説明

調律装置

【課題】表示装置の照明を複数に分割して制御することで、省電力な調律装置を提供する。
【解決手段】調律装置は、スイッチ1や楽音入力手段10からの入力により、入力音の音名やセント偏差を抽出し、表示手段6に表示する。表示手段6の表示内容が変更されるときに照明の点灯や消灯を制御するための照明制御手段7により、照明の点灯箇所を独立して制御することで、省電力化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は楽器の音を調律する場合に用いる調律装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調律装置の機能としては、スイッチ入力によって基準ピッチや調律音名などのパラメータを設定する場合と、楽音の入力に対しセント偏差や抽出音名を表示する場合がある。
【0003】
表示部の照明装置の省電力化を図る方法としては、調律器に楽音やスイッチ等の外部入力があったときに照明装置を点灯させ、一定時間経過して待機状態に移行すると照明装置を消灯させる方法が知られている。
【特許文献1】特開2000−243131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の調律装置は、どのような外部入力に対しても全ての表示部に対し一様に照明を点灯させるため、その外部入力によって変更される箇所以外の場所も照らすことになり、電力を無駄に消費するという問題があった。
【0005】
本発明は、表示部の照明を複数用意して照明範囲を分割し、外部入力の種類によって照明の点灯箇所を変えることにより、ユーザに必要な情報の視認性を保ちつつ、省電力化な調律装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、外部入力信号を入力するための外部入力手段と、前記外部入力手段の内容に基づいて表示内容を表示する1つ以上の表示手段と、前記表示手段の表示内容に基づいて変化する複数の照明手段と、前記外部入力手段から入力された外部入力信号をトリガとして前記照明手段を点灯させ、一定時間経過後に消灯するように制御する照明制御手段と、を備えた調律装置であって、前記表示手段は複数の表示内容を表示し、前記照明制御手段は外部入力信号の種類によって、複数の前記照明手段の中で特定の照明手段のみが点灯するように個々の前記照明手段を独立に制御できることを特徴とする調律装置とする。
【0007】
また本発明は、上述の調律装置において、前記外部入力手段は、スイッチ、マイク、またはインプットジャックであることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上述の調律装置において、前記照明制御手段は、一つの照明手段を点灯するトリガとして複数の外部入力信号を用いる場合、最後に入力された外部入力信号の入力時刻から一定の時間経過後に消灯するように制御することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述の調律装置において、前記照明制御手段は、消灯時刻を決定する前記外部入力信号の入力からの経過時間を前記照明手段ごとに制御できることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述の調律装置において、前記照明制御手段は、前記外部入力信号に基づいて、個々の前記照明手段を他の照明手段から独立して制御することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上述の調律装置において、前記照明制御手段は、前記外部入力信号に調律可能な特定の周波数範囲の楽音が入力されたときのみ前記照明手段を点灯するように制御することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上述の調律装置において、前記周波数範囲は、任意の範囲の値に設定可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スイッチや楽音等の外部入力信号の種類、さらには楽音の周波数範囲によって照明範囲を変えることで、必要なタイミングで必要な箇所のみ点灯させることで調律装置を省電力化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の情報表示装置における好適な実施の形態について、図1から図5を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、調律装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように調律装置は、調律する際に引用するパラメータの変更等を行う複数のスイッチ1、入力信号の調律処理やバックライトの点灯処理等を主に行うマイコン2、マイコン2内でスイッチ1からの入力の有無を判定するスイッチ入力判定手段3、スイッチ入力判定手段によってスイッチの入力がありと判定されたときにパラメータ変更等の処理を行う設定処理手段4、楽音等の信号を増幅し、矩形波として入力するための楽音入力手段10、マイコン2内で楽音の入力を検知する楽音信号判定手段11、楽音が入力されたと判定された後に、設定処理手段4の設定値に基づいて入力音の音名やセント偏差を抽出する調律手段12、設定処理手段4の設定値や調律手段11で求められた音名、セント偏差等の表示を制御するための表示制御手段5、実際に表示を行うための複数の表示手段6、表示制御手段5で表示手段6の表示内容が変更されるときに照明の点灯や消灯を制御するための照明制御手段7、照明の消灯タイミングの設定に関わるタイマ8、表示手段の表示内容の視認性を向上するための複数の照明手段9で構成されている。
【0015】
まず、複数のスイッチ1の入力により、複数の照明手段9を制御する場合の動作について説明する。調律のパラメータを変更するためスイッチ1を押すと、スイッチ入力判定手段3によってスイッチ入力があったことを検知し、どのスイッチが入力されたかを判定する。次に、設定処理手段4で、入力されたスイッチの種類に対応するパラメータの値の変更、格納処理を行う。パラメータの変更があると、表示内容もそれに伴い変更する。この表示手段6の表示内容変更処理は、設定処理手段4の内容を受け表示制御手段5で行われる。
【0016】
また同時に、スイッチ入力によって表示手段に付属する照明を点灯させる処理を行うのが照明制御手段7である。照明制御手段7では、変更されたパラメータによってどの照明手段9を点灯させるかを判断し、照明手段9を制御する。更に、点灯させた照明手段の消灯タイミングを計るため、タイマ8に、点灯させた照明手段ごとのタイマ値をセットしてカウントダウン処理も行う。このようにしてスイッチ1を押すことによって表示手段6の表示内容変更と照明手段9の照明点灯処理を行う。
【0017】
その後、楽音入力手段10から楽音が入力されると、楽音信号判定手段11で楽音の入力を検知する。検知された楽音の信号は調律手段12によって音名、セント偏差を抽出する。このとき、設定処理手段4で設定されたパラメータが調律処理に使用される。こうして判定された音名、セント偏差は表示制御手段5に送られ、それぞれの表示部で正しく表示されるよう処理が行われる。同時に、音名、セント偏差が抽出されたという情報を照明手段7に送ると、照明制御手段7によって音名、セント偏差の表示に関わる照明の点灯、消灯の処理を行う。スイッチ入力時の処理と同様に、点灯させる照明手段の選択、および消灯させるためのタイマの設定を行う。このようにして、楽音の入力があったときに、音名、セント偏差が抽出されることで表示手段6への表示処理と照明手段9の照明点灯処理を行う。
【0018】
もしタイマ8にある照明手段9の消灯に関わるタイマ値が設定されていてカウントダウンを行っていたときに、新たなスイッチ入力や楽音の入力があり、その新たな入力によって点灯中の照明手段をまた点灯状態にすることになった場合は、カウントダウン中のタイマ値をリセットして、最後に入力された入力信号からのカウントダウンで消灯タイミングを決定させる。このとき、同じ照明手段の点灯でも、入力内容によってセットするタイマ値を変更することも可能である。
【0019】
図2は調律装置の実施形態の一例の正面図である。本体ケース13には、電源スイッチ14、液晶ディスプレイ15、メータ16、ピッチ設定スイッチ17、マイク18、インプットジャック19、ピッチ部照明20、音名部照明21、セント偏差部照明22を配置する。
【0020】
図3は調律装置の処理の流れを示すフローチャートである。ピッチ設定スイッチ17にて基準ピッチの設定を行う(ステップS301)と、液晶ディスプレイ15のピッチ表示部分の値が設定値に変更される(ステップS302)。このとき、図1の照明制御手段7にてピッチ部照明20を点灯させる制御(ステップS303)が行われるため、ピッチ部照明20が点灯する。また、タイマ9に規定のタイマ値を設定(ステップS304)し、カウントダウン処理を行う。次に、マイク18またはインプットジャック19に接続したラインから楽音信号が入力され(ステップS305)、音名とセント偏差が抽出されると(ステップS306)、液晶ディスプレイ15の音名表示部分に音名が、メータ16でセント偏差が表示される(ステップS307)。このとき、図1の照明制御手段7ではピッチ部照明20、音名部照明21、セント偏差部照明22の全てを点灯させるような制御が行われ(ステップS308)、全ての照明が点灯状態となる。同時に、タイマ9には音名部照明21、セント偏差部照明22の消灯タイミングを決定するためのタイマ値を設定する(ステップS309)が、例えばピッチ部照明は短時間で良いとした場合、ピッチ部照明とその他の照明のタイマ値は独立して設定してもよい。
【0021】
照明の消灯処理は、ピッチ部のタイマ値が0になったかを判断し(ステップS310)、ピッチ部照明20を消灯させる(ステップS311)。音名部のタイマ値も0になったかを判断し(ステップS312)、音名部照明21を消灯させる(ステップS313)。同様にセント偏差部のタイマ値も0になったかを判断し(ステップS314)、セント偏差部照明22を消灯させる(ステップS315)。楽音の入力が終了した後、音名、セント偏差が表示中、すなわち全ての照明が点灯中にピッチ設定スイッチ17からの入力があった場合は、全ての照明のタイマは点灯開始からカウントダウンを行っているため、最初のタイマ値から減った値となっているが、消灯タイミングの決定はあとから入力された外部入力が優先となる。スイッチの入力によって点灯するピッチ部照明20だけは、タイマ値を初期値に設定し直す。これによって、音名部照明21、セント偏差部照明22は楽音入力終了から一定時間の経過で消灯するが、ピッチ部照明20だけはピッチ設定スイッチ17の2回目の入力から一定時間の経過で消灯となる。
(第2の実施形態)
次に本発明に関わる調律装置の別の実施形態の一例について説明する。
【0022】
調律装置の概略構成を示すブロック図は第1の実施形態と同様である。
【0023】
図4は調律装置の正面図である。本体ケース23には、電源スイッチ24、液晶ディスプレイ25、メータ26、調律モード設定スイッチ27、マイク28、インプットジャック29、液晶部照明30、セント偏差部照明31を配置する。
【0024】
図5は調律装置の処理の流れを示すフローチャートである。調律モード設定スイッチ27にて調律モードの設定を行う。調律モードとはここでは調律する楽器を選択するモードを指す。例えば、ギターモードの場合は、一般的なギターの発音する周波数帯域である82.4〜659.3Hzまでを有効調律範囲と限定し、この範囲内の楽音が入力されたときのみ照明を行う、と設定する。調律モード設定スイッチ27の入力(ステップS501)によって液晶ディスプレイ25のモード表示部分の表示内容変更が行われるため(ステップS502)、それに伴い液晶部照明30が点灯し(ステップS502)、タイマ値がセットされる(ステップS503)。
【0025】
次に、マイク28またはインプットジャック29に接続したラインから楽音信号が入力されると(ステップS504)、音名とセント偏差が抽出され(ステップS505)、図1の表示制御手段5によって液晶ディスプレイ25に音名を、メータ26にセント偏差を表示する(ステップS506)。抽出された音名、セント偏差が設定された調律範囲内かを確認し(ステップS507)、調律範囲内でなかった場合は照明制御手段7には点灯制御の指示を行わないため、照明は点灯しない。
【0026】
一方、音名とセント偏差が調律範囲内であった場合は、照明制御手段7に点灯制御の指示が行われるため、照明制御手段7によって液晶部照明30およびセント偏差部照明31の点灯を行い(ステップS508)、タイマ値の設定(ステップS509)を行う。タイマのカウントダウン処理によって、液晶部のタイマ値が0になったかを判断し(ステップS510)、液晶部照明30を消灯させる(ステップS511)。同様にセント偏差部のタイマ値も0になったかを判断し(ステップS512)、セント偏差部照明31を消灯させる(ステップS513)。
【0027】
上記2つの実施例のように、必要な場所だけの照明点灯、および必要な時間だけの照明点灯時間を細かく設定することで、無駄な照明の点灯を防ぎ、調律器の省電力化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】調律装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】調律装置の外観構成を示した図である。
【図3】調律装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【図4】第2の実施形態の調律装置の外観構成を示した図である。
【図5】第2の実施形態の調律装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1…スイッチ、2…マイコン、3…スイッチ入力判定手段、4…設定処理手段、5…表示制御手段、6…表示手段、7…照明制御手段、8…タイマ、9…照明手段、10…楽音入力手段、11…楽音信号判定手段、12…調律手段、13、23…本体ケース、14、24…電源スイッチ、15、25…液晶ディスプレイ、16、26…メータ、17…ピッチ設定スイッチ、18、28…マイク、19、29…インプットジャック、20…ピッチ部照明、21…音名部照明、22、31…セント偏差部照明、27…調律モード設定スイッチ、30…液晶部照明

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部入力信号を入力するための外部入力手段と、
前記外部入力手段の内容に基づいて表示内容を表示する1つ以上の表示手段と,
前記表示手段の表示内容に基づいて変化する複数の照明手段と、
前記外部入力手段から入力された外部入力信号をトリガとして前記照明手段を点灯させ、一定時間経過後に消灯するように制御する照明制御手段と、
を備えた調律装置であって、
前記表示手段は複数の表示内容を表示し、前記照明制御手段は外部入力信号の種類によって、複数の前記照明手段の中で特定の照明手段のみが点灯するように個々の前記照明手段を独立に制御できることを特徴とする調律装置。
【請求項2】
前記外部入力手段は、スイッチ、マイク、またはインプットジャックであることを特徴とする請求項1に記載の調律装置。
【請求項3】
前記照明制御手段は、一つの照明手段を点灯するトリガとして複数の外部入力信号を用いる場合、最後に入力された外部入力信号の入力時刻から一定の時間経過後に消灯するように制御することを特徴とする請求項1に記載の調律装置。
【請求項4】
前記照明制御手段は、消灯時刻を決定する前記外部入力信号の入力からの経過時間を前記照明手段ごとに制御できることを特徴とする請求項3に記載の調律装置。
【請求項5】
前記照明制御手段は、前記外部入力信号に基づいて、個々の前記照明手段を他の照明手段から独立して制御することを特徴とする請求項4に記載の調律装置。
【請求項6】
前記照明制御手段は、前記外部入力信号に調律可能な特定の周波数範囲の楽音が入力されたときのみ前記照明手段を点灯するように制御することを特徴とする請求項2に記載の調律装置。
【請求項7】
前記周波数範囲は、任意の範囲の値に設定可能なことを特徴とする請求項6に記載の調律装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−203480(P2008−203480A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38891(P2007−38891)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】