説明

調剤装置のシート取り出し機構

【課題】錠剤カセット内の最下位置にある先のPTP錠剤シートをチャッキングして外部に取り出す際に、次のPTP錠剤シートをチャッキング装置に引き込んでしまう現象が発生することのない調剤装置のシート取り出し機構を提供する。
【解決手段】この調剤装置のシート取り出し機構では、PTP錠剤シート9001,9002,・・・を前記錠剤カセット外に取り出す際に、先のPTP錠剤シート9001のポケット位置が次のPTP錠剤シート9002から外れるタイミングで、該先のPTP錠剤シート9001を所定高さだけ持ち上げるように前記チャッキングユニットの動作を制御する制御手段を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調剤装置のシート取り出し機構に関し、特にPTP(プレス スルー パッケージ)錠剤シートと呼ばれる包装形式の錠剤を、錠剤カセットに入れて自動的に調剤する調剤装置の錠剤カセットから錠剤シートを取り出す機構に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、病院等の薬局における調剤作業は薬剤師が医師の処方箋に従って行っているが、特に診療分野が広い総合病院等にあっては、常時取り出し可能にしておく錠剤の種類が多くなり、保管場所を必要とするばかりか、処方箋に基づいて調剤する作業は非常に精神的、肉体的に負担を強いられるものであった。
【0003】
そこで、予め設定したプログラムに基づいて所定の錠剤の所定個数分を、PTP錠剤シートの端数分を含めて自動的に調剤する調剤装置が開発された(例えば特許文献1,2参照)。なお、PTP錠剤シートとは、錠剤側を押圧することで底のアルミシート部分を破ることにより錠剤を取り出すようにした包装形式であり、一般には錠剤の10個以上を1枚のシート状にして供給される。
【0004】
ここでは、PTP錠剤シートを複数分載置した錠剤カセットはカセット棚に収容されており、ヘッド装置に搭載されているチャッキング装置の爪部が、錠剤カセットの前面に形成されている溝部に直接潜入して、相対位置合わせを行うとともに、錠剤カセット内の最下位置にあるPTP錠剤シートをチャッキングして外部に取り出すようになっている。
【0005】
この錠剤カセット1000では、図14に示すように、取出部材1001が、残数収納部1002から一部が突出して設けられている。この取出部材1001をチャッキング装置2000に設けられているプッシャー2001により押圧することにより、取出部1003が凹部1004内に退避する結果、最下段に位置している図示しないPTP錠剤シートが自重で落下して、後端が取出部1003を掛止する状態になる。
【0006】
この後に、プッシャー2001を取出部材1001から退避させると、この取出部材1001に設けられているバネ1005の作用により、取出部材1001は元の位置に戻るが、この際に取出部材1001の取出部1003はPTP錠剤シートの後端を掛止しているので、PTP錠剤シートの先端部が今度は開口部1006から突出することになる。このとき、開口部1006の略中央に設けられた仕切板1007が上段に位置しているPTP錠剤シートに当接して、このPTP錠剤シートが開口部1006から突出しないようになっている。
【0007】
このようにして、最下段に位置しているPTP錠剤シートが順に開口部1006から送り出されるので、チャッキング装置2000の上下爪体2002によってPTP錠剤シートの先端部をチャッキングして次工程に進むようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図13は従来技術におけるPTP錠剤シートの引き込み現象の説明図であって、(a)は錠剤カセット1000内の最下位置にある先のPTP錠剤シート9001の頭出し前の状態を模式的に示す側面図、(b)は(a)の正面図、(c)は先のPTP錠剤シート9001の頭出し時の状態を模式的に示す側面図、(d)は(c)の正面図、(e)は先のPTP錠剤シート9001を錠剤カセット1000から取り出す時の状態を模式的に示す側面図、(f)は(e)の正面図である。
【0009】
上記従来技術では、最初は図13(a)(b)に示すように、錠剤カセット1000内に積載された例えば3枚のPTP錠剤シート9001,9002,9003は、その錠剤カセット1000内に整列状態で積載されている。
【0010】
ついで、図13(c)(d)及び図14に示すように、錠剤カセット1000から最下位置にある先のPTP錠剤シート9001の頭出しを行う。このときには、仕切板1007が、次のPTP錠剤シート9002に当接して、このPTP錠剤シート9002が突出しないようになっている。
【0011】
そして、先のPTP錠剤シート9001を、チャッキング装置2000の上下爪体2002によってチャッキングして錠剤カセット1000の外部に取り出すが、この際に、図13(e)(f)に示すように、次のPTP錠剤シート9002が先のPTP錠剤シート9001に部分的に重なった状態でチャッキング装置2000に引き込んでしまう現象が発生することがある。この引き込み現象が発生すると、PTP錠剤シート9001,9002,9003を1枚ずつ錠剤カセット1000から取り出すことができなくなり、次工程での不具合をきたすこととなる。なお、図13(e)中の○で囲んだ部分Bが、先のPTP錠剤シート9001と、次のPTP錠剤シート9002との重なり部分を示す。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、錠剤カセット内の最下位置にある先のPTP錠剤シートをチャッキングして外部に取り出す際に、次のPTP錠剤シートをチャッキング装置に引き込んでしまう現象が発生することのない調剤装置のシート取り出し機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
図10,図11は本発明の基礎となる発明(1)(2)におけるPTP錠剤シートのチャッキングユニットへの引き込み現象の説明図であって、(a)は錠剤カセット内の最下位置にある先のPTP錠剤シート9001の頭出し前の状態を模式的に示す側面図、(b)は先のPTP錠剤シート9001の頭出し時の状態を模式的に示す側面図、(c)は先のPTP錠剤シート9002を外部に取り出す時の状態を模式的に示す側面図である。なお、各図中の531bは仕切板、546は押出部材である。この押出部材546はチャッキングユニットによりリンク機構を介して動作する。また、各側面図にそれぞれ対応する正面図は、前記図13におけるそれと同様であるので、省略した。
【0014】
本発明者の知見によると、上記引き込み現象が発生する原因は、次のPTP錠剤シート9002とチャッキング装置でチャッキングしている先のPTP錠剤シート9001との間の重なり部分に作用する摩擦力や引っかかりによるものである。
【0015】
したがって、本発明者は、まず図11(a)に示すように、錠剤カセットの底面に、次のPTP錠剤シート9002とチャッキングユニットでチャッキングしている先のPTP錠剤シート9001との間の重なり部分に作用する摩擦力や引っかかり以上のグリップ力を有するゴムシート546cを貼り付けることとした。
【0016】
この場合には、図11(c)に示すように、先のPTP錠剤シート9002を錠剤カセットから取り出す時には、ゴムシート546cとチャッキングユニット400でチャッキングしている先のPTP錠剤シート9001との間のグリップ力Fでもって、錠剤カセット内の最下位置にある先のPTP錠剤シート9001をチャッキングして外部に取り出す際に、次のPTP錠剤シート9002をチャッキングユニットに引き込んでしまう現象が発生することがなくなる。
【0017】
しかし、図11(b)に示すように、そのグリップ力Fが、先のPTP錠剤シート9001の頭出しをする際のリンク動作の大きな負荷となり、その反力で錠剤カセットが後方に押し込まれるため、PTP錠剤シート9001を正常にチャッキングできなくなるといった問題が新たに発生することがわかった。グリップ力Fは、ここでは摩擦係数と垂直抗力との乗数の摩擦力であるため、PTP錠剤シートの重量とストック枚数とに比例して上記問題がより発生しやすくなる。
【0018】
そこで、例えば図10(a)に示すように、錠剤カセットの押出部材546に、次のPTP錠剤シート9002とチャッキングユニットでチャッキングしている先のPTP錠剤シート9001との間の重なり部分に作用する摩擦力や引っかかり以上のグリップ力を有するゴムシート546cを貼り付けることとした。
【0019】
すると、図10(c)に示すように、先のPTP錠剤シート9002を錠剤カセットから取り出す時には、ゴムシート546cとチャッキングユニットでチャッキングしている先のPTP錠剤シート9001との間のグリップ力Fでもって、錠剤カセット内の最下位置にある先のPTP錠剤シート9001をチャッキングして外部に取り出す際に、次のPTP錠剤シート9002をチャッキングユニット400に引き込んでしまう現象が発生することがなくなる。
【0020】
しかも、この場合には、上記と異なり、図10(b)に示すように、ゴムシート546cは、先のPTP錠剤シート9001を押し出す押出部材546とともに移動するので、そのグリップ力Fが、先のPTP錠剤シート9001の頭出しをする際のリンク動作の大きな負荷となることがなくなる。したがって、その反力で錠剤カセットが後方に押し込まれることがなくなるため、PTP錠剤シート9001を正常にチャッキングできなくなるといった新たな問題が発生しなくなることがわかった。
【0021】
本発明の基礎となる発明(2)は、このような発明者の知見に基づくものであり、シート本体上に薬品ポケットが突出した錠剤シートを積載可能な錠剤カセットの前面に、該錠剤シートの1枚分の最大高さであるシート高さに応じた隙間を設けるとともに、この隙間を介して、前記錠剤カセット内に積載された錠剤シートを、一番下から順に1枚ずつチャッキングして該錠剤カセット外に取り出すチャッキングユニットを備えた調剤装置のシート取り出し機構であって、前記錠剤カセットは、該錠剤カセットから前記一番下の錠剤シートを前記チャッキングユニットに向けて押し出す押出部材を備えており、この押出部材に、前記次の錠剤シートに対する所定のグリップ力を与えるグリップ手段を備えたことを特徴とするものである。
【0022】
本発明の基礎となる発明(2)によれば、前記錠剤カセットは、該錠剤カセットから前記一番下の錠剤シートを前記チャッキングユニットに向けて押し出す押出部材を備えており、この押出部材に、前記次の錠剤シートに対する所定のグリップ力を与えるグリップ手段を備えたので、前記錠剤カセットから取り出される先の錠剤シートが、次の錠剤シートに部分的に乗り上げた状態で取り出されることがなくなる。これにより、錠剤カセット内の最下位置にある先のPTP錠剤シートをチャッキングして外部に取り出す際に、次のPTP錠剤シートをチャッキングユニットに引き込んでしまう現象が発生することがなくなる。しかも、グリップ手段は、先のPTP錠剤シートを押し出す押出部材とともに移動するので、そのグリップ力が、先のPTP錠剤シートの頭出しをする際のリンク動作の大きな負荷となることがなくなる。したがって、その反力で錠剤カセットが後方に押し込まれることがなくなるため、そのPTP錠剤シートを正常にチャッキングできなくなるといった問題も発生しなくなる。
【0023】
また、前記押出部材は、錠剤シートの後端面に当接可能な直立部と、この直立部の下部から前方に延び、該錠剤シートの下面に接触可能な水平部とを備えており、前記グリップ手段は、前記水平部に貼り付けたゴムシートであることが好ましい。
【0024】
この場合、前記押出部材は、錠剤シートの後端面に当接可能な直立部と、この直立部の下部から前方に延び、該錠剤シートの下面に接触可能な水平部とを備えており、前記グリップ手段は、前記水平部に貼り付けたゴムシートであるので、非常に簡単な構成となる。
【0025】
ところで、PTP錠剤シート900のチャッキングユニットへの引き込み現象を防止するには、必ずしも上記のごときグリップ手段を備える必要はない。
【0026】
図12は本発明におけるPTP錠剤シートのチャッキングユニットへの引き込み現象の説明図であって、(a)は先のPTP錠剤シート9002を錠剤カセットから取り出す時の状態を模式的に示す側面図、(b)はその正面図である。なお、各図中の531bは仕切板である。
【0027】
ここでは、図12(a)(b)に示すように、先のPTP錠剤シート9001を、仕切板531bをくぐらせた後(図中の(1)の動作である)、チャッキングユニットで持ち上げて(図中の(2)の動作である)、その仕切板531bに次のPTP錠剤シート9002を当接させる。これにより、次のPTP錠剤シート9002が外部に取り出されることが規制される。そして、先のPTP錠剤シート9001をチャッキングユニットで持ち上げたまま、錠剤カセットの外部に取り出す(図中の(3)の動作である)。なお、図中の○で囲んだ部分Aは、次のPTP錠剤シート9002が、先のPTP錠剤シート9001に部分的に重なった状態で持ち上げられて、仕切板531bに当接させられる様子を示している。
【0028】
このようにしても、錠剤カセット内の最下位置にある先のPTP錠剤シート9001をチャッキングして外部に取り出す際に、次のPTP錠剤シート9002をチャッキングユニット400に引き込んでしまう現象が発生しなくなる。しかも、この場合には、そもそも上記のごときグリップ手段を備えていないので、先のPTP錠剤シート9001の頭出しをする際のリンク動作の大きな負荷となることはありえない。したがって、その反力で錠剤カセットが後方に押し込まれることがないため、PTP錠剤シート9001を正常にチャッキングできなくなるといった新たな問題が発生することもない。
【0029】
本発明は、このような発明者の知見に基づくもので、シート本体上に薬品ポケットが突出した錠剤シートを積載可能な錠剤カセットの前面に、該錠剤シートの1枚分の最大高さであるシート高さに応じた隙間を設けるとともに、この隙間を介して、前記錠剤カセット内に積載された錠剤シートを、一番下から順に1枚ずつチャッキングして該錠剤カセット外に取り出すチャッキングユニットを備えた調剤装置のシート取り出し機構であって、錠剤シートを前記錠剤カセット外に取り出す際に、先の錠剤シートのポケット位置が次の錠剤シートから外れるタイミングで、該先の錠剤シートを所定高さだけ持ち上げるように前記チャッキングユニットの動作を制御する制御手段を設けたことを特徴とするものである。
【0030】
本発明によれば、錠剤シートを前記錠剤カセット外に取り出す際に、先の錠剤シートのポケット位置が次の錠剤シートから外れるタイミングで、該先の錠剤シートを所定高さだけ持ち上げるように前記チャッキングユニットの動作を制御する制御手段を設けたので、前記錠剤カセットから取り出される先の錠剤シート上に、次の錠剤シートが部分的に乗り上げた状態で取り出されることが禁止される。これにより、錠剤カセット内の最下位置にある先のPTP錠剤シートをチャッキングして外部に取り出す際に、次のPTP錠剤シートをチャッキングユニットに引き込んでしまう現象が発生することがなくなる。しかも、本発明の基礎となる発明(2)のごときグリップ手段を備えていないので、そもそもグリップ力が、先のPTP錠剤シートの頭出しをする際のリンク動作の大きな負荷となることはありえない。したがって、その反力で錠剤カセットが後方に押し込まれることがなくないため、そのPTP錠剤シートを正常にチャッキングできなくなるといった問題も発生しない。
【0031】
また、前記錠剤シートのポケット位置とシート高さとを含むシート情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶されたシート情報を読み取る読取手段とを備えるとともに、前記制御手段は、前記読取手段で読み取ったシート情報に基づいて前記タイミングと所定高さとを演算する演算手段を備えることが好ましい。
【0032】
この場合、前記錠剤シートのポケット位置とシート高さとを含むシート情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶されたシート情報を読み取る読取手段とを備えるとともに、前記制御手段は、前記読取手段で読み取ったシート情報に基づいて前記タイミングと所定高さとを演算する演算手段を備えたので、前記チャッキングユニットの動作を確実に制御することができる。
【0033】
また、前記記憶手段は、前記錠剤カセットの前面に設けられたICタグであり、前記読取手段は、前記チャッキングユニットに取り付けられ、前記ICタグに記憶されたシート情報を読み取り可能なリーダであることが好ましい。
【0034】
この場合、前記記憶手段は、前記錠剤カセットの前面に設けられたICタグであり、前記読取手段は、前記チャッキングユニットに取り付けられ、前記ICタグに記憶されたシート情報を読み取り可能なリーダであるので、簡単な構成となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、錠剤シートを前記錠剤カセット外に取り出す際に、先の錠剤シートのポケット位置が次の錠剤シートから外れるタイミングで、該先の錠剤シートを所定高さだけ持ち上げるように前記チャッキングユニットの動作を制御する制御手段を設けたので、前記錠剤カセットから取り出される先の錠剤シートのシート本体上に、次の錠剤シートのシート本体が部分的に乗り上げた状態で取り出されることが禁止される。これにより、錠剤カセット内の最下位置にある先のPTP錠剤シートをチャッキングして外部に取り出す際に、次のPTP錠剤シートをチャッキングユニットに引き込んでしまう現象が発生することがなくなる。しかも、本発明の基礎となる発明(2)のごときグリップ手段を備えていないので、そもそもグリップ力が、先のPTP錠剤シートの頭出しをする際のリンク動作の大きな負荷となることはありえない。したがって、その反力で錠剤カセットが後方に押し込まれることがないため、そのPTP錠剤シートを正常にチャッキングできなくなるといった問題も発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の基礎となる発明(2)の実施形態(実施形態1)に係る調剤装置の主たる構成要素を示す分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る錠剤カセットのチャッキングユニットに対向する側から見た斜視図である。
【図3】待機時における押出部材の位置を示す斜視図である。
【図4】シート頭出し時における押出部材の位置を示す斜視図である。
【図5】カセット本体の本体下部の具体的構成を示す斜視図である。
【図6】シート頭出し時における錠剤カセットの側断面図である。
【図7】シート取り出し時における錠剤カセットの側断面図である。
【図8】本発明の実施形態(実施形態2)に係る錠剤カセットとチャッキングユニットとからなる全体構成図であって、(a)は錠剤カセットのチャッキングユニットに対向する側から見た斜視図、(b)は(a)の制御ブロック図である。
【図9】シート取り出し時における錠剤カセットの側断面図である。
【図10】本発明の基礎となる発明(2)におけるPTP錠剤シートのチャッキングユニットへの引き込み現象の説明図。
【図11】本発明の基礎となる発明(1)におけるPTP錠剤シートのチャッキングユニットへの引き込み現象の説明図。
【図12】本発明におけるPTP錠剤シートのチャッキングユニットへの引き込み現象の説明図。
【図13】従来技術におけるPTP錠剤シートのチャッキングユニットへの引き込み現象の説明図。
【図14】従来の一例におけるカセット棚の棚板上への錠剤カセットの固定構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る調剤装置1の主たる構成要素を示す分解斜視図である。
【0038】
図1に示すように、この調剤装置1は、箱状の装置本体100の奥側左右に2台設けられたYキャリッジ200,200と、これらのYキャリッジ200,200にそれぞれ支持されたXキャリッジ300,300と、これらのXキャリッジ300,300にそれぞれ支持されたチャッキングユニット400,400と、前記装置本体100の手前側左右に2台設けられ、複数の錠剤カセット500,500,・・・を左右方向に並べて搭載可能なカセット棚600,600と、これらのカセット棚600,600の下部にそれぞれ配置されたカッティングユニット700,700と、左右のカセット棚600,600の下方に、両カセット棚600,600の左右両端間に亘って配置された1台の搬送コンベアユニット800とを備えている。
【0039】
以下、複数存在する構成要素については、その代表的なものについて説明する。Yキャリッジ200は、サーボモータ210と、このサーボモータ210で駆動される縦軸方向(図1中のY方向)のボールネジ220と、ボールネジ220の左右にそれぞれ配置された縦ガイド230,230と、ボールネジ220の回転により上下動するナット240とを備えており、Xキャリッジ300は、縦ガイド230,230に案内されつつ、ボールネジ220の回転によりナット240とともに上下動するキャリッジ本体310と、このキャリッジ本体310上に、サーボモータ410と、このサーボモータ410で駆動される横軸方向(図1中のX方向)のボールネジ415と、図示しないナットとを備えている。
【0040】
図2は錠剤カセット500のチャッキングユニット400に対向する側から見た斜視図、図3は待機時における押出部材546の位置を示す斜視図、図4はシート頭出し時における押出部材546の位置を示す斜視図を示す斜視図、図5はカセット本体520の本体下部540の具体的構成を示す斜視図である。なお、図3〜図5では、説明の便宜上、PTP錠剤シート900を省略している。以下、錠剤カセット500のチャッキングユニット400に対向する側を前、その反対側を後という。
【0041】
本実施形態1における錠剤カセット500は、積載される各種PTP錠剤シート(錠剤シートに相当する。)900よりも若干幅広に形成されている。したがって、錠剤カセット500としては、各種PTP錠剤シート900の有する幅に応じて、幅寸法のみが異なるものが複数用意される。それらの具体的な構成は、いずれも図2〜図4に示すように、断面凹状をなす長尺のカセット基部510と、このカセット基部510の長手方向から着脱自在に嵌合されるカセット本体520とからなっている。
【0042】
カセット基部510の底板511の裏面側には、後述する図6,図7に示すように、側面視L字状の突起512,512が前後(及び左右)にそれぞれ形成され、その底板511の後端は上方に屈曲されて弾性を有する舌片513が形成されている。前記底板511の後部の表面側には断面逆凹状の支持部材514が形成され、この支持部材514で片持ち支持される左右二条の舌片515,515がそれぞれ前部に向かって先下がりに形成されている。
【0043】
なお、支持部材514と、舌片515,515とは、前記図2に示すように、ともにカセット基部510の左右側壁516,517内に配置されており、この舌片515,515でPTP錠剤シート900,900,・・・の端数分がチャッキングされるようになっている。ただし、前記舌片515の条数は二条に限定されず、一条でもよいし、三条以上であってもよい。
【0044】
カセット本体520は、さらに複数のPTP錠剤シート900,900,・・・を積載可能な本体上部530と、この本体上部530の下部に一体となるように取り付けられた本体下部540とからなっている。
【0045】
本体下部540は、カセット本体520のカセット基部510への組み立て状態で、該カセット基部510の左右側壁516,517内に埋没して配置されるものであるが、その単体で見ると、図2に示すように、断面凹状の長尺形状をなした底板541上に前記本体上部530の一番下に積載されたPTP錠剤シート900を順次に取り出すためのリンク機構550を備えている。
【0046】
このリンク機構550は、図5に示すように、前記本体下部540の底板541の後部にあって、その幅方向の略中央部に回転可能に軸支された回転部材542と、後端側がこの回転部材542の一端側に回転可能に連結され、かつ前端側の押圧部材543が前記チャック430による押圧力を受けると、引張りバネ544aによる弾性付勢力に抗して後向きに移動可能な第一のスライド部材544と、この第一のスライド部材544と平行に配置されるとともに、後端側が前記回転部材542の他端側に回転可能に連結され、かつ前記第一のスライド部材544と逆向きに移動可能な第二のスライド部材545とを備えており、この第二のスライド部材545に、前記一番下に積載されたPTP錠剤シート900を押し出すための押出部材546が前後方向に位置調整可能に立設されている。
【0047】
押出部材546は、さらに前記一番下に積載されたPTP錠剤シート900の後端に当接可能な垂直部546aと、この垂直部546aの基部前方に若干延びて、前記一番下に積載されたPTP錠剤シート900の下面に当接可能な水平部546bとからなっており、この水平部546bの上面にゴムシート(グリップ手段に相当する。)546cが貼設されている。ただし、グリップ手段は、例えば押出部材546は摩擦体で一体形成するか、或いは、その表面を適当に粗すなどしてもよい。ゴムシート546cの材料としては、例えばシリコンゴムなどが好適である。
【0048】
本体上部530は、図2〜図4に示すように、カセット本体520のカセット基部510への組み立て状態で、その後部から中間部にかけてカセット基部510の左右側壁516,517内に埋没して配置され、その中間部から前部にかけてカセット基部510の左右側壁516,517の上方に突出して配置される側面視L字状をなしており、当該突出させた前壁531が前端で互いに内側に屈曲されることにより、所定の間隙を介して対向配置されている。前壁531の上端同士は補強板532で互いに連結されている。
【0049】
この本体上部530の後部には、棒状部材533が起伏可能に立設されており、PTP錠剤シート900,900,・・・の充填時に倒伏させて、前記前壁531間にPTP錠剤シート900,900,・・・を挟み込んだ状態で、この棒状部材533を起立させることで、各PTP錠剤シート900,900,・・・を整列させるようになっている。このときの状態は、前記図10(a)に示したとおりである。
【0050】
チャッキングユニット400は、図1に示すように、キャリッジ本体310から前方(図1中のZ方向)に延びるZキャリッジ411と、このZキャリッジ411に配置されたロータリーソレノイド420と、このロータリーソレノイド420で駆動されるチャック430と、このチャック430の左右にそれぞれ配置された横ガイド440,440と、横ガイド440,440間の下部に設けられた一次バケット450と、この一次バケット450の前部に設けられたラインセンサー460と、一次バケット450の下方に設けられたシャッター470付きの二次バケット480とを備えている。Zキャリッジ411は、いずれも図示しないサーボモータと、ボールネジと、ナットとからなっている。
【0051】
図6はシート頭出し時における錠剤カセット500を示す側断面図、図7はシート取り出し時における錠剤カセット500を示す側断面図である。
【0052】
そして、PTP錠剤シート900の端数打ち抜きが不要である場合には、図示しないコントローラからの動作指令を受けて、チャッキングユニット400のチャック430が前方へと移動して、そのチャック430で直接に錠剤カセット500の押圧部材543を押圧することで、リンク機構550の働きでもって図3における押出部材546を前向きに移動させて、図4における押出部材546の状態とする。
【0053】
この移動された押出部材546で、錠剤カセット500の一番下側に積載されたPTP錠剤シート900の後端を押圧することにより、そのPTP錠剤シート900の先端が若干当該錠剤カセット500より突出して図6,図10(b)に示す状態となり、いわゆる頭出しがなされる。
【0054】
その頭出しされたPTP錠剤シート900を、チャック430でチャッキングして前方に引っ張り出す。このときには、図7,図10(c)に示すように、錠剤カセット500から取り出される先のPTP錠剤シート900(9001)のシート本体上に、次のPTP錠剤シート900(9002)のシート本体が部分的に乗り上げた状態で取り出されることがなくなり、先のPTP錠剤シート900のみを錠剤カセット500から確実に取り出すことができる。
【0055】
そして、その引っ張り出したPTP錠剤シート900を一次バケット450内に落下させるために、チャック430によるチャッキングを解除する。Xキャリッジ300と、Yキャリッジ200とを用いて一次バケット450を二次バケット480上に移動させる。そして、一次バケット450の図示しない底部シャッターを開口して、PTP錠剤シート900を二次バケット480内に落下させる。ついで、二次バケット480の底部シャッター470を開口して、PTP錠剤シート900を搬送コンベアユニット800上に落下させる。
【0056】
カッティングユニット700は、PTP錠剤シート900の端数打ち抜きをするために、図示しない縦刃と横刃とを備えている。そして、PTP錠剤シート900の端数打ち抜きが必要である場合にも、前述したように、チャッキングユニット400のチャック430で錠剤カセット500の押圧部材543を押圧し、前記リンク機構550の働きでもって押出部材546を前向きに移動させる。
【0057】
この移動された押出部材546で、錠剤カセット500の一番下側に積載されたPTP錠剤シート900の後端を押圧することにより、そのPTP錠剤シート900の頭出しがなされる。前記チャック430でその頭出しされたPTP錠剤シート900をチャッキングして前方に引っ張り出し、今度はその引っ張り出したPTP錠剤シート900をチャッキングしたまま、カッティングユニット700に搬送する。そして、前記縦刃と横刃とを用いてPTP錠剤シート900の端数打ち抜きを行って、当該打ち抜いた端数分のPTP錠剤シート900を直接搬送コンベアユニット800上に落下させるようになっている。
【0058】
前記PTP錠剤シート900の端数打ち抜きを行った残部は、チャック430でチャッキングしたまま、もとの錠剤カセット500に戻すが、この場合には、PTP錠剤シート900の残部は、カセット基部510の舌片515,515下の残部収納部515aに頭出しした状態で挿入して収納される。
【0059】
この残部収納部515aに収納されたPTP錠剤シート900の残部は、その後、前記チャック430でその頭出しされたPTP錠剤シート900の残部をチャッキングして前方に引っ張り出して、ラインセンサー460で形状をチェックする。そして、PTP錠剤シート900の残部のさらなる端数打ち抜きが不要である場合には、そのPTP錠剤シート900の残部を、一次バケット450内に落下させるためにチャック430によるチャッキングを解除する。Xキャリッジ300と、Yキャリッジ200を用いて一次バケット450を二次バケット480上に移動させる。ついで、一次バケット450の図示しない底部シャッターを開口して、PTP錠剤シート900を二次バケット480内に落下させる。ついで、二次バケット480の底部シャッター470を開口して、PTP錠剤シート900を搬送コンベアユニット800上に落下させる。
【0060】
一方、PTP錠剤シート900の残部のさらなる端数打ち抜きが必要である場合にも、前述したように、前記チャック430でカセット基部510の舌片515,515下の残部収納部515aから、その頭出しされたPTP錠剤シート900の残部をチャッキングして前方に引っ張り出す。その引っ張り出したPTP錠剤シート900の残部をチャッキングしたまま、カッティングユニット700に搬送する。そして、前記縦刃と横刃とを用いてPTP錠剤シート900残部のさらなる端数打ち抜きを行って、当該打ち抜いたさらなる端数分のPTP錠剤シート900を直接搬送コンベアユニット800上に落下させる。
【0061】
一方、前記PTP錠剤シート900のさらなる端数打ち抜きを行った残部は、チャック430でチャッキングしたまま、もとの錠剤カセット500に戻すが、この場合も、PTP錠剤シート900の残部は、カセット基部510の舌片515,515下の残部収納部515aに頭出しした状態で挿入して収納される。
【0062】
このようにして、錠剤カセット500に積載されたPTP錠剤シート900はその端数まで無駄なく調剤に供されることとなる。
【0063】
搬送コンベアユニット800は、ローラ群等801と、このローラ群等801で前後・左右方向に移動される錠剤取出バケット802,802とを備えている。そして、前記二次バケット480からシャッター470を介して落下したPTP錠剤シート900又はその残部は、ローラ群等801で前後・左右方向に移動され、錠剤取出バケット802,802のいずれかに落下されるようになっている。
【0064】
一方、前記カッティングユニット700から落下したPTP錠剤シート900の残部又はさらなる残部も、同様に、ローラ群等801で前後・左右方向に移動され、錠剤取出バケット802,802のいずれかに落下される。
【0065】
このようにして、錠剤取出バケット802,802には、調剤されたPTP錠剤シート900又はその残部が収納されるようになっている。
【0066】
以上説明したように、本実施形態1によれば、錠剤カセット500は、その錠剤カセット500から一番下のPTP錠剤シート900をチャッキングユニット400に向けて押し出す押出部材546を備えており、この押出部材546に、次の錠剤シート900に対する所定のグリップ力を与えるグリップ手段としてのゴムシート546cを備えたので、錠剤カセット500から取り出される先のPTP錠剤シート900のシート本体上に、次のPTP錠剤シート900のシート本体が部分的に乗り上げた状態で取り出されることが禁止される。これにより、錠剤カセット500内の最下位置にある先のPTP錠剤シート900をチャッキングして外部に取り出す際に、次のPTP錠剤シート900をチャッキングユニット400に引き込んでしまう現象が発生することがなくなる。しかも、ゴムシート546cは、先のPTP錠剤シート900を押し出す押出部材546とともに移動するので、そのグリップ力が、先のPTP錠剤シート900の頭出しをする際のリンク動作の大きな負荷となることがなくなる。したがって、その反力で錠剤カセット500が後方に押し込まれることがなくなるため、PTP錠剤シート900を正常にチャッキングできなくなるといった問題も発生しなくなる。
【0067】
(実施形態2)
ところで、前記従来技術において、次のPTP錠剤シート900をチャッキングユニット400に引き込んでしまう現象をなくすには、必ずしも実施形態1のようなグリップ手段を備える必要はないことは既述のとおりである。図8は実施形態2に係る錠剤カセット500とチャッキングユニット400とからなる全体構成図であって、(a)は錠剤カセット500のチャッキングユニット400に対向する側から見た斜視図、(b)は(a)の制御ブロック図である。また、図9は本実施形態2のシート取り出し時における錠剤カセットの側断面図である。
【0068】
すなわち、本実施形態2では、図8(a)(b)に示すように、上記実施形態1のようなグリップ手段を備えておらず、その代わりに、押出部材546で押し出された先のPTP錠剤シート900を錠剤カセット500の外側に取り出す際に、先の錠剤シート900のポケット位置が次のPTP錠剤シート900から外れるタイミングで、先のPTP錠剤シート900を所定高さだけ持ち上げるようにチャッキングユニット400の動作を制御するコントローラ(制御手段に相当する。)400aを設けている。その他の要素は、上記実施形態1と全く同様であるので、その詳細説明は省略する。
【0069】
ここでは、図8(a)に示すように、錠剤カセット500の前壁531には、PTP錠剤シート900のポケット位置とシート高さとを含むシート情報を記憶するICタグ(記憶手段に相当する。)531aを備えている。また、チャッキングユニット400には、このICタグ531aに記憶されたシート情報を読み取るリーダ(読取手段に相当する。)431を備えている。ここでは、ICタグ531aには、シート情報を予め記憶させておくものとするが、このリーダ431をリーダ・ライタとすることで、ICタグ531aへのシート情報の自動書き込みができるようになるのはいうまでもない。
【0070】
コントローラ400aは、図8(b)に示すように、チャッキングユニット400と電気的に接続されており、リーダ431で読み取ったシート情報等を一旦記憶しておくRAM400cと、このRAM400cに記憶したシート情報に基づいて前記タイミングと所定高さとを演算し(演算手段としての機能である)、この演算結果に基づいてチャッキングユニット400に前記図12(a)中の(1)(2)(3)で示したような動作を行わせるための動作指令を発するCPU400bと、その演算等を実行するためのプログラムを予め記憶しているROM400dとから構成されている。ここでは、説明の簡単化のため、調剤装置1に付設されるコントローラ400aだけでチャッキングユニット400の動作を制御する構成を例示したが、このコントローラ400aからの各種データ及び別途入力された処方箋データに基づいて各種演算等を行う制御装置を別途備えることとしてもよい。
【0071】
このコントローラ400aの制御下、チャッキングユニット400は、例えば以下のように動作する。
【0072】
図8(a)(b)及び図12(a)(b)に示すように、まず、錠剤カセット500の前壁531のICタグ531aに対向するようにチャッキングユニット400を移動させることで、そのチャッキングユニット400に搭載したリーダ431で、前記ICタグ531aに記憶しているシート情報を読み取る。このシート情報は、PTP錠剤シート900のポケット位置やシート高さを含む。この読み取ったシート情報をRAM400cに一旦記憶する。例えば頭出しした先の錠剤シート900をチャック430でチャッキングしたときの3次元位置を始点としたとき、CPU400bは、RAM400cに記憶されたシート情報に含まれるPTP錠剤シート900のシート本体上のポケット位置から、先のPTP錠剤シート900のすべてのポケットを越えてそのシート本体の後端付近に、次のPTP錠剤シート900のシート本体の先端が重なるようになるまでのチャック430の水平移動量(タイミングに相当する。)を算出する。また、CPU400bは、このRAM400cに記憶されたシート情報に含まれるPTP錠剤シート900の最大高さであるシート高さから、次のPTP錠剤シート900が仕切板531bをくぐり抜けできなくなるまでの前記チャック430の上昇量(所定高さに相当する。)を算出する。
【0073】
そして、CPU400bが、この演算結果に基づいてチャッキングユニット400の動作指令を発すると、チャッキングユニット400は、押出部材546で押し出された先のPTP錠剤シート900を錠剤カセット500の外部に取り出す。この際に、先のPTP錠剤シート900のポケット位置が次のPTP錠剤シート900から外れるタイミングで、先のPTP錠剤シート900を所定高さだけ持ち上げる。この先のPTP錠剤シート900の持ち上げにより、次のPTP錠剤シート900も持ち上げられて、仕切板531bに当接させるようになる。この持ち上げ動作が終了した時点での錠剤カセット500の様子は図9及び図12(a)(b)に示したとおりである。そして、このままチャッキングユニット400のチャック430を水平移動させることで、このチャック430でチャッキングされた先のPTP錠剤シート900を錠剤カセット500の外部に取り出すことができる。かかる動作の繰り返しより、錠剤カセット500からPTP錠剤シート900を最下位置から1枚ずつ順に外部に取り出すことができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態2によれば、錠剤カセット500は、この錠剤カセット500から一番下のPTP錠剤シート900をチャッキングユニット400に向けて押し出す押出部材546を備えており、この押出部材546で押し出された先のPTP錠剤シート900を錠剤カセット500外に取り出す際に、この先のPTP錠剤シート900のポケット位置が次の錠剤シートから外れるタイミングで、先の錠剤シートを所定高さだけ持ち上げるようにチャッキングユニット400の動作を制御するコントローラ400aを設けたので、錠剤カセット500から取り出される先のPTP錠剤シート900上に、次のPTP錠剤シート900が部分的に乗り上げた状態で取り出されることが禁止される。
【0075】
これにより、錠剤カセット500内の最下位置にある先のPTP錠剤シート900をチャッキングして外部に取り出す際に、次のPTP錠剤シート900をチャッキングユニットに引き込んでしまう現象が発生することがなくなる。
【0076】
しかも、上記実施形態1のごときグリップ手段を備えていないので、そもそもグリップ力が、先のPTP錠剤シート900の頭出しをする際のリンク動作の大きな負荷となることはありえない。したがって、その反力で錠剤カセットが後方に押し込まれることがないため、PTP錠剤シート900を正常にチャッキングできなくなるといった問題も発生しない。
【0077】
なお、上記実施形態1,2では、左右に2台のカセット棚600,600を配置しているが、前後に配置することとしてもよいし、1台、或いは3台以上のカセット棚を配置することとしてもよい。その場合には、各キャリッジ、チャッキングユニット、カッティングユニット等の台数もこれに対応したものとするのが作業効率の点から好ましい。
【0078】
また、上記実施形態1,2では、錠剤カセット500の前壁531の略中央に仕切板531bを設けたが、この仕切板531bを省略してもよい。その場合には、前壁531の開口部が最下部にある先のPTP錠剤シート9001の通過を許容するが、次のPTP錠剤シート9002の通過を規制することとなる。
【0079】
また、上記実施形態1,2では、各PTP錠剤カセット500,500,・・・は、カセット棚600の棚板602上に、該各PTP錠剤カセット500,500,・・・の幅方向に列設されているが、この棚板は静止した平板状のものに限定されず、例えば所定の軸心まわりに回転する円筒形状のものであってもよい。その場合には、チャッキングユニット400を、この回転する棚板上に搭載された各PTP錠剤カセット500,500,・・・に対して相対移動させることで足りる。
【符号の説明】
【0080】
1 調剤装置
100 装置本体
200 Yキャリッジ
300 Xキャリッジ
400 チャッキングユニット
400a コントローラ(制御手段に相当する。)
400b CPU(演算手段に相当する。)
400c RAM
400d ROM
411 Zキャリッジ
420 ロータリーソレノイド
430 チャック
431 リーダ(読込手段に相当する。)
500 錠剤カセット
531 前壁
531a ICタグ(記憶手段に相当する。)
531b 仕切板
546 押出部材
546a 直立部
546b 水平部
546c ゴムシート(グリップ手段に相当する。)
550 リンク機構
700 カッティングユニット
800 搬送コンベアユニット
900 PTP錠剤シート(錠剤シートに相当する。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開平4−269960号公報
【特許文献2】実開平5−054223号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体上に薬品ポケットが突出した錠剤シートを積載可能な錠剤カセットの前面に、該錠剤シートの1枚分の最大高さであるシート高さに応じた隙間を設けるとともに、この隙間を介して、前記錠剤カセット内に積載された錠剤シートを、一番下から順に1枚ずつチャッキングして該錠剤カセット外に取り出すチャッキングユニットを備えた調剤装置のシート取り出し機構であって、
錠剤シートを前記錠剤カセット外に取り出す際に、先の錠剤シートのポケット位置が次の錠剤シートから外れるタイミングで、該先の錠剤シートを所定高さだけ持ち上げるように前記チャッキングユニットの動作を制御する制御手段を設けたことを特徴とする調剤装置のシート取り出し機構。
【請求項2】
前記錠剤シートのポケット位置とシート高さとを含むシート情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶されたシート情報を読み取る読取手段とを備えるとともに、
前記制御手段は、前記読取手段で読み取ったシート情報に基づいて前記タイミングと所定高さとを演算する演算手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の調剤装置のシート取り出し機構。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記錠剤カセットの前面に設けられたICタグであり、
前記読取手段は、前記チャッキングユニットに取り付けられ、前記ICタグに記憶されたシート情報を読み取り可能なリーダであることを特徴とする請求項2記載の調剤装置のシート取り出し機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−192191(P2012−192191A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119235(P2012−119235)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【分割の表示】特願2007−260509(P2007−260509)の分割
【原出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(593129342)高園産業株式会社 (232)
【Fターム(参考)】