説明

試験システム

【課題】被試験器用コントローラの設定を変更することなく、試験器の配置を容易に変更可能な試験システムを提供する。
【解決手段】試験器切替部20は、制御マイコン22と、スイッチ241〜246とから構成されている。試験器切替部20−1〜20−3は、物理的に互いに直列に接続されている。スイッチ241〜246は、制御マイコン22の制御により、上流側との電気的な接続を、下流側または試験器側に切り替える。制御マイコン22は、自身が記憶している試験器30の識別情報に、切替信号に含まれる試験器30の識別情報が含まれる場合には、その識別情報に対応する試験器30に接続されているスイッチ241〜246を試験器側に閉じるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験器に対して試験を行う試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、複数の制御装置を用いて複数の測定器を制御しながら複数の被試験器に対して同時に試験を行う自動試験システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−292723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した背景からなされたものであり、被試験器用コントローラの設定を変更することなく、試験器の配置を容易に変更可能な試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る試験システムは、被試験器用コントローラと、被試験器に対して試験を実行して計測信号を出力する複数の試験器と、物理的に互いに直列に接続された複数の試験器切替部であって、それぞれ1つ以上の前記試験器と物理的に接続された複数の試験器切替部と、前記被試験器用コントローラに制御され、前記試験器から出力された試験信号を、前記複数の試験器切替部のうちの少なくとも1つを介して受信して測定する測定器とを有し、前記複数の試験器切替部それぞれは、1つ以上のスイッチと、前記スイッチの切り替えを制御する制御部とを有し、前記試験器切替部の制御部は、前記被試験器用コントローラから前記試験器の識別情報を含む信号を受信した場合に、この識別情報に対応する試験器が当該試験器切替部と物理的に接続されているときは、当該試験器と信号を送受信できるように前記スイッチを切り替え、この識別情報に対応する試験器が当該試験器切替部と物理的に接続されていないときは、当該試験器切替部と前記測定器とは反対側に物理的に接続された試験器切替部と信号を送受信できるように前記スイッチを切り替える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被試験器用コントローラの設定を変更することなく、試験器の配置を容易に変更可能な試験システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態にかかる試験システムの外観を示す図である。
【図2】本実施形態にかかる試験システムの構成を示す図である。
【図3】本実施形態にかかる試験システムにおける試験器の切替処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本発明の背景]
本発明の理解を助けるために、まず、本発明がなされるに至った背景を説明する。
【0009】
従来、複数の試験器によって試験を行う試験システムにおいて、被試験器用コントローラは、試験器の接続を切り替える複数の試験器切替部それぞれの識別情報を記憶していた。
さらに、被試験器用コントローラは、試験器の切り替えを行う際に、複数の試験器それぞれが配置されている位置を記憶しておく必要があった。
そのため、試験器切替部および試験器が増設された場合に、被試験器用コントローラに記憶されているソフトウェアを変更しなければならなかった。
以下に説明する試験システムは、被試験器用コントローラの設定を変更することなく、試験器の配置を容易に変更できるように改良されている。
【0010】
[本発明の実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照にして説明する。
図1は、本実施形態にかかる試験システム1の外観を示す図である。
また、図2は、本実施形態にかかる試験システム1の構成を示す図である。
さらに、図3は、本実施形態にかかる試験システム1における試験器の切替処理を示す図である。
【0011】
図1〜図3に示すように、試験システム1は、被試験器用コントローラ10、測定器12−1〜12−N(Nは2以上の整数。但し、Nがそれぞれ常に同じ数とは限らない)、測定器切替部14、試験器切替部20−1,20−2,20−3、および試験器30A〜30Fから構成されている。
また、試験を行う際には、試験器30A〜30Fには、それぞれ、試験対象である被試験器32A〜32Fが接続される。
【0012】
なお、図1〜図3においては、図示の具体化および明確化のために、本実施形態の説明に必要ない構成部分が、適宜、省略される。
さらに、以下、測定器12−1〜12−Nおよび試験器30A〜30Fなど、複数ある構成部分のいずれかを特定せずに示す場合には、単に、それぞれ測定器12および試験器30などと略記することがある。
また、以下、試験器切替部20−1〜20−3を、単に、それぞれ試験器切替部#1〜#3と称し、試験器30A〜30Fを、単に、それぞれ試験器A〜Fと称し、被試験器32A〜32Fを、単に、それぞれ被試験器A〜Fと称することがある。
【0013】
また、図1〜図3に示した試験システム1を構成する装置のうち、任意の2つ以上は、適宜、一体に構成されうる。
また、ある1つの装置において実現される複数の機能が、それぞれ別々の装置において実現されるようにしてもよいし、図1〜図3に示されていない装置において実現されるようにしてもよい。
【0014】
試験システム1において、被試験器用コントローラ10は、例えば、CPU、メモリ、入出力装置、通信装置および記憶装置から構成されるコンピュータであって、LAN(Local Area Network)102を介して測定器12と接続され、切替制御線100を介して測定器切替部14および各試験器切替部20と接続されている。
被試験器用コントローラ10は、測定器12を制御するための制御信号を、LAN102を介して測定器12に対して出力する。
また、被試験器用コントローラ10は、試験に使用される測定器12と試験器切替部20(および試験器30)とを電気的に接続する(つまり信号を送受信できるようにする)ための切替信号を、切替制御線100を介して測定器切替部14に対して出力する。
さらに、被試験器用コントローラ10は、試験に使用される試験器30と測定器切替部14(および測定器12)とを電気的に接続する(つまり信号を送受信できるようにする)ための切替信号を、切替制御線100を介して各試験器切替部20に対して出力する。
【0015】
測定器切替部14は、被試験器用コントローラ10から切替信号を受信した場合に、試験に使用される測定器12と試験器切替部20(および試験器30)とを電気的に接続するための処理を行う。
具体的には、例えば、測定器切替部14は、測定器切替部14に内蔵されたスイッチ(図示せず)を切り替えることによって、切替処理を行う。
【0016】
測定器12−1〜12−Nは、例えば位相検波器やオシロスコープ等の、被試験器32から出力された計測信号を受信して測定する機器や、被試験器用コントローラ10から制御信号を受信したとき、試験信号を、測定器切替部14および試験器切替部20を介して、試験器30に対して出力する信号発生器である。
試験器30は、例えば、測定器12−1からの試験信号に応じて、被試験器32に対して所定の試験を行い、試験結果である計測信号を、測定器12−2に対して出力する。
【0017】
試験器切替部20は、図3(B)に示すように、制御マイコン(マイクロコンピュータ)22と、スイッチ(リレー)241〜246とから構成されている。
また、試験器切替部20−1〜20−3は、物理的に互いに直列に接続されている。
つまり、試験器切替部20−1は、測定器切替部14と試験器切替部20−2との間に物理的に接続され、試験器切替部20−2は、試験器切替部20−1と試験器切替部20−3との間に物理的に接続されている。
また、試験器切替部20−1〜20−3は、3本の信号線112〜116を介して物理的に接続されている。
【0018】
制御マイコン22は、試験器切替部20に物理的に接続されている試験器30の識別情報、および、試験器30とスイッチ241〜246との物理的な接続関係(どの試験器とどのスイッチとが物理的に接続されているか)を記憶している。
たとえば、試験器切替部20−1の制御マイコン22−1は、試験器30A,30Bの識別情報を記憶しており、試験器切替部20−2の制御マイコン22−2は、試験器30C,30Dの識別情報を記憶している。
スイッチ241〜246は、制御マイコン22の制御により、上流側(例えば試験器切替部#1であれば測定器切替部側、試験器切替部#2であれば試験器切替部#1側)との電気的な接続(つまり信号を送受信できる状態)を、下流側(例えば試験器切替部#1であれば試験器切替部#2側)または試験器側(例えば試験器切替部#1であれば試験器AまたはB)に切り替える。
言い換えれば、スイッチ241〜246が試験器側に閉じていれば、上流側と試験器30とが信号を送受信でき、スイッチ241〜246が下流側に閉じていれば、上流側と下流側とが信号を送受信でき、上流側と試験器30とは信号を送受信できない。
【0019】
ここで、図3を用いて試験器30の切替処理について説明する。
図3(A)に示すように、まず、被試験器用コントローラ10は、切替信号を、各試験器切替部20に対して、切替制御線100を介して、ブロードキャストによって送信する。
この切替信号は、試験に使用される試験器30の識別情報を含む。
各試験器切替部20の制御マイコン22は、受信した切替信号に含まれる試験器30の識別情報と、自身が記憶している試験器30の識別情報とを比較する。
【0020】
制御マイコン22は、自身が記憶している試験器30の識別情報に、切替信号に含まれる試験器30の識別情報が含まれる場合には、その識別情報に対応する試験器30に接続されているスイッチ241〜246を試験器側に閉じるように制御する。
つまり、制御マイコン22は、スイッチ241〜246の電気的な接続を、下流側から試験器側に切り替えるように(つまり信号を試験器と送受信できるように)制御する。
この場合、すでにスイッチ241〜246が試験器側に閉じている場合は、制御マイコン22が制御を行わないようにしてもよい。
【0021】
また、制御マイコン22は、自身が記憶している試験器30の識別情報に、切替信号に含まれる試験器30の識別情報が含まれない場合には、その識別情報に対応する試験器30に接続されているスイッチ241〜246を下流側に閉じるように制御する。
つまり、制御マイコン22は、スイッチ241〜246の電気的な接続を、試験器側から下流側に切り替えるように(つまり信号を下流の試験器切替部20と送受信できるように)制御する。
この場合、すでにスイッチ241〜246が下流側に閉じている場合は、制御マイコン22が制御を行わないようにしてもよい。
【0022】
制御マイコン22は、スイッチ241〜246を試験器側に閉じるように制御した場合(または、すでにスイッチ241〜246が試験器側に閉じていたので制御を行わなかった場合)に、応答信号を、被試験用コントローラ10に対して、切替制御線100を介して、ユニキャストによって送信する。
被試験用コントローラ10は、応答信号を試験器切替部20から受信すると、測定器12に対して、制御信号を送信する。
【0023】
ここで、図3(B)の例において、被試験器用コントローラ10からの切替信号に、試験器Fの識別情報が含まれていた場合を仮定する。
この場合、試験器切替部20−3の制御マイコン22−3は、自身が記憶した試験器30の識別情報に試験器Fの識別情報が含まれるので、試験器Fに接続されたスイッチ242−3を、下流側から試験器F側に切り替えるように制御する。
さらに、制御マイコン22−3は、応答信号を、被試験用コントローラ10に対して、ユニキャストによって送信する。
一方、試験器切替部20−1,20−2の制御マイコン22−1,22−2は、自身が記憶した試験器30の識別情報に試験器Fの識別情報が含まれないので、それぞれ、スイッチ241〜246を、下流側に閉じるように制御する。
このようにして、測定器12と試験器Fとの間の経路が構築される。
【0024】
本実施形態は、上記のように構成されているので、被試験器コントローラ10は、試験器切替部20の識別子(IPアドレス等)および試験器切替部20と試験器30との接続関係を記憶しておく必要がない。
したがって、試験システム1に試験器切替部20および試験器30が増設された場合であっても、試験器切替部20に送信する切替信号の形式を変更する必要がなく、被試験器用コントローラ10に記憶されているソフトウェアを変更する必要もない。
また、試験器30等が増大した場合等においても、試験器30の検索に要する時間が増加しない。
さらに、試験器30等の配置を変更する場合であっても、試験器切替部20の制御マイコン22に記憶された試験器の識別情報を変更するのみで、容易に変更することが可能である。
【0025】
なお、各試験器切替部20を互いに接続する信号線が3本あるとしたが、信号線の本数は、信号の種類等に応じて、適宜、変更してもよい。
また、複数の信号線のうちのどの信号線を介して試験器に試験信号を伝送するか、つまり、試験器に接続された複数のスイッチ(例えば図3(B)の試験器Fであれば242−3,244−3,246−3)のうちのどのスイッチを試験器側に閉じさせるかについては、試験の内容等に応じて、適宜、選択される
なお、本実施形態においては、各試験器切替部20に、それぞれ2つの試験器が物理的に接続されているとしたが、1つの試験器が接続されてもよく、3つ以上の試験器が接続されているとしてもよい。
また、本実施形態においては、試験器切替部は3つとしたが、2つでもよく、4つ以上でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、被試験器に対して試験を行う試験システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・試験システム、10・・・試験器用コントローラ、12・・・測定器、14・・・測定器切替部、20・・・試験器切替部、22・・・制御マイコン、241〜246・・・スイッチ、30・・・試験器、32・・・被試験器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験器用コントローラと、
被試験器に対して試験を実行して計測信号を出力する複数の試験器と、
物理的に互いに直列に接続された複数の試験器切替部であって、それぞれ1つ以上の前記試験器と物理的に接続された複数の試験器切替部と、
前記被試験器用コントローラに制御され、前記試験器から出力された計測信号を、前記複数の試験器切替部のうちの少なくとも1つを介して受信して測定する測定器と
を有し、
前記複数の試験器切替部それぞれは、
1つ以上のスイッチと、
前記スイッチの切り替えを制御する制御部と
を有し、
前記試験器切替部の制御部は、前記被試験器用コントローラから前記試験器の識別情報を含む信号を受信した場合に、この識別情報に対応する試験器が当該試験器切替部と物理的に接続されているときは、当該試験器と信号を送受信できるように前記スイッチを切り替え、この識別情報に対応する試験器が当該試験器切替部と物理的に接続されていないときは、当該試験器切替部と前記測定器とは反対側に物理的に接続された試験器切替部と信号を送受信できるように前記スイッチを切り替える
試験システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−141174(P2012−141174A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292631(P2010−292631)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】