説明

誘導加熱用高周波インバータとその制御方法

【課題】短絡から開放までスイッチのソフトスイッチングが可能で、誘導加熱負荷がオールメタルに対応でき、重負荷から軽負荷まで広範囲な出力制御が可能な高周波インバータを提供する。
【解決手段】2つのスイッチを直列接続し、各々のスイッチに並列に逆並列ダイオードを接続し、スイッチ間の接続中点から分岐した共振タンクを備えた1組のインバータユニットと、負荷抵抗、負荷インダクタ及び力率補償用コンデンサが直列接続された加熱負荷ユニットとを備え、1組のインバータユニットを互いに並列接続して直流電源に並列に接続すると共に、それぞれの共振タンクを介して各々の接続中点どうしを接続する。また、2つの共振タンクの接続中点と、直流電源の負極側との間に、加熱負荷ユニットを接続する。これにより、それぞれのスイッチ間の接続中点から流れ出る電流の合成瞬時電流ベクトルを位相差角制御して、加熱負荷ユニットに流れる出力電流を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱(IH)用のソフトスイッチング方式の高周波インバータの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、高周波インバータは、スイッチング素子としてIGBTやMOSFETで構成される半導体スイッチを用いて、高周波ゲート信号によってスイッチ動作させることによりIH負荷(ワークコイル)に高周波電流を供給する。ワークコイルに供給される誘導加熱電力は、ワークコイルに流れる電流の周波数の平方根に比例するため、このような誘導加熱用高周波インバータの高効率化,高性能化を図るためには、スイッチング周波数の高周波化は不可欠である。
【0003】
しかし、高周波化と共にスイッチング損失の顕在化が問題となっている。スイッチング損失は、スイッチのオン・オフ動作時の電圧と電流の位相のずれに起因するもので、スイッチがオンした時に、電圧が印加した状態で電流が流れ、電流と電圧の積の電力損失となるものである。スイッチング損失はエネルギーの損失につながり、場合によってはスイッチにダメージを付与するため、スイッチング損失を抑制策として、種々のソフトスイッチング技術が研究されている(例えば、特許文献1〜2を参照。)。
【0004】
また、誘導加熱負荷が低抵抗率金属(例えば、銅、ステンレス、アルミニウムなど)の場合は、抵抗率が極めて小さいことから、誘導加熱負荷に生じる熱は小さくなり、ワークコイルの電流の周波数を大きくすることにより、高性能化を図る必要がある。銅やアルミニウムを誘導加熱する場合、ワークコイルの電流の周波数は100(kHz)程度に高周波化する必要がある。スイッチング素子としてIGBTなどを用いる場合、ゲートトリガ周波数の限界は50(kHz)程度であることから、ワークコイルの電流の周波数をIGBTなどのゲートトリガ周波数の限界よりも更に高周波化する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−172193号公報
【特許文献2】特開昭62−15795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記状況に鑑みて、本発明は、低スイッチング損失を図るべく、短絡から開放まで半導体スイッチによるソフトスイッチングが可能で、誘導加熱負荷がオールメタル(低抵抗率金属のアルミニウムや銅を含む)に対応でき、重負荷から軽負荷まで広範囲な出力制御が可能な高周波インバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の観点の誘導加熱用高周波インバータは、
1)第1スイッチと第2スイッチを直列接続し、第1スイッチ及び第2スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第1スイッチと第2スイッチの第1接続中点から分岐して接続された第1共振タンク回路とを備えた第1インバータユニットと、
2)第3スイッチと第4スイッチを直列接続し、第3スイッチ及び第4スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第3スイッチと第4スイッチの第2接続中点から分岐して接続された第2共振タンク回路とを備えた第2インバータユニットと、
3)負荷抵抗、負荷インダクタ及び力率補償用コンデンサが直列接続された加熱負荷ユニットと、を備える。
【0008】
そして、上記1)の第1インバータユニットと上記2)の第2インバータユニットを互いに並列に接続して直流電源に並列接続すると共に、第1共振タンク及び第2共振タンクを介して第1接続中点と第2接続中点を接続する。また、第1共振タンクと第2共振タンクの第3接続中点と、上記の直流電源の負極側との間に、上記の加熱負荷ユニットを接続する。
これにより、第1接続中点と第2接続中点から流れ出る電流の合成瞬時電流ベクトルを位相差角制御し、かつ、その合成ベクトルを振幅制御(実効値電流制御)して、加熱負荷ユニットに流れる出力電流を制御し、出力電力を高速かつ連続的に可変にできる。
【0009】
ここで、上記の共振タンク回路とは、共振インダクタと共振コンデンサが直列接続されたものである。また、上記の加熱負荷ユニットにおける負荷抵抗、負荷インダクタは、ワークコイルを流れて加熱対象物に渦電流を誘導させることによりジュール熱を発生させる現象を表わす等価回路のRL直列回路の要素である。また、力率補償用コンデンサ(C)は負荷力率を改善するために用いられる。
本発明の誘導加熱用高周波インバータは、1つの誘導加熱(IH)負荷に対して、2系統のハーフブリッジ駆動回路を備え、それぞれの瞬時電流ベクトルの相互位相を制御することにより、IH負荷に与える電力を設定できるようにしたものである。
【0010】
次に、本発明の第2の観点の誘導加熱用高周波インバータは、
第1スイッチと第2スイッチを直列接続し、第1スイッチ及び第2スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第1スイッチと第2スイッチの第1接続中点から分岐して接続された第1共振タンク回路とを備えた第1インバータユニットと、
第3スイッチと第4スイッチを直列接続し、第3スイッチ及び第4スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第3スイッチと第4スイッチの第2接続中点から分岐して接続された第2共振タンク回路とを備えた第2インバータユニットと、
負荷抵抗、負荷インダクタ及び力率補償用コンデンサが直列接続された加熱負荷ユニットと、を備える。
【0011】
そして、上記の第1インバータユニットと第2インバータユニットを互いに並列に接続して直流電源に並列接続すると共に、第1共振タンク及び第2共振タンクを介して第1接続中点と第2接続中点を接続する。また、第1共振タンクと第2共振タンクの第3接続中点と直流電源の負極側を接続する。また、第1共振タンクおよび第2共振タンク共に、共振インダクタと共振コンデンサが直列に接続されたもので、第3接続中点側にそれぞれの共振コンデンサが配置される。また、第1共振タンクおよび第2共振タンクの共振インダクタと共振コンデンサの接続中点どうしの間に、上記の加熱負荷ユニットを接続する。
これにより、第1共振タンクと第2共振タンクのそれぞれの共振コンデンサの合成瞬時電圧ベクトルを位相差制御し、加熱負荷ユニットに印加される高周波電圧の振幅と位相を高速かつ連続的に可変にできる。
【0012】
また、本発明の誘導加熱用高周波インバータにおいて、以下の(1)〜(5)の態様の如く、ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続されることが好ましい。
(1)第1インバータユニットの第1スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第3スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(2)第1インバータユニットの第2スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第4スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(3)第1インバータユニットの第1スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第4スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(4)第1インバータユニットの第2スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第3スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(5)直流電源と直列にゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
【0013】
これにより、スイッチ素子の切換時の過大電流を防ぐことができ、低スイッチング損失を図ることができる。ZCS用インダクタはそれぞれのインバータユニットに設けることにより、各インバータユニットに応じてインダクタを調整することが可能になる。
【0014】
直流電源と直列にゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続されることにより、スイッチ素子の切換時の過大電流を防ぐことができ、低スイッチング損失を図ることができる。各インバータユニットの経路ではなく、各インバータユニットの共通となるように電源と直列にインダクタを接続することで、素子の簡素化が図ることができる。
【0015】
また、本発明の誘導加熱用高周波インバータは、同容量の4つのゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが、それぞれ、第1インバータユニットの第1スイッチと直列に接続され、第2インバータユニットの第3スイッチと直列に接続され、第1インバータユニットの第2スイッチと直列に接続され、第2インバータユニットの第4スイッチと直列に接続されたことが好ましい。
これにより、スイッチ素子の切換時の過大電流を防ぐことができ、低スイッチング損失を図ることができる。
【0016】
また、本発明の誘導加熱用高周波インバータは、第1インバータユニットの第2スイッチと並列に第1ゼロボルテージスイッチング(ZVS)用コンデンサが接続され、上記の第2インバータユニットの第4スイッチと並列に第2ゼロボルテージスイッチング(ZVS)用コンデンサが接続されたことが好ましい。
ZCS用インダクタを用いる替りに、ZVS用コンデンサを用いることにより、スイッチ素子の切換時の過大電圧を防ぐことができ、低スイッチング損失を図ることができる。
【0017】
また、本発明の他の観点の誘導加熱用高周波インバータは、2つの半導体スイッチとそれぞれの半導体スイッチに並列に逆並列ダイオードを接続し、半導体スイッチ間の接続中点から分岐して接続された共振タンクを備えた1組のインバータユニットと、誘導加熱負荷及び力率改善機能を有する加熱負荷ユニットと、インバータユニットにおける各々の半導体スイッチのゼロカレントスイッチング(ZCS)促進手段あるいはゼロボルテージスイッチング(ZVS)促進手段と、を備え、1組のインバータユニットを互いに並列接続して直流電源に並列に接続すると共に、それぞれの共振タンクを介して各々の接続中点どうしを接続し、2つの共振タンクの接続中点と直流電源の負極側との間に、加熱負荷ユニットを接続し、各々の半導体スイッチ間の接続中点から流れ出る電流の合成瞬時電流ベクトルを位相差角制御し、かつ、その合成ベクトルを振幅制御(実効値電流制御)して、加熱負荷ユニットに流れる出力電流を制御し、出力電力を高速かつ連続的に可変し得る。
【0018】
ここで、上記の加熱負荷ユニットにおける誘導加熱負荷は、具体的には負荷抵抗、負荷インダクタから成るRL直列回路であり、力率改善機能を実現するために力率補償用コンデンサをRL負荷抵抗,負荷インダクタと直接に接続する。
また、共振タンクとは、具体的には共振インダクタと共振コンデンサが直列接続されたものである。
【0019】
また、本発明の他の観点の誘導加熱用高周波インバータは、2つの半導体スイッチとそれぞれの半導体スイッチに並列に逆並列ダイオードを接続し、半導体スイッチ間の接続中点から分岐して接続された共振タンクを備えた1組のインバータユニットと、誘導加熱負荷及び力率改善機能を有する加熱負荷ユニットと、インバータユニットにおける各々の半導体スイッチのゼロカレントスイッチング(ZCS)促進手段あるいはゼロボルテージスイッチング(ZVS)促進手段と、を備え、1組のインバータユニットを互いに並列に接続して直流電源に並列接続すると共に、それぞれの共振タンクを介して各々の接続中点どうしを接続し、2つの共振タンクの接続中点と直流電源の負極側とを接続し、各共振タンクは共振インダクタと共振コンデンサが直列に接続されたもので、共振タンクの接続中点側にそれぞれの共振コンデンサが配置され、共振タンクの共振インダクタと共振コンデンサの接続中点どうしの間に、上記の加熱負荷ユニットを接続し、第1共振タンクと第2共振タンクのそれぞれの共振コンデンサの電圧の合成瞬時電圧ベクトルを位相差制御し、加熱負荷ユニットに印加される高周波電圧の振幅と位相を高速かつ連続的に可変し得る。
【0020】
上記のゼロカレントスイッチング(ZCS)促進手段とは、具体的には、各インバータユニットにおける電源の正極側あるいは負極側の半導体スイッチと直列接続されたインダクタである。また、ゼロボルテージスイッチング(ZVS)促進手段とは、具体的には、各インバータユニットにおける電源の負極側の半導体スイッチと並列接続されたコンデンサである。
【0021】
また、本発明の他の観点からは、上述の誘導加熱用高周波インバータの制御方法であって、下記(1)〜(4)のステップを含む誘導加熱用高周波インバータの制御方法が提供される。
(1)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第2スイッチがオフされた後あるいは同時に第1スイッチがオンされるステップ。
(2)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第3スイッチがオフされた後あるいは同時に第4スイッチがオンされるステップ。
(3)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第1スイッチがオフされた後あるいは同時に第2スイッチがオンされるステップ。
(4)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第4スイッチがオフされた後あるいは同時に第3スイッチがオンされるステップ。
【0022】
上記(1)〜(4)のステップを高速に行うことにより、後述の実施例に記載の如く、12の動作モードが実現でき、第1接続中点と第2接続中点から流れ出る電流の合成瞬時電流ベクトルを位相差角制御して、加熱負荷ユニットに流れる出力電流を制御できる。
【0023】
本発明の誘導加熱用高周波インバータの第1スイッチ〜第4スイッチの半導体スイッチのゲート制御のプログラムは、上記のステップ(1)〜(4)をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の誘導加熱用高周波インバータによれば、半導体スイッチのソフトスイッチング方式を採用して低スイッチング損失を図り、誘導加熱負荷として低抵抗率金属を含むオールメタルに対応し、重負荷から軽負荷まで広範囲な出力制御が行えるといった効果を有する。
また、本発明の誘導加熱用高周波インバータによれば、インバータユニットの半導体スイッチを順次オン動作することにより、半導体スイッチのゲートトリガ周波数以上の周波数の誘導加熱負荷電流を供給でき、広範囲な負荷変動に対してソフトスイッチング動作が行えるといった効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の誘導加熱用高周波インバータの回路構成図
【図2】実施例1の誘導加熱用高周波インバータの動作波形チャート
【図3】動作モード1の回路説明図
【図4】動作モード1の動作波形説明図
【図5】動作モード2の回路説明図
【図6】動作モード2の動作波形説明図
【図7】動作モード3の回路説明図
【図8】動作モード3の動作波形説明図
【図9】動作モード4の回路説明図
【図10】動作モード4の動作波形説明図
【図11】動作モード5の回路説明図
【図12】動作モード5の動作波形説明図
【図13】動作モード6の回路説明図
【図14】動作モード6の動作波形説明図
【図15】動作モード7の回路説明図
【図16】動作モード7の動作波形説明図
【図17】動作モード8の回路説明図
【図18】動作モード8の動作波形説明図
【図19】動作モード9の回路説明図
【図20】動作モード9の動作波形説明図
【図21】動作モード10の回路説明図
【図22】動作モード10の動作波形説明図
【図23】動作モード11の回路説明図
【図24】動作モード11の動作波形説明図
【図25】動作モード12の回路説明図
【図26】動作モード12の動作波形説明図
【図27】動作モード1〜12の動作遷移図
【図28】重負荷から軽負荷に対する出力電圧波形および出力電流波形を示す図
【図29】共振インダクタ電流波形と共振コンデンサ電圧波形を示す図
【図30】重負荷および軽負荷における各スイッチング電圧電流波形を示す図
【図31】位相差角制御に対する入力電力および出力電力の制御特性図
【図32】ZCS促進用インダクタの回路配置パターン
【図33】実施例2の誘導加熱用高周波インバータの回路構成図
【図34】実施例3の誘導加熱用高周波インバータの回路構成図(瞬時電圧ベクトル制御ZCS高周波インバータの回路図)
【図35】実施例3の誘導加熱用高周波インバータの回路パラメータ
【図36】位相差角−出力電力特性図
【図37】スイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =18[deg],P=2.5[kW])
【図38】スイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =90[deg], P=1.2[kW])
【図39】スイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =162[deg], P=56[W])
【図40】各位相差角における出力電圧波形図および出力電流波形図
【図41】共振キャパシタ間電圧波形図
【図42】共振インダクタ間電流波形図
【図43】実施例4の誘導加熱用高周波インバータの回路構成図(瞬時電圧ベクトル制御ZVS高周波インバータの回路図)
【図44】実施例4の誘導加熱用高周波インバータの回路パラメータ
【図45】位相差角−出力電力特性図
【図46】スイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =18[deg],P=2.4[kW])
【図47】スイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =90[deg], P=1.2[kW])
【図48】スイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =162[deg], P=56[W])
【図49】各位相差角における出力電圧波形図および出力電流波形図
【図50】共振キャパシタ間電圧波形図
【図51】共振インダクタ間電流波形図
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
なお、以下の説明において、ゼロ電圧/ゼロ電流状態に置けるスイッチングは、便宜上、実施例1にあるゼロカレントスイッチング(ZCS)先行形のスイッチング(以下「ZCZVS」という)と、実施例2にあるゼロボルテージスイッチング(ZVS)先行形のスイッチング(以下「ZVZCS」という)に分けて定義する。
【実施例1】
【0027】
(回路構成)
図1に実施例1の誘導加熱用高周波インバータの回路構成図を示す。図1において、回路全体としては高周波インバータを示し、第1インバータユニットUと第2インバータユニットUと加熱負荷ユニットを有する。2つのインバータユニットは共に、それぞれIGBTから成る半導体スイッチが直列接続され、かつ、半導体スイッチは、それぞれ並列に逆並列ダイオードが接続されている。
【0028】
具体的には、図1に示すように、第1インバータユニットUは、第1スイッチ(S)と第2スイッチ(S)が直列接続され、第1スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)に接続され第1スイッチング素子(Q)が構成され、第2スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)が接続され第2スイッチング素子(Q)が構成されている。そして、第1スイッチング素子(Q)と第2スイッチング素子(Q)の接続中点aには、共振インダクタ(L)と共振コンデンサ(C)が直列接続された第1共振タンク回路が分岐して接続されている。
また、第1スイッチ(S)に直列に、ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタ(LS1)が設けられている。ZCS用インダクタ(LS1)により、第1スイッチ(S)の切換時の過大電流を防ぐことができ、低スイッチング損失を図ることができる。
【0029】
同様に、第2インバータユニットUは、第3スイッチ(S)と第4スイッチ(S)が直列接続され、第3スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)に接続され第3スイッチング素子(Q)が構成され、第4スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)が接続され第4スイッチング素子(Q)が構成されている。そして、第3スイッチング素子(Q)と第4スイッチング素子(Q)の接続中点bには、共振インダクタ(L)と共振コンデンサ(C)が直列接続された第2共振タンク回路が分岐して接続されている。
また、第3スイッチ(S)に直列に、ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタ(LS2)が設けられている。ZCS用インダクタ(LS2)により、第3スイッチ(S)の切換時の過大電流を防ぐことができ、低スイッチング損失を図ることができる。
【0030】
第1インバータユニットUと第2インバータユニットUは、互いに並列に接続され、また直流電源Vin(電源電圧をVin(V)とする)に並列に接続されている。そして、互いに並列である第1インバータユニットUと第2インバータユニットUは、第1共振タンク及び第2共振タンクをブリッジとして接続中点aと接続中点bが接続されている。
【0031】
また、加熱負荷ユニットは、誘導加熱(IH)負荷(負荷抵抗R及び負荷インダクタL)と力率補償用コンデンサ(C)とが直列接続されている。ここで、誘導加熱負荷の負荷抵抗R及び負荷インダクタLは、ワークコイルを流れて加熱対象物に渦電流を誘導させることによりジュール熱を発生させる現象を表わす簡易的な等価回路としてRL直列回路として示している。また、力率補償用コンデンサ(C)は誘導性負荷である加熱ユニットの負荷を補償するために用いられる。加熱負荷ユニットは、第1共振タンクと第2共振タンクの接続中点cと、直流電源Vinの負極側との間に接続される。
【0032】
実施例1の誘導加熱用高周波インバータは、2つの共振インダクタ(L,L)と2つの共振コンデンサ(C,C)の共振周波数fより低い動作周波数f(<f)で進み電流動作させることにより、接続中点aと接続中点bから流れ出る電流の合成瞬時電流ベクトルを位相差角制御し、かつ、振幅制御し、接続中点cから加熱負荷ユニットに流れる出力電流Iを制御し、出力電力を広範囲に高速かつ連続的に変化させることができる。
【0033】
(回路動作)
図1に示す回路構成において、接続中点aと接続中点bから流れ出るiL1,iL2の合成瞬時電流ベクトルを位相差角制御し、かつ、振幅制御することにより、接続中点cから加熱負荷ユニットに流れ出る合成ベクトルiを高速制御する。これにより、誘導加熱(IH)負荷に流す高周波電流の瞬時電流ベクトルの大きさを制御し、出力電力を連続的に可変できる。
図2に実施例1の誘導加熱用高周波インバータの理論動作波形を示す。実施例1の誘導加熱用高周波インバータの動作は以下の12の動作モードから成る。実施例1の誘導加熱用高周波インバータは、図2に示すように、時間の経過に従って、第1インバータユニットU及び第2インバータユニットUの第1スイッチ(S)〜第4スイッチ(S)をそれぞれのゲートトリガ信号によってオン・オフ制御することによって、t〜t12の区間において、1サイクル分の高周波電力変換動作を行い、この高周波電力変換サイクルを繰り返すことによって高周波電力変換を行う。
以下、t〜t12の各区間(t〜tn+1;n=0〜11)における実施例1の誘導加熱用高周波インバータの12の動作モードについて説明する。
【0034】
<モード1:区間t〜t
図2の区間t〜tにおける動作モードを説明する。前回のサイクルの区間t11〜t12において、第1インバータユニットUの第1スイッチ(S)はオンに切り換えられ、第2インバータユニットUの第3スイッチ(S)がオン状態で、第4スイッチ(S)がオフ状態である。第1インバータユニットUの逆並列ダイオード(D)が導通状態である。
上記の状態で、第1インバータユニットUの第2スイッチ(S)が逆並列ダイオード(D)の導通中にオフに切り替えられると、区間t〜tの動作モードに移行する。
区間t〜tの動作モードでは、図3の電流経路図に示すように、電源(Vin)−第1スイッチ(S)−直列共振回路(L−C)−IH負荷で閉ループ回路を形成し、電流iL1が流れる電流ループができる。また、第2インバータユニットUの逆並列ダイオード(D)が導通状態であり、直列共振回路(L−C)−逆並列ダイオード(D)−第1スイッチ(S)−直列共振回路(L−C)で閉ループ回路を形成し、電流iL2が流れる電流ループができ、回路内を循環する。ここで、第1スイッチ(S)及び第3スイッチ(S)の両端電圧は、図4のV,Vに示すように共に0(V)になり、接続中点aと接続中点bは共にVin(v)となる。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流iは下記式1のようになる。
【0035】
(数1)
=iL1−iL2 ・・・(式1)
【0036】
<モード2:区間t〜t
モード1の状態から、第3スイッチ(S)を逆並列ダイオード(D)の導通中にオフに切り替えることで、第2インバータユニットUの状態が変化する。すなわち、第3スイッチ(S)をオフすることにより、第3スイッチング素子(Q)がZCZVSターンオフする。ここで、逆並列ダイオード(D)のリカバリ―電流は、ZCS促進インダクタLS2の効果により小さい。また、同様に、第2インバータユニットUのZCS促進インダクタLS2によって、第4スイッチング素子(Q)がZCSターンオンする(図5,図6を参照)。
ここで、第1スイッチ(S)の両端電圧は0(V)のままであるが、第3スイッチ(S)の両端電圧はVin(V)となる。
【0037】
<モード3:区間t〜t
第1インバータユニットUでは、区間t〜tの動作モードと同様、電源(Vin)−第1スイッチ(S)−直列共振回路(L−C)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL1が流れる。この電流iL1は直列共振回路(L−C)によって時間の経過と共に電流量が減ってくる。
また、第2インバータユニットUでは、第3スイッチ(S)がオフされたことによって、直列共振回路(L−C)−第4スイッチ(S)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL2が循環するようになる(図7,図8を参照)。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流iは下記式2のようになる。
【0038】
(数2)
=iL1−iL2 ・・・(式2)
【0039】
<モード4:区間t〜t
第1インバータユニットUにおいて、図10に示すように、電流iL1がゼロクロスして反転すると、逆並列ダイオード(D)が導通する。すなわち、図9に示すように、直列共振回路(L−C)−逆並列ダイオード(D)−電源(Vin)−IH負荷で形成される閉ループ回路で、電流iL1が反転して電源(Vin)に逆流(回生)する方向に流れるようになる。
第2インバータユニットUでは、区間t〜tの動作モードと同様、直列共振回路(L−C)−第4スイッチ(S)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL2が循環する。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流iは下記式3のようになる。
【0040】
(数3)
=−(iL1+iL2) ・・・(式3)
【0041】
<モード5:区間t〜t
第1インバータユニットUでは、区間t〜tの動作モードと同様、逆並列ダイオード(D)が導通中で、直列共振回路(L−C)−逆並列ダイオード(D)−電源(Vin)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL1が流れる。
第2インバータユニットUでは、図12に示すように、電流iL2がゼロクロスして反転すると、逆並列ダイオード(D)が導通する。すわなち、図11に示すように、直列共振回路(L−C)−IH負荷−逆並列ダイオード(D)で形成される閉ループ回路で電流iL2が循環する。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流iは下記式4のようになる。
【0042】
(数4)
=−iL1+iL2 ・・・(式4)
【0043】
<モード6:区間t〜t
モード5の状態から、第1スイッチ(S)を逆並列ダイオード(D)の導通中にオフに切り替えることで、第1インバータユニットUの状態が変化する。すなわち、第1スイッチ(S)をオフすることにより、第1スイッチング素子(Q)がZCZVSターンオフする。ここで、逆並列ダイオード(D)のリカバリ―電流はZCS促進インダクタLS1の効果により小さい。また、同様に、第1インバータユニットUのZCS促進インダクタLS1によって、第2スイッチング素子(Q)がZCSターンオンする(図13,図14を参照)。
【0044】
<モード7:区間t〜t
第1インバータユニットUでは、直列共振回路(L−C)−第2スイッチ(S)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL1が循環するようになる(図15,図16を参照)。
第2インバータユニットUでは、区間t〜tの動作モードと同様、直列共振回路(L−C)−IH負荷−逆並列ダイオード(D)で形成される閉ループ回路で電流iL2が循環する。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流iは下記式5のようになる。
【0045】
(数5)
=−iL1+iL2 ・・・(式5)
【0046】
<モード8:区間t〜t
モード7の状態から、第4スイッチ(S)を逆並列ダイオード(D)の導通中にオフに切り替えることで、第2インバータユニットUの状態が変化する。すなわち、第4スイッチ(S)をオフすることにより、第4スイッチング素子(Q)がZCZVSターンオフする。ここで、逆並列ダイオード(D)のリカバリ―電流はZCS促進インダクタLS2の効果により小さい。また、第2インバータユニットUのZCS促進インダクタLS2によって、第3スイッチング素子(Q)がZCSターンオンする(図17,図18を参照)。
【0047】
<モード9:区間t〜t
第1インバータユニットUでは、区間t〜tの動作モードと同様、直列共振回路(L−C)−第2スイッチ(S)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL1が循環する。
第2インバータユニットUでは、第3スイッチング素子(Q)がZCSターンオンしたことから、電源(Vin)−第3スイッチ(S)−直列共振回路(L−C)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL2が流れ、電源(Vin)が電力を供給する状態となる(図19,図20を参照)。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流iは下記式6のようになる。
【0048】
(数6)
=−iL1+iL2 ・・・(式6)
【0049】
<モード10:区間t〜t10
第1インバータユニットUにおいて、図22に示すように、電流iL1がゼロクロスして反転すると、逆並列ダイオード(D)が導通する。すなわち、図21に示すように、直列共振回路(L−C)−IH負荷−逆並列ダイオード(D)で形成される閉ループ回路で、電流iL1が反転して循環するようになる。
第2インバータユニットUでは、区間t〜tの動作モードと同様、電源(Vin)−第3スイッチ(S)−直列共振回路(L−C)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL2が流れ、電源(Vin)が電力を供給する状態を保つ。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流iは下記式7のようになる。
【0050】
(数7)
=iL1+iL2 ・・・(式7)
【0051】
<モード11:区間t10〜t11
第1インバータユニットUでは、区間t〜t10の動作モードと同様、直列共振回路(L−C)−IH負荷−逆並列ダイオード(D)で形成される閉ループ回路で、電流iL1が反転して循環する。
第2インバータユニットUでは、図24に示すように、電流iL2がゼロクロスして反転すると、逆並列ダイオード(D)が導通する。すわなち、図23に示すように、直列共振回路(L−C)−逆並列ダイオード(D)−電源(Vin)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL2が循環し、電源(Vin)へ回生される。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流iは下記式8のようになる。
【0052】
(数8)
=iL1−iL2 ・・・(式8)
【0053】
<モード12:区間t11〜t12
モード11の状態から、第2スイッチ(S)を逆並列ダイオード(D)の導通中にオフに切り替えることで、第1インバータユニットUの状態が変化する。すなわち、第2スイッチ(S)をオフすることにより、第2スイッチング素子(Q)がZCZVSターンオフする。ここで、逆並列ダイオード(D)のリカバリ―電流はZCS促進インダクタLS1の効果により小さい。
また、第1インバータユニットUのZCS促進インダクタLS1によって、第1スイッチング素子(Q)がZCSターンオンする(図25,図26を参照)。
【0054】
図27に上述の動作モード1〜12の動作遷移を示す。
【0055】
(インバータの特性)
次に、実施例1の誘導加熱用高周波インバータと特性について説明する。以下では、動作周波数fを100(kHz)としている。
まず、図28に重負荷から軽負荷に対する出力電圧波形および出力電流波形を示す。図28(a)は出力電圧波形を示しており、(b)は出力電流波形を示している。図28に示すように、出力電圧および出力電流の振幅は、重負荷(出力電力P=1.9(kW))では大きく、軽負荷(出力電力P=11(W))では小さくなっていることから、誘導加熱用高周波インバータが出力制御を行っていることが分かる。
【0056】
また、図29に共振インダクタ電流波形と共振コンデンサ電圧波形を示す。図29(a)は軽負荷(出力電力P=11(W),位相差角0.9(deg))におけるもので、上段が共振コンデンサ電圧波形を、下段が共振インダクタ電流波形を示している。図29(b)は重負荷(出力電力P=1.8(kW),位相差角162(deg))におけるもので、上段が共振コンデンサ電圧波形を、下段が共振インダクタ電流波形を示している。図中、VC1,VC2は、それぞれ共振コンデンサCと共振コンデンサCの電圧を示しており、iL1,iL2は、それぞれ共振インダクタLと共振インダクタLの電流を示している。図29に示すように、位相差角の増加に応じて共振インダクタLと共振コンデンサCの動作電圧電流の振幅幅が減少していることが分かる。このことから、共振インダクタLと共振コンデンサCで構成される第1共振タンクと、共振インダクタLと共振コンデンサCで構成される第2共振タンクの接続中点cの状態が互いに干渉していることが分かる。
【0057】
また、図30に重負荷(出力電力P=1.9(kW))および軽負荷(出力電力P=11(W))におけるスイッチング素子Q〜Qの各スイッチング電圧電流波形を示す。重負荷(出力電力P=1.9(kW))の場合、軽負荷(出力電力P=11(W))と比べて、スイッチング素子Q〜Qの各スイッチングの電流変動が小さいことが分かる。
【0058】
また、図31に位相差角制御に対する入力電力および出力電力の制御特性図を示す。図31(1)は位相差角制御に対する入力電力の制御特性を示しており、図31(2)は位相差角制御に対する出力電力の制御特性を示している。動作周波数fを100(kHz)に設定してソフトスイッチング条件下で電流ベクトル位相差を変化させた場合、約50(W)から約2(kW)の実効電力制御が可能であることが確認できた。
すなわち、実施例1の誘導加熱用高周波インバータを用いることにより、重負荷から軽負荷まで広い電力制御が行えることが理解できる。
【0059】
図32は、ZCS促進用インダクタの回路配置パターンを示している。ZCS促進用インダクタは、各インバータユニットにおける電源の正極側あるいは負極側の半導体スイッチと直列接続されており、図32に示すように6種類の配置パターンが存在する。これらの配置パターンのZCS促進用インダクタが設けられることにより、スイッチ素子の切換時の過大電流を防ぐことができ、低スイッチング損失を図ることができる。
図32(1)は、上述の実施例1と同じ回路であり、第1スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第2スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられたインダクタ配置パターンである。図32(2)は、第2スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第4スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられたインダクタ配置パターンである。図32(3)は、第1スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第4スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられたインダクタ配置パターンである。図32(4)は、第2スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第3スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられたインダクタ配置パターンである。図32(5)は、電源にZCS用インダクタ(L)が直列に設けられたインダクタ配置パターンである。
図32(6)は、第1スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第2スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられ、また第2スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第4スイッチ(S)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられたインダクタ配置パターンである。図32(6)の場合、図32(1)〜(5)で用いるインダクタの1/2の小容量のインダクタを用いる。
【実施例2】
【0060】
図33は、実施例2の誘導加熱用高周波インバータの回路構成を示している。実施例2の誘導加熱用高周波インバータは、実施例1の誘導加熱用高周波インバータと比べ、インダクタLS1,LS2の代替として、第2スイッチ(S)と第4スイッチ(S)にそれぞれ並列にコンデンサCS1,CS2を設けたものである。これらのコンデンサCS1,CS2を設けることにより、ゼロボルテージスイッチング(ZVS)を行うことが可能になる。
以下詳細に説明する。図33の第1インバータユニットUにおいて、共振インダクタLとコンデンサCS1による部分共振(スイッチ状態の遷移時の生じる共振現象)を利用して、スイッチング素子Q,QのZVSを実現する。例として、第1スイッチ(S)がオン状態、かつ、第2スイッチ(S)がオフ状態から、ある時刻に第1スイッチ(S)のゲートをオフすると、上記の部分共振により電源電圧Vinまで充電されていた第2スイッチング素子(Q)の端子電圧、すなわち、コンデンサCS1の電圧VQ2は緩やかに(共振状)に下降し始める。これと同時にゲートをオフした第1スイッチング素子(Q)の端子電圧VQ1は、次式のようになる。
【0061】
(数9)
Q1=VIN−VQ2
【0062】
すなわち、第1スイッチング素子(Q)の端子電圧VQ1は、ゼロレベルから緩やかに上昇する。このため、第1スイッチング素子(Q)はゲートをオフしたことにより遮断された電流の急激な下降に反してその端子電圧が緩やかに上昇することから、電圧・電流のオーバーラップ期間が低減されるソフトスイッチング動作となる。これが、ZVSターンオンの原理である。
一方、コンデンサCS1が完全に放電されその電圧VQ2がゼロに達すると、第2スイッチ(S)に逆並列のダイオード(D)が順バイアス状態となり、負荷電流の一部である電流が流れ始めることになる。その間に、第2スイッチ(S)のゲートをトリガすれば、第2スイッチング素子(Q)は、そのアクティブの第2スイッチ部(S)に電流が流れず、また電圧もかかっていない(ダイオードの順方向電圧は、シリコンベースで約0.7ボルトである。このため、電源電圧VINに比べて十分小さい場合は無視できる)状態でのターンオンであるため、ゼロ電圧・ゼロ電流のソフトスイッチングであるZVZCSターンオン動作が実現する。
なお、同様に、スイッチング素子Q,Qに対しては、コンデンサCS2が同様に、ZVS動作を可能とする。
【0063】
実施例1では、2つの共振インダクタ(L,L)と2つの共振コンデンサ(C,C)の共振周波数fより低いスイッチング動作周波数f(<f)で進み電流動作させていたが、実施例2では、共振周波数fより高くスイッチング動作周波数f(>f)を選定する必要がある。これにより、上述のZVZCS動作を得ることができる。すなわち、実施例2は、実施例1の進み電流を伴うZCS動作とは異なり、遅れ電流動作を実現することになる。
【0064】
実施例1では、進み位相の電流がターンしたスイッチに流れ込もうとする。このとき,進み位相であるため,ある値(初期電流値)をもった波形である。ここで、インダクタLS1,LS1の減流作用により、スイッチターンオン電流は初期電流がそのまま流れる急峻な電流波形とはならず、ゼロから緩やかに立ち上がる緩やかな電流波形となる。これにより、スイッチターンオン時は、それと同時に急激に下降する端子電圧と電流の重なりが少ないソフトスイッチングであるZCSターンとなる。
また、そのターンオフは、進み位相電流のためスイッチがオン状態でも自然に電流が反転し、逆並列ダイオードに電流が流れる区間が生まれる。その間にスイッチのゲート信号を取り除く(オフ)すると、スイッチには電流が流れておらず、かつ、ダイオードの順方向電圧が無視できるとすると、スイッチはゼロ電流、かつ、ゼロ電圧のソフトスイッチング動作となる。すなわち、ZCZVSターンオフとなる。
【0065】
以上、説明した実施例1と実施例2の回路では、ソフトスイッチング方式,共振周波数に対するスイッチング周波数の設定等で違いはある。しかしながら、2つの共振タンク回路に流れる電流を合成して負荷電流を得て、合成瞬時電流ベクトルの制御に基づく電力制御である点は共通している。
【実施例3】
【0066】
次に、実施例1や実施例2における瞬時電流ベクトル制御の変形として、それとは双対の瞬時電圧ベクトル制御を実現するものについて実施例3および実施例4で説明する。
図34に、実施例3の誘導加熱用高周波インバータの回路構成図を示す。実施例3の誘導加熱用高周波インバータは、瞬時電圧ベクトル制御ZCS高周波インバータである。
実施例3の誘導加熱用高周波インバータは、実施例1と同様に、第1インバータユニットUと第2インバータユニットUと加熱負荷ユニットを有する。2つのインバータユニットは共に、それぞれIGBTから成る半導体スイッチが直列接続され、かつ、半導体スイッチは、それぞれ並列に逆並列ダイオードが接続されている。
実施例3では、実施例1と比べて加熱負荷ユニットの配置が異なっている。
【0067】
実施例3の誘導加熱用高周波インバータについて、具体的に説明する。
図34に示すように、第1インバータユニットUは、第1スイッチ(S)と第2スイッチ(S)が直列接続され、第1スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)に接続され第1スイッチング素子(Q)が構成され、第2スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)が接続され第2スイッチング素子(Q)が構成されている。そして、第1スイッチング素子(Q)と第2スイッチング素子(Q)の接続中点aには、共振インダクタ(L)と共振コンデンサ(C)が直列接続された第1共振タンク回路が分岐して接続されている。
また、第1スイッチ(S)に直列に、ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタ(L)が設けられている。
【0068】
同様に、第2インバータユニットUは、第3スイッチ(S)と第4スイッチ(S)が直列接続され、第3スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)に接続され第3スイッチング素子(Q)が構成され、第4スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)が接続され第4スイッチング素子(Q)が構成されている。そして、第3スイッチング素子(Q)と第4スイッチング素子(Q)の接続中点bには、共振インダクタ(L)と共振コンデンサ(C)が直列接続された第2共振タンク回路が分岐して接続されている。
また、第3スイッチ(S)に直列に、ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタ(L)が設けられている。
【0069】
第1インバータユニットUと第2インバータユニットUは、互いに並列に接続され、また直流電源Vin(電源電圧をVin(V)とする)に並列に接続されている。そして、互いに並列である第1インバータユニットUと第2インバータユニットUは、第1共振タンク及び第2共振タンクをブリッジとして接続中点cで接続されている。また、接続中点cは直流電源Vinの負極側に接続されている。
【0070】
また、加熱負荷ユニットは、誘導加熱(IH)負荷(負荷抵抗R及び負荷インダクタL)と力率補償用コンデンサ(C)とが直列接続されている。ここで、誘導加熱負荷の負荷抵抗R及び負荷インダクタLは、ワークコイルを流れて加熱対象物に渦電流を誘導させることによりジュール熱を発生させる現象を表わす簡易的な等価回路としてRL直列回路として示している。また、力率補償用コンデンサ(C)は誘導性負荷である加熱ユニットの負荷を補償するために用いられる。加熱負荷ユニットは、第1共振タンクを構成する共振インダクタ(L)と共振コンデンサ(C)の接続中点dと、第2共振タンクを構成する共振インダクタ(L)と共振コンデンサ(C)の接続中点eとの間に、接続されている。
【0071】
実施例3の誘導加熱用高周波インバータは、2つの共振タンクの共振コンデンサ(C,C)の合成瞬時電圧ベクトルを位相差制御することにより、力率補償用コンデンサCを含めた負荷(R−L)に印加される高周波電圧の振幅と位相を高速かつ連続的に変化させることができる。
【0072】
図35に、実施例3の誘導加熱用高周波インバータの回路パラメータを示す。また、図36に、実施例3の誘導加熱用高周波インバータの位相差角−出力電力特性を示す。図36から、位相差角を制御することにより、出力電力を50W〜2400Wまで広範囲に連続的に変化させることができることが確認できる。
図37はスイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =18[deg],P=2.5[kW])、図38はスイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =90[deg], P=1.2[kW])、図39はスイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =162[deg], P=56[W])を示している。
図40に、実施例3の誘導加熱用高周波インバータの各位相差角における出力電圧波形および出力電流波形を示す。ここで、図40(1)が出力電圧波形であり、図40(2)が出力電流波形である。また、図41に共振キャパシタ間電圧波形を、図42に共振インダクタ間電流波形を示す。
【実施例4】
【0073】
図43に、実施例4の誘導加熱用高周波インバータの回路構成図を示す。実施例4の誘導加熱用高周波インバータは、瞬時電圧ベクトル制御ZVS高周波インバータである。
実施例4の誘導加熱用高周波インバータは、実施例2と同様に、第1インバータユニットUと第2インバータユニットUと加熱負荷ユニットを有する。2つのインバータユニットは共に、それぞれIGBTから成る半導体スイッチが直列接続され、かつ、半導体スイッチは、それぞれ並列に逆並列ダイオードが接続されている。
実施例4では、実施例2と比べて加熱負荷ユニットの配置が異なっている。
【0074】
実施例4の誘導加熱用高周波インバータについて、具体的に説明する。
図43に示すように、第1インバータユニットUは、第1スイッチ(S)と第2スイッチ(S)が直列接続され、第1スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)に接続され第1スイッチング素子(Q)が構成され、第2スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)が接続され第2スイッチング素子(Q)が構成されている。そして、第1スイッチング素子(Q)と第2スイッチング素子(Q)の接続中点aには、共振インダクタ(L)と共振コンデンサ(C)が直列接続された第1共振タンク回路が分岐して接続されている。
また、第2スイッチ(S)に並列に、ゼロボルテージスイッチング(ZVS)用コンデンサ(C)が設けられている。
【0075】
同様に、第2インバータユニットUは、第3スイッチ(S)と第4スイッチ(S)が直列接続され、第3スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)に接続され第3スイッチング素子(Q)が構成され、第4スイッチ(S)に並列に逆並列ダイオード(D)が接続され第4スイッチング素子(Q)が構成されている。そして、第3スイッチング素子(Q)と第4スイッチング素子(Q)の接続中点bには、共振インダクタ(L)と共振コンデンサ(C)が直列接続された第2共振タンク回路が分岐して接続されている。
また、第4スイッチ(S)に並列に、ゼロボルテージスイッチング(ZVS)用コンデンサ(C)が設けられている。
【0076】
第1インバータユニットUと第2インバータユニットUは、互いに並列に接続され、また直流電源Vin(電源電圧をVin(V)とする)に並列に接続されている。そして、互いに並列である第1インバータユニットUと第2インバータユニットUは、第1共振タンク及び第2共振タンクをブリッジとして接続中点cで接続されている。また、接続中点cは直流電源Vinの負極側に接続されている。
【0077】
また、加熱負荷ユニットは、誘導加熱(IH)負荷(負荷抵抗R及び負荷インダクタL)と力率補償用コンデンサ(C)とが直列接続されている。ここで、誘導加熱負荷の負荷抵抗R及び負荷インダクタLは、ワークコイルを流れて加熱対象物に渦電流を誘導させることによりジュール熱を発生させる現象を表わす簡易的な等価回路としてRL直列回路として示している。また、力率補償用コンデンサ(C)は誘導性負荷である加熱ユニットの負荷を補償するために用いられる。加熱負荷ユニットは、第1共振タンクを構成する共振インダクタ(L)と共振コンデンサ(C)の接続中点dと、第2共振タンクを構成する共振インダクタ(L)と共振コンデンサ(C)の接続中点eとの間に、接続されている。
【0078】
実施例4の誘導加熱用高周波インバータは、2つの共振タンクの共振コンデンサ(C,C)の合成瞬時電圧ベクトルを位相差制御することにより、力率補償用コンデンサCを含めた負荷(R−L)に印加される高周波電圧の振幅と位相を高速かつ連続的に変化させることができる。
【0079】
図44に、実施例4の誘導加熱用高周波インバータの回路パラメータを示す。また、図45に、実施例4の誘導加熱用高周波インバータの位相差角−出力電力特性を示す。図45から、位相差角を制御することにより、出力電力を50W〜2400Wまで広範囲に連続的に変化させることができることが確認できる。
図46はスイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =18[deg],P=2.4[kW])、図47はスイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =90[deg], P=1.2[kW])、図48はスイッチング素子(Q〜Q)の波形図(Φ =162[deg], P=56[W])を示している。
図49に、実施例4の誘導加熱用高周波インバータの各位相差角における出力電圧波形および出力電流波形を示す。ここで、図49(1)が出力電圧波形であり、図49(2)が出力電流波形である。また、図50に共振キャパシタ間電圧波形を、図51に共振インダクタ間電流波形を示す。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の誘導加熱用高周波インバータは、電磁調理器(誘導加熱調理器)、水蒸気を含む流体加熱装置、動力的強力超音波発生装置(超音波洗浄機,超音波ホモジナイザーなど)、超音波溶接機、レーザープリンタなど、高周波交流電流を要する電気機器や電気設備に有用である。
【符号の説明】
【0081】
,U インバータユニット
〜S スイッチ
〜D 逆並列ダイオード
,L 共振インダクタ
,C 共振コンデンサ
力率補償用コンデンサ
S,S1,LS2 ZCS用インダクタ
,CS1,CS2 ZVS用共振ロスレススナバコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチと第2スイッチを直列接続し、第1スイッチ及び第2スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第1スイッチと第2スイッチの第1接続中点から分岐して接続された第1共振タンク回路とを備えた第1インバータユニットと、
第3スイッチと第4スイッチを直列接続し、第3スイッチ及び第4スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第3スイッチと第4スイッチの第2接続中点から分岐して接続された第2共振タンク回路とを備えた第2インバータユニットと、
負荷抵抗、負荷インダクタ及び力率補償用コンデンサが直列接続された加熱負荷ユニットと、
を備え、
上記の第1インバータユニットと第2インバータユニットを互いに並列に接続して直流電源に並列接続すると共に、第1共振タンク及び第2共振タンクを介して第1接続中点と第2接続中点を接続し、
第1共振タンクと第2共振タンクの第3接続中点と、上記の直流電源の負極側との間に、上記の加熱負荷ユニットを接続し、
第1接続中点と第2接続中点から流れ出る電流の合成瞬時電流ベクトルを位相差角制御し、加熱負荷ユニットに流れる出力電流を制御し、出力電力を高速かつ連続的に可変し得る、
ことを特徴とする誘導加熱用高周波インバータ。

【請求項2】
第1スイッチと第2スイッチを直列接続し、第1スイッチ及び第2スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第1スイッチと第2スイッチの第1接続中点から分岐して接続された第1共振タンク回路とを備えた第1インバータユニットと、
第3スイッチと第4スイッチを直列接続し、第3スイッチ及び第4スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第3スイッチと第4スイッチの第2接続中点から分岐して接続された第2共振タンク回路とを備えた第2インバータユニットと、
負荷抵抗、負荷インダクタ及び力率補償用コンデンサが直列接続された加熱負荷ユニットと、
を備え、
上記の第1インバータユニットと第2インバータユニットを互いに並列に接続して直流電源に並列接続すると共に、第1共振タンク及び第2共振タンクを介して第1接続中点と第2接続中点を接続し、
第1共振タンクと第2共振タンクの第3接続中点と直流電源の負極側を接続し、
第1共振タンクおよび第2共振タンク共に、共振インダクタと共振コンデンサが直列に接続されたもので、第3接続中点側にそれぞれの共振コンデンサが配置され、
第1共振タンクおよび第2共振タンクの共振インダクタと共振コンデンサの接続中点どうしの間に、上記の加熱負荷ユニットを接続し、
第1共振タンクと第2共振タンクのそれぞれの共振コンデンサの電圧の合成瞬時電圧ベクトルを位相差制御し、加熱負荷ユニットに印加される高周波電圧の振幅と位相を高速かつ連続的に可変し得る、
ことを特徴とする誘導加熱用高周波インバータ。

【請求項3】
下記(1)〜(5)のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱用高周波インバータ。
(1)第1インバータユニットの第1スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第3スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(2)第1インバータユニットの第2スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第4スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(3)第1インバータユニットの第1スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第4スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(4)第1インバータユニットの第2スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第3スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(5)直流電源と直列にゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。

【請求項4】
同容量の4つのゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが、
それぞれ、第1インバータユニットの第1スイッチと直列に接続され、第2インバータユニットの第3スイッチと直列に接続され、第1インバータユニットの第2スイッチと直列に接続され、第2インバータユニットの第4スイッチと直列に接続された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱用高周波インバータ。

【請求項5】
上記の第1インバータユニットの第2スイッチと並列に第1ゼロボルテージスイッチング(ZVS)用共振ロスレススナバコンデンサが接続され、
上記の第2インバータユニットの第4スイッチと並列に第2ゼロボルテージスイッチング(ZVS)用共振ロスレススナバコンデンサが接続された
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱用高周波インバータ。

【請求項6】
2つの半導体スイッチとそれぞれの半導体スイッチに並列に逆並列ダイオードを接続し、半導体スイッチ間の接続中点から分岐して接続された共振タンクを備えた1組のインバータユニットと、
誘導加熱負荷及び力率改善機能を有する加熱負荷ユニットと、
前記インバータユニットにおける各々の半導体スイッチのゼロカレントスイッチング(ZCS)促進手段あるいはゼロボルテージスイッチング(ZVS)促進手段と、
を備え、
1組のインバータユニットを互いに並列に接続して直流電源に並列接続すると共に、それぞれの共振タンクを介して各々の接続中点どうしを接続し、
2つの共振タンクの接続中点と直流電源の負極側との間に、加熱負荷ユニットを接続し、各々の半導体スイッチ間の接続中点から流れ出る電流の合成瞬時電流ベクトルを位相差角制御し、加熱負荷ユニットに流れる出力電流を制御し、出力電力を高速かつ連続的に可変し得る、
ことを特徴とする誘導加熱用高周波インバータ。

【請求項7】
2つの半導体スイッチとそれぞれの半導体スイッチに並列に逆並列ダイオードを接続し、半導体スイッチ間の接続中点から分岐して接続された共振タンクを備えた1組のインバータユニットと、
誘導加熱負荷及び力率改善機能を有する加熱負荷ユニットと、
前記インバータユニットにおける各々の半導体スイッチのゼロカレントスイッチング(ZCS)促進手段あるいはゼロボルテージスイッチング(ZVS)促進手段と、
を備え、
1組のインバータユニットを互いに並列に接続して直流電源に並列接続すると共に、それぞれの共振タンクを介して各々の接続中点どうしを接続し、
2つの共振タンクの接続中点と直流電源の負極側とを接続し、
各共振タンクは共振インダクタと共振コンデンサが直列に接続されたもので、共振タンクの接続中点側にそれぞれの共振コンデンサが配置され、
共振タンクの共振インダクタと共振コンデンサの接続中点どうしの間に、上記の加熱負荷ユニットを接続し、
2つの共振タンクのそれぞれの共振コンデンサの電圧の合成瞬時電圧ベクトルを位相差制御し、加熱負荷ユニットに印加される高周波電圧の振幅と位相を高速かつ連続的に可変し得る、
ことを特徴とする誘導加熱用高周波インバータ。

【請求項8】
前記ゼロカレントスイッチング(ZCS)促進手段は、
各インバータユニットにおける電源の正極側あるいは負極側の半導体スイッチと直列接続されたインダクタである、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の誘導加熱用高周波インバータ。

【請求項9】
前記ゼロボルテージスイッチング(ZVS)促進手段は、
各インバータユニットにおける電源の負極側の半導体スイッチと並列接続されたコンデンサで
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の誘導加熱用高周波インバータ。

【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の誘導加熱用高周波インバータの制御方法であって、
(1)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第2スイッチがオフされた後あるいは同時に第1スイッチがオンされるステップと、
(2)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第3スイッチがオフされた後あるいは同時に第4スイッチがオンされるステップと、
(3)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第1スイッチがオフされた後あるいは同時に第2スイッチがオンされるステップと、
(4)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第4スイッチがオフされた後あるいは同時に第3スイッチがオンされるステップと、
を含む誘導加熱用高周波インバータの制御方法。

【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の誘導加熱用高周波インバータのスイッチのゲート制御プログラムであって、
コンピュータに、
(1)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第2スイッチがオフされた後あるいは同時に第1スイッチがオンされるステップと、
(2)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第3スイッチがオフされた後あるいは同時に第4スイッチがオンされるステップと、
(3)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第1スイッチがオフされた後あるいは同時に第2スイッチがオンされるステップと、
(4)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第4スイッチがオフされた後あるいは同時に第3スイッチがオンされるステップと、
を実行させるための制御プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【公開番号】特開2013−115017(P2013−115017A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263151(P2011−263151)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】