説明

読取装置及び摺動構造

【課題】キャリッジに摺動部材を用いる場合であっても、読取精度の低下を防止することができる読取装置及び摺動構造を提供する。
【解決手段】読取対象に反射された光を検出するイメージセンサーと、前記イメージセンサーを保持するキャリッジ33と、前記キャリッジを一方向に摺動可能に支持するガイドレールと、前記キャリッジに固定され、前記ガイドレールと当接する摺動部材34と、を備えた読取装置であって、前記キャリッジ33は、前記摺動部材を保持する凹部35を有し、前記摺動部材34は、前記凹部35に弾性変形した状態で係合。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置及び摺動構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、透明原稿台に載置した原稿を読み取る読取装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の読取装置は、イメージセンサーを備えたキャリッジ(センサーホルダ)の移動方向の前後に、摺動性の良い材質からなるスペーサーを配置している。特許文献1の読取装置により原稿に記載された画像を読み取る際には、スペーサーをガイドシャフトに対して摺動させ、センサーホルダーをガイドシャフトに沿って移動させる。そして、イメージセンサーを原稿台ガラスに平行に走査させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−35172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の読取装置では、例えばスペーサー等、ガイドシャフトと摺動する摺動部材の寸法精度やキャリッジに対する取り付け構造によっては、例えばキャリッジが振動するなど、キャリッジの送り精度が低下する場合がある。このようなキャリッジの送り精度の低下は、イメージセンサーの読取精度を低下させる要因となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、キャリッジに摺動部材を用いる場合であっても、読取精度の低下を防止することができる読取装置及び摺動構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の読取装置は、読取対象に反射された光を検出するイメージセンサーと、前記イメージセンサーを保持するキャリッジと、前記キャリッジを一方向に摺動可能に支持するガイドレールと、前記キャリッジに固定され、前記ガイドレールと当接する摺動部材と、を備えた読取装置であって、前記キャリッジは、前記摺動部材を保持する凹部を有し、前記摺動部材は、前記凹部に弾性変形した状態で係合することを特徴とする。
【0007】
このように構成することで、摺動部材をキャリッジの凹部に係合させたときに、摺動部材とキャリッジの凹部との間に、摺動部材の弾性変形による弾性力を作用させることができる。そのため、例えば摺動部材の寸法精度がそれほど高くない場合であっても、摺動部材をキャリッジの凹部に、ガタツキがなく、安定した状態で、精度良く取り付けることができる。これにより、例えばキャリッジの振動等により、キャリッジの送り精度が低下することが防止される。したがって、本発明の読取装置によれば、イメージセンサーの読取精度の低下を防止することができる。
【0008】
また、本発明の読取装置は、前記摺動部材は、弾性変形可能に設けられた弾性部と、前記ガイドレールと当接する当接部と、を有し、前記弾性部の前記ガイドレールに沿う断面の面積が、前記当接部の前記ガイドレールに沿う断面の面積よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、弾性部の弾性変形を容易にすると共に、当接部の強度を確保することが可能になる。
【0010】
また、本発明の読取装置は、前記摺動部材は、前記ガイドレールに沿う方向及び前記ガイドレールに交差する方向に突設された突起部を有し、前記キャリッジは、前記突起部が係合する係合部を有することを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、摺動部材をキャリッジの凹部に係合させる際に、摺動部材の突起部を除く部分をガイドレールに沿う方向から凹部に収容し、最後に摺動部材の突起部を係合部に係合させることができる。したがって、キャリッジに対する摺動部材の取り付けを容易にすることができる。また、突起部を係合部に係合させる際に、突起部のガイドレールと交差する方向に突出した部分をキャリッジに当接させることができる。これにより、ガイドレールと沿う方向において、摺動部材のキャリッジに対する位置決めを行うことができる。
【0012】
また、本発明の読取装置は、前記摺動部材は、前記読取対象の読み取り時の前記キャリッジの移動方向の前方側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、キャリッジの移動時に、キャリッジの移動方向の前方側の部分に、ガイドレールに向かう力が作用する場合であっても、摺動部材により、キャリッジの移動方向の前方側の部分とガイドレールとの間の摩擦抵抗を低減することができる。したがって、キャリッジの振動等を防止し、キャリッジの送り精度の低下を防止することができる。
【0014】
また、本発明の読取装置は、前記凹部は、前記ガイドレールに沿って互いに交差するように設けられた第1保持面及び第2保持面を有することを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、摺動部材を弾性変形させ、摺動部材を第1保持面及び第2保持面に対して付勢した状態で、第1保持面及び第2保持面に当接させることができる。そして、第1保持面及び第2保持面と摺動部材との間の摩擦抵抗により、摺動部材をキャリッジの凹部に、ガタツキがなく、安定した状態で、精度良く取り付けることができる。
【0016】
また、本発明の摺動構造は、ガイドレールと、該ガイドレールに対して摺動可能に設けられたスライド部と、前記スライド部に固定され、前記ガイドレールと当接する摺動部材と、を備えた摺動構造であって、前記スライド部は、前記摺動部材を保持する凹部を有し、前記摺動部材は、前記凹部に弾性変形した状態で係合することを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、摺動部材をスライド部の凹部に係合させたときに、摺動部材と凹部との間に、摺動部材の弾性変形による弾性力を作用させることができる。そのため、例えば摺動部材の寸法精度がそれほど高くない場合であっても、摺動部材をスライド部材の凹部に、ガタツキがなく、安定した状態で、精度良く取り付けることができる。これにより、例えば振動等により、スライド部の送り精度が低下することが防止される。したがって、本発明の摺動構造を、例えばイメージセンサーのキャリッジに適用することで、イメージセンサーの読取精度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態における読取装置の平面図である。
【図2】図1に示す読取装置の斜視図である。
【図3】図1に示す読取装置のシステム構成を示す概略構成図である。
【図4】図1に示す読取装置のキャリッジの拡大斜視図である。
【図5】図1に示す読取装置のキャリッジが備える摺動部材の斜視図である。
【図6】図5に示す摺動部材とガイドレールとの当接状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の読取装置及び読取方法の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。本実施形態では、読取対象を静止させた状態でイメージセンサーを走査させる読取方法と、イメージセンサーを静止させた状態で読取対象を移動させる読取方法の二つの異なる読取方法を実行することができる読取装置について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の読取装置の平面図である。図2は、図1に示す読取装置の斜視図である。図3は、図1に示す読取装置のシステム構成の概略を示す構成図である。図4は、図1に示す読取装置のキャリッジの拡大斜視図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、読取装置SCNは、読取対象である原稿を支持する原稿支持部1と、原稿支持部1に開閉可能に設けられたカバー部2と、を備えている。
原稿支持部1の内部には、イメージセンサーを備える読取部3と、読取部3を駆動させる駆動部4とが設けられている。また、図1及び図2では図示を省略しているが、読取装置SCNは、図3に示すように、原稿を搬送する搬送部5と、原稿の読取数及び搬送量を計測して記録する計数部6と、読取装置SCNの各部を制御する制御部7とを備えている。
【0022】
図1及び図2に示すように、原稿支持部1は、原稿を支持する原稿支持面1aに、大小二つの矩形状の第1開口部11及び第2開口部12が設けられた筐体13を有している。読取部3は、第1開口部11の形成領域内の位置P1と第2開口部12の一方の外縁にかかる位置P2との間の範囲R内で移動可能に設けられている。読取部3の移動方向の第1開口部11の長さL1は、同方向の第2開口部12の長さL2よりも短くなっている。第1開口部11の同方向の長さL1は、例えば読取部3の同方向の長さL3の等倍〜数倍程度になっている。第2開口部12は、例えば読取可能な原稿の大きさよりも一回り大きい寸法に設けられている。
【0023】
第1開口部11には、光を透過する透明な樹脂等の材料からなる透光シート14が配置されている。また第2開口部12には、光を透過する透明なガラス等の材料からなる載置ガラス15が配置されている。載置ガラス15は、後述する走査読取モードにおける原稿の読取時に、原稿を載置して支持するようになっている。
【0024】
読取部3は、不図示の光源及びイメージセンサーと、これらを保持するキャリッジ33とを有している。光源としては、例えば、R、G、B、三色のLEDが用いられる。光源は、射出したR,G,Bの光を、透光シート14又は載置ガラス15を透過させて原稿に照射するようになっている。イメージセンサーとしては、例えばコンタクトイメージセンサー(CIS)が用いられる。CISは、例えば原稿と等幅のセンサーを用い、光源から射出され、原稿により反射され、透光シート14又は載置ガラス15を透過した光を、各画素に対応する一列に並んだ等倍レンズのアレイを使って結像させることで、原稿の画像や文字等を読み取るようになっている。
【0025】
駆動部4は、読取部3のキャリッジ33に固定されたベルト41と、ベルト41を駆動する一対のプーリー42,43と、プーリー42を駆動するモーター44と、キャリッジ33をガイドするガイドレール45とを有している。ベルト41は、筐体13内部の両側に配置された一対のプーリー42,43に掛け渡され、読取部3の移動方向とほぼ平行に配置されている。
【0026】
ガイドレール45は、両端部が筐体13に固定され、読取部3の移動方向と略平行に配置された断面が略円形の丸棒状の部材である。ガイドレール45には、読取部3のキャリッジ33に設けられた溝状の係合摺動部33aが係合するようになっている。ガイドレール45は、キャリッジ33の係合摺動部33aが係合することで、キャリッジ33の移動方向を規制し、キャリッジ33をガイドレール45に沿って摺動可能に支持している。
【0027】
図4は、キャリッジ33の拡大斜視図である。なお、図4では、ガイドレール45の図示を省略している。
図4に示すように、キャリッジ33の係合摺動部33aは、キャリッジ33に固定され、ガイドレール45と当接する摺動部材34と、摺動部材34を保持する凹部35とにより構成されている。摺動部材34は、例えばポリアセタール(Polyacetal,POM)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene,PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(Poly Chloro Tri Furuoro Ethylene,PCTFE)等の低摩擦材料により形成されている。
【0028】
図5は、図4に示すキャリッジ33の凹部35から取り外された状態の摺動部材34を示す斜視図である。図6は、凹部35に取り付けられた状態の摺動部材34と、ガイドレール45との当接状態を示す断面図である。
図5及び図6に示すように、摺動部材34は、一方向に延びる長細い板状の部材であり、長手方向の両端が側面視で略半円形に形成されている。摺動部材34の中央部には、弾性変形可能な弾性部34aが設けられている。弾性部34aの両側には、弾性部34aの弾性変形時にガイドレール45と当接する当接部34bが設けられている。
【0029】
弾性部34aの厚みTaは、その両側に設けられた当接部34bの厚みTbよりも薄く形成されている。また、弾性部34aの幅Waは、当接部34bの幅Wbと等しくなっている。このように、本実施形態では、弾性部34aの厚みTaを当接部34bの厚みTbよりも薄くすることで、弾性部34aのガイドレール45に平行な断面の面積が、当接部34bのガイドレール45に平行な断面の面積よりも小さくなるように形成されている。
【0030】
当接部34bは、図4に示すように摺動部材34がキャリッジ33の凹部35に保持され、図6に示すように摺動部材34が弾性変形した状態において、ガイドレール45に対向する当接面34cの一部がガイドレール45の表面に当接するようになっている。ここで、当接面34cとガイドレール45とは線接触に近い状態で当接する。また、当接面34cの周縁部には、面取りが施されている。また、当接部34bは、幅Wb方向及び厚みTb方向に突設された突起部34dを有している。
【0031】
突起部34dは、図1に示すように、キャリッジ33の係合摺動部33aがガイドレール45に係合した状態において、ガイドレール45と略平行な方向及びガイドレール45と略垂直な方向のそれぞれに突出するように設けられている。突起部34dは、ガイドレール45と平行な方向からの側面視で、四角形の1つの角が斜めに切り落とされて斜辺が設けられ、全ての角が丸められたような略五角形の形状を有している。突起部34dは、角が丸い五角形の面が幅Wb方向と垂直で、かつ厚みTb方向と平行になるように設けられている。突起部34dは、略五角形の面の斜辺が設けられた部分が当接部34bから厚みTb方向に突出するようになっている。
【0032】
図4に示すように、キャリッジ33に設けられた凹部35は、互いに交差するように略V字型に設けられた第1保持面35aと第2保持面35bとを有している。第1保持面35aと第2保持面35bとの間には断面視矩形状の矩形溝35cが設けられている。第1保持面35a及び第2保持面35bは、図1に示すように、キャリッジ33の係合摺動部33aがガイドレール45に係合した状態において、ガイドレール45と略平行に設けられている。凹部35のキャリッジ33の移動方向の前方側で、凹部35の開口縁の近傍には、摺動部材34の突起部34dが係合する係合部35dが突設されている。
【0033】
図4に示すように、キャリッジ33のそれぞれの係合部35dは、それぞれの突起部34dの摺動部材34の長手方向の端部側の部分の形状に対応して設けられている。すなわち、係合部35dは、平面視で略五角形の突起部34dの外側(摺動部材34の長手方向の端部側)の部分の外形に沿った形状を有している。
【0034】
具体的には、係合部35dは、平面視で略五角形の突起部34dの斜辺を形成する面に接し、鉛直方向に沿うように設けられた面を有している。また、凹部35の第1保持面35a側に設けられた係合部35dは、突起部34dの略五角形の面との間で斜辺に隣接する辺を形成する面に接し、第1保持面35aと略垂直に交差するように設けられた面を有している。また、凹部35の第2保持面35b側に設けられた係合部35dは、突起部34dの略五角形の面との間で斜辺のガイドレール45側に隣接する辺を形成する面に接し、第2保持面35bと略垂直に交差するように設けられた面を有している。
【0035】
摺動部材34をキャリッジ33の凹部35に係合させる際には、まず、摺動部材34の当接部34bを保持し、当接部34bの当接面34c同士を対向させるようにして、弾性部34aを弾性変形させる。そして、弾性変形させた状態の摺動部材34を、凹部35に収容する。次いで、弾性変形した弾性部34aを復元させるようにして、突起部34dを係合部35dに係合させると共に、凹部35の第1保持面35a及び第2保持面35bにより当接部34bを支持して弾性部34aの復元を規制する。
【0036】
これにより、摺動部材34は、キャリッジ33の凹部35に弾性変形した状態で係合し、キャリッジ33に固定される。このとき、弾性部34aの弾性力により、それぞれの当接部34bが、凹部35の第1保持面35a及び第2保持面35bに向けて付勢された状態になる。また、弾性部34aの弾性力により、突起部34dが、係合部35dに向けて付勢された状態になる。このようにして、摺動部材34がキャリッジ33の凹部35に固定され、ガイドレール45と係合する溝状の係合摺動部33aが形成されている。
【0037】
すなわち、本実施形態では、ガイドレール45と、ガイドレール45に対して摺動可能に設けられたキャリッジ(スライド部)33と、キャリッジ33に固定され、ガイドレール45と当接する摺動部材34とにより、キャリッジ33を摺動させる摺動構造が構成されている。
【0038】
図1及び図2に示すように、カバー部2は、ヒンジ部21を介して原稿支持部1に取り付けられ、原稿支持部1に対して0°〜約90°の角度範囲で開閉可能に設けられている。また、本実施形態のカバー部2は、原稿を搬送する搬送部5(図3参照)を備えている。
【0039】
搬送部5は、例えば不図示の複数の搬送ローラー及び従動ローラーと、原稿の搬送経路に沿って配置され、原稿の搬送方向を規定する不図示の原稿ガイドと、を有している。複数の搬送ローラー及び従動ローラーは、原稿の搬送経路に沿って配置され、搬送ローラーと従動ローラーとの間に原稿を挟持した状態で搬送ローラーが回転することで、原稿を原稿ガイドに沿って搬送するようになっている。搬送部5は、カバー部2の不図示の原稿トレイから供給された原稿を、搬送ローラーと従動ローラーとにより搬送する。そして、原稿を原稿支持部1の第1開口部11上を通過するように移動させた後、カバー部2に設けられた不図示の原稿排出トレイに排出するようになっている。
【0040】
また、図3に示すように、搬送部5には、原稿の読取数及び搬送量を計測する計数部6が設けられている。ここで、読取数とは、所定の期間内に搬送部5によって搬送し、第1開口部11上を通過させた原稿の総数である。また、搬送量とは、所定の期間内に搬送部5によって搬送した原稿の搬送方向の長さの総和である。計数部6は、例えば搬送部5を通過する原稿を検出するセンサー、搬送した原稿の長さを検出するセンサー、搬送ローラーの回転数を計測するエンコーダー、及びメモリ等により構成されている。
【0041】
図3に示す制御部7は、例えば複数のメモリ及び演算部を備えている。制御部7は、搬送部5に制御信号C5を送信することで、搬送部5に原稿を搬送させて、第1開口部11上に原稿を通過させるようになっている。また、制御部7は、搬送部5から搬送状態等の出力信号D5を受信して記録するようになっている。また、制御部7は、計数部6に制御信号C6を送信して制御すると共に、計数部6から搬送数(読取数)及び搬送量等の出力信号D6を受信して記録するようになっている。
【0042】
また、制御部7は、駆動部4に制御信号C4を送信して駆動させることで読取部3を移動させると共に、駆動部4から読取部3の位置情報等の出力信号D4を受信するようになっている。また、制御部7は、読取部3の光源及びイメージセンサーに制御信号C3を送信して制御すると共に、読取部3からイメージセンサーの出力信号D3を受信するようになっている。
【0043】
また、制御部7は、例えば不図示の操作パネルのボタン操作等により、走査読取モードと搬送読取モードとを切り替えるようになっている。走査読取モードでは、制御部7は、原稿を、図1に示す原稿支持部1の第2開口部12の載置ガラス15に載置した状態で、読取部3を載置ガラス15と平行に第2開口部12の長さL2方向の一端から他端まで走査させて、原稿を読み取る。搬送読取モードでは、制御部7は、読取部3を図1に示す原稿支持部1の第2開口部12に配置された透光シート14の下方に移動させ、搬送部5により原稿を搬送して、原稿を読取部3に対して移動させながら読み取りを行なう。
【0044】
以下、本実施形態の摺動構造を適用した読取装置SCNの作用について説明する。
まず、原稿を静止させた状態で、読取部3を走査させて原稿を読み取る走査読取モードについて説明する。
まず、図1に示すカバー部2を開き、原稿支持部1の第2開口部12に配置された載置ガラス15上の所定の位置に原稿をセットする。その後、カバー部2を閉じて、カバー部2と載置ガラス15との間に原稿を保持する。そして、読取装置SCNの不図示の操作パネルの読取ボタン等を押して、原稿の読み取りを開始する。
【0045】
すると、図3に示すように、制御部7は、駆動部4に対して制御信号C4を送信して、駆動部4を駆動させる。そして、読取部3を、第1開口部11と第2開口部12との間の初期位置から、第2開口部12の方向へ移動させる。次いで、制御部7は、制御信号C4を送信して駆動部4を駆動させ、読取部3を載置ガラス15上の原稿に対して移動させながら、読取部3のイメージセンサーの出力信号D3を受信する。そして、読取部3を初期位置側の原稿の端部から反対側の端部まで走査する。これにより、載置ガラス15上にセットされた原稿を読み取ることができる。
【0046】
ここで、本実施形態の読取装置SCNは、キャリッジ33に摺動部材34を保持する凹部35が設けられ、摺動部材34が凹部35に弾性変形した状態で係合している。そのため、摺動部材34をキャリッジ33の凹部35に係合させたときに、弾性部34aの弾性変形により、その両側に設けられた当接部34bが、凹部35の第1保持面35a及び第2保持面35bに向けて付勢された状態になる。また、弾性部34aの弾性変形により、突起部34dが、係合部35dに向けて付勢された状態になる。
【0047】
これにより、例えば摺動部材34の寸法精度がそれほど高くない場合であっても、摺動部材34をキャリッジ33の凹部35に、ガタツキがなく、安定した状態で、精度良く取り付けることができる。これにより、例えばキャリッジ33の振動等により、キャリッジ33の送り精度が低下することが防止される。したがって、本実施形態の読取装置SCNによれば、イメージセンサーの読取精度の低下を防止することができる。
【0048】
また、摺動部材34は、弾性部34aのガイドレール45に沿う断面の面積が、当接部34bのガイドレール45に沿う断面の面積よりも小さくなっている。そのため、弾性部34aの断面係数が、当接部34bの断面係数よりも小さくなる。また、弾性部34aの厚みTaは、当接部34bの厚みTbよりも薄く形成されている。そのため、弾性部34aの断面係数をより効果的に減少させることができる。したがって、弾性部34aを容易に弾性変形させることが可能になる。また、当接部34bの強度を確保することが可能になる。
【0049】
また、当接部34bは、ガイドレール45に略平行な方向及びガイドレール45に略垂直に交差する方向に突設された突起部34dを有している。また、キャリッジ33は、突起部34dが係合する係合部35dを有している。そのため、摺動部材34をキャリッジ33の凹部35に係合させる際に、摺動部材34の突起部34dを除く部分をガイドレール45に沿う方向から凹部35に収容し、最後に摺動部材34の突起部34dを係合部35dに係合させることができる。したがって、キャリッジ33に対する摺動部材34の取り付けを容易にすることができる。
【0050】
また、図4に示すように、摺動部材34が弾性変形すると、摺動部材34の当接部34bが、第1保持面35a及び第2保持面35bに向けて付勢される。このとき、摺動部材34の長手方向の端部側ほど大きな付勢力が作用する。しかし、本実施形態では、キャリッジ33の係合部35dの鉛直方向に沿うように設けられた面により、突起部34dに上記の付勢力と反対方向の抗力を作用させることができる。これにより、それぞれの当接部34bと、第1保持面35a及び第2保持面35bとを、均一に接触させることが可能になる。
【0051】
また、図4に示すように、摺動部材34が弾性変形すると、摺動部材34の長手方向の端部を、第1保持面35a及び第2保持面35bに沿って、凹部35の開口端側に移動させようとする付勢力が作用する。しかし、本実施形態では、係合部35dの第1保持面35aと略垂直に交差するように設けられた面と、係合部35dの第2保持面35bと略垂直に交差するように設けられた面とにより、摺動部材34の長手方向の端部が、第1保持面35a及び第2保持面35bに沿って凹部35の開口端側に移動することを防止できる。これにより、摺動部材34が凹部35から脱落することを防止できる。
【0052】
また、突起部34dを係合部35dに係合させる際に、突起部34dのガイドレール45と交差する方向に突出した部分を、キャリッジ33の前面に当接させることができる。これにより、ガイドレール45と略平行な方向において、摺動部材34のキャリッジ33に対する位置決めを行うことができる。
【0053】
また、摺動部材34は、原稿の読み取り時のキャリッジ33の移動方向の前方側に配置されている。そのため、キャリッジ33の移動時に、キャリッジ33の移動方向の前方側の部分に、ガイドレール45に向かう力が作用する場合であっても、摺動部材34により、キャリッジ33の移動方向の前方側の部分とガイドレール45との間の摩擦抵抗を低減することができる。したがって、キャリッジ33の振動等を防止し、キャリッジ33の送り精度の低下を防止することができる。
【0054】
また、摺動部材34の当接面34cの周縁部には、面取りが施されている。そのため、キャリッジ33の移動時に摺動部材34の当接部34bの角がガイドレール45に押し当てられることが防止される。これにより、キャリッジ33の移動時に摺動部材34がガイドレール45に引っ掛かることが防止され、キャリッジ33の振動を防止することができる。
【0055】
また、キャリッジ33の凹部35は、略V字型に形成された第1保持面35a及び第2保持面35bを有している。そのため、摺動部材34の弾性部34bを弾性変形させ、当接部34bを第1保持面35a及び第2保持面35bに対して付勢した状態で、第1保持面35a及び第2保持面35bに当接させることができる。そして、第1保持面35a及び第2保持面35bと当接部34bとの間の摩擦抵抗により、摺動部材34をキャリッジ33の凹部35に、ガタツキがなく、安定した状態で、精度良く取り付けることができる。
【0056】
次に、読取部3を静止させた状態で、搬送部5によって原稿を搬送して原稿を読み取る搬送読取モードについて説明する。
図3に示すように、制御部7は、搬送読取モードにおいて、駆動部4に対して制御信号C4を送信して駆動部4を駆動させる。そして、読取部3を、第1開口部11と第2開口部12との間の初期位置から、第1開口部11の下方の読取位置へ移動させる。次いで、制御部7は、読取部3を静止させた状態で、図3に示すように、制御信号C5を送信して搬送部5を駆動させる。そして、図1に示すカバー部2の不図示の原稿トレイに配置された原稿を搬送部5によって搬送する。
【0057】
搬送部5によって搬送された原稿は、第1開口部11に配置された透光シート14と摺接しつつ、静止した状態の読取部3に対して移動する。この際、制御部7は、図4に示すように、読取部3に制御信号C3を送信して光源から光を照射させると共に、読取部3からイメージセンサーの出力信号D3を受信する。このように、読取部3の光源から照射され、原稿に反射したR,G,Bの光を、透光シート14を介してイメージセンサーにより検出することで、原稿が読み取られる。
【0058】
尚、この発明は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、弾性部は、当接部よりも厚みを薄くするだけでなく、当接部よりも幅を狭くすることで形成してもよい。また、突起部は上述の実施形態において説明した形状に限定されない。
【符号の説明】
【0059】
33 キャリッジ(スライド部)、34 摺動部材、34a 弾性部、34b 当接部、34d 突起部、35 凹部、35a 第1保持面、35b 第2保持面、35d 係合部、45 ガイドレール、SCN 読取装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象に反射された光を検出するイメージセンサーと、前記イメージセンサーを保持するキャリッジと、前記キャリッジを一方向に摺動可能に支持するガイドレールと、前記キャリッジに固定され、前記ガイドレールと当接する摺動部材と、を備えた読取装置であって、
前記キャリッジは、前記摺動部材を保持する凹部を有し、
前記摺動部材は、前記凹部に弾性変形した状態で係合することを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記摺動部材は、弾性変形可能に設けられた弾性部と、前記ガイドレールと当接する当接部と、を有し、
前記弾性部の前記ガイドレールに沿う断面の面積が、前記当接部の前記ガイドレールに沿う断面の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記摺動部材は、前記ガイドレールに沿う方向及び前記ガイドレールに交差する方向に突設された突起部を有し、
前記キャリッジは、前記突起部が係合する係合部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記摺動部材は、前記読取対象の読み取り時の前記キャリッジの移動方向の前方側に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記ガイドレールに沿って互いに交差するように設けられた第1保持面及び第2保持面を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項6】
ガイドレールと、該ガイドレールに対して摺動可能に設けられたスライド部と、前記スライド部に固定され、前記ガイドレールと当接する摺動部材と、を備えた摺動構造であって、
前記スライド部は、前記摺動部材を保持する凹部を有し、
前記摺動部材は、前記凹部に弾性変形した状態で係合することを特徴とする摺動構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−158740(P2011−158740A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20959(P2010−20959)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】