説明

試験試料中の黄色ブドウ球菌の有無を検出するための方法および媒体

黄色ブドウ球菌(S.aureus)の有無を調べる試験は、第1世代試験試料を、黄色ブドウ球菌の存在下で凝固する溶液に入れるステップを伴う。前記溶液は、選択的に黄色ブドウ球菌を増殖させる構成要素を含有し、黄色ブドウ球菌が前記試料中に存在する場合に、黄色ブドウ球菌と反応して、前記溶液を凝固させる凝固因子も含有する。試験され得る標本試料の例としては、特に、鼻スワブおよび病変スワブが挙げられる。前記試験は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の有無を検出するように修正することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年1月21日に出願された米国特許出願第12/356,847号、2008年1月24日に出願された米国仮特許出願第61/062,144号、および2008年10月27日に出願された第61/108,722号の利益を主張し、これらは、参照することによりその全体が本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
1.技術情報
本方法および試験混合物は、生体、環境、または食物試料中の黄色ブドウ球菌の検出に関し、より具体的には、標的微生物が血栓に転換し得る反応因子を利用する、方法および試験混合物に関する。
【0003】
2.背景情報
黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、動物およびヒトの悪性病原体であり得る。さらに、毒素の産生によって重度の食中毒を引き起こし得る。黄色ブドウ球菌によって引き起こされる疾患は、単なる皮膚感染から骨、心臓、および臓器の致死的な感染まで、極めて広範囲の臨床スペクトルに及ぶ。特に懸念されることは、黄色ブドウ球菌の感染が手術後によく見られるという認識である。黄色ブドウ球菌の感染は、点滴用チューブおよび他の移植片とも関連する。
【0004】
細菌黄色ブドウ球菌は、皮膚と皮膚の接触によって、または一般に共有されるアイテムまたは表面(例えば、タンニングベッド、ジム器具、食品取扱設備等)から健常者間で感染され得、ここでこの感染は、共有アイテムを使用する、または表面に触れる後続の人に生じ得る。大きな医療上の懸念は、病院に入る健常な人々が、黄色ブドウ球菌を保有しているという任意の兆候または症状なしに、(例えば、彼らの皮膚上、または鼻の中等に)黄色ブドウ球菌を「保有」し得ることである。好ましい条件下で(病院で認められることが多いが、それに限定されない)、黄色ブドウ球菌は活性化され、深刻な感染を引き起こし得る。さらに、黄色ブドウ球菌は、食中毒源でもあり得、食品取扱者によってもたらされて、食品(例えば、肉、鶏肉、卵、マヨネーズを含むサラダ、ベーカリー製品、乳製品等)を汚染する場合が多い。
【0005】
メチシリンから始まった抗生物質の類に対する個別のクローンの感受性に基づいて、黄色ブドウ球菌には2つのカテゴリがある。これらは、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)である。ほんの数年前まで、MRSAは病院で最も一般的に発見されていた。現在、多くは病院以外のコミュニティーにおいて、人々の鼻、皮膚等にも存在する。さらに、これらのMRSAは、当該コミュニティーにおいて深刻な感染をますます引き起こしている。MRSAに対して一様に有効であることを示した抗生物質(例えば、バンコマイシン)はほとんどないため、MRSAは特に深刻である。
【0006】
疾病対策予防センター(CDC)は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の発生について積極的に調査している。2000年に、米国医療疫学学会のガイドラインでは、MRSAを有する患者の接触隔離を推奨した。MRSAによってもたらされる疾病率および死亡率に加えて、感染の各症例にかかる費用は少なくとも23,000ドルであると推定されている。したがって、多くの病院および介護施設は、MRSAについて積極的に患者から試料採取している[Clany,M.,Active Screening in High−Risk units is an effective and cost−avoidant method to reduce the rate of methicillin−resistant Staphylococcus aureus infection in the hospital.,Infection Control and Hospital Epidemiology 27:1009−1017,2006]。
【0007】
Meyerら(米国特許第4,035,238号)は、炭素源としてマンニトールを利用し、指標としてDNAメチルグリーンを利用した黄色ブドウ球菌の検出に対するブロスの使用について説明している。これらの化学物質は、いずれもコアグラーゼの反応基質ではない。
【0008】
Rambach(米国特許第6,548,268号)は、デフェロキサミンの存在下、寒天培地において少なくとも2つの発色剤:5−ブロモ−6−クロロ−インドキシル−リン酸、および5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルグルコースを採用している。これらの基質を加水分解する個々のコロニーは、互いに混合し、かつ互いに独立しない色を発する。
【0009】
ヒト、動物、食物等の試料からMSSAおよびMRSAを検出するために、多数の伝統的な培養手順が利用される。それらは、共通して、6〜8%の塩化ナトリウム、テルル酸カリ、および多様な抗生物質等の化学抑制剤を含む、塩基性媒体を有する。例えば、StevensおよびJonesは、トレハロース−マンニトール−リン酸アガーの使用について説明した[Stevens,DL and Jones,C.Use of trehalose−mannitol−phosphatase agar todifferentiate Staphylococcus epidermidis and Staphylococcus saprophyticus from other coagulase−negative staphylococci,J. of Clin.Microbiology 20:977−980,1984]。炭素源としてマンニトール、選択剤として塩を寒天に使用することは、マンニトール−塩寒天として知られ、臨床検査室において一般に使用されている[Baird,R.M.and W.H.Lee.,Media used in the detection and enumeration of Staphylococcus aureus.,Int. J.Food Microbiology.26:209−211,1995]。培養の先行技術内で、純粋培養で分離される黄色ブドウ球菌の試料を利用するコアグラーゼ試験を行うことは、一般に許容される手順である。
【0010】
「S.aureus ID」という手順[Bio Merieux,La Balme Les Grottes,France]は、α−グルコシダーゼ基質を寒天中で使用し、黄色ブドウ球菌を検出する。単一の基質が利用される[Perry,J.D.et al.,Evaluation of S.aureus ID,a new chromogenic agar medium for detection of Staphylococcus aureus,J.Clin.Microbiology 41:5695−5698,2003]。この培地の変異型は、添加された抗生物質および塩化ナトリウムを含み、MRSAを検出するように設計される[Perry et al.,Development and evaluation of a chromogenic agar medium for methicillin−resistant Staphylococcus aureus,J.of Clin.Micro.42:4519−4523,2004]。
【0011】
SelepakおよびWitebskyは、黄色ブドウ球菌に関するチューブコアグラーゼ試験の接種材料の大きさ、およびロット間変動を評価する研究を開示している。標本を採取し、分離株を寒天プレート上の細菌コロニーから生成した。抗凝固ウサギコアグラーゼ血漿を含有するチューブを分離株からのブドウ球菌コロニーの一部または複数のコロニーで接種した。これらのチューブをインキュベートし、血栓の存在を調べた。SelepakおよびWitebskyによると、「いくらかの分離株およびいくらかのコアグラーゼ血漿のロットを用いると、[分離株からの]単一のコロニーでさえも、陽性コアグラーゼ試験に対して十分な接種材料を提供しない場合がある」。さらに、SelepakおよびWitebskyは、「より定量的に表わすと、各コアグラーゼ管試験に対して、1mlあたり少なくとも10の微生物を可能な限り使用しなければならない。我々のデータは、黄色ブドウ球菌がコアグラーゼ血漿中で成長せず、したがって、コアグラーゼ血漿を18〜24時間インキュベートしても、少量の接種材料の使用を相補しないことを示唆している」と述べている。したがって、SelepakおよびWitebskyは、仮に不可能でないとしても、直接コアグラーゼ試験を使用して、第1世代の生体標本試料中の黄色ブドウ球菌の有無を検出することは実用的でないことを示している[Selepak,S.T et al,“Inoculum Size and Lot−to−Lot Variation as Significant Variables in the Tube Coagulase Test for Staphylococcus aureus”,Journal of Clin.Microbiology,Nov.1985,p.835−837]。
【0012】
そのため、黄色ブドウ球菌を試料から直接、迅速に検出することができ、熟練者が該方法を実行する必要がなく、標本から分離株を育成する必要がなく(すなわち、「第1世代」試料上で行うことができ)、試験を正確に行なうのに、高濃度の黄色ブドウ球菌微生物を必要としない試験混合物および方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、生体、環境、または食物試料中の黄色ブドウ球菌細菌の特異的検出のための方法および試験混合物に関する。黄色ブドウ球菌の検出において、黄色ブドウ球菌によって産生されるコアグラーゼと特異的に反応するコアグラーゼ基質(「コアグラーゼ反応因子」と称される場合がある)を含む、試験混合物(「培地」とも称され得る混合物)を利用して血栓を形成し、黄色ブドウ球菌の増殖を促進する成分(「成長促進成分」とも称される)と混合される。したがって、本方法および試験混合物は、黄色ブドウ球菌によって産生されるコアグラーゼによって活性化されるコアグラーゼ基質を利用し、該酵素コアグラーゼは、連邦政府公報規則第21編1章C項866.2160節「コアグラーゼ血漿」において開示されるように、病原性ブドウ球菌に特異的である。抑制剤および抗生物質は、競合する細菌増殖を抑制するか、またはそうでなければ負の影響を与えるように、含められ得るが、必須ではない。(例えば、ヒトから鼻スワブによって採取するか、または表面から採取された)未処理の試料を試験混合物に添加し、接種した試験試料をインキュベートする。試料内に黄色ブドウ球菌が存在する場合、黄色ブドウ球菌は、試験混合物内で増殖し、コアグラーゼ基質と反応するコアグラーゼを産生する。黄色ブドウ球菌によって産生されるコアグラーゼと、試験混合物内のコアグラーゼ基質との間の反応は、通常2時間から24時間までの期間で、試験混合物内で検出可能な血栓を産生し、黄色ブドウ球菌の存在を肯定的に示す。
【0014】
本方法の下、血栓が溶解され、生黄色ブドウ球菌を液体中に放出し得、次いで、その液体は、抗生物質感受性試験、分子指紋法、遺伝子解析等を含むが、それらに限定されない、分析法によってさらに分析され得る。以下でさらに詳細に説明されるように、抗生物質セフォキシチンまたはmecA遺伝子の誘導体は、試験混合物内に含められ、第1世代の試料内のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)特異的試験を可能にし得るか、または溶解した血栓混合物を試験して、その中のMRSAの有無を確認し得る。
【0015】
試験混合物は、好ましくは、試験混合物の取扱、包装、保存等を容易にする形態で調製される。液体形態に水和され得る乾燥粉末が、試験混合物に特に好ましい形態であるが、本発明は、粉末形態に限定されない。試験混合物は、液体形態または任意の他の形態(例えば、ペースト、ゲル等)を想定し得、好ましくは、使用するために水和可能な形態である。
【0016】
試験混合物内のコアグラーゼ基質は、血漿内で提供されるか、または黄色ブドウ球菌によって産生されるコアグラーゼと反応するように作用する別の基質によって提供されて、血栓を形成する。本試験は、ウサギ血漿がコアグラーゼ基質の好ましい源であることを示す。他の血漿(例えば、ブタ血漿)を代わりに使用してもよい。フィブリノゲンは、コアグラーゼ基質源の別例である。血漿をコアグラーゼ基質源として利用するそれらの実施形態において、コアグラーゼ基質の非血漿源を試験混合物に添加し、試験混合物内のコアグラーゼ基質の適切な源を保証することが好ましい場合がある。一例として、我々の試験は、フィブリノゲンとウサギ血漿とを試験混合物中で組み合わせることが、コアグラーゼ基質の一貫した適切な源を保証するために有効な手段であることを示す。フィブリノゲン等の材料を試験混合物に添加する利点は、試験混合物の性能の一貫性を高め、血漿に生じ得る変動に対して影響を受けにくくすることである。
【0017】
黄色ブドウ球菌の増殖を促進し、黄色ブドウ球菌を維持する試験混合物内の成長促進成分は、適用に適うように異なり得る。当業者であれば、多くの異なる成分の組み合わせ、および同一成分の異なる相対量を使用して、同一の機能を提供できることを認識するであろう。成長促進成分は、硝酸塩およびタンパク質源、核酸合成の生成を支援するように作用する材料、黄色ブドウ球菌のエネルギー源、アミノ酸成長因子源、および一部の実施形態において、損傷した標的微生物の修復に役立つように作用可能な材料を含む。この成長促進成分の一覧は、試験混合物内で有益となり得る材料のすべてを表わしているわけではないが、許容される材料を説明する(例えば、ビタミン、塩、ミネラル、無機部分等)。試験混合物は、試験混合物の性能に利益となる他の成分を含み得る。
【0018】
本発明の大部分の適用において、以下:a)有効量のアミノ酸、b)有効量の窒素源、c)有効量の塩類、d)有効量のビタミン類、およびe)有効量のカルシウムを含む、試験混合物を利用することが望ましい。当業者であれば、そのようなアミノ酸の純粋な源よりもむしろ、天然源を使用できることを認識するであろう。該天然源(例えば、イースト等の微生物そのものの抽出物)は、混合物形態であるか、または精製した形態であってもよい。該天然混合物は、異なる量のそのようなアミノ酸類およびビタミン類を含有することができる。当業者であれば、本発明の試験混合物において、アミノ酸類とビタミン類の多くの異なる組み合わせを使用できることをさらに認識するであろう。
【0019】
当業者であれば、炭素、窒素、微量元素、ビタミン類、アミノ酸類、および選択剤が多くの形態で提供され得ることをさらに認識するであろう。一般に、所定範囲内の量のビタミン類およびアミノ酸類を有することが好ましいが、当業者であれば、1つの成分量の減少が別の成分量の増加によって相補され得るように、各成分の実際の特性は異なり得ることを認識するであろう。これは、検出することが求められる微生物の必須アミノ酸類、微量元素、またはビタミン類が既知である場合に特に該当する。一部の成分は、その存在が判定される微生物によって内生的に合成され得る場合に、減量して提供され得るか、または削除され得る。塩は、解離時のイオン源として提供され得る。
【0020】
試験混合物は、試験工程を容易にする容器(例えば、試験管、平底壁を有する容器等)に充填されてもよい。培地が水和可能な形態で調製される場合、混合物は、滅菌水または非滅菌水で水和することができる。
【0021】
試料中のMSSAまたはMRSAの存在を検出するために、生体、環境、または食物標本から試料を採取する。鼻スワブを使用して採取された試料は、本発明を使用して採取および試験するために特に便利な第1世代の試料の例である。採取した後、試料を試験混合物に接種する。
【0022】
接種した試料内に存在し得る任意の黄色ブドウ球菌の増殖を促進するために好ましい条件下で、接種した試料をインキュベートする。水で水和した粉末試験混合物の場合において、該インキュベーションは、約20℃〜42℃の間の温度で実行され得る。連続酵素特異性、黄色ブドウ球菌強化成長因子、および抗生物質選択性の組み合わせは、複数の障害物を提供し、例えば、24時間以内の試験期間内に、競合する非標的細菌が検出されることを防止する。
【0023】
本発明の試験および方法は、入院、日常的に集中治療室、介護施設、透析患者、自宅で免疫抑制療法を受けている人々等において使用することができる。また、細菌黄色ブドウ球菌がヒト保菌者から感染され得る環境設定(例えば、ジム、日焼けサロン、レストラン等)において使用することもでき、黄色ブドウ球菌汚染に関して様々な異なる食物を試験するために使用することができる。本方法および混合物の実質的な利点は、高額な機器または熟練した医療技師を必要とせずに、それらを行う/使用することができることであることが理解される。本方法/混合物の別の実質的な利点は、試験試料中の比較的少量の黄色ブドウ球菌で実施可能であることであり、例えば、本方法/混合物は、100CFU/mlという低い濃度の黄色ブドウ球菌を含む試料中で、黄色ブドウ球菌を検出した。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の詳細は、添付の図面を参照する場合、発明のいくつかの実施形態に関する以下の発明を実施するための形態からさらに容易に明らかとなる。
【0025】
【図1】鼻スワブの第1世代生体試料中の黄色ブドウ球菌の有無を検出するように調合される、粉末培養混合物を含有する試験管の側面立面図である。
【0026】
【図2】図1の試験管の側面立面図であるが、水によって水和された培養混合物を示す。
【0027】
【図3】図2の試験管の側面立面図であり、第1世代生体標本鼻スワブを培地に配置するために試験管に挿入される綿スワブを示す。
【0028】
【図4】標本が培地に配置され、一定期間培養された後の図3の試験管の側面立面図であり、標本中の黄色ブドウ球菌の不在を示す。
【0029】
【図5】図4に類似した側面立面図であるが、該培養期間後の試験管培地を示し、標本中の黄色ブドウ球菌の存在を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、番号2で示される試験管の側面立面図であり、好ましくは平底4および上部閉鎖具3を有し、例えば、第1世代生体試料等の試料中の黄色ブドウ球菌の有無を検出するための本発明に従って形成される、乾燥粉末混合物1を含有する。また試験管2は、標本試料試験用に粉末混合物1を適切に水和するために、試験管2に添加される水の量を示す基準線5とともに提供される。
【0031】
許容される水和試験混合物は、以下の成分を表示される範囲で使用し、15mlの試験混合物を形成することができる。
【表1】


上で提供される15mlの試験混合物あたりの成分量の特定例は、試験して、良好に機能することが認められた特定の試験混合製剤を表わす。この特定の例は、すべての試験混合製剤を表わしているわけではなく、本発明はこれらに限定されない。上述のとおり、当業者は、多くの異なる成分の組み合わせ、および異なる相対量の同一成分を使用して、同一機能を提供することができる。したがって、本方法および混合物は、多数の異なる成分製剤が前述の範囲内で形成され得ることを意図する。
【0032】
図2で述べたように、粉末混合物1は、水、好ましくは蒸留水の添加によって適切に水和され、試料(例えば、鼻スワブ上に担持される)が配置される水和試験混合物6を形成する。
【0033】
第1世代の試験試料は、多様な異なる手技によって採取することができ、例えば、ヒト試料は、対象者の鼻の中をスワブで拭き取ることによって採取することができる。鼻スワブは、試験試料を採取する特に便利な方法であるが、唯一の採取方法ではなく、例えば、試験試料は、喉スワブ、皮膚病変、損傷していない皮膚等から採取することができる。第1世代の環境試料は、例えば、乾燥または湿ったワイプ/スワブを使用して、表面を拭き取るまたはスワブする等の様々な周知の方法によって採取することができる。同様に、第1世代の食物試料は、食物自体から採取するか、または食物等と接触する表面から食物残渣を拭き取ることによって採取することができる。一旦該試料を採取すると、例えば、第1世代の試料の源から第1世代の試料を採取するために使用された同一の綿スワブ8を使用して、水和した試験混合物6に配置することができる。該標本試料が試験混合物6中に配置されると、通常24時間未満の期間、試験混合物内にインキュベートされる。このインキュベーションは、その条件下で許容される任意の温度で行われ得る。当該接種の期間後に、接種した試験混合物を保持する容器(例えば、試験管2)は、血栓の存在について検査することができ、例えば、試験管2は、図4および5に示されるように、一方に傾けて、試験混合物のメニスカス10が移動するか、または血栓が試験混合物を基準線5の下に維持するか否かを見ることができる。血栓の存在は、黄色ブドウ球菌が試験試料中に存在することを示し、接種した試験混合物中の血栓の不在は、図4に示されるように、黄色ブドウ球菌が試験混合物6中に存在しないことを示す。一部の例において、接種された試験混合物全体が凝固し、他の例において、いくらかの液体が血栓とともに容器内に残留する。第1世代の鼻試料を使用して行われた本試験の約80%は、第1世代の試験試料中に黄色ブドウ球菌が存在する場合、6時間以内に凝固した。
【0034】
本方法および混合物の有効性を判定するために、異なる量のMSSAを含有するように滴定された60の対照試料、および異なる量のMRSAを含有する60の対照試料を伴って、対照研究を行った。MSSAおよびMRSAの標準クローンは、トリプチケースソイブロス(TSB)中で増殖させ、ログ10増分で希釈した。本発明の試験混合物は、一定量(0.1ml)の各対照試料とともに接種した。第1の組の接種した試験混合物は35℃でインキュベートし、第2の組の接種した試験混合物は、23℃でインキュベートした。60の対照試験試料のうち、すべての試料が5時間で黄色ブドウ球菌陽性であり、49の試料が4時間で陽性、36の試料が3時間で陽性、および24の試料が2時間で陽性であった。接種材料の濃度とインキュベーション温度との関係を詳述するデータは以下のとおりであった。
【表2】


血栓中の黄色ブドウ球菌の濃度は、すべて少なくとも5ログ10であった。
【0035】
上述の対照研究に加えて、50の試料を使用して臨床研究を行った。これらの試料は、患者の鼻腔を培養することによって、医療集中治療室から採取した。患者は特定せず、任意の「標準」培養の結果も入手不可能であった(FDAプロトコル)。試料は、スワブを使用して、マンニトール塩寒天(MSA)上に配置した。試料をMSA上に配置した後、該スワブを使用して試験混合物を接種した。24時間毎時、凝固を観察した。偽陽性はなかった。
【表3】


血栓が認められた場合は、血栓の一部を除去および溶解した。CFU/mlの定量的カウントは、溶解した血栓材料から行った。
【0036】
一部の実施形態において、本方法/混合物は、MSSAとMRSAとを区別するための手段を含んでもよい。例えば、約10〜100mg/mlの濃度のセフォキシチンまたは別のMecA遺伝子抑制剤を試験混合物に含めることができる。試験試料内に存在するいかなるMSSAも殺滅されるが、MRSAは殺滅されない。そのため、血栓が生じると、試験試料中の黄色ブドウ球菌は、MRSAであることが示されることになる。血栓は、MRSAであることが示される。血栓が形成され、MRSAの存在を確認すると、次いで、検出された黄色ブドウ球菌のさらなる分析を行うために、血栓を溶解することができる。
【0037】
本発明の試験は、Remel Products,Thermo Fisher Scientific(米国カンザス州レネックサ)によって提唱されたコアグラーゼ血漿手順によって代表されるように、現在使用されている標準的な試験よりも著しく簡潔に実行されることが理解される。FDAにより認可され、連邦公報規則に免除試験として現れるRemel手順は、黄色ブドウ球菌に対して2段階試験を要し、ここで標本からの微生物コロニーは、最初に寒天培地で増殖させ、第2のコアグラーゼ試験段階に進む前に、グラム染色およびカタラーゼスライド試験を使用して、疑わしい黄色ブドウ球菌コロニーをスクリーニングする。この種類のコアグラーゼに関連する厄介な問題があり、すなわち、1)コアグラーゼ試験用のコロニーは、偽陽性結果が生じ得るため、高濃度の塩を含有する培地から選択してはならず、2)第1段階のスライド試験手順において、微生物/生理食塩水懸濁液は、コアグラーゼ血漿を添加する前に、自己凝集を観察して、偽陽性の試験解釈を回避しなければならず、3)偽陰性コアグラーゼ反応は、試験培養物が18〜24時間より古いか、または増殖が十分でない場合に生じ得る。
【0038】
本発明を、好適な実施形態に関して説明してきたが、当業者であれば、添付の請求項の範囲によって定義される本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更および/または修正を行うことができることを容易に理解するであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1世代試験試料中の黄色ブドウ球菌(「S.aureus」)の有無を検出するための方法であって、
a)黄色ブドウ球菌によって産生されるコアグラーゼと反応して血栓を形成するように作用する、コアグラーゼ基質を含む試験混合物を提供するステップと、
b)前記試験混合物を水和させるステップと、
c)前記第1世代の試料で前記水和試験混合物を接種するステップと、
d)前記接種した試験混合物を約20℃〜約42℃の範囲の温度でインキュベートするステップと、
e)前記混合物を観察して、前記水和混合物内の血栓の有無を検出するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記試験混合物が、コアグラーゼ基質源として血漿を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血漿がウサギ血漿である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試験混合物が、コアグラーゼ基質源としてフィブリノゲンを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記試験混合物が、黄色ブドウ球菌の増殖を促進する増殖促進成分をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記増殖促進成分が、以下、硝酸塩源、タンパク質源、核酸合成の生成を支援するように作用する材料、黄色ブドウ球菌のエネルギー源、およびアミノ酸成長因子源のうちの1つもしくは複数を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記試験混合物が、
a)有効量のアミノ酸と、
b)有効量の窒素源と、
c)有効量の塩と、
d)有効量のビタミン類と、
e)有効量のカルシウムと、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記試験混合物が、コアグラーゼ基質源としてフィブリノゲンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記試験混合物が、コアグラーゼ基質源として血漿を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記試験混合物が、前記試験試料中のメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(「MSSA」)の殺滅に有効な、セフォキシチン等の有効量のMecA遺伝子の誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ヒト対象の鼻腔をスワブすることによって、前記第1世代の試料を採取するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
環境表面をスワブすることによって、前記第1世代の試料を採取するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1世代の試料を食物試料から採取するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記血栓を液化して、生黄色ブドウ球菌を放出するステップと、
液体血栓材料に対して1つもしくは複数の分析を行うステップであって、前記分析が、抗生物質感受性試験、分子指紋法、および遺伝子解析を含む、ステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記液体血栓材料に対して1つもしくは複数の分析を行う前記ステップが、前記MecA遺伝子の誘導体として、前記試験試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(「MRSA」)の存在を検出するために有効な量のセフォキシチンを添加するステップを含む、請求項14に記載の試験混合物。
【請求項16】
第1世代の試験試料中の黄色ブドウ球菌(「S.aureus」)の有無を検出するための試験混合物であって、
a)有効量のアミノ酸と、
b)有効量の窒素源と、
c)有効量の塩と、
d)有効量のビタミン類と、
e)有効量のカルシウムと、
f)前記試験試料中の黄色ブドウ球菌の存在下で、約20℃〜約42℃の範囲の温度で前記液体媒体内に血栓を形成する、有効量のコアグラーゼ基質と、
を含む、試験混合物。
【請求項17】
前記混合物が、前記コアグラーゼ基質源として血漿を含む、請求項16に記載の試験混合物。
【請求項18】
前記血漿がウサギ血漿である、請求項17に記載の試験混合物。
【請求項19】
前記混合物が、前記コアグラーゼ基質源としてフィブリノゲンを含む、請求項18に記載の試験混合物。
【請求項20】
前記混合物が、前記コアグラーゼ基質源としてフィブリノゲンを含む、請求項16に記載の試験混合物。
【請求項21】
前記MecA遺伝子の誘導体として、前記試験試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(「MRSA」)の存在を検出するために有効な量のセフォキシチンをさらに含む、請求項16に記載の試験混合物。
【請求項22】
前記試験混合物が液体である、請求項16に記載の試験混合物。
【請求項23】
前記試験混合物が、水和され得る乾燥混合物である、請求項16に記載の試験混合物。
【請求項24】
試験試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(「MRSA」)の有無を検出するための方法であって、
a)粉末コアグラーゼ基質源、および前記試験試料中のいかなるメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(「MSSA」)をも殺滅するために有効な量のセフォキシチンを含有する、試験混合物を提供するステップと、
b)前記試験混合物を容器中で水和するステップと、
c)前記第1世代の生体試料を前記水和した試験混合物と前記容器中で混合するステップと、
d)前記混合した第1世代の生体試料および前記試験混合物を、前記容器中で、約20℃〜約42℃の範囲の温度でインキュベートするステップと、
e)前記試料と前記水和した試験混合物との前記混合物を観察して、前記容器中の血栓の有無を検出するステップと、
を含む、方法。
【請求項25】
前記試験混合物が、コアグラーゼ基質源としてウサギ血漿を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項26】
前記試験混合物が、コアグラーゼ基質源としてフィブリノゲンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記試験混合物が、
a)有効量のアミノ酸と、
b)有効量の窒素源と、
c)有効量の塩と、
d)有効量のビタミン類と、
e)有効量のカルシウムと、
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ヒト対象の鼻腔をスワブすることによって、前記第1世代の試料を採取するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
環境表面をスワブすることによって、前記第1世代の試料を採取するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
第1世代の生体試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(「MRSA」)の有無を検出するときに使用するための液体試験混合物であって、
a)有効量のアミノ酸と、
b)有効量の窒素源と、
c)有効量の塩と、
d)有効量のビタミン類と、
e)有効量のカルシウムと、
f)前記試験試料中の黄色ブドウ球菌の存在下で、前記試験混合物を凝固させる、有効量のコアグラーゼ基質と、
h)前記標本中のすべてのメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(「MSSA」)を殺滅するために有効な量のMecA遺伝子誘導体と、
を含む、液体試験混合物。
【請求項31】
前記MecA遺伝子誘導物質が、セフォキシチンである、請求項30に記載の液体試験混合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−510628(P2011−510628A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544432(P2010−544432)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/031802
【国際公開番号】WO2010/011358
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(510202260)パイロッツ ポイント エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】