説明

詰替え容器

【課題】詰替え作業時に内容物が手指に付着するなどの不具合を起こすことなしに容易かつスムーズに内容物を移し替えることができる詰替え容器を提案する。
【解決手段】本発明の詰替え容器は、容器本体1の口部10dに装着されるベース20と、注出路21dを有しベース20に揺動可能に保持される筒体21とを備え、ベース20は、内容物の排出口20eと、充填空間M内に空気を導入する通気口20fと、通気口20fと連通する空気置換用パイプ22を備え、筒体21は、筒体21を引き倒した閉鎖姿勢にて注出路21dと排出口20e及び通気口20fとを非連通にする閉鎖壁21eを有し、閉鎖壁21eに、筒体21を引き起こした傾斜姿勢にて注出路21dに排出口20eのみを連通させるとともに、筒体21をさらに引き起こした倒立姿勢にて注出路21dに排出口20e及び通気口20fの両方を連通させる貫通開孔21cを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の充填空間に繋がる口部を有する容器本体と、この容器本体の口部に設けられる注出栓とを備える詰替え容器に関し、特に、容易かつスムーズな詰替え作業を実現しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
シャンプーやリンス、洗剤、消臭除菌剤あるいは化粧品などを入れる容器は、内容物の適量取り出しを可能とするために、ポンプのような吐出器が容器の口部に装着されて市場を流通しており、内容物を使いきった後は、別途に市販されている詰替え容器から新たな内容物を移し替えて元の容器(詰替えるべき容器)を再利用することによって資源の有効活用が図られている。
【0003】
ところで、詰替え容器は、パウチタイプの容器や薄肉のブロー成形容器など剛性の低い容器が適用されることが多いため変形し易く、内容物の詰替えが行い難いばかりか内容物が手指に付着するおそれもあった。この問題を解消するため、特許文献1には、容器本体の口部に、該口部に係合保持されるベースと、該ベースに回動可能に保持されその引き起こしによる起立姿勢でベースに形成した開口部と整列して内容物の注出を可能にする筒体と、からなる注出栓を装着してなる詰替え容器が開示されている。そして、このような詰替え容器によれば、詰替えが行われる容器の口部に、注出栓の筒体を引っ掛けて当該筒体を引き起こすだけで詰替え容器内の内容物を移し替えることができる、とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−157096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1にて提案された詰替え容器は、容器全体を逆さにした状態で内容物の注出を行うに当たり、内容物の注出により内部が減圧化して内容物のスムーズな注出を行い得ない場合があって、この点について改善の余地があった。
【0006】
本発明の課題は、詰替え作業時に内容物が手指に付着するなどの不具合を起こすことなしに、容易かつスムーズに内容物を移し替えることができる詰替え容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容物の充填空間に繋がる口部を有する容器本体と、該容器本体の口部に設けられる注出栓とを備え、該注出栓を詰替えるべき容器の口部に挿入して該充填空間内の内容物を移し替える詰替え容器であって、
前記注出栓は、前記容器本体の口部に装着されるベースと、内容物の注出路を有し該ベースに揺動可能に保持される筒体とを備え、
該ベースは、充填空間内の内容物を排出する排出口と、充填空間内に空気を導入する通気口とをそれぞれ有し、前記容器本体の底部に向けて伸延し該通気口と連通する空気置換用パイプを備え、
前記筒体は、該筒体を引き倒した閉鎖姿勢にて前記注出路と該排出口及び該通気口とを非連通にする閉鎖壁を有し、該閉鎖壁に、該筒体を引き起こした傾斜姿勢にて該注出路に該排出口のみを連通させるとともに、該筒体をさらに引き起こした倒立姿勢にて該注出路に該排出口及び該通気口の両方を連通させる貫通開孔を設けることを特徴とする詰替え容器である。
【0008】
前記筒体は、該筒体の外面に、該筒体を詰替えるべき容器の口部に挿入して引き起こすに当たり該筒体の先端部とともに該口部内面に当接して該筒体を一時的に保持するリブを備え、該リブは、前記倒立姿勢にて前記ベースに当接する後端側端部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
内容物を充填する容器本体、及びこの容器本体の口部に設けられる注出栓からなる詰替え容器において、この注出栓を、口部に装着されるベース、及び内容物の注出路を有しベースに揺動可能に保持される筒体にて構成し、ベースに、内容物の排出口と空気を導入する通気口とをそれぞれ設けるとともに、この通気口と連通する空気置換用パイプを設け、筒体に、該筒体を引き倒した閉鎖姿勢にて注出路と排出口及び通気口とを非連通にする閉鎖壁を設け、この閉鎖壁に、筒体を引き起こした傾斜姿勢にて注出路に排出口のみを連通させるとともに、筒体をさらに引き起こした倒立姿勢にて注出路に排出口及び通気口の両方を連通させる貫通開孔を設けたので、筒体の閉鎖姿勢にて充填空間の閉鎖状態を維持することができ、また、筒体の倒立姿勢にて内容物を排出させるに伴い、充填空間内に空気を導入して内容物と空気とを置換させることが可能となり、内容物をスムーズに注出させることができる。特に、筒体を揺動可能としている関係上、閉鎖壁と排出口とを完全に密着させることは困難であるため、筒体を引き起こす途中で通気口が排出口より先に外界と連通すると、排出口から内容物が漏れ出す懸念があるが、上述した構成にすることにより、通気口は排出口よりも後で外界に連通することになるので、内容物の漏れ出しが有効に防止される。
【0010】
筒体の外面に、この筒体を詰替えるべき容器の口部に挿入して引き起こすに当たり、筒体の先端部とともに口部内面に当接することでこの筒体を一時的に保持するリブを設け、このリブに、筒体の倒立姿勢にてベースに当接する後端側端部を設ける場合は、特に目視等によって筒体の姿勢を確認することなく、容器本体を傾けていくだけで筒体を所期する倒立姿勢に変移させることができるので、注出栓を手指で直接触ることなく容易に詰替え作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従う詰替え容器の実施の形態を、筒体を引き倒した閉鎖姿勢で示す、(a)は側面視での部分断面図であり、(b)は、(a)に示すA−Aに沿う断面図であり、(c)は、(a)の部分拡大断面図である。
【図2】詰替えるべき容器の一例を示す側面図である。
【図3】吐出器を取り外した図2に示す詰替えるべき容器の口部に、図1に示す詰替え容器の注出栓を挿入した状態を示す部分拡大断面図である。
【図4】図3に示す状態から詰替え容器を傾けて、筒体の先端部と筒体の外面に設けたリブとを詰替えるべき容器の口部内面に当接させた状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】図4に示す状態から詰替え容器を傾けて、筒体の注出路とベースの排出口とを連通させた、筒体の傾斜姿勢を示す部分拡大断面図である。
【図6】図5に示す状態から詰替え容器を傾けて、筒体の注出路とベースの排出口及び通気口とを連通させた、筒体の倒立姿勢を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う詰替え容器の実施の形態を、筒体を引き倒した閉鎖姿勢で示す、(a)は側面視での部分断面図であり、(b)は、(a)に示すA−Aに沿う断面図であり、(c)は、(a)の部分拡大断面図である。
【0013】
図1(a)において、符号1は詰替え用の内容物を収容する容器本体である。容器本体1は、底部10aから立ち上がる筒状の胴部10bを有し、肩部10cを介して上部を開孔させた口部10dを備えている。口部10dの外周面には、図示の例では外側に向けて凸となる係合部10eが設けられている。また、容器本体1の内側には、内容物の充填空間Mが区画形成されている。容器本体1としては、注出による内容物の減少に伴って容器本体1そのものの減容を可能とする袋状ないし薄肉のブローボトル、あるいは人の把持によって変形及び復元可能なスクイズ容器を用いることができるが、これらに限定されず、内容物の注出に際して容器本体1を変形させない剛性の大きいボトルを用いることもできる。
【0014】
また、符号2は、容器本体1の口部10dに設けられる注出栓である。図1(a)に示すように注出栓2は、容器本体1の口部10dに装着されるベース20と、ベース20に揺動可能に保持されて、その先端に内容物を詰替え容器から注出させる注出口21aを備える筒体21と、からなる。なお、図示の例で筒体21は、断面形状が矩形状となるものであるが、正方形状でも円形状であってもよい。
【0015】
ベース20は、口部10dを覆う天壁20aの外側端縁に、口部10dの外周面を取り囲む周壁20bを一体連結するとともに、周壁20bの内周面に、口部10dの係合部10eに係合する爪状の被係合部20cを備えていて、ベース20は、アンダーカット係合にて口部10dに装着されている。なお、アンダーカット係合に代えてねじ係合にて装着するようにしてもよい。周壁20bの内側には、口部10dの内周面に液密に当接する環状のシール壁20dが設けられている。
【0016】
また、天壁20aには、図1(b)、(c)に示すように、充填空間内の内容物を排出させる排出口20eと、充填空間内に空気を導入する通気口20fとの2つの貫通孔が設けられている。図示の例で、通気口20fは天壁20aの中央付近に設けられ、排出口20eは、筒体21が引き倒されて横倒しになった姿勢(閉鎖姿勢)において、通気口20fを挟んで注出口21aと逆向き(筒体21の後端側)に設けられている。さらに、天壁20aの裏面には、通気口20fを取り囲む環状の保持部20gが設けられていて、容器本体1の底部10aに向けて伸延する空気置換用パイプ22を嵌合保持している。ここで、空気置換用パイプ22の長さは、充填空間M内に予定した量の内容物が充填されている状態で容器本体1を上下逆さまにした際、内容物の液面からこの空気置換用パイプ22の末端が露出するように設定されている。また、図1(c)に示すように、排出口20e及び通気口20fの近傍には、後述する筒体21の閉鎖壁21eと天壁20aとの間を摺動可能にシールする凸部tが設けられている。
【0017】
そして、天壁20aの表面には、図1(a)から明らかなように、筒体21の側部を挟んで立ち上がる一対の側壁20hが設けられ、各側壁20hの内側には、軸受け部20jが設けられている。さらに、筒体21の閉鎖姿勢において筒体21の後端側には、一対の側壁20hを相互に連結する連結部20kが形成されている。
【0018】
また、筒体21は、それぞれの側壁20hに向けて突出し、軸受け部20jに揺動可能に支持される一対の軸部21bを備えている。筒体21の内側には、先端側に注出口21aを有し後端側に貫通開孔21cを有する注出路21dが形成されている。そして、筒体21の閉鎖姿勢にて、ベース20の天壁20aと注出路21dとによって挟まれる壁部は、排出口20e及び通気口20fに覆い被さる閉鎖壁21eとなっている。さらに筒体21の外面の頂部には、リブ21fが設けられている。なお図示の例でリブ21fは、筒体21の軸線に沿って1本設けられているものであるが、複数本設けてもよい。
【0019】
ここで、詰替えるべき容器Cは、例えば図2に示すように、口部C1にポンプを備える吐出器C2を装着したものであって、内容物の詰替え作業に当たっては、吐出器C2を取り外しておく。
【0020】
そして、図3に示すように、詰替えるべき容器Cの口部C1に、閉鎖姿勢の筒体21を挿入した後、図中矢印で示す向き(筒体21が引き起こされる向き)に容器本体1を傾けると、筒体21は、図4に示すように筒体21の先端部とリブ21fとが口部C1の内面に当接して一時的に保持される。これにより、詰替えるべき容器Cが倒れないように保持された状態で、容器本体1を図中矢印で示す向きにさらに傾けていけば、相対的に筒体21が引き起こされることになる。
【0021】
そして、容器本体1を傾ける動作を継続し、図5に示すように、注出路21dに対し排出口20eのみが連通する筒体21の傾斜姿勢になっても、通気口20fは閉鎖されたままとなっているので、充填空間M内の内容物はほとんど排出されることがない。
【0022】
その後、さらに容器本体1を傾ける動作を継続し、図6に示すように注出路21dに対し、排出口20e及び通気口20fの両方が連通する筒体21の倒立姿勢になると、充填空間M内の内容物が空気と置換されて、内容物がスムーズに注出される。なお、筒体21の倒立姿勢において、リブ21fの後端側端部21gが、ベース20の連結部20kと当接するようにリブ21fの長さを定めておけば、この後端側端部21gを筒体21のストッパーとして機能させることができるので、より好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、内容物が手指に付着するなどの不具合を起こすおそれがなく、また、内容物をよりスムーズに移し替えることができて詰替え作業が容易となる詰替え容器を提案することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 容器本体
2 注出栓
10d 口部
20 ベース
20e 排出口
20f 通気口
21 筒体
21c 貫通開孔
21d 注出路
21e 閉鎖壁
21f リブ
21g 後端側端部
22 空気置換用パイプ
C 詰替えるべき容器
C1 詰替えるべき容器の口部
M 充填空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の充填空間に繋がる口部を有する容器本体と、該容器本体の口部に設けられる注出栓とを備え、該注出栓を詰替えるべき容器の口部に挿入して該充填空間内の内容物を移し替える詰替え容器であって、
前記注出栓は、前記容器本体の口部に装着されるベースと、内容物の注出路を有し該ベースに揺動可能に保持される筒体とを備え、
該ベースは、充填空間内の内容物を排出する排出口と、充填空間内に空気を導入する通気口とをそれぞれ有し、前記容器本体の底部に向けて伸延し該通気口と連通する空気置換用パイプを備え、
前記筒体は、該筒体を引き倒した閉鎖姿勢にて前記注出路と該排出口及び該通気口とを非連通にする閉鎖壁を有し、該閉鎖壁に、該筒体を引き起こした傾斜姿勢にて該注出路に該排出口のみを連通させるとともに、該筒体をさらに引き起こした倒立姿勢にて該注出路に該排出口及び該通気口の両方を連通させる貫通開孔を設けることを特徴とする詰替え容器。
【請求項2】
前記筒体は、該筒体の外面に、該筒体を詰替えるべき容器の口部に挿入して引き起こすに当たり該筒体の先端部とともに該口部内面に当接して該筒体を一時的に保持するリブを備え、該リブは、前記倒立姿勢にて前記ベースに当接する後端側端部を有する請求項1に記載の詰替え容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95448(P2013−95448A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237865(P2011−237865)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】