説明

試験用エンジン冷却水循環システム

【課題】より多くのタイプのエンジンを含む試験体の試験を実施可能な試験用エンジン冷却水循環システムを提供する。
【解決手段】試験用エンジン冷却水循環システム1は、エンジン3を含む試験体2と、エンジン3へ冷却水を循環供給する循環装置5とを備える。エンジン3は、車両への実装時においてラジエータで冷却された冷却水を導入する流入口32と、冷却水をラジエータへ導出する流出口33と、冷却水を車両の暖房設備へ供給する導出口41と、暖房設備から冷却水を回収する導入口42とを具備する冷却水通路31を備える。循環装置5は、冷却水を冷却する熱交換器12と、熱交換器12で冷却された冷却水を導出口41及び導入口42に供給可能な経路と、当該経路の分岐点に設けられた第3の三方弁15と、流出口33及び導出口41から導出された冷却水を熱交換器12へ供給する経路と、当該経路の合流点に設けられた第2の三方弁14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験用エンジン冷却水循環システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンやそれを搭載する車両を開発し製造するメーカーなどでは、エンジンを試験台に載せ、種々の環境を想定したエンジンの始動試験等が行われている。このとき、寒冷地を想定した始動試験にあっては、エンジンを予め冷却しておく必要がある。そこで、試験室内に試験設備としてエンジン冷却水(以下、単に冷却水と言う)の循環経路を設け、エンジン始動前に、設備側ポンプなどを使用して、外部熱源で温調された冷熱媒などと熱交換器を介して冷却する冷却装置によって、例えば−10℃というような所定温度に冷却された冷却水(不凍液など)をエンジン内の冷却水経路に接続して強制的に導入循環させることが考えられる。このようにすれば、エンジンの迅速な冷却が可能となり、試験効率の向上を図ることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、完成製品の車両ではエンジン冷却したジャケット冷却水の熱を大気へ放熱するためのラジエータが車載されるが、車両に搭載されるエンジンには、ラジエータで冷却された冷却水を導入するための流入口、及び、エンジンで温められた冷却水をラジエータに導出するための流出口を具備する冷却水通路と、冷却水通路を開閉可能なサーモスタット弁が設けられている。エンジン冷却水温度は80℃前後が適温とされ、これより高温になると潤滑油が焼けてエンジン部品が焼きついたりノッキングなどの異常燃焼を引き起こすオーバーヒートになったり、これより低温になると、ガソリン気化が悪く燃焼が悪化したり、潤滑油への燃料混合を引き起こすオーバークールが発生する虞がある。始動直後のエンジン全体は冷えているので速やかに冷却水温を適温に上げるため、サーモスタット弁は冷却水が低温の場合にラジエータを通さずにエンジン内部の冷却水通路であるウォータジャケット内だけで循環させる機能を有するのである。サーモスタット弁は、エンジン内の冷却水の温度が設定温度(例えば、82℃)になると開状態となり、それ以下の温度では閉状態となる。加えて、サーモスタット弁が設けられたエンジンには、冷却水通路の流入口近傍と流出口近傍との間を連通させるバイパス通路が設けられており、サーモスタット弁が閉状態にあると、エンジン内の冷却水はラジエータ側に導出されることなく、冷却水通路及びバイパス通路を循環することとなる。
【0004】
さらに、車両には、エンジンで温められた冷却水を車両の暖房に利用するべく、エンジンの冷却水通路の冷却水を車両の暖房設備へ供給するための配管が設けられており、エンジンの冷却水通路には、エンジンから冷却水の一部を暖房設備へ供給する導出口と、暖房設備からの冷却水を回収する導入口とが設けられている。
【0005】
また、特許文献1においては、上記したエンジンの試験に際し、冷却装置で冷却された冷却水を冷却水通路の流入口から冷却水通路へ流入させる経路と、導入口から冷却水通路へ流入させる経路とを設けている。当該構成を採用することで、サーモスタット弁が冷却水通路の流入口に設けられ、かつ、サーモスタット弁が閉状態である場合でも、冷却装置で冷却された冷却水を導入口から冷却水通路へ流入させることができる。従って、サーモスタット弁が冷却水通路の流入口に設けられている場合でも、エンジンの始動試験等に先立って、冷却水を強制的に循環させ、確実にエンジンを冷却することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4111332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エンジンには、サーモスタット弁が冷却水通路の流入口(ラジエータからの戻り冷却水接続口である)に設けられたもの(エンジン冷却水通路循環方式としてボトムバイパス方式という)だけではなく、サーモスタット弁が冷却水通路の流出口(ラジエータへ温まった冷却水を送り出す冷却水接続口である)に設けられたもの(エンジン冷却水通路循環方式としてインライン方式という)も存在する。この場合、サーモスタット弁が閉じた状態にあると、冷却水通路の流出口が閉鎖されて冷却水通路の冷却水を流出させることができなくなるため、試験室設備の冷却装置で冷却された冷却水を流入口や導入口から冷却水通路に流入させようとしても先詰まりで循環させることができなくなってしまう。すなわち、上記特許文献1に記載の技術では、サーモスタット弁が冷却水通路の流出口に設けられたインライン方式のエンジンに関し寒冷地を想定した始動試験等を行うことが不可能であった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より多くのタイプのエンジンを含み、実装する冷却系ラジエータも試験系に含めた試験体の試験を行うことのできる試験用エンジン冷却水循環システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0010】
手段1.試験台に載置されたエンジンを含む試験体と、前記エンジンへ冷却水を循環供給する循環装置とを備えた試験用エンジン冷却水循環システムにおいて、
前記エンジンは、車両への実装時においてラジエータで冷却された冷却水を導入するための流入口と、エンジンで温められた冷却水をラジエータへ導出するための流出口とを具備する冷却水通路を備え、
前記冷却水通路には、車両への実装時においてエンジンで温められた冷却水を車両の暖房設備へと供給するための導出口と、暖房設備からの冷却水を回収するための導入口とが形成され、
前記循環装置は、
冷却水を循環させるためのポンプと、
冷却水を冷却可能な冷却手段と、
前記冷却手段にて冷却された冷却水を前記流入口へ供給可能な第1還流側パイプと、
前記導出口と前記導入口とを連通させることのできるヒータ循環パイプと、
前記冷却手段にて冷却された冷却水を、前記ヒータ循環パイプへ供給可能な第2還流側パイプと、
前記第2還流側パイプと前記ヒータ循環パイプとの連結部に設けられ、冷却水の循環経路を変更可能な還流側経路切替手段と、
前記エンジンから導出された冷却水を前記冷却手段へ供給可能な中継パイプと、
前記流出口から導出された冷却水を前記中継パイプへ供給可能な往流側第1接続パイプと、
前記導出口から導出された冷却水を前記中継パイプへ供給可能な往流側第2接続パイプと、
前記中継パイプと前記往流側第1接続パイプと前記往流側第2接続パイプとの連結部に設けられ、冷却水の循環経路を変更可能な往流側経路切替手段とを備えていることを特徴とする試験用エンジン冷却水循環システム。
【0011】
手段1によれば、サーモスタット弁が冷却水通路の流出口に設けられたエンジンを含む試験体の試験を行う場合、サーモスタット弁が閉状態であっても、エンジンの冷却水通路の冷却水を導出口から循環装置側に導出させ、流入口または導入口にて戻すことで、冷却水をエンジン及び循環装置に循環させることができる。また、サーモスタット弁が冷却水通路の流入口に設けられたエンジンを含む試験体の試験を行う場合、サーモスタット弁が閉状態であっても、エンジンの冷却水通路の導入口から冷却水通路へ冷却水を導入させ、流出口から循環装置側へ導出することで、冷却水をエンジン及び循環装置に循環させることができる。従って、循環装置を用い、エンジンの試験に先立って、冷却手段で冷却された冷却水を循環させてエンジンを冷却してからエンジンを始動させるといった寒冷地を想定した試験(強制冷却試験)をより多くのタイプのエンジンを含む試験体で行うことができる。勿論、上記したサーモスタット弁が設けられたエンジンの他にも、サーモスタット弁が省略されたエンジンの強制冷却試験を行うことも可能である。結果として、タイプの異なるエンジンに応じてそれぞれ異なる循環装置を用意するような場合に比べ、試験設備に関する設置スペースの縮小、コストの削減、試験効率の向上等を図ることができる。
【0012】
手段2.前記往流側経路切替手段及び還流側経路切替手段は、自身に連結された3本のパイプのうち連通させる2本の組合せを変更可能に構成される上、3本を同時に連通させることのできる三方弁であることを特徴とする手段1に記載の試験用エンジン冷却水循環システム。
【0013】
手段2によれば、往流側経路切替手段及び還流側経路切替手段にそれぞれ接続される3つのパイプのうち2つを連通させた状態とするだけでなく、3つを同時に連通させた状態とすることも可能となる。従って、冷却水の循環経路のうち条件に応じて変更される主たる経路の冷却水の流量を確保した上で、当該主たる経路と、枝分かれして存在する経路とを連通させ、両経路間を冷却水が往来可能に構成することができる。すなわち、例えば、所定の試験に際しては冷却水の循環経路として使用されない経路が完全に閉ざされる場合、試験を行ううちに、かかる使用されない経路に滞留する冷却水の温度が上昇し、冷却水が膨張することでかかる使用されない経路を構成するパイプが破損してしまうおそれがある。これに対し、本手段によれば、使用されない経路についても完全に閉鎖するのではなく、循環経路として使用される経路と連通させることで、使用されない経路の冷却水の膨張に起因する圧力を逃がすことができることから、閉鎖される経路毎に圧力を逃がすための膨張タンクを逐一設けなくても、冷却水の膨張に起因するパイプの破損を回避することができる。
【0014】
また、強制冷却時にあっては、枝分かれして存在する経路の冷却水についても極力冷却することができる。従って、その後の試験において、枝分かれの経路において冷却されずに暖かいまま残った冷却水に起因して、実際の挙動とは異なる挙動の試験データが採取されてしまうといった事態を抑制することができる。
【0015】
尚、往流側経路切替手段については、「前記往流側第1接続パイプと、前記往流側第2接続パイプと、前記中継パイプとにおける冷却水の流量の比率を変更可能」に構成され、還流側経路切替手段については、「前記第2還流側通路と、前記ヒータ循環パイプの前記導出口側と、前記ヒータ循環パイプの前記導入口側とにおける冷却水の流量の比率を変更可能」に構成されている。また、還流側経路切替手段は、エンジン始動前に冷却水を冷却する場合において、冷却手段で冷却された冷却水が、前記ヒータ循環パイプの前記導出口側だけでなく、前記ヒータ循環パイプの前記導入口側にも流れるように切替えられることとしてもよい。
【0016】
手段3.前記エンジンは、さらに前記冷却水通路内に停止中には外部のポンプ圧による冷却水流通を許すウォータポンプを備え、
前記冷却手段は、エンジンに送られる冷却水と冷媒との間で熱交換を行う第1熱交換器及び第2熱交換器を備え、
前記第2熱交換器一次側の冷媒は不凍液が、かつ、冷却手段二次側の冷却水にも不凍液がそれぞれ利用されるとともに、前記第2熱交換器によって冷却水を前記第1熱交換器一次側の冷媒の凝固点よりも低い温度にまで冷却可能に構成され、
前記第1還流側パイプは前記第1熱交換器と接続され、
前記第2還流側パイプは前記第2熱交換器と接続され、
冷却水の循環経路として、前記第1熱交換器を含む経路と、前記第2熱交換器を含む経路とに切替可能な循環経路切替手段を備え、
前記冷却水の循環経路のうち前記冷却水通路の接続点である前記流出口または前記導出口の何れかの直後箇所において温度計測器が設けられ、
前記循環経路切替手段は、
冷却水の前記温度計測器位置における目標温度が第1の基準温度以上であり、前記温度計測器で計測された冷却水の温度が前記第1の基準温度よりも低い第2の基準温度以上である場合には、冷却水の循環経路として前記第1熱交換器を含む経路に切替え、
冷却水の前記温度計測器位置における目標温度が前記第1の基準温度未満である場合には、冷却水の循環経路として前記第2熱交換器を含む経路に切替え、
冷却水の前記温度計測器位置における目標温度が前記第1の基準温度以上であっても、前記温度計測器で計測された冷却水の温度が前記第2の基準温度未満の場合には、冷却水の循環経路として、冷却機能をオフした前記第2熱交換器を含む経路に切替えることを特徴とする手段1又は2に記載の試験用エンジン冷却水循環システム。
【0017】
手段3によれば、第2熱交換器で冷却水を事前に寒冷地を想定した温度まで冷却してからエンジン試験を行うといった強制冷却試験を行う場合に、エンジンの始動後、第2熱交換器で冷却された冷却水の温度がある程度上昇して第1熱交換器一次側の冷媒凝固点より高い温度になるまでは、冷却水を第2熱交換器を含む循環経路を循環させる。このように、循環経路切替手段を制御して切替えないと、エンジン始動直後に、第1熱交換器一次側の冷媒凝固点より低い温度に冷却された冷却水が第1熱交換器二次側に流れ込むこととなり、第1熱交換器伝熱面を介して第1熱交換器一次側の冷媒を凍結させてしまうこととなる。これは、サーモスタット弁がないエンジン(試験のため常開弁に交換したりすることもある)の強制冷却試験を行う場合顕著に発生しがちな事柄であるが、このような不具合を本技術では確実に回避できるのである。
【0018】
また、サーモスタット弁がないエンジン(試験のため常開弁に交換したりすることもある)の強制冷却試験を行う場合に、第2熱交換器で冷却されていない第1還流側パイプに滞留していた暖かい冷却水がエンジン始動直後に冷却水通路に流れ込んでしまい、本来の挙動とは異なる挙動となってしまうところ、エンジン始動後ある程度冷却水が昇温してから切替えるのでこのような挙動となる事態を防止できる。
【0019】
手段4.前記第1熱交換器一次側冷媒は水であり、該冷媒を冷却する装置は大気と熱交換する冷却塔であり、
前記第2熱交換器一次側冷媒を冷却する装置はブライン冷凍機であることを特徴とする手段3に記載の試験用エンジン冷却水循環システム。
【0020】
手段4によれば、エンジン暖気後の冷却水の適度の温度が80℃前後であることから、極寒冷地条件以外の冷却水の冷却は、大気と熱交換する冷却塔冷却水(日本では夏でも35℃以下の温度が得られる)で充分可能なので、冷凍機の圧縮機を駆動しない自然エネルギー利用の安価で省エネルギーの冷熱源が利用できる。また、試験条件により適切な冷熱源を選択できるので、きめ細かな冷却水温度の制御が速やかな立ち上がりで可能となる。
【0021】
手段5.前記試験体は、前記エンジンと、当該エンジンに接続されたラジエータとを含むものであり、
前記流出口及び流入口をそれぞれ前記ラジエータと連通させて、前記第1還流側パイプを閉鎖させ、
前記往流側第1接続パイプ又は往流側第2接続パイプのうち一方を閉鎖させるとともに、他方を前記エンジンの流出口又は流入口と前記ラジエータとの間を接続するラジエータホースと接続することを特徴とする手段1又は2に記載の試験用エンジン冷却水循環システム。
【0022】
手段5のように、往流側第1接続パイプ又は往流側第2接続パイプの一方を閉塞し、他方をラジエータホースに繋ぐことで、上記循環装置を用いて、ラジエータが装着されたエンジンについての強制冷却試験も行うことができる。従って、より多種類のエンジンを含む試験体の試験を行うことができるといった上記作用効果が一層確実に奏される。
【0023】
手段6.前記試験体は、前記エンジンと、当該エンジンに接続されたラジエータとを含むものであり、
前記流出口及び流入口をそれぞれ前記ラジエータと連通させて、前記第1還流側パイプを閉鎖させ、
前記冷却水の循環経路のうち前記冷却水通路の接続点である前記流出口または前記導出口の何れかの直後箇所の代わりに前記ラジエータ出口箇所において温度計測器が設けられ、
前記往流側第1接続パイプ又は往流側第2接続パイプのうち一方を閉鎖させるとともに、他方を前記エンジンの流出口又は流入口と前記ラジエータとの間を接続するラジエータホースと接続することを特徴とする手段3又は4に記載の試験用エンジン冷却水循環システム。
【0024】
手段7.前記循環装置と前記試験体との接続点には、カップリングと、該カップリングの循環装置側に開閉弁機構とを備えたことを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載の試験用エンジン冷却水循環システム。
【0025】
手段7のように、カップリングと、該カップリングの循環装置側の開閉弁機構とで各配管を接続したり、接続しない箇所は弁を閉止したりすることで、より多種類のエンジンを含む試験体の試験を簡単にかつ確実に行うことができるといった上記作用効果が一層確実に奏される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】エンジン冷却水循環システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】エンジン冷却水循環システムの概略構成を示す説明図である。
【図3】エンジン冷却水循環システムの概略構成を示す説明図である。
【図4】エンジン冷却水循環システムの概略構成を示す説明図である。
【図5】エンジン冷却水循環システムの概略構成を示す説明図である。
【図6】エンジン冷却水循環システムの概略構成を示す説明図である。
【図7】三方弁の各種切替状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、試験用エンジン冷却水冷却システム1は、図示しない試験台に載置されたエンジン3を含む試験体2と、試験に際してエンジン3へ冷却水を循環供給するための試験室側設備である循環装置5とを備えている。尚、本実施形態では、冷却水として、乗用車など寒冷地にて使用されることも想定した不凍液であるLLC(ロングライフクーラント)が採用されている。
【0028】
先ず、循環装置5について説明する。循環装置5は、エンジン3から導出された冷却水と冷媒との間で熱交換を行う高温側熱交換器11、及び低温側熱交換器12と、第1の三方弁13、第2の三方弁14、及び第3の三方弁15と、エンジン3が始動していない状態において冷却水を循環させるポンプ16と、開放式膨張タンク17、及び密閉式膨張タンク18とを備えている。
【0029】
高温側熱交換器11は、例えば水を一次側冷媒としており、当該冷媒は、図示しない冷却塔において大気と熱交換することで冷却される。また、高温側熱交換器11と冷却塔とを繋ぐ配管には、両者間の冷媒の流れを調節する(図示しない開閉弁を併設している)比例制御二方弁19が設けられている。低温側熱交換器12は不凍液を一次側冷媒としており、当該冷媒は、図示しないブライン冷凍機によって冷却される。また、低温側熱交換器12とブライン冷凍機とを繋ぐ配管には、両者間の冷媒の流れを調節する(図示しない開閉弁を併設している)比例制御二方弁20が設けられている。これら比例制御二方弁19、20は、後述する温度計測器49に設定された温度と実測温度との偏差に応じてその開度を制御される。本実施形態では、低温側熱交換器12によって、エンジン3内部の冷却水通路を経路の一部として循環する冷却水を、高温側熱交換器11の一次側冷媒の凝固点以下となるまで冷却可能となっている。尚、本実施形態では、高温側熱交換器11及び低温側熱交換器12が冷却手段を構成し、高温側熱交換器11が第1熱交換器に相当し、低温側熱交換器12が第2熱交換器に相当する。
【0030】
本実施形態では、エンジン3から導出された冷却水の通過経路が、高温側熱交換器11に通じる経路と、低温側熱交換器12に通じる経路とに分岐しており、その分岐点において循環経路切替手段としての第1の三方弁13が設けられている。これにより、エンジン3から導出された冷却水を高温側熱交換器11及び低温側熱交換器12の一方に選択的に誘導することができるようになっている。また、本実施形態では、ポンプ16は、第1の三方弁13と低温側熱交換器12との間を繋ぐ経路に設けられている。
【0031】
また、詳しくは後述するが、本実施形態では、試験体2側において、エンジン3から導出される冷却水の出口(通過経路)が2つになる場合がある。これに対応し、循環装置5側では、エンジン3から導出された冷却水をいずれも高温側熱交換器11及び低温側熱交換器12の一方に選択的に誘導することができるように、エンジン3から導出される冷却水の通過経路を合流させ、前記第1の三方弁13へと繋げることができるように構成されている。
【0032】
そして、エンジン3から導出される冷却水の通過経路の合流点において往流側経路切替手段としての第2の三方弁14が設けられている。以下、第1の三方弁13と第2の三方弁14との間を繋ぐ配管を「中継パイプ21」と称し、第2の三方弁14の残り2つの接続口に接続される配管を「往流側第1接続パイプ22」、「往流側第2接続パイプ23」と称する。加えて、本実施形態では、開放式膨張タンク17及び密閉式膨張タンク18は、中継パイプ21に対応して設けられている。尚、試験前や試験後においては、開放式膨張タンク17と中継パイプ21とを繋ぐ配管に設けられた二方弁24が開放され、開放式膨張タンク17を介して冷却水を循環経路に充填させたり、開放式膨張タンク17で冷却水の膨張を吸収したりする。一方、試験中においては、該二方弁24が閉鎖されて循環経路における冷却水の膨張が密閉式膨張タンク18で吸収されることとなる。
【0033】
また、詳しくは後述するが、エンジン3には、エンジン3で温められた冷却水を車両の暖房設備に回すための配管(後述する供給パイプ43及び回収パイプ44)が接続されている。但し、試験体2には暖房設備からヒータ部分を仮設で空気と熱交換可能にするだけとして取り出し設備側循環装置5と接続させるため、循環装置5には、かかる配管が連通するように(供給パイプ43と回収パイプ44とを繋ぐ)ヒータ循環パイプ25が設けられている。
【0034】
さらに、本実施形態では、一端が低温側熱交換器12の冷却水の出口に接続され、低温側熱交換器12から導出された冷却水をエンジン3に導入させるための第2還流側パイプとしての低温側還流パイプ28が設けられており、当該低温側還流パイプ28の他端がヒータ循環パイプ25の途中に接続されている。そして、低温側還流パイプ28とヒータ循環パイプ25との連結部において還流側経路切替手段としての第3の三方弁15が設けられている。すなわち、ヒータ循環パイプ25は、導出口41側の(供給パイプ43と接続される)ヒータ系第1パイプ26と、導入口42側の(回収パイプ44と接続される)ヒータ系第2パイプ27とが、第3の三方弁15で接続されることで構成されている。さらに、第3の三方弁15に低温側還流パイプ28が接続されることで、低温側熱交換器12で冷却された冷却水を、ヒータ循環パイプ25を介してエンジン3に導入することができるようになっている。
【0035】
本実施形態では、第2の三方弁14及び第3の三方弁15は、同三方弁14、15にそれぞれ接続される3本のパイプのうち、2本のみを連通させるだけでなく、3本を同時に連通させることができる比例弁となっている(図7参照)。より詳しく説明すると、第2の三方弁14については、往流側第1接続パイプ22と、往流側第2接続パイプ23と、中継パイプ21とにおける冷却水の流量の比率を変更可能に構成され、これら3つのパイプ21、22、23のうち1つから第2の三方弁14に流入した冷却水を残り2つのパイプの一方又は両方に流入させることができるようになっている。第3の三方弁15については、低温側還流パイプ28と、ヒータ系第1パイプ26と、ヒータ系第2パイプ27とにおける冷却水の流量の比率を変更可能に構成され、これら3つのパイプ26、27、28のうち1つから第3の三方弁15に流入した冷却水を残り2つのパイプの一方又は両方に流入させたり、3つのパイプ26、27、28のうち2つから第3の三方弁15に流入した冷却水を残り1つのパイプに流入させたりすることができるようになっている。第2の三方弁14、第3の三方弁15の具体的な弁形式は、電動ボール弁形式の、内部でL字状に曲がった流路を備えるボール体を有し、ボール体を回動途中で停止できる機構を有する弁であればよい。
【0036】
また、循環装置5には、高温側熱交換器11の冷却水の出口に接続され、高温側熱交換器11から導出された冷却水をエンジン3に導入させるための第1還流側パイプとしての高温側還流パイプ29が設けられている。そして、高温側還流パイプ29、及び、上記したヒータ系第1パイプ26、ヒータ系第2パイプ27、往流側第1接続パイプ22、及び往流側第2接続パイプ23が、後述する試験体2側の各種配管と接続されることで、冷却水の循環が行われるようになっている。加えて、高温側還流パイプ29、ヒータ系第1パイプ26、ヒータ系第2パイプ27、往流側第1接続パイプ22、及び往流側第2接続パイプ23の試験体2側の配管との接続端は、カップリング(図示略)が各々管端に施され、試験体2側の各管端にもカップリング(図示略)が施され、循環装置5側の接続端直近にそれぞれ開閉バルブ30が設けられている。
【0037】
さて、本実施形態では、上記した循環装置5を用いて、複数パターン(本実施形態では全部で6パターン)の試験体2の試験を実施可能となっている。以下、試験に供される各種試験体2と、その試験に際しての冷却水の流れについてそれぞれ説明する。
【0038】
<態様例1;冷却水の出口にサーモスタット弁35が設けられたエンジン3の試験>
図1に示すように、試験体2を構成するエンジン3は、車両への実装時において、図示しないラジエータで冷却された冷却水をエンジン3に導入するための流入口32と、エンジン3内の冷却水を図示しないラジエータに導出するための流出口33とを備えた冷却水通路31(ウォータジャケット)を備えている。また、冷却水通路31には、冷却水を循環させるためのウォータポンプ34が設けられている。このウォータポンプ34は、冷却水通路31の側壁一面から回転軸を突き出してインペラが覗いている回転ポンプで、回転軸が突き出ている面の対向面とインペラとの隙間があり、インペラが駆動されないポンプ停止時にも、外ポンプ圧により冷却水が流れる構成を有するポンプである。エンジン3の駆動時は、該エンジンクランクシャフトから駆動力を取り出してこのウォータポンプ34を駆動し、そのウォータポンプ34の作用によって冷却水が循環する。
【0039】
さらに、図1に示すエンジン3には、流出口33においてサーモスタット弁35が設けられている。サーモスタット弁35は、エンジン3内の冷却水の温度が規定温度(例えば、82℃)以上となることで開状態となり、それ未満の温度では閉状態となる。また、サーモスタット弁35を備えるエンジン3においては、冷却水通路31のうち流出口33の近傍部位と、流入口32の近傍部位とを連通させるバイパス通路36が設けられている。すなわち、エンジン3を始動させても、エンジン3内の冷却水の温度が規定温度未満の場合、サーモスタット弁35が閉鎖されていることから、冷却水が流出口33から導出されない。このため、エンジン3内において、冷却水通路31及びバイパス通路36で構成される経路を冷却水が循環することとなる。
【0040】
また、試験体2として、一端が流入口32と接続され、他端が車両への実装時においてラジエータから冷却水を導出するための図示しないラジエータアウトレットパイプと接続される流入パイプ37と、一端が流出口33と接続され、他端が車両への実装時においてラジエータへ冷却水を導入するための図示しないラジエータインレットパイプと接続される流出パイプ38とが設けられている。試験に際しては、流入パイプ37は、循環装置5側の高温側還流パイプ29と接続され、流出パイプ38は、循環装置5側の往流側第1接続パイプ22と接続されている。
【0041】
また、エンジン3には、エンジン3で温められた冷却水を車両の暖房設備に回すための配管が接続されている。より詳しくは、冷却水通路31には、冷却水通路31の冷却水を暖房設備に導出するための導出口41と、暖房設備の冷却水を冷却水通路31に導入するための導入口42とが形成されている。さらに、試験体2として、導出口41から導出された冷却水通路31の冷却水を暖房設備へ供給するための供給パイプ43と、暖房設備から導出された冷却水を導入口42を介して冷却水通路31へ回収するための回収パイプ44とが設けられている。また、本例では、供給パイプ43においてヒータ45が設けられている。試験に際しては、供給パイプ43は、循環装置5側のヒータ系第1パイプ26と接続され、回収パイプ44は、循環装置5側のヒータ系第2パイプ27と接続されている。
【0042】
さらに、本例では、供給パイプ43のうちヒータ45と導出口41との間の部位において試験用に特設口46が形成されるとともに、実際の車両には存在しない特設パイプ47が特設口46に接続されており、供給パイプ43に流入した冷却水の通過経路が分岐されている。また、特設パイプ47の他端側は、循環装置5側の往流側第2接続パイプ23と接続されている。
【0043】
次に、上記した試験体2の試験について説明する。本実施形態では、常温でエンジン3等の性能を試験する定常試験と、寒冷地を想定し、エンジン始動前に、例えば、冷却水を−10℃に冷却してから、エンジン3等の性能を試験する強制冷却試験とが行われるようになっている。尚、定常試験においては、エンジン3の始動試験等の短期的な試験の他、エンジン3内の冷却水が規定温度以上となった後も試験を続ける長期的な試験を行う場合があるが、強制冷却試験では短期的な試験のみを行う。
【0044】
先ず、定常試験について、図1(a)等を参照して説明する。
【0045】
初めに、エンジン3の始動に先立って、第1の三方弁13をエンジン3から導出された冷却水が高温側熱交換器11に流入するように切替え、第2の三方弁14を流出口33(流出パイプ38)から導出された冷却水が第1の三方弁13側に流れるように切替え、第3の三方弁15をヒータ系第1パイプ26からの冷却水がヒータ系第2パイプ27に流れるように切替える(図7(a)参照)。また、流出パイプ38のうち流出口33(サーモスタット弁35)の近傍部位において、冷却水の温度を計測する温度計測器49を設ける。当該温度計測器49によって計測された冷却水の温度に基づいて、(高温側熱交換器11と図示しない冷却塔との間の配管に設けられた比例制御二方弁19の開度を調節する等して)エンジン3に供給される冷却水の温度が調整されるようになっている。
【0046】
試験の開始にあたり、エンジン3が始動するとウォータポンプ34が駆動することから冷却水通路31の冷却水に流れが生じるが、エンジン3の始動開始直後は、エンジン3内の冷却水の温度が規定温度(82℃)未満であることから、サーモスタット弁35が閉鎖されている。このため、図1(a)の鎖線の矢印で示すように、冷却水は基本的にエンジン3内を循環するだけとなる。尚、暖房設定がなされている場合等においては、図示しないバルブが開き、供給パイプ43側にも冷却水が若干流れるようになっている。また、試験中においては、循環装置5側のポンプ16は駆動させない。
【0047】
エンジン3内の冷却水の温度が規定温度以上になると、サーモスタット弁35が開放され、図1(a)の実線の矢印で示すように、冷却水は循環装置5側にも循環することとなる。すなわち、流出口33を介してエンジン3から導出された冷却水は、流出パイプ38→往流側第1接続パイプ22→第2の三方弁14→中継パイプ21→第1の三方弁13を通じて高温側熱交換器11に流入し、高温側熱交換器11で冷却された冷却水は、高温側還流パイプ29→流入パイプ37を通じて流入口32からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。
【0048】
尚、第3の三方弁15は、低温側還流パイプ28側にも若干開放されている。すなわち、ヒータ循環パイプ25と低温側還流パイプ28との間に冷却水の主たる流路が形成されることはないが、低温側還流パイプ28に滞留している冷却水が温度上昇に伴って膨張した場合に、その膨張分をヒータ循環パイプ25側に逃がすことができるようになっている。また、冷却水の目標温度が比較的低い場合(例えば、温度計測器49で計測される冷却水の温度が60℃未満の所定の温度となるように設定される場合)、高温側熱交換器11ではなく、低温側熱交換器12を用いて冷却水を冷却することとしてもよい。
【0049】
次に、強制冷却試験について、図1(b)等を参照して説明する。
【0050】
先ず、第1の三方弁13を冷却水が低温側熱交換器12に流入するように切替え、第2の三方弁14を特設口46(特設パイプ47)から導出された冷却水が第1の三方弁13側に流れるように切替え、第3の三方弁15を低温側還流パイプ28からの冷却水がヒータ系第2パイプ27に流れるように切替える(図7(b)参照)。また、供給パイプ43のうち特設口46と導出口41との間の部位において温度計測器49を設ける。
【0051】
その後、エンジン3の始動に先立って、ポンプ16を駆動させることで、図1(b)の矢印で示すように、冷却水が循環装置5及びエンジン3を循環することとなる。このとき、エンジン3は駆動していないため、サーモスタット弁35は閉鎖されており、流出口33からエンジン3(冷却水通路31)の冷却水を導出させることはできないが、供給パイプ43及び特設口46を通じて特設パイプ47からエンジン3の冷却水を循環装置5側に導出することができるようになっている。そして、特設パイプ47から導出された冷却水は、往流側第2接続パイプ23→第2の三方弁14→中継パイプ21→第1の三方弁13を通じて低温側熱交換器12に流入し、低温側熱交換器12で冷却された冷却水は、低温側還流パイプ28→第3の三方弁15→ヒータ系第2パイプ27→回収パイプ44を通じて導入口42からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。
【0052】
そして、温度計測器49に計測される冷却水の温度が設定温度(−10℃)となったところで、エンジン3を始動させて試験(始動試験等の短期的な試験)を開始する。強制冷却試験の試験そのものについては、上記した定常試験と基本的に同じであり、図1(a)の鎖線の矢印で示すように基本的にエンジン3内を冷却水が循環する。
【0053】
尚、強制冷却時において、第3の三方弁15は、ヒータ系第1パイプ26側にも若干開放されている。すなわち、低温側還流パイプ28とヒータ系第1パイプ26との間に冷却水の主たる流路が形成されることはないが、ヒータ系第1パイプ26及び供給パイプ43の冷却水を冷却することができる。このため、ヒータ系第1パイプ26及び供給パイプ43に滞留している冷却水が暖かいまま残ってしまうといった事態を防止することができる。
【0054】
さらに、第2の三方弁14は、強制冷却時において、往流側第1接続パイプ22側にも若干開放されている。このため、往流側第1接続パイプ22及び供給パイプ43における冷却水についても極力冷却することができる。
【0055】
また、冷却水通路31のうちウォータポンプ34が設置されている箇所においても冷却水が通過するのに十分な隙間が形成されており、エンジン3が停止していてウォータポンプ34が駆動していない状態であっても、冷却水通路31において導入口42から導出口41まで確実に冷却水を流すことができる。
【0056】
<態様例2;冷却水の入口にサーモスタット弁35が設けられたエンジン3の試験>
図2に示す試験体2としてのエンジン3は、冷却水通路31の流入口32にサーモスタット弁35が設けられている。また、本態様例の試験体2には、特設パイプ47が設けられていない。これに伴い、第2の三方弁14に接続された往流側第2接続パイプ23の開閉バルブ30が閉鎖されている。その他の構成は、上記態様例1で説明したエンジン3や循環装置5と同じである。
【0057】
次に、該試験体2の定常試験について、図2(a)等を参照して説明する。
【0058】
先ず、エンジン3の始動に先立って、第1の三方弁13をエンジン3から導出された冷却水が高温側熱交換器11に流入するように切替え、第2の三方弁14を流出口33から導出された冷却水が第1の三方弁13側に流れるように切替え、第3の三方弁15をヒータ系第1パイプ26からの冷却水がヒータ系第2パイプ27に流れるように切替える(図7(a)参照)。また、流出パイプ38のうち流出口33の近傍部位において、冷却水の温度を計測する温度計測器49を設ける。尚、第3の三方弁15は、低温側還流パイプ28側にも若干開放されている。
【0059】
試験の開始にあたり、エンジン3が始動すると冷却水通路31の冷却水に流れが生じるが、エンジン3の始動開始直後は、エンジン3内の冷却水の温度が規定温度(82℃)未満であることから、サーモスタット弁35が閉鎖されている。このため、図2(a)の鎖線の矢印で示すように、冷却水は基本的にエンジン3内を循環するだけとなる。
【0060】
エンジン3内の冷却水の温度が規定温度以上になると、サーモスタット弁35が開放され、図2(a)の実線の矢印で示すように、冷却水は循環装置5側にも循環することとなる。すなわち、流出口33を介してエンジン3から導出された冷却水は、流出パイプ38→往流側第1接続パイプ22→第2の三方弁14→中継パイプ21→第1の三方弁13を通じて高温側熱交換器11に流入し、高温側熱交換器11で冷却された冷却水は、高温側還流パイプ29→流入パイプ37を通じて流入口32からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。
【0061】
次に、強制冷却試験について、図2(b)等を参照して説明する。
【0062】
先ず、第1の三方弁13を冷却水が低温側熱交換器12に流入するように切替え、第2の三方弁14を流出口33から導出された冷却水が第1の三方弁13側に流れるように切替え、第3の三方弁15を低温側還流パイプ28からの冷却水がヒータ系第2パイプ27に流れるように切替える(図7(b)参照)。また、流出パイプ38のうち流出口33の近傍部位に温度計測器49を設ける。尚、強制冷却時において、第3の三方弁15は、ヒータ系第1パイプ26側にも若干開放されている。
【0063】
その後、エンジンの始動に先立って、ポンプ16を駆動させることで、図2(b)の矢印で示すように、冷却水が循環装置5及びエンジン3を循環することとなる。また、エンジン3は駆動していないため、サーモスタット弁35は閉鎖されており、流入口32からエンジン3(冷却水通路31)に冷却水を導入させることはできないが、回収パイプ44を通じて導入口42から冷却水を冷却水通路31に導入することができるようになっている。そして、流出口33から導出された冷却水は、流出パイプ38→往流側第1接続パイプ22→第2の三方弁14→中継パイプ21→第1の三方弁13を通じて低温側熱交換器12に流入し、低温側熱交換器12で冷却された冷却水は、低温側還流パイプ28→第3の三方弁15→ヒータ系第2パイプ27→回収パイプ44を通じて導入口42からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。
【0064】
そして、冷却水が設定温度(−10℃)となったところで、エンジン3を始動させて試験(始動試験等の短期的な試験)を開始する。強制冷却試験の試験そのものについては、上記した定常試験と基本的に同じであり、図2(a)の鎖線の矢印で示すように基本的にエンジン3内を冷却水が循環する。
【0065】
<態様例3;サーモスタット弁35が設けられていないエンジン3の試験>
図3に示す試験体2としてのエンジン3にはサーモスタット弁35が設けられていない。これに伴い、エンジン3のバイパス通路36が省略されている。また、本態様例の試験体2には、ヒータ45、供給パイプ43が省略されている上、特設パイプ47が設けられていない。これに伴い、第2の三方弁14に接続された往流側第2接続パイプ23の開閉バルブ30と、第3の三方弁15に接続されたヒータ系第1パイプ26の開閉バルブ30とが閉鎖されている。その他の構成は、上記態様例1で説明したエンジン3や循環装置5と同じである。
【0066】
次に、該試験体2の定常試験について、図3(a)等を参照して説明する。
【0067】
先ず、エンジン3の始動に先立って、第1の三方弁13をエンジン3から導出された冷却水が高温側熱交換器11に流入するように切替え、第2の三方弁14を流出口33から導出された冷却水が第1の三方弁13側に流れるように切替え、第3の三方弁15を低温側還流パイプ28とヒータ系第2パイプ27とが連通し、ヒータ系第1パイプ26が閉塞されるように切替える(図7(a)参照)。また、流出パイプ38のうち流出口33の近傍部位において、冷却水の温度を計測する温度計測器49を設ける。
【0068】
試験の開始にあたり、エンジン3が始動すると冷却水通路31の冷却水に流れが生じる。また、図3に示すエンジン3にはサーモスタット弁35がないことから、エンジン3内の冷却水の温度が上記規定温度(82℃)未満であっても、エンジン3の始動直後から、図3(a)の矢印で示すように、冷却水がエンジン3及び循環装置5を循環することとなる。すなわち、流出口33を介してエンジン3から導出された冷却水は、流出パイプ38→往流側第1接続パイプ22→第2の三方弁14→中継パイプ21→第1の三方弁13を通じて高温側熱交換器11に流入し、高温側熱交換器11で冷却された冷却水は、高温側還流パイプ29→流入パイプ37を通じて流入口32からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。
【0069】
次に、強制冷却試験について、図3(b)等を参照して説明する。
【0070】
先ず、第1の三方弁13を冷却水が低温側熱交換器12に流入するように切替え、第2の三方弁14を流出口33から導出された冷却水が第1の三方弁13側に流れるように切替え、第3の三方弁15を低温側還流パイプ28からの冷却水がヒータ系第2パイプ27に流れるように切替える(図7(b)参照)。また、流出パイプ38のうち流出口33の近傍部位に温度計測器49を設ける。
【0071】
その後、エンジン3の始動に先立って、ポンプ16を駆動させることで、図3(b)の矢印で示すように、冷却水が循環装置5及びエンジン3を循環することとなる。すなわち、流出口33から導出された冷却水は、流出パイプ38→往流側第1接続パイプ22→第2の三方弁14→中継パイプ21→第1の三方弁13を通じて低温側熱交換器12に流入し、低温側熱交換器12で冷却された冷却水は、低温側還流パイプ28→第3の三方弁15→ヒータ系第2パイプ27→回収パイプ44を通じて導入口42からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。尚、第1の三方弁13により高温側熱交換器11側の通路が閉鎖されているため、導入口42から冷却水通路31に流入した冷却水が流入口32側に流れないようになっている。
【0072】
そして、冷却水が設定温度(−10℃)となったところで、エンジン3を始動させて試験を開始する。尚、本実施形態では、目標温度が60℃未満の場合には、低温側熱交換器12を含む経路を冷却水が流れるように第1の三方弁13が切替えられる。また、目標温度が60℃以上で、かつ、温度計測器49で計測された冷却水の温度が5℃以上の場合には、高温側熱交換器11を含む経路を冷却水が流れるように第1の三方弁13が切替えられる。さらに、目標温度が60℃以上でも、温度計測器49で計測された冷却水の温度が5℃未満の場合には、高温側熱交換器11を含む経路ではなく、低温側熱交換器12を含む経路を冷却水が流れるように第1の三方弁13が切替えられるとともに、低温側熱交換器12の冷却機能を停止させるべく、低温側熱交換器12と図示しない冷凍機との間の配管に設けられた比例制御二方弁20が閉鎖される。
【0073】
すなわち、本態様例3では、エンジン3にサーモスタット弁35がないことから、エンジン3を始動させると同時に、冷却水がエンジン3の内部だけでなく循環装置5側にも循環する。つまり、温度の低い(例えば零下の)冷却水がエンジン3及び循環装置5を循環することとなるが、図3(a)の矢印で示すように、この温度の低い冷却水を高温側熱交換器11に流入させてしまうと、高温側熱交換器11の冷媒である水が凍結してしまうおそれがある。この点、上記のように、温度計測器49で計測された冷却水の温度が5℃未満の場合には、低温側熱交換器12を含む経路を冷却水が流れるように構成することで、かかる不具合を回避することができる。尚、目標温度が60℃以上の場合、冷却水の温度が5℃以上になると、高温側熱交換器11の一次側冷媒である冷却塔で冷却される水が夏場でも35℃以下になることから、高温側熱交換器11の伝熱面積でも充分冷却できるようになるので、高温側熱交換器11に冷却水が流れるように第1の三方弁13が切替えられる。本実施形態では、第1の基準温度が60℃であり、第2の基準温度が5℃である。
【0074】
<態様例4;冷却水の出口にサーモスタット弁35が設けられ、ラジエータ51と接続されたエンジン3の試験>
図4に示す試験体2としてのエンジン3は、冷却水通路31の流出口33にサーモスタット弁35が設けられている。また、試験体2としてラジエータ51が設けられており、ラジエータ51に冷却水を導入させるためのラジエータインレットパイプ52と流出パイプ38とが接続され、ラジエータ51から冷却水を導出させるためのラジエータアウトレットパイプ53と流入パイプ37とが接続されている。尚、ラジエータインレットパイプ52にはラジエータキャップ55を具備するリザーバタンク54が配管を介して接続されている。また、ラジエータインレットパイプ52及びラジエータアウトレットパイプ53がラジエータホースを構成する。
【0075】
さらに、本態様例では、ラジエータインレットパイプ52と流出パイプ38との接続部位において試験用に特設口61が形成されるとともに、実際の車両には存在しない特設パイプ62が特設口61に接続されて、エンジン3とラジエータ51との間の冷却水の通過経路が分岐されている。特設パイプ62の他端側は、循環装置5側の往流側第1接続パイプ22と接続されている。
【0076】
また、本態様例の試験体2には、供給パイプ43に接続される特設パイプ47は設けられていない。これに伴い、第2の三方弁14に接続された往流側第2接続パイプ23の開閉バルブ30が閉鎖されている。さらに、試験体2にラジエータ51が設けられることから、ラジエータ51の代わりであった高温側熱交換器11を使用することがない(高温側還流パイプ29と流入パイプ37との接続がない)。このため、高温側還流パイプ29に設けられた開閉バルブ30が閉鎖される。その他の構成は、上記態様例1で説明したエンジン3や循環装置5と同じである。
【0077】
次に、該試験体2の定常試験について、図4(a)等を参照して説明する。
【0078】
先ず、エンジン3の始動に先立って、第1の三方弁13を中継パイプ21と低温側熱交換器12とが連通するように切替え、第2の三方弁14を往流側第1接続パイプ22と中継パイプ21とが連通するように切替え、第3の三方弁15をヒータ系第1パイプ26とヒータ系第2パイプ27とが連通するように切替える(図7(a)参照)。また、流出パイプ38のうち流出口33の近傍部位において、冷却水の温度を計測する温度計測器49を設ける。
【0079】
試験の開始にあたり、エンジン3が始動すると冷却水通路31の冷却水に流れが生じるが、エンジン3の始動開始直後は、エンジン3内の冷却水の温度が規定温度(82℃)未満であることから、サーモスタット弁35が閉鎖されている。このため、図4(a)の鎖線の矢印で示すように、冷却水は基本的にエンジン3内を循環するだけとなる。尚、暖房設定がなされている場合等においては、供給パイプ43側にも冷却水が流れるようになっている。
【0080】
エンジン3内の冷却水の温度が規定温度以上になると、サーモスタット弁35が開放され、図4(a)の実線の矢印で示すように、冷却水はラジエータ51側にも循環することとなる。すなわち、流出口33を介してエンジン3から導出された冷却水は、流出パイプ38→ラジエータインレットパイプ52を通じてラジエータ51に流入し、ラジエータ51で冷却された冷却水は、ラジエータアウトレットパイプ53→流入パイプ37を通じて流入口32からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。尚、第3の三方弁15により低温側還流パイプ28側が閉鎖されているため、特設パイプ62に冷却水が流れ込んで循環装置5側に冷却水の流れが生じるようなことはない。
【0081】
次に、強制冷却試験について、図4(b)等を参照して説明する。
【0082】
先ず、第1の三方弁13を中継パイプ21と低温側熱交換器12とが連通するように切替え、第2の三方弁14を往流側第1接続パイプ22と中継パイプ21とが連通するように切替え、第3の三方弁15を低温側還流パイプ28とヒータ系第2パイプ27とが連通するように切替える(図7(b)参照)。また、特設パイプ62において温度計測器49を設ける。
【0083】
その後、エンジン3の始動に先立って、ポンプ16を駆動させることで、図4(b)の矢印で示すように、冷却水が循環装置5及びエンジン3を循環することとなる。このとき、エンジン3は駆動していないため、サーモスタット弁35は閉鎖されており、流出口33からエンジン3(冷却水通路31)の冷却水を導出させることはできないが、エンジン3の駆動時の冷却水の流れとは逆流させるようにして、流入口32からエンジン3の冷却水を導出することができるようになっている。そして、流入口32から導出された冷却水は、流入パイプ37→ラジエータアウトレットパイプ53→ラジエータ51→ラジエータインレットパイプ52→特設パイプ62→往流側第1接続パイプ22→第2の三方弁14→中継パイプ21→第1の三方弁13を通じて低温側熱交換器12に流入し、低温側熱交換器12で冷却された冷却水は、低温側還流パイプ28→第3の三方弁15→ヒータ系第2パイプ27→回収パイプ44を通じて導入口42からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。
【0084】
そして、冷却水が設定温度(−10℃)となったところで、エンジン3を始動させて試験(始動試験等の短期的な試験)を開始する。強制冷却試験の試験そのものについては、上記した定常試験と基本的に同じであり、図4(a)の鎖線の矢印で示すように基本的にエンジン3内を冷却水が循環する。尚、強制冷却時において、第3の三方弁15は、ヒータ系第1パイプ26側にも若干開放されている。すなわち、低温側還流パイプ28とヒータ系第1パイプ26との間に冷却水の主たる流路が形成されることはないが、ヒータ系第1パイプ26及び供給パイプ43の冷却水を冷却することができる。
【0085】
<態様例5;冷却水の入口にサーモスタット弁35が設けられ、ラジエータ51と接続されたエンジン3の試験>
図5に示す試験体2や循環装置5は、基本的に上記態様例4と同様の構成を具備しているが、試験体2としてのエンジン3は、冷却水通路31の流入口32にサーモスタット弁35が設けられている。また、本態様例5では、ラジエータアウトレットパイプ53と流入パイプ37との接続部位において試験用に特設口63が形成されるとともに、実際の車両には存在しない特設パイプ64が特設口63に接続されて、エンジン3とラジエータ51との間の冷却水の通過経路が分岐されている。当該特設パイプ64の他端側は、循環装置5側の往流側第2接続パイプ23と接続されている。さらに、第2の三方弁14に接続された往流側第1接続パイプ22の開閉バルブ30が閉鎖されている。その他の構成は、上記態様例4で説明したエンジン3や循環装置5と同じである。
【0086】
次に、該試験体2の定常試験について、図5(a)等を参照して説明する。
【0087】
先ず、エンジン3の始動に先立って、第1の三方弁13を中継パイプ21と低温側熱交換器12とが連通するように切替え、第2の三方弁14を往流側第2接続パイプ23と中継パイプ21とが連通するように切替え、第3の三方弁15をヒータ系第1パイプ26とヒータ系第2パイプ27とが連通するように切替える(図7(a)参照)。また、流出パイプ38のうち流出口33の近傍部位において温度計測器49を設ける。
【0088】
試験の開始にあたり、エンジン3が始動すると冷却水通路31の冷却水に流れが生じるが、エンジン3の始動開始直後は、エンジン3内の冷却水の温度が規定温度(82℃)未満であることから、サーモスタット弁35が閉鎖されている。このため、図5(a)の鎖線の矢印で示すように、冷却水は基本的にエンジン3内を循環するだけとなる。尚、暖房設定がなされている場合等においては、供給パイプ43側にも冷却水が流れるようになっている。
【0089】
エンジン3内の冷却水の温度が規定温度以上になると、サーモスタット弁35が開放され、図5(a)の実線の矢印で示すように、冷却水はラジエータ51側にも循環することとなる。すなわち、流出口33を介してエンジン3から導出された冷却水は、流出パイプ38→ラジエータインレットパイプ52を通じてラジエータ51に流入し、ラジエータ51で冷却された冷却水は、ラジエータアウトレットパイプ53→流入パイプ37を通じて流入口32からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。尚、第3の三方弁15により低温側還流パイプ28側が閉鎖されているため、特設パイプ64に冷却水が流れ込んで循環装置5側に冷却水の流れが生じるようなことはない。
【0090】
次に、強制冷却試験について、図5(b)等を参照して説明する。
【0091】
先ず、第1の三方弁13を中継パイプ21と低温側熱交換器12とが連通するように切替え、第2の三方弁14を往流側第2接続パイプ23と中継パイプ21とが連通するように切替え、第3の三方弁15を低温側還流パイプ28とヒータ系第2パイプ27とが連通するように切替える(図7(b)参照)。また、ラジエータアウトレットパイプ53において温度計測器49を設ける。尚、強制冷却時において、第3の三方弁15は、ヒータ系第1パイプ26側にも若干開放されている。
【0092】
その後、エンジン3の始動に先立って、ポンプ16を駆動させることで、図5(b)の矢印で示すように、冷却水が循環装置5及びエンジン3を循環することとなる。また、エンジン3は駆動していないため、サーモスタット弁35は閉鎖されており、流入口32からエンジン3(冷却水通路31)に冷却水を導入させることはできないが、回収パイプ44を通じて導入口42から冷却水を冷却水通路31に導入することができるようになっている。そして、流出口33から導出された冷却水は、流出パイプ38→ラジエータインレットパイプ52→ラジエータ51→ラジエータアウトレットパイプ53→特設パイプ64→往流側第2接続パイプ23→第2の三方弁14→中継パイプ21→第1の三方弁13を通じて低温側熱交換器12に流入し、低温側熱交換器12で冷却された冷却水は、低温側還流パイプ28→第3の三方弁15→ヒータ系第2パイプ27→回収パイプ44を通じて導入口42からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。
【0093】
そして、冷却水が設定温度(−10℃)となったところで、エンジン3を始動させて試験(始動試験等の短期的な試験)を開始する。強制冷却試験の試験そのものについては、上記した定常試験と基本的に同じであり、図5(a)の鎖線の矢印で示すように基本的にエンジン3内を冷却水が循環する。
【0094】
<態様例6;サーモスタット弁35がなく、ラジエータ51と接続されたエンジン3の試験>
図6に示す試験体2や循環装置5は、基本的に上記態様例4と同様の構成を具備しているが、試験体2としてのエンジン3は、サーモスタット弁35及びバイパス通路36が省略されている。また、本態様例の試験体2には、ヒータ45、供給パイプ43が省略されている。これに伴い、第3の三方弁15に接続されたヒータ系第1パイプ26の開閉バルブ30が閉鎖されている。その他の構成は、上記態様例4で説明したエンジン3や循環装置5と同じである。
【0095】
尚、本態様例6では、上記態様例4と同様に、ラジエータインレットパイプ52と流出パイプ38との接続部位において試験用に特設口65が形成されるとともに、実際の車両には存在しない特設パイプ66が特設口65に接続されて、エンジン3とラジエータ51との間の冷却水の通過経路が分岐されている。当該特設パイプ66の他端側は、循環装置5側の往流側第1接続パイプ22と接続されている。さらに、第2の三方弁14に接続された往流側第2接続パイプ23の開閉バルブ30が閉鎖されている。
【0096】
次に、該試験体2の定常試験について、図6(a)等を参照して説明する。
【0097】
先ず、エンジン3の始動に先立って、第1の三方弁13を中継パイプ21と高温側熱交換器11とが連通するように切替え、第2の三方弁14を往流側第1接続パイプ22と中継パイプ21とが連通するように切替え、第3の三方弁15を低温側還流パイプ28とヒータ系第2パイプ27とが連通し、ヒータ系第1パイプ26が閉塞されるように切替える(図7(a)参照)。また、流出パイプ38のうち流出口33の近傍部位において温度計測器49を設ける。
【0098】
試験の開始にあたり、エンジン3が始動すると冷却水通路31の冷却水に流れが生じる。また、図6に示すエンジン3にはサーモスタット弁35がないことから、エンジン3内の冷却水の温度が上記規定温度(82℃)未満であっても、エンジン3の始動直後から、図6(a)の矢印で示すように、冷却水がエンジン3及びラジエータ51を循環することとなる。すなわち、流出口33を介してエンジン3から導出された冷却水は、流出パイプ38→ラジエータインレットパイプ52を通じてラジエータ51に流入し、ラジエータ51で冷却された冷却水は、ラジエータアウトレットパイプ53→流入パイプ37を通じて流入口32からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。尚、第1の三方弁13により低温側熱交換器12側の経路が閉鎖され、高温側熱交換器11側の経路は高温側還流パイプ29の開閉バルブ30が閉鎖されているため、特設パイプ66に冷却水が流れ込んで循環装置5側に冷却水の流れが生じるようなことはない
次に、強制冷却試験について、図6(b)等を参照して説明する。
【0099】
先ず、第1の三方弁13を中継パイプ21と低温側熱交換器12とが連通するように切替え、第2の三方弁14を往流側第1接続パイプ22と中継パイプ21とが連通するように切替え、第3の三方弁15を低温側還流パイプ28とヒータ系第2パイプ27とが連通するように切替える(図7(b)参照)。また、流出パイプ38のうち流出口33の近傍部位に温度計測器49を設ける。
【0100】
その後、エンジン3の始動に先立って、ポンプ16を駆動させることで、図6(b)の矢印で示すように、冷却水が循環装置5及びエンジン3を循環することとなる。尚、態様例6ではサーモスタット弁35がなく、導入口42から冷却水通路31に流入した冷却水の流出口33側の通路、及び、流入口32側の通路がともに特設パイプ66と連通しているため、導入口42から冷却水通路31に流入した冷却水は、流出口33→流出パイプ38といった経路と、流入口32→ラジエータアウトレットパイプ53→ラジエータ51→ラジエータインレットパイプ52といった経路との二手に分かれて特設パイプ66へと至るようになっている。
【0101】
そして、特設パイプ66に流入した冷却水は、往流側第1接続パイプ22→第2の三方弁14→中継パイプ21→第1の三方弁13を通じて低温側熱交換器12に流入し、低温側熱交換器12で冷却された冷却水は、低温側還流パイプ28→第3の三方弁15→ヒータ系第2パイプ27→回収パイプ44を通じて導入口42からエンジン3(冷却水通路31)に戻ることとなる。
【0102】
その後、冷却水が設定温度(−10℃)となったところで、エンジン3を始動させて試験を開始する。強制冷却試験の試験そのものについては、上記した定常試験と基本的に同じであり、図6(a)の鎖線の矢印で示すようにエンジン3及びラジエータ51を冷却水が循環する。
【0103】
以上詳述したように、本実施形態では、上記<態様例1>のように、サーモスタット弁35が冷却水通路31の流出口33に設けられたエンジン3を含む試験体2の試験を行う場合、サーモスタット弁35が閉状態であっても、エンジン3の冷却水通路31の冷却水を導出口41から循環装置5側に導出させ、冷却水をエンジン3及び循環装置5に循環させることができる。また、上記<態様例2>のように、サーモスタット弁35が冷却水通路31の流入口32に設けられたエンジン3を含む試験体2の試験を行う場合、サーモスタット弁35が閉状態であっても、エンジン3の冷却水通路31の導入口42から冷却水通路31へ冷却水を導入させ、冷却水をエンジン3及び循環装置5に循環させることができる。従って、循環装置5を用い、エンジン3の試験に先立って、低温側熱交換器12で冷却された冷却水を循環させてエンジン3を冷却してからエンジン3を始動させるといった寒冷地を想定した強制冷却試験をより多くのタイプのエンジン3を含む試験体2で行うことができる。さらに、上記<態様例3>のように、サーモスタット弁35が設けられていないエンジン3の強制冷却試験を行うことも可能である。結果として、タイプの異なるエンジン3に応じてそれぞれ異なる循環装置5を用意するような場合に比べ、試験設備に関する設置スペースの縮小、コストの削減、試験効率の向上等を図ることができる。
【0104】
また、第2の三方弁14及び第3の三方弁15は、自身に連結された3本のパイプのうち連通させる2本の組合せを変更可能に構成される上、3本を同時に連通させることができるようになっている。従って、冷却水の循環経路のうち条件に応じて変更される主たる経路の冷却水の流量を確保した上で、当該主たる経路と、枝分かれして存在する経路とを連通させ、両経路間を冷却水が往来可能に構成することができる。すなわち、例えば、<態様例1>の定常試験においては、第1の三方弁13から低温側熱交換器12を介して第3の三方弁15に至る経路は基本的に使用しないが、かかる経路が完全に閉鎖されないように、第3の三方弁15は、ヒータ系第1パイプ26とヒータ系第2パイプ27とが連通するだけでなく、低温側還流パイプ28側にも連通するように切替えられる。これにより、試験を行ううちに、低温側還流パイプ28側の経路の冷却水の温度が上昇し、冷却水が膨張したとしても、かかる経路の冷却水の膨張に起因する圧力をヒータ循環パイプ25側へ逃がすことができる。従って、実験中に冷却水の循環経路として使用されない経路に対して逐一膨張タンクを設けなくても、冷却水の膨張に起因するパイプの破損を回避することができる。尚、冷却水の膨張に起因する圧力を主たる経路に逃がすことができれば、かかる圧力を密閉式膨張タンク18へと逃がすことができる。
【0105】
さらに、第2の三方弁14及び第3の三方弁15に連結された3本のパイプ全てを連通させることで、各パイプの冷却水を冷却することができる。すなわち、<態様例1>の強制冷却時において、第3の三方弁15を低温側還流パイプ28からの冷却水をヒータ系第2パイプ27側だけでなくヒータ系第1パイプ26側にも流れるように切替えることで、ヒータ系第1パイプ26及び供給パイプ43の冷却水についても冷却することができる。従って、その後の試験において、冷却されずに暖かいまま残った冷却水に起因して、実際の挙動とは異なる挙動の試験データが採取されてしまうといった事態を抑制することができる。
【0106】
また、本実施形態では、温度計測器49で計測された冷却水の温度が5℃未満の場合は、高温側熱交換器11を含む経路ではなく、低温側熱交換器12を含む経路を冷却水が流れるように第1の三方弁13が切替えられる。このため、<態様例3>のように強制冷却後、エンジン3を始動させると、直ぐに、エンジン3内だけでなく循環装置5側にも冷却水が循環するような場合において、低温側熱交換器12で冷却された冷却水が高温側熱交換器11に流入し、高温側熱交換器11の冷媒が凍結してしまうといった事態を回避することができる。さらに、<態様例3>のように、サーモスタット弁35がないエンジン3の強制冷却試験を行う場合に、低温側熱交換器12で冷却されていない高温側還流パイプ29に滞留していた暖かい冷却水がエンジン3の始動直後に冷却水通路31に流れ込んでしまい、本来の挙動とは異なる挙動となってしまうといった事態を防止できる。
【0107】
加えて、極寒冷地条件以外の冷却水の冷却は高温側熱交換器11で行なわれ、高温側熱交換器11は、冷却塔において大気と熱交換される水を一次側冷媒としている。このため、冷凍機の圧縮機を駆動しない自然エネルギー利用の安価で省エネルギーの冷熱源が利用できる。また、高温側熱交換器11と低温側熱交換器12とを具備することによって、試験条件により適切な冷熱源を選択できるので、きめ細かな冷却水温度の制御が速やかな立ち上がりで可能となる。
【0108】
また、本実施形態では、<態様例4〜6>のように、エンジン3及びラジエータ51を試験体2とする場合においても、流出口33及び流入口32をそれぞれラジエータ51と連通させて、高温側還流パイプ29を閉鎖させ、往流側第1接続パイプ22又は往流側第2接続パイプ23のうち一方を閉鎖させるとともに、他方をラジエータインレットパイプ52又はラジエータアウトレットパイプ53と接続することで、上記循環装置5を用いて、ラジエータ51が装着されたエンジン3についての試験も行うことができる。従って、より多種類のエンジン3を含む試験体2の試験を行うことができるといった上記作用効果が一層確実に奏される。
【0109】
加えて、循環装置5の高温側還流パイプ29、ヒータ系第1パイプ26、ヒータ系第2パイプ27、往流側第1接続パイプ22、及び往流側第2接続パイプ23の試験体2側の接続端と、これらのパイプに接続される試験体2を構成するパイプの接続端とにカップリング(図示略)が施されるとともに、高温側還流パイプ29、ヒータ系第1パイプ26、ヒータ系第2パイプ27、往流側第1接続パイプ22、及び往流側第2接続パイプ23の前記接続端近傍には、それぞれ開閉バルブ30が設けられている。このため、より多種類のエンジン3を含む試験体2の試験を簡単かつ確実に行うことができるといった上記作用効果が一層確実に奏される。
【0110】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0111】
(a)上記実施形態では、循環装置5において高温側熱交換器11と低温側熱交換器12とが設けられているが、高温側熱交換器11を省略するとともに、低温側熱交換器12にて冷却された冷却水が導出される通路を流入口32に至る通路と、ヒータ循環パイプ25(導入口42)に至る通路とに分岐させ、分岐点に三方弁を設けることとしてもよい。但し、上記実施形態のように、高温側熱交換器11を設けることで、ラジエータ51のない試験体2の実験を行う場合において、高温側熱交換器11によってラジエータ51と同じ方法の冷却を行うことができ、より実車に即した実験を実施可能になるとともに、冷凍機で冷媒を冷却する低温側熱交換器12の使用頻度を低減させ、冷却に要するエネルギーやコストの低減、及び実車と同じような冷却具合とするための温度調節の簡素化等を図ることができる。
【0112】
(b)上記実施形態の各種パイプをそれぞれ複数のパイプを接続することで構成してもよいし、例えば、流出パイプ38とラジエータインレットパイプ52との関係のように直接的に接続される2本のパイプを1本のパイプで構成することとしてもよい。
【0113】
(c)上記実施形態における<態様例1>では、特設パイプ47が供給パイプ43に接続されているが、ヒータ系第1パイプ26に接続することとしてもよい。この場合、試験体2側の加工を回避することができる。また、上記実施形態では、試験体2にヒータ45が設けられているが、ヒータ45を省略してもよい。さらに、強制冷却試験として、エンジン3の始動試験等の短期的な試験だけでなく。エンジン3内の冷却水の温度が規定温度以上となった後も試験を続ける長期試験を行うこととしてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…試験用エンジン冷却水循環システム、2…試験体、3…エンジン、5…循環装置、11…高温側熱交換器、12…低温側熱交換器、13…第1の三方弁、14…第2の三方弁、15…第3の三方弁、16…ポンプ、21…中継パイプ、22…往流側第1接続パイプ、23…往流側第2接続パイプ、25…ヒータ循環パイプ、26…ヒータ系第1パイプ、27…ヒータ系第2パイプ、28…低温側還流パイプ、29…高温側還流パイプ、31…冷却水通路、32…流入口、33…流出口、34…ウォータポンプ、35…サーモスタット弁、36…バイパス通路、37…流入パイプ、38…流出パイプ、41…導出口、42…導入口、43…供給パイプ、44…回収パイプ、46…特設口、47…特設パイプ、49…温度計測器、51…ラジエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験台に載置されたエンジンを含む試験体と、前記エンジンへ冷却水を循環供給する循環装置とを備えた試験用エンジン冷却水循環システムにおいて、
前記エンジンは、車両への実装時においてラジエータで冷却された冷却水を導入するための流入口と、エンジンで温められた冷却水をラジエータへ導出するための流出口とを具備する冷却水通路を備え、
前記冷却水通路には、車両への実装時においてエンジンで温められた冷却水を車両の暖房設備へと供給するための導出口と、暖房設備からの冷却水を回収するための導入口とが形成され、
前記循環装置は、
冷却水を循環させるためのポンプと、
冷却水を冷却可能な冷却手段と、
前記冷却手段にて冷却された冷却水を前記流入口へ供給可能な第1還流側パイプと、
前記導出口と前記導入口とを連通させることのできるヒータ循環パイプと、
前記冷却手段にて冷却された冷却水を、前記ヒータ循環パイプへ供給可能な第2還流側パイプと、
前記第2還流側パイプと前記ヒータ循環パイプとの連結部に設けられ、冷却水の循環経路を変更可能な還流側経路切替手段と、
前記エンジンから導出された冷却水を前記冷却手段へ供給可能な中継パイプと、
前記流出口から導出された冷却水を前記中継パイプへ供給可能な往流側第1接続パイプと、
前記導出口から導出された冷却水を前記中継パイプへ供給可能な往流側第2接続パイプと、
前記中継パイプと前記往流側第1接続パイプと前記往流側第2接続パイプとの連結部に設けられ、冷却水の循環経路を変更可能な往流側経路切替手段とを備えていることを特徴とする試験用エンジン冷却水循環システム。
【請求項2】
前記往流側経路切替手段及び還流側経路切替手段は、自身に連結された3本のパイプのうち連通させる2本の組合せを変更可能に構成される上、3本を同時に連通させることのできる三方弁であることを特徴とする請求項1に記載の試験用エンジン冷却水循環システム。
【請求項3】
前記エンジンは、さらに前記冷却水通路内に停止中には外部のポンプ圧による冷却水流通を許すウォータポンプを備え、
前記冷却手段は、エンジンに送られる冷却水と冷媒との間で熱交換を行う第1熱交換器及び第2熱交換器を備え、
前記第2熱交換器一次側の冷媒は不凍液が、かつ、冷却手段二次側の冷却水にも不凍液がそれぞれ利用されるとともに、前記第2熱交換器によって冷却水を前記第1熱交換器一次側の冷媒の凝固点よりも低い温度にまで冷却可能に構成され、
前記第1還流側パイプは前記第1熱交換器と接続され、
前記第2還流側パイプは前記第2熱交換器と接続され、
冷却水の循環経路として、前記第1熱交換器を含む経路と、前記第2熱交換器を含む経路とに切替可能な循環経路切替手段を備え、
前記冷却水の循環経路のうち前記冷却水通路の接続点である前記流出口または前記導出口の何れかの直後箇所において温度計測器が設けられ、
前記循環経路切替手段は、
冷却水の前記温度計測器位置における目標温度が第1の基準温度以上であり、前記温度計測器で計測された冷却水の温度が前記第1の基準温度よりも低い第2の基準温度以上である場合には、冷却水の循環経路として前記第1熱交換器を含む経路に切替え、
冷却水の前記温度計測器位置における目標温度が前記第1の基準温度未満である場合には、冷却水の循環経路として前記第2熱交換器を含む経路に切替え、
冷却水の前記温度計測器位置における目標温度が前記第1の基準温度以上であっても、前記温度計測器で計測された冷却水の温度が前記第2の基準温度未満の場合には、冷却水の循環経路として、冷却機能をオフした前記第2熱交換器を含む経路に切替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の試験用エンジン冷却水循環システム。
【請求項4】
前記第1熱交換器一次側冷媒は水であり、該冷媒を冷却する装置は大気と熱交換する冷却塔であり、
前記第2熱交換器一次側冷媒を冷却する装置はブライン冷凍機であることを特徴とする請求項3に記載の試験用エンジン冷却水循環システム。
【請求項5】
前記試験体は、前記エンジンと、当該エンジンに接続されたラジエータとを含むものであり、
前記流出口及び流入口をそれぞれ前記ラジエータと連通させて、前記第1還流側パイプを閉鎖させ、
前記往流側第1接続パイプ又は往流側第2接続パイプのうち一方を閉鎖させるとともに、他方を前記エンジンの流出口又は流入口と前記ラジエータとの間を接続するラジエータホースと接続することを特徴とする請求項1又は2に記載の試験用エンジン冷却水循環システム。
【請求項6】
前記試験体は、前記エンジンと、当該エンジンに接続されたラジエータとを含むものであり、
前記流出口及び流入口をそれぞれ前記ラジエータと連通させて、前記第1還流側パイプを閉鎖させ、
前記冷却水の循環経路のうち前記冷却水通路の接続点である前記流出口または前記導出口の何れかの直後箇所の代わりに前記ラジエータ出口箇所において温度計測器が設けられ、
前記往流側第1接続パイプ又は往流側第2接続パイプのうち一方を閉鎖させるとともに、他方を前記エンジンの流出口又は流入口と前記ラジエータとの間を接続するラジエータホースと接続することを特徴とする請求項3又は4に記載の試験用エンジン冷却水循環システム。
【請求項7】
前記循環装置と前記試験体との接続点には、カップリングと、該カップリングの循環装置側に開閉弁機構とを備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の試験用エンジン冷却水循環システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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