説明

調光装置

【課題】交流電源のゼロクロスを正確に検出することで光源のちらつきを低減させた調光装置を提供する。
【解決手段】調光装置Aは、自己保持機能を有するトライアックQ1と、商用交流電源ACからの入力電圧がゼロクロス付近の所定範囲であればゼロクロス信号を出力するゼロクロス検出回路1と、ゼロクロス検出回路1から出力されるゼロクロス信号の信号幅をカウントし、カウント値が所定の基準値以上であれば上記のゼロクロス信号を商用交流電源ACのゼロクロスとして確定させるゼロクロス確定手段を構成するマイコン3と、マイコン3により確定したゼロクロス信号に同期して設定されたオン期間中はトライアックQ1を駆動させるトリガ信号を与え続けるDCトリガ方式の位相制御を行う調光制御回路2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源を調光点灯する調光装置に関し、特に、位相制御を行う調光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に白熱灯を調光制御する場合には、商用電源により駆動されるトライアックなどの位相制御素子が使用される。この場合、トライアックのゲート電極に与えられるトリガ信号を制御してトライアックをオン/オフさせることで、トライアックを介して商用電源に接続された白熱灯を調光点灯させている。
【0003】
このようなトライアックのオン/オフを制御する方法としては、商用電源電圧が基準電圧以下となるタイミングをゼロクロス点として検出し、このゼロクロス点を基準に所定時間経過後にトライアックのゲート電極にトリガ信号を与え、商用電源電圧が0Vになるまでトライアックをオンにする方法が知られている。そしてこの場合、上記の所定時間を変更することで白熱灯の調光レベルを変化させることができる。
【0004】
ところで、位相制御が行われる負荷としては電子トランスやLED(発光ダイオード)などもあり、負荷が容量性になる場合もある。例えば、電子ダウントランスの入力端子間に接続された雑音防止用コンデンサは容量性負荷であり、このコンデンサの影響によりトライアックに流れる電流が商用電源の電圧位相に対して進相となる場合がある。この場合、ゲート電極へのトリガ信号がオフになるタイミングにおいて、トライアックに流れる電流が既にゼロクロス点をまたいで転流し、保持電流以上の電流がトライアックに流れることもある。そして、トリガ信号がオフの瞬間に保持電流以上の電流がトライアックに流れている場合にはトライアックをオフにすることができず、負荷電流がゼロになる次のタイミングまでトライアックはオン状態を維持することになり、その結果、調光不具合が生じていた。
【0005】
そこで、上記の問題を解決するために、ゼロクロス検出回路で検出した商用電源のゼロクロス周期から次のゼロクロス点を推定し、このゼロクロス点よりも所定時間だけ早いタイミングでトリガ信号をオフにする調光器が提供されている(例えば特許文献1参照)。この調光器では、上記の進相電流が流れた場合でも、トリガ信号のオフタイミングがトライアックに流れる電流のゼロクロス点よりも前となるように上記の所定時間を設定することで、トライアックを確実にターンオフさせることができる。
【0006】
また、交流電源の電圧変動によって照明負荷の照度がちらつくのを防止した調光スイッチも提供されている(例えば特許文献2参照)。上述の特許文献1に示した調光器では、例えば周辺機器が動作することによって交流電源の電圧変動が発生すると、照明負荷に対して供給される電源電圧が変動して照明負荷の照度がちらつく場合があるが、この調光スイッチでは、交流電源の電圧変動に応じてトライアックの導通位相角を制御することで照明負荷のちらつきを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−53181号公報(段落[0020]−段落[0038]、及び、第1,2図)
【特許文献2】特開平11−67470号公報(段落[0010]−段落[0017]、及び、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1に示した調光器及び特許文献2に示した調光スイッチでは、トライアックに負荷電流が流れることによって生じる瞬時的な電圧降下に起因するゼロクロスを電源のゼロクロスと誤検出する可能性があった。そして、瞬時的な電圧降下によるゼロクロスを交流電源のゼロクロスと誤検出して調光動作を行うと、照明負荷の照度にちらつきが生じる可能性があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、交流電源のゼロクロスを正確に検出することで光源のちらつきを低減させた調光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の調光装置は、自己保持機能を有する双方向スイッチング素子と、交流電源からの入力電圧がゼロクロス付近の所定範囲であればゼロクロス信号を出力するゼロクロス検出手段と、ゼロクロス検出手段から出力されるゼロクロス信号の信号幅をカウントし、カウント値が所定の基準値以上であればゼロクロス信号を交流電源波形のゼロクロスとして確定させるゼロクロス確定手段と、ゼロクロス確定手段により確定したゼロクロス信号に同期して設定されたオン期間中は双方向スイッチング素子を駆動させる駆動電圧を与え続けるDCトリガ方式の位相制御を行う調光制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
この調光装置において、制御手段は、ゼロクロス確定手段により確定したゼロクロス信号から推定される次のゼロクロスよりも前に駆動電圧をオフにし、ゼロクロス確定手段は、ゼロクロス信号を確定させてから、制御手段が駆動電圧をオフにするまでの間にゼロクロス検出手段から出力されるゼロクロス信号を無効にするのが好ましい。
【0012】
また、この調光装置において、ゼロクロス確定手段は、制御手段が駆動電圧をオフにしてから、駆動電圧のオフ時から次のゼロクロスまでの時間より短い時間に設定された第1の時間が経過するまでの間にゼロクロス検出手段から出力されるゼロクロス信号を無効にするのも好ましい。
【0013】
さらに、この調光装置において、ゼロクロス確定手段は、ゼロクロス検出手段から出力されるゼロクロス信号の停止時間が所定の第2の時間よりも短い場合には1つのゼロクロス信号としてカウント動作を行うのも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
交流電源のゼロクロスを正確に検出することで光源のちらつきを低減させた調光装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る調光装置の概略ブロック図である。
【図2】実施形態1の調光装置の動作を説明するための波形図である。
【図3】実施形態2の調光装置の動作を説明するための波形図である。
【図4】実施形態3の調光装置の動作を説明するための波形図である。
【図5】実施形態4の調光装置の動作を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る調光装置の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る調光装置は、例えば白熱灯やミニハロゲン電球、LED(発光ダイオード)などの照明負荷を調光点灯するために用いられるものであり、特に、本調光装置はサイリスタを用いて位相制御を行う調光装置である。
【0017】
(実施形態1)
図1は本発明に係る調光装置Aの概略ブロック図であり、本調光装置Aは、自己保持機能を有する双方向スイッチング素子であるトライアックQ1と、トライアックQ1をオン/オフさせるトリガ信号を生成する調光制御回路2と、商用交流電源ACからの入力電圧のゼロクロスを検出するゼロクロス検出回路1とを主な構成要素として備える。
【0018】
ゼロクロス検出回路1は、図1に示すように4個のダイオードにより構成された整流回路DBを有し、整流回路DBの直流出力端子間には抵抗R1を介してツェナーダイオードZDとフォトカプラPC1とが直列に接続されている。また、フォトカプラPC1のコレクタ端子は、NOT回路を介してマイコン3のゼロクロス入力ポートP1に接続されるとともに、抵抗R2を介して直流電源Vccにも接続されている。そして、フォトカプラPC1がオフの状態では、コレクタ端子はHレベルとなっており、マイコン3のゼロクロス入力ポートP1にはLレベルの信号が入力される。また、フォトカプラPC1がオンの状態では、コレクタ端子はLレベルとなっており、マイコン3のゼロクロス入力ポートP1にはHレベルの信号が入力される。なお、商用交流電源ACのゼロクロスの検出動作については後述する。ここに、マイコン3の一部を含むゼロクロス検出回路1によりゼロクロス検出手段が構成されている。
【0019】
調光制御回路2は、図1に示すようにフォトトライアックQ2を有し、フォトトライアックQ2の発光ダイオードは、アノード端子が直流電源Vccに接続されるとともに、カソード端子がマイコン3の位相制御出力ポートP2に接続されている。また、フォトトライアックQ2のトライアックは、抵抗R3,R4の直列回路を介してトライアックQ1の両端に接続されており、さらに抵抗R4の両端間にはコンデンサC1が並列に接続されている。また、トライアックQ1のゲート電極は、抵抗R3,R4の接続点に接続されている。ここに、マイコン3の一部を含む調光制御回路2により調光制御手段が構成されている。なお、入力されたゼロクロス信号が商用交流電源ACのゼロクロスか否かを判別するゼロクロス確定手段もマイコン3の一部で構成されているが、ゼロクロス確定手段については後述する。
【0020】
ここにおいて、図1に示すように、現場固有の電源環境に相当する高インピーダンスを擬似的に実現するインピーダンス要素Zが商用交流電源ACに接続されており、照明負荷LaはトライアックQ1を介してインピーダンス要素Zに接続されている。したがって、トライアックQ1を介して照明負荷Laに負荷電流が流れると、負荷電流に応じた電圧降下がインピーダンス要素Zに発生し、そのため商用交流電源ACから照明負荷Laに供給される電源電圧がゼロクロス付近まで低下することになる。なお、詳細については後述する。
【0021】
図2は本調光装置Aの動作を説明するための波形図であり、図中のVACZはインピーダンス要素Zを介して供給される商用交流電源ACからの入力電圧を表わしている。また、図中のVZERO1はマイコン3のゼロクロス入力ポートP1に入力されるゼロクロス信号を、VZERO2は上記のゼロクロス確定手段により商用交流電源ACのゼロクロスとして確定したゼロクロス信号をそれぞれ表わしている。さらに、図中のVTRIGはマイコン3の位相制御出力ポートP2から出力されるトリガ信号を表わしている。
【0022】
ここで、ゼロクロス検出回路1及び調光制御回路2の基本動作について、図2を参照しながら説明する。整流回路DBの出力電圧がツェナー電圧(ツェナーダイオードZDが降伏する電圧)以下、つまり商用交流電源ACからの入力電圧VACZが、−VZD≦VACZ≦+VZDの範囲ではフォトカプラPC1がオフになる。そして、フォトカプラPC1がオフになることで、マイコン3のゼロクロス入力ポートP1にLレベルのゼロクロス信号VZERO1が入力される。
【0023】
一方、整流回路DBの出力電圧がツェナー電圧以上、つまり商用交流電源ACからの入力電圧VACZが、VACZ<−VZD、又は、VACZ>+VZDの範囲ではフォトカプラPC1はオンになる。そして、フォトカプラPC1がオンになることで、マイコン3のゼロクロス入力ポートP1にはHレベルのゼロクロス信号VZERO1が入力される。つまり、商用交流電源ACのゼロクロスを検出したときには、Lレベルのゼロクロス信号VZERO1がマイコン3のゼロクロス入力ポートP1に入力されるのである。
【0024】
次に、マイコン3は、ゼロクロス入力ポートP1に入力されるゼロクロス信号VZERO1の立ち下がりエッジで、内蔵のタイマ(図示せず)を起動させる。そして、タイマのカウント値が調光レベルに応じたカウント値C1になると、マイコン3は位相制御出力ポートP2からLレベルのトリガ信号VTRIGを出力する。このトリガ信号VTRIGがLレベルになると、フォトトライアックQ2の発光ダイオードが発光し、フォトトライアックQ2がオンになる。そして、フォトトライアックQ2がオンになると、トライアックQ1のゲート電極にトリガ信号が入力され、トライアックQ1がオンになる。
【0025】
一方、マイコン3の位相制御出力ポートP2から出力されるトリガ信号VTRIGがHレベルになると、フォトトラアックQ2の発光ダイオードがオフになるため、フォトトライアックQ2がオフになる。そして、フォトトライアックQ2がオフになると、トライアックQ1のゲート電極に入力されていたトリガ信号が消失し、その結果、トライアックQ1がオフになる。そして、商用交流電源ACの各周期ごとに上述の動作を繰り返すことで、設定された調光レベルで照明負荷Laが点灯することになる。
【0026】
ここにおいて、本実施形態では、図2に示すように、上記のゼロクロス信号VZERO1に同期して設定されたオン期間中はトライアックQ1をオンにするトリガ信号VTRIGを与え続けるDCトリガ方式を採用している。また、進相電流による誤点弧を回避するために、マイコン3のゼロクロス入力ポートP1に入力されるゼロクロス信号VZERO1とその周期から次のゼロクロスを推定し、推定した次のゼロクロスよりも時間Toffだけ早いタイミングでトリガ信号VTRIGをオフさせている(つまり信号レベルをHレベルに切り替えている)。
【0027】
ところで、本実施形態では、商用交流電源ACにインピーダンス要素Zが接続されており、時刻t1のときにトライアックQ1がオンになって照明負荷Laに負荷電流が流れると、負荷電流に応じた電圧降下がインピーダンス要素Zに発生する。すると、商用交流電源ACからの入力電圧VACZが+VZDよりも小さくなることから、上述と同様の処理を経て時刻t1のときにLレベルのゼロクロス信号VZERO1が発生してしまう。つまり、商用交流電源ACのゼロクロス以外の要因によってゼロクロス信号VZERO1が発生するのである。
【0028】
そこで、本実施形態では、マイコン3の一部により構成された上記のゼロクロス確定手段により、ゼロクロス入力ポートP1に入力されたゼロクロス信号VZERO1が商用交流電源ACのゼロクロスか否かを判別している。以下、その動作について説明する。マイコン3では、ゼロクロス入力ポートP1に入力されるゼロクロス信号VZERO1のHレベルからLレベルへの立ち下がりエッジを検出し、このタイミングからゼロクロス信号VZERO1の信号幅(ゼロクロス信号VZERO1がLレベルである時間)をタイマでカウントする。そして、このカウント値が所定の基準値(例えば300μsec)以上であれば、商用交流電源ACのゼロクロスとして確定させている(図2中のゼロクロス信号VZERO2参照)。その結果、信号幅が基準値未満であるゼロクロス信号VZERO1については商用交流電源ACのゼロクロスとして認識しないので、インピーダンス要素Zによる瞬時的な電圧降下に起因するゼロクロス信号VZERO1を商用交流電源ACのゼロクロスとして誤認識するのを抑えることができ、その結果、照明負荷Laの照度のちらつきを低減させることができる。
【0029】
ここにおいて、上述したゼロクロス確定手段を採用しない場合には、インピーダンス要素Zによる瞬時的な電圧降下に起因するゼロクロス信号VZERO1についても商用交流電源ACのゼロクロスとして検出される。そして、マイコン3では、ゼロクロス入力ポートP1に入力されたゼロクロス信号VZERO1の立ち下がりエッジで、タイマを起動してカウント動作を開始させる。その後、調光レベルに応じたカウント値C2に達した時刻t2のときに、位相制御出力ポートP2からLレベルのトリガ信号VTRIGを出力するのである。つまり、この場合には、商用交流電源ACのゼロクロスのタイミングよりも早いタイミングでゼロクロス信号VZERO1が入力されることになり、このゼロクロス信号VZERO1に従ってトライアックQ1の点弧位相角が制御される。その結果、図2に示すようにトライアックQ1の導通期間がT1からT2(T2>T1)に変化することになり、照明負荷Laの照度にちらつきが生じてしまう。一方、本実施形態によれば、上述したゼロクロス確定手段を採用することで、上記の不具合を抑えることができる。なお、図2に示す例では、時刻t3のときにトリガ信号VTRIGをオフしているが、トライアックQ1は自己保持機能を有していることから負荷電流がゼロになる時刻t4まではオンし続け、その結果、トライアックQ1の導通期間がT2になるのである。
【0030】
而して、本実施形態によれば、信号幅のカウント値が所定の基準値以上であるゼロクロス信号VZERO1のみを商用交流電源ACのゼロクロスとして確定するので、インピーダンス要素Zによる瞬時的な電圧降下に起因するゼロクロス信号VZERO1を商用交流電源ACのゼロクロスと誤検出するのを抑えることができ、その結果、照明負荷Laの照度のちらつきを低減させた調光装置Aを提供することができる。
【0031】
(実施形態2)
本発明に係る調光装置の実施形態2を図3に基づいて説明する。本実施形態では、マイコン3において、ゼロクロス信号VZERO1をゼロクロス信号VZERO2として確定させてからトリガ信号VTRIGをオフにするまでの間に入力されたゼロクロス信号VZERO1は無効にしている点で実施形態1と異なっている。なお、それ以外については実施形態1と同様であり、同一の構成要素には同一の符号を付して説明は省略する。また、必要に応じて図1を参照する。
【0032】
マイコン3は、ゼロクロス入力ポートP1に入力されたゼロクロス信号VZERO1を商用交流電源ACのゼロクロス(図3中のゼロクロス信号VZERO2)として確定させると(時刻t5のとき)、タイマを起動してカウント動作を開始させる。なお、このときのカウント設定値C3は、ゼロクロス信号VZERO1を商用交流電源ACのゼロクロスとして確定させてからトリガ信号VTRIGがオフにされるまでの時間に設定されている。そして、マイコン3では、タイマによるカウント動作が終了する時刻t6までの間に入力されるゼロクロス信号VZERO1を無効にしている。これは、商用交流電源ACのゼロクロスは上記の期間には存在しないため、この間に入力されるゼロクロス信号VZERO1は上述した瞬時的な電圧降下などによるものであると判断できるからである。また同様に、マイコン3では、次のゼロクロスが確定する時刻t7からカウント設定値C4が経過する時刻t8までの間に入力されるゼロクロス信号VZEROについても無効にしている。
【0033】
而して、本実施形態によれば、ゼロクロス信号VZERO1をゼロクロス信号VZERO2として確定させてから、トライアックQ1へのトリガ信号VTRIGをオフにするまでの間のゼロクロス信号VZERO1は無効にするので、インピーダンス要素Zによる瞬時的な電圧降下や商用交流電源ACに重畳されたノイズなどに起因するゼロクロス信号VZERO1を商用交流電源ACのゼロクロスと誤検出するのを抑えることができ、その結果、照明負荷Laの照度のちらつきを低減させた調光装置Aを提供することができる。
【0034】
(実施形態3)
本発明に係る調光装置の実施形態3を図4に基づいて説明する。本実施形態では、照明負荷Laの調光下限付近まで調光させたときの照明負荷Laの照度のちらつきを抑えるべく、トリガ信号VTRIGをオフさせてから更に一定時間ゼロクロス信号VZERO1を無効にしている点で実施形態2と異なっている。なお、それ以外については実施形態2と同様であり、同一の構成要素には同一の符号を付して説明は省略する。また、必要に応じて図1を参照する。
【0035】
実施形態1,2で説明したように、本発明に係る調光装置Aは、トライアックQ1のオン時間、つまりトライアックQ1の点弧位相角を制御することによって照明負荷Laの調光レベルを調整することができる。そして、例えば調光下限付近まで調光レベルを変化させた場合には、図4に示すようにインピーダンス要素Zによる瞬時的な電圧降下が商用交流電源ACのゼロクロスに近づいていく。その結果、瞬時的な電圧降下によるゼロクロス信号VZERO1と、商用交流電源ACのゼロクロスによるゼロクロス信号VZERO1とが重なり、1つのゼロクロス信号VZERO1となる場合がある。この場合、ゼロクロス信号VZERO1の立ち下がりエッジが非周期的に変化するため、実施形態1,2のように信号の立ち下がりエッジでゼロクロス信号VZERO1を検出すると、トライアックQ1の点弧位相角が変化することになり、その結果、照明負荷Laの照度にちらつきが生じる。
【0036】
そこで、本実施形態では、上記の不具合を解消するために、トリガ信号VTRIGをオフさせてから更に一定時間、マイコン3のゼロクロス入力ポートP1に入力されるゼロクロス信号VZERO1を無効にしている。ここにおいて、上記の一定時間は、トリガ信号VTRIGのオフ時から次のゼロクロスまでの時間よりも短い第1の時間(例えば1msec程度)に設定されており、さらにトリガ信号VTRIGの出力タイミングのカウント動作をゼロクロス信号VZERO1の立ち上がりエッジで開始させている。
【0037】
次に、図4を参照しながら具体的に説明する。マイコン3は、ゼロクロス信号VZERO1が確定した時刻t9のとき、タイマを起動してカウント動作を開始させ、カウント設定値C5が経過する時刻t10までの間に入力されるゼロクロス信号VZERO1については無効にしている。また同様に、マイコン3は、次のゼロクロスが確定する時刻t11からカウント設定値C6が経過する時刻t12までの間に入力されるゼロクロス信号VZEROについても無効にしている。なお、上記のカウント設定値C5,C6は、ゼロクロス信号VZERO1を確定させてからトリガ信号VTRIGがオフにされるまでの時間と、上記の第1の時間とを合わせた時間に対応する値となっている。
【0038】
而して、本実施形態では、トリガ信号VTRIGをオフさせてから第1の時間が経過するまでの間においても、マイコン3のゼロクロス入力ポートP1に入力されるゼロクロス信号VZERO1を無効にしているので、調光下限付近においても照明負荷Laの照度のちらつきを低減することができる。
【0039】
(実施形態4)
本発明に係る調光装置の実施形態4を図5に基づいて説明する。本実施形態では、マイコン3のゼロクロス入力ポートP1に入力されるゼロクロス信号VZERO1の停止時間が所定の第2の時間よりも短い場合には1つのゼロクロス信号VZERO1として取り扱う点で実施形態3と異なっている。なお、それ以外については実施形態3と同様であり、同一の構成要素には同一の符号を付して説明は省略する。また、必要に応じて図1を参照する。
【0040】
本実施形態の調光装置Aにおいて、調光レベルを調光下限の少し手前に設定した場合には、インピーダンス要素Zによる瞬時的な電圧降下に起因するゼロクロス信号VZERO1と、商用交流電源ACのゼロクロスによるゼロクロス信号VZERO1とが重なったり、離れたりする状態になる。この場合、ゼロクロス信号VZERO1の立ち上がりエッジを検出してゼロクロス信号VZERO1を確定させていると、瞬時的な電圧降下によるゼロクロス信号VZERO1を商用交流電源ACのゼロクロスによるゼロクロス信号VZERO1と誤認識してしまう場合がある。そして、その結果、照明負荷Laの照度にちらつきが生じてしまう。
【0041】
そこで、本実施形態では、上記の不具合を解消するために、ゼロクロス信号VZERO1の停止時間T3(ゼロクロス信号VZERO1がHレベルとなっている時間)が所定の第2の時間(例えば100μsec)よりも短い場合には、図5に示すように1つのゼロクロス信号VZERO2として取り扱うようになっている。そして、このゼロクロス信号VZERO2の最後の立ち上がりエッジでゼロクロス信号VZERO2を確定させている。その結果、図5に示すように、瞬時的な電圧降下によるゼロクロス信号VZERO1と、商用交流電源ACのゼロクロスによるゼロクロス信号VZERO1とが重なったり、離れたりする場合であっても、ゼロクロス信号VZERO2の確定タイミングは変化しないのである。
【0042】
次に、図5を参照しながら具体的に説明する。マイコン3は、先のゼロクロス信号VZERO1の立ち上がりエッジを検出すると、タイマを起動してカウント動作を開始させる。そして、タイマのカウント値が第2の時間に達する前に次のゼロクロス信号VZERO1の立ち下がりエッジを検出すると、上記2つのゼロクロス信号VZERO1を1つのゼロクロス信号VZERO2として取り扱うのである。
【0043】
而して、本実施形態によれば、ゼロクロス入力ポートP1に入力されるゼロクロス信号VZERO1の停止時間T3が第2の時間よりも短い場合には1つのゼロクロス信号VZERO2として取り扱うので、瞬時的な電圧降下やノイズに起因するゼロクロス信号VZERO1と、商用交流電源ACのゼロクロスによるゼロクロス信号VZERO1とが重なったり、離れたりする状態にあっても、商用交流電源ACのゼロクロスを検出することができ、照明負荷Laの照度がちらつくのを低減させた調光装置Aを提供することができる。
【0044】
なお、上述した実施形態1〜4では、商用交流電源ACのゼロクロスを検出すると、ゼロクロス信号VZERO1がHレベルからLレベルに立ち下がるような回路構成になっているが、ゼロクロスを検出したときにゼロクロス信号VZERO1がLレベルからHレベルに立ち上がるような回路構成であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 ゼロクロス検出回路(ゼロクロス検出手段)
2 調光制御回路(調光制御手段)
3 マイコン(ゼロクロス検出手段、ゼロクロス確定手段、調光制御手段)
AC 商用交流電源
Q1 トライアック(双方向スイッチング素子)
A 調光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己保持機能を有する双方向スイッチング素子と、
交流電源からの入力電圧がゼロクロス付近の所定範囲であればゼロクロス信号を出力するゼロクロス検出手段と、
前記ゼロクロス検出手段から出力される前記ゼロクロス信号の信号幅をカウントし、カウント値が所定の基準値以上であれば前記ゼロクロス信号を交流電源波形のゼロクロスとして確定させるゼロクロス確定手段と、
前記ゼロクロス確定手段により確定した前記ゼロクロス信号に同期して設定されたオン期間中は前記双方向スイッチング素子を駆動させる駆動電圧を与え続けるDCトリガ方式の位相制御を行う調光制御手段とを備えることを特徴とする調光装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ゼロクロス確定手段により確定した前記ゼロクロス信号から推定される次のゼロクロスよりも前に前記駆動電圧をオフにし、
前記ゼロクロス確定手段は、前記ゼロクロス信号を確定させてから、前記制御手段が前記駆動電圧をオフにするまでの間に前記ゼロクロス検出手段から出力される前記ゼロクロス信号を無効にすることを特徴とする請求項1記載の調光装置。
【請求項3】
前記ゼロクロス確定手段は、前記制御手段が前記駆動電圧をオフにしてから、前記駆動電圧のオフ時から次のゼロクロスまでの時間より短い時間に設定された第1の時間が経過するまでの間に前記ゼロクロス検出手段から出力される前記ゼロクロス信号を無効にすることを特徴とする請求項2記載の調光装置。
【請求項4】
前記ゼロクロス確定手段は、前記ゼロクロス検出手段から出力される前記ゼロクロス信号の停止時間が所定の第2の時間よりも短い場合には1つのゼロクロス信号としてカウント動作を行うことを特徴とする請求項3記載の調光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−4013(P2012−4013A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139280(P2010−139280)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】