説明

誘電体バリア放電ランプおよび紫外線照射装置

【課題】
被照射物から飛散したりした不純物が誘電体バリア放電ランプの表面に付着するのを防止した誘電体バリア放電ランプおよびこれを用いた紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】
誘電体バリア放電ランプEXLは、紫外線透過性の材料からなる細長い管状をなす気密容器1と、気密容器内に封入されたエキシマ生成ガスと、誘電体バリア放電を気密容器内にその管軸方向のほぼ全長にわたって生起するように配設された長い内部電極2と、気密容器の外面に配設され内部電極との協働によって気密容器内に誘電体バリア放電を生起するように作用する外部電極OEと、気密容器の管軸方向に沿った前面部を横切って気流を形成する気流発生手段ABとを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体バリア放電ランプおよびこれを用いた紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キセノンなどの希ガスまたは希ガスのハロゲン化物などを無声放電すなわち誘電体バリア放電を行わせて、固有の単色に近い放射を発生させるエキシマ放電ランプすなわち誘電体バリア放電ランプは、数多くの文献に記載されて従来から知られている。誘電体バリア放電においては、パルス状の電流が流れる。このパルス状の電流は、高速の電子流を持ち、かつ、休止期間が多いため、キセノンなどの紫外線を出す物質を一時的に分子状態(エキシマ状態)に結合させ、それが基底状態に戻るときに再吸収の少ない短波長紫外線を効率よく放出する。なお、キセノンの場合、172nmを中心波長とする半値幅の広い分子発光を行う。波長172nmの紫外線は、そのエネルギーが低圧水銀ランプから得られる波長185nmや254nmの紫外線より大きいとともに、分解したい有機化合物の結合エネルギーより大きい。このため、波長172nmの紫外線を照射することによって、上記有機化合物の結合を切断し、分解して除去することができる。さらに、波長172nmの紫外線照射を大気雰囲気中で行うことにより、大気中の酸素が分解して活性酸素を生成し、結合が切断された有機化合物が活性酸素と反応して、炭酸ガス(CO)や水(HO)などを生成させるので、有機化合物の除去が容易になる。したがって、誘電体バリア放電ランプは、紫外線光源として甚だ効果的である。
【0003】
誘電体バリア放電ランプとして、細長い管状の気密容器を用いて誘電体バリア放電を行う誘電体バリア放電ランプが知られている(特許文献1参照。)。特許文献1に記載されている誘電体バリア放電ランプは、細長い気密容器、この気密容器内の軸方向に延在する内部電極および気密容器内に封入されたエキシマ生成ガスを備えた発光管を形成し、冷却機能を有するとともに気密容器の外面の一部が嵌合するように凹窪させたアルミニウム製の灯体を外部電極として気密容器の外面に当接して、気密容器の管軸方向に沿って一様な誘電体バリア放電を生起させるとともに、発光管から発生する熱を速やかに放散させて発光効率を高い状態に維持するように構成されている。また、外部電極と気密容器とを互いに密接させるために、両者を圧接するように構成している。
【0004】
上述した従来のこの種の誘電体バリア放電ランプを用いて紫外線照射を行う場合、被照射物の大面積化に伴ってさらに長尺な誘電体バリア放電ランプが開発され、その有効長が1mを超えるものが用いられるようになった。このような長尺の誘電体バリア放電ランプを用いると、例えば大面積液晶基板のアッシング、感光性樹脂の硬化および殺菌など多様な工業的応用が可能になる。
【特許文献1】特開2003−197152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、誘電体バリア放電ランプのランプを用いて被照射物に紫外線を照射して例えばドライ洗浄を行う際に、被照射物に付着していて紫外線照射により飛散した不純物や雰囲気中において発生したり、雰囲気中に浮遊したりする不純物が誘電体バリア放電ランプの表面に付着する。その結果、誘電体バリア放電ランプから外部へ放射される紫外線量が低減し、被照射物に対する紫外線照度が点灯時間の経過に伴って低下するという問題がある。そうして、紫外線照度が低下すると、所定の洗浄効果などの紫外線照射効果を得にくくなる。
【0006】
本発明は、被照射物から飛散したりした不純物が誘電体バリア放電ランプの表面に付着するのを防止した誘電体バリア放電ランプおよびこれを用いた紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の誘電体バリア放電ランプは、紫外線透過性の材料からなる細長い管状をなす気密容器と;気密容器内に封入されたエキシマ生成ガスと;誘電体バリア放電を気密容器内にその管軸方向のほぼ全長にわたって生起するように配設された長い内部電極と;気密容器の外面にその管軸方向に沿って配設され、内部電極との協働によって気密容器内に誘電体バリア放電を生起するように作用する外部電極と;気密容器の管軸方向に沿った前面部を横切って気流を形成する気流発生手段と;を具備していることを特徴としている。
【0008】
本発明においては、以上の構成を具備していることにより、被照射物に付着していた不純物や雰囲気中に浮遊していた不純物などの不純物が誘電体バリア放電ランプに付着しようとしても、気密容器の管軸方向に沿った前面部を横切って形成された気流により遮られるため、誘電体バリア放電ランプの表面には付着しなくなる。その結果、誘電体バリア放電ランプの表面における不純物の付着が防止されるので、不純物付着によって紫外線放射量が低減するのが効果的に防止され、長期間にわたり被照射物に対する紫外線照度を所要の程度に維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不純物が誘電体バリア放電ランプの表面に付着するのを効果的に防止して、長期間にわたり被照射物に対する紫外線照度を所要の程度に維持する誘電体バリヤ放電ランプおよびこれを用いた紫外線照射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[第1の形態]
図1ないし図4は、本発明の誘電体バリア放電ランプを実施するための第1の形態を示し、図1は誘電体バリア放電ランプの一部断面正面図、図2は発光管の一部切欠正面図、図3は発光管の支持部および給電部を示す一部切欠・断面正面図、図4は側面断面図である。本形態において、誘電体バリア放電ランプEXLは、気密容器1、エキシマ形成ガス、内部電極2、外部電極OEおよび気流形成手段ABを具備し、高周波点灯回路HFIにより付勢されて点灯する。なお、気密容器1、エキシマ形成ガスおよび内部電極2は、予め組み立てられて一体化された発光管LTを構成している。
【0011】
<発光管LTについて> 本形態において、発光管LTは、上記の構成に加えてその両端に一対の給電部3A、3Bおよび一対の支持部5、5を有している。
【0012】
(気密容器1について) 気密容器1は、紫外線透過性の材料からなり、細長い放電空間1aが内部に形成されている。例えば、細長い管の両端が封止されて内部に円柱状の放電空間1aが形成された構造とすることができる。また、後述する第2の形態におけるように、2重の細長い管の両端を封止することによって内部に円筒状の細長い放電空間1a´が形成された構造とすることもできる。紫外線透過性の材料としては、一般的に合成石英ガラスを用いて製作される。しかし、本発明においては、利用しようとする波長の紫外線に対して透過性を有していればどのような材料で構成してもよい。
【0013】
また、気密容器1は、所要の紫外線量を確保するべく多数の誘電体バリア放電ランプEXLを比較的狭い間隔で並列に配置して使用するのを許容するために、直線性に優れた直管であるのが好ましいが、多少湾曲していても差し支えない。実際上、細長い管を形成する際に多少の湾曲が生じやすく、例えば全長約1200mmに対して最大1mm程度以下の湾曲が形成され得る。しかし、この程度の湾曲は、ほぼ直管であるとして許容される。
【0014】
(エキシマ生成ガスについて) エキシマ生成ガスとしては、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)またはヘリウム(He)などの希ガスの一種または複数種の混合あるいは希ガスハロゲン化物、例えばXeCl、KrClなどを用いることができる。なお、希ガスハロゲン化物を封入する場合、希ガスとフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)などのハロゲンを封入して、気密容器1の内部でハロゲン化物が生成さしれるようにてもよい。また、エキシマ生成ガスに加えてエキシマを生成しないガス、例えばネオン(Ne)などを混合することも場合によっては許容される。
【0015】
(内部電極2について) 内部電極2は、気密容器1の壁面を挟んで外部電極OEと対向するように配設される。しかし、内部電極2は、気密容器1の放電空間1a内に露出するように封入されている態様および例えば気密容器1の内側において放電空間1aの外部に配設された態様のいずれでもよい。後者の態様の場合、例えば気密容器1が2重管構造であり、内部電極2は、気密容器1の中心軸側に形成された筒状の壁面に沿って配設される。したがって、本発明において、内部電極2とは、気密容器1を外部から見た場合に相対的に気密容器1の内側に配設される電極であることを意味すると理解すべきである。
【0016】
以上の説明から理解できるように、本発明において、内部電極2は、気密容器1の内部に、その管軸方向のほぼ全長すなわちランプの有効長の全体にわたって誘電体バリア放電を生起するように配設された電極、好ましくは管軸方向に長い電極であれば、その余はどのような構成であってもよい。なお、図1、図3および図4において、内部電極2は図示を省略している。
【0017】
図2に示す内部電極2の好適な構成例について説明する。すなわち、この内部電極2は、多数の独立したメッシュ状部分2bが気密容器1の軸方向に分散配置され、かつ、周囲にそれぞれ空隙を介して配設された構成のメッシュ状をなしているとともに、連結部分2aを介して接続して一体化された構造となっていて、気密容器1の内部に挿入された状態で配設される構成を備えている。このような内部電極2を用いることにより、紫外線発生量を相対的に多くすることができる。なお、メッシュ状部分2bは、周方向に対して連続していてもよいし、分断していてもよい。
【0018】
したがって、本発明において、内部電極2がメッシュ状をなしている場合、そのメッシュ状部分2bは、具体的には例えばリング状、スパイラル状またはコイル状あるいは網目状などをなしていることが許容される。
【0019】
次に、内部電極2が石英ガラスからなる気密容器1の内部に配設される場合の支持構造および給電構造について説明する。内部電極2を気密容器1内に封着するには、図2に示すように、封着金属箔1b1を用いた封着構造を採用することができる。すなわち、内部電極2の連結部分2aの両端を引き延ばして形成された直線状の端部2cを封着金属箔1b1に溶接などにより接続して、内部電極2を気密容器1内に挿入してから、端部の石英ガラスを加熱して軟化状態にして封着金属箔1b1の上からピンチシールする。そうすれば、気密容器1の端部に封止部1bが形成されて内部電極2が所定の位置に支持される。
【0020】
(給電部3A、3B) 給電部3A、3Bは、内部電極2に対して誘電体バリア放電に必要な電流を供給するための給電端を構成するものである。そして、給電部3A、3Bは、それぞれ棒状をなしていて、内端が気密容器1の両端に形成された封止部1bに埋設されたモリブデン箔1b1に溶接され、基端が気密容器1の両端に形成された封止部1bから外部の管軸方向へ突出している。また、給電部3A、3Bは、後述する支持部5の内部において、それぞれ給電線4に加締め接続されている。なお、給電線4は、後述する高周波点灯回路HFIの出力端から延在している。
【0021】
(支持部5) 支持部5は、図3に示すように、有底円筒状のキャップ体5a、締付けリング5bおよび取付アーム5cを備えている。キャップ体5aは、発光管LTの端部を包囲する。そして、底部に給電線4の挿通孔5a1を有している。締付けリング5bは、キャップ体5aの開口端に配設されていて、気密容器1の端部に固定される。また、キャップ体5aは、金属および絶縁体のいずれで形成してもよく、また所望により内面を絶縁体でライニングした金属製とすることもできる。取付アーム5cは、キャップ体5aの側面から図において上方へ突出していて、発光管LTを図1に示す位置出しアーム8にキャップ体5aの上面が当接した状態で取付アーム5cを用いて図示しない固定部分に取り付けられる。なお、位置出しアーム8は、外部電極OEの管軸方向両端から気密容器1の端部方向へ延在して発光管LT、したがって気密容器1の取付位置を規定する。また、取付アーム5cは、金属および絶縁体のいずれで形成してもよく、また所望により中間に絶縁物を介在させた構造として取付位置との間を絶縁した構造とすることもできる。そうして、キャップ体5aが絶縁体製または絶縁体でライニングした金属製であったり、取付アーム5cを取付位置との間が絶縁される構造としたり、あるいは位置出しアーム8自体または当該アーム8と支持部5との間を絶縁することによって、給電部3A、3Bとの間にコロナ放電が発生するために、誘電体バリヤ放電ランプからの紫外線放射が低減するのを抑制できる。
【0022】
<外部電極OEについて> 外部電極OEは、少なくともランプの有効長の部分において、気密容器1の外面にその管軸方向に沿って密接するか、または適度の間隙を保持して延在するように配設されているとともに、内部電極2に対向し、外部電極OEおよび内部電極2の協働によって、少なくとも気密容器1の一つの壁面を誘電体とする誘電体バリア放電を気密容器1の放電空間1a内に生起するように作用する。
【0023】
また、外部電極OEは、剛性を備えた構成および可とう性を備えた構成のいずれであってもよい。剛性の場合、導電性金属からなる熱容量の大きなブロック状をなした図示のような外部電極OEとなる。したがって、従来、灯体と称していた部材を、所望によりそのまま外部電極として用いることが可能である。この場合、従来用いていたアルミニウム製の薄板からなる外部電極OEを灯体と気密容器1との間に挟持するような構造を採用する必要がなくなる。また、誘電体バリア放電が生起している領域の気密容器1部分を冷却するために、外部電極OEに冷却手段9を配設することができる。この場合、冷却手段9は、どのような構成であってもよいが、冷媒が内部に通流する冷却水路を外部電極OEに外付けしたり、または内部に一体に形成したりして付設するのが好ましい。さらに、外部電極OEは、連続した面状またはメッシュ状のいずれの状態をなしていてもよい。なお、メッシュ状とは、網目状、パンチング状、格子状などをなしていることをいう。
【0024】
<気流発生手段AB> 気流発生手段ABは、気密容器1の管軸方向に沿った前面部を横切って気流を形成する手段である。形成される気流は、雰囲気、例えば大気を用いた気流および雰囲気の如何にかかわらず不活性ガスを用いた気流など清浄な気体であればどのような気流でもよい。しかし、形成する気流は、不純物が気密容器1の特に被照射物に対面する部位の表面に付着するのを阻止できる程度の速度および流量でなければならない。
【0025】
また、気流発生手段ABは、単一の発光管LTに対して1対1の関係で配置することができる。しかし、所望により、隣接して並列配置した複数の発光管LTに対して単一の気流発生手段ABを各誘電体バリヤ放電ランプに対して共通する手段として配設することも許容される。
【0026】
さらに、気流発生手段ABは、誘電体バリア放電ランプEXLの発光管LTまたは外部電極OEに結合した構成であってもよいし、分離した構成であってもよい。後者は、上述した複数の発光管LTに対して単一の気流発生手段ABを配設する構成の場合に好適である。
【0027】
さらにまた、気流発生手段ABは、気体吹き出し構造、気体吸い込み構造または気体吹き出しおよび気体吸い込み構造を備えた構成のいずれであってもよい。また、気密容器1の管軸に沿って長い単一の気体吹き出しまたは気体吸い込み構造体を配設した構造、あるいは気体吹き出しまたは気体吸い込み構造体の複数を気密容器1の管軸に沿って配設した構造などであることを許容する。
【0028】
図示の気流発生手段ABは、気密容器1の長手方向に気体吹き出し管10を延在させるとともに、図4に示すように、気体吹き出し管10の気密容器1に対向する側面に多数の気体吹き出し孔11を適当な間隔で形成している。なお、気体吹き出し管を外部電極OEと一体に形成してもよい。また、気体吹き出し孔に代えて細長い気体吹き出しスリットを形成してもよい。さらに、気密容器1の長手方向に気体吹き出し管を延在させるのに代えて、多数の気体吹き出しパイプを気密容器1の管軸方向に沿って配列してもよい。この場合、多数の気体吹き出しパイプは、気密容器1の管軸に対してほぼ直交するように配置される。
【0029】
<高周波点灯回路HFI> 高周波点灯回路HFIは、誘電体バリア放電ランプEXLの内部電極2と外部電極OEとの間に高周波電圧を印加して、誘電体バリア放電ランプEXLを付勢して点灯する。また、高周波点灯回路HFIは、並列インバータを主体として構成されており、その高周波出力は、その高電位側が給電線4、4を介して誘電体バリア放電ランプEXLにおける発光管LTの一対の給電部3A、3Bに、また低電位側が外部電極OEに、それぞれ印加される。
【0030】
<誘電体バリア放電ランプEXLの動作> 誘電体バリア放電ランプEXLは、高周波点灯回路HFIの高周波出力端の一方、例えば高圧側出力端が給電線4、4を経由して内部電極2から外部へ導出された一対の給電部3A、3Bに接続され、他方、例えば低圧(接地)側出力端が外部電極OEの一端に接続されているので、高周波点灯回路HFIの図示しない入力電源が投入されると、高周波を発生し、その高周波出力が内部電極2と、これに気密容器1の壁面を介して対向している外部電極OEとの間に印加される。その結果、誘電体バリア放電が気密容器1の内部に生起する。この誘電体バリア放電によってキセノンのエキシマにより172nmを中心波長とする真空紫外光を放射する。真空紫外光は、気密容器1の壁面を透過して外部へ導出されるので、これをそれぞれの目的に応じて利用することができる。
【0031】
また、誘電体バリア放電ランプEXLが点灯すると、気流形成手段ABが作動して気密容器1の図において下面近傍位置を通過するように、気密容器1を横切る気流が誘電体バリア放電ランプEXLの少なくとも有効長の全体にわたり発生してエアーカーテンを形成する。その結果、気密容器1の表面がエアーカーテンによって保護されるので、気密容器1の表面への不純物の付着が抑制される。
【0032】
図5は、本発明の第1の形態における誘電体バリア放電ランプの点灯時間に対する紫外線照度の変化を比較例のそれと一緒に示すグラフである。図において、横軸は点灯を、縦軸は紫外線照度を、それぞれ示す。図中、曲線Aは本発明、曲線Bは比較例であり、いずれの曲線も点灯約3500時間までの取得データに基づいて作成してある。なお、比較例は、気流形成手段を備えていない以外は本発明と同じ仕様の従来技術である。図は、本発明および比較例を同一条件でドライ洗浄処理に用いた場合におけるデータに基づいて作成したものである。測定条件は、誘電体バリア放電ランプEXLの側面方向300mm離間した位置から風速3m、0.23m/秒の風量の空気を吹き付け、紫外線照射距離3mmにおける紫外線照度を測定したものである。なお、誘電体バリア放電ランプEXLの表面における
図から理解できるように、本発明によれば、不純物の付着が防止されるため、誘電体バリア放電ランプの長時間にわたる点灯でも紫外線照度の低下が少ない。これに対して、比較例は、不純物の付着のために、紫外線照度の低下が顕著である。
[第2の形態]
図6は、本発明の誘電体バリア放電ランプを実施するための第2の形態を示す側面断面図である。本形態は、誘電体バリア放電ランプEXLの発光管LTが異なる。
【0033】
すなわち、発光管LTは、気密容器1が2重管構造であり、内部に形成される放電空間1aが円筒状をなすとともに、内部電極2が気密容器1´の内方において気密容器1´の外面に配置されている。
【0034】
内部電極2´は、気密容器1´の円筒状をなす内側外面に配設されるために円筒状をなしている。そして、導電性材料からなる板材やメッシュ材を用いて形成されている。さらに、気密容器1の内側の円筒状をなす気密容器1の外面にほぼ密接して配設されている。外部電極OEは、第1の形態におけるのと同様の構成および気密容器1に対する配置となっている。
【0035】
図7ないし図10は、本発明の紫外線照射装置を実施するための一形態としての紫外線洗浄装置を示し、図7は正面断面図、図8は底面図、図9は図8のIX−IX´線に沿う断面図である。各図において、図1ないし図4と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。紫外線照射装置UVWは、紫外線照射装置本体21、高周波点灯回路22および複数の誘電体バリア放電ランプEXLを具備している。
【0036】
本発明において、紫外線照射装置UVWは、誘電体バリア放電ランプEXLから発生する紫外線を利用するあらゆる装置を意味する。例えば、半導体ステッパー、光洗浄装置、光硬化装置および光乾燥装置などである。また、紫外線照射装置本体22は、紫外線照射装置UVWから誘電体バリア放電ランプEXLおよび高周波発生回路22を除外した残余の部分により構成される。
【0037】
誘電体バリア放電ランプEXLは、必要に応じて各図に示すように複数本を使用することができる。気流形成手段ABは、複数本の誘電体バリア放電ランプEXLに対して単一の構成のものが紫外線照射装置本体22の下面に配設されている。なお、誘電体バリア放電ランプEXLは、気流形成手段ABを除いて図1ないし図4に示す第1の形態と同じ構造を有している。
【0038】
気流形成手段ABは、紫外線照射装置本体22の下面に配設されている。
【0039】
高周波点灯回路22は、誘電体バリア放電ランプEXLを点灯する。また、高周波点灯回路22は、高周波発生手段を含み、高周波電圧を発生して誘電体バリア放電ランプに、その点灯に必要な高周波電力を供給する。なお、高周波は、10kHz以上、好適には100kHz〜2MHzの繰り返し周波数のパルス電圧を発生する。
【0040】
高周波点灯回路22は、パルス電圧を出力するのであれば、その余の構成を問わないが、例えば矩形波出力のインバータを用いることにより、矩形波のパルスを得ることができる。
【0041】
そうして、本発明においては、誘電体バリア放電ランプEXLが気流形成手段ABを備えているため、気密容器の表面に対する不純物の付着が防止され、紫外線照度の低下が低減する紫外線照射装置UVWを実現することができる。
【0042】
ところで、紫外線照射装置本体21は、全体として箱状をなし、内部が上下に紫外線照射室21aと電源室21bとに区分されている。紫外線照射室21aと電源室21bとは、一端が蝶番21cによって開閉可能に構成されている。
【0043】
紫外線照射室21aには、後述するように複数の誘電体バリア放電ランプEXLが並列配置されている。複数の誘電体バリア放電ランプEXLは、それらの外部電極が単一ブロックとして形成されている。したがって、外部電極OEの凹曲した曲面が隣接状態で複数並列配置されている。また、紫外線照射室21aは、洗浄装置における被照射物の搬送手段の上部に固定的に配設されるとともに、下面が開放されていて、下面の直下を通過する被照射物(図示しない。)に真空紫外光を極めて近い位置で照射するように構成されている。
【0044】
電源室21bは、その内部に高周波点灯回路22および図示を省略している制御回路を収納しており、蝶番21cを回動中心として図15において上方へ回動可能になっている。なお、21b1は、電源室21bの回動時に把持するためのハンドル、21b2は、紫外線照射装置本体21または電源室21bを運搬する際のハンドル、21b3は電源配線のプロテクタである。
【0045】
高周波点灯回路22は、電源室21b内に収納され、電源配線のプロテクタ21b3を経由して電源室21b内に導入された電源を変換して高周波電圧を発生して、複数の誘電体バリア放電ランプEXLのそれぞれに給電する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の誘電体バリア放電ランプを実施するための第1の形態の一部断面正面図
【図2】同じく発光管の一部切欠正面図
【図3】同じく発光管の支持部および給電部を示す一部切欠・断面正面図
【図4】同じく側面断面図
【図5】本発明の第1の形態における誘電体バリア放電ランプの点灯時間に対する紫外線照度の変化を比較例のそれと一緒に示すグラフ
【図6】本発明の誘電体バリア放電ランプを実施するための第2の形態を示す側面断面図
【図7】本発明の紫外線照射装置を実施するための一形態としての紫外線洗浄装置を示す正面断面図
【図8】同じく底面図
【図9】同じく図7のIX−IX´線に沿う断面図
【符号の説明】
【0047】
1…気密容器、2…内部電極、4…給電線、5…保持部、8…位置出しアーム、AB…気流形成手段、EXL…誘電体バリア放電ランプ、HFI…高周波点灯回路、LT…発光管、OE…外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線透過性の材料からなる細長い管状をなす気密容器と;
気密容器内に封入されたエキシマ生成ガスと;
誘電体バリア放電を気密容器内にその管軸方向のほぼ全長にわたって生起するように配設された長い内部電極と;
気密容器の外面にその管軸方向に沿って配設され、内部電極との協働によって気密容器内に誘電体バリア放電を生起するように作用する外部電極と;
気密容器の管軸方向に沿った前面部を横切って気流を形成する気流発生手段と;
を具備していることを特徴とする誘電体バリヤ放電ランプ。
【請求項2】
請求項1記載の誘電体バリヤ放電ランプと;
誘電体バリヤ放電ランプを配設した紫外線照射装置本体と;
誘電体バリヤ放電ランプを点灯する高周波点灯回路と;
を具備していることを特徴とする紫外線照射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−185656(P2006−185656A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375861(P2004−375861)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】