説明

誘導発熱ローラ装置

【課題】 ローラ本体との熱交換効率を低減することなく、ローラ本体の肉厚内に形成した流体通流孔のヘッドロスを低減するとともに、ローラ本体の円筒プロファイルを良好に維持することができるようにすること。
【解決手段】 円筒状のローラ本体1と、ローラ本体1の中空内に配置された誘導コイル3を有する磁束発生機構とを備えた誘導発熱ローラ装置であって、前記ローラ本体1の軸方向の両側端部の肉厚内に、周方向に沿う環状の流体通流孔1cを形成するとともに、両側の環状の流体通流孔1cに連通する蛇行状(又は螺旋状)の流体通流孔1bをローラ本体1の周方向に複数本形成し、環状の流体通流孔1cおよび複数の流体通流孔1bに並列的に冷却流体を通流してローラ本体1の温度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラ本体に流体通流孔を形成した誘導発熱ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムなどの処理物をローラ本体に当接して通過させる間に処理物を所定の温度に加熱する手段として誘導発熱ローラを使用する場合がある。この場合、誘導発熱ローラは処理物を所定の温度に高めるためには適切であるが、高温の処理物から奪熱して所定の温度にまで急速に低下させることはできない。そこで、誘導発熱ローラにおいてもこの奪熱が行えるように、ローラ本体に流体(熱媒体)を通流する流体通流路を形成し、ローラ本体が必要以上に加熱された場合に、この流体通流路に冷却流体を通流してローラ本体を冷却し、これによりローラ本体を所定の温度に調整することが考えられている。
【0003】
ローラ本体に流体通流路を形成する手段として、ローラ本体の肉厚内に一本の螺旋状の熱媒体通流孔を形成するものがある。このような一本の螺旋状の熱媒体通流孔は、その孔径を小さくしピッチ(螺旋孔間隔)を狭くしている。これによりローラ本体の肉厚内を通流する熱媒体とローラの接触面を広くすることができ、ローラ本体との熱交換効率を高めることができる。
【特許文献1】特開2007−107676号公報
【0004】
しかし、このような螺旋孔では、ローラ本体の大型化にともないローラ本体の端部から端部に至る距離が長くなり、また、螺旋孔の径が小さいことと相俟って、ヘッドロス(圧損)が大きく、流体供給力を高める必要がある。また、出入り口の温度勾配が大きく、ローラ本体の出入り口間で膨張差が発生し円筒プロファイルが劣るといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ローラ本体との熱交換効率を低減することなく、ローラ本体の肉厚内に形成した流体通流孔のヘッドロスを低減するとともに、ローラ本体の円筒プロファイルを良好に維持することができるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、円筒状のローラ本体と、前記ローラ本体の中空内に配置された誘導コイルを有する磁束発生機構とを備え、前記誘導コイルに交流電流を通電することにより前記ローラ本体を発熱してなる誘導発熱ローラ装置において、前記ローラ本体の軸方向の両側端部の肉厚内に、該ローラ本体の周方向に沿う環状の流体通流孔を形成するとともに、前記両側の環状の流体通流孔に連通する蛇行状または螺旋状の流体通流孔を該ローラ本体の周方向に複数形成し、前記環状の流体通流孔および前記複数の流体通流孔に冷却流体を通流して前記ローラ本体の温度を調整してなることを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、両側の環状の流体通流孔に連通する蛇行状または螺旋状の流体通流孔を該ローラ本体の周方向に複数形成しているので、1本の流体通流孔の延べ距離が短くなり、流体通流孔によるヘッドロスを低減することができるとともに、流体通流孔の出入り口の温度勾配が小さく、ローラ本体の円筒プロファイルも良好になる。また、流体通流孔を蛇行状または螺旋状にしているので、流体とローラの接触面を広くすることができ、処理物との高い熱交換効率を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ローラ本体との熱交換効率を低減することなく、ローラ本体の肉厚内に形成した流体通流孔のヘッドロスを低減するとともに、ローラ本体の円筒プロファイルを良好に維持することができるようにする目的を、ローラ本体の軸方向の両側端部の肉厚内に、ローラ本体の周方向に沿う環状の流体通流孔を形成するとともに、その両側の環状の流体通流孔に連通する流体通流孔を蛇行状または螺旋状にし、これをローラ本体の周方向に複数形成することにより実現した。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の実施例に係る誘導発熱ローラ装置の断面図、図2は図1に示す誘導発熱ローラ装置のローラ本体の展開平面図である。図1および図2において、1はローラ本体、2はローラ本体の端部に固定したジャーナル、3は誘導コイル、4は鉄心、5は支持ロッド、6はロータリジョイント、7は誘導コイルの引出し導線である。鉄心4に巻装した誘導コイル3からなる磁束発生機構は、支持ロッド5に保持され、ローラ本体1の中空内に配置されている。支持ロッド5は、両側のジャーナル2内で回転軸受けを介してジャーナルに支持されており、図示しない回り止めで回転不能に固定されている。
【0010】
誘導コイル3に引出し導線7を経て交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束はローラ本体1を通過し、これによりローラ本体1に誘導電流が誘起してローラ本体1はその誘起電流でジュール発熱して加熱される。この加熱は、誘導コイル3の中央部で大きく端部に至るほど小さくなり、ローラ本体1の軸方向に加熱斑が発生する。この加熱斑を防止するためにローラ本体1の外表面近傍の肉厚内に軸方向に伸びるジャケット室1aを設け、このジャケット室1aに気液二相の熱媒体を封入している。ジャケット室1aの液相の熱媒体は高温部で熱を奪って気化し、その気体は低温部に移動して熱を放出して液化する。即ち潜熱移動する。この潜熱移動によりローラ本体1の軸方向の処理物が当接する外側表面の温度を均一化することができる。なお、ジャケット室1aは、ローラ本体1にドリルなどによって軸方向に伸びる孔を周方向に複数形成し、その複数の各孔の両端を閉塞して1孔ごと独立に形成する場合も、また、複数のうちの所定数または全部の各孔の端部または中間部または端部と中間部で連通させて形成する場合もある。
【0011】
ローラ本体1には、高温から所定の温度にまで低下させるなどのローラ本体1の温度を調整するために、図2(a)に示すようにローラ本体1の軸方向の両側端部の肉厚内に、ローラ本体1の周方向に沿う環状の流体通流孔1cを形成し、この両側の環状の流体通流孔1cに連通する蛇行状の流体通流孔1bが形成されている。このようなローラ本体1は、平板状の非磁性金属板に環状の流体通流孔1cおよび蛇行状の流体通流孔1bとなる凹溝を形成し、その凹溝の開口部を図2(b)に示すように、金属板8で覆い、これを円筒状に成形して作製される。
【0012】
そして、ローラ本体1の軸方向の両側端部の肉厚内に形成した一方の環状の流体通流孔1cと一方のロータリジョイント6に連通する一方のジャーナル2内の通流孔2aと連通させ、また、ローラ本体1の軸方向の両側端部の肉厚内に形成した他方の環状の流体通流孔1cと他方のロータリジョイント6に連通する他方のジャーナル2内の通流孔2aと連通させる。すなわち、一方のロータリジョイント6から供給した熱媒体となる流体は、ジャーナル2内の通流孔2aを経由して一方の環状の流体通流孔1cに送られ、複数の各蛇行状の流体通流孔1bを経由し、他方の環状の流体通流孔1cに送られ、他方のジャーナル2内の通流孔2aを経由して他方のロータリジョイントから排出される。
【実施例2】
【0013】
図3は、本発明の他の実施例に係る誘導発熱ローラ装置の断面図、図4は図3に示す誘導発熱ローラ装置のローラ本体の展開平面図である。なお、図1に示す実施例と同一部分には同一の符号を付し、その部分の説明は省略する。図1に示す実施例と異なる部分は、ローラ本体1の軸方向の両側端部の肉厚内に形成した環状の流体通流孔1cと連通する複数の流体通流孔1d1〜1d3をそれぞれ螺旋状に形成した点である。
【0014】
このようなローラ本体1は、図4に示すように平板状の金属板の両側の端部に環状の流体通流孔1cとなる孔1cをドリルなどで形成し、その孔1cに対して傾斜する所定の間隔を隔てた複数の孔1d1〜1d3、孔1cと交差するときにはその孔1cを終点とする孔をドリルなどで形成し、これを円筒状に成形して作製される。この円筒状に成形するに際し、孔1d1、1d2、1d3はそれぞれ連通して、一端が一方の環状の流体通流孔1cに連通し、他端が他方の環状の流体通流孔1cに連通する3本の螺旋状の流体通流孔1d1〜1d3が形成される。
【0015】
そして、ローラ本体1の軸方向の両側端部の肉厚内に形成した一方の環状の流体通流孔1cと一方のロータリジョイント6に連通する一方のジャーナル2内の通流孔2aと連通させ、また、ローラ本体1の軸方向の両側端部の肉厚内に形成した他方の環状の流体通流孔1cと他方のロータリジョイント6に連通する他方のジャーナル2内の通流孔2aと連通させる。すなわち、一方のロータリジョイント6から供給した流体は、ジャーナル2内の通流孔2aを経由して一方の環状の流体通流孔1cに送られ、複数の各螺旋状の流体通流孔1d1、1d2、1d3を経由し、他方の環状の流体通流孔1cに送られ、他方のジャーナル2内の通流孔2aを経由して他方のロータリジョイントから排出される。
【0016】
以上、いずれの実施例においても、流体通流孔径をたとえば10mm程度と小さくし、また、間隔を20mm程度と狭くし、これによりローラ本体の肉厚内を通流する流体とローラの接触面を広くすることができ、ローラ本体との熱交換効率を高めることができる。また、実施例では流体通流孔を3本としているが、流体通流孔の本数は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る誘導発熱ローラ装置の断面図である。
【図2】図1に示す誘導発熱ローラ装置のローラ本体の展開平面図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る誘導発熱ローラ装置の断面図である。
【図4】図3に示す誘導発熱ローラ装置のローラ本体の展開平面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ローラ本体
1a ジャケット
1b 蛇行状の流体通流孔
1c 環状の流体通流孔
1d1、1d2、1d3 螺旋状の流体通流孔
2 ジャーナル
3 誘導コイル
4 鉄心
5 支持ロッド
6 ロータリジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のローラ本体と、前記ローラ本体の中空内に配置された誘導コイルを有する磁束発生機構とを備え、前記誘導コイルに交流電流を通電することにより前記ローラ本体を発熱してなる誘導発熱ローラ装置において、前記ローラ本体の軸方向の両側端部の肉厚内に、該ローラ本体の周方向に沿う環状の流体通流孔を形成するとともに、前記両側の環状の流体通流孔に連通する蛇行状または螺旋状の流体通流孔を該ローラ本体の周方向に複数形成し、前記環状の流体通流孔および前記複数の流体通流孔に冷却流体を通流して前記ローラ本体の温度を調整してなることを特徴とする誘導発熱ローラ装置。
【請求項2】
ローラ本体の肉厚内部に、該ローラ本体の軸方向に伸びる気液二相の熱媒体を封入するジャケット室を該ローラ本体の周方向に形成してなることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体通流ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−283159(P2009−283159A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131492(P2008−131492)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】