説明

調味用流動状食品とその製造方法

【課題】レトルト食品等の風味を調整するために使用することができる、特に、しっかりとした肉由来の風味(ブイヨン的な旨味)があり、ざらつきや粉っぽさのない滑らかな口当たりを有する調味用流動状食品を得ることを目的とする。
【解決手段】加熱処理した肉類の粉砕物を含む調味用流動状食品であって、該肉類の粉砕物が目開き850μmの篩を通過する粒径を有し、かつ、該食品中に肉汁成分を0.4〜7.2質量%含むことを特徴とする調味用流動状食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト食品等に好適に使用することができる調味用流動状食品と、これを使用したレトルト食品等の食品と、これらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品等の風味を調整するために、肉類のブイヨン、エキスが一般的に使用される。これらの加工された風味原材料は、少量で使用される場合には、風味調整のために有効である。しかし、食品における肉類の風味を意図的に強くしたい場合等に使用量を増やすと、食品加工時の風味変化の影響等により、意図する風味が得られないといった問題があった。また、使用量を増やすと、原材料費が高くなるといった問題があった。
【0003】
特許文献1には、澱粉及び/又はこれ以外の増粘性物質並びに加熱処理した肉粉砕物を含有する、油脂含量が10質量%以下であるルウであって、該肉粉砕物が、目開き5600μmの篩を通過するが目開き850μmの篩は通過しない大きさを有することを特徴とするルウが記載されている。上記の肉粉砕物は、フードカッター等で粉砕された目開き850μmの篩は通過しない大きさの比較的粒径の大きいものである。このような大きさの肉粉砕物では、カレー等の流動状の食品に利用した場合に、口当たりにざらつきがあったり、粉っぽく感じるという傾向がある。更に、肉の粉砕物を得る方法として、蒸煮処理が記載されているが、蒸煮処理は、美味しさの要素である油分を回収する等の作業が煩雑で手間がかかるといった問題がある。
【特許文献1】特開2001−269143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、レトルト食品等の風味を調整するために使用することができる、特に、しっかりとした肉由来の風味(ブイヨン的な旨味)があり、ざらつきや粉っぽさのない滑らかな口当たりを有する調味用流動状食品を得ることを目的とする。また、特に、しっかりとした肉由来の風味があり、ざらつきや粉っぽさのない滑らかな口当たりを有する流動状食品を得ることを目的とする。更に、これらの食品を好適に製造し得る方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、加熱処理した肉類の粉砕物を含む調味用流動状食品であって、該肉類の粉砕物が目開き850μmの篩を通過する粒径を有し、かつ、該食品中に肉汁成分を0.4〜7.2質量%含むことを特徴とする調味用流動状食品、を特徴とする。
本発明は、加熱処理した肉類の粉砕物を含む流動状食品であって、該肉類の粉砕物が目開き850μmの篩を通過する粒径を有し、かつ、該食品中に肉汁成分を0.05〜4.5質量%含むことを特徴とする流動状食品、を別の態様とする。
本発明は、肉類を他の風味原料と共に加熱処理した後、これらを粉砕する工程を含むことを特徴とする上記の各食品の製造方法、を更に別の態様とする。
【発明の効果】
【0006】
以上の本発明の構成により、しっかりした肉由来のブイヨン風味があり、ざらつきや粉っぽさがなく口当たりが滑らかな調味用流動状食品を得ることができる。また、このような調味用食品を配合することにより、種々の食品、例えばカレー等も同様に優れた風味、食感のものとすることができる。肉類そのものを粉砕して含有しているので、カレー等最終製品の製造コスト面でも効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
(調味用流動状食品、流動状食品)
調味用流動状食品とは、例えば、レトルト食品等の種々の食品に対して所望の風味を付与するために用いることができる、液状乃しペースト状の食品をいう。上記の調味用食品は、レトルト食品、無菌充填食品等の加工時に加熱処理工程を含む食品用、特にレトルト食品に好適に使用し得る。これらの食品では、食品加工時の風味変化の影響を受けやすいからである。更に、カレー、シチュー、スープ、ソース、ドレッシング等の食品に有用であり、これらの固形ルウ製品、ペースト状製品等にも用い得、適用食品の種類は任意である。
また、流動状食品とは、上記の調味用食品を使用すること等により、あるいは他の方法により製造されたレトルト食品等の種々の食品をいう。上記例示の食品が挙げられるが、適用食品の種類は任意である。
【0008】
本発明において、前記の調味用流動状食品及び流動状食品は、加熱処理した肉類の粉砕物を含んで構成される。
肉類は、牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉、貝類、海老、イカの肉等種類を問わず用い得るが、風味、食感の面から牛肉が好ましい。肉類は、生あるいは冷凍品等のカットした肉、ミンチ肉等任意の形態のものを加熱処理したものであればよい。勿論、加熱処理と下記する粉砕処理を同時に行って、あるいはこれらを任意の順で行って調製したものでもよい。これらの肉類は、1〜20質量%(以下%と略称する)、好ましくは3〜17%用いるのがよい。なお、本発明において、原材料の使用量は、調味用流動状食品又は流動状食品中における初期原料として規定される使用量を指す。
加熱処理は、油で炒める、油揚げ、焼成、煮込み、蒸煮等、食品に与えるのに好ましい肉類の風味(旨味)を形成し得る処理であれば何れでもよい。加熱処理の条件としては、油で炒める場合には、炒め風味を付与するために、肉類を油、野菜等と一緒に90〜100℃達温まで炒めるのが望ましく、予め油脂と野菜だけを90〜100℃達温まで加熱し、更に肉類を加えて90〜100℃達温まで加熱してもよい。煮込み処理は、好適に旨味成分を抽出するために、95〜100℃で10〜60分、好ましくは15〜45分行うのがよい。
【0009】
肉類の粉砕物は、加熱処理した肉類を適宜手段を用いて粉砕したものである。肉類の粉砕物は、具体的には、(1)肉類を加熱処理した後、肉汁と共に粉砕したもの、(2)肉類を他の風味原料と共に加熱処理した後、これらを粉砕したもの、(3)肉類と油又はこれらと他の風味原料とを炒め処理し、その後、水を加え、必要により更に他の風味原料を加えて、煮込み処理した後、これらを粉砕したもの等とすればよい。要は、これらの態様を経て、あるいは他の方法により、加熱処理した肉類の粉砕物が、次のような所望の形態で調味用流動状食品又は流動状食品に含まれるようにすればよい。肉類の粉砕物と肉汁成分とを別々に調製して組合せてもよい。
粉砕は、コミトロール、コロイドミル、マスコロイダー等を用いて行うことができる。
肉類のざらつき、粉っぽさを軽減するためには、粉砕処理を2度以上の複数回行うか、あるいは上記の粉砕装置を直列に2つ以上の複数台連設するのがよい。
【0010】
ここで、肉類の粉砕物は、目開き850μmの篩を通過する粒径、好ましくは目開き600μmの篩を通過する粒径を有するものである。粉砕物が目開き850μmの篩を通過する粒径を有するとは、別の観点から言うと、顕微鏡により実測した場合に、繊維状の肉類の粉砕物の内、長さが850μm以下のものが約80%以上 含まれる状態をいう(目開き600μmの篩を通過する粒径を有するとは、同様に繊維状の肉類の粉砕物の内、長さが600μm以下のものが約80%以上含まれる状態をいう)。同様に繊維状の肉類の粉砕物の内、長さがは100〜500μmのものが約80%以上含まれる状態が好ましい。粉砕物が目開き850μmの篩を通過しない粒径のものである場合には、これを含む調味用流動状食品及び流動状食品の口当たりにざらつきがあったり、粉っぽく感じるという傾向がある。したがって、上記の粒径により、これらの食品にざらつきや粉っぽさのない滑らかな口当たりを達成し、肉由来の風味を活かすことが可能となる。なお、粉砕により品質低下を招く場合を除き、上記粒径の下限値は特に制限されない。

【0011】
また、調味用流動状食品は、肉類の粉砕物を0.6〜12%、好ましくは3〜10%含むのがよい。流動状食品は、肉類の粉砕物を0.1〜6.5%、好ましくは0.5〜6%含むのがよい。例えば、前記の段落番号0007、0008に記載した製法により食品を調製した場合に、粉砕物が上記の量含まれれば、風味品質的に優れた食品を得ることができる。なお、上記の数値は、特定の目開きの篩を通過させた後の食品をろ過して、収集した肉類の固形分として測定した値である。
【0012】
同時に、加熱処理した肉類の粉砕物を含んで構成される調味用流動状食品及び流動状食品は、各々特定量の肉汁成分を含む。即ち、調味用流動状食品は0.4〜7.2%、好ましくは2〜6.5%の肉汁成分を含み、流動状食品は0.05〜4.5%、好ましくは0.3〜4%の肉汁成分を含む。ここで、「肉汁成分」とは、肉類に由来する旨味成分(蛋白質、アミノ酸)及び脂質を指し、これらの含有量は、蛋白質、アミノ酸(これらの総質量)についてはケルダール法により、脂質についてはソックスレー法によって各々測定した蛋白質、アミノ酸及び脂質の総質量を指す。
調味用流動状食品及び流動状食品が各々上記特定量の肉汁成分を含むことによって、これらの食品が各々調味用、喫食用に適した肉由来の風味を好適に呈するものとなる。尚、肉汁成分は、一部をエキス類等の加工原料由来で構成することができるが、全部又は大部分を前記肉類の粉砕物由来で構成することが風味の面から好ましい。
【0013】
以上のようにして構成される本発明の調味用流動状食品又は流動状食品には、他の原料として種々のものを制限なく含むことができる。原料のうち、加工において食品に風味形成に機能するものは風味原料となる。代表的な原料として以下のものが挙げられる。
油として、例えばラード、ヘッド、バター、マーガリン、パーム油、大豆油、菜種油、オリーブ油、綿実油、コーン油を用いることができる他、これらの混合物を用いることもできる。本発明において油は、好ましくは0.1〜15%、より好ましくは3〜12%含まれるように用いるのがよい。
水として、水自体を単独で用いるか、またはこれに酒類等を添加して用いるか、または玉葱細断物等の原料由来の水を用いることができる。水原料は(水分として)好ましくは65〜99%、より好ましくは70〜95%になるように含むのがよい。
【0014】
油以外の風味原料として、ガーリック、砂糖、ハチミツ、トマトペースト、醤油
、酵母エキス等を挙げることができるが、これらは本発明の効果、しっかりとした肉由来のブイヨン風味を提供するといった効果に悪影響を及ぼさない範囲で使用するのがよい。これらと油とを焙煎したものとして用いてもよい。上記の原料は、特に調味用流動状食品に含むと風味改善の面で有効である。
ガーリックを使用すると、油と一緒に炒めた香ばしい風味が得られ、砂糖、ハチミツを使用すると、まろやかな甘さが得られ、トマトペースト、醤油、酵母エキスを使用すると芯になる旨味が得られる。
食品中での油分離防止のため、乳化剤を使用するのが望ましい。乳化剤の種類としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンから選ばれる1種もしくは複数を使用するのが望ましい。使用量は、調味用流動状食品又は流動状食品中に0.01〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%使用するのがよい。
【0015】
流動状食品(最終製品)を製造する場合、調味用流動状食品を、例えば最終製品の質量をベースとして、30〜70%含むのが好ましく、より好ましくは40〜60%含むとよい。調味用食品を、例えば、カレー、ハッシュドビーフ、シチュー、スープ等の流動状食品に対して用いることが好適である。これらよって、ざらつきや粉っぽさのない滑らかな口当たりを有し、肉由来の風味を活かした最終製品を調製することが可能となる。
【0016】
本発明の調味用流動状食品を用いたレトルトカレー(最終製品)の製造方法について例を挙げて説明する。まず、上述のようにして調味用流動状食品を製造し、これと、他のカレー原料、例えば、カレーパウダー、小麦粉、油脂、香辛料、調味料(塩、アミノ酸系調味料)、乳原料等またはこれらの混合物と混合した後、90〜100℃で5〜20分煮込む。これに所望により、野菜、肉類等の具材を加えて、容器に密封し、加熱殺菌してレトルトカレーを製造することができる。他の種類の食品も、上記の要領で製造することができる。
【実施例】
【0017】
実施例1 調味用流動状食品の製造
斜軸釜にラード10%、ミンチ牛肉15%、ガーリック2%を入れて98℃達温まで混合加熱した。その後更に、水72.5部を投入し、98℃達温後30分間混合しながら煮込み処理した。更にグリセリン脂肪酸エステル0.5%、蒸散分の水を加え、コミトロールで粉砕処理した。
得られた調味用流動状食品は、肉由来のしっかりしたブイヨンの旨味があり、ざらつきや粉っぽさがなく滑らかな口当たりのものであった。また、これに含まれる肉類の粉砕物は、目開き600μmの篩を通過する粒径を有するもので、粉砕物の長さは、850μm以下(顕微鏡内に分布する繊維状粉砕物の約80%が100〜500μm)であり、肉類の粉砕物を約9%含み、肉汁成分(旨味成分(蛋白質、アミノ酸)、脂質)を約6.0%含むものであった。
【0018】
実施例2 最終製品(レトルトカレー)の製造
上記で得た調味用流動状食品50%、ソテーオニオン10%、チキンブイヨン5%、小麦粉ルー5%、香辛料2%、水28%を加えて加熱混合し、カレーソースを得た。
上記で得たカレーソース80質量部(以下部と略称する)、角切りボイル牛肉20部をレトルトパウチに入れ、密封・殺菌し、レトルトカレーを得た。
得られたレトルトカレーは、肉由来のしっかりしたブイヨンの旨味があり、ざらつきや粉っぽさがなく滑らかな口当たりであった。また、これに含まれる肉類の粉砕物は、目開き600μmの篩を通過する粒径を有するもので、粉砕物の長さは、850μm以下(顕微鏡内に分布する繊維状粉砕物の約80%が100〜500μm)であり、肉類の粉砕物を約4%含み、肉汁成分(旨味成分(蛋白質、アミノ酸)、脂質)を約2.5%含むものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理した肉類の粉砕物を含む調味用流動状食品であって、該肉類の粉砕物が目開き850μmの篩を通過する粒径を有し、かつ、該食品中に肉汁成分を0.4〜7.2質量%含むことを特徴とする調味用流動状食品。
【請求項2】
上記の肉類の粉砕物を0.6〜12質量%含む請求項1記載の食品。
【請求項3】
加熱処理した肉類の粉砕物を含む流動状食品であって、該肉類の粉砕物が目開き850μmの篩を通過する粒径を有し、かつ、該食品中に肉汁成分を0.05〜4.5質量%含むことを特徴とする流動状食品。
【請求項4】
上記の肉類の粉砕物を0.1〜6.5質量%含む請求項3記載の食品。
【請求項5】
乳化剤を含む請求項1又は請求項2に記載の食品。
【請求項6】
肉類を他の風味原料と共に加熱処理した後、これらを粉砕する工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の食品の製造方法。