説明

認証システム及び通信方法

【課題】本発明では、暗号化技術のみによらない、信号自体にセキュリティ強度を持たせた、ディジタル・アナログ信号を重畳したハイブリッド信号方式の電子的認証システム及び通信方法を提案する。
【解決手段】情報Aを持つアナログ信号301と情報Bをもつディジタル信号302を信号重畳処理(もしくは信号合成処理)でもって重畳(合成)し、情報ABをもつハイブリッド信号303を生成する。このハイブリッド信号303は所定のハイブリッド信号通信方式を用いない受信機では欠損した波形の信号と認識されるため、信号を傍受したとしても、不良パケットとして破棄される。また、ハイブリッド信号を受信したとしても、信号を解析し、情報を抽出する手段を得る必要がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル・アナログ信号を重畳したハイブリッド信号方式の電子的認証システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会の情報化により、電子鍵や自動車のイモビライザ等に代表される電子的認証システムの使用が拡大している。これに伴い、電子鍵の保有する認証情報であるIDコード等に関するセキュリティの重要性が増している。このような電子情報通信における従来のセキュリティ技術の主なものは送信データの暗号化であり、一定の効果をあげている。この技術は種々の暗号アルゴリズムを用いて原文(平文)を暗号文とし、暗号文自体を手に入れても復号(解読)しなければ情報は得られない。実用面では高度な暗号には高性能の計算機が必要となる。また、暗号化アルゴリズムに関しては現在も多くの研究や開発が行われている。そのほかのセキュリティ方法としては、認証のたびにIDコード等をランダムに変更するワンタイムパスワード方式等も挙げられる。なお、現在実用化されている一般的な暗号技術に関して、ここでの解説は省略する。
従来の技術として合成信号(異なる信号の合成や重畳により生成した信号)の利用例はあるが、本発明とは目的、手段が異なるものである。以下、従来技術の例を挙げる。
【0003】
アナログ信号とディジタル信号を合成したハイブリッド信号を用いた従来技術として、特開平9−196944号公報があるが、これは2つのセンサ信号を同一のハーネスで送信することによって、自動車のハーネス数を減らすことを目的としているものである。
【0004】
セキュリティ性の向上を目的の一つとした発明に特開平9−60367号公報がある。これは5種のコード化信号(ディジタル信号)を2信号ずつ組み合わせて重畳した、合成信号とその処理手段により、キーレスエントリーシステムのセキュリティ性、動作信頼性、省電力化を行うものである。
【0005】
アナログ要素をディジタル符号に持たせた先行技術に特開2001−223591号公報があるが、これはディジタル符号パルスの圧縮に関するものである。発明内容もアナログ要素を用いて一般的なディジタル符号パルスを変則電位パルスに変換し、情報量を減らさずにパルス数の削減を行うといったものである。
【0006】
特開2001−28829号公報も重畳信号を利用する技術であるが、ディジタル形保護継電器におけるアナログ入力回路の監視を行い、システムの効率の向上を目的とするものである。それに加え、この技術はアナログ信号をA/D変換した後に重畳するものであり、ディジタル信号同士の重畳となる。
【特許文献1】特開平9−196944号公報
【特許文献2】特開平9−60367号公報
【特許文献3】特開2001−223591号公報
【特許文献4】特開2001−28829号公報
【特許文献5】特開平6−204982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来型の認証システムのセキュリティは暗号化技術によるところが大きく、計算機の高性能化による実時間解読、安全性を確保した鍵の受け渡し方法、暗号文自体の入手が容易といった大きな問題が存在する。
そこで、本発明では暗号化技術のみによらない、信号自体にセキュリティ強度を持たせた、新たな方式の情報セキュリティ技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の認証システムは、電子鍵等の電子的セキュリティを用いたものにおいて、認証情報もしくは鍵情報を持つアナログ信号とディジタル信号を重畳することによって得られる情報隠蔽性の高いハイブリッド信号を用いて高度な情報セキュリティを実現させるものである。
本発明の認証システムは、前記ハイブリッド信号を利用した伝送情報保護である。
本発明の通信方法は、それぞれが認証情報もしくは鍵情報を持つアナログ信号とディジタル信号を重畳することによって得られる情報隠蔽性の高いハイブリッド信号を用いた情報伝達の通信方法。
本発明の通信方法は、前記ハイブリッド信号において、重畳に用いたアナログ信号とディジタル信号それぞれが持つ情報を保持し、システムのセキュリティを担うものである。
本発明の通信方法は、前記ハイブリッド信号において、それぞれ情報を持つアナログ信号とディジタル信号を重畳することによって得られる固有の情報をセキュリティに用いるものである。
本発明の通信方法は、前記ハイブリッド信号の特徴を利用して通信の安全性を確保するものである。
【発明の効果】
【0009】
前述のように、本発明は暗号化アルゴリズムのみによらない、新たなセキュリティ手段となる。ハイブリッド信号方式の特徴を用いることにより、セキュリティの高い認証システムを構築する自由度が増す。それに加え、ハイブリッド信号は組み合わせが非常に多様であり、通信盗聴に対して効果的な障壁となる。また、小規模のシステムに応用することが可能であり、多種多様な現場へ高セキュリティの認証システムを提供できる。
特に、現在ますます使用が拡大している電子鍵・電子的施錠システムへの応用が期待でき、自動車やホームセキュリティなど多くの場面で、より強固なセキュリティを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の認証システムを図面に基づいて、以下に説明する。
本発明は、それぞれが認証情報(もしくは鍵情報)を持つアナログ、ディジタル信号を重畳(合成)し生成した情報隠蔽性の高い合成信号(以降ハイブリッド信号と呼ぶ)を用いて、高度な情報セキュリティを実現させることを特徴とする認証システムである。
認証システムの概略を図1に示す。
それぞれ認証に必要な情報を持つアナログ、ディジタル信号を重畳(合成)し、生成したハイブリッド信号を用いて通信の安全性を確保する。
ハイブリッド信号は原信号であるアナログ、ディジタル信号の形式や重畳方法により多種多様な波形をもつ。これを利用し、合成前の両信号が持つ情報の保持の他、新たに固有の情報を持たせ情報の保護キーとする。
認証情報を保持した携帯端末100と認証部(認証装置)200においてハイブリッド信号通信のプロトコルを決め、場合によっては信号形状の変更を行うことによってセキュリティの強度を向上させる。また、認証処理においてもハイブリッド信号の特徴を用いたビット変換処理等を行い、セキュリティを向上させる。
【0011】
図2のハイブリッド信号のイメージ図を例として説明する。情報Aを持つアナログ信号301と情報Bをもつディジタル信号302を信号重畳処理(もしくは信号合成処理)でもって重畳(合成)し、情報ABをもつハイブリッド信号303を生成する。このハイブリッド信号303は所定のハイブリッド信号通信方式を用いない受信機では欠損した波形の信号と認識されるため、信号を傍受したとしても、不良パケットとして破棄される。また、ハイブリッド信号を受信したとしても、信号を解析し、情報を抽出する手段を得る必要がある。このように、ハイブリッド信号のセキュリティを破るためには多くの手順が必要となり非常に困難である。それに加え、ディジタル信号の暗号化を併用するなど、多重のセキュリティを施すことが可能であるため解析は困難を極める。
【0012】
図3は、本発明の実施形態の一例を示す概略構成図である。
携帯端末100はユーザが所持し、認証装置200とハイブリッド信号による認証通信を行うものである。携帯端末100は制御部101、記憶部102、アナログ信号発生部103、信号合成部104、ハイブリッド信号処理部105、通信部106から構成される。
制御部101は携帯端末の動作制御を行うものである。
記憶部102はユーザの認証情報を記憶し、保持する機能を持つものである。具体的には、アナログ信号の情報およびディジタル信号の情報からなる認証情報を保持する。
アナログ信号発生部103は記憶部102から読み出されたアナログ信号の情報を基にアナログ信号を発振する。
信号合成部104はアナログ信号とディジタル信号を合成し、ハイブリッド信号を生成する。合成の際の同期動作も行う。
ハイブリッド信号処理部105は認証装置200から受信したハイブリッド信号を処理し、情報の抽出を行う。主に認証情報の変更が行われた時の新認証情報の抽出処理を行う。
通信部106では対象機器とハイブリッド信号を用いた送受信を行う。ここでは認証装置200と有線もしくは無線等の手段によって通信を行う。
【0013】
認証装置200は制御部201、記憶部202、アナログ信号発生部203、信号合成部204、ハイブリッド信号処理部205、通信部206、認証情報生成部207、認証処理部208から構成される。
制御部201は認証装置の動作制御を行うものである。
記憶部202は携帯端末100の認証に用いられる認証情報を保持する。また、新規の認証情報を生成した場合には新規情報の記憶および保持を行うものである。
信号発生部203は記憶部202から読み出されたアナログ信号の情報を基にアナログ信号を発振するものである。
信号合成部204はアナログ信号とディジタル信号を合成し、ハイブリッド信号を生成する。合成の際の同期動作も行う。
ハイブリッド信号処理部205は携帯端末100から受信したハイブリッド信号を処理し、認証情報の抽出を行う。
通信部206では対象機器とハイブリッド信号を用いた送受信を行う。ここでは携帯端末100と有線もしくは無線等の手段によって通信を行う。
認証情報発生部207は、認証情報の変更が行われた時の新認証情報の生成処理を行うものである。認証情報変更トリガが発生した場合、新規認証情報を発生させ、記憶部202に記憶させる。また、同時に信号発生部203および信号合成部204を経由し新規認証情報を携帯端末100に送信する。
認証処理部208は携帯端末100より送られてきた認証情報の認証処理を行うものである。正しい認証情報が得られたときは認証可を、誤った情報の時は認証不可を出力する。
【0014】
本発明の実施例として図3及び図4を用いて認証処理の流れを説明する。
ステップS1.認証開始トリガが発生すると、携帯端末100側の制御部101から認証情報送信開始命令が送出される。
ステップS2.認証情報送信命令を記憶部102が受けると、アナログ信号情報を信号発生部103へ送出する。また、ディジタル信号情報を信号合成部104へ送出する。
ステップS3.アナログ信号情報を受け取った信号発生部103は、それを基にアナログ信号を発振し、信号合成部104へ送る。
ステップS4.信号合成部104では記憶部102から送られてきたディジタル信号と信号発生部103より送られてきたアナログ信号を同期させて合成(重畳)し、ハイブリッド信号を生成する。
ステップS5.生成したハイブリッド信号を通信部106より送信する。
ステップS6.携帯端末100から送信されたハイブリッド信号を認証装置200側通信部206にて受信する。
ステップS7.受信されたハイブリッド信号はハイブリッド信号処理部205に送られ、ハイブリッド信号から認証情報の抽出を行う。抽出された認証情報は認証処理部208へ送られる。
ステップS8.認証処理部208でハイブリッド信号から抽出された認証情報の認証作業が行われる。認証処理部208は記憶部202へアクセスし、比較等による認証処理を行い、携帯端末100より送信された情報での認証の可否を判定する。判定処理後、結果を制御部201に送る。
ステップS9.制御部201が判定情報を基に、認証可の場合にはロック解除をする等の所定の制御を行う。
【0015】
次に、図3及び図5を用いて内部的に認証情報を変更する時の流れを説明する。
ステップS10.認証情報変更トリガが発生すると、認証装置200側の制御部201により新規認証情報生成命令送出され、認証情報生成モードとなる。
ステップS11.新規認証情報生成命令が発生すると、認証情報生成部207において新規のディジタル情報とアナログ信号情報を生成し、記憶部202へ送る。
ステップS12.記憶部202で新規認証情報を記憶し、ディジタル情報は信号合成部204へ、アナログ信号情報は信号発生部203へ送出される。
ステップS13.信号発生部203にてアナログ信号情報を基にアナログ信号が発振される。
ステップS14.信号合成部204ではアナログ信号とディジタル信号を合成し、ハイブリッド信号を生成する。生成したハイブリッド信号は通信部206に送られる。
ステップS15.生成したハイブリッド信号を通信部206より有線、無線等の伝達手段により携帯端末100へ送られる。
ステップS16.認証装置200から送信されたハイブリッド信号を携帯端末100側通信部106にて受信し、ハイブリッド信号処理部105へ送る。
ステップS17.ハイブリッド信号処理部105で新規認証情報の抽出を行い、得られた新規認証情報を記憶部102に送る。
ステップS18.記憶部102では新規認証情報を記憶し、認証情報変更処理を終了する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のシステム概略図である。
【図2】本発明のハイブリッド信号のイメージである。
【図3】本発明における実施形態例の概略図である。
【図4】本発明の認証処理の実施例を示すフローチャート図である。
【図5】本発明の認証情報変更処理の実施例を示すフローチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子鍵等の電子的セキュリティを用いた認証システムにおいて、認証情報もしくは鍵情報を持つアナログ信号とディジタル信号を重畳することによって得られる情報隠蔽性の高いハイブリッド信号を用いて高度な情報セキュリティを実現させることを特徴とする認証システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載されているハイブリッド信号を利用した伝送情報保護の認証システム。
【請求項3】
前記請求項1に記載されているハイブリッド信号において、重畳に用いたアナログ信号とディジタル信号それぞれが持つ情報を保持し、システムのセキュリティを担う通信方法。
【請求項4】
前記請求項1に記載されているハイブリッド信号において、それぞれ情報を持つアナログ信号とディジタル信号を重畳することによって得られる固有の情報をセキュリティに用いる通信方法。
【請求項5】
前記請求項1に記載されているハイブリッド信号の特徴を利用して通信の安全性を確保する通信方法。
【請求項6】
前記請求項1に記載されているハイブリッド信号を用いた情報伝達の通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−199969(P2007−199969A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17069(P2006−17069)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】