説明

試錐孔情報管理システム

本発明は、試錐孔に関する情報を管理する方法およびシステムに関するものである。本発明はさらに、この方法およびシステムによって利用される識別装置に関するものである。識別装置(5)は、機械読み取り可能な情報を含み、調査中の試錐孔(2)に対して配設される。この読み取り可能な情報は、識別コード、または、識別装置(5)に記憶される試錐孔(2)に関する測定情報でよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、試錐孔情報を管理する方法であって、少なくとも1つの試錐孔に関する情報を収集および記憶することを含む方法に関するものである。
【0002】
本発明はさらに、試錐孔情報を管理するシステムであって、試錐孔情報を記憶する少なくとも1つの制御装置を含むシステムに関するものである。
【0003】
本発明はさらに、1つの試錐孔を識別する識別装置であって、フレームと、本識別装置を試錐孔に対して固定する手段とを含む識別装置に関するものである。
【0004】
削岩工程は試錐孔に関する大量のさまざまな情報を産出する。試錐前に、試錐計画および装薬計画を作ることができる。さらに、試錐中に蓄積した情報を記憶装置に記憶することができる。加えて、試錐後に試錐孔を計測して、その結果を確証することができる。試錐孔ごとに情報を収集する。問題は、さまざまな情報源からの無体系な情報は、管理するのが困難であることである。
【発明の簡単な説明】
【0005】
本発明は、試錐孔に関する情報を管理するための新規で改善された設備を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の方法は、機械読み取り可能な情報を含む少なくとも1つの識別装置を調査中の試錐孔に対して配設すること、および、記憶した情報と調査中の試錐孔とをこの識別装置から読み取られる情報によって共に関係付けることを特徴とする。
【0007】
本発明のシステムは、調査中の1つの試錐孔に対して配設される少なくとも1つの識別装置を含むこと、この識別装置が機械読み取り可能な情報を含むこと、および、記憶した情報と調査中の試錐孔とをこの識別装置から読み取られる情報によって共に関係付けるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明による識別装置は、少なくとも1つの機械読み取り可能な識別コードを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の根底をなす思想は、識別装置が試錐孔に対して配設され、試錐孔に関する読み取り可能な情報を含むことにある。
【0010】
本発明の利点は、この識別装置によって試錐孔情報を明確に正しい試錐孔と確実に関係付けることが、信頼性のある比較的簡単な方法で可能になったことである。これによって、掘削工程全体が管理し易くなる。さらに、本発明は掘削工程の安全性を改善し、自動化を容易にする。
【0011】
本発明の一実施例の根底をなす思想は、識別装置に1つの識別コードを含ませて、これに基づいて1つの試錐孔が、その特定の試錐孔に関するデータと関係付けられることにある。このデータをシステムの制御装置に記憶させることができる。
【0012】
本発明の一実施例の根底をなす思想は、上記識別装置に含まれる情報を遠隔方式で機械読み取り可能なことにある。
【0013】
本発明の一実施例の根底をなす思想は、識別装置が少なくとも1つの記憶素子を含み、この中に情報を記憶することができることにある。
【0014】
本発明の一実施例の根底をなす思想は、識別装置が少なくとも1つの記憶素子を含み、識別コードの他に、試錐孔測定情報、使用する試錐パラメータに関する情報、岩種情報、操作者の意見、もしくは試錐後の段階に必要な情報などの他の情報を記憶できることにある。
【0015】
本発明の一実施例の根底をなす思想は、識別装置が固定用エレメントを有していることにある。このことは、なんら別個の手段を用いずに識別装置を試錐孔に対して固定することが可能であることを意味している。
【0016】
本発明の一実施例の根底をなす思想は、識別装置のフレームが管状であり、これによって爆薬、密封材、種々のカートリッジ、測定機器などを試錐孔の中へ差し込むことが可能なことにある。したがって、識別装置を例えば装薬のために引き抜く必要がなく、これによって工程がスピードアップする。さらに、識別装置が試錐孔を絶え間なく識別するので、試錐孔を互いに混同する危険がない。さらに、このような識別装置は、試錐孔の口を崩壊から保護でき、また、その試錐孔に不純物が入り込むことを防ぐことができる。
【0017】
本発明の一実施例の根底をなす思想は、識別装置を試錐前に試錐計画に従った場所に配設すること、および試錐孔を、識別装置を介して試錐することにある。識別装置に開口を設け、試錐装置をそれに貫通させることができる。
【0018】
本発明の一実施例の根底をなす思想は、識別装置を調査中の試錐孔に対して自動的に配設する手段を、鉱車に装備することにある。したがって、試錐装置が、試錐中もしくはその直後に試錐孔に対して識別装置を配設する手段を含むことができる。また、鉱車に設けられた測定装置に試錐孔に対して識別装置を配設する手段を装備することができる。
【0019】
本発明の一実施例の根底をなす思想は、識別装置に含まれる情報を読み取る読取機を、鉱車に装備することにある。この読取機は、装薬装置に関連して、例えば削岩装置内に設けてよく、または鉱車に設けられた測定ブーム内に設けてもよい。
【0020】
本発明の一実施例の根底をなす思想は、識別装置に情報を記憶する手段を鉱車に装備することにある。この記憶手段は、例えば、削岩装置もしくは装薬装置に対して設けてもよく、または鉱車に設けられた測定ブームに設けてもよい。
【0021】
次に、添付の図面において本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
明確にするため、本発明を簡略化して図示する。同じ参照番号は同様の構成要素を示す。
【発明の詳細な説明】
【0023】
図1に、試錐孔情報を管理する本発明のシステムを示す。試錐孔2は、岩石内に、この場合、所定の試錐計画に従って横坑道の後面1に試錐されている。この試錐計画で、例えば試錐孔の数、位置、方向、寸法、および試錐孔識別情報を決めることができる。さらに、既にこの段階で、使用する爆薬、装薬量、および雷管を決める発破計画を作ることができる。この試錐計画を、他の試錐孔情報と共に制御装置3に記憶することができ、この制御装置3は、例えば必要な情報を記憶することができ、また情報を処理することができるコンピュータもしくは同様の装置などにすることができる。この制御装置3はサーバでもよく、これに含まれる情報は掘削工程に係る複数の装置がアクセスできる。制御装置3は、試錐孔2に関する情報を、適した形式で、例えば表形式で記憶することができる、データベース4もしくはこれと同様のものを含むことができる。制御装置3内の情報を、1つの試錐孔と明確に関係付けるために、識別装置5を調査中の試錐孔に対して配設し、この識別装置に含まれる情報は制御装置3に接続されている読取機6で読み出し可能である。識別装置5に含まれる情報は、試錐孔2a および関連ファイル4a を共に関係付ける識別コードにしてもよい。他方、この識別コードに加えて、識別装置5は、以下にさらに詳細に説明するように、例えば測定情報、試錐情報もしくは岩種情報を含んでもよい。
【0024】
図2に、試錐孔2を測定する構成を示す。試錐孔2は、測定装置7を用いて測定することができる。測定装置7は、送信素子8によって試錐孔2へ挿入されるセンサ9、およびフレーム10を含んでもよい。センサ9は、例えば傾斜度センサ、加速度センサ、電気式コンパス、GPS 受信機装置もしくは同様の装置、地球物理学的センサ、または試錐孔2を測定するために適した他の装置を含んでもよい。さらに、センサ9の数量を2つ以上にすることができ、これによって複数の異なる測定を同時に行なうことが可能になる。また、測定装置7は制御装置3をも含んでもよい。さらに、この測定装置7は、試錐孔2の隣に配置された識別装置に含まれる情報、例えば識別コード、を読み取る読取機6を含んでもよい。この識別コードによって、測定中に収集された測定情報を、特定の試錐孔2と、制御装置で的確に関係付けることが可能になる。制御装置に記憶される情報には、1つの試錐孔の例えば位置座標、方向、真直度、長さ、直径、およびその地球物理学的特徴を含めることができる。また、識別装置5は、識別コード以外の情報を記憶することができる1つ以上の記憶素子を含んでいてもよい。このような場合、測定装置7の読取機6は、情報を識別装置5の記憶素子に記憶する手段を有していてもよい。測定結果を、そのまま、もしくは制御装置3において処理した後に、識別装置5に記憶することができる。例えば、試錐孔の真直度もしくは寸法、または岩種などに関する測定中に得た情報を、識別装置5に記憶することができる。識別装置5は、例えば接着剤によって、もしくは岩石に設けた固定用エレメントによって、岩石の表面へ固定することができる物体である。さらに、識別装置5’ は、試錐孔2の底部へ落下、もしくは押し付けることができる物体でよい。
【0025】
図3に識別装置5を示す。識別装置5は長尺状の管状フレーム11を有し、識別装置を少なくとも部分的に試錐孔2へ挿入することができる。フレーム11は、さらに円錐部12を含んでもよく、その結果、識別装置5が試錐孔2にしっかりと押し込まれるようになる。別個の固定剤もしくは固定用装置は必ずしも必要としない。さらに、例えば測定用センサ9、装薬用材料または補強材料を、フレーム11の開口13を介して挿入することができる。
【0026】
図3において、識別装置5は、この識別装置5と本システムに含まれる少なくとも1つの制御装置3との間に無線接続を確立する手段を有している。データ送信を、例えば電波、赤外線、もしくは他の適した無線方式を用いて実現することができる。接続を確立するために、識別装置5には少なくとも1つの送信機14が設けられ、他方、読取機6には少なくとも1つの受信機が設けられている。双方向接続には、識別装置5の送信機14および読取機6の受信機をトランシーバに代えることができる。また、識別装置5を利用して、試錐装置、装薬装置等の位置を決めることもできる。
【0027】
図4に、可視読み取り可能な識別コード、この場合はバーコード15を有する識別装置5を示す。図5において、このバーコードは文字と数字とを組み合わせた符号16を含んでいる。識別装置5においては、このような可視符号15、16がフレーム11の外面上に設けられ、読取機6によって機械読み取りが可能である。さらに注意すべきことは、識別装置5のフレーム11の意匠と形を、図4および図5に示す方式とは異なってもよいことである。識別装置5のフレーム11は、例えばプラスチック材で作ることができる。また可視読み取り可能な符号の代わりに、電気的に読み取り可能な符号、例えば磁気テープ、マイクロチップもしくは同様なものを用いることができる。
【0028】
図6に、削岩掘削装置のブーム17内に設けられた試錐装置18を示す。この試錐装置は、例えば削岩機19、工具20、送りビーム21、および送り装置22を含んでいる。この試錐装置18にはさらに、測定装置7を装備して、試錐後に試錐孔を測定可能にしてもよい。測定装置7を送りビーム21の前部に設けることができる。この測定装置7には読取機6を装備し、識別装置5に記憶されている情報を読み取る。識別装置5は、試錐計画に応じた各位置に事前に配設することができる。これらの識別装置5は、個々の測定に基づいて手動で、もしくは自動測定車によって配置することができる。
【0029】
図7に、鉱車23を示す。これは複数のブーム17を含んでいる。同図に示す方式において、鉱車23は2つの試錐装置18と、1つの装薬装置24とを含んでいる。これらの装置のうちの1つに、図6に示すものと同様の測定装置を装備することができる。鉱車23にはさらに、測定装置を備えた測定ブームを装備することができる。試錐装置18と装薬装置24には、それぞれ読取機6が装備されている。読取機6は、識別装置5に記憶されている情報を読み取るように構成されている。この読取機6を鉱車23の制御装置25へ連結することができ、次いで、この制御装置を本システムの制御装置3へ連結することができる。制御装置3は、複数の鉱業機械の制御装置、およびそれらの内部の各装置に接続されたサーバであってもよい。例えば試錐装置18の読取機6が、岩に固定されている識別装置5に含まれている識別コードを検出すると、制御装置3は、その識別コードに基づいて当該特定の試錐孔に関するデータを選択する。つまり、このデータの基本情報を試錐計画の作成中に提供しておくことができる。制御装置3は、試錐に用いるパラメータ、例えば、用いる衝撃周波数、衝撃力、送り分力、送り速度、回転速度、洗剤流量、試錐装置などに関する情報を鉱車23の制御装置25へ送信することができる。同様に装薬装置24の読取機6は、装薬される試錐孔の識別コードを読み取ることができ、その後、装薬のために、情報が制御装置3から鉱車23の制御装置25へ送られる。装薬に関する試錐孔情報には、例えば試錐孔の位置、方向、寸法、質、岩種に関する情報、および発破計画に関する情報を含めることができる。
【0030】
さらに、読取機6は、識別装置5に含まれる記憶素子に情報を記憶することができる。このような場合、例えば、調査中の試錐孔を試錐するために用いるパラメータに関する情報、試錐中に得られる岩種情報、試錐孔の寸法に関する情報などを、識別装置に記憶させることができる。この情報を、例えばその試錐孔に装薬する場合に利用することができる。
【0031】
図2には、さらに、他の識別装置5’ を示す。これは試錐孔2の底部に配設することができる。読取機6’ を測定装置7のセンサ9に対して設けて、このような識別装置5’ の機械読み取りを可能にしてもよい。
【0032】
さらに、上述の識別装置のさまざまな組み合わせを作ることができる。
【0033】
上記の図面およびその関連する説明は、本発明の思想を説明することのみを意図している。本発明の細部は特許請求の範囲内で変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】試錐孔情報を管理する本発明のシステムを概念的に示す図である。
【図2】試錐孔の測定、および試錐孔に関する情報を読み取って記憶する本発明による方式を概念的に示す図である。
【図3】試錐孔の入口に配設された本発明による識別装置、およびこの識別装置とシステム内の制御装置との間で情報を伝送する構成を概念的に示す図である。
【図4】本発明による第2の識別装置を示す概念側面図である。
【図5】本発明による第3の識別装置を示す概念側面図である。
【図6】試錐装置に対して設けられ、識別装置に含まれる情報を読み取って記憶するシステムを概念的に示す図である。
【図7】試錐孔に対して配設された識別装置を読み取る手段を装備した鉱車を概念的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの試錐孔(2)に関する情報を収集して記憶することを含む試錐孔情報管理方法において、該方法は、
機械読み取り可能な情報を含む少なくとも1つの識別装置(5)を、調査中の試錐孔(2)に対して配設し、
前記記憶した情報、および該調査中の試錐孔(2)を、該識別装置(5)から読み取られる情報によって共に関係付けることを特徴とする試錐孔情報管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記調査中の試錐孔(2)を、前記識別装置(5)に含まれている識別コードを読み取ることにより識別し、
前記試錐孔(2)に関する情報を、該識別コードを用いて関係付けることを特徴とする試錐孔情報管理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記試錐孔に関する情報を前記識別装置(5)の外側の少なくとも1つの制御装置(3)で記憶し、
該識別装置(5)の該制御装置(3)に含まれる該情報を前記識別コードに基づいて共に関係付けることを特徴とする試錐孔情報管理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法において、
情報を記憶するための少なくとも1つの記憶エレメントを有する識別装置(5)を使用し、
前記調査中の試錐孔(2)に関する情報を該識別装置(5)で記憶することを特徴とする試錐孔情報管理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記調査中の試錐孔(2)を、少なくとも1つのセンサ(9)を含む少なくとも1つの測定装置(7)によって測定し、
測定情報を前記識別装置(5)で記憶することを特徴とする試錐孔情報管理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法において、
鉱車(23)に読取機(6)を装備し、
前記調査中の試錐孔(2)を、前記識別装置に含まれている情報を該読取機(6)で読み取ることによって識別し、
試錐孔情報をシステムの制御装置(3)から前記鉱車(23)の制御装置(25)へ送信し、
該試錐孔情報を前記鉱車(23)の少なくとも1つの試錐装置(18)または装薬装置(24)の制御に用いることを特徴とする試錐孔情報管理方法。
【請求項7】
試錐孔情報を記憶する少なくとも一つの制御装置(3)を含む試錐孔情報管理システムにおいて、
該システムは、調査中の試錐孔(2)に対して配設される少なくとも1つの識別装置(5)を含み、
該識別装置(5)は、機械読み取り可能な情報を含み、
該システムは、前記記憶した情報および前記調査中の試錐孔(2)を、前記識別装置から読み取られる情報によって共に関係付けることを特徴とする試錐孔情報管理システム。
【請求項8】
フレーム(11)と、
識別装置(5)を試錐孔に対して固定する手段とを含む試錐孔を識別する識別装置において、
該識別装置(5)は、少なくとも部分的に前記試錐孔(2)に差し込み可能である長尺状のフレーム(11)を含み、
該識別装置(5)は、少なくとも1つの機械読み取り可能な識別コードを含むことを特徴とする識別装置。
【請求項9】
請求項8に記載の識別装置において、該識別装置(5)は、長尺状の管状フレーム(11)を含むことを特徴とする識別装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の識別装置において、該識別装置(5)は、情報を記憶する少なくとも1つの記憶素子を含むことを特徴とする識別装置。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれかに記載の識別装置において、該識別装置(5)は、該識別装置(5)と少なくとも1つの外部制御装置(3)との間でデータ通信を確立するトランシーバ(14)を含むことを特徴とする識別装置。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれかに記載の識別装置において、前記識別コードは、可視読み取り可能な符号であることを特徴とする識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−522883(P2006−522883A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505633(P2006−505633)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000214
【国際公開番号】WO2004/090286
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(597044472)
【氏名又は名称原語表記】SANDVIK TAMROCK OY
【Fターム(参考)】