説明

誘導電動機および誘導電動機の回転子

【課題】高温環境下においても支障なく駆動すること。
【解決手段】上記の課題を解決するために、短絡環と、第1の補強部材と、第2の補強部材とを備えるように誘導電動機および誘導電動機の回転子を構成する。短絡環は、筒状の回転子コアの回転軸まわりに環状に配置される複数の導体を、上記の回転子コアの端面それぞれにおいて短絡する。第1の補強部材は、上記の短絡環に対して嵌合される。第2の補強部材は、上記の第1の補強部材に対して嵌合されるとともに、上記の回転軸に対して固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、誘導電動機および誘導電動機の回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導体の両端をそれぞれ環状の短絡環で短絡した回転子、いわゆる「かご形回転子」を備えた誘導電動機が知られている。
【0003】
かかる誘導電動機は、回転軸の延伸方向から短絡環を押さえ付けながら回転軸に対して接合される補強部材を備えることが多い。かかる補強部材は、遠心力による短絡環の飛び出しや変形を防ぐ役割を果たしている。
【0004】
なお、かかる補強部材には、短絡環と接しても磁束の流れを妨げることがないように、非磁性素材がよく用いられる。たとえば、特許文献1には、非磁性のニッケル合金から形成された補強部材を備えた誘導電動機の回転子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3701413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の誘導電動機には、高速回転や長期回転などで回転子から熱が生じた場合でも支障なく駆動するという点で、さらなる改善の余地がある。これは、短絡環、回転軸および補強部材それぞれの線膨張係数の差異によって、たとえば、補強部材が、熱による回転軸の軸方向への伸びを妨げ、回転軸を曲げる可能性があるためである。
【0007】
なお、かかる課題は、回転子から熱が生じる場合だけでなく、高温環境下において誘導電動機が駆動する場合についても同様に生じる課題である。
【0008】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、高温環境下においても支障なく駆動することができる誘導電動機および誘導電動機の回転子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係る誘導電動機は、短絡環と、第1の補強部材と、第2の補強部材とを備える。短絡環は、筒状の回転子コアの回転軸まわりに環状に配置される複数の導体を、前記回転子コアの端面それぞれにおいて短絡する。第1の補強部材は、前記短絡環に対して嵌合される。第2の補強部材は、前記第1の補強部材に対して嵌合されるとともに、前記回転軸に対して固定される。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、高温環境下であっても支障なく駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施形態に係る誘導電動機の構成例を示す縦断面図である。
【図2】図2は、実施形態に係る回転子の外観図である。
【図3A】図3Aは、回転子コアの断面図である。
【図3B】図3Bは、回転子コアの正面図である。
【図4】図4は、短絡部の拡大図である。
【図5】図5は、変形例に係る回転子の構成例を示す縦断面図である。
【図6】図6は、第2補強部材の正面図である。
【図7】図7は、従来の短絡部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する誘導電動機および誘導電動機の回転子の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
まず、実施形態に係る誘導電動機の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、実施形態に係る誘導電動機1の構成例を示す側断面図である。なお、説明を分かりやすくするために、図1には、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、以下の説明に用いる他の図面においても示す場合がある。
【0014】
また、以下では、複数個で構成される構成要素については、複数個のうちの1個の部材にのみ符号を付し、その他の各部材については符号の付与を省略する場合がある。かかる場合、符号を付した部材とその他の各部材との構成は同様であるものとする。
【0015】
図1に示すように、誘導電動機1は、モータカバー2と、モータフレーム3と、反負荷側ブラケット41と、負荷側ブラケット42と、反負荷側軸受51と、負荷側軸受52と、固定子6と、回転子7と、端子箱8と、ファンケース9とを備える。
【0016】
モータカバー2は、その内部にモータフレーム3を収納する。また、モータカバー2は、反負荷側に冷却風の吸気孔21を有する。モータフレーム3は、筒状に形成されており、その内部に固定子6や回転子7といった誘導電動機1の駆動部を収納する。
【0017】
また、モータフレーム3は、その外周面に、第1放熱フィン31および第2放熱フィン32を備える。
【0018】
反負荷側ブラケット41は、モータフレーム3の反負荷側開口部へ取り付けられるとともに、環状の反負荷側軸受51を保持する。同様に、負荷側ブラケット42は、モータフレーム3の負荷側開口部へ取り付けられるとともに、環状の負荷側軸受52を保持する。
【0019】
固定子6は、固定子コア61を備える。固定子コア61は、環状の電磁鋼板を複数枚積層して筒状に形成されており、その外周面はモータフレーム3の内周面に固着される。また、固定子コア61のティースには、固定子巻線62が巻回される。
【0020】
また、図示しないが、固定子6には、駆動用の三相電力を固定子6へ供給するための固定子用配線が接続される。
【0021】
また、固定子6の内周側には、所定の空隙を介して回転子7が対向配置される。回転子7は、回転子コア71と、回転軸72と、短絡部73とを備える。
【0022】
回転子コア71は、筒状に形成される。また、図示していないが、回転子コア71は、回転軸72まわりに環状に配置されたスロットを有しており、かかるスロットにはアルミニウムあるいはアルミニウム合金(以下、アルミニウムとして説明する)などの導体が鋳込まれる。かかる点の詳細については、図3Aを用いて後述する。
【0023】
回転軸72は、炭素鋼などによって形成され、回転子コア71を図中のY方向へ貫いて設けられる。このとき、回転軸72の外周面は、焼き嵌めなどによって回転子コア71の内周面に固着される。
【0024】
なお、かかる回転軸72の外周面と回転子コア71の内周面との間には、後述するスリーブを介する場合もある。かかる点の詳細については、図5を用いて後述する。また、以下では、回転軸72は、炭素鋼からなるものとする。
【0025】
また、回転軸72は、上述の反負荷側軸受51および負荷側軸受52によって軸支される。
【0026】
短絡部73は、前述の導体を回転子コア71の両端面それぞれにおいて短絡する環状の短絡環を含む構成要素である。すなわち、回転子7は、いわゆる「かご形回転子」として構成される。
【0027】
また、短絡部73は、短絡環に対して嵌合される第1の補強部材(以下、「第1補強部材」と記載する)と、かかる第1の補強部材に対して嵌合されるとともに、回転軸72に対して固定される第2の補強部材(以下、「第2補強部材」と記載する)とを含む。かかる短絡部73の詳細については、図2以降を用いて後述する。
【0028】
なお、以下では、回転子コア71の負荷側端面の短絡部73のみに符号を付して説明を行うが、反負荷側端面の短絡部についても同様の構成であるものとする。
【0029】
端子箱8は、誘導電動機1の外部接続端子を収納する筐体であり、反負荷側ブラケット41へ取り付けられる。
【0030】
ファンケース9は、冷却ファン91を収納する筐体であり、モータフレーム3へ取り付けられる。また、ファンケース9は、モータフレーム3と連通する連通孔93と、冷却風を排気する排気孔94とを有する。
【0031】
冷却ファン91は、ファンケース9の中に取り付けられ、連通孔93を介して吸気した冷却風を排気孔94から排気する。なお、冷却ファン91と連通孔93との間には、冷却風を案内する冷却風ガイド92が設けられる。
【0032】
以下では、主に、図1を用いて説明した実施形態に係る誘導電動機1の回転子7について、図2以降を用いて説明する。なお、図1に示すA−A断面は、後述する図3Aを用いた説明において示すこととする。
【0033】
図2は、実施形態に係る回転子7の外観図である。図1を用いた説明と重複するが、図2に示すように、回転子7は、回転子コア71と、回転軸72と、短絡部73とを備える。
【0034】
回転子コア71は、環状の電磁鋼板を複数枚積層して筒状に形成される。なお、かかる積層において、電磁鋼板同士はカシメなどによって接合される。
【0035】
ここで、回転子コア71の内部構造について、図3Aを用いて説明しておく。図3Aは、回転子コア71の断面図である。なお、図3Aは、図1において示したA−A断面を図示したものである。
【0036】
図3Aに示すように、回転子コア71は、回転軸72まわりに環状に配置されたスロット711を有する。かかるスロット711にはそれぞれ、上述のようにアルミニウムなどの磁性素材からなる導体712が鋳込まれる。なお、以下では、導体712は、アルミニウムからなるものとする。
【0037】
ここで、スロット711は、回転子コア71を軸方向(すなわち、Y軸方向)に貫いて設けられているため、回転子コア71の端面には導体712の端部が露出することとなる。
【0038】
なお、図3A(および後述する図3B)には、4個のスロット711のみを図示し、他のスロット711については図示を省略している。したがって、図3A(および後述する図3B)は、スロット711の個数を特に限定するものではない。同様に、スロット711の断面形状を限定するものではない。
【0039】
図2の説明に戻り、短絡部73について説明する。図2に示すように、短絡部73は、短絡環731と、第1補強部材732と、第2補強部材733とを備える。短絡環731は、導体712と同様にアルミニウムからなっており、アルミダイキャストで、回転子コア71の端面に、導体712と一体的に形成されている。
【0040】
かかる場合の正面図を図3Bに示す。図3Bに示すように、短絡環731は、環状に配置されたスロット711に鋳込まれる導体712と一緒に、アルミダイキャストで一体成型され、回転子コア71の両端面に設けられる。
【0041】
すなわち、短絡環731は、導体712をその両端で短絡する。これにより、「かご形回転子」が形成されることとなる。
【0042】
図2の説明に戻り、第1補強部材732について説明する。図2に示すように、第1補強部材732は、短絡環731に対して取り付けられる環状の補強部材である。このとき、第1補強部材732は、図4に示すように、短絡部73の外周側に軸方向の空隙i1を設けつつ、取り付けられる。
【0043】
第2補強部材733は、第1補強部材732に対して取り付けられるとともに、回転軸72に対して固定される、環状の補強部材である。このとき、第2補強部材733は、短絡部73の外周側に軸方向の空隙i2を設けつつ、取り付けられる。
【0044】
なお、第1補強部材732は、ステンレスなどの非磁性素材から形成され、第2補強部材733は、炭素鋼などから形成される。かかる点の詳細については、次の図4を用いた説明において後述する。
【0045】
図4は、図1に示した短絡部73の拡大図である。図2を用いた説明と重複するが、図4に示すように、第1補強部材732は、短絡部73の外周側に軸方向の空隙i1を設けつつ、短絡環731に対して取り付けられる。なお、このとき、短絡部73の内周側には、同じく軸方向の空隙i3が設けられる。
【0046】
そして、かかる取り付けは、嵌合部f1における、中間嵌めまたは締まり嵌めによって行われる。このとき、図4に示すように、第1補強部材732は、短絡環731の外周側へ嵌合される。
【0047】
また、第2補強部材733は、短絡部73の外周側に軸方向の空隙i2を設けつつ、第1補強部材732に対して取り付けられる。なお、このとき、短絡部73の内周側には、同じく軸方向の空隙i4が設けられる。
【0048】
そして、かかる取り付けは、嵌合部f2における、中間嵌めまたは締まり嵌めによって行われる。このとき、図4に示すように、第1補強部材732は、第2補強部材733の外縁に沿って設けられた環状の凸部の内周側へ嵌合される。
【0049】
また、第2補強部材733は、あわせて回転軸72の外周面へ固定される。かかる固定は、嵌合部f3における、焼き嵌めなどによって行われる。
【0050】
ここで、従来の短絡部73’の構成例について、図7を用いて述べておく。図7は、従来の短絡部73’の構成例を示す図である。
【0051】
図7に示すように、従来の短絡部73’は、短絡環731と、補強部材733’とを備えていた。そして、補強部材733’は、短絡環731および回転軸72に対して嵌合されていた。
【0052】
そして、たとえば、短絡環731には、アルミニウムが、補強部材733’には、短絡環731を流れる磁束の流れを妨げないように非磁性のニッケル合金やチタンなどが、回転軸72には炭素鋼が、それぞれ用いられていた。
【0053】
ここで、短絡環731、補強部材733’および回転軸72をそれぞれ形成する素材の線膨張係数に着目すると、従来、これら部材の線膨張係数は「短絡環731>回転軸72>補強部材733’」の関係にあった。
【0054】
このため、たとえば、回転軸72の軸方向への線膨張(すなわち、熱によるY軸の正方向への伸び)を、かかる回転軸72よりも線膨張係数の小さい補強部材733’が阻害し、回転軸72を曲げてしまうおそれがあった。また、これにより、回転ブレや振動が生じるおそれがあった。
【0055】
また、ニッケル合金やチタンなどは一般に高価材料であり、かつ、加工費もかさむことが知られている。したがって、従来の短絡部73’は、コスト的にも不経済であった。
【0056】
図4の説明に戻る。そこで、本実施形態に係る回転子7では、補強部材を第1補強部材732と第2補強部材733とで構成し、線膨張係数が「短絡環731>第1補強部材732>第2補強部材733≒回転軸72」の関係となるように組み合わせることとした。
【0057】
具体的には、短絡環731と接する第1補強部材732には、アルミニウムである短絡環731より線膨張係数が小さく、廉価な非磁性素材を用いる。たとえば、以下では、第1補強部材732は、かかる条件を満たすステンレスからなるものとする。
【0058】
また、第2補強部材733には、ステンレスである第1補強部材732より線膨張係数が小さく、回転軸72と略同一の線膨張係数を有する素材を用いる。たとえば、以下では、第2補強部材733は、かかる条件を満たす炭素鋼からなるものとする。
【0059】
また、第1補強部材732については、たとえば、軸方向(すなわち、Y方向。以下、同様。)に薄く形成するなど、所定の弾性が得られる形状に形成することとした。
【0060】
さらに、上述したように、第1補強部材732の軸方向の前後に、空隙i1〜i4を設けることとした。
【0061】
このような構成とした場合、まず、第1補強部材732は、非磁性素材からなるので、短絡環731を流れる磁束の流れを妨げることがない。また、第1補強部材732は、所定の弾性を有するので、短絡環731と第2補強部材733との線膨張の差を弾性的に吸収することができる。
【0062】
また、第1補強部材732は、軸方向の前後に空隙i1〜i4を有するので、かかる空隙i1〜i4を埋める範囲内で滑ることによって、短絡環731と第2補強部材733との線膨張の差を吸収することができる。
【0063】
また、第1補強部材732の線膨張係数は、短絡環731の線膨張係数より小さいので、短絡環731をY軸の正方向から負方向へ向けて確実に押さえることができる。同様に、第2補強部材733の線膨張係数は、第1補強部材732の線膨張係数より小さいので、第1補強部材732をY軸の正方向から負方向へ向けて確実に押さえることができる。
【0064】
また、第2補強部材733は、回転軸72と略同一の線膨張係数を有するので、回転軸72の軸方向への線膨張を阻害しない。すなわち、回転軸72を曲げないので、回転ブレや振動を防止することができる。
【0065】
したがって、実施形態に係る回転子7およびそれを備える誘導電動機1によれば、高温環境下においても支障なく駆動することができる。また、ステンレスや炭素鋼といった一般的で廉価な素材を用いることによって、コスト的な不経済を解消することができる。
【0066】
なお、上述した例では、各部材の線膨張係数を「短絡環731>第1補強部材732>第2補強部材733≒回転軸72」の関係とする場合について述べたが、隣接する部材については同一の線膨張係数を有してもよい。したがって、線膨張係数が「短絡環731≧第1補強部材732≧第2補強部材733≒回転軸72」の関係となる組み合わせであってもよい。
【0067】
ところで、これまでは、回転軸72が、回転子コア71の内周面に直接固着されている場合を例に挙げて説明を行ってきたが、回転軸72は、回転子コア71に対し、スリーブを介して間接的に固定される場合もある。かかる変形例について、図5を用いて説明する。
【0068】
図5は、変形例に係る回転子7Aの構成例を示す縦断面図である。なお、図5は、図1に示した実施形態に係る誘導電動機1の回転子7の構成例と対応しており、スリーブ74をさらに備える点以外は図1と同様であるので、両者に共通する説明は適宜省略することとする。
【0069】
図5に示すように、変形例に係る回転子7Aは、スリーブ74をさらに備える。スリーブ74は、筒状の継手部材であり、その外周面は、焼き嵌めなどによって回転子コア71の内周面に固着される。
【0070】
なお、スリーブ74は、回転軸72と略同一の線膨張係数を有する素材から形成されることが好ましい。ここでは、回転軸72と同じく炭素鋼からなるものとする。
【0071】
また、スリーブ74の内周面には、回転軸72の外周面が固着される。すなわち、回転軸72は、回転子コア71に対し、スリーブ74を介して間接的に固定されることとなる。
【0072】
なお、ここで、スリーブ74として、軸方向に段差を設けたステップドスリーブを用いることによって、回転軸72の回転精度を損ねることなく、回転軸72の剛性を高めることができる。
【0073】
そして、このようにスリーブ74が設けられている場合、第2補強部材733は、スリーブ74の外周面へ焼き嵌めなどによって固定される。言い換えれば、第2補強部材733は、回転軸72に外接して設けられるスリーブ74を介して間接的に、回転軸72に対して固定される(図中の嵌合部f3’参照)。
【0074】
ここで、第2補強部材733は、回転軸72およびスリーブ74と同じく炭素鋼であるので、図4を用いて説明したのと同様に、回転軸72およびスリーブ74の線膨張を阻害しない。すなわち、回転軸72およびスリーブ74を曲げないので、回転ブレや振動を防止することができる。
【0075】
このように、スリーブ74が設けられる構成であっても、高温環境下において支障なく駆動することができる誘導電動機1を提供することができる。なお、スリーブ74が設けられている場合、回転軸72を後付けできるので、ユーザにとっては、回転軸72の選定の自由度が高いという利点がある。
【0076】
ところで、誘導電動機1の回転ブレや振動は、回転軸72が曲がる場合だけでなく、回転子7のバランスが偏っている場合などにも生じうる。これに対処するため、第2補強部材733は、回転子7のバランスウェイトを兼ねることができる。かかる点について、図6を用いて説明する。
【0077】
図6は、第2補強部材733の正面図である。図6に示すように、第2補強部材733は、周方向に沿って配列する装着孔733aを備える。装着孔733aは、回転子7のバランスをとるバランサーを装着するための装着部である。
【0078】
ここで、たとえば、バランサーとしてネジが用いられる場合には、装着孔733aに対してかかるネジが螺合される。
【0079】
また、たとえば、バランサーとしてパテが用いられる場合には、装着孔733aに対してかかるパテが充填される。
【0080】
なお、図6には、装着孔733aが、周方向に沿った等間隔で12個設けられている例を示しているが、装着孔733aの個数や間隔を限定するものではない。また、同様に、装着孔733aの形状を限定するものではない。
【0081】
上述してきたように、実施形態に係る誘導電動機および誘導電動機の回転子は、短絡環と、第1補強部材と、第2補強部材とを備える。短絡環は、筒状の回転子コアの回転軸まわりに環状に配置される複数の導体を、回転子コアの端面それぞれにおいて短絡する。第1補強部材は、短絡環に対して嵌合される。第2補強部材は、第1補強部材に対して嵌合されるとともに、回転軸に対して固定される。
【0082】
したがって、実施形態に係る誘導電動機および誘導電動機の回転子によれば、高温環境下においても支障なく駆動することができる。
【0083】
なお、上述した実施形態では、導体および短絡環がアルミニウムであり、第1補強部材がステンレスであり、第2補強部材が炭素鋼である場合について説明したが、かかる各部材の素材を限定するものでないことは言うまでもない。また、上述した実施形態では、空冷方式である誘導電動機を例示したが、液冷方式であってもよい。
【0084】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 誘導電動機
2 モータカバー
3 モータフレーム
6 固定子
7 回転子
8 端子箱
9 ファンケース
21 吸気孔
31 第1放熱フィン
32 第2放熱フィン
41 反負荷側ブラケット
42 負荷側ブラケット
51 反負荷側軸受
52 負荷側軸受
61 固定子コア
62 固定子巻線
71 回転子コア
72 回転軸
73 短絡部
74 スリーブ
91 冷却ファン
92 冷却風ガイド
93 連通孔
94 排気孔
711 スロット
712 導体
731 短絡環
732 第1補強部材
733 第2補強部材
733a 装着孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の回転子コアの回転軸まわりに環状に配置される複数の導体を、前記回転子コアの端面それぞれにおいて短絡する短絡環と、
前記短絡環に対して嵌合される第1の補強部材と、
前記第1の補強部材に対して嵌合されるとともに、前記回転軸に対して固定される第2の補強部材と
を備えることを特徴とする誘導電動機。
【請求項2】
前記第1の補強部材は、
前記短絡環の外周側へ嵌合され、かつ、前記第2の補強部材に設けられた環状の凸部の内周側へ嵌合されることを特徴とする請求項1に記載の誘導電動機。
【請求項3】
前記第1の補強部材は、
非磁性素材からなり、かつ、所定の弾性が得られる形状に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の誘導電動機。
【請求項4】
前記第2の補強部材は、
前記回転軸の外周面へ直接的に、または、前記回転軸に外接して設けられるスリーブを介して間接的に、前記回転軸に対して固定されることを特徴とする請求項1、2または3に記載の誘導電動機。
【請求項5】
前記第2の補強部材は、
前記回転軸および前記スリーブと略同一の線膨張係数を有することを特徴とする請求項4に記載の誘導電動機。
【請求項6】
前記第1の補強部材は、
前記短絡環の線膨張係数以下の線膨張係数を有し、
前記第2の補強部材は、
前記第1の補強部材の線膨張係数以下の線膨張係数を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の誘導電動機。
【請求項7】
前記第2の補強部材は、
回転子のバランスをとるバランサーを装着するための装着部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の誘導電動機。
【請求項8】
筒状の回転子コアの回転軸まわりに環状に配置される複数の導体を、前記回転子コアの端面それぞれにおいて短絡する短絡環と、
前記短絡環に対して嵌合される第1の補強部材と、
前記第1の補強部材に対して嵌合されるとともに、前記回転軸に対して固定される第2の補強部材と
を備えることを特徴とする誘導電動機の回転子。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−90447(P2013−90447A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228877(P2011−228877)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】