説明

誘導過剰活性遺伝子および相補遺伝子を含む操作された細胞系をベースとする新規タンパク質インヒビターのためのスクリーン

本発明はa)サンプルを細胞と接触させる工程(該細胞はi)標的細胞に影響を及ぼす遺伝
子において誘導致死的的過剰活性突然変異、およびii)第二遺伝子中の突然変異(標的タンパク質の活性は細胞に必須であり、その第二遺伝子中の突然変異は標的タンパク質の活性の低下を機能的に補償する)を含む)、b)致死的的過剰活性突然変異を誘導する工程、続いてc)該サンプルの存在下そして非存在下で細胞の生存度を比較することによりタンパク質抑制を評価する工程を含むことを特徴とする、サンプル中の標的タンパク質のタンパク質インヒビターの存在を同定する方法を提供する。また、前記方法における使用のための細胞が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二つの別々の遺伝子に影響する突然変異を含む細胞を使用するアッセイによる新規タンパク質インヒビター(好ましくは抗生物質)の同定方法に関する。第一の突然変異は、好ましくはDNA複製の過剰開始を生じる、誘導可能な(または条件による)致死的
過剰活性突然変異である。タンパク質インヒビターは、致死的過剰活性突然変異によりコードされる遺伝子産物の機能(例えば、活性)を抑制し、それにより細胞の特徴的な致死的過剰活性を解消する、そうした能力により同定される。第二の突然変異は選択的/補償メカニズム、例えば、別のDNA開始経路を与え、それによりタンパク質インヒビターが、
致死的過剰活性突然変異によりコードされた遺伝子産物の機能(例えば、活性)を、細胞が生存し得ないレベルまで強く抑制するのに充分に強力である場合に細胞が生存することを可能にすることによってアッセイの感度を増大する。そのアッセイにおける使用のための細胞、特に細菌もまた提供される。
【背景技術】
【0002】
タンパク質インヒビター〔これらは異なる方法で機能してタンパク質を“抑制”し得る(例えば、その合成またはその活性を抑制することにより)〕は、病気と闘うための薬物として広く使用される。疾患は、ある種のオンコジーン、例えば、乳癌におけるHER2/neu、rasオンコジーンおよびmycオンコジーンの過剰発現が悪性疾患の発生と関係している多数の癌の場合のように、当該タンパク質の過剰発現または過剰活性により引き起こされることがある。過剰発現は過剰活性を生じることがあり、または過剰活性は突然変異から生じることがある。オンコジーンタンパク質は往々にして、細胞成長の調節に重要である経路、例えば、シグナリング経路の成分である。タンパク質が疾患症状の原因または進行に必要であると一旦示されると、そのタンパク質を“標的”とし、そのタンパク質の疾患関与機能を阻止するように作用する薬物を見つけようと試みることが望ましい。
【0003】
疾患はまた感染症、例えば、真菌類感染症または細菌感染症であり得る。このような疾患は抗生物質を用いて闘病されることがあり、これらは感染症が新しいタンパク質を感染された細胞に導入する際に“標的”タンパク質の機能を抑制するように再度作用する。感染されなかった宿主細胞中に見られないこれらのタンパク質は標的タンパク質であり得る。
【0004】
感染性疾患は世界中の死亡の重大な原因であり、このようなものとして、感染症に対抗して作用するために有益である新規薬剤が必要とされる。しかしながら、特に抗生物質の過剰使用が抗生物質耐性の現象をもたらし、この場合、抗生物質が微生物に対し有効ではなくなり、それ故、新規かつ改良された抗生物質を開発することが極めて重要である。現在使用されている抗生物質とは化学的に異なる抗生物質を同定することが特に重要である。ある種の抗生物質に対し抗生物質耐性を示す微生物は、構造的にもまた機能的にも異なるものよりも、化学的に関係するものに対して一層耐性を示すことはあり得ることである。それ故、それらの構造ではなく、それらの機能に基づいて同定される新規の抗菌性化合物が特に有益であるかもしれない。既知の抗生物質が存在しない標的に対して作用する抗生物質の開発がまた特に重要である。
【0005】
現在の抗生物質標的として、タンパク質合成に関係する酵素および膜トランスポーターまたは細胞壁成分が挙げられる。現在これらの標的は幾つかの方法で同定される。利用できる核酸配列データの膨大な増加が、配列データの比較に基づいて、ある機能をあるタンパク質に帰属する能力の増大をもたらした。しかしながら、利用できるデータの本当の量
がこれを困難にし、細菌ゲノム中の遺伝子の約25〜40%が、片割れの既知遺伝子とのマッチを有しないであろう(Smith D.R. (1996) Trends Biotechnology 8: 290-3)。加えて
、二つの遺伝子が配列相同性を共有するという事実は、それらが構造上似ていることを常に意味するとは限らない。
【0006】
薬物標的(抗生物質についてまたはその他の疾患に対して、を問わず)は、理想的には下記の性質を有するべきである:それらは病原体または疾患が生存し、成長し、または作用するのに必要とされなければならず;抗生物質標的、または坑病原性標的に関して、標的タンパク質が治療すべきヒト、または哺乳類において不在であり、あるいは異なることがまた有益であり;かつ闘病されている種間における薬物標的の構造保存の程度が高いことが好ましい。現在まで、DNA複製機構を標的とする薬物は同定されていなかった。
【0007】
標的タンパク質が一旦同定されると、その機能(症状または病原体中を問わない)を抑制または阻害するように作用し得る化合物を同定することが必要である。阻害性化合物のスクリーニングの方法(これらは以前労力を要し、時間を費した)は、何百または更には何千の化合物が同時に、または並行して試験し得る高処理量のスクリーニングを可能にする技術により改良されてきた。
【0008】
一般に、抗生物質またはその他のタンパク質インヒビターを同定するためのこのようなスクリーンは、“ネガティブ”スクリーンである。これらのスクリーンでは、タンパク質インヒビターは、細胞集団に試験物質の適用した(その時に、細胞集団が生存度の低下を示す)後に同定される。これは、上で概説された標的の性質の一つとは、それが当該病原体の絶え間ない成長および増殖に必須だということであるとの事実から起こる。この必須の機能を干渉することが細胞生存度に影響する。
【0009】
かくしてほとんどのスクリーニング技術は、標的の機能の廃止、例えばそれを含み、必要とする細胞の死滅またはその成長低下から続く負の結果に頼る。このアプローチは幾つかの不利に悩まされている。幾つかの異なるアッセイが、逐次にまたは並行して行なわれ、細胞生存度について観察された効果が標的タンパク質に特異的であることを確かめる必要がある。該効果、例えば、細胞死滅だけが見られるという事実は、その効果が標的タンパク質についての効果によりひき起こされることを確かめるのには充分ではない。試験物質が異なる標的タンパク質に影響したかもしれず、あるいはその効果が特定の標的タンパク質に全く無関係であるという一般的な効果であるかもしれない。こうして、このようなネガティブスクリーンは時間を浪費し、多くのアッセイを実施しないで結果を得ることは可能ではない。
【0010】
陽性の結果または成果、例えば、そうしないと成長することができない変異体細胞の増長された細胞成長または生存に依存する、タンパク質インヒビターについてのアッセイまたはスクリーンを有することは有利であろう。このようなポジティブスクリーンが有利である。何となれば、それらがネガティブスクリーンと関係する諸問題、例えば、細胞死の高いバックグラウンドレベル、または潜在的なインヒビターの特定の作用に起因しないかもしれず、その他の理由のためであるかもしれない成長欠如といった問題の多くを回避するからである。このようなポジティブスクリーンは当業界で現在知られていない。本発明はこのような試験をここに提供する。
【0011】
致死的過剰活性変異体は一つ以上の突然変異を含む変異体であり、その結果、生産または発現された特別な遺伝子産物の活性は、野生型生物または“突然変異されなかった”遺伝子産物(即ち、致死的過剰活性突然変異の導入前の遺伝子産物−遺伝子産物が致死的過剰活性と関係しないその他の突然変異を有してもよいということが排除されない)と較べてより大きい。これは遺伝子産物それ自体の活性、発現もしくは生産のそのレベル、また
はその活性の調節(例えば、調節分子の発現および/または活性の増大または減少による)における相違のためであるかもしれない。こうして致死的過剰活性変異体は、関係する遺伝子産物の“機能性”が増大されるものと考えられるかもしれない。この遺伝子産物の活性(または“機能性”)の増大は、変異体細胞の生存および/または成長に有害である。かくして、遺伝子産物は致死的であり、あるいはその活性が或るレベル(例えば、突然変異の前の“通常の”レベル、または天然もしくは野生型のレベル)を超える時に、具体的にはそれが“過剰活性”である時に、生物の成長および/または生存に対して有意な負の効果を有するいずれの産物であり得る。このような過剰活性は、上記のように例えば、増大された発現または減少された分解のため、あるいは増大され、もしくは延長された活性による、遺伝子産物の量もしくは含量、またはレベルの上昇を含む、種々の方法で達成されるかもしれない。それゆえ、このような変異体はポジティブスクリーンに有益である。しかしながら、このような突然変異は自然界に稀であり、発生し難いことがある。
【0012】
DnaAは細菌で染色体複製を開始させる真正細菌タンパク質である(KornbergおよびBaker 1992, DNA replication, W.H. Freeman)。染色体複製のサイクルが調節されるのはこ
の段階である。DNA複製はまた特異な染色体配列、OriC複製起点の存在に依存する。OriC
およびDnaAの両方が複製の成功裏の開始に必要とされ、これらの二つの成分が核タンパク質複合体を形成する。DnaAタンパク質の約20〜40のモノマーが、OriC-DnaA複合体中に存
在する。ATP結合DnaAがDNA二重らせんに巻き戻しを開始させ、こうしてDNAポリメラーゼIIIホロ酵素による相補的鎖(strand)の合成前に、DnaBヘリカーゼが巻き戻しを延すことを可能にする(SkarstadおよびBoye, Biochim. Biophys. Acta, 1994, 1217, 111-130;Katayamaら, Molecular Microbiology, 2001, 41(1), 9-17に論評されている)。
【0013】
原核生物および真核生物におけるDNA複製の開始は、細胞サイクルにおけるその重要性
のために、幾つかのメカニズムにより高度に調節されている。過度の開始事態は最終的に細胞死滅をもたらす。
【0014】
高活性の開始を生じる突然変異の一例はDnaAcosであり、これはE. coli中で同定された突然変異である(Kellenberger-Gujerら, Molec. Gen. Genet. 162, 9-16, 1978; およびKatayamaら (1994), Journal of Biological Chemistry, 269(17), 12698-12703)。この変異体は、温度感受性のDnaAts46変異体から温度耐性サプレッサーとして単離された。DnaAts46は良く特性決定がなされたE. coli変異体であり、これは上昇した温度(42℃)で
不活性であるDnaAタンパク質を発現し、高温で複製を開始することができない変異体株を生じる(Kohiyama, Cold Spr. Harb. Symp. Quant. Biol. 33, 312-324 (1968); Hirota
ら, J. Molec. Biol. 53, 369-387 (1970))。
【0015】
DnaAcos変異体は、下記の諸性質を有することが知られている。最初に、その成長は低
温感受性であり、それは通常42℃で成長するが、これらの細胞が30℃の制限的温度で成長するように一旦シフトされると、染色体DNAの複製が直ちに過剰開始する。DnaAcosはdnaAts46のサプレッサー変異体として同定され、即ちそれはdnaAts46表現型を抑制し、遺伝子内サプレッサー変異体に相当する。サプレッサー突然変異(Q156LおよびY271H)は、dnaA遺伝子における塩基置換から生じる(Hansenら, 1992, Mol. Gen. Gent., 234, 15-21, SkarstadおよびBoye, 1994, Biochim Biophys Acta, 1217, 111-130, Kellenbergen-Gujerら, 1978, Mol. Gen. Genet., 162, 9-16)。
【0016】
dnaAcosの低温感受性は野生型dnaA対立遺伝子に対して優性であり、制限的温度で見ら
れる過剰開始はde novoタンパク質合成とは独立している。重要なことに、この変異体中
のDnaAタンパク質量に増加がなく、その変異体表現型は、増大され、かつ/または延長されたDnaA活性に依存すると考えられる。変異体による開始は繰り返して生じるため、変異体DnaAcosタンパク質の開始応答能がどういうわけか、例えばコンホメーション変化によ
り維持されることが示唆されていた。
【0017】
変異体における過剰開始のメカニズムは充分に理解されていないが、DnaAcosタンパク
質が精製され、in vitroで特性決定されていた(Katayamaら, 1995, Mol. Microbiol., 18, 813-820)。それはDnaA結合配列に対する親和性を持続し、一本鎖DNAへのDnaBヘリカ
ーゼのローディング(loading)に機能する。精製された野生型DnaAタンパク質は、ATPおよびADPを結合する。しかしながら、DnaAcosタンパク質はヌクレオチドを結合することができない。野生型ATP-DnaAは複製開始に活性であり、一方、野生型ADP-DnaAは不活性である(Sekimizuら, 1987, Cell, 50, 259-265)。ADP-DnaAへの野生型ATP-DnaAの加水分解
はDnaAを不活化してその機能を調節し、このことは、複製フォーク(replcation fork)
が既に開始された起点の再開を阻止する途上にあるやいなや、これが起こる(Boyeら, 2000, EMBO Rep. 1, 479-483)。DnaAcosタンパク質は、常に“ターン・オン(turn-on)”されているDnaAタンパク質の“調節されていない”形態であると考えられ、それゆえ、低温(30℃)で過度のDNA複製をひき起こす。高温(42℃)では、そのタンパク質は明らか
に部分的に不活性であり、過剰開始が制限温度に比べて軽減され、それゆえ、細胞が生存することを説明する。
【0018】
DnaAcosに類似し、またはその性質(例えば、温度感受性複製を示す)を有する、例え
ば、低温(例えば、30℃)における複製の過剰抑制を示す他のDnaA変異体が開発されており、または開発されているかもしれない。一つのこのような変異体は本明細書の実施例に使用されるDnaA219である。
【0019】
その他の原核生物または真核生物もしくは古細菌(Archaea)におけるDnaAおよびこのタ
ンパク質の同族体は、タンパク質インヒビターの標的の例に相当する。何となれば、それがE. coliにとり必須のタンパク質であり、また異なる細菌種間で高度に保存されるから
である。その他のDNA複製イニシエータータンパク質(真核生物、原核生物または古細菌
を問わない)が、またタンパク質インヒビター標的に相当し得る。
【0020】
96種からの104配列の比較において、DnaAは高度に保存された一次配列を有することが
示され、見られる15αらせんおよび9βストランド全部の配置は、該配列の93%を超えている(WeigelおよびMesser 2002, www.molgen.mpg.de/〜messer)。更に、酵母、例えば
、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のCdc6およびOrcイニシエー
タータンパク質は、DnaAに対し顕著な構造上の類似性を示し、かくして真核生物標的タンパク質を表す(Erzbergerら (2002) EMBOJ 21: 4763-73, Liuら, (2000) Mol. Cell. 6:637-48)。
【0021】
標的タンパク質の過剰活性変異体、例えば、DNA複製を過剰開始するDnaA変異体は、潜
在的な新規タンパク質インヒビターについてアッセイするのに使用し得る。標的タンパク質(例えば、DnaA)の機能に干渉するあらゆるタンパク質インヒビターは、過剰開の量を減少させ、それによってかかるタンパク質インヒビターが存在しない場合のそれらの成長と較べれれば、変異体細胞の集団の成長を増大するであろう。しかしながら、このようなアッセイは通常のレベルまたは通常に近いレベルまでの(即ち、野生型DnaA活性または致死的過剰活性(“cos”)突然変異の導入前のDnaAタンパク質(つまり、致死的過剰突然
変異が導入される“起源”もしくは“起点”または“親の”タンパク質)の活性に匹敵するレベルまでの)弱いタンパク質インヒビター、即ち、DnaA活性を低下するだけのものの検出を可能にするだけであり、その結果、細胞が生存するのに充分なDnaA活性があるが、そのDnaA活性は細胞の死滅をもたらす、過剰開始を生じるのには充分に高くない。このようなスクリーンは、標的タンパク質、例えば、DnaAレベルを著しく低下させ、細胞をDNA
複製開始の欠如のために死滅させる強力タンパク質インヒビターのサンプル中での存在と、細胞を過剰開始のために死滅させるいずれのインヒビターもサンプル中に存在しないこ
ととの間で区別がなされることを可能にしないことがわかる。類似の状況がその他の標的タンパク質、およびそれらの致死的過剰活性変異体について考えられる。
【0022】
本明細書に使用される“突然変異”はヌクレオチド配列中の変化を表し、“変異体”はこのような突然変異を含む遺伝子もしくは遺伝子産物、または細胞を表す。
こうして、“ポジティブ”スクリーン、即ち、タンパク質インヒビターの存在が減少ではなく、細胞生存度の増大により示されるスクリーンの使用を可能にする突然変異が同定される場合でさえも、このようなスクリーンが効力の充分な範囲にわたってタンパク質インヒビターを同定するのに常に適しているとは限らないことがわかる。この事実と組み合わせて、それらの増大された活性のために細胞死滅を生じさせる致死的過剰活性変異体、例えば、DnaAcos(またはその他のDNA複製イニシエータータンパク質における類似の過剰活性突然変異)が相対的に稀なことは、タンパク質インヒビターについて有効なポジティブスクリーンを考案する方法が直ちには明らかではなく、または直接的ではなかったことを意味する。
【0023】
この型のスクリーンの有効性ひいては同定し得るインヒビターの範囲を増大するために、本発明者らは、第一の(即ち、致死的過剰活性)突然変異を含む細胞における第二の突然変異の使用が、試験サンプル中の強力タンパク質インヒビターの存在によりひき起こされ得る標的の致死的過剰活性突然変異タンパク質活性のひどい低下を補償するメカニズムを同定した。この第二の突然変異は正常な細胞成長または第一の突然変異の致死的過剰活性に影響しないが、その存在が試験サンプル中の強力タンパク質インヒビターの存在によりひき起こされる標的タンパク質活性のひどい低下を補償する。かくして第二の突然変異は、標的タンパク質活性のひどい低下または完全な低下から試験株を救出または救済する。この方法で、本発明者らはタンパク質インヒビターについて、信頼でき、かつ有効なポジティブスクリーンまたはアッセイを得ることができた。
【0024】
E. coliのrnh遺伝子はRNaseHをコードする。この酵素はDNA:RNAハイブリッドにおけるRNAを開裂し、それにより分解するように機能する。こうして、例えば、その遺伝子の突然変異または欠失によるrnhの機能的不活化を含む細胞は、存続するRNA:DNAハイブリッドを含み、このようなハイブリッドの存在は、複製開始がDnaAと独立に、かつ染色体起点OriCと独立に起こることを可能にする。かくして、複製の開始がこれらのRNA:DNAハイブリッ
ドから起こり、これらは機能性RNaseH酵素を含む細胞中で存続しない。このようにして複製の開始はOriCまたはDnaAを必要とせず、充分に活性な野生型開始系の非存在下で進行する。例えば、部分的に機能性のrnh変異体が、OriCを使用することができない変異体の成
長を可能にすることが知られている(TayaおよびCrouch, 1991, Mol. Gen. Genet., 227:
433-437; Kogomaおよびvon Meyenburg, 1983, EMBO J. 2: 463-8)。
【0025】
二つの突然変異、DnaAcosおよびE. coli(または実際にはその他の生物)中のrnh欠失
の組み合わせは従来得られていなかった。
これらの二つの突然変異を含む細胞(例えば、細胞の集団)が増殖するために、致死的過剰活性変異体は“誘導性”であるべきであり、即ち、特別な条件のみで“ターンオン”もしくは“スイッチオン”または発現され得るべきであり、その結果、その発現が調節されるであろうし、またはその表現型が誘導された状態にある時にのみ見られる。細胞は致死的過剰活性が誘導されない条件下で培養される(例えば、細胞集団が培養液中で拡大され、維持される)。そこでアッセイは致死的過剰活性が誘導される条件下で行なわれる。このことは、例えば、突然変異された遺伝子が誘導プロモーターの制御下に置かれることを必要とするかもしれず、あるいは突然変異が温度もしくは低温感受性突然変異、例えば、DnaAcos、またはその他の条件的突然変異であってもよい。
【0026】
こうして従来技術の方法は、タンパク質インヒビターおよび抗生物質についてのポジテ
ィブスクリーンを記載することを欠いており、インヒビターの充分な範囲の検出を可能にすることを欠いている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0027】
こうして、一局面において、本発明は標的タンパク質のタンパク質インヒビター、好ましくは特異的なタンパク質インヒビターの同定(例えば、試験サンプル中のタンパク質インヒビターの存在の同定)方法を提供し、該方法は
a) 前記インヒビター(または前記インヒビターを含む試験サンプル)を細胞(例えば、細胞集団)と接触させる工程〔前記細胞(例えば、細胞集団)は標的タンパク質に影響する遺伝子(例えば、コードする遺伝子)(“第一遺伝子”)における誘導性の致死的過剰活性突然変異ならびに第二遺伝子における突然変異(標的タンパク質の活性は細胞に必須であり、その第二遺伝子における突然変異は第一遺伝子の産物(例えば、標的タンパク質)の活性低下を機能的に補償する)を含む〕、
b) 致死的過剰活性突然変異を誘導する工程、続いて
c) 前記インヒビター(または試験サンプル)の存在下そして非存在下で細胞(例えば、細胞集団)の生存度を比較することによりタンパク質抑制を評価する工程
を含む。
【0028】
かくして、本発明の方法は所望する標的タンパク質のタンパク質インヒビター、例えば、新規タンパク質インヒビターについてのアッセイを提供することがわかる。こうしてその方法は、新規タンパク質インヒビター(これは新規の化合物または物体の両方を含む)についてスクリーンするのに(またはそのスクリーンとして)、または既存もしくは既知の化合物もしくは物体の新規タンパク質インヒビター活性を同定し、もしくはそれについてスクリーニングするのに使用し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
“タンパク質インヒビター”は、標的タンパク質の通常機能を阻止または低下させることができるあらゆる化合物または物体を意味し、該タンパク質の機能を直接または間接に減少させることができる全ての物体または物質を含む。これはタンパク質の転写、翻訳、翻訳後修飾、活性または活性の調節に影響することにより得られてもよい。タンパク質の活性が影響されることが好ましく、更に特別には、標的タンパク質が特別な活性を示す(例えば、その機能を媒介する)機能性タンパク質である。こうして、標的タンパク質は酵素または結合タンパク質であってもよく、その抑制が標的タンパク質の酵素活性または結合活性を抑制することにより得られてもよい。このことは酵素の活性部位または結合タンパク質の結合部位、もしくはそのタンパク質の別の部位と相互作用し、かつ/または干渉することにより、該タンパク質の正確な折り畳みに干渉または阻止することにより直接得られてもよく、その結果、そのタンパク質が機能することができず、例えば、それがその基質もしくは結合パートナーを認識することができず、あるいはその化学反応もしくは結合反応に関係する重要なアミノ酸残基が、正確にその配置がなされない。“結合タンパク質”は、細胞(例えば、あらゆる細胞物体)中の分子または物質を結合することができる何らかのタンパク質であってもよい。結合タンパク質はこのような細胞物体を特異的に結合することができることが好ましい。結合タンパク質は結合により、または結合を通して機能性効果(例えば、結合により媒介される機能性効果)を与えてもよく、またはそれは機能性物体(即ち、細胞中で機能を行なう物体)を結合してもよい。同様に、標的タンパク質はあらゆる種類のエフェクタータンパク質であってもよく、これは、例えば、細胞中の別の成分と相互作用することにより細胞において機能性効果を有し、タンパク質インヒビターがそのタンパク質の機能性効果を抑制してもよい。
【0030】
その抑制は通常活性の70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%または
1%未満をもたらしてもよい。その活性が完全になくされ、残留タンパク質活性が残らないことが好ましい。
【0031】
“標的タンパク質”は細胞に必須であるあらゆるタンパク質であってもよい。更に特別には、標的タンパク質は細胞の成長および/または生存に必須であるあらゆるタンパク質であってもよい。こうして、それは生命体の細胞プロセス、例えば、細胞の成長および/または生存に必須の細胞プロセスと関係するタンパク質であってもよい。これに関して、このようなタンパク質はそのプロセスに必須であることが理解されるであろう。例えば、標的タンパク質は生合成プロセスまたは反応、例えば、核酸(細胞において生じ得るDNA
およびRNAの全ての形態を含む)およびタンパク質の合成だけでなく、細胞中に生じ得る
その他の分子の合成を含む、細胞産物または生物分子もしくは中間体の合成と関連し、または関係するタンパク質であってもよい。かくして、標的タンパク質はDNAの複製(DNA合成)、RNAの合成(例えば、mRNAへのDNAの転写、mRNAの翻訳)およびタンパク質の合成だけでなく、その他の細胞の、または生物的反応またはプロセスに関係し得る。標的タンパク質はあらゆるこのような細胞プロセスまたは反応の開始と関連するタンパク質、例えば、DNA複製またはタンパク質合成のイニシエーターであってもよい。DNA複製イニシエータータンパク質、特に原核生物、特に細菌、特にE. coli中のこのようなDNA複製イニシエータータンパク質が好ましい。
【0032】
このような場合、第一遺伝子における致死的過剰活性突然変異は、かくして増大されたDNA複製、特に致死的レベルでの増大されたDNA複製をもたらす。第二の突然変異は、DNA
複製のための代替メカニズムもしくは経路を与えることにより、DNA複製活性の低下また
は喪失(試験下のタンパク質-インヒビターによる抑制のための)を補償する(即ち、第
二の突然変異は、増大されたDNA複製、または第二の突然変異の非存在下で生じないDNA複製をもたらす)。
【0033】
その抑制は直接測定されないが、それがアッセイの変異体細胞を該細胞の生存および/または成長に対する致死的過剰活性突然変異の効果から開放する点で、むしろ機能的に測定される。それゆえ、標的タンパク質の抑制は細胞集団数を評価すること(例えば、測定すること)により測定し得る。正の結果、即ち、タンパク質インヒビターの存在は細胞成長の測定可能または検出可能な増大、例えば、細胞成長の統計上有意な増大、例えば、適当な手段、例えば、細胞培養液(例えば、成長培地)の吸収の増大もしくは光学密度、例えば、OD450の増大を測定することにより分光光度法により、あるいはタンパク質もしく
はその他の細胞成分についての他の分光光度法アッセイまたは比色アッセイにより測定されるような、細胞成長の少なくとも10倍、20倍、30倍、50倍または100倍の増大により示
される。成長はあらゆる便利な方法または所望の方法で検出されてもよい。こうして、更なる例として、細胞(例えば、細菌の)コロニーがカウントされてもよく、またはそれ以外に数えられてもよい。
【0034】
“特異的”タンパク質インヒビターは、該インヒビターが致死的過剰活性突然変異により影響されるタンパク質またはタンパク質のクラスのみに、または優先的もしくは選択的に作用し、その他の構造上または機能上、関係がないタンパク質またはタンパク質のクラスの機能に影響しないことを意味する。かくして“特異的”とは、標的タンパク質が由来する種、またはタンパク質のクラスのことを表すことがわかるかもしれない。こうして、特異的インヒビターは異なるタンパク質間を区別することができ、致死的過剰活性突然変異により影響されるタンパク質の機能が抑制される場合にそのアッセイのみで検出されるであろう。特異的タンパク質インヒビターが、好ましくは該タンパク質の活性または機能を低下させるであろう。
【0035】
タンパク質インヒビターは別のタンパク質、またはペプチド、低分子、例えば、小有機
分子、抗体、リボザイム、アンチセンスRNAまたはDNA、あるいは基質の類似体等であってもよい。したがってタンパク質インヒビターはあらゆる化学物体であってもよい。タンパク質インヒビターは抗生物質であることが好ましい。抗生物質は天然由来または合成であってもよく、天然由来抗生物質の誘導体または化学的に合成された変形型であってもよい。
【0036】
本明細書に使用される“接触させる”は、インヒビター(または試験サンプルの成分)が細胞に入り(例えば、細胞膜および/または細胞壁に侵入し)、標的タンパク質と直接または間接に相互作用し、かつ/または干渉することを可能にするように、インヒビター(または試験サンプル)と細胞(例えば、細胞集団)の間の好適な接触を与えることを表す。したがって、インヒビター/試験サンプルは、例えば、それを細胞または細胞を含む媒体、例えば、細胞の培地もしくは培養液に加えることにより細胞と単に接触させられてもよい。都合良くは、細胞はインヒビター/試験サンプルが導入され、または加えられる液体媒体中で成長(または培養もしくは管理)されてもよい。また、細胞はインヒビター/試験サンプルが導入され、または加えられる固体媒体(例えば、培養皿もしくは容器またはプレート)上もしくは中に含まれてもよい。
【0037】
細胞に適用される“試験サンプル”は、あらゆるサンプル、例えば、試験インヒビター物質(即ち、試験すべきタンパク質インヒビター)からなり、またはそれを含むあらゆるサンプル、例えば、純粋なサンプルであってもよく、または純粋なサンプルのプールまたは、例えば、コンビナトリアル化学により調製された化学ライブラリーに相当してもよい。
【0038】
サンプルは既知の成分および/または特性決定されていない成分を含んでもよい。特性決定されていない化合物を含むサンプルがタンパク質インヒビターを含むことがわかると、そのサンプルはクロマトグラフィー(例えば、HPLC、薄層クロマトグラフィー、FPLC、ゲル濾過、脱塩等)のような当業界で知られている標準的な技術を使用して分別されてもよく、次いで得られるフラクションまたは分離物がこのアッセイで試験サンプルとして利用できるかもしれない。この方法で、サンプルの大きいプールを比較的少ないアッセイでスクリーンし、更に新規成分または特性決定されていない成分を含むサンプルを、最初に諸成分を精製しないでスクリーンすることが可能である。また、純粋なサンプルをアッセイに投与することが可能である。こうして、試験サンプルはあらゆる都合の良い方法で用意された、純粋または不純な物質のあらゆるサンプルであってもよく、例えば、それは試験物質それ自体であってもよく、あるいはそれは試験物質(その試験物質それ自体が純粋または不純であってもよい)および担体または希釈剤、例えば、適当な媒体を含む組成物であってもよい。それは粗製剤または精製され、もしくは部分精製された製剤であってもよい。
【0039】
試験サンプルは合成成分または天然産成分を含んでもよい。天然産成分は、例えば、微生物、例えば、細菌または真菌類により分泌されてもよく、極めて広範な化学的多様性を与える。こうして、試験物質は細胞に入り得るあらゆる物質であってもよい。よってそれは複雑な分子および簡単な分子、例えば、有機分子または無機分子の両方を含むあらゆる化学的性質のものであってもよい。
【0040】
もし試験物質が細胞に非効率的に入り、または外向きフラックスポンプにより細胞から排出される場合、試験細胞はこれを補償するように修飾されてもよい。透過性の株が生成され、使用されてもよく、または既知の外向きフラックスポンプの遺伝子が突然変異され、かつ/または欠失され、または機能的に不活化されてもよい。これは通常の技術を使用して行なわれる。
【0041】
試験サンプルは幾つかの異なる濃度で平行に、または逐次に細胞の異なるアリコートに適用されてもよい。しかしながら、単一濃度のみがスクリーンの感度のために、試験サンプル当り必要とされて、タンパク質インヒビターが存在するか否かを確かめることが好ましい。
【0042】
アッセイに使用される一種以上の細胞は、好ましくは細胞集団、特に好ましくはクローン由来の集団(これらの個々の細胞は遺伝的に同じである)であろう。一種以上の細胞は二つの突然変異された遺伝子(即ち、致死的過剰活性突然変異を有する第一の突然変異された遺伝子および第二の“補償性の”突然変異された遺伝子)を含むであろう。突然変異は遺伝子に導入されてもよく、または変異体遺伝子が、あらゆる都合の良い方法または所望の方法で、導入されてもよい。細胞は突然変異された遺伝子を用いてトランスフェクトもしくは形質転換または形質導入されていてもよく、あるいは遺伝子が当業界で知られているその他の標準的な分子生物学技術を使用して導入されていてもよい。
【0043】
また、突然変異は通常の突然変異誘発(これは指向的にもしくは非指向的、例えば、ランダムなものであってもよい)および、例えば、復帰突然変異体(revertant)、サプレ
ッサーまたは変異体の同定による選択技術を使用して発生されていてもよい。例えば、dnaA(ts)の低温感受性サプレッサー、例えば、DnaACosが、スクリーニング方法により同定
されてもよい。例えば、温度感受性変異体細胞(これはタンパク質が高温(制限温度)で正常に機能し得ないようなタンパク質における突然変異を含む)が開始点として使用し得る。サプレッサーは、標準的技術を使用する通常の方法または突然変異誘発により生成されてもよい。このような変異体が、例えば、低温感受性である場合、この性質は実際には不活性ではなくて、タンパク質の過剰活性から生じるかもしれない。この方法で、致死的過剰活性変異体を同定することが可能である。
【0044】
前記細胞は真正細菌細胞および古細菌細胞だけでなく、植物細胞、菌類細胞または動物細胞、例えば、細菌細胞、哺乳類細胞または酵母細胞(例えば、サッカロミセス種、例えば、S.セレビシエまたはS.ポンベ)を含む、あらゆる細胞、例えば、原核生物細胞または真核生物細胞であってもよい。細胞は細菌細胞であることが好ましく、細胞はE. coli細
胞であることが更に好ましい。
【0045】
最も好ましい実施態様において、細胞(好ましくは細菌細胞)は、DnaAにおける致死的過剰活性突然変異ならびにRNaseHを不活性化する突然変異(例えば、rnhの欠失)を含む
。特に好ましいこのような変異体、DnaA219Δrnhが、本明細書の実施例に記載され、受託番号03050701として2003年5月6日に英国、ポートン・ダウンの欧州細胞培養物収集所(ECACC)に寄託された株SF53として同定された。その寄託はノルウェー、オスロ0310、モン
テベロ、P.O. Box 56のノルウェーラジウム病院研究財団の名義で行なわれた。
【0046】
別の代表的な例において、致死的過剰活性突然変異はCdc6遺伝子またはOrc遺伝子中に
ある。Cdc6およびOrcは、真核生物において複製イニシエータータンパク質をコードする
遺伝子である。
【0047】
本明細書に使用される“突然変異”という用語は、遺伝子のヌクレオチド配列中の一つ以上の変化を表す。その変化は遺伝子のコーディング領域または非コーディング領域におけるヌクレオチドの付加、欠失または置換に相当してもよく、遺伝子産物、例えば、前記遺伝子によりコードされるタンパク質の機能に影響してもよく、または前記遺伝子の発現制御に影響してもよい。例えば、突然変異は過剰発現、即ち、この突然変異を有しない遺伝子(例えば、野生型遺伝子)と較べた場合の発現レベルの増大を生じ得る。あるいは突然変異はタンパク質産物の一次、二次または三次構造の変化をもたらすかも知れない。このような変化は、タンパク質の突然変異されない(例えば、野生型)形態と較べた場合に
タンパク質の機能に影響し得る。機能の変化は、例えば、基質またはコファクターの変更された結合、調節または局在化の変化したメカニズムによりひき起こされる増大された活性に関係し得る。
【0048】
“致死的過剰活性突然変異”は先に定義された遺伝子変化または突然変異が、タンパク質の突然変異されなかった形態、即ち、致死的過剰活性突然変異の前に、またはそれがなくて生成されたタンパク質の形態(例えば、野生型遺伝子によりコードされるような)と較べた場合に、標的タンパク質の活性の増大を生じることを意味し、活性のこの増大が突然変異を含む細胞の生存性を低下させる。
【0049】
致死的過剰活性突然変異は標的タンパク質に影響するあらゆる遺伝子中にあってもよいが、もっともそれは一般に標的タンパク質をコードする遺伝子中にあるであろう。標的タンパク質をコードする遺伝子に加えて、標的タンパク質に影響する遺伝子は、標的タンパク質の活性に影響を及ぼする遺伝子産物、例えば、調節分子をコードするあらゆる遺伝子を含んでもよい。
【0050】
タンパク質の活性の増大はタンパク質発現の増大、またはタンパク質の構造もしくは機能の変化(またはその調節)から生じてもよく、突然変異を含む細胞の成長速度を減少させるか、または細胞の死滅を生じてもよい。突然変異は、このタンパク質の過剰活性が細胞成長および/または生存度を減少させる限り、細胞のあらゆるタンパク質、例えば、酵素または構造タンパク質、受容体またはシグナル伝達タンパク質、あるいは実際にはその他の機能性タンパク質またはエフェクタータンパク質の活性に影響し得るであろう。それゆえ、このような致死的過剰活性突然変異を含む細胞(即ち、致死的過剰活性変異体)の検出可能な表現型は、成長し、分裂し、かつ/または生存する能力の低下である。
【0051】
先に説明したように致死的過剰活性突然変異は、好ましくはDNA複製に関係する遺伝子
に、更に好ましくはDNA複製の開始に関係する遺伝子に、最も好ましくは原核生物、特に
細菌のDNA複製の開始に関係する遺伝子、例えば、dnaA遺伝子にある。danA遺伝子中の突
然変異はdnaAcosを含み、また本明細書における下記の実施例1に記載されるようなE. coliの開始タンパク質DnaAの突然変異dnaA219を含む。
【0052】
こうして好ましい標的タンパク質は、DNA複製のイニシエーターである。原核生物起源
(古細菌を含む)および真核生物起源の両方を含む、DNA複製のいずれのイニシエーター
が使用されてもよい。DNA複製のイニシエーターは複製起点に結合し、かくしてDNA複製のプロセスを開始させるタンパク質を意味し、即ち、そのタンパク質はDNA複製のプロセス
における最初または初期の工程を担うのである。真核生物複製のイニシエータータンパク質として、Cdcタンパク質(例えば、Cdc6、Cdc18およびCdc45)、Cdtタンパク質(例えば、Cdt1)、Orcタンパク質(例えば、Orc1)およびMCMタンパク質(Liuら, 2000, Mol. Cell 6: 637)が挙げられる。また、あらゆるこのようなタンパク質の同族体およびオルソ
ログ(例えば、その他の種中の)が使用されてもよい。
【0053】
真核生物では、複製は起点に結合された6サブユニットORC複合体(それにCdc6、MCMおよびCdc45が動員される)で開始される。古細菌はCdc6およびMCMを含む、数種の真核生物複製タンパク質のオルソログ(orthologue)を含む。古細菌の複製は真核生物の複製と同様に機能すると考えられるが、それ程複雑ではない。古細菌はOrcの自明の同族体を含ま
ないが、Orc1はCdc6に対する相同性を有し、こうして古細菌では、“Cdc6/Orc”タンパク質(即ち、Cdc6同族体)が、両方の役割を果たし得ると考えられる。古細菌種からのCdc6/Orcおよび DnaAが最近結晶化され、構造上類似のタンパク質であることが示された。
【0054】
DNA複製のイニシエーターが上記のように標的タンパク質として好ましいが、あらゆる
イニシエータータンパク質が使用されてよく、即ち、あらゆる細胞プロセスの開始、例えば、タンパク質合成のプロセスにおける転写、または翻訳に関係するあらゆるタンパク質が使用されてもよい。
【0055】
致死的過剰活性を示すこのようなタンパク質の変異体別型は、先に説明したような標準操作を使用して生成され、かつ/または同定されてもよい。ある種のタンパク質の場合、使用し得る適当な変異体は既に知られており、文献に記載されていた。これらはDnaAの変異体(例えば、上記DnaAcosおよびDnaA219)およびCdcタンパク質の変異体、例えば、酵
母におけるCdc6を含む。こうして、例えば、酵母サッカロミセス・セレビシエでは、cdc6の変異体(cdc6-3およびcdc6-2)が許容温度でさえも過剰複製し、非許容温度で死滅する(LiangおよびStillman, 1997, Genes Dev. 11:3375)。酵母シゾサッカロミセス・ポン
ベでは、Cdc6がCdc18と称される。Cdc18の過剰活性を有する細胞は、過剰複製する(NishitaniおよびNurse, 1995, Cell 83: 397; Muzi-Falconiら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. 93:1566)。
【0056】
本明細書に使用される“誘導”という用語は、致死的過剰活性変異体を含む細胞の変異体表現型をスイッチオンし、スイッチオフする能力を表す。それ故、二つの状態−細胞が正常に成長し、分裂することができる非誘導状態と、この能力が突然変異のスイッチオンにより弱化される誘導状態がある。この“誘導性”は幾つかの方法で得られてもよい。一例として、優性の致死的過剰活性変異体について、それが野生型遺伝子の存在に加えて細胞に導入され、それは変異体表現型が野生型遺伝子の存在にもかかわらず観察されるという点で野生型遺伝子に対し優性効果を有し、変異体遺伝子は誘導プロモーターの制御下に置かれてもよい。同様に、それが優性であるか否かを問わず、遺伝子の致死的過剰活性変異体別型のみが細胞中に存在する(または活性である)場合、(例えば、“正常”または野生型遺伝子が不在であり、または不活化、例えば、ノックアウトされていた場合)、誘導プロモーターが使用されてもよい。このプロモーターはその制御下に人為的に置かれた遺伝子の転写が起こるために成長媒体中に或る種の成分(即ち、エフェクター)の存在を必要とする。この方法では、変異体遺伝子(例えば、外因性の変異体遺伝子)の転写がこの成分(エフェクター)が存在しないと起こらず、かくして変異体タンパク質が生成されない。成分/エフェクターの存在下で、突然変異された遺伝子が転写され、それ故、突然変異されたタンパク質が生成される。致死的過剰活性変異体が優性である場合、その存在は“突然変異されなかった”(例えば、野生型)タンパク質の存在下でさえも、細胞生存度に影響するであろう。“突然変異されなかった”タンパク質が存在しない場合(またはその活性の非存在下で)、致死的過剰活性突然変異の作用が同様に観察されるであろう。例えば、変異体遺伝子はlacプロモーター、λプロモーターまたはアラビノースプロモー
ターの制御下に置かれてもよい。
【0057】
また、タンパク質の変異体表現型は条件的手段により誘導されてもよく、即ち、致死的過剰活性突然変異は条件突然変異であってもよく、標的タンパク質の変異体表現型が細胞に関連する一つ以上の条件(例えば、パラメーター)(具体的には、温度またはその他の培養条件、年齢、栄養)の変化により誘導される。制限条件は変異体表現型が観察される条件であり、一方、許容条件は変異体表現型が抑制された(例えば、非過剰活性遺伝子機能、例えば、野生型活性レベルまたは正常な活性レベルを生じる)(即ち、“突然変異されなかった”)遺伝子機能である条件である。かくして、変異体タンパク質の変異体表現型は細胞の温度の変化により誘導されてもよい。温度または低温感受性の突然変異が当業界で広く知られており、突然変異タンパク質の一次構造(即ち、アミノ酸配列)の変化から生じる。タンパク質の鍵となる位置における或る種のアミノ酸が温度感受性を与えるかもしれない。タンパク質の二次構造は、突然変異タンパク質を含む細胞の成長温度のシフト後に変化する。
【0058】
異なる温度におけるタンパク質のコンホメーションの変化はタンパク質の性質の変化を生じるかもしれない。例えば、そのタンパク質は或る温度で過度に活性的になり、一方、別の温度で実質的に正常な、野生型の様式で挙動する。あるいはタンパク質は或る温度で正常に、即ち、野生型の活性レベルで機能してもよく、または温度の変化により不活性になり、もしくは低下された活性を有してもよい。タンパク質が正常に機能する温度が許容温度と称される。タンパク質が変異体の性質、例えば、低下され、増大され、または異なる活性を提示する温度が制限温度と称される。
【0059】
これらの温度感受性または低温感受性変異体は、致死的突然変異の効果を研究するのに極めて有益であると判明した。許容温度における細胞または生物の成長および増殖は、当該突然変異を有するタンパク質を含む細胞の拡大および永続を可能にする。細胞を温度シフトにかけ、それで変異体表現型を明らかにすることにより、それ以外の致死的突然変異の機能を研究することが可能である。温度感受性突然変異および低温感受性突然変異が有利である。何となれば、タンパク質の構造および機能の変化が温度シフトで起こり、その他の誘導系、例えば、転写のインデューサーの添加が用いられる場合には見られるかもしれないような誘導期を有しないからである。かくして本発明の致死的過剰活性変異体は、温度または低温感受性であることが好ましい。制限温度が30℃であり、かつ許容温度が42℃であることが最も好ましい。
【0060】
“標的タンパク質”はそれが含まれ、または発現される細胞の成長および/または生存に必須または重要であると同定されたタンパク質を意味し、それについて、インヒビターを同定することが所望される。これは例えば、その標的タンパク質に対する候補薬物としての使用のためである。こうして、例えば、標的タンパク質は病原体、またはある病態の絶え間ない存在に重要または必須であるかも知れない。上記のように、或る種のタンパク質は特別な病態、例えば、癌に関連しているかもしれず、こうして潜在的な薬物標的に相当するかもしれない。また先に説明したように、これらの標的タンパク質と干渉する薬物は、該標的タンパク質に対する潜在的な薬物効果が、その成長および/または生存のために該標的タンパク質を必要とする細胞の表現型についてのその薬物効果を通じて測定されるスクリーンで同定されるかもしれない。
【0061】
本発明によれば、標的タンパク質はそれが致死的な過剰活性突然変異であるように突然変異され、即ち、それが突然変異されなかったタンパク質または野生型タンパク質と較べられる場合に増大された活性または過度の活性を有する。この方法においてアッセイで評価されるのは、標的タンパク質の変異体過剰活性の低下である。このことは変異体致死的過剰活性タンパク質の活性低下が検出される点においてポジティブアッセイを与える。この変異体過剰活性タンパク質を含む細胞が生存する場合、試験物質が突然変異された標的タンパク質の過剰活性を低下する化合物を含むことがわかる。このような化合物は標的タンパク質の正常活性と干渉し、それにより感染症を減少し、または当該症状と闘う薬物としての使用という潜在性を有する。
【0062】
上記のように、標的タンパク質はあらゆる機能性タンパク質(例えば、エフェクタータンパク質)であってもよいが、それが酵素または結合タンパク質、特にDNAの代謝に関係
する酵素または結合タンパク質であることが好ましい。染色体DNA、例えば、細菌(例え
ば、E. coli)DnaAまたはその同族体の複製に関係するタンパク質がとりわけ好ましい。DnaAの同族体はその他の種、例えば、E. coli、S.エンテリカ、S.マルセセンス、P.ミラビリス、B.アフィジコラ、Y.ペスチス、V.ハルベイ、V.コレラエ、P.プチダ、P.エルギノーサ、P.マルトシダ、H.インフルエンザエ、S.プトレファシエンス、C.クレセンタス、R.メリロチ、Z.モビリス、R.プロワゼキイ、ウオルバチア種、H.ピロリ、C.ジェジュニ、B.ペルツシス、N.メニンギチジス、T.フェロオキシダンス、C.ジフィシル、B.スブチリス、B.ハロジュランス、B.アントラシス、S.アウレアウス、S.ニューモニエ、M.カプリコルム、
M.ゲニタリウム、M.ニューモニエ、U.ウレアリチカム、S.シトリ、E.フェカリス、M.ルテウス、C.ジフテリエ、M.レプレ、M.アビウム、M.ツベルクロシス、M.スメグマチス、S.コエロカラー、S.クリソマルス、P.マリヌス、シネコシスチス種、C.ニューモニエ、C.トラコマチス、C.ムリダルム、B.ブルグドルフェリ、T.パリダム、T.デンチコラ、T.マリチマ、T.テルモフィルス、D.ラジオデュランス、A.エオリカス、C.テピダム、D.エテノゲネス、P.ギンギバリスに見られるかもしれない。DNA複製に関係するその他のタンパク質、例
えば、上記真核生物Cdc6/Orcタンパク質またはあらゆるその他の複製イニシエーターもまた使用されてもよい。
【0063】
第二遺伝子における突然変異は強力なタンパク質インヒビターの検出を可能にするために必要とされ、これらは簡単なポジティブスクリーンの場合には通常検出されないであろう。単一の致死的過剰活性変異体を含む細胞が使用される通常の、単一変異体、ポジティブスクリーンでは、過剰活性変異体の活性を、その活性を低下させるが完全には消失させないように悪化させるタンパク質インヒビターは細胞を生存させ、あるいはこのようなインヒビターの非存在下で成長した変異体細胞と較べた時に、該インヒビターの存在下で増長された生存または成長を示させるかもしれない。しかしながら、強力インヒビター(これは致死的過剰活性変異体の機能を実質的にまたは完全になくす)が存在する(例えば、試験サンプル中に)場合、変異体細胞は、このようなインヒビターの存在にもかかわらず、死滅するであろう。その性質により、致死的過剰活性突然変異を含む標的タンパク質は、細胞の継続する生存および/または成長および増殖に必須であり、それが好適な標的タンパク質をつくるのはこの理由のためであり、この性質により標的タンパク質のその抑制が測定される。しかしながら、強いインヒビター(これは突然変異した標的タンパク質(これはこの細胞の継続的生存に必須である)の活性を完全にまたはかなり抑制することにより致死的過剰活性変異体を含む細胞の生存を阻止する)と、いかなる抑制(その条件下で細胞が生存し得ない)の不在とを区別することはこのような系では可能ではない。こうして、単一の、致死的過剰活性突然変異を利用するあらゆるポジティブスクリーンは、弱いインヒビターのみ、または少量のみで使用される強いインヒビターが検出される点において、前記スクリーンで検出し得るインヒビターの強さに関して制限される。
【0064】
タンパク質インヒビターが、標的タンパク質の機能を完全になくすのに充分強い、あるいは細胞が生存し、かつ/または成長し得るレベルよりも下のレベルにそれを低下させるのに充分に強い(または充分に多い量で存在する)場合に、細胞中にも存在する第二突然変異が細胞を生存させるような新規アッセイを本発明者らは開発した。
【0065】
第二突然変異は、タンパク質インヒビターによる活性低下により生じた標的タンパク質の活性欠如を代替し、補償する。それ故その表現型は、致死的過剰活性変異体が優性であるように、第一致死的過剰活性変異体の活性が低下される場合にのみ検出可能である。第二突然変異は新しい一つ以上の遺伝子の挿入であってもよく、それらの一種以上の産物が標的タンパク質の活性欠如を補償するように機能し得る。また、その突然変異は特別な遺伝子/遺伝子産物を不活化し、あるいはその発現および/または活性を実質的に低下する突然変異、例えば、遺伝子中のナンセンス突然変異または細胞から遺伝子の産物または機能性産物を除去する欠失であってもよい。
【0066】
第二遺伝子における突然変異は、標的タンパク質の活性を低下させる強いインヒビター(または高濃度もしくは多量のインヒビター)の存在下で細胞の継続的生存および成長を可能にする。かくして第二遺伝子における突然変異は、致死的過剰活性変異体の同じレベルまたは下流で作用し得る。こうして致死的過剰活性突然変異が、細胞プロセスのイニシエーター中にある場合、第二突然変異はこのプロセスの機能性イニシエーターが存在しなくとも該プロセスが進行することを可能にする。例えば、致死的過剰活性変異体が、例えば、原核生物におけるDNA複製のイニシエーター中にあり、過剰活性のDNA複製イニシエー
タータンパク質(例えば、DnaA)をもたらす場合(これはDNA複製の過剰開始を生じる)
、第二突然変異は、例えば、複製の別のメカニズムを与えることにより、DNA複製が機能
性DNA複製イニシエータータンパク質(例えば、DnaA)が存在しなくとも進行することを
可能にする突然変異であることが好ましい。こうして、例えば、前記突然変異はRNaseHをコードするrnh遺伝子を不活化するあらゆる突然変異であってもよく、rnhの欠失であることが最も好ましい。
【0067】
“機能的に補償する”とは更なる活性または別の活性が変異体細胞に導入されるか、あるいは欠失(もしくは実質的に低下)されることを意味する。こうして、補償は、主要標的タンパク質の活性がないかまたは低下するにもかかわらず、細胞が本質的に正常に機能し続け得る手段を提供することにある。かくして第二突然変異は、生存度持続レベルより下では(即ち、標的タンパク質の活性が細胞が生存し、かつ/または成長し得るレベルより下に低下する場合)、第一遺伝子産物(即ち、標的タンパク質)における活性の低下を機能的に補償し得る。標的タンパク質の活性は直接に測定されず、機能性アッセイで測定される。
【0068】
例えば、線形のシグナル伝達経路では、標的タンパク質は別の活性の“上流”であってもよい。ブロックされた活性の下流の活性タンパク質を与えることにより、シグナル伝達経路は機能し続け、この経路に依存する細胞は、機能性の上流シグナルがなくとも生存するであろう。それ故、代替の活性は下流であってもよく、またはシグナル伝達経路のその後方位置で作用してもよい。
【0069】
本明細書に使用される“生存度”とは、アッセイに使用された細胞の成長および増殖の評価(例えば、測定)を表す。細胞は標的タンパク質の作用を抑制するタンパク質インヒビーが存在しない場合、致死的過剰活性突然変異(これが誘導される場合)により死滅させられるであろう(または成長することができないであろう)。したがってこのことは“ゼロ”の生存度に相当し、即ち、細胞が生存せず、または細胞が成長し、分裂することができない。致死的過剰活性突然変異の誘導後に、細胞が死滅するのに時間の或る期間がかかってもよい。例えば、細菌において温度感受性の致死的過剰活性突然変異を誘導した後に、細胞が死滅するのに通常約3時間を要する。致死的過剰活性変異体の活性を低下させる特異的タンパク質インヒビターの存在下では、増大された数の細胞が生存し、増殖し得る。こうして生存度は、致死的過剰活性突然変異の誘導とインヒビター(または試験サンプル)の添加後に存在する細胞の数(例えば、細胞の成長媒体または培養の媒体中)と相関関係がある。インヒビター(または試験サンプル)は、致死的過剰活性突然変異の誘導と同時またはそれに続いて加えられてもよい。もし致死的過剰活性突然変異の誘導が温度シフトにより起こる場合、インヒビター(または試験サンプル)が致死的過剰活性突然変異の誘導と同時に加えられることが好ましい。また致死的過剰活性突然変異の誘導がde novoタンパク質合成を必要とする場合、インヒビター(または試験サンプル)は、致死的
過剰活性突然変異の誘導に続いて、好ましくはタンパク質合成が致死的過剰活性突然変異が誘導された後の、例えば、3-5時間または5-8時間の時点で加えられるべきである。
【0070】
これは試験サンプルの存在下および非存在下で、特定時点での細胞(例えば、生細胞)の数を測定することにより、具体的には推定または評価することにより(例えば、カウントまたは測定することにより)行なわれてもよい。細胞は分光光度法により、例えば、適当な波長、例えば、450nmの波長で細胞集団の光学密度を測定することにより、あるいは
細胞、もしくは細胞サンプルの代表的な部分を直接カウントすることにより数えられてもよい。細胞が固体媒体上で成長されている場合、コロニー数が測定されてもよい。
【0071】
上記のように、致死的過剰活性突然変異の誘導が温度シフトで起こる場合、インヒビターまたは試験サンプルは、例えば、1世代の直後に、または致死的過剰活性突然変異の誘
導と同時に細胞と接触されるべきである。これは時間ゼロに相当する。次いで細胞の相対数の測定が、時間ゼロの後に、または適当なインキュベーション後、例えば、8-30時間、8-24時間、8-18時間、8-12時間、12-30時間、12-24時間、12-18時間、18-30時間、18-24
時間、20-30時間、20-24時間の一夜のインキュベーション後に、適当な時間間隔をおいて、具体的には3-30世代、5-30世代、5-25世代、5-20世代、5-15世代、5-12世代、5-10世代、8-12世代、8-10世代、3-5世代で、行なわれてもよい。
【0072】
この時点で、試験物質の非存在下での誘導された細胞集団における細胞数が対照値である。この細胞集団中の細胞の数が、インヒビター/試験サンプルと接触させられて誘導された細胞集団中の細胞の数と比較される。例えば、インヒビター/試験サンプルの非存在下での値に対し、10倍、20倍、30倍、50倍または100倍のOD450の増大が、試験物質中のタンパク質インヒビターの存在を示す。
【0073】
更なる局面において、本発明は本発明の方法における使用のための細胞に関する。このような細胞は、標的タンパク質(その活性が細胞に必須である)に影響を及ぼす(例えば、コードする)第一遺伝子中の誘導性の、好ましくは温度、例えば低温感受性の、致死的過剰活性突然変異と、ならびに第一遺伝子産物(即ち、標的タンパク質)の活性低下、例えば、タンパク質インヒビターにより生じた活性低下を機能的に補償する第二突然変異(例えば、第二遺伝子中の)を含む。
【0074】
上記のように、細胞は真核生物細胞または古細菌細胞を含む原核生物細胞、例えば、酵母細胞、または哺乳類細胞であってもよい。細胞は真正細菌細胞、例えば、E. coli細胞
であることが好ましい。
【0075】
細胞は、好ましくは株WM2667に由来する、dnaA219Δrnh変異体であることが更に好ましく、細胞は表1に示された特性を有する、DnaA219cosΔrnh突然変異を含む、上で定義さ
れた寄託された株SF53であることが最も好ましい。
【0076】
本発明の更なる局面は、アッセイを行なうためのキットに関し、これはアッセイを行なうための細胞を含む。そのキットはまたアッセイを行なうための成長媒体および/または抗生物質を含んでもよい。
【0077】
本発明の更なる局面は、本発明のアッセイ方法により同定されたタンパク質インヒビター(例えば、新規タンパク質インヒビター)、特にDNA複製のインヒビター、とりわけ細
菌のDNA複製インヒビター、および抗菌剤としてのそれらの使用に及ぶ。
【0078】
本発明が図面を参照して下記の限定を意味しない実施例に更に詳しく今記載される。
実施例
【実施例1】
【0079】
試験株SF53の構築
WM2667は、WM2062(dnaAtS46、Weigelら, 1999, Mol. Microbial, 34: 53-66)の温度
感受性サプレッサーである。WM2667はそれがdnaAの低温感受性変異体である点でdnaAcos
変異体(Kellenberger-Gujerらの上記文献)に近似している。変異体は許容温度(42℃)で正常に成長するが、4時間にわたる制限温度、30℃における成長後に、細胞の10%未満が生存して残る。30℃で、該細胞は対照マーカー(dnaB、dnaCおよびattλ)よりも3-4倍多いOriC DNAを蓄積する。成長はOriCプラスミドの導入またはFisタンパク質の適度な過
剰発現により回復し得る。
【0080】
三つの突然変異がWM2667のdnaA遺伝子中に存在する。すなわちA184VおよびH252Yの両方
が、親株のdnaA遺伝子中に存在し、一方、R342CはWM2667のみに見られる付加的な突然変
異に相当する。dnaA対立遺伝子はdnaA219(cos)と称される。
【0081】
DnaA219タンパク質が完全に不活性化される条件に耐え得る株を構築するために、rnhA
遺伝子の欠失を、標準操作(Millerら (1992), A short course in bacterial genetics:
A laboratory manual and handbook for E. coli and related bacteria (Cold Spring Harbour Press))に従って、P1形質導入により株WM2667に導入した。
【0082】
株SS198のP1溶解産物
SS198 (rnh::cam)の一夜培養液を10mlのLB+クロラムフェニコール中で1:100に希釈し
、OD=0.3まで成長させた。CaCl2を10mMまで加え、室温で5分間インキュベートした。P1
原液100μlを加え、室温で15分間インキュベートした。インキュベーションを4時間にわたって振とうしながら37℃で続けた。クロロホルム1mlを加え、37℃で15分間インキュベ
ートした。試験管を低速遠心させ、上澄みを新しい試験管に移した。
【0083】
WM2667へのrnh::camの形質導入
15mMのCaCl2および15mM MgCl2を、株WM2667の一夜培養液に加え、室温で15分間インキ
ュベートした。P1溶解産物500μlを一夜培養液1mlに加え、37℃で15分間インキュベート
した。
【0084】
試験管を低速遠心させ、培養液をLB+50mMクエン酸Naで洗浄した。培養液を150μlのLB+50mMクエン酸Na中で再懸濁させ、37℃で1時間インキュベートした。全ての培養液を適当な抗生物質を含むLBプレートに塗布した。
【0085】
得られる株、SF53(dnaA219rnh::Cam)は、RNaseHタンパク質を欠いている。この株は42℃で正常に成長するが、30℃で生存しない。それ以外は、それはWM2667と同じ遺伝子型
を有する。
【0086】
株SF53は30℃で生存しない。低温感受性からの復帰突然変異(reversion)の頻度を調
べるために、下記の実験を行なった。42℃で成長させたSF53の一夜培養液を新しいABB1グルコースCAA培地で1:1000に希釈し、OD450が約0.15(即ち、約4世代)に達するまで42℃で成長を続けさせた。培養液の倍加時間は約90分であった。その株の異なる希釈液いくつかをABB1グルコースCAAプレートに塗布し、プレートを30℃または42℃でインキュベート
した。コロニーを18時間、24時間および42時間後にカウントした。42℃でインキュベートされたプレートは、塗布された培養液1ml当り約107のコロニーを示し、0.1のOD450を有するSF53の培養液1mlが107の生存細胞を含むことを示す。30℃で18時間および24時間にわたってインキュベートされたプレートは、塗布された培養液1ml当り約10のコロニーを示し
た。これは106当り1つの細胞がもはや低温感受性ではなかったことを意味する。42時間
インキュベートされたプレートは、低温耐性コロニー数の5〜10倍の増大があり、延長されたインキュベーションがより多数の復帰変異体(revertant)を得ることを示した。
【実施例2】
【0087】
DnaA活性の非存在下でのSF53株の生存
下記の実験を行なって、ある薬物がDnaAタンパク質を不活性化した場合に株SF53が生存するという証拠を得た。このような証拠は、野生型DnaAのN末端ドメイン(ドメインIアミノ酸1-86)の生成を利用することにより、リード薬物なしに得られる。DnaAのドメインIは、適切な開始複合体のオリゴマー化および形成に重要である。独立したドメインIが合成される場合、DnaAおよびドメインIの不活性ヘテロオリゴマーが生成され、こうして開始複合体の“毒作用”をもたらす。株SF53を、ビオチン‐タグ付きドメインIをコードするIPTG誘導遺伝子を有するプラスミド(pBEX5BA-dnaA〔1-86〕-ビオチン)で形質転換
し、形質転換体をチェックし、その株をSF58と称した(表1)

【0088】
【表1】

【0089】
株SF58の成長をIPTGの三つの異なる濃度で試験した。42℃で成長させた株SF58の一夜培養液を新しいABB1グルコースCAA培地中で1:1000に希釈し、5個のフラスコに分けた。培
養番号1〜4を30℃で成長させ、培養番号5を42℃で成長させた。IPTGを希釈の時点で、培養番号2、3および4にそれぞれ0.25mM、0.5mMおよび1mMの濃度で加えた。成長曲線を8時間にわたってOD450の測定により追跡した。この実験はIPTGなしで30℃で成長させた
培養番号1が生存しなかったことを示す(図1)。そのOD450は全ての時点で0.03未満で
あった。この結果はdnaA219rnh株が30℃で生存しないことを確かめる。
【0090】
42℃で成長させた対照培養物(番号5)は、約60分の倍加時間を有していた。IPTGを用いて30℃で成長させた3種の培養物は、IPTG濃度が上昇するとともに、次第に増大する成長速度を示し、それ故ドメインIタンパク質の異なる濃度を有していた(以下を参照のこと)。この結果は30℃におけるその株の成長が、ドメインIの誘導により回復されたこと、そして成長速度が次第に増加する量のドメインIで改善されたことを示す。
【0091】
三つの異なる濃度のIPTGの存在下における4世代の成長後に存在するドメインI濃度を、ウェスタンブロットにより評価した。IPTGなしに成長した培養物(培養番号1)と1mM
のIPTGで成長した培養物(培養番号4)との間のOD450において、10倍の差が約10時間後
に得られた。よって、薬物スクリーニングをdnaA219rnh株で行なう場合、ポジティブヒットが薬物の存在下で約10時間後にOD450の10倍の差により検出されるであろう。
【0092】
スクリーンの堅固さ、ならびに高処理量アッセイにおいて、どの時点でOD450の差を測
定するのが最適であるのかを測定するために、本発明者らは下記の測定を行なった(図2)。図1と実質的に同じ実験を行なったが、OD450を10の異なる並行させた培養液中で、
三つの時点、20時間、27時間および48時間のみで測定した。20-40倍の差を20時間後そし
て27時間後に得た。48時間後に、誘導されなかった培養液中のバックグラウンドが現れ始め、差が約5倍に低下した。それゆえ高処理量スクリーンにおけるOD450の測定はインキ
ュベーションの10-30時間後に行なわれるべきである。
【実施例3】
【0093】
高処理量スクリーニング操作
42℃においてABB1グルコースCAA培地中で成長した株SF53の一夜培養液を新しい培地中
で1:1000に希釈し、適当な数の96ウェル・ミクロタイター・プレートに分配する。異なる試験物質を、各プレート中のウェル二つを除き、各ミクロタイター・ウェルに一種を加えた。これらの二つはブランク、即ち、成長しない基準培養液として利用できる。ミクロタイター・プレートを30℃で20-24時間インキュベートし、次いでOD450を測定する。ポジティブヒットがブランクサンプルのODの10-100倍高いOD測定を有するウェルに見られる。
【実施例4】
【0094】
アッセイの実証
アッセイ導入&実証操作の最初の部分は、ミクロタイターフォーマットにおける結果の再現性を含む。これらの結果が図3に示され、これはSF53もSF58もいずれもがミクロタイタフォーマット中で、30℃で1.5×105秒(約42時間)にわたってインキュベートされた時、顕著な成長を何ら示さないことを示す。
【0095】
図3の同じミクロタイター・プレートの複製培養物、48全てが同様に挙動した。次に、IPTG誘導曲線を、図4に示されるように再現された。SF58は、3×104秒(約8時間)後に既に対照より有意に高いOD405を示すことができる。加えて、18時間(6.4×104秒)後に
、誘導された培養物のODは対照よりも充分に上である。これらの結果は、株SF53およびSF58-IPTGの予想された挙動を確認するとともに、仮説されたDnaAインヒビターの効果がそ
の間に明確に測定し得る、広い一時的ウインドーがあることを示す。
【0096】
次いで一連の実験を行なって、シグナルを出発接種物の関数(即ち、ミクロタイター・ウェル中に存在する培養液の理論OD)として評価した。得られたデータ(示されていない)は、その接種物が一夜培養液または活発に成長している42℃の培養液の希釈により得られる場合、SF58-IPTG成長曲線に有意差がないことを示す。従って、ODを測定するための
時間を18時間に設定し、用いた操作はOD600が1.2になるまで、5μlのSF53またはSF58を
グルコースCAA培地(抗体選択を伴う)30ml中で42℃で一夜成長させることであった。原
液をグルコースCAA(抗体を含まない)中で1:100に希釈した。90μlのこれをサンプル10
μlとともに、それぞれのウェルに分配した。30℃における18時間のインキュベーション
後にOD620を測定した。
【0097】
DnaAの既知低分子インヒビターがないので、アッセイを確実なものにするための次の工程は、未知のサンプルの存在下で、アッセイ性能を記録することであった。この目的のために、本発明者らはビクロン・ファーマシューティカルズに存在する微生物抽出物ライブラリーを利用した。このライブラリーはプロセシングされた微生物発酵抽出物からなることに注目されるべきである。簡単に言えば、各株は特定条件下で発酵され、その発酵ブロースは固相抽出によりプロセシングされ、細胞が溶媒抽出によりプロセシングされる。いずれの場合にも、“微生物抽出物”がミクロタイター・プレートに分配され、乾燥される。微生物抽出物が、一プレート当り80のサンプルで96ウェル・ミクロタイター・プレートに貯蔵される。プレート当り残りの16ウェルは、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールのために使用される。それゆえ微生物抽出物ライブラリーにおけるそれぞれのサンプルは、未知の濃度での未知化合物の混合物からなる。サンプルのこのような複雑なライブラリーによるアッセイ性能の評価は、あり得る干渉および不充分な試験性能を強調する可能性を有する。
【0098】
アッセイは、対照よりも有意に高いOD620を示すサンプルとしてDnaAインヒビターの存
在を同定すべきである。理論的な観点から、本発明者らは真の明確性が比較的に稀であると予想するであろう。何とならば、それらがSF53の成長を可能にするのに充分な濃度でこのようなインヒビターを含むはずであるからである。加えて、本発明者らは擬陽性の二つのグループを理論的に同定し得る:一つのグループは相当なOD620の出現がSF53成長に依
存しないあらゆる場合から生じ得る(即ち、汚染微生物または濁ったサンプルがシグナルを発生する);別のグループは特定のウェルが多数のサプレッサー株を含むというあらゆる場合から生じ得る。擬陽性の両方のグループは、SF53を用いるか、または用いない試験の繰り返しにより容易に認識し得る。サンプルの性質を考慮して、あり得る偽陰性は、仮定するDnaAインヒビターがSF53に活性な別の抗生物質と一緒に存在する全てのサンプルからなり得る。しかしながら本発明者らは、E. coli株に対して活性な微生物抽出物の頻度
が1%付近であることを知り、こうして偽陰性は全く稀であるべきである。
【0099】
先に概説した操作に従って、4240個の微生物抽出物のスクリーニングを行なった。それぞれの96ミクロタイタ・プレートは対照としてSF53で接種された四つのウェル、SF58で接種された四つのウェルおよび2.5mM IPTGの存在下、SF58で接種された8つのウェルを含んでいた。10%のDMSO(微生物抽出物が溶解される溶媒)10μlをこれらの対照ウェルに加
えた。
【0100】
本発明者らは、図5に報告したように、対照の頻度分布を最初に観察することができた。全てのネガティブコントロール(SF53およびSF58)グループは0.1のOD620付近を示し、一方、陽性対(SF58-IPTG)は1.1のOD620付近に広い分布曲線を示す。図5において、ポ
ジティブコントロールに関する広い分布曲線は、スクリーニングプログラムでは理想的ではない。しかしながら、それは接種物の手動分配のためであり、それは接種物分配の自動化で改善すべきである。それにもかかわらず、ネガティブコントロールとポジティブコントロールの間に明らかな分離があり、これが陽性サンプルの明確な同定を可能にするはずである。
【0101】
4240の微生物抽出物の頻度分布を図6に示す。ほとんどのサンプルが0.1のOD620付近に群がることがわかる。このことは、ほとんどのサンプルがネガティブコントロールのOD620とは有意に異なるOD620を生じないことを示す。加えてこの頻度分布は、0.4のOD620の閾値が真の陽性サンプルを同定するのに使用し得ることを示す。このカットオフは0.4より
高いOD620を有する41のサンプル(試験したサンプルの0.97%に相当する)を同定した。
これらの陽性サンプルについて観察された値を図7に報告する。続いてこれらの結果は、サンプルとして使用された抽出物からの微生物汚染の存在のために擬陽性であることが示された。この汚染は、通常の微生物学的技術を使用して、容易に試験し得る。
【0102】
この段階で、本発明者らは
a) アッセイが96ウェルフォーマットで実施でき、
b) それがHTSプログラムについて適当に実行し、
c) 陽性の微生物抽出物が全て擬陽性である
と結論し得る。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、試験株SF53(dnaA219, rnh::cam)および株SF58(dnaA219, rnh::cam/pdnaA〔1-86〕-ビオチン)の成長曲線を示す。
【図2】図2は、30℃で異なる量のIPTG(0、0.25、0.5および1mM)で成長したSF58細胞の生存度の分析を示す。
【図3】図3は、SF53およびSF58の成長曲線を示す。接種物は1.5のOD600のO.N.培養液の1:100希釈液であった。インキュベーション温度は30℃であり、OD405を900秒毎に測定した。SF53またはSF58のいずれもが1.5×105秒(約42時間)まで、これらの条件下で認められる成長を示さない。
【図4】図4は、0〜10mM濃度におけるIPTGを共存させたSF58の成長曲線を示す。接種物は1.5のOD600の一夜培養液の1:100希釈液であった。インキュベーション温度は30℃であり、OD405を900秒毎に測定した。18時間(6.4×104秒)後に、誘導された培養液(0.31mM IPTGおよびその上)のODは、対照(0〜0.16mM IPTG)よりも有意に高い。
【図5】図5は、ポジティブコントロール(SF58+2.5mM IPTG)およびネガティブコントロール(SF53およびSF58)のOD620値の頻度分布を示す。ポジティブコントロール値はOD620 1.1付近にグルーピングされ、ネガティブコントロール値はOD620 0.1付近にグルーピングされる。
【図6】図6は、4240微生物抽出物のOD620値の頻度分布を示す。ほとんどのサンプルが0.1付近のOD620を有する。
【図7】図7は、41の陽性微生物抽出物からのOD620シグナルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) サンプルを細胞と接触させる工程(該細胞は
i) 標的細胞に影響を及ぼす遺伝子中の誘導致死的過剰活性突然変異(標的タンパク質の活性は細胞に必須である)、および
ii) 第二遺伝子中の突然変異(その第二遺伝子中の突然変異は標的タンパク質の活性の低下を機能的に補償する)
を含む)、
b) 致死的過剰活性突然変異を誘導する工程、続いて
c) 該サンプルの存在下および非存在下で細胞の生存度を比較することによりタンパク質抑制を評価する工程
を含むことを特徴とする、サンプル中の標的タンパク質のタンパク質インヒビターの存在を同定する方法。
【請求項2】
前記細胞がクローン由来の細胞集団である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
誘導致死的過剰活性突然変異が標的タンパク質をコードする遺伝子中にある、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記標的タンパク質が酵素または結合タンパク質である、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記標的タンパク質が核酸の合成と関係する、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記標的タンパク質がDNA複製のイニシエーターである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記標的タンパク質がDNA複製の細菌イニシエーターである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記標的タンパク質がDnaAである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
第二遺伝子中の突然変異が前記DNA複製イニシエーターの非存在下で、DNA複製についての別のメカニズムを与える、請求項6から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
細胞の生存度が致死的過剰活性突然変異の誘導後に存在する細胞の数を測定することにより測定される、請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
細胞の数が致死的過剰活性突然変異を誘導して8-30時間後に測定される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
細胞の数が分光光度法で測定される、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記インヒビターが特異的タンパク質インヒビターである、請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記インヒビターが抗生物質である、請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記細胞がE. coliである、請求項1から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
致死的過剰活性突然変異がDnaA中にある、請求項1から15のいずれか1項記載の方法

【請求項17】
前記致死的過剰活性変異体がDnaAcosまたはDnaA219であり、またはそれらの性質を有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
第二突然変異がRNaseHを不活化する、請求項6から17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が受託番号03050701としてECACCに寄託された、DnaA219Δrnhである、請求項
6から18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
標的タンパク質に影響を及ぼす第一遺伝子中の誘導致死的過剰活性突然変異(該標的タンパク質の活性が細胞に必須である)および標的タンパク質の活性低下を機能的に補償する第二突然変異を含むことを特徴とする細胞。
【請求項21】
受託番号03050701としてECACCに寄託されたE. coli株SF53(DnaA219Δrnh)。
【請求項22】
請求項20または21記載の細胞を含むことを特徴とする、請求項1から19のいずれか1項記載の方法を実施するためのキット。
【請求項23】
請求項1から19のいずれか1項記載の方法により同定されたタンパク質インヒビター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−526402(P2006−526402A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508388(P2006−508388)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002347
【国際公開番号】WO2004/108958
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505449542)
【出願人】(505449553)
【出願人】(505449564)
【出願人】(505449575)
【Fターム(参考)】