としては、先に説明したグルコースセンサ1(図1〜図3参照)と同様なものを例示することができる。
【0049】
ここで、第1試薬部51′と第2試薬部52′との中心間距離D1は、グルコースセンサ1(図1〜図3参照)と同様に設定されている。すなわち、中心間距離D1は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、血液が第2試薬部52′に到達するまで(電子伝達物質が発色剤に電子を供給することが可能となるまで)の間に、上限量のグルコースから電子伝達物質への電子移動が実質的に完了する長さに設定されている。一方、第1試薬部51′と第3試薬部53′との中心間距離D2は、第1試薬部51′に含まれる電子伝達物質の存在によって血球中から血球外に取り出し可能なグルコースの最大量の殆ど全ての量のグルコースを取り出せる距離に設定される。第2試薬部52′と第3試薬部53′との中心間距離D3は、第3試薬部53′が十分に溶解し、酸化還元酵素を血液中に十分に分散させることができる距離に設定される。
【0050】
このようなグルコースセンサ1′においては、キャピラリ5に血液が供給されたときに、まず第1試薬部51′が溶解して血液中に電子伝達物質が分散する。このとき、血球の周りに無機物たる電子伝達物質が存在しているために、血球中から血球外へのグルコースの拡散が促進される。次いで、血液が第3試薬部53′に到達したときに第3試薬部53′が溶解して血液中に酸化還元酵素が分散する。このとき、酸化還元酵素の作用によって、血清中のグルコースと電子伝達物質の反応が促進される。最終的には、血液が第2試薬部52′に到達した場合には、酸化還元酵素の作用によって、電子伝達物質から発色剤に電子が供給され、発色剤が発色する。
【0051】
グルコースセンサ1′では、血清中のグルコースを電子伝達物質に供給する前に、血球中のグルコースを積極的に取り出すようにしている。すなわち、電子伝達物質に酸化還元酵素を作用させる前に、血清中にグルコース濃度が高くされており、電子伝達物質に酸化還元酵素を作用させた後における血球中からのグルコースの拡散が少なくなるようになされている。その結果、後述の実施例からも明らかとなるが、電子伝達物質と発色剤との間の反応初期速度が大きくなり、測定時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0052】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るグルコースセンサについて、図8〜図10を参照して説明する。ただし、図8〜図10においては、先に説明したグルコースセンサ1,1′(図1〜図3、あるいは図5〜図7参照)と同様な要素については同一の符号を付してあり、重複説明は省略する。
【0053】
図8〜図10に示したグルコースセンサ1″は、第1〜第3試薬部51″,52″,53″を備えている点において、第1の実施の形態に係るグルコースセンサ1(図1〜図3参照)とは異なっている一方で、第2の実施の形態に係るグルコースセンサ1′(図5〜図7参照)と同様な構成とされている。また、グルコースセンサ1″は、第1試薬部51″の構成が第2の実施の形態に係るグルコースセンサ1′(図5〜図7参照)とは異なっている。
【0054】
第1試薬部51″は、先に説明したグルコースセンサ1,1′と同様な電子伝達物質を含んだものであり、キャピラリ5に試料が供給されたときに溶解するように構成されている。この第1試薬部51″は、開口50と第3試薬部53″との間において塗り広げられている。
【0055】
第1試薬部51″は、第2試薬部52″および第3試薬部53″よりも、平面視面積、およびキャピリラリ5における血液の流れ方向の長さが大きい長矩形状に形成されている。より具体的には、第1試薬部51″は、開口50から第3試薬部53″における開口50側の縁までの間において、その占有長さが50〜90%とされ、その厚みが、たとえば第3試薬部53″の厚みの15〜80%とされる。これらの数値範囲は、第1試薬部51″の溶解性を十分に改善することができ、かつ、製造上の限界を考慮したものである。第1試薬部51″は、第2試薬部53″を基準とした場合には、その平面視面積が第2試薬部53″の1.5〜10倍とされる。
【0056】
第1試薬部51″と第2試薬部52″中心間距離D1は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、血液が第2試薬部52″に到達するまで(電子伝達物質が発色剤に電子を供給することが可能となるまで)の間に、上限量のグルコースから電子伝達物質への電子移動が実質的に完了する長さに設定されている。一方、第1試薬部51″と第3試薬部53″との中心間距離D2は、第1試薬部51″に含まれる電子伝達物質の存在によって血球中から血球外に取り出し可能なグルコースの最大量の殆ど全ての量のグルコースを取り出せる距離に設定される。第2試薬部52″と第3試薬部53″との中心間距離D3は、第3試薬部53″が十分に溶解し、酸化還元酵素を血液中に十分に分散させることができる距離に設定される。
【0057】
このようなグルコースセンサ1″においては、第1試薬部51″が薄く塗り広げられたものとなっているため、キャピラリ5に血液が供給されたときに、第1試薬部51″の溶解性が高く、血液中に電子伝達物質が良好に分散する。そのため、キャピラリ5に血液が供給されたときに形成される血液と電子伝達物質の混合系においては、電子伝達物質の濃度のバラツキが小さくなる。その結果、測定後の反応速度のバラツキを抑制できるようになり、電子伝達物質の濃度のバラツキの影響を受けやすい低濃度域での測定再現性が向上する。また、グルコースセンサ1″では、グルコースセンサ1′と同様に、血清中のグルコースを電子伝達物質に供給する前に、血球中のグルコースをより積極的に取り出すようにしているために、電子伝達物質と発色剤との間の反応初期速度が大きくなって、測定時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0058】
次に、本発明の第4の実施の形態に係るグルコースセンサについて、図11〜図13を参照して説明する。
【0059】
図11〜図13に示したグルコースセンサ6は、使い捨てとして構成されたものであり、電極法によりグルコース濃度を測定できるように構成されたものである。このグルコースセンサ6は、先に説明したグルコースセンサ1(図1〜図3参照)と同様に、基板7に対して、スペーサ8を介してカバー9を積層した形態を有しており、各要素7〜9により規定されたキャピラリ60を有している。
【0060】
スペーサ8およびカバー9は、先に説明したグルコースセンサ1のスペーサ3およびカバー4(図1〜図3参照)と同様な構成とされている。すなわち、スペーサ8は、キャピラリ60の幅寸法を規定するスリット80を有しており、カバー9はキャピラリ60の内部に連通する貫通孔90を有している。ただし、カバー9は必ずしも透明に形成する必要はない。
【0061】
基板7の上面70には、作用極71、対極72および試薬部73が形成されている。作用極71および対極72は、端部71a,72aが基板7の短手方向に延びている。端部71a,72aは、貫通孔90に比較的に近い部位において基板7の長手方向に並んで設けられており、それらの一部がキャピラリ60の内部において臨んでいる。一方、作用極71および対極72の端部71b,72bは、キャピラリ60の外部において露出している。これらの端部71b,72bは、端部71a,72aの間に電位差を生じさせる際に、プローブなどの端子を接触させるための部分である。
【0062】
試薬部73は、キャピラリ60の内部において開口61の近傍に設けられている。すなわち、試薬部73は、作用極71および対極72の端部71a,72aとは分離された状態において、キャピラリ60における試料の流れ方向の上流に設けられている。この試薬部73は、たとえば電子伝達物質および酸化還元酵素を含む固体状に形成されている。この試薬部73は、血液に対して容易に溶解するものとして形成されている。酸化還元酵素および電子伝達物質としては、グルコースセンサ1の第1試薬部51(図1〜図3参照)における酸化還元酵素および電子伝達物質と同様なものを使用することができる。
【0063】
ここで、試薬部73における電子伝達物質の含有量は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、上限量のグルコースから取り出せる全ての電子を、電子伝達物質において受け取ることができる量として設定されている。また、試薬部73と作用極71の端部71aとの中心間距離D4は、予め設定した測定濃度範囲の上限量のグルコースが血液に含まれる場合において、血液が作用極71の端部71aに到達するまでの間に、上限量のグルコースから電子伝達物質への電子移動が実質的に完了するように設定されている。
【0064】
グルコースセンサ6においても、開口61を介してキャピラリ60に血液を供給した場合には、キャピラリ60において生じる毛細管力により、血液がキャピラリ60の内部を進行する。血液の進行過程においては、血液により試薬部73が溶解させられる。このとき、酸化還元酵素によって血清(血漿)のグルコースから電子が取り出される一方、グルコースから取り出された電子は、酸化還元酵素の作用によって電子伝達物質に供給される。血球内のグルコースは、血液におけるグルコースの消費に伴って血清(血漿)中に移行し、移行したグルコースからは、先に説明したのと同様にして電子が取り出されて電子伝達物質に供給される。血液の進行は、血液が貫通孔90に到達したときに停止する。このとき、電子伝達物質が作用極71の端部71aの表面に存在する。作用極71の端部71aに対しては、作用極71と対極72の間に電圧を印加することにより、電子伝達物質から電子が供給される。最終的なグルコース濃度は、作用極71の端部71aに対して電子伝達物質から供給された電子の量に基づいて演算される。
【0065】
グルコースセンサ6では、試薬部73が作用極71の端部71aに比べて、血液の流れ方向の上流側に設けられ、かつ開口50の近傍に配置されている。そのため、電子伝達物質が作用極71の端部71aに到達する前に、電子伝達物質を積極的にグルコースと反応させることができる。したがって、グルコースセンサ6では、先に説明したグルコースセンサ1(図1〜図3参照)と同様に、全血中における血球濃度の影響を抑制し、精度良くグルコース濃度を測定できるようになる。
【0066】
グルコースセンサ6においては、試薬部73が電子伝達物質および酸化還元酵素を含んでいたが、先に説明したグルコースセンサ1′,1″(図8〜図10、あるいは図11〜図13参照)と同様に、電子伝達物質を含む試薬部と、酸化還元酵素を含む試薬部に分離して形成してもよい。
【0067】
本発明は、試料として血液以外のもの、たとえば血液の希釈液を使用するように構成されたグルコースセンサにも適用することができる。本発明はさらに、グルコース以外の成分、たとえばコレステロールや乳酸を分析するように構成された分析用具に適用することもできる。
【実施例1】
【0068】
本実施例においては、比色用のグルコースセンサを用いた血糖値の測定において、血液における血球濃度(ヘマトクリット値(Hct))が測定結果に与える影響を検討した。グルコースセンサとしては、以下に説明するグルコースセンサ(1)〜(3)を用いた。Hct値が測定結果に与える影響は、吸光度のタイムコースおよび特定時間経過後におけるバイアスに基づいて検討した。
【0069】
(グルコースセンサの基本構成)
グルコースセンサ(1)〜(3)の基本構成(試薬部を除く)は図14に示した通りである。すなわち、各グルコースセンサ(1)〜(3)は、透明基板2Aに対してスペーサ3Aを介して透明カバー4Aを積層した形態を有するとともに、各要素2A〜4Aによってキャピラリ5Aが規定されたものとされている。キャピラリ5Aの寸法は、図14に記入したように、1.3mm×9mm×50μmである。透明基板2Aおよび透明カバー4Aは、厚みが250μmであるPETにより形成し、スペーサ3Aは両面テープにより構成した。
【0070】
(試薬部の構成および形成方法)
各グルコースセンサ(1)〜(3)においては、発色剤を含んだ試薬部を、電子伝達物質および酸化還元酵素のうちの少なくとも一方を含む試薬部に対して、キャピラリの流れ方向に分離して設けた。
【0071】
グルコースセンサ(1)(本案)では、図15Aに示したように電子伝達物質および酸化還元酵素を含む第1試薬部51Aをキャピラリ5Aの上流側に、発色剤を含む第2試薬部52Aをキャピラリ5Aにおける下流側に設けた。第1試薬部51Aは、その中心が試料導入口50Aから3mmの距離のところに位置し、かつ血液に対して溶解するように形成した。第2試薬部52Aは、その中心が貫通孔40Aの最上流点40Aaから1mmの距離のところに位置するとともに、透明基板2Aに対して固定化され、かつ血液に対して難溶なゲル状担体に発色剤を保持させた構成に形成した。第1試薬部51Aと第2試薬部52Aとの中心間距離は、5mmに設定した。
【0072】
第1および第2試薬部51A,52Aは、目的とする材料液を目的部位に塗布した後、材料液を送風乾燥(30℃、10%Rh)させることにより形成した。なお、第1および第2試薬部51A,52Aを形成する場合の材料液の組成および材料液の塗布量については、下記表1および表2に示した通りである。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
グルコースセンサ(2)(本案)は、図15Bに示したように、グルコースセンサ(1)(図15A参照)において第1試薬部51Bが酸化還元酵素を含まないものとする代わりに、第1試薬部51Bと第2試薬部52Bとの間に、酸化還元酵素を含む第3試薬部53Bを形成したものとした。この第3試薬部53Bは、その中心が、第1試薬部51Bの中心と第2試薬部52Bの中心との中間に位置するように形成した。
【0076】
第1〜第3試薬部51B,52B,53Bは、目的とする材料液を目的部位に塗布した後、材料液を送風乾燥(30℃、10%Rh)させることにより形成した。なお、第1〜第3試薬部51B,52B,53Bを形成する場合の材料液の組成および材料液の塗布量については、下記表3〜表5に示した通りである。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
グルコースセンサ(3)(比較)は、図15Cに示したように、グルコースセンサ(1)(図15A参照)において、発色剤を含む試薬部の位置と、電子伝達物質および酸化還元酵素を含む試薬部の位置とを入れ替えた構成とした。すなわち、第1試薬部51Cは、グルコースセンサ(1)における第2試薬部52Aに対応する部位(下流側)において、血液に対して難溶なゲル状担体に電子伝達物質および酸化還元酵素を保持させた状態で透明基板2Aに対して固定化した。一方、第2試薬部52Cは、グルコースセンサ(1)における第1試薬部51Aに対応する部位(上流側)において、血液に対して溶解するように形成した。
【0081】
第1および第2試薬部51C,52Cは、目的とする材料液を目的部位に塗布した後、材料液を送風乾燥(30℃、10%Rh)させることにより形成した。なお、第1および第2試薬部51C,52Cを形成する場合の材料液の組成および材料液の塗布量については、下記表6および表7に示した通りである。
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
表1〜表7において、CHAPSは3-[(3-cholamidopropyl)dimethylammonio] propanesulfonic acidの略号であり、ACESはN-(2-acetamido)-2-aminoethanesulfonic acidの略号であり、MTTは3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromideの略
号である。CHAPSとしては同仁化学研究所(日本国)製「KC062」を、ACESとしては同仁化学研究所(日本国)製「ED067」を、MTTとしては同仁化学研究所(日本国)製「M009」を、PQQGDHとしては同仁化学研究所(日本国)製のものを、[Ru(NH3)6]Cl3としては同仁化学研究所(日本国)製「LM722」を、スクロースモノラウレートとしては同仁化学研究所(日本国)製「PV689」を、ポリアクリルアミドとしてはナカライテスク(日本国)製「Z2T8071」を使用した。
【0085】
(吸光度のタイムコース測定)
吸光度タイムコースは、キャピラリに検体を供給した時点から0.1秒毎に吸光度を繰り返し測定して作成した。各回の吸光度の測定においては、グルコースセンサ(1),(2)については第2試薬部52A,52Bに対して、グルコースセンサ(3)については第1試薬部51Cに対して、それぞれキャピラリの高さ方向に沿って光を照射し、そのときにグルコースセンサ(1)〜(3)を透過した光を受光した。光の照射は、発光ダイオードを用いて、630nmの光を照射することにより行った。透過光は、フォトダイオードにおいて受光した。吸光度は、下記数式1により算出した。
【0086】
【数1】
【0087】
吸光度のタイムコースは、各グルコースセンサ(1)〜(3)において、ヘマトクリット値の異なる3種類の検体(Hct=20%、42%、60%)について5回ずつ測定した。検体におけるグルコース濃度は、430mg/dLに調整した。吸光度のタイムコースについては、グルコースセンサ(1)については図16Aに、グルコースセンサ(2)については図16Bに、グルコースセンサ(3)については図16Cにそれぞれ示した。一方、バイアスの演算結果については、図17に示した。図17においては、バイアスは測定開始から5秒経過後の吸光度に基づいて、各グルコースセンサ(1)〜(3)毎および各Hctの検体毎に、5回の測定の平均値として示してある。
【0088】
図16A 〜図16Cから分かるように、グルコースセンサ(1),(2)(本案)は、グルコースセンサ(3)(比較)に比べて試薬部への酵素含有量(活性基準)が少ないにも拘らず、いずれのHctの検体においても、吸光度の立ち上がりが大きい上に吸光度が一定値に漸近するまでの時間が短い。そのため、グルコースセンサ(1),(2)(本案)を用いれば、使用する酵素量を少なくしつつも、測定時間の短縮化を図ることができるといえる。とくに、グルコースセンサ(2)(本案)においては、グルコースセンサ(1)(本案)に比べて測定初期(5秒以下)におけるタイムコースが安定し、かつ一定値に漸近するまでの時間が短い。そのため、Hctが未知の検体を短時間で正確に測定する観点からは、グルコースセンサ(2)(本案)がさらに有用である。
【0089】
一方、図17から分かるように、グルコースセンサ(1),(2)(本案)は、グルコースセンサ(3)(比較)に比べて、高Hct検体(60%)および低Hct検体(20%)の双方における5秒値のバイアスが小さく、中Hct検体(42%)からのずれ量が小さい。この点からは、グルコースセンサ(1),(2)(本案)は、グルコースセンサ(3)(比較)に比べてHctの影響を受けにくいといえる。
【実施例2】
【0090】
本実施例においては、実施例1と同様にして作成したグルコースセンサ(1)〜(3)を用いて、グルコース濃度が異なる5種類の検体(0mg/dL 、113mg/dL、212mg/dL、430mg/dL、598 mg/dL)について、実施例1と同様にして吸光度のタイムコースを測定した。その結果を図18A〜図18Cに示した。
【0091】
図18A〜図18Cから分かるように、グルコースセンサ(1),(2)(本案)は、グルコースセンサ(3)(比較)に比べて試薬部への酵素含有量(活性基準)が少ないにも拘らず、いずれのグルコース濃度の検体においても、吸光度の立ち上がりが大きい上に吸光度が一定値に漸近するまでの時間が短い。このことは同時に、グルコースセンサ(1),(2)は、グルコースセンサ(3)に比べて、測定時間が短い場合(たとえば5秒以下)においても、吸光度とグルコース濃度との関係が高い直線性を示すことを意味している。すなわち、グルコースセンサ(1),(2)では、測定レンジを広く確保しつつも、測定時間の短縮化を図ることができる。
【実施例3】
【0092】
実施例2において得られたデータに基づいて、測定再現性を評価した。測定再現性は、各グルコースセンサ(1)〜(3)毎に、各グルコース濃度の検体について、測定開始から5秒後における吸光度のバラツキを計算することにより行った。計算結果については、下記表8〜表10に示した。
【0093】
【表8】
【0094】
【表9】
【0095】
【表10】
【0096】
表8〜表10から分かるように、グルコースセンサ(1),(2)(本案)は、グルコースセンサ(3)(比較)に比べて、総合的にC.V.(%)が小さく、その値自体も小さいことから、測定再現性が優れていると言える。
【0097】
実施例1〜3の結果を総合すれば、次のように結論付けることができる。すなわち、電子伝達物質を含んだ第1試薬部51A,51Bと発色剤を含んだ第2試薬部52A,52Bとを分離し、かつ第1試薬部51A,51Bを第2試薬部52A,52Bよりも上流側に配置した場合(グルコースセンサ(1),(2))には、第2試薬部52Cを第1試薬部51Cよりも上流側に配置した場合(グルコースセンサ(3))に比べて、Hctの影響を受けにくく、少ない酵素量によって、測定レンジを広く確保しつつ測定時間の短縮化を図ることができる。とくに、電子伝達物質を含んだ第1試薬部51Bと酸化還元酵素を含んだ第3試薬部53Bとを分離し、かつ第1試薬部51Bを第3試薬部53Bよりも上流側に配置した場合(グルコースセンサ(2))には、電子伝達物質と酸化還元酵素とを混在させて第1試薬部51Aを構成する場合(グルコースセンサ(1))に比べて、さらに測定時間の短縮化を図り、しかも測定安定性を向上させることができる。
【実施例4】
【0098】
本実施例では、図19に示した構成の本案グルコースセンサ、および図15Bのグルコースセンサ(2)に相当する参照グルコースセンサについて測定再現性を検討した。
【0099】
参照グルコースセンサについては、実施例1のグルコースセンサ(2)と同様な手法により作成した。一方、本案グルコースセンサは、参照グルコースセンサ(実施例1のグルコースセンサ(2))を形成する場合において、第1試薬部51B′は、第1試薬部51Bを形成するときと同量かつ同組成の材料液を塗布した後に、この材料液を目的とする大きさに広げてから乾燥させて形成した点を除いて、参照グルコースセンサ(実施例1のグルコースセンサ(2))と同様にして作成した。ここで、本案グルコースセンサにおける第1試薬部51B′は、第3試薬部53Bよりも長い3.5mmの長さに、第3試薬部53Bよりも厚みを小さく形成し、第3試薬部53Bにおける導入口50B側の縁から導入口50Bまでの距離における87.5%の長さ範囲を占めるものとして形成した。
【0100】
測定再現性については、上述の本案グルコースセンサおよび参照グルコースセンサを用いて、Hctが42%である検体について、実施例1と同様にして吸光度のタイムコースを測定した結果、および測定開始から5秒後における吸光度のバラツキを計算することにより検討した。検体としては、グルコース濃度が異なる3種類(0mg/dL、100mg/dL、400mg/dL)のものを使用した。タイムコースは、各グルコースセンサについて、0mg/dLの検体において5回、100mg/dLおよび400mg/dLの検体において10回測定した。
【0101】
吸光度のタイムコースを測定した結果は、本案グルコースセンサについては図20A〜図20Cに、参照グルコースセンサについては図21A〜図21Cにそれぞれ示した。5秒後の吸光度のバラツキの計算結果は、本案グルコースセンサについては表11に、参照グルコースセンサについては表12にそれぞれ示した。なお、図20A〜図20Cおよび図21A〜図21Cにおいては、波長660nmで吸光度を測定した結果、波長940nmで吸光度を測定した結果、および波長660nmでの測定結果から波長940nmでの測定結果を差分した結果をそれぞれ示し、表11および表12においては波長660nmでの測定結果から波長940nmでの測定結果を差分した結果についてのバラツキの計算結果を示した。
【0102】
【表11】
【0103】
【表12】
【0104】
図20A〜図20Cと、図21A〜図21Cとを比較すれば分かるように、本案グルコースセンサのほうが参照グルコースセンサに比べて、吸光度のタイムコースにおけるバラツキが明らかに少ない。一方、表11と表12とを比較すれば分かるように、5秒値における吸光度のバラツキは、本案グルコースセンサのほうが参照グルコースセンサに比べて、低濃度域(100mg/dL以下)におけるC.V.(%)が小さい。すなわち、本案グルコースセンサのほうが参照グルコースセンサに比べて、低濃度域(100mg/dL以下)における測定再現性が優れていると言える。
【0105】
ここで、参照グルコースセンサは、実施例1〜3におけるグルコースセンサ(2)に相当するものであり、このグルコースセンサ(2)は、実施例1〜3におけるグルコースセンサ(1),(3)に比べて測定再現性に優れるものである。すなわち、本案グルコースセンサにおいては、測定再現性に優れるグルコースセンサ(2)(参照グルコースセンサ)よりもさらに、低濃度における再現性が優れたものとなっている。
【0106】
この結果は、本案グルコースセンサにおいて、第1試薬部51B′を薄く塗り広げることにより第1試薬部51B′の溶解性が高められ、流路に導入された試料における電子伝達物質の濃度のバラツキが小さくなっているためであると考えられる。そのため、低濃度における再現性を改善するためには、電子伝達物質と酸化還元酵素とを分離しつつも、電子伝達物質については、その溶解性(試料に対する拡散性)を高めるために、第1試薬部51B′を薄膜とし、あるいは他の試薬部52B,53Bやなどよりも試料の流れ方向に長い形態とするのが好ましいと言える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血球を含んだ試料を移動させるための流路と、上記流路に試料を導入するための導入口と、上記流路の内部に配置された試薬部と、試料中の分析対象成分の分析を行うために必要な情報を、電子授受量に相関させて得るための電子検出媒体と、を備えた分析用具であって、
上記試薬部は、試料中の分析対象成分から取り出した電子を上記電子検出媒体に供給するための電子伝達物質を含んでおり、かつ少なくとも一部が上記導入口の近傍に配置されている、試薬部の配置を改良した分析用具。
【請求項2】
上記試薬部は、上記電子検出媒体とは分離された状態で、上記電子検出媒体よりも試料の流れ方向の上流側に配置されている、請求項1に記載の分析用具。
【請求項3】
上記試薬部は、上記流路に試料を供給したときに溶解する固体状に形成されている、請求項2に記載の分析用具。
【請求項4】
上記試薬部と上記電子検出媒体との間の中心間距離は、予め設定した検出範囲の上限量の分析対象成分が上記試料に含まれる場合において、上記上限量の分析対象成分から上記電子伝達物質への電子移動が、上記電子伝達物質が上記電子検出媒体に対して電子を供給しうる状態となるまでの間に、実質的に完了する長さに設定されている、請求項3に記載の分析用具。
【請求項5】
上記試薬部における電子伝達物質の含有量は、予め設定した検出範囲の上限量の分析対象成分が上記試料に含まれる場合において、上記上限量の分析対象成分から取り出せる全ての電子を、上記電子伝達物質において受け取ることができる量に設定されている、請求項3に記載の分析用具。
【請求項6】
上記電子検出媒体は、発色剤を含んでいる、請求項1に記載の分析用具。
【請求項7】
上記電子検出媒体は、試料に対して難溶性の多孔質体に、上記発色剤を保持させた構成を有している、請求項6に記載の分析用具。
【請求項8】
上記電子検出媒体は、導体である、請求項1に記載の分析用具。
【請求項9】
上記導体は、上記流路に試料が供給されたときに、上記電子伝達物質に電圧を印加するために利用されるものである、請求項8に記載の分析用具。
【請求項10】
上記試薬部は、試料中の分析対象成分から電子を取り出して上記電子伝達物質に電子を供給するための酸化還元酵素を含んでいる、請求項1に記載の分析用具。
【請求項11】
試料中の分析対象成分から電子を取り出して上記電子伝達物質に電子を供給するための酸化還元酵素を含み、かつ上記試薬部とは分離して設けられた追加の試薬部をさらに備えている、請求項1に記載の分析用具。
【請求項12】
上記追加の試薬部は、上記流路の内部における試料の流れ方向において、上記試薬部と上記電子検出媒体との間に配置されている、請求項11に記載の分析用具。
【請求項13】
上記試薬部は、上記追加の試薬部よりも平面視面積が大きくされている、請求項12に記載の分析用具。
【請求項14】
上記試薬部は、上記追加の試薬部よりも試料の流れ方向の長さが大きくされている、請求項12に記載の分析用具。
【請求項15】
上記試薬部は、上記追加の試薬部よりも厚みが小さくされている、請求項12に記載の分析用具。
【請求項16】
上記試薬部の厚みは、上記追加の試薬部の厚みの15〜80%である、請求項15に記載の分析用具。
【請求項17】
上記試薬部は、上記流路における上記電子検出媒体の平面視面積の1.5〜10倍の平面視面積を有している、請求項12に記載の分析用具。
【請求項18】
上記試薬部は、上記追加の試薬部における上記導入口側の縁から上記導入口までの距離における50〜90%の長さ範囲を占めている、請求項12に記載の分析用具。
【請求項19】
上記試薬部および上記追加の試薬部は、上記流路に試料を供給したときに溶解するように構成されている、請求項12に記載の分析用具。
【請求項20】
上記酸化還元酵素は、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)である、請求項10に記載の分析用具。
【請求項21】
上記酸化還元酵素は、PQQGDH、αGDH、またはCyGDHである、請求項20に記載の分析用具。
【請求項22】
上記電子伝達物質は、Ru錯体である、請求項1に記載の分析用具。
【請求項23】
試料中の分析対象成分は、グルコースである、請求項1に記載の分析用具。
【請求項24】
上記流路は、毛細管力が生じるように構成されている、請求項1に記載の分析用具。
【請求項25】
血球を含んだ試料を移動させるための流路と、上記流路に試料を導入するための導入口と、試料中の分析対象成分の分析を行うために必要な情報を、電子授受量に相関させて得るためのものであり、かつ試料に対して難溶性の多孔質体に発色剤を保持させた構成の電子検出媒体と、試料中の分析対象成分から取り出した電子を上記電子検出媒体に供給するための電子伝達物質を含み、かつ上記流路に試料を供給したときに溶解するように構成された電子伝達物質層と、試料中の分析対象成分から電子を取り出して上記電子伝達物質に電子を供給するための酸化還元酵素を含み、かつ上記流路に試料を供給したときに溶解するように構成された酸化還元酵素層と、を備えた分析用具であって、
上記流路において、上記電子伝達物質層、上記酸化還元酵素層および上記電子検出媒体がこの順序で、試料の流れ方向の上流側から順番に並んで配置されている、分析用具。
【請求項26】
上記電子伝達物質層は、上記酸化還元酵素層よりも平面視面積が大きくされている、請求項25に記載の分析用具。
【請求項27】
上記電子伝達物質層は、上記酸化還元酵素層よりも試料の流れ方向の長さが大きくされている、請求項25に記載の分析用具。
【請求項28】
上記電子伝達物質層は、上記酸化還元酵素層よりに厚みが小さくされている、請求項25に記載の分析用具。
【請求項29】
上記電子伝達物質層の厚みは、上記酸化還元酵素層の厚みの15〜80%である、請求項28に記載の分析用具。
【請求項30】
上記電子伝達物質層は、上記流路における上記電子検出媒体の平面視面積の1.5〜10倍の平面視面積を有している、請求項25に記載の分析用具。
【請求項31】
上記電子伝達物質層は、上記酸化還元酵素層における上記導入口側の縁から上記導入口までの距離における50〜90%の長さ範囲を占めている、請求項25に記載の分析用具。
【請求項32】
上記電子伝達物質は、Ru錯体である、請求項25に記載の分析用具。
【請求項33】
血球を含んだ試料が移動した状態において、上記試料に含まれる分析対象成分から取り出した電子を電子伝達物質に供給し、上記分析対象成分から上記電子伝達物質への電子移動を、実質的に完了する過程と、
上記試料の移動が停止した状態において、上記電子伝達物質と電子検出媒体との間の電子授受反応を行う過程と、
上記電子検出媒体を介して得られる情報に基づいて、分析対象成分の分析に必要な演算を行う過程と、
を含んでいる、分析方法。
【請求項34】
上記電子検出媒体は、発色剤を含んでいる、請求項33に記載の分析方法。
【請求項35】
上記分析対象成分は、グルコースである、請求項33に記載の分析方法。
【請求項1】
血球を含んだ試料を移動させるための流路と、上記流路に試料を導入するための導入口と、上記流路の内部に配置された試薬部と、試料中の分析対象成分の分析を行うために必要な情報を、電子授受量に相関させて得るための電子検出媒体と、を備えた分析用具であって、
上記試薬部は、試料中の分析対象成分から取り出した電子を上記電子検出媒体に供給するための電子伝達物質を含んでおり、かつ少なくとも一部が上記導入口の近傍に配置されている、試薬部の配置を改良した分析用具。
【請求項2】
上記試薬部は、上記電子検出媒体とは分離された状態で、上記電子検出媒体よりも試料の流れ方向の上流側に配置されている、請求項1に記載の分析用具。
【請求項3】
上記試薬部は、上記流路に試料を供給したときに溶解する固体状に形成されている、請求項2に記載の分析用具。
【請求項4】
上記試薬部と上記電子検出媒体との間の中心間距離は、予め設定した検出範囲の上限量の分析対象成分が上記試料に含まれる場合において、上記上限量の分析対象成分から上記電子伝達物質への電子移動が、上記電子伝達物質が上記電子検出媒体に対して電子を供給しうる状態となるまでの間に、実質的に完了する長さに設定されている、請求項3に記載の分析用具。
【請求項5】
上記試薬部における電子伝達物質の含有量は、予め設定した検出範囲の上限量の分析対象成分が上記試料に含まれる場合において、上記上限量の分析対象成分から取り出せる全ての電子を、上記電子伝達物質において受け取ることができる量に設定されている、請求項3に記載の分析用具。
【請求項6】
上記電子検出媒体は、発色剤を含んでいる、請求項1に記載の分析用具。
【請求項7】
上記電子検出媒体は、試料に対して難溶性の多孔質体に、上記発色剤を保持させた構成を有している、請求項6に記載の分析用具。
【請求項8】
上記電子検出媒体は、導体である、請求項1に記載の分析用具。
【請求項9】
上記導体は、上記流路に試料が供給されたときに、上記電子伝達物質に電圧を印加するために利用されるものである、請求項8に記載の分析用具。
【請求項10】
上記試薬部は、試料中の分析対象成分から電子を取り出して上記電子伝達物質に電子を供給するための酸化還元酵素を含んでいる、請求項1に記載の分析用具。
【請求項11】
試料中の分析対象成分から電子を取り出して上記電子伝達物質に電子を供給するための酸化還元酵素を含み、かつ上記試薬部とは分離して設けられた追加の試薬部をさらに備えている、請求項1に記載の分析用具。
【請求項12】
上記追加の試薬部は、上記流路の内部における試料の流れ方向において、上記試薬部と上記電子検出媒体との間に配置されている、請求項11に記載の分析用具。
【請求項13】
上記試薬部は、上記追加の試薬部よりも平面視面積が大きくされている、請求項12に記載の分析用具。
【請求項14】
上記試薬部は、上記追加の試薬部よりも試料の流れ方向の長さが大きくされている、請求項12に記載の分析用具。
【請求項15】
上記試薬部は、上記追加の試薬部よりも厚みが小さくされている、請求項12に記載の分析用具。
【請求項16】
上記試薬部の厚みは、上記追加の試薬部の厚みの15〜80%である、請求項15に記載の分析用具。
【請求項17】
上記試薬部は、上記流路における上記電子検出媒体の平面視面積の1.5〜10倍の平面視面積を有している、請求項12に記載の分析用具。
【請求項18】
上記試薬部は、上記追加の試薬部における上記導入口側の縁から上記導入口までの距離における50〜90%の長さ範囲を占めている、請求項12に記載の分析用具。
【請求項19】
上記試薬部および上記追加の試薬部は、上記流路に試料を供給したときに溶解するように構成されている、請求項12に記載の分析用具。
【請求項20】
上記酸化還元酵素は、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)である、請求項10に記載の分析用具。
【請求項21】
上記酸化還元酵素は、PQQGDH、αGDH、またはCyGDHである、請求項20に記載の分析用具。
【請求項22】
上記電子伝達物質は、Ru錯体である、請求項1に記載の分析用具。
【請求項23】
試料中の分析対象成分は、グルコースである、請求項1に記載の分析用具。
【請求項24】
上記流路は、毛細管力が生じるように構成されている、請求項1に記載の分析用具。
【請求項25】
血球を含んだ試料を移動させるための流路と、上記流路に試料を導入するための導入口と、試料中の分析対象成分の分析を行うために必要な情報を、電子授受量に相関させて得るためのものであり、かつ試料に対して難溶性の多孔質体に発色剤を保持させた構成の電子検出媒体と、試料中の分析対象成分から取り出した電子を上記電子検出媒体に供給するための電子伝達物質を含み、かつ上記流路に試料を供給したときに溶解するように構成された電子伝達物質層と、試料中の分析対象成分から電子を取り出して上記電子伝達物質に電子を供給するための酸化還元酵素を含み、かつ上記流路に試料を供給したときに溶解するように構成された酸化還元酵素層と、を備えた分析用具であって、
上記流路において、上記電子伝達物質層、上記酸化還元酵素層および上記電子検出媒体がこの順序で、試料の流れ方向の上流側から順番に並んで配置されている、分析用具。
【請求項26】
上記電子伝達物質層は、上記酸化還元酵素層よりも平面視面積が大きくされている、請求項25に記載の分析用具。
【請求項27】
上記電子伝達物質層は、上記酸化還元酵素層よりも試料の流れ方向の長さが大きくされている、請求項25に記載の分析用具。
【請求項28】
上記電子伝達物質層は、上記酸化還元酵素層よりに厚みが小さくされている、請求項25に記載の分析用具。
【請求項29】
上記電子伝達物質層の厚みは、上記酸化還元酵素層の厚みの15〜80%である、請求項28に記載の分析用具。
【請求項30】
上記電子伝達物質層は、上記流路における上記電子検出媒体の平面視面積の1.5〜10倍の平面視面積を有している、請求項25に記載の分析用具。
【請求項31】
上記電子伝達物質層は、上記酸化還元酵素層における上記導入口側の縁から上記導入口までの距離における50〜90%の長さ範囲を占めている、請求項25に記載の分析用具。
【請求項32】
上記電子伝達物質は、Ru錯体である、請求項25に記載の分析用具。
【請求項33】
血球を含んだ試料が移動した状態において、上記試料に含まれる分析対象成分から取り出した電子を電子伝達物質に供給し、上記分析対象成分から上記電子伝達物質への電子移動を、実質的に完了する過程と、
上記試料の移動が停止した状態において、上記電子伝達物質と電子検出媒体との間の電子授受反応を行う過程と、
上記電子検出媒体を介して得られる情報に基づいて、分析対象成分の分析に必要な演算を行う過程と、
を含んでいる、分析方法。
【請求項34】
上記電子検出媒体は、発色剤を含んでいる、請求項33に記載の分析方法。
【請求項35】
上記分析対象成分は、グルコースである、請求項33に記載の分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【国際公開番号】WO2005/066638
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516910(P2005−516910)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000153
【国際出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2005/000153
【国際出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]