説明

調律装置の表示器

【課題】 高輝度のLEDを使用しなくても視認性を高めることができ、しかも線光源と同様な外観を、遮光部材を使用せずに得る。
【解決手段】 複数のLED28を一列に連続的に配置し、これらLED28の前面に透明のLEDカバー30が設けられている。LEDカバー30は、LED28の配置方向に伸び、この配置方向に垂直に円弧状に湾曲している。このカバー30は、光拡散材を含んでなく、前記円弧状に沿って凹凸面32が形成されている。この凹凸面32は、前記配置方向に延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調律装置の表示器に関し、特に、光学式でありながら機械式メータのような表示が行えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調律装置の表示には、特許文献1に開示されているようなものがある。特許文献1の図3及び図4では、複数のインジケータを左右に一列に配置してチューニングガイドが構成され、入力された楽音信号の音高が基準音高よりも高いほど中央のインジケータよりも右側に遠ざかった位置にあるインジケータが点灯し、入力された楽音信号の音高が基準音高よりも低いほど中央のインジケータよりも左側に遠ざかった位置にあるインジケータが点灯する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−323893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、機械式メータを使用しなくても、機械式メータと同様な表示を行うことができるが、インジケータとしてLEDを使用する場合、各LEDに取り付けられているカバーに光を拡散させるための拡散材が添加されていると、LEDに照明や太陽光が当たる明るい場所では、視認性が悪くなる。そこで、高輝度のLEDがインジケータとして使用される。また、明るい場所での視認性を高めるために、拡散材を使用していないカバーをLEDに用いている場合、LEDからの光が点光源として見え、機械式メータを模した線光源の表示としての外観性が悪くなっていた。また、連続した線光源表示をLEDによって実現するには、隣接するLED間の距離を短くする必要があるが、そのため隣接するLED間に遮光部材を配置しないと、光漏れを起こしやすかった。
【0005】
本発明は、高輝度のLEDを使用しなくても視認性を高めることができ、しかも線光源と同様な外観性を遮光部材を使用せずに得ることができる調律装置の表示器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の調律装置の表示器は、複数の点光源体を一列に連続的に配置した点光源体群を有している。点光源体は、一定の間隔をおいて配置することが望ましく、例えばLEDを使用することができる。前記各点光源体の発光側の前面に透明のカバーが設けられている。このカバーは、前記各点光源体の配置方向に伸び、この配置方向に垂直に円弧状に湾曲している。このカバーは、光拡散材が無添加であり、即ち、光拡散材を含んでいない。さらに、このカバーは、前記円弧状に沿って凹凸面が形成され、この凹凸面は、前記配置方向に延設されている。
【0007】
このように構成された調律装置の表示器では、カバーが光拡散材を含んでいないので、カバーを介して全方向へ光が拡散されることが抑制され、点光源体の配列方向に光が拡散されることが防止され、遮光部材をもうける必要がない。また、カバーに形成されている凹凸面により点光源からの光が点光源の配列方向に垂直な方向に線状になり、点光源体を使用しているにも拘わらず、あたかも線光源による針状の表示としての外観を呈する。
【0008】
前記カバーの前記凹凸面の形状を、少なくとも前記円弧状の頂上部から所定の範囲内が、前記カバーの中心から放射状に伸びる複数の半径線が頂点を通る複数の二等辺三角形によって形成されているものとすることができる。このように構成すると、円弧状部の頂上部から所定の範囲内では、点光源体からの光は、各二等辺三角形の各辺を半径線にほぼ平行に通過する。従って、点光源からの光はより線状に見える。
【0009】
あるいは、前記カバーの前記凹凸面の形状を、少なくとも前記円弧状の周縁部から所定の範囲が、ほぼ水平およびほぼ垂直な辺を持つ複数の三角形によって形成することができ
る。このように構成した場合、点光源からの光のうちほぼ水平な辺に向かったものは、ほぼ全反射し、外部に漏れることはない。また、ほぼ垂直な辺に向かった点光源からの光は、ほぼ垂直な辺を通過するが、その際に垂直な辺に近づくように屈折する。その結果、点光源からの光はより線状に見える。
【0010】
さらに、前記カバーの前記凹凸面の形状は、前記円弧状の周縁部に近いほぼ前記ほぼ水平な辺の長さが、前記ほぼ垂直な辺の長さに比べて小さくすることもできる。このように構成すると、ほぼ水平な辺で全反射される光が少なくなり、ほぼ垂直な辺を通過する光を多くすることができる。その結果、線状に見える光の量を多くすることができる。
【0011】
上記態様の調律装置の表示器において、前記カバーの前記点光源体側の面は、円弧状の断面を有するものとすることができる。このように構成すると、カバーの内部を中空にすることができ、カバーの軽量化を図ることができる。
【0012】
また、前記各点光源体は、前記円弧状の中心上に位置することもできる。このように構成すると、光は、円弧状の部分に均等に当たり、カバーを通して見える線状の光の長さが均等になる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、点光源体を使用しながら、機械式メータと同様な線状の表示を行うことができ、しかも、線状の表示がにじむことが無く、点光源体を近接して配置しても、いずれの点光源体が発光して線状に見えているのか容易に判別することができる。その上、カバーの他に隣接する点光源体間に遮光部材を設ける必要が無く、構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の調律装置の平面図である。
【図2】図1の調律装置の組み立て図である。
【図3】図1の調律装置の表示部の組み立て図である。
【図4】図3の表示部の部分拡大図である。
【図5】図3の表示部に使用するLEDカバーの縦断側面図である。
【図6】図5のLEDカバーにおける光の屈折の説明図である。
【図7】図5のLEDカバーの他の例の正面図、平面図、底面図及び左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態の調律装置は、電子弦楽器をチューニングするもので、図1及び図2に示すように、横長の本体部2を有し、操作者の足元に置かれ操作者は装置の上側から調律状態を視認するようになっている。その本体部2の上面の正面側に寄った位置には、順にフラットチューニングボタン4、モードボタン6、チューナオン・オフスイッチ8、ピッチボタン10、ディプレイボタン12が一列に配置されている。チューナオン・オフスイッチ8のそばには、チューナオン・オフインジケータ14が設けられている。この本体部2の上面側の背面側に寄った位置に表示部16が設けられている。
【0016】
この調律装置では、調律する電子弦楽器を図示していない入力ジャックに接続し、モードボタン6を押してチューニングモードを選択する。チューニングモードとしては、たとえば半音ごとに12音全部の音程を調律するCHROMATICモード、ギターの弦番号でチューニングするGUITARモード、ベースの弦番号でチューニングするBASSモード、ギターのDROP DチューニングするDROP Dモード、ギターのDADGADチューニングするDADGADモードがある。チューナオン・オフスイッチ8を操作して、チューナオンとする。このとき、チューナオン・オフインジケータ14が点灯する。この状態で、この調律装置に接続した電子弦楽器で単音を発生する。発生した単音に近い弦番号が表示部16の音名・弦番号インジケータ18に表示される。正確な音程とのずれが表示部16のメータ20と、チューニングガイドインジケータ22とによって表示される。メータ20は、電子式のものであるが、機械式の針と同様な線状の表示が音程のずれに応じてなされる。音程が低い場合には、メータ20の中央よりも左側で線状の表示がなされ、音程が高い場合には、メータ20の中央よりも右側で線状の表示がなされ、音程が一致している場合には中央に線状の表示がなされる。チューニングガイドインジケータ22は、音程が低い場合には図1における左側のものが点灯し、音程が高い場合には右側のものが点灯し、音程があっているときには両方が点灯する。この他にも、この調律装置は種々の機能を有するが、本願発明と直接に関連しないので、説明を省略する。
【0017】
図2は、表示部16を覆っている上蓋24と、フラットチューニングボタン4、モードボタン6、ピッチボタン10、ディプレイボタン12のボタンカバー部分(図示せず)を取り除いた状態を示す。
表示部16では、図2に示すように本体部2に上述した音名・弦番号インジケータ18、メータ20、チューニングガイドインジケータ22を配置した上部に、これらを覆うように、透光性があり着色されたアクリル製の上蓋24が取り付けられている。
また、フラットチューニングボタン4、モードボタン6、ピッチボタン10、ディプレイボタン12の各スイッチには動作状態を示すLEDが内装されている。
【0018】
表示部16は、図3に示すように矩形状のプリント基板26の一方の面上に、複数の点光源体、例えばLED28を所定の間隔(本願実施例では3.08ミリ)をおいて一列に配置した点光源体群、例えばLED群が計101個設けられている。これらLED28は、発光部が点発光するチップLEDであって、円弧状に配列されている。これらLED28の発光側の前方に、これらを全て覆うようにカバー、例えばLEDカバー30がプリント基板26に取り付けられている。このLEDカバー30は、光拡散材が無添加である、即ち光拡散材を含んでいない合成樹脂製である。この合成樹脂は、光を透過する無色透明のもので材質は例えばABSが好ましい。LEDカバー30は、LED28の配列に沿う円弧状に長手方向が形成され、その側面形状は、図4及び図5に示すように、ほぼ半円状に形成されている。このLEDカバー30の内部は中空であり、この半円の中心が、図4に示すように、各LED28の中心上に位置している。
【0019】
プリント基板26には、図3には示していないが、音名・弦番号インジケータ18、チューニングガイドインジケータ22も取り付けられている。図2に示すように、LEDカバー30が、本体部2の上面に設けた窓31内に位置するように、本体部2内にプリント基板26が配置されている。
【0020】
図4に示すように、LEDカバー30の外表面には、それの半円に沿って複数の凹凸32が形成され、これら凹凸32は、LEDカバー30の一方の端部から他方の端部まで伸延している。これら凹凸32は、その側面形状が、LEDカバー30の外表面から外方に突出した位置に頂点を持つ概略三角形状を連続的に配置したものである。これら概略三角形状は、LEDカバー30の外表面から外方に突出した位置にある頂点と、隣接する概略三角形状とのLEDカバー30の外表面側での接合点とを、それぞれ丸めたものである。
【0021】
図5に示すように、これら概略三角形状は、LEDカバー30の中心から立てた垂線に対して両側に所定角度の範囲の領域aでは、上記頂点につながる各辺の長さが全て同じ大きさでかつ等ピッチで配置されている。本願実施例では0.3ミリのピッチで配置されている。なお、本願発明の効果は0.25〜0.5ミリピッチで配置された場合にもっとも高くなる。領域aの端(上記垂線から最も離れた位置)にある概略三角形状は、上記垂線と反対側にある辺が、ほぼ平行、例えば上記垂線に対して1度よりもわずかに大きい角度をなしている。
【0022】
領域aに隣接して上記垂線と離れてある領域bでは、各概略三角形状は、両辺の長さがほぼ等しいが、その両辺のうち上記垂線から離れている側の辺がほぼ垂直、例えば上記垂線に対して1度の角度をなすように等ピッチ、例えば領域aでのピッチと同じピッチで配置されている。また、この辺は、後述する領域cの両辺の長さほどではないが、他方の辺よりも長く設定されている。なお、領域bの端(上記垂線から最も離れた位置)の位置は、その位置にある概略三角形状が両辺の長さをほぼ等しくしながら、両辺のうち上記垂線から離れている側の辺をほぼ垂直に配置不可能に近くなる位置である。
【0023】
領域bに隣接して上記垂線と離れてある領域cでは、各概略三角形状は、両辺の長さが異なり、その両辺のうち上記垂線から離れている側の辺がほぼ垂直、例えば上記垂線に対して1度の角度をなすように、ピッチを異ならせて配置されている。また、この辺は、他方の辺よりも長く設定されている。また、ピッチは、上記垂線から離れる方向に進むほど、領域a、bでのピッチよりも徐々に広くなるように設定されている。従って、領域cの概略三角形状は、ほぼ垂直に位置する長い辺と、ほぼ水平に位置する短い辺とからなる。
【0024】
このように各領域a、b、cの凹凸32が構成されているので、領域aの凹凸32は、図6(a)に示すように側面形状が二等辺三角形のものが連続してLEDカバー32の外表面に存在するものと近似することができる。また、領域bの凹凸32は、同図(b)に示すように、一方の辺がほぼ垂直に位置する二等辺三角形と近似することができる。また、領域cの凹凸32は、同図(c)に示すように長い辺がほぼ垂直に位置し、短い辺がほぼ水平に位置する三角形に近似することができる。
【0025】
このように構成されたメータ20では、各LED28のいずれかが1つが発光すると、その光は種々の方向に放射される。そのうち領域aに向かった光のうちLEDカバー30の内面を直進したものは、図6(a)に示すように凹凸32の概略三角形状の2辺に向かう。一般に、LEDカバー30の屈折率は、空気の屈折率よりも大きいので、LEDカバー30から空気中に出る光の屈折角θは入射角φよりも大きい。従って、領域aに入射した光は、ほぼ上方に向かう。
【0026】
領域bに向かった光は、LEDカバー30の内面を直進したものは、図6(b)に示すように、凹凸32のほぼ水平な辺に向かうものとほぼ垂直な辺に向かうものとがある。水平な辺に向かったものの大部分は全反射し、ほとんど上方には向かわない。一方、ほぼ垂直な辺に向かった光は、入射角よりも屈折角が大きいので、それぞれ上方に向かう。
【0027】
領域cに向かった光も領域bと同様にほぼ水平な辺に向かった光が屈折して上方に向かう。また、ほぼ水平な辺の長さが短いので、ほぼ水平な辺で全反射される光が少なくなり、全体としてほぼ垂直な辺で屈折されて上方に向かう光が多くなる。
【0028】
また、発光しているLED28の光は、LEDカバー30の長手方向にも向かうが、これらの多くが全反射されるので、あまり長手方向に向かいながらLEDカバー30内に入射する光は少ない。しかも、LEDカバー28には拡散材が含まれていないので、LEDカバー30内に入射した光も余り拡散しない。
【0029】
これらの結果、1つのLED28が発光すると、LEDカバー30を介して見た光は、LEDカバー30の長手方向に対して垂直な線状に見え、更に、本願実施例の調律装置を上側から見たときの視認性が向上する。従って、チューニングに従って、発光させるLED28を順に変更することによって、機械式メータで針が移動する状態を模擬することができる。
【0030】
上記の実施形態では、凹凸32は、領域a、b、cによってそれぞれ異ならせたが、例えばLEDカバー30をその側面形状が半円よりも小さい円弧状として、領域aのみを設けることもできる。また、上記の実施形態では、LEDカバー30は、長手方向に長い円弧状のものを使用したが、これに限ったものではなく、例えば図7(a)乃至(d)に示すように、平面形状が扇形で、両側辺が円弧状となるように、その扇の要から半径方向に沿って円弧状の外方縁部に向かう中途まで徐々に高さ寸法が大きくなり、その中途から円弧状の外方縁部に向かうに従って高さ寸法が短くなるように構成することもできる。この場合、LEDは、要から円弧状の外方縁部に向かう中途に、外方縁部と同芯の円弧状に配置する。
【0031】
また、上記の実施形態では、凹凸32は、LEDカバー30の外部に設けたが、LEDカバー30の内部に設けても良く、その場合、外部は平坦な半円を描くようにしても良い。この場合、線状に見える光の量は前記実施例とは異なり水平方向に多く光が通過し、垂直方向へ通過する光が少なくなる。結果、この場合、調律装置の前後方向からの視認性がよいものとなる。
【符号の説明】
【0032】
28 LED(点光源体)
30 LEDカバー(カバー)
32 凹凸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の点光源体を一列に連続的に配置した点光源体群と、
前記各点光源体の発光側の前面に設けられ、前記各点光源体の配置方向に伸び、この配置方向に垂直に円弧状に湾曲した透明のカバーとを、
具備し、前記カバーは、光拡散材が無添加であり、前記円弧状に沿って凹凸面が形成され、この凹凸面は、前記配置方向に延設されている調律装置の表示器。
【請求項2】
請求項1記載の調律装置の表示器において、前記カバーの前記凹凸面の形状は、少なくとも前記円弧状の頂上部から所定の範囲内が、前記カバーの中心から放射状に伸びる複数の半径線が頂点を通る複数の二等辺三角形によって形成されている調律装置の表示器。
【請求項3】
請求項1記載の調律装置の表示器において、前記カバーの前記凹凸面の形状は、少なくとも前記円弧状の周縁部から所定の範囲が、ほぼ水平およびほぼ垂直な辺を持つ複数の三角形によって形成されている調律装置の表示器。
【請求項4】
請求項3記載の調律装置の表示器において、前記カバーの前記凹凸面の形状は、前記円弧状の周縁部に近い前記ほぼ水平な辺の長さが、前記ほぼ垂直な辺の長さに比べて小さくなる調律装置の表示器。
【請求項5】
請求項1記載の調律装置の表示器において、前記カバーの前記凹凸面と対向する面は、円弧状の断面を有する調律装置の表示器。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか記載の調律装置の表示器において、前記各点光源体は、前記カバーの配置方向に垂直に湾曲した円弧状の中心上に位置する調律装置の表示器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−175906(P2010−175906A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19378(P2009−19378)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】