説明

読取装置

【課題】被読取画像を読み取る読取装置において、被読取画像の読取精度を向上させることのできる技術を提供する。
【解決手段】照射部80は、円筒状の筐体63Aに回転可能に取り付けられる環状部80Aと、この環状部80Aの径方向外側に向けて突出形成される脚部80Bと、脚部80Bの先端側に設けられる光源80Cと、を有する。照射部80の脚部80Bおよび光源80Cは、環状部80Aの径方向外側に突出形成されているため、脚部80Bおよび光源80Cの自重により、光源80Cが下側に回転移動する。撮像部64で正反射成分の反射光を受光することがなくなり、画像の読取精度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、用紙上への筆記内容を瞬時に電子化した筆記情報データに変換し、このデータをパソコンや携帯電話等に転送して、筆記内容をモニタ上に表示したり、データとして転送・保存したりする技術が注目されている。かかる技術では、表面にそれぞれ異なるパターンで形成された微細なドットが印刷された特殊な用紙と、これらのドットを読み込むことで筆記内容を電子情報化する電子ペン(アノトペン(登録商標))とが用いられる。この電子ペンは、特殊用紙上に筆記が行われると、ペン先近傍のドットパターンを撮像素子で読み込み、読み込んだドットパターンからペン先の特殊用紙上における位置を特定する。これにより、筆記された文字や図形等からなる電子文書の生成や、所定の電子文書への文字や図形等の付加等が可能となる(例えば、特許文献1参照)。一方、特殊なパターンを読み取る技術としては、複数の撮像素子を備えたバーコードリーダ(特許文献2)等がある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−94907号公報(第12−14頁)
【特許文献2】実開平2−183879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被読取画像を読み取る読取装置において、被読取画像の読取精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の請求項1が採用する読取装置の構成は、読取対象となる被読取画像が形成された媒体に光を照射する照射手段と、前記照射手段によって光が照射された前記媒体からの反射光を結像する結像手段と、前記結像手段が反射光を結像するときの当該反射光の光軸に対して、前記照射手段によって光が照射されるときの当該光の光軸を前記照射手段の自重によって移動させる光軸移動手段と、を具備することを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る読取装置は、請求項1に記載の構成において、前記光軸移動手段は、前記結像手段が反射光を結像するときの当該反射光の光軸を中心にして前記照射手段が自重により回転する機構を備えている。
【0007】
本発明の請求項3に係る読取装置は、請求項1に記載の構成において、前記照射手段は、光源と、前記光源から発せられた光を前記媒体の方向に導く導光部材と、を備え、
前記光軸移動手段は、前記結像手段が反射光を結像するときの当該反射光の光軸を中心にして前記導光部材が自重により回転する機構を備えている。
【0008】
本発明の請求項4に係る読取装置は、請求項2または3記載の読取装置において、前記回転の角度が、180度以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る読取装置は、請求項1ないし4のいずれか1に記載の読取装置において、前記照射手段には錘が設けられることが好ましい。
【0010】
本発明の請求項6に係る読取装置は、請求項1ないし5のいずれか1に記載の読取装置において、前記結像手段によって結像された反射光に応じた、前記被読取画像を表す信号を生成する生成手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、結像手段が読み取り時に有害となる正反射光成分を結像する機会が低減するとともに、前記照射手段によって光が照射されるときの当該光の光軸と媒体面とがなす角度が小さい場合であっても光量不足になる事態を抑制することができ、被読取画像の読み取り精度が向上する。
【0012】
請求項2および3に係る発明によれば、結像手段が反射光を結像するときの当該反射光の光軸を中心にして、照射手段によって光が照射されるときの当該光の光軸を移動させることができる。
請求項4に係る発明によれば、結像手段が反射光を結像するときの当該反射光の光軸に対する、照射手段によって光が照射されるときの当該光の光軸の移動量として、一定量を確保することができる。
【0013】
請求項5に係る発明によれば、読取装置に傾きに応じて照射手段が移動しやすくなる。
請求項6に係る発明によれば、反射光に基づいた被読取画像を表す信号を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<A:構成>
図1は、本実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。図において、電子ペン60は、紙等の媒体50に対して文字や図形を筆記する機能を備えるとともに、媒体50に形成されたコードパターン画像(被読取画像)を読み取る機能を備えた読取装置の一例である。情報処理装置10は、例えばパーソナルコンピュータであり、電子ペン60から出力される信号に応じて筆記内容を表す筆記情報を生成する筆記情報生成装置の一例である。
【0015】
媒体50に形成されるコードパターン画像は、媒体50を識別する識別情報や、媒体50上の座標位置を表す位置情報を符号化して画像化したものである。ここで、媒体50に形成されるコードパターン画像の一例について、図2を参照しつつ説明する。図2は、媒体50に形成されるコードパターン画像の一例を示す図である。コードパターン画像は、複数の点状のドット画像の相互の位置関係によって上述した識別情報及び位置情報を表したものであるが、これらのドット画像が配置され得る領域として、領域A1〜A9が予め定められている。図2に示す例では、黒色の領域A1,A2は点状のドット画像が配置された領域を示し、斜線の領域A3乃至A9はドット画像が配置されていない領域を示している。どの領域にドット画像が配置されるかによって識別情報及び位置情報が表現される。媒体50には、例えばプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置(図示せず)によって、このコードパターン画像が媒体50の全体に形成されている。電子ペン60は、コードパターン画像を読み取り、その上で、コードパターン画像を解析して電子ペン60のペン先69aの位置を検出する。
【0016】
媒体50には、上記のコードパターン画像のほか、人間に対して情報を伝えることを目的とした文書や図形など画像が形成されていてもよい。
以下では、この画像のことを「文書画像」というが、これには、テキストを含む文書を表す画像に限らず、例えば、絵、写真、図形等の画像や、その他の画像が含まれる。画像形成装置は、コードパターン画像を形成するときはK(黒)のトナーを用いて画像形成を行う一方、文書画像を形成するときはC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のトナーを用いて画像形成を行う。媒体50には、文書画像とコードパターン画像とが重畳されて形成される。このようにコードパターン画像と文書画像とで分光反射特性の異なる材料を用いて形成することで、電子ペン60は選択的にコードパターン画像のみを読み取るように設定することができる。
なお、本実施形態における「媒体」は、いわゆる紙に限定されるものではなく、例えばOHPシートなどのプラスチックシートや、その他の材質のシート等であってもよい。また、表示内容を電気的に書き換え可能ないわゆる電子ペーパーであってもよい。要は、媒体50は、画像形成装置等によって少なくともコードパターン画像が形成されたものであればよい。
【0017】
電子ペン60は、媒体50に文字や図形等を筆記する機能を有する筆記具であると共に、媒体50に形成されたコードパターン画像を読み取る読取装置である。電子ペン60は、媒体50から読み取ったコードパターン画像を示す情報を情報処理装置10に送信する機能を備える。
【0018】
次に、電子ペン60の機能的構成の一例について、図面を参照しつつ説明する。図3は、電子ペン60の機能を模式的に示した機能ブロック図である。図において、制御部61は、電子ペン60の全体の動作を制御する制御手段である。圧力センサ62は、電子ペン60による筆記動作をペンチップ69に加わる圧力によって検出する検出手段である。光学系ユニット70は、照射部80、結像部63および撮像部64を具備する。照射部80は、例えば近赤外LEDであり、媒体50上に近赤外光を照射軸aに沿って照射する照射手段の一例である。結像部63は、媒体50で反射した反射光を受光軸bに沿って集光して、この反射光に応じて媒体50上の画像を撮像部64上に結像する結像手段の一例である。撮像部64は、結像部63で結像された、反射光による媒体50上の画像を電気信号に変換する生成手段の一例である。
【0019】
情報メモリ65は、識別情報および位置情報を記憶する記憶手段である。通信部66は、外部装置との通信を制御する通信手段である。バッテリ67は、電子ペン60を駆動するための電力を各部に供給する充電可能な電力供給手段である。ペンIDメモリ68は、電子ペン60の識別情報(ペンID)を記憶する記憶手段である。ペンチップ69は、いわゆるペン軸であり、その先端部がペン先69aとなる。ペン先69aは、ユーザによって筆記動作がなされる際に、読取対象となるコードパターン画像(被読取画像)が形成された媒体50上の位置を指示する指示部となる。照射部80は、ユーザによって筆記動作がなされる際に、ペン先69aによって指示される媒体50上の位置に対して予め定められた照射範囲に照射軸Aに沿って光を照射する。図中では、便宜上、照射部80から照射される光が平行に延びるように図示しているが、実際には拡散状態で照射される。
スイッチ75は、各種設定を切り替える切替手段である。これら各部は、制御部61に接続されている。
【0020】
次に、制御部61の機能的構成について、図4を参照しつつ説明する。図4は、制御部61の機能を示す機能ブロック図である。図において、コード検出部612は、撮像部64から出力される信号(撮像された画像を表す信号)からコードパターン画像を検出する。データ処理部613は、コード検出部612にて検出されたコードパターン画像から識別情報および位置情報を抽出する。照明制御部614は、照射部80をパルス点灯させるための照明制御信号を照射部80に対して送信し、照射部80をパルス点灯させる。撮像制御部615は、照射部80に送信するパルス点灯に同期した画像取込信号を撮像部64に供給する。
【0021】
さらに、電子ペン60における制御部61の動作の概略を説明する。図5は、照射部80のパルス点灯を制御する照明制御信号、撮像部64における画像取込信号、および出力画像信号に関する出力を示したタイミングチャートである。電子ペン60による筆記が開始されると、ペンチップ69に接続された圧力センサ62が筆記動作を検出する。これにより、制御部61は、識別情報及び位置情報の読取処理が開始される。
まず、制御部61の照明制御部614は、照射部80をパルス点灯させるための照明制御信号(図5(A))を照射部80に対して送信し、照射部80をパルス点灯させる。
【0022】
撮像部64は、画像取込信号(図5(B))に同期して媒体50上の画像を撮像する。その際に、照射部80は、撮像部64への画像取込信号に同期してパルス点灯する。撮像部64は、パルス点灯する照射部80にて照明される媒体50上の画像を撮像する。そのため、撮像部64では、照射部80にて照明された媒体50上の画像に関する画像信号(出力画像信号:図5(C))が順に生成される。
【0023】
撮像部64にて順次生成された出力画像信号は、コード検出部612に送られる。出力画像信号を受け取ったコード検出部612は、出力画像信号を処理して、撮像部64にて撮像された画像からコードパターン画像を検出する。コード検出部612により取得されたコードパターン画像はデータ処理部613に送られる。コードパターン画像を受け取ったデータ処理部613は、コードパターン画像を復号し、コードパターン画像に埋め込まれている識別情報および位置情報を取得する。
【0024】
以上が、電子ペン60の概略である。
次に、ペンチップ69と光学系ユニット70の構成の一例について、図面を参照しつつ説明する。図7は、電子ペン60の特徴部分を模式的に示す断面図、図8(a)は図7中の要部を拡大して示す拡大図、図8(b)は図8(a)を左側面から見た側面図である。
ペンチップ69は、電子ペン60の筐体となるペン本体60A内に設けられ、用紙面への筆記を行うためのものである。電子ペン60の先端部のペンチップ69の近傍には可視光を遮断し近赤外光を透過する窓部60Bが設けられており、その後方に光学系ユニット70が設けられる。この光学系ユニット70は、照射部80、結像部63および撮像部64とを有する。ここで、便宜上、照射部80から照射される光の光軸を照射軸a、結像部63の結像光学系の中心軸を受光軸bと呼ぶ。ここでいう受光軸bの方向とは、要するに受光面の向きであり、典型的には、受光面と中心と、結像部63によって結像されて撮像部64によって撮像される媒体50上の領域(以下、撮像範囲と呼ぶ)の中心とを結ぶ方向である。したがって、受光軸bの方向は、電子ペン60の筐体の長手方向とほぼ平行となっている。
【0025】
結像部63は、円筒状の筐体63Aと、この筐体63Aの先端側に設けられた凸レンズ63B(図8(b)に図示)と、結像光の方向を撮像素子64Bの撮像面に偏向させるプリズム63Cとを有する。
撮像部64は、電子部品が実装された基板64Aと、この基板64A上に実装された撮像素子64Bとを備える。撮像素子64Bは、結像部63により結像された被読取面の反射光に基づいてコードパターン画像を撮像し、撮像したコードパターン画像を表す信号を出力する。ここでは、撮像素子64Bは、近赤外領域に感度があるCMOSイメージセンサであって、全画素において同一のタイミングで撮像した画像信号を生成できるグローバルシャッタ方式のCMOSイメージセンサが用いられる。撮像素子64Bは、70fps〜100fps(frame per second)程度の画像取込周期(フレームレート)に従って画像を撮像する。ここで、照射部80は、消費電力を抑制するために、撮像素子64Bへの画像取込周期に同期してパルス点灯するように構成されている。なお、ここでは、撮像素子としてCMOSイメージセンサを用いるが、撮像素子はCMOSイメージセンサに限定されるものではなく、CCDイメージセンサ等の他の撮像素子を使用してもよい。
【0026】
照射部80は、筐体63Aに回転可能に取り付けられる環状部80Aと、この環状部80Aの径方向外側に向けて突出形成される脚部80Bと、脚部80Bの先端側に設けられる光源80Cと、を有する。環状部80Aの内周面とこの環状部80Aが回転可能に取り付けられる部位となる筐体63Aの外周面には、それぞれ環状電極が設けられ、いずれか一方の電極がブラシ構造となることで、所謂スリップリングを構成する。このスリップリングは、基板64Aから出力される照明制御信号を光源80Cに供給する。
【0027】
なお、基板64Aからの信号を光源80Cに供給する手段は、スリップリングに限らず、リード線によって基板64Aと光源80Cとを電気的に接続してもよく、要は照射部80が回転する際に機械的抵抗にならない構造であればよい。また、光源80Cが回転する範囲は、基板64Aに取り付けられる関係上、図8(b)に示すように、角度α(例えば、α=200°)(α>180°)となる。この結像部63の筐体63Aおよび照射部80の環状部80Aの構造によって、照射部80の照射軸aの向きを、受光軸bを回転中心として回転させる光軸移動手段の一例が構成される。そして、照射部80の脚部80Bおよび光源80Cは、環状部80Aの径方向外側に突出形成されているため、脚部80Bおよび光源80Cが錘となる。このため、照射部80の光源80Cは、この脚部80Bの自重により下側に回転移動することになる。
【0028】
<B:動作>
次に、この実施形態による電子ペン60の動作について説明する。ユーザが、電子ペン60による筆記を開始すると、ペンチップ69に接続された圧力センサ62が筆記動作を検出する。これにより、制御部61は、識別情報及び位置情報の読取処理を開始する。まず、照明制御部614は、照射部80をパルス点灯されるための照明制御信号を照射部80に対して送信し、照射部80をパルス点灯させる。また、電子ペン60の撮像制御部615は、照射部80に送信するパルス点灯に同期した画像取込信号を、撮像部64に供給する。撮像部64は、撮像制御部615から供給される画像取込信号に応じて、結像部63で結像される反射光に基づいてコードパターン画像を撮像し、撮像したコードパターン画像を表す出力画像信号をコード検出部612へ出力する。
【0029】
次に、コード検出部612及びデータ処理部613の動作について、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。コード検出部612には、撮像部64から媒体50上の画像を表す出力画像信号が入力される(ステップ601)。コード検出部612は、出力画像信号に含まれるノイズを除去するための処理を行う(ステップ602)。ここで、ノイズとしては、CMOS感度のばらつきや電子回路により発生するノイズ等がある。ノイズを除去するために如何なる処理を行うかは、電子ペン60の撮像系の特性に応じて決定する。例えば、ぼかし処理やアンシャープマスキング等の先鋭化処理を適用することができる。次に、コード検出部612は、画像からドットパターン(ドット画像の位置)を検出する(ステップ603)。また、コード検出部612は、検出したドットパターンを2次元配列上のデジタルデータに変換する(ステップ604)。例えば、2次元配列上で、ドットがある位置を「1」、ドットがない位置を「0」というように変換する。そして、この2次元配列上のデジタルデータ(コードパターン画像)は、コード検出部612からデータ処理部613へと受け渡される。
【0030】
データ処理部613は、受け渡されたコードパターン画像から、図2に示した2つのドットの組み合わせからなるドットパターンを検出する(ステップ605)。例えば、ドットパターンに対応するブロックの境界位置を2次元配列上で動かし、ブロック内に含まれるドットの数が2つになる境界位置を検出することにより、ドットパターンを検出することができる。このようにしてドットパターンが検出されると、データ処理部613は、ドットパターンの種類に基づいて、識別符号および位置符号を検出する(ステップ606)。その後、データ処理部613は、識別符号を復号して識別情報を取得し、位置符号を復号して位置情報を取得する(ステップ607)。図6に示す処理において、撮像部64が受光した光量が少なすぎる場合や、逆に受光した光量が多すぎる場合等には、撮像された画像からドットパターンが検出されず、電子ペン60が識別情報及び位置情報を取得できない場合(つまり、読取エラー)が発生する。このように識別情報及び位置情報が取得できなかった場合は、データ処理部613は、識別情報および位置情報に代えて、読取失敗を示す読取エラーの情報を取得する。
【0031】
電子ペン60は、図6の処理により取得した識別情報および位置情報を情報処理装置10に送信する。このとき、電子ペン60は、識別情報および位置情報の読取に失敗した場合は、読取の失敗を示す情報を情報処理装置10に送信する。情報処理装置10は電子ペン60から識別情報および位置情報を受信し、受信した位置情報に基づいて筆記情報を生成する。情報処理装置10は、電子ペン60から読取エラーを示す情報を受信した場合には、その前後の識別情報および位置情報によって補間したりする等して筆記情報を生成する。
【0032】
<C:動作例1>
次に、この実施形態の具体的な動作の一例について図面を参照しつつ説明する。ユーザが、媒体50上を電子ペン60で指示し、ペン先69aを媒体50に押し付けることにより、ペンチップ69に接続された圧力センサ62が筆記動作を検出し、識別情報及び位置情報の読取処理を開始する。
本実施形態による電子ペン60では、結像部63に対する照射部80の取付構造から、電子ペン60のペン先が地面に対して真下の垂直方向(重力方向)に向いている場合を除き、電子ペン60をユーザが保持している角度に応じ、照射部80の光源80Cが、自重により受光軸bを回転中心として下側に移動する。ここで、一般的に媒体50に対してペン等で筆記を行う場合、すなわち、媒体50が机などの平面上に設置される場合には、媒体50は地面に対し平行な面で保持されている。この媒体50上に電子ペン60でユーザが筆記動作を行う状態において、結像部63に照射部80から媒体50に照射された光の正反射光が入ってしまう条件は、結像部63の光軸bと照射部80の照射軸aが媒体50の面の法線に対しほぼ対称な方向にある場合に限られる。したがって、ユーザが媒体50の面の法線方向(地面と垂直な方向)から傾いた状態で電子ペン60を保持した場合、照射部80はその自重により下方、すなわち、媒体50の面の法線方向に対し、結像部63の光軸よりさらに倒れた角度方向から光を照射することになる。すなわち、照射部80および結像部63の位置関係が、結像部63で結像される反射光に光源80Cからの正反射光成分が入らなくなる状態となるため、撮像部64における画像の読取精度を高めることができる。
【0033】
より具体的に、本実施形態の特徴を図9および図10を参照しつつ説明する。図9は紙などの媒体の表面における入射光に対する反射光の成分について説明した説明図、図10(a)が受光部で正反射成分に反射光が受光される状態、10(b)が本実施形態による正反射成分による反射光の受光を回避した状態を示した図である。
図9に示すように、紙などの媒体の表面において、ある角度からの入射光に対しては、指向性が高い正反射光と、指向性が低い拡散反射光が発生し、正反射成分の反射光は、入射光の入射角度と等しい反射角度で反射した反射光となる。そして、入射光の照射軸a上に光源、正反射成分の軸線上に結像部83が配置された場合、即ち図10(a)に示すように、媒体50に対する法線hと、光源80Cの照射軸aと結像部83の受光軸bとが交わる点において、各軸のなす角度を二分にした中心軸cとがほぼ一致した場合には、結像部83では正反射成分(媒体表面の光沢成分)が結像されることになり、媒体上の画像(拡散反射成分)を正確に読み取ることができなくなる。
【0034】
本実施形態による電子ペン60では、図10(a)の状態になることを避けるために、光源80Cは受光軸bを回転中心として自重で回転し、図10(b)に示すように、照射軸a′に移動する。これにより、照射軸a′と受光軸bとが交わる点において、各軸のなす角度を二分にした中心軸c′は、媒体50の法線hと異なる方向となるため、結像部83で結像される反射光は拡散反射成分のみとなる。これにより、媒体50上の画像情報を表す拡散反射成分の反射光を撮像部64で読み取ることで、読取エラーを低減し、読取精度を向上させることができる。
【0035】
光源80Cが回転可能となる範囲を角度α=200°とした場合を例示したが、実際には180°以上であれば、照射軸aを受光軸bよりも下側に移動させることができる。
【0036】
ところで、電子ペン60で媒体50に対して筆記が行われる際には、電子ペン60と媒体50との間の角度は、ユーザの筆記動作に伴って逐次変化する。このとき、例えば、電子ペン60と媒体50との間の角度が、図11に示す位置関係となった場合を例示する。ユーザが電子ペン60を傾けた際には、本実施形態による電子ペン60では、光源80Cの自重によって受光部63の下側の位置Dに回転移動する。このため、光源80Cから媒体50に照射される光量は、位置Uにある場合と比べて、媒体50の面に距離的に近づいている分、多くなる。
【0037】
一般的な電子ペンの読取装置では、照射部が固定されているため、電子ペンと媒体との角度によっては、照射部が媒体面から遠ざかり、撮像部64で反射光の受光量不足で正確な撮像が行えないことがあるが、本発明による電子ペン60では、ペン60と媒体50との傾きがどのような状態であっても、結像部63の下側に光源80Cが移動するから、媒体50に向けて常に撮像に十分な光量を照射することができ、画像読み込み時のエラーを低減して、読取精度を向上させることができる。
【0038】
<D:動作例2>
次に、実施形態による照射部80の他の具体例について、図12および図13に基づいて説明する。図12は、電子ペン60の特徴部分を模式的に示す断面図、図13(a)は図12中の要部を拡大して示す拡大図、図13(b)は図13(a)を左側面から見た側面図である。なお、この具体例では、前述した実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
この具体例による光学系ユニット70は、撮像部64、結像部63および照射部81とを有する。
ここで、照射部81は、基板64Aに実装された光源81Aと、この光源81Aからの光を導光して媒体に向けて照射軸aに沿って照射させるための導光部材81Bと、光源81Aからの光が周辺に漏れないようにするための遮光カバー(図示せず)とを有する。導光部材81Bは「L」字状に形成され、図13(a)に示すような光路を形成し、先端が光照射部81B1となる。
そして、導光部材81Bの起端側は、断面三角形状の固定部81Cに固定され、この固定部81Cは基板64Aに固定されるフランジ81Dに軸部81Eによって回転可能に支持される。この軸81Eは、受光軸bの延長線上に配置される。この固定部81C、フランジ81Dおよび軸部81Eは、光軸移動手段の一例である。
【0039】
このように構成される照射部81にあっては、導光部材81Bが軸部81Eによって受光軸bを中心に回転可能となっており、導光部材81Bの自重により当該導光部材81Bは、自重により下側に回転移動することになる。そして、導光部材81Bが回転する範囲は、図13(b)に示すように、角度α(例えば、α=200°)(α≧180°)となる。この導光部材81Bおよび導光部材81Bの取付構造によって、照射部81の照射軸aの向きを、受光軸bを回転中心として回転変更する光軸移動手段の一例を構成する。
【0040】
このように構成される照射部81においても、前述した照射部80と同様に動作することになり、撮像部64で拡散反射成分のみの反射光を受光して、読取エラーを低減し、読取精度を向上させることができる。しかも、光源81Aを移動させないので、当該光源81Aの信頼性を向上させることができる。
【0041】
<E:変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその例を示す。なお、以下の各態様を組み合わせてもよい。
(1)上述した実施形態では、照射軸aを受光軸bを回転中心として回転移動させる構成としたが、本発明はこれに限らず、照射軸aと受光軸bとが交わる点において、各軸のなす角度を変更する構成であればよい。
【0042】
(2)また、光軸移動手段は、前記実施形態に記載した例に限るものではなく、例えば、結像部63を中心に当該結像部63から離間した位置に円弧状のレールを設け、このレールに沿って自重で光源が移動するように構成してもよく、要は、照射手段から発生する光の光軸が、当該照射手段の自重によって移動させる構成であればよい。
【0043】
(3)上述した実施形態では、媒体50に文字や図形等を筆記する電子ペンについて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、ポインティングデバイス(マウス)機能や、媒体上の領域に対応して記録された情報(例えば、コマンド情報)を読み取るスタイラス機能を備えたものであってもよい。
なお、実施形態の動作例では媒体50上に文字などを筆記する場合の動作例について説明したが、これに限らず、例えば、媒体50上に設けられたソフトボタンを選択するなどの、表示面上の位置を単に指定する場合にも、本実施形態の電子ペン60は有効である。
【0044】
(4)上述した実施形態では、照射部80として、近赤外光を照射する近赤外LEDを用いたが、照射部80はこれに限らず、違う特性を有するLEDを用いるようにしてもよい。要は、照射部80は、媒体50に形成されたコードパターン画像をその反射光で読取可能な光を照射するものであればよい。
【0045】
(5)上述した実施形態では、識別情報として、媒体を一意に識別する情報を用いたが、識別情報はこれに限らず、例えば、電子文書を一意に識別する情報を識別情報として用いるようにしてもよい。上述の第1実施形態に例示したように媒体を一意に識別する情報を用いる場合は、同じ電子文書を複数部数形成すると、異なる媒体には異なる識別情報が付与される。これに対し、電子文書を一意に識別する情報を識別情報として用いる場合は、同じ電子文書を形成すると、異なる媒体であっても同じ識別情報が付与される。
【0046】
また、上述の実施形態では、位置情報及び識別情報を表すコードパターン画像を読み取ったが、コードパターン画像が表す情報は位置情報や識別情報に限らず、例えば、テキストデータやコマンドを表す情報であってもよい。また、位置情報のみを表す画像であってもよい。要は、何らかの情報を表す画像が媒体50に形成されていればよい。
【0047】
(6)上記した画像形成装置では、コードパターン画像をKのトナーを用いて形成するようにした。これは、Kのトナーが、C、M、Yのトナーよりも赤外光の吸収量が多く、電子ペン60でコードパターン画像を高いコントラストで読み取ることができるからである。しかしながら、コードパターン画像は、特殊トナーを用いて形成することも可能である。ここで、特殊トナーとしては、可視光領域(400nm〜700nm)における最大吸収率が7%以下であり、近赤外領域(800nm〜1000nm)における吸収率が30%以上の不可視トナーが例示される。ここで、「可視」および「不可視」は、目視により認識できるかどうかとは関係しない。形成された媒体に形成された画像が可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性の有無により認識できるかどうかで「可視」と「不可視」とを区別している。また、可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性が若干あるが、人間の目で認識し難いものも「不可視」に含める。また、この不可視トナーは、画像の機械読取りのために必要な近赤外光吸収能力を高めるために、平均分散径が100nm〜600nmの範囲のものが望ましい。
また、画像形成装置は、電子写真方式に限らず、インクジェット方式等のその他の如何なる方式を用いてもよい。
【0048】
(7)上述の実施形態に係る電子ペン60の制御部61によって実行されるコンピュータプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、インターネット等のネットワーク経由で電子ペン60にダウンロードさせることも可能である。なお、上述の制御を行う制御手段としてはCPU以外にも種々の装置を適用することができ、例えば、専用のプロセッサなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】筆記情報処理システムの全体構成を示す図である。
【図2】コードパターン画像の内容を示す図である。
【図3】電子ペンの構成を示す機能ブロック図である。
【図4】電子ペンの制御部を示す機能ブロック図である。
【図5】照明制御信号、画像取込信号および出力画像信号に関する出力タイミングチャートを示した図である。
【図6】電子ペンのコード検出部およびデータ処理部での動作を示した流れ図である。
【図7】電子ペンの構成を示す横断面図である。
【図8】図7中の要部を拡大して示す図である。
【図9】入射光に対する反射光の特性を示す図である。
【図10】電子ペンによる筆記状況の一例を示す図である。
【図11】実施形態による反射部の移動を示す図である。
【図12】動作例2による電子ペンの構成を示す横断面図である。
【図13】図11中の要部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10…情報処理装置、50…媒体、60…電子ペン、61…制御部、62…圧力センサ、63…結像部、63A…筐体、63B…凸レンズ、64…撮像部(生成手段)、64A…基板、64B…撮像素子、65…情報メモリ、66…通信部、67…バッテリ、68…ペンIDメモリ、69…ペンチップ、69A…ペン先、70…光学系ユニット、75…スイッチ、80,81…照射部、80A…環状部、80B…脚部、80C,81A…光源、81B…導光部材、81C…固定部、81D…フランジ、81E…軸部、612…コード検出部、613…データ処理部、614…照明制御部、615…撮像制御部、a…照射軸、b…受光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象となる被読取画像が形成された媒体に光を照射する照射手段と、
前記照射手段によって光が照射された前記媒体からの反射光を結像する結像手段と、
前記結像手段が反射光を結像するときの当該反射光の光軸に対して、前記照射手段によって光が照射されるときの当該光の光軸を前記照射手段の自重によって移動させる光軸移動手段と、を具備する
ことを特徴とする読取装置。
【請求項2】
請求項1記載の読取装置において、
前記光軸移動手段は、前記結像手段が反射光を結像するときの当該反射光の光軸を中心にして前記照射手段が自重により回転する機構を備えている
ことを特徴とする読取装置。
【請求項3】
請求項1記載の読取装置において、
前記照射手段は、光源と、前記光源から発せられた光を前記媒体の方向に導く導光部材と、を備え、
前記光軸移動手段は、前記結像手段が反射光を結像するときの当該反射光の光軸を中心にして前記導光部材が自重により回転する機構を備えている
ことを特徴とする読取装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の読取装置において、
前記回転の角度は、180度以上である
ことを特徴とする読取装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1に記載の読取装置において、
前記照射手段には錘が設けられる
ことを特徴とする読取装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1に記載の読取装置において、
前記結像手段によって結像された反射光に応じた、前記被読取画像を表す信号を生成する生成手段を備える
ことを特徴とする読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−152476(P2010−152476A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327406(P2008−327406)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】