説明

誘導性システム

互いに直列に結合されたプリントコイルの形をした第一の部分(11,12)及び非プリントコイルの形をした第二の部分(12,22)を有する誘導性システム(1,2)は、比較的大きなインダクタンスを有し、それでも比較的小さなサイズでありうる。非プリントコイルはエアコイルを有する。誘導性システム(1,2)の全インダクタンスは、プリントコイル(11,12)のインダクタンスと、エアコイルのインダクタンスと、プリントコイル(11,12)とエアコイルとの間の重なり領域に依存する相互インダクタンスとを足し合わせたものにほぼ等しい。両コイル(11,12)をコンパクトに結合するように、非プリントコイル(12)の一端は、プリントコイル(11)の中心端に結合され、非プリントコイル(12)の他方の端及びプリントコイル(11)の外端は、誘導性システム(1)の端を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導性システムと、誘導性システムを有するプリント回路基板と、誘導性システムを有するフィルタを有するチューナーと、誘導性システムの製造方法とに関する。
【0002】
このような誘導性システムの一例は、コイルやチップインダクタ等である。例えば、チューナーは、テレビジョン受信機の一部を形成する。
【背景技術】
【0003】
従来の誘導性システムは、米国特許出願US6,163,300(特許文献1参照。)から知られる。特許文献1は、その図2においてチップインダクタを、その図6において螺旋コイルを、図17から19においてパターンコイルを開示する。
【0004】
テレビジョン受信機のチューナーでは、比較的大きなインダクタンスを有する誘導性システムが必要とされる。このような比較的大きなインダクタンスをプリント回路基板上に実装された螺旋コイルにより実現する場合には、この螺旋コイルは、相対的に大きな物理的サイズとなる。これはプリント回路基板上の他の部品のための空間をより狭め、あるいは、プリント回路基板はそのサイズを相対的に大きくされなければならない。このような比較的大きなインダクタンスをプリント回路基板内に印刷されたパターンコイルにより実現する場合には、このパターンコイルは、相対的に大きな物理的サイズとなる。これはプリント回路基板内の他の部品のための空間を狭め、あるいは、プリント回路基板はそのサイズを相対的に大きくされなければならない。
【0005】
既知の誘導性システムは、特に、比較的大きさインダクタンスに対しては、相対的に大きなサイズとなるために不利である。
【特許文献1】米国特許出願US6,163,300
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特に、比較的大きなインダクタンスに対して比較的小さなサイズである誘導性システムを提供することである。
【0007】
本発明の更なる目的は、特に、比較的大きなインダクタンスに対して比較的小さなサイズである誘導性システムを有するプリント回路基板を提供すること、比較的大きなインダクタンスに対して比較的小さなサイズである誘導性システムを有するフィルタを有するチューナーを提供すること、及び比較的大きなインダクタンスに対して比較的小さなサイズである誘導性システムを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による誘導性システムは、少なくとも一つのトラック幅及び少なくとも一つの巻き幅の間隔によって決められた巻き数を有するプリントコイルの形をした第一の部分と、非プリントコイルの形をした第二の部分とを有し、前記プリントコイル及び前記非プリントコイルは、直列に結合されている。
【0009】
プリントコイル(例えば、パターンコイル等のような。)及び非プリントコイル(例えば、チップインダクタ等のような。)を直列に結合することによって、両コイルのインダクタンスは、加算されることができ、結果として、比較的大きなインダクタンスを有する誘導性システムが得られる。従って、両コイルは、誘導性システムのインダクタンスを夫々の個々のコイルの夫々のインダクタンスよりも大きくするために、直列に結合される。第一の部分は、印刷されて、プリント回路基板内に配置され、第二の部分は、印刷されずに、プリント回路基板上に実装されているので、誘導性システムは、能率的に有効な空間を使用し、比較的小さなサイズとなる。
【0010】
留意すべきは、米国特許出願US6,307,440B1がプリント回路基板内のパターンコイルと、プリント回路基板上に実装された空心コイルとを有する誘導性システムを開示することである。しかし、これらのコイルは、プリント回路基板に対して空心コイルの角度を調整することにより発振回路の発振周波数を調整するように、並列に結合されている。両コイルは、夫々、一巻きの半分又はそれ以上の巻き数、及び一巻きより少ない巻き数を有し、従って、少なくとも一つの巻き幅の間隔によっては決められない。これは、巻き幅の間隔が一巻きよりも多い巻き数を有するコイルを必要とするからである。従って、この誘導システムは、直列に結合されたコイルを有さず、誘導性システムのインダクタンスを個々のコイルの個々のインダクタンスよりも大きくするように設計、適応又は配置を成されていない。
【0011】
本発明による誘導性システムの第一の実施例は、請求項2により定義される。少なくとも一つの金属線直径及び少なくとも一つのコイル直径によって決められた更なる巻き数を有するエアコイルにより非プリントコイルを実現することにより、非プリントコイルは、更なる部品及び/又はプリント回路基板の更なる部分に磁気的に結合されることができる。
【0012】
本発明による誘導性システムの第二の実施例は、請求項3により定義される。当該誘導性システムの全インダクタンスは、前記プリントコイルのインダクタンスと、前記エアコイルのインダクタンスと、相互インダクタンスとを足し合わせたものにほぼ等しい。従って、誘導性システムのインダクタンスは、相互インダクタンスの記号に依存して、両コイルのインダクタンスの合計よりも大きくされることができる。
【0013】
本発明による誘導性システムの第三の実施例は、請求項4により定義される。前記相互インダクタンスの値は、右巻きのエアコイル又は左巻きのエアコイルと時計回り方向のプリントコイル又は反時計回り方向のプリントコイルとを結合することによって、及び前記エアコイルの長さを選択することによって選ばれており、前記プリントコイルと前記エアコイルとの間の最大重なり領域が到達されるまで、前記エアコイルの長さと共に増大する。
【0014】
本発明による誘導性システムの第四の実施例は、請求項5により定義される。更なる設計選択肢を生み出すように、前記巻き数は、更に、中心軌道の直径と、回転方向(時計回り又は反時計回り)とによって決められ、前記更なる巻き数は、更に、回転指向(右巻き又は左巻き)によって決められる。
【0015】
本発明による誘導性システムの第五の実施例は、請求項6により定義される。前記非プリントコイルの一端は、前記プリントコイルの中心端に結合され、前記非プリントコイルの他方の端及び前記プリントコイルの外端は、当該誘導性システムの端を構成すると共に、両コイルは、コンパクトに結合されている。
【0016】
本発明による誘導性システムの第六の実施例は、請求項7により定義される。前記プリントコイルは、更なる設計選択肢を生み出すように、プリント回路基板の内層又は外層に印刷されることができ、使用される層の種類は、誘導性システムの機能性にほとんど影響を及ぼさない。
【0017】
本発明の適用範囲から外れることなく、プリントコイルは円筒形、長方形、六角形等であっても良く、エアコイルは円筒形、長方形、六角形等であっても良い。従って、語「巻き」は、円状の巻き方の一種、長方形状の巻き方の一種、六角形状の巻き方の一種等であっても良い。
【0018】
本発明によるプリント回路基板、本発明によるチューナー及び本発明による方法の実施例は、本発明による誘導性システムの実施例に対応する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、特に、大きなプリントコイル及び大きな非プリントコイルが回避されるべきであるという見識に基づき、特に、両方の種類のコイルがそれらを直列に結合することによって効果的に一体化されうるという基本的な考えに基づく。
【0020】
本発明は、特に、比較的大きなインダクタンスに対して、比較的小さなサイズである誘導性システムを提供するという問題を解決し、特に、有効な空間が能率的に使用される点で有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の上記及び他の特徴について下記実施例を参照して説明し、明らかにする。
【0022】
図1に示された本発明による誘導性システム1は、プリント回路基板13の上に印刷されたプリントコイル11と、プリント回路基板13の上に実装されたエアコイル12とを有する。両コイル11、12は、直列に結合されており、エアコイル12の一端は、プリントコイル11の中心端に結合され、エアコイル12の他の端及びプリントコイル11の外端は、誘導性システム1の両端を形成する。
【0023】
図2に示された本発明による誘導性システム2は、プリント回路基板23の上に印刷されたプリントコイル21と、プリント回路基板23の上に実装されたエアコイル22とを有する。両コイル21、22は、直列に結合されており、エアコイル22の一端は、プリントコイル21の外端に結合され、エアコイル22の他の端及びプリントコイル21の内端は、誘導性システム2の両端を形成する。
【0024】
図3に示された本発明によるチューナー3は、アンテナ又はケーブル又は衛星受信機等に結合されるべきアンテナ入力部31を有する。アンテナ入力部31は、フィルタ32の入力に結合されている。このフィルタ32の出力は、増幅器33の入力に結合されている。この増幅器33の出力は、バンドパスフィルタ34の入力に結合されており、このバンドパスフィルタ34の出力は、混合器35の入力等に結合されている。フィルタ32は、フィルタ32の入力と出力との間に結合されたコイル36を有する。フィルタ32は、フィルタ32の出力と接地との間に結合されたコイル37と、コイル37に並列に結合され、可変キャパシタ38及びキャパシタ39を有する直列回路とを更に有する。この直列回路の共通点は、チューニング目的のために可変キャパシタ38を調整する制御電圧を受信するための制御入力に抵抗器40を介して結合されている。コイル36及び37の夫々一つは、図1又は2に示されているような誘導性システム1又は2と対応しても良い。また、バンドパスフィルタ34が誘導性システム1又は2を有しても良い。
【0025】
図4に示されているようなプリントコイル11及びエアコイル12の平面図は、半径(R)を有するプリントコイル11と、コイル直径(D)及び長さ(L)を有するエアコイル12とを有する。重なり領域50、51、52は、0.5×L×R×sin(φ)に等しい表面積を有する第一の三角形50と、0.5×(R×αに等しい表面積を有する円の一部51と、0.5×R×sin(θ)に等しい表面積を有する第二の三角形52とを有する。
【0026】
プリントコイル11は、少なくとも一つのトラック幅(w)及び少なくとも一つの巻き幅の間隔(s)によって決められた巻き数(n)を有する。エアコイル12は、少なくとも一つの金属線直径(W)及び少なくとも一つのコイル直径(D)によって決められた更なる巻き数(T)を有する。巻き数(n)は、更に、中心軌道の直径(R)及び回転方向(時計回り又は反時計回りであるd)によって決められ、更なる巻き数(T)は、更に、回転指向(左又は右であるO)によって決められる。中心軌道の直径(R)は、最も内側の軌道の直径に一致し、半径(R)は、最も外側の軌道の直径の半分に一致する。誘導性システム1の全インダクタンスは、プリントコイル11のインダクタンスと、エアコイル12のインダクタンスと、相互インダクタンスとを足し合わせたものにほぼ等しい。相互インダクタンスの値は、右巻きのエアコイル又は左巻きのエアコイルと時計回りのプリントコイル又は反時計回りのプリントコイルとを結合することによって、及びエアコイル12の長さ(L)を選択することによって選ばれ、相互インダクタンスは、プリントコイル11とエアコイル12との間の最大重なり領域(50、51、52)が到達されるまで、エアコイル12の長さ(L)と共に増大する。相互インダクタンスは、時計回り方向に巻かれたプリントコイル11に結合された右巻きのエアコイル12に対して、及び反時計回り方向に巻かれたプリントコイル11に結合された左巻きエアコイル12に対して、相対的に大きく負となる。エアコイル及びプリントコイルの他の組合せに関しては、相互インダクタンスは、比較的少ない巻き数(T)を有するエアコイルに対しては僅かに負であり、更なる巻き数(T)を有するエアコイルに対してはいよいよ正となる。相互インダクタンスは、プリントコイル11に対して使用される層の種類(内層又は外層)とは比較的無関係である。
【0027】
プリントコイル11のインダクタンスは、エッチング精度及び誘電率等のようなプリント回路基板の要素における広がりが余計な影響を受けることを回避するように、例えば、誘導性システム1のインダクタンスの多くとも3分の1であるべきである。100MHz帯で使用される場合には、エアコイル12は、約200nHのインダクタンス及び約100のクオリティ・ファクタQを有しても良く、プリントコイル11は、約150nHのインダクタンス及び約65のクオリティ・ファクタQを有して良く、誘導性システムは、約350nHのインダクタンス及び約84のクオリティ・ファクタQを有する。
【0028】
本発明の適用範囲から外れることなく、プリントコイル11、21は、円筒形、長方形、六角形等であっても良く、エアコイル12、22は、円筒形、長方形、六角形当であっても良い。従って、語「巻き」は、円状の巻き方の一種、長方形状の巻き方の一種、六角形状の巻き方の一種等であっても良い。
【0029】
例えば「Aのための」及び「Bのための」いった言い回し「ための」は、「Cのための」他の機能が同じく、同時に、又はそうではなく実行されることを認めないわけではない。「Yに結合されたX」及び「XとYとの間の結合」及び「X及びYを結合する」等の言い回しは、要素ZがXとYとの間にあることを認めないわけではない。「PはQを有する」及び「Qを有するP」等の言い回しは、要素Rが同じく含まれることを認めないわけではない。
【0030】
留意すべきは、上記実施例は本発明を限定するのではなくて説明しており、当業者が添付の特許請求の範囲の適用範囲から外れることなく多くの代わりの実施例を設計することが可能であることである。特許請求の範囲において、括弧内に置かれた如何なる参照符号も、請求項を限定するように解釈されるべきではない。動詞「有する」及びその活用形の使用は、請求項に挙げられている以外の要素又はステップの存在を認めないわけではない。要素の前の冠詞「一つの」は、このような要素の複数個の存在を認めないわけではない。ある手段が相互に異なる従属請求項で列挙されているという単なる事実は、これら手段の組合せが有利に使用されえないことを示しているわけではない。
【0031】
本発明は、特に、大きなプリントコイル及び大きな非プリントコイルが回避されるべきであるという見識に基づき、特に、両方の種類のコイルがそれらを直列に結合することによって効果的に一体化されうるという基本的な考えに基づく。
【0032】
本発明は、特に、比較的大きなインダクタンスに対して、比較的小さなサイズである誘導性システムを提供するという問題を解決し、特に、有効な空間が能率的に使用される点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による誘導性システムをブロック図で示す。
【図2】本発明による他の誘導性システムをブロック図で示す。
【図3】本発明によるチューナーをブロック図で示す。
【図4】プリントコイル及びエアコイルの平面図を概略で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのトラック幅及び少なくとも一つの巻き幅の間隔によって決められた巻き数を有するプリントコイルの形をした第一の部分と、
非プリントコイルの形をした第二の部分とを有し、
前記プリントコイル及び前記非プリントコイルは、直列に結合されていることを特徴とする誘導性システム。
【請求項2】
前記非プリントコイルは、少なくとも一つの金属線直径及び少なくとも一つのコイル直径によって決められた更なる巻き数を有するエアコイルを有することを特徴とする、請求項1記載の誘導性システム。
【請求項3】
当該誘導性システムの全インダクタンスは、前記プリントコイルのインダクタンスと、前記エアコイルのインダクタンスと、相互インダクタンスとを足し合わせたものにほぼ等しいことを特徴とする、請求項2記載の誘導性システム。
【請求項4】
前記相互インダクタンスの値は、右巻きのエアコイル又は左巻きのエアコイルと時計回り方向のプリントコイル又は反時計回り方向のプリントコイルとを結合することによって、及び前記エアコイルの長さを選択することによって選ばれており、
前記相互インダクタンスは、前記プリントコイルと前記エアコイルとの間の最大重なり領域が到達されるまで、前記エアコイルの長さと共に増大することを特徴とする、請求項3記載の誘導性システム。
【請求項5】
前記巻き数は、更に、中心軌道の直径と、回転方向とによって決められ、
前記更なる巻き数は、更に、回転指向によって決められることを特徴とする、請求項2記載の誘導性システム。
【請求項6】
前記非プリントコイルの一端は、前記プリントコイルの中心端に結合され、
前記非プリントコイルの他方の端及び前記プリントコイルの外端は、当該誘導性システムの端を構成することを特徴とする、請求項1記載の誘導性システム。
【請求項7】
前記プリントコイルは、プリント回路基板の内層又は外層に印刷されていることを特徴とする、請求項1記載の誘導性システム。
【請求項8】
少なくとも一つのトラック幅及び少なくとも一つの巻き幅の間隔によって決められた巻き数を有するプリントコイルの形をした第一の部分と、非プリントコイルの形をした第二の部分とを有する誘導性システムを有し、
前記プリントコイル及び前記非プリントコイルは、直列に結合され、
前記プリントコイルは、当該プリント回路基板の内層又は外層に印刷されていることを特徴とするプリント回路基板。
【請求項9】
少なくとも一つのトラック幅及び少なくとも一つの巻き幅の間隔によって決められた巻き数を有するプリントコイルの形をした第一の部分と、非プリントコイルの形をした第二の部分とを有する誘導性システムを有するフィルタを有し、
前記プリントコイル及び前記非プリントコイルは、直列に結合されていることを特徴とするチューナー。
【請求項10】
誘導性システムを作り、
少なくとも一つのトラック幅及び少なくとも一つの巻き幅の間隔によって決められた巻き数を有するプリントコイルの形をした第一の部分を作るステップと、
非プリントコイルの形をした第二の部分を作るステップと、
前記プリントコイル及び前記非プリントコイルを直列に結合するステップとを有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−519218(P2007−519218A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518423(P2006−518423)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051021
【国際公開番号】WO2005/006357
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】