説明

試験システム

【課題】操作者が患者の体液サンプル中の検体の濃度を測定し、測定データを蓄積することを可能にする試験システムを提供する。
【解決手段】
試験システムは、試験部材を複数有する容器と、複数の試験部材に特有のデータを含む容器RFIDタグと、患者の各々に関連付けられたデータを含む患者RFIDタグと、操作者の各々に関連付けられたデータを含む操作者RFIDタグと、を備え、試験部材から物理値を測定し測定データを生成する手段と、測定が行われる毎に、試験部材を有する容器に備えられた容器RFIDタグ、測定の対象となる患者に関連付けられた患者RFIDタグ、および測定器を操作する操作者に関連付けられた操作者RFIDからデータを読み出し、読み出されたデータを測定データと関連付けて記憶することにより試験データを蓄積する手段と、試験データを他の機器に送信する手段と、を含む測定器と、試験データを受信する機器と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試験システムに関し、特に、体液中の検体の濃度を測定するための試験システムと、本システムの使用方法とに関する。本システムは、特に、長期治療施設で使用するためのものであるが、他の環境での使用も可能である。
【背景技術】
【0002】
病院、診療所、ケアホーム、診療室およびホスピスのような長期治療施設では、多くの場合、患者の身体内のグルコースまたはコレステロールのような検体のレベルを監視して、患者に適切な食物および/または薬剤を投与できる状態にしておくことが必要である。一般に、検体濃度は、適切にキャリブレートされた試験測定器を使用して、患者の全血または尿などのサンプルのような体液中で測定される。試験測定器は、一般に、特定の検体に特有の酵素試薬システムを含有し、反射率または電流などの電気化学値に測定可能な変化を生成する使い捨ての試験片を使用する。この変化または測定値の大きさは、サンプル中の検体濃度に関連する。1回分に特有のキャリブレーションデータを含有するコードチップを各1回分の試験片に設けることで、1個の測定器を異なる複数の1回分の試験片と共に使用できるようになる。操作者(一般には、医師、看護士、介護人)は、新規の1回分の試験片を開封した際に、このコードチップを測定器内に挿入する。古いコードチップは全て廃棄される。測定器がキャリブレーションデータ(一般には、ルックアップテーブル内に含有される)を読み出し、これらデータから導出した、キャリブレートされた検体濃度値と、試験片に流体サンプルを追加したことで生じた測定変化または値とを出力する。
【0003】
同じ測定器は、使用している試験片のタイプに応じて、異なるタイプの検体を測定するために使用できる。例えば、或るタイプの試験片は、血糖値を測定するために使用され、別タイプの試験片は血中コレステロールを測定するために使用される。試験片タイプに関する情報を、コードチップ内で符号化するか、あるいは操作者が手作業で入力することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米国特許5,989,917号では、試験測定器に、試験片の容器を受容するための容器と、容器に固定されている試験片に関する情報を読み出すための機構とを含むことが提案されている。この情報は、機械による読み出しが可能なバーコード、磁気片、メモリチップの形状で、あるいは共鳴ワイヤループとして容器に付加することができる。このアプローチには、この測定器が容器を収容する必要性によってかさばり、また、1つの容器を取り外して別の容器を挿入しなければならないため、あるタイプの検体の測定から別タイプの検体の測定への切り替えに時間がかかりすぎるという問題が伴う。本システムでは、全ての試験片にこの測定器を使用できないため、使用する容器は標準サイズおよび形状のものである必要がある。
【0005】
米国特許2005/0009122 A1では、試験媒体を含む試験カートリッジと、測定器によって読み出し可能で、検体濃度試験の性能を制御する上で有効な情報を含有するRFID装置とを提供することが提案されている。カートリッジは、複数回使用(再使用可能)型または1回使用(使い捨て)型のものであってよい。試験カートリッジが(試験片のように)使い捨て型のものである場合には、RFID装置を組み込むことで1回分の試験片の製造コストが著しく増加してしまう。
【0006】
検体の測定後、その結果を、患者の氏名のような患者特化データと共にコンピュータシステムに記録する必要がある。これ以外のデータも記録して、完全な医療記録の経路を提供することが望ましい。上記のこれ以外のデータには、操作者の証明、試験の日時が含まれる。医師または他の人員は、その患者の適切な治療計画をいつ考案するかについてコンピュータシステムに質問することができる。
【0007】
既存のシステムには、様々なデータの記録に時間がかかり、記述エラーによって、誤った診断や次善の治療計画を導出してしまう可能性があるという問題が伴う。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、体液サンプル中の検体の濃度を測定する試験システムが提供され、このシステムは、
容器内の複数の試験部材を備え、試験部材のそれぞれは、酵素の影響を受ける検体を含有する体液が存在する場合に酵素の触媒作用を示す試薬手段を含み、
試験部材を受容する試験測定器を備え、測定器は、測定物理値を生成するために、内部に受容した試験部材に対して測定を実行する回路と、測定物理値から特定の体液の検体濃度値を決定する手段と、決定した検体濃度値を示す手段とを有し、
複数の試験部材に特有のデータを含む、容器に関連した容器RFIDタグを備え、
患者に特有のデータを含む患者RFIDタグを備え、
前記試験測定器は、容器RFIDタグおよび患者RFIDタグからデータを読み出し、これを記憶する手段を含む。
【0009】
本発明によれば、手作業によるデータ入力なしに、試験部材と患者の両方に関連したデータを測定器に迅速かつ容易に入力することが可能になるため、記述エラーの可能性およびデータ入力に要する時間を低減することができる。別の分析対象試験を実施する場合には、適切な試験部材を含有する別の容器を使用し、これに関連する容器RFIDデータを測定器で読み出す。本発明は、任意の形状とサイズの容器と共に使用することができる。治療施設の異なる区域で異なるタイプの試験を行う必要がある場合には、容器とその試験部材は試験開始場所に残したまま、1個の測定器を1つの区域から別の区域へ移動させ、別の区域に既に配置されている試験部材を使用しながら試験を実施することで、誤った試験部材の使用によるエラー発生の可能性を低減することができる。
【0010】
一般に、容器RFIDタグから読み出しが可能なデータには、1回分の試験部材についての1回分のキャリブレーションデータが含まれる。容器RFIDタグから読み出せる他のデータには、ロット番号、試験部材の製造年月日、試験部材の在庫寿命(封止された容器と開封された容器の両方の状態についてのもの)、開封日付または有効期限日が含まれる。容器RFIDタグから任意で読み出せるさらなるデータには、試験測定器の動作を変更するためのパラメータ値、例えば時間間隔、電流閾値、過渡検出フィルタ、およびこれ以外の物理値が含まれる。検査する検体の性質に関する情報が含まれていてもよい。
【0011】
操作者は、試験部材を使用して検体を読み出す前に、測定器を容器に強くあてて(あるいは、測定器を容器に十分に接近させて)、測定器が容器RFIDタグのデータを読み出して、記憶させるようにする。測定器は、データの読み出しが無事完了したことを示す視覚的および/または可聴式のフィードバックを提供する。さらに、測定器を最初の容器の容器RFIDタグの上に強くあてたが読み出しが迅速に行われず、この後、試験部材が第2容器から出てきてしまうようなエラーの可能性を低減するために、事前設定期間内にデータが入力されるまでは動作しないように測定器をプログラミングすることができる。
【0012】
本発明の本態様により、1回分に特有のデータと、試験部材に関連したその他のデータとを測定器に提供するための単純な方法が得られる。これに必要なのは、容器内に含むことが可能な、また任意で容器の内面または外面あるいはそのふたに付着させることが可能な1個の容器RFIDタグのみである。あるいは、容器RFIDタグを、ひもで結わえたり、溶接したり、またはその他の適切な手段によって容器に固定することができる。試験部材の構造、製造、使用は従来技術の試験部材のものと完全に異なっていてもよい。
【0013】
試験測定器は、光反射率や、例えば電位、抵抗性または電流のような電気化学値を測定する。本明細書では便宜性の理由から、血糖値濃度を電流測定により測定するシステムを参照して本発明を説明する。一般的に各試験部材は試験片を備え、本明細書では便宜性の理由から「試験片」という用語を使用している。
【0014】
患者RFIDタグは、特に患者の証明などの患者に特有のデータを含み、このデータに関係する患者と関連付けされる。一般に、患者RFIDタグはキャリア上に提供され、このキャリアを患者に付着させたり、患者が装用したりする。例えば、キャリアはブレスレットまたはネックレスを備えていたり、あるいは患者の皮膚や衣服に脱着可能に付着できる付着材料を備えていてもよい。もしくは、キャリアは、患者の衣服に脱着可能に固定できるバッジまたはクリップを備えていてよい。別の実施形態では、患者RFIDタグを、患者の記録に固定するか、患者の記録に関連付けすることができる。しかしながら、患者RFIDタグを患者または患者の衣服に設けて、データ入力におけるエラーの可能性を低減することが好ましい。測定器が患者RFIDタグの読み出しおよび記憶を行えるように、患者RFIDタグを測定器に強くあてるか、または測定器に十分接近させる。検体の測定後にこの工程を行うことも可能であるが、これは検体の測定を実施する前に行うことが好ましい。
【0015】
好ましい実施形態では、本システムはさらに操作者RFIDタグを備え、この操作者RFIDタグは、特に操作者の証明などの操作者に特有のデータを含有し、また、データに関係した操作者に関連付けされる。一般に、操作者RFIDタグはキャリア上に提供され、このキャリアを操作者に付着させたり、操作者が装用したりする。例えば、キャリアはブレスレットまたはネックレスを備えていたり、あるいは操作者の皮膚や衣服に脱着可能に付着できる付着材料を備えていてもよい。もしくは、キャリアは、操作者の衣服に脱着可能に固定できるバッジまたはクリップを備えていてもよい。
【0016】
任意で、検体の読み出しを行う前の事前設定時間において、患者RFIDタグおよび操作者RFIDタグの一方または両方からの入力を必要とするように測定器をプログラミングすることもできる。
【0017】
測定器には日付と時間をプログラミングでき、また、試験片が在庫寿命を超えて使用されていないかどうかを調べるようにプログラミングすることもできる。これに加えて、あるいは代替的に、測定器は、特定の容器RFIDが最初に測定器に入れられた日付(「開封」日付)以降に経過した時間を調べることが可能である。この経過時間が開封した容器の在庫寿命を超える場合には、測定器がアラーム条件を始動させ、試験片を廃棄し、新たな1回分の試験片を使用するように操作者に警告することができる。
【0018】
測定器に記憶された全てのデータおよび結果(患者および/または操作者のRFIDデータを含む)は、適切な読み出し装置を介してコンピュータシステムにアップロードすることができる。読み出し装置との通信は、任意の便利な手段と、RF(赤外線)のようなデータ転送プロトコルとによって、または従来のケーブルを介して行うことができる。好ましい実施形態では、測定器を読み出し装置上に配置すると、自動的にまたは操作者が手作業でデータ転送を開始することで、データおよび結果は送信される。
【0019】
本明細書では、「RFIDタグ」という用語は、RFによりデータ送信を行うことができ、物体に付着したり物体内に組み込むことが可能な小型のRFID装置を意味する。各RFIDタグは影響を及ぼすまたは影響を受ける状態であってもよい。好ましい実施形態では、各RFIDタグは影響を受ける状態であり、その有効範囲は好ましくは10cm未満、特に5cm未満に制限されているため、タグのデータをアップロードするためには、測定器をタグの極めて近くに接近させる必要がある。有効範囲が制限された影響を受けるタグは低コストで製造でき、測定器からの質問RF信号によって供給される電源以外の電源を必要としない。有効範囲を制限することにより、類似した遠隔RFIDタグから誤ってデータを読み出してしまう可能性を排除、あるいは大幅に低減できるようになる。一般に、各RFIDタグは、アンテナに付着させたマイクロチップを備え、また、RFIDタグ技術の当業者に既知の設計のものを備えている。
【0020】
任意で、試験測定器を患者RFIDタグのみと共に使用することができる。この場合には、1回分のキャリブレーション情報が、従来の手段、例えば容器に設けたコードチップによって提供される。したがって、本発明の別の態様は、体液サンプル中の検体の濃度を測定する試験システムを提供し、このシステムは、
容器内の複数の試験部材を備え、試験部材のそれぞれは、酵素の影響を受ける検体を含有する体液が存在する場合に酵素の触媒作用を示す試薬手段を含み、
試験部材を受容する試験測定器を備え、測定器は、測定物理値を生成するために、内部に受容した試験部材に対して測定を実行する回路と、前記測定物理値から特定の体液の検体濃度値を決定する手段と、決定した検体濃度値を示す手段とを有し、
患者に特有のデータを含む患者RFIDタグを備え、前記試験部材は、前記患者RFIDタグからデータを読み出し、これを記憶する手段を含む。
【0021】
本発明の別の態様では、試験測定器を容器RFIDタグのみと共に使用できる。この場合には、患者および/または操作者に特有のデータが、従来の手段、例えば測定器へのデータ入力によって提供される。したがって、本発明の別の態様は、体液サンプル中の検体の濃度を測定する試験システムを提供し、このシステムは、
複数の部材のための容器を備え、
容器内の複数の試験部材を備え、試験部材のそれぞれは、酵素の影響を受ける検体を含有する体液が存在する場合に酵素の触媒作用を示す試薬手段を含み、
試験部材を受容するが容器は受容しない試験測定器を備え、測定器は、測定物理値を生成するために、内部に受容した試験部材に対して測定を実行する回路と、測定物理値から、特定の体液について検体濃度値を決定する手段と、決定した検体濃度値を示す手段とを含み、
容器には、複数の試験部材に特有のデータを含む容器RFIDタグが設けられ、試験測定器は、容器RFIDタグからデータを読み出し、これを記憶するための手段を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の別の態様および恩典は、以降の明細書、図面、特許請求の範囲から明白になる。
【0023】
次に、以降の図面を参照しながら本発明を実施例の方法によって説明する。
【0024】
【図1】本発明による試験システムで使用する試験測定器である。
【図2】本発明による試験システムで使用する試験片の容器である。
【図3】図1の測定器と共に使用する試験片である。
【図4】本発明の一実施形態で使用する患者RFIDタグ用のキャリアである。
【図5】本発明の一実施形態で使用する操作者RFIDタグ用のキャリアである。
【図6】測定器からデータを読み出すための読み出し装置を設けた図1の試験測定器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
試験測定器2は、通常の外観のハンドヘルド式血糖値測定器である。この測定器2は、情報を表示して使用者の動作を促進させることが可能なグラフィック液晶ディスプレーインターフェース4を有する。電源オン/オフ、スクロール、メニュー選択のような機能を選択するためのボタン6が用意されている。また、試験片16を受容するための溝8を設けている。
【0026】
試験片16は従来型の電流測定バイオセンサであり、その一端には、測定器2内の対応する接触部と電気接触する電極接触部18を有し、他端には、血液サンプルを付加するための電極20が設けられている。電極20の少なくとも1個には、血糖が存在する場合に電流を生成させるための酵素試薬が設けられている。生成される電流の大きさは、本質的に周知の方法によって、血糖濃度を示している。
【0027】
1回分に含まれた複数の1回使い捨て型試験片16(例えば50枚)を、予め工場で密封処理された容器10内に入れる。容器10は、キャップ12と、この例では容器10の外面に付着した容器RFIDタグ14とを有する。この例では、容器RFIDタグには、ロット番号、製造年月日、キャリブレーションデータ、在庫寿命(開封された容器および封止された容器のもの)、開封日付と失効日付の期限を含む、1回分に特有のデータが含有される。
【0028】
図4に示すキャリア22は、穴の開いた自由端部24を有するリストストラップ形状であり、この自由端部24をバックル26と係合させることで、使用者の手首、この場合には患者の手首の周囲で固定することができる。このリストストラップ22はRFIDタグ28を備え、この例では、このRFIDタグ28は、これを装用する患者に特有のデータを含有する患者RIFDタグである。このデータには、患者の氏名または識別番号が含まれる。
【0029】
次に図5を参照すると、ネックレス30の形状をした別のキャリアが示されている。このネックレスはRFIDタグ32を備え、この例では、このRFIDタグ32は、これを装用する操作者に特有のデータを含む操作者RFIDタグである。このデータには、測定器2を使用する操作者の氏名と識別番号が含まれる。患者RFIDタグ28と操作者RFIDタグ32の機能を逆にしたり、どちらか一方を任意の適切なキャリア上に設けることが可能であることが理解されるだろう。
【0030】
測定器2は、容器RFIDタグ、患者RFIDタグ、操作者RFIDタグに質問し、これらタグからデータを読み出し、記憶するための回路を含む。このような目的に適した回路は、電子機器の当業者に周知である。
【0031】
血糖値の読み出しを行う場合、操作者は次の工程を実行する。測定器2の電源をオンにし、容器10から試験片16を取り出して、測定器2の溝8に挿入し、試験片16の電極接触部18を、測定器2内の対応する接触部(図示せず)と接触させる。この動作により、測定器が所定時間内でグルコースを読み出し、試験片16に対して作業中の電極を分極するように起動される。測定器は、容器RFIDタグ14、患者RFIDタグ28、操作者RFIDタグ32からのデータを入力するよう操作者に催促する。測定器は、このような動作の実行順序を明確化するか、あるいは、入力データを任意の順序で受信するようにプログラミングすることができる。各タグが受信された後、測定器は、発信音を鳴らすかLED5をフラッシュさせることでダウンロードが無事完了したことを示す。グラフィックディスプレイ4もまたダウンロードが無事完了したことを示し、全ての入力が受信されたら読み出しを実行するよう操作者に催促する。試験片16が、その在庫期限(開封された容器または封止された容器の日付)を超過していると示された場合には、警告条件が誘発され、測定器2が、容器10と残っている試験片16を廃棄するよう操作者に催促する。さらに測定器2は、使用者が新規の容器を開封し、測定器2をこの新規の容器に対して強くあてて、容器RFIDタグにおけるデータをダウンロードするように催促する。測定器2を、事前設定した時間内にこのような動作が起こるまでは、血糖値の読み出しの実行を許可しないようにプログラミングしてもよい。
【0032】
測定器は、全てのRFIDタグ情報のダウンロードが無事完了し、試験片16の在庫寿命が切れていないことを証明すると、操作者に血糖値測定を実施するよう催促する。これは、患者の指先、あるいは前腕のような別の場所を刺して血液を一滴採取し、これを電極20に移すという、本質的に周知の方法で行われる。この血液サンプルは電極20に直接付加するか、あるいは毛細管流動路(図示せず)を介して周知の方法で付加することができる。電極20が血液サンプルで被覆されると、血糖濃度と比例する電流が生成される。測定器2は、測定した電流と、容器RFIDタグ14からダウンロードしたキャリブレーションデータとに基づいて、血糖濃度値をディスプレイ4上に表示させる。この濃度値は、読み出しの日付と、時間およびRFIDタグ14、28、32からの関連するデータと共に、測定値内に記憶される。類似の方法でさらなる読み出しと記憶を実施することもできる。この例では、測定器2は、読み出しを実施する度に、操作者に対して、測定器をRFIDタグに強く当てるよう催促し、また、読み出した複数の数値を異なる患者および異なる操作者毎に記憶することができる。あるいは、新規データが入力されるまで、または測定器がオフまたはスタンバイモードに切り替えられるまで、もしくは明記された時間が経過するまで、測定器は、最初に入力されたデータを正確なデータとして受信することが可能である。しかし、安全性の理由から、測定器が、各読み出しの前に各RFIDタグを読み出すように催促することで、データの整合性を確保することが好ましい。
【0033】
任意の都合の良い時間、あるいは測定器のメモリが一杯になると、血糖値読み出し値とこれに関連したデータを介護施設のコンピュータシステムに転送することができる。図6に示すこの実施形態では、測定器2は、コンピュータシステム(図示せず)に接続した読み出し装置34のクレードル領域36内に配置されている。読み出し装置34は任意の適切な手段、この例ではIR(赤外線)送信によってデータを受信する。データ転送が無事完了したことを確認した後には、次の読み出し数値を取り、これを記憶できるようにするために、測定器のメモリが消去される。
【0034】
明瞭化の目的で別々の実施形態の内容に記述された本発明の複数の特定の特徴を、1つの実施形態において組合わせて提供できることが理解される。また反対に、簡潔化の目的で1つの実施形態の内容に記述された本発明の様々な特徴を、別々または任意の適切な副組み合わせにて提供することも可能である。
【0035】
特定の実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の改良および変更は、付属の特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱しない範囲内で解釈されることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液サンプル中の検体の濃度を測定する試験システムであって、前記システムは、
酵素に作用される検体を含有する体液が存在する場合に酵素の触媒作用を表す試薬手段をそれぞれが含む、容器内の複数の試験部材と、
測定物理値を生成するために、内部に受容した試験部材に対して測定を実行する回路と、前記測定物理値から特定の体液の検体濃度値を決定する手段と、決定した検体濃度値を示す手段とを有する、試験部材を受容する試験測定器と、
前記複数の試験部材に特有のデータを含む、前記容器に備えられている容器RFIDタグと、
対応する患者に特有のデータを含み、患者によって持ち運び可能な部材に備えられた患者RFIDタグとを備え、
前記試験測定器は、前記容器RFIDタグおよび前記患者RFIDタグからデータを読み出しこれを記憶する手段を含み、
前記試験測定器は、検体濃度測定値を測定できるようになる前に、前記RFIDタグのそれぞれからの入力を必要とするようにプログラミングされることを特徴とする、試験システム。
【請求項2】
対応する操作者に特有のデータを含み、操作者によって持ち運び可能な部材に備えられた操作者RFIDタグをさらに備え、
前記試験測定器は、前記操作者RFIDタグからデータを読み出しこれを記憶する手段を含むことを特徴とする、請求項1に記載の試験システム。
【請求項3】
前記容器RFIDタグから読み出し可能な前記データは、前記容器内の1回分の試験部材と対応付けられたキャリブレーションデータを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の試験システム。
【請求項4】
前記容器RFIDタグから読み出し可能な前記データはさらに、前記容器内の前記試験部材に関連し、ロット番号、前記試験部材の製造日付、前記試験部材の在庫寿命、開封日付または有効日付の期限より選択されるデータを含むことを特徴とする、請求項3に記載の試験システム。
【請求項5】
体液サンプル中の検体の濃度を測定する試験システムであって、前記システムは、
酵素に作用される検体を含有する体液が存在する場合に酵素の触媒作用を表す試薬手段をそれぞれが含む、容器内の複数の試験部材と、
測定物理値を生成するために、内部に受容した試験部材に対して測定を実行する回路と、前記測定物理値から特定の体液の検体濃度値を決定する手段と、決定した検体濃度値を示す手段とを有する、試験部材を受容する試験測定器と、
前記複数の試験部材に特有のデータを含む、前記容器に備えられている容器RFIDタグと、
対応する患者に特有のデータを含み、患者によって持ち運び可能な部材に備えられた患者RFIDタグと、
対応する操作者に特有のデータを含み、操作者によって持ち運び可能な部材に備えられた操作者RFIDタグとを備え、
前記試験測定器は、前記容器RFID、前記患者RFID、および前記操作者RFIDタグからデータを読み出し、これを記憶する手段を含み、
前記試験測定器は、検体濃度測定値を測定できるようになる前に、前記RFIDタグのそれぞれからの入力を必要とするようにプログラミングされることを特徴とする、試験システム。
【請求項6】
検体濃度値および関連データを前記測定器から受信し、前記データをコンピュータデータベースに転送する、読み出し装置をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の試験システム。
【請求項7】
前記RFIDタグまたは各RFIDタグは影響を受ける状態であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の試験システム。
【請求項8】
前記RFIDタグまたは各RFIDタグは、前記測定器によってデータを読み取るために、前記試験測定器から10cm未満の場所に位置決めされなければならないことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の試験システム。
【請求項9】
前記RFIDタグまたは各RFIDタグは、前記測定器によってデータを読み取るために、前記試験測定器から5cm未満の場所に位置決めされなければならないことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の試験システム。
【請求項10】
前記試験測定器は、事前設定時間内に、前記容器RFIDタグ、前記患者RFIDタグおよび前記操作者RFIDタグのうち1つからの読み出しデータから検体の濃度測定が行われなかった場合に、エラー状況を発信するようにプログラミングされることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の試験システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−132938(P2012−132938A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87333(P2012−87333)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2008−515273(P2008−515273)の分割
【原出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(505009704)アークレイ ファクトリー リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】HYPOGUARD LIMITED